説明

脂肪分解促進剤及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料

【課題】特異な芳香や味を有せず汎用特性に優れ、かつ全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な脂肪分解促進剤及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びにその作用に基づく痩身方法及び医薬用途を提供する。
【解決手段】下式(1)に示される化合物を有効成分とするものである。例えば4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン、及び4−(3'−グルコシル−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる肥満の抑制もしくは防止に有効な脂肪分解促進剤、及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びにその作用に基づく痩身方法及び医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、総摂取カロリーの増加、特に脂肪摂取量の増加に伴い、肥満の割合が年々増加している。肥満は過栄養に基づく体脂肪の過剰蓄積状態であり、消費エネルギーに対し、摂取エネルギーが過剰になると、その過剰分を白色脂肪細胞の中性脂肪(体脂肪)として蓄積して生じる。体脂肪としての蓄積が大きい肥満は、美容上好ましくないばかりか、高脂血症(高コレステロール血症あるいは高トリグリセリド血症)、脂肪肝、糖尿病、高血圧等の様々な疾病を引き起こす原因となる。
これらの疾病のうち、高脂血症は、血清脂質すなわちコレステロール、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸等のうち1種以上の成分が異常に増加する状態であり、この状態が長期間続くと動脈壁にコレステロールなどが沈着しやすくなり、動脈硬化を発症進展させる要因となる。
また、脂肪肝は栄養過多やアルコール類の過剰摂取などにより肝臓内に脂質、特に中性脂肪が過剰に蓄積した状態をいう。特に肥満による過栄養性の脂肪肝は、過剰なカロリー摂取により、末梢の脂肪組織からの脂肪酸動員が増加し、さらに肝での脂肪酸合成・中性脂肪合成が亢進することによって生じることが知られている(綜合臨床、第50巻、第12号、3215−3221頁、2001年)。
高脂血症や脂肪肝の治療方法としては、食事療法と適度な運動療法であるが、症状が改善されない場合には薬剤が用いられる。現在使用されている薬物としては、高脂血症改善を目的としてHMG−CoA還元酵素阻害剤やフィブラート系薬剤が挙げられる(昭和医学会雑誌、58巻、5号、397−401頁、1998年)。
一方、特に女性は、肥満ではなくても、外見上からもスリムな引き締まった体を切望する傾向にある。しかし、腹腔内内臓脂肪(腸間膜脂肪や大綱脂肪)の蓄積は、肥満者のみならず正常体重者においてもしばしば起こりうることが解明されつつある(綜合臨床、第50巻、第12号、3277−3282頁、2001年)。
上記理由により、体脂肪が蓄積した結果生じる外見上の肥満を改善するだけでなく、腹腔内内臓脂肪を分解する脂肪分解促進剤が望まれている。
しかし、一度蓄積した脂肪細胞を減少させるのは難しく、脂肪細胞をなるべく小さくすることが早道であり、そのためには脂肪中の油滴を分解することが効果的である。
すなわち、油滴は蛋白質と同じように酵素(ホスホリパーゼC)によって分解されるが、油滴は水をはじくリン脂質の膜に覆われているために油滴周辺の小胞体という水の固まりの中にいる酵素は近づくことができない。一方、運動することで交感神経を活発にし、脂肪分解ホルモンが分泌される。このホルモンはリン脂質の膜を取り除き、酵素と油滴の親和性を高めることで脂肪分解を促進すると考えられている。
そこで、本発明者らは、このホルモンと同様に油滴と酵素の親和性を高める働きをもつ物質である脂肪分解促進剤が、上記の問題を解決すると考え、種々検討した結果、ラズベリーケトンやジンゲロン及びその誘導体が脂肪組織に蓄積された脂肪の分解を促進し、肥満の抑制、又は肥満体質の改善に有効であることを見出した(特開2000−169325号公報)。
しかしながら、ラズベリーケトンやジンゲロンは脂肪分解促進剤としては有用であるが、特有の芳香を有しているために配合量に限度があり、特に脂肪分解作用に基づく抗肥満薬、高脂血症治療薬、脂肪肝治療薬等の治療薬への汎用性の点において必ずしも満足できるものではなかった。
そこで、本発明は、特異な芳香や味を有さず汎用特性に優れ、かつ全身もしくは局所の脂肪組織の減少を促進することによる肥満体質の改善、又は同組織の増大を防止することによる抗肥満効果を有する有効な脂肪分解促進剤及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びにその作用に基づく痩身方法及び医薬用途を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の目的を達成するために、本発明者らは、脂肪細胞に作用し脂肪分解を促進する作用を有し、かつ芳香や味を有しない物質について鋭意研究した結果、下記一般式(1)で示される化合物が、脂肪組織に蓄積された脂肪の分解を促進する作用を有し、その作用に基づく抗肥満効果、高脂血症治療効果及び脂肪肝治療効果を有することを見出し、本発明を完成させた。

