説明

自動車の前部車体構造

【課題】通常時にラジエータを安定して保持しつつ、ボンネットフードの前部を下方に押圧する所定の荷重が作用した時に、該荷重を効果的に吸収して衝撃を緩和できるようにする。
【解決手段】車体の前部上面を開閉可能に覆うように設置されたボンネットフード1と、該ボンネットフード1の下方においてラジエータ2を保持する枠型状のシュラウド3とを有する自動車の前部車体構造であって、上記シュラウド3は、その上下方向略中央部またはその下方部に位置する取付部(取付ブラケット21)を介して車体側部材(バンパビーム6)に取り付けられるとともに、上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に入力される所定荷重Fに応じ、シュラウド3がラジエータ2の保持状態を維持しつつ、上記取付部を中心に揺動変位するとともに、これに対応して上記シュラウド3の上部が後退可能に支持された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部上面を開閉可能に覆うボンネットフードと、該ボンネットフードの下方においてラジエータを保持する枠型状のシュラウドとを有する自動車の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両の前部に設けたエンジンルームの前をフロントグリルで覆った車両において、上記フロントグリルに前方から衝突力が作用したときに、このフロントグリルとともに後退する荷重伝達部材をフロントグリルの背面に設け、この荷重伝達部材によってフロントグリルに作用する衝突力をエンジンルーム内に収納された水冷エンジン用ラジエータの支持部材(ステー)に伝え、この支持部材を変形させることで車両の前突時における衝撃を吸収することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、ラジエータに後ろ向きの一定以上の力が加わったときに、弾性的支持部からラジエータの上部支持ピンが外れ、ラジエータが下部支持ピン近傍を中心にして車体後方に回転できるように構成し、これによりボンネットフードに障害物が当たった場合等に、限られたスペースの中でボンネットフードを変形させることで障害物に作用する衝撃を緩和するように構成したラジエータの支持構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−81034号公報
【特許文献2】特開2001−150962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された車両の衝撃吸収構造では、車体前部のフロントグリルに前方から作用する衝突力に応じてラジエータの上部左右を支持するステーからなる支持部材に設けられた脆弱部を適正に変形させることができれば、上記衝突力をある程度吸収することが可能である。しかし、上記車両の衝撃吸収構造では、ボンネットフードの前部上面に障害物が当接して、該ボンネットフードの前部を下方に押圧する荷重が作用した場合に、該ボンネットフードの下方変位が上記ラジエータの上部を支持する車体側部材、つまりアッパクロスメンバ等により阻害されるため、上記ボンネットフードを下方に変位させることによる緩衝作用が充分に得られないという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示されたラジエータの支持構造では、ボンネットフードの前端部に障害物等が当接することにより作用する押圧力に応じ、下部支持ピン近傍を中心にラジエータを回転させてその上部を車体後方へ移動させるように構成しているため、ボンネットフードの前端部上に障害物が倒れ込んだ場合等に、ボンネットフードの前端部を下降させることによって上記障害物に作用する衝撃を緩和することが可能である。しかし、上記障害物がボンネットフード上に倒れ込む際に、ボンネットフードの前端部よりも後方側に障害物が当接した場合には、上記ラジエータの上部を支持する上部クロスメンバ等によりボンネットフードの下方変位が阻害されるため、該ボンネットフードを下方変位させることによる緩衝作用が充分に得られないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、通常時にラジエータを安定して保持しつつ、ボンネットフードの前部を下方に押圧する所定の荷重が作用した時に、該ボンネットフードを下方に変位させることにより上記荷重を効果的に吸収して衝撃を緩和することができる自動車の前部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体の前部上面を開閉可能に覆うように設置されたボンネットフードと、該ボンネットフードの下方においてラジエータを保持する枠型状のシュラウドとを有する自動車の前部車体構造であって、上記シュラウドは、その上下方向略中央部またはその下方部に位置する取付部を介して車体側部材に取り付けられるとともに、