説明

自動二輪車

【課題】本発明の目的は、収納ボックス容量の減少や収納ボックス形状の複雑化をまねくことなく、且つ、車両の大型化を抑えることができる盗難対策装置が備えられている自動二輪車を提供することである。
【解決手段】自動二輪車10には、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から車両斜め後下方へ延びるメインフレーム21と、このメインフレーム21の下方に配置されるエンジン17と、車両の位置情報を無線送信する盗難対策装置66とが設けられている。前輪16の後方で、エンジン17の斜め前上方に、エアクリーナ46が配置され、このエアクリーナ46から支持ステー101が延び、この支持ステー101に盗難対策装置66が支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が盗まれたときに、車両の位置情報を検出するとともにこの位置情報を無線通信する盗難対策装置が備えられている自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−362448公報(図14)
【0003】
特許文献1の図14において、車体の後部に、着座用のシート6(符号は、同公報のものを流用する。以下同じ。)によって上方が開閉可能に覆われ、ヘルメットなどの物を収納する物入れボックス5(以下、「収納ボックス5」と云う。)が設けられ、この収納ボックス5の内側に盗難対策装置20が配置され、この盗難対策装置20の上面に内装シート61が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、盗難対策装置20を収納ボックス内に配置する場合に、収納ボックス5の容量が減らないように、収納ボックス5に凹部を設けると、収納ボックス5の形状が複雑になる。
【0005】
本発明の目的は、収納ボックス容量の減少や収納ボックス形状の複雑化をまねくことなく、且つ、車両の大型化を抑えることができる盗難対策装置が備えられている自動二輪車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ヘッドパイプと、このヘッドパイプにフロントフォークを介して支持される前輪と、ヘッドパイプから車両斜め後下方へ延びるメインフレームと、このメインフレームの下方に配置されるエンジンと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、盗難対策装置は、車両を横から見たときに、メインフレームとエンジンの間に配置され、車両を上から見たときに、盗難対策装置の少なくとも一部がメインフレームから車幅方向で外に突出していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、前輪の車両後方で、且つ、エンジンの斜め前上方に、メインフレームによって支持されるエアクリーナが配置され、このエアクリーナから盗難対策装置を支持する支持ステーが延びていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、エアクリーナは、前部カバーと後部ケースとからなる前後2分割構造体であり、メインフレームに、後部ケースが支持され、この後部ケースに、前部カバーが車両前方から締結され、この前部カバーに、支持ステーが設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、エアクリーナとエンジンの間に、エンジンに供給する空気の量を調整するスロットルボディが配置され、このスロットルボディの車両前方に、支持ステーと盗難対策装置とが配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、支持ステーは、前部カバーから下方に延出され盗難対策装置およびスロットルボディを車両前方から覆う遮蔽壁部と、この遮蔽壁部から車両後方に延出され盗難対策装置を支持する支持部と、からなることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置は、車両を上から見たときに、エアクリーナの車幅方向幅内に納まるように配置され、エアクリーナの左右側面を車体カバーで覆うとともに、盗難対策装置の左右側方を車体カバーで覆ったことを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、車両を上から見たときに、盗難対策装置のメインフレームから車幅方向に突出した部分に、車両の位置情報を測定するアンテナ部が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、盗難対策装置は、メインフレームとエンジンの間に配置されている。
従来、収納ボックスの内側に盗難対策装置を配置すると、収納ボックスの収納容量が減るので、容量を確保するために収納ボックスに凹部を設けることになり、収納ボックスの形状が複雑になる。
【0014】
この点、本発明では、盗難対策装置は、メインフレームとエンジンの間に配置されているので、収納ボックスの容量に配慮することなく盗難対策装置を配置することができる。このため、盗難対策装置を設けるために、収納ボックスの形状が複雑になることを防止することができる。