(式中、Zは下式(2)、(3)

で示されるいずれかの原子団を示し;式中、R1、R2は水素原子、もしくはグルコース残基である。但し、R1又はR2の少なくともいずれか一方は水素原子である。)
すなわち、本発明は、上記一般式(1)で示される化合物を有効成分とする脂肪分解促進剤及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びにその作用に基づく痩身方法及び医薬用途である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】第1図は本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群及び普通飼料投与群の下腹部周囲皮下脂肪の量を示す。
【図2】第2図は本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群及び普通飼料投与群の子宮周囲脂肪と後腹膜脂肪の量を示す。
【図3】第3図は本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群及び普通飼料投与群の腸間膜脂肪の量を示す。
【図4】第4図は1週間毎の血清トリグリセリド値の推移を示すグラフであり、●印は本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料を摂餌した場合、▲印は高脂肪食飼料を摂餌した場合、■印は普通固形飼料を摂餌した場合を示す。*:高脂肪食飼料投与群に対してp<0.05で有意差有り(Dunnett's test)**:高脂肪食飼料投与群に対してp<0.01で有意差有り(Dunnett's test)##:高脂肪食飼料投与群に対してp<0.01で有意差有り(Student's test)
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本発明の実施の形態に関し、詳説する。本発明に用いられる化合物の具体例を以下に列挙する。
・4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン
・4−(3'−グルコシル−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン
・4−(4'−グルコシル−3'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン
・4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オール
・4−(3'−グルコシル−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オール
・4−(4'−グルコシル−3'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オール
以下に、本発明に用いられる化合物の製造方法について説明する。本発明に用いられる化合物の一部は、本発明者らによりメラニン生成抑制作用を有する皮膚化粧料として既に提案されているものである(特開2000−239143号公報)。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物において式中、Zは一例では式(2)であり、R1及びR2ともに水素原子である、4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンは、前記公報等に記載されている公知の方法で容易に合成することができる。具体的には、ショウガに含まれるジンゲロン[4−(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン]から、公知の方法、例えば、三臭化ホウ素やヨウ化水素酸を用いてメチルエーテルを開裂させることにより容易に得ることができる。また、R1又はR2のいずれかがグルコース残基のものは、ラズベリー果実などの植物から適当な溶媒によって抽出し、必要により公知の方法で濃縮や乾固して用いることもできる(フィトケミストリー、第29巻、第12号、3853−3858頁(1990年))。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物において式中、Zは一例では式(3)であり、R1及びR2ともに水素原子である、4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールは、ジンゲロンを水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより得られる4−(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールから、同様の方法を用いて、4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールを得ることができる。また、これらは天然物から抽出しても得ることができる。さらに、S.Mabicらの方法に従い、4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンや、4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールを用いて、対応するグルコシドを合成することができる(Tetrahedron Letter,Vol.34,No.28,4531−4534(1993))。
前記一般式(1)で表される化合物は、脂肪分解促進剤として、一種又は二種以上を併用することができる。また、痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びに医薬用途に用いる場合、皮膚化粧料、飲食品組成物、医薬品の形態によっても種々異なり一概に規定できるものではないが、皮膚化粧料や飲食品組成物への配合量は、例えば、該組成物中に0.001〜20重量%配合するのが好ましく、より好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%である。0.001重量%未満では本発明の効果を奏しない場合があり、20重量%を越えて配合しても、配合量に見合った効果が得られない場合がある。
