説明

自動変速機の制御装置

【課題】低温度下での車両停止時における流体伝動装置内のエアの蓄積を防止し、発進時に流体伝動される駆動力が蓄積エアの存在により低下してしまうのを防止する。
【解決手段】原動機1からの回転動力を入力するトルクコンバータ10と、これを介して入力される回転動力を変速して出力する変速装置20とを備えるとともに、少なくとも前進走行レンジとニュートラルレンジを含む複数のレンジに切換え操作される車両用自動変速機2を制御する装置において、トルクコンバータ10の作動流体が予め設定された温度以下である場合であって、車両が前進走行レンジで停止する特定の停止状態であるか否かを判定する特定停止状態判定手段51と、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるとき、変速装置20を予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換える切換え手段52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体伝動装置を備えた自動変速機の作動を制御する自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクコンバータのような流体伝動装置を備えた有段または無段の車両用自動変速機においては、燃費や静粛性に対する近時の高度な要求に応えるべく、車両の運転状態に応じた高度な制御が必要であり、そのための制御装置が搭載されている。
【0003】
従来のこの種の制御装置としては、例えば、ブレーキON、車速ゼロで、スロットル全閉状態という車両停止条件が成立する場合に、クラッチの作動に遅れが生じたり油圧応答性が不安定になったりするのを防止するよう、シフトバルブを作動させて一時的に他の変速段にシフトさせ、クラッチやブレーキ等の締結要素のうち非締結の締結要素に一時的に油圧をかけることで回路中のエアを排出するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、エンジン始動後からの変速回数が所定回数以下の場合は、変速線を低車速側にずらすことにより自動変速機が高速段を選択し易くなるようにし、混入空気に伴う変速応答遅れに起因した変速ショックを軽減する技術(例えば、特許文献2参照)や、変速に際して係合されるべき摩擦要素の流体圧を一時的に増大させ、これにより混入空気に伴う変速応答遅れを解消する技術(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【0005】
さらに、前進走行レンジ(Dレンジ)での車両停止時にトランスミッション内の発進クラッチを半解放状態としてニュートラル状態に近付け、エンジン負荷低減による燃費向上と騒音低減を図るニュートラル制御を採用するものもある(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平10−169764号公報
【特許文献2】特開昭63−67450号公報
【特許文献3】特開平2−150561号公報
【特許文献4】特開平10−103464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように車両停止時に変速装置の締結要素にかかる油圧を操作する従来の自動変速機の制御装置にあっては、特に油温0°Cに近いかそれ以下の低い油温であるときに前進走行レンジでの車両停止を継続すると、流体伝動装置の内部に徐々にエアが蓄積され、車両発進時に流体伝動装置により流体伝動される駆動力が一時的に低下してしまうことがあった。
【0007】
すなわち、低油温時には、作動流体の粘度が高く、流動抵抗が増大する等の理由から、流体伝動装置であるトルクコンバータに供給される作動流体に微少なエアが混入し易い。このような場合に、前進走行レンジで車両停止した状態が続くと、トルクコンバータの内部にエアが蓄積され続け、次第にトルクコンバータ内部におけるエアの割合が増大するので、その状態で車両を発進させると、実際にトルクコンバータが駆動力を伝達する前に伝達媒体である作動流体の不足により、伝達トルクが低下するという問題が生じる。そして、この問題は、トーラス部の流体体積が小さい小型トーラスを持つ流体伝動装置において、より顕著になっていた。
【0008】
一方、車両停止時にトランスミッション内の発進クラッチを半解放状態とするニュートラル制御は、トルクコンバータの発進クラッチを微妙な半解放状態に制御することで、エンジン回転数とトルクコンバータのタービンとの間の回転数の差をわずかな値に維持するクラッチ油圧制御が必要であることから、アイドル安定性が重要になる低油温時に実行するには問題が多く、その制御性確保のために常温以上の油温で実行されるのが一般的である。そのため、ニュートラル制御を行う車両にあっても、上述の問題が発生していた。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、低温度下での車両停止時における流体伝動装置内のエアの蓄積を確実に防止し、発進時に流体伝動される駆動力が蓄積エアの存在により低下してしまうのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る自動変速機の制御装置は、上記目的達成のため、(1)車両の原動機からの回転動力を入力する流体伝動装置と、該流体伝動装置を介して入力される回転動力を変速して出力する変速装置とを備えるとともに、少なくとも前進走行レンジとニュートラルレンジを含む複数のレンジに切換え操作される車両用自動変速機を制御する自動変速機の制御装置において、前記流体伝動装置の作動流体の温度が予め設定されたしきい値温度以下である場合であって、前記車両が前進走行レンジで停止し、かつ、前記原動機が低負荷状態にある特定の停止状態であるか否かを判定する特定停止状態判定手段と、前記特定停止状態判定手段により