説明

自動車のフレーム構造

【課題】本発明は、軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造において、確実に軸方向に座屈変形を生じるように構成して、常に大きな衝突エネルギーの吸収量を得ることができる自動車のフレーム構造を提供することを目的とする。
【解決手段】最上部接合部位13と上側部接合部位の二箇所14,15の三点を結んで構成される図形Rが、「正三角形」となるように設定している。また、最下部接合部位18と下側部接合部位の二箇所16,17の三点を結んで構成される図形Qが「逆正三角形」となるように設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のフレーム構造に関し、特に、衝突エネルギーの吸収性能を高めた自動車のフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のフレーム構造においては、フロントサイドフレームやリヤサイドフレームを衝突時に軸方向に座屈変形させて、衝突エネルギーを吸収することで、車室内に衝突の影響が及ばないようにすることが知られている。
このため、自動車のフレーム構造では、衝突エネルギーの吸収性能が高いフレーム構造が求められる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、押し出し成形等によって、フレーム断面を複数断面に分割したフレーム構造が提案されている。
このフレーム構造によると、エネルギー吸収量が増加するとともに、座屈形状が安定するため、エネルギー吸収量及び変形時の座屈変形が安定するという効果が得られる。
しかし、この押し出し成形のフレーム構造によると、被加工材料及び製造コストが高く、生産性等が悪化するという問題がある。
【0004】
そこで、生産性の悪化を防ぐフレーム構造として、下記特許文献2のフレーム構造が提案されている。
【0005】
このフレーム構造は、矩形閉断面等のフレーム内に、複数の小径のパイプ部材等を充填挿入して、フレーム構造を構成したものである。
このフレーム構造によると、衝突荷重を受けた際に、フレーム内のパイプ部材もフレームと同様に、軸方向に座屈変形するため、衝突エネルギーの吸収量が増加する。特に、フレーム内にパイプ部材が充填されていることから、座屈変形の際には、パイプ部材が相互に干渉し合うことになり、衝突エネルギーの吸収量がさらに増加する旨が記載されている。
【特許文献1】特開2001−63626号公報
【特許文献2】特開2003−312535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、衝突エネルギーの吸収性能を安定して高めるためには、常にフレーム構造を軸方向に座屈変形させる必要がある。
【0007】
この点、前述の特許文献2のフレーム構造では、大型断面のフレームと小型断面のパイプ部材を同時に座屈変形させることになるが、座屈変形は、断面を囲む辺の長さや直径の大きさ等によって、潰れ周期(潰れ変形の山折れと谷折れの繰返し周期)が変化するため、フレームとパイプ部材との間で、潰れ周期が異なり、変形の位相がズレるといった現象が生じる。
【0008】
このように、フレームとパイプ部材との間で潰れ周期が異なり、変形位相がズレると、お互いの変形挙動を阻害し合うことになり、フレーム構造を、確実に軸方向に座屈変形させることができず、横折れ変形等が生じるおそれある。
【0009】
そこで、本発明は、軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造において、確実に軸方向に座屈変形を生じるように構成して、常に大きな衝突エネルギーの吸収量を得ることができる自動車のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の自動車のフレーム構造は、軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造であって、該フレーム構造を、断面が略等しいパイプ部材だけを複数集合して結合することで構成して、該パイプ部材間に、座屈変形時にパイプ部材同士の結合が剥離しない剥離防止手段を設定したものである。
【0011】
上記構成によれば、フレーム構造は、断面が略等しいパイプ部材だけを集合して結合されているため、座屈変形時には、全てのパイプ部材が同一の潰れ周期で変形することになる。また、剥離防止手段を設定していることにより、座屈変形時には、パイプ部材同士の結合が剥離することなく、常時安定して座屈変形が生じることになる。
このため、フレーム構造には、常時安定した座屈変形を生じさせることができ、複数のパイプ部材で、確実に衝撃吸収エネルギーを高めることができる。
【0012】
なお、ここでいう剥離防止手段とは、パイプ部材間の結合状態が剥離しなければ、どのようなものであってもよく、例えば、パイプ部材間の結合関係や結合部位、さらには結合構造等で剥離を防止するようなものであってもよい。
【0013】
また、パイプ部材は、円筒、矩形、六角形等、断面形状についてはどのようなものであってもよく、さらに、このパイプ部材を構成する金属材料も、軸方向に座屈変形するものであれば、どのような材料であってもよく、一般的な鋼材だけでなく、アルミ合金等の軽金属材料であってもよい。
また、結合構造も、溶接、嵌合、圧着など、金属材料を結合する構造であれば、どのような結合構造であってもよい。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記パイプ部材を、円筒パイプで構成すると共に、前記剥離防止手段を、少なくとも三本の円筒パイプの結合ポイントが、断面視で正三角形となるように設定することとしたものである。
上記構成によれば、パイプ部材を円筒パイプで構成した際に、剥離防止手段が三本の円筒パイプの結合ポイントを、断面視で正三角形となるように設定したものであるため、フレーム構造の座屈変形時には、円筒パイプ間の剥離を防止することができる。
すなわち、円筒パイプが座屈変形する場合には、断面形状が「略正三角形状」に変形して、この「略正三角形状」が潰れ変形の半周期毎に反転して繰返し発生するため、この正三角形の頂点にあたる位置で、それぞれ隣り合う円筒パイプを結合することで、座屈変形時に、各円筒パイプの座屈変形を阻害することなく、各結合ポイントが剥離するのを防止できるのである。
よって、円筒パイプでパイプ部材を構成して、この円筒パイプを集合して結合することでフレーム構造を達成できるため、いわゆる、質量効率(衝突エネルギーの吸収重をパイプ質量で割った値)の高いフレーム構造を得ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記三本の円筒パイプのうち、一本を中心パイプ部材として設定し、該中心パイプ部材に、他の二本の円筒パイプと軸対称となるように、新たに二本の円筒パイプを結合したものである。
上記構成によれば、中心パイプ部材を中心にして、四本の円筒パイプを、それぞれ反対側に二本ずつ配置して、合計五本の円筒パイプを、各結合ポイントの「正三角形」の関係を崩すことなく結合できる。
このため、パイプ部材を円筒パイプで構成しても、フレーム構造の外形ラインを、略縦長状に構成することができ、略長方形断面の車体フレーム(例えば、フロントサイドフレーム)に対して、連結することが容易になる。