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に入力される所定荷重に応じ、シュラウドがラジエータの保持状態を維持しつつ、上記取付部を中心に揺動変位するとともに、これに対応して上記シュラウドの上部が後退可能に支持されたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、上記シュラウドに取付ブラケットからなる取付部が設けられるとともに、シュラウドの前方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパービームからなる車体側部材に上記取付部を介してシュラウドが取り付けられたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の自動車の前部車体構造において、上記バンパービームには、シュラウドの取付ブラケットに対応した支持ブラケットが設けられるとともに、該バーパービームの支持ブラケットと上記シュラウドの取付ブラケットとが連結ピンにより回動可能に連結されたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造において、ボンネットフードの前部に設けられたストライカと、車体側部材に設けられたラッチと、該ラッチを支持するとともに、上記シュラウドの上部とバンパービームとを連結するように上下方向に延びるセンターステーとを有し、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に所定荷重が入力されたときに、該センターステーと上記バンパービームまたはシュラウドの少なくとも一方との連結が解除可能に構成されたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項3または4に記載の自動車の前部車体構造において、上記バンパービームから下方に向けて支持ブラケットが突設されるとともに、上記シュラウドの下方部に取付ブラケットが設けられたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項3〜5の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造において、上記連結ピンを支点として取付ブラケットが回動変位するのを規制する規制部材と、所定荷重の入力時に上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する規制解除部材とを備えたものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、上記請求項6に記載の自動車の前部車体構造において、上記シュラウドの取付部よりも下方部から車体の前方側に延びるロアスティフナーを有し、該ロアスティフナーに入力された後退荷重に応じて上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する方向に駆動する駆動部材により上記規制解除部材が構成されたものである。
【0015】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造において、上記車両の前突時に入力される衝撃荷重から車体の前部を保護する保護部材が、上記シュラウドの上部前方側に配設されたものである。
【0016】
請求項9に係る発明は、上記請求項1に記載の自動車の前部車体構造において、車体の前部下方にサブフレームが配設されるとともに、該サブフレームの左右両側方部から前方側に延設された延設部材に、シュラウドの下部を回動可能に支持する支持ピンが設けられたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、ボンネットフードの下方においてラジエータを保持する枠型状のシュラウドを、その上下方向略中央部またはその下方部に位置する取付部を介して車体側部材に取り付けるとともに、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に入力される所定荷重に応じ、該シュラウドによるラジエータの保持状態を維持しつつ、上記取付部を中心にシュラウドを揺動変位させて該シュラウドの上部を後退可能に支持したため、通常時には上記ラジエータを起立状態に安定して保持しつつ、障害物がボンネットフードの前端部上に倒れ込んだ場合等に該ボンネットフードを下方に変位させることにより荷重を効果的に吸収して衝撃を緩和できるという利点がある。
【0018】
請求項2に係る発明では、上記シュラウドに取付ブラケットからなる取付部を設けるとともに、シュラウドの前方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパービームからなる車体側部材に上記取付部を介してシュラウドを取り付けたため、該取付部を介してシュラウドの上下方向略中央部等をバンパービームに安定して支持できるという利点がある。