前記特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるとき、前記変速装置を予め設定された切換え時間内で一時的に前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換える切換え手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成により、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えると、切換え手段により、変速装置が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態(伝動経路の切断状態)に切り換えられることから、流体伝動装置の入出力軸間の回転数の差が非常に小さくなり、低流体温度下での流体伝動に伴うエアの発生が防止されるとともに、エアの排出が助長される。したがって、低流体温度下でのエアの蓄積が確実に防止され、発進時に流体伝動装置により流体伝動される駆動力が低下してしまうことが防止される。
【0012】
上記(1)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(2)前記特定停止状態判定手段により前記特定の停止状態と判定される期間が予め設定された上限時間に達したとき、前記切換え手段が、前記特定の停止状態と判定される期間が前記継続許容期間を超えると判定するのが好ましい。
【0013】
この構成により、特定の停止状態が上限時間まで継続すると、切換え手段が確実に作動し、低流体温度下でのエアの蓄積が確実に防止される。
【0014】
上記(1)、(2)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(3)前記切換え手段が、前記継続許容期間を前記作動流体の温度に応じて可変設定し、前記作動流体の温度が低いときには前記作動流体の温度が高いときよりも早期に前記変速装置を前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるのが望ましい。
【0015】
この場合、より低い流体温度で作動流体の粘度が高くなっている場合には、変速装置が早期にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられることから、エアの蓄積がより確実に防止される。
【0016】
上記(1)〜(3)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(4)前記特定の停止状態で前記原動機からの駆動力が低下したとき、前記切換え手段が、前記特定の停止状態と判定される期間が前記継続許容期間を超えると判定するようにしてもよい。
【0017】
この構成により、低流体温度下における原動機側の運転の安定性確保等のために一時的に原動機回転数が高めに設定され、次いで回転数が低下するといった場合に、その回転数低下に伴う原動機側からの駆動力の低下が確認されると、変速装置がニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられることになる。したがって、原動機回転数が高い状態でクラッチを切り換えることにより意図しない原動機回転数の変動やショックが生じるのが防止される。
【0018】
上記(1)〜(4)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(5)前記流体伝動装置が内部に供給される前記作動流体を用いて作動し、前記切換え手段によって前記変速装置が前記予め設定された切換え時間内で一時的に前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられるとき、前記流体伝動装置に供給される前記作動流体の圧力を昇圧させる昇圧手段が設けられているのがより好ましい。
【0019】
この構成により、流体伝動装置内の作動流体の圧力が高まり、あるいは更に循環する作動流体の流量が増加して、エアの排出がより助長される。
【0020】
上記(5)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(6)前記切換え手段が、前記切換え時間を前記作動流体の圧力に応じて可変設定し、前記作動流体の圧力が昇圧されたときには前記作動流体の圧力が昇圧されないときよりも早期に前記変速装置を前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させるのがよい。
【0021】
この構成により、作動流体圧が昇圧されてエアの排出が助長されることから、エア排出のためのニュートラル状態への一時的な切り換え時間を短縮することができ、前進走行レンジに対応する伝動状態に早期に復帰させることで、ドライバの任意の運転操作に即座に応答可能となる。
【0022】
上記(1)〜(6)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(7)前記特定停止状態判定手段が、前記原動機が予め設定されたしきい値負荷以下の低負荷状態にあるときに、前記特定の停止状態であると判定可能であるのが好ましい。
【0023】
この構成により、原動機負荷が大きく流体伝動装置の滑りも大きい状態ではニュートラル状態への一時的な切り換えがなされなくなり、切り換えによるショックが未然に防止される。
【0024】
上記(1)〜(7)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(8)前記特定停止状態判定手段が、前記車両に装備されたブレーキの作動時に前記特定の停止状態であると判定可能であるのが好ましい。
【0025】
この構成により、ドライバが車両停止状態を解除する可能性が高くなると、ニュートラル状態への一時的な切り換えが実行できなくなり、ドライバの任意の運転操作に即座に応答可能となる。
