自動車のフェンダーエプロンプロテクタ
【課題】ボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して、フェンダーエプロンプロテクタが潰れ残りなく下方移動して、ボンネットフードにおける傷害値が低減されるようにした自動車のフェンダーエプロンプロテクタを提供する。
【解決手段】フェンダーパネル11の上端から内側に屈曲した端縁11aの上面からエプロン12に向かって、フェンダーエプロンプロテクタ10の縦壁16が下方に延び、縦壁16は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域10a,10bでは下方内側、ブラケットが配置されていない領域10c,10hでは下方外側に、これらの領域の境界部分10dでは下方前側に、同様に10e,10iでは下方後側に、それぞれ傾斜している。
【解決手段】フェンダーパネル11の上端から内側に屈曲した端縁11aの上面からエプロン12に向かって、フェンダーエプロンプロテクタ10の縦壁16が下方に延び、縦壁16は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域10a,10bでは下方内側、ブラケットが配置されていない領域10c,10hでは下方外側に、これらの領域の境界部分10dでは下方前側に、同様に10e,10iでは下方後側に、それぞれ傾斜している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体前部構造に係り、特に、フロントフェンダー部分におけるフェンダーエプロンプロテクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、フロントフェンダー部分におけるNV(騒音/振動)対策として、フェンダーパネルの上端から下方に向かってエプロン付近まで延びるフェンダーエプロンプロテクタが設けられている。このようなフェンダーエプロンプロテクタは、図9に右フロントフェンダー部分を例として示すフェンダーエプロンプロテクタ1のように、フェンダーパネル2(図10参照)の内側に沿って、細長く構成されている。
【0003】
フェンダーエプロンプロテクタ1は樹脂材料で成り、図10に示すように、フェンダーパネル2の内側でボンネットフード4の側縁下方領域において、フェンダーパネル2の上端から内側に屈曲した端縁(見切り部)2aを上下から挟持するように断面がほぼ「コ」字状に形成され、その下端から縦壁3が下方に向かってエプロン付近まで延びている。
【0004】
図9に示すフェンダーエプロンプロテクタ1の後方領域1aでは、縦壁3は、上方からの衝撃荷重が加えられたとき車両の内側に倒れるように、下方内側に傾斜している。これは、後方領域1aでは、フェンダーパネル2の下側に、フェンダーパネル2を固定するためのブラケット(図示せず)が配置されており、縦壁3が外側に倒れると、ブラケットと干渉してしまうからである。
これに対して、フェンダーエプロンプロテクタ1の前方領域1bでは、縦壁3は、上方からの衝撃荷重が加えられたとき外側に倒れるように、下方外側に傾斜している。
【0005】
ボンネットフード4に対して上方から物体Oによる衝撃荷重が加えられた場合、この荷重によって、後方領域1aでは、縦壁3が内側に倒れると共に、前方領域1bでは、図11(A)にて点線で示すように、ボンネットフード4が下降して、フェンダーエプロンプロテクタ1を下方に向かって押動することになり、縦壁3は外側に倒れる。
【0006】
これにより、さらにボンネットフード4が下降すると、フェンダーエプロンプロテクタ1も下降してエプロン5に当接する。従って、フェンダーエプロンプロテクタ1は、上方からの衝撃荷重によりエプロン5に当接するまで下方移動することになり、この下方移動のストロークによってボンネットフード4への衝撃が吸収され、歩行者保護性能が得られる。
【特許文献1】特開2005−313692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、縦壁3は、ボンネットフード4に対して上方から衝撃荷重が加えられた場合には破壊される必要があるが、領域によって内側及び外側への傾斜を有する縦壁3全体が一体成形され、これらの領域の境界部分における縦壁3は傾斜を有しないことから、特にこの境界およびその周辺部分においてある程度の剛性があり、破壊されにくい。従って、ボンネットフード4に対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が高くなってしまう。
【0008】
また、このような構成のフェンダーエプロンプロテクタ1においては、ボンネットフード4に対して上方から物体Oにより衝撃荷重が加えられたとき、図11(A)にて点線で示す状態から、さらにボンネットフード4が下降すると、図11(B)に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ1も下降するが、その前方領域1bにおいては、縦壁3の先端3aがエプロン5の段差5aに突き当たってしまう。
【0009】
このため、フェンダーエプロンプロテクタ1が完全にエプロン5の表面に当接せず、所謂潰れ残りAが生ずることになり、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動のストロークが阻害される。これにより、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動の際に、縦壁3の先端3aのエプロン5に対する突っ張り力が上記衝撃荷重に対する反力となって、衝撃荷重が増大することになる。
【0010】
さらに、図12に示すように、フェンダーパネル2の端縁2aの上面には、フェンダーパネル2を車体に取り付けられたブラケット6に対して固定するための締付用ボルト7の頭部7aが突出している。このため、上方から衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ1が下方へ移動する際に、フェンダーエプロンプロテクタ1のフェンダーパネル2の上方に位置する部分の一部がこのボルト7の頭部7aに当接することになる。従って、図12に示すように、所謂潰れ残りBが生ずることになり、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動のストロークが阻害されてしまう。
【0011】
ここで、フェンダーエプロンプロテクタ1は、エンジン及び足廻り等におけるNV(騒音・振動)対策のために設けられているが、同時に歩行者保護性能を向上するためにはストロークを阻害しないことが好ましく、そのためには樹脂材料より軟らかいゴム系の材料などで構成することが有効である。しかしながら、ゴム系の材料は高価であり、フェンダーエプロンプロテクタ1全体のコストが高くなってしまうので、低価格帯の自動車に対して、このようなゴム系材料から成るフェンダーエプロンプロテクタ1を装着することは困難であった。
