説明

腐食を軽減する方法

【課題】腐食を軽減する方法を提供する。腐食メーターを使用することによりガラス形成ラインの洗浄水システムの腐食を軽減する方法が提供される。前記方法を利用したガラス繊維製造プロセスも提供される。
【解決手段】ガラス繊維の製造プロセスで腐食を軽減する方法であって:ポリマーバインダー、水および鉱酸を含み、pH4未満のフィード流れ(2)を含むガラス繊維結合システムを提供し;フィード流れを形成チャンバー(5)中でガラス繊維にスプレーし;形成チャンバー(5)内にスプレーされた洗浄水を洗浄水プロセスライン(12、21)、洗浄水収集容器中(18)を介してリサイクルする洗浄水システムにおいて;洗浄水プロセスラインまたは洗浄水収集容器の内部で測定された腐食速度が設定値を超える場合、塩基を洗浄水に添加することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食メーターを用いることにより、ガラス繊維形成ラインの洗浄水システムの腐食を軽減する方法、ならびに前記方法を用いた繊維製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維産業において、ガラス繊維マット形成エリアにおいて、溶融ガラス繊維上に希釈バインダー溶液がスプレーされる。ガラス繊維に付着しない過剰のスプレーされたバインダー溶液、ならびにバインダーでコートされたガラス繊維は、ガラス繊維マット形成エリアの内部表面上に集まる。この過剰のバインダーおよびガラス繊維を洗浄水ですすぎ、リサイクルのために再循環システムに向かわせる。スプレーされたガラス繊維をチェーンベルトによりガラス繊維マット形成エリアから輸送する。過剰のバインダーおよびコートされたガラス繊維はチェーンベルト上にも集まり、ガラス繊維マットが形成セクションを出て行った後に、チェーンベルトから洗浄しなければならない。チェーンベルトを洗浄するために用いられる洗浄水も集められ、リサイクルされる。少量のリサイクルされた洗浄水は、バインダーを希釈する目的でバインダーフィード中にリサイクルされる。洗浄水システムの使用は、ガラス繊維、および腐食性物質を含有するバインダーの蓄積による装置の損傷および閉塞を防止し、これにより装置洗浄、修復および交換に関連する休止時間を制限する助けをする。
【0003】
ポリカルボン酸系ガラス繊維バインダー樹脂は、ガラス産業において、例えば断熱材、天井タイル、および他の建築用製品をはじめとする様々な用途にしばしば用いられる。これらの種類のバインダーは、強力な機械的特性、環境制御装置に対する信頼性の減少、ならびに他の利点をもたらす。現在利用可能な洗浄水システムに一般的に関連する問題は、ポリカルボン酸バインダー、および前記バインダーを洗浄するために用いられる洗浄水が、バインダー除去のサイクル数が増大するにつれて酸性になることである。この酸性洗浄水は、典型的には炭素鋼で作られている洗浄水装置を含むプロセス装置を腐食させ、これにより装置の耐用年数が制限される。この結果、装置の交換および休止時間のために製造コストがかさむ。
この腐食問題に対処するために様々な試みがなされてきた。例えば、形成および洗浄水装置における炭素鋼がステンレス鋼と置換された。しかしながら、ステンレス鋼装置は、炭素鋼で作られている装置と比較して高価である。別の提案されている解決法は、洗浄水が形成装置を通って導入されるサイクルの量を減少させることである。しかしながら、これは水の使用量および廃水除去の点でコストの増大につながる。米国特許出願公開番号2003/0221457は、閉鎖ループ洗浄水システムを使用し、洗浄水タンク中のpHプローブが洗浄水のpHが8.0より低いことを示した場合に、自動的に塩基を洗浄水に添加することにより洗浄水pHを制御することにより、ガラス繊維断熱材を形成するために使用される装置の表面の酸腐食を軽減する方法を開示している。ひとつには、これは洗浄水の腐食性が単に酸の存在によるものでなく、洗浄水のpHによるものであるとの事実を考慮していないので、これは、腐食防止のための特に好適な手段ではない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0221457号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ガラス繊維製造プロセスの形成および洗浄水装置における腐食を軽減する有効な方法が必要とされている。