【0026】
上記(1)〜(8)記載の構成を有する自動変速機の制御装置においては、(9)前記変速装置が、前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に切り換わるときに締結作動する一方、半解放状態に制御されるときには前記変速装置を擬似ニュートラル状態にする摩擦締結要素を有し、前記切換え手段が、前記切換え時間を可変設定するとともに、前記摩擦締結要素が前記半解放状態に制御されるときには前記摩擦締結要素が前記半解放状態に制御されないときよりも遅い時期に前記変速装置を前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させるのが好ましい。
【0027】
この構成により、摩擦締結要素が半解放状態に制御される擬似ニュートラル状態の場合には切換え時間が長く設定され、ニュートラルレンジに対応する非伝動状態の場合よりも遅い時期に変速装置が前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰する。したがって、低作動流体温度で擬似ニュートラル状態とされ、流体伝動装置にある程度の滑りが生じる場合でもエアの排出を十分に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えると、切換え手段により、変速装置が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられ、流体伝動装置の入出力軸間の回転数の差が小さくなって低流体温度下での流体伝動に伴うエアの発生および蓄積が防止されるとともに、その排出が助長されるようにしているので、流体伝動装置内における低流体温度下でのエアの蓄積を確実に防止し、発進時に流体伝動装置により流体伝動される駆動力が低下してしまうことを確実に防止することのできる自動変速機の制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置を示すその概略ブロック構成図である。
【0031】
まず、構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の車両用の自動変速機2は、車両の原動機であるエンジン1からの回転動力を入力する流体伝動装置としてのトルクコンバータ10と、このトルクコンバータ10を介して入力される回転動力を変速して出力する変速装置20とを備えており、車室(詳細図示せず)内に装備されたシフト切換えバー69によって少なくとも前進走行レンジ(Dレンジともいう)とニュートラルレンジ(Nレンジともいう)を含む複数のレンジに切換え操作されるようになっている。
【0033】
エンジン1は、自動車に搭載される多気筒内燃機関で、詳細は図示しないが、公知のものと同様に、その各気筒にはピストンで仕切られた燃焼室が形成され、吸気弁と排気弁が所定のタイミングで開閉するよう装備されるとともに、吸気通路または各気筒の燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)が装着されている。また、吸気マニホルドにより形成される吸気通路の上流側にはスロットルバルブが設けられている。なお、燃料は例えばガソリンであるが、エタノールやガス燃料であってもよく、ディーゼルエンジンであってもよい。また、原動機は電動機を併用するハイブリッド構成のものであってもよい。
【0034】
トルクコンバータ10は、例えばエンジン1からの駆動力を入力する入力軸10aと、図示しないドライブプレート及びシェルカバー11を介してエンジン1の出力軸に連結されたポンプインペラ12(入力側部材)と、このポンプインペラ12に対向するとともに変速装置20に連結されたタービンランナ13(出力側部材)と、タービンランナ13からの駆動力を出力する出力軸10bと、ポンプインペラ12及びタービンランナ13の間に位置するステータ14と、シェルカバー11内に収容された作動油(作動流体;図示していない)とを含んで構成されており、エンジン1により駆動される入力側のポンプインペラ12の回転によって作動油の流れが生じるとき、タービンランナ13がその流れの慣性力を受けて出力軸10bを回転させ、変速装置20に回転動力を伝達する。また、ステータ14によりタービンランナ13からポンプインペラ12に戻る作動油の流れを整流させることで、ステータ14の反力によるトルク増幅作用を生じさせるようになっている。
【0035】
トルクコンバータ10には、また、入力側のポンプインペラ12及びシェルカバー11と出力側のタービンランナ13とを選択的に相互に拘束可能なロックアップクラッチ15が設けられており、機械式クラッチを併用することでトルク伝達効率を高めることができる。さらに、ステータ14は、ワンウェイクラッチ16を介して歯車変速機構30に支持され、前記反力を受ける構造となっている。
【0036】
変速装置20は、歯車変速機構30と、油圧制御機構40とを有している。
【0037】
歯車変速機構30は、例えば遊星歯車を用いる所定変速段数のギヤトレーンで、これを複数のクラッチやブレーキ等の油圧式摩擦締結要素等で制御して変速段の切り替えを行うようになっており、その変速段は主として車速とスロットル開度をパラメータとするシフトパターンによって決定される。この歯車変速機構30の入力軸31にはタービンランナ13からの回転動力が入力され、歯車変速機構30の出力軸32の回転はディファレンシャル装置78を介して駆動車輪79側に伝達される。この歯車変速機構30の複数のクラッチには、例えば車両停止状態から発進する際に締結される、すなわち非伝動状態から前進走行レンジに対応する伝動状態に切り換わるときに締結作動する発進クラッチ33が含まれており、変速装置20は、この発進クラッチ33を半解放状態とすることで、発進クラッチ33の迅速な締結が可能ではあるがトルクコンバータ10の滑りが非常に小さくなる擬似ニュートラル状態にできるようになっている。