【0015】
また、本発明は、収納ボックスが小さい車両や収納ボックスを備えていない車両にも適用することができる。すなわち、デッドスペースとして扱われることが多かったメインフレームとエンジンの間に盗難対策装置を配置したので、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる。
【0016】
さらに、盗難対策装置の少なくとも一部は、メインフレームの幅から外に突出しているので、盗難対策装置の上方に金属製のメインフレームが設けられていても、車両の位置情報の測定などの無線通信を良好に行うことができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、メインフレームによってエアクリーナが支持され、このエアクリーナに盗難対策装置を支持する支持ステーが設けられている。
上記構成であれば、エアクリーナに予め盗難対策装置をサブアセンブリしておき、その後、メインフレームに、盗難対策装置が装着されているエアクリーナを組み付けることが可能になる。サブアセンブリの段階で盗難対策装置が組付可能となるので、盗難対策装置の組付に際して、良好な作業性を確保することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、エアクリーナを前後2分割構造体とし、後部ケースに前部カバーを車両前方から締結するようにし、後部ケースをメインフレームに支持させるようにした。このような構成であれば、エアクリーナの後方に配置されているエンジンに邪魔されることなく、後部ケースをメインフレームに支持した状態で、前部カバーを脱着することができる。このため、前部カバーに一体的に取り付けた盗難対策装置は、前部カバーを取り外すことにより、容易に外すことができるので、盗難対策装置のメインテナンスなどを容易に行えるようになる。
【0019】
請求項4に係る発明では、スロットルボディの前方に、支持ステーが配置されている。エンジンの前方に配置した前輪で巻き上げられた泥水などは、支持ステーで受けることになるので、スロットルボディに泥水などが付着することを抑止できる。
【0020】
請求項5に係る発明では、支持ステーは、盗難対策装置とスロットルボディとを前方から覆う遮蔽壁部を有する。このような遮蔽壁部であれば、前輪で巻き上げられた泥水などは、遮蔽壁部に当たるので、泥水などが盗難対策装置やスロットルボディに付着することを抑止することができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置は、エアクリーナの車幅方向幅内に納まるように配置されている。すなわち、盗難対策装置は、エアクリーナの左右側面から外側へ突出しないので、エアクリーナの左右側方に車体カバーを近接配置できるようになり、車両の車幅方向での小型化に寄与することができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置がメインフレームから突出している部分に、車両の位置情報を測定するアンテナ部が配置されている。盗難対策装置が突出部分にアンテナ部が設けられ、このアンテナ部の上方に金属製の遮蔽物はない。このため、車両の位置情報を測定などの無線通信を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の自動二輪車に備えられている盗難対策装置およびその周辺部のブロック図である。
【図3】本発明に係る自動二輪車の要部側面図である。
【図4】図3の4矢視図である。
【図5】前部ケースが着脱可能であることを説明する作用説明図である。
【図6】本発明に係る盗難対策装置の取付構造を説明する斜視図である。
【図7】本発明に係る盗難対策装置およびその関連部品を示す説明図である。
【図8】本発明に係る自動二輪車の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中および実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1において、自動二輪車10は、車体フレーム11と、この車体フレーム11に含まれ車体フレーム11の前端部を構成するヘッドパイプ12に挿嵌されるステアリング軸13と、ステアリング軸13から下方に延設されるフロントフォーク14およびステアリング軸13の上端部に設けられている操向ハンドル15と、フロントフォーク14の下端部に回転自在に支持されている前輪16と、車体フレーム11の中央部に配置される駆動源としてのエンジン17と、車体フレーム11の後部に、前端が車体フレーム11に揺動自在に支持されるスイングアーム18L、18R(図手前側の符号18Lのみ示す。以下同じ。)と、スイングアーム18L、18Rの後端部に回転自在に支持されている後輪19と、を備えている。
