説明

自動変速装置および変速機の制御方法

【課題】走行中に変速機を中立とし、その後中立を解除する際に変速機の入力軸が過回転するのを抑制する。
【解決手段】Dポジションでの走行中にアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過したときにはクラッチC−1かクラッチC−2の一方を係合した状態のニュートラルとして走行する(S170,S180)。このニュートラルによる走行から復帰するときに目標変速段GS*が6速のときには、5速を形成した後に6速を形成する6速復帰処理を実行する(S210)。これにより、異常によりクラッチC−2が非係合でクラッチC−1が係合である状態で5速を形成すると3速が形成されるため、異常により6速を形成すると2速が形成される場合に比して、入力軸の回転数を小さくすることができ、入力軸が過回転するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速装置および変速機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動変速装置としては、前進走行レンジ(Dレンジ)が選択されている状態で、車速がゼロであり、アクセルペダルが解放されており、ブレーキペダルが踏み込まれているときには、発進時に係合すべきクラッチの係合は解除するもののスリップ状態とすることにより変速機をニュートラルとするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、発進時に係合すべきクラッチの係合を解除することにより、エンジン側に加わる付加を小さくして燃費を良くすると共に車両に振動が発生するのを防止し、発進時に係合すべきクラッチをスリップ状態とすることにより、発進時にこのクラッチを迅速に係合することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−072415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な自動変速装置を搭載した自動車では、前進走行レンジ(Dレンジ)で走行中にアクセルペダルを解放すると、変速機は車速に応じた変速段となるよう制御され、車両には変速段に応じたエンジンブレーキが作用する。燃費の更なる向上のために、Dレンジによる走行中であっても、アクセルペダルが解放されたときには、変速機をニュートラル(中立)とし、エンジンブレーキが作用しないようにして車両を惰性により走行させ、その後、アクセルペダルが踏み込まれたときに車速に応じた変速段を形成することも考えられる。この場合、変速段を形成するためのクラッチを駆動するアクチュエータなどに異常が生じると、車速に応じた変速段が形成されず、予期しない変速段が形成され、場合によっては変速機の入力軸が過回転する場合が生じる。
【0005】
本発明の自動変速装置および変速機の制御方法は、走行中に変速機を中立とし、その後中立を解除する際に変速機の入力軸が過回転するのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動変速装置および変速機の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動変速装置は、
複数の摩擦係合要素のうち組み合わせの異なる2つの摩擦係合要素を係合した状態とすることにより5速以上の複数の変速段を実現する変速機と、車速に基づいて目標変速段を設定する目標変速段設定手段と、前記複数の摩擦係合要素の係合および係合の解除により前記変速機の変速制御を実行する制御手段と、を備える自動変速装置であって、
前記変速機は、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに前記最低速段から前記所定変速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に前記所定変速段から前記最高速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において前記第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記所定変速段より1つ高速側の変速段から前記最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に前記第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に前記第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる変速機であり、
前記制御手段は、走行中に前記変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、前記変速機の変速段を前記設定された目標変速段とするために係合とすべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として前記変速機を中立とする手段であり、
更に、前記制御手段は、前記所定の中立条件の成立による前記変速機の中立を解除するときに前記設定された目標変速段が前記高速側変速段である所定の中立解除時には、前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合した状態とした後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合した状態とする手段である、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動変速装置では、変速機は、複数の摩擦係合要素のうち組み合わせの異なる2つの摩擦係合要素を係合した状態とすることにより5速以上の複数の変速段を実現するものであり、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに、最低速段から所定変速段までのいずれの変速段もその形成に複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に所定変速段から最高速段までのいずれの変速段もその形成に複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされる。ここで、「最低速段」は変速機の取り得る変速段のうち最も低車速側の変速段であり、例えば6速の変速機の場合には1速が該当する。「最高速段」は変速機の取り得る変速段のうち最も高車速側の変速段であり、例えば6速の変速機の場合には6速が該当する。「所定変速段」は、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段であるから、例えば6速の変速機の場合には3速や4速の変速段が該当する。したがって、6速の変速機で所定変速段が4速のときを考えると、変速機は、1速から4速までのいずれの変速段もその形成に第1の摩擦係合要素の係合が必要とされ、4速から6速までのいずれの変速段もその形成に第2の摩擦係合要素の係合が必要とされるものとなる。また、変速機は、所定変速段より1つ高速側の変速段から最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、最低速段から所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる。ここで、「低速側変速段」は、所定変速段より1つ高速側の変速段から最高速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段であるから、所定変速段が4速である6速の変速機の場合を考えると、5速から6速までの連続する2つの変速段の低速側の変速段、即ち5速となる。「高速側変速段」は、所定変速段より1つ高速側の変速段から最高速段までの連続する2つの変速段の高速側の変速段であるから、所定変速段が4速である6速の変速機の場合を考えると、5速から6速までの連続する2つの変速段の高速側の変速段、即ち6速となる。最低速段から所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段は、所定変速段が4速である6速の変速機の場合を考えると、1速から3速までの連続する2つの変速段となり、1速と2速、2速と3速のいずれかとなる。所定変速段が4速である6速の変速機において最低速段から所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段が2速と3速である場合では、変速機は、5速の形成に第3の摩擦係合要素の係合が必要となり、6速の形成に第4の摩擦係合要素の係合が必要となり、2速の形成に第4の摩擦係合要素の係合が必要となり、3速の形成に第3の摩擦係合要素の係合が必要となる。
