説明

自動車のステアリング支持構造

【課題】第1連結部でステアリングの上下振動を効率的に抑制し、第2連結部を設けることで車幅方向にトラスを形成して、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制する自動車のステアリング支持構造を提供する。
【解決手段】カウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設け、連結部材Aは、第1連結部17と第2連結部18とを備え、第1連結部17は、前部がカウル部8に接合され、後部がインパネメンバ9に接合され、平面視で略ステアリングシャフト軸線aに沿って架設され、第2連結部18は、前部が第1連結部17の前部に接合され、後部がステアリング支持ブラケット10の平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カウル部から後方に離間し、かつヒンジピラーのような左右の側壁間に架設されたインパネメンバと、該インパネメンバ下部に設けられると共に、ステアリングコラムが取付けられるステアリング支持ブラケットとを備え、インパネメンバにステアリング支持ブラケットを介してステアリングコラムを支持するような自動車のステアリング支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステアリングシャフトはステアリングコラムに対して回転自在に設けられており、該ステアリングシャフトの後端には乗員が操作するステアリングホイールが連結されている。
【0003】
上述のステアリングシャフトには、路面からの振動や、エンジン振動が伝達されるので、ステアリングシャフトおよびステアリングホイールが上下方向および車幅方向に振動する。
このような振動を抑制するには、特許文献1、2で開示されているように、カウル部とインパネメンバとを連結部材で連結すると、効果的に振動の抑制を図ることができる。
【0004】
上記特許文献1には、インパネメンバと、その前方のフロントバルクヘッドとの間を、ステアリングコラムのコラム軸と略一致する方向に延びるステーで連結し、ステー前端に対してステー後端を車幅方向に若干オフセットさせ、平面視でトラス形状を構成した自動車のステアリング支持構造が開示されており、この従来構造においては、上記ステーによりステアリングの上下方向の振動を抑制することができる。
しかし、この従来構造においては、車幅方向に対する剛性が低く、該車幅方向の振動を充分に抑制することができない問題点があった。
【0005】
また、上記特許文献2には、インパネメンバの下部に、ステアリングコラムを支持するステアリング支持ブラケットを設け、インパネメンバの前部とカウル部後部との間を、前後方向に延びる支持アームで連結し、カウル部下部とステアリング支持ブラケット前端部との間を、上下方向に延びる下支持アームで連結し、側面視でトラス形状を形成すると共に、上記下支持アームは正面視で台形枠状に構成して、車幅方向に対しても剛性を有するように成した自動車のステアリング支持構造が開示されている。
この特許文献2に開示された従来構造においては、上記支持アームと下支持アームとで、上下方向の振動、車幅方向の振動を抑制することができる利点がある反面、同公報から明らかなように、部品点数が多くなる関係上、重量が大となるのみならず、組付け工数が多くなり、またコスト高となる問題点があった。
【特許文献1】特開2000−108940号公報
【特許文献2】実開平5−56743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、カウル部とインパネメンバとステアリング支持ブラケットとを連結する連結部材を設け、この連結部材は第1連結部と第2連結部とを備え、第1連結部はその前部がカウル部に接合され、後部がインパネメンバに接合されて、平面視で略ステアリングシャフト軸線に沿って架設され、第2連結部はその前部が第1連結部の前部に接合され、後部がステアリング支持ブラケットの平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されることにより、上記第1連結部でステアリングの上下振動を効率的に抑制し、さらに、第2連結部を設けることで車幅方向にトラスを形成して、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる自動車のステアリング支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による自動車のステアリング支持構造は、カウル部から後方に離間し、かつ左右側壁間に架設されたインパネメンバと、該インパネメンバ下部に設けられると共に、ステアリングコラムが取付けられるステアリング支持ブラケットとを備え、上記ステアリング支持ブラケットは、平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に拡幅された自動車のステアリング支持構造であって、上記カウル部と上記インパネメンバと上記ステアリング支持ブラケットとを連結する連結部材が設けられ、該連結部材は、第1連結部と第2連結部とを備え、上記第1連結部は、前部が上記カウル部に接合され、後部が上記インパネメンバに接合され、平面視で略上記ステアリングシャフト軸線に沿って架設されており、上記第2連結部は、前部が上記第1連結部の前部に接合され、後部が上記ステアリング支持ブラケットの平面視で上記ステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されたものである。
【0008】
上記構成によれば、カウル部とインパネメンバとに接合した第1連結部で、前後方向の剛性を高めて、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができ、さらに、平面視においてステアリングシャフト軸線に略沿う第1連結部に対して、上記第2連結部を設け、この第2連結部の後部を平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合したので、該第2連結部にて車幅方向にトラスを形成することができるので、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる。
要するに、必要最低限の構成部品および車体側部材への取付けにて、強度の向上を図って、ステアリングの上下振動および車幅方向振動を抑制することができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記ステアリング支持ブラケットは、上記インパネメンバから下方に延設され、該ステアリング支持ブラケットの先端部に上記第2連結部の後部が接合されたものである。
上記構成によれば、上下方向にトラスを拡大することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材の前後方向中間部に、上記インパネメンバの後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部が設けられたものである。
上記構成によれば、インパネメンバの後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部を設けたので、車両の前突によるカウル部の後退時には、連結部材が脆弱部にて変形するので、安全性を確保することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記第2連結部は、上記第1連結部の下方に配設され、上記第1連結部の下縁が上方に凹入して第1脆弱部が形成されると共に、上記第2連結部の一部に車幅方向に屈曲する第2脆弱部が形成されたものである。