【0026】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から斜め下後方に延びる1本のメインフレーム21と、メインフレーム21の中間部から後方に、且つ、左右外方に水平に延設された後、後斜め上方に延設されている後部フレームとしての左右のサブフレーム22L、22R(図手前側の符号22Lのみ示す。以下同じ。)と、メインフレーム21の後部と左右のサブフレーム22L、22Rから垂下されスイングアーム18L、18Rの前端をピボット軸28を介して揺動自在に支持する左右のピボットプレート29L、29R(図手前側の符号29Lのみ示す。以下同じ。)と、左右のサブフレーム22L、22Rの後端部から後方に延設されるとともに、平面視で、略U字状を呈するリヤフレーム32と、サブフレーム22L、22Rとリヤフレーム32の間に設けられリヤクッションユニット33L、33R(図手前側の符号33Lのみ示す。以下同じ。)の上端部が取り付けられるクッションブラケット34L、34R(図手前側の符号34Lのみ示す。以下同じ。)と、を主要な構成要素とする。
【0027】
エンジン17は、車体フレーム11に懸架されており、後部に変速機を内蔵するクランクケース36が設けられ、このクランクケース36の前部にシリンダ38が設けられ、このシリンダ38の前端部にシリンダヘッド39が設けられ、このシリンダヘッド39の上部に吸気装置41が接続され、シリンダヘッド39の下部に排気装置42が接続されている。
【0028】
吸気装置41は、一端がシリンダヘッド39に、吸気管44を介して接続されているスロットルボデイ45と、このスロットルボディ45の他端に接続されたエアクリーナ46とからなる。また、排気装置42は、シリンダヘッド39の下部に一端が接続されてエンジン17から下方へそして後方に延びる排気管48と、この排気管48の他端に接続されて後方に延びる消音器49と、からなる。
【0029】
車体の後部構造について説明すると、左右のサブフレーム22L、22Rの間に物入れとしての収納ボックス51が取り付けられ、この収納ボックス51の後方に燃料タンク52が配置され、収納ボックス51から燃料タンク52の上方にわたり、ヒンジ部53を介して開閉可能に着座用の乗員シート54が設けられている。ヒンジ部53は、乗員シート54の前端部に設けられている。56は収納ボックス51に収納されているヘルメットである。
【0030】
車体フレーム11の外方は、車体カバー58で覆われている。車体カバー58は、ヘッドパイプ12の周囲を覆う車体前部カバー61と、メインフレームの上方を覆うセンタカバー60と、乗員シート54の下方を含む車体後部を覆う車体後部カバー62と、からなる。
【0031】
車体前部カバー61は、車体の前面を構成するフロントカバー63と、このフロントカバー63の後方に連続して設けられ乗員の膝の前方を覆う左右一対のレッグシールド64とからなる。
【0032】
左右一対のレッグシールド64の間で、且つ、メインフレーム21とエンジン の間に車両の位置情報を検出するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置66が配置されている。盗難対策装置66の詳細については、後述する。
【0033】
図中、68はエンジン17の出力軸69に設けたドライブギヤ、71はチェーン、72はスプロケット、73はメインスタンド、74Fはフロントフェンダ、74Rはリヤフェンダ、75はヘッドランプ、76は車体右側後部に配置されてエンジンを制御するエンジン制御ユニット、77はテールランプ(テールランプユニット)、78L、78R(図手前側の符号78Lのみ示す。)はピリオンステップ、79L、79R(図手前側の符号79Lのみ示す。)はサブフレーム22L、22Rから斜め後下方に延設され、下端にピリオンステップ78L、78Rが取り付けられるピリオンステップメンバである。
【0034】
次に、盗難対策装置およびその周辺部のブロック図について、図1を併せて参照し説明を行う。
図2において、盗難対策装置66は、車両(自動二輪車)の車体に加えられた振動を検知する加速度センサ81と、複数の人工衛星から軌道情報を受信することにより車両の現在位置を検出する全地球測位システム(Global Positioning System)82と、加速度センサ81からの加速度信号SAおよび全地球測位システム82からの位置情報JPを受けて盗難対策を指令する制御部83と、制御部83からの交信指令SCに基づいて携帯電話基地局84へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部85と、制御部83からのエンジン制御信号SECに基づきエンジンの点火装置86に点火停止信号SSSを送って点火装置86の作動を停止させる、すなわち、エンジン17を停止させるエンジン制御部87と、制御部83からの警報制御信号SACに基づき警報装置88(ヘッドランプ75、ウインカ(図1の符号91L)、ヘッドランプ75等の灯火器93、ホーンに警報信号SAを送って灯火器93、ホーンを作動させる警報発生部96と、内部電源98と、からなる。内部電源98としては、例えば、リチウム電池が利用される。
【0035】
次に、盗難対策装置の配置構造について詳細に説明する。
図3において、前輪16の後上方に、エアクリーナ46が配置され、このエアクリーナ46とエンジン17の間に、エンジン17に供給する空気の量を調整するスロットルボディ45が配置され、このスロットルボディ45の車両前方に、支持ステー101と、この支持ステー101によって支持される盗難対策装置66とが配置されている。
【0036】
