説明

自動クラッチ制御装置およびその変速制御方法

【課題】運転者がアクセルを踏込んだ速度に応じて設定される目標クラッチトルクでクラッチを制御することにより運転者の要求する加速の実現が可能である変速機の自動クラッチ制御装置およびその変速制御方法を提供する。
【解決手段】クラッチ40と、目標クラッチトルク演算部3aと、変速制御部3cと、アクセル踏込速度検出部2aと、原動機回転数検出部2cと、入力軸回転数検出部3dと、アクセル踏込速度Vacが1つ以上の所定の踏込速度閾値を超えるか否かを判定する踏込速度閾値判定部3eと、いずれかの踏込速度閾値を超えた場合に入力軸と原動機4とを切離後、成立された低速ギヤ段によって増加している入力軸回転数に一致させるよう原動機回転数Neを増加制御する原動機回転数増加制御部3fと、目標クラッチトルクTcaをアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて変更演算する目標クラッチトルク変更演算部3gと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の発進停止や変速時にクラッチの自動係合制御を行う自動クラッチ制御装置およびその変速制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の自動クラッチ制御装置においては、クラッチの係合時の変速ショックを抑制するために、エンジンの回転数を所定の変化速度で変化させ変速機の入力軸の回転数に同期させることがある。このような場合には、クラッチのクラッチトルクが所定の目標値となるように設定することで、エンジンの回転数の変化速度を制御することができる。このクラッチのクラッチトルクは、クラッチの係合度合い(クラッチの係合量)に応じて変動するため、クラッチを動作させるアクチュエータの動作量を制御することにより調整される。
【0003】
例えば、特許文献1においては、アクセル開度及び車速に基づいて目標クラッチトルクを得るためのクラッチの係合量の基準値を設定している。この目標クラッチトルクは、まず変速におけるエンジンの目標回転数変化速度にエンジンのイナーシャを乗算した目標慣性トルクを演算し、エンジンの現出力トルクから該目標慣性トルクを減算して演算される。このため、このように演算される目標クラッチトルクの大きさは、エンジンの現出力トルクを決定するアクセルの開度(踏込み量)に基づく大きさとして設定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−318288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来技術におけるクラッチの係合制御においては、運転者が大きな加速を欲し高速度でアクセルを踏込んだ場合等においても、踏込速度は考慮されずアクセルの踏込み量に応じて目標クラッチトルクの大きさが決定される。このため、運転者の欲する加速が得られず、運転者の要求を満たせない場合がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、運転者がアクセルを踏込んだ速度に応じて設定される目標クラッチトルクでクラッチを制御することにより運転者の要求する加速の実現が可能である変速機の自動クラッチ制御装置およびその変速制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る自動クラッチ制御装置の発明は、車両の原動機の駆動軸と変速機の入力軸との間に介装されたクラッチと、前記クラッチの切離および接続を制御するクラッチアクチュエータと、前記原動機のイナーシャに変速における該原動機の目標回転数変速度を乗算した目標慣性トルクを演算し、該原動機の現在の現出力トルクから該目標慣性トルクを減算した値を前記クラッチの目標クラッチトルクとして演算する目標クラッチトルク演算部と、変速指令が送出されると、前記クラッチアクチュエータの作動によって前記原動機から前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを制御し前記クラッチを切離する切離制御を行ない、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるように制御し前記原動機の原動機回転数を前記入力軸の入力軸回転数と同期させる係合制御を行なう変速制御部と、前記原動機の前記駆動軸の回転数を原動機回転数として検出する原動機回転数検出部と、前記入力軸の前記入力軸回転数を検出する入力軸回転数検出部と、アクセルの踏込および踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出部と、前記アクセルの踏込が検出された後に高速ギヤ段から低速ギヤ段に変速するダウンシフトの変速指令が送出された場合に前記アクセル踏込速度検出部によって検出された前記アクセル踏込速度が1つ以上の所定の踏込速度閾値を超えるか否かを判定する踏込速度閾値判定部と、前記アクセル踏込速度が前記1つ以上の所定の踏込速度閾値のうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えた場合に、前記クラッチの前記切離制御によって前記入力軸と前記原動機とを切離後、前記変速指令によって成立された前記低速ギヤ段によって変速前の前記入力軸回転数よりも増加している前記入力軸の前記入力軸回転数に一致させるよう原動機回転数を増加させて制御する原動機回転数増加制御部と、前記目標クラッチトルクを前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更するよう変更量を演算する目標クラッチトルク変更演算部と、を備える。
【0008】
請求項2に係る自動クラッチ制御装置の発明は、請求項1において、前記アクセルの前記踏込速度が前記選択されたいずれかの踏込速度閾値を越えた後、前記踏込速度の絶対値が前記選択されたいずれかの踏込速度閾値と該踏込速度閾値より小さな正の解除判定閾値との間に少なくとも2回進入すると、前記原動機回転数増加制御部および前記目標クラッチトルク変更演算部による制御を解除し前記目標クラッチトルク演算部によって演算された前記目標クラッチトルクによって前記係合制御を行なう。
【0009】
請求項3に係る自動クラッチ制御装置の発明は、請求項1または2において、前記1つ以上の所定の踏込速度閾値は1つである。
【0010】
請求項4に係る自動クラッチ制御装置の発明は、請求項1または3において、前記アクセルのアクセル踏込量を検出するアクセル踏込量検出部を有し、前記目標クラッチトルク変更演算部によって前記目標クラッチトルクが前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更された後、前記アクセルの前記アクセル踏込量が所定の変化量を超えて変化すると、前記原動機回転数増加制御部および前記目標クラッチトルク変更演算部による制御を解除し前記目標クラッチトルク演算部によって演算された前記目標クラッチトルクによって前記係合制御を行なう。
【0011】
請求項5に係る自動クラッチ制御装置の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記変速機は、同心に配置された第1入力軸および第2入力軸と、前記第1入力軸に伝達された前記出力駆動力を変速して奇数変速段を成立させる第1シフト機構、および前記第2入力軸に伝達された前記出力駆動力を変速して偶数変速段を成立させる第2シフト機構と、を有し、前記クラッチは、前記原動機の回転駆動力を出力駆動力として前記第1入力軸に伝達する第1クラッチおよび前記出力駆動力を前記第2入力軸に伝達する第2クラッチを有するデュアルクラッチであり、前記変速制御部は、変速指令が送出されると、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチのうち、前記第1入力軸および前記第2入力軸のうちの前記原動機から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離する切離制御を行なうとともに、前記前記第1クラッチおよび前記第2クラッチのうち、前記第1入力軸および前記第2入力軸のうちの前記原動機に接続される入力軸に対応するクラッチを、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるよう制御して前記原動機の回転数を前記接続される入力軸の回転数と同期させる係合制御を行なう。
【0012】
請求項6に係る発明は、車両の原動機の駆動軸と変速機の入力軸との間に介装されたクラッチと、前記クラッチの切離および接続を制御するクラッチアクチュエータと、前記原動機のイナーシャに変速における該原動機の目標回転数変速度を乗算した目標慣性トルクを演算し、該原動機の現在の現出力トルクから該目標慣性トルクを減算した値を前記クラッチの目標クラッチトルクとして演算する目標クラッチトルク演算部と、変速指令が送出されると前記クラッチアクチュエータの作動によって前記原動機から前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを制御し前記クラッチを切離する切離制御を行ない、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるように制御し前記原動機の原動機回転数を前記入力軸の入力軸回転数と同期させる係合制御を行なう変速制御部と、前記原動機の前記駆動軸の回転数を原動機回転数として検出する原動機回転数検出部と、前記入力軸の前記入力軸回転数を検出する入力軸回転数検出部と、を備えた自動クラッチ制御装置の変速制御方法であって、該変速制御方法は、前記アクセルの踏込および踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出ステップと、前記アクセルの踏込が検出された後に高速ギヤ段から低速ギヤ段に変速するダウンシフトの変速指令が送出された場合に前記アクセル踏込速度検出ステップによって検出された前記アクセル踏込速度が1つ以上の所定の踏込速度閾値を超えるか否かを判定する踏込速度閾値判定ステップと、前記アクセル踏込速度が前記1つ以上の所定の踏込速度閾値のうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えた場合に、前記クラッチの前記切離制御によって前記入力軸と前記原動機とを切離後、前記変速指令によって成立された前記低速ギヤ段によって変速前の前記入力軸回転数よりも増加している前記入力軸の前記入力軸回転数に一致させるよう原動機回転数を増加させて制御する原動機回転数増加制御ステップと、前記目標クラッチトルクを前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更するよう変更量を演算する目標クラッチトルク変更演算ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る自動クラッチ制御装置の発明によれば、ダウンシフトの変速指令が送出されアクセル踏込速度が1つ以上の所定の踏込速度閾値のうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えて検出されると、まず接続されているクラッチが切断され入力軸と原動機とが切り離される。その後、低速ギヤ段段側の変速ギヤ段が成立されたことにより回転数が原動機回転数より増加している入力軸の入力軸回転数に一致するよう原動機回転数が原動機回転数増加制御部によって制御される。そして原動機回転数が入力軸回転数と一致するとアクセル踏込速度の大きさに応じ目標クラッチトルク変更演算部によって変更された目標クラッチトルクより大きな変更後の目標クラッチトルクによってクラッチの係合制御が実施される。このように、運転者の加速の意思を表す指標であるアクセル踏込速度が選択されたいずれかの踏込速度閾値より大きい場合には、原動機の原動機回転数を入力軸回転数と一致させるよう制御し、アクセル踏込速度の大きさに応じて増加するよう変更された変更後の目標クラッチトルクによってクラッチを係合させるので、クラッチはショックなく短時間で係合しトルクダウンすることなく運転者の加速要求を満足させることができる。