上記構成によれば、車両の前突時に、第1脆弱部の形成により第1連結部は上方に変形し、また第2脆弱部の形成により第2連結部は車幅方向に変形し、何れの連結部も下方には変形しない。
この結果、トラス構造を狭めることなく上記脆弱部を形成することができ、車両前突時に連結部材が足元スペース側に変形することを抑制することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材は、上記第1連結部である上側ブラケットと、該上側ブラケットの前部と上記ステアリング支持ブラケットとの間に着脱可能に取付けた上記第2連結部である下側ブラケットと、から成り、上記第1脆弱部と上記下側ブラケット上縁との間に、ハーネスを車幅方向に挿通する開口が形成されたものである。
上記構成によれば、第1脆弱部と下側ブラケット上縁との間にハーネス挿通用の開口を形成したので、ハーネスの組付け性を確保することができる。
また、既述したように、車両の前突時に第1連結部は上方に変形し、第2連結部は車幅方向に変形するので、該前突時におけるハーネスの損傷を抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材は、上記インパネメンバおよび上記ステアリング支持ブラケットに接合される後側ブラケットと、該後側ブラケットと上記カウル部との間に着脱可能に架設される前側ブラケットとから成り、上記前側および後側のブラケットは、それぞれ側面視で対面方向に開口するU字状部を有し、各上下縁部が少なくとも一方のブラケットに設けられた前後方向に延びるスリットを介して締結されて、連結部材の変形許容部が形成され、各上縁部で上記第1連結部が形成され、各下縁部で上記第2連結部が形成され、上記各U字状部によってハーネスを車幅方向に挿通する開口が形成されると共に、該開口が上記ハーネスの外径よりも前後方向に長く形成されたものである。
【0014】
上記構成によれば、車両の前突時にカウル部が後退すると、スリットを介して締結された前後のブラケットのうち、前側ブラケットが後退してクラッシュスペースを確保する。
この場合、前側および後側の各ブラケットに対面方向に開口するU字状部の前後方向の寸法が小さくなるが、該開口はハーネスの外径よりも前後方向に長く形成されているので、前突時のハーネスの損傷を抑制することができる。
【0015】
また、ハーネスの組付け時においては、前側ブラケットと後側ブラケットとの開口にハーネスを挿通すればよいので、ハーネスの組付け性を確保することができる。
要するに、ハーネスの組付け性確保と、前突時のハーネス損傷の抑制との両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、カウル部とインパネメンバとステアリング支持ブラケットとを連結する連結部材を設け、この連結部材は第1連結部と第2連結部とを備え、第1連結部はその前部がカウル部に接合され、後部がインパネメンバに接合されて、平面視で略ステアリングシャフト軸線に沿って架設され、第2連結部はその前部が第1連結部の前部に接合され、後部がステアリング支持ブラケットの平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設したので、上記第1連結部でステアリングの上下振動を効率的に抑制し、さらに、第2連結部を設けることで車幅方向にトラスを形成して、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ステアリングの上下振動を効率的に抑制すると共に、車幅方向の振動をも抑制するという目的を、カウル部から後方に離間し、かつ左右側壁間に架設されたインパネメンバと、該インパネメンバ下部に設けられると共に、ステアリングコラムが取付けられるステアリング支持ブラケットとを備え、上記ステアリング支持ブラケットは、平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に拡幅された自動車のステアリング支持構造であって、上記カウル部と上記インパネメンバと上記ステアリング支持ブラケットとを連結する連結部材が設けられ、該連結部材は、第1連結部と第2連結部とを備え、上記第1連結部は、前部が上記カウル部に接合され、後部が上記インパネメンバに接合され、平面視で略上記ステアリングシャフト軸線に沿って架設されており、上記第2連結部は、前部が上記第1連結部の前部に接合され、後部が上記ステアリング支持ブラケットの平面視で上記ステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0018】
この発明の一実例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のステアリング支持構造を示し、図1はステアリング支持構造を示す側面図、図2は図1の要部拡大側面図、図3は要部の平面図、図4要部の分解斜視図である。
【0019】
図1、図2において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の上部車室側には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ4を接合固定して、このダッシュクロスメンバ4と上述のダッシュロアパネル3との間には、同方向に延びる閉断面5を形成し、車体剛性の向上を図るように構成している。
また、上述のダッシュロアパネル3上端およびダッシュクロスメンバ4上端には、車幅方向に延びるダッシュアッパパネル6を接合固定し、このダッシュアッパパネル6の後部上端6aには、同様に車幅方向に延びるカウルパネル7を接合固定して、これら両者、つまりカウルパネル7とダッシュアッパパネル6との両者によりカウル部8を構成している。
【0020】
図2、図3に示すように、上述のカウル部8から所定距離後方に離間し、かつ左右側壁としての左右のヒンジピラー(図示せず)間に架設された剛性部材としてのインパネメンバ9(詳しくは、インストルメントパネル支持メンバ)を設けている。
【0021】
図3に平面図で示すように、このインパネメンバ9は車幅方向に真っ直ぐに延びて、閉断面構造のヒンジピラーにおけるピラーインナパネルに接合固定されたもので、この実施例では左ハンドル車両を例示しているので、インパネメンバ9の車幅方向内側部に小径部9aを形成している。また、このインパネメンバ9は剛性丸パイプにて構成したものである。
このインパネメンバ9の下部には左右一対のステアリング支持ブラケット10,10を設け、前後一対の下側ブラケット11,11を用いて、ステアリングコラム12を上記ステアリング支持ブラケット10,10に取付けている。
【0022】
すなわち、図3に平面図で示すように、左右一対のステアリング支持ブラケット10,10は平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に拡幅配置されており、図1、図2に示すように、前後一対の下側ブラケット11,11の中央下部11aでステアリングコラム12を下側から抱持すると共に、下側ブラケット11の左右の上端部11b,11bを、左右一対のステアリング支持ブラケット10,10の底部にボルト、ナット(図示せず)にて締結することにより、ステアリング支持ブラケット10に対してステアリングコラム12を固定したものである。
【0023】
このステアリングコラム12の内部にはステアリングシャフト(図示せず)を回転自在に配設し、該ステアリングシャフトの車室側後端部には、ステアリングホイール13を連結する一方、ステアリングコラム12直前部において該ステアリングシャフトには、ジョイント14を介してインタミディエイトシャフト15を連結している。このインタミディエイトシャフト15はダッシュロアパネル3を貫通して前方に延びると共に、この前端部にステアリングギヤを連結し、ステアリングホイール13の操作時に、タイロッド等を介して前輪を操舵すべく構成している。
