説明

自動分析装置と液体試料の分析方法

【課題】反応容器のサイズに関係なく透過する光の光量が安定した領域での測光を可能とする自動分析装置と液体試料の分析方法を提供すること。
【解決手段】光源から出射され、液体試料を保持した反応容器を横切る際に透過し、測光手段が測光した光の光学的特性値をもとに液体試料を分析する自動分析装置と液体試料の分析方法。自動分析装置は、測光手段が測光した測光値の時間変化を取得する測光値取得部15aと、測光値の時間微分値を演算する時間微分値演算部15bと、所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定部15cと、時間領域に含まれる測光値の演算処理値を演算する処理値演算部15dと、演算処理値をもとに液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算部15eと、光学的特性値をもとに成分又は濃度を特定する成分濃度特定部15fとを有する演算部15を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置と液体試料の分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液等の生体試料(検体)を分析する自動分析装置は、反応容器に検体と試薬とをそれぞれ分注して反応させ、反応後の液体試料を光学的に測定することによって検体の成分濃度等を分析している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2534624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された自動分析装置は、図10に示すように、液体試料を透過してくる透過光の変換電圧が基準電圧値(V0)を越えた時刻(t1)から所定時間後の時刻(t2)〜時刻(t3)までの透過光の光量が安定している測光時間内に透過光をサンプリングしており、サンプリングタイムTsの前後に時刻(t1)〜時刻(t2)及び時刻(t3)〜時刻(t4)に及ぶマージンタイムTmが設定されている。このため、反応容器に対する光の相対移動速度が一定である特許文献1の自動分析装置は、図11に示すように、光束BLが横切る方向に沿った反応容器Cの幅Wが決まってしまうという問題があった。
【0005】
一方、自動分析装置は、近年、人体への負担軽減や装置の運用コスト低減を目的として、検体および試薬の量の微量化が求められている。この場合、検体および試薬の微量化に伴って反応容器も小型化する必要があるが、特許文献1の自動分析装置は、マージンタイムTmを確保しつつ透過光の光量が安定しているサンプリングタイムTsを確保するうえで反応容器の小型化に制約があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応容器のサイズに関係なく透過する光の光量が安定した領域での測光を可能とする自動分析装置と液体試料の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、光源から出射され、液体試料を保持した反応容器を横切る際に透過し、測光手段が測光した光の光学的特性値をもとに前記液体試料を分析する自動分析装置であって、前記測光手段が測光した測光値の時間変化を前記反応容器ごとに取得する測光値取得手段と、前記時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算手段と、前記時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定手段と、特定された前記時間領域に含まれる前記測光値の演算処理値を演算する処理値演算手段と、前記演算処理値をもとに前記液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算手段と、前記光学的特性値をもとに前記液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定手段と、を有する演算手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記測光値取得手段は、前記測光手段が測光した光のうち、前記反応容器が保持した液体試料を透過した光の、前記液体試料に入射した光に対する相対測光値の時間変化を取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記光学的特性値演算手段は、特定した前記時間領域に含まれる前記時間微分値の平均値を前記演算処理値とすることを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の液体試料の分析方法は、光源から出射され、液体試料を保持した反応容器を横切る際に透過し、測光手段が測光した光の光学的特性値をもとに前記液体試料を分析する液体試料の分析方法であって、前記測光手段が測光した測光値の時間変化を前記反応容器ごとに取得する測光値取得工程と、前記時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算工程と、前記時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定工程と、特定した前記時間領域に含まれる前記測光値の演算処理値を演算する処理値演算工程と、前記演算処理値をもとに前記液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算工程と、前記光学的特性値をもとに前記液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液体試料の分析方法は、上記の発明において、前記測光値取得工程は、前記反応容器が保持した液体試料を透過した光の、前記液体試料に入射した光に対する相対測光値の時間変化を取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の液体試料の分析方法は、上記の発明において、前記光学的特性値演算工程は、特定した前記時間領域に含まれる前記時間微分値の平均値を前記演算処理値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動分析装置は、測光手段が測光した測光値の時間変化を反応容器ごとに取得する測光値取得手段と、時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算手段と、時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定手段と、特定された時間領域に含まれる測光値の演算処理値を演算する処理値演算手段と、演算処理値をもとに液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算手段と、光学的特性値をもとに液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定手段とを有する演算手段を備え、本発明の液体試料の分析方法は、測光手段が測光した測光値の時間変化を反応容器ごとに取得する測光値取得工程と、時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算工程と、時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定工程と、特定した時間領域に含まれる測光値の演算処理値を演算する処理値演算工程と、演算処理値をもとに液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算工程と、光学的特性値をもとに液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定工程とを含んでいる。