【0009】
また、本発明の自動変速装置では、制御手段は、走行中に変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、変速機の変速段を車速に基づいて設定された目標変速段とするために係合すべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として変速機を中立とする。さらに、制御手段は、所定の中立条件の成立による変速機の中立を解除するときに目標変速段が高速側変速段である所定の中立解除時には、低速側変速段が形成されるよう第2の摩擦係合要素を係合した状態で第3の摩擦係合要素を係合した後に第3の摩擦係合要素の係合を解除して高速側変速段が形成されるよう第4の摩擦係合要素を係合する。前述の所定変速段が4速である6速の変速機において最低速段から所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段が2速と3速である場合を考えると、目標変速段が6速である所定の中立解除時には、5速が形成されるよう第2の摩擦係合要素を係合した状態で第3の摩擦係合要素を係合した後に、3の摩擦係合要素の係合を解除して6速が形成されるよう第4の摩擦係合要素を係合した状態とすることになる。このとき、変速機に異常が生じ、第2の摩擦係合要素を係合するときに、異常によって第2の摩擦係合要素が係合されずに第1の摩擦係合要素が係合されたときには、第3の摩擦係合要素を係合すると3速が形成され、その後、第3の摩擦係合要素の係合を解除して第4の摩擦係合要素を係合すると2速が形成されることになる。即ち、5速を形成した後に6速を形成するものが、異常により3速を形成した後に2速を形成するものとなる。これにより、5速が形成されるべきところ3速が形成されると、変速機の入力軸の回転数は想定される回転数より大きな回転数となり、異常を検知することができるから、6速の形成を中止することができる。一方、5速を形成することなく直ちに6速を形成するものでは、異常により2速が形成されると、変速機の入力軸の回転数は、5速を形成したときに異常により3速が形成されるものに比して高回転となり、過回転しやすくなる。この結果、所定の中立解除時に目標変速段が6速のときに5速を形成した後で6速を形成することにより、異常が生じたときに、5速を形成することなく直ちに6速を形成する場合に比して変速機の入力軸が過回転するのを抑制することができる。以上、所定変速段が4速である6速の変速機において最低速段から所定変速段より1つ低速側までの連続する2つの変速段が2速と3速である場合について考えたが、本発明の自動変速装置として記載したとおり、6速の変速機に限られるものではなく、5速の変速機や7速や8速の変速機など5速以上の複数の変速段の変速機であればよく、同様の効果を奏することができる。即ち、本発明の自動変速装置は、変速機の入力軸が過回転するのを抑制することができる、という効果を奏するものとなる。なお、「高速側変速段」としては、最高速段としてもよい。
【0010】
こうした本発明の自動変速装置において、前記制御手段は、前記所定の中立条件が成立したときには、前記設定された目標変速段が前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までのいずれかの変速段のときには前記第1の摩擦係合要素を係合した状態とすると共に該変速段を形成するための他の摩擦係合要素の係合を解除した状態として前記変速機を中立とし、前記設定された目標変速段が前記所定変速段から前記最高速段までのいずれかの変速段のときには前記第2の摩擦係合要素を係合した状態とすると共に該変速段を形成するための他の摩擦係合要素の係合を解除した状態として前記変速機を中立とする手段であり、更に、前記制御手段は、前記所定の中立解除時として前記第2の摩擦係合要素を係合した状態による前記変速機の中立を解除するときには、前記第2の摩擦係合要素を係合した状態を維持して前記低速側変速段が形成されるよう前記第3の摩擦係合要素を係合した後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、再加速時には目標変速段を形成するために係合すべき他の摩擦係合要素を係合するだけで変速機を目標変速段の状態とすることができ、迅速に再加速することができる。この態様の本発明の自動変速装置において、前記所定の中立解除時は、前記変速機の前記第1の摩擦係合要素を係合した状態による中立から前記第2の摩擦係合要素を係合した状態による中立に移行した後に該第2の摩擦係合要素を係合した状態による中立を解除するときに前記設定された目標変速段が前記高速側変速段であるときである、ものとすることもできる。第1の摩擦係合要素を係合した状態による中立から第2の摩擦係合要素を係合した状態による中立に移行したときであるから、異常により第1の摩擦係合要素を係合した状態を解除することができず且つ第2の摩擦係合要素を係合することができない場合に有効に対処することができる。
【0011】
本発明の自動変速装置において、前記制御手段は、前記所定の中立解除時において前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合したときに前記変速機の入力軸が車速から想定される前記低速側変速段による回転数より所定回転数以上大きいときには前記高速側変速段の形成を中止する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、高速側変速段を形成することによって生じ得る変速機の入力軸の過回転を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の自動変速装置において、前記所定の中立条件は、シフトポジションが前進走行用ポジションでアクセルオフした条件である、ものとすることもできる。所定の中立条件には、更に、アクセルオフしてから所定時間、例えば、1秒や2秒など経過する条件やブレーキオフの条件などを加味してもよい。
【0013】
本発明の変速機の制御方法は、
複数の摩擦係合要素のうち組み合わせの異なる2つの摩擦係合要素を係合した状態とすることにより5速以上の複数の変速段を実現する変速機において、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに前記最低速段から前記所定変速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に前記所定変速段から前記最高速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において前記第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記所定変速段より1つ高速側の変速段から前記最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に前記第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に前記第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる変速機の制御方法であって、
走行中に前記変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、前記変速機の変速段を前記目標変速段とするために係合すべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として前記変速機を中立とし、
