説明

膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクル

【課題】 ランキンサイクルにおける優れた効率を発揮する膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供する。
【解決手段】 液相状態の作動流体を昇圧させるポンプ130と、ポンプ130から圧送された後に、加熱されて気相状態となった作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機110とが直列に接続された膨張機付き流体ポンプにおいて、膨張機110の作動流体出口側となる膨張機出口側通路131bの一部を、ポンプ130の作動流体出口側となるポンプ出口側通路131dの一部の近傍に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクル中の液冷媒を圧送する流体ポンプと、過熱蒸気冷媒の膨張によって機械的エネルギーを出力する膨張機とが一体的に形成された膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、ボトミングサイクル(ランキンサイクル)発電システムに使用される複合流体機械(膨張機付き流体ポンプ)として、液相の作動流体を昇圧するターボポンプ(流体ポンプ)と、ターボポンプと同軸に連結され加熱用熱交換器で加熱された気相の作動流体によって膨張するタービン(膨張機)と、ターボポンプと同軸に連結され発電を行う発電機とが一体的に形成されて、タービンの作動時の回転動力によってターボポンプと発電機とが駆動されるものが知られている。
【特許文献1】特開2004−108220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記複合流体機械においては、流体ポンプ、膨張機、発電機を一体的に形成したのみであって、流体ポンプおよび膨張機を流通する作動流体の熱移動に関する配慮は何ら示されていない。
【0004】
即ち、膨張機出口側の作動流体の熱が流体ポンプの入口側に伝わると流体ポンプに流入する作動流体の沸騰が生じ、作動流体は気相状態を含むことになり、流体ポンプにおける容積効率が低下する(キャビテーションの発生)。
【0005】
逆に、膨張機出口側の作動流体の熱(膨張後にも残る廃熱)を更に加熱側(流体ポンプ出口側、加熱用熱交換器側)に移動させて過熱量を高めるように再利用することで、ランキンサイクルを更に効率的に運転できると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ランキンサイクルにおける優れた効率を発揮する膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、膨張仕事後の膨張機出口側冷媒の熱を流体ポンプ出口側冷媒に伝達することのできる膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、流体ポンプ入口側冷媒への熱伝達を低減できる膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、発電機に起因する熱を流体ポンプ出口側冷媒に伝達できる膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、信頼性の高い膨張機付き流体ポンプおよびそれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明では、液相状態の作動流体を昇圧させるポンプ(130)と、ポンプ(130)から圧送された後に、加熱されて気相状態となった作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)とが直列に接続された膨張機付き流体ポンプにおいて、膨張機(110)の作動流体出口側となる膨張機出口側通路(131b)の一部を、ポンプ(130)の作動流体出口側となるポンプ出口側通路(131d)の一部の近傍に配置したことを特徴としている。
【0013】
これにより、膨張仕事を終えて膨張機出口側通路(131b)を流通する作動流体の熱をポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体に伝達させることができるので、膨張機(110)の流入側となる作動流体の過熱量を増加させることができ、膨張機(110)での膨張仕事を増加させることができる。即ち、ランキンサイクル(40)に用いられて、優れた効率を発揮する膨張機付き流体ポンプ(100)とすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、ポンプ(130)の作動流体入口側となるポンプ入口側通路(132d)に対して、ポンプ出口側通路(131d)は、膨張機(110)側に配置されたことを特徴としている。
【0015】
これにより、ポンプ出口側通路(131d)と膨張機出口側通路(131b)とを容易に近接配置させることができる。また、膨張機出口側通路(131b)を流通する作動流体の熱がポンプ入口側通路(132d)を流通する作動流体に伝達するのを抑制することができるので、ポンプ(130)へ流入する作動流体が沸騰するのを防止してポンプ(130)の容積効率を向上させることかできる。
【0016】
請求項3に記載の発明のように、ポンプ(130)をスクロール型ポンプとして、作動流体を中心側から吸入し、外周側から吐出するようにすることで請求項1または請求項2に記載の膨張機付き流体ポンプ(100)を容易に形成できる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、液相状態の作動流体を昇圧させるポンプ(130)と、ポンプ(130)から圧送された後に、加熱されて気相状態となった作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)とが直列に接続された膨張機付き流体ポンプにおいて、ポンプ(130)の作動室(P)周囲を高圧室(139)の雰囲気で囲み、高圧室(139)と大気間をハウジング(131A)で遮断することを特徴としている。
【0018】
これにより、膨張機(110)側の作動流体の熱をポンプ(130)の高圧室(139)を流通する作動流体に伝達させることができるので、膨張機(110)の流入側となる作動流体の過熱量を増加させることができ、膨張機(110)での膨張仕事を増加させることができる。即ち、ランキンサイクル(40)に用いられて、優れた効率を発揮する膨張機付き流体ポンプ(100)とすることができる。また、膨張機(110)側の作動流体の熱がポンプ(130)の作動室(P)を流通する作動流体に伝達するのを抑制することができるので、ポンプ(130)へ流入する作動流体が沸騰するのを防止してポンプ(130)の容積効率を向上させることかできる。
【0019】
請求項5に記載の発明のように、ポンプ(130)をローリングピストン型ポンプとすることで、請求項4に記載の膨張機付き流体ポンプ(100)を容易に形成できる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、高圧室(139)は、ポンプ(130)の作動流体出口側となるポンプ出口側通路(131d)に相当し、膨張機(110)の作動流体出口側となる膨張機出口側通路(131b)の一部を、ポンプ出口側通路(131d)の一部の近傍に配置したことを特徴としている。