【0014】
請求項2に係る自動クラッチ制御装置の発明によれば、請求項1において、アクセルの踏込速度が選択されたいずれかの踏込速度閾値を越え、アクセルの踏込速度に応じて変更された変更後の目標クラッチトルクによってクラッチの接続制御が実施された以降において、運転者に踏込まれたアクセルの踏込速度の絶対値が選択されたいずれかの踏込速度閾値と、該踏込速度閾値より小さい正の解除判定閾値との間に少なくとも2回進入すると原動機回転数増加制御部の回転数増加制御および目標クラッチトルク変更演算部の変更演算制御を解除する。つまりアクセルの踏込速度が選択されたいずれかの踏込速度閾値と解除判定閾値との間に少なくとも2回進入するということは、運転者が緩やかにアクセルを開閉させていることを示しており、もう大きな加速を望んでいないと判断できる。このため原動機回転数増加制御部の回転数増加制御および目標クラッチトルク変更演算部の演算制御を解除し通常の制御に戻す。これによって運転者の要求にあった通常の加速フィーリングを得ることができる。
【0015】
請求項3に係る自動クラッチ制御装置の発明によれば、請求項1または2において、前記1つ以上の所定の踏込速度閾値は1つである。これにより簡易な制御とすることができ、制御の負担を軽減することができる。
【0016】
請求項4に係る自動クラッチ制御装置の発明によれば、請求項1または3において、目標クラッチトルク変更演算部によって目標クラッチトルクがアクセル踏込速度の大きさに応じて変更された以降において、アクセル踏込量が所定の変化量を超えて変化すると、原動機回転数増加制御部の回転数増加制御および目標クラッチトルク変更演算部の変更演算制御を解除する。このように、アクセル踏込量が所定の変化量を超えて変化したことを捉え、運転者は、はじめに要求した加速をもう望んでいないと判断し通常の制御に戻す。これによって運転者の要求にあった加速フィーリングを得ることができる。
【0017】
請求項5に係る自動クラッチ制御装置の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記変速機は、デュアルクラッチ式自動変速機である。デュアルクラッチ式自動変速機は、変速時において接続されていた一方の入力軸のクラッチの係合が切離されて解除され、同時に切断状態であった次の変速ギヤ段が成立している他方の入力軸のクラッチが係合される。このようにデュアルクラッチ式自動変速機は短時間で変速動作が完了する構成となっている。このため本発明に係る自動クラッチ制御装置をデュアルクラッチ式自動変速機に適用すれば、変速制御の早さに加えて運転者の要求する加速要求を満足させることができ、商品性の向上が図れる。
【0018】
請求項6に係る変速制御方法の発明によれば、請求項1と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るデュアルクラッチ式自動変速機を適用可能な車両の一部の構成を示したブロック図である。
【図2】デュアルクラッチ式自動変速機の変速機部分の構造を示すスケルトン図である。
【図3】フォークの駆動機構を示す図である。
【図4】クラッチアクチュエータ作動量−クラッチトルクの関係を示すグラフである。
【図5】アクセル踏込速度に応じて設定される目標クラッチトルクを示したグラフである。
【図6】自動クラッチ制御装置によって制御中の各部状態を説明する図である。
【図7】第1の実施形態の制御のフローチャートである。
【図8】変形例に係る自動クラッチ制御装置の踏込速度閾値D、A、Eを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る自動クラッチ制御装置を具体化してデュアルクラッチ式自動変速機に搭載した第1の実施形態について、図1〜図7を参照し説明する。図1は、デュアルクラッチ式自動変速機1を適用可能な車両の一部の構成を示したブロック図である。図1に示す車両はFF(フロントエンジンフロントドライブ)タイプの車両であり、原動機の一例でありガソリンの燃焼によって駆動されるエンジン4、デュアルクラッチ式自動変速機1、本発明に係る自動クラッチ制御装置20、差動装置14(ディファレンシャル)、駆動軸15a、15b、駆動輪16a、16b(前輪)および図示しない従動輪(後輪)を備えている。なお、図1は車両の上面図であり、図1の上方が車両の前方に相当する。
【0021】
図2に示すようにデュアルクラッチ式自動変速機1は、複数のギヤ段が形成され収納されるミッションケース11、およびデュアルクラッチ40(本発明のデュアルクラッチに該当する)を収納するクラッチハウジング12を有している。ミッションケース11およびクラッチハウジング12によってケース10を形成している。
【0022】
自動クラッチ制御装置20は、ミッションケース11に収容される複数のギヤ段の切替え(変速シフト)、およびデュアルクラッチ40(本発明のクラッチおよびデュアルクラッチに該当する)が有する第1クラッチディスク41(本発明のクラッチおよび第1クラッチを構成する)および第2クラッチディスク42(本発明のクラッチおよび第2クラッチを構成する)の切替えを制御する。自動クラッチ制御装置20はデュアルクラッチ40、第1、第2クラッチアクチュエータ17、18、ECU2(Engine Control Unit)、およびTCU3(Transmission Control Unit)によって構成されている。
【0023】
図1に示すように、ECU2にはエンジン4の駆動軸4b(出力軸)近傍に設けられエンジン4の駆動軸4bの回転数(エンジン回転数Ne)を検出する駆動軸回転数センサ4a、エンジン4が有するスロットルボデーのスロットルバルブを開閉させるモータ、スロットルボデーのスロットルバルブ開度を検出するスロットル開度センサ、燃料噴射をおこなうインジェクタ(いずれも図略)、およびアクセルペダルP(本発明のアクセルに該当する)に設けられたアクセル開度センサ27等が接続されている。これによって各機器とデータの授受を行なったり、各機器に対して制御指令を行なったりする。例えば、取得したTCU3からのデータを含んだ情報に基づきモータを駆動させスロットルボデーのスロットル開度を制御する、或いは、インジェクタの燃料噴射量を制御する等してエンジン回転数Neを制御する。
【0024】
図1に示すように、TCU3には、デュアルクラッチ40の切替え制御を行なう後述する第1、第2クラッチアクチュエータ17、18が有する各直流電動モータ19a、19b、各直流電動モータ19a、19bが出力するストロークを検出するストロークセンサ17a、18a、車速センサ23a、23b、および第1、第2入力軸回転数センサ24a、24bが接続されている。またTCU3には、後述する第1〜第4シフトクラッチ101〜104をそれぞれ作動させるフォーク駆動機構130の各モータ131、およびストロークを検出するシフトストロークセンサ136〜139が接続されている(図3参照)。これによってTCU3は各機器とデータの授受を行なったり、各機器に対して制御指令を送信したりする。TCU3はECU2と接続されCAN通信によってECU2と相互に情報を交換しながらデュアルクラッチ式自動変速機1の変速制御を適切に行なう。
【0025】
図2に示すように、デュアルクラッチ式自動変速機1は、前進7速のデュアルクラッチ式自動変速機であり、ケース10内の軸線方向に、第1入力軸21、第2入力軸22、第1副軸31、および第2副軸32を備えている。またケース10内には、デュアルクラッチ40、各ギヤ段の駆動ギヤ51〜57、最終減速駆動ギヤ58、68、各ギヤ段の従動ギヤ61〜67、後進ギヤ70、およびリングギヤ80を備えている。以降、第1入力軸21、第2入力軸22、第1副軸31、および第2副軸32と同一軸方向を入力軸方向と称す。
【0026】
第1入力軸21は、軸受によりミッションケース11、およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承されている。第1入力軸21の外周面には、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。そして、第1入力軸21には、複数の奇数段駆動ギヤである1速駆動ギヤ51および3速駆動ギヤ53が直接形成されている。また複数の奇数段駆動ギヤである5速駆動ギヤ55および7速駆動ギヤ57は、第1入力軸21の外周面に形成された外歯スプラインにスプライン嵌合により圧入され固定されている。また、第1入力軸21の端部の外周面には、第1クラッチディスク41の内径部にスプライン係合される連結部(スプライン)が形成されている。そして第1クラッチディスク41の内径部は該連結部(スプライン)に係合され第1入力軸21上を入力軸方向に進退移動可能となっている。
【0027】
第2入力軸22は、中空軸状に形成されており、第1入力軸21の1部の外周に複数の軸受を介して回転可能に支承され、且つ、軸受によりミッションケース11、およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承されている。つまり、第2入力軸22は、第1入力軸21に対して同心に相対回転可能に配置されている。また、第2入力軸22の外周面には、第1入力軸21と同様に、軸受けを支持する部位と複数の外歯歯車が形成されている。第2入力軸22には、複数の偶数段駆動ギヤである2速駆動ギヤ52、4速駆動ギヤ54および6速駆動ギヤ56が形成されている。また、第2入力軸22の端部の外周面には、第2クラッチディスク42の内径部にスプライン係合される連結部(スプライン)が形成されている。そして第2クラッチディスク42の内径部は該連結部(スプライン)に係合され第2入力軸22上を入力軸方向に進退移動可能となっている。
【0028】
第1副軸31は、軸受によりミッションケース11およびクラッチハウジング12に対して回転可能に支承され、ミッションケース11内において第1入力軸21に平行に配置されている。また、第1副軸31の外周面には、最終減速駆動ギヤ58が形成されるとともに、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。さらに、第1副軸31には、1速従動ギヤ61、および3速従動ギヤ63、4速従動ギヤ64、および後進ギヤ70を遊転可能に支持する支持部が形成されている。