よって、複数の円筒パイプを結合して構成したフレーム構造を、一般的な車体フレームに対して効率的に組付けることができる。また、フレーム構造を五本の円筒パイプで構成したことで、耐荷重性を飛躍的に向上することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記円筒パイプの先端に、隣り合う円筒パイプの座屈変形時の断面形状が同相となるように座屈変形を励起する変形促進部を形成したものである。
上記構成によれば、円筒パイプの先端に、座屈変形時の断面形状が同相となる変形促進部を形成することで、円筒パイプの座屈変形時の形状が座屈初めに規定されることになり、その後の座屈変形時の断面形状が一定のものになる。
このため、各円筒パイプの変形形状が確実に一定となるため、結合部分の剥離を防止することができる。
よって、より確実に円筒パイプ間の剥離を防止して、確実に衝突エネルギーの吸収量を高めることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記変形促進部を、円筒パイプの軸方向に対して直交方向に延びるビード又は開口穴で構成したものである。
上記構成によれば、変形促進部をビード又は開口穴とすることで、円筒パイプに僅かな加工を施すだけで、変形促進部を構成することができる。
よって、部品点数を増加させることなく、座屈変形のきっかけを容易に形成することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、隣り合う円筒パイプの変形促進部を、同相位置に設定したものである。
上記構成によれば、円筒パイプの変形促進部を同相位置に設定したことにより、隣り合う円筒パイプが座屈変形する際には、必ず断面形状が同相になる。
よって、隣り合う円筒パイプが、規則正しく座屈変形することになり、確実にフレーム構造を座屈変形させることができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、前記パイプ部材を、矩形パイプで構成すると共に、前記剥離防止手段を、隣り合うパイプ部材の対向する辺同士が、少なくとも両端を除く中央位置で結合されることとしたものである。
上記構成によれば、パイプ部材を矩形パイプで構成した際に、剥離防止手段が、対向する辺の中央位置に結合ポイントを設定するものであるため、フレーム構造の座屈変形時には、矩形パイプ間の剥離を防止することができる。
すなわち、矩形パイプが座屈変形する場合には、断面が「細長長方形状」に変形して、この「細長長方形状」が潰れ変形の半周期毎に反転して繰返し発生するため、この細長長方形の短辺にあたる位置で、それぞれ隣り合う矩形パイプを結合することで、座屈変形時に、各矩形パイプの座屈変形を阻害することなく、各結合ポイントが剥離するのを防止できるのである。
よって、矩形パイプでバイプ部材を構成して、この矩形パイプを集合してフレーム構造を達成できるため、一般的な矩形形状の車体フレーム(例えば、フロントサイドフレーム)に対して、連結を容易に行なえるフレーム構造を得ることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、前記矩形パイプの先端に、隣り合う矩形パイプの座屈変形時の断面形状が逆相となるように、座屈変形を励起する変形促進部を形成したものである。
上記構成によれば、矩形パイプの先端に、座屈変形時の断面形状が逆相となる変形促進部を形成することで、矩形パイプの座屈変形時の形状が座屈初めに規定されることになり、その後の座屈変形時の断面形状が一定のものになる。
このため、各矩形パイプの変形形状が確実に一定となるため、結合部分の剥離を防止することができる。
よって、より確実に矩形パイプ間の剥離を防止して、確実に衝突エネルギーの吸収量を高めることができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、前記変形促進部を、矩形パイプの軸方向に対して直交方向に延びるビード又は開口穴で構成したものである。
上記構成によれば、変形促進部をビード又は開口穴とすることで、矩形パイプに僅かな加工を施すだけで、変形促進部を構成することができる。
よって、部品点数を増加させることなく、潰れのきっかけを容易に設定することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、隣り合う矩形パイプの変形促進部を、逆相位置に設定したものである。
上記構成によれば、矩形パイプの変形促進部を逆相位置に設定したことにより、隣り合う矩形パイプが座屈変形する際には、必ず断面形状が逆相になる。
よって、隣り合う矩形パイプが、規則正しく座屈変形することになり、確実にフレーム構造を座屈変形させることができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、前記フレーム構造を、クラッシュカンとして使用したものである。
上記構成によれば、パイプ部材を集合して結合したフレーム構造を、クラッシュカンとして使用することで、クラッシュカンの衝突エネルギーの吸収量を増加させることができる。
よって、座屈変形時の衝突初期における衝撃吸収性能を高めることができ、自動車の衝突安全性能を高めることができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、前記クラッシュカンの後方に、セットプレートを設置すると共に、該セットプレートの後方に、フロントサイドフレームを設置して、前記セットプレートの前後方向強度を、クラッシュカンよりも高く且つフロントサイドフレームよりも低く設定し、クラッシュカンの座屈変形時の外形寸法を、フロントサイドフレーム内部に陥没する寸法に設定したものである。
上記構成によれば、車体前方から衝突荷重が作用した際には、まず、クラッシュカンが座屈変形して、その後に、セットプレートが後方に変形して、座屈変形したクラッシュカンの一部が、フロントサイドフレーム内に陥没することになる。
このため、座屈変形して、フロントサイドフレーム内に陥没したクラッシュカンの長さ分、車体の前後方向長さが短くなるため、この陥没したクラッシュカンの長さ分も含めて、車体のクラッシュスペースにすることができる。
よって、前面衝突時のフロントサイドフレームの後退量を抑えることができ、ダッシュパネルへの衝突時の影響を少なくすることができる。
【0025】
この発明の一実施態様においては、前記パイプ部材を、軸方向で螺旋状に延びるように設定したものである。
上記構成によれば、パイプ部材が軸方向に螺旋状に延びることで、衝突荷重を受けてパイプ部材が座屈変形する場合に、互いにパイプ部材同士が絡み合うことで、パイプ部材同士の結合が剥離しにくくなる。
よって、座屈変形時においても、フレームのパイプ部材の結合状態が維持されて、衝突エネルギーの吸収性能を高めることができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、前記円筒パイプ部材に、軸方向で板厚が変化する軸圧縮状態変更部を設定したものである。
上記構成によれば、パイプ部材に軸圧縮状態変更部を設定することで、パイプ部材の軸圧縮状態を座屈変形の途中等で変化させることができる。
よって、フレーム構造の座屈変形を途中等で変化させることができ、フレーム構造の座屈変形状態を自由に変化させることができる。
【0027】
この発明の一実施態様においては、前記パイプ部材に軸圧縮しない非軸圧縮部を設定して、該非軸圧縮部に、所定の車載部品を取り付ける取付け部を設けたものである。
上記構成によれば、パイプ部材に非軸圧縮部を設定して、この非軸圧縮部に設けた取付け部で、所定の車載部品を取り付けることができる。
