説明

脚式ロボット、その制御方法、及び制御プログラム

【課題】不整地路面に足部を確実に着地させること。
【解決手段】脚式ロボット1は、胴体10と、胴体10に連結された脚部20と、脚部20の下端に設けられた足部26と、歩容データ2aを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された歩容データ2aに基づいて、脚部20の関節を駆動制御する制御手段と、足部26の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、接触検出手段により検出された足部26の足裏と路面との接触位置を中心にして、足部26をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、足部26の足裏の他の部分を路面に接地させるように歩容データ2aを修正する歩容データ修正手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地路面に足部を確実に着地できる脚式ロボット、その制御方法及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2足歩行ロボットなどの脚式ロボットが実環境下で作業を行うには、凹凸やうねりが存在する路面での安定した歩行が求められている。特に、実環境下では路面の凹凸による着地衝撃や安定領域が確保できないことなどが歩行を不安定にさせる原因として考えられている。そこで、未知の不整地における歩行安定化を目的として様々な研究開発が行われている。
【0003】
例えば、不整地歩行の際に、目標全床反力中心点まわりと目標各足平床反力中心まわりに、夫々所定角度回転させるように足部の位置・姿勢を決定する脚式ロボットが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−277969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す脚式ロボットにおいては、足部の位置姿勢を路面の凹凸に倣うように修正できるが、姿勢を修正する際に、その位置が水平方向にずれるため、例えば、足部が段差の淵付近に位置している場合に、段差から滑落する虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、不整地路面に足部を確実に着地させることができる脚式ロボット、その制御方法、及び制御プログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、歩容データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御手段と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットであって、前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する歩容データ修正手段を備える、ことを特徴とする脚式ロボットである。本態様によれば、不整地路面に足部を確実に着地させることができる。
【0008】
この一態様において、前記足部の足裏には、前記路面と接触する3個の凸状部が設けられていてもよい。足部を路面に3点で接地させることで、足部を安定的に接地させることができる。
【0009】
この一態様において、前記歩容データ修正手段は、前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏の第1凸状部と路面との接触点を中心にして前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、第2凸状部が路面と接地すると前記第1及び第2凸状部と路面との接触点を結ぶ線を中心にして前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、第3凸状部を路面に接地させるように前記歩容データを修正してもよい。
【0010】
この一態様において、前記接触検出手段は、光信号を送出する光学式距離センサと、前記光学式距離センサからの光信号を反射する反射板と、前記光学式距離センサ及び反射板を覆うカバー部材と、前記反射板を支持し上下方向へ移動可能な支持軸と、該支持軸を付勢するバネ部材と、前記支持軸に連結され足裏に設けられ路面に接地するスパイク部と、を有していてもよい。これにより、接触検出手段の軽量化及び信頼性向上を図ることができる。
【0011】
この一態様において、前記接触検出手段は、前記足部の爪先側に2個及び踵側に1個設けられていてもよい。
【0012】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、予め設定された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御部と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットの制御方法であって、前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する、ことを特徴とする脚式ロボットの制御方法であってもよい。