【0038】
油圧制御機構40は、詳細を図示しないが、ハウジング内に複数のスプール状のバルブやソレノイドバルブを収納し、それらを制御することで、歯車変速機構30内のクラッチやブレーキ等を操作して前記シフトパターンに即した最適な変速段を選択し、あるいは、エンジン1の出力状態に応じてライン油圧(クラッチ・ブレーキ油圧)をきめ細かに制御して良好な変速制御を可能にする。トルクコンバータ10はこの油圧制御機構40から内部に供給され循環する作動油を用いて作動する。
【0039】
また、油圧制御機構40は、歯車変速機構30に供給される作動油圧を制御するプライマリレギュレータバルブ41と、トルクコンバータや潤滑油圧を制御することができるセカンダリーレギュレータバルブ42と、その下流側でトルクコンバータ10に供給される作動油の圧力を制御する図示しないバルブを含んで構成されている。そして、ポンプ(図1中にPで示す)から吐出される作動油は、まず、プライマリレギュレータバルブ41側に供給されてここで調圧され、プライマリレギュレータバルブ41の調圧出力ポートから出力される出力圧がセカンダリーレギュレータバルブ42に供給され、このセカンダリーレギュレータバルブ42若しくはその下流側の図示しないバルブによって、さらにスロットル圧を基に車速とエンジン出力に適したコンバータ圧や潤滑油圧が調圧されるようになっている。なお、歯車変速機構30や油圧制御機構40の構成は基本的には公知のものであり、これ以上詳述しない。
【0040】
図1に示すように、エンジン1には、吸入空気量Qaを検出する吸入空気量センサ61と、図示しないスロットルバルブの開度TVOを検出するスロットル開度センサ62とが装着されている。また、トルクコンバータ10の入力軸10a側には、ポンプインペラ12の回転速度に相当するエンジン1の出力回転数(以下、エンジン回転数という)Neを検出するエンジン回転数センサ63が設けられており、トルクコンバータ10の出力軸10b側にはタービンランナ13の回転速度に相当するコンバータ出力回転数Ntを検出するコンバータ出力回転数センサ64が設けられている。さらに、歯車変速機構30には、自動変速機2内の作動油の温度、少なくともトルクコンバータ10に循環・供給される作動油の温度tmを検出する作動油温度センサ65が装着されている。歯車変速機構30の出力軸32の回転速度Sは車速センサ66によって、車室内に設けられたシフト切換えバー69の切り換え操作位置Pshはシフトスイッチ67によって、それぞれ検出されるようになっている。
【0041】
これらセンサ群61〜67の検出情報は、それぞれ、エンジンコントロールコンピュータECCと一体に構成された電子制御装置であるトランスミッションコントロールコンピュータ(以下、TCCという)50に取り込まれるようになっている。
【0042】
このTCC50は、CPU、ROM、RAM、バックアップ用不揮発メモリ、A/Dコンバータ、定電圧電源及び通信IC等を含んで構成されており、図外の他システムのコントロールコンピュータからの信号等を取り込むことができる。そして、TCC50は、油圧制御機構40内の複数のソレノイドバルブ等のバルブ切換え位置を制御することにより、シフト位置Psh、車速S、スロットル開度TVO及び車両の走行状態に応じて、例えば歯車変速機構30の変速点制御やトルクコンバータ10のロックアップ制御、ロックアップクラッチ15に微妙な滑りを生じさせるフレックスロックアップ制御等を実行するとともに、エンジン発生トルクに応じて最適なライン油圧になるよう自動変速機2のライン油圧制御を実行するようになっている。これらの自動変速のための制御自体は、公知のものと同様である。
【0043】
一方、TCC50は上記の制御や後述する入力トルク推定処理を実行するためのプログラム及びデータ等を装備しており、前記プログラムを所定の周期で繰り返し実行することにより、TCC50は、次に述べる特定停止状態判定手段51、切換え手段52および昇圧手段53としての機能を発揮するようになっている。
【0044】
特定停止状態判定手段51は、吸入空気量センサ61、スロットル開度センサ62、エンジン回転数センサ63、コンバータ出力回転数センサ64、作動油温度センサ65、車速センサ66およびシフトスイッチ67の検出情報に基づいて、特定の車両停止状態にあるか否かを判定するようになっている。
【0045】
具体的には、特定停止状態判定手段51は、トルクコンバータ10内の作動油もしくはトルクコンバータ10内に供給される作動油の温度tmが予め設定されたしきい値温度以下である場合であって、車両が前進走行レンジに選択操作されており、車両のブレーキ作動状態(ブレーキON)にて停止しているとき、これを特定の停止状態と判定するようになっており、一方、作動油温度がしきい値温度を超える場合、車速がゼロでない場合、車両のブレーキが作動状態でない場合のいずれかであると、特定の車両停止状態でないと判定するようになっている。ここにいう特定の車両停止状態とは、トルクコンバータ10内におけるエアの蓄積によって流体伝動される駆動力が低下してしまう可能性のある運転状態であり、その状態を例えば次の4つの前提条件の全てが成立すると、特定の車両停止状態と判定する。
【0046】
(a)シフト切換えバー69によるレンジ選択操作位置を示すATシフト情報が前進走行レンジとなっている
(b)車速センサ66からの車速情報が車両の停止状態を示している
(c)車両のブレーキはブレーキON状態である
(d)トルクコンバータ10に供給される作動油の温度tmはしきい値温度以下の低油温である
特定停止状態判定手段51は、これらの前提条件に加えて、エンジン1が予め設定された第1のしきい値負荷(第1のアクセル開度)以下の低負荷状態にあるときに、これを特定の停止状態と判定し、一方、エンジン負荷が第1のしきい値負荷を超える場合にも特定の車両停止状態でないと判定するものであってもよい。