【0029】
第1副軸31の外歯スプラインには、後述する第1シフトクラッチ101(本発明の第1シフト機構に該当する)、および第3シフトクラッチ103(本発明の第2シフト機構に該当する)の各クラッチハブ201がスプライン嵌合により圧入されている。最終減速駆動ギヤ58は、図1に示す差動装置14(ディファレンシャル)のリングギヤ80に噛合している。
【0030】
第1副軸31の支持部に遊転可能に支持される1速従動ギヤ61は第1入力軸21に形成された1速駆動ギヤ51と噛合し、1速ギヤ段(本発明の奇数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって1速従動ギヤ61が選択されると、第1シフトクラッチ101のスリーブ202が1速従動ギヤ61側に移動して1速従動ギヤ61と第1副軸31とを相対回転不能に接続する。これにより1速従動ギヤ61と第1副軸31とが一体的に回転する状態となる(この状態を1速ギヤ段が成立した状態という。なお、以降2速〜7速および後進の変速段においても同様である)。このとき、第1シフトクラッチ101の作動の状態は第1シフトクラッチ101用のシフトストロークセンサ136によって監視され第1シフトクラッチ101が現状どのような状態であるかTCU3によって把握されている。以降、第2シフトクラッチ102〜第4シフトクラッチ104も同様である。
【0031】
第1副軸31の支持部に遊転可能に支持される3速従動ギヤ63は、第1入力軸21に形成された3速駆動ギヤ53と噛合し、3速ギヤ段(本発明の奇数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって3速従動ギヤ63が選択されると、第1シフトクラッチ101のスリーブ202が3速従動ギヤ63側に移動して3速従動ギヤ63と第1副軸31とを相対回転不能に接続する。これにより3速従動ギヤ63と第1副軸31とが一体的に回転する状態(3速ギヤ段成立状態)となる。
【0032】
第1副軸31の支持部に遊転可能に支持される4速従動ギヤ64は、第2入力軸22に形成された4速駆動ギヤ54と噛合し、4速ギヤ段(本発明の偶数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって4速従動ギヤ64が選択されると、第3シフトクラッチ103のスリーブ202が4速従動ギヤ64側に移動して4速従動ギヤ64と第1副軸31とを相対回転不能に接続する。これにより4速従動ギヤ64と第1副軸31とが一体的に回転する状態(4速ギヤ段成立状態)となる。
【0033】
さらに、TCU3によって第1副軸31の支持部に遊転可能に支持される後進ギヤ70が選択されると、第3シフトクラッチ103のスリーブ202が後進ギヤ70側に移動して後進ギヤ70と第1副軸31とを相対回転不能に接続する。これにより後進ギヤ70と第1副軸31とが一体的に回転する状態(後進ギヤ段成立状態)となる。なお、後進ギヤ70は、第2副軸32に遊転可能に支持される2速従動ギヤ62と一体的に形成された小径ギヤ62aに常に噛合している。
【0034】
第2副軸32は、軸受によりミッションケース11およびクラッチハウジング12に対して回転可能に軸承され、ミッションケース11内において第1入力軸21に平行に配置されている。また、第2副軸32の外周面には、第1副軸31と同様に、最終減速駆動ギヤ68が形成されるとともに、軸受けを支持する部位と複数の外歯スプラインが形成されている。第2副軸32の外歯スプラインには、第2シフトクラッチ102(本発明の第2シフト機構に該当する)、および第4シフトクラッチ104(本発明の第1シフト機構に該当する)の各クラッチハブ201がスプライン嵌合により圧入されている。最終減速駆動ギヤ68は、差動装置14のリングギヤ80に噛合している。リングギヤ80は、最終減速駆動ギヤ58および最終減速駆動ギヤ68に噛合されることで、第1副軸31および第2副軸32に常時回転連結される。このリングギヤ80は、ケース10に軸支される出力軸(図略)および差動装置14を介して駆動軸15a、15bおよび駆動輪16a、16bに回転連結されている。さらに、第2副軸32には、上記の2速従動ギヤ62、5速従動ギヤ65、6速従動ギヤ66、および7速従動ギヤ67、を遊転可能に支持する支持部が形成されている。
【0035】
第2副軸32の支持部に遊転可能に支持される2速従動ギヤ62は第2入力軸22に形成された2速駆動ギヤ52と噛合し、2速ギヤ段(本発明の偶数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって2速従動ギヤ62が選択されると、第2シフトクラッチ102のスリーブ202が2速従動ギヤ62側に移動して2速従動ギヤ62と第2副軸32とを相対回転不能に接続する。これにより2速従動ギヤ62と第2副軸32とが一体的に回転する状態(2速ギヤ段成立状態)となる。
【0036】
また、第2副軸32の支持部に遊転可能に支持される5速従動ギヤ65は、第1入力軸21に形成された5速駆動ギヤ55と噛合し、5速ギヤ段(本発明の奇数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって5速従動ギヤ65が選択されると、第4シフトクラッチ104のスリーブ202が5速従動ギヤ65側に移動して5速従動ギヤ65と第2副軸32とを相対回転不能に接続する。これにより5速従動ギヤ65と第2副軸32とが一体的に回転する状態(5速ギヤ段成立状態)となる。
【0037】
また、第2副軸32の支持部に遊転可能に支持される6速従動ギヤ66は、第2入力軸22に形成された6速駆動ギヤ56と噛合し、6速ギヤ段(本発明の偶数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって6速従動ギヤ66が選択されると、第2シフトクラッチ102のスリーブ202が6速従動ギヤ66側に移動して6速従動ギヤ66と第2副軸32とを相対回転不能に接続する。これにより6速従動ギヤ66と第2副軸32とが一体的に回転する状態(6速ギヤ段成立状態)となる。
【0038】
さらに、第2副軸32の支持部に遊転可能に支持される7速従動ギヤ67は、第1入力軸21に形成される7速駆動ギヤ57と噛合し、7速ギヤ段(本発明の奇数変速段に該当する)を形成している。そしてTCU3によって7速従動ギヤ67が選択されると、第4シフトクラッチ104のスリーブ202が7速従動ギヤ67側に移動して7速従動ギヤ67と第2副軸32とを相対回転不能に接続する。これにより7速従動ギヤ67と第2副軸32とが一体的に回転する状態(7速ギヤ段成立状態)となる。
【0039】
次にデュアルクラッチ40について図1、図2に基づいて説明する。なお、図1、図2のデュアルクラッチ40を比較すると構成が異なる様に見えるが、図2のデュアルクラッチ40は図1のデュアルクラッチ40に対してより簡易的に描いたものであって、図1、図2のデュアルクラッチ40は同じものである。
【0040】
デュアルクラッチ40は、第1入力軸21および第2入力軸22に対して同心に設けられている。デュアルクラッチ40は、図2の右側においてクラッチハウジング12に収容され、図1、図2に示すように、第1、第2クラッチディスク41、42、センタプレート43、第1、第2プレッシャプレート44、45、および第1、第2ダイアフラムスプリング46、47(図1参照)を有している。このとき第1クラッチディスク41、センタプレート43、第1プレッシャプレート44および第1ダイアフラムスプリング46によって本発明の第1クラッチを構成している。また第2クラッチディスク42、センタプレート43、および第2プレッシャプレート45および第2ダイアフラムスプリング47によって本発明の第2クラッチを構成している。
【0041】
第1クラッチディスク41はクラッチトルクTcによって係合制御されセンタプレート43と係合することによってクラッチトルクTcを第1入力軸21に伝達し、第2クラッチディスク42はクラッチトルクTcによって係合制御されセンタプレート43と係合することによってクラッチトルクTcを2入力軸22に伝達する。第1クラッチディスク41は、第1入力軸21の連結部に入力軸方向に移動自在にスプライン係合され、第2クラッチディスク42は、第2入力軸22の連結部に入力軸方向に移動自在にスプライン係合されている。
【0042】
センタプレート43は図1、図2に示すように、第1クラッチディスク41と第2クラッチディスク42との間にその面が第1、第2クラッチ41、42の面と平行に対向して配置されている。センタプレート43は第2入力軸22の外周面との間にボールベアリングを介して第2入力軸22と相対回転可能に設けられエンジン4の駆動軸4bに連結されて一体回転する。
【0043】
第1および第2プレッシャプレート44、45は図1、図2に示すように、センタプレート43との間でそれぞれ第1、および第2クラッチディスク41、42を挟持し第1、および第2クラッチ41、42と圧着可能に配置されている。
【0044】
図1に示す第1、第2ダイアフラムスプリング46、47は、円板状に形成されている。第1ダイアフラムスプリング46はセンタプレート43を中心として、入力軸方向に第1プレッシャプレート44と反対側に配置されている。第1ダイアフラムスプリング46の外径部と第1プレッシャプレート44とは円筒状の連結部44aによって連結されている。また第1ダイアフラムスプリング46はセンタプレート43から延在している腕部43aの先端部に支持されている。このような状態において第1ダイアフラムスプリング46の外径部がエンジン4方向に付勢するばね力によって連結部44aをエンジン4側に付勢すると第1プレッシャプレート44が第1クラッチディスク41から離間する。
【0045】
また第1ダイアフラムスプリング46の内径部をエンジン4側に向かって押圧すると第1ダイアフラムスプリング46の外径部のエンジン4方向へのばね力は減衰する。そして、それとともにセンタプレート43から延在している腕部43aの先端部を支点として第1ダイアフラムスプリング46の外径部はエンジン4とは反対方向に移動する。これらによって第1プレッシャプレート44は第1クラッチディスク41方向に移動し、やがてセンタプレート43との間で第1クラッチディスク41を挟持して圧着する。そして完全に係合し、該係合したときに制御されているクラッチトルクTcが第1入力軸21に伝達される。なお、上記において第1ダイアフラムスプリング46の内径部を押圧する押圧力は内径部を押圧するときのクラッチアクチュエータ作動量L1によって制御するが詳細については後述する。
【0046】
