説明

腫瘍標的化剤及びその使用

本発明は、新規の腫瘍標的化モチーフ、単位及び物質、並びに腫瘍標的化ペプチド及びその類似体に関する。標的化剤は典型的には、少なくとも1個の標的化モチーフ、Aa−Bb−Cc、及び少なくとも1個のエフェクター単位を含む。本発明はさらに、特異的な腫瘍標的化ペプチド、このようなペプチドを含む薬剤組成物又は診断用組成物に関する。癌を診断又は治療するための方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の標的化単位(targeting unit)及び少なくとも1個のエフェクター単位を含む腫瘍標的化剤、並びに腫瘍標的化単位及びモチーフに関する。さらに本発明は、このような標的化剤又は標的化単位を含む薬剤組成物及び診断用組成物、並びに薬剤又は診断ツールとしての、このような標的化剤及び標的化単位の使用に関する。さらに本発明は、薬剤組成物又は診断用組成物を調製するため、及び診断又は研究において使用するための試薬を調製するための、このような標的化剤及び標的化単位の使用に関する。さらに本発明は、癌及び転移腫を診断又は治療するためのキットに関する。さらに他には、本発明は、細胞の除去、選択、選別及び増大法、並びにこのような方法で使用するための物質及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍は、人間及び動物の最大の健康問題の1つであり、若い個体の間でも死の最も一般的な原因の1つである。数十年の徹底的な研究努力にもかかわらず、利用可能な癌の治療法は非常に限られている。治癒治療(通常は化学療法及び/又は放射線療法と組み合わせた外科手術)が可能であるときもあるが、悪性腫瘍(癌)は依然として、人類の最も脅威のある疾患の1つであり、莫大数の生命が毎年失われている。実際、疾患が初期に診断されない場合、治癒治療はほとんど行われない。さらに、いくつかの腫瘍型は、存在する場合でも治癒的に治療することはほとんどできない。
【0003】
この非常に望ましくない状況に関する様々な理由が存在するが、最も重要な理由が、(すべてではない場合でも)ほぼすべての治療スケジュール(外科手術以外)は、十分な選択性がないという事実であることは明らかである。アルキル化剤、白金化合物(例えばシスプラチン)、ベロマイシン系物質、他のアルカロイド及び他の細胞増殖抑制物質などの、一般的に使用される化学療法剤は、単独で腫瘍の悪性細胞に対しては一般に作用しないが、他の細胞に対しても非常に毒性があり、造血細胞及び上皮細胞などの、急速に分裂する細胞型に対して、通常特に毒性がある。同じことが、放射線療法に当てはまる。
【0004】
前述の複雑さに加えて、2つの他の重大な問題が、悪性固形腫瘍の非外科手術治療における悩みとなっている。第1に、腫瘍内の生理的障壁は、すべての癌細胞への有効濃度での療法剤の送達を害する。第2に、遺伝的及び後成的機構から生じる後天的薬剤耐性が、利用可能な薬剤の有効性を低下させる。
【0005】
現在利用可能な、主に非選択的な、化学療法剤又は放射線療法による、癌患者の治療は、望ましくない副作用をもたらすことも多い。化学療法剤の影響を改善するため、及び副作用を低下させるために、特定の器官又は組織又は腫瘍組織を標的化して、望ましい細胞毒性又は他の薬剤を特異的にこれらの器官又は組織に運ぶことができる物質を同定することが、非常に重要であると思われる。
【0006】
同じことが癌治療の特定の分野、即ち中性子捕捉療法にも当てはまり、この療法では、非放射性核種(例えば、10B、157Gd又はLi)が、外部源からの熱(低速)中性子によって、患者のin vivoで放射性核種に転換される。この場合、いくつかの従来技術の物質は、少なくともいくつかの型の腫瘍に関して、約2〜3倍の選択性を有すると特許請求されているが、得られている結果は、主に失望的で否定的なものである。特異的な標的化剤によって、この分野にも顕著な利点が与えられると思われる。
【0007】
患者のフォローアップ、及び腫瘍及び転移腫に対する治療の影響の研究を含めた、癌及び転移腫の診断においても、より信頼性があり、より感度が良く、且つより選択的な方法及び物質が、大きな利点となると思われる。このことは、核磁気共鳴画像(NMR、MRI)、X線法、組織染色法(光学顕微鏡法及び電子顕微鏡法並びに関連法、将来はおそらくNMR、赤外線、電子スピン共鳴及び関連法も)、並びに当分野の専門家によって知られている、一般に任意の画像及び実験法(組織学、細胞学、細胞選別、造血の研究、FACSなど)などの、現在使用されているすべての方法に当てはまる。ここで、腫瘍組織、転移腫又は腫瘍細胞及び/又は腫瘍内皮を特異的又は選択的に、検出対象の実体(スピン標識、放射活性物質、NMR用の常磁性位相物質又はX線画像又はトモグラフィ用の位相物質、中性子捕捉用のホウ素原子など)を標的化することができる物質が、大きな利点となると思われる。
【0008】
固形腫瘍の増殖は血管新生依存性であり、腫瘍は新しい毛細管の増殖を、連続的な増殖のために絶えず刺激するはずである。腫瘍血管は、その正常な休止状態の対等物とは構造的及び機能的に異なる。特に、新しい血管を裏打ちする内皮細胞は形が異常であり、それらは互いの上部で増殖し、血管の内腔に突出する。この血管新生の異質性は、腫瘍型及び腫瘍が増殖している宿主器官に依存する。したがって、血管浸透性及び血管新生は、それぞれの異なる器官及びその器官に由来する腫瘍組織において独特である。
【0009】
異なる細胞及び組織型に宿主するペプチドを開示する、多数の刊行物が存在する。これらのいくつかは、癌標的ペプチドとして有用であると特許請求されている。記載済みの初期に同定された宿主ペプチドの中には、Ruoslahti他によって、例えば米国特許第6,180,084号中に記載された、インテグリン及びNGR−受容体標的ペプチドがある。これらのペプチドは血管新生の脈管構造に宿主し、NGR−受容体と結合する。
【0010】
腫瘍が血管新生の表現型に変わり、新しい血管を補充すると、これらの血管中の内皮細胞は、正常な休止状態の血管内皮によっては生成されないタンパク質を、内腔表面で発現する。1個のこのようなタンパク質は、αvβ3インテグリンである。米国特許公開、米国特許第6,177,542号は、αvβ3インテグリンと特異的に結合することができる、ペプチドを開示している。記載済みの腫瘍血管特異的な標的は、内皮細胞と血管基底膜の結合を仲介する接着分子である。このペプチドは、ArgGlyAsp(RGD)配列を含む、9残基の環状ペプチドである。Pasqualini他(1997)は、静脈内注射すると、このペプチドは、対照器官の血管より40〜80倍効率よく、マウス中のネズミ及びヒト腫瘍の血管に宿主することができたことを示した。RGDペプチドが、診断及び治療目的での、主要標的の適切なツールである可能性があることが示唆された。しかしながら、インテグリン結合ペプチドは、細胞接着を一般に害する可能性があり、したがって、選択的に腫瘍を標的化するための、臨床用途には適していない。
【0011】
国際特許公開WO00/67771は、アミノ酸配列RLQD、RAD、DGK/Rを含む、エンドスタチンペプチドを提供する。血管新生の脈管構造に宿主するペプチドの他の例は、米国特許第5,817,750号及び第5,955,572号に記載されている。これらのペプチドはRGDを認識する。
【0012】
米国特許第5,628,979号では、in vivo腫瘍の画像化及び療法用の、オリゴペプチドが記載されている。このオリゴペプチドは、4〜50個のアミノ酸を含み、これらは特徴的なトリプレットとしてアミノ酸配列Leu−Asp−Val(LDV)を含む。このトリプレットは、腫瘍及び他の組織のLDV結合部位に関するin vivoでの結合親和性を有する、オリゴペプチドを与えることが報告されている。
【0013】
国際特許公開WO99/47550では、MMP−2及びMMP−9の特異的阻害剤である、HWGFモチーフを含む環状ペプチドが記載されている。環状デカペプチドCTTHWGFTLCは、これらの酵素の活性を特異的に阻害し、in vitroで腫瘍細胞及び内皮細胞の移動を抑制し、in vivoで腫瘍の脈管構造に宿主し、マウスにおいて腫瘍の増殖及び侵入を妨げることも見出されている。しかしながら、MMPの阻害剤として作用するペプチドは、非腫瘍組織と基本的な結合を示す。MMPが身体中の正常組織においても発現されるという事実も、ヒト又は動物へのこのようなペプチドの投与を危険、さらには致死的なものにしている。何故なら、これらの酵素の活性は、正常組織の機能に必要とされるからである(Hidalgo及びEckhardt、2001)。
【0014】
米国特許公開US2002/0102265A1では、扁平上皮細胞癌細胞系を標的化し、in vitroにおいて細胞に内在化する、ペプチド、TSPLNIHNGQKLが記載されている。このペプチドは、ヌードマウス中の実験的扁平上皮細胞癌腫も標的化する。
【0015】
米国特許第5,622,699号及び第6,068,829号では、脳に選択的に宿主するSRLモチーフを含むペプチドのファミリーが開示されている。
【0016】
国際特許公開WO02/20769では、ファージディスプレイ及びバイオパンニングによって、組織特異的ペプチドを同定するための方法を開示している。同定されたペプチドのいくつかは、腫瘍特異的であることが示唆されている。
【0017】
腫瘍脈管構造と結合する、知られている宿主ペプチドが存在するが、in vivoで腫瘍細胞及び組織を実際に標的化する標的化剤に関する報告は、依然としてほとんど存在しない。以前に記載された標的化ペプチドの大部分は、脈管構造特異的である。したがって、腫瘍組織、腫瘍脈管構造、又は両方を選択的に標的化する新しい物質に関する、確固たる必要性が依然として存在する。
【0018】
治療用途用に、標的化ペプチドが制御不能な形式でドキソルビシンと結合させられており、明らかに混合物の生成物、或いは少なくとも同定されていない構造をもたらし、おそらく非効率的な作用、特に物質の同定、精製、品質管理及び定量分析における困難ももたらし、さらにペプチド1分子当たりのドキソルビシンの量は、依然知られていない(例えばArap他、1998)。非特異的な結合プロセスは、ペプチドの標的化機能を害する可能性もある。
【0019】
従来技術の他の非常に重大な欠点は、記載済みの標的化ペプチドの大部分は、腫瘍内皮のみを標的化するらしく、腫瘍塊自体は標的化しないことである。例えば、Nicklin他(2000)によって使用された標的化ペプチドは、in vivoにはほとんど当てはまらないと思われる条件下において、アデノウイルスDNAトランスフェクションを対象として、in vitroにおいて内皮細胞を休止状態にした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の標的化単位は、それらが腫瘍内皮と腫瘍細胞塊の両方を標的化するらしいという点で、従来技術に優る利点を与える。この事実によって、腫瘍内皮が支持する腫瘍増殖体及び腫瘍塊自体を、標的化し破壊する可能性が与えられる。この手法の主な利点は、内皮は、薬剤耐性は獲得しないが不可逆的に除去される、遺伝的に安定した組織であるという事実に由来する。
【0021】
従来技術の標的化ペプチドが、任意の悪性腫瘍型を標的化することができるという意味で、普遍的であるかどうかは知られていない。したがって、いくつかの特定の腫瘍に対する標的化治療薬としてのそれらの使用は、まったく有用性がない可能性があり、遊離状態の治療薬自体に優る治療上の利点又は効果を与えない。さらにより重大な欠点は、診断手順においてこのような標的化剤を使用することによって、すべての既存の腫瘍を明らかにすることができるわけではなく、悪性のプロセスは依然認識されない可能性があることである。
【0022】
本発明は、従来技術を鑑みて有意な改善点を与える。何故なら、ここに記載する標的化剤は、試験した様々な腫瘍型のすべてを、標的化することが見出されたからである。特に標的化剤は、例えばカポジ肉腫などの肉腫、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)過剰発現、非常に血管新生がある腫瘍、癌腫、及びヒトの原発性及び転移性黒色腫を標的化する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の簡単な説明)
本発明の目的は、少なくとも1個の標的化単位、及び場合によっては、少なくとも1個のエフェクター単位を含む、新規の腫瘍及び血管形成組織標的化剤を提供することである。特に本発明は、腫瘍内皮及び腫瘍細胞塊を標的化することができる、少なくとも1個のモチーフを含む標的化単位を提供する。少なくとも1個のエフェクター単位と場合によっては結合した、このような標的化単位は、転移腫を含めた癌の治療及び診断において特に、治療上及び診断上有用である。さらに、本発明の標的化剤は、細胞の除去、選択、選別及び増大に有用である。
【0024】
本発明の第2の目的は、腫瘍、腫瘍細胞及び腫瘍内皮を特異的に標的化することができる少なくとも1個のモチーフを含む、少なくとも1個の標的化剤又は少なくとも1個の標的化単位を含む、薬剤組成物及び診断用組成物を提供することである。
【0025】
さらに、本発明の第3の目的は、癌を治療及び/又は診断するための、新規の診断法及び治療法並びにキットを提供することである。
【0026】
本発明は、特定のアミノ酸配列又はモチーフを有するペプチド群は、in vivoの腫瘍及びin vitroの腫瘍細胞を選択的に標的化することができるという発見に基づく。したがって、本発明のペプチドは、ヒト又は動物被験体に投与すると、身体中の正常組織とではなく、腫瘍と選択的に結合することができる。
【0027】
本発明は、癌を治療又は診断するための薬剤組成物又は診断用組成物を製造するための、標的化剤及びその類似体の使用も対象とする。
【0028】
本発明の標的化単位はこのように使用することができるか、或いは少なくとも1個のエフェクター単位と結合させることができる。このような物質は腫瘍を破壊することができ、或いはその増殖を阻害することができる。本発明の標的化単位及び標的化剤は、転移腫も標的化することができ、したがって、それらを使用して、転移腫の増殖体を破壊又は阻害することができる。転移腫の初期診断は、癌を首尾良く治療するために非常に重要なので、腫瘍転移腫の初期診断における、本発明の標的化単位及び標的化剤の使用は重要である。
【0029】
本発明は、本明細書に記載する標的化単位及び標的化剤の塩、誘導体及び類似体、並びにそれらの使用をさらに含む。
【0030】
本発明の他の目的は、本発明の標的化剤を含む診断用組成物及び薬剤組成物、並びに癌を治療及び診断するための治療法及び診断法、本発明の標的化剤の使用を提供することである。このような方法又は研究目的用、並びに細胞選別又は除去で使用するための、キットも提供する。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態は、本明細書でさらに詳細に記載する、エフェクター単位及び他の追加的単位と場合によっては結合した、モチーフ、LRS又はSRLを含む、一群の小さな、環状腫瘍標的化ペプチドに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の目的のために、用語「癌」は、本明細書ではその広義の意味で使用し、形質転換又は悪性細胞と関係がある任意の疾患又は状態を含む。当分野では癌は、その組織源(組織学的型)に従って、5個の主なカテゴリーに分類される:固形腫瘍型癌である、癌腫、肉腫、黒色腫、及びリンパ腫、及び「液状癌」である白血病腫。本発明で使用する癌という用語は、疾患状態を含めた固形腫瘍によって特徴付けられるあらゆる型の疾患を主に含むものとし、検出可能な固形腫瘍或いは悪性又は形質転換細胞が存在しない場合、「癌細胞」は、拡散浸潤細胞として、或いは健康な組織内の他の細胞中に散在的に現れる。
【0033】
用語「アミノ酸」及び「アミノアルコール」は、ジアミノ、トリアミノ、オリゴアミノ、並びにポリアミノ酸及びアルコール;ジカルボキシル、トリカルボキシル、オリゴカルボキシル及びポリカルボキシルアミノ酸;ジヒドロキシル、トリヒドロキシル、オリゴヒドロキシル及びポリヒドロキシルアミノアルコール;並びに2個以上のカルボキシル基又はヒドロキシル基、及び1つ又は複数のアミノ基を含む類似の化合物も含むと本明細書では解釈する。
【0034】
確立された述語学に従い、用語「ペプチド」によって、アミノ酸鎖を形成するためのペプチド結合によって1つに連結した、アミノ酸の1本の鎖(ペプチド単位)を意味する。以下に記載するように、ペプチドは環状であってよい。本発明の目的のために、1つ又は複数のD−アミノ酸、β−アミノ酸及び/又は他の非天然アミノ酸(例えば、非天然側鎖を有するアミノ酸)を含む化合物も、用語「ペプチド」に含まれる。本発明の目的のために、用語「ペプチド」は、修飾アミノ酸を含むペプチジル類似体を含むものとする。このような修飾は、環又は鎖における置換基の導入又は存在;アミノ、ヒドラジド、カルボキシル、ホルミル(アルデヒド)又はケト基、又は他の部分などの「過剰な」官能基の導入又は存在;及び官能基又は他の部分の不在又は除去を含むことができる。この用語は、アミノ−及び/又はカルボキシ末端が修飾された類似体、例えばペプチドアミド及びN−置換アミド、ペプチドヒドラジド、N−置換ヒドラジド、ペプチドエステルなど、及びアミノ末端−NH基を含まないペプチド、或いは例えば修飾アミノ末端アミノ基又はイミノ又はヒドラジノ基を、アミノ末端アミノ基の代わりに含むペプチド、及びカルボキシ末端カルボキシル基を含まないペプチド、又はその代わりに修飾基を含むペプチドなども含む。
【0035】
ペプチドを修飾する、「ペプチジル類似体」を形成するために使用することができる、考えられる反応型のいくつかの例は、例えば付加環化、縮合及び求核付加反応、並びにエステル化、アミド形成、置換アミドの形成、N−アルキル化、ヒドラジドの形成、塩形成である。塩形成は、アルカリ又は他の金属塩、アンモニウム塩、塩及び有機塩基、酸付加塩などの、任意の型の塩の形成であってよい。ペプチジル類似体は、対応するペプチドから、或いは直接(他の経路によって)合成することができる。
【0036】
本発明のペプチドの構造類似体又は機能類似体である化合物は、アミノ酸又はアミノ酸単独からならない化合物、或いはその基本成分のいくつか又はすべてが修飾アミノ酸である化合物であってよい。当業者によって十分理解されているように、異なる型の基本成分をこの目的で使用することができる。生物系におけるこれらの化合物の機能は、ペプチドの機能と本質的に同じである。これらの化合物と元のペプチドの間の類似性は、したがって構造及び機能類似性に基づく。このような化合物は、元のペプチドの機能、立体配座及び/又は構造を模倣しているので、ペプチド模倣類似体と呼ばれ、本発明の目的のために、それらを用語「ペプチド」中に含める。
【0037】
本発明のペプチドの機能類似体は、類似するペプチドの結合能力と本質的に同じである、腫瘍、腫瘍組織、腫瘍細胞又は腫瘍内皮との結合に関する結合能力によって特徴付けられる。
【0038】
例えば、元のペプチドの主要配列に基づく類似体を含む、ベンゾラクタム又はピペラジンのような化合物を使用することができる(Adams他、1999;Nakanishi及びKahn、1996;Houghten他、1999;Nargund他、1998)。広く様々な型のペプチド模倣物質が、科学文献及び特許文献中に報告されてきており、当業者によく知られている。ペプチド模倣物質(類似体)は、例えば1つ又は複数の以下の構造構成要素を含むことができる:還元アミド、ヒドロキシエチレン及び/又はヒドロキシエチルアミンイソエステル、N−メチルアミノ酸、尿素誘導体、チオ尿素誘導体、環状尿素及び/又はチオ尿素誘導体、ポリ(エステルイミド)、ポリエステル、エステル、グアニジン誘導体、環状グアニジン、イミダゾイル化合物、イミダゾリニル化合物、イミダゾリジニル化合物、ラクタム、ラクトン、芳香族環、二環系、ヒダントイン、及び/又はチオヒダントイン、並びに様々な他の構造。ペプチド模倣物質を合成するための多くの型の化合物は、いくつかの商業源(例えば、Peptide and Peptidomimetic Synthesis、Reagents for Drug Discovery、Fluka ChemieGmbH、ブックス、スイス、2000 and Novabiochem 2000 Catalog、Calbiochem−Novabiochem AG、ラウフェルフィンゲン、スイス、2000)から入手可能である。ペプチド模倣化合物と元のペプチドの間の類似性は、構造及び機能類似性に基づく。したがって、ペプチド模倣化合物は、元のペプチドの性質を模倣しており、本出願の目的では、その結合能力は類似するペプチドと類似している。ペプチド模倣化合物は、例えば元のペプチド中には現れない、非天然アミノ酸(D−アミノ酸又は非天然側鎖を含むアミノ酸など、又はβ−アミノ酸など)で構成することができ、或いはペプチド模倣化合物は、他の化合物又は構造単位からなるか、或いはそれらから作製することができると考えられる。合成ペプチド模倣化合物の例は、N−アルキルアミノ環状尿素、チオ尿素、ポリエステル、ポリ(エステルイミド)、二環グアニジン、ヒダントイン、チオヒダントイン、及びイミダゾール−ピリジノ−イノールを含む(Houghten他、1999及びNargund他、1998)。このようなペプチド模倣化合物は、本発明のペプチドの「構造類似体又は機能類似体」として特徴付けることができる。
【0039】
本発明の目的のために、用語「標的化単位」は、腫瘍、及び好ましくは腫瘍間質、腫瘍実質、及び/又は腫瘍の細胞外マトリクスも選択的に標的化し、それらと選択的に結合することができる化合物、ペプチドを表す。この特異的な結合に関して、当分野で使用される他の用語は「宿主」である。腫瘍標的化は、ヒト又は動物の身体に投与すると、標的化単位が腫瘍と特異的に結合することを意味する。より詳細には、標的化単位は、細胞表面、細胞表面上又は細胞内の特定の分子又は構造と結合することができ、或いは標的化単位は、細胞間に存在する細胞外マトリクスと結合することができる。標的化単位は、腫瘍脈管構造の内皮細胞又は細胞外マトリクスと結合することもできる。標的化単位は、転移腫の腫瘍塊、腫瘍細胞及び細胞外マトリクスと結合することもできる。
【0040】
一般に、用語「標的化」又は「結合」は、例えばin vivo又はex vivo、in vitroの腫瘍バイオプシーのペプチド競合実験によって、又はin situでの免疫染色によって、或いは当業者に知られている他の方法によって、結合を客観的に測定及び決定することができる程度の、腫瘍、腫瘍細胞及び/又は腫瘍組織との、本発明の標的化単位の接着、付着、親和性又は結合を表す。本発明の標的化単位の結合の正確なメカニズムは、知られていない。本発明の標的ペプチドは、生理的pHでの生理食塩水或いは他の生理的に許容可能な塩又はバッファー溶液による洗浄及びすすぎなどの、通常のサンプル処理に耐えるほど十分に結合が強いとき、或いはエフェクター単位が腫瘍に対してその機能を示すほど十分長くin vivoで腫瘍標的化と結合するとき、in vitroの腫瘍標的と「結合している」と考えられる。
【0041】
本発明の標的化剤又は標的化単位と腫瘍の結合は「選択的」であり、これらが正常細胞及び器官とは結合しない、或いは腫瘍細胞及び器官と比較して非常に低い程度で結合することを意味する。
【0042】
本発明の標的化単位及び標的化剤の、薬剤として且つ診断上許容可能な塩には、塩、エステル、アミド、ヒドラジド、N−置換アミド、N−置換ヒドラジド、ヒドロキサム酸誘導体、その脱カルボキシル及びN−置換誘導体がある。適切な薬剤として許容可能な塩は、当業者によって容易に理解される。
【0043】
本発明の標的化モチーフ
3アミノ酸モチーフDd−Ee−Ffであって、
上式で、Dd−Ee−FfがAa−Bb−Cc又はCc−Bb−Aaであり、且つ
Aaがイソロイシン、ロイシン又はtert−ロイシン、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
Bbがアルギニン、ホモアルギニン又はカナバニン、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;且つ
Ccがセリン又はホモセリン、或いはその構造類似体又は機能類似体である3アミノ酸モチーフDd−Ee−Ffが、腫瘍及び癌、並びに腫瘍細胞及び癌細胞を標的化し、それらとの選択的結合を示すことが、現在驚くことに見出されている。
【0044】
本発明のAaは、その側鎖中に、炭素、ケイ素、炭素と結合したハロゲン、エーテル−酸素及びチオエーテル−イオウからなる群から選択される、少なくとも2個の同じ又は異なる原子を有する、分岐、非分岐又は脂環式構造を含むことができる。その類似体は、1つ又は複数の親油性カルボラン型又は他の親油性ホウ素含有側鎖、或いは他の親油性かご型構造を有する、分岐、非分岐又は環式非芳香族、親油性及び疎水性アミノ酸或いはアミノ酸類似体又は誘導体、或いはその構造類似体及び/又は機能類似体;アミノ酸又はカルボン酸、或いはアミノ酸類似体又は誘導体、或いはカルボン酸類似体又は誘導体からなる群から選択することができる。
【0045】
Aaは、以下のものからなる群から選択することができる:
1)その側鎖が以下の1つであるα−アミノ酸:
− エチル
− プロピル
− 1−メチルプロピル(イソロイシンの側鎖)
− 2−メチルプロピル(ロイシンの側鎖)
− 2,2−ジメチルプロピル
− 1−エチルプロピル
− tert−ブチル
− tert−ペンチル
− 3−メチルブチル
− 2−メチルブチル
− メチルブチル
− エチルブチル
− 2−エチルブチル
− シクロヘキシル
− 2−メチルシクロヘキシル
− シクロペンチル
− 2−メチルシクロペンチル
− 3−メチルシクロヘキシル
− シクロブチル
− シクロプロピル
− 2−メチルシクロプロピル
− メトキシエチル
− メトキシエチル
− メトキシメチル
− エトキシメチル
− 2−エトキシエチル
− 1−エトキシエチル
− 2−メトキシプロピル
− 2,2−ジメトキシプロピル
− 1−メチルプロピル
− 1−メチルブチル
− 1−メチルペンチル
− 1,1−ジメチルプロピル
− 1,1−ジメチルブチル
− 1,1−ジメチルペンチル
− 1,2−ジメチルプロピル
− 1−シクロプロピルエチル
− 2−シクロプロピルエチル
− シクロプロピルメチル
− 1−シクロプロピルエチル
− 1−シクロプロピルプロピル
− 2−シクロプロピルプロピル
− 3−シクロプロピルプロピル
− 任意のシクロブチルアルキル
− 1−エチルプロピル
− 1−メチルエチル
− 他のモノ−、ジ−、トリ−又はオリゴアルキル−アルキル
− 他の環状アルキル、又は置換環状アルキル、或いは1つ又は複数の置換又は非置換シクロアルキル基、及び場合によっては1つ又は複数のアルキル基で置換されたアルキル
− アリル
− ビニル
− 1−メチルアリル
− 1−エチルアリル
− 1−エチルビニル
− 1−プロペニル
− 1−メチル−1−プロペニル
− メチル−1−プロペニル
− メチル−1−プロペニル
− 1−エチル−1−プロペニル
− エチル−1−プロペニル
− エチル−1−プロペニル
− 1−メチル−1−ブテニル
− メチル−1−ブテニル
− メチル−1−ブテニル
− 1−エチル−1−ブテニル
− 2−エチル−1−ブテニル
− エチル−2−ブテニル
− エチル−2−ブテニル
− エチル−3−ブテニル
− エチル−3−ブテニル
− エチル−3−ブテニル
2)以下のカルボン酸のいずれか、その任意の光学異性体を含む:
− 4−メチルペンタン酸
− 3−メチルペンタン酸
− 4,4−ジメチルペンタン酸
− 3,4−ジメチルペンタン酸
− 3,3−ジメチルペンタン酸
− 3−メチルヘキサン酸
− 4−メチルヘキサン酸
− 5−メチルヘキサン酸
− 2−エチルペンタン酸
− 3−エチルペンタン酸
− 4−エチルペンタン酸
− 2−シクロプロピルペンタン酸
− 3−シクロプロピルペンタン酸
− 4−シクロプロピルペンタン酸
− 2−メチルブタン酸
− 3−メチルブタン酸
− 4−メチルブタン酸
− 2−シクロプロピルブタン酸
− 3−シクロプロピルブタン酸
− 4−シクロプロピルブタン酸
3)以下の化合物のいずれかの、任意の光学異性体及び幾何異性体:
− 2−アミノ−4−メチル−3−ペンテン酸
− 2−アミノ−4−メチル−4−ペンテン酸
− 2−アミノ−5−メチル−3−ヘキセン酸
− 2−アミノ−5−メチル−4−ヘキセン酸
− 2−アミノ−5−メチル−5−ヘキセン酸
及び
4)− 1個のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又は他のアルキル基
− 1個のシクロアルキル基
− 1個の9−フルオレニルメチロキシカルボニル(FMOC)基
− 1個のベンジルオキシカルボニル(Cbz)基
− 1個のtert−ブトキシカルボニル(BOC)基
− この位置(位置4)における前述の基から選択される、2個の同一の、類似の、及び/又は異なる基
をアミノ基において有する、位置1及び3のアミノ含有化合物のアミノ置換(N−置換)類似体。
【0046】
Aaは、式R−CR(NH)−COOHのα−アミノ酸(L−又はD−アミノ酸のいずれか)であって、前式で側鎖Rが上記に列挙した側鎖から選択され、側鎖Rが水素、メチル、エチル、プロピルからなる群から選択される、α−アミノ酸であってもよい。
【0047】
本発明のBbは、1つ又は複数のグアニル基、アミノジノ基或いはそれらの類似体及び誘導体、並びに構造又は機能相当物;それぞれ少なくとも2個の窒素原子を含む1つ又は複数の基を含む、アミノ酸或いはその構造類似体又は機能類似体からなる群から選択することができ、非局在化した正電荷を有するか、或いはそれを得ることができる。
【0048】
Bbは、以下の式の化合物であって:
【化1】