更に、前記所定の中立条件の成立による前記変速機の中立を解除するときに前記目標変速段が前記高速側変速段である所定の中立解除時には、前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合した状態とした後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合した状態とする、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の変速機の制御方法では、走行中に変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、変速機の変速段を目標変速段とするために係合すべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として変速機を中立とする。これにより、燃費の向上を図ることができる。変速機は、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに最低速段から所定変速段までのいずれの変速段もその形成に複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に所定変速段から最高速段までのいずれの変速段もその形成に複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされ、所定変速段より1つ高速側の変速段から最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、最低速段から所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる。このため、所定の中立条件の成立による変速機の中立を解除するときに目標変速段が高速側変速段である所定の中立解除時には、低速側変速段が形成されるよう第2の摩擦係合要素を係合した状態で第3の摩擦係合要素を係合した状態とした後に第3の摩擦係合要素の係合を解除して高速側変速段が形成されるよう第4の摩擦係合要素を係合した状態とすることにより、上述した本発明の自動変速装置と同様に、変速機の入力軸が過回転するのを抑制することができる。ここで、「最低速段」は変速機の取り得る変速段のうち最も低車速側の変速段であり、「最高速段」は変速機の取り得る変速段のうち最も高車速側の変速段である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としての自動変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】自動変速装置20の機械的構成の概略を示す構成図である。
【図3】自動変速機30の各変速段とクラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1,B−2の作動状態との関係を表した作動表を示す説明図である。
【図4】自動変速機30を構成する回転要素間における回転速度の関係を例示する共線図を示す説明図である。
【図5】変速マップの一例を示す説明図である。
【図6】シフトポジションSPがドライブポジション(Dポジション)のときに変速機ECU80により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】6速復帰処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】6速走行からアイドルコーストによる走行に移行し6速でアイドルコーストから復帰したときのアクセル開度Accやクラッチ,ブレーキなどの時間変化の一例を示す説明図である。
【図9】変形例の変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としての自動変速装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、自動変速装置20の機械的構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図1および図2に示すように、ガソリンや軽油などの炭化水素系の燃料の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられた流体伝動装置22と、この流体伝動装置22の出力側に入力軸31が接続されると共にギヤ機構48やデファレンシャルギヤ49を介して駆動輪11a,11bに出力軸32が接続され入力軸31に入力された動力を変速して出力軸32に伝達する有段の自動変速機30と、流体伝動装置22や自動変速機30に作動油を供給する油圧回路50と、油圧回路50を制御することによって流体伝動装置22や自動変速機30を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。ここで、実施例の自動変速装置20としては、主に自動変速機30,油圧回路50,変速機ECU80が該当する。
【0018】
エンジンECU16は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。エンジンECU16にはクランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号やアクセルペダル93の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0019】
流体伝動装置22は、図2に示すように、ロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されており、フロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト14に接続された入力側流体伝動要素としてのポンプインペラ23と、タービンハブを介して自動変速機30の入力軸31に接続された出力側流体伝動要素としてのタービンランナ24と、ポンプインペラ23およびタービンランナ24の内側に配置されてタービンランナ24からポンプインペラ23への作動油の流れを整流するステータ25と、ステータ25の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ26と、ダンパ機構を有するロックアップクラッチ28と、を備える。この流体伝動装置22は、ポンプインペラ23とタービンランナ24との回転速度の差が大きいときにはステータ25の作用によってトルク増幅機として機能し、ポンプインペラ23とタービンランナ24との回転速度の差が小さいときには流体継手として機能する。また、ロックアップクラッチ28は、ポンプインペラ23(フロントカバー18)とタービンランナ24(タービンハブ)とを連結するロックアップとロックアップの解除とを実行可能なものであり、自動車10の発進後にロックアップオン条件が成立すると、ロックアップクラッチ28によってポンプインペラ23とタービンランナ24とがロックアップされてエンジン12からの動力が入力軸31に機械的かつ直接的に伝達されるようになる。なお、この際に入力軸31に伝達されるトルクの変動は、ダンパ機構によって吸収される。
【0020】