また第2ダイアフラムスプリング47は、第2プレッシャプレート45の変速機側で、且つセンタプレート43の腕部43aのエンジン4側に配置され第2プレッシャプレート45と対向している。第2ダイアフラムスプリング47の外径部は、外径部のばね力がセンタプレート43から延在している腕部43aを変速機側に向かって付勢するよう配置されている。これにより通常時においては第2プレッシャプレート45は第2クラッチディスク42に圧着されないようになっている。そして第2ダイアフラムスプリング47の内径部をエンジン4側に向かって押圧すると腕部43aに接触する第2ダイアフラムスプリング47の外径部を支点として押圧部近傍がエンジン4方向へ移動する。これによって第2プレッシャプレート45がダイアフラムスプリング47に押され第2クラッチディスク42方向に移動し、やがてセンタプレート43との間で第2クラッチディスク42を挟持して圧着する。そして完全に係合し、該係合したときに制御されているクラッチトルクTcが第2入力軸22に伝達される。なお、第1ダイアフラムスプリング46と同様に第2ダイアフラムスプリング47の内径部を押圧する押圧力は内径部を押圧するときのクラッチアクチュエータ作動量L2によって制御する。
【0047】
上述した第1ダイアフラムスプリング46、および第2ダイアフラムスプリング47の内径部の押圧は、図1に示す第1、および第2クラッチアクチェータ17、18(本発明のクラッチアクチェータに該当する)によって制御する。第1、および第2クラッチアクチェータ17、18は、それぞれ直流電動モータ19a、19bと、直流電動モータ19a、19bの作動によってボールねじ構造により直線運動するロッド25a、25bと、ロッド25a、25bの直線運動を第1、第2ダイアフラムスプリング46、47の各内径部にリンク機構によって伝達する伝達部26a、26bと、ロッド25a、25bの直線運動のクラッチアクチュエータ作動量L1、L2を検出するストロークセンサ17a、18aと、を有している。そして、ストロークセンサ17a、18aにより検出されたロッド25a、25bのクラッチアクチュエータ作動量L1、L2に関する情報はTCU3に送信される。
【0048】
デュアルクラッチ40がこのように構成されるので、TCU3から第1または第2クラッチアクチュエータ17、18に変速指令が送出されると、TCU3の変速制御部3c(詳細は後述する)は第1または第2クラッチアクチュエータ17、18を所定のクラッチアクチュエータ作動量L1、L2だけ変速機側に向かって作動させ、エンジン4から入力軸に伝達されるクラッチトルクTcを制御する。これにより変速制御部3cは第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21、および第2入力軸22のうちのエンジン4から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離する切離制御を行なう。
【0049】
また同時に変速制御部3cは、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4に接続される入力軸に対応するクラッチを、クラッチトルクTcが、エンジン4の現在の現出力トルクTeとエンジン4に要求される目標回転数変速度ΔNetに基づいて演算される目標クラッチトルクTcaになるよう制御する(詳細については後述する)。そして、エンジン4のエンジン回転数Ne(本発明の原動機回転数に該当する。以後エンジン回転数と称す)が、接続される入力軸の入力軸回転数Niと同期すると接続させる係合制御を行なう。具体的には直流電動モータ19a、または19bを作動させ、ロッド25a、または25bの作動が第1または第2ダイアフラムスプリング46、47の内径部をエンジン4側に向かって押圧するよう制御する。
【0050】
次に、第1〜第4シフトクラッチ101〜104について図2、図3に基づいて説明する。図2、図3に示す各フォーク72a、72b、72c、72dは、第1〜第4シフトクラッチ101〜104が有するスリーブ202の外周部に係合してスリーブ202を入力軸方向にスライドさせる部材である。各フォーク72a〜72dは、それぞれのフォーク駆動機構130によって駆動される。
【0051】
フォーク駆動機構130は、第1〜第4シフトクラッチ101〜104をそれぞれ駆動するために本実施形態においては4つ設けられている。それぞれのフォーク駆動機構130は、図3に示すように、回転軸にウォームギヤ132が形成されたモータ131、ウォームギヤ132に噛合するウォームホイール133、ウォームホイール133に同心に一体的に形成されたピニオンギヤ134、ピニオンギヤ134に噛合するラック軸135を備えている。このラック軸135には、各フォーク72a〜72dがそれぞれ一体に設けられている。つまり、それぞれのフォーク駆動機構130のモータ131を回転することで、そのモータ131に連結されているフォーク72a〜72dが第1副軸31または第2副軸32の軸方向にスライドする。
【0052】
また、図3に示すようにフォーク72a〜72dが軸方向にスライドして移動するストローク量を検出するためのシフトストロークセンサ136〜139がピニオンギヤ134の回転軸近傍にそれぞれ設けられている。シフトストロークセンサ136〜139はTCU3に接続されTCU3の演算部にてウォームホイール133の回転数がストローク量に変換される。なお、シフトストロークセンサ136〜139はモータ131の回転軸近傍にそれぞれ設けてもよい。
【0053】
第1シフトクラッチ101は、第1副軸31の軸方向において1速従動ギヤ61と3速従動ギヤ63との間に配置されている。第2シフトクラッチ102は、第2副軸32の軸方向において2速従動ギヤ62と6速従動ギヤ66との間に配置されている。また第3シフトクラッチ103は、第1副軸31の軸方向において4速従動ギヤ64と後進ギヤ70との間に配置されている。さらに第4シフトクラッチ104は、第2副軸32の軸方向において5速従動ギヤ65と7速従動ギヤ67との間に配置されている。
【0054】
図2に示すように第1シフトクラッチ101は、クラッチハブ201と、1速係合部材205と、3速係合部材205と、シンクロナイザリング203と、スリーブ202とを有している。クラッチハブ201は第1副軸31にスプライン固定されている。1速係合部材205は1速従動ギヤ61に圧入固定され、3速係合部材205は3速従動ギヤ63に圧入固定されている。シンクロナイザリング203は、クラッチハブ201と左右の各係合部材205、205との間にそれぞれ介在されている。スリーブ202はクラッチハブ201の外周に軸線方向移動自在にスプライン係合されている。そして第1シフトクラッチ101は各従動ギヤ61、63を交互に第1入力軸21に離脱可能に接続する周知のシンクロメッシュ機構である。
【0055】
第1シフトクラッチ101のスリーブ202は、中立位置では係合部材205、205の何れにも係合されていない。しかしフォーク駆動機構130の作動によってラック軸135が入力軸方向に駆動され、ラック軸135に固定されスリーブ202の外周の環状溝に係合されたフォーク72aによりスリーブ202が1速従動ギヤ61側にシフトされれば、スリーブ202の内歯(図略)は1速従動ギヤ61側のシンクロナイザリング203にスプライン係合する。そしてシンクロナイザリング203を1速従動ギヤ61に押しつけながら第1副軸31と1速従動ギヤ61の回転を同期させる。次にスリーブ202の内歯が1速係合部材205の外周の外歯スプライン(いずれも図略)と係合し、第1副軸31と1速従動ギヤ61を一体的に連結して1速ギヤ段を成立させる。またフォーク駆動機構130によりフォーク72aがスリーブ202を3速従動ギヤ63側にシフトさせれば、同様にして第1副軸31と3速従動ギヤ63の回転を同期させた後にこの両者を一体的に連結して3速ギヤ段を成立させる。
【0056】
第2〜第4シフトクラッチ102〜104は、第1シフトクラッチ101と実質的に同一構造で取り付け位置が異なるのみである。第2シフトクラッチ102は2速従動ギヤ62および6速従動ギヤ66を第2副軸32に選択的に連結して相対回転不能とし2速ギヤ段および6速ギヤ段を成立させる。また第3シフトクラッチ103は4速従動ギヤ64および後進ギヤ70を第1副軸31に選択的に連結して相対回転不能とし4速ギヤ段および後進ギヤ段を成立させる。さらに第4シフトクラッチ104は5速従動ギヤ65および7速従動ギヤ67を第2副軸32に選択的に連結して相対回転不能とし5速ギヤ段および7速ギヤ段を成立させる。
【0057】
次にECU2について説明する。ECU2は、図1に示すように、アクセル踏込速度検出部2aと、アクセル踏込量検出部2bと、原動機回転数検出部2cとを有している。
アクセル踏込速度検出部2aは、アクセル開度センサ27を含み運転者が踏込んだアクセルの踏込速度Vacを検出する。具体的にはアクセル開度センサ27から取得したアクセル開度データに基づいて微分演算し導出する。
【0058】
アクセル踏込量検出部2bは、アクセル開度センサ27を含み運転者が踏込んだアクセルの踏込量Lacを検出する。具体的にはアクセル開度センサ27から取得したアクセル開度を踏込量として検出する。
原動機回転数検出部2cは、エンジン4の駆動軸4b近傍に設けられた駆動軸回転数センサ4aを含み、駆動軸回転数センサ4aによってエンジン回転数Neを検出する。
【0059】
TCU3は前述の通り第1〜第4シフトクラッチ101〜104を作動させるフォーク駆動機構130を制御するシフトクラッチ制御部(図略)を有している。また、TCU3は、前述の変速制御部3cを有し、変速指令が送出されると、変速制御部3cは、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち係合されている一方を切離制御し、他方を係合制御(接続制御)する。具体的には、2速ギヤ段から3速ギヤ段のように変速比が小さい変速段に向かってシフトするアップ変速の変速指令が送出された場合には、次のような変速制御を行なう。
【0060】
変速制御部3cは、先ず、2速駆動ギヤ52が固定された第2入力軸22に連結される第2クラッチディスク42を切離する切離制御を行う。また同時に変速制御部3cは、成立された3速駆動ギヤ53が固定された第1入力軸21に連結される第1クラッチディスク41を接続する係合制御を行なう。このとき第1クラッチディスク41を接続する過程において、エンジン回転数Neを、接続される第1入力軸回転数Ni1と同期させる同期制御を行う。このとき、エンジン回転数Neは原動機回転数検出部2cによって検出され、第1入力軸回転数Ni1は後述する入力軸回転数検出部3dによって検出される。そして、変速制御部3cは、エンジン回転数Neが第1入力軸回転数Ni1と同期すると、第1クラッチアクチュエータ17のクラッチアクチュエータ作動量L1を最大量L1max作動させ第1クラッチディスク41を完全に接続する。
【0061】
ここで、上記のようなアップ変速において、変速前後における車速が一定であると仮定すると、変速比は小さくなっている。このため第2入力軸回転数Ni2よりも第1入力軸回転数Ni1の方が低く、これによってエンジン回転数Neは変速前後で低下することになる。そのため、第1クラッチディスク41と第2クラッチディスク42の係合状態を単に切換えたのでは、クラッチの負荷が増大したり変速ショックが生じたりするおそれがある。そこで、変速制御部3cは、上記のように、第1クラッチディスク41を接続制御する前に、エンジン回転数Neを減速させて第1入力軸回転数Ni1と同期させる同期制御を行ない変速ショックを低減するとともに変速後におけるエンジン回転数Neの安定化を図っている。