【0024】
ここで、上述の左右一対のステアリング支持ブラケット10,10は、図4に斜視図で示すように、左右同一構造であって、該ステアリング支持ブラケット10は、前後方向に延びる底片10aと、該底片10aの左右から上方に延びる一対の側片10b,10bと、インパネメンバ9の下部外周に対応して、これら側片10b,10bに形成された略半円形状の凹部10c,10cと、これら凹部10c,10cの後方において側片10b,10bの上端から外方に屈曲形成された接合片10d,10dと、車幅方向内側の側片10bの前端から車幅方向内方に屈曲形成された取付け片10eと、を一体形成したものである。
なお、この実施例では左右一対のステアリング支持ブラケット10,10における取付け片10e,10eのうち車両左側の取付け片10eを用いるので、車両右側の取付け片10eは省略することができる。
【0025】
インパネメンバ9の下部に取付けた左右一対のステアリング支持ブラケット10,10を補強するために、インパネメンバ9の後側上部と、左右一対のステアリング支持ブラケット10,10における接合片10dとを連結固定する補強ブラケット16を設け、この補強ブラケット16の前部をインパネメンバ9の後側上部に固定し、補強ブラケット16の後部を各接合片10d…にスポット溶接等により固定している。
【0026】
しかも、図1、図2に示すように、上述のカウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設けている。
この連結部材Aは第1連結部としての上側ブラケット17と、第2連結部としての下側ブラケット18とを備えている。
【0027】
第1連結部である上側ブラケット17は、その前部17aが、方形枠状のブラケット19(いわゆるスペーサ・ブラケット)、ウエルドボルト20、ナット21を用いてカウル部8のダッシュアッパパネル6に接合固定され、その後部17bが上述のインパネメンバ9の前側上部に接合されており、図3に示すように、該上側ブラケット17は、平面視でステアリングシャフト軸線aに略沿うように前後方向に架設されたものである。
この上側ブラケット17は、図4に斜視図で示すように、所定の剛性を確保するために、その長手方向全長にわたって門形断面形状に構成されており、該上側ブラケット17のインパネメンバ9と対応する後端部には、該インパネメンバ9の外周形状に符合する円弧部17cが形成されている。
【0028】
連結部材Aの前後方向中間部には、インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部が設けられるが、第1連結部としての上側ブラケット17には、図2、図4に示すように、その下縁17dを上方に凹入して第1脆弱部22を形成している。なお、この上側ブラケット17の上辺部17eには軽量化用の複数の開口部23,23が形成される一方、該上側ブラケット17の円弧部17cの前方部にはハーネス取付け片17fが一体に折曲げ形成されている。
【0029】
図2に示すように、第2連結部としての下側ブラケット18は、上側ブラケット17の下方に配設されるもので、この下側ブラケット18は図2、図4に示すように、その前部18aがウエルドボルト24、ナット25を用いて、上側ブラケット17の前部に着脱可能に取付けられ、その後部18bがウエルドボルト26、ナット27を用いて、ステアリング支持ブラケット10の平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されている(図3参照)。
【0030】
この実施例では、図3に平面図で示すように、下側ブラケット18の前後方向中間部に車幅方向外方へ屈曲する第2脆弱部28(インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部28)を形成し、この下側ブラケット18の後部18bを、左右一対のステアリング支持ブラケット10,10のうちの左側のステアリング支持ブラケット10における取付け片10eに固定している。
【0031】
ここで、該ステアリング支持ブラケット10は、インパネメンバ9から下方に延設されており、図2、図3に示すように、ステアリング支持ブラケット10の前端部(取付け片10e参照)に下側ブラケット18の後部18bが着脱可能に取付けられたものである。
つまり、第2連結部としての下側ブラケット18は、上側ブラケット17の前部17aとステアリング支持ブラケット10との間に着脱可能に取付けられたものである。
【0032】
また、図4に斜視図で示すように、この下側ブラケット18も上側ブラケット17と同様に、所定の剛性を確保するために、その長手方向全長にわたって門形断面形状に構成されている。
そして、図2に示すように、上側ブラケット17と下側ブラケット18とから成る連結部材Aにおいて、第1脆弱部22と下側ブラケット18の上縁18cとの間には、ハーネス29を車幅方向に挿通する開口30が形成されている。
このハーネス29は、ハーネス支持バンド31を用いて上側ブラケット17のハーネス取付け片17fに支持されるものである。
【0033】
上述の各ウエルドボルト20,24,26のうち、ウエルドボルト20は上側ブラケット17の前部17aに植設されて、方形枠状のブラケット19およびダッシュアッパパネル6を貫通してカウル部8内に突出しており、このウエルドボルト20に対して車外側からナット21を締付けるように構成している。
ウエルドボルト24は、上記ウエルドボルト20よりも下側において、上側ブラケット17の前部17aに植設されて、前方に向けて突出している。
【0034】
そして、これらの各ウエルドボルト24,26に対して車室2の内側からナット25,27を締付けるが、これらの各ナット25,27は車両前方から車両後方に向けて締付けられる。このように、ナット25,27を前方から後方に向けて締付ける。特に、ダッシュクロスメンバ4と下側ブラケット18との間隔が狭小であっても、ボルトではなく、ナット25を用いて固定するので、該ナット25を容易に締付け固定することができる。
【0035】
このようにして上述のカウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設けることで、側面視においては図2に示すウエルドボルト20のネック部と、上側ブラケット17の後部17bとウエルドボルト26のネック部とを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる側面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができる。
【0036】
また、平面視においても図3に示すウエルドボルト20のネック部と、上側ブラケット17の後部17bと、ウエルドボルト26のネック部とを三角形状に結ぶ車幅方向のトラス構造(いわゆる平面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる。
さらに、上述の側面トラスおよび平面トラスにより、必要最低限の構成(部品点数)およびカウル部への取付けにてステアリング支持強度の向上を図ることができる。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0037】