【0021】
これにより、膨張仕事を終えて膨張機出口側通路(131b)を流通する作動流体の熱をポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体に伝達させることができるので、請求項1に記載の膨張機付き流体ポンプ(100)と同等の効果を得ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明では、ポンプ出口側通路(131d)は、ポンプ(130)の径方向外側にほぼ環状に配置されており、膨張機出口側通路(131b)もポンプ出口側通路(131d)に隣接してほぼ環状に配置されていることを特徴としている。
【0023】
これにより、両者の通路(131d、131b)の長さを長くすることができるので、膨張機出口側通路(131b)を流通する作動流体からポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体への熱移動量を増加させることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明では、ポンプ出口側通路(131d)と、膨張機出口側通路(131b)とを区画する壁(131e)が設けられ、壁(131e)の一方面には、壁面積を増大するフィン(131f)が設けられたことを特徴としている。
【0025】
これにより、壁(131e)の表面積を増大させて、膨張機出口側通路(131b)を流通する作動流体からポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体への熱移動量を増加させることができる。
【0026】
請求項9に記載の発明では、フィン(131f)は、ポンプ出口側通路(131d)と膨張機出口側通路(131b)とが近接する部位のほぼ全領域に設けられたことを特徴としている。
【0027】
これにより、請求項8に記載の発明における熱移動量を更に増加させることができる。
【0028】
請求項10に記載の発明では、ポンプ(130)の作動流体入口側となるポンプ入口側通路(132d)と、ポンプ出口側通路(131d)との間には、両者(132d、131d)間の熱伝達を抑制する断熱材(160)が挿入されたことを特徴としている。
【0029】
これにより、ポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体の熱がポンプ入口側通路(132d)を流通する作動流体に伝達するのを抑制することができるので、ポンプ(130)へ流入する作動流体が沸騰するのを防止してポンプ(130)の容積効率を向上させることかできる。
【0030】
断熱材(160)は、請求項11に記載の発明のように、ポンプ入口側通路(132d)を形成する入口側ハウジング(132)と、ポンプ出口側通路(131d)を形成する出口側ハウジング(131)との分割面に介在されるガスケット(160)とすることができる。
【0031】
請求項12に記載の発明では、ポンプ(130)と膨張機(110)との間に、膨張機(110)の駆動力によって作動されて発電する発電機(120)が設けられたことを特徴としている。
【0032】
これにより、膨張機(110)で得られた駆動力によって発電機(120)を作動させて発電することができる。
【0033】
請求項13に記載の発明では、膨張機出口側通路(131b)は、発電機(120)の内部を通ってポンプ出口側通路(131d)近傍に達することを特徴としている。
【0034】
これにより、膨張機(110)を流出した作動流体によって、発電機(120)の冷却が可能となり、発電機(120)の信頼性を向上できる。また、ポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体に対しては、発電機(120)からの吸熱分も合わせて伝達させることができるので、膨張機(110)の流入側となる作動流体の過熱量を増加させることができ、膨張機(110)の膨張仕事を更に増加させることができる。
【0035】
請求項14に記載の発明では、発電機(120)の発熱部(12)は、ポンプ出口側通路(131d)の近傍に配置されたことを特徴としている。
【0036】
これにより、発熱部(12)の熱をポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体に伝達させることができるので、膨張機(110)の流入側となる作動流体の過熱量を増加させることができ、膨張機(110)の膨張仕事を更に増加させることができる。また、発熱部(12)にとっては冷却されることになるので、発熱部(12)の信頼性を向上させることができる。
【0037】
請求項15記載の発明のように、発熱部(12)が発電機(120)の発電機ハウジング(121)の外周部に設けられている場合には、ポンプ出口側通路(131d)は、発熱部(12)と発電機ハウジング(121)との間を通過するように配置されると良い。
【0038】
請求項16記載の発明では、発熱部(12)は、発電機(120)の作動を制御するインバータ(12)であり、インバータ(12)内のスイッチング素子(12a)は、ポンプ出口側通路(131d)に近い側に配置されていることを特徴としている。
【0039】
これにより、特に発熱量の多いスイッチング素子(12a)の熱を効果的にポンプ出口側通路(131d)を流通する作動流体に伝達させることができる。また、スイッチング素子(12a)を効果的に冷却できる。
【0040】
上記請求項1〜請求項16に記載の膨張機付き流体ポンプ(100)の膨張機(110)、ポンプ(130)は、請求項17に記載の発明のように、発熱機器(10)の廃熱を加熱源とするランキンサイクル(40)に使用されて好適である。
【0041】
そして、請求項18に記載の発明のように、発熱機器(10)は、熱機関(10)を対象として好適である。
【0042】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る膨張機付き流体ポンプを熱媒ポンプ一体型膨張発電機兼電動圧縮機(以下、複合流体機械と呼ぶ)100に適用し、この複合流体機械100を、冷凍サイクル30にランキンサイクル40が設けられた車両用の冷凍装置1に使用している。
【0044】
複合流体機械100は、膨張機兼圧縮機110、モータジェネレータ120、熱媒ポンプ130が一体的に形成されたもので、膨張機兼圧縮機110(圧縮モード時の圧縮機)が冷凍サイクル30に組み込まれ、また、膨張機兼圧縮機110(膨張モード時の膨張機)と熱媒ポンプ130とがランキンサイクル40に組み込まれるようにしている。まず、冷凍装置1について図1を用いて説明する。
【0045】
冷凍装置1の冷凍サイクル30は、低温側の熱を高温側に移動させて冷熱および温熱を空調に利用するもので、膨張機兼圧縮機110、凝縮器31、気液分離器32、減圧器33、蒸発器34等が環状に接続されて形成されている。
【0046】
凝縮器31は、圧縮モード時の膨張機兼圧縮機110の冷媒吐出側に設けられ、高温高圧に圧縮された冷媒を冷却して、凝縮液化する熱交換器である。尚、ファン31aは、凝縮器31に冷却風(車室外空気)を送るものである。