本発明者らは、腐食メーターベースのコントローラーを利用した制御システムを用いることにより、このような形成および洗浄水装置の腐食を軽減できることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様は、ガラス繊維製造プロセスにおける腐食を軽減するための方法であって:(a)ポリマーバインダー、水、および強酸を含むフィード流れを含むガラス繊維結合システムを提供し(ここにおいて、前記バインダーは少なくとも1つのポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマーを含み、前記フィード流れのpHは4未満である);(b)前記フィード流れを形成チャンバー中でガラス繊維上にスプレーし;(c)少なくとも1つの洗浄水プロセスラインを含む洗浄水システムであって、前記形成チャンバーから前記洗浄水プロセスラインを通ってリサイクルされる水を受容する洗浄水システムを提供し;(d)前記洗浄水を少なくとも1つの洗浄水収集容器中に集め;(e)前記洗浄水収集容器に至る洗浄水ライン、前記洗浄水収集容器から出る洗浄水ライン、または前記洗浄水収集容器の内部の少なくとも1つにおいて腐食速度を測定するために腐食メータープローブを配置し;(f)前記腐食メータープローブが腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合、塩基を前記洗浄水に添加する第一コントローラーを提供する(ここにおいて、前記塩基は前記洗浄水ラインの少なくとも1つに沿った1以上の位置、または洗浄水収集容器中、または両方に添加される)ことを含む方法である。
【0006】
本発明の第二の態様は、(a)ポリマーバインダー、水、および強酸を含むフィード流れを含むガラス繊維結合システム(ここにおいて、前記バインダーは少なくとも1つのポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマーを含み、前記フィード流れのpHは4未満である);(b)前記フィード流れをガラス繊維上にスプレーするための形成チャンバー;(c)少なくとも1つの洗浄水プロセスラインを含む洗浄水システム(ここにおいて、前記洗浄水システムは、前記形成チャンバーから前記洗浄水プロセスラインを通ってリサイクルされる水を受容する);(d)前記洗浄水を集めるための少なくとも1つの洗浄水収集容器;
(e)前記洗浄水収集容器に至る洗浄水ライン、前記洗浄水収集容器から出る洗浄水ライン、または前記洗浄水収集容器の内部の少なくとも1つにおいて腐食速度を測定するための少なくとも1つの腐食メータープローブ;および(f)前記腐食メータープローブが腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に前記リサイクル水に塩基を添加する第一コントローラー(ここにおいて、前記塩基は、前記洗浄水ラインの少なくとも1つに沿った1以上の点、もしくは前記洗浄水収集容器中、または両方で添加される)を含むガラス繊維製造プロセスである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、とりわけ、ガラス繊維製造プロセスのプロセス装置、特に洗浄水が用いられるプロセス装置における腐食の防止、または軽減に関する。これは、洗浄水と接触した腐食メータープローブが腐食メーター設定値よりも高い腐食速度を検出した場合に、塩基を洗浄水に添加するためにコントローラーを用いることにより達成される。この方法は、一つの腐食源に限定されず、腐食原因、または腐食速度に影響を及ぼす因子、例えば、特に、洗浄水の全体的な化学的性質、流量またはプロセス装置中の乱流の程度、洗浄水の酸素含量、外来物質の存在、生物学的物質、酸化殺生剤、または洗浄水中に溶解した塩、洗浄水中の金属含量、および洗浄水中のバインダーの量などの存在に関係なく腐食の低減をもたらす。
【0008】
本発明は、フィード流れを含有するガラス繊維結合システムを含む。フィード流れは、ポリマーバインダー、水および強酸を含有し、ガラス繊維バインダーに関して一般的に用いられる他の物質を含有することができる。ポリマーバインダーは、ガラス繊維を結合させるために好適な任意のバインダー、例えば、ポリアクリル酸ポリマーおよびコポリマー系バインダーでありうる。「ポリアクリル酸コポリマー」とは、本明細書において、共重合した単位として、アクリル酸、および少なくとも1つの他のコモノマーを含有するコポリマーを意味する。バインダーは、その処方において、以下に記載するように、強酸を含み得る。好適なバインダーの例は、例えば、米国特許第5661213号、米国特許出願番号11/053799、および米国特許出願公開番号2005−0038193に記載され、これらは全て本明細書の一部として参照される。