このため、本発明の自動分析装置と液体試料の分析方法は、反応容器のサイズに関係なく透過する光の光量が安定した領域で測光することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の自動分析装置と液体試料の分析方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置のキュベットホイール、測光装置、制御部、入力部及び表示部の概略構成図である。図3は、図1に示す自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10、試薬テーブル11及び撹拌装置20が設けられている。
【0016】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注機構5は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0018】
キュベットホイール6は、パルスモータM(図2参照)によって、図1に矢印で示す時計方向に回転され、外周には反応容器7を個々に保持する複数のホルダ6aが周方向に沿って等間隔で設けられている。キュベットホイール6は、例えば、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転する。反応容器7は、四周期で反時計方向にホルダ6aの1個分移動する。キュベットホイール6の外周近傍には、測光装置8、洗浄装置9及び撹拌装置20が配置されている。
【0019】
反応容器7は、測光装置8の光源から出射された分析光に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂からなる容量が微量(数nL〜数十μL)なキュベットである。反応容器7は、図3に示すように、側壁7a,7bと底壁7cとによって試薬や検体等を含む液体を保持する液体保持部7dが形成され、液体保持部7dの上部に開口7eを有している。反応容器7は、側壁7bをキュベットホイール6の半径方向に向けて、ホルダ6aに配置される。ここで、反応容器7は、キュベットホイール6の回転に伴って測光装置8の光源8aから出射された光束BLを横切る際に、光束BLが透過する測光領域Amとして側壁7bの下部が利用される。
【0020】
測光装置8は、図1及び図2に示すように、キュベットホイール6の外周近傍に配置され、分析用の光を出射する光源8a、液体を透過した光の強度を波長ごとに測光する測光部8b及び測光部8bから出力される光信号をデジタル値に変換するADコンバータ8cを有している。光源8aと測光部8bは、キュベットホイール6のホルダ6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。測光部8bは、例えば、凹面回折格子等の回折格子と回折格子によって分光された光を測定項目によって決まるスペクトル毎に測定し、その光量に関する光信号を出力する受光素子アレイ、CCDセンサ、CMOSセンサ等の受光センサとを有している。
【0021】
洗浄装置9は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置9は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置9は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0022】
試薬分注機構10は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル11の所定の試薬容器12から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0023】
試薬テーブル11は、検体テーブル3及びキュベットホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室11aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室11aは、試薬容器12が着脱自在に収納される。複数の試薬容器12は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0024】
ここで、試薬テーブル11の外周には、図1に示すように、試薬容器12に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部14へ出力する読取装置13が設置されている。
【0025】
制御部14は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10、試薬テーブル11、読取装置13、入力部18、表示部19及び撹拌装置20等と接続されてこれらの作動を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。制御部14は、図2に示すように、演算部15、記憶部16及び駆動制御部17を備えている。
【0026】
演算部15は、制御部14を介して測光装置8の測光部8bが測光した光量に基づく反応容器7内の液体試料の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部14に出力する。演算部15は、図4に示すように、測光値取得部15a、時間微分値演算部15b、時間領域特定部15c、処理値演算部15d、光学的特性値演算部15e及び成分濃度特定部15fを有している。
【0027】
測光値取得部15aは、測光部8bが測光した光のうち、反応容器7が保持した液体試料を透過した光の、液体試料に入射した光に対する比であって、最大値を1とする相対測光値の時間変化を取得する(図5参照)。時間微分値演算部15bは、測光値取得部15aが取得した相対測光値の時間変化(図5参照)をもとに相対測光値の時間微分値を経時的に演算する(図7参照)。
【0028】