エアクリーナ46(エアクリーナケース46)は、前部カバー103と後部ケース104とからなる前後2分割構造体であり、前部カバー103に車両後方に向け開口している吸入ダクト105が設けられ、前部カバー103と後部ケース104の内側に、フィルタ部材としてのエレメント(図1、符号106)が配置され、後部ケース104の下部にコネクティングチューブ107が設けられ、このコネクティングチューブ107にスロットルボディ45が取り付けられている。
【0037】
エアクリーナ46の取付構造について以下に説明する。
ヘッドパイプ12とメインフレーム21との間に、補強ブラケット111が固着されており、この補強ブラケット111に、締結部材112によってエアクリーナ46が取り付けられている。詳細には、補強ブラケット111に後部ケースの上部114が支持されている。これにより、エアクリーナ46は、メインフレーム21によって支持され、前輪16の車両後方で、且つ、エンジン17の斜め前上方に配置されることになる。
【0038】
盗難対策装置66を支持することができる支持ステー101がエアクリーナ46から下方へ延びている。この支持ステー101は、前部カバー103から下方に延出され盗難対策装置66およびスロットルボディ45を車両前方から覆う遮蔽壁部115と、この遮蔽壁部115から車両後方に延出され盗難対策装置66を支持する支持部116と、からなり、車両側面視で、略L字状を呈する部材である。
【0039】
図4において、メインフレーム21に設けた補強ブラケット111に、締結部材112、112を介して後部ケースの上部114が支持され、この後部ケース104に、前部カバー103が車両前方から4つのタッピングねじ102を介して締結されている。前部カバーの下部には、下方に向け支持ステー101が延設されている。
遮蔽壁部115の後面と前部カバー103の前面との間に、遮蔽壁部115の剛性を高める3つのリブ118が形成されている。支持部の上面121は、略水平面であり、この上面121に、盗難対策装置66を止める止め部122が形成されている。止め部122の詳細は後述する。
【0040】
以下、後部ケース104に前部カバー103が着脱可能に取り付けられていることを説明する。
図5において、エアクリーナ46を前後2分割構造体とし、後部ケース104に前部カバー103を車両前方から締結するようにし、後部ケース104をメインフレーム21に支持させるようにした。かかる構成であれば、エアクリーナ46の後方に配置されているエンジン17に邪魔されることなく、後部ケース104をメインフレーム21に支持した状態で、前部カバー103を脱着することができる。
【0041】
そのため、前部カバー103に一体的に取り付けた盗難対策装置66は、前部カバー103を取り外すことで、容易に外すことができ、盗難対策装置66のメインテナンスなどを容易に行えるようになる。
【0042】
また、盗難対策装置が取り付けられる支持ステー101は、前部カバー103と一体に形成されている。このような支持ステー101に予め盗難対策装置66をサブアセンブリしておき、エレメントなどを組み込むなどしてエアクリーナ46を組み立て、その後、盗難対策装置66が装着されているエアクリーナ46を、メインフレーム21に組み付けることが可能になる。
【0043】
すなわち、エアクリーナ46に予め盗難対策装置66をサブアセンブリした後、盗難対策装置66を取り付けたエアクリーナ46をメインフレーム21に組み付ければ良い。サブアセンブリの段階で盗難対策装置66が組付可能となるので、盗難対策装置66を車両へ組み付ける際に、良好な作業性を確保することができる。
【0044】
図3に戻って、スロットルボディ45の前方に、支持ステー101が配置されている。詳細には、スロットルボディ45の前方に、遮蔽壁部115と支持部116とからなる支持ステー101を配置したので、エンジン17の前方に配置した前輪16で巻き上げられた泥水などは、支持ステー101で受けることができる。このため、スロットルボディに泥水などが付着することを抑止できる。
【0045】
図3〜図5において、特に、支持ステー101は、盗難対策装置66とスロットルボディ45とを前方から覆う遮蔽壁部115を有するので、前輪(図1、符号16)で巻き上げられた泥水などは、遮蔽壁部115に当たり、泥水などが盗難対策装置66やスロットルボディ45に付着することを抑えることができる。
【0046】
次に盗難対策装置の取付構造について説明する。
図6において、エアクリーナ(図5、符号46)から下方に延びている支持ステー101は、前述したように、遮蔽壁部115と、この遮蔽壁部の下端部117から車両後方に水平に延びている支持部116と、を備え、遮蔽壁部115に沿って3つの補強リブ118が設けられ、3つの補強リブ118の車両幅方向外側で、遮蔽壁部の左右の端部に沿って、2つの補強リブ119が設けられ、支持部の上面121(支持部上面121)に、上方に突設され盗難対策装置66を支持部116に止める止め部122が一体的に形成されている。止め部122は、支持部上面121の前後端部に設けられている第1突設部123および第2突設部124と、支持部上面121の左端部に設けられている第3突設部125とからなる。
【0047】