【0009】
強酸は鉱酸、例えば、硫酸、または有機酸、例えばスルホン酸であってよい。鉱酸が好ましい。フィード流れのpHは4未満、好ましくは3.5未満、さらに好ましくは3未満に維持される。強酸はフィード流れにバインダーを供給する前にバインダー配合物中に存在してもよい。あるいは、強酸はフィード流れに供給することができ、この場合、フィード流れに向かう強酸の流量は、フィード流れのpHが前記のレベルに維持されるように制御される。強酸は、フィード流れをガラス繊維上にスプレーする直前、またはスプレーと同時に、希釈されたバインダーに連続して添加することができる。好ましくは、フィード流れの低いpHを維持するためのコントローラーと合わせてpH計が使用される。このような低いpHはその後の加工工程の間のバインダーの改善された硬化を提供するものとして好ましい。強酸の添加は、バインダーの高pHを減少させるだけでなく、洗浄水に由来する望ましくないアルカリ性を排除することができる。
【0010】
あるイオン、特にナトリウムイオンおよびカルシウムイオンの存在は、通常、下流の硬化処理において起こる望ましいバインダー架橋を阻害する。バインダー希釈のために中和された洗浄水を使用すると、高レベルの望ましくないイオンが存在するようになりうる。この問題を回避するための一方法は、バインダー希釈に新鮮な水、軟水、または脱イオン水を使用することである。しかしながら、この結果、一般に環境的に望ましくない水性廃水流れを生じる。別の解決法は、洗浄水システムを2つの完全に別のシステムに分割することである。中和洗浄水を用いる第一システムは、腐食しやすい物質、例えば炭素鋼で構築することができる。この第一システムはバインダー希釈目的で使用することができない。非中和プロセス水を使用する第二システムは、高価な腐食耐性物質、例えばステンレス鋼で構築することができる。この第二システムは、望ましくないイオンを導入することなくバインダー希釈に用いることができる。このアプローチの欠点は、第二システムの腐食耐性物質のコストが高いこと、ならびに複数の洗浄水システムを操作することの複雑さである。本発明は、これらの欠点を排除する。強酸をプロセス流れに添加することにより、リサイクルされる洗浄水中のバインダー分子と結合するようになっている金属イオンが置換され、腐食耐性構築物に頼るか、またはバインダー希釈に新鮮な水または非中和リサイクル洗浄水の専用を必要とせずに、バインダーを有効な硬化のために十分反応性にする。
【0011】
フィード流れを少なくとも1つの形成チャンバー中でガラス繊維上にスプレーする。「形成チャンバー」とは、本明細書において、ガラス繊維にフィード流れがスプレーされる少なくとも部分的に閉じた領域を意味する。フィード流れの全てがガラス繊維上に堆積するわけではない。ガラス繊維上に堆積しない、スプレーされたフィード流れ、過剰のフィード流れは、形成チャンバーの内部表面上に付着しうる。この過剰のフィード流れは、形成チャンバー壁に付着するガラス繊維と共に、洗浄水でスプレーする手段により形成チャンバー壁から除去することができる。本発明は、この目的に使用されうる洗浄水システムを含む。洗浄水システムは、プロセス装置の他の構成要素、例えば、吸い込み箱、チェーンベルトなどから過剰のフィード流れを除去するためにも用いることができる。
【0012】
洗浄水システムは、少なくとも1つの洗浄水プロセスラインを含み、これは前述のように、形成チャンバーから、そして任意に他のプロセス装置からリサイクルされた洗浄水を含む洗浄水を受容する。「洗浄水プロセスライン」とは、本明細書において、洗浄水を輸送するために好適な配管を意味する。洗浄水プロセスラインからの洗浄水は、少なくとも1つの洗浄水収集容器中に集められる。洗浄水収集容器は、完全に密閉されるかどうかに関係なく、洗浄水の少なくとも一部を保持できる容器、タンク、または他の容器であってよい。
【0013】
洗浄水は、形成チャンバーの内部表面を洗浄するために用いられる洗浄水プロセスライン中にリサイクルすることができる。他のプロセス装置からのフィード流れを洗浄するために用いられる洗浄水をリサイクルするために、同一であるか、または少なくとも1つの異なる洗浄水プロセスラインを使用することができる。洗浄水は、強酸をフィード流れに添加する前、添加後、または添加と同時に、バインダーを希釈する目的で、フィード流れ中にリサイクルすることもできる。
【0014】