このため、座屈変形を生じさせて衝突エネルギーを吸収するフレーム構造であっても、フレームの途中等に設けた非軸圧縮部を利用して所定の車載部品を取り付けることができる。
よって、一つのフレーム構造を、座屈変形する部分と車載部品を支持する部分とに使い分けることができ、効率的にフレーム構造を使用することができる。
【0028】
この発明の一実施態様においては、前記パイプ部材の軸方向中間部に、非軸圧縮部を設定して、該非軸圧縮部の軸方向直後位置に、脆弱部を形成したものである。
上記構成によれば、非軸圧縮部の直後に脆弱部を形成したことにより、非軸圧縮部で座屈変形が生じずに、座屈変形が止まった場合でも、脆弱部をきっかけとして、座屈変形を再度生じさせることができる。
このため、パイプ部材の軸方向中間部に、非軸圧縮部を設定した場合でも、その後方位置で、座屈変形を生じさせることができるため、フレーム構造の座屈変形部分を、より多く確保することができる。
よって、一つのフレーム構造を、より効率的に座屈変形させることができる。
【0029】
この発明の一実施態様においては、前記円筒パイプは、板厚を0.4mm乃至2.0mmの範囲に設定して、直径を20mm乃至80mmの範囲に設定したものである。
上記構成によれば、円筒パイプが座屈変形した際に、断面形状がより確実に「略正三角形状」に変形することになるため、より確実に、フレームを安定して座屈変形を生じさせることができる。
よって、フレームの座屈変形を、より精度よく生じさせることができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、断面が略等しい複数のパイプ部材だけでフレーム構造を構成するため、フレームには、常時安定した座屈変形を生じさせることができ、複数のパイプ部材で、確実に衝撃吸収エネルギーを高めることができる。
よって、軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造において、確実に軸方向に座屈変形を生じるように構成して、常に大きな衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、第一実施形態について説明する。図1は本発明の自動車のフレーム構造をクラッシュカンとして使用した車体前部構造の前方斜視図、図2はクラッシュカンの全体斜視図、図3はクラッシュカンの前端部の斜視図、図4はクラッシュカンの正面図である。なお、本実施形態では、右側前部の車体構造だけを示している。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、車体前部に、車体前後方向に延びる断面略矩形状のフロントサイドフレーム1を設けている。このフロントサイドフレーム1の前端部には、平板状のセットプレート2を介して車体前後方向に延びるクラッシュカン3を設けている。また、そのクラッシュカン3の前端部には、車幅方向に延びて左右のクラッシュカン3(左側は図示せず)を掛け渡すバンパーレインメンバー4を設けている。
【0033】
フロントサイドフレーム1の後部には、下方に屈曲して傾斜する屈曲部5を形成している。そして、この屈曲部5の下端には、車体フロア(図示せず)下面で車体前後方向に延びるフロアフレーム6を結合固定している。
【0034】
この屈曲部5の車幅内方側側面には、車幅内方側に、傾斜して延びる傾斜連結メンバー7を結合固定している。この傾斜連結メンバー7は、図示しないダッシュパネル下部のダッシュクロスメンバーに接合固定している。
【0035】
また、屈曲部5の下面には、サスペンションクロスメンバー(図示せず)を締結固定するサスクロス取付けブラケット8を接合固定している。
【0036】
さらに、屈曲部5の前方上面には、上方且つ後方に向って延び、図示しないヒンジピラーに連結される上部連結メンバー9を、接合固定している。
【0037】
こうして、フロントサイドフレーム1の後部を補強することで、車体前方からフロントサイドフレーム1に入力される衝突荷重を、車体後方側に分散して伝達するように構成している。
【0038】
前述のクラッシュカン3は、複数の円筒パイプ11…を集合させて結合した、いわゆる「集合パイプ体」で構成している。この集合パイプ体で構成したクラッシュカン3は、図2にも示すように、五本の円筒パイプ11…を、上部二本11A,11Bと下部二本11D,11Eと中央一本11Cで、略縦長形状に組み合わることで構成している。
【0039】
具体的に、このクラッシュカン3は、鋼材で成形した同一の直径d(本実施形態は30mm)の円筒パイプ五本11A,11B,11C,11D,11Eを、車体前後方向(図面では上下方向)に並ぶように組み合せ、後述するように、隣り合う各円筒パイプ同士を、それぞれ接合して構成している。
【0040】
このクラッシュカン3の前後方向長さは、約150mmに設定して、車体前後方向のクラッシュスペースを確保している。なお、円筒パイプの板厚t(本実施形態は1mm)も全て同一である。
【0041】
このクラッシュカン3は、車体前後方向の荷重が作用すると、軸方向に座屈変形をして、衝突エネルギーを吸収するように構成している。特に、このクラッシュカン3は、同時に五本の円筒パイプ11A,11B,11C,11D,11Eを座屈変形させるため、荷重吸収量を従来のクラッシュカンよりも高めることができ、エネルギー吸収量を多くすることができる。
【0042】
この集合パイプ体の前端から後方側へS(本実施形態は約15mm)の位置には、衝突荷重が作用した際に、クラッシュカン3の潰れ形状を規定する変形促進部たる横ビード12…を設けている。なお、このSは、円筒パイプの潰れ周期のピッチによって変化する。
【0043】
この横ビード12は、図3に示すように、全ての円筒パイプ11に、約120度間隔で設けた、内凹形状で形成している。この横ビード12は、後述するように、クラッシュカン3が座屈変形する際に、座屈変形の「きっかけ」を与えている。
【0044】
また、クラッシュカン3には、図3に示すように、隣り合う円筒パイプ11同士を接合する複数の接合部位13,14,15,16,17,18を設定している。
具体的に、この接合部位は、上部二本11A,11Bの間に最上部接合部位13を設定し、上部二本11A、11Bと中央一本11Cの間に上側部接合部位を二箇所14,15設定して、そして、下部二本11D,11Eと中央一本11Cの間に下側部接合部位を二箇所16,17設定し、さらに、下部二本11D,11Eの間に最下部接合部位18を設定している。
【0045】
そして、これらの接合部位13,14,15,16,17,18は、円筒パイプ11の軸方向に、ほぼ全域に亘って略直線状に延設するように設定している。このように接合部位を設定することで、円筒パイプ11間の接合強度を高めている。
【0046】
なお、この円筒パイプ11間の接合は、レーザー溶接等によって行なうことが考えられる。例えば、円筒パイプ11内に、光ファイバー等を用いたレーザーガンを差し込み、各接合部位13,14,15,16,17,18を円筒パイプ11内から加熱して、円筒パイプ11間の接触点を溶解させて、溶接を行なう。
【0047】
この接合部位13,14,15,16,17,18の位置関係について、図4でより詳細に説明する。
図4に示すように、各円筒パイプ11の接合部位は、最上部接合部位13と、二箇所の上側部接合部位14,15と、二箇所の下側部接合部位16,17と、最下部接合部位18との、計六点で構成している。
【0048】