上式でR1〜R5が水素又はメチルであり、R2及びR3が−CH2−CH2−を形成することができ、且つnが1〜6である化合物の群から選択することができる。
【0049】
Bbは、以下のL−又はD−形であることが好ましい。
アルギニン、
ホモアルギニン、
カナバニン、
2−アミノ−8−グアニジノ−オクタン酸、
2−アミノ−7−グアニジノ−オクタン酸、
2−アミノ−6−グアニジノ−オクタン酸、
2−アミノ−5−グアニジノ−オクタン酸、
2−アミノ−7−グアニジノ−ヘプタン酸、
2−アミノ−6−グアニジノ−ヘプタン酸、
2−アミノ−5−グアニジノ−ヘプタン酸、
2−アミノ−4−グアニジノ−ヘプタン酸、
2−アミノ−5−グアニジノ−ヘキサン酸、
2−アミノ−4−グアニジノ−ヘキサン酸、
2−アミノ−3−グアニジノ−ヘキサン酸、
2−アミノ−4−グアニジノ−ペンタン酸、
2−アミノ−3−グアニジノ−ペンタン酸。
【0050】
本発明のCcは、1つ又は複数のヒドロキシル基、エステル化ヒドロキシル基、メトキシル基及び/又は他のエステル化ヒドロキシル(エーテル)基を含む、アミノ酸、アミノアルコール、ジアミノアルコール、トリ−、オリゴ及びポリアミノアルコール、並びにアミノ酸類似体、誘導体及びその構造類似体又は機能類似体からなる群から選択することができる。
【0051】
上記に定義したCcは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む、セリン又はホモセリン、或いはその構造類似体又は機能類似体であってよく;或いは
少なくとも1個のアルコールヒドロキシル基を含む、任意の他のモノアミノカルボン酸
少なくとも1個のアルコールヒドロキシル基を含む、任意のカルボン酸
1つ又は複数のアルコールヒドロキシル(OH)官能基及び/又はエステル化ヒドロキシル官能基を含む脂肪族又は他の側鎖を含む、任意の他のアミノカルボン酸からなる群から選択することができる。
【0052】
Ccは、以下のL−又はD−形であることが好ましい。
セリン、
ホモセリン、
2−アミノ−7−ヒドロキシヘプタン酸、
2−アミノ−5−ヒドロキシペンタン酸、
2−アミノ−6−ヒドロキシヘキサン酸、
2−アミノ−8−ヒドロキシオクタン酸、
又は任意の他のヒドロキシ−2−アミノカルボン酸。
【0053】
或いは、本発明のモチーフAa−Bb−Ccは概して、Aa、Bb及びCcが上記に定義したものである構造の、構造類似体又は機能類似体である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、表1に与えるもの、並びにそれらの構造類似体及び機能類似体から選択される、腫瘍標的化モチーフAa−Bb−Ccを含む。
【0055】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】

【0056】
したがって、Aaの典型的で好ましい特性には、少なくとも1個の側鎖における親油性、疎水性及び脂肪族性があり、一方Bbは非局在化した正電荷を含み、CcはOH−結合と関与する能力を有する。
【0057】
本発明の特に好ましいモチーフDd−Ee−Ffは、ロイシン−アルギニン−セリン(LRS)及びセリン−アルギニン−ロイシン(SRL)である。
【0058】
本発明のモチーフDd−Ee−Ffは、ペプチド又はいくつかの他の構造などの、大きな構造の一部分を形成することができる。問題の化合物又は構造が、2つ以上のモチーフDd−Ee−Ffを含むとき、モチーフの配向及び方向が変わる可能性がある。
【0059】
本発明の標的化単位
本発明の腫瘍標的化モチーフを含む、ペプチド及びその構造類似体又は機能類似体は、腫瘍細胞及び組織を標的化し、それらとの選択的結合を示すことも見出されている。本発明の腫瘍標的化モチーフ、及び4個までの追加のアミノ酸残基、又はそれらの類似体を含むペプチドも同様に、このような標的化及び選択的結合を示し、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0060】
このようなペプチドは、例えばそのサイズが小さく、またその合成がより容易で、より確実であるために、本発明の標的化単位として使用するのに非常に有利である。本発明のペプチドの小さな大きさによって、精製、分析及び品質管理が容易であり、商業上有用である。
【0061】
本発明の好ましい腫瘍標的化単位は、上記に定義した腫瘍標的化モチーフDd−Ee−Ff、及び以下のものからなる群から選択される追加的残基を含む:
天然アミノ酸、
非天然アミノ酸、
最大30個の非水素原子及び非制限数の水素原子を含む、アミノ酸類似体、及び
その分子量及び/又は式重量が最大270である、他の構造単位及び残基であって、
且つ
前記追加的残基の数が0〜4、好ましくは2〜4、より好ましくは2の範囲である、構造単位及び残基。
【0062】
当分野で知られているように、環状ペプチドは通常、in vivo及び多くの他の生物系において、それらの非環状相当物より安定性がある。しかしながら、本発明の小ペプチドの標的性は、標的化単位が環状であるか或いは環状構造中に含まれるとさらに顕著であることが、現在驚くべきことに見出されている。
【0063】
本発明の好ましい標的化単位は、
配列
Cy−Rr−Dd−Ee−Ff−Rr−Cyyであって、
上式で、Dd−Ee−Ffが腫瘍標的化モチーフAa−Bb−Cc又はCc−Bb−Aaであり;
Rrがアミノ酸残基、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
n及びmが0、1、又は2であり、nとmの合計は2を超えず;且つ、
Cy及びCyyが、環状構造を形成することができる実体である、配列を含むことができる。
【0064】
好ましい標的化単位は、Rrがヒスチジン、リジン又はトリプトファン以外の任意のアミノ酸残基である、標的化単位である。特に好ましいのは、RrがR又はGである標的化単位である。
【0065】
好ましい構造は、Cy及びCyyが、チオール基を含むアミノ酸又はその類似体、例えばホモシステイン若しくはシステイン又はその類似体などである構造、或いはチオール基又は酸化チオール基を含む、270を超えない分子量を有する他の構造である。1個の好ましい環状構造型は、(例えばシステイン部分間の)ジスルフィド結合の存在によって特徴付けられる。システイン構造の非制限的な例は、例えば以下の式の化合物であって:
【化2】


上式でCy−S−S−Cyyがシステインを示す化合物である。システインは容易に入手可能であり低価格であるため、この型の構造が好ましい構造である。
【0066】
しかしながら、−S−S−架橋はシステイン単位の間に存在する必要はなく、他のアミノ酸又は−SH基を含む他の部分の間に存在してもよい。このような構造は、システイン単位の間に2つ以上のDd−Ee−Ffモチーフを含むことができ、追加的なアミノ酸及びその構造類似体又は機能類似体を、環状構造の外に含むことができる。
【0067】
ジスルフィド架橋によって環状構造を有する、本発明の非常に好ましい標的化単位は、CLRSC(配列番号1)及びCSRLC(配列番号2)である。
【0068】
環状構造の形成の他の好ましい可能性は、ラクタムを与えるためのアミド結合の形成、又はラクトン結合を与えるためのエステル結合の形成である。
【0069】
したがって、好ましい構造は、上記に定義した以下の一般式の化合物であって、
Cy−Rr−Dd−Ee−Ff−Rr−Cyy
上式で、Cy及びCyyが、12個を超えない炭素原子を含むアスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、リジン(K)、オルニチン(O)又はこれらの類似体などの、ラクタム結合を形成することができる残基である化合物である。
【0070】
ラクタムは、「頭部から尾部」(カルボキシ末端及びアミノ末端)、「頭部から側鎖」及び「側鎖から頭部」(カルボキシ又はアミノ末端、及び1個の側鎖アミノ又はカルボキシル基)、及び「側鎖から側鎖」(1個の側鎖のアミノ基、及び他の側鎖のカルボキシル基)などの、いくつかの亜型であってよい。
【0071】
ラクタム架橋によって環状構造を有する、本発明の非常に好ましい標的化単位は、DLRSK(配列番号3)、DLRSGRK(配列番号4)及びDRGLRSK(配列番号5)、OLRSE(配列番号6)、KLRSD(配列番号7)である。
【0072】
本発明の標的化剤
本発明の少なくとも1個の腫瘍標的化単位、及び少なくとも1個のエフェクター単位を含む標的化剤は、癌細胞及び組織、並びに内皮細胞を標的化し、これらに対する選択的結合を示すことも見出されている。
【0073】
本発明の腫瘍標的化剤は、連結基、溶解度調節剤、安定剤、電荷調節剤、スペーサー、溶解又は反応又は反応性調節剤、内在単位又は内在エンハンサー、又は膜相互作用単位、或いは他の12の局所経路、付着、結合及び分布作用単位などの単位を場合によっては含むことができる。本発明の腫瘍標的化剤の、このような追加的単位は、その目的に適した任意の手段によって、互いに結合させることができる。
【0074】
問題の型又は関連型の構造、分子、基などを互いに連結させるための、多くの可能性が当業者に知られている。様々な単位を直接連結させるか、或いは1つ又は複数の同一、類似及び/又は異なる連結単位によって連結させることができる。本発明の腫瘍標的化剤は、以下に図式的に示す非制限的型のいずれかの構造などの、異なる構造を有することができる:
1.EU−TU
2.(EU)−(TU)
3.(EU)−(TU)−(EU)
【化3】