【0013】
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、予め設定された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御部と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットの制御プログラムであって、前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする脚式ロボットの制御プログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不整地路面に足部を確実に着地させることができる脚式ロボット、その制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る脚式ロボットの概略的な構成を示す摸式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る脚式ロボットの概略的なシステム構成をブロック図である。
【図3】(a)従来の4点接地型の足部機構における安定領域を示す図である。(b)本発明の実施の形態1に係る3点接地型の足部機構における安定領域を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る接触検出部の概略的構成を示す図である。
【図5】(a)足部の爪先側に設けられたスパイク部の一例を示す図である。(b)足部の踵側に設けられたスパイク部の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る3点接地型の足部機構を示す斜視図である。
【図7】(a)従来の足裏倣い制御を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1に係る足裏倣い制御を説明するための図である。
【図8】実験室内の擬似不整地において脚式ロボットを歩行させたときのZMP軌道を示す図である。
【図9】傾斜路面において脚式ロボットを歩行させたときの足首関節におけるロール軸及びピッチ軸の回転角度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る脚式ロボットの概略的な構成を示す摸式図である。図2は、本実施の形態1に係る脚式ロボットの概略的なシステム構成をブロック図である。
【0017】
本実施の形態1に係る脚式ロボット1は、胴体10と、胴体10に連結された脚部20と、脚部20の下端に設けられた足部26と、歩容データ2aを記憶する記憶部2と、歩容データ2aを修正する歩容データ修正部3と、脚部20の各関節21、23、25を各関節21、23、25に設けられたアクチュエータ4を介して駆動制御する制御部5と、足部26の足裏と路面との接触を検出する接触検出部6と、胴体10の鉛直方向に対する傾斜角度(姿勢角度)を検出する姿勢センサ7と、胴体10の加速度を検出する加速度センサ8と、を備えている。
【0018】
脚部20は、例えば、股関節21、膝関節23、足首関節25、大腿リンク22、脛リンク24、及び足部26を有している。図1において、大腿リンク22と脛リンク24は、直線で模式化して示してある。股関節21は、胴体10と大腿リンク22をピッチ軸、ヨー軸、及びロール軸周りに揺動可能に連結している。膝関節23は、大腿リンク22と脛リンク24をピッチ軸周りに揺動可能に連結している。足首関節25は、脛リンク24と足部26をロール軸及び/又はピッチ軸周りに揺動可能に連結している。足部26は、例えば、板状の部材であり、足部26の裏面(足裏面)は平面となっている。なお、上記脚部20の構成は一例であり、これに限らず、例えば、関節の数及び位置は任意でよい。
【0019】
制御部5は、制御手段の一具体例であり、記憶部2に予め記憶された歩容データ2aに基づいて、脚部20の各関節21、23、25を回転駆動する各アクチュエータ4を夫々制御して、上記足裏倣い制御及び倒立振子制御を行う。ここで、歩容データ2aは、例えば、シミュレーション等によって脚式ロボット1を安定的に歩行させることができるように作成された歩行データである。
【0020】
即ち、歩容データ(例えば、目標の胴体位置、目標の胴体姿勢角、目標の足部位置、目標の足部姿勢角などの時系列データ)2aは、脚式ロボット1のZMP位置が路面に接地した足部26の足裏で囲まれた凸包内となる関係を満足するように設定されている。
【0021】
制御部5は、脚式ロボット1が不整地を歩行する際に、足部26に設けられた接触検出部6を用いて足部26の足裏を路面の凹凸に倣わせる足裏倣い制御と、姿勢センサ7を用いて脚式ロボット1の姿勢を倒立状態に維持させる倒立振子制御を組み合わせることで、安定化制御を実現している。
【0022】
制御部5は、例えば、上記倒立制御において、実際の胴体位置と目標の胴体位置との偏差、及び、実際の胴体姿勢角と目標の胴体姿勢角との偏差が、夫々、0となるようなフィードバック制御を行う。同様に、制御部5は、上記足裏倣い制御において、接地面から見た相対的な実際の足部位置と目標の足部位置との偏差、及び、実際の足部姿勢角と目標の足部姿勢角との偏差が、夫々、0となるようなフィードバック制御を行う。
