説明

自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための方法および装置

本発明は、燃料が車両のタンクに収容され、燃料のアルコール含有量が変化しうる自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための方法であって、燃料供給システムの動作状態を診断するステップ(S6)と、タンクへのアルコールの追加を検出するステップ(S2)と、燃料のアルコール含有量を割り出すステップ(S2bis)と、燃料のアルコール含有量を割り出すステップ(S2bis)が完了した場合に診断ステップ(S6)を開始させる検査ステップ(S4)とを含んでいる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料供給システムの動作状態の診断に関する。
【0002】
特に、本発明は、自動車の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、ガソリンまたはアルコール(例えば、エタノール)のいずれか、あるいはこれら2つの燃料の可変の割合にて動作する内燃機関に、好都合に適用される。
【0004】
汚染軽減の規準がますます厳格になるにつれて、自動車のエンジンにおける燃料の燃焼を調査することが、これらのエンジンが発する汚染を制御するために必要である。したがって、これらのエンジンの燃料供給システムを監視することが、汚染のしきい値の超過を引き起こすシステムの故障を警報ランプを使用して運転者に警告するために必要である。
【0005】
そのような監視が、使用される燃料のアルコール含有量が変化する場合に、乱される可能性がある。さらには、燃料の蒸気がエンジンの油溜めからの油の蒸気と混ざり合う「ブローバイ」として知られる現象が、燃料供給システムの動作状態の監視に無視できない影響を及ぼす。さらに、燃料のアルコール含有量が多いほど、このブローバイ現象が著しくなる。
【0006】
現時点において、燃料供給回路の診断は、空燃比プローブ(ラムダプローブとしても知られる)によってもたらされる情報にもとづいて触媒コンバータへ入る排気ガスのリッチさを調節するために使用される種々のパラメータの監視にもとづいている。「排気ガスのリッチさ」とは、排気ガスに存在する酸素の量を意味する。1種類の燃料にて動作するエンジンの場合、これらのパラメータの変化を監視することで、燃料供給回路の不具合の水準を知ることができる。アルコール含有量が変化しうる燃料にて動作するエンジンの場合には、排気ガスのリッチさを調節するために使用されるパラメータが、システムの不具合によってではなく、アルコール含有量の変化によって変動する。具体的には、アルコール含有量が変化すると、所与のエンジン動作点においてエンジンの出口側におけるリッチさを一定に保つために噴射すべき燃料の量が変化する。そのような場合、燃料供給回路にいかなる劣化も存在していなくても、監視対象のパラメータが変化し、したがって燃料の変化の結果として不具合状態が検出される恐れがきわめて高くなる。
【0007】
さらに、排気ガスのリッチさを設定するために使用される調節が、リッチさを調節する補正部が燃料のアルコール含有量に応じて設定されるため、燃料の種類に応じて大幅に異なる可能性がある。
【0008】
しかしながら、現時点においては、診断が燃料のアルコール含有量を考慮に入れておらず、したがってアルコール分が使用されると、診断の信頼性が保証されない。
【0009】
空燃比プローブによって行われる排気ガスのリッチさの測定にもとづいて自動車の燃料のアルコール含有量を認識するための方法を説明している、本出願の出願人企業の名義で出願済みの仏国特許出願公開第2892769号明細書に言及することができる。しかしながら、この文献は、車両の燃料供給システムの動作状態を診断するための手段を記載していない。
【0010】
アルコール含有の燃料を使用するときに生じる別の問題が存在する。タンクのアルコール含有量が充分に高いとき、噴射されたアルコールの一部が、エンジンの油溜めの油に進入し、次いで特定の条件下で、燃料が気化して吸気マニホールドに進入する。この現象は、排気ガスのリッチさの調節を乱し、燃料供給回路の監視に使用されるパラメータを乱し、したがってエンジンの燃料供給システムの動作状態の診断を乱すという影響を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2892769号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、アルコール含有量が変化しうる燃料のための燃料供給システムの動作状態を監視するための方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための方法であって、燃料が車両のタンクに収容され、燃料のアルコール含有量が変化しうる方法を提供する。