【0012】
本発明は以上の点に鑑み、樹脂材料であってもボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して潰れ残りなく下方移動して、ボンネットフード廻りにおける傷害値が低減され得るようにした自動車のフェンダーエプロンプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、フロントフェンダーの内側に設置され、フェンダーパネルの上端において内側に屈曲した端縁の上面からエプロンへ延びる縦壁を有し、この縦壁は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域では下方内側に、ブラケットが配置されていない領域では下方外側に、これらの領域の境界部分では下方前側または後側に、それぞれ傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、縦壁に、その長手方向と直交する方向のノッチを有する。ここで、ノッチとは、切り込み(スリット)または切欠き溝(他の部分に比べて極端に薄い部分)であって、その前後の縦壁を構造上分割する部分をいう。
【0015】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、縦壁のうち、下方外側に傾斜している部分に、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有する。
【0016】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられる。
【0017】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備える。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、フェンダーパネルの内側にフェンダーエプロンプロテクタが配置されていることにより、フェンダーパネルとエプロンとの間の間隙が縦壁により塞がれ、エンジンルーム及び足廻りからの音が遮断され、騒音が抑制される。
【0019】
また、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域と配置されていない領域との境界部分を含む各部の縦壁がそれぞれ傾斜していることにより、上方から衝撃荷重が加えられたときそれぞれ傾斜方向に倒れ、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動のストロークが阻害されない。従って、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減され、例えば歩行者保護がより確実に図られる。
【0020】
さらに、前記縦壁が長手方向にノッチを備えていることで、上方から衝撃荷重が加えられたとき、縦壁がノッチの部分で互いに分割され、分割された各部分毎に倒れることによりフェンダーエプロンプロテクタが円滑に下方移動する。
【0021】
ここで、縦壁の下方外側に傾斜している部分が、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有することにより、縦壁の下方外側に傾斜している部分がエプロンの表面に沿って外側に移動したとき、縦壁の先端の屈曲部はエプロンの表面から浮き上がり、エプロン表面に段差があったとしてもこの浮上りにより容易に段差を乗り越えることができる。
【0022】
従って、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動に伴って、縦壁の先端がエプロン表面の段差に突き当たって突っ張ることがなく、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動のストロークが阻害されない。これにより、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減され、例えば歩行者保護がより一層確実に図られる。
【0023】
前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられている場合には、フェンダーエプロンプロテクタが下方移動しない状態において、縦壁の先端付近がこのシール材を介してエプロン表面に接触し、フェンダーパネルとエプロンとの間隙を完全に塞ぐので、フロントフェンダー部分で発生する音が完全に遮断される。
【0024】
フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備えたことにより、フェンダーエプロンプロテクタ上方から衝撃荷重が加えられてこのスリット内の領域が固定用ボルトの頭部に当接した場合には、その周囲の領域がスリットにより分離され、他の領域が下方移動し得るので、その下方移動のストロークが確保される。
【0025】
このように、本発明によれば、上方から衝撃荷重が加えられたとき、フェンダーエプロンプロテクタの縦壁の各部がそれぞれ所定方向に倒れると共に、フェンダーエプロンプロテクタ全体が円滑に下方移動でき、その下方移動のストロークが阻害されることがない。そのため、樹脂材料を使用した場合にもボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して潰れ残りなく下方移動でき、NV性能及び歩行者保護性能の双方を十分に確保しつつコスト低減を実現した、フェンダーエプロンプロテクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態につき図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の自動車のフェンダーエプロンプロテクタの一実施形態の構成を右フロントフェンダー部分を例として示している。フェンダーエプロンプロテクタ10は樹脂で成形されており、自動車のフロントフェンダー部分の内側に沿って配置され自動車の前後方向に延びるように細長く形成されている。このフェンダーエプロンプロテクタ10は、フェンダーパネル11(図2参照)の上端において内側に屈曲した端縁の上面に対向すると共に、その長手方向の全長に亘って下方に向かってエプロン付近まで延びる縦壁16(後述)を備えている。
【0027】
ここで、フェンダーパネル11は、自動車の車体前部において、前輪のタイヤハウス周辺の側面を画成するように鋼板等から構成されており、図2に示すように、その上端において内側に略L状に屈曲した端縁11aを備えている。この端縁11aは、図3に示すように、車体側のエプロン12に固定配置されたブラケット13に対して、固定用ボルト14により螺着されている。