【0023】
歩容データ修正部3は、歩容データ修正手段の一具体例であり、接触検出部6により検出された足部26の足裏と路面との接触位置を中心にして、足部26をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、足部26の足裏の他の部分を路面に接地するように、記憶部2に記憶された歩容データ2aを修正する。
【0024】
例えば、各足部26の足裏には、路面と接触する第1乃至第3凸状部が設けられている。
歩容データ修正部3は、まず、接触検出部6により検出された足部26の足裏の第1凸状部と路面との接触点を中心にして足部26をロール軸又はピッチ軸周りに回転させ、次に、第2凸状部が路面と接地すると第1及び第2凸状部と路面との接触点を結ぶ線を中心にして足部26をロール軸又はピッチ軸周りに回転させ、第3凸状部を路面に接地させるように、記憶部2に記憶された歩容データ2aを修正する。
【0025】
なお、記憶部2、制御部5、及び歩容データ修正部3は、例えば、演算装置内に構成されている。また、演算装置は、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって実行される演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)と、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、を有するマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。これらCPU、ROM、及びRAMは、データバスによって相互に接続されている。記憶部2は、上記ROMやRAMなどにより構成することができる。
【0026】
姿勢センサ7は、例えば、胴体10の角速度を検出するジャイロセンサと、ジャイロセンサの出力(角速度)を積分する積分器と、重力加速度ベクトルを検出する3軸加速度センサと、で構成されている。
【0027】
各関節21、23、25には、サーボモータなどのアクチュエータ4が内蔵されており、制御部5から送信される制御信号に基づいて駆動制御される。各アクチュエータ4を駆動することによって、各関節21、23、25に連結されたリンク22、24、26同士を揺動させることができる。
【0028】
接触検出部6は、接触検出手段の一具体例であり、足部26の爪先側に2個および踵側に1個の合計3個設けられている。各足部26は、3個の接触検出部6を路面に夫々接地させて歩行を行う3点接地型の足部機構として構成されている。ここで、従来の4点接地型の足部機構においては、不整地歩行中に4個全ての接触検出部を路面に接地させることは難しく、支持多角形が一意に定まらない場合がある。
【0029】
このため、従来の4点接地型の足部機構においては、どの接触検出部が最初に接地したかを検知し、それに応じて足部の姿勢を制御し、接地する3点を能動的に選択することで安定領域を確保している。しかしながら、この手法の場合、図3(a)に示す如く、設定ZMPをそれぞれの支持多角形が形成する安定領域の共通部分にしか設定できず、設定ZMPから安定領域の境界までの距離、すなわち足部の対角線方向における安定余裕が小さくなっている。
【0030】
一方、本実施の形態1においては、足部26を3点接地型の足部機構にすることで、図3(b)に示す如く、設定ZMPから安定領域の境界までの距離を大きくし、安定余裕を増加させることができるため、足部26を路面に安定的に接地させることができる。また、支持多角形は3点接地型であれば一意に定まるので変更後も安定領域を確保することができる。
【0031】
図4は、本実施の形態1に係る接触検出部の概略的構成の一例を示す図である。接触検出部6は、赤外線センサなどの光学式距離センサ61と、光学式距離センサ61からの光信号を反射する反射板62と、光学式距離センサ61及び反射板62を覆うカバー部材63と、反射板62を支持し上下方向へ移動可能な支持軸64と、支持軸64を上下方向へ付勢するバネ部材65と、路面に接地するスパイク部66と、スパイク部66を支持し上下方向へ移動可能な支持軸67と、スパイク部66の支持軸67を上下方向へ摺動可能に支持するブッシュ部68と、を有している。
【0032】
各スパイク部66が路面に接地すると、支持軸67、64を介して反射板62が上方に移動することで、各光学式距離センサ61は各スパイク部66の押し込み量を検出することができる。また、各スパイク部66が路面に接地したときに一定量だけ足裏側へ押し込まれることにより、足部26が路面に接地したときのその衝撃を緩和している。
【0033】
ここで、接触検出部6の軽量化及び信頼性向上を図る目的で、接触検出部6は、光学式距離センサ61、反射板62等からなるフォトリフレクタ式として構成され、さらに、カバー部材63を設けることでセンサ部に対する外乱光の遮断を行っている。
【0034】
各スパイク部66は、凸状部の一具体例であり、路面との接地時の安定性を考慮して下面である接地面は略平面となっている。また、各スパイク部66の下面には、窪みが形成されており、路面の凸面を捉えて滑落を防ぐことができるように構成されている。
【0035】