【0062】
また、例えば3速ギヤ段→2速ギヤ段等のダウン変速においては変速前後における車速が一定であると仮定すると、変速比は大きくなっている。このため第1入力軸回転数Ni1よりも第2入力軸回転数Ni2の方が高く、これによってエンジン回転数Neは変速前後で上昇することになる。そのため、第1クラッチディスク41と第2クラッチディスク42の係合状態を単に切換えたのでは、クラッチの負荷が増大したり変速ショックが生じたりするおそれがある。そこで、変速制御部3cは、第2クラッチディスク42を接続制御する前に、エンジン回転数Neを加速させて第2入力軸回転数Ni2に同期させる同期制御を行ない変速ショックを低減するとともに変速後におけるエンジン回転数Neの安定化を図っている。
【0063】
TCU3は、図1に示すように、目標クラッチトルク演算部3aと、クラッチアクチェータ作動量演算部3bと、上述した変速制御部3cと、入力軸回転数検出部3dと、踏込速度閾値判定部3eと、原動機回転数増加制御部3fと、目標クラッチトルク変更演算部3gとを有している。
【0064】
クラッチアクチェータ作動量演算部3bでは、上記で説明した目標クラッチトルクTcaを演算する。目標クラッチトルクTcaは下記[数1]により演算する。この目標クラッチトルクTcaは、低速ギヤ段側のクラッチを切離制御した後に、高速ギヤ段側クラッチに対してこのトルクで制御する場合、または、シフトダウンに際して高速ギヤ段側クラッチを切離制御した後に、低速ギヤ段側クラッチに対してこのトルクで制御する場合に、変速ショックを抑制した変速が可能となる基準の伝達トルクである。
【0065】
[数1]
Tca=Te−Ie・ΔNet
Tca :目標クラッチトルク
Te :エンジンの現出力トルク
Ie :イナーシャ
ΔNet:目標回転数変速度
【0066】
そのため、先ず、エンジン2のイナーシャIe(慣性モーメントまたは慣性能率ともいう)にエンジン4の目標回転数変速度ΔNet(本発明の目標回転数変速度に該当する)を乗算して高速ギヤ段側クラッチまたは低速ギヤ段側クラッチの目標慣性トルクIe・ΔNetを算出する。この「目標慣性トルクIe・ΔNet」とは、エンジン回転数Neを好適に変化(減速又は加速)させるために第1、第2クラッチディスク41、42からエンジン4の駆動軸4bに伝達されるべき減速トルク又は加速トルクに相当する。なお、上記においてエンジン回転数Neを減速させるときには目標慣性トルクIe・ΔNetは負の値をとり、加速させるときには正の値をとるものとする。
【0067】
目標回転数変速度ΔNetは、アップ変速制御(アップシフト)またはダウン変速制御(ダウンシフト)において、エンジン回転数Neの変速度の目標値として予め定められている値である。つまり、目標回転数変速度ΔNetは、アップ変速制御またはダウン変速制御においてエンジン回転数Neの変速度が目標回転数変速度ΔNetとなるように制御すれば、変速ショックを抑制しつつ、変速を早期に完了することができる。
【0068】
そして、エンジン4の現在の現出力トルクTeから目標慣性トルクIe・ΔNetを減算して目標クラッチトルクTcaを算出する。このエンジン4の「現在の現出力トルクTe」は、例えば、原動機回転数検出部2cによって検出されるエンジン回転数Neやアクセル踏込量検出部2bによって検出されるアクセルペダルPのアクセル開度などの検出値に基づいて算出することができる。
【0069】
クラッチアクチュエータ作動量演算部3bは目標クラッチトルクTcaが得られる第1、第2クラッチアクチュエータ17、18のクラッチアクチュエータ作動量L1、L2を演算する。クラッチアクチュエータ作動量LとクラッチトルクTcとの対応関係は事前に取得されて例えばROMに記憶されている(図4参照)。そこでクラッチアクチュエータ作動量演算部3bは、演算された目標クラッチトルクTcaに対応する第1、第2クラッチアクチュエータ17、18のクラッチアクチュエータ作動量L1、L2を図4の表から求める。
【0070】
変速制御部3cは、前述のとおり変速指令が送出されると、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4から切り離される入力軸に対応するクラッチディスクを切離する切離制御を行なう。また、同時に第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4に接続される入力軸に対応するクラッチディスクを、クラッチトルクTcが、目標クラッチトルクTcaになるよう制御してエンジン回転数Neを接続される入力軸の入力軸回転数Niと同期させ係合させる係合制御を行なう。
【0071】
入力軸回転数検出部3dは、図1に示す第1入力軸21近傍に設けられた第1入力軸回転数センサ24a、および第2入力軸22近傍に設けられた第2入力軸回転数センサ24bを含み、第1入力軸21および第2入力軸22の入力軸回転数Ni1、Ni2を検出する。
【0072】
踏込速度閾値判定部3eは、高速ギヤ段側から低速ギヤ段側に変速するダウンシフトの変速指令が送出されると、ECU2が有するアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたアクセル踏込速度Vacが図6(c)に示す所定の踏込速度閾値Aを超えるか否かを判定する。このとき踏込速度閾値Aの大きさは、どのように設定してもよく事前の評価によって適切な値を決定すればよい。
【0073】
原動機回転数増加制御部3fは、アクセル踏込速度Vacが所定の踏込速度閾値Aを超えた場合に、まず変速制御部3cによって、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離制御によって切離させる。その後、ダウンシフトの変速指令によって成立された低速ギヤ段側の変速ギヤ段によって切離された変速前の入力軸回転数Niよりも増加している次に接続される入力軸の入力軸回転数Niに一致させるようエンジン回転数Neを増加させる制御を行なう。これにより、係合するエンジン4のエンジン回転数Neと入力軸回転数Niとの同期が容易になり、短時間でのクラッチの係合を可能にする。なお、上記においてエンジン回転数Neの増加制御は原動機回転数検出部2cがエンジン4の駆動軸回転数センサ4bのデータを取得しながらスロットルバルブ開度、燃料噴射量等を適宜制御して所望のエンジン回転数Neを実現する。なお、本実施形態において、アクセル踏込速度Vacが所定の踏込速度閾値Aを超えない場合には、原動機回転数増加制御部3fによるエンジン回転数Neの増加制御は行なわない。
【0074】
目標クラッチトルク変更演算部3gは、目標クラッチトルクTcaをアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて演算し変更する。つまり、アクセル踏込速度Vacは運転者の走行に対する要求を示していると判断できる。このためアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより大きければ、運転者は大きな加速を欲していると判断し、目標クラッチトルクが目標クラッチトルク演算部3aで演算した目標クラッチトルクTcaより大きな目標クラッチトルクTceとなるよう変更する。本実施形態においては、変更後の目標クラッチトルクTceは踏込速度閾値Aより大きな量に応じて比例しリニアに大きくなるよう設定している(図5参照)。ただし、このようにリニアに設定するのではなく、踏込速度閾値Aより大きい範囲では制御する目標クラッチトルクTceを一定の目標クラッチトルクTcgとするように制御してもよい(図5内2点鎖線参照)。そして変速制御部3cによって、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、これから係合がされるクラッチディスクを変更後の目標クラッチトルクTceによって制御しセンタプレート43に強く押しつけて短時間で同期させ係合させる。これによって変速ギヤ段が高速ギヤ段から低速ギヤ段に素早く切り替わり大きなトルクで車両を力強く走行させ、運転者の要求を満足させることができる。
【0075】
またアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより小さければ、運転者は大きな加速を欲していないと判断できる。このためクラッチトルクTcは目標クラッチトルク演算部3aで演算した目標クラッチトルクTcaのままとする(図5参照)。ただし、この態様に限らず、アクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより小さい場合には、目標クラッチトルクをアクセル踏込速度Vacと踏込速度閾値Aとの差に応じて(比例して)小さくなるよう目標クラッチトルクTccとして設定してもよい(図5内破線参照)。そして目標クラッチトルク変更演算部3gが目標クラッチトルクTcaを目標クラッチトルクTccに変更する。
【0076】
そして変速制御部3cによって第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、これから係合がされるクラッチディスクを目標クラッチトルクTca(またはTcc)によってセンタプレート43に緩やかに押しつけて同期させ係合させる。これにより運転者の要求にあった緩やかな加速とクラッチ係合によるショックが軽減された変速が実現できる。
【0077】
次に、走行中の車両における第1の実施形態のデュアルクラッチ式自動変速機1が備える自動クラッチ制御装置20の変速制御方法および作用について図6のタイムチャートおよび図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
なお、本実施形態においては、例えば、車両は定速走行中であり第1クラッチディスク41が係合状態で第1入力軸21とエンジン4とが接続されているものとする。このとき、車両は第1入力軸21で成立している3速ギヤ段によって走行している。そして、運転者が加速を欲してアクセルペダルPを所定のアクセル踏込速度Vacで踏込み、これによってアクセル開度および車速Vが図示しない2速ギヤ段の変速線を通過し2速ギヤ段への変速要求がTCU3から送出されたものとして説明する。
【0079】
図7のフローチャートに示すように、ステップS10(アクセル踏込速度検出ステップ)では図6(c)、(d)に示すアクセルペダルPの踏込みの有無がアクセル踏込速度検出部2aによって検出される。本実施形態においては踏込みが有るのでステップS12に移動し、踏込みが無ければ踏込みが検出されるまで、ステップS10が繰り返し処理される。
【0080】
ステップS12(アクセル踏込速度検出ステップ)ではアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたデータからアクセル踏込速度Vacが演算され取得される。
【0081】
ステップS14(踏込速度閾値判定ステップ)ではダウンシフトの変速要求がTCU3から送出されたか否かが判定される(図6参照)。本実施形態においては2速ギヤ段へのダウンシフトの変速要求が送出されているのでステップS16に移動し、送出されていなければ、変速要求が送出されるまでステップS10〜ステップS14までの処理を繰り返す。