洗浄水システムにおける装置の腐食速度は、少なくとも1つのプローブを有する少なくとも1つの腐食メーターによりモニターされる。好ましくは、腐食メーターのプローブは、洗浄水収集容器から通じる洗浄水プロセスライン中に配置され、さらに好ましくは、洗浄水収集容器に至る洗浄水プロセスライン中に配置される。好ましくは、プローブは、最高度の腐食が予想される場所、例えば、高流量、または高乱流域に配置される。腐食メータープローブは、プロセス装置における腐食速度を測定することができる任意のプローブである。好適なプローブは周知であり、例えば、電気抵抗モニタリングプローブ、直線分極抵抗モニタリングプローブなどを包含する。電気抵抗モニタリングプローブは、プローブ中の参照元素と比較して、液体プロセス流れ中に浸漬された金属元素の電気抵抗における変化を測定する。直線分極抵抗モニタリングプローブは、数ミリボルト(通常5〜20mV)の自由に腐食する断片の腐食電位を変化させるために必要な、内部に加えられた電流の量を測定する。直線分極抵抗モニタリングプローブが用いられる場合、2−または3−電極構造を有するものが好ましい。本発明に好適な腐食メーターは、様々な業者、例えば、Rohrback Cosasco Systems(カリフォルニア州サンタフェスプリング)、およびIntercorr International(テキサス州ヒューストン)から入手することができる。腐食メータープローブは、好ましくは洗浄水システム中に恒久的に取り付けられ、連続的な腐食速度モニタリングが可能になる。あるいは、洗浄水システム中の1以上の位置から定期的腐食速度データを集めるために、移動式腐食メータープローブを使用することができるが、この方法は迅速な同定ができず、腐食の校正の問題があるので好ましくない。腐食メータープローブの使用により、腐食アプセットの迅速な同定が可能になり、これにより救済措置の迅速な開始が可能になる。このようなプローブの使用は、従って、製造プロセスの寿命を延長すること、予定外の休止時間を最小限に抑えること、フィード流れに添加される塩基の量を最小限に抑えること、および高価なステンレス鋼装置の必要性を減少させることのうちの少なくとも1つに有用である。
【0015】
あらかじめ決められた値を超える腐食速度が腐食メータープローブにより検出される場合に少なくとも1種の塩基が洗浄水に添加される。好ましくは、腐食メータープローブは、定期的に、または連続的に、第一コントローラーにシグナルを送り、これにより、プローブが腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に洗浄水への塩基の導入を開始する。所定のシステムについて達成可能な腐食減少の量は、フィード流れおよび洗浄水の化学的性質に依存する。従って、特定のシステムのフィード流れおよび洗浄水の特定の化学的性質についてどのような腐食減少が達成可能かを決定するための試験に基づいて設定値を選択することができる。好ましくは、腐食メータープローブが15mil/年超、さらに好ましくは10mil/年超、なお一層好ましくは4mil/年超、さらに好ましくは4mil/年超、さらに一層好ましくは1mil/年超の腐食速度を検出する場合に塩基が導入される。しかしながら、場合によってはさらに高い腐食速度が許容でき、従って、本発明はユーザーにより選択できる任意の設定値を利用する。
【0016】
前述のように、腐食速度があらかじめ決められた値を超える場合に塩基が洗浄水に添加される。「塩基」とは、腐食速度があらかじめ決められた許容できるレベル内に維持されるために必要な程度まで、フィード流れを中和するために適当な任意の物質である。好適な塩基としては、これらに限定されないが、強塩基および/または弱塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化t−ブチルアンモニウム、アンモニア、低級アルキルアミンなどが挙げられる。塩基は、洗浄水ラインの少なくとも1つに沿った1以上の地点で添加することができる。好ましくは、塩基は洗浄水収集容器から通じる少なくとも1つの洗浄水ラインに添加される。あるいは、洗浄水収集容器に至る少なくとも1つの洗浄水ライン、または洗浄水収集容器の内部の洗浄水に添加することができる。
【0017】
本発明の非制限的な任意の具体例において、腐食速度コントローラーが少なくとも1つの第二コントローラーと合わせて使用される。第二コントローラーは好ましくは、塩基の流量を制御して、添加される塩基の量が、フィード流れ中の酸を中和するために十分であるようにする。コントローラーの流量設定値は、好ましくは次のアルゴリズムに基づく:
塩基流量=酸流量(A)×R (1)
式中、
酸流量=強酸流量+(フィード流れ流量×フィード流れ中のバインダー(%)×生成物ガラス繊維上に堆積しないスプレーされたバインダー(%)) (2)