【0019】
請求項3に係る発明では、上記バンパービームに、シュラウドの取付ブラケットに対応した支持ブラケットを設けるとともに、該バーパービームの支持ブラケットと上記シュラウドの取付ブラケットとを連結ピンにより回動可能に連結したため、通常時には上記支持ブラケットおよび取付ブラケットを介して、シュラウドの上下方向略中央部を等バンパービームに安定して支持させることができる。そして、上記ボンネットフードの前端部上に障害物が倒れ込んでボンネットフードからシュラウドの前部上方に所定値以上の荷重が入力された場合には、上記シュラウドが、ラジエータの保持状態を維持しつつ連結ピンを支点に揺動変位して、シュラウドの上部が後退することが許容されるため、上記荷重を効果的に吸収して障害物が受ける衝撃を緩和できるという利点がある。
【0020】
請求項4に係る発明では、ボンネットフードの前部に設けられたストライカと、車体側部材に設けられたラッチと、該ラッチを支持するとともに、上記シュラウドの上部とバンパービームとを連結するように上下方向に延びるセンターステーとを設け、該センターステーと上記バンパービームまたはシュラウドの少なくとも一方との連結を、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に所定荷重が入力されたときに解除されるように構成したため、通常時には、上記シュラウドおよびラジエータの起立状態を、より安定して維持できるとともに、所定荷重の入力時には、上記センターステーによる支持状態を解除してボンネットフードの前端部を下方へ容易に変位させることができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、上記バンパービームから下方に向けて支持ブラケットを突設するとともに、上記シュラウドの下方部に取付ブラケットを設けたため、上記バンパービームとシュラウドとの間に取付ブラケットおよび支持ブラケットを配設するための間隙を設ける必要がなく、車体の前後寸法を小さくして車体を効果的にコンパクト化できるとともに、取付ブラケットをシュラウドの下方部に設けた構造とすることにより、シュラウドの揺動支点からシュラウドの上端部までの距離を充分に確保して、ボンネットフードの前端部上に障害物が倒れ込んで所定の荷重がボンネットフードの前端部に作用した場合に、上記シュラウドをスムーズに揺動変位させることができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、上記連結ピンを支点として取付ブラケットが回動変位するのを規制する規制部材と、所定荷重の入力時に上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する規制解除部材とを設けたため、通常時には、上記規制部材により取付ブラケットの回動変位を規制してシュラウドを安定した起立状態に維持しつつ、車体前部が歩行者等に当接して上記ボンネットフードの前端部上に障害物が倒れ込む可能性がある衝突事故の発生時には、上記取付ブラケットの回動規制状態を解除してボンネットフードの前端部を効果的に下方へ変位させることにより、上記荷重を、より効果的に吸収することができるとともに、上記障害物が受ける衝撃をさらに緩和することができるという利点がある。
【0023】
請求項7に係る発明では、上記シュラウドの取付部よりも下方部から車体の前方側に延びるロアスティフナーを設け、該ロアスティフナーに入力された後退荷重に応じて上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する方向に駆動する駆動部材により上記取付ブラケットの回動規制状態を解除するように構成したため、上記ロアスティフナーにより歩行者が足を払われて、その大腿部等が上記ボンネットフード上に倒れ込む前に、上記シュラウを揺動可能状態として、上記ボンネットフード上に歩行者が倒れ込んだときに、上記シュラウドをスムーズに揺動変位させて、ボンネットフードの前端部を下方に変位させることにより、上記歩行者が受ける衝撃を確実に緩和できるという利点がある。
【0024】
請求項8に係る発明では、上記車両の前突時に入力される衝撃荷重から車体の前部を保護する保護部材を、上記シュラウドの上部前方側に配設したため、上記ボンネットフードの前端部上に作用する所定荷重に応じ、上記シュラウドが揺動変位してボンネットフードの前端部が下方へ変位することが上記保護部材により阻害されるのを防止しつつ、車体の前面が他車に衝突する等の前突事故の発生時に、その衝突荷重が上記シュラウドの設置部に及ぶのを上記保護部材により効果的に阻止することができ、該シュラウドが損傷するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0025】