このように、図1〜図4で示した実施例1の自動車のステアリング支持構造(請求項1〜5に相当)は、カウル部8から後方に離間し、かつ左右側壁間に架設されたインパネメンバ9と、該インパネメンバ9下部に設けられると共に、ステアリングコラム12が取付けられるステアリング支持ブラケット10とを備え、上記ステアリング支持ブラケット10は、平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に拡幅された自動車のステアリング支持構造であって、上記カウル部8と上記インパネメンバ9と上記ステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aが設けられ、該連結部材Aは、第1連結部(上側ブラケット17参照)と第2連結部(下側ブラケット18参照)とを備え、上記第1連結部(上側ブラケット17)は、前部17aが上記カウル部8に接合され、後部17bが上記インパネメンバ9に接合され、平面視で略上記ステアリングシャフト軸線aに沿って架設されており、上記第2連結部(下側ブラケット18)は、前部18aが上記第1連結部(上側ブラケット17)の前部17aに接合され、後部18bが上記ステアリング支持ブラケット10の平面視で上記ステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位(取付け片10e参照)に接合されるよう前後方向に架設されたものである(図2、図3参照)。
【0038】
この構成によれば、カウル部8とインパネメンバ9とに接合した第1連結部(上側ブラケット17)で、前後方向の剛性を高めて、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができ、さらに、平面視においてステアリングシャフト軸線aに略沿う第1連結部(上側ブラケット17)に対して、上記第2連結部(下側ブラケット18)を設け、この第2連結部(下側ブラケット18)の後部18bを平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に接合したので、該第2連結部(下側ブラケット18)にて車幅方向にトラス(truss)を形成することができるので、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる。
要するに、必要最低限の構成部品および車体側部材への取付けにて、強度の向上を図って、ステアリングの上下振動および車幅方向振動を抑制することができる。
【0039】
また、上記ステアリング支持ブラケット10は、上記インパネメンバ9から下方に延設され、該ステアリング支持ブラケット10の先端部に上記第2連結部(下側ブラケット18)の後部18bが接合されたものである(図2参照)。
この構成によれば、上下方向にトラスを拡大することができる。
【0040】
さらに、上記連結部材Aの前後方向中間部に、上記インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部(第1脆弱部22、第2脆弱部28参照)が設けられたものである(図2、図3参照)。
この構成によれば、インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部(各脆弱部22,28参照)を設けたので、車両の前突によるカウル部8の後退時には、連結部材Aが脆弱部22,28にて変形して、クラッシュスペースを確保するので、安全性を確保することができる。
【0041】
加えて、上記第2連結部(下側ブラケット18)は、上記第1連結部(上側ブラケット17)の下方に配設され、上記第1連結部(上側ブラケット17)の下縁17dが上方に凹入して第1脆弱部22が形成されると共に、上記第2連結部(下側ブラケット18)の一部に車幅方向に屈曲する第2脆弱部28が形成されたものである(図2、図3参照)。
【0042】
この構成によれば、車両の前突時に、第1脆弱部22の形成により第1連結部(上側ブラケット17)は、図1に仮想線αで示すように、上方に変形し、また第2脆弱部28の形成により第2連結部(下側ブラケット18)は図3に仮想線βで示すように、車幅方向に変形し、何れの連結部(各ブラケット17,18参照)も下方には変形しない。
この結果、トラス構造を狭めることなく上記脆弱部22,28を形成することができ、車両前突時に連結部材Aが足元スペース側に変形することを抑制することができる。
【0043】
また、上記連結部材Aは、上記第1連結部である上側ブラケット17と、該上側ブラケット17の前部17aと上記ステアリング支持ブラケット10との間に着脱可能に取付けた上記第2連結部である下側ブラケット18と、から成り、上記第1脆弱部22と上記下側ブラケット18の上縁18cとの間に、ハーネス29を車幅方向に挿通する開口30が形成されたものである(図2参照)。
この構成によれば、第1脆弱部22と下側ブラケット18の上縁18cとの間にハーネス挿通用の開口30を形成したので、ハーネスの組付け性を確保することができる。
【0044】
また、既述したように、車両の前突時に第1連結部(上側ブラケット17)は上方に変形し、第2連結部(下側ブラケット18)は車幅方向に変形するので、該前突時におけるハーネス29の損傷を抑制することができる。
さらに、上述の下側ブラケット18は、カウル部8に対して着脱するものではなく、上側ブラケット17とステアリング支持ブラケット10に対して着脱する構造となっているので、車室2内部の下側から着脱でき、ハーネス29のメンテナンスを容易に行なうことができる。また、該ハーネス29は図2に示す側面トラス形状を有効利用して配設することができる。
【0045】
加えて、下側ブラケット18の取付け時には、合計2本のウエルドボルト24,26を有効利用して、該下側ブラケット18を仮止めし、その後、ナット25,27を締付けることができ、この仮止めにより、下側ブラケット18取付け時の作業性向上を図ることができる。
【実施例2】
【0046】
図5〜図8は自動車のステアリング支持構造の他の実施例を示し、図5はステアリング支持構造を示す側面図、図6は図5の要部拡大側面図、図7は要部の平面図、図8は要部の分解斜視図である。
この実施例2では、先の実施例1の上側ブラケット17に対して上下方向の幅が大きい上側ブラケット40と、この上側ブラケット40の下方に配設される下側ブラケット41とで連結部材Aを構成している。
【0047】
図8に斜視図で示すように、上述の上側ブラケット40は略前後方向に延びる主板40aと、この主板40aの上部、前部および下部に一体に折曲げ形成された上片40b、前片40c、下片40dと、主板40aの後端に形成され、インパネメンバ9の前側上部の外周に対応する円弧部40eとを備えた断面コの字状に形成されている。
【0048】
また、上述の前片40cには、ウエルドボルト20を取付けてカウル部8に接合するための接合片40fを一体に突出形成し、下片40dの前側には下側ブラケット41を取付けるための取付け片40gを一体に突出形成し、下片40dの後側にはハーネス29を支持するハーネス取付け片40hを一体に突出形成し、上片40bの後端にはインパネメンバ9に接合する接合片40jを一体に屈曲形成している。
【0049】
さらに、上側ブラケット40の前後方向中間部には、図8に示すように、その下縁が上方に凹入した前後の第1脆弱部42,42を形成すると共に、図7に平面図で示すように、該上側ブラケット40の前後方向中間部を車幅方向に屈曲させて前後の屈曲部43,43を形成し、車両前突時に上下方向および車幅方向の双方に変形して、クラッシュスペースを確保すべく構成している。
この上側ブラケット40も、図7に平面図で示すように、前部としての接合片40fが方形枠状のブラケット19およびダッシュアッパパネル6を介してカウル部8に接合されており、後部としての接合片40jが接合点Dにてインパネメンバ9に接合されており、この上側ブラケット40は、平面視においてステアリングシャフト軸線aに略沿うように車両前後方向に架設されたものである。
【0050】
図8に斜視図で示すように、上述の下側ブラケット41は、略前後方向に延びる主板41aと、この主板41aの上部に一体に折曲げ形成された上片41bとを備えた断面逆L字状に形成されており、上片41bの前部には、上側ブラケット40に連結する連結片41cを一体に突出形成し、上片41bの後部には、車両左側のステアリング支持ブラケット10に連結する連結片41dを一体に突出形成している。