式中、R=〔酸Aの中和に必要な塩基流量(B)/酸流量(A)〕以上の数。
【0018】
任意の所定のプロセスについて、「B」、および比率「R」は、当量点に達するまで洗浄水のサンプルを塩基で滴定することにより決定できる。「当量点」とは、本明細書において、酸がすべて中和される点を意味する。本発明のこの具体例において、腐食メータープローブが腐食メーター設定値を越える腐食速度を検出する場合、第二コントローラーは第一コントローラーからシグナルを受け取る。第一コントローラーからのシグナルは、第二コントローラーに流量設定値を調節するように指示し、これにより腐食速度を腐食メーター設定値よりも低くするために十分な追加の塩基の添加を要求する。
【0019】
本発明の異なる非制限的な任意の具体例において、腐食は金属犠牲陽極の使用によりさらに軽減される。陽極は、洗浄水システム装置の腐食を軽減するために好適な任意の金属、例えば、水性溶液中、多価状態になり、鉄またはスチールよりも高い電気化学的活性を有する金属、例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどで作ることができる。亜鉛犠牲陽極が好ましい。陽極は、これらが常に湿っている洗浄水システムのどこにでも(1以上の位置に)設置することができる。例えば、これらはチェーンベルトの下の吸い込み箱中、または任意の他の適当な位置に設置することができる。好ましくは、犠牲陽極は、プロセス装置にボルトで留めることができる。犠牲陽極は、低pHに曝される傾向にあり、典型的には洗浄水で洗浄されない装置に特に有用である。犠牲陽極は、装置スチールと電気的に結合し、ガルバニ電位を生じ、これによりスチール装置を腐食に抵抗性にし、腐食速度の減少を助ける。犠牲陽極は、犠牲陽極を取り巻く領域内で腐食の減少をもたらす。犠牲陽極の使用のさらなる利点は、陽極から溶け出す金属が前記陽極のすぐ近くにない領域における洗浄水の腐食性を軽減することである。洗浄水の腐食の軽減は、システムが犠牲陽極を使用するかどうかにかかわらず、亜鉛化合物を洗浄水に添加することによっても得られうる。好適な亜鉛化合物としては、例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、亜鉛塩などが挙げられる。本発明のさらに別の具体例において、スチール装置は、スチールを溶融亜鉛メッキすることにより亜鉛でコーティングすることができる。
【0020】
図1は、本発明の、好ましいが、任意の1具体例のガラス繊維製造プロセスを示す。この具体例において、溶融ガラスがガラス溶融炉(1a)において調製され、次いでファイバライザー(1)により繊維に形成される。フィード流れ(2)は複数の間隔があいたノズル(図示せず)によりガラス繊維(図示せず)上にスプレーされる。ガラス繊維を次いで同伴空気(4)を介して形成チャンバー(5)中に引きおろし、ここでガラス繊維の大部分が移動するチェーンベルト(6)上に集まり、前記チェーンベルトはガラスファイバーウェブ(図示せず)を形成チャンバー(5)から外へ輸送し、その後の加工のために下流装置へ送達する。同伴空気(4)はファン(5a)により、形成チャンバー(5)から、チェーンベルト(6)を通って、吸い込み箱(5b)中へ、次いでサイクロン(5c)を含む様々な空気排出制御装置を通って、次いで排出制御(5d)に送られる。
【0021】
この具体例において、ガラス繊維上にスプレーされるフィード流れ(2)は、バインダー貯蔵タンク(7)からポリアクリル酸系バインダーをフィード流れ(2)に対して50%固形分で計量することにより調製され、ここでリサイクルされた洗浄水(8)の流れで希釈される。希釈洗浄水(8)の流量を測定し、制御するために、洗浄水流量計(8a)および洗浄水制御弁(8b)が使用される。バインダー流れを測定するためにバインダー流量計(7a)が使用される。制御システム(7b)は、フィード流れ(2)中、所望のバインダー含量を達成するために、希釈洗浄水の流量に比例してバインダー流量を調節する。フィード流れのpHは、鉱酸の添加により3.5未満に維持される。鉱酸を貯蔵タンク(9)からフィード流れ(2)に量り取り、ここでミキサー(10)を用いて希釈バインダー溶液中に混合される。洗浄水のアルカリ度は多くの要因により著しく変化し得るので、希釈バインダー流れへの酸の添加速度はpH計(11)により制御される。酸の流量は、流量計(9a)により測定される。
【0022】