また、フェンダーパネル11は、図2に示すように、その上端がエンジンルームをカバーするボンネットフード15に繋っており、その端縁11aは、ボンネットフード15の下側に入り込むように上述のように略L状に屈曲している。
【0028】
以上の構成は、図9に示した従来の自動車のフェンダーエプロンプロテクタと同じ構成であるが、本発明の実施形態による自動車のフェンダーエプロンプロテクタ10は、以下の点で従来と異なる構成になっている。
すなわち、図1に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ10は、フェンダーパネル11を取り付けるブラケット13が配置されている中後部領域10a及び前端領域10bでは、図3に示すように、縦壁16aが下方内側に傾斜して延びている。
【0029】
さらに、縦壁16aは、その傾斜の中間であって適宜な部位に、その長手方向に沿った切欠き溝20が設けられる。この部分において、縦壁16aは、他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。そのため、上方から衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するときには、縦壁16aが切欠き溝20を境にして矢印Xで示すように内側に倒れ、ブラケット13と干渉しない。
【0030】
また、図1に示す中前部領域10c及び後端領域10hでは、図2に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ10がフェンダーパネル11の端縁11aを上下から挟持するように断面がほぼ「コ」字状に形成されていると共に、縦壁16bが下方外側に傾斜して延びている。この縦壁16bには、その傾斜の中間であって適宜な部位にその長手方向に沿った切欠き溝20が設けられている。この部分において、縦壁16bは、他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。
【0031】
さらに、この縦壁16bの先端は、図2に示すように、外側へ屈曲した上向きの屈曲部16eを備えており、この屈曲部16eの下面にシール材18が取り付けられている。これにより、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、図2に矢印Yで示すように、縦壁16bは切欠き溝20を境にして外側に倒れる。
【0032】
なお、シール材18は、例えばエプトシーラ等の軟質スポンジ状のものが使用されることが望ましい。これにより、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動しない状態において、図2に示すように、縦壁16bの先端の屈曲部16eが、シール材18を介してエプロン12の上面に当接し、エンジンルーム及び足廻りからの音を効果的に遮断し得るようになっている。
【0033】
シール材18はエプロン12の上面に固着されておらず、軟質の材料よりなるから、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動により縦壁16bの先端の屈曲部16eがエプロン12の上面を移動する際に、このシール材18が屈曲部16eの移動を妨げるようなことはない。
【0034】
これに対して、図1に示す中後部領域10aと中前部領域10cとの境界部分10dでは、図4に示すように、縦壁16cが下方前側に傾斜して延びている。また、縦壁16cも、その傾斜の中間であって適宜な部位に、その長手方向に沿った切欠き溝20が設けられ、この部分において、縦壁16cは他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。
これにより、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、縦壁16cが切欠き溝20を境にして矢印Zで示すように前側に倒れることになり、ブラケット13や他の縦壁16a,16bと干渉しない。
【0035】
一方、中後部領域10aと後端領域10hとの境界部分10i及び前端領域10bと中前部領域10cとの境界部分10eでは、適宜な場所に切欠き溝20を有する縦壁16dが、下方後側に傾斜して延びている。そのため、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、縦壁16dが切欠き溝20を境にして後側に倒れることになり、ブラケット13や他の縦壁16a,16bと干渉しない。
【0036】
さらに、縦壁16a,16b,16c,16dは、少なくともこれらの境界箇所に、縦壁の長手方向と直交する方向の切り込みまたは切欠き溝であるノッチ17を備えている。これにより、縦壁16a,16b,16c,16dは、各ノッチ17により分割された各縦壁が、上方からの衝撃荷重が加えられたとき、それぞれ独立に内側,外側,前,後ろに向かって倒れるから、フェンダーエプロンプロテクタ10が円滑に下方移動することができる。
【0037】
さらに、フェンダーエプロンプロテクタ10は、図5及び図6に示すように、フェンダーパネル11の端縁11aの上側に位置する部分における、フェンダーパネル11の固定用ボルト14の上方に位置する領域10f,10gの周囲に、それぞれスリット19を備えている。これらのスリット19は、それぞれ三箇所で途切れており、この途切れた部分が、連結部19aとして肉薄に形成されている。
【0038】
この連結部19aにより、領域10f,10gがフェンダーエプロンプロテクタ10と分離しないように接続されると共に、上方からの衝撃荷重によりフェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動したときは、領域10f,10gが固定用ボルト14の頭部14aに当接した後、連結部19aが破断し、あるいは弾性変形することにより、フェンダーエプロンプロテクタ10における領域10f,10gを除く領域がさらに下方移動し得るようになっている。
【0039】
本発明の実施形態による自動車のフェンダーエプロンプロテクタ10は、以上のように構成されており、通常時は、フェンダーエプロンプロテクタ10がフェンダーパネル11の端縁11aの上面から下方にエプロン12付近まで延び、その縦壁16がフェンダーパネル11とエプロン12との間の間隙を塞ぐと共に、縦壁16bの先端の屈曲部16eの下面に備えられたシール材18がエプロン12の上面に接触することにより、エンジンルーム及び足廻りからの騒音が抑制されている。
【0040】
ボンネットフード15に対して、上方から物体Oにより衝撃荷重が加えられたときには、この荷重によってボンネットフード15が下方移動し、これに伴ってフェンダーエプロンプロテクタ10も下方移動する。すると、フェンダーエプロンプロテクタ10の縦壁16、即ち縦壁16a,16b,16c,16dも下降して、エプロン12の上面に当接し、エプロン12の上面に沿って摺動しながら傾斜方向に倒れる。
【0041】