【0014】
この方法は、燃料供給システムの動作状態を診断するステップと、タンクへの燃料の追加を検出するステップと、燃料のアルコール含有量を割り出すステップと、燃料のアルコール含有量を割り出すステップが完了した場合に診断ステップを開始させる検査ステップとを含んでいる。
したがって、診断の結果は、燃料の変化の場合に燃料のアルコール含有量が正しく検出されるまでは考慮されず、燃料の通常の変更にすぎないと考えられる場合に、燃料供給システムが不具合であると診断されることがない。
【0015】
好都合には、この方法が、エンジンオイルに希釈された燃料の気化を検出するステップを含んでおり、検査ステップにおいて、エンジンオイルに希釈された燃料の気化が検出されない場合に診断ステップが開始される。
【0016】
診断の結果が、ブローバイが存在する場合も考慮されず、実際には通常の挙動を呈していると考えられる場合に、燃料供給システムが不具合であると宣告されることがない。
【0017】
この方法は、診断ステップのための診断パラメータを割り出されたアルコール含有量から計算する較正ステップをさらに含むことができる。
【0018】
これにより、燃料のアルコール含有量にかかわらず診断の信頼性を保証するために、診断のパラメータを燃料のアルコール含有量に応じて較正することができる。
【0019】
一実施の形態においては、診断パラメータの計算の際に、診断区間の上限および下限が、割り出されたアルコール含有量から計算され、診断ステップにおいて、診断基準が計算され、この診断基準が診断区間と比較され、診断基準が診断区間の外側である場合に、不具合状態であると診断される。
好都合には、診断パラメータの計算の際に、診断時間が、割り出されたアルコール含有量から計算され、診断ステップにおいて、診断基準が、計算された診断時間において計算される。
【0020】
本発明の別の態様は、燃料が車両のタンクに収容され、燃料のアルコール含有量が変化しうる自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための装置を提供する。
【0021】
この装置は、燃料供給システムの動作状態を診断する診断手段と、タンクへの燃料の追加を検出する検出手段と、燃料のアルコール含有量を割り出す割出し手段と、割出し手段が燃料のアルコール含有量を割り出した場合に、診断手段を作動させる検査手段とを備えている。
【0022】
好都合には、この装置は、エンジンオイルに希釈された燃料の気化を検出する第2の検出手段を備え、検査手段が、第2の検出手段がエンジンオイルに希釈された燃料の気化を検出しない場合に診断手段を作動させることができる。
【0023】
この装置は、診断手段のための診断パラメータを割り出されたアルコール含有量から計算する較正手段をさらに備えることができる。
【0024】
一実施の形態によれば、較正手段が、割り出されたアルコール含有量から診断区間の上限および下限を計算することができ、診断手段が、診断基準を計算する手段と、診断基準を診断区間と比較する手段と、診断基準が診断区間の外側である場合に不具合状態信号を生成する手段とを備えている。
【0025】
好都合には、較正手段が、割り出されたアルコール含有量から診断時間を計算することができ、診断手段が、計算された診断時間において診断基準を計算する手段を備えている。
【0026】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点が、非限定的な例として添付の図面を参照することによって提示される以下の説明を検討することによって、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための装置を概略的に示している。
【図2】自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための方法の主要な段階を概略的に示している。
【図3】燃料供給システムの動作状態を診断する工程の一実施の形態を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1が、自動車の内燃機関3の燃料供給システム2の動作状態を診断するための装置1を概略的に示している。
【0029】
内燃機関3が、少なくとも1つのシリンダ4を有している。この内燃機関3は、機関3の吸気マニホールド6へ空気を運ぶ外気供給管5を備えている。
【0030】
機関3からの排気ガスが、排気マニホールド7によって集められ、次いで排気管8を介して運び去られる。排気管8に、排ガス処理部材9が取り付けられている。排ガス処理部材9は、粒子フィルタ、チッ素酸化物トラップ、触媒コンバータ、またはこれら三者の組合せであってよい。