請求項9に係る発明では、車体の前部下方にサブフレームを配設するとともに、該サブフレームの左右両側方部から前方側に延設された延設部材に、シュラウドの下部を回動可能に支持する支持ピンを設けたため、前部車体の下方部を補強すること等を目的として設置された上記サブフレームを利用してシュラウドの下端部を安定して支持することができる。したがって、簡単な構成でシュラウドの下端部を回動可能に支持することにより、該シュラウドの揺動支点からシュラウドの上端部までの距離を充分に大きくすることができ、上記ボンネットフードの前端部上に障害物が倒れ込んで所定の荷重がボンネットフードの前端部に作用した場合に、上記シュラウドをスムーズに揺動変位させることができるとともに、これに対応してボンネットフードの前端部を効果的に下方へ変位させることにより、上記荷重を、より効果的に吸収することができるとともに、上記障害物が受ける衝撃をさらに緩和することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る自動車の前部車体構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記自動車の前部車体を前方から見た状態を示す説明図である。
【図3】センターステーの上部構造を示す斜視図である。
【図4】シュラウドの取付部構造を示す平面断面図である。
【図5】本発明の作用を示す図1相当図である。
【図6】本発明に係る自動車の前部車体構造の第1変形例を示す図1相当図である。
【図7】本発明に係る自動車の前部車体構造の第2変形例を示す側面断面図である。
【図8】本発明に係る自動車の前部車体構造の第3変形例を示す側面断面図である。
【図9】上記第3変形例におけるシュラウドの取付部構造を示す平面断面図である。
【図10】本発明に係る自動車の前部車体構造の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図11】上記第2実施形態におけるシュラウドの取付部構造を示す平面断面図である。
【図12】本発明に係る自動車の前部車体構造の第3実施形態を示す正面図である。
【図13】上記第3実施形態の側面断面図である。
【図14】ヘッドランプユニットの取付部構造を示す斜視図である。
【図15】センターステー下部の取付構造の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2は、本発明に係る自動車の前部車体構造の第1実施形態を示している。この前部車体構造は、車体の前部上面を開閉可能に覆うように設置されたボンネットフード1と、該ボンネットフード1の下方においてラジエータ2を保持するシュラウド3とを有している。該ラジエータ2およびシュラウド3の前方側には、車体の外板意匠面を構成するバンパーフェース4が配設されるとともに、その後面には、衝撃吸収用のAE材5およびバンパービーム6が車幅方向に延びるように設置されている。該バンパービーム6の左右両端部は、クラッシュ管7を介してフロントサイドフレーム8の前端部に連結されている。
【0028】
上記ボンネットフード1は、主として鋼板材等からなるボンネットフードアウタ1aと、ボンネットフードインナ1bと、上記ボンネットフードアウタ1aの前部下面に溶接される等により固定されたボンネットレイン1cとにより構成されている。該ボンネットレイン1cの下面には、シュラウド3に設けられた下記ラッチ15に係合されることによりボンネットフード1の前端部を係止して該ボンネットフード1を閉止状態にロックするストライカ9が取り付けられている。なお、上記ボンネットフード1を閉止状態にロックするストライカ9およびラッチ15の構造は周知であるため、その具体的な説明を省略する。
【0029】
上記シュラウド3は、ボンネットフード1の前部下面に沿って車幅方向に延びるように設置された上方部材10と、その左右両端部から下方に延びるように設置された左右一対の側方部材11と、左右両側方部材11の下端部同士を連結するように車幅方向に延びるように設置された下方部材12とを有している。そして、上記シュラウド3が、プラスチック材等により正面視で矩形枠型に形成され、該シュラウド3内に上記ラジエータ2が嵌着される等により保持されている。
【0030】
上記シュラウド3の上方部材10には、その前面車幅方向中央部に金属材等からなるラッチブラケット14がボルト止めされる等により固定されている。該ラッチブラケット14は、上面が開口したボックス状に形成され、その内部には上記ストライカ9が係合されるラッチ16が取り付けられている。上記ラッチブラケット14の下面には、シュラウド3の上方部材10と、バンパービーム6とを連結するセンターステー17の上部が取り付けられている。該センターステー17は、その下部が上記バンパービーム6の上部フランジにボルト止め等の手段で固定されることにより、上記ラッチブラケット14を支持するとともに、シュラウド3を起立状態に支持する機能を有している。
【0031】