【0047】
また、切換え手段52は、TCC50の内部カウンタ、負荷検出手段としてのスロットル開度センサ62、エンジン回転数センサ63、コンバータ出力回転数センサ64および作動油温度センサ65のそれぞれの検出情報と、特定停止状態判定手段51の判定結果とに基づいて、特定停止状態判定手段51により特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるか否かを判定し、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるとき、変速装置20を予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるよう、その切換え制御信号を油圧制御機構40に出力するようになっている。
【0048】
ここで、継続許容期間とは、トルクコンバータ10内におけるエアの蓄積によって流体伝動される駆動力が低下してしまう可能がさほど高くない期間であり、特定の停止状態と判定される期間がこの継続許容期間を超えると、トルクコンバータ10内におけるエアの蓄積によって流体伝動される駆動力が低下してしまう可能性が高くなるので、その段階でトルクコンバータ10内での駆動力の低下が生じると判定する。その判定のための具体的な判断情報は、例えば次の2つの条件であり、これらのうちいずれか1つの条件が成立するとき、継続許容期間を超えたと判定する。
【0049】
(e)4つの前提情報を満たす状態が予め定めた継続許容期間の上限時間に達した
(f)エンジン負荷(燃料噴射量、アクセル開度)が第1のしきい値負荷より小さい第2のしきい値負荷以下に低下した
そこで、切換え手段52は、特定停止状態判定手段51により特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間の上限時間に達したとき(条件(e)が成立するとき)、特定の停止状態と判定される期間が継続許容期間を超えると判定する。
【0050】
ここにいう継続許容期間の上限時間は、例えば温度によって異なる10数秒から数十秒程度の時間であり、この場合、切換え手段52において予め設定された上述の切換え時間は、その継続許容期間に対して相対的に短い時間、例えば数秒から10秒程度までの短い時間である。
【0051】
また、切換え手段52は、上述の継続許容期間を作動油温度センサ65により検出される作動油の温度tmに応じて可変設定するようになっており、作動油の温度tmが低いときにはその継続許容期間を短縮して、作動油の温度tmが高いときよりも早期に変速装置20をニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるようになっている。逆に、作動油の温度tmが高いときにはその継続許容期間を長くして、作動油の温度tmが低いときよりも遅れた時期に変速装置20をニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるようになっている。
【0052】
図2は、特定停止状態判定手段51により特定の停止状態であると判定されてから切換え手段52によるニュートラルレンジへの切換えが開始されるまでの継続許容期間の設定条件を示す一例のマップ情報である。この図2に示す設定条件では、作動油温度が0°Cのときにはta秒、例えば40秒の継続許容期間であるのに対して、作動油温度が−20°Cのときにはtb秒、例えば20秒の継続許容期間となり、継続許容期間が短縮される。
【0053】
また、本実施形態の切換え手段52は、特定の停止状態でエンジン1からの駆動力が低下したとき(条件(f)が成立するとき)にも、特定の停止状態と判定される期間が継続許容期間を超えると判定する。例えば、特定停止状態判定手段51により特定の車両停止状態と判定された直後に、エンジン1のアイドル回転数が高温時よりも高い回転数に設定されるアイドルアップ状態となり、エンジン1が安定した段階でそのアイドルアップ状態より低回転数のアイドル回転数に移行するような場合、切換え手段52は、エンジン回転数センサ63の検知情報を基にこのエンジン回転数の変化を検出、すなわち、エンジン1からの駆動力が低下したことを検出し、その検出時点で、特定の停止状態と判定されている期間が継続許容期間を超えたと判定するようになっている。
【0054】
そして、このようにして特定の停止状態と判定されている期間が継続許容期間を超えたと判定される場合にも、切換え手段52は、変速装置20を予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるよう、その切換え制御信号を油圧制御機構40に出力するようになっている。
【0055】
この場合、継続許容期間は、予め時間で直接的に設定されるものではなく、エンジン1の運転状態に応じて変化することになるが、切換え手段52において予め設定された上述の切換え時間は、その継続許容期間に対しても専ら相対的に短い時間、例えば数秒程度から10数秒程度の短い時間となる。
【0056】
一方、昇圧手段53は、切換え手段52によって変速装置20が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられるとき、油圧制御機構40のセカンダリーレギュレータバルブ42若しくはその下流側でトルクコンバータ10に供給される作動油の圧力を制御する図示しないバルブに対し、トルクコンバータ10に供給される作動油の圧力を昇圧させる昇圧指令信号を出力する。すなわち、昇圧手段53は、変速装置20の油圧制御機構40と協働してトルクコンバータ10に供給される作動油の圧力を昇圧させることができるようになっている。
【0057】