時間領域特定部15cは、時間微分値演算部15bが演算した時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する。処理値演算部15dは、時間領域特定部15cによって特定された時間領域に含まれる相対測光値の演算処理値を演算する。演算処理値としては、例えば、特定された前記時間領域に含まれる相対測光値の平均値を使用するが、前記時間領域の中央における相対測光値、相対測光値の中央値等であってもよい。
【0029】
光学的特性値演算部15eは、前記演算処理値をもとに反応容器7が保持した前記液体試料の光学的特性値である吸光度を演算する。成分濃度特定部15fは、光学的特性値演算部15eが演算した吸光度と記憶部16が記憶している検量線をもとに、液体試料の成分又は濃度を特定する。
【0030】
記憶部16は、測光部8bが測光した光量(光信号)や相対測光値の時間変化等に関する測光データ、演算部15が演算した時間微分値や平均値、予め設定した時間微分値の閾値、液体試料の成分濃度と吸光度に関する検量線等を記憶している。
【0031】
駆動制御部17は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体の記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットが異なる場合や有効期限外等の場合に分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いは所定内容の表示を表示部19に表すことによりオペレータに警告を発する機能を備えている。
【0032】
入力部18は、制御部14へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容,分析結果或いは警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0033】
撹拌装置20は、反応容器7に保持された液体を攪拌する装置であり、攪拌棒によって直接液体を攪拌するものや音波によって非接触で液体を攪拌するものがある。
【0034】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構10が試薬容器12から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0035】
そして、検体が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって撹拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器7は、キュベットホイール6が再び回転したときに測光装置8を通過し、光源から出射された分析光の光束BL(図3参照)が透過する。このとき、反応液を透過した光束BLは、測光部8bで測光され、所定範囲に含まれる時間微分値を平均した平均値を使用して演算部15が演算した吸光度をもとに成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置9によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。自動分析装置1は、このような一連の分析動作を制御部14の制御の下に自動で実行する。
【0036】
この一連の分析動作に伴う測光に際し、測光値取得部15aは、測光部8bが測光した光のうち、反応容器7が保持した液体試料を透過した光の、液体試料に入射した光に対する比であって、最大値を1とする相対測光値の時間変化を取得し、記憶部16に記憶する。このとき、図5に示す時間変化図において相対測光値が0.990以上となる領域を縦軸方向に拡大した図を図6に示す。図6に示す縦拡大時間変化図おいて、11m・sec−1〜18m・sec−1の範囲においては相対測光値が安定し、その両側の領域においては相対測光値が大きく変化している。従って、本発明は、この測光値が安定した領域において反応容器7に保持された反応液を透過した光束BLを測定するものである。
【0037】
このとき、図6に示す縦拡大時間変化図おいて、接線の傾きは、11m・sec−1〜18m・sec−1の範囲では平坦に近く、その両側の領域において大きく変化することが読み取れる。そして、図6において、11m・sec−1における接線L1の傾き、即ち、時間微分値は1/secであり、18m・sec−1における接線L2の傾き、即ち、時間微分値は−1/secであった。そこで、図6に示す縦拡大時間変化図をもとに時間微分値演算部15bによって接線の傾きである相対測光値の時間微分値を経時的に演算すると図7に示すようになる。
【0038】
従って、図7において、時間微分値−1/sec〜1/secを閾値として時間領域特定部15cによって時間T1〜T2間の時間領域ATを特定する。そして、処理値演算部15dによって、図8に示す時間領域AT内の複数の相対測光値の平均値Mを演算する。演算した平均値Mをもとに光学的特性値演算部15eによって吸光度を演算し、この吸光度をもとに予め求めておいた検量線をもとに成分濃度特定部15fによって反応容器7内の液体試料の成分又は濃度等を決定する。
【0039】
このとき、閾値とする時間微分値は、測光装置8において使用する測光部8b、使用する波長、測光精度等の測光条件、測定(検査)項目等に基づいて自動分析装置1ごとに決めて、記憶部16に記憶させておく。但し、閾値を大きくし過ぎると、図7からも明らかなように、測光値が安定した領域から外れてしまうという不具合がある。一方、閾値を小さくし過ぎると、測光値が安定した領域内における測光値の微妙な変化を捉えてしまうことになる。このため、閾値とする時間微分値は、図7に示すように、測光値が安定した領域を上下から挟む可能な限り小さな値に設定することが望ましい。
【0040】
従って、本発明の液体試料の分析方法は、駆動制御部17による自動分析装置1の分析動作の制御のもとに、図9に示すフローチャートに従って演算部15が反応容器7ごとに実行する。
【0041】
先ず、演算部15は、測光装置8から入力される光信号から相対測光値の時間変化を取得する(ステップS100)。次に、演算部15は、ステップS100で取得した相対測光値の時間変化をもとに時間微分値を演算する(ステップS102)。このとき、演算部15は、前述のように相対測光値が0.990以上となる領域を縦軸方向に拡大した縦拡大時間変化図をもとに時間微分値を演算しても良い。但し、ノイズ誤差の混入を避ける点からは、ステップS102に説明したように縦拡大時間変化図を使用せずに直接演算した方が高い精度が得られる。
【0042】
次いで、予め設定してある時間微分値の閾値をもとに、演算部15は、時間領域を特定する(ステップS104)。その後、演算部15は、特定した時間領域内における相対測光値の演算処理値(平均値)を演算する(ステップS106)。
【0043】