【0051】
図6、図7に示すように、下側ブラケット41は、前部としての連結片41cがウエルドボルト44、ナット45を用いて上側ブラケット40の前部(取付け片40g参照)に接合され、後部としての連結片41dが左側のステアリング支持ブラケット10の平面視(図7参照)で上記ステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に、ウエルドボルト46、ナット47を用いて接合されるように前後方向に架設されている。
上述のステアリング支持ブラケット10は、この実施例においては、図8に斜視図で示すように、凹部10cの前側において、車幅方向内側の側片10b上端に上片10fを一体に折曲げ形成すると共に、この上片10fの前端には、下側ブラケット41を取付ける取付け片10gを一体に突出形成している。
【0052】
図7に示すように、この実施例では車両左側のステアリング支持ブラケット10の取付け片10gに対して、下側ブラケット41の連結片41dを取付けるので、車両右側のステアリング支持ブラケット10の取付け片10gは省略することができる。
【0053】
この実施例においても、図5、図6に示すように、ステアリング支持ブラケット10は、インパネメンバ9から下方に延設され、このステアリング支持ブラケット10(但し、車両左側のステアリング支持ブラケット10)の前端部としての取付け片10gには、上述のウエルドボルト46、ナット47を用いて、下側ブラケット41の後部(連結片41d参照)が接合されている。
上述のウエルドボルト46、ナット47を用いて、下側ブラケット41の後部(連結片41d参照)が接合されている。
【0054】
上述の下側ブラケット41の前後方向中間には、図7、図8に示すように車幅方向に屈曲する第2脆弱部48が形成されている。この第2脆弱部48および上述の第1脆弱部42はインパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力に設定されており、車両前突時には、上側ブラケット40は図5に仮想線αで示すように上方に変形すると共に、図7に仮想線βで示すように車幅方向にも変形するものである。また、下側ブラケット41は図7に仮想線βで示すように車幅方向に変形するものである。
【0055】
ここで、図6に示すように、ウエルドボルト44は上側ブラケット40の取付け片40gに下方に向けて植設され、ウエルドボルト46は左側のステアリング支持ブラケット10の取付け片10gに下方に向けて植設されており、これらの各取付け片40g,10gに下側ブラケット41を下方から当接した後に、それぞれのウエルドボルト44,46に下方からナット45,47を締付けることで、下側ブラケット41を着脱可能に取付けるように構成している。
上述の各要素40,10に対して、ナット45,47および下側ブラケット41を下方から組付けるので、その取付け取外しが容易となり、ハーネス29のメンテナンスを容易に行なうことができる。
【0056】
このように、上述のカウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設けたので、側面視においては図6に示すウエルドボルト20のネック部と、上側ブラケット40のステアリング支持ブラケット10に対する接合点Dと、ウエルドボルト46のネック部とを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる側面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができる。
【0057】
また、平面視においては図7に示すウエルドボルト20のネック部と、接合点Dと、ウエルドボルト46のネック部とを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる平面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの車幅方向の振動を効率的に抑制することができる。
さらに、上述の側面トラスおよび平面トラスにより、必要最低限の構成にてステアリング支持強度の向上を図ることができる。特に、この実施例においては、上側ブラケット40による上下方向の振動抑制を重視したものであって、上下方向の振動は主として上側ブラケット40で抑制し、車幅方向の振動は上記平面トラス構造により、上下の両ブラケット40,41が共に作用することにより抑制するものである。
【0058】
このように、図5〜図8で示した実施例2の自動車のステアリング支持構造(請求項1〜5に相当)は、カウル部8から後方に離間し、かつ左右側壁間に架設されたインパネメンバ9と、該インパネメンバ9下部に設けられると共に、ステアリングコラム12が取付けられるステアリング支持ブラケット10とを備え、上記ステアリング支持ブラケット10は、平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に拡幅された自動車のステアリング支持構造であって、上記カウル部8と上記インパネメンバ9と上記ステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aが設けられ、該連結部材Aは、第1連結部(上側ブラケット40参照)と第2連結部(下側ブラケット41参照)とを備え、上記第1連結部(上側ブラケット40)は、前部が上記カウル部8に接合され、後部が上記インパネメンバ9に接合され、平面視で略上記ステアリングシャフト軸線aに沿って架設されており、上記第2連結部(下側ブラケット41)は、前部が上記第1連結部(上側ブラケット40)の前部に接合され、後部が上記ステアリング支持ブラケット10の平面視で上記ステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されたものである(図6、図7参照)。
【0059】
この構成によれば、カウル部8とインパネメンバ9とに接合した第1連結部(上側ブラケット40)で、前後方向の剛性を高めて、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができ、さらに、平面視においてステアリングシャフト軸線aに略沿う第1連結部(上側ブラケット40)に対して、上記第2連結部(下側ブラケット41)を設け、この第2連結部(下側ブラケット41)の後部を平面視でステアリングシャフト軸線aから車幅方向に離間した部位に接合したので、該第2連結部(下側ブラケット41)にて車幅方向にトラスを形成することができるので、ステアリングの車幅方向の振動をも抑制することができる。
要するに、必要最低限の構成部品にて、強度の向上を図って、ステアリングの上下振動および車幅方向振動を抑制することができる。
【0060】
また、上記ステアリング支持ブラケット10は、上記インパネメンバ9から下方に延設され、該ステアリング支持ブラケット10の前端部に上記第2連結部(下側ブラケット41)の後部が接合されたものである(図6参照)。
この構成によれば、上下方向にトラス(図2に示す側面トラス参照)を拡大することができる。
【0061】
さらに、上記連結部材Aの前後方向中間部に、上記インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部(第1脆弱部42、第2脆弱部48参照)が設けられたものである(図6、図7参照)。
この構成によれば、インパネメンバ9の後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部42,48を設けたので、車両の前突によるカウル部8の後退時には、連結部材Aが脆弱部42,48にて変形するので、安全性を確保することができる。