上式でEUは「エフェクター単位」を示し、TUは「標的化単位」を示し、n、m及びkは独立に、0以外の任意の整数である。
【0075】
本発明の標的化剤中には、多くの他の医薬品及び他の物質中と同様に、スペーサー又は連結基、アミノ酸及びその類似体など、長鎖のオメガアミノ酸などを含ませて、標的化単位が立体的、電気的に「乱される」、或いは他の場合は、エフェクター単位又は標的化剤の他の単位によって邪魔されるか或いは「隠される」のを防ぐことが賢明である可能性がある。
【0076】
本発明の標的化剤中では、樹木状又は環状構造を使用して、標的化単位当たりに多数のエフェクター単位又は追加単位を取り込む可能性を与えることが、高活性のために有用である可能性がある。
【0077】
本発明の好ましい標的化剤は、以下の構造であって、
Ef−TU−Eff
上式でTUが上記に定義した本発明の標的化単位であり;
且つ
Ef及びEffが、
エフェクター単位、連結単位、溶解度調節剤単位、安定剤単位、電荷調節剤単位、スペーサー単位、溶解及び/又は反応及び/又は反応性調節剤単位、内在及び/又は内在エンハンサー及び/又は膜相互作用単位及び/又は他の局所経路及び/又は局所付着/局所結合及び/又は分布作用単位、吸着促進単位、及び他の関連単位;及び
少なくとも1個のこのような単位を含むペプチド配列及び他の構造;並びに20個を超えない、好ましくは12個を超えない、より好ましくは6個を超えない、天然及び/又は非天然アミノ酸;及び25個を超えない非水素原子及び無制限数の水素原子を含む天然及び非天然アミノ酸を含むペプチド配列;
並びにこれらの塩、エステル、誘導体及び類似体からなる群から選択される、構造を含む。
【0078】
エフェクター単位
本発明の目的のために、用語「エフェクター単位」は、分子又はラジカル又は他の化学物質、並びにコロイド粒子などの大きな粒子;リポソーム又はミクロ顆粒を意味する。適切なエフェクター単位は、ナノデバイス又はナノチップなど、或いはこれらの任意の組合せ、及び場合によっては、エフェクター単位の構成要素と標的化剤のそれぞれ又は一部分を結合させるための、化学構造を構成することもできる。エフェクター単位は、エフェクター単位の安定化又は溶解度増大に影響を与える、成分も含むことができる。
【0079】
本発明のエフェクター単位によって与えられる好ましい影響は、標的腫瘍に対する治療的(生物学的、化学的又は物理的)影響;診断目的の腫瘍又は腫瘍細胞の検出又は画像化を可能にする性質;又は異なる適用例における標的化剤の使用と関係がある結合能力である。
【0080】
本発明のエフェクター単位の好ましい(生物学的)活性は、治療効果である。このような治療活性の例は、例えば細胞毒性、細胞増殖抑制性効果、細胞の分化を引き起こす能力、又はその分化の程度を増大させる能力、或いは表現型の変化又は代謝の変化を引き起こす能力、走化性活性、免疫調節活性、疼痛寛解活性、放射活性、細胞周期に影響を与える能力、アポトーシスを引き起こす能力、ホルモン活性、酵素活性、細胞をトランスフェクトする能力、遺伝子伝達活性、1つ又は複数の遺伝子の「ノックアウト」を仲介する能力、遺伝子の置換又は「ノックイン」を引き起こす能力、抗血管新生活性、外部放射線又は電場又は磁場から熱又は他のエネルギーを集める能力、細胞の遺伝情報又は外部の関連情報の転写、翻訳又は複製に影響を与える能力;並びに転写後及び/又は翻訳後事象に影響を与える能力である。
【0081】
本発明のエフェクター単位によって可能となる、他の好ましい治療手法は、(中性子捕捉によって核の放射活性を適切にするための)熱(低速)中性子の使用、又は例えばエステル結合又は他の結合を加水分解することができる酵素の投与、又は本発明の標的化酵素の投与に基づくものであってよい。
【0082】
検出するのに適した本発明のエフェクター単位の、好ましい機能の例は、放射活性、常磁性、強磁性、弱磁性、フェリ磁性、又は任意の型の磁性、或いはNMR分光法によって検出される能力、又はEPR(ESR)分光法によって検出される能力、PET及び/又はSPECT画像の適性、又は免疫原構造の存在、或いは抗体又は抗体断片又は抗体型構造の存在、又は金粒子の存在、又はビオチン又はアビジン又は他のタンパク質の存在、及び/又は発光及び/又は蛍光及び/又はリン光活性、或いは電子顕微鏡、光学顕微鏡(UV及び/又は可視光線)、赤外線顕微鏡、原子間力顕微鏡又はトンネル顕微鏡などでの、腫瘍、腫瘍細胞、内皮細胞及び転移腫の検出を高める能力である。
【0083】
本発明のエフェクター単位の好ましい結合能力には、例えば以下のものがある:
a)ヒスチジン又は他のタグなどの物質又は構造と結合する能力、
b)ビオチン又はその類似体と結合する能力、
c)アビジン又はその類似体と結合する能力、
d)酵素又は修飾酵素と結合する能力、
e)例えばキレート化によって、金属イオンと結合する能力、
f)細胞毒性、アポトーシス又は代謝に影響を与える物質、或いはin situでこのような物質に転換することができる物質と結合する能力、
g)インテグリン、及び細胞接着、移動、又は細胞内シグナルと関連がある他の物質と結合する能力、
h)ファージと結合する能力、
i)リンパ球又は他の血液細胞と結合する能力、
j)バイオパニングにより選択した抗体又は構造の存在によって、任意の予め選択した物質と結合する能力、
k)シグナル生成又は増幅用に使用する物質と結合する能力、
l)治療薬と結合する能力。
【0084】
このような結合は例えばキレート化、共有結合の形成、抗体−抗原型親和性、イオン対又はイオン結合形成、アビジン−ビオチン型の特異的相互作用の結果、或いは任意の型又は形態の結合又は親和性の結果であってよい。
【0085】
1つ又は複数のエフェクター単位又はその一部分は、標的化単位自体の一部分であってもよい。したがって、エフェクター単位は、例えば放射活性原子、又は放射活性原子、又は常磁性原子になることができる原子、或いはMRI又はNMR分光法によって容易に検出される原子(炭素−13など)などの、標的化単位の1つ又は複数の原子又は核であってよい。他の例は、例えばカルボラン型親油性側鎖などの、ホウ素含有構造である。
【0086】
エフェクター単位は、例えば試験又は処理中のヒト又は動物被験体或いは生物サンプルにおいて、必須の(必要な)標的化プロセス中に、大部分の、又は好ましくはすべて、或いはほぼすべての、標的化剤のエフェクター単位が、標的化単位と連結した状態であるほど十分強力な、任意の型の結合又は構造、或いはそれらの任意の組合せによって、標的化単位と連結することができる。
【0087】
エフェクター単位又はその一部分は、標的化単位と結合した状態であってよく、或いはそれらは部分的又は完全に加水分解する可能性があるか、或いはそれ以外の場合は、自発的化学反応又は平衡によって、或いは自発的酵素プロセス又は他の生物学的プロセスによって、或いは加水分解酵素又は他の化学物質の投与などの、意図的操作又は手順の結果として、標的化単位から分解する可能性がある。本発明に従い酵素などの標的化剤を投与することによって、酵素プロセス又は他の反応を引き起こすか或いは増大させることも可能である。
【0088】
1個の可能性は、エフェクター単位又はその一部分は、腫瘍中(例えば細胞内、細胞膜中或いは細胞外マトリクス中)或いはそれらの近辺に存在する、1つ又は複数の様々な加水分解酵素の影響によって、標的化剤から加水分解する、且つ/或いはさらに小さな単位に加水分解することである。
【0089】
本発明の標的化が非常に急速である可能性があることを考慮すると、身体中の至る所で起こる非特異的な加水分解さえも、意図的に1つ又は複数のエフェクター単位を加水分解するのに許容可能且つ使用可能である可能性がある。何故ならこのような加水分解は、当業者に非常によく理解されるように、適切な場合(例えば立体障害、又は任意のこのような障害効果なしでも)非常に緩慢であり、したがって身体の加水分解酵素が存在するにもかかわらず、標的物質が安全に標的化されるからである。不溶生成物及び/又は細胞中に急速に吸収される生成物、及び/又は加水分解後に細胞表面と結合する生成物の形成は、標的化エフェクター単位及び/又はその断片などが腫瘍又はその近辺に留まるのに有用である可能性もある。
【0090】
本発明の1つの好ましい実施形態では、エフェクター単位は、治療又は他の効果、シグナル検出、生物物質、分子、イオン、微生物又は細胞を含めた予め選択した物質の結合の、「増幅」を可能にする、直接的又は間接的に引き起こす、構造、特徴、断片、分子などを含むことができる。
【0091】
このような「増幅」は、例えば1つ又は複数の以下の非制限的な型に基づくものであってよい:
エフェクター単位による、他の物質とさらに結合することができる他の物質の結合(例えば抗体、蛍光抗体、他の「標識」物質、アビジンなどの物質、したがって好ましくは、他の物質のいくつかの分子又は「単位」は、それぞれのエフェクター単位当たりで結合することができる;
例えばタンパク質と結合することができる2つ以上の物質を含むエフェクター単位、これによって直接的な増幅が可能となる;
2つ以上のステップでの増幅。
【0092】
本発明の好ましいエフェクター単位は、以下の群から選択することができる:
− 細胞増殖抑制性物質又は細胞毒性物質
− アポトーシスを引き起こすか或いは増大させる物質
− 酵素又は酵素阻害剤
− 代謝拮抗物質
− 膜機能を害することができる物質
− 放射活性物質又は常磁性物質
− 1つ又は複数の金属イオンを含む物質
− ホウ素、ガドリニウム、リチウムを含む物質
− 中性子捕捉療法に適した物質
− 標識物質
− 挿入剤及びそれを含む物質
− 酸化剤及び還元剤
− ヌクレオチド及びその類似体
− 金属キレート又はキレート剤。
【0093】
本発明の非常に好ましい実施形態では、エフェクター単位はアルファ放射体を含む。
【0094】
本発明の他の好ましい実施形態では、エフェクター単位は、トランス−ビス(サリシラルドキシマロ)銅(II)及びその類似体などの銅キレート、又はシスプラチン、カルボプラチンなどの白金化合物を含むことができる。
【0095】
例えばRQIKIWFQNRRMKWKK;Penetratin(Prochiantz、1996)、及びステアリル誘導体(Promega Notes Magazine、2000)を含めた、例えば細胞への内在化を引き起こすか或いは増大させるために使用することができる、異なる型の構造、物質、及び基が知られている。
【0096】
アポトーシス誘導構造として、例えば細胞内のミトコンドリア膜と相互作用する、ペプチド配列KLAKLAKを含めることができる。Ellerby他(1999)。
【0097】
細胞選別及び任意の関連適用例を含む、本発明の実施形態で使用するために、本発明の標的化単位及び物質を使用して、例えば、
a)磁気粒子と結合させるか又は結び付ける、
b)プラスチック、ガラス又は他の固体、多孔質、繊維状材料型又は他の物質などと吸着、結合、連結させる、又は結び付ける、
c)カラム及び関連系内で使用することができる1つ又は複数の物質又は材料中、或いはそれらの上に、吸着、共有結合させる、或いは他の場合は連結、結合させるか又は結び付ける、
d)沈殿させる、遠心分離させる、或いは他の場合は分離又は除去することができる1つ又は複数の物質又は材料中、或いはそれらの上に、吸着、共有結合させる、或いは他の場合は連結、結合させるか又は結び付けることができる。
【0098】
本発明の標的化剤の任意選択の単位
本発明の標的化剤及び標的化単位は、以下の単位などの他の単位を、場合によっては含むことができる:
本発明の標的化単位、エフェクター単位、又は他の任意選択の単位と互いに結合した連結単位;
標的化剤又はその加水分解生成物の溶解度を調節する、溶解度調節剤単位;
in vivo又はin vitroでの合成、調節、処理、保存又は使用中に、標的化単位又は物質の構造を安定させる、安定剤単位;
標的化単位又は物質又はそれらの出発物質の電気電荷を調節する、電荷調節剤単位;
標的化剤又はそれらの出発物質の特定の単位間の距離を増大させて、生成物の立体的障害又は構造的負担を緩和又は低下させるための、スペーサー単位;
反応性調節剤単位;
標的化剤の標的化及びuptageを増大させるための、内在単位又はエンハンサー単位;
in vivoでの標的化剤の吸収を促進する、脂質又は水溶性構造などの吸着促進単位;又は
他の関連単位。
【0099】
多数の適切な連結単位が当分野で知られている。適切な連結基の例は以下のものである:
1.アミノ基を含む単位を連結させるための連結基:環状無水物、ジカルボキシ又は多価、場合によっては活性化又は誘導体化、カルボン酸、2個以上の反応性ハロゲンを有する化合物、又は少なくとも1個の反応性ハロゲン原子及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物;
2.カルボキシル基又はその誘導体を含む単位を連結させるための連結基:アミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、−NHNH又はその置換形、この目的用の他の知られている基などの、少なくとも2個の同じ基又は異なる基を有する化合物(活性化物質を使用することができる);
3.アミノ基とカルボキシル基を連結させるための連結基:例えば、アミノ酸及びそれらの活性又は保護形或いは誘導体;
4.ホルミル基又はケト基と他の基を連結させるための連結基:例えば、少なくとも1個の−N−NH又は−O−NH又は=N−NHなどを含む化合物;
5.いくつかのアミノ含有単位を連結させるための連結基:EDTA、DTPA及びポリカルボン酸、無水ハロゲン化物、ハロゲン化エステル、及びハロゲン化アシルなどの、ポリカルボン物質;
6.アミノ基を含む物質と、ホルミル基又はカルボキシル基を含む物質を連結させるための連結基:ヒドラジノカルボン酸など、好ましくはヒドラジノ部分又はカルボキシル基が保護或いは活性化されている、ヒドラジノカルボン酸など、例えば4−(FMOC−ヒドラジノ)安息香酸など;
7.有機構造と金属イオンを連結させるための連結基:有機構造と結合することができ(例えば、それらのCOOH基又はそれらのNH基によって)、或いは有機構造の必須部分であり、ポリカルボキシル部分、例えばEDTA−又はDTPA−様構造をさらに含む物質、いくつかのヒスチジンなどを含むペプチド、いくつかのシステイン又は−SH基をそれぞれ含む他の成分を含むペプチド、及びこれらと有機構造を連結させるために使用することができる、官能基を含む他のキレート剤。
【0100】
非常に様々な前述の物質、及び他の型の適切な連結物質が、当分野で知られている。
【0101】
多数の適切な溶解度調節剤単位が、当分野で知られている。適切な溶解度調節剤単位は、例えば以下のものを含む:
水性溶解度を増大させるために:SO、O−SO、COOH、COO、NH、NH、OH基、グアニジノ又はアミジノ基、或いは他のイオン又はイオン化基、及び糖型構造を含む分子;
脂質溶解度又は有機溶媒中の溶解度を増大させるために:(長い)脂肪族分岐又は非分岐アルキル及びアルケニル基、シクロヘキシル基などの環状非芳香族基、芳香族環及び立体構造を含む単位。
【0102】
当分野で知られている多数の単位は、安定剤単位として使用することができる。例えば立体障害を増大させるための、塊状構造(例えばtert−ブチル基、ナフチル及びアダマンチル並びに関連基など)、並びに酵素による加水分解を防止又は邪魔するための、D−アミノ酸及び他の非天然アミノ酸(β−アミノ酸、ω−アミノ酸、非常に大きな側鎖を有するアミノ酸などを含む)。
【0103】
正電荷、負電荷、又は両方の型の電荷を含む単位は、電荷調節剤単位として使用することができ、正電荷、負電荷、又は両方の型の電荷を有する単位に転換される、或いは転換することができる構造も、使用することができる。
【0104】
スペーサー単位は非常に重要である可能性があり、このような単位を使用する必要性は、構造の他の構成要素(例えば、使用する生物学的に活性がある物質の型、及びそれらの作用機構)、及び使用する合成手順に依存する。
【0105】
適切なスペーサー単位は、例えば長い脂肪族鎖又は糖型構造(高すぎる親油性を回避するために)、又は大きな環を含むことができる。適切な化合物が、当分野で利用可能である。1つの好ましい基のスペーサー単位は、長鎖を有するω−アミノ酸である。このような化合物は、アミノ含有単位とカルボキシル含有単位の間の連結単位として、(同時に)使用することもできる。多くのこのような化合物は、このように、及び様々な保護誘導体の形で市販されている。
【0106】
加水分解(自発性の化学的加水分解、或いは身体の独自の酵素又は患者に投与される酵素による、酵素による加水分解)を受けやすい単位は、例えば内在化、細胞内又は細胞外DNA又は受容体結合のために、エフェクター単位を標的化剤から切り離すことが望ましい場合、非常に有利である可能性がある。この目的に適した単位には、例えば1つ又は複数のエステル又はアセタル官能基を含む構造があり、様々なプロテアーゼを、言及する目的で使用することができる。プロドラッグを作製するために使用される多くの基が、加水分解、溶解反応、又は他の分解プロセスを増大させるか或いは引き起こす目的に適している可能性がある。
【0107】
本発明のエフェクター単位、標的化単位、及び任意選択の単位は、2個以上の機能を同時に果たすことができる。したがって、例えば標的化単位は、同時にエフェクター単位であることができ、或いはいくつかのエフェクター単位を含むことがでる;スペーサー単位は、同時に連結単位又は電荷調節剤単位、或いは両方であることができ、安定剤単位は、他のエフェクター単位などの性質とは異なる性質を有する、エフェクター単位であることができる。エフェクター単位は、例えばいくつかの同じ機能、或いはさらに完全に異なる機能を有することができる。
【0108】
本発明の1つの好ましい実施形態では、腫瘍標的化剤は、2個以上の異なるエフェクター単位を含む。その場合、エフェクター単位は、例えば診断用及び治療用単位であってよい。したがって、例えば、ホウ素中性子捕捉療法用に、そのエフェクター単位が、ホウ素原子を含む以外に、物質の投与後に患者のin vivoで検出又は定量化することもできるような物質を使用して、物質が治療する腫瘍中に適切に蓄積したことを確認すること、又は中性子治療のタイミングを最適化することなどを可能にすることが好ましい。例えばホウ素原子(好ましくはアイソトープが豊富なホウ素)を含むエフェクター単位を含むような本発明の標的化剤、及び例えばNMRIによって検出可能な基を使用することによって、この目標を達成することができる。同様に、2個以上の型の治療上有用なエフェクター単位の存在が、好ましい可能性もある。さらに、標的化単位と標的化剤は、望むならば、1つ又は複数の「古典的」又は他の腫瘍用治療療法剤、例えば外科手術、化学療法、他の標的化療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤などと、組み合わせて使用することができる。
【0109】
本発明の標的化単位及び物質の調製
本発明の標的化単位は、合成ペプチドであることが好ましい。ペプチドは、非常に様々なよく知られている技法、例えば固相法(FMOC−、BOC−、及び他の保護スキーム、様々な樹脂型)、溶液法(FMOC、BOC及び他の変形)、及びこれらの組合せなどによって合成することができる。目的の自動装置/デバイスさえも市販されており、通常の合成及び精製サービスも同様である。これらの手法はすべて、当業者には非常によく知られている。いくつかの方法及び物質は、例えば以下の参照文献中に記載されている:
【0110】
Bachem AG、SASRIN(商標)(1999)、The BACHEM Practise of SPPS(2000)、Bachem2001カタログ(2001)、Novabiochem2000カタログ(2000)、「ペプチド及びペプチド模倣体の合成(Peptide and Peptidomimetic Synthesis)」(2000)、及び「コンビナトリアルケミストリーカタログ及び固相有機化学(SPOC)ハンドブック(The Combinatorial Chemistry Catalog & Solid Phase Organic Chemistry(SPOC)Handbook)」98/99。ペプチドの合成は、実施例中にも例示する。
【0111】
当分野で知られているように、その大部分が当分野で知られている1つ又は複数の保護基、例えばFMOC、BOC、及びトリチル基、並びに実施例中に述べる他の保護基などを使用することが、賢明、重要及び/又は必要であることが多い。保護基は、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、グアニル及び−SH基、及び任意の反応基/官能基を保護するために使用されることが多い。
【0112】
当業者によく知られているように、活性化は、カルボキシル官能基の活性化及び/又はアミノ基の活性化に関するものであることが多い。
【0113】
保護は、オルト的及び/又は半/準/偽オルト的であってもよい。保護基及び活性基、物質、並びにそれらの使用は実施例中に例示し、本明細書に引用する参照文献中に記載されており、当分野で一般的に知られている多数の書物及び他の情報源中にも記載されている(例えば、「有機合成における活性基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、1999)。
【0114】
固相合成の樹脂も、当分野ではよく知られており、実施例中、及び上記に引用した参照文献中に記載されている。
【0115】
本発明の環状構造は、例えばオルト位置で保護されたアミノ酸の使用に基づく、方法によって合成することができる。したがって、例えば、オルト位置で保護された「過剰な」COOH官能基を含む1個のアミノ酸(例えば、(N−(−FMOC−L−グルタミン酸の−アリルエステル、即ち「FMOC−Glu−Oall」、又は(N−(−FMOC−L−グルタミン酸の−tert−ブチルエステル(「FMOC−Glu−OtBu」、又はN−(−FMOC−L−グルタミン酸の(−4{N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]−アミノ}ベンジルエステル(「FMOC−Glu−Odmab」)、又は(N−(−FMOC−L−グルタミン酸の−2−フェニルイソプロピルエステル(「FMOC−Glu(O−2−PhiPr)−OH」)、又はアスパラギン酸などの他のジカルボキシアミノ酸の関連誘導体;或いは前述のいずれかの樹脂結合形)、及びオルト位置で保護された「過剰な」アミノ基を有する1個のアミノ酸(例えば、N−(−FMOC−N−(−4−メチルトリチル−L−リジン(「FMOC−Lys(Mtt)−OH」)、或いはオルニチン又はいくつか他のジカルボン酸の対応する誘導体、或いはこれらの1つの樹脂結合形;樹脂結合形、ただし「過剰な」COOHを有するオルト位置で保護されたアミノ酸の樹脂結合形とは、同時に存在しない樹脂結合形)を、構造中に取り込ませることができ、脱保護の後、カルボキシル基とアミノ基を、通常は活性化物質を使用して反応させることができる。この型の方法はよく知られており、例えば以下の参照文献、Novabiochemカタログ(2000)、pp.19〜21及び33、及び詳細にはB9〜B15、並びにその中の参照文献、Bachem2001カタログ(2001)、pp.31〜32、Chan他(1995)、Yue他(1993)及びHirschmann他(1998)中に記載されている。
【0116】
適切な出発物質は市販されており、その他の出発物質は、当分野で知られている方法によって作製することができる。D−アミノ酸誘導体も、この方法で使用することができる。当業者が理解しているように、「真に」オルト位置で保護された基の代わりに、準オルト/半オルト/偽オルト保護基も使用することができる。
【0117】
上記に記載した方法に従い作製した環状生成物は、生物環境中で通常は非常に安定しており、したがって好ましい。この型の構造は、このような構造を生成するための(化学的、酵素的又は生物学的な)任意の方法によって、生成することができる。多くのこのような方法は、当業者によく知られている。この型の環状構造は、固相合成によって化学的に合成することができるが、当業者によく知られているように、溶液法又はこの両方の組合せを使用して、同様に合成することができる。環状化目的に適した、「過剰な」カルボキシル又はアミノ官能基を有するアミノ酸は(適切に保護されると)、(非制限的な候補として)例えば、以下に示す構造を有するものを含む:
【化4】