そして、上部の三点、すなわち、最上部接合部位13と上側部接合部位の二箇所14,15の三点を結んで構成される図形Rが、「正三角形」となるように設定している。また、下部の三点、すなわち、最下部接合部位18と下側部接合部位の二箇所16,17の三点を結んで構成される図形Qが「逆正三角形」となるように設定している。そして、この「正三角形」Rと「逆正三角形」Qが、中央の円筒パイプ11Cを挟んで上下対称となるように設定している。
【0049】
これは、円筒パイプ11の座屈変形時の変形挙動を考慮して、こうした接合部位に設定しているのである。
【0050】
図5は、円筒パイプの座屈変形時の断面形状の変形状態を示した模式図であり、(a)は座屈変形前の円筒パイプの側面図とA−A断面図であり、(b)は座屈変形後の円筒パイプの側面図とB−B断面図、C−C断面図である。なお、この円筒パイプのモデルも、直径30mm、板厚1mmの鋼材パイプである。
【0051】
(a)に示すように、円筒パイプ11は、座屈変形前には真円形状の円筒断面を有している。
【0052】
この円筒パイプ11が、車体前後方向荷重を受けて座屈変形する場合には、(b)に示すように、座屈変形の潰れ周期の半ピッチ毎に、断面形状が「正三角形」と「逆正三角形」を繰返して変形する。
【0053】
これは、「面」を構成する最小の多角形が三角形であるため、圧縮力を受けて円筒断面が外周側に拡張しようとする際、局所的に三点に応力集中が生じて、「正三角形」断面と、「正逆三角形」断面を周期的に繰返して、座屈変形していくと考えられるからである。
【0054】
このように、断面形状が「正三角形」と「正逆三角形」を繰り返しながら変形していくため、円筒パイプ11の接合部位は、この繰り返し変形を阻害しないように設定する必要がある。
【0055】
そこで、本実施形態では、図6、図7に示すように変形状態を考慮して、接合部位を設定している。図6はクラッシュカンの正面図に右側を頂点とする三角形の変形モデルを加えた図であり、図7はクラッシュカンの正面図に左側を頂点とする三角形の変形モデルを加えた図である。
【0056】
まず、図6に示すように、断面形状が右側を頂点とする三角形に変形する部分では、各接合部位が矢印に示すように移動する。すなわち、最上部接合部位13が右側に移動(13a)して、上側部接合部位の右側部位15が左斜め下側に移動(15a)して、左側部位14が左斜め上側に移動(14a)する。また、最下部接合部位18が右側に移動(18a)して、下側部接合部位の右側部位17が左斜め上側に移動(17a)して、左側部位16が左斜め下側に移動(16a)する。
【0057】
一方、図7に示すように、断面形状が左側を頂点とする三角形に変形する部分では、各接合部位が矢印に示すように移動する。すなわち、最上部接合部位13が左側に移動(13b)して、上側部接合部位の右側部位15が右斜め上側に移動(15b)して、左側部位14が右斜め下側に移動(14b)する。また、最下部接合部位18が左側に移動(18b)して、下側部接合部位の右側部位17が右斜め下側に移動(17b)して、左側部位16が右斜め上側に移動(16b)する。
【0058】
このように、各接合部位13,14,15,16,17,18は、円筒パイプ11の断面形状の繰り返し変形に即して往復移動することになる。
【0059】
もっとも、こうした接合部位の移動は、円筒パイプ11の変形を阻害することなく、また、各円筒パイプ11間の接合状態も維持することができる。
【0060】
仮に、各接合部位を「正四角形」を構成するように設定した場合には、円筒パイプ11の断面変形に即して接合部位が移動しないため、円筒パイプ11の座屈変形を阻害したり、また、円筒パイプ11間の接合が剥離したりするおそれがある。
【0061】
こうした点に関し、本実施形態では、前述のように、各接合部位13,14,15,16,17,18を、「正三角形」と「逆正三角形」を構成するように設定しているため、各円筒パイプ11間の接合状態を維持した状態で、クラッシュカン3の座屈変形を許容できる。
【0062】
このように、各接合部位13,14,15,16,17,18がクラッシュカン3の座屈変形を阻害しないため、本実施形態のクラッシュカン3では、全て円筒パイプ11が完全に座屈変形をして、衝突エネルギーを確実に吸収することができる。
図8に、クラッシュカンの座屈変形前と座屈変形後の状態を示す。図8(a)が座屈変形前のクラッシュカンの側面図、(b)が座屈変形後のクラッシュカンの側面図である。
【0063】
(a)に示すように、フロントサイドフレーム1の前端部にセットプレート2を介して取り付けられたクラッシュカン3は、車体前後方向に延びて、車体前後方向のクラッシュスペースを確保している。
【0064】
クラッシュカン3の前部側面には、前述した変形促進部たる横ビード12を設けている。
この横ビード12は、円筒パイプ11の断面形状が「三角形」に変形する際に、「三角形」の「辺」になるように設定している。すなわち、この横ビード12を設けることで、横ビード12を設けていない円周部19の剛性が相対的に高まることになり、圧縮荷重を受けた際には、この円周部19に応力が集中して三角形の頂点となるような変形が生じ、結果的に、横ビード12が「辺」になるように設定している。
【0065】
なお、この横ビード12の代わりに「横スリット」を設けてもよい。「横スリット」の場合も、横スリットを設けていない円筒部の剛性が相対的に高まるため、圧縮荷重を受けた際に、この円周部に応力が集中して三角形の頂点となるような変形が生じ、結果的に、横スリットが「辺」になるからである。
【0066】
このように、横ビード12を形成することで、円筒パイプ11の潰れ周期のピッチの起点と断面形状を規定できるため、各円筒パイプ11は、全て同位相で同じ断面形状で座屈変形することになる。
【0067】
(b)に示すように、車体前方から衝突荷重を受けた際に、クラッシュカン3は、フロントサイドフレーム1の前方で座屈変形する。このとき、全ての円筒パイプ11は、まったく同様に、軸方向に山折れと谷折れを繰り返して座屈変形する。
【0068】
この座屈変形の潰れ周期のピッチPは、円筒パイプ11の板厚が一定の場合、直径dに依存しており、直径dが小さくなればピッチPも小さくなり、直径dが大きくなればピッチPも大きくなる(本実施形態では非圧縮時30mm)。
【0069】
この実施形態では、円筒パイプ11の直径dが小さいため、潰れ周期のピッチPも小さくなり、図に示すように、座屈変形後のクラッシュカン3の径方向の外形も、従来の四角柱状のクラッシュカンより、比較的小さなものとなる。
【0070】
また、潰れ周期のピッチPが小さいことで、接合部位の径方向の移動量も少なくて済むため、接合部位の剥離も確実に防止できる。
【0071】
図9は、本実施形態のクラッシュカンと従来構造のクラッシュカンの衝突エネルギー吸収状態を比較するグラフを示した図である。このグラフは、縦軸を吸収荷重、横軸をストローク量で示している。
【0072】
本実施形態のクラッシュカン3の荷重特性ラインは、Xに示した特性ラインである。これに対して、従来の四角柱状のクラッシュカン3の荷重特性ラインは、Zに示した特性ラインである。なお、Yは、後述する矩形パイプを集合結合したクラッシュカン3の荷重特性ラインである。
【0073】
このグラフに示すように、本実施形態のクラッシュカン3の荷重特性Xは、衝突初期の荷重ピーク値Xpにおいて最も高い値を示し、その後、大きな吸収荷重を維持したまま、ストロークして(潰れて)いく。
【0074】
つまり、本実施形態の平均荷重Xmは、従来構造の荷重特性Zの約4倍以上の値となり、衝突エネルギーの吸収性能が従来構造と比較して極めて高くなっていることが分かる。
【0075】