また、医薬品として配合する場合の投与量は、患者の病態、年齢、体重等によって異なるが、好ましくは、成人に対して1日当り、1mg〜5000mg相当量を、より好ましくは50mg〜2000mg相当量を1度に、または2〜3回に分けて経口投与あるいは非経口投与する。
本発明の脂肪分解促進剤は、例えば、皮膚化粧料、飲食品、医薬品等に配合することができ、剤型は特に限定されるものではない。
本発明の痩身用皮膚化粧料の場合には、皮膚塗布用、浴用、洗浄用等を目的としたクリーム、乳液、ジェル、スティック、シート、パップ、粉末、液体、顆粒等、種々の形態とすることができる。
本発明の痩身用皮膚化粧料には、必須成分である上記化合物の他に通常の皮膚化粧料において使用される、油分、顔料、界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、色素等の他に、ブトパミン、イソプロテレノール等のβアドレナリン作用興奮剤、ヨヒンビン、エルゴトキシン等のα2アドレナリン作用抑制剤、テオフィリン、カフェイン等のキサンチン誘導体、ミルリノン、アムリノン等のビピリジン誘導体、肥満の抑制又は防止作用を有するラズベリーケトンやジンゲロン等の公知物質等を配合することができる。
本発明の飲食品組成物の場合には、チューインガム、チョコレート、キャンディ、グミゼリー、飲料、スープ、アイスクリーム、麺類、ベーカリー食品、アルコール飲料等に配合することができる。
本発明の飲食品組成物には、必須成分である上記化合物の他に通常の飲食品組成物において使用される糖類、香料、乳化剤、乳製品、蛋白質、安定剤、着色料、酸味料、油脂、穀類、卵類、ガムベース、カフェインなどのキサンチン誘導体、ハイドロキシクエン酸、肥満の抑制又は防止作用を有するカプサイシン、ラズベリーケトンやジンゲロン等の公知物質を配合することができる。
本発明には、上記の痩身用皮膚化粧料や飲食品組成物を使用した痩身方法も包含される。
本発明の脂肪分解促進剤を含有する医薬品の場合には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤等の経口投与製剤、注射剤、外用剤等の非経口投与製剤の形態とすることができる。
本発明の脂肪分解促進剤を含有する医薬品には、必須成分である前記一般式(1)で表される化合物をそのまま本発明の薬剤として用いることもできる。また、経口投与製剤の場合、必要に応じて、賦形剤、崩壊剤等の通常の医薬添加物、例えば、乳糖、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、トウモロコシでんぷん、結晶セルロース、カルメロースカルシウム、無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム及び/又はステアリン酸マグネシウム等を加えて常法により製剤化して用いることもできる。
また、非経口投与製剤である注射剤の場合、必要に応じてマンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース等の等張化剤、亜硫酸ナトリウム等の安定化剤、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル等の保存剤等の他、溶解補助剤、無痛化剤やpH調整剤等を加えて常法により製剤化して用いることもできる。
【0006】
以下に試験例を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、脂肪分解促進効果は下記の脂肪分解試験及び皮下脂肪分解試験にて評価した。また、抗肥満効果は高脂肪食負荷マウスに対する体重増加抑制試験及び高脂肪食負荷ラットに対する体脂肪増加抑制試験、高脂血症治療効果は高脂肪食負荷ラットに対する高脂血症治療評価試験、脂肪肝治療効果は高脂肪食負荷マウスに対する脂肪肝治療評価試験にて評価した。ラズベリーケトン及びジンゲロンは市販のものを用いた。
【0007】
〔合成例1〕4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンの合成
ジンゲロン[4−(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン]をジクロロメタンに溶解した後、−30℃にて1.0mol/Lの三臭素化ホウ素/ジクロロメタン溶液を加えた。攪拌下、室温まで徐々に反応系の温度を上げた後、室温下でさらに2時間反応させた。氷水を加えた後、2%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。酢酸エチルにて有機層を抽出した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。有機層を減圧下に濃縮して得た褐色オイルをシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=7/3)にて精製することにより、本発明で用いる4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを得た。
【0008】
〔合成例2〕4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールの合成例
ジンゲロン[4−(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン]を水素化ホウ素ナトリウムにて還元することにより得た、4−(3'−メトキシ−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールを用い、合成例1と同様の方法で4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールを得た。
【0009】
〔試験例1〕(脂肪分解試験)
(1)試験方法
ロッドベルの方法〔Rodbell,M.,J.Biol.Chem.,239,375(1964)〕により、ウィスター系雄性ラット(体重150〜200g)の副睾丸脂肪組織からコラゲナーゼ溶液を用いて遊離脂肪細胞を調製した。被験物濃度が100μg/mLとなるよう調製した牛血清アルブミン及びノルエピネフリン(最終濃度0.05μg/mL)を含むハンクス緩衝液中に上記細胞を加え、37℃にて1時間反応した。遊離した脂肪酸を抽出し、銅試薬及び発色試薬により脂肪酸量を定量した。
脂肪分解促進率(%)=[A/B]×100
A:被験物添加時の脂肪酸量
B:コントロール(被験物無添加)の脂肪酸量
(2)試験結果
結果を第1表に示す。
【表1】