自動変速機30は、6段変速の有段変速機として構成されており、シングルピニオン式の遊星歯車機構35とラビニヨ式の遊星歯車機構40と3つのクラッチC−1,C−2,C−3と2つのブレーキB−1,B−2とワンウェイクラッチF−1とを備える。シングルピニオン式の遊星歯車機構35は、外歯歯車としてのサンギヤ36と、このサンギヤ36と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ37と、サンギヤ36に噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のピニオンギヤ38と、複数のピニオンギヤ38を自転かつ公転自在に保持するキャリア39とを備え、サンギヤ36はケースに固定されており、リングギヤ37は入力軸31に接続されている。ラビニヨ式の遊星歯車機構40は、外歯歯車の2つのサンギヤ41a,41bと、内歯歯車のリングギヤ42と、サンギヤ41aに噛合する複数のショートピニオンギヤ43aと、サンギヤ41bおよび複数のショートピニオンギヤ43aに噛合すると共にリングギヤ42に噛合する複数のロングピニオンギヤ43bと、複数のショートピニオンギヤ43aおよび複数のロングピニオンギヤ43bとを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア44とを備え、サンギヤ41aはクラッチC−1を介してシングルピニオン式の遊星歯車機構35のキャリア39に接続され、サンギヤ41bはクラッチC−3を介してキャリア39に接続されると共にブレーキB−1を介してケースに接続され、リングギヤ42は出力軸32に接続され、キャリア44はクラッチC−2を介して入力軸31に接続されている。また、キャリア44はブレーキB2を介してケースに接続されると共にワンウェイクラッチF−1を介してケースに接続されている。図3に自動変速機30の各変速段とクラッチC−1〜C−3、ブレーキB−1,B−2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図4に自動変速機30を構成する回転要素間における回転速度の関係を例示する共線図を示す。この自動変速機30は、図3の作動表に示すように、クラッチC−1〜C−3のオンオフ(オンが係合状態でオフが解放状態)とブレーキB−1,B−2のオンオフとの組み合わせによって前進1速〜6速と後進とニュートラルとを切り替えることができる。
【0021】
流体伝動装置22や自動変速機30は、変速機ECU80によって駆動制御される油圧回路50によって作動する。油圧回路50は、いずれも図示しないが、エンジン12からの動力を用いて作動油を圧送するオイルポンプや、オイルポンプからの作動油を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ,プライマリレギュレータバルブからのライン圧PLを減圧してセカンダリ圧Psecを生成するセカンダリレギュレータバルブ,プライマリレギュレータバルブからのライン圧PLを調圧して一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ,シフトレバー91の操作位置に応じてプライマリレギュレータバルブからのライン圧PLの供給先(クラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2)を切り替えるマニュアルバルブ,マニュアルバルブからのライン圧PLを調圧して対応するクラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2へのソレノイド圧を生成する複数のリニアソレノイドバルブなどを備える。
【0022】
変速機ECU80は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。変速機ECU80には、入力軸31に取り付けられた回転速度センサ31aからの入力軸回転速度Ninや、出力軸32に取り付けられた回転速度センサ32aからの出力軸回転速度Nout,シフトレバー91の位置を検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル95の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ96からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されており、変速機ECU80からは、油圧回路50への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0023】
なお、エンジンECU16とブレーキECU17と変速機ECU80は、相互に通信ポートを介して接続されており、相互に制御に必要な各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。また、シフトレバー91のシフトポジションSPとしては、実施例では、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションが用意されている。
【0024】
こうして構成された実施例の自動変速装置20は、シフトレバー91のシフトポジションSPがドライブポジション(Dポジション)のときには、図5の変速マップに示すように、アクセル開度Accと車速Vとからなる作動ポイントが1−2アップシフトライン,2−3アップシフトライン,3−4アップシフトライン,4−5アップシフトライン,5−6アップシフトラインを左の数字以下の変速段(例えば2−3アップシフトラインでは1速〜2速)の状態で左側から右側に超えるときにそのときの変速段から右の数字の変速段(例えば2−3アップシフトラインでは3速)にアップシフトするようクラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2をオンオフし、アクセル開度Accと車速Vとからなる作動ポイントが6−5ダウンシフトライン,5−4ダウンシフトライン,4−3ダウンシフトライン,3−2ダウンシフトライン,2−1ダウンシフトラインを左の数字以上の変速段(例えば4−3ダウンシフトラインでは4速〜6速)の状態で右側から左側に超えるときにそのときの変速段から右の数字の変速段(例えば4−3ダウンシフトラインでは3速)にダウンシフトするようクラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2をオンオフする。
【0025】
次に、実施例の自動変速装置20の動作、特にシフトレバー91のシフトポジションSPがドライブポジション(Dポジション)のときの動作について説明する。図6は、シフトポジションSPがドライブポジション(Dポジション)のときに変速機ECU80により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎や数十msec毎)に繰り返し実行される。
【0026】
変速制御ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、まず、アクセルペダルポジションセンサ94からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ96からのBP,車速センサ98からの車速Vなどの制御に必要なデータを入力し(ステップS100)、入力したアクセル開度Accと車速Vと図5に例示した変速マップとに基づいて目標変速段GS*を設定する(ステップS110)。続いて、自動変速機30をニュートラル状態として惰性により走行している状態(以下、「アイドルコースト」という。)を実行しているか否かを示すアイドルコースト実行フラグFの値を調べ(ステップS120)、アイドルコースト実行フラグFが値0のときにはアイドルコーストを実行していないと判断し、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過していないのを確認して(ステップS130)、自動変速機30に設定した目標変速段GS*が形成されるようクラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2をオンオフして(ステップS200)、本ルーチンを終了する。ここで、アイドルコースト実行フラグFは、このルーチンにより設定されるものであり、アイドルコーストが実行されているときに値1が設定され、アイドルコーストが実行されていないときには値0が設定される。ここで、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過している条件は、アイドルコーストを実行する条件といえる。アイドルコーストは、運転者がそのときの車両の運動エネルギーを用いて惰性により走行するものであるから、運転者の意志を確認するため、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0であることを要すると共にその状態が継続していることが必要となる。したがって、所定時間は、運転者の意志を確認する程度の時間、例えば1秒や2秒などを用いることができる。
【0027】