【0031】
機関3に、主タンク10に収容された燃料が供給される。
【0032】
収容された燃料が、機関3の各々のシリンダ4に組み合わせられた燃料インジェクタ13へ、ポンプ11、フィルタ12、および圧力調節部50を介して運ばれる。
【0033】
燃料供給システム2は、燃料インジェクタ、ポンプ11、フィルタ12、圧力調節部50、および燃料を主タンク10からインジェクタ13へ運ぶ配管を含んでいる。
【0034】
電子制御ユニット(ECU)14が、接続15を介して各々の燃料インジェクタ13の開放時間を制御する。この各々の燃料インジェクタ13の開放時間の制御は、とりわけ、所与の排気ガスのリッチさの値に関して機関に入れられる空気/燃料混合物を調節することを可能にする。
【0035】
さらに装置1は、接続19を介してECU14へ伝えられる排気ガスのリッチさの測定値を発する空燃比プローブ18を備えている。好ましい実施の形態においては、空燃比プローブ18が、排ガス処理部材9の上流に位置している。さらに装置1は、排ガス処理部材9の下流に位置する別の酸素プローブ53を備えることができる。この空燃比プローブ53は、接続54を介してECU14へ伝えられる排気ガスのリッチさの測定値を発する。
【0036】
さらに装置1は、タンク10に存在する燃料の量に関する情報を発する燃料計51を備えており、この情報が、接続52によってECU14へ伝えられる。
【0037】
さらに装置1は、例えば機関3の負荷および機関3の速度などといった機関3の動作に関する情報を発するための手段20を備えており、これらが接続21によってECU14へ伝えられる。
【0038】
さらに、ECU14が、内燃機関3の燃料供給システム2の動作状態を診断するための方法を実行するための手段を備えており、そのような方法が、図2および図3において後述される。この方法を実行するための手段は、ソフトウェアの形態および/または論理回路の形態で、ECU14において動作することができる。
【0039】
図2が、自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断するための方法の主要な段階を概略的に示している。
【0040】
この方法は、診断パラメータを初期化するステップS1を含んでおり、次いで燃料への燃料の追加を検出するステップS2と、燃料のアルコール含有量を割り出すステップS2aと、エンジンオイルに希釈された燃料の気化を検出するステップS3とを含んでいる。この方法は、さらに、検査ステップS4、較正ステップS5、および燃料供給システムの動作状態を診断するステップS6を備えている。
【0041】
診断パラメータを初期化するステップS1において、本方法において使用されるすべての診断パラメータが初期化され、とりわけ以下の検出パラメータが初期化される。
RECOCARB=1;
BLOWDET=0;
RECOCARB:アルコール含有量を割り出すステップS2aが動作中であり、すなわちステップS2aが完了していない場合に値1をとり、そうでない場合に値0をとるブール型の検出パラメータ;
BLOWDET:燃料の気化を検出するステップS3において燃料の気化が検出された場合に値1をとり、そうでない場合に値0をとるブール型の検出パラメータ。
【0042】
燃料の追加を検出するステップS2において、計器51によって発せられるタンクに存在する燃料の量に関する情報が、集められる。
【0043】
アルコール含有量を割り出すステップS2aにおいて、燃料のアルコール含有量が、空燃比プローブ18および53によって受信される排気ガスのリッチさの情報から割り出される。この割出しの時点において、排気ガスのリッチさの設定が、1に近いリッチさ、すなわち排気ガス中に存在する燃焼した燃料の量と酸素の量との間の化学量論比に近いリッチさが得られるまで、調節される。
【0044】
アルコール含有量は、排気ガスのリッチさの測定値を分析することによって割り出される。排気ガスの組成が、酸素の少ない組成である場合、燃料の噴射の継続時間が、先の噴射の継続時間との比較によって長くされる。排気ガスの組成が、酸素の多い組成である場合、燃料の噴射の継続時間が、先の噴射の継続時間との比較によって短縮される。例えば、燃料のアルコール含有量を割り出すために、仏国特許出願公開第2892769号明細書に記載の方法を使用することができる。
【0045】
割出しの工程S2aが、燃料のアルコール含有量を表わすアルコール含有量CONTENTの割出しを可能にする。変数CONTENTは、0と1との間を変化し、燃料が純粋なアルコールである場合に1に等しく、燃料がアルコールを含んでいないガソリンである場合に0に等しい。
【0046】
アルコール含有量を割り出すステップS2aが完了し、すなわち排気ガスのリッチさの設定が安定化されたとき、検出パラメータRECOCARBが更新され、値0をとる。