また、切換え手段52は、上述の切換え時間を昇圧手段53からの昇圧指令信号またはトルクコンバータ10の作動油圧に応じて可変設定するようになっており、トルクコンバータ10の作動油圧が昇圧されたときにはその切換え時間を短縮して、作動油圧が昇圧されないときよりも早期に、変速装置20を非伝動状態から前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させるようになっている。
【0058】
図3は、切換え手段52によるニュートラルレンジへの切換え時間(切換え開始から終了までの時間)の設定条件を示す一例のマップ情報である。この図3に示す設定条件では、作動油圧が低い非昇圧時にはtc秒、例えば約10秒程度と相対的に長い切換え時間に設定されるのに対して、作動油圧が高い昇圧時には、非昇圧時より相対的に短く作動油圧が高いほど短い時間td秒、例えば約5秒と短い時間に設定される。
【0059】
切換え手段52は、さらに、上述の切換え時間を、歯車変速機構30の発進クラッチ33が半解放状態に制御される擬似ニュートラル状態であるか否かに応じて可変設定するようになっており、歯車変速機構30の発進クラッチ33が半解放状態に制御される擬似ニュートラル状態のときにはその切換え時間を長くして、発進クラッチ33が半解放状態に制御されないニュートラル状態のときよりも遅い時期に変速装置20を非伝動状態から前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させるようになっている。
【0060】
図4は、切換え手段52によるニュートラルレンジへの切換え時間の他の設定条件を示す一例のマップ情報である。この図4に示す設定条件では、発進クラッチ33が半解放状態に制御される擬似ニュートラル状態のときにはte秒、例えば約10秒程度と相対的に長い切換え時間に設定されるのに対して、発進クラッチ33が半解放状態に制御されないニュートラル状態(伝動経路の切断状態)のときには、擬似ニュートラル状態のときより相対的に短い時間tf秒、例えば約5秒と短い時間に設定される。
【0061】
なお、切換え手段52がトルクコンバータ10に供給される作動油温度に応じて上述のニュートラル状態への一時的な切換え時間を可変設定してもよいことは勿論であり、その場合には、作動油温度が高いほど切換え時間を短く設定できる。
【0062】
次に作用を説明する。
【0063】
上述のように構成された本実施形態の自動変速機の制御装置では、トルクコンバータ10内に供給される作動油の温度tmがしきい値温度以下となる低温時であり、車両が前進走行レンジに選択操作されており、車両ブレーキ作動状態にて停止し、かつ、エンジン1が第1のアクセル開度以下の低負荷状態にあるとき、特定停止状態判定手段51によって、特定の停止状態にあると判定される。
【0064】
一方、作動油温度がしきい値温度を超える場合、車速がゼロでない場合、車両のブレーキが作動状態でない場合、エンジン負荷が判定しきい値負荷である第1のアクセル開度を超える場合のいずれかであると、特定の車両停止状態でないと判定される。
【0065】
そして、特定の停止状態にあっては、特定停止状態判定手段51により特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるとき、切換え手段52が、変速装置20の歯車変速機構30を予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えるよう、その切換え制御信号を油圧制御機構40に出力し、変速装置20が切換え時間内の短時間に限って非伝動状態に切り換えられる。
【0066】
このように、特定停止状態判定手段51によって特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えると、切換え手段52によって変速装置20が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられることから、トルクコンバータ10の入出力軸10a、10b間の差回転がゼロに近くなり、低作動油温度下でのトルクコンバータ10の流体伝動に伴うエアの発生が防止されるとともに、そのエアのトルクコンバータ10内からの排出が助長される。したがって、低作動油温度下でのエアの蓄積が確実に防止され、車両の発進時にトルクコンバータ10により流体伝動される駆動力がエアにより低下してしまうことが防止される。
【0067】
また、本実施形態では、特定停止状態判定手段51により特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間の上限時間に達したときには、切換え手段52が、特定の停止状態と判定される期間が継続許容期間を超えると判定するので、特定の停止状態が上限時間まで継続すると、切換え手段52が確実に作動し、低い作動油温度下でのエアの蓄積が確実に防止される。
【0068】
また、切換え手段52が、継続許容期間を作動油の温度tmに応じて可変設定し、作動油の温度tmが低いときには作動油の温度tmが高いときよりも早期に変速装置20をニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えることから、作動油の粘度が高くエアが生じ易いときには変速装置20が早期にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられることになり、エアの蓄積がより確実に防止される。
【0069】
さらに、本実施形態においては、特定の停止状態でエンジン1からの駆動力が低下したとき、切換え手段52が、特定の停止状態と判定される期間が継続許容期間を超えると判定するので、低流体温度下におけるエンジン1側の運転の安定性確保等のために一時的にエンジン回転数が高めに設定され(いわゆるアイドルアップ運転)、次いで回転数が低下するといった場合に、その回転数低下に伴うエンジン1側からの駆動力の低下が確認されると、変速装置20がニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられることになる。したがって、エンジン回転数が高い状態で発進クラッチ33を切り換えることにより意図しないエンジン回転数の変動やショックが生じるのが防止される。