上記センターステー17の上部には、図1および図3に示すように、取付ボルト18を介してラッチブラケット14の下面に止着されるフランジ19が形成され、該フランジ19には、後端部が開口したスリットからなるボルト挿通孔20が形成されている。該フランジ部19のボルト挿通孔20を挿通した取付ボルト18が上記ラッチブラケット14の下面に螺着される等により、上記センターステー17の上部がラッチブラケット14に止着されている。そして、後述するように上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重が入力されたときには、上記取付ボルト18がボルト挿通孔20から脱落して上記シュラウド3に対するセンターステー17の止着状態が解除されるようになっている。
【0032】
上記シュラウド3の前面左右には、図1および図4に示すように、車体側部材に対する取付部となる取付ブラケット21が取り付けられるとともに、上記バンパービーム6の後面左右には、該取付ブラケット21に対応した支持ブラケット22が取り付けられている。上記シュラウド3側の取付ブラケット21は、シュラウド3の左右両側辺部において、該シュラウド3の上下方向略中央部に上下一対の取付ボルト23により固定される固定板24と、該固定板24の両側辺部から前方に向けて突設された突片25とを有している(図1参照)。
【0033】
また、上記バンパービーム6側の支持ブラケット22は、バンパービーム6の左右両側辺部において、その後面に溶接、またはボルト止めされる等により固定される固定板26と、その左右両側辺部から後方に突設された左右一対の支持板27とを有している。そして、該支持ブラケット22の左右両支持板27間に、上記取付ブラケット21の突片25が挿入された状態で、上記支持板27および突片25に形成された挿通孔に連結ボルト等からなる連結ピン28が挿入されるとともに、この連結ピン28の先端部にナット等からなる固定具30が螺着されることにより、上記支持ブラケット22と取付ブラケット21とが連結ピン28を介して回動可能に連結されている。
【0034】
上記のように支持ブラケット22および取付ブラケット21を介してシュラウド3がバンパービーム6により連結されることにより、通常時には、シュラウド3がラジエータ2とともに起立状態に支持され、かつ上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重が入力されたときには、該シュラウド3がラジエータ2の保持状態を維持しつつ、上記連結ピン28を中心にシュラウド3が揺動変位することによりシュラウド3の上部が後退可能に支持されている。
【0035】
すなわち、図5に示すように、車体の前端部が障害物Sに衝突する前突事故が発生して該障害物Sがボンネットフード1の前端部上に倒れ込む等により、上記ボンネットフード1の前端部を下部後方側へ押圧する方向に所定荷重Fが入力されると、該荷重Fに応じてボンネットフード1の前端部が下降するように変形するとともに、該ボンネットフード1から上記ストライカ9、ラッチ15およびラッチブラケット14等を介してシュラウド3の前部上方に上記荷重Fが伝達される。
【0036】
上記シュラウド3は、その上下方向略中央部が上記支持ブラケット22および取付ブラケット21を介してバンパービーム6に支持されているため、上記ボンネットフード1からシュラウド3の上端部を下部後方側へ押圧する方向に荷重Fが作用すると、この荷重Fに応じて上記連結ピン28を支点に上記シュラウド3の上部を後退させようとするモーメントMを生じる。該モーメントMは、上記取付ボルト18によるセンターステー17の上部とシュラウド3との止着状態を解除する方向に作用するため、上記取付ボルト18がボルト挿通孔29から脱落して、該センターステー17によるシュラウド上部の拘束が解放されることにより、上記荷重Fに応じ、シュラウド3がラジエータ2の保持状態を維持しつつ、その上部が後退する方向に揺動変位することが許容される。そして、該シュラウド3の揺動変位に応じ、図5に示すように、シュラウド3の上端部が後部下方に移動することにより、ボンネットフード1の前端部がさらに下方に変位することが許容されることになる。
【0037】
上記のように車体の前部上面を開閉可能に覆うボンネットフード1と、該ボンネットフード1の下方においてラジエータ2を保持する枠型状のシュラウド3とを有する自動車の前部車体構造において、上記シュラウド3を、その上下方向略中央部に位置する取付部(取付ブラケット21)を介して、バンパービーム6からなる車体側部材に取り付けるとともに、上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に入力される所定荷重Fに応じ、シュラウド3がラジエータ2の保持状態を維持しつつ、上記取付部を中心に揺動変位するとともに、これに対応して上記シュラウド3の上部を後退可能に支持したため、通常時には上記ラジエータ2を起立状態に安定して保持しつつ、障害物Sがボンネットフード1の前端部上に倒れ込んだ場合等に、該ボンネットフード1を下方に変位させることにより上記荷重Fを効果的に吸収して衝撃を緩和できるという利点がある。