【0047】
気液分離器32は、凝縮器31で凝縮された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を流出させるレシーバである。減圧器33は、気液分離器32で分離された液相冷媒を減圧膨脹させるもので、本実施形態では、冷媒を等エンタルピ的に減圧すると共に、圧縮モード時の膨張機兼圧縮機110に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する温度式膨脹弁を採用している。
【0048】
蒸発器34は、減圧器33にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮する熱交換器であり、ファン34aによって供給される車室外空気(外気)あるいは車室内空気(内気)を冷却する。そして、蒸発器34の冷媒流出側には、蒸発器34側から膨張機兼圧縮機110側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁34bが設けられている。
【0049】
ランキンサイクル40は、車両の走行用動力を発生させるエンジン(本発明における発熱機器、熱機関に対応)10で発生した廃熱からエネルギー(膨張機兼圧縮機110の膨張モード時における駆動力)を回収するものである。ランキンサイクル40は、上記冷凍サイクル30に対して、凝縮器31が共用されると共に、この凝縮器31をバイパスするように気液分離器32から膨張機兼圧縮器110および凝縮器31の間(A点)に接続される第1バイパス流路41と、膨張機兼圧縮機110および逆止弁34bの間(B点)から凝縮器31およびA点の間(C点)に接続される第2バイパス流路42とが設けられて、以下のように形成されている。
【0050】
即ち、第1バイパス流路41には、複合流体機械100の熱媒ポンプ130が配設されると共に、気液分離器32側から熱媒ポンプ130側にのみ冷媒(本発明における液相状態の作動流体に対応)が流れることを許容する逆止弁41aが設けられている。また、A点と膨張機兼圧縮機110との間に加熱器43が設けられている。
【0051】
加熱器43は、熱媒ポンプ130から送られる冷媒とエンジン10における温水回路20のエンジン冷却水(温水)との間で熱交換することにより冷媒を加熱する熱交換器であり、三方弁21によりエンジン10から流出したエンジン冷却水を加熱器43に循環させる場合と循環させない場合とが切替えられる。尚、三方弁21の流路切替えは、図示しない制御装置によって行われるようになっている。
【0052】
尚、エンジン10には、エンジン10の駆動力によって駆動され発電するオルタネータ11が設けられており、オルタネータ11によって発電された電力は、インバータ12を介して、バッテリ13に充電されるようになっている。
【0053】
また、水ポンプ22は温水回路20内でエンジン冷却水を循環させるポンプ(例えば、エンジン10によって駆動される機械式ポンプ、あるいは電動モータによって駆動される電動式ポンプ)であり、ラジエータ23はエンジン冷却水と外気との間で熱交換してエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。
【0054】
そして、第2バイパス流路42には、膨脹機兼圧縮機110側から凝縮器31の冷媒入口側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁42aが設けられている。また、A点とC点との間には開閉弁44が設けられている。開閉弁44は、冷媒流路を開閉する電磁式のバルブであり、図示しない制御装置により制御されるようになっている。
【0055】
上記気液分離器32、第1バイパス流路41、熱媒ポンプ130、加熱器43、膨張機兼圧縮機110、第2バイパス流路42、凝縮器31等にてランキンサイクル40が形成される。
【0056】
次に、複合流体機械100の構成について図2を用いて説明する。複合流体機械100は、圧縮機および膨張機の両機能を有する膨張機兼圧縮機(本発明における膨張機に対応)110と、発電機および電動機としての両機能を有するモータジェネレータ(本発明においける発電機に対応)120と、熱媒ポンプ(本発明におけるポンプに対応)130とから成る。
【0057】
膨張機兼圧縮機110は、周知のスクロール型圧縮機構と同一構造を有するもので、具体的には、膨張圧縮機ハウジング111を成すフロントハウジング111aとシャフトハウジング111bとの間に固定される固定スクロール112、この固定スクロール112に対向して旋回変位する旋回スクロール113、作動室Vと高圧室114とを連通させる吐出ポート115、および流入ポート116を開閉する弁機構117等から成るものである。
【0058】
固定スクロール112は、板状の基板部112aおよび基板部112aから旋回スクロール113側に突出した渦巻状の歯部112bを有して構成され、一方、旋回スクロール113は、上記歯部112bに接触して噛み合う渦巻状の歯部113b、およびこの歯部113bが形成された基板部113aを有して構成されており、両歯部112b、113bが接触した状態で旋回スクロール113が旋回することにより、両スクロール112、113により形成される作動室Vの体積が拡大縮小するようになっている。
【0059】
シャフト118は、シャフトハウジング111bに固定された軸受け118bによって回転可能に支持されて、一方の長手方向端部に回転中心軸に対して偏心したクランク部118aを有するクランクシャフトである。このクランク部118aは、ベアリング113cを介して旋回スクロール113に連結されている。
【0060】
また、自転防止機構119は、シャフト118が1回転する間に旋回スクロール113がクランク部118a周りに1回転するようにするものである。このためシャフト118が回転すると、旋回スクロール113は、自転せずにシャフト118の回転中心軸周りを公転旋回する。そして、作動室Vは、例えばシャフト118が正方向に回転する時に、旋回スクロール113の外径側から中心側に変位するほど、その体積が縮小するように変化し、逆に、シャフト118が逆方向に回転する時に、旋回スクロール113の中心側から外径側に変位するほど、その体積が拡大するように変化する。
【0061】
吐出ポート115は、基板部112aの中心部に設けられて、膨張機兼圧縮機110が圧縮機として作動する時(以下、圧縮モード時)に、最小体積となる作動室Vと、フロントハウジング111bに設けられた高圧室114とを連通させて圧縮された冷媒を吐出するポートである。また、流入ポート116は、同様に基板部112aに(吐出ポート115に隣接して)設けられて、膨張機兼圧縮機110が膨張機として作動する時(以下、膨張モード時)に、高圧室114と、最小体積となる作動室Vとを連通させて高圧室114に導入された高温、高圧の冷媒、つまり過熱蒸気冷媒(本発明における気相状態となった作動流体に対応)を作動室Vに導くポートである。
【0062】
上記高圧室114は、吐出ポート115から吐出された冷媒の脈動を平滑化する吐出室の機能を有するものであり、この高圧室114には、後述する加熱器43および凝縮器31側に接続される高圧ポート111cが設けられている。
【0063】