さらに、足部26の爪先側には、略円柱形に形成された2個のスパイク部66が設けられている(図5(b))。一方、足部26の踵側には、着地時のYaw回転を防止するために略馬蹄形のスパイク部66が1個設けられている(図5(a))。また、足部26の踵接地への対応のために、踵側のスパイク部66にはフィレットが設けられている。
【0036】
なお、足部26の踵接地時に生じる大きな衝撃による脚式ロボット1の姿勢崩れを防止するために、スパイク部66は衝撃吸収材(ソルボセイン(登録商標)など)から構成されている。スパイク部66の表面素材としては、表面の細かい模様の窪みにより大きな摩擦が作用しかつ耐久性が高いという理由から、厚さ3[mm]のスタッドレスシートが用いられている。
【0037】
ここで、未知の不整地環境を移動する際には、レーザレンジファインダやCCDカメラなどの外界センサで障害物や路面形状を検出する方法が考えられる。しかしながら、これら外界センサの計測精度は測定距離の1%程度であり、センサの取付位置から路面までの距離を考えると、外界センサを搭載した脚式ロボット1においても20[mm]程度の未知の凹凸に適応できる能力が必要になると考えられる。そこで、本実施の形態1において、スパイク部56の厚さを20[mm]程度とし、接地点に厚みを持たせることで、未知の凹凸路面への適応能力を向上させている。
【0038】
図6は、本実施の形態1に係る3点接地型の足部機構を示す斜視図である。図6に示すように、本実施の形態1に係る3点接地型の足部26は、例えば、略三角形状に形成され、外形167[mm]×244[mm]、重量1.3[kg]となっており、足部26の足先側の両端に接触検出部6、6が夫々設けられ、踵側の端部に接触検出部6が設けられている。これにより、従来の4点接地型の足部と比較して、約14%軽量化されている。このように、本実施の形態1に係る3点接地型の足部機構は、従来の4点接地型の足部機構では不可能だった踵から接地するという人間により近い歩行動作を再現できる。
【0039】
ここで、従来の脚式ロボットが不整地を歩行する場合において、例えば、足部の関節の真下位置X1を中心にして足部を回転させ接地させる足裏倣い制御を行っている(図7(a))。この場合、足部を回転させ路面に適応させるときに、足部が並進方向に変位Δxが発生するため、足部が凹凸路面から滑落する虞がある。
【0040】
一方で、本実施の形態1に係る脚式ロボット1において、制御部5は、歩容データ修正部3により修正された歩容データ2aに基づいて、接触検出部6により検出された足部26の足裏のスパイク部66と路面との接触位置X2を中心にして、足部26をロール軸或いはピッチ軸周りに回転させ、足部26の足裏の他のスパイク部66を路面に接地させるようにして足裏倣い制御を行う(図7(b))。これにより、上記足裏倣い制御実行時において、足部26が並進方向に変位しないため、足部26が凹凸路面から滑落するのを防止できる。
【0041】
例えば、制御部5は、歩容データ修正部3により修正された歩容データ2aに基づいて、接触検出部6により検出された足部26の爪先右側のスパイク部66と路面との接触点を中心にして足部26をピッチ軸周りに回転させ、足部26の踵側のスパイク部66を路面に接地させ、爪先右側及び踵側のスパイク部66と路面との接触線を中心にして足部26をロール軸周りに回転させ、足部26の爪先左側のスパイク部66を路面に接地させる。
【0042】
図8は、最大高さ20[mm]までの障害物を設置した実験室内の擬似不整地において、本実施の形態1に係る脚式ロボットを歩行させたときのZMP軌道を示す図である。図8に示す如く、本実施の形態1に係る脚式ロボット1によれば、各接触検出部6のスパイク部66で障害物を踏んだ場合でも安定した支持多角形を確保でき、ZMPが安定領域内に収まっていることが分かる。
【0043】
また、図9は、傾斜路面において、本実施の形態1に係る脚式ロボットを歩行させたときの右側の足首関節におけるロール軸及びピッチ軸周りの回転角度を示す図である。ここで、傾斜路面の傾斜角度を7.0[deg]とし、脚式ロボット1が3歩目から完全に傾斜を踏み始め、7〜8歩目で傾斜を下り終えるように、傾斜板を設置している。図9に示すように、ピッチ軸周りに略7.0[deg]の修正量が確認でき、脚式ロボット1の安定的な歩行が実現されていることが分かる。
【0044】
以上、本実施の形態1に係る脚式ロボット1において、接触検出部6により検出された足部26の足裏と路面との接触位置を中心にして、足部26をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、足部26の足裏の他の部分を路面に接地させる。これにより、足部26を不整地路面に接地させたときにその凹凸から滑落することなく、不整地路面に足部26を確実に着地させることができる。また、足部26を3点接地型の足部機構とすることで、設定ZMPから安定領域の境界までの距離を大きくし、安定余裕を増加させることができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0046】
例えば、上記実施の形態において、脚式ロボット1は、2足歩行ロボットに適用されているが、これに限らず、例えば、4足歩行ロボットにも適用可能であり、脚部を有する任意の歩行ロボットに適用可能である。