フィード流れでコーティングされたガラス繊維の一部、およびフィード流れ自体の一部は、形成チャンバー(5)の壁に付着し、ガラス繊維ウェブの一部にならない。同様に、フィード流れでコーティングされたガラス繊維の一部、ならびにフィード流れそれ自体の一部はチェーンベルト(6)に付着する。これらの繊維およびフィード流れ物質は、最終的に装置を詰まらせ、プロセスを作業状態から停止させる蓄積を防止するために洗浄しなければならない。これは、洗浄水プロセスライン(12)および(13)からの洗浄水を、形成チャンバー(5)の壁上、チェーンベルト(6)上、およびフィード流れでコーティングされたガラス繊維が蓄積し得るどこにでもスプレーすることにより行うことができる。フィード流れでコーティングされたガラス繊維を有する洗浄水が、洗浄水収集容器中に集められる。洗浄水収集容器(18)に向かう前に、チェーンベルト洗浄からの洗浄水はチェーンベルト洗浄液コレクター(19)中に集められる。ガラス繊維は、濾過により洗浄水から分離され、廃棄される。濾過された洗浄水を、洗浄水リターンポンプ(14)により、洗浄水システムへポンプで戻され、ここでその一部は、装置の洗浄のために洗浄水プロセスライン(12)および(13)に向けられ、その別の一部はバインダー希釈(8)のために洗浄水プロセスラインに向けられる。補給洗浄水プロセスライン(20)は、例えば蒸発によるプロセス水損失を補充するために使用される。
【0023】
洗浄水の腐食性を軽減するために、塩基が洗浄水に添加される。これは、塩基、例えば、水酸化ナトリウム溶液を塩基貯蔵タンク(15)から洗浄水プロセスライン(12)へ量り取り、ここで、例えばインラインミキサー(16)を用いて洗浄水溶液中に混合される。塩基がシステムに計量される割合は、フィード流れに添加される酸(バインダーまたは鉱酸から)の計量された量に基づく。コントローラー(17a)の設定値は、フィード流れ(2)中の酸を中和するように塩基の流量が制御されるように設定される。コントローラー(17a)は吸い込み箱から洗浄水収集容器(18)へ至る洗浄水プロセスライン(21)中の腐食メーター(17)からのシグナルを受け取る。腐食メーター(17)は、洗浄水の現在の腐食度を測定し、腐食メータープローブが4mil/年より高い腐食速度を検出した場合に、腐食メーター(17)はコントローラー(17a)にシグナルを送り、さらなる塩基の添加を必要とするためにその設定値を調節するように指示する。反対に、腐食メーター(17)は、腐食速度が設定値よりも低いならば、洗浄水に対する塩基の流量を減少させるためにその設定値を調節するようにコントローラー(17a)に指示する。
【0024】
本発明の任意の1つの具体例において、腐食速度はさらに洗浄水中に溶解した酸素の量を減少させることにより低下する。酸素は、機械的または化学的手段により洗浄水から除去することができる。酸素を除去するための機械的手段には、例えば、真空脱気、蒸気脱気、不活性ガスストリッピングなどが含まれる。図2に示されるように、例えば、容積移送式真空ポンプ(23)、スチームジェット、水封真空ポンプ、遠心真空送風機または真空空間から気体を輸送するために好適な類似の機械的装置により生じた真空下で洗浄水を容器(22)に導入することにより、真空脱気を行うことができる。気体除去を促進するために液滴として洗浄水を容器中にスプレーすることができる。容器(22)は、気体の除去をさらに助けるために、液滴に加えて、洗浄水の薄膜の形成を可能にするトレーを含むことができる。
【0025】
図3に示すように、蒸気脱気は、例えば、容器(24)の底部で導入された低圧蒸気(25)で加圧された容器の上部に、洗浄水をスプレーすることにより行うことができる。トレー、または充填物、例えばリング、サドル、メッシュなどを容器(24)の内部に配置して、容器(24)の上部から底部に落下する洗浄水と、底部の蒸気インレット(25)から容器(24)の上部へと流れる蒸気(25)との間の接触を改善することができる。この接触は、洗浄水からの空気の離脱を助ける。空気は、一部の蒸気(25)と共に、容器(24)からベント(26)を通って除去される。液−液「インターチェンジャー」熱交換器(27)は、脱気容器(24)に入る洗浄水を予熱するために用いることができ、ここにおいて加熱媒体は前記容器(24)を出る加熱された水である。
【0026】