【0082】
ステップS16(踏込速度閾値判定ステップ)では、踏込速度閾値判定部3eによってステップS12で取得したアクセル踏込速度Vacが図6(c)に示す所定の踏込速度閾値Aを越えたか否かが判定される。踏込速度閾値Aを越えればステップS18に移動し、越えなければステップS20に移動する。
【0083】
ステップS18(原動機回転数増加制御ステップ)では、原動機回転数増加制御部3fが、変速制御部3cによって、第1クラッチディスク41を切離制御によって切離させる(図6(b)参照)。その後、前述したようにダウンシフトの変速指令により第2入力軸22に成立された2速ギヤ段によって、切離された変速前の第1入力軸21の第1入力軸回転数Ni1よりも増加している第2入力軸22の第2入力軸回転数Ni2に一致させるようエンジン回転数Neを増加させる制御を行なう(図6(a)のNe1参照)。このときエンジン回転数Neは、原動機回転数検出部2cによって監視され、第2入力軸回転数Ni2は、入力軸回転数検出部3dによって監視されながら制御されている。
【0084】
ステップS20(目標クラッチトルク変更演算ステップ)では、目標クラッチトルク変更演算部3gが、目標クラッチトルクをアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて目標クラッチトルクTceとして演算し変更する(図5および図6(b)のTce1参照)。そしてステップS22(目標クラッチトルク変更演算ステップ)に移動し、変速制御部3cが、第2クラッチディスク42を変更後の目標クラッチトルクTceによって制御しセンタプレート43に押しつける。これにより第2入力軸22の入力軸回転数Ni2と略一致したエンジン回転数Neに制御されているエンジン4と第2入力軸22とを短時間で同期させる。そして、入力軸回転数Ni2とエンジン回転数Neとが完全に同期したのちにおいては、図6(b)に示すように変速制御部3cが第2クラッチアクチュエータ18を制御しクラッチアクチュエータ作動量L2を最大量L2max作動させて第2クラッチディスク42を係合させる。以上によって大きな変速ショックを受けることなく低速ギヤ段側に素早く切り替わり大きなトルクで車両を力強く加速走行させ、運転者の要求を満足させることができる。
【0085】
またステップS20(目標クラッチトルク変更演算ステップ)において、アクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより小さい場合には、運転者は大きな加速を欲していないと判断できる。このため目標クラッチトルクが目標クラッチトルク演算部3aで演算した目標クラッチトルクTcaとなるよう設定する。次にステップS22(目標クラッチトルク変更演算ステップ)に移動し、変速制御部3cが、第1クラッチディスク41を切離制御によって切離させたのと同時に、図6(b)の破線に示すように第2クラッチディスク42を通常の目標クラッチトルクTcaによって制御しセンタプレート43に緩やかに押しつけて同期させる。そして、その後入力軸回転数Ni2とエンジン回転数Neとが完全に同期したのちにおいては、図6(b)に示すように変速制御部3cが第2クラッチアクチュエータ18を制御しクラッチアクチュエータ作動量L2を最大量L2max作動させて第2クラッチディスク42を係合させる。これにより運転者の要求にあったクラッチ係合によるショックが小さく緩やかな加速が実現できる。なお、ステップS20においては、上述したように目標クラッチトルクTcaより小さな目標クラッチトルクTccに変更してもよい(図6(b)のTcc参照)。
【0086】
ステップS24以降の処理は、2速ギヤ段への変速が終了した後に走行を続行する車両に対して、ステップS18の原動機回転数増加制御およびステップS20の目標クラッチトルク変更演算制御を続行するか解除するかを判定するためのものである。ステップS24およびステップS26では、ステップS28で次の変速指令が送信されるまでの間、アクセル踏込速度Vacデータおよびアクセル踏込量Lacデータがアクセル踏込速度検出部2aおよびアクセル踏込量検出部2bによって取得され続ける。そしてステップS28において、変速指令の送信が確認されると、ステップS30に移動する。
【0087】
ステップS30では、ステップS24で取得したアクセル踏込速度Vacの絶対値のデータが図6(c)に示す所定の踏込速度閾値A以下で、且つ新たに設定する踏込速度閾値Aより小さい正の解除判定閾値B以上の範囲に少なくとも2回進入したか否か、若しくはステップS26で取得したアクセル踏込量Lacデータが所定の変化量C(図6(d)参照)以上変化したか否かが判定される。なお、このとき解除判定閾値Bおよび変化量Cは事前の実験等によって求められる値である。
【0088】
ここで、アクセル踏込速度Vacの絶対値が踏込速度閾値Aと、正の解除判定閾値Bとの間に少なくとも2回進入するということは、図6(d)に示すアクセル踏込量Lacにおいては、1回だけアクセルペダルPを軽く緩め、その後踏込んでもとに戻す、または1回だけアクセルペダルPを軽く踏込み、その後もとに戻すという動作が行われたことを示している。つまり、この図6(d)に示す、2回のアクセル踏込量Lacの動作を図6(c)に示すアクセル踏込速度Vacにそれぞれ対応させてみるとアクセル踏込速度Vacの絶対値は、それぞれ2回ずつ、踏込速度閾値Aと、正の解除判定閾値Bとの間に進入している。このようにアクセルペダルPが所定の範囲内で踏込まれる、または踏込みが緩められることにより運転者がもう大きな変速を望んでいないと判断できる。なお、絶対値の踏込速度閾値Aと、正の解除判定閾値Bとの間へのアクセル踏込速度Vacの進入回数は2回に限らず、何回でもよいことはいうまでもない。
【0089】
またアクセル踏込量Lacについては、アクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより大きい場合には、所定の変化量C(図6(d)参照)以上変化した(下がった)状態を判定基準を満たした状態とする。つまり所定の変化量C以上、アクセル踏込量Lacが小さくなれば運転者はもう大きな変速を望んでいないと判断できるためである。
【0090】
またアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより小さい場合で、かつ目標クラッチトルクTccによって制御されている場合には所定の変化量C以上変化した(踏込まれた)状態を判定基準を満たした状態とする(図略)。つまり所定の変化量C以上、アクセル踏込量Lacが踏込まれれば運転者はもう緩やかな変速を望んでいないと判断できるためである。なお、ステップS30においてアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値Aより小さく通常の目標クラッチトルクTcaで制御されている場合においては、そのまま、ステップS32に移動することとする。
【0091】
そしていずれかの判定条件を満たせば、運転者は、通常の変速を望んでいると判断してステップS32に移動し、以後原動機回転数増加制御部3fおよび目標クラッチトルク変更演算部3gによる制御を解除し変速時においては通常の目標クラッチトルクTcaによって係合制御を行なう(図6(b)のTca1参照)。またいずれの判定条件も満たしていなければステップS34に移動する。
【0092】
ステップS34では、ステップS28で送出されたと判定された変速指令がダウンシフトか否かを判定する。ダウンシフトであればステップS18に移動し、ステップS18で説明したように変速制御部3cによって、第2クラッチディスク42を切離させる(図6(b)参照)。その後、ダウンシフトの変速指令によって第1入力軸21に成立された1速ギヤ段によって切離された変速前の第2入力軸22の第2入力軸回転数Ni2よりも増加している第1入力軸21の第1入力軸回転数Ni1に一致させるようエンジン回転数Ne(Ne1)を増加させる制御を行なう。
【0093】
その後、ステップS20において目標クラッチトルク変更演算部3gが引き続きステップS12で取得されたアクセル踏込速度Vacに基づき目標クラッチトルクTceを演算し、変速制御部3cが変更後の目標クラッチトルクTceによって係合制御を行なう。そして、第1入力軸21の入力軸回転数Ni1とエンジン回転数Neとが完全に同期したのちにおいては、変速制御部3cが第1クラッチアクチュエータ17を制御しクラッチアクチュエータ作動量L1を最大量L1max作動させて第1クラッチディスク41を係合させる。これによって大きな変速ショックを受けることなく低速ギヤ段側に素早く切り替わり大きなトルクで車両を力強く加速走行させ、運転者の要求を満足させることができる。その後もステップS30で所定の条件を満たし、ステップS32に移動するまで、本発明に係る制御が継続される。
【0094】
またステップS34において、変速指令がアップシフトであると判定されたときには、変速時において、これから係合される第1入力軸21の方がエンジン回転数Neよりも低いのでエンジン回転数Neを増加させる制御は必要ない。このためステップS20に移動し、ステップS12で取得されたアクセル踏込速度Vacに基づき目標クラッチトルクTceを演算し、変速制御部3cが変更後の目標クラッチトルクTceによって係合制御を行なう(図6(b)のTce2参照)。そして、第1入力軸21の入力軸回転数Ni1とエンジン回転数Neとが完全に同期したのちにおいては、変速制御部3cが第1クラッチアクチュエータ17を制御し図6(b)に示すようにクラッチアクチュエータ作動量L1を最大量L1max作動させて第1クラッチディスク41を係合させる。これによって大きな変速ショックを受けることなく高速ギヤ段(3速ギヤ段)側に素早く切り替わり車両を加速走行させ、運転者の要求を満足させることができる。その後はダウンシフト時と同様、ステップS30で所定の条件を満たし、ステップS32に移動するまで、本発明に係る制御が継続される。
【0095】
なお、上記実施形態においては、車両が第1入力軸21で成立している3速ギヤ段によって走行しており、その後、2速ギヤ段への変速要求がTCU3から送出されたものとして説明した。しかしこの態様に限らず、運転者がアクセルペダルPを所定のアクセル踏込速度Vacで踏込んだときに、1速ギヤ段の変速線を通過しこれによって3速ギヤ段→1速ギヤ段への変速要求がTCU3から送出される態様でもよい。この場合には、ステップS18(原動機回転数増加制御ステップ)では、原動機回転数増加制御部3fが、まず変速制御部3cによって、第1クラッチディスク41を切離制御によって切離させる。その後、ダウンシフトの変速指令により切離された第1入力軸21に成立された1速ギヤ段によって、切離された変速前の第1入力軸回転数Ni1よりも増加している、同じ入力軸である第1入力軸21の第1入力軸回転数Ni1に一致させるようエンジン回転数Neを増加させる制御を行なえばよい。
【0096】