【0118】
当業者によりよく知られているように、任意の型の溶液中における環状化では、希釈溶液が通常は有利である。
【0119】
本発明の標的化単位及び標的化剤は、融合タンパク質として、或いは当分野で知られている他の適切な組換えDNA法によって、調製することもできる。本発明のペプチドを調製するためのこのような手法は、エフェクター単位及び/又は他の任意選択の単位が、ペプチド又はタンパク質であるとき、特に好ましい。有用なタンパク質エフェクター単位の一例は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)である。
【0120】
本発明の標的化単位及び標的化剤の利点
診断又は治療用途目的のペプチドに関する、いくつかの認められている問題が存在する。これらの問題の1つは、配列の長さに由来する:保護−脱保護を必要とする、且つ/或いは副反応を引き起こす厄介な残基の存在などの、他の合成の問題が存在する場合は特に、配列が長くなるほど、望ましい生成物の合成が困難になる。副反応、並びに考えられる合成の停止(それが形成される場合望ましい生成物の収率を完全に低下させるだけでなく、不適切な長さのペプチド鎖を有する生成物が生じる)、及び多量の有害な副産物の形成の傾向。望ましい配列が側鎖保護(例えば、リジン、ヒスチジン及びトリプトファンの側鎖などの塩基性側鎖)及び脱保護を必要とするアミノ酸を含む場合、これは大幅に増大する。これらの問題によって、望ましいペプチドの精製もより一層困難になり、適切に精製された物質の生成が不可能となる可能性がある。
【0121】
問題のあるアミノ酸残基を有し、長くて作製するのが困難な配列を含む、知られている生成物と比較すると、以下でより詳細に記載するように、本発明のペプチドは明らかに優れている。したがって、本発明の生成物及び方法、及びそれらを使用することによって、従来技術に優る非常に有意で非常に重要な利点が与えられる。
【0122】
本発明の標的化単位は、容易に確実に合成することができる。多くの従来技術のペプチドと比較した1つの利点は、本発明の標的化単位及びモチーフは、問題のある塩基性アミノ酸リジン及びヒスチジン、又はトリプトファンを含まないことであり、これらはいずれも、ペプチド合成において重大な副反応を引き起こす可能性があり、そのために、望ましい生成物の収率が大幅に低下する可能性があり、或いはさらに適切な量又は適切な質を得るのが不可能になる可能性がある。
【0123】
存在すると、ヒスチジン、リジン及びトリプトファンは、合成手順中完全な状態である適切な保護基を使用して、適切に保護されなければならない。これは非常に困難である可能性があり、コスト及び技術の問題を少なくとも増大させる。さらに、試薬及び作業量によってコストは著しく増大し、脱保護ステップの他のコスト、及び望ましい生成物の単位当たりのコストが増大する可能性がある。
【0124】
その小さな大きさのため、したがって合成における大幅に少ないステップのために、本発明のペプチドは、従来技術の標的化ペプチドよりも、はるかに容易に安価で生成される。
【0125】
ヒスチジンは本発明の生成物中に必要とされないので、そのラセミ化の危険性はまったく関係がない。
【0126】
本発明の生成物の経済的合成に関してだけではなく、精製及び分析及び品質管理に関して、ヒスチジンのいかなるラセミ化も考慮対象外であることは、大きな利点である。このことは、ヒト及び動物に対する任意の投与を安全且つさらに簡単にもする。
【0127】
その小さな大きさのために、本発明のペプチドは、より少ない労力及び装置−時間で、より一層確実且つ容易に精製することもでき、したがってコストを明らかに低下させる。したがって全体的なコストは大幅に低下し、より良い生成物をさらに多量に得ることができる。さらに、精製の信頼度は一層良くなり、治療及び診断用途における、毒性残留物、及び致死的或いは他の場合は重大な副作用の問題もあまり与えない。
【0128】
比較的少ないステップを有する短い合成プロトコルによって、少量の不純物が生成し、本発明のペプチドは非常に有利になる。毒性及びさらには致死性不純物、アレルゲンなどの危険性は劇的に低下し、さらに、精製が容易になる。
【0129】
本発明の生成物の分析、したがって品質管理は、長くてより「厄介な」ペプチド配列のそれよりも、容易でコストがかからない。これによって、分析及び品質管理の信頼度が増大する。
【0130】
リジンなどの残基は標的化単位中に存在しないので、エフェクター単位がこのような残基と不適切に結び付く危険性はない。これは著しい利点である。
【0131】
エフェクター単位は、(標的化モチーフの外側で)例えば保護リジン又はオルニチンを使用して、本発明のペプチド及びペプチジル類似体及びペプチド模倣物質と、容易に連結させることができる。なぜなら、標的化モチーフ中の任意のリジン残基が、同時に反応する危険性はないからである。
【0132】
本発明のペプチドを環状化するために、保護リジン又はオルニチンを使用することができる。なぜなら、標的化モチーフ及び単位は、このようなアミノ酸を含まないからである。これは莫大な利点である。
【0133】
本発明の標的化剤の固相合成では、エフェクター単位及び任意選択の他の単位は、保護基の除去が他の単位の破壊を引き起こす危険性なしで、樹脂と依然として結び付いていると、標的化ペプチドと連結させることができる。同様の利点が、溶液合成に当てはまる。
【0134】
本発明、及び本発明の生成物、本発明に従った方法及び使用の、他の重要な利点は、非常に選択的で強力な生成物の標的化である。
【0135】
抗体又は抗体断片を使用する標的化療法と比較すると、本発明の生成物及び方法は、いくつかの理由のため非常に有利である。潜在的な免疫学的危険性及び関連する危険性は、大きな生物分子の場合も明らかである。本発明の標的化剤、単位及びモチーフなどの小さな合成分子とは対照的に、アレルギー反応はこのような生成物に関する多大な関心事である。
【0136】
標的化抗体又は抗体断片と比較すると、本発明中に記載する生成物及び方法は非常に有利である。なぜなら、必要とされるか或いは望まれる場合、それらの構造は容易に改変することができるからである。ヒスチジン、トリプトファン、チロシン及びスレオニンなどの特定のアミノ酸は、望まれる場合、省略することができ、非常に少ない官能基が必要とされる。他方で、標的化効果を害さずに、様々な異なる構造単位に、特定の用途において非常に価値がある特定の望ましい性質を含ませることが可能である。
【0137】
本発明の標的化剤の使用
本発明の標的化単位及び標的化剤は、癌診断及び療法において有用である。なぜならそれらは、実施例中に示すように、in vivoにおいて腫瘍を選択的に標的化するからである。エフェクター単位は、所望の効果、検出又は療法に従い選択することができる。エフェクターを標的化単位などに含ませることによって、所望の効果を得ることもできる。放射線療法で使用するために、標的化単位自体を、例えば放射活性標識することができる。
【0138】
本発明は、少なくとも1つの本発明の標的化剤を有効量含む、診断用組成物にも関する。標的化剤に加えて、本発明の診断用組成物は、診断用組成物に一般的に使用される、担体、溶媒、賦形剤、懸濁剤、標識物質、及び他の添加剤を場合によっては含むことができる。このような診断用組成物は、腫瘍、腫瘍細胞及び転移を診断する際に有用である。
【0139】
本発明の診断用組成物は、液体、ゲル状又は固体配合物として、好ましくは約0.00001μg/l〜25×10μg/lの範囲の濃度で本発明の標的化剤を含む水性液体として、配合することができる。組成物は、安定剤、ポリソルベート及びTweenなどの界面活性剤、並びに他の添加剤をさらに含むことができる。これらの成分の濃度は、使用する配合物に応じて著しく変わる可能性がある。診断用組成物は、in vivo又はin vitroで使用することができる。
【0140】
本発明は、癌の治療用の薬剤組成物を製造するための、標的化剤及び標的化単位の使用も含む。
【0141】
本発明は、少なくとも1つの本発明の標的化剤を治療有効量含む、薬剤組成物にも関する。本発明の薬剤組成物を使用して、本発明の標的化剤又は標的化単位を含む治療有効量の薬剤組成物、或いは治療上許容可能なその塩、エステル又は他の誘導体を投与することにより、癌性疾患を治療、予防又は緩和することができる。本発明の組成物は、標的化剤及び標的化単位、並びに標識物質、画像物質、薬剤及び他の添加剤の異なる組合せも含むことができる。
【0142】
本発明の標的化剤の治療上有効な量は、薬剤組成物の配合に応じて変わる可能性がある。好ましくは、本発明の組成物は、約0.00001μg/l〜250g/l、より好ましくは約0,001μg/l〜50g/l、最も好ましくは0,01μg/l〜20g/lで変わる濃度で、標的化剤を含むことができる。
【0143】
本発明の薬剤組成物は、本発明の標的化剤を投与するのに有用である。経口使用、静脈内又は局所注射、又は注入に適した薬剤組成物が、特に好ましい。本発明の薬剤組成物は、in vivo又はex vivoで使用することができる。
【0144】
調製物を凍結乾燥させ、投与前に還元することができ、或いは例えば投与の準備ができた溶液、溶液(複数)、懸濁液、懸濁液−溶液などとして、或いは粉末、濃縮物、凍結液、及び任意の他の型を含めた、一般的な任意の形又は形状で保存することができる。調製物は、使用前に混合される、おそらく他の場合は処置及び/又は処理などされる、別個の実体からなっていてもよい。液体配合物は、還元せずにそれらを投与することができるという利点を与える。溶液生成物のpHは、約1〜約12、好ましくは生理的pH付近の範囲である。溶液のオスモル濃度は、例えば塩化ナトリウム及び/又は糖類、ポリオール及び/又はアミノ酸及び/又は同様の成分を使用して、好ましい値に調整することができる。組成物は、薬剤として許容可能な賦形剤及び/又は安定剤、例えばアルブミン、糖類及び様々なポリオールなど、並びに任意の許容可能な添加剤、又は化学療法剤などの他の活性成分をさらに含むことができる。
【0145】
本発明は、癌、特に固形腫瘍を治療するための方法であって、治療有効量の本発明の薬剤組成物を、そのような必要性のある患者に投与することによる方法にも関する。
【0146】
利用可能なin vitro又はin vivoの試験系で、標的化剤及び標的化単位を試験することによって、治療用量を経験的に決定することができる。このような試験の例は、実施例中に与える。したがって適切な治療上の有効量は、これらの実験から推定することができる。
【0147】
経口投与用に、標的化単位及び標的化剤は安定性があり、腸管から適切に吸収されることが重要である。
【0148】
本発明の薬剤組成物は、全身的、非全身的、局所的又は局部的、非経口的及び経口的、例えば皮下、静脈内、筋肉内、経口的、鼻腔内、肺用エアロゾルによって、特定の器官又は領域への注射又は注入によって、頬に、頭蓋内に、或いは腹腔内に投与することができる。
【0149】
本発明の腫瘍標的化剤の投与に関する量及び処方は、癌治療の臨床分野の当業者によって容易に決定することができる。一般に用量は、使用する標的化剤の型;年齢;健康状態;治療する医学的状態;存在する場合は、併用療法の種類、治療の頻度、及び望ましい効果の性質;性別;症状の期間;及び存在する場合は反適応症、並びに個々の内科医によって調整される他の変数などの考慮事項に応じて変わるであろう。本発明の標的化単位又は標的化剤のヒト患者に対する投与の好ましい用量は、ボーラスとして、或いは例えば1日当たりの用量として繰り返しで、体重1kg当たり約0.000001μg〜約40mgで変わる可能性がある。
【0150】
本発明の標的化単位及び標的化剤、並びに薬剤組成物は、DNA又はRNA、或いはその構造類似体又は機能類似体、例えばホスホロチオエート、又はペプチド核酸(PNA)などを、腫瘍及びその転移腫中、或いはin vitroにおいて単離した細胞及び器官に送達するための標的デバイスとして、即ちin vivoとin vitro両方の遺伝子療法用のツールとして、使用することもできる。このような場合、標的化剤又は標的化単位は、ウイルスキャプシド又はエンベロープ、リポソーム又は他の「容器」、DNA/RNA又は関連物質の一部分であってよく、或いはDNA/RNA、又は前述の他の分子と直接結合していてよい。
【0151】
本発明は、in vivo及びin vitroで癌又は癌細胞を診断、検出又は分析するための、キット及びキットの構成要素も含む。このようなキットは、本発明の標的化剤又は標的化単位、並びに検出を可能にする診断用の実体を少なくとも含む。本発明のキットは、例えば免疫学的方法、放射線又は酵素による方法、又は当分野で知られている他の方法によって検出するための単位と結合した、例えば標的化剤及び/又は標的化単位を含むことができる。
【0152】
さらに、本発明の標的化単位及び標的化剤、並びに標的化モチーフ及び配列を、リード化合物として使用して、上記に記載したいずれかの目的用のペプチド模倣体を設計することができる。
【0153】
さらに他には、本発明の標的化単位及び標的化剤、並びに標的化モチーフ及び配列など、且つ/或いはこれらを他の物質と結合させたものを、細胞、分子、及び関連する生物標的の単離、精製及び同定用に使用することができる。
【0154】
以下の非制限的な実施例により、本発明をさらに説明する。
【0155】
(実施例)
以下の実施例で使用する試薬のリスト、及び試薬の供給業者を、最後に番号付けした実施例の後に含める。
【実施例1】
【0156】
標的化単位(ペプチド)LRSの合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、実施例2に記載した方法を使用して合成した。
【0157】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
Fmoc−Ser(tBu)樹脂、Applied Biosystemsカタログ番号401429、0.64mmol/g
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH、CAS No.154445−77−9、Applied Biosystemsカタログ番号、GEN911097、分子量:648.8g/mol
Fmoc−L−Leu−OH、CAS No.35661−60−0、Applied Biosystemsカタログ番号GEN911048、分子量:353.4g/mol
【0158】
カップリングプロセスの最後のサイクル後に、樹脂結合ペプチドの小さいサンプルにFmoc除去(実施例2のステップ1〜10)を施し、その後、切断用混合物を用いた3時間の処理によって、ペプチドを樹脂から切断して、実施例2に記載したのと同様に単離した。生成物(LRS)は、その正イオンモードのMALDI−TOF質量スペクトルによって同定し、その中ではLRSのM+1イオンが優勢であることは明らかであった。
MALDI−TOFデータ(LRS):
計算した分子質量=374.44
観察したシグナル:
375.30M+H
397.22M+Na
【実施例2】
【0159】
手動固相ペプチド合成、及び実施例中に記載するペプチドを合成するための質量スペクトル測定値の一般的記載
すべての合成手順は、2と4の間の多孔質等級の焼結ガラス製フィルターディスク、上部にポリプロピレン又はフェノールプラスチック製スクリューキップ(密封用)、及び2個のPTFE鍵付き停止栓:1つはフィルターディスク(排出用)の下の停止栓、1つは傾斜角付きのスクリューキップ付きネックの肩部の停止栓(アルゴンガスの入口用)を備える、密封性ガラス漏斗中で行った。
【0160】
漏斗を適切な固相合成樹脂及びそれぞれの処理用の溶液で充填し、適切な時間「ピストンピンの動きをする」ボトルシェーカー(Gallenkamp(商標))によって強く振とうさせ、次に適切なアルゴンガス圧で濾過を行った。
【0161】
合成の1サイクル(=1アミノ酸単位の添加)の一般的手順は、以下の通りであった。
【0162】
2個以上のアミノ酸単位からなる約1mmolのFmoc−ペプチド(=そのアミノ末端アミノ基が9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたペプチド)、又は約1mmolの適切なFmoc−アミノ酸(即ち、前述の保護基を有するアミノ酸;約2gの樹脂、0.5mmol/g)を充填した、適切なWang又はRink(Rinkアミド)樹脂を、以下に記載するような方法で処理し、それぞれの処理ステップは、30mlの示した溶液又は溶媒との2.5分間の振とう、及び他に述べない場合は濾過を含む。
【0163】
「DCM」は、ジクロロメタンとの振とうを意味し、「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドとの振とうを意味する(DMFはNMP、即ちN−メチルピロリジノンで置換することができる)。
【0164】
処理のステップは以下の通りであった:
1. DCM、10〜20分間振とう
2. DMF
3. 20%(体積)ピペリジン、DMF中、5分間
4. 20%(体積)ピペリジン、DMF中、10分間
5〜7. DMF
8〜10. DCM
11. DMF
12. 3mmolの活性アミノ酸のDMF溶液(以下に記載するように調製した)、2時間振とう
13〜15.DMF
16〜18.DCM
【0165】
最後の処理(18)の後、アルゴンガスを約15分間樹脂に通し、樹脂はアルゴン下で保存した(他の単位で合成を続ける場合は、密封反応漏斗中)。
【0166】
樹脂上のアミノ酸又はペプチド鎖に加える、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル−N−保護アミノ酸(Fmoc−アミノ酸)の活性化は、処理ステップno.12の前に別の容器中において、以下に列挙する試薬を使用して行った。このように、Fmoc−アミノ酸(3mmol)を約10mlのDMFに溶かし、DMFにHOBtを溶かした0.5M溶液6mlに3mmolのHBTUを溶かした溶液で1分間処理し、次いで5分間2.0MのDIPEA溶液3mlを用いてすぐに処理した。
【0167】
Fmoc−アミノ酸を活性化させるために使用した活性化試薬は、以下の通りであった:
HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.[94790−37−1]、Applied Biosystemsカタログ番号401091、分子量:379.3g/mol
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DMFに溶かした0.5M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号400934
DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリドンに溶かした2.0M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号401517
【0168】
上記に記載した手順を、適切な保護基を有する、適切な異なるFmoc−アミノ酸を使用して、数サイクル繰り返して、樹脂結合源の適切なペプチド(即ち、「樹脂結合」ペプチド)を生成した。この手順によって、いくつかのエフェクター及び/又はスペーサー及び/又は連結単位など、例えばビオチン又はFmoc−Ahx(=6−(Fmoc−アミノ)−ヘキサノイル)部分を、樹脂結合ペプチドと結び付ける実際的な方法も与えられる。
【0169】
樹脂からの切断は、以下の試薬混合物を使用して行った:
トリフルオロ酢酸(TFA)92.5vol−%
水5.0vol−%
エタンジチオール2.5vol−%
【0170】
ステップ1〜10によって保護Fmoc基を除去した後(前述の一般的手順と同様に)、3成分の前述の試薬混合物(樹脂1gに関してそれぞれ約15ml)で、それぞれ1時間、樹脂を処理した。これらの処理は、上記に記載した方法でアルゴン雰囲気下において行った。濾過によって得たTFA溶液を、ロータリーエバポレータを使用して減圧下において次いで濃縮し、アルゴンを再充填した。幾らかのジエチルエーテルを加え、濃縮を繰り返した。冷蔵庫内のジエチルエーテル中においてアルゴン下で、濃縮した残渣を一晩で沈殿させた。上清エーテルを除去し、沈殿をジエチルエーテルで洗浄した。質量スペクトル(MALDI−TOF+)測定用に、沈殿のサンプルを、スペクトル法に適した溶媒に溶かし、次に濾過し、必要に応じて、濾過した溶液を希釈した。「Waters600」ポンプ装置による、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を使用して、さらなる精製を行い、この方法は、粒子サイズ10マイクロメートル、及びその組成を30分間で99.9%水/0.1%TFAから99.9%アセトニトリル/0.1%TFAに変化させた直線溶出勾配の、C−18型カラムを使用した。HPLCカラムの寸法は、25cm×21.2mm(Supelcoカタログ番号567212−U)及び15cm×10mm(Supelcoカタログ番号567208−U)であった。検出は218nmでの吸光度に基づき、「Waters2487」装置を使用して行った。
【0171】
上記に記載した切断用混合物は、以下の保護基:システイン−SHの保護用に使用したトリチル(Trt);アルギニンの側鎖の保護用に使用した2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf);グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸の側鎖カルボキシル基の保護用に使用した、tert−ブチル基(カルボキシル官能基上のエステル基;OtBu)も同時に除去し、類似の構造体(チオール、グアニル、カルボキシル)上のこれらの保護基の除去用にも、通常使用することができる。それが、Fmoc除去を引き起こすことはなかった。
【0172】
上記に記載した切断手順をFmoc基の除去なしで行って、ペプチドのアミノ末端N−Fmoc−誘導体、又はエフェクター単位(Fmocを含まない)と連結したペプチドを生成することもできる。
【0173】
使用した質量スペクトル法:マトリクス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型(MALDI−TOF)
装置の型:Bruker Biflex MALDI TOF質量分析計
装置の供給業者:Bruker Daltonik GmbH、Fahrenheitstrasse 4、D−28359、ブレーメン、ドイツ
【0174】
MALDI−TOF正イオンリフレクターモード:外部標準:Angiotensin II及びACTH(18−39)
マトリクス:α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(0.1%トリフルオロ酢酸を含む水性50%アセトニトリルに溶けた飽和溶液)。
サンプル、及びマトリクスは、穏やかな暖気流の下において標的プレート上で乾燥させた。
【0175】
MALDI−TOF負イオンリフレクターモード:外部標準:コレシストキニン及びグルカゴン
マトリクス:2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(3mg/ml、10mMのクエン酸アンモニウムを50%アセトニトリルに溶かしたもの中)。
マトリクスと混合させたサンプルを、真空下において標的プレート上ですぐに乾燥させた。
【0176】
サンプル調製:試料を10〜100ピコモル/マイクロリットル濃度で、上記に記載したマトリクス溶液と混合させた。
波長337nmでの窒素レーザーによる「射撃」。プローブプレートの電圧は、正イオンリフレクターモードで19kV、及び負イオンリフレクターモードで−19kVであった。
【0177】
スペクトルについての一般的所見(正イオンモードに関してのみ):いずれの場合も、アイソトープ付随に基づくその典型的な微細構造を有する、M+1(即ち、1プロトン付加M+H+)シグナルが、明らかに優勢であった。ほぼすべての場合、M+1シグナルのパターンは、M+23(Na+付加)におけるピークの、類似しているが著しく弱いバンドを伴った。M+1及びM+23におけるバンドに加えて、M+39(K+付加)又はM+56(Fe+付加)におけるバンドも、多くの場合観察することができた。
【0178】
小さな分子質量を有する物質の場合、「マトリクスシグナル」(マトリクス/「イオン化環境」の構成要素によるシグナル)は省略した(即ち、294及び380Daにおけるシグナルは省略した)。
【0179】
合成の実施例中で報告した、計算した分子質量の値は、それぞれの構成要素の最も豊富なアイソトープ、即ち「正確な質量」に対応する。シグナルに関して与えられる解釈は、単なる仮のものである。
【実施例3】
【0180】
実施例中に記載するペプチドを含むシステインの、I−促進型の環状化の一般的手順
樹脂(1g)をCHCl(15ml)で膨張させ、20分間攪拌した。溶媒を濾過によって除去し、3分間DMF(15ml)を用いて、樹脂を1回処理した。濾過後、樹脂結合ペプチド(又は標的化剤)を、DMF(10ml)に溶かしたヨウ素(5モル当量)で1時間処理した。
【0181】
DMF−ヨウ素溶液を濾過によって除去し、DMF(15ml)で3回、及びCHCl(15ml)で3回、毎回3分間、残渣を洗浄した。
【0182】
「プレーン」ペプチド(Fmoc基を含まない)を調製する場合、Fmoc基は除去し、実施例2に記載した一般的手順に従い、ペプチドを樹脂から放出させ、逆相HPLCによって精製した。Fmoc基を含まない標的化剤の場合、生成物は樹脂から放出され、同様に精製した。
使用した物質:
ヨウ素、CAS No.7553−56−2、分子量:253.81、Merck Art.No.4760
【実施例4】
【0183】
標的化単位(ペプチド)DLRSKの合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成した。
【0184】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂、0.68mmol/g、Bachemカタログ番号D−2565.0005
Fmoc−Ser(tBu)−OH、CAS No.71989−33−8、Perseptive Biosystemsカタログ番号GEN911062、分子量:383.4g/mol
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH、分子量:473.53g/mol、Bachemカタログ番号B−2475.0005
【0185】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例21に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した。環状化プロセス(マクロラクタム形成)の後、樹脂の小さいサンプル(依然として完全に保護されている環状ペプチドを含む)に、Fmoc除去(実施例2のステップ1〜10)に関する実施例2に記載したのと同様の処理を施し、その後、ペプチドのサンプルを、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理によって樹脂から切断し、実施例2に記載したのと同様に単離した。
【0186】
次いで、生成物(DLRSKマクロラクタム)を、環状DLRSKのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状DLRSK):
計算した分子質量=599.34
観察したシグナル:
600.42M+H
622.40M+Na
638.29M+K
Fmoc−DLRSKマクロラクタム
【0187】
環状Fmoc−DLRSKは、この場合省略した最後のFmoc除去以外は、環状DLRSKと同様の方法で調製し同定した。
MALDI−TOFデータ(環状Fmoc−DLRSK):
計算した分子質量=821.41
観察したシグナル:
822.60M+H
844.62M+Na
【実施例5】
【0188】
標的化単位(ペプチド)DLRSGRKの合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成した。
【0189】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−Gly−OH、CAS No.29022−11−5、Novabiochemカタログ番号04−12−1001、分子量:297.3g/mol
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH
【0190】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例21に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した。環状化プロセス(マクロラクタム形成)の後、樹脂の小さいサンプル(依然として完全に保護されている環状ペプチドを含み、さらなる合成、例えばビオチン化に適した出発物質である)に、Fmoc除去(実施例2のステップ1〜10)に関する実施例2に記載したのと同様の処理を施し、その後、ペプチドのサンプルを、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理によって樹脂から切断し、実施例2に記載したのと同様に単離した。
【0191】
次いで、生成物(環状DLRSGRK)を、環状DLRSKのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状DLRSGRK):
計算した分子質量=812.46
観察したシグナル:
813.69M+H
【実施例6】
【0192】
標的化単位(ペプチド)DRGLRSK(ラクタム架橋によって環状)の合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成した。
【0193】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−Gly−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH
【0194】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例21に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した。環状化プロセス(マクロラクタム形成)の後、樹脂の小さいサンプル(依然として完全に保護されている環状ペプチドを含む)に、Fmoc除去(実施例2のステップ1〜10)に関する実施例2に記載したのと同様の処理を施し、その後、ペプチドのサンプルを、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理によって樹脂から切断し、実施例2に記載したのと同様に単離した。
【0195】
次いで、生成物(DRGLRSKマクロラクタム)を、環状DRGLRSKのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状DRGLRSK):
計算した分子質量=812.46
観察したシグナル:
813.34M+H
【実施例7】
【0196】
標的化単位(ペプチド)AhxDLRSKの合成(ラクタム架橋によって環状である)
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成した。
【0197】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH
Fmoc−6−アミノヘキサン酸(Fmoc−6−Ahx−OH)、CAS No.88574−06−5、Novabiochemカタログ番号04−12−1111 A22837、分子量:353.4g/mol
【0198】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例21に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した。環状化プロセス(マクロラクタム形成)の後、樹脂の小さいサンプル(依然として完全に保護されている環状ペプチドを含む)に、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理を施した。このようにして、ペプチドのサンプルを樹脂から切断し、この場合省略した最終的なFmoc除去以外、そのサンプルの側鎖の保護基を除去した。サンプルは実施例2に記載したのと同様に単離した。次いで、生成物(DLRSKマクロラクタム)を、環状DLRSKのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状Fmoc−AhxDLRSK):
計算した分子質量=938.50
観察したシグナル:
939.50M+1
【実施例8】
【0199】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位ジアミノプロピオン酸を含み、ラクタム架橋によって環状である標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Fmoc2Dap−DLRSK(Dap=ジアミノプロピオニル)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成を使用して合成した(環状化を含めて、上記の実施例4の合成と同様)。次に、配列DLRSKを、実施例2に記載した一般的カップリング法によって、DL−2,3−ビス(Fmoc−アミノ)プロピオン酸を用いて維持し続けた。
【0200】
DL−2,3−ビス(Fmoc−アミノ)プロピオン酸の調製:
DL−2,3−ジアミノプロピオン酸一塩酸塩を、15mLの水性10%Na2CO3溶液に溶かした。次いで7mLのジオキサンを加え、反応混合物を+4℃に冷却した。Fmoc−塩化物を20mLのジオキサンに溶かしたものを加え、反応混合物を+4℃で1時間攪拌した。一晩室温で連続的に攪拌した後、反応混合物を酢酸エチルを用いて抽出し、次いでそれを蒸発させた。残渣はn−ヘキサンを用いて粉末状にし、少量の熱い酢酸エチルで洗浄して白い固体を得て、それを真空中で一晩乾燥させた。
【0201】
使用した試薬:
DL−2,3−ジアミノプロピオン酸一塩酸塩、CAS No.54897−59−5、C3H8N202.HCl、Acros Organics、ニュージャージー州、米国;ヘール、ベルギー、カタログ番号204670050
Fmoc−塩化物;9−フルオレニルメチルクロロホルメート98%;C.A.S.no:28920−43−6 Acros、カタログ番号170940250
MALDI−TOFデータ(Fmoc2Dap−DLRSK、環状):
計算した分子質量=1129.53
観察したシグナル:
1130.32M+H
【実施例9】
【0202】
標的化単位(ペプチド)(Fmoc−LRS)2DaPaの合成。樹脂と予め結合したアミノ酸残基を有さないペプチド合成樹脂の使用、及び保護アミノ酸誘導体(残基)を有するこのような樹脂の誘導体化
標的化単位(ペプチド)(Fmoc−LRS)2Dapa[2,3−ビス−(Fmoc−ロイシル−アルギニル−セリニル−アミノ)プロピオン酸]の合成を、実施例2に詳細に記載した、手動固相ペプチド合成技法を使用することによって行った。
【0203】
第1のアミノ酸単位(残基)と、ペプチド合成樹脂(HMP型;詳細に関しては、以下に与える物質のリストを参照のこと)のヒドロキシル基のカップリング(結合)を、そのアミノ官能基が9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(=Fmoc)基によって保護されていた(その保護法は実施例8中に記載する)、2,3−ビス−アミノプロピオン酸の誘導体に適用した、ジクロロ塩化ベンゾイル法によって行った。以下のプロトコルを使用した。
【0204】
「空の」樹脂(アミノ酸残基を有していない樹脂;市販の樹脂の製造者及び製品番号に関しては以下参照)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF;樹脂1g当たり15mlのDMF)を用いて20分間、(実施例2中に)上記に記載したのと同様に振とう器中で最初に洗浄し、排出させた。保護ジ−2,3−アミノプロピオン酸をDMFに溶かしたもの5モル当量(樹脂の充填容量に対して)を加えた後、その後8当量のピリジンを加え、次に約3分間振とうし、排出はしなかった。次いで、5当量の2,6−ジクロロ塩化ベンゾイルを加え、混合物を18時間周囲温度で振とうさせた。
【0205】
前述の処理の後、樹脂を排出し、実施例2の一般的プロトコルに記載したのと同様に、DMF及びジクロロメタンで3回洗浄し、次にアルゴンガス流中で乾燥させた。この実施例中でこれまで使用した試薬は、以下のものであった:
HMP樹脂、充填容量:1.16mmol/g(この市販品の製造者によって報告されたのと同様)、Applied Biosystemsカタログ番号400957
ピリジン、Merck Art.No.9728
2,3−ビス−(Fmoc−アミノ)プロピオン酸、実施例8に記載した調製物。
【0206】
この時点から、2モル当量に相当する試薬量を使用して、実施例2に記載した一般的方法に従って合成を進めた。上記に述べていない、或いは実施例2より下で述べていない、この合成で使用した試薬は、以下のものであった:
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
【0207】
生成物(Fmoc−LRS)2Dapaを、実施例2に記載した一般的方法に従ったその単離後、実施例2の一般的プロトコルに詳細に記載したのと同様に、MALDI−TOF質量スペクトル分析(正イオンモード)を使用して同定した。
MALDI−TOFデータ[(Fmoc−LRS)2Dapa]
計算した分子質量=1260.63
観察したシグナル:
1261.40M+H
【実施例10】
【0208】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位アミノ−オキシ酢酸を含み、ラクタム架橋によって環状である標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Aoa−DLRSK(Aoa=アミノオキシアセチル=NH2OCH2CO)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成を使用して合成した(環状化を含めて、上記の実施例4の合成と同様)。次に、配列DLRSKを、実施例2に記載した一般的カップリング法によって、アミノ−オキシ酢酸を用いて維持し続けた。
【0209】
使用した試薬:
Boc−アミノ−オキシ酢酸;Boc−NH−OCH2−COOH、分子量:191.2g/mol、Novabiochemカタログ番号01−63−0060
MALDI−TOFデータ(Aoa−DLRSK、環状):
計算した分子質量=674.37
観察したシグナル:
673.54M+H
【実施例11】
【0210】
アミド結合によってペプチドLRSのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位D−ビオチンを含み、標的化単位LRSも含む、標的化剤Bio−LRS(Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(上記の実施例1の合成と同様)を使用して、さらに以下の実施例13に記載するビオチン化手順を、最終カップリングステップとして使用して合成した。この最終カップリングプロセスでは、D−ビオチンを保護アミノ酸の代わりに使用した。D−ビオチンは保護されていなかったが、このように使用した。実施例2に示した方法で、生成物を単離及び精製し、正イオンモードMALDI−TOF分光法によって同定した(M+1イオンが明らかに優勢であった)。
MALDI−TOFデータ(Bio−LRS):
計算した分子質量=600.31
観察したシグナル:
601.34M+H
623.23M+Na
639.25M+K
【実施例12】
【0211】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位D−ビオチンを含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Bio−DLRSK(Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例4の合成と同様)を使用して、さらに以下の実施例13に記載するビオチン化手順を、最終カップリングステップとして使用して合成した。この最終カップリングプロセスでは、D−ビオチンを保護アミノ酸の代わりに使用した。D−ビオチンは保護されていなかったが、このように使用した。実施例2に示した方法で、生成物を単離及び精製し、正イオンモードMALDI−TOF分光法によって同定した(M+1イオンが明らかに優勢であった)。
MALDI−TOFデータ(Bio−DLRSK、環状):
計算した分子質量=825.42
観察したシグナル:
826.49M+H
848.35M+Na
【実施例13】
【0212】
ビオチン化化合物[エフェクター単位として1個のD−ビオチン(ビタミンH)を含む標的化剤]の合成で使用する一般的手順
適切な保護ペプチドを、実施例2に記載した一般的手順に従った固相合成を使用して合成した。ペプチドは脱保護せず、樹脂から除去もしなかった。樹脂結合ペプチドを、反応フラスコに加えた。樹脂はCH2Cl2(15ml)を使用して膨張させ、20分間攪拌した。溶媒を濾過によって除去し、3分間DMFを用いて、樹脂を1回処理した。ペプチドを、DMFに溶かした20%ピペリジン溶液(20ml)を使用して脱保護させ、それと共に5分間振とうさせ、(ここでは10分間の振とう)を使用して、このプロセスを繰り返した。樹脂をDMF(15ml)で3回、CH2Cl2(15ml)で3回、及びDMF(15ml)で1回、毎回3分間洗浄した。
【0213】
D−ビオチン(3モル当量)をDMF(10ml)に懸濁させた(不均質懸濁液)を、HBTU/HOBTをDMF(3モル当量)に溶かした0.5M溶液を用いて1分間、別の容器中で処理した。この容器に、ジ−イソプロピルエチルアミンをNMP(6モル当量)に溶かした2M溶液を加えた。添加後、反応混合物は均質になった。この混合物を反応装置に加え、装置は2時間振とうさせた。
【0214】
反応混合物を次いで濾過し、残渣はDMF(15ml)で3回、及びCHCl(15ml)で3回、毎回3分間洗浄した。
【0215】
ペプチドを本明細書に記載するようにビオチン化する場合、及び実施例3に記載するようにヨウ素処理によって環状化する場合、ビオチン化手順後に環状化を行った。
使用した物質:
D−ビオチン(ビタミンH)、CAS No.58−85−5、分子量:244.3g/mol、Sigma B−4501、99%
【実施例14】
【0216】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位D−ビオチンを含み、アスパラギン酸及びリジンの側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DLRSGRKも含む、標的化剤Bio−DLRSGRK(Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例5の合成と同様)を使用して、さらに上記の実施例13に記載するビオチン化手順を、最終カップリングステップとして使用して合成した。この最終カップリングプロセスでは、D−ビオチンを保護アミノ酸の代わりに使用した。D−ビオチンは保護されていなかったが、そのまま使用した。実施例2に示した方法で、生成物を単離及び精製し、正イオンモードMALDI−TOF分光法によって同定した(M+1イオンが明らかに優勢であった)。
MALDI−TOFデータ(Bio−DLRSGRK、環状):
計算した分子質量=1038.54
観察したシグナル:
1039.74M+H
1061.76M+Na
1077.60M+K
【実施例15】
【0217】
アミド結合によってペプチドDRGLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位D−ビオチンを含み、アスパラギン酸及びリジンの側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DRGLRSKも含む、標的化剤Bio−DRGLRSK(Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例6の合成と同様)を使用して、さらに以下の実施例13に記載するビオチン化手順を、最終カップリングステップとして使用して合成した。この最終カップリングプロセスでは、D−ビオチンを保護アミノ酸の代わりに使用した。D−ビオチンは保護されていなかったが、このように使用した。実施例2に示した方法で、生成物を単離及び精製し、正イオンモードMALDI−TOF分光法によって同定した(M+1イオンが明らかに優勢であった)。
MALDI−TOFデータ(Bio−DRGLRSK、環状):
計算した分子質量=1038.56
観察したシグナル:
1039.59M+H
【実施例16】
【0218】
アミド結合によってペプチドAhxDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位D−ビオチンを含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Bio−AhxDLRSK(Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例7の合成と同様)を使用して、さらに以下の実施例13に記載するビオチン化手順を、最終カップリングステップとして使用して合成した。この最終カップリングプロセスでは、D−ビオチンを保護アミノ酸の代わりに使用した。D−ビオチンは保護されていなかったが、このように使用した。実施例2に示した方法で、生成物を単離及び精製し、正イオンモードMALDI−TOF分光法によって同定した(M+1イオンが明らかに優勢であった)。
MALDI−TOFデータ(Bio−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=938.50
観察したシグナル:
939.50M+H
【実施例17】
【0219】
リジン残基(単位)のN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して、これが次にアミド結合によって6−アミノヘキサン酸(=Ahx)のアミノ基と、これが次にアミド結合によってDLRSKのアミノ末端と結合(1個と1個の連結単位及び/又はスペーサー単位によって、且つ/或いは1個の大きなスペーサー及び/又は連結単位として連結)した、1個のエフェクター単位D−ビオチンを含み、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Bio−K−AhxDLRSK(アスパラギン酸及びC−末端リジンの側鎖間の、アミド結合によって環状;Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
この合成は以下のように行った:完全に保護された樹脂結合した環状標的化単位(スペーサー/連結単位を有するペプチド)AhxDLRSKを、上記の実施例7に記載したのと同様に調製した。次に、実施例2に記載した一般的カップリング法によって、1個のリジン単位(N末端アミノ基ではFmoc基で、側鎖アミノ基ではBoc基で保護されている)を用いて、配列AhxDLRSKが維持され続けるようにした。出発物質として以下の試薬を使用した:
Fmoc−L−Lys(tBoc)−OH
【0220】
最後に、依然として樹脂に結合し、完全に保護されたK−AhxDLRSKを、実施例13に記載した一般的な方法に従いビオチン化した。HPLCによる精製によって、全体的な収率として30%の理論値を得た。生成物の同定:
正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトル:M+1イオンが明らかに優勢であった。
MALDI−TOFデータ(Bio−K−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=1066.60
観察したシグナル:
1067.5M+H
【実施例18】
【0221】
リジン残基(単位)の1個のアミノ基、N−末端アミノ基又は側鎖アミノ基、及び樹木状構造(2個のリジンはそれぞれ2個のエフェクタービオチン単位を有し、これらのリジンは、カルボキシル官能基を介して1個の他のリジンと結合しており、これは次にアミド結合によって、1個のリジン(側鎖が非結合状態である)のN−末端アミノ基と結合しており、これはAhx(6−アミノヘキサン酸)と同様に連結しており、これはアミド結合によるペプチドDLRSKのアミノ末端とのものである)と、そのカルボキシル基をそれぞれ介して、結合(連結単位及び/又はスペーサー単位の組合せとして、且つ/或いは1個の大きなスペーサー及び/又は連結単位としてみなすことができる樹木状構造を介して連結)した、4個の同一のエフェクター単位D−ビオチンを含み、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Bio−K−K−AhxDLRSK(アスパラギン酸及びC−末端リジンの側鎖間の、アミド結合によって環状;Bio=D−ビオチン=ビタミンH)の合成
生成物は、以下に示す式を有し:
【化5】