次に、演算部15は、この演算処理値(平均値)を用いて吸光度を演算する(ステップS108)。次いで、演算部15は、演算した吸光度と記憶部16が記憶している検量線をもとに、液体試料の成分又は濃度を特定する(ステップS110)。
【0044】
その後、演算部15は、総ての反応容器7の測光が終了したか否かを判定する(ステップS112)。この判定は、入力部18をから入力された分析情報をもとに実行する。判定の結果、総ての反応容器7の測光が終了していない場合(ステップS112,No)、演算部15は、ステップS100へ戻って引き続くステップを繰り返す。一方、総ての反応容器7の測光が終了している場合(ステップS112,Yes)、演算部15は、液体試料の分析に係る演算を終了する。
【0045】
このように、本発明の自動分析装置と液体試料の分析方法は、測光値の時間変化から演算した時間微分値をもとに測光値が安定した領域を見出し、その安定した領域内の光学的特性値を用いて液体試料を分析している。このため、本発明の自動分析装置と液体試料の分析方法は、反応容器7を透過した光の光量が安定した領域で測光をすることができる。特に、本発明の自動分析装置と分析方法は、反応容器のサイズに関係なく共通のプログラムによって実行することができるという利点を有している。
【0046】
また、演算部15は、測光装置8から入力される光信号から相対測光値の時間変化を取得し、相対測光値の時間変化をもとに時間微分値を演算した。しかし、演算部15は、測光装置8から入力される光信号(絶対値)の時間変化から時間微分値を演算してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置のキュベットホイール、測光装置、制御部、入力部及び表示部の概略構成図である。
【図3】図1に示す自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。
【図4】図1に示す自動分析装置が備える演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】反応容器を透過した相対測光値の時間変化図である。
【図6】図5に示す時間変化図において相対測光値が0.990以上となる領域を縦軸方向に拡大した縦拡大時間変化図である。
【図7】図6に示す縦拡大時間変化図をもとに演算した時間微分値と、時間微分値の閾値によって特定される時間領域を示す時間変化図である。
【図8】特定された時間領域内における相対測光値の平均値を示す図である。
【図9】本発明の液体試料の分析方法を説明するフローチャートである。
【図10】従来の自動分析装置における透過光のサンプリングタイムとマージンタイムを説明する説明図である。
【図11】従来の自動分析装置において、光束が横切る方向に沿った反応容器の幅を説明する反応容器の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 キュベットホイール
7 反応容器
8 測光装置
8a 光源
8b 測光部
8c ADコンバータ
9 洗浄装置
10 試薬分注機構
11 試薬テーブル
12 試薬容器
13 読取装置
14 制御部
15 演算部
15a 測光値取得部
15b 時間微分値演算部
15c 時間領域特定部
15d 処理値演算部
15e 光学的特性値演算部
15f 成分濃度特定部
16 記憶部
17 駆動制御部
18 入力部
19 表示部
20 撹拌装置
Am 測光領域
BL 光束
M パルスモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射され、液体試料を保持した反応容器を横切る際に透過し、測光手段が測光した光の光学的特性値をもとに前記液体試料を分析する自動分析装置であって、
前記測光手段が測光した測光値の時間変化を前記反応容器ごとに取得する測光値取得手段と、
前記時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算手段と、
前記時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定手段と、
特定された前記時間領域に含まれる前記測光値の演算処理値を演算する処理値演算手段と、
前記演算処理値をもとに前記液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算手段と、
前記光学的特性値をもとに前記液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定手段と、
を有する演算手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記測光値取得手段は、前記測光手段が測光した光のうち、前記反応容器が保持した液体試料を透過した光の、前記液体試料に入射した光に対する相対測光値の時間変化を取得することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記光学的特性値演算手段は、特定した前記時間領域に含まれる前記時間微分値の平均値を前記演算処理値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
光源から出射され、液体試料を保持した反応容器を横切る際に透過し、測光手段が測光した光の光学的特性値をもとに前記液体試料を分析する液体試料の分析方法であって、
前記測光手段が測光した測光値の時間変化を前記反応容器ごとに取得する測光値取得工程と、
前記時間変化をもとに測光値の時間微分値を経時的に演算する時間微分値演算工程と、
前記時間微分値の所定閾値をもとに時間領域を特定する時間領域特定工程と、
特定した前記時間領域に含まれる前記測光値の演算処理値を演算する処理値演算工程と、
前記演算処理値をもとに前記液体試料の光学的特性値を演算する光学的特性値演算工程と、
前記光学的特性値をもとに前記液体試料の成分又は濃度を特定する成分濃度特定工程と、
を含むことを特徴とする液体試料の分析方法。
【請求項5】
前記測光値取得工程は、前記反応容器が保持した液体試料を透過した光の、前記液体試料に入射した光に対する相対測光値の時間変化を取得することを特徴とする請求項4に記載の液体試料の分析方法。
【請求項6】
前記光学的特性値演算工程は、特定した前記時間領域に含まれる前記時間微分値の平均値を前記演算処理値とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体試料の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−250720(P2009−250720A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97309(P2008−97309)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】