【0047】
さらに、上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、上記制御部5及び歩容データ修正部3が実行する処理を、上記CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0048】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。
【0049】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0050】
1 脚式ロボット
2 記憶部
3 歩容データ修正部
4 アクチュエータ
5 制御部
6 接触検出部
7 姿勢センサ
8 加速度センサ
10 胴体
20 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、歩容データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御手段と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットであって、
前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する歩容データ修正手段を備える、ことを特徴とする脚式ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の脚式ロボットであって、
前記足部の足裏には、前記路面と接触する3個の凸状部が設けられている、ことを特徴とする脚式ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脚式ロボットであって、
前記歩容データ修正手段は、前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏の第1凸状部と路面との接触点を中心にして前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、第2凸状部が路面と接地すると前記第1及び第2凸状部と路面との接触点を結ぶ線を中心にして前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、第3凸状部を路面に接地させるように前記歩容データを修正する、ことを特徴とする脚式ロボット。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の脚式ロボットであって、
前記接触検出手段は、光信号を送出する光学式距離センサと、前記光学式距離センサからの光信号を反射する反射板と、前記光学式距離センサ及び反射板を覆うカバー部材と、前記反射板を支持し上下方向へ移動可能な支持軸と、該支持軸を付勢するバネ部材と、前記支持軸に連結され足裏に設けられ路面に接地するスパイク部と、を有する、ことを特徴とする脚式ロボット。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の脚式ロボットであって、
前記接触検出手段は、前記足部の爪先側に2個及び踵側に1個設けられている、ことを特徴とする脚式ロボット。
【請求項6】
胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、予め設定された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御部と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットの制御方法であって、
前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する、ことを特徴とする脚式ロボットの制御方法。
【請求項7】
胴体と、該胴体に連結された脚部と、該脚部の下端に設けられた足部と、予め設定された歩容データに基づいて、前記脚部の関節を駆動制御する制御部と、前記足部の足裏と路面との接触を検出する接触検出手段と、を備えた脚式ロボットの制御プログラムであって、
前記接触検出手段により検出された前記足部の足裏と路面との接触位置を中心にして、前記足部をロール軸及び/又はピッチ軸周りに回転させ、前記足部の足裏の他の部分を路面に接地させるように前記歩容データを修正する処理をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする脚式ロボットの制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−196743(P2012−196743A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62856(P2011−62856)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年9月22日発行の「社団法人 日本ロボット学会」が主催する研究集会の予稿集「第28回 日本ロボット学会学術講演会 講演概要集」に掲載
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】