即ち、縦壁16aは、図3に矢印Xで示すように内側に倒れ、点線図示位置まで下方移動し、縦壁16bは、図2に矢印Yで示すように外側に倒れ、また縦壁16cは、図4にて矢印Zで示すように前側に倒れて、点線図示位置まで下方移動し、さらに縦壁16dは後側に倒れる。また、縦壁16aが長手方向に関してノッチにより互いに分割されているので、縦壁16aの分割された各部は円滑に内側に向かって倒れることになる。
【0042】
特に、縦壁16bは、図7(A)に示すように、上方から衝撃荷重が加えられたとき、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動に伴って、縦壁16bも外側に倒れながら下方移動するが、その際、縦壁16bの先端の屈曲部16eは上向きに屈曲していることから、エプロン12の表面に沿って外側に移動したとき、エプロン12の表面から浮き上がることになる。そのため、エプロン12の表面に段差12aがあったとしても、この浮上りにより屈曲部16eが容易に段差12aを乗り越えることができる。従って、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動に伴って、縦壁16bの先端がエプロン12の段差12aに突き当たって突っ張るようなことがない。
【0043】
以上のように、各縦壁16a〜16dは、それぞれ他の縦壁16a〜16dやエプロン12,ブラケット13等の部材と干渉することなく、それぞれ所定方向に倒れることになるので、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動のストロークが阻害されるようなことはない。
【0044】
また、上方からの衝撃荷重により、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動する際に、その領域10f,10gが固定用ボルト14の頭部14aに当接した後、さらにフェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動しようとすると、これらの連結部18a,18b,18cが破断し、あるいは弾性変形することにより、フェンダーエプロンプロテクタ10がさらに下方移動し得る。従って、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動のストロークが固定用ボルト14の頭部14aにより阻害されることはない。
【0045】
このようにして、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減されることになり、例えば歩行者保護がより一層確実に図られる。
【0046】
上述した実施形態においては、フェンダーエプロンプロテクタ10が、フェンダーパネル11をエプロン12に固定するためのブラケット13に対応して、中後部領域10a,前端領域10bにて内側に斜めに傾斜した縦壁16aを備えると共に、中前部領域10cにて外側に斜めに傾斜した縦壁16bを備えているが、これに限らず、ブラケット13の配置に対応して、縦壁16a,16bは任意に配置され得ることは明らかである。
【0047】
以上のように、本発明によれば、ボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して、フェンダーエプロンプロテクタが潰れ残りなく下方移動して、ボンネットフードにおける傷害値が低減され得るようにした、極めて優れた自動車のフェンダーエプロンプロテクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車のフェンダーエプロンプロテクタの全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるA−A線断面図である。
【図3】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるB−B線断面図である。
【図4】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるC−C線断面図である。
【図5】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの前側の上方領域を示す部分拡大平面図である。
【図6】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの後側の上方領域を示す部分拡大平面図である。
【図7】図2のフェンダーエプロンプロテクタに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を順次に示す断面図である。
【図8】図5のフェンダーエプロンプロテクタの上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を示す部分断面図である。
【図9】従来の自動車のフェンダーエプロンプロテクタの一例の全体構成を示す概略斜視図である。
【図10】図9のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態における断面図である。
【図11】図10のフェンダーエプロンプロテクタに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を順次に示す断面図である。
【図12】図9のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの上方領域に対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 フェンダーエプロンプロテクタ
11 フェンダーパネル
11a 端縁
12 エプロン
12a 段差
13 ブラケット
14 固定用ボルト
14a 頭部
15 ボンネットフード
16,16a,16b,16c,16d 縦壁
17 ノッチ
18 シール材
19 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体前部構造に係り、特に、フロントフェンダー部分におけるフェンダーエプロンプロテクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、フロントフェンダー部分におけるNV(騒音/振動)対策として、フェンダーパネルの上端から下方に向かってエプロン付近まで延びるフェンダーエプロンプロテクタが設けられている。このようなフェンダーエプロンプロテクタは、図9に右フロントフェンダー部分を例として示すフェンダーエプロンプロテクタ1のように、フェンダーパネル2(図10参照)の内側に沿って、細長く構成されている。
【0003】
フェンダーエプロンプロテクタ1は樹脂材料で成り、図10に示すように、フェンダーパネル2の内側でボンネットフード4の側縁下方領域において、フェンダーパネル2の上端から内側に屈曲した端縁(見切り部)2aを上下から挟持するように断面がほぼ「コ」字状に形成され、その下端から縦壁3が下方に向かってエプロン付近まで延びている。