【0062】
加えて、上記第2連結部(下側ブラケット41)は、上記第1連結部(上側ブラケット40)の下方に配設され、上記第1連結部(上側ブラケット40)の下縁が上方に凹入して第1脆弱部42が形成されると共に、上記第2連結部(下側ブラケット41)の一部に車幅方向に屈曲する第2脆弱部48が形成されたものである(図6、図7参照)。
【0063】
この構成によれば、車両の前突時に、第1脆弱部42の形成により第1連結部(上側ブラケット40)は上方に変形し、また第2脆弱部48の形成により第2連結部(下側ブラケット41)は車幅方向に変形し、何れの連結部も下方には変形しない。
この結果、トラス構造を狭めることなく上記脆弱部42,48を形成することができ、車両前突時に連結部材Aが足元スペース側に変形することを抑制することができる。
【0064】
さらに、上記連結部材Aは、上記第1連結部である上側ブラケット40と、該上側ブラケット40の前部と上記ステアリング支持ブラケット10との間に着脱可能に取付けた上記第2連結部である下側ブラケット41と、から成り、上記第1脆弱部42と上記下側ブラケット41上縁との間に、ハーネス29を車幅方向に挿通する開口30が形成されたものである(図6参照)。
この構成によれば、第1脆弱部42と下側ブラケット41上縁との間にハーネス挿通用の開口30を形成したので、ハーネスの組付け性を確保することができる。
【0065】
また、既述したように、車両の前突時に第1連結部(上側ブラケット40)は上方および車幅方向に変形し、第2連結部(下側ブラケット41)は車幅方向に変形するので、該前突時におけるハーネス29の損傷を抑制することができる。
なお、図5〜図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【実施例3】
【0066】
図9〜図12は自動車のステアリング支持構造のさらに他の実施例を示し、図9はステアリング支持構造を示す側面図、図10は図9の要部拡大側面図、図11は要部の平面図、図12は要部の分解斜視図である。
【0067】
図9〜図12に示すように、この実施例では、上記連結部材Aが、インパネメンバ9および車両右側のステアリング支持ブラケット10に接合される後側ブラケット50と、この後側ブラケット50とカウル部8との間に着脱可能に架設される前側ブラケット51とから構成されている。
上述の後側ブラケット50および前側ブラケット51は、図10、図12に示すように側面視で対面方向に開口するU字状部50U,51Uを有している。
【0068】
つまり、後側ブラケット50のU字状部50Uは車両前方側が開口しており、前側ブラケット51のU字状部51Uは車両後方側が開口している。また、上述の後側ブラケット50、前側ブラケット51はそれぞれコ字状断面を有するように形成されている。
【0069】
すなわち、図12に斜視図で示すように、後側ブラケット50はU字状部50Uの上下両部に、上片50aと、該上片と同じ方向に延びる下片50bを一体に折曲げ形成すると共に、U字状部50Uの後端部には、インパネメンバ9の前側上部の外周に対応した円弧部50cを形成し、U字状部50Uの内奥部にはハーネス取付け片50dを一体に折曲げ形成している。
また、この後側ブラケット50の上下両片50a,50bには斜め後方に延びるスリット52,52を形成している。詳しくは、該スリット52はそのスリット内端から車幅方向外方かつ後方に向けて斜め方向に延び、スリット外端が開放するものである。
【0070】
一方、前側ブラケット51は、図12に斜視図で示すように、U字状部51Uの上下両部に上片51aおよび下片51bを一体に折曲げ形成すると共に、前側ブラケット51それ自体の前部を車幅方向外方に折曲げて、ウエルドボルト20の取付け部51cを一体形成している。
また、前側ブラケット51の上片51a、下片51bにおいて上述のスリット52の内端部と対応する位置には、ウエルドボルト53,53を上下方向に向けて植設している。
【0071】
そして、前側ブラケット51と後側ブラケット50とを、上記スリット52内に配置するウエルドボルト53と、このウエルドボルト53に締付けるナット54とを用いて締結し、車両前突時には、ウエルドボルト53がスリット52に沿って斜め後方に移動した後に、スリット52から外れて、前後両ブラケット51,50の締結が解除される連結部材Aの変形許容部B(図11参照)を形成している。
さらに、前側ブラケット51および後側ブラケット50の各上縁部で第1連結部X(図12参照)を構成し、前側ブラケット51および後側ブラケット50の各下縁部で第2連結部Y(図12参照)を構成している。この実施例では、前後の各ブラケット51,50の上半部で第1連結部Xを形成し、前後の各ブラケット51,50の下半部で第2連結部Yを形成している。
【0072】
ここで、上述の各U字状部50U,51Uによってハーネス29を車幅方向に挿通する開口30を形成しており、この開口30はハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成している。
【0073】
図9、図10から明らかなように、該開口30はハーネス29の外径よりも2倍以上前後方向に長くなるように形成されている。
しかも、図9、図10から明らかなように、該開口30はハーネス29の外径よりも2倍以上前後方向に長くなるように形成されている。
【0074】
しかも、図10、図11に示すように、第1連結部Xはその前部(取付け部51c参照)が方形枠状のブラケット19およびウエルドボルト20を介してカウル部8に接合され、その後部(上片50a参照)が接合点Eによりインパネメンバ9に接合されていて、図11に平面図で示すように、平面視においてステアリングシャフト軸線aに略沿って架設されたものである。
また、図10〜図12に示すように、第2連結部Yは、その前部が第1連結部Xの前部に接合(一体形成)され、後部(U字状部50Uの後部参照)がステアリング支持ブラケット10の平面視で上述のステアリングシャフト軸線aから車幅方向内方に離間した部位に接合点Gにて接合されるよう前後方向に向けて架設されたものである。
【0075】
詳しくは、後側ブラケット50のU字状部50Uにおける下側後部と、車両右側のステアリング支持ブラケット10の車幅方向左側の側片10bとを、スポット溶接することで上記接合点Gを形成している。
このように、上述のカウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設けたので、側面視においては図10に示すように、ウエルドボルト20のネック部と、接合点Eと、接合点Gとを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる側面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができる。
【0076】
また、平面視においては、図11に示すように、ウエルドボルト20のネック部と、接合点Eと、接合点Gとを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる平面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの車幅方向の振動を効率的に抑制することができる。
さらに、上述の側面トラスおよび平面トラスにより、必要最低限の構成にてステアリング支持強度の向上を図ることができる。
【0077】