エアクリーナ46およびこのエアクリーナ46の前部カバー103と一体形成されている支持ステー101は、樹脂製であり、この支持ステー101に、盗難対策装置66を支える止め部122が一体的に形成され、前記止め部122に、盗難対策装置66が取付可能になっている。
【0048】
盗難対策装置のハウジング131は、その周囲が弾性部材132によって縦横に囲われ、この弾性部材132に3つの凸部133が設けられている。凸部133は、第1凸部166と、第2凸部167と、第3凸部168とからなる。これらの第1凸部166〜第3凸部168(凸部133)に、止め部122が係合可能な位置に係合穴134が設けられている。係合穴134は、第1突部123と係合する第1係合穴143と、第2突部124と係合する第2係合穴144と、第3突設部125と係合する第3係合穴145と、からなる。
【0049】
そして、ハウジング131に弾性部材132を取り付け、この弾性部材132に設けた第1〜第3係合穴143、144、145を第1〜第3突部123、124、125に各々差し込むことで、盗難対策装置66をエアクリーナ46の前部カバー103から延びている支持ステー101の支持部116に取り付けるようにした。
【0050】
次に、盗難対策装置のハウジング131および弾性部材132の詳細について説明する。
図7(a)において、盗難対策装置66の平面図が示されており、図7(b)において、図7(a)の7(b)矢視図が示されている。
盗難対策装置のケース体としてのハウジング131は、上面151と下面152と前面153と後面154と左面155と右面156とからなる直方体の部材であり、右面156に、コネクタ157、158が接続される端子部161、162が設けられている。
【0051】
弾性部材132は、ハウジング131の前面153と上面151と後面154と下面152とを囲う第1保持部163と、第1保持部163から左方に延設されハウジング131の上面151と左面155と下面152とを囲う第2保持部164と、からなる部材であり、前面153に沿って第1保持部163に、第1係合穴143を有する第1凸部166(凸部133)が設けられ、後面154に沿って第1保持部163に、第2係合穴147を有する第2凸部167(凸部133)が設けられ、左面155に沿って第2保持部164に、第3係合穴145を有する第3凸部168(凸部133)が設けられている。これらの第1係合穴143、第2係合穴144、第3係合穴145は、各々、止め部(図6、符号122)に係合される。
【0052】
かかる第1係合穴143、第2係合穴144および第3係合穴145を備えた弾性部材132にハウジング131が拘束されているので、この弾性部材132により車両の振動が吸収され、盗難対策装置66に車両の振動を伝達され難くすることができる。
図7(c)において、図7(b)の7(c)−7(c)線断面図が示されており、盗難対策装置66の右面には、コネクタ157、158が接続される端子部161、162が備えられている。
【0053】
次に、メインフレーム21、車体カバー58と盗難対策措置66との配置について説明する。
図8において、盗難対策装置66は、車両を上から見たときに、その一部がメインフレーム21の幅Wから外に突出している。そして、盗難対策装置66は、エアクリーナ46の車幅方向幅Waに納まるように配置され、盗難対策装置66の左右側方を車体カバーとしてのレッグシールド64で覆い、エアクリーナ46とメインフレーム21の左右側方をレッグシールド64で覆うとともに、メインフレーム21とエアクリーナ46の上方を車体カバーを構成するセンタカバー(図1、符号60)で覆った。
【0054】
盗難対策装置66は、エアクリーナ46の車幅方向幅Waに納まるように配置されている。すなわち、盗難対策装置66は、エアクリーナの左右側面171、172から外側へ突出しないので、エアクリーナ46の左右側方にレッグシールド64を近接配置できるようになる。レッグシールド64がエアクリーナ46の左右側方に近接配置できれば、車両の車幅方向での小型化に寄与することができる。
【0055】
盗難対策装置66のメインフレーム21から車幅方向に突出した部分に、車両の位置情報を測定するアンテナ部173が配置されているので、このアンテナ部173の上方に金属製の遮蔽物はない。このため、車両の位置情報を測定などする無線通信を良好に行うことができる。
【0056】
以上に述べた自動二輪車の作用を次に述べる。
図1に戻って、盗難対策装置66は、メインフレーム21とエンジン17の間に配置されている。
従来、収納ボックス51の内側に盗難対策装置を配置すると、収納ボックスの収納容量が減るので、容量を確保するために収納ボックスに凹部を設けることになり、収納ボックスの形状が複雑になる。
【0057】
この点、本発明では、盗難対策装置66は、メインフレーム21とエンジン17の間に配置されているので、収納ボックス51の容量に配慮することなく盗難対策装置66を配置することができる。このため、盗難対策装置66を設けるために、収納ボックス51の形状が複雑になることを防止することができる。
【0058】