【0004】
図9に示すフェンダーエプロンプロテクタ1の後方領域1aでは、縦壁3は、上方からの衝撃荷重が加えられたとき車両の内側に倒れるように、下方内側に傾斜している。これは、後方領域1aでは、フェンダーパネル2の下側に、フェンダーパネル2を固定するためのブラケット(図示せず)が配置されており、縦壁3が外側に倒れると、ブラケットと干渉してしまうからである。
これに対して、フェンダーエプロンプロテクタ1の前方領域1bでは、縦壁3は、上方からの衝撃荷重が加えられたとき外側に倒れるように、下方外側に傾斜している。
【0005】
ボンネットフード4に対して上方から物体Oによる衝撃荷重が加えられた場合、この荷重によって、後方領域1aでは、縦壁3が内側に倒れると共に、前方領域1bでは、図11(A)にて点線で示すように、ボンネットフード4が下降して、フェンダーエプロンプロテクタ1を下方に向かって押動することになり、縦壁3は外側に倒れる。
【0006】
これにより、さらにボンネットフード4が下降すると、フェンダーエプロンプロテクタ1も下降してエプロン5に当接する。従って、フェンダーエプロンプロテクタ1は、上方からの衝撃荷重によりエプロン5に当接するまで下方移動することになり、この下方移動のストロークによってボンネットフード4への衝撃が吸収され、歩行者保護性能が得られる。
【特許文献1】特開2005−313692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、縦壁3は、ボンネットフード4に対して上方から衝撃荷重が加えられた場合には破壊される必要があるが、領域によって内側及び外側への傾斜を有する縦壁3全体が一体成形され、これらの領域の境界部分における縦壁3は傾斜を有しないことから、特にこの境界およびその周辺部分においてある程度の剛性があり、破壊されにくい。従って、ボンネットフード4に対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が高くなってしまう。
【0008】
また、このような構成のフェンダーエプロンプロテクタ1においては、ボンネットフード4に対して上方から物体Oにより衝撃荷重が加えられたとき、図11(A)にて点線で示す状態から、さらにボンネットフード4が下降すると、図11(B)に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ1も下降するが、その前方領域1bにおいては、縦壁3の先端3aがエプロン5の段差5aに突き当たってしまう。
【0009】
このため、フェンダーエプロンプロテクタ1が完全にエプロン5の表面に当接せず、所謂潰れ残りAが生ずることになり、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動のストロークが阻害される。これにより、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動の際に、縦壁3の先端3aのエプロン5に対する突っ張り力が上記衝撃荷重に対する反力となって、衝撃荷重が増大することになる。
【0010】
さらに、図12に示すように、フェンダーパネル2の端縁2aの上面には、フェンダーパネル2を車体に取り付けられたブラケット6に対して固定するための締付用ボルト7の頭部7aが突出している。このため、上方から衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ1が下方へ移動する際に、フェンダーエプロンプロテクタ1のフェンダーパネル2の上方に位置する部分の一部がこのボルト7の頭部7aに当接することになる。従って、図12に示すように、所謂潰れ残りBが生ずることになり、フェンダーエプロンプロテクタ1の下方移動のストロークが阻害されてしまう。
【0011】
ここで、フェンダーエプロンプロテクタ1は、エンジン及び足廻り等におけるNV(騒音・振動)対策のために設けられているが、同時に歩行者保護性能を向上するためにはストロークを阻害しないことが好ましく、そのためには樹脂材料より軟らかいゴム系の材料などで構成することが有効である。しかしながら、ゴム系の材料は高価であり、フェンダーエプロンプロテクタ1全体のコストが高くなってしまうので、低価格帯の自動車に対して、このようなゴム系材料から成るフェンダーエプロンプロテクタ1を装着することは困難であった。
【0012】
本発明は以上の点に鑑み、樹脂材料であってもボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して潰れ残りなく下方移動して、ボンネットフード廻りにおける傷害値が低減され得るようにした自動車のフェンダーエプロンプロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、フロントフェンダーの内側に設置され、フェンダーパネルの上端において内側に屈曲した端縁の上面からエプロンへ延びる縦壁を有し、この縦壁は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域では下方内側に、ブラケットが配置されていない領域では下方外側に、これらの領域の境界部分では下方前側または後側に、それぞれ傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、縦壁に、その長手方向と直交する方向のノッチを有する。ここで、ノッチとは、切り込み(スリット)または切欠き溝(他の部分に比べて極端に薄い部分)であって、その前後の縦壁を構造上分割する部分をいう。
【0015】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、縦壁のうち、下方外側に傾斜している部分に、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有する。
【0016】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられる。
【0017】
本発明による自動車のフェンダーエプロンプロテクタは、好ましくは、フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備える。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、フェンダーパネルの内側にフェンダーエプロンプロテクタが配置されていることにより、フェンダーパネルとエプロンとの間の間隙が縦壁により塞がれ、エンジンルーム及び足廻りからの音が遮断され、騒音が抑制される。
【0019】