これは、前述したように、円筒パイプという質量効率の高い衝撃吸収体を、五本同時に座屈変形させているためである。
【0076】
よって、本実施形態のクラッシュカン3によると、極めて高い衝撃吸収性能を得ることができる。
【0077】
次に、図16によって、このクラッシュカン3がどの程度の直径と板厚の円筒パイプで確実に座屈変形するかを説明する。
図16は、前後方向の長さが約150mmの円筒パイプの板厚と直径を変化させてクラッシュカンを座屈変形させた場合のグラフを示した図である。このグラフでは、縦軸を円筒パイプ11の直径d、横軸を円筒パイプ11の板厚tで示している。
【0078】
このグラフでは、○は円筒パイプが三角形断面で座屈変形した場合を示し、×は円筒パイプが三角形断面以外で座屈変形した場合を示している。また、ハッチングドット領域については、密なドット領域が全ての円筒パイプが三角形断面で座屈変形する領域であり、疎なドット領域が三角形断面と四角形断面で座屈変形する領域である。さらに、ハッチングがない領域は、座屈変形しない領域であり横折れ変形等により、衝突エネルギーの吸収をほとんど行なわない領域を示している。
【0079】
このグラフの範囲に限っていえば、円筒パイプが断面形状を三角形断面で変形する領域は、板厚tが0.4〜2.0mmで、直径dが20〜80mmの範囲であることが分かる。また、同じ直径dでも板厚tが薄ければ、三角形断面で変形するだけでなく四角形断面等で変形することが分かる。さらに、同じ板厚tでも直径dが小さい場合や、また大きすぎる場合も、全て三角形断面で潰れない場合があることが分かる。
【0080】
本実施形態のように、板厚tが1.0mm、直径dが38mmの場合(T)には、確実に全ての円筒パイプ11が三角形断面で座屈変形していくことが分かる。
こうしたことから、本発明を効果的に実施するためには、このグラフの密なドット領域の板厚tと直径dで円筒パイプを設計して、クラッシュカン3を構成することが望ましいことが分かる。
【0081】
次に、このように構成された本実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態のフレーム構造は、クラッシュカン3を、直径dが等しい円筒パイプ11だけを複数集合して結合することで構成して、このうち、少なくとも三本の円筒パイプ11A,11B,11Cの接合部位13,14,15が、断面視で正三角形(R)となるように設定している。
【0082】
これにより、クラッシュカン3は、座屈変形時に、全ての円筒パイプ11が同一の潰れ周期で変形することになる。また、円筒パイプ11の接合部位13,14,15も、断面視で正三角形(R)となるように設定しているため、座屈変形時には、円筒パイプ11間の剥離を防止することができる。
このため、クラッシュカン3には、常時安定した座屈変形が生じて、複数の円筒パイプ11で確実に衝撃吸収エネルギーを高めることができる。
よって、軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造において、確実に軸方向に座屈変形を生じるように構成して、常に大きな衝突エネルギーの吸収量を得ることができる。
【0083】
特に、円筒パイプ11を集合結合して、クラッシュカン3としているため、質量効率(衝突エネルギーの吸収量を、円筒パイプの質量で割った値)の高いクラッシュカン3とすることができ、極めて衝撃吸収性能の高いクラッシュカン3を得ることができる。
【0084】
また、この実施形態では、五本の円筒パイプを、中央の円筒パイプ11Cに、上部二本の円筒パイプ11A,11Bと下部二本の円筒パイプ11D,11Eを接合することで、クラッシュカン3を構成している。
【0085】
これにより、中央の円筒パイプ11Cを中心にして、四本の円筒パイプ11A,11B,11D,11Eを、それぞれ反対側に二本ずつ配置して、合計五本の円筒パイプ11を、各接合部位13,14,15,16,17,18の「正三角形」R,Qの関係を崩すことなく結合できる。
このため、クラッシュカン3を構成するパイプ部材を円筒パイプ11で構成しても、クラッシュカン3の外形ラインを、略縦長形状に構成することができ、略長方形断面のフロントサイドフレーム1に対して、容易に連結することができる。また、フロントサイドフレーム1に対して、効率的に衝突荷重も伝達することができる。
よって、複数の円筒パイプ11を結合して構成したクラッシュカン3を、フロントサイドフレーム1に対して、容易に且つ効率的に組付けることができる。また、五本の円筒パイプ11A,11B,11C,11D,11Eで構成したことで、耐荷重性も飛躍的に向上することができる。
【0086】
また、この実施形態では、円筒パイプ11の先端側面に、隣り合う円筒パイプ11の座屈変形時の断面形状を同相にする変形促進部たる横ビード12を形成している。
これにより、座屈変形時の断面形状が座屈初めに規定されることになり、その後の座屈変形時の断面形状を一定にすることができる。
このため、各円筒パイプ11の断面変形が確実に一定になるため、接合部位13,14,15,16,17,18の剥離を確実に防止することができる。
よって、より確実に円筒パイプ11間の剥離を防止して、確実に衝突エネルギーの吸収量を高めることができる。
【0087】
また、この実施形態では、円筒パイプ11の先端側面に、単に横ビード12を形成するだけで、変形促進を行っている。
これにより、円筒パイプ11に僅かな加工を施すだけで、座屈変形の変形促進を行なうことができる。よって、部品点数を増加させることなく、潰れのきっかけを容易に形成することができる。
【0088】
また、この実施形態では、この横ビード12を、隣り合う円筒パイプ11で同相位置に形成している。
これにより、隣り合う円筒パイプ11が、必ず断面形状を同相にして座屈変形することになる。よって、隣り合う円筒パイプ11が、規則正しく座屈変形することになり、確実にクラッシュカン3を座屈変形させることができる。
【0089】
また、この実施形態では、円筒パイプ11を集合結合した集合パイプ体を、クラッシュカン3として使用している。
これにより、クラッシュカン3の衝突エネルギーの吸収量をより増加させることができる。よって、座屈変形時の衝突初期における衝撃吸収性能を高めることができ、自動車の衝突安全性能を高めることができる。
【0090】
次に、第二実施形態について、図10を利用して説明する。
図10はクラッシュカンの座屈変形後のフロントサイドフレーム前部の変形状態を示した側面図である。(a)が変形初期を示した図、(b)が変形中期を示した図、(c)が変形後期を示した図である。
【0091】
この実施形態では、クラッシュカン3の大きさとセットプレート2の強度を工夫することで、クラッシュカン3の座屈変形後、クラッシュカン3の一部をフロントサイドフレーム1内に陥没させることで、車体前部のクラッシュスペースを増大するように構成したものである。なお、その他の構成要素については、第一実施形態と同様である。
【0092】
(a)に示すように、クラッシュカン3が座屈変形した状態でクラッシュカン3の径方向の大きさWは、フロントサイドフレームの内部空間の径方向の大きさHよりも小さくなるように設定している。
【0093】
そして、セットプレートの車体前後方向強度は、クラッシュカン3の前後方向強度よりも高く、フロントサイドフレームの前後方向強度よりも低く設定している。
【0094】
このように、クラッシュカン3の大きさとセットプレート2の強度を設定していることにより、以下のような変形挙動が生じることになる。
【0095】