尚、蒸発器34および第2バイパス流路42側に接続される低圧ポート131aは、後述する熱媒ポンプ130のポンプハウジング131に設けられている。この低圧ポート131aと膨張機兼圧縮機110の両スクロール112、113の低圧側(スクロールの外周側)との間は、シャフトハウジング111bに設けられた連通路111d(1箇所)と、後述するモータハウジング121に設けられた連通路121a(2箇所)とによって連通されており、膨張機出口側通路131bを形成している。即ち、膨張機出口側通路131bは、モータジェネレータ120の内部を通って低圧ポート131aに繋がっている。膨張機出口側通路131bの詳細については、熱媒ポンプ130のポンプ出口側通路131dと共に後述する。
【0064】
弁機構117は、吐出弁117a、弁体117d、電磁弁117f等から成る。吐出弁117aは、吐出ポート115の高圧室114側に配置されて吐出ポート115から吐出された冷媒が高圧室114から作動室Vに逆流することを防止するリード弁状の逆止弁であり、ストッパ117bは吐出弁117aの最大開度を規制する弁止板であり、吐出弁117aおよびストッパ117bはボルト117cによって基板部112aに固定されている。
【0065】
弁体117dは、流入ポート116を開閉して膨張機兼圧縮機110の圧縮モードと膨張モードとを切替える切替え弁であり、その後端側がフロントハウジング111aに設けられた背圧室117eに沿って、摺動可能に配設されている。背圧室117e内にはバネ(弾性手段)117fが挿入されており、バネ117fは弁体117dの先端側が流入ポート116を閉じる方向に弾性力を作用させるようになっている。また、フロントハウジング111aには、所定の通路抵抗を有して背圧室117eと高圧室114とを連通させる抵抗手段としての絞り117gが設けられている。尚、弁体117dが流入ポート116を閉じた時の両者間のシール性を向上させるために、弁体117dの先端側は任意の角度で傾斜可能となるようにしている。
【0066】
電磁弁117hは、低圧ポート131a側と背圧室117eとの連通状態を制御することにより背圧室117e内の圧力を制御する制御弁であり、図示しない制御装置によって制御される。
【0067】
そして、電磁弁117hを開くと、背圧室117eの圧力が高圧室114より低下して弁体117dがバネ117fを押し縮めながら図2中の右側に変位するので、流入ポート116が開く。尚、絞り117gでの圧力損失は非常に大きいので、高圧室114から背圧室117eに流れ込む冷媒量は無視できるほど小さい。
【0068】
逆に、電磁弁117hを閉じると、絞り117gによって背圧室117eの圧力と高圧室114の圧力とが等しくなり、弁体117dはバネ117fの弾性力により図2中の左側に変位するので、流入ポート116が閉じる。つまり、弁体117d、背圧室117e、バネ117f、絞り117g、および電磁弁117h等により流入ポート116を開閉するパイロット式の電気開閉弁が構成される。
【0069】
モータジェネレータ120は、ステータ122およびステータ122内で回転するロータ123等から成るもので、シャフトハウジング111bに固定されるモータハウジング121内(膨張機兼圧縮機110の低圧側雰囲気)に収容されている。ステータ122は、巻き線が巻かれたステータコイルであり、モータハウジング121の内周面に固定されている。ロータ123は、永久磁石が埋設されたマグネットロータであり、モータ軸124に固定されている。モータ軸124の一端側は、上記膨張機兼圧縮機110のシャフト118に接続されており、また、他端側は、直径が細くなるように形成されて、後述する熱媒ポンプ130のポンプ軸134に接続されている。
【0070】
そして、モータジェネレータ120は、バッテリ13からインバータ12を介して、ステータ122に電力が供給された場合には、ロータ123を回転(正方向回転)させて、膨張機兼圧縮機110を(圧縮機として)駆動するモータ(電動機)として作動する。あるいは、ロータ123を回転(逆方向回転)させて、後述する熱媒ポンプ130を駆動するモータ(電動機)として作動する。また、膨張機兼圧縮機110の膨張モード時に発生した駆動力によってロータ123を回転させるトルクが入力された場合(逆方向回転時)には、電力を発生させるジェネレータ(発電機)として作動する。そして、得られた電力は、インバータ12を介してバッテリ13に充電されるようになっている。
【0071】
熱媒ポンプ130は、モータジェネレータ120の反膨張機側に配設されて、モータハウジング121に固定されるポンプハウジング(本発明における出口側ハウジングに対応)131内に収容されている。
【0072】
熱媒ポンプ130は、上記膨張機兼圧縮機110と同様に、基板部132a、歯部132bから成る固定スクロール132と、基板部133a、歯部133bから成る旋回スクロール133とを有している。固定スクロール(本発明における入口側ハウジングに対応)132は、ポンプハウジング131に固定されて熱媒ポンプ130の端部側を形成しており、旋回スクロール133は、ポンプハウジング131と固定スクロール132とによって形成される空間内に配設されている。尚、旋回スクロール133は、自転防止機構135によって、自転が防止されつつ、公転旋回可能となっている。
【0073】
固定スクロール132の中心部には、吸入ポート132cが設けられており、気液分離器32側と接続されるようになっている。両スクロール132、133の歯部132b、133bの間には、ポンプ入口側通路132d(作動室P)が形成され、また、ポンプハウジング131内周側と旋回スクロール133の外周側との間には環状となるポンプ出口側通路131dが形成されている。ポンプハウジング131には低圧ポート131aと対向するように吐出ポート131cが設けられており、上記吸入ポート132c、ポンプ入口側通路132d、ポンプ出口側通路131d、吐出ポート131cは順に繋がっており、吐出ポート131cは、加熱器43側と接続されている。
【0074】
ポンプ軸134は、ポンプハウジング131に固定された軸受け134cによって回転可能に支持されて、一方の長手方向端部に回転中心軸に対して偏心したクランク部134aを有し、ブッシング134b、ベアリング133cを介して旋回スクロール133に連結されている。また、ポンプ軸134の他方の長手方向端部は、モータ軸124の他端側と接続されている。ここで、ポンプ軸134の他方側には、穴部134dが設けられており、直径が細く形成されたモータ軸124の他端側が挿入されている。そして、モータ軸124とポンプ軸134との間には、一方向クラッチ140が設けられている。この一方向クラッチ140は、モータ軸124が正方向回転した時に、ポンプ軸134との噛み合いが外れて、モータ軸124とポンプ軸134とが切断され(ポンプ軸134は回転されない)、また、モータ軸124が逆方向回転した時に、ポンプ軸134に噛み合うことで、ポンプ軸134を回転させるものとしている。
【0075】
そして、モータハウジング121とポンプ軸134との間には、モータジェネレータ120と熱媒ポンプ130(ポンプ出口側通路131dとなる高圧側)との間をシールする軸封装置としての軸シール150が設けられている。
【0076】
本複合流体機械100においては、膨張機兼圧縮機110の膨張機出口側通路131b、熱媒ポンプ130のポンプ入口側通路132d、ポンプ出口側通路131dの配置に特徴を持たせている。