【0047】
燃料の気化を検出するステップS3において、本方法は、ブローバイ現象が排気ガスのリッチさの設定を乱すほどに充分に大きいか否かを検出し、それに応じてBLOWDET検出パラメータが更新される。ブローバイ現象の検出は、排気ガスのリッチさのドリフトを計算することによって実行される。
【0048】
検査ステップS4において、診断ステップS6の実行前に適切な条件が有効であるか否かを確認するために、検査が行われる。検査ステップS4は、試験ステップS41〜S43を含んでいる。
【0049】
試験ステップS41は、アルコール含有量を割り出すステップS2aが完了したか否かを検査する。この試験ステップS41において、パラメータRECOCARBの値が検査され、検出パラメータRECOCARBが値0を有する場合に、次の試験ステップS42が実行され、そうでない場合には、試験S41が繰り返される。
【0050】
試験ステップS42は、燃料の気化が検出されたか否かを検査する。この試験ステップS42において、パラメータBLOWDETの値が調べられ、検出パラメータBLOWDETが値0を有する場合、次の試験ステップS43が実行され、そうでない場合には、試験S42が繰り返される。
【0051】
試験ステップS43は、診断ステップS6の実行前にさらなる条件を検査する。
この試験ステップS43において、以下を確認すべく検査が行われる。
排気ガスのリッチさの調節が、閉ループである。
噴射が連続して動作している。
機関の負荷および速度が、所定の範囲内にある。
空燃比プローブ18および53が正常である。
【0052】
これらの条件が有効である場合、診断は是認されると考えられ、較正ステップS5が実行され、そうでない場合には、試験ステップS41が繰り返される。
【0053】
この較正ステップS5は、エンジンの温度についての試験S44で始まる。
【0054】
試験ステップS44において、エンジンが高温であるか否かを判断するための検査が行われる。エンジンが高温である場合、高温特有の較正が選択される第1の選択ステップS45が実行され、そうでない場合には、低温特有の較正が選択される第2の選択ステップS46が実行される。これらの較正は、とりわけ検出のしきい値および時間である。
【0055】
較正ステップは、診断パラメータを計算するステップS52をさらに含む。
【0056】
この診断パラメータの計算のステップS52において、診断区間の下限S_MINおよび上限S_MAXが計算され、実行される診断ごとの診断数WINDOWおよび診断時間TIMEも計算される。診断パラメータWINDOWは、燃料供給システム2が不具合と診断されるまでに実行されるべき診断の数に相当する。
【0057】
これらの診断パラメータS_MIN、S_MAX、WINDOW、およびTIMEは、割出しステップS2aにおいて割り出されたアルコール含有量CONTENTから計算される。診断パラメータを計算するステップS52において、以下の計算が実行される。
S_MAX=S_MAX_ALCO・CONTENT+(1−CONTENT)・S_MAX_GAS
S_MIN=S_MIN_ALCO・CONTENT+(1−CONTENT)・S_MIN_GAS
TIME=TIME_ALCO・CONTENT+(1−CONTENT)・TIME_GAS
WINDOW=WINDOW_ALCO・CONTENT+(1−CONTENT)・WINDOW_GAS
S_MAX_ALCOは、アルコール型の燃料における較正済みの最大不具合しきい値である。
S_MAX_GASは、ガソリン型の燃料における較正済みの最大不具合しきい値である。
S_MIN_ALCOは、アルコール型の燃料における較正済みの最小不具合しきい値である。
S_MIN_GASは、ガソリン型の燃料における較正済みの最小不具合しきい値である。
TIME_ALCO:アルコール型の燃料における較正済みの診断継続時間。
TIME_GAS:ガソリン型の燃料における較正済みの診断継続時間。
WINDOW_ALCO:アルコール型の燃料において不良の宣言の前に実行されるべき診断の数。
WINDOW_GAS:ガソリン型の燃料において不良の宣言の前に実行されるべき診断の数。
【0058】
次に、診断ステップS6が、このようにして計算されたパラメータを使用して実行される。さらに、検査ステップS4が、診断の継続期間の全体において永続的に実行され、診断が是認されない場合、変数RECOCARBがゼロでない場合、または変数BLOWDETがゼロでない場合に、診断が停止され、検査ステップS4が繰り返される。
図3が、燃料供給システム2の動作状態を診断するステップS6の一実施の形態を概略的に示している。
【0059】