ステップS120でアイドルコースト実行フラグFが値0でステップS130でアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過したと判定されたときには、アイドルコーストを実行すべきと判断し、アイドルコースト実行フラグFに値1を設定すると共に(ステップS140)、目標変速段GS*を調べ(ステップS160)、目標変速段GS*が1速〜3速のときには、クラッチC−1をオンとすると共に他のクラッチC−2,C−3やブレーキB−1,B−2をオフとして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。自動変速機30を1速〜3速のいずれかの変速段にするためには、クラッチC−1をオンとすると共にブレーキB−2やブレーキB−1,クラッチC−3のいずれかをオンとする必要があるが、クラッチC−1をオンとしても他のブレーキB−2やブレーキB−1,クラッチC−3のいずれをもオフとすることにより、1速〜3速のいずれの変速段も形成されないため、自動変速機30はニュートラルの状態となる。したがって、車両は、その後、惰性により走行すること、即ち、アイドルコーストによる走行を行なうことになる。なお、エンジン12は、アクセル開度Accが値0であり、自動変速機30がニュートラルの状態となっているから、アイドリング制御によりアイドリング運転されたり、或いは、アイドルストップにより運転停止される。実施例のクラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態は、シフトレバー91のシフトポジションSPがニュートラルポジション(Nポジション)とされたときとは異なり、クラッチC−1がオンとされているから、ブレーキB−2やブレーキB−1,クラッチC−3のいずれかをオンとすることにより、直ちに1速〜3速を形成することができる。即ち、自動変速機30は、目標変速段GS*としての1速〜3速を形成するための準備(クラッチC−1のオン)ができている状態でのニュートラルと言える。
【0028】
一方、ステップS160で目標変速段GS*が4速〜6速と判定されたときには、クラッチC−2をオンとすると共に他のクラッチC−1,C−3やブレーキB−1,B−2をオフとして(ステップS180)、本ルーチンを終了する。図3の作動表では、自動変速機30を4速〜6速のいずれかの変速段にするためには、クラッチC−2をオンとすると共にクラッチC−1やクラッチC−3,ブレーキB−1のいずれかをオンとする必要があるが、クラッチC−2をオンとしても他のクラッチC−1やクラッチC−3,ブレーキB−1のいずれもオフとすることにより、4速〜6速のいずれの変速段も形成されないため、自動変速機30はニュートラルの状態となる。したがって、車両は、その後、アイドルコーストによる走行を行なうことになる。なお、この場合も、エンジン12は、アクセル開度Accが値0であり、自動変速機30がニュートラルの状態となっているから、アイドリング制御によりアイドリング運転されたり、或いは、アイドルストップにより運転停止される。クラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態は、前述したクラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態と同様に、シフトレバー91のシフトポジションSPがニュートラルポジション(Nポジション)とされたときとは異なり、クラッチC−2がオンとされているから、クラッチC−1やクラッチC−3,ブレーキB−1のいずれかをオンとすることにより、直ちに4速〜6速を形成することができる。即ち、自動変速機30は、目標変速段GS*としての4速〜6速を形成するための準備(クラッチC−2のオン)ができている状態でのニュートラルと言える。
【0029】
こうしてアイドルコーストによる走行を開始すると、ステップS120ではアイドルコースト実行フラグFが値1であると判定され、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で継続されているか否かを判定し(ステップS150)、クセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で継続されていると判定したときには、ステップS160〜S180の目標変速段GS*に応じてクラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態かクラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態としてアイドルコーストを継続する。なお、目標変速段GS*が4速から3速に変更になったときには、クラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態からラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態に移行し、逆に目標変速段GS*が3速から4速に変更になったときには、クラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態からラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態に移行する。
【0030】
アイドルコーストによって走行している最中に運転者がアクセルペダル93を踏み込んでアクセル開度Accが値0ではなくなったときやブレーキペダル95を踏み込んでブレーキペダルポジションBPが値0ではなくなったときには、ステップS150でアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で継続されていないと判定され、アイドルコースト実行フラグFに値0を設定し(ステップS190)、そのときに設定されている目標変速段GS*が1速〜5速であるか否かを判定し(ステップS195)、目標変速段GS*が1速〜5速であると判定されたときには、目標変速段GS*を形成するようにクラッチC−1〜C−3やブレーキB−1,B−2をオンオフして(ステップS200)、本ルーチンを終了する。いま、クラッチC−1をオンとしたときのニュートラルの状態でアイドルコーストにより走行している最中にアクセルペダル93が踏み込まれたときを考える。このとき、アクセルペダル93の踏み込み量にもよるが、目標変速段GS*は1速〜3速のいずれかであるから、ブレーキB−2やブレーキB−1,クラッチC−3のいずれか1つをオンとするだけで目標変速段GS*を形成することができる。次に、クラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態でアイドルコーストにより走行している最中にアクセルペダル93が踏み込まれたときを考える。このとき、ステップS195の判定で目標変速段GS*は4速か5速であるから、クラッチC−1かクラッチC−3の一方をオンとするだけで目標変速段GS*を形成することができる。なお、クラッチC−2をオンとしたときのニュートラルの状態でアイドルコーストにより走行している最中に運転者がアクセルペダル93を大きく踏み込むと、図5の変速マップから分かるように、目標変速段GS*として2速や3速が設定される場合もある。この場合は、クラッチC−2をオフとすると共にクラッチC−1をオンとし、更にブレーキB−1やクラッチC−3をオンとする必要があるが、この場合が生じる頻度は少ない。したがって、クラッチC−1もクラッチC−2もオフとして自動変速機30をシフトポジションSPがニュートラルポジションのときと同様の状態として走行する場合に比して、アイドルコーストによる走行からの復帰を迅速に行なうことができ、再加速を迅速に行なうことができる。
【0031】
ステップS195で目標変速段GS*が1速〜5速ではない、即ち6速であると判定されると、図7に例示する6速復帰処理を行なって(ステップS210)、本ルーチンを終了する。6速復帰処理が実行されると、変速機ECU80は、まず、目標変速段GS*は6速であるが、5速が形成されるようクラッチC−3が係合されるよう油圧回路50を制御する(ステップS300)。そして、5速の形成を開始してから所定時間が経過するまで、回転速度センサ31aからの入力軸回転速度Ninを入力し、車速Vと5速のギヤ比G5から回転速度センサ31aに想定される回転速度Nestを計算し、入力軸回転速度Ninから想定回転速度Nestを減じて回転速度差ΔNを計算し、回転速度差ΔNを閾値Nrefと比較する処理を回転速度差ΔNが閾値Nref未満である範囲で繰り返す(ステップS310〜S350)。ここで、閾値Nrefは、回転速度差ΔNが値0近傍ではないと判定できる程度に値0より大きく、且つ、図5の変速マップで6速を形成する最小の車速で5速を形成したときの回転数と3速を形成したときの回転数より小さい値として設定されるものである。また、所定時間は、5速を形成するのに必要十分な時間として設定されるものである。回転速度差ΔNが閾値Nref未満を保持したまま所定時間経過すると、5速を解除して6速を形成し、即ち、クラッチC−3の係合を解除してブレーキB−1を係合するよう油圧回路50を制御して(ステップS360)、6速復帰処理を終了する。