(a)に示すように、クラッシュカン3の座屈変形が完了するまでは、セットプレート2は変形することなく、クラッシュカン3からの衝突荷重を支え、この衝突荷重をフロントサイドフレーム1に伝達する。
【0096】
クラッシュカン3の座屈変形が完了した後には、(b)に示すように、セットプレート2の中央部2aがフロントサイドフレーム1側(図面右側)に窪むように変形する。
【0097】
これにより、クラッシュカン3の後部が、フロントサイドフレーム1内に陥没する。この陥没量は、セットプレート2の大きさや、衝突荷重により変動する。
【0098】
特に、本実施形態のように、クラッシュカン3を集合パイプ体で構成した場合には、セットプレート2の中央部2aに、大きな衝突荷重が伝達されるため、こうした陥没が生じやすい。
【0099】
その後、セットプレート2の変形が完了すると、(c)に示すように、フロントサイドフレーム1の前部1aにも、座屈変形が生じる。これにより、フロントサイドフレーム1でも、衝突エネルギーの吸収が行なわれる。
【0100】
以上のように、本実施形態では、セットプレート2が窪むように変形することにより、座屈変形後のクラッシュカン3の一部が、フロントサイドフレーム1内に陥没することになる。
このため、陥没したクラッシュカン3の長さ分も含めて、車体前後方向のクラッシュスペースを増大することができる。
よって、前面衝突時のフロントサイドフレーム1の後退量を抑えることができ、ダッシュパネル(図示せず)への衝突時の影響を少なくすることができる。
【0101】
次に、第三実施形態について、図11、図12を利用して説明する。
図11は第三実施形態のクラッシュカンの前端部の斜視図であり、図12はクラッシュカンの正面図に各矩形パイプの変形モデルを加えた図である。
【0102】
この実施形態は、クラッシュカン103を、断面略正方形の矩形パイプ51を六本集合させて結合した集合パイプ体で、構成したものである。なお、その他の構成は、第一実施形態を同様である。
【0103】
この実施形態のクラッシュカン103は、図11に示すように、六本の正方形断面の矩形パイプ51を、縦三本、横二本の長方形形状に組合せて、各矩形パイプ51…間を、それぞれ接合した集合パイプ体で構成している。
【0104】
この矩形パイプ51間の接合部位52は、図12に示すように、各々隣り合う「辺」の中央部分53を接合することで、構成している。すなわち、矩形パイプ51の隣り合う「辺」51aの全幅を接合するのではなく、中央部分53のみを接合するのである。
【0105】
これは、図12にも示すように、矩形パイプ51の座屈変形時には、矩形パイプ51の断面形状が、「縦長の略長方形」Iと「横長の略長方形」Hとを繰り返すように変形するため、この断面形状の変形挙動を阻害しないようにするためである。
【0106】
仮に、一辺51aの全てを接合した場合には、矩形パイプ51間の接合強度が高まり、座屈変形時の剥離が防止できるように思える。しかし、前述したように、矩形パイプ51が座屈変形する場合には、縦長の略長方形Iと横長の略長方形Hが繰り返して発生するため、一辺51aの全てを接合すると、隣り合う矩形パイプ51が互いの座屈変形を阻害することになり、クラッシュカン103全体として座屈変形が生じず、矩形パイプ51間に剥離が生じてしまうおそれがある。
【0107】
そこで、本実施形態では、矩形パイプ51の隣り合う「辺」51aの全てを接合するのではなく、中央部分53のみを接合しているのである。
【0108】
また、図11に示すように、本実施形態のクラッシュカン3の前部側面には、座屈変形時の断面形状を規定して、座屈変形のきっかけとなる変形促進部たる横溝ビード54を形成している。
【0109】
この横溝ビード54は、各矩形パイプ51の対向する面に、それぞれ矩形パイプ51の直交方向に延びる凹状の溝で構成している。そして、この横溝ビード54は、隣り合う矩形パイプ51毎に、90°づつズレた逆相位置に形成している。
【0110】
矩形パイプ51は、この横溝ビード54を形成することで、横溝ビード54を起点として座屈変形することになる。座屈変形時には、この横溝ビード54を形成していない辺55に応力が集中して、この横溝ビード54を形成していない辺55が外方側に突出変形するため、断面形状は、横溝ビード54を形成した辺が長方形の長辺となるような変形が生じる。
【0111】
このため、図12に示すように、隣り合う矩形パイプ51は、確実にそれぞれが交互に「横長の略長方形」Hと「縦長の略長方形」Iに変形することになり、矩形パイプ51間の接合部位が剥離するのを防止できる。
【0112】
よって、矩形パイプ51を集合して結合したクラッシュカン103においても、全ての矩形パイプ51…を座屈変形させることができ、衝突エネルギーを吸収させることができる。
【0113】
このクラッシュカン103の衝撃吸収性能について、図9のグラフで示す。
このクラッシュカン3の荷重特性ラインは、前述のように、Yに示した特性ラインである。
【0114】
このグラフに示すように、本実施形態のクラッシュカン103の平均荷重Ymは、円筒パイプ11のクラッシュカン3のXの値よりも低い値になるものの、従来構造のZの平均荷重Zmよりも、二倍程度高い値となる。
【0115】
よって、本実施形態のクラッシュカン3によっても、従来構造よりも高い衝撃エネルギー吸収性能を得ることができる。
【0116】
また、具体的には図示しないが、本実施形態のクラッシュカン103の場合、断面形状が長方形となっているため、フロントサイドフレーム1等に対して連結することが容易になり、また、衝突荷重も効率的に伝達できる。
【0117】
次に、この実施形態の作用効果について説明する。
この実施形態では、クラッシュカン103を、断面積が等しい正方形の矩形パイプ51だけを複数集合させて、隣り合う矩形パイプ51の隣接する辺51a同士を、少なくとも両端を除く中央位置53で接合(52)して構成している。
【0118】
これにより、クラッシュカン3は、座屈変形時に全ての矩形パイプ51が同一の潰れ周期で変形することになる。また、接合部位52を隣接する辺同士の中間位置52に設定することで、座屈変形時には、矩形パイプ51間の剥離を防止することができる。
よって、矩形パイプ51を集合してクラッシュカン3を構成できるため、一般的なフロントサイドフレーム1等に対して、容易に連結を行なうことができる。
【0119】
また、この実施形態では、矩形パイプ51の先端側面に、隣り合う矩形パイプ51の座屈変形時の断面形状が逆相となるように、座屈変形を励起する横溝ビード54を形成している。
これにより、矩形パイプ51の座屈変形時の形状が座屈初めに規定されることになり、その後の座屈変形時の断面形状を一定のものにできる。
このため、各矩形パイプ51の変形形状が確実に一定になるため、接合部位53の剥離を防止することができる。
よって、より確実に矩形パイプ51間の剥離を防止して、確実に衝突エネルギーの吸収量を高めることができる。
【0120】
また、この実施形態では、隣り合う矩形パイプ51の横溝ビード54を、逆相位置に設定している。
これにより、隣り合う矩形パイプ51が座屈変形する際には、必ず断面形状の変形形状が逆相(H、I参照)になる。よって、隣り合う矩形パイプ51が、規則正しく座屈変形することになり、確実にクラッシュカン3を軸方向に座屈変形させることができる。
なお、この実施形態では、横溝ビード54で変形促進部を構成したが、例えば、開口した横スリットで、同様に変形促進部を構成してもよい。
【0121】
次に、第四実施形態について、図13、図14を利用して説明する。
図13は、本発明の自動車のフレーム構造を、クラッシュカンとフロントサイドフレームに使用した車体前部構造の前方斜視図であり、図14は図13のD−D断面図である。