また、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域と配置されていない領域との境界部分を含む各部の縦壁がそれぞれ傾斜していることにより、上方から衝撃荷重が加えられたときそれぞれ傾斜方向に倒れ、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動のストロークが阻害されない。従って、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減され、例えば歩行者保護がより確実に図られる。
【0020】
さらに、前記縦壁が長手方向にノッチを備えていることで、上方から衝撃荷重が加えられたとき、縦壁がノッチの部分で互いに分割され、分割された各部分毎に倒れることによりフェンダーエプロンプロテクタが円滑に下方移動する。
【0021】
ここで、縦壁の下方外側に傾斜している部分が、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有することにより、縦壁の下方外側に傾斜している部分がエプロンの表面に沿って外側に移動したとき、縦壁の先端の屈曲部はエプロンの表面から浮き上がり、エプロン表面に段差があったとしてもこの浮上りにより容易に段差を乗り越えることができる。
【0022】
従って、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動に伴って、縦壁の先端がエプロン表面の段差に突き当たって突っ張ることがなく、フェンダーエプロンプロテクタの下方移動のストロークが阻害されない。これにより、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減され、例えば歩行者保護がより一層確実に図られる。
【0023】
前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられている場合には、フェンダーエプロンプロテクタが下方移動しない状態において、縦壁の先端付近がこのシール材を介してエプロン表面に接触し、フェンダーパネルとエプロンとの間隙を完全に塞ぐので、フロントフェンダー部分で発生する音が完全に遮断される。
【0024】
フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備えたことにより、フェンダーエプロンプロテクタ上方から衝撃荷重が加えられてこのスリット内の領域が固定用ボルトの頭部に当接した場合には、その周囲の領域がスリットにより分離され、他の領域が下方移動し得るので、その下方移動のストロークが確保される。
【0025】
このように、本発明によれば、上方から衝撃荷重が加えられたとき、フェンダーエプロンプロテクタの縦壁の各部がそれぞれ所定方向に倒れると共に、フェンダーエプロンプロテクタ全体が円滑に下方移動でき、その下方移動のストロークが阻害されることがない。そのため、樹脂材料を使用した場合にもボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して潰れ残りなく下方移動でき、NV性能及び歩行者保護性能の双方を十分に確保しつつコスト低減を実現した、フェンダーエプロンプロテクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態につき図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の自動車のフェンダーエプロンプロテクタの一実施形態の構成を右フロントフェンダー部分を例として示している。フェンダーエプロンプロテクタ10は樹脂で成形されており、自動車のフロントフェンダー部分の内側に沿って配置され自動車の前後方向に延びるように細長く形成されている。このフェンダーエプロンプロテクタ10は、フェンダーパネル11(図2参照)の上端において内側に屈曲した端縁の上面に対向すると共に、その長手方向の全長に亘って下方に向かってエプロン付近まで延びる縦壁16(後述)を備えている。
【0027】
ここで、フェンダーパネル11は、自動車の車体前部において、前輪のタイヤハウス周辺の側面を画成するように鋼板等から構成されており、図2に示すように、その上端において内側に略L状に屈曲した端縁11aを備えている。この端縁11aは、図3に示すように、車体側のエプロン12に固定配置されたブラケット13に対して、固定用ボルト14により螺着されている。
また、フェンダーパネル11は、図2に示すように、その上端がエンジンルームをカバーするボンネットフード15に繋っており、その端縁11aは、ボンネットフード15の下側に入り込むように上述のように略L状に屈曲している。
【0028】
以上の構成は、図9に示した従来の自動車のフェンダーエプロンプロテクタと同じ構成であるが、本発明の実施形態による自動車のフェンダーエプロンプロテクタ10は、以下の点で従来と異なる構成になっている。
すなわち、図1に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ10は、フェンダーパネル11を取り付けるブラケット13が配置されている中後部領域10a及び前端領域10bでは、図3に示すように、縦壁16aが下方内側に傾斜して延びている。
【0029】
さらに、縦壁16aは、その傾斜の中間であって適宜な部位に、その長手方向に沿った切欠き溝20が設けられる。この部分において、縦壁16aは、他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。そのため、上方から衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するときには、縦壁16aが切欠き溝20を境にして矢印Xで示すように内側に倒れ、ブラケット13と干渉しない。
【0030】
また、図1に示す中前部領域10c及び後端領域10hでは、図2に示すように、フェンダーエプロンプロテクタ10がフェンダーパネル11の端縁11aを上下から挟持するように断面がほぼ「コ」字状に形成されていると共に、縦壁16bが下方外側に傾斜して延びている。この縦壁16bには、その傾斜の中間であって適宜な部位にその長手方向に沿った切欠き溝20が設けられている。この部分において、縦壁16bは、他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。
【0031】
さらに、この縦壁16bの先端は、図2に示すように、外側へ屈曲した上向きの屈曲部16eを備えており、この屈曲部16eの下面にシール材18が取り付けられている。これにより、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、図2に矢印Yで示すように、縦壁16bは切欠き溝20を境にして外側に倒れる。
【0032】