【0032】
一方、5速の形成を開始してから所定時間経過するまでに回転速度差ΔNが閾値Nref以上になると、自動変速機30に異常が生じていると判断し、異常を出力して(ステップS370)、6速を形成することなく、6速復帰処理を終了する。自動変速機30の変速段として5速が正常に形成されていれば、回転速度差ΔNは閾値Nref未満となるから、5速が正常に形成されていないこととなる。このとき、例えば、クラッチC−2とクラッチC−3とが係合されているはずが、異常によりクラッチC−1とクラッチC−3とが係合されている場合を考えると、図3の作動表から3速が形成されることになり、入力軸回転速度Ninは5速が形成されたときに比して大きくなる。実施例では、こうした状態を異常と判断して異常を出力するのである。いま、クラッチC−2を係合した状態でのアイドルコーストによる走行であるものが、異常によりクラッチC−1を係合した状態でのアイドルコーストによる走行である場合を考える。このとき、運転者のアクセルペダル93の踏み込みによりアイドルコーストからの復帰に対して直ちに6速を形成すると、異常によりクラッチC−1が係合されているからブレーキB−1を係合すると、2速が形成されることになる。アイドルコーストからの復帰が6速の場合では車速Vが比較的大きいから、異常により2速が形成されると、減速比が大きいために入力軸31が過回転する場合が生じる。一方、実施例のように、6速を形成する前に5速を形成することにより、異常によりクラッチC−1が係合されているても変速段としては3速が形成されるから、2速が形成される場合に比して入力軸31の回転数を低くすることができる。即ち、6速復帰の際に5速を形成してから6速を形成することにより、異常によりクラッチC−2が係合されておらずクラッチC−1が係合されていても、入力軸31が過回転するのを抑制することができるのである。
【0033】
図8は、6速走行からアイドルコーストによる走行に移行し6速でアイドルコーストから復帰したときのアイドルコースト実行フラグFやアクセル開度Acc,ブレーキペダルポジションBP,クラッチC−2に対する油圧,ブレーキB−1に対する油圧,クラッチC−3に対する油圧,入力軸回転速度Ninの時間変化の一例を示す説明図である。6速走行からアイドルコーストによる走行への移行は、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0となる時間T1から所定時間経過した時間T2にアイドルコースト実行フラグFに値1が設定されたときに行なわれ、具体的には、6速を形成するクラッチC−2とブレーキB−1のうち、クラッチC−2に対する油圧を保持してその係合した状態を維持したままでブレーキB−1に対する油圧を制御してその係合を解除した状態とすることにより行なわれる。アイドルコーストによる走行から6速による復帰は、アクセルペダル93が踏み込まれたことによってアクセル開度Accが値0でなくなった時間T3に、まず、5速を形成するためにクラッチC−3に対する油圧を制御してクラッチC−3を係合する。5速の形成を開始してから、即ちクラッチC−3に対する油圧の制御を開始してから、入力軸回転速度Ninから5速を形成したときに想定される想定回転速度Nestを減じて得られる回転速度差ΔNが閾値Nref未満を保持したままで所定時間経過した時間T4に、5速の形成が解除されて6速が形成されるよう、即ち、クラッチC−3に対する油圧を制御してその係合を解除すると共にブレーキB−1に対する油圧を制御してブレーキB−1を係合した状態として6速を形成する。図8の入力軸回転速度Ninの時間T3近傍には、異常によりクラッチC−2が係合されておらずクラッチC−1が形成されているために、5速を形成したときに3速が形成された場合の入力軸回転速度Ninの変化の一例を一点鎖線で示し、6速を形成したときに2速が形成された場合の入力軸回転速度Ninの変化の一例を二点鎖線で示した。図示するように、3速が形成されたときの入力軸回転速度Ninは、5速が形成されたときより大きくなるが2速が形成されたときより小さいから、入力軸回転速度Ninから想定回転速度Nestを減じて得られる回転速度差ΔNが閾値Nref以上に至ったときに異常を判定して6速を形成しないことにより、入力軸31が過回転するのを抑制することができる。
【0034】
以上説明した実施例の自動変速装置20によれば、アイドルコーストにより走行している最中にアクセルペダル93が踏み込まれてアイドルコーストから復帰するときに目標変速段GS*が6速のときには、5速を形成してから6速を形成するよう油圧回路50を制御することにより、5速を形成するときに異常によりクラッチC−2が係合されておらずクラッチC−1が係合されていても3速が形成されるため、6速の形成に対して異常により2速が形成される場合に比して、入力軸31の回転数を小さくすることができる。この結果、入力軸31が過回転するのを抑制することができる。しかも、5速の形成を開始してから所定時間経過するまでに入力軸回転速度Ninから想定回転速度Nestを減じて得られる回転速度差ΔNが閾値Nref以上に至ると異常を出力して6速の形成を行なわないから、クラッチC−2が係合されておらずクラッチC−1が係合されているという異常を検知することができると共により確実に入力軸31が過回転するのを抑制することができる。もとより、シフトポジションSPをDポジションとして走行している最中にアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過したアイドルコーストを実行する条件が成立したときに、アクセル開度Accと車速Vを変速マップに適用して得られる目標変速段GS*を形成する2つのクラッチやブレーキのうちの一方を係合した状態とすると共に他方を係合が解除された状態として自動変速機30を中立(ニュートラル)として走行するから、再加速時には他方のクラッチやブレーキを係合するだけで自動変速機30を目標変速段GS*とすることができ、迅速に再加速することができる。また、アイドルコーストによる走行中は、目標変速段GS*が1速〜3速のときには1速〜3速を形成するために必要なクラッチやブレーキのうち共通するクラッチC−1を係合した状態として自動変速機30をニュートラルとし、目標変速段GS*が4速〜6速のときには4速〜6速を形成するために必要なクラッチやブレーキのうち共通するクラッチC−2を係合した状態として自動変速機30をニュートラルとすることにより、車速の変化に対応して目標変速段GS*が変化したときに自動変速機30をニュートラルとするために係合した状態とするクラッチの変更を少なくすることができる。
【0035】