そしてステップS20(目標クラッチトルク変更演算ステップ)では、目標クラッチトルク変更演算部3gが、目標クラッチトルクTcaをアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて演算し変更する。そしてステップS22(目標クラッチトルク変更演算ステップ)に移動し、変速制御部3cが、第1クラッチディスク41を変更後の目標クラッチトルクTceによって制御しセンタプレート43に押しつける。そして第1入力軸21の入力軸回転数Ni1と略一致したエンジン回転数Neに制御されているエンジン4と第1入力軸21とを短時間で同期させ接続させればよい。これによって上記と同様、大きな変速ショックを受けることなく高速ギヤ段から2段下の低速ギヤ段側に素早く切り替わり大きなトルクで車両を力強く加速走行させ、運転者の要求を満足させることができる。
【0097】
また、上記フローチャートにおいてはステップS10〜ステップS34までの制御として説明したが、これに限らずステップS10〜ステップS20までの制御だけでもよい。これによっても相応の効果は得られる。
【0098】
また、ステップS30においては、アクセル踏込速度Vacデータが所定の踏込速度閾値A以下の状態で一定時間以上経過したときにステップS34に移動するようにしてもよい。このように、運転者の加速に対する意思が変化したことを表す指標であれば、どのように設定してもよい。
【0099】
上述の説明から明らかな様に、第1の実施形態に係る自動クラッチ制御装置20は、ダウンシフトの変速指令が送出されアクセル踏込速度Vacが所定の踏込速度閾値Aを超えて検出されると、まず、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離する切離制御を行なう。
【0100】
その後、低速ギヤ段側の変速ギヤ段が成立されたことにより回転数が増加した第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4に次に接続される入力軸の入力軸回転数Ni1またはNi2に一致するよう原動機回転数増加制御部3fがエンジン4のエンジン回転数Neを制御する。そしてエンジン4のエンジン回転数Neが入力軸回転数Ni1またはNi2と略一致するとアクセル踏込速度Vacの大きさに応じ変更された目標クラッチトルクTcaより大きな目標クラッチトルクTceによってクラッチの係合制御が実施される。このように、運転者の加速の意思を表す指標であるアクセル踏込速度Vacが大きい場合には、クラッチ切断状態においてエンジン4のエンジン回転数Neを入力軸回転数Ni1またはNi2と略一致させるよう制御し、その後アクセル踏込速度Vacの大きさに応じて増加するよう変更された目標クラッチトルクTcaより大きな目標クラッチトルクTceによってクラッチを係合させるので、クラッチはショックなく短時間で係合しトルクダウンすることなく運転者の加速要求を満足させることができる。
【0101】
またアクセル踏込速度Vacが所定の踏込速度閾値Aを超えない場合には、原動機回転数増加制御部3fによる制御は行なわない。そして目標クラッチトルク演算部3aによって演算された目標クラッチトルクTca(またはTcc)によってクラッチの係合制御が実施される。これにより、運転者の要求にあった緩やかな加速フィーリングを得ることができる。
【0102】
また、第1の実施形態に係る自動クラッチ制御装置20は、アクセル踏込速度Vacが所定の踏込速度閾値Aを越え、アクセルの踏込速度Vacに応じて変更された目標クラッチトルクTceによってクラッチの係合制御が実施された状態において、アクセル踏込速度Vacの絶対値が踏込速度閾値Aと踏込速度閾値Aより小さい正の解除判定閾値Bとの間に少なくとも2回進入すると原動機回転数増加制御部3f、および目標クラッチトルク変更演算部3gによる制御を解除する。そして通常の目標クラッチトルクTcaによって係合制御を行なう。つまりアクセルペダルPの踏込速度Vacの絶対値が踏込速度閾値Aと正の解除判定閾値Bとの間に少なくとも2回進入するということは、運転者が緩やかにアクセルペダルPを開閉させていることを示しており、もう大きな変速を望んでいないと判断できる。このため原動機回転数増加制御部3fおよび目標クラッチトルク変更演算部3gの演算制御を解除し通常の制御に戻す。これによって運転者の要求にあった通常の加速フィーリングを得ることができる。
【0103】
また、第1の実施形態に係る自動クラッチ制御装置20は、目標クラッチトルク変更演算部3gによって目標クラッチトルクTcaがアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて演算され変更された状態において、アクセル踏込量Lacが所定の変化量Cを超えて変化すると、原動機回転数増加制御部3fおよび目標クラッチトルク変更演算部3gの制御を解除する。このように、アクセル踏込量Lacが所定の変化量Cを超えて変化したことを捉えて、運転者が要求した大きな加速、若しくは緩やかな加速を、もう望んでいないと判断し通常の制御に戻す。これによって運転者の要求にあった加速フィーリングを得ることができる。
【0104】
また、第1の実施形態に係る自動クラッチ制御装置20が適用される変速機は、デュアルクラッチ式自動変速機1である。デュアルクラッチ式自動変速機1は、変速時において接続されていた一方の入力軸のクラッチの係合が切離されて解除され、同時に切断状態であった次の変速ギヤ段が成立している他方の入力軸のクラッチが係合される。このようにデュアルクラッチ式自動変速機1は短時間で変速動作が完了する構成となっている。このため本発明に係る自動クラッチ制御装置20をデュアルクラッチ式自動変速機に適用すれば、変速制御の早さに加えて運転者の要求する加速要求を満足させることができ、商品性の向上が図れる。
【0105】
次に、第1の実施形態に係る自動クラッチ制御装置20の変形例について説明する。変形例である自動クラッチ制御装置120は、踏込速度閾値Aを1つだけ有する第1の実施形態の自動クラッチ制御装置20に対して踏込速度閾値を複数備えている点のみ異なる。よって異なる点のみ説明し、同様部分については説明を省略する。また、同様の構成については同じ符号を付して説明する。
【0106】
自動クラッチ制御装置120は、例えば、図8に示すように、3つの踏込速度閾値D、A、E(値が小さいものから順に記載)を有している。そしてアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値D、A、Eのうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えた場合に、変速制御部3cによって、第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、第1入力軸21および第2入力軸22のうちのエンジン4から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離制御によって切離させる。その後、ダウンシフトの変速指令によって成立された低速ギヤ段側の変速ギヤ段によって切離された変速前の入力軸回転数Niよりも増加している次に接続される入力軸の入力軸回転数Niに一致させるよう原動機回転数増加制御部3fがエンジン回転数Neを増加させる制御を行なう。さらにその後、目標クラッチトルク変更演算部3gによって第1の実施形態と同様に目標クラッチトルクTcaをアクセル踏込速度検出部2aによって検出されたアクセル踏込速度Vacの大きさに応じて演算し変更する。そして、これから係合がされるクラッチディスクを変更後の目標クラッチトルクTceによって係合制御しエンジン回転数Neと入力軸回転数Niとを同期させ係合させる。これにより、エンジン回転数Neと入力軸回転数Niとの同期が短時間で完了し係合するので大きなトルクダウンは発生せず運転者の加速要求を満足できる。
【0107】
またアクセル踏込速度Vacが踏込速度閾値D、A、Eのうち選択されたいずれかの踏込速度閾値より小さければ、運転者は大きな加速を欲していないと判断できる。このためクラッチトルクTcは目標クラッチトルク演算部3aで演算した目標クラッチトルクTcaのままとする(図5参照)。そして変速制御部3cによって第1クラッチディスク41および第2クラッチディスク42のうち、これから係合がされるクラッチディスクを目標クラッチトルクTcaによってセンタプレート43に緩やかに押しつけて係合制御し同期させ係合させる。これにより運転者の要求にあった緩やかな加速とクラッチ係合によるショックが軽減された変速が実現できる。
【0108】
また、原動機回転数増加制御部3fおよび目標クラッチトルク変更演算部3gの演算制御を解除する方法は、第1の実施形態と同様である。つまり、アクセルペダルPの踏込速度Vacに応じて変更された目標クラッチトルクTceによってクラッチの係合制御が実施されたのち、アクセル踏込速度Vacの絶対値が選択されたいずれかの踏込速度閾値D、A、Eと該選択された踏込速度閾値D、A、Eより小さい正の解除判定閾値Bとの間に少なくとも2回進入すると原動機回転数増加制御部3f、および目標クラッチトルク変更演算部3gによる制御を解除する。そして以降、通常の目標クラッチトルクTcaによって係合制御を行なう。これによって運転者の要求にあった通常の加速フィーリングを得ることができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、上記において踏込速度閾値D、A、Eの選択条件は各種設定することができる。例えばアクセルペダルPの踏込量Lacを条件に加え踏込量Lacが大きい時(または小さい時)はアクセル踏込速度Vacが小さくても制御に移行できるように例えば踏込速度閾値Dを選択するようにしてもよい。また踏込量Lacが小さい時(または大きい時)はアクセル踏込速度Vacが大きいときを制御に移行できる条件とし例えば踏込速度閾値Eを選択するようにしてもよい。そして踏込速度閾値AはアクセルペダルPの踏込量Lacが中間位置にあるときに選択できるよう設定すればよい。また、別の設定方法として車速を条件に加え、車速が大きい時(または小さい時)は、アクセル踏込速度Vacが小さくても制御に移行できるように踏込速度閾値Dを選択してもよい。また車速が小さい時(または大きい時)はアクセル踏込速度Vacが大きいときを制御に移行できる条件とし踏込速度閾値Eを選択してもよい。そして踏込速度閾値Aは車速が中間位置にあるときに選択できるよう設定すればよい。このように、複数の踏込速度閾値の選択条件はどのように設定してもよい。さらに、踏込速度閾値の数は3つに限らず2つでもよいし、4つ以上でもよいことは言うまでもない。
【0110】
また、自動クラッチ制御装置120の変速制御方法および作用については図7のフローチャートにおいてステップS16およびステップS30の踏込速度閾値Aを踏込速度閾値D、A、またはEと読み替えればよく、得られる効果は第1の実施形態と同様である。
【0111】