【0122】
この実施形態は、図13に示すように、本発明の自動車のフレーム構造を、クラッシュカン3のみならず、フロントサイドフレーム201にも使用したものである。
すなわち、フロントサイドフレーム201も、円筒パイプ61を集合結合した集合パイプ体で構成することで、車体の衝突エネルギーを吸収性能を高めているのである。
【0123】
フロントサイドフレーム201の後部には、斜め下方に屈曲する矩形の屈曲フレーム62を設けており、この屈曲フレーム62の前部にフロントサイドフレーム201を連結固定している。
【0124】
このフロントサイドフレーム201は、前方から第一座屈変形部63、エンジンマウント支持部64、第二座屈変形部65とに分けられ、車体前後方向に略直線状に延びている。以下、それぞれについて説明する。
【0125】
まず、第一座屈変形部63は、クラッシュカン3と同様、車体前方から衝突荷重が作用すると、軸方向に座屈変形をして、衝突エネルギーを吸収する。この第一座屈変形部63は、フロントサイドフレーム201の中で最も先に座屈変形する。
【0126】
エンジンマウント支持部64は、フロントサイドフレーム201の前後方向中央部に設けられ、この上方にエンジンマウント66を設置している。このエンジンマウント66では、図示しないエンジンを支持している。
【0127】
このエンジンマウント支持部64は、図14に示すように、板厚m1を最も厚くしている。この板厚m1は、外側の円筒パイプ61の内部に小径パイプ67を圧入して固定することで厚くしている。なお、68は、エンジンマウント66を取付ける取り付け穴である。
【0128】
エンジンマウント支持部64の板厚m1を、他の部分より厚くすることで、エンジンマウント支持部64は、エンジンマウント66の支持剛性を高める共にも、この部分での座屈変形の発生を抑えている。
【0129】
第二座屈変形部65は、エンジンマウント支持部64の後方位置に設けられており、第一座屈変形部63が座屈変形した後に、さらに座屈変形するように設定している。この第二座屈変形部65が座屈することで、大きな衝突エネルギーを吸収することができる。
【0130】
この第二座屈変形部65の板厚m2は、図14に示すように、第一座屈変形63の板厚m3よりは厚いものの、エンジンマウント支持部64の板厚m1よりは薄くなるように設定している。
【0131】
このため、第二座屈変形部65は、衝突荷重が作用すると、第一座屈変形部63が座屈変形した後に座屈変形するようになっている。
【0132】
但し、この第二座屈変形部65では、円筒パイプ61の座屈変形が、一旦エンジンマウント支持部64で止まるため、再度、座屈変形が生じるように設定する必要がある。
【0133】
そこで、この実施形態では、図13に示すように、第二座屈変形部65の前部に変形促進部たる横ビード69を形成している。
【0134】
このように、横ビード69を設けることで、再度の座屈変形でも、安定した座屈変形が生じることになり、第二座屈変形部65を確実に座屈変形させることができる。
【0135】
以上のように、この実施形態では、フロントサイドフレーム201を集合パイプ体で構成して、このフロントサイドフレーム201に、軸方向で板厚が変化(m1,m2,m3)するエンジンマウント支持部64や第二座屈変形部65を設けている。
これにより、フロントサイドフレーム201の軸圧縮状態を座屈変形の途中で変化させることができる。
よって、フロントサイドフレーム201の座屈変形を任意に変化させることができ、フロントサイドフレーム201の座屈変形状態を自由に変化させることができる。
【0136】
また、この実施形態では、フロントサイドフレーム201に軸圧縮しないエンジンマウント支持部64を設定している。
これにより、フロントサイドフレーム201を集合パイプ体で構成したとしても、このエンジンマウント支持部64で、エンジンを支持することができる。
よって、フロントサイドフレーム201を、座屈変形する部分とエンジンを支持する部分とに使い分けることができ、効率的にフロントサイドフレーム201を使用することができる。
【0137】
また、この実施形態では、エンジンマウント支持部64の軸方向直後位置に、横ビード69を形成している。
これにより、エンジンマウント支持部64で座屈変形が生じずに、座屈変形が止まる場合でも、横ビード69をきっかけとして、再度座屈変形を生じさせることができる。
このため、フロントサイドフレーム201の中間部に、エンジンマウント支持部64を設定した場合でも、その後方位置の第二座屈変形部65で、座屈変形を生じさせることができ、フロントサイドフレーム201を、第一座屈変形部63と第二座屈変形部65で、より多く座屈変形させることができる。
よって、フロントサイドフレーム201を、より効率的に座屈変形させることができる。
【0138】
次に、第五実施形態について、図15により説明する。図15は、第五実施形態のクラッシュカンの斜視図である。
【0139】
この実施形態は、クラッシュカン203を、円筒パイプ71を螺旋状に捩じって集合結合した集合パイプ体で、構成したものである。
すなわち、外周側の円筒パイプ71を、中央の円筒パイプ(71C)に対して時計回りに螺旋状で結合することで、クラッシュカン3を構成したものである。
【0140】
このように、クラッシュカン3を構成することで、各円筒パイプ71間の結合強度が低い場合であっても、座屈変形時には、各円筒パイプ71同士が絡み合いながら変形するため、各円筒パイプ71の集合状態がバラつかず、確実に座屈変形することになる。
【0141】
よって、この実施形態によると、座屈変形時においても、クラッシュカン203の円筒パイプ71の結合状態が維持されて、衝突エネルギーの吸収性能を高めることができる。
【0142】
なお、本実施形態のクラッシュカン203では、外周側の円筒パイプ71を、中央の円筒パイプ(71C)に時計廻りに結合したが、逆に、反時計廻りに螺旋状に結合してもよい。
【0143】
次に、第六実施形態について、図17により説明する。図17は、第六実施形態の円筒パイプの断面図である。
【0144】
この実施形態は、クラッシュカンを構成する円筒パイプを、より安定して座屈変形させるため、略円筒状のプリフォームを利用して円筒パイプを成形して、円筒パイプ内で部分的に強度差を生じさせたものである。
すなわち、例えば、特開2007−268586公報等に記載された強化繊維で成形したプリフォームを、鋳型内にセットしておき、そのプリフォームを金属の母材で鋳込むことで、円筒パイプを成形するものである。
【0145】
具体的には、図17に示すように、円筒プレート形状で三方(120度間隔)に突出部301を設けたプリフォーム300を、半ピッチ毎60度ずらして積層し、この積層したものを母材302で鋳込むことで、強度差を持たせた円筒パイプ304を成形している。
【0146】
この円筒パイプ304では、図示するように、座屈変形時には、三角形の辺K1となる部分がちょうど「突出部301」となるように変形する。すなわち、突出部301を設けた部分の強度が高まり、その他の部分305が相対的に強度が低下するため、強度が低い部分に応力集中が生じて、三角形の頂点K2がその他の部分305に形成され、三角形の辺K1が突出部301に生じるのである。
【0147】
したがって、本実施形態の円筒パイプ304によると、確実に座屈変形時の断面形状を規定できるため、より安定してクラッシュカンを座屈変形させることができる。
【0148】