実施例の自動変速装置20では、アイドルコーストにより走行している最中にアクセルペダル93が踏み込まれてアイドルコーストから復帰するときに目標変速段GS*が6速のときには5速を形成してから6速を形成するよう油圧回路50を制御する6速復帰処理を実行するものとしたが、アイドルコーストにより走行している最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルからクラッチC−2を係合した状態のニュートラルに移行した後でアイドルコーストから復帰する際に目標変速段GS*が6速のときにだけ6速復帰処理を実行するものとしてもよい。この場合、図6の変速制御ルーチンに代えて図9の変速制御ルーチンを実行する。図9の変速制御ルーチンは、ステップS170の次にクラッチフラグFC1に値1を設定するステップS175の処理を設けたこと、ステップS210の6速復帰処理の前にクラッチフラグFC1の値による分岐するステップS205の処理を設けたこと、ステップS200およびステップS210の後にクラッチフラグFC1に値0を設定するステップS220の処理を設けたこと、を除いて図6の変速制御ルーチンと同様である。したがって、図9の変速制御ルーチンの各処理のうち図6の変速制御ルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。図9の変速制御ルーチンでは、クラッチC−1を係合した状態のニュートラルによりアイドルコーストを実行するとき、即ち、ステップS160で目標変速段GS*が1速〜3速であると判定され、ステップS170でクラッチC−1をオンとすると共に他のクラッチC−2,C−3やブレーキB−1,B−2をオフとしたときには、クラッチフラグFC1に値1を設定して(ステップS175)、このルーチンを終了する。なお、ステップS160で目標変速段GS*が4速〜6速であると判定されたときには、ステップS180でクラッチC−2をオンとすると共に他のクラッチC−1,C−3やブレーキB−1,B−2をオフとしたときには、クラッチフラグFC1の設定処理は行なわれない。したがって、クラッチフラグFC1が値1であるということは、アイドルコーストの最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルとした履歴があるということになる。アイドルコーストから6速で復帰するとき、即ち、ステップS195で目標変速段GS*が6速であると判定されたときには、クラッチフラグFC1を調べ(ステップS205)、クラッチフラグFC1が値0のときには、目標変速段GS*(この場合6速)を形成し(ステップS200)、クラッチフラグFC1に値0を設定して(ステップS220)、本ルーチンを終了し、クラッチフラグFC1が値1のときには、6速復帰処理を実行し(ステップS210)、クラッチフラグFC1に値0を設定して(ステップS220)、本ルーチンを終了する。したがって、アイドルコーストから6速で復帰するときにアイドルコーストの最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルとした履歴があるときにだけ6速復帰処理を行なうことになる。アイドルコーストの最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルとした履歴がない状態でアイドルコーストから6速で復帰するときに6速復帰処理を実行しないのは、この6速での復帰は、自動変速機30を4速〜6速として走行している最中にアイドルコーストを実行してクラッチC−2を係合した状態のニュートラルとし、このニュートラルの状態のままアイドルコーストから6速で復帰するときとなり、アイドルコーストの最中およびその前後ではクラッチC−2は係合した状態が保持されるため、クラッチC−2に対する油圧の変化がないことから、異常によりクラッチC−2の係合が解除されてクラッチC−1が係合された状態になることは考え難いからである。このように、図9の変形例の変速制御ルーチンを実行するものとすれば、アイドルコーストから6速で復帰するときにアイドルコーストの最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルとした履歴があるときにだけ6速復帰処理を行なうことにより、5速を形成した後に6速を形成するという6速復帰処理を実行する頻度を少なくすることができる。もとより、アイドルコーストの最中にクラッチC−1を係合した状態のニュートラルとした履歴があるときは6速復帰処理を行なうから、異常によりクラッチC−2が係合されておらずクラッチC−1が係合されているときには、この異常を検知することができると共に入力軸31が過回転するのを抑制することができる。
【0036】
実施例の自動変速装置20では、アイドルコーストによる走行中は、目標変速段GS*を形成する2つのクラッチやブレーキのうちの一方を係合した状態とすると共に他方を係合が解除された状態として自動変速機30を中立(ニュートラル)としたが、係合が解除された状態のクラッチやブレーキは係合が解除されていればよいから、そのクラッチやブレーキに対する油圧を完全に低下させるものとしてよいし、ファストフィルが完了した状態で待機しているものとしてもよい。
【0037】
実施例の自動変速装置20では、アイドルコーストによる走行中は、目標変速段GS*を形成する2つのクラッチやブレーキのうちの一方を係合した状態とすると共に他方を係合が解除された状態として自動変速機30をニュートラルとしたが、目標変速段GS*を形成する2つのクラッチやブレーキの双方を係合が解除された状態として自動変速機30をニュートラルとするものとしてもよい。
【0038】
実施例の自動変速装置20では、アイドルコーストを実行する条件として、シフトポジションSPをDポジションである条件、アクセル開度Accが値0である条件、ブレーキペダルポジションBPが値0である条件、これらが成立している状態が所定時間経過した条件、を必要としたが、アイドルコーストを実行する条件は、これらに限定されるものではなく、アクセル開度Accに代えてスロットル開度が値0である条件としたり、ブレーキペダルポジションBPが値0である条件を含まないものとしたり、アイドルコーストによる走行に対してふさわしい条件であれば如何なる条件としても構わない。
【0039】
実施例の自動変速装置20では、6速の自動変速機30を用いるものとしたが、5速の自動変速機を用いるものとしてもよいし、7速や8速以上の自動変速機を用いるものとしてもよい。
【0040】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、自動変速機30が「変速機」に相当し、アクセル開度Accと車速Vを変速マップに適用して目標変速段GS*を設定する図6の変速制御ルーチンのステップS110の処理を実行する変速機ECU80が「目標変速段設定手段」に相当し、シフトポジションSPをDポジションとして走行している最中にアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPとが共に値0で所定時間経過したときに、目標変速段GS*が1速〜3速のときには1速〜3速を形成するために必要なクラッチやブレーキのうち共通するクラッチC−1を係合した状態として自動変速機30をニュートラルとし、目標変速段GS*が4速〜6速のときには4速〜6速を形成するために必要なクラッチやブレーキのうち共通するクラッチC−2を係合した状態として自動変速機30をニュートラルとする図6の変速制御ルーチンのステップS130,S160〜S180の処理や、アイドルコーストから復帰するときに、目標変速段GS*が1速〜5速のときには直ちに目標変速段GS*が形成されるようクラッチC−1,C−2,C−3,ブレーキB−1,B−2をオンオフし、目標変速段GS*が6速のときには5速を形成した後で6速を形成するようクラッチC−2,C−3,ブレーキB−1をオンオフする図6のステップS195〜S210の処理および図7の6速復帰処理を実行する変速機ECU80が「制御手段」に相当する。
【0041】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自動変速装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 自動車、11a,11b 駆動輪、12 エンジン、14 クランクシャフト、14a 回転速度センサ、16 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、17 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、18 フロントカバー、20 動力伝達装置、22 流体伝動装置、23 ポンプインペラ、24 タービンランナ、25 ステータ、26 ワンウェイクラッチ、28 ロックアップクラッチ、30 自動変速機、31 入力軸、31a 回転速度センサ、32 出力軸、32a 回転速度センサ、35 遊星歯車機構、36 サンギヤ、37 リングギヤ、38 ピニオンギヤ、39 キャリア、40 遊星歯車機構、41a サンギヤ、41b サンギヤ、42 リングギヤ、43a ショートピニオンギヤ、43b ロングピニオンギヤ、44 キャリア、48 ギヤ機構、49 デファレンシャルギヤ、50 油圧回路、80 変速機用電子制御ユニット(変速機ECU)、91 シフトレバー、92 シフトポジションセンサ、93 アクセルペダル、94 アクセルペダルポジションセンサ、95 ブレーキペダル、96 ブレーキスイッチ、98 車速センサ、B−1,B−2 ブレーキ、C−1〜C−3 クラッチ、F−1 ワンウェイクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素のうち組み合わせの異なる2つの摩擦係合要素を係合した状態とすることにより5速以上の複数の変速段を実現する変速機と、車速に基づいて目標変速段を設定する目標変速段設定手段と、前記複数の摩擦係合要素の係合および係合の解除により前記変速機の変速制御を実行する制御手段と、を備える自動変速装置であって、