【0070】
また、切換え手段52によって変速装置20が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられるとき、トルクコンバータ10に供給される作動油の圧力が昇圧手段53によって昇圧されるので、トルクコンバータ10内の作動油の圧力が高まり、更にトルクコンバータ10を通って循環する作動油の流量が増加することで、トルクコンバータ10内からのエアの排出がより助長されることになる。そして、切換え手段52が、切換え時間を作動油の圧力に応じて可変設定し、作動油の圧力が昇圧されたときには作動油の圧力が昇圧されないときよりも早期に変速装置20を非伝動状態から前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させるので、エア排出のためのニュートラル状態への一時的な切換え時間を短縮することができ、前進走行レンジに対応する伝動状態に早期に復帰させることで、ドライバの任意の運転操作に即座に応答可能となる。
【0071】
さらに、本実施形態においては、特定停止状態判定手段51が、エンジン1が予め設定されたしきい値負荷以下の低負荷状態にあるときに、特定の停止状態であると判定可能であるので、エンジン負荷が大きくトルクコンバータ10の滑りも大きい状態ではニュートラル状態への一時的な切り換えがなされなくなり、切り換えによるショックが未然に防止される。加えて、特定停止状態判定手段51が、車両に装備されたブレーキの作動時(ブレーキON信号入力時)に特定の停止状態であると判定可能であるので、ドライバが車両停止状態を解除する可能性が高くなると、ニュートラル状態への一時的な切り換えが実行されなくなり、ドライバの任意の運転操作に即座に応答可能となる。
【0072】
また、本実施形態においては、発進クラッチ33が半解放状態に制御される擬似ニュートラル状態の場合には、切換え手段52により切換え時間が長く設定され、ニュートラルレンジに対応する非伝動状態の場合よりも遅い時期に変速装置20が前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰する。したがって、低作動油温度で擬似ニュートラル状態とされ、トルクコンバータ10にわずかな滑りが生じる場合でも、エアの排出を十分に行うことが可能になる。
【0073】
このように、本実施形態の自動変速機の制御装置によれば、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えると、切換え手段52により、変速装置20が予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられ、トルクコンバータ10の入出力軸10a、10b間の差回転がゼロに近くなって、低作動油温度下での流体伝動に伴うエアの発生および蓄積が防止されるとともに、その排出が助長されるようにしているので、トルクコンバータ10内における低作動油温度下でのエアの蓄積を確実に防止し、発進時にトルクコンバータ10により流体伝動される駆動力が蓄積エアの存在よって低下してしまうことを確実に防止することができる。
【0074】
なお、上述の実施形態においては、低油温下で前進走行レンジにて停止するときに、その継続時間やエンジン負荷の変化等に応じて一時的にニュートラルレンジ状態として、トルクコンバータ内に蓄圧されたエアを排出することに加え、トルクコンバータに供給される作動油圧(いわゆるセカンダリ圧)の昇圧を組み合せることでエアの排出を迅速化していたが、トルクコンバータに供給される作動油圧は必ずしも昇圧させなくともよい。また、特定の停止状態の継続許容期間や一時的なニュートラル状態への切換え時間をそれぞれ可変設定するものとしたが、その可変設定も必ずしも必要ではない。要するに、流体伝動時の駆動力の低下をより迅速に防止するために、車両の特定の停止状態において、上述の前提条件および判断条件が成立するとき、変速装置20内のシフト状態を一時的にニュートラルレンジ状態(非伝動状態)に移行させ、トルクコンバータ10のポンプ側とタービン側の回転数の差を小さくするようにすればよく、同時にセカンダリ圧を昇圧させて循環油糧を増大させたり、継続許容期間や切換え時間を可変設定したりするのが好ましいというものである。また、上述の実施形態においては、変速装置20が有段の歯車変速機構30を有するものとしたが、変速装置20が歯車変速機構30に代わる無段変速機構とそれに対応する油圧制御機構とを有するものであってもよいことはいうまでもない。
【0075】
以上説明したように、本発明に係る自動変速機の制御装置は、特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えると、切換え手段により、変速装置を予め設定された切換え時間内で一時的にニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えて、流体伝動装置の入出力軸間の回転数の差を小さくし、低流体温度下での流体伝動に伴う流体伝動装置内でのエアの発生および蓄積を防止するとともに、その排出を助長するようにしているので、発進時に流体伝動装置により流体伝動される駆動力がエアによって低下してしまうのを確実に防止することができるという効果を奏するものであり、流体伝動装置を備えた自動変速機の作動を制御する自動変速機の制御装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置における特定停止状態の継続許容期間の設定条件を示す一例のマップ情報の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置におけるニュートラルレンジへの切換え時間(切換え開始から終了までの時間)の設定条件を示す一例のマップ情報の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置におけるニュートラルレンジへの切換え時間の他の設定条件を示す一例のマップ情報の説明図である。