4倍ビオチン化した4個の分岐鎖連結/スペーサー単位を、K−AhxDLRSKのN−末端に含むことを示すことができる。
【0222】
この合成は以下のように行った:完全に保護された樹脂結合「樹脂上」の環状標的化単位(2個のスペーサー/連結単位を有するペプチド)K−AhxDLRSKを、上記の実施例16に記載したのと同様に調製した。4個のビオチン及び3個のリジンを含む分岐鎖構造を、実施例2に記載した一般的カップリング法によって構築し、その結果1個のリジン単位(その2個のアミノ基のそれぞれが1個のFmoc基で保護されている)を最初に用いて、配列K−AhxDLRSKが維持され続けるようにした。次いで、手順(リジン添加)を、2倍量のカップリング試薬及び2倍保護された(Fmoc基)リジンを使用して繰り返し、さらに2個のリジン単位を、それらの1個は最初に結合させたリジン単位の側鎖アミノ基で、1個はアミノ末端アミノ基で結合させた。(参照実施例に記載した物質以外に)使用した試薬:
Fmoc−L−Lys(Fmoc)−OH、CAS No.78081−87−5、分子量:590.7g/mol、PerSeptive Biosystemsカタログ番号GEN911095、ハンブルク、ドイツ
【0223】
樹脂結合分岐鎖ペプチドを使用し、12モル当量のカップリング試薬及びビオチンを使用することによって、実施例13に記載した一般的な方法に従いビオチン化を行って、4個のビオチン単位を含む構造を得た。HPLCによる精製によって、全体的な収率として44%の理論値を得た。
【0224】
生成物の同定:
正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトル:M+1イオンが明らかに優勢であった。
MALDI−TOFデータ(Bio−K−K−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=2129.12
観察したシグナル:
2129.89M+H(最大アイソトポマーは2130.9である)
【実施例19】
【0225】
リジン残基(単位)の1個のアミノ基、N−末端アミノ基又は側鎖アミノ基、及び樹木状構造(2個のリジンはそれぞれ2個のエフェクタービオチン単位を有し、これらのリジンは、カルボキシル官能基を介して1個の他のリジンと結合しており、これは次にアミド結合によって、1個のリジン(Dtpaとのアミド結合によって側鎖が結合状態である)のN−末端アミノ基と結合しており、これはAhx(6−アミノヘキサン酸)と同様に連結しており、これはアミド結合によるペプチドDLRSKのアミノ末端とのものである)と、そのカルボキシル基をそれぞれ介して、結合(連結単位及び/又はスペーサー単位の組合せとして、且つ/或いは1個の大きなスペーサー及び/又は連結単位としてみなすことができる樹木状構造を介して連結)した、2つの型のエフェクター単位:4個の同一のエフェクター単位D−ビオチンを含み、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Bio−K−K(Dtpa)−AhxDLRSK(アスパラギン酸及びC−末端リジンの側鎖間の、アミド結合によって環状;Bio=D−ビオチン=ビタミンH;Dtpa=ジエチレントリアミンペンタ酢酸−1個のOH)の合成
生成物は、以下に示す式を有し:
【化6】