【0077】
即ち、低圧ポート131aと吐出ポート131cとをポンプハウジング131に設けるようにしており、また、熱媒ポンプ130のポンプ出口側通路131dをポンプ入口側通路132dに対して、膨張機兼圧縮機110(モータジェネレータ120)側にしていることから、膨張機出口側通路131bの一部がポンプ出口側通路131dの一部の近傍となるように配置されている。よって、膨張機出口側通路131bとポンプ入口側通路132dとは、ポンプ出口側通路131dを介して離れて配置されている。
【0078】
また、環状に形成されたポンプ出口側通路131dに合わせて、膨張機出口側通路131bも連通路121aと低圧ポート131aとの間で、環状となるように形成されている。そして、ポンプ出口側通路131dと膨張機出口側通路131bとを区画する壁131eには、この壁131eの表面積を増大させるフィン131fが、膨張機出口側通路131bの環状となる部位の全領域に渡って設けられている。
【0079】
また、ポンプ出口側通路131dとポンプ入口側通路132dとの間には断熱材160が介在されるようにしている。具体的には、断熱材160をガスケット160として形成して、ガスケット160がポンプハウジング131(出口側ハウジング)と固定スクロール132(入口側ハウジング)との分割面に介在されるようにしている。ガスケット160は、ポンプハウジング131、固定スクロール132を形成する金属材(例えばアルミニウム材)よりも熱伝導率の低いものであって、例えばゴム材や樹脂材等から成る。
【0080】
次に、本実施形態における複合流体機械100の作動およびその作用効果について説明する。
【0081】
1.圧縮モード
このモードは、冷凍サイクル30による冷房が必要な時に、モータジェネレータ120をモータとして作動させ、モータ軸124に回転力(正方向回転)を与えることにより膨張機兼圧縮機110の旋回スクロール113を旋回させて冷媒を吸入圧縮する運転モードである。
【0082】
具体的には、図示しない制御装置は、開閉弁44を開き、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環しないようにする。また、電磁弁117hを閉じて、弁体117dによって流入ポート116を閉じた状態で、バッテリ13、インバータ12からモータジェネレータ120のステータ122に電力を供給して、モータ軸124を回転させる。
【0083】
この時、膨脹機兼圧縮機110は、周知のスクロール型圧縮機と同様に、低圧ポート131aから冷媒を吸引して(膨張機出口側通路131bを経由して)作動室Vにて圧縮した後、吐出ポート115から高圧室114に圧縮した冷媒を吐出し、高圧ポート111cから圧縮された冷媒を凝縮器31側に吐出する。
【0084】
そして、高圧ポート111cから吐出された冷媒は、加熱器43→開閉弁44→凝縮器31→気液分離器32→減圧器33→蒸発器34→逆止弁34b→膨脹機兼圧縮機110の低圧ポート131aの順に循環(冷凍サイクル30を循環)し、蒸発器34の吸熱による冷房が行われる。尚、加熱器43にはエンジン冷却水が循環しないので、加熱器43において冷媒は加熱されず、加熱器43は単なる冷媒流路として機能する。また、熱媒ポンプ130のポンプ軸134は、一方向クラッチ140によってモータ軸124との噛み合いが外れるので、熱媒ポンプ130は停止状態となって、モータジェネレータ120における作動抵抗とならない。尚、この間、低圧ポート131aから吸入される低温低圧の冷媒によって、熱媒ポンプ130内の冷媒は冷却されることになる。
【0085】
2.膨張モード
このモードは、冷凍サイクル30による冷房が不要の時に、エンジン10の廃熱が充分得られる(エンジン冷却水温度が充分高い)場合に、加熱器43によって加熱された高圧の過熱蒸気冷媒を膨張機兼圧縮機110に導入して膨脹させることにより、旋回スクロール113を旋回させてモータ軸124を回転させ、駆動力(機械的エネルギー)を得る運転モードである。尚、得られた駆動力によりモータジェネレータ120のロータ123を回転させて発電を行い、その発電された電力をバッテリ13に充電するようにしている。
【0086】
具体的には、図示しない制御装置は、開閉弁44を閉じ、三方弁21の切替えによって、エンジン冷却水が加熱器43側に循環するようにする。また、モータジェネレータ120をモータとして作動させ(逆方向回転)、電磁弁117hを開いて弁体117dによって流入ポート116を開く。
【0087】
この時、熱媒ポンプ130のポンプ軸134が一方向クラッチ140によってモータ軸124と噛み合い、熱媒ポンプ130が駆動される。そして、加熱器43によって加熱された高圧の過熱蒸気冷媒が、高圧ポート111c、高圧室114、流入ポート116を経由して作動室Vに導入されて膨脹する。過熱蒸気冷媒の膨脹により旋回スクロール113が圧縮モード時に対して逆方向に旋回し、シャフト118に与えられた駆動力は、モータジェネレータ120のモータ軸124、ロータ123に伝達される。そして、モータ軸124に伝達された駆動力が熱媒ポンプ130駆動のための駆動力を超えると、モータジェネレータ120は、ジェネレータとして作動することになり、得られた電力はインバータ12を介してバッテリ13に充電される。
【0088】
そして、膨脹を終えて圧力が低下した冷媒は、膨張機出口側通路131bを経由して、低圧ポート131aから流出される。低圧ポート131aから流出される冷媒は、第2バイパス流路42→逆止弁42a→凝縮器31→気液分離器32→第1バイパス流路41→逆止弁41a→熱媒ポンプ130(吸入ポート132c→ポンプ入口側通路132d→ポンプ出口側通路131d→吐出ポート131c)→加熱器43→膨脹機兼型圧縮機110(高圧ポート111c)の順に循環することになる(ランキンサイクル40を循環)。尚、熱媒ポンプ130は、加熱器43にて加熱されて生成された過熱蒸気冷媒の温度に応じた圧力に加圧して気液分離器32からの液相冷媒を加熱器43に送り込む。
【0089】
上記冷媒の循環において、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱は、フィン131f、壁131eを介してポンプ出口側通路131dを流通する冷媒に積極的に伝達される。逆に言うと、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱がポンプ入口側通路132dを流通する冷媒に伝達されるのが抑制される。また、ガスケット160によって、ポンプ出口側通路131dを流通する冷媒の熱が、ポンプ入口側通路132dを流通する冷媒に伝達されるのが抑制される。
【0090】
以上のように、本実施形態の複合流体機械100においては、冷房が不要であって、エンジン10の廃熱が充分に得られる場合は、膨張機兼圧縮機110の膨張モードによる駆動力でモータジェネレータ120をジェネレータとして作動させて、発電することが可能となり、廃熱エネルギーを電気エネルギーとして回生することを可能としている。この時、本来の発電用のオルタネータ11を作動させるための動力を低減でき、エンジン10の燃費を向上できる。併せて、膨張機兼圧縮機110の膨張モード時の駆動力によって、熱媒ポンプ130の駆動を可能としており、熱媒ポンプ130作動用の専用駆動源を不要とすることができる。