なお、シール材18は、例えばエプトシーラ等の軟質スポンジ状のものが使用されることが望ましい。これにより、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動しない状態において、図2に示すように、縦壁16bの先端の屈曲部16eが、シール材18を介してエプロン12の上面に当接し、エンジンルーム及び足廻りからの音を効果的に遮断し得るようになっている。
【0033】
シール材18はエプロン12の上面に固着されておらず、軟質の材料よりなるから、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動により縦壁16bの先端の屈曲部16eがエプロン12の上面を移動する際に、このシール材18が屈曲部16eの移動を妨げるようなことはない。
【0034】
これに対して、図1に示す中後部領域10aと中前部領域10cとの境界部分10dでは、図4に示すように、縦壁16cが下方前側に傾斜して延びている。また、縦壁16cも、その傾斜の中間であって適宜な部位に、その長手方向に沿った切欠き溝20が設けられ、この部分において、縦壁16cは他の部分よりも素材厚が薄く変形しやすくなっている。
これにより、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、縦壁16cが切欠き溝20を境にして矢印Zで示すように前側に倒れることになり、ブラケット13や他の縦壁16a,16bと干渉しない。
【0035】
一方、中後部領域10aと後端領域10hとの境界部分10i及び前端領域10bと中前部領域10cとの境界部分10eでは、適宜な場所に切欠き溝20を有する縦壁16dが、下方後側に傾斜して延びている。そのため、上方からの衝撃荷重が加えられて、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動するとき、縦壁16dが切欠き溝20を境にして後側に倒れることになり、ブラケット13や他の縦壁16a,16bと干渉しない。
【0036】
さらに、縦壁16a,16b,16c,16dは、少なくともこれらの境界箇所に、縦壁の長手方向と直交する方向の切り込みまたは切欠き溝であるノッチ17を備えている。これにより、縦壁16a,16b,16c,16dは、各ノッチ17により分割された各縦壁が、上方からの衝撃荷重が加えられたとき、それぞれ独立に内側,外側,前,後ろに向かって倒れるから、フェンダーエプロンプロテクタ10が円滑に下方移動することができる。
【0037】
さらに、フェンダーエプロンプロテクタ10は、図5及び図6に示すように、フェンダーパネル11の端縁11aの上側に位置する部分における、フェンダーパネル11の固定用ボルト14の上方に位置する領域10f,10gの周囲に、それぞれスリット19を備えている。これらのスリット19は、それぞれ三箇所で途切れており、この途切れた部分が、連結部19aとして肉薄に形成されている。
【0038】
この連結部19aにより、領域10f,10gがフェンダーエプロンプロテクタ10と分離しないように接続されると共に、上方からの衝撃荷重によりフェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動したときは、領域10f,10gが固定用ボルト14の頭部14aに当接した後、連結部19aが破断し、あるいは弾性変形することにより、フェンダーエプロンプロテクタ10における領域10f,10gを除く領域がさらに下方移動し得るようになっている。
【0039】
本発明の実施形態による自動車のフェンダーエプロンプロテクタ10は、以上のように構成されており、通常時は、フェンダーエプロンプロテクタ10がフェンダーパネル11の端縁11aの上面から下方にエプロン12付近まで延び、その縦壁16がフェンダーパネル11とエプロン12との間の間隙を塞ぐと共に、縦壁16bの先端の屈曲部16eの下面に備えられたシール材18がエプロン12の上面に接触することにより、エンジンルーム及び足廻りからの騒音が抑制されている。
【0040】
ボンネットフード15に対して、上方から物体Oにより衝撃荷重が加えられたときには、この荷重によってボンネットフード15が下方移動し、これに伴ってフェンダーエプロンプロテクタ10も下方移動する。すると、フェンダーエプロンプロテクタ10の縦壁16、即ち縦壁16a,16b,16c,16dも下降して、エプロン12の上面に当接し、エプロン12の上面に沿って摺動しながら傾斜方向に倒れる。
【0041】
即ち、縦壁16aは、図3に矢印Xで示すように内側に倒れ、点線図示位置まで下方移動し、縦壁16bは、図2に矢印Yで示すように外側に倒れ、また縦壁16cは、図4にて矢印Zで示すように前側に倒れて、点線図示位置まで下方移動し、さらに縦壁16dは後側に倒れる。また、縦壁16aが長手方向に関してノッチにより互いに分割されているので、縦壁16aの分割された各部は円滑に内側に向かって倒れることになる。
【0042】
特に、縦壁16bは、図7(A)に示すように、上方から衝撃荷重が加えられたとき、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動に伴って、縦壁16bも外側に倒れながら下方移動するが、その際、縦壁16bの先端の屈曲部16eは上向きに屈曲していることから、エプロン12の表面に沿って外側に移動したとき、エプロン12の表面から浮き上がることになる。そのため、エプロン12の表面に段差12aがあったとしても、この浮上りにより屈曲部16eが容易に段差12aを乗り越えることができる。従って、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動に伴って、縦壁16bの先端がエプロン12の段差12aに突き当たって突っ張るようなことがない。
【0043】
以上のように、各縦壁16a〜16dは、それぞれ他の縦壁16a〜16dやエプロン12,ブラケット13等の部材と干渉することなく、それぞれ所定方向に倒れることになるので、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動のストロークが阻害されるようなことはない。
【0044】
また、上方からの衝撃荷重により、フェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動する際に、その領域10f,10gが固定用ボルト14の頭部14aに当接した後、さらにフェンダーエプロンプロテクタ10が下方移動しようとすると、これらの連結部18a,18b,18cが破断し、あるいは弾性変形することにより、フェンダーエプロンプロテクタ10がさらに下方移動し得る。従って、フェンダーエプロンプロテクタ10の下方移動のストロークが固定用ボルト14の頭部14aにより阻害されることはない。
【0045】
このようにして、ボンネットフードに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの傷害値が低減されることになり、例えば歩行者保護がより一層確実に図られる。