なお、本実施形態においては、第1入力軸21に、奇数段の駆動ギヤで51、53、55および57を固定して設け、第2入力軸22に、偶数段の駆動ギヤ52、54、および56を固定して設けた。そして第1副軸31および第2副軸32に、第1入力軸21の奇数段駆動ギヤと噛合して奇数変速段を成立させる従動ギヤ61、63、65、67と、第2入力軸22の偶数段駆動ギヤと噛合して偶数変速段を成立させる従動ギヤ62、64、66とを遊転可能に設けた。しかし、この形態に限らず第1入力軸21および第2入力軸22に、それぞれ駆動ギヤ51、53、55、57と駆動ギヤ52、54、56とを遊転可能に設けてもよい。そしてこのときには第1副軸31、および第2副軸32に1速〜7速従動ギヤ61〜67を固定して設けてやればよい。
【0112】
また、特開2011−144872公報の図1に開示されるデュアルクラッチ式自動変速機のように7速駆動ギヤ26aのみを第1入力軸15に遊転可能に設け、7速駆動ギヤ26aに噛合する7速従動ギア26bを第2副軸18に固定して設けてもよい。さらに公報の図1に示すように切替えクラッチ30Dが紙面右方に移動することによって第1入力軸15と出力軸19とを直結するよう構成してもよい。このようなデュアルクラッチ式自動変速機においても同様の効果が得られる。
【0113】
また、本実施形態においては、フォークシャフト135を4本設け、それぞれのフォークシャフト135に対して設けたフォーク72a〜72dを各々作動させて各ギヤ段の切り替えを行なった。しかしこれに限らずセレクト用モータを設け、セレクト用モータの駆動によりフォークシャフトを選択し、選択したフォークシャフトをシフト用モータによってスライドさせて各ギヤ段の切り替えを行なってもよい。
【0114】
また、本実施形態のクラッチアクチュエータはクラッチアクチュエータ作動量を調整してクラッチトルクTcを制御した。しかし、これに限らず油圧を調整することによって、クラッチトルクTcを制御する油圧式クラッチアクチュエータを本発明に係るクラッチアクチュエータとして適用してもよい。
【0115】
また、本実施形態においては、本発明に係る自動クラッチ制御装置をデュアルクラッチ式の自動変速機(DCT)に適用しているが、自動クラッチ制御装置20を、自動制御式マニュアルトランスミッション(AMT:例えば、特開2008−75814号公報参照)に適用することもできる。また、従来のマニュアルトランスミッションのクラッチ操作のみを自動化した変速機に適用することもできる。
【0116】
さらに、本発明に係る自動クラッチ制御装置を自動車用のデュアルクラッチ式自動変速機に適用するのではなく、自動二輪車等の他の自動変速機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1・・・デュアルクラッチ式自動変速機、2・・・ECU、 3・・・TCU、4・・・エンジン、4a・・・駆動軸回転数センサ、10・・・ケース、11・・・ミッションケース、12・・・クラッチハウジング、17・・・第1クラッチアクチュエータ、18・・・第2クラッチアクチュエータ、20・・・自動クラッチ制御装置、21・・・第1入力軸、22・・・第2入力軸、23a、23b・・・車速センサ、40・・・クラッチ(デュアルクラッチ)、41・・・第1クラッチディスク、42・・・第2クラッチディスク、43・・・センタプレート、44・・・第1プレッシャプレート、45・・・第2プレッシャプレート、51〜57・・・変速ギヤ段の駆動ギヤ、58、68・・・最終減速駆動ギヤ、61〜67・・・変速ギヤ段の従動ギヤ、62a・・・小径ギヤ、70・・・後進ギヤ、72a〜72d・・・フォーク、101、104・・・第1シフト機構(第1、第4シフトクラッチ)、102、103・・・第2シフト機構(第2、第3シフトクラッチ)、130・・・フォーク駆動機構、135・・・ラック軸、201・・・クラッチハブ、202・・・スリーブ、203・・・シンクロナイザリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の原動機の駆動軸と変速機の入力軸との間に介装されたクラッチと、
前記クラッチの切離および接続を制御するクラッチアクチュエータと、
前記原動機のイナーシャに変速における該原動機の目標回転数変速度を乗算した目標慣性トルクを演算し、該原動機の現在の現出力トルクから該目標慣性トルクを減算した値を前記クラッチの目標クラッチトルクとして演算する目標クラッチトルク演算部と、
変速指令が送出されると、前記クラッチアクチュエータの作動によって前記原動機から前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを制御し前記クラッチを切離する切離制御を行ない、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるように制御し前記原動機の原動機回転数を前記入力軸の入力軸回転数と同期させる係合制御を行なう変速制御部と、
前記原動機の前記駆動軸の回転数を原動機回転数として検出する原動機回転数検出部と、
前記入力軸の前記入力軸回転数を検出する入力軸回転数検出部と、
アクセルの踏込および踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出部と、
前記アクセルの踏込が検出された後に高速ギヤ段から低速ギヤ段に変速するダウンシフトの変速指令が送出された場合に前記アクセル踏込速度検出部によって検出された前記アクセル踏込速度が1つ以上の所定の踏込速度閾値を超えるか否かを判定する踏込速度閾値判定部と、
前記アクセル踏込速度が前記1つ以上の所定の踏込速度閾値のうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えた場合に、前記クラッチの前記切離制御によって前記入力軸と前記原動機とを切離後、前記変速指令によって成立された前記低速ギヤ段によって変速前の前記入力軸回転数よりも増加している前記入力軸の前記入力軸回転数に一致させるよう原動機回転数を増加させて制御する原動機回転数増加制御部と、
前記目標クラッチトルクを前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更するよう変更量を演算する目標クラッチトルク変更演算部と、
を備える自動クラッチ制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセルの前記踏込速度が前記選択されたいずれかの踏込速度閾値を越えた後、前記踏込速度の絶対値が前記選択されたいずれかの踏込速度閾値と該踏込速度閾値より小さな正の解除判定閾値との間に少なくとも2回進入すると、前記原動機回転数増加制御部および前記目標クラッチトルク変更演算部による制御を解除し前記目標クラッチトルク演算部によって演算された前記目標クラッチトルクによって前記係合制御を行なう自動クラッチ制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記1つ以上の所定の踏込速度閾値は1つである自動クラッチ制御装置。
【請求項4】
請求項1または3において、
前記アクセルのアクセル踏込量を検出するアクセル踏込量検出部を有し、
前記目標クラッチトルク変更演算部によって前記目標クラッチトルクが前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更された後、前記アクセルの前記アクセル踏込量が所定の変化量を超えて変化すると、前記原動機回転数増加制御部および前記目標クラッチトルク変更演算部による制御を解除し前記目標クラッチトルク演算部によって演算された前記目標クラッチトルクによって前記係合制御を行なう自動クラッチ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記変速機は、
同心に配置された第1入力軸および第2入力軸と、前記第1入力軸に伝達された前記出力駆動力を変速して奇数変速段を成立させる第1シフト機構、および前記第2入力軸に伝達された前記出力駆動力を変速して偶数変速段を成立させる第2シフト機構と、を有し、
前記クラッチは、前記原動機の回転駆動力を出力駆動力として前記第1入力軸に伝達する第1クラッチおよび前記出力駆動力を前記第2入力軸に伝達する第2クラッチを有するデュアルクラッチであり、
前記変速制御部は、変速指令が送出されると、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチのうち、前記第1入力軸および前記第2入力軸のうちの前記原動機から切り離される入力軸に対応するクラッチを切離する切離制御を行なうとともに、前記前記第1クラッチおよび前記第2クラッチのうち、前記第1入力軸および前記第2入力軸のうちの前記原動機に接続される入力軸に対応するクラッチを、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるよう制御して前記原動機の回転数を前記接続される入力軸の回転数と同期させる係合制御を行なう自動クラッチ制御装置。
【請求項6】
車両の原動機の駆動軸と変速機の入力軸との間に介装されたクラッチと、前記クラッチの切離および接続を制御するクラッチアクチュエータと、前記原動機のイナーシャに変速における該原動機の目標回転数変速度を乗算した目標慣性トルクを演算し、該原動機の現在の現出力トルクから該目標慣性トルクを減算した値を前記クラッチの目標クラッチトルクとして演算する目標クラッチトルク演算部と、変速指令が送出されると前記クラッチアクチュエータの作動によって前記原動機から前記入力軸に伝達されるクラッチトルクを制御し前記クラッチを切離する切離制御を行ない、前記クラッチトルクが前記目標クラッチトルクになるように制御し前記原動機の原動機回転数を前記入力軸の入力軸回転数と同期させる係合制御を行なう変速制御部と、前記原動機の前記駆動軸の回転数を原動機回転数として検出する原動機回転数検出部と、前記入力軸の前記入力軸回転数を検出する入力軸回転数検出部と、を備えた自動クラッチ制御装置の変速制御方法であって、
該変速制御方法は、
前記アクセルの踏込および踏込速度を検出するアクセル踏込速度検出ステップと、
前記アクセルの踏込が検出された後に高速ギヤ段から低速ギヤ段に変速するダウンシフトの変速指令が送出された場合に前記アクセル踏込速度検出ステップによって検出された前記アクセル踏込速度が1つ以上の所定の踏込速度閾値を超えるか否かを判定する踏込速度閾値判定ステップと、
前記アクセル踏込速度が前記1つ以上の所定の踏込速度閾値のうち選択されたいずれかの踏込速度閾値を超えた場合に、前記クラッチの前記切離制御によって前記入力軸と前記原動機とを切離後、前記変速指令によって成立された前記低速ギヤ段によって変速前の前記入力軸回転数よりも増加している前記入力軸の前記入力軸回転数に一致させるよう原動機回転数を増加させて制御する原動機回転数増加制御ステップと、
前記目標クラッチトルクを前記アクセル踏込速度の大きさに応じて変更するよう変更量を演算する目標クラッチトルク変更演算ステップと、
を備える自動クラッチ制御装置の変速制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63719(P2013−63719A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204185(P2011−204185)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】