4倍ビオチン化した5個の分岐鎖連結/スペーサー単位を含み、ペプチドAhxDLRSKのN−末端の、1個の分岐鎖上にDtpa−部分を有することを示すことができる。
【0226】
この合成は以下のように行った:単離及び精製した標的化剤Bio−K−K−AhxDLRSKを、上記の実施例18に記載したのと同様に調製した。このようにして得た生成物を、10モル当量のジエチレントリアミンペンタ酢酸二無水物をDMF溶液に溶かしたもの(0.01M溶液、ビオチン化ペプチドに基づいて計算した)を用いて、次いで18時間処理した。この処理後、このDMF溶液に水を加えることによって体積を2倍にし、溶液を別の場所に置き、さらに4時間放置した。最後に、溶媒を真空中で蒸発させ、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水に残渣を混合させ、濾過し、逆相HPLCによって濾過物を精製した。MALDI−TOF質量スペクトルにおけるそのM+1ピークによって、生成物を同定した。
生成物の同定:
正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトル:M+1イオンが明らかに優勢であった。
MALDI−TOFデータ[Bio−K−K(Dtpa)−AhxDLRSK、環状]:
計算した分子質量=2504.24
観察したシグナル:
2505.29M+H
【実施例20】
【0227】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位5−(1−O−カルボラニル)−ペンタン酸を含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のラクタム架橋によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Cbp−DLRSK[Cbp=5−(1−O−カルボラニル)−ペンタノイル]の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例4の合成と同様)を使用して合成した。次に、実施例2に記載した一般的カップリング技法により、5−(1−O−カルボラニル)−ペンタン酸を用いて、配列DLRSKが維持され続けるようにした。ただしPyAoP(HBTUの代わり)及びHOAT(HOBtの代わり)、並びに実施例2の処理ステップ12の反応時間4時間。
使用した試薬:
5−(1−O−カルボラニル)−ペンタン酸、Katchem、プラハ、チェコ、Republic、F.W.244.34g/mol
MALDI−TOFデータ(Cbp−DLRSK、環状):
計算した分子質量=817.60(basis B10、abund.20%)、827.57(basis B11 abund.80%)
平均分子量=826.01g/mol
観察したシグナル:
多重項、826.55及び827.55で最高ピーク:M+H
多重項、848.45及び849.50で最高ピーク:M+Na
【実施例21】
【0228】
ラクタムの形のペプチド、標的化単位、標的化剤又は標的化モチーフを(マクロラクタムとして;「介在」配列の端部の配列中に含まれた、リジン及びアスパラギン酸の側鎖間のアミド結合によって)、環状化するための一般的方法
非環状の、完全に保護され、樹脂結合したペプチドを、上記の実施例2に記載した一般的方法によって手作業で調製した。
【0229】
環状化の前に、選択的な、1プロセスの、リジン及びアスパラギン酸の側鎖保護基の分解[前記基は:リジン単位上の4−メチルトリチル、及びアスパラギン酸単位上2−フェニルイソプロピル(エステル)であった]を、希釈したTFA(4%、ジクロロメタン中)を用いて行った。環状化は、アスパラギン酸単位の側鎖カルボキシル基とリジン単位の6−アミノ基(側鎖アミノ基)の間の、縮合を含んでいた。活性化は、PyAOP/HOAt/DIPEA試薬混合物(詳細、及び略称の説明に関しては、以下参照)、或いはPyAOP/DIPEAによるものであった。装置、共通の溶媒、及び実際の技法は、実施例2に記載したものと同様であった。
【0230】
最初に完全に保護され、樹脂結合したペプチド(例えば0.3mmol)を、以下に示す時間の間異なる溶液(約10mL)と共に、室温でアルゴン雰囲気下において振とうさせ、次に濾過した:
1.ジクロロメタン、20分間
2.ジクロロメタンに溶かした4%(体積)トリフルオロ酢酸、15分間
3.0.2MのDIPEA、NMPとジクロロメタンの1:10混合物中、3分間
4.ジクロロメタン、3分間
5.ジクロロメタン、3分間
6.ジクロロメタン、3分間
7.DMF、3分間
8.活性化、4時間、以下の記載に従う。
【0231】
樹脂結合ペプチド(したがって、両方0.9mmol)をDMF(7mL)に溶かしたものに関して、PyAOPとHOAt、3モル当量の両成分(或いは代替的にPyAOPのみ)の混合物を、濾過せずに樹脂と共に1分間振とうさせ、次に2MのDIPEAをNMPに溶かしたもの6モル当量を加えた。
【0232】
上記のステップ8の後、実施例2のステップ13から始めて、実施例2に記載したのと同様に手順を続けた。
【0233】
この型の環状化における活性化用の試薬は以下のものであった:
PyAOP=7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.156311−83−0、PE Biosystemsカタログ番号GEN076531、分子量:521.4g/mol
HOAt=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、DMFに溶かした0.5M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号4330631
DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリドンに溶かした2.0M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号401517
【0234】
「HBTU及びHOBt」代替の物質に関しては、実施例2に示す物質を参照のこと。
【0235】
その間に「過剰な」ペプチド結合が形成された、「特別な」アミノ酸単位(アスパラギン酸及びリジン)の出発物質:
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂、0.68mmol/g、Bachemカタログ番号D−2565.0005
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH、分子量:473.53g/mol、Bachemカタログ番号B−2475.0005
【実施例22】
【0236】
アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、エフェクター単位4−アミノ−10メチル葉酸を含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のラクタム架橋によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Amf−DLRSK(Amf=4−アミノ−10メチル葉酸アシル)の合成
この標的化剤は、上記の実施例2に記載した手動合成(環状化を含めて、上記の実施例4の合成と同様)を使用して合成した。次に、実施例2に記載した一般的カップリング技法により、4−アミノ−10メチル葉酸を用いて、配列DLRSKが維持され続けるようにした。ただしPyAoP(HBTUの代わり)及びHOAT(HOBtの代わり)、並びに実施例2の処理ステップ12における反応時間5時間、及び樹脂結合ペプチドと等モル比の試薬(ペプチド/PyAOP/HOAT/DIPEA=1:1:1:2)。
使用した試薬:
4−アミノ−10メチル葉酸;(+)アメトプテリン;メトトレキセート水和物
CAS No.59−05−2、式重量:454.4g/mol、Sigmaカタログ番号A−6770
MALDI−TOFデータ(Amf−DLRSK、環状):
計算した分子質量=1035.50
観察したシグナル:
1036.35M+H
【実施例23】
【0237】
Aoa−DLRSK[アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、連結(結合)単位アミノオキシ酢酸を含む、標的化剤(ペプチドの誘導体)]のアミノオキシ基とオキシム結合によって、アセチル部分のそのカルボキシル基を介して結合した、エフェクター単位ダウノマイシンを含み、ラクタム架橋によって環状である標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Dnm−Aoa−DLRSK(Dnm=1個の酸素の消失によってその周辺カルボニル基を介して連結したダウノマイシン)の合成
この標的化剤は、3日間暗所において室温で、等モル量のダウノマイシン塩酸塩をメタノール溶液に溶かしたもの(濃度0.0025M)と共に、上記の実施例10に記載したAoa−DLRSKを攪拌することによって合成した。溶媒を蒸発させることによって生成物を単離し、実施例2に記載したのと同様の逆相HPLCによって精製した。
使用した試薬:
ダウノマイシン塩酸塩、CAS No.20830−81−3、分子量:564.0g/mol、ICN Biomedicals、Aurora、オハイオ州、米国、カタログ番号44583
MALDI−TOFデータ(Dnm−Aoa−DLRSK、環状):
計算した分子質量=1181.52
観察したシグナル:
1182.41M+H
【実施例24】
【0238】
Aoa−DLRSK[アミド結合によってペプチドDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合(特異的な連結単位なしで直接連結)した、連結(結合)単位アミノオキシ酢酸を含む、標的化剤(ペプチドの誘導体)]のアミノオキシ基とオキシム結合によって、ヒドロキシアセチル部分のそのカルボキシル基を介して結合した、エフェクター単位ドキソルビシンを含み、ラクタム架橋によって環状である標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Dxrb−Aoa−DLRSK(Dxrb=1個の酸素の消失によってその周辺カルボニル基を介して連結したドキソルビシン)の合成
この標的化剤は、3日間暗所において室温で、等モル量のドキソルビシン塩酸塩をメタノール溶液に溶かしたもの(濃度0.0025M)と共に、上記の実施例10に記載したAoa−DLRSKを攪拌することによって合成した。溶媒を蒸発させることによって生成物を単離し、実施例2に記載したのと同様の逆相HPLCによって精製した。
使用した試薬:
ドキソルビシン塩酸塩、CAS No.25316−40−9、分子量:580.0g/mol、Flukaカタログ番号44583
MALDI−TOFデータ(Dxrb−Aoa−DLRSK、環状):
計算した分子質量=1197.52
観察したシグナル:
1198.17M+H
構造式:
【化7】

【実施例25】
【0239】
標的化単位を含む融合タンパク質の調製
所望のアミノ酸配列をコードする合成DNA配列を、EcoRI又はBamHI制限部位をコード鎖の5’端に、及び停止コドンをコード鎖の3’端に含む、2個の相補オリゴヌクレオチド(Genset SA)を、65℃で1分間アニーリングすることによって生成した。標的化ペプチドをコードするDNAを生成するために、部分的に重複しているオリゴヌクレオチドを使用して、二本鎖生成物を、遊離dNTPの存在下で72℃において30秒間で合成した。
【0240】
以下のオリゴヌクレオチドを、異なる標的化配列をコードするDNAを生成するために使用した:
GCLRSC:

【0241】
二本鎖生成物は、BamHI及びEcoRIを用いて消化し、それらの断片を、pGEX−2TKベクター(AmershamPharmacia Biotech)の対応する制限部位に結合させた。反応能力のある大腸菌BL21細菌は、結合用混合物を用いて形質転換し、形質転換体は、コロニーPCR(PCR=ポリメラーゼ連鎖反応)を使用してスクリーニングした。pGEXベクターの挿入体の側面領域に特異的なプライマーを、挿入体(正方向プライマー:5’−GCATGGCCTTTGCAGGG−3’;逆方向プライマー:5’−AGCTGCATGTGTCAGAGG−3’)を同定するために使用した。QlAprep Spin miniprepキット(カタログ番号27106;Qiagen)を使用して、陽性クローンからDNAを単離した。
【0242】
構築体のDNA配列を、コロニーPCR用と同じプライマーを使用して、ALF自動式DNAシークエンサー(AmershamPharmacia Biotech)によって決定した。GST及びGST−融合タンパク質の大規模な生成及び精製を、AmershamPharmaciaの教示書(GST検出装置の教示書、Technical document XY0460012−Rev.8.pdf;ウプサラ、スウェーデン)に従って行った。GST−融合タンパク質の大きさ、量及び純度は、SDS−PAGE(=ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)によって調べた。
【実施例26】
【0243】
マウスの腫瘍のin vivoでの標的化
この実施例では、上記の実施例で調製した標的化単位のin vivoでの標的化を、4つの異なる型の原発性腫瘍(繊維肉腫、カポジ肉腫、黒色腫、グリア芽腫及び腺癌)、及び肺中の黒色転移腫に関して示す。試験した本発明の標的化単位は、in vivoでは原発性腫瘍及び転移腫を選択的に標的化するが、正常な組織又は器官は標的化しないことが示される。
【0244】
細胞系及び腫瘍を有するマウス
以下の腫瘍細胞系を使用して、マウスにおける実験的腫瘍を生成した:
「ODC肉腫細胞」、(OS)、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の過剰発現によって形質転換させたNIH3T3マウス線維芽細胞を投与された、ヌードマウス中で形成された腫瘍に元来由来し、初期に記載されている(Auvinen他、1992);
カポジ肉腫細胞系、KS1767、(KS)、以前に記載された(Herndier他、1996);
ヒト黒色腫細胞系、C8161(M)、Welch他(1991)によって記載された;
グリア芽腫細胞系U−87 MG、ATCC HTB14、(GB)、以前に記載された(Beckman他、1971、Fogh他1977);及び
非小細胞肺癌系NCI−H23、ATCC No.5800、(AC)、以前に記載された(Mase他、2002)。
【0245】
これらの細胞系を、5〜10%のウシ胎児血清(FCS;BioWhittaker)、1%のL−グルタミン(Bio−Whittaker)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Bio−Whittaker)を補った、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM;Bio−Whittaker)中で培養した。U−87 MG細胞系は、1.5g/lの炭酸水素ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、及び10%のウシ胎児血清を含むように調整した、2mMのL−グルタミン及びアールのBSSを含む最小必須培地イーグル中で培養した。NC1−H23細胞系は、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、10mMのHEPES、及び1.0mMのピルビン酸ナトリウム、90%;ウシ胎児血清、10%を含むように調整した、2mMのL−グルタミンを含むRPMI 1640培地中で培養した。
【0246】
実験的腫瘍の生成
実験的腫瘍を生成するために、上記に列挙した細胞(OS、KS及び黒色腫:0.5×106細胞、U−87 MG:1×106細胞及びNCI−H23 3×106細胞)を、系統Balb/c Ola Hsd−nude、NMRI/nu/nu又はAthymic−nu(両方の系統のマウスは、いずれもHarlan Laboratoriesからのものであった)の、ヌードマウスの両脇腹に皮下注射した。約0.4gの重量に達したとき、腫瘍を採取した。
【0247】
転移腫(大部分は肺中で形成された)は、黒色腫細胞をBalb/c Ola Hsd−ヌードマウスの静脈内に注射することによって生成させた。マウスは4〜6週間飼育し、次いで標的化実験を行った。
【0248】
腫瘍を有するマウス又は転移腫を有するマウスに、体重1g当たり0.02mlのAvertin[10gの2,2,2−トリブロモエタノール(Fluka)を10mlの2−メチル−2−ブタノール(Sigma Aldrich)]に溶かしたものを、腹腔内(i.p.)投与することによって麻酔をかけた。
【0249】
in vivoでの標的化及び標的化の検出
標的化ペプチドを局在させるために、KS、OS又は黒色腫腫瘍を有するか、或いは転移腫を有するNMRIヌードマウスに麻酔をかけ、1又は2mgの実施例25で調製したGST−融合タンパク質をDMEMに溶かしたもの、又は対照としてGSTのみをDMEMに溶かしたものを、静脈内又は腹腔内注射した。或いは、1又は2mgの(実施例12で調製した)ビオチン化合成標的化ペプチドを、その静脈内注射後5〜10分で静脈内注射し、翼状潅流用25Gニードルセット(Terumo)及び50mlのDMEMを使用して、マウスの心臓に潅流液を送った。次いで、それらの器官を切開し、液体窒素中に凍結させた。いくつかの場合、GST−融合タンパク質を前述のように静脈内注射し、次いで潅流なしで30分、4時間、8時間又は18時間後に、マウスを殺傷し、次いで腫瘍及び対照器官(肝臓、腎臓、脾臓、心臓、脳)を切開し、液体窒素中に凍結させた。腹腔内注射したマウスは、殺傷するまで24時間飼育し、次いで腫瘍及び対照器官を、前述のように切開し凍結させた。
【0250】
GST融合タンパク質(及び対照としてGST)は、ヤギ抗GST抗血清(AmershamPharmacia)によって、10マイクロメートルの凍結切片で検出した。
【0251】
ビオチン化ペプチド/ペプチド模倣類似体/ペプチジル類似体(標的化剤)を、アビジン、及びビオチン化HRP(Vectastain ABC−キット、カタログ番号PK6100;Vector Laboratories)を含むAB(アビジン−ビオチン)−複合体、及びジアミノベンジジン(DAB基質キット、カタログ番号4100、Vector Laboratories)を使用して、10マイクロメートルの凍結切片で検出した。
【0252】
これらの実験の結果を、表2に示す。
【0253】
【表2】

【実施例27】
【0254】
細胞毒性エフェクター単位を含む標的化剤の治療効果
この実験では、標的化モチーフLRSを含む環状標的化単位DLRSKとオキシム結合によって連結した、細胞毒性エフェクター単位、ドキソルビシンを含む、実施例24で調製した標的化剤、Dxrb−Aoa−DLRSKを使用して、in vivoでの標的化、及び黒色腫腫瘍に対する治療効果を実証した。
【0255】
100万個のC8161M/T1黒色腫細胞を、8匹のAthymic−nuマウスの脇腹に皮下注射し、腫瘍を1週間増殖させた。次いでこれらのマウスを3つの群に分け、これらに以下の治療を与えた:
DMEM群:2匹のマウス、DMEMのみ
Dox群:2匹のマウス、1、43mg/kgのドキソルビシンをDMEMに溶かしたもの
pept+dox群:4匹のマウス、1、43mg/kgのDxrb−Aoa−DLRSK(標的化モチーフLRSと連結したドキソルビシン)をDMEMに溶かしたもの(Dox群と用量は等モル)
【0256】
治療剤は1週間に2回(火曜日と金曜日に)静脈内投与し、合計5回の用量を注射した。それぞれの注射日、及び動物を殺傷した日に、2回垂直方向で、カリパスを用いて腫瘍を測定した。腫瘍体積は、楕円形の公式によって計算した:
体積=(長さ×幅)×0.5
【0257】
この実験の結果は図1に示し、本発明の標的化剤は、in vivoにおいて黒色腫腫瘍を選択的に標的化し、ドキソルビシンの治療効果を有意に増大させることが確認される。
使用した試薬:
ドキソルビシン塩酸塩、CAS No.25316−40−9、分子量:580.0g/mol、Flukaカタログ番号44583
【実施例28】
【0258】
「介在」配列の端部の配列中に含まれるD−オルニチンとグルタミン酸の間のアミド結合によって、ペプチド又は関連物質を環状化するための一般的方法:「頭部−側鎖マクロラクタム」、即ち「Glu(D−Orn)−環」の形成
非環状の、完全に保護され、樹脂結合したペプチドを、上記に記載した一般的方法によって手作業で調製する。
【0259】
環状化の前に、選択的な、1プロセスの、オルニチン及びグルタミン酸の個々の保護基の分解[前記基は:オルニチン単位上の2N−Fmoc、及びグルタミン酸単位上の5−(2−トリメチルシリルエチルエステル)である]を、テトラブチルアンモニウム塩化物溶液をDMFに溶かしたものを用いて行う。環状化は、グルタミン酸単位の側鎖カルボキシル基とオルニチン単位の2−アミノ基(N−末端アミノ基)の間の、縮合を含む。活性化は、実施例2に記載したHBTU/HOBt/DIPEA混合物の代わりに、PyAOP/DIPEA試薬混合物によるものである(詳細、及び略称の説明に関しては、以下参照)。装置、共通の溶媒、及び実際の技法は、実施例2に記載したものと同様である。
【0260】
この方法は、これらのアミノ酸のそれぞれの誘導体を使用することによって、リジン(オルニチンの代わり)及びアスパラギン酸(グルタミン酸の代わり)単位用に、改変することができる。
【0261】
最初に完全に保護され、樹脂結合したペプチド(0.3mmol)を、以下に示す時間の間異なる溶液(約10mL)と共に、室温でアルゴン雰囲気下において振とうさせ、次に濾過する:
1. ジクロロメタン、20分間
2. 1Mのテトラブチルアンモニウム塩化物をDMFに溶かしたもの、20分間
3〜5. DMF、1分間(3回処理)。
6〜8. DCM、1分間(3回処理)。
9. DMF、1分間
10. 0.9mmolのPyAOP(樹脂結合したペプチドに対して3モル当量)をDMF(7mL)に溶かしたものを、濾過せずに樹脂と共に1分間振とうさせる。
11. 6モル当量の2MのDIPEA(したがって、1.8mmol)をNMPに溶かしたものを加え、次に4時間振とうさせる。
【0262】
前述のステップの後、例えば(手動)ペプチド合成(活性アミノ酸を加えた後のステップ)に関する一般的手順に記載したのと同様に、樹脂を洗浄する。
【0263】
環状化前の脱保護用の試薬は以下のものである:
テトラブチルアンモニウム塩化物三水和物、CAS No.87749−50−6、分子量:315.51g/mol、Acros Organicsカタログ番号221080500
【0264】
この型の環状化における活性化用の試薬は以下のものである:
PyAOP=7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.156311−83−0、PE Biosystemsカタログ番号GEN076531、分子量:521.4g/mol
DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリドンに溶かした2.0M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号401517
【0265】
その間に「過剰な」ペプチド結合が形成される、「特別な」アミノ酸単位(グルタミン酸及びオルニチン)の出発物質:
Fmoc−D−Orn(Mtt)−OH;2−N−Fmoc−5−N−(4−メチルトリチル)−D−オルニチン、分子量:610.8g/mol、Novabiochemカタログ番号04−13−1012。
Fmoc−L−Glu(OTMSEt)−ONa;N−2−Fmoc−グルタミン酸5−(2−トリメチルシリルエチル)エステルナトリウム塩、分子量:468.60g/mol、Novabiochemカタログ番号0412−1231。
【実施例29】
【0266】
グルタミン酸単位の側鎖とD−オルニチンのα−アミノ基間のアミド結合によって環状である、標的化単位(ペプチド)D−OrnLRSE−アミドの合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成し、その中で、「空の」樹脂は、予め充填した樹脂に関して記載したのと同じ方法(実施例2のステップ1〜11)で、最初のカップリングの前に脱保護した。
【0267】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
RinkアミドMBHA樹脂
Fmoc−L−Glu(OTMSEt)−OH
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−D−Orn(Mtt)−OH
【0268】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例28に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した。次に、ペプチドのサンプルを、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理によって樹脂から切断し、実施例2に記載したのと同様に単離した。
【0269】
次いで生成物を、環状D−OrnLRSE−アミドのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状D−OrnLRSE−NH):
計算した分子質量=598.36
観察したシグナル:
599.42M+1
【実施例30】
【0270】
アミド結合によってペプチドAhxDLRSKの6−アミノヘキサノイル(=Ahx)部分においてアミノ基と結合した、エフェクター単位カンプトテシンカルボネートを含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Cptc−AhxDLRSK[Cptc=カルボニルアシル、即ち(S)−(+)−カンプトテシンカルボニル部分を介してそのヒドロキシル基において、エステルとして連結した(S)−(+)−カンプトテシン](又は、エフェクター単位(S)−(+)−カンプトテシンが、スペーサー単位6−(カルボニルアミノ)−ヘキサノイルによって標的化単位DLRSKと連結している標的化剤)の合成
この実施例の最後に記載する、カンプトテシンp−ニトロフェニルカルボネートを、0.02M溶液としてDMFに溶かし、同じ溶媒の上記の実施例7に記載した等モル量の環状標的化化合物AhxDLRSKの0.04M溶液と組み合わせた。一晩放置した後、2MのDIPEAをNMPに溶かしたものを、10%過剰に(即ち等モル量の1.1倍)加えた。一晩攪拌した後、混合物をジエチルエーテルで希釈し、遠心分離にかけた固形沈殿を、正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルにおけるそのM+1イオンに基づく生成物の同定を含めて、実施例2に記載したのと同様の逆相HPLCクロマトグラフィーによって精製した。
MALDI−TOFデータ(Cptc−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=1086.51
観察したシグナル:
1087.26M+1
【0271】
カンプトテシンp−ニトロフェニルカルボネートの合成:0.29mmolの4−ニトロフェニルクロロギ酸、及び0.10mmolの(S)−(+)−カンプトテシンを、12mLのジクロロメタン(DCM)に溶かした。次に、1.71mmolの4−(ジメチルアミノ)−ピリジン(DMAP)を、冷水浴のDCM溶液に加えた。次いで混合物を2時間振とうさせ、次に30mLのDCMで希釈した。0.1%の塩酸で2回、及び飽和水性塩化ナトリウム溶液で1回洗浄した後:DCM溶液を硫酸二ナトリウムを用いて乾燥させ、濾過し、少量体積に濃縮した。生成物はジエチルエーテルを加えることによって沈殿させ、遠心分離後に集めた。
【0272】
カンプトテシンp−ニトロフェニルカルボネートの合成において使用した物質:
4−ニトロフェニルクロロギ酸、GAS No.7693−46−1、分子量:201.57g/mol、Fluka製品番号23240
(S)−(+)−カンプトテシン、CAS No.7689−03−4、分子量:348.36g/mol、Aldrich製品番号36,563−7
DMAP;4−ジメチルアミノピリジン、CAS No.1122−58−3、分子量:122.17g/mol、Fluka製品番号29224
【実施例31】
【0273】
グルタミン酸単位の側鎖とD−オルニチンのα−アミノ基間のアミド結合によって環状である、標的化剤D−Orn(Dota)LRSE−アミド(Dota=その1個のカルボキシルによって結合した、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸)の合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護され、樹脂結合した、環状標的化単位を、上記の実施例29に記載した手動合成によって合成した。次に、実施例21(ステップ1〜7)に記載した方法で、希釈したTFA(4%、ジクロロメタン中)を用いて、樹脂を処理して、オルニチンの側鎖保護Mtt基を切断した。次いで、依然として樹脂に結合した単位を、HBTU/HOBt/DIPEA活性化を使用する、実施例2(ステップ12〜18)に記載した一般的方法によって、DOTA−トリス−tertブチルエステルと結合させた。使用した試薬:
DOTA−トリス−(tBuエステル)。
【0274】
生成物は、実施例2に記載したように切断及び単離し、環状D−Orn(Dota)LRSE−アミドのM+1イオンが明らかに優勢であった、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ[環状D−Orn(Dota)LRSE−NH]:
計算した分子質量=984.54
観察したシグナル:
985.52M+1
【実施例32】
【0275】
アスパラギン酸単位の側鎖とリジンのα−アミノ基間のアミド結合によって環状である、標的化単位(ペプチド)KLRSD−アミドの合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護された、樹脂結合標的化単位(保護ペプチド)を、上記の実施例2に記載した手動合成によって合成し、その中で、「空の」樹脂は、予め充填した樹脂に関して記載したのと同じ方法(実施例2のステップ1〜11)で、最初のカップリングの前に脱保護した。
【0276】
以下の試薬を、(この順番で)出発物質として使用した:
RinkアミドMBHA樹脂
Fmoc−L−Asp(OTMSEt)−OH
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−L−Lys(Mtt)−OH
【0277】
カップリングプロセスの最終サイクルの後、依然として樹脂結合している標的化単位に、実施例29に記載したのと同様に過剰なアミド結合を形成する、環状化プロセスを施した(変更として、GluとAsp、並びにLysとOrnを置換する)。次に、ペプチドのサンプルを、実施例2に記載した切断用混合物を用いる3時間の処理によって樹脂から切断し、実施例2に記載したのと同様に単離した。
【0278】
次いで生成物を、M+1イオンによる、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ(環状KLRSD−NH):
計算した分子質量=598.36
観察したシグナル:
599.21M+1
【実施例33】
【0279】
アスパラギン酸単位の側鎖とリジンのα−アミノ基間のアミド結合によって環状である、標的化剤K(DOTA)LRSD−アミド(DOTA=その1個のカルボキシルによって結合した、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸)の合成
標的化モチーフLRSを含む、機能的に保護され、樹脂結合した、環状標的化単位を、上記の実施例32に記載した手動合成によって合成した。次に、実施例21(ステップ1〜7)に記載した方法で、希釈したTFA(4%、ジクロロメタン中)を用いて、樹脂を処理して、リジンの側鎖保護Mtt基を切断した。次いで、依然として樹脂に結合した単位を、HBTU/HOBt/DIPEA活性化を使用する、実施例2(ステップ12〜18)に記載した一般的方法によって、DOTA−トリス−tertブチルエステルと結合させた。
使用した試薬:DOTA−トリス−(tBuエステル)。
【0280】
生成物は、実施例2に記載したように切断及び単離し、M+1イオンによる、その正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルによって同定した。
MALDI−TOFデータ[環状K(Dota)LRSE−NH]:
計算した分子質量=984.54
観察したシグナル:
985.52M+1
【実施例34】
【0281】
アスパラギン酸及びリジンの側鎖によって環状である、標的化単位Ac−DLRSK−Ahxの合成
Ac−DLRSK−Ahxの調製を、実施例2に詳細に記載した手動固相ペプチド合成技法によって行った。
【0282】
そのアミノ官能基が9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(=Fmoc基)によって保護されていた、第1の構造構成要素(成分)、6−アミノヘキサン酸(=Ahx)と、ヒドロキシル官能化ペプチド合成樹脂の結合を、ジクロロ塩化ベンゾイル法によって行った(以下の「当量」は、樹脂の充填容量に対する、分子又は「mol」量である)。
【0283】
非充填(「空の」)樹脂を、20分間N,N−ジメチルホルムアミド(=DMF)と共に振とうさせることによって最初に洗浄し、濾過した。5当量のFmoc保護6−アミノヘキサン酸(Fmoc−Ahx−OH)をDMFに溶かしたもの(0.2M溶液)、及び8当量のピリジンを樹脂に加えた後、それを3分間振とうさせた。次に、5当量の2,6−ジクロロ塩化ベンゾイルを加え、混合物を18時間(一晩)振とうさせた。
【0284】
長い処理の後、実施例2(ステップ13〜18)に記載した方法で、樹脂を濾過し、DMF及びジクロロメタンを用いて数回洗浄した。次に、無水酢酸(2M溶液、94当量)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、1.6M溶液、80当量)の混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)溶液に溶かしたものと共に、2時間樹脂を振とうさせ、上記と同様に濾過及び洗浄し、最後にアルゴンガス流中で乾燥させた。
【0285】
これまで使用した試薬は、以下のものであった:
HMP樹脂、充填容量:1.16mmol/g、Applied Biosystemsカタログ番号400957
2,6−ジクロロ塩化ベンゾイル、CAS No.225−102−4、分子量:209.46g/mol、Lancaster(モーカム、イングランド)カタログ番号8922
ピリジン、Merck Art.No.9728.
Fmoc−6−アミノヘキサン酸(Fmoc−6−Ahx−OH)、CAS No.88574−06−5、Novabiochemカタログ番号04−12−1111、分子量:353.4g/mol、
無水酢酸、Fukaカタログ番号45830。
【0286】
この時点から、実施例2に記載した一般的方法に従って合成を進める。この合成で次に使用する構造体試薬は、順に以下の通りである:
Fmoc−Lys(Mtt)−OH
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH
Fmoc−L−Leu−OH
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH
【0287】
依然として樹脂結合している生成物を、次に実施例21に従い環状化させた。最後に、以下のように酢酸を用いて、配列が維持され続けるようにした(即ち、アミノ末端において端部を覆った):アミノ保護Fmoc基を、実施例2(ステップ1〜10)に記載したのと同様に除去した。次いで、依然として樹脂結合している生成物を、Ahx部分と樹脂の最初の結合後に行ったのと同様に、無水酢酸とDIPEAの混合物をNMPに溶かしたものを用いて処理した。最後に、実施例2に記載したのと同様に、生成物を樹脂から切り離し精製した。同定は、MALDI−TOF質量スペクトルのM+1イオンに基づくものであった。
MALDI−TOFデータ(環状Ac−DLRSK−Ahx)
計算した分子質量=754.43
観察したシグナル:755.60
【実施例35】
【0288】
標的化モチーフLRSを含むN被覆(Ac=アセチル)環状標的化単位Ac−DLRSK−Ahxの、C末端スペーサー部分(Ahx=6−アミノヘキサノイル)のカルボキシル基と、アミド結合によって連結したドキソルビシンを含む、Ac−DLRSK−Ahx−Dox(Dox=そのアミノ基を介して結合したドキソルビシン)標的化剤の合成
「標的化単位」化合物(ペプチド誘導体)Ac−DLRSK−Ahxを、実施例34に記載したのと同様に調製した。ドキソルビシンを、以下のPyAOP/IDIPEA活性化によって、N,N−ジメチルホルムアミド(=DMF)溶液中で精製Ac−DLRSK−Ahxと連結させた。
【0289】
等モル量のAc−DLRSK−AhxとPyAOPを、0.05M溶液としてDMF中で組み合わせ、2モル当量のDIPEA(2M溶液、NMP中)をその中に混合し、5分後、(Ac−DLRSK Ahxに対して)等モル量のドキソルビシン塩酸塩(0.05M溶液、DMF中)を加えた。反応を1時間暗所で(光から保護するために)進行させた後、混合物はジエチルエーテルで希釈した。遠心分離にかけた固形沈殿を、実施例2に記載したのと同様に、逆相HPLCクロマトグラフィーによって精製し、正イオンモードMALDI質量スペクトルによって同定した。
【0290】
Ac−DLRSK−Ahx−Doxの式:
【化8】