また、本発明は、収納ボックスが小さい車両や収納ボックスを備えていない車両にも適用することができる。すなわち、デッドスペースとして扱われることが多かったメインフレーム21とエンジン17の間に盗難対策装置66を配置したので、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車10において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置66を設けることができる。
【0059】
図8において、盗難対策装置66の少なくとも一部は、メインフレーム21の幅から突出している。この突出部に、アンテナ部173が配置されているので、盗難対策装置66の上方に金属製のメインフレームが設けられていても、車両の位置情報を測定などの無線通信を良好に行うことができる。
【0060】
尚、本発明は、実施の形態では二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【0061】
尚、エアクリーナは、前部カバーと後部ケースとからなる前後2分割構造体に限定されない。例えば、エアクリーナは、上部カバーと下部ケースとからなる上下2分割構造体であって、上部ケースがメインフレームに支持され、下部ケースに支持ステーを設け、上部カバーに、下部ケースを車両下方から締結することは差し支えない。
【0062】
また、支持ステーは、スロットルボデイの前方以外の、例えば、スロットルボデイの側方に配置することは差し支えない。
この他、盗難対策装置は、車両を上から見たときに、エアクリーナの車幅方向幅内に納まらないように配置することは差し支えない。つまり、エアクリーナの車幅方向幅の外側に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0064】
10…自動二輪車、12…ヘッドパイプ、14…フロントフォーク、16…前輪、17…エンジン、21…メインフレーム、45…スロットルボディ、46…エアクリーナ、58…車体カバー、66…盗難対策装置、101…支持ステー、103…前部カバー、104…後部ケース、115…遮蔽壁部、116…支持部、171…エアクリーナの左側面、172…エアクリーナの右側面、173…アンテナ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプと、このヘッドパイプにフロントフォークを介して支持される前輪と、前記ヘッドパイプから車両斜め後下方へ延びるメインフレームと、このメインフレームの下方に配置されるエンジンと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、
前記盗難対策装置は、車両を横から見たときに、前記メインフレームと前記エンジンの間に配置され、車両を上から見たときに、前記盗難対策装置の少なくとも一部が前記メインフレームから車幅方向で外に突出していることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記前輪の車両後方で、且つ、前記エンジンの斜め前上方に、前記メインフレームによって支持されるエアクリーナが配置され、このエアクリーナから前記盗難対策装置を支持する支持ステーが延びていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記エアクリーナは、前部カバーと後部ケースとからなる前後2分割構造体であり、前記メインフレームに、前記後部ケースが支持され、この後部ケースに、前記前部カバーが車両前方から締結され、この前部カバーに、前記支持ステーが設けられていることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記エアクリーナと前記エンジンの間に、前記エンジンに供給する空気の量を調整するスロットルボディが配置され、このスロットルボディの車両前方に、前記支持ステーと前記盗難対策装置とが配置されていることを特徴とする請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記支持ステーは、前記前部カバーから下方に延出され前記盗難対策装置および前記スロットルボディを車両前方から覆う遮蔽壁部と、この遮蔽壁部から車両後方に延出され前記盗難対策装置を支持する支持部と、からなることを特徴とする請求項4記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記盗難対策装置は、車両を上から見たときに、前記エアクリーナの車幅方向幅内に納まるように配置され、
前記エアクリーナの左右側面を前記車体カバーで覆うとともに、前記盗難対策装置の左右側方を前記車体カバーで覆ったことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項7】
車両を上から見たときに、前記盗難対策装置の前記メインフレームから車幅方向に突出した部分に、車両の位置情報を測定するアンテナ部が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−31723(P2011−31723A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179344(P2009−179344)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】