この診断方法の一実施の形態においては、燃料供給システム2の動作状態が、排気ガスのリッチさのドリフトを監視することによって監視される。例えば、空燃比プローブ18および53が、排気ガスのリッチさを測定するために使用され、排気ガスのリッチさのドリフトが、ECU14において分析される。
【0060】
排気ガスのリッチさを調節するために、ECU14は、以下のとおりの式(1)を使用して有効噴射時間Teffを計算するための手段を備えている。
Teff=(B+ALPHACLGAINMair)C (1)
B:燃料供給システム2のドリフトを考慮するシフト変数。
ALPHACL:エンジン3から出る排気ガスのリッチさを調節するための噴射時間補正係数。
GAIN:燃料供給システム2の流れ(hydraulic)の特性のドリフトを考慮する係数。
A:キャニスタのパージ、壁の濡れ、などに関する種々の現象を考慮する係数。
Mair:シリンダへ入る空気の量(測定または推定による)。
C:アルコール含有量に依存する係数。
【0061】
有効噴射時間Teffは、変数であり、その計算は、当業者にとって周知である。
【0062】
燃料供給システム2の不具合を検出するために、診断ステップS6は、CRITERIONと称される基準の監視にもとづき、その計算は、診断基準を計算する計算ステップS61において実行される。監視基準CRITERIONは、式(2)を使用して計算される。
CRITERION=∫(CRITERION1+CRITERION2+CRITERION3) (2)
【0063】
CRITERIONは、以下で定義される3つの項CRITERION1、CRITERION2、CRITERION3の和について、較正ステップS5において計算された時間TIMEにわたる積分として計算される。
式(2)において:
CRITERION1:排気において1に等しいリッチさを達成するために時間の関数としての噴射時間に補正を必要とせずにALPHACLの値と、排気において1に等しいリッチさを達成するために噴射時間へ加えられるALPHACLの値との間の差に相当。
CRITERION2:「理論上」の燃料供給システム、すなわちばらつきおよび経年劣化を呈しておらず、その平均的特性が噴射時間の修正が加えられていない値に一致する燃料供給システムの使用に対応するシフト変数Bの瞬時値と、所与の車両において噴射時間に加えられるシフト定数Bの瞬時値(各々の車両に特有)との間の差に相当。
CRITERION3:「理論上」の燃料供給システム、すなわちばらつきおよび経年劣化を有さず、その平均的特性が噴射時間の修正が加えられていない値に一致する燃料供給システムの使用に対応するGAINの瞬時値と、所与の車両において噴射時間に加えられるGAINの瞬時値(各々の車両に特有)との間の差に相当。
【0064】
燃料のアルコール含有量がタンク10の補給に続いて変化するとき、アルコール含有量を割り出すステップS2aは、燃料のアルコール含有量を割り出すために或る時間を必要とする。この検出時間の間に、パラメータALPHACL、GAIN、およびBは、アルコール含有量に依存する係数を割り出すために、アルコール含有量が割り出されるまで変化し、この割出しが、パラメータALPHACL、GAIN、およびBがそれぞれの公称値に近い値へ戻ることを可能にする。
【0065】
さらに、診断基準CRITERIONが、これら3つのパラメータALPHACL、GAIN、およびBに依存するため、アルコール含有量を割り出すステップS2aにおけるこれらのパラメータの値は、燃料供給システム2に存在しうる不具合の水準を反映しない。さらに、この割出しの時間において、診断ステップS6は、システムが不良でないときにも故障を検出しがちである。
【0066】
アルコール含有量を割り出すステップS2aが完了したときに、処理部材9の上流で測定される排気ガスのリッチさの調節部が、割り出された燃料のアルコール含有量に従って設定される。結果として、パラメータALPHACL、GAIN、およびBが、アルコール含有量の関数として異なって変化する可能性があり、したがって診断基準CRITERIONの値も、燃料の組成に応じて変動する可能性がある。
【0067】
さらに、ブローバイ現象も、パラメータALPHACL、GAIN、およびBに影響を及ぼし、したがって診断基準CRITERIONに影響を及ぼす。
【0068】
診断基準の計算のステップS61の後で、診断基準CRITERIONと、下限S_MINおよび上限S_MAXを有する診断区間との間の比較S62が行われる。
【0069】
診断基準CRITERIONが、2つの境界、すなわち下限S_MINおよび上限S_MAXによって画定される診断区間の範囲内にある場合、FAULT_PRESENTカウンタがゼロに等しく(S66)、燃料供給システム2において不具合が検出されなかったことを示す。
【0070】