不活性ガスストリッピングは、例えば、非常に低酸素含量の気体を同時に容器の他端で導入しながら、容器の上部において洗浄水をスプレーすることにより行うことができる。トレー、または充填物、例えばリング、サドル、メッシュなどを容器の内部に配置して、洗浄水と気体間の接触を向上させることができる。気体は洗浄水中の酸素の少なくとも一部を獲得し、容器中のベントを通ってシステムから酸素が除去される。別法として、図4に示すように、この密接な洗浄水/気体の接触は、洗浄水を含有するタンク、例えば洗浄水収集容器(18)中に、パイプ(18b)を介して気体を導入することにより達成できる。このパイプ(18b)は、空気の小さな気泡を発生する分配システム(28)に供給し、気泡は水中を上昇する。ディストリビューター(28)は、パイプ壁に穿孔された多くの小さな孔を有する配管ネットワーク、多孔質プレート型ディストリビューター、または洗浄水中に多数の均一に分配された小さな気泡を発生させる他の構成であり得る。不活性気体は、空気から低温で、拡散によるか、または任意の他の技術により分離された窒素、低酸素不活性燃焼ガス、または低酸素含量を有する任意の他の気体でありうる。
【0027】
酸素除去のための化学的手段には、例えば、洗浄水に、洗浄水中でさらに酸化する部分的に酸化された化合物の無機塩、酸化して、洗浄水中の酸素を消費する有機物質、酵素およびアルコール、または他の好適な物質を添加することが含まれる。本発明に好適な無機酸素スカベンジャーには、例えば、亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウムまたはメタ亜硫酸ナトリウム、ホウ水素化ナトリウム、様々なジチオナイト、チオ亜硫酸塩または亜リン酸塩などが含まれる。無機塩の酸素スカベンジャー活性は、触媒、例えば塩化コバルトの使用により改善することができる。さらに効率的かつ迅速にするために無機塩による酸化を可能にするために洗浄水温度を上昇させることができる。本発明に関する使用に好適な有機物質としては、例えば、タンニン系酸素スカベンジャー、例えばAccepta(商標)2012(Accepta、英国、マンチェスター)、ヒドラジン(N)、カルボヒドラジン、ハイドロキノン、ジエチルヒドロキシエタノール、メチルエチルケトオキシム、パラメトキシフェノール、フェノールなどが挙げられる。酵素およびアルコールを洗浄水に添加することにより、アルコールを溶解した酸素と反応させることができる。好適な酵素およびアルコールの例は、例えば、米国特許第4414334号(本発明の一部として参照される)において見出すことができる。化学スカベンジャーを洗浄水に直接添加することができるか、またはフィード流れ、または洗浄水に至る任意のプロセスラインに添加することができる。
【0028】
本発明は、好ましいが、任意の具体例に関して記載されたが、特に本出願の示唆をふまえて当業者は変更をすることができるので、もちろん本発明は任意の特定の具体例に限定されないものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の1具体例のガラス繊維製造プロセスを示す。
【図2】図2は、本発明の1具体例のガラス繊維製造プロセスを示す。
【図3】図3は、本発明の1具体例のガラス繊維製造プロセスを示す。
【図4】図4は、本発明の1具体例のガラス繊維製造プロセスを示す。
【符号の説明】
【0030】
1 ファイバライザー
1a ガラス溶融炉
2 フィード流れ
4 同伴空気
5 形成チャンバー
5a ファン
5b 吸い込み箱
5c サイクロン
5d 排出制御
6 チェーンベルト
7 バインダー貯蔵タンク
7a バインダー流量計
7b 制御システム
8 洗浄水
8a 洗浄水流量計
8b 洗浄水制御弁
9 貯蔵タンク
9a 流量計
10 ミキサー
11 pH計
12 洗浄水プロセスライン
13 洗浄水プロセスライン
14 洗浄水リターンポンプ
15 塩基貯蔵タンク
16 インラインミキサー
17 腐食メーター
17aコントローラー
18 洗浄水収集容器
18bパイプ
19 チェーンベルト洗浄液コレクター
20 補給洗浄水プロセスライン
21 洗浄水プロセスライン
22 容器
23 容積移送式真空ポンプ
24 脱気容器
25 低圧蒸気
26 ベント
27 熱交換器
28 ディストリビューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維製造プロセスにおいて腐食を軽減する方法であって:
(a)ポリマーバインダー、水、および鉱酸を含むフィード流れを含むガラス繊維結合システムを提供し(ここにおいて、前記バインダーは少なくとも1つのポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマーを含み、さらに前記フィード流れのpHは4未満である);
(b)前記フィード流れを形成チャンバー中でガラス繊維上にスプレーし;
(c)少なくとも1つの洗浄水プロセスラインを含む洗浄水システムであって、前記形成チャンバーから前記洗浄水プロセスラインを通ってリサイクルされる水を受容する洗浄水システムを提供し;