なお、こうしたプリフォームを用いることなく、厚肉部を形成して強度差を生じさせたり、焼入れ加工によって強度差を生じさせたり、鍛造加工、ショットピーニング加工等によって、強度差を生じさせたりしてもよい。
【0149】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明のフレーム構造は、実施形態のクラッシュカン3,103,203、フロントサイドフレーム201に対応し、
以下、同様に、
剥離防止手段は、接合部位13,14,15,16,17,18、及び接合部位52に対応し、
変形促進部は、横ビード12、横溝ビード54に対応し、
軸圧縮状態変更部は、第一座屈変形部63、エンジンマウント支持部64、第二座屈変形部65に対応し、
非軸圧縮部は、エンジンマウント支持部64に対応し、
脆弱部は、横ビード69に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる自動車のフレーム構造に適用する実施形態を含むものである。
【0150】
本実施形態では、車体前部構造のクラッシュカンや、フロントサイドフレームで説明したが、本発明は、これに限られず、車体後部のクラッシュカンやリヤサイドフレームで採用してもよい。また、パイプ部材の形状も、円筒や矩形に限られず、六角形等の多角形であってもよい。
パイプ部材の材料も、鋼材だけでなく、アルミ等の軽金属であってもよい。また、結合構造も、溶接だけでなく、嵌合、圧着等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の自動車のフレーム構造をクラッシュカンとして使用した車体前部構造の前方斜視図。
【図2】クラッシュカンの全体斜視図。
【図3】クラッシュカンの前端部の斜視図。
【図4】クラッシュカンの正面図。
【図5】円筒パイプの座屈変形時の断面形状の変形状態を示した模式図で、(a)は座屈変形前の円筒パイプの側面図とA−A断面図であり、(b)は座屈変形後の円筒パイプの側面図とB−B断面図、C−C断面図。
【図6】クラッシュカンの正面図に右側を頂点とする三角形の変形モデルを加えた図。
【図7】クラッシュカンの正面図に左側を頂点とする三角形の変形モデルを加えた図。
【図8】(a)が座屈変形前のクラッシュカンの側面図、(b)が座屈変形後のクラッシュカンの側面図。
【図9】本実施形態のクラッシュカンと従来構造のクラッシュカンの衝突エネルギー吸収状態を比較するグラフを示した図。
【図10】クラッシュカンの座屈変形後のフロントサイドフレーム前部の変形状態を示した側面図で(a)が変形初期を示した図、(b)が変形中期を示した図、(c)が変形後期を示した図。
【図11】第三実施形態のクラッシュカンの前端部の斜視図。
【図12】クラッシュカンの正面図に各矩形パイプの変形モデルを加えた図。
【図13】本発明の自動車のフレーム構造を、クラッシュカンとフロントサイドフレームに使用した車体前部構造の前方斜視図。
【図14】図13のD−D断面図。
【図15】第五実施形態のクラッシュカンの斜視図。
【図16】円筒パイプの板厚と直径を変化させてクラッシュカンを座屈変形させた場合のグラフを示した図。
【図17】第六実施形態の円筒パイプの断面図。
【符号の説明】
【0152】
1,201…フロントサイドフレーム
2…セットプレート
3,103,203…クラッシュカン
11…円筒パイプ
12…横ビード
13,14,15,16,17,18…接合部位
51…矩形パイプ
52…接合部位
54…横溝ビード
61…円筒パイプ
63…第一座屈変形部
64…エンジンマウント支持部
65…第二座屈変形部
69…横ビード
71…円筒パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる複数の閉断面を備える自動車のフレーム構造であって、
該フレーム構造を、断面が略等しいパイプ部材だけを複数集合して結合することで構成して、
該パイプ部材間に、座屈変形時にパイプ部材同士の結合が剥離しない剥離防止手段を設定した
自動車のフレーム構造。
【請求項2】
前記パイプ部材を、円筒パイプで構成すると共に、
前記剥離防止手段を、少なくとも三本の円筒パイプの結合ポイントが、断面視で正三角形となるように設定することとした
請求項1記載の自動車のフレーム構造。
【請求項3】
前記三本の円筒パイプのうち、一本を中心パイプ部材として設定し、
該中心パイプ部材に、他の二本の円筒パイプと軸対称となるように、新たに二本の円筒パイプを結合した
請求項2記載の自動車のフレーム構造。
【請求項4】
前記円筒パイプの先端に、隣り合う円筒パイプの座屈変形時の断面形状が同相となるように座屈変形を励起する変形促進部を形成した
請求項2又は3記載の自動車のフレーム構造。
【請求項5】
前記変形促進部を、円筒パイプの軸方向に対して直交方向に延びるビード又は開口穴で構成した
請求項4記載の自動車のフレーム構造。
【請求項6】
隣り合う円筒パイプの変形促進部を、同相位置に設定した
請求項5記載の自動車のフレーム構造。
【請求項7】
前記パイプ部材を、矩形パイプで構成すると共に、
前記剥離防止手段を、隣り合うパイプ部材の対向する辺同士が、少なくとも両端を除く中央位置で結合されることとした
請求項1記載の自動車のフレーム構造。
【請求項8】
前記矩形パイプの先端に、隣り合う矩形パイプの座屈変形時の断面形状が逆相となるように、座屈変形を励起する変形促進部を形成した
請求項7記載の自動車のフレーム構造。
【請求項9】
前記変形促進部を、矩形パイプの軸方向に対して直交方向に延びるビード又は開口穴で構成した
請求項8記載の自動車のフレーム構造。
【請求項10】
隣り合う矩形パイプの変形促進部を、逆相位置に設定した
請求項9記載の自動車のフレーム構造。
【請求項11】
前記フレーム構造を、クラッシュカンとして使用した
請求項1〜10いずれかに記載の自動車のフレーム構造。
【請求項12】
前記クラッシュカンの後方に、セットプレートを設置すると共に、
該セットプレートの後方に、フロントサイドフレームを設置して、
前記セットプレートの前後方向強度を、クラッシュカンよりも高く且つフロントサイドフレームよりも低く設定し、
クラッシュカンの座屈変形時の外形寸法を、フロントサイドフレーム内部に陥没する寸法に設定した
請求項11記載の自動車のフレーム構造。
【請求項13】
前記パイプ部材を、軸方向で螺旋状に延びるように設定した
請求項1〜10いずれかに記載の自動車のフレーム構造。
【請求項14】
前記円筒パイプ部材に、軸方向で板厚が変化する軸圧縮状態変更部を設定した
請求項1〜10いずれかに記載の自動車のフレーム構造。
【請求項15】
前記パイプ部材に、軸圧縮しない非軸圧縮部を設定し、
該非軸圧縮部に、所定の車載部品を取り付ける取付け部を設けた
請求項14記載の自動車のフレーム構造。
【請求項16】
前記パイプ部材の軸方向中間部に、非軸圧縮部を設定して、
該非軸圧縮部の軸方向直後位置に、脆弱部を形成した
請求項15記載の自動車のフレーム構造。
【請求項17】
前記円筒パイプは、板厚を0.4mm乃至2.0mmの範囲に設定して、
直径を20mm乃至80mmの範囲に設定した
請求項2〜6いずれかに記載の自動車のフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−202630(P2009−202630A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44309(P2008−44309)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】