第1表から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤である4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンは、コントロールに比べて脂肪分解を有意に促進した。
【0010】
〔試験例2〕(皮下脂肪分解試験)
(1)試験方法
ウィスター系ラット(雄、7〜9週齢)の腹部を刈毛後、同部皮膚を皮下脂肪組織とともに摘出し、直径2cmのフランツ型拡散セルに装着した。上部セル内の皮膚角質層上に、後記実施例1〜2、比較例及び参考例の皮膚化粧料0.5gを均一に塗布し、皮下脂肪組織側の下部セルにpH7.2リン酸緩衝生理食塩液を満たした。セルを37℃に保ち、6時間放置後、下部セルより緩衝溶液を採取し、溶液中に遊離したグリセロール量を酵素法(ベーリンガー・マンハイム社製 F−キット;グリセロール)にて測定した。なお、測定は5回行いその平均値で示した。
(2)試験結果
結果を第2表に示す。
【表2】

第2表から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤配合製剤(後記実施例1〜2)を塗布することで、未配合製剤(後記比較例)の場合よりも脂肪分解物である遊離グリセロール量が顕著に増加した。また、脂肪分解促進剤であるラズベリーケトン配合製剤(後記参考例)も遊離グリセロール量は高値を示したが、本発明の脂肪分解促進剤配合製剤(後記実施例1〜2)ではそれよりもさらに遊離グリセロールが高値であった。
【0011】
〔試験例3〕(高脂肪食負荷マウスに対する体重増加抑制試験)
(1)試験方法
ICR系マウス(雄性、5週齢)7匹(平均体重31g)を1群として用いた。3群のマウスに、普通飼料投与群には普通固形飼料(オリエンタル酵母株式会社製、MF)のみを、また本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群には第3表に示した4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン配合高脂肪食飼料、高脂肪食飼料をそれぞれ3週間与えた。試験開始時及び開始後3週目に体重を測定した。なお、飼料及び水は自由摂取させた。
【表3】

(2)検定方法
結果の判定は、高脂肪食飼料投与群と本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群とのそれぞれの体重を比較して行った。また、試験成績における検定は一元配置分散分析(one way−ANOVA)を行い、有意な差が認められたため多重比較検定(post−hoc test)を行った。
(3)試験結果
結果を第4表に示す。
【表4】

第4表から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群の体重増加は、未配合高脂肪食飼料投与群(高脂肪食投与群)と比べて有意に抑制された。
【0012】
〔試験例4〕(高脂肪食負荷ラットに対する体脂肪増加抑制試験)
(1)試験方法
スプラーグ・ドーリー(Sprague−Dawley)系ラット(雌性、9週齢)を8匹を1群として用いた。3群のラットに、普通飼料投与群には普通固形飼料(日本クレア株式会社製、CE−2)のみを、また本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群には第5表に示した4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン配合高脂肪食飼料、高脂肪食飼料をそれぞれ6週間与えた。その後、剖検を行い、下腹部周囲皮下脂肪、子宮周囲脂肪と後腹膜脂肪及び腸間膜脂肪を摘出して当該脂肪重量を測定した。なお、飼料及び水は自由摂取させた。
【表5】