【0091】
そして、エンジン10の廃熱の有無に関わらず、モータジェネレータ120をモータとして作動させることで、膨張機兼圧縮機110の圧縮モードの実行を可能としている。この時、膨張機兼圧縮機110自信が圧縮機となるので、膨張機がモータジェネレータ120の作動抵抗となることが無い。
【0092】
ここで、膨張機出口側通路131bとポンプ出口側通路131dとを近接させることで、膨張仕事を終えて膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱を、ポンプ出口側通路131dを流通する冷媒に伝達させることができるので、膨張機兼圧縮機110の流入側(加熱器43側)となる冷媒の過熱量を増加させることができ、膨張機兼圧縮機110での膨張仕事を増加させることができる。即ち、ランキンサイクル40において、優れた効率を発揮する複合流体機械100とすることができる。
【0093】
併せて、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱が、ポンプ入口側通路132dを流通する冷媒に伝達するのを抑制することができ、熱媒ポンプ130へ流入する冷媒が沸騰するのを防止して熱媒ポンプ130の容積効率を向上させることかできる。
【0094】
また、熱媒ポンプ130をスクロール型として、冷媒を中心側から吸入し、外周側から吐出するようにすると共に、ポンプ出口側通路131dが膨張機兼圧縮機110側に配置されるようにしているので、ポンプ出口側通路131dと膨張機出口側通路131bとを容易に近接配置させることができる。
【0095】
また、膨張機出口側通路131bの一部と、ポンプ出口側通路131dとを共に環状の通路として形成して、互いに近接するようにしているので、両者の通路131b、131dの長さを長くすることができ、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒からポンプ出口側通路131dを流通する冷媒への熱移動量を増加させることができる。
【0096】
また、膨張機出口側通路131bの一部と、ポンプ出口側通路131dとを区画する壁131eにフィン131fを設けるようにしているので、壁131eの表面積を増大させて、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒からポンプ出口側通路131dを流通する冷媒への熱移動量を増加させることができる。このフィン131fは、膨張機出口流路131bの環状となる部位のほぼ全領域に設けることで、熱移動量を更に増加させることができる。
【0097】
また、ポンプ出口側通路131dとポンプ入口側通路132dとの間に断熱材としてのガスケット160を介在させるようにしているので、ポンプ出口側通路131dを流通する冷媒の熱がポンプ入口側通路132dを流通する冷媒に伝達するのを抑制することができ、熱媒ポンプ130へ流入する冷媒が沸騰するのを防止して熱媒ポンプ130の容積効率を向上させることかできる。
【0098】
また、膨張機出口側通路131bがモータジェネレータ120の内部を通るようにしているので、膨張機兼圧縮機110を流出した冷媒によって、モータジェネレータ120の冷却が可能となり、モータジェネレータ120の信頼性を向上できる。また、ポンプ出口側通路131dを流通する冷媒に対しては、モータジェネレータ120からの吸熱分も合わせて伝達させることができるので、膨張機兼圧縮機110の流入側(加熱器43側)となる冷媒の過熱量を増加させることができ、膨張機兼圧縮機110の膨張仕事を増加させることができる。
【0099】
尚、車両始動後でポンプ入口側通路132dの冷媒の温度が高く(気相状態を含む冷媒温度となっている時)、熱媒ポンプ130がキャビテーションを起し、ランキンサイクル40をスムースに作動できない場合は、一旦、冷凍サイクル30を所定時間作動させ(膨張機兼圧縮機110を圧縮モードで作動)、低温低圧の冷媒を低圧ポート131aから吸入させて、ポンプ入口側通路132d内の冷媒を冷却してやると良い。また、ランキンサイクル40の作動中にもポンプ入口側通路132d内を流通する冷媒温度が上昇して、熱媒ポンプ130にキャビテーションが生ずる場合にも、その都度、所定時間冷凍サイクル30を作動させるようにしてやると良い。
【0100】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図3、図4に示す。第2実施形態は上記第1実施形態に対して、冷凍装置1において冷凍サイクル30を廃止して、複合流体機械100Aに専用の膨張機110Aを設けたものとしている。そして、インバータ(本発明における発熱部に対応)12がモータジェネレータ120Aに一体的に形成されるようにしており、ポンプ出口側通路131dの形状を変更している。
【0101】
インバータ12は、モータジェネレータ120のモータハウジング121の外周部に設けられており、インバータ12内で特に発熱を伴うスイッチング素子12aが、後述するポンプ出口側通路131dに近接する位置となるようにしている。
【0102】
膨張機110Aは、上記第1実施形態で説明した膨張機兼圧縮機110に対して、弁機構117(吐出弁117a、弁体117d、電磁弁117h等)、流入ポート116等が廃止され、吐出ポートが高圧ポート111cとして形成されている。
【0103】
膨張機出口側通路131bは、連通路111dからモータハウジング121内を通って、熱媒ポンプ130側端部で環状に形成されて、モータハウジング121に設けられた低圧ポート121bに繋がっている。
【0104】
熱媒ポンプ130Aのポンプ出口側通路131dは、旋回スクロール133の外周部および反固定スクロール側に環状に形成されるようにしており、この環状となる通路はモータハウジング121とインバータ12(スイッチング素子12a)の間を通過するようにしてシャフトハウジング111b側に設けられた吐出ポート131cに繋がっている。
【0105】
環状となる膨張機出口側通路131bとポンプ出口側通路131dとの間を区画するモータハウジング121、ポンプハウジング131の肉厚(壁131e)は、必要最小限に薄肉に形成されており、ポンプ出口側通路131d側にフィン131fが形成されている。
【0106】
尚、膨張機兼圧縮機110を専用の膨張機110Aとしていることから、モータジェネレータ120Aと熱媒ポンプ130Aとの間の動力断続の必要が無く、モータ軸124とポンプ軸134とは、直結されている(一方向クラッチ140廃止)。
【0107】
本第2実施形態においては、冷凍サイクル30での使用はできないが、ランキンサイクル40において、膨張機110Aに発生される駆動力によって、モータジェネレータ120Aがジェネレータとして作動されると共に、熱媒ポンプ130Aが作動される。
【0108】
ここでは、膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱に加えて、インバータ12(スイッチング素子12a)の熱をポンプ出口側通路131dを流通する冷媒に効果的に伝達させることができるので、膨張機110Aの流入側(加熱器43側)となる冷媒の過熱量を増加させることができ、膨張機110Aの膨張仕事を増加させることができる。即ち、ランキンサイクル40において、更に優れた効率を発揮する複合流体機械100とすることができる。また、インバータ12にとっては冷媒によって冷却されることになるので、インバータ12の信頼性を向上させることができる。