このように、図9〜図12で示した実施例(請求項1、6に相当)においては、上記連結部材Aは、上記インパネメンバ9および上記ステアリング支持ブラケット10に接合される後側ブラケット50と、該後側ブラケット50と上記カウル部8との間に着脱可能に架設される前側ブラケット51とから成り、上記前側および後側のブラケット51,50は、それぞれ側面視で対面方向に開口するU字状部51U,50Uを有し、各上下縁部が少なくとも一方のブラケット50に設けられた前後方向に延びるスリット52を介して締結されて、連結部材Aの変形許容部Bが形成され、各上縁部で上記第1連結部Xが形成され、各下縁部で上記第2連結部Yが形成され、上記各U字状部50U,51Uによってハーネス29を車幅方向に挿通する開口30が形成されると共に、該開口30が上記ハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成されたものである(図9〜図12参照)。
【0078】
この構成によれば、車両の前突時にカウル部8が後退すると、スリット52を介して締結された前後のブラケット51,50のうち、前側ブラケット51が後退してクラッシュスペースを確保する。
この場合、前側および後側の各ブラケット51,50に対面方向に開口するU字状部51U,50Uの前後方向の寸法が小さくなるが、該開口30はハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成されているので、前突時のハーネス29の損傷を抑制することができる。
【0079】
また、ハーネス29の組付け時においては、前側ブラケット51と後側ブラケット50との開口にハーネス29を挿通すればよいので、ハーネス29の組付け性を確保することができる。
要するに、ハーネス29の組付け性確保と、前突時のハーネス損傷の抑制との両立を図ることができる。
【0080】
なお、この実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図9〜図12において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例4】
【0081】
図13〜図16は自動車のステアリング支持構造のさらに他の実施例を示し、図13はステアリング支持構造を示す側面図、図14は図13の要部拡大側面図、図15は要部の平面図、図16は要部の分解斜視図である。
【0082】
図13〜図16に示すように、この実施例では、上記連結部材Aが、インパネメンバ9および車両左側のステアリング支持ブラケット10に接合される後側ブラケット60と、この後側ブラケット60とカウル部8との間に着脱可能に架設される前側ブラケット61とから構成されている。
上述の後側ブラケット60および前側ブラケット61は、図14、図16に示すように側面視で対面方向に開口するU字状部60U,61Uを有している。
【0083】
つまり、後側ブラケット60のU字状部60Uは車両前方側が開口しており、前側ブラケット61のU字状部61Uは車両後方側が開口している。また、上述の後側ブラケット60、前側ブラケット61はそれぞれクランク形の断面、いわゆるZ字状断面を有するように形成されている。
すなわち、図16に斜視図で示すように、後側ブラケット60はU字状部60Uの上下両部に車幅方向内方に延びる上片60aと車幅方向外方に延びる下片60bを一体に折曲げ形成すると共に、U字状部60Uの後端部には、インパネメンバ9の前側上部の外周に対応した円弧部60cを形成し、U字状部60Uの内奥部にはハーネス取付け片60dを一体に折曲げ形成している。
【0084】
一方、前側ブラケット61は、図16に斜視図で示すように、U字状部61Uの上下両部に車幅方向内方に延びる上片61aと車幅方向外方に延びる下片61bを一体に折曲げ形成すると共に、前側ブラケット61それ自体の前部を車幅方向内方に折曲げて、ウエルドボルト20の取付け部61cを一体形成している。
【0085】
また、この前側ブラケット61の上下両片61a,61bには斜め前方に延びるスリット62,62を形成している。詳しくは、該スリット62はそのスリット内端から車幅方向外方かつ前方に向けて斜め方向に延び、スリット外端を開放したものである。
さらに、後側ブラケット60の上片60a、下片60bにおいて上述のスリット62の内端部と対応する位置には、ウエルドボルト63,63を上下方向に向けて植設している。
【0086】
そして、前側ブラケット61と後側ブラケット60とを、上記スリット62内に配置するウエルドボルト63と、このウエルドボルト63に締付けるナット64とを用いて締結し、車両前突時には、前側ブラケット61が後退するので、ウエルドボルト63がスリット62に沿って斜め前方に相対移動した後に、スリット62から外れて、前後両ブラケット61,60の締結が解除される連結部材Aの変形許容部C(図15参照)を形成している。
【0087】
さらに、前側ブラケット61および後側ブラケット60の各上縁部で第1連結部X(図16参照)を構成し、前側ブラケット61および後側ブラケット60の各下縁部で第2連結部Y(図16参照)を構成している。この実施例では、前後の各ブラケット61,60の上半部で第1連結部Xを形成し、前後の各ブラケット61,60の下半部で第2連結部Yを形成している。
ここで、上述の各U字状部60U,61Uによってハーネス29を車幅方向に挿通する開口30を形成しており、この開口30はハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成している。
【0088】
図13、図14から明らかなように、該開口30はハーネス29の外径よりも2倍以上前後方向に長くなるように形成されている。
しかも、図14、図15に示すように、第1連結部Xはその前部(取付け部61c参照)が方形枠状のブラケット19およびウエルドボルト20を介してカウル部8に接合され、その後部(上片60a参照)が接合点Nによりインパネメンバ9に接合されていて、図15に平面図で示すように、平面視においてステアリングシャフト軸線aに略沿って架設されたものである。
【0089】
また、図14〜図16に示すように、第2連結部Yは、その前部が第1連結部Xの前部に接合(一体形成)され、後部(U字状部60Uの後部および下片60bの後部参照)がステアリング支持ブラケット10の平面視で上述のステアリングシャフト軸線aから車幅方向外方に離間した部位に接合点L,Mにて接合されるよう前後方向に向けて架設されたものである。
【0090】
詳しくは、後側ブラケット60のU字状部60Uにおける下側後部と、車両左側のステアリング支持ブラケット10の車幅方向左側の側片10bとを、スポット溶接することで上記接合点Lを形成し、後側ブラケット60の下片60bの後部と、車両左側のステアリング支持ブラケット10の底片10aの前側とを、スポット溶接することで上記接合点Mを形成している。
【0091】
このように、上述のカウル部8とインパネメンバ9とステアリング支持ブラケット10とを連結する連結部材Aを設けたので、側面視においては図14に示すように、ウエルドボルト20のネック部と、接合点L,Mと、接合点Nとを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる側面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの上下振動を効率的に抑制することができる。
【0092】
また、平面視においては、図15に示すように、ウエルドボルト20のネック部と、接合点Mと、接合点Nとを三角形状に結ぶトラス構造(いわゆる平面トラス)が形成され、これにより、ステアリングの車幅方向の振動を効率的に抑制することができる。この実施例4においては、前後の各ブラケット60,61をクランク状の断面形状と成したので、実施例3の平面トラスに対して大きい平面トラスを形成することができる。
さらに、上述の側面トラスおよび平面トラスにより、必要最低限の構成にてステアリング支持強度の向上を図ることができる。
【0093】