【0046】
上述した実施形態においては、フェンダーエプロンプロテクタ10が、フェンダーパネル11をエプロン12に固定するためのブラケット13に対応して、中後部領域10a,前端領域10bにて内側に斜めに傾斜した縦壁16aを備えると共に、中前部領域10cにて外側に斜めに傾斜した縦壁16bを備えているが、これに限らず、ブラケット13の配置に対応して、縦壁16a,16bは任意に配置され得ることは明らかである。
【0047】
以上のように、本発明によれば、ボンネットフードに対する上方からの衝撃に対して、フェンダーエプロンプロテクタが潰れ残りなく下方移動して、ボンネットフードにおける傷害値が低減され得るようにした、極めて優れた自動車のフェンダーエプロンプロテクタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動車のフェンダーエプロンプロテクタの全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるA−A線断面図である。
【図3】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるB−B線断面図である。
【図4】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態におけるC−C線断面図である。
【図5】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの前側の上方領域を示す部分拡大平面図である。
【図6】図1のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの後側の上方領域を示す部分拡大平面図である。
【図7】図2のフェンダーエプロンプロテクタに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を順次に示す断面図である。
【図8】図5のフェンダーエプロンプロテクタの上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を示す部分断面図である。
【図9】従来の自動車のフェンダーエプロンプロテクタの一例の全体構成を示す概略斜視図である。
【図10】図9のフェンダーエプロンプロテクタのフロントフェンダー部分への装着状態における断面図である。
【図11】図10のフェンダーエプロンプロテクタに対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を順次に示す断面図である。
【図12】図9のフェンダーエプロンプロテクタのフェンダーパネル固定用ボルトの上方領域に対して上方から衝撃荷重が加えられたときの下方移動を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 フェンダーエプロンプロテクタ
11 フェンダーパネル
11a 端縁
12 エプロン
12a 段差
13 ブラケット
14 固定用ボルト
14a 頭部
15 ボンネットフード
16,16a,16b,16c,16d 縦壁
17 ノッチ
18 シール材
19 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフェンダーの内側に設置され、フェンダーパネル上端において内側に屈曲した端縁の上面からエプロンへ延びる縦壁を有する自動車のフェンダーエプロンプロテクタであって、
上記縦壁は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域では下方内側に、ブラケットが配置されていない領域では下方外側に、これらの領域の境界部分では下方前側または後側に、それぞれ傾斜していることを特徴とする、自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項2】
前記縦壁は、その長手方向と直交する方向のノッチを有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項3】
前記縦壁のうち、下方外側に傾斜している部分は、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項4】
前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられたことを特徴とする、請求項3に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項5】
前記フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備えたことを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項1】
フロントフェンダーの内側に設置され、フェンダーパネル上端において内側に屈曲した端縁の上面からエプロンへ延びる縦壁を有する自動車のフェンダーエプロンプロテクタであって、
上記縦壁は、フェンダーパネルの下側にブラケットが配置されている領域では下方内側に、ブラケットが配置されていない領域では下方外側に、これらの領域の境界部分では下方前側または後側に、それぞれ傾斜していることを特徴とする、自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項2】
前記縦壁は、その長手方向と直交する方向のノッチを有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項3】
前記縦壁のうち、下方外側に傾斜している部分は、その先端が外側へ屈曲した屈曲部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項4】
前記屈曲部の下面にシール材が取り付けられたことを特徴とする、請求項3に記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【請求項5】
前記フェンダーパネル端縁の上側であってフェンダーパネル固定用ボルトの上方に位置する領域の周囲にスリットを備えたことを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の自動車のフェンダーエプロンプロテクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−195306(P2008−195306A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34165(P2007−34165)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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