使用した物質:
ドキソルビシン塩酸塩、CAS No.25316−40−9、分子量:580.0g/mol、Sigmaカタログ番号D−1515。
MALDI−TOFデータ(Ac−DLRSK−Ahx−Dox、−DLRSK−部分環状):
計算した分子質量=1279.60
観察したシグナル:
1280.29M+1
【実施例36】
【0291】
アミド結合によってペプチドAhxDLRSKのN−末端アミノ基と、そのカルボキシル基を介して結合した、エフェクター単位4−アミノ−10メチル葉酸を含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のラクタム架橋によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤Amf−AhxDLRSK[Amf=4−アミノ−10メチル葉酸アシル]の合成
標的化単位(AhxDLRSK)を含む、樹脂結合した、スペーサー(=Ahx)を、(実施例21に従う)環状化を含めて、上記の実施例7に記載したのと同様に調製した。次に、実施例2に記載した一般的カップリング技法により、グルタミン酸を用いて、樹脂上で配列AhxDLRSKが維持され続けるようにした。最終的なカップリング時に、配列(ここではE−AhxDLRSK、「E」は「Amf」部分の一部となる)は、実施例2に記載した一般的カップリング技法により、「Amf−E酸」、即ち4−[N−(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル−メチル)−N−メチルアミノ]−安息香酸、半水和塩化物二水和物で終わらせた。ただし、実施例2の処理ステップ12において、活性化試薬としてPyAOP(HBTU及びHOBtの代わり)、反応時間5時間、及び試薬と樹脂結合ペプチドのほぼ等モル比。
【0292】
このステップの化学量論の試薬の比は、以下の通りであった:
「樹脂結合ペプチド」/「Amf−E酸」/PyAOP/DIPEA=1:1.2:1.2:2.4、(時間5時間)。
【0293】
実施例2に従った単離及び精製後、正イオンモードMALDI質量スペクトルにおけるM+1イオンに基づいて、生成物を同定した。
【0294】
使用した試薬:
Fmoc−L−Glu(OtBu)−OH、CAS No.71989−18−9、Applied Biosystemsカタログ番号GEN911036、分子量:425.5g/mol。
4−[N−(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル−メチル)−N−メチルアミノ]−安息香酸、半水和塩化物二水和物、CAS No.19741−14−1、Aldrichカタログ番号86、155−3、分子量:379.59g/mol、「Amf−E酸」として示す。
【0295】
MALDI−TOFデータ(Amf−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=1148.58
観察したシグナル:
1149.62M+H
【実施例37】
【0296】
アミド結合によってペプチドAhxDLRSKの6−アミノヘキサノイル(=Ahx)部分においてアミノ基と、そのスクシニル(コハク酸カルボニル)基を介して結合した、モノスクシネートとしてエフェクター単位パクリタクセルを含み、配列の最外側構成要素の側鎖間のアミド結合によって環状である、標的化単位DLRSKも含む、標的化剤PtxSuc−AhxDLRSK(PtxSuc=パクリタクセルモノスクシネート)(又は、エフェクター単位パクリタクセルが、スペーサー単位6−(スクシニルアミノ)−ヘキサノイルによって標的化単位DLRSKと連結している標的化剤)の合成
この実施例の最後に記載する、パクリタクセルスクシネートを、0.012M溶液としてDMFに溶かし、等モル量の0.05MのPyAOPをDMFに溶かしたものを加え、次に2倍モル量の2.0MのDIPEAをNMPに溶かしたものを加えた。2分後に、(パクリタクセルスクシネート当たり)等モル量の、上記の実施例7に記載した、側鎖−側鎖環状標的化化合物AhxDLRSKを、0.015M溶液としてDMFに加えた。一晩放置した後、混合物をジエチルエーテルで希釈した。遠心分離にかけた固形沈殿を、正イオンモードMALDI−TOF質量スペクトルにおけるそのM+1イオンに基づく生成物の同定を含めて、実施例2に記載したのと同様の逆相HPLCクロマトグラフィーによって精製した。
MALDI−TOFデータ(PtxSuc−AhxDLRSK、環状):
計算した分子質量=1647.76
観察したシグナル:
1648.57M+1
【0297】
パクリタクセルスクシネートは、以下の文献:Chun−Ming Huang、Ying−Ta Wu及びShui−Tein Chen(2000)。「ソマトスタチン受容体のエンドサイトーシスによる、腫瘍細胞へのパクリタクセルの標的送達(Targeting delivery of paclitaxel into tumor cells via somatostatin receptor endocytosis)」。Chemistry & Biology 2000、Vol7 No7.453〜461中に記載された、手順に従うことによって合成した。
【0298】
ここで、0.05Mのパクリタクセルをピリジンに溶かしたものを、12倍過剰の無水コハク酸と共に3時間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣を水に溶かし、冷凍−乾燥(凍結乾燥)させた。
【0299】
パクリタクセルスクシネートの合成において使用した物質:
パクリタクセル、(Tacsus yannesisからのもの)、CAS No.33069−62−4、分子量:853.9g/mol、Sigma製品番号T−1912。
無水コハク酸、CAS No.108−30−5、分子量:100.08g/mol Fuka製品番号14089。
【0300】
試薬のリスト
無水酢酸、CAS No.108−24−7、分子量:102.1g/mol、Fluka製品番号45830
4−アミノ−10メチル葉酸;(+)アメトプテリン;メトトレキセート水和物;式重量:454.4g/mol、CAS No.59−05−2、Sigma A−6770
Boc−アミノ−オキシ酢酸;Boc−NH−OCH2−COON、分子量:191.2g/mol、Novabiochem製品番号01−63−0060
Boc−Cys(Trt)−OH、CAS No:21947−98−8、Novabiochem、製品番号04−12−0020
D−ビオチン(ビタミンH)、CAS No.58−85−5、分子量:244.3g/mol、Sigma B−4501、99%
(S)−(+)−カンプトテシン、CAS No.7689−03−4、分子量:34.36g/mol、Aldrich製品番号36,563−7
5−(1−o−カルボラニル)−ペンタン酸、F.W.244.34g/mol、Katchem、プラハ、チェコ、Republic、
DL−2,3−ジアミノプロピオン酸一塩酸塩、C3H8N2O2.HCl、CAS No.54897−59−5、Acros Organics(ニュージャージー州、米国;ヘール、ベルギー)製品番号204670050
4−[N−(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル−メチル)−N−メチルアミノ]−安息香酸、半水和塩化物二水和物、CAS No.19741−14−1、Aldrich製品番号86、155−3
2,6−ジクロロ塩化ベンゾイル、CAS No.225−102−4、分子量:209.46g/mol、Lancaster製品番号8922
ジエチレントリアミンペンタ酢酸二水和物、CAS No.23911−26−4、分子量:357.32g/mol、Aldrich製品番号28,402−5
DIPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピロリドンに溶かした2.0M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号401517
DMAP;N−ジメチルアミノピリジン、CAS No.1122−53−3、分子量:122.17g/mol、Fluka製品番号29224
Dota tris(t−Buエステル)、大環状、分子量:572.74g/mol
ドキソルビシン塩酸塩、CAS No.25316−40−9、分子量:580.0g/mol、Sigmaカタログ番号D−1515
Fmoc−6−アミノヘキサン酸(Fmoc−6−Ahx−OH)、CAS No.88574−06−5、分子量:353.4g/mol、Novabiochem製品番号04−12−1111 A22837
Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH、CAS No.154445−77−9、Applied Biosystemsカタログ番号、GEN911097、分子量:648.8g/mol
Fmoc−Asp(2−フェニルイソプロピルエステル)−OH、分子量:473.53g/mol、Bachem製品番号B−2475.0005
Fmoc−L−Asn−OH、CAS No.71089−16−7、Applied Biosystems、製品番号:GEN911018
Fmoc−Gly樹脂、Applied Biosystems製品番号401421 0.65mmol/g
Fmoc−Gly−OH、CAS No.29022−11−5、Novabiochem製品番号04−12−1001、分子量:297.3g/mol
Fmoc−L−Asn−OH、Applied Biosystems製品番号Gen911018、分子量:354.40g/mol
Fmoc−L−Arg(Pbf)=OH、CAS No.154445−77−9、Applied Biosystems製品番号GEN911097、分子量:648.8g/mol
Fmoc−L−Cys(Trt)−OH、CAS No.103213−32−7、Applied Biosystems製品番号GEN911027、分子量:585.7g/mol
Fmoc−L−Glu(OTMSEt)−ONa;N−2−Fmoc−グルタミン酸5−(2−トリメチルシリルエチル)エステルナトリウム塩、分子量:468.60g/mol、Novabiochemカタログ番号0412−1231
Fmoc−L−Glu(OtBu)−OH、CAS No.71989−18−9、Applied Biosystems製品番号GEN911036、分子量:425.5g/mol
Fmoc−L−Leu−OH、CAS No.35661−60−0、Applied Biosystems製品番号GEN911048、分子量:353.4g/mol
Fmoc−L−Lys(Fmoc)−OH、CAS No.78081−87−5、分子量:590.7g/mol、PerSeptive Biosystems(ハンブルク、ドイツ)製品番号GEN911095
Fmoc−Lys(Mtt)−OH、Novabiochem製品番号04−12−1137、分子量:624.8g/mol
Fmoc−Lys(Mtt)樹脂、0.68mmol/g、Bachem製品番号D−2565.0005
Fmoc−L−Lys(tBoc)−OH、CAS No.71989−26−9、分子量:468.6g/mol、Applied Biosystems製品番号GEN911051
Fmoc−D−Orn(Mtt)−OH;2−N−Fmoc−5−N−(4−メチルトリチル)−D−オルニチン、分子量:610.8g/mol、Novabiochemカタログ番号04−13−1012.
Fmoc−Ser(tBu)樹脂、Applied Biosystems製品番号401429、0.64mmol/g
Fmoc−L−Ser(tBu)−OH、CAS No.71989−33−8、Perseptive Biosystems製品番号GEN911062、分子量:383.4g/mol
Fmoc−L−Tyr(tBu)−OH、CAS No.71989−38−3、分子量:459.5g/mol、Applied Biosystems製品番号GEN911068
HOAt=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、DMFに溶かした0.5M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号4330631
HBTU=2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.[94790−37−1]、Applied Biosystemsカタログ番号401091、分子量:379.3g/mol
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、DMFに溶かした0.5M溶液、Applied Biosystemsカタログ番号400934
HMP樹脂、充填容量:1.16mmol/g(市販品の製造者により報告されるのと同様)、Applied Biosystemsカタログ番号400957
ヨウ素、CAS No.7553−56−2、分子量:253.81、Merck Art.No.4760 4−ニトロフェニルクロロギ酸、GAS No.4693−46−1、分子量:201.57g/mol、Fluka製品番号23240
パクリタクセル、Tacsus yannesisからのもの、CAS No.33069−62−4、分子量:853.9g/mol、Sigma製品番号T−1912
PyAOP=7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.156311−83−0、PE Biosystemsカタログ番号GEN076531、分子量:521.4g/mol
PyBroP;ブロモ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸、CAS No.132705−51−2、分子量:466.2g/mol、Novabiochem製品番号0162−0017
RinkアミドMBHA樹脂、充填0.64mmol/g、Novabiochem製品番号0164−0037
無水コハク酸、CAS No.108−30−5、分子量:100.01g/mol Fluka製品番号140089
【0301】
供給業者のリスト
Acros Organics、ニュージャージー州、米国;ヘール、ベルギー
Applied Biosystems、ウォーリントン、WA14SR、英国
Bachem AG、Hauptstrasse(ハウプト通り)144、CH−4416、ブーベンドルフ、スイス
Calbiochem−Novabiochem、CH−4448、ラウフェルフィンゲン、スイス
Katchem、プラハ、チェコ
Lancaster、モーカム、イングランド
Fluka Chemie GmbH、ブックス、スイス
Macrocyclics、ダラス、テキサス州、米国
Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ
PE Biosystems、ウォーリントン、英国
Perseptive Biosystems、ウォーリントン、英国/ハンブルク、ドイツ
Sigma Aldrich Chemie、シュタインハイム、ドイツ(Riedel−deHaenも)
Sigma−Genosys LTD、パンピスフォード、ケンブリッジ州、英国
Bio−Whittaker、ベルビエ、ベルギー
Harlan Laboratories、ホルスト、オランダ
Genset SA、パリ、フランス
AmershamPharmacia Biotech、ウプサラ、スウェーデン
Qiagen、ヒルデン、ドイツ
Terumo、リューベン、ベルギー
Vector Laboratories、バーリンゲイム、米国
【0302】

【0303】

【0304】

【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1】ドキソルビシンを含む標的化剤の治療効果を示すグラフである。
【配列表】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド配列:
Cy−Rr−Dd−Ee−Ff−Rr−Cyy
を含む腫瘍標的化単位、或いは薬剤として又は生理的に許容可能なその塩であって、
上式で、Dd−Ee−FfがAa−Bb−Cc又はCc−Bb−Aaであり、
Aaがイソロイシン、ロイシン又はtert−ロイシン、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
Bbがアルギニン、ホモアルギニン又はカナバニン、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
Ccがセリン又はホモセリン、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
Rrがそれぞれ独立に、任意のアミノ酸残基、或いはその構造類似体又は機能類似体であり;
n及びmが独立に0、1、又は2であり、nとmの合計が2を超えず;且つ、
Cy及びCyyが、環状構造を形成することができる実体である、腫瘍標的化単位、或いは薬剤として又は生理的に許容可能なその塩。
【請求項2】
前記ペプチドが環状であるか、或いは環状構造の一部分を形成する、請求項1記載の腫瘍標的化単位。
【請求項3】
前記環状構造がアミド、ラクタム又はジスルフィド結合によって形成される、請求項2記載の腫瘍標的化単位。
【請求項4】
Cy及びCyyの1つがアスパラギン酸、グルタミン酸、或いはその構造類似体又は機能類似体であり、もう一方が、リジン、オルニチン、或いはその構造類似体又は機能類似体である、請求項3記載の腫瘍標的化単位。
【請求項5】
Cy及びCyyがシステイン、或いはその構造類似体又は機能類似体である、請求項3記載の腫瘍標的化単位。
【請求項6】
Rrがヒスチジン又はリジン以外の任意のアミノ酸残基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の腫瘍標的化単位。
【請求項7】
Rrがグリシン、アルギニン、及びその構造類似体又は機能類似体からなる群から選択される、請求項6記載の腫瘍標的化単位。
【請求項8】
CLRSC(配列番号1)、CSRLC(配列番号2)からなる群から選択される、請求項5記載の腫瘍標的化単位。
【請求項9】
DLRSK(配列番号3)、DLRSGRK(配列番号4)、DRGLRSK(配列番号5)、OLRSE(配列番号6)及びKLRSD(配列番号7)からなる群から選択される、請求項4記載の腫瘍標的化単位。
【請求項10】
前記単位が誘導体化、活性化、保護、樹脂結合、又は他の担体結合状態である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の腫瘍標的化単位。
【請求項11】
少なくとも1個のエフェクター単位と直接的或いは間接的に結合した、請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1個の標的化単位を含む、腫瘍標的化剤。
【請求項12】
前記エフェクター単位が、直接的又は間接的に検出可能な薬剤或いは治療薬である、請求項11記載の腫瘍標的化剤。
【請求項13】
前記検出可能な薬剤が、親和性標識、蛍光又は発光標識、キレート化剤、金属錯体、濃縮同位体、放射活性物質又は常磁性物質を含む、請求項12記載の腫瘍標的化剤。
【請求項14】
前記検出可能な薬剤が希土類金属を含む、請求項13記載の腫瘍標的化剤。
【請求項15】
前記検出可能な薬剤がガドリニウムを含む、請求項14記載の腫瘍標的化剤。
【請求項16】
前記治療薬が細胞毒性、細胞増殖抑制性及び放射線放出物質からなる群から選択される、請求項12記載の腫瘍標的化剤。
【請求項17】
前記治療薬がドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキサート又はホウ素を含む、請求項16記載の腫瘍標的化剤。
【請求項18】
任意選択の単位をさらに含む、請求項11〜17のいずれか一項に記載の腫瘍標的化剤。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1個の標的化単位、又は請求項11〜18のいずれか一項に記載の少なくとも1個の標的化剤を含む、診断用又は薬剤組成物。
【請求項20】
癌又は癌関連疾患を治療するための薬剤を調製するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の標的化単位、又は請求項11〜18のいずれか一項に記載の標的化剤の使用。
【請求項21】
前記癌又は癌関連疾患が固形腫瘍である、請求項20記載の使用。
【請求項22】
前記固形腫瘍が癌腫、肉腫、黒色腫又は転移腫からなる群から選択される、請求項21記載の使用。
【請求項23】
癌又は癌関連疾患を治療するための方法であって、治療有効量の請求項19記載の薬剤組成物を必要性のある患者に与えることを含む方法。
【請求項24】
前記癌又は癌関連疾患が固形腫瘍である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記固形腫瘍が癌腫、肉腫、黒色腫又は転移腫からなる群から選択される、請求項24記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−516242(P2006−516242A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540843(P2004−540843)
【出願日】平成15年10月3日(2003.10.3)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000724
【国際公開番号】WO2004/031219
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505121947)
【Fターム(参考)】