【符号の説明】
【0077】
1 エンジン(原動機)
2 自動変速機
10 トルクコンバータ(流体伝動装置)
10a 入力軸
10b 出力軸
11 シェルカバー
12 ポンプインペラ
13 タービンランナ
20 変速装置
30 歯車変速機構
31 入力軸
32 出力軸
33 発進クラッチ(摩擦締結要素)
40 油圧制御機構
41 プライマリレギュレータバルブ
42 セカンダリーレギュレータバルブ(昇圧手段)
50 TCC(トランスミッションンコントロールコンピュータ)
51 特定停止状態判定手段
52 切換え手段
53 昇圧手段
61 吸入空気量センサ
62 スロットル開度センサ
63 エンジン回転数センサ
64 コンバータ出力回転数センサ
65 作動油温度センサ
66 車速センサ
67 シフトスイッチ
69 シフト切換えバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の原動機からの回転動力を入力する流体伝動装置と、該流体伝動装置を介して入力される回転動力を変速して出力する変速装置とを備えるとともに、少なくとも前進走行レンジとニュートラルレンジを含む複数のレンジに切換え操作される車両用自動変速機を制御する自動変速機の制御装置において、
前記流体伝動装置の作動流体の温度が予め設定されたしきい値温度以下である場合であって、前記車両が前進走行レンジで停止する特定の停止状態であるか否かを判定する特定停止状態判定手段と、
前記特定停止状態判定手段により前記特定の停止状態と判定される期間が予め設定された継続許容期間を超えるとき、前記変速装置を予め設定された切換え時間内で一時的に前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換える切換え手段と、を備えることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記特定停止状態判定手段により前記特定の停止状態と判定される期間が予め設定された上限時間に達したとき、前記切換え手段が、前記特定の停止状態と判定される期間が前記継続許容期間を超えると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記切換え手段が、前記継続許容期間を前記作動流体の温度に応じて可変設定し、前記作動流体の温度が低いときには前記作動流体の温度が高いときよりも早期に前記変速装置を前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記特定の停止状態で前記原動機からの駆動力が低下したとき、前記切換え手段が、前記特定の停止状態と判定される期間が前記継続許容期間を超えると判定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1の請求項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記流体伝動装置が内部に供給される前記作動流体を用いて作動し、
前記切換え手段によって前記変速装置が前記予め設定された切換え時間内で一時的に前記ニュートラルレンジに対応する非伝動状態に切り換えられるとき、前記流体伝動装置に供給される前記作動流体の圧力を昇圧させる昇圧手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記切換え手段が、前記切換え時間を前記作動流体の圧力に応じて可変設定し、前記作動流体の圧力が昇圧されたときには前記作動流体の圧力が昇圧されないときよりも早期に前記変速装置を前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させることを特徴とする請求項5に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
前記特定停止状態判定手段が、前記原動機が予め設定されたしきい値負荷以下の低負荷状態にあるときに、前記特定の停止状態であると判定可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項8】
前記特定停止状態判定手段が、前記車両に装備されたブレーキが作動しているときに、前記特定の停止状態であると判定可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1の請求項に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項9】
前記変速装置が、前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に切り換わるときに締結作動する一方、半解放状態に制御されるときには前記変速装置を擬似ニュートラル状態にする摩擦締結要素を有し、
前記切換え手段が、前記切換え時間を可変設定するとともに、前記摩擦締結要素が前記半解放状態に制御されるときには前記摩擦締結要素が前記半解放状態に制御されないときよりも遅い時期に前記変速装置を前記非伝動状態から前記前進走行レンジに対応する伝動状態に復帰させることを特徴とする請求項1ないし請求項8のうちいずれか1の請求項に記載の自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−115263(P2009−115263A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291037(P2007−291037)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】