(2)検定方法
結果の判定は、高脂肪食飼料投与群と本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群とのそれぞれの下腹部周囲皮下脂肪、子宮周囲脂肪と後腹膜脂肪及び腸間膜脂肪を比較して行った。また、有意差検定はダネット(dunnett)検定を用いた。
(3)試験結果
結果を第1図〜第3図に示す。
第1図〜第3図から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群の下腹部周囲皮下脂肪、子宮周囲脂肪と後腹膜脂肪及び腸間膜脂肪の重量は、いずれも未配合高脂肪食飼料投与群(高脂肪食飼料投与群)と比べて有意に減少された。
【0013】
〔試験例5〕(高脂肪食負荷ラットに対する高脂血症治療評価試験)
(1)試験方法
試験例4と同様に試験を行った。試験開始時および開始後1週毎に採血を行い、血清トリグリセリド値を測定した。なお、飼料及び水は自由摂取させた。
(2)検定方法
結果の判定は、高脂肪食飼料投与群と本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群とのそれぞれの血清トリグリセリド値を比較して行った。また、有意差検定はダネット(Dunnett)検定を用いた。
(3)試験結果
結果を第4図に示す。
第4図から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群では、血清トリグリセリド値の上昇が、未配合高脂肪食飼料投与群(高脂肪食飼料投与群)と比べて有意に抑制された。
【0014】
〔試験例6〕(高脂肪食負荷マウスに対する脂肪肝治療評価試験)
(1)試験方法
ICR系マウス(雄性、5週齢)6匹を1群として用いた。2群のマウスには、第3表に示した高脂肪食飼料を6週間与えた。その後、本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群、高脂肪食飼料投与群に、第3表に示した4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン配合高脂肪食飼料、高脂肪食飼料をそれぞれ5週間与えた。また、普通飼料投与群には普通固形飼料(オリエンタル酵母株式会社製、MF)を11週間与えた。なお、飼料及び水は自由摂取させ、試験終了日には18時間絶食した。その後、剖検を行い、肝臓の外側左葉を生理食塩液にて灌流後、灌流部位の一部を採取した。採取した肝臓100mgを生理食塩液0.9mLで10%ホモジネート液を作製した。10%肝ホモジネート液0.1mLにクロロホルム/メタノール(2:1v/v)を2.4mL加え、2分間振盪混和し、室温で800×g、10分間遠心分離した。得られたクロロホルム層を試験管に0.1mL分取した。その後、窒素ガス通気下で70℃に設定したドライブロックバス(井内盛栄堂製)を用いて試験管内のクロロホルムを蒸発させ、抽出物を乾固させた。そして最終的に、酵素法により和光純薬工業株式会社製のキットを用いて、吸光度により肝臓中トリグリセリド値を算出した。
(2)検定方法
結果の判定は、高脂肪食飼料投与群と本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群とのそれぞれの肝臓中トリグリセリド値を比較して行った。また、試験成績における検定は一元配置分散分析(one way−ANOVA)を行い、有意な差が認められたため多重比較検定(post−hoc test)を行った。
(3)試験結果
結果を第6表に示す。
【表6】

第6表から明らかなように、本発明の脂肪分解促進剤配合高脂肪食飼料投与群では、肝臓中トリグリセリド値の増加が、未配合高脂肪食飼料投与群(高脂肪食飼料投与群)と比べて有意に抑制された。
【0015】
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0016】
<実施例1〜2、比較例及び参考例(ジェル状痩身用皮膚化粧料)>
第7表に示す組成で、常法によりA、B各成分を個別に混合溶解後、B成分をA成分に添加し攪拌することにより、ジェル状痩身用皮膚化粧料を調製した。
【表7】

【0017】
<実施例3(チューインガム)>
下記組成のチューインガムを調製した。
ガムベース 20
マルチトール 73.5
還元水あめ 4
アップル香料 0.5
ガルシニアエキス*1 1
4−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)
−ブタン−2−オン 1

*1;ガルシニアエキス:
インターヘルス社製「シトリマックスHCA−500−F」(ヒドロキシクエン酸;HCA47.5%含有)
【0018】
<実施例4(錠菓)>
下記組成で錠菓を調製した。
ソルビトール 72.9
ショ糖脂肪酸エステル 4
ラズベリー香料 0.1
ガルシニアエキス*1 3
4−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン 10
【0019】
<実施例5(錠剤)>
(処方)
4−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン 1重量部
乳糖 93重量部
合成ケイ酸アルミニウム 5重量部
ステアリン酸マグネシウム 1重量部

(操作)
上記の各成分を混合し、その混合物を打錠機で1錠300mgに打錠して1錠中に4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン30mgを含む錠剤を得た。
【0020】
<実施例6(錠剤)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールに代えた以外は、実施例5と同様にして錠剤を得た。
【0021】
<実施例7(錠剤)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを4−(3'−グルコシル−4'−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンに代えた以外は、実施例5と同様にして錠剤を得た。
【0022】
<実施例8(スキンローション)>
(処方)
4−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン 3.0重量%
エタノール 10.0重量%
モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)
ソルビタン 5.0重量%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.01重量%
香料 0.05重量%
グリセリン 5.0重量%
キサンタンガム 0.1重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.1重量%
精製水 残量