【0109】
(第3実施形態)
本発明における第3実施形態を図5に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、冷凍装置1において冷凍サイクル30を廃止して、複合流体機械100Bに専用の膨張機110Aを設け(第2実施形態と同じ)、モータジェネレータ120と熱媒ポンプ130とを直結(モータ軸124とポンプ軸134とを接続して一方向クラッチ140廃止)したものである。
【0110】
第3実施形態においては、上記第2実施形態と同様に冷凍サイクル30での使用はできないが、ランキンサイクル40における作動は第1実施形態と同一であり、同一の作用効果を得ることができる。
【0111】
(第4実施形態)
本発明における第4実施形態を図6に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、冷凍装置1において冷凍サイクル30を廃止して、複合流体機械100Cに専用の膨張機110Aを設け(第2実施形態と同じ)、また、熱媒ポンプ130Bをスクロール型に代えてローリングピストン型としている。
【0112】
熱媒ポンプ130Bは、ポンプハウジング131Aの内部に形成されるシリンダ136a、ロータ137等を有している。シリンダ136aは、シリンダブロック136の中心部で断面円形に穿設されて形成されている。ポンプ軸134には、このポンプ軸134に対して偏心した円形のカム部134eが形成されており、このカム部134eの外周側には扁平円筒状のロータ137が装着されている。ロータ137の外径は、シリンダ136aの内径より小さく設定されてシリンダ136a内に挿入されており、ロータ137はカム部134eによってシリンダ136a内を公転する。また、ロータ137の外周部にはロータ137の半径方向に摺動可能として、中心側に押圧されてロータ137に当接するベーン138が設けられている。そして、シリンダ136a内において、ロータ137およびベーン138によって囲まれる空間がポンプ作動室Pとして形成されている。
【0113】
シリンダブロック136には、ベーン138に近接して、このベーン138を挟むようにシリンダ136a内に連通する冷媒流入部136b、および冷媒流出部(図示せず)が設けられている。冷媒流入部136bはポンプハウジング131Aを貫通する吸入ポート132cに接続されており、また、冷媒流出部は吐出弁136cを介して、ポンプハウジング131Aとシリンダブロック136との間に形成される高圧室139に連通している。そして、高圧室139はポンプハウジング131Aのモータジェネレータ120側となる側壁に形成された吐出ポート131cに繋がっている。
【0114】
このように、本実施形態における熱媒ポンプ130Bでは、ポンプ作動室Pの周囲が高圧室139の雰囲気で囲まれる形となり、高圧室139と大気側とはポンプハウジング131Aによって遮断されるようになっている。また、高圧室139は、ここでは熱媒ポンプ130Bの作動流体出口側となるポンプ出口側通路(131d)に相当しており、高圧室139(ポンプ出口側通路131d)は、膨張機110Aの膨張機出口側通路131bの一部に近接して配置されている。
【0115】
この熱媒ポンプ130Bにおいては、冷媒はロータ137の公転作動によって、吸入ポート132c、冷媒流入部136bからポンプ作動室Pに流入され、冷媒流出部、吐出弁136c、高圧室139を経て吐出ポート131cから吐出される。
【0116】
これにより、膨張機110Aの膨張機出口側通路131bを流通する冷媒の熱を熱媒ポンプ130Bの高圧室139(ポンプ出口側通路131d)を流通する冷媒に伝達させることができるので、膨張機110Aの流入側(加熱器43側)となる冷媒の過熱量を増加させることができ、膨張機110Aでの膨張仕事を増加させることができる。即ち、ランキンサイクル40に用いられて、優れた効率を発揮する複合流体機械100Cとすることができる。また、吐出ポート131cをモータジェネレータ120側に設けているので、吐出ポート131cにおける冷媒も膨張機出口側通路131bを流通する冷媒によって効果的に加熱される。また、熱媒ポンプ130Bの高圧室139によって、膨張機110A側の冷媒の熱がポンプ作動室Pを流通する冷媒に伝達するのを抑制することができるので、熱媒ポンプ130Bへ流入する冷媒が沸騰するのを防止して熱媒ポンプ130の容積効率を向上させることかできる。
【0117】
尚、吐出ポート131cは、図7に示す複合流体機械100Cのように、熱媒ポンプ130Bのポンプ軸134長手方向の端部側に設けるようにしても良い。
【0118】
(その他の実施形態)
上記の各実施形態においては、スクロール型あるいはローリングピストン型の熱媒ポンプ130、130A、130Bを採用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ギヤポンプ型、トロコイド型等その他の形式のものを適用することができる。尚、膨張機兼圧縮機110(膨張機110A)についても同様である。
【0119】
また、モータジェネレータ120内を熱媒ポンプ130の高圧側雰囲気となるように形成して、膨張機兼圧縮機110(膨張機110A)とモータジェネレータ120との間に軸シール150を設ける構造としても良い。
【0120】
また、上記の各実施形態においては、発熱機器として、車両用のエンジン(熱機関、内燃機関)10としたが、これに限らず、例えば、外燃機関、燃料電池車両の燃料電池スタック、各種モータ、インバータ等のように作動時に発熱を伴い、温度制御のためにその熱の一部を捨てるもの(廃熱が発生するもの)であれば、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態における冷凍装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態における複合流体機械を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における複合流体機械を示す断面図である。
【図4】図3のA−A部を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態における複合流体機械を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態における複合流体機械を示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態の変形例における複合流体機械を示す断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 冷凍装置
10 エンジン(発熱機器、熱機関)
12 インバータ(発熱部)
12a スイッチング素子
100 熱媒ポンプ一体型膨張発電機兼電動圧縮機(膨張機付き流体ポンプ)
110 膨張機兼圧縮機(膨張機)
120 モータジェネレータ(発電機)
121 モータハウジング(発電機ハウジング)
130 熱媒ポンプ(ポンプ)