(d)前記洗浄水を少なくとも1つの洗浄水収集容器中に集め;
(e)前記洗浄水収集容器に至る洗浄水ライン、前記洗浄水収集容器から出る洗浄水ライン、または前記洗浄水収集容器の内部、の少なくとも1つにおいて腐食速度を測定するために腐食メータープローブを配置し;さらに
(f)腐食メータープローブが腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に、塩基を前記洗浄水に添加する第一コントローラーを提供する(ここにおいて、前記塩基は前記洗浄水ラインの少なくとも1つに沿った1以上の位置、もしくは洗浄水収集容器中、または両方に添加される)ことを含む方法。
【請求項2】
前記腐食メーター設定値が10mil/年である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記腐食メーター設定値が4mil/年である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記腐食メーター設定値が2mil/年である請求項1記載の方法。
【請求項5】
方法がさらに:
(a)少なくとも1つの第二コントローラーを提供し、さらに前記フィード流れへの前記塩基の流量を流量設定値に制御するために前記第二コントローラーを使用する工程;
(b)前記腐食メータープローブが前記腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に、前記第二コントローラーの設定値を調節するために、前記第一コントローラーを使用する工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
方法が、少なくとも1つの金属犠牲陽極を提供する工程をさらに含む、請求項1または5記載の方法。
【請求項7】
方法が、亜鉛化合物を洗浄水に添加する工程をさらに含む、請求項1または5記載の方法。
【請求項8】
方法が、洗浄水を脱酸素化する工程をさらに含む請求項1または5記載の方法。
【請求項9】
犠牲陽極が、亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群から選択される金属で作られている請求項6記載の方法。
【請求項10】
(a)ポリマーバインダー、水、および鉱酸を含むフィード流れを含むガラス繊維結合システム(ここにおいて、前記バインダーは少なくとも1つのポリアクリル酸ポリマーまたはコポリマーを含み、さらに前記フィード流れのpHは4未満である);
(b)前記フィード流れをガラス繊維上にスプレーするための形成チャンバー;
(c)少なくとも1つの洗浄水プロセスラインを含む洗浄水システム(ここにおいて、前記洗浄水システムは、前記形成チャンバーから前記洗浄水プロセスラインを通ってリサイクルされる水を受容する);
(d)前記洗浄水を集めるための少なくとも1つの洗浄水収集容器;
(e)前記洗浄水収集容器に至る洗浄水ライン、前記洗浄水収集容器から出る洗浄水ライン、または前記洗浄水収集容器の内部の少なくとも1つにおいて腐食速度を測定するための少なくとも1つの腐食メータープローブ;および
(f)前記腐食メータープローブが腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に、前記リサイクル水に塩基を添加する第一コントローラー(ここにおいて、前記塩基は、前記洗浄水ラインの少なくとも1つに沿った1以上の位置、もしくは前記洗浄水収集容器中、または両方で添加される)を含むガラス繊維製造プロセス。
【請求項11】
前記プロセスがさらに、前記フィード流れに対する前記塩基の流量を流量設定値に制御するための少なくとも1つの第二コントローラーを含み、さらに前記腐食メータープローブが前記腐食メーター設定値を超える腐食速度を検出する場合に、前記第二コントローラーの設定値を調節するために前記第一コントローラーが使用される、請求項10記載のガラス繊維製造プロセス。
【請求項12】
前記プロセスが少なくとも1つの金属犠牲陽極をさらに含む、請求項10または11記載のガラス繊維製造プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−239684(P2006−239684A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−55919(P2006−55919)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】