前記変速機は、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに前記最低速段から前記所定変速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に前記所定変速段から前記最高速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において前記第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記所定変速段より1つ高速側の変速段から前記最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に前記第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に前記第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる変速機であり、
前記制御手段は、走行中に前記変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、前記変速機の変速段を前記設定された目標変速段とするために係合とすべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として前記変速機を中立とする手段であり、
更に、前記制御手段は、前記所定の中立条件の成立による前記変速機の中立を解除するときに前記設定された目標変速段が前記高速側変速段である所定の中立解除時には、前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合した状態とした後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合した状態とする手段である、
自動変速装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速装置であって、
前記制御手段は、前記所定の中立条件が成立したときには、前記設定された目標変速段が前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までのいずれかの変速段のときには前記第1の摩擦係合要素を係合した状態とすると共に該変速段を形成するための他の摩擦係合要素の係合を解除した状態として前記変速機を中立とし、前記設定された目標変速段が前記所定変速段から前記最高速段までのいずれかの変速段のときには前記第2の摩擦係合要素を係合した状態とすると共に該変速段を形成するための他の摩擦係合要素の係合を解除した状態として前記変速機を中立とする手段であり、
更に、前記制御手段は、前記所定の中立解除時として前記第2の摩擦係合要素を係合した状態による前記変速機の中立を解除するときには、前記第2の摩擦係合要素を係合した状態を維持して前記低速側変速段が形成されるよう前記第3の摩擦係合要素を係合した後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合する手段である、
自動変速装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動変速装置であって、
前記所定の中立解除時は、前記変速機の前記第1の摩擦係合要素を係合した状態による中立から前記第2の摩擦係合要素を係合した状態による中立に移行した後に該第2の摩擦係合要素を係合した状態による中立を解除するときに前記設定された目標変速段が前記高速側変速段であるときである、
自動変速装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の自動変速装置であって、
前記制御手段は、前記所定の中立解除時において前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合したときに前記変速機の入力軸が車速から想定される前記低速側変速段による回転数より所定回転数以上大きいときには前記高速側変速段の形成を中止する手段である、
自動変速装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の自動変速装置であって、
前記高速側変速段は、前記最高速段である、
自動変速装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の自動変速装置であって、
前記所定の中立条件は、シフトポジションが前進走行用ポジションでアクセルオフした条件である、
自動変速装置。
【請求項7】
複数の摩擦係合要素のうち組み合わせの異なる2つの摩擦係合要素を係合した状態とすることにより5速以上の複数の変速段を実現する変速機において、最低速段より2つ以上高速側で且つ最高速段から2つ以上低速側の変速段を所定変速段としたときに前記最低速段から前記所定変速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において第1の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に前記所定変速段から前記最高速段までのいずれの変速段もその形成に前記複数の摩擦係合要素において前記第1の摩擦係合要素とは異なる第2の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記所定変速段より1つ高速側の変速段から前記最高速段までの連続する2つの変速段のうちの低速側の変速段である低速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第3の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段である高速側変速段の形成に前記複数の摩擦係合要素において第4の摩擦係合要素の係合が必要とされ、前記最低速段から前記所定変速段より1つ低速側の変速段までの連続する2つの変速段の低速側の変速段の形成に前記第4の摩擦係合要素の係合が必要とされると共に高速側の変速段の形成に前記第3の摩擦係合要素の係合が必要とされる変速機の制御方法であって、
走行中に前記変速機を中立とするために予め定められた所定の中立条件が成立したときには、前記変速機の変速段を前記目標変速段とするために係合すべき2つの摩擦係合要素のうち少なくとも一方の係合を解除した状態として前記変速機を中立とし、
更に、前記所定の中立条件の成立による前記変速機の中立を解除するときに前記目標変速段が前記高速側変速段である所定の中立解除時には、前記低速側変速段が形成されるよう前記第2の摩擦係合要素を係合した状態で前記第3の摩擦係合要素を係合した状態とした後に該第3の摩擦係合要素の係合を解除して前記高速側変速段が形成されるよう前記第4の摩擦係合要素を係合した状態とする、
ことを特徴とする変速機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−215210(P2012−215210A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79746(P2011−79746)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】