CRITERIONが診断区間の外側である場合、初期のあらかじめ定められる値として割り当てられた変数WINDOWが、1だけ減らされ(S63)、次いでこの変数WINDOWの値が検査される(S64)。
WINDOW>0である場合、診断が診断基準を計算するステップS61から再開される。
WINDOW=0である場合、FAULT_PRESENTが燃料供給システム2に不具合が検出されたことを示す1に等しく、変数WINDOWがリセットされる(S65)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が車両のタンクに収容され、燃料のアルコール含有量が変化しうる自動車の内燃機関の燃料供給システムの動作状態を診断する方法であって、燃料供給システムの動作状態を診断するステップ(S6)と、前記タンクへの燃料の追加を検出するステップ(S2)と、前記燃料のアルコール含有量を割り出すステップ(S2a)と、前記燃料のアルコール含有量を割り出すステップ(S2a)が完了した場合に前記診断ステップ(S6)を開始させる検査ステップ(S4)とを含み、エンジンオイルに希釈された前記燃料の気化を検出するステップ(S3)を含んでおり且つ前記検査ステップ(S4)において、前記エンジンオイルに希釈された前記燃料の気化が検出されない場合に前記診断ステップ(S6)が開始されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記診断ステップ(S6)のための診断パラメータが割り出されたアルコール含有量から計算(S52)される較正ステップ(S5)を含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記診断パラメータの計算(S52)の際に、診断区間の上限および下限が、前記割り出されたアルコール含有量から計算され、前記診断ステップ(S6)において、診断基準が計算(S61)され、前記診断基準が前記診断区間と比較(S62)され、前記診断基準が前記診断区間の外側である場合に、不具合状態であると診断(S65)される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記診断パラメータの計算(S52)の際に、診断時間が、前記割り出されたアルコール含有量から計算され、前記診断ステップ(S6)において、前記診断基準が、前記計算された診断時間において計算(S61)される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
燃料が車両のタンクに収容され、燃料のアルコール含有量が変化しうる自動車の内燃機関(3)の燃料供給システム(2)の動作状態を診断する装置であって、前記燃料供給システムの動作状態を診断する診断手段と、前記タンクへの燃料の追加を検出する検出手段と、前記燃料のアルコール含有量を割り出す割出し手段と、前記割出し手段が前記燃料のアルコール含有量を割り出した場合に、前記診断手段を作動させる検査手段とを備え、エンジンオイルに希釈された前記燃料の気化を検出する第2の検出手段を備えており、前記検査手段が、前記第2の検出手段が前記エンジンオイルに希釈された前記燃料の気化を検出しない場合に前記診断手段を作動させることができることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記診断手段のための診断パラメータを前記割り出されたアルコール含有量から計算する較正手段を備えている請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記較正手段が、前記割り出されたアルコール含有量から診断区間の上限および下限を計算することができ、前記診断手段が、診断基準を計算する手段と、前記診断基準を前記診断区間と比較する手段と、前記診断基準が前記診断区間の外側である場合に不具合状態信号を生成する手段とを備えている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記較正手段が、前記割り出されたアルコール含有量から診断時間を計算することができ、前記診断手段が、前記計算された診断時間において前記診断基準を計算する手段を備えている請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526232(P2012−526232A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509079(P2012−509079)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050882
【国際公開番号】WO2010/128262
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】