131 ポンプハウジング(出口側ハウジング)
131A ポンプハウジング(ハウジング)
131b 膨張機出口側通路
131d ポンプ出口側通路
131e 壁
131f フィン
132 固定スクロール(入口側ハウジング)
132d ポンプ入口側通路
139 高圧室
160 ガスケット(断熱材)
P ポンプ作動室(作動室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相状態の作動流体を昇圧させるポンプ(130)と、
前記ポンプ(130)から圧送された後に、加熱されて気相状態となった前記作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)とが直列に接続された膨張機付き流体ポンプにおいて、
前記膨張機(110)の作動流体出口側となる膨張機出口側通路(131b)の一部を、前記ポンプ(130)の作動流体出口側となるポンプ出口側通路(131d)の一部の近傍に配置したことを特徴とする膨張機付き流体ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ(130)の作動流体入口側となるポンプ入口側通路(132d)に対して、前記ポンプ出口側通路(131d)は、前記膨張機(110)側に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項3】
前記ポンプ(130)は、スクロール型ポンプであり、前記作動流体を中心側から吸入し、外周側から吐出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項4】
液相状態の作動流体を昇圧させるポンプ(130)と、
前記ポンプ(130)から圧送された後に、加熱されて気相状態となった前記作動流体の膨張によって駆動力を発生する膨張機(110)とが直列に接続された膨張機付き流体ポンプにおいて、
前記ポンプ(130)の作動室(P)周囲を高圧室(139)の雰囲気で囲み、前記高圧室(139)と大気間をハウジング(131A)で遮断することを特徴とする膨張機付き流体ポンプ。
【請求項5】
前記ポンプ(130)は、ローリングピストン型ポンプであることを特徴とする請求項4に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項6】
前記高圧室(139)は、前記ポンプ(130)の作動流体出口側となるポンプ出口側通路(131d)に相当し、
前記膨張機(110)の作動流体出口側となる膨張機出口側通路(131b)の一部を、前記ポンプ出口側通路(131d)の一部の近傍に配置したことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプ出口側通路(131d)は、前記ポンプ(130)の径方向外側にほぼ環状に配置されており、
前記膨張機出口側通路(131b)も前記ポンプ出口側通路(131d)に隣接してほぼ環状に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3、請求項6のいずれか1つに記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項8】
前記ポンプ出口側通路(131d)と、前記膨張機出口側通路(131b)とを区画する壁(131e)が設けられ、
前記壁(131e)の一方面には、壁面積を増大するフィン(131f)が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3、請求項6、請求項7のいずれか1つに記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項9】
前記フィン(131f)は、前記ポンプ出口側通路(131d)と前記膨張機出口側通路(131b)とが近接する部位のほぼ全領域に設けられたことを特徴とする請求項8に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項10】
前記ポンプ(130)の作動流体入口側となるポンプ入口側通路(132d)と、前記ポンプ出口側通路(131d)との間には、両者(132d、131d)間の熱伝達を抑制する断熱材(160)が挿入されたことを特徴とする請求項1〜請求項3、請求項6〜請求項9のいずれか1つに記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項11】
前記断熱材(160)は、前記ポンプ入口側通路(132d)を形成する入口側ハウジング(132)と、前記ポンプ出口側通路(131d)を形成する出口側ハウジング(131)との分割面に介在されるガスケット(160)であることを特徴とする請求項10に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項12】
前記ポンプ(130)と前記膨張機(110)との間に、前記膨張機(110)の駆動力によって作動されて発電する発電機(120)が設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項13】
前記膨張機出口側通路(131b)は、前記発電機(120)の内部を通って前記ポンプ出口側通路(131d)近傍に達することを特徴とする請求項12に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項14】
前記発電機(120)の発熱部(12)は、前記ポンプ出口側通路(131d)の近傍に配置されたことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項15】
前記発熱部(12)は、前記発電機(120)の発電機ハウジング(121)の外周部に設けられており、
前記ポンプ出口側通路(131d)は、前記発熱部(12)と前記発電機ハウジング(121)との間を通過するように配置されたことを特徴とする請求項14に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項16】
前記発熱部(12)は、前記発電機(120)の作動を制御するインバータ(12)であり、
前記インバータ(12)内のスイッチング素子(12a)は、前記ポンプ出口側通路(131d)に近い側に配置されていることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の膨張機付き流体ポンプ。
【請求項17】
発熱機器(10)の廃熱を加熱源とすると共に、
請求項1〜請求項16に記載の膨張機付き流体ポンプ(100)の前記ポンプ(130)および前記膨張機(110)が使用されることを特徴とするランキンサイクル。
【請求項18】
前記発熱機器(10)は、熱機関(10)であることを特徴とする請求項17に記載のランキンサイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−266238(P2006−266238A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89314(P2005−89314)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】