このように、図13〜図16で示した実施例(請求項1、6に相当)においては、上記連結部材Aは、上記インパネメンバ9および上記ステアリング支持ブラケット10に接合される後側ブラケット60と、該後側ブラケット60と上記カウル部8との間に着脱可能に架設される前側ブラケット61とから成り、上記前側および後側のブラケット61,60は、それぞれ側面視で対面方向に開口するU字状部61U,60Uを有し、各上下縁部が少なくとも一方のブラケット61に設けられた前後方向に延びるスリット62を介して締結されて、連結部材Aの変形許容部Cが形成され、各上縁部で上記第1連結部Xが形成され、各下縁部で上記第2連結部Yが形成され、上記各U字状部60U,61Uによってハーネス29を車幅方向に挿通する開口30が形成されると共に、該開口30が上記ハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成されたものである。
【0094】
この構成によれば、車両の前突時にカウル部8が後退すると、スリット62を介して締結された前後のブラケット60,61のうち、前側ブラケット61が後退してクラッシュスペースを確保する。
この場合、前側および後側の各ブラケット61,60に対面方向に開口するU字状部61U,60Uの前後方向の寸法が小さくなるが、該開口30はハーネス29の外径よりも前後方向に長く形成されているので、前突時のハーネス29の損傷を抑制することができる。
【0095】
また、ハーネス29の組付け時においては、前側ブラケット61と後側ブラケット60との開口30にハーネス29を挿通すればよいので、ハーネス29の組付け性を確保することができる。
要するに、ハーネス29の組付け性確保と、前突時のハーネス損傷の抑制との両立を図ることができる。
【0096】
なお、この実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図13〜図16において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0097】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の第1連結部は、実施例の上側ブラケット17,40に対応し、
以下同様に、
第2連結部は、下側ブラケット18,41に対応し、
脆弱部は、第1脆弱部22,42、第2脆弱部28,48に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては左ハンドル車両のステアリング支持構造を例示したが、これは右ハンドル車両のステアリング支持構造に適用してもよい。
また、ウエルドボルト20をウエルドナットに、ナット21をボルトにしてもよく、この場合、インパネメンバを車体に取付ける際の前方挿入方向の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の自動車のステアリング支持構造を示す側面図
【図2】図1の要部拡大側面図
【図3】ステアリング支持構造を示す平面図
【図4】要部の分解斜視図
【図5】自動車のステアリング支持構造の他の実施例を示す側面図
【図6】図5の要部拡大側面図
【図7】ステアリング支持構造を示す平面図
【図8】要部の分解斜視図
【図9】自動車のステアリング支持構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図10】図9の要部拡大側面図
【図11】ステアリング支持構造を示す平面図
【図12】要部の分解斜視図
【図13】自動車のステアリング支持構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図14】図13の要部拡大側面図
【図15】ステアリング支持構造を示す平面図
【図16】要部の分解斜視図
【符号の説明】
【0099】
8…カウル部
9…インパネメンバ
10…ステアリング支持ブラケット
12…ステアリングコラム
17,40…上側ブラケット(第1連結部)
18,41…下側ブラケット(第2連結部)
22,22…第1脆弱部(脆弱部)
28,48…第2脆弱部(脆弱部)
29…ハーネス
30…開口
50,60…後側ブラケット
51,61…前側ブラケット
52,62…スリット
50U,51U,60U,61U…U字状部
a…ステアリングシャフト軸線
A…連結部材
B,C…変形許容部
X…第1連結部
Y…第2連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウル部から後方に離間し、かつ左右側壁間に架設されたインパネメンバと、
該インパネメンバ下部に設けられると共に、ステアリングコラムが取付けられるステアリング支持ブラケットとを備え、
上記ステアリング支持ブラケットは、平面視でステアリングシャフト軸線から車幅方向に拡幅された
自動車のステアリング支持構造であって、
上記カウル部と上記インパネメンバと上記ステアリング支持ブラケットとを連結する連結部材が設けられ、
該連結部材は、第1連結部と第2連結部とを備え、
上記第1連結部は、前部が上記カウル部に接合され、後部が上記インパネメンバに接合され、平面視で略上記ステアリングシャフト軸線に沿って架設されており、
上記第2連結部は、前部が上記第1連結部の前部に接合され、後部が上記ステアリング支持ブラケットの平面視で上記ステアリングシャフト軸線から車幅方向に離間した部位に接合されるよう前後方向に架設されたことを特徴とする
自動車のステアリング支持構造。
【請求項2】
上記ステアリング支持ブラケットは、上記インパネメンバから下方に延設され、
該ステアリング支持ブラケットの先端部に上記第2連結部の後部が接合された
請求項1記載の自動車のステアリング支持構造。
【請求項3】
上記連結部材の前後方向中間部に、上記インパネメンバの後方変形耐力よりも低い耐力の脆弱部が設けられた
請求項1または2記載の自動車のステアリング支持構造。
【請求項4】
上記第2連結部は、上記第1連結部の下方に配設され、
上記第1連結部の下縁が上方に凹入して第1脆弱部が形成されると共に、
上記第2連結部の一部に車幅方向に屈曲する第2脆弱部が形成された
請求項3記載の自動車のステアリング支持構造。
【請求項5】
上記連結部材は、上記第1連結部である上側ブラケットと、
該上側ブラケットの前部と上記ステアリング支持ブラケットとの間に着脱可能に取付けた上記第2連結部である下側ブラケットと、から成り、
上記第1脆弱部と上記下側ブラケット上縁との間に、ハーネスを車幅方向に挿通する開口が形成された
請求項4記載の自動車のステアリング支持構造。
【請求項6】
上記連結部材は、上記インパネメンバおよび上記ステアリング支持ブラケットに接合される後側ブラケットと、
該後側ブラケットと上記カウル部との間に着脱可能に架設される前側ブラケットとから成り、
上記前側および後側のブラケットは、それぞれ側面視で対面方向に開口するU字状部を有し、
各上下縁部が少なくとも一方のブラケットに設けられた前後方向に延びるスリットを介して締結されて、
連結部材の変形許容部が形成され、
各上縁部で上記第1連結部が形成され、
各下縁部で上記第2連結部が形成され、
上記各U字状部によってハーネスを車幅方向に挿通する開口が形成されると共に、
該開口が上記ハーネスの外径よりも前後方向に長く形成された
請求項1記載の自動車のステアリング支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−105585(P2010−105585A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281303(P2008−281303)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000201799)双葉工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】