(操作)
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを上記のグリセリンから精製水までの各成分中に均一に溶解した後、得られた混合物と上記エタノールから香料までの各成分とを均一に混合撹拌し、分散してスキンローションを得た。
【0023】
<実施例9(スキンローション)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンの配合量を0.5重量%とする以外は実施例8と同様にしてスキンローションを得た。
【0024】
<実施例10(スキンローション)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンの配合量を0.01重量%とする以外は実施例8と同様にしてスキンローションを得た。
【0025】
<実施例11(スキンローション)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールに代えた以外は実施例8と同様にしてスキンローションを得た。
【0026】
<実施例12(スキンローション)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールの配合量を0.5重量%とする以外は実施例11と同様にしてスキンローションを得た。
【0027】
<実施例13(スキンローション)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールの配合量を0.01重量%とする以外は実施例11と同様にしてスキンローションを得た。
【0028】
<実施例14(スキンクリーム)>
(処方)
4−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)
−ブタン−2−オン 3.0重量%
グリセリンモノステアレート 2.0重量%
蜜ロウ 1.0重量%
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(6)
ソルビタン 1.0重量%
ワセリン 4.0重量%
流動パラフィン 12.0重量%
N−ステアロイル−L−グルタミン酸
ナトリウム 5.0重量%
カラギーナン 0.3重量%
メチルパラベン 0.1重量%
精製水 残量

(操作)
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン及び上記グリセリンモノステアレートから流動パラフィンまでの各成分を上記N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムエタノールから精製水までの各成分に混合したものを、各々均一に加熱溶解して温度を80℃にした。次いで、上記グリセリンモノステアレートから流動パラフィンまでの各成分中に4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン及び上記N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムエタノールから精製水までの各成分の混合物を注入し、乳化した後、撹拌しながら冷却し、スキンクリームを得た。
【0029】
<実施例15(スキンクリーム)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンの配合量を0.5重量%とする以外は実施例14と同様にしてスキンクリームを得た。
【0030】
<実施例16(スキンクリーム)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンの配合量を0.01重量%とする以外は実施例14と同様にしてスキンクリームを得た。
【0031】
<実施例17(スキンクリーム)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールに代えた以外は実施例14と同様にしてスキンクリームを得た。
【0032】
<実施例18(スキンクリーム)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールの配合量を0.5重量%とする以外は実施例17と同様にしてスキンクリームを得た。
【0033】
<実施例19(スキンクリーム)>
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オールの配合量を0.01重量%とする以外は実施例17と同様にしてスキンクリームを得た。
【0034】
以上の実施例1〜19の皮膚化粧料、飲食品、医薬品は、すべてが本発明の効果を顕著に奏するものであった。
【産業上の利用の可能性】
【0035】
一般式(1)で表される化合物は、前記試験例に示されるように、脂肪分解促進作用、当該作用に基づく体重増加抑制作用、血清トリグリセリド低下作用及び肝臓中トリグリセリド低下作用を奏するものであり、また、特異な芳香や味を有せず汎用特性に優れ、脂肪分解促進剤としてきわめて有用なものである。従って、本発明が、全身あるいは局所の脂肪組織を減少させ、肥満の抑制又は防止、肥満体質の改善に有効な脂肪分解促進剤及びそれを含有する痩身用皮膚化粧料、飲食品組成物並びにその作用に基づく痩身方法及び医薬用途を提供するものであることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)

(式中、Zは下式(2)、(3)

で示されるいずれかの原子団を示し;式中、R1、R2は水素原子、もしくはグルコース残基である。但し、R1又はR2の少なくともいずれか一方は水素原子である。)
で示される化合物を有効成分とすることを特徴とする脂肪分解促進剤。
【請求項2】
4−(3',4'−ジヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オンを有効成分とする請求の範囲第1項記載の脂肪分解促進剤。
【請求項3】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を含有する痩身用皮膚化粧料。
【請求項4】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を含有する飲食品組成物。
【請求項5】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を用いる痩身方法。
【請求項6】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を含有し、その作用に基づく抗肥満薬。
【請求項7】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を含有し、その作用に基づく高脂血症治療薬。
【請求項8】
請求の範囲第1項または第2項記載の脂肪分解促進剤を含有し、その作用に基づく脂肪肝治療薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222356(P2010−222356A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86884(P2010−86884)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2002−592910(P2002−592910)の分割
【原出願日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】