【0038】
すなわち、上記第1実施形態では、シュラウド3の上下方向略中央部に左右一対の取付ブラケット21を有する取付部を設けるとともに、シュラウド3の前方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパービーム6からなる車体側部材に上記取付ブラケット21に対応した支持ブラケット22を設け、該バンパービーム6の支持ブラケット22と上記シュラウド3の取付ブラケット21とを連結ピン28で連結したため、上記支持ブラケット22および取付ブラケット21を介して、シュラウド3の上下方向略中央部をバンパービーム6に安定して支持させることができる。また、上記シュラウド3の上部は、閉止状態にあるボンネットフード1の前端部にストライカ9およびラッチ15を介して係止されているため、通常時には、上記シュラウド3およびラジエータ2を起立状態に安定して維持することができる。
【0039】
そして、上記ボンネットフード1の前端部上に障害物Sが倒れ込んでボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定値以上の荷重Fが入力された場合には、上記シュラウド3が、ラジエータ2の保持状態を維持しつつ連結ピン28を支点に揺動変位して、シュラウド3の上部が後退することが許容されるため、該シュラウド3の揺動変位に応じ、図5に示すように、シュラウド3およびラジエータ2の上端部が後部下方に向けて移動する。したがって、ラジエータの上部を支持する上部クロスメンバ等を変位させることなく、ラジエータのみを後退させ、あるいは回転させるように構成した従来技術のように、ボンネットフードの変形が上記上部クロスメンバ等によって阻害されるという事態を生じることなく、ボンネットフード1の前端部を下方に変位させることができ、これによって上記荷重Fを効果的に吸収して障害物Sが受ける衝撃を緩和できるという利点がある。
【0040】
特に、上記第1実施形態では、シュラウド3の上方部材10と、バンパービーム6とを連結するセンターステー17を設けることにより、該センターステー17と、上記支持ブラケット22および取付ブラケット21とを介してシュラウド3の上下両方を上記バンパービーム6からなる車体側部材に支持させるように構成したため、通常時には、上記シュラウド3およびラジエータ2の起立状態を、より安定して維持することができる。
【0041】
しかも、上記センターステー17の上部に後端部が開口したスリットからなるボルト挿通孔20を形成し、上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重Fが入力されたときには、上記取付ボルト18をボルト挿通孔29から脱落させて上記センターステー上部の止着状態を解除するように構成したため、上記所定荷重Fの入力時に、シュラウド3が上記連結ピン28を支点として揺動変位することが上記センターステー17により阻害されるのを防止することができる。したがって、上記ボンネットフード1の前端部上に障害物Sが倒れ込んでボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定値以上の荷重Fが入力された場合に、ボンネットフード1の前端部を下方に変位させることにより、上記荷重Fを効果的に吸収して障害物Sが受ける衝撃を緩和できるという利点がある。
【0042】
なお、上記実施形態では、シュラウド3の上下方向略中央部左右に取付ブラケット21を有する取付部を設けるとともに、該取付ブラケット21に対応した支持ブラケット22を上記バンパービーム6の後面に設けた例について説明したが、この構成に代え、図6に示す第1変形例のように、取付ブラケット31をシュラウド3の下方部前面に設けるとともに、該取付ブラケット31に対応する支持ブラケット32をバンパービーム6の下面に取り付けた構造としてもよい。そして、該第1変形例では、上記シュラウド3の前面から前方に向けて突設された取付ブラケット31の突片33と、上記バンパービーム6の下面から下方に向けて突設された支持ブラケット32の支持板34とが連結ピン28で回動可能に連結されている。
【0043】
上記のように取付ブラケット31を上記シュラウド3の下方部に設けるとともに、該取付ブラケット31に対応した支持ブラケット32をバンパービーム6から下方に向けて突設した構造とした場合には、上記バンパービーム6とシュラウド3との間に取付ブラケット21および支持ブラケット22を配設してなる上記第1実施形態のように、これらを配設するための間隙を上記バンパービーム6とシュラウド3とに設ける必要がないので、車体の前後寸法を小さくして車体を効果的にコンパクト化できるという利点がある。
【0044】
また、上記第1変形例では、取付ブラケット31をシュラウド3の下方部に設けた構造とすることにより、シュラウド3の揺動支点(連結ピン28)からシュラウド3の上端部までの距離Lを、上記シュラウド3の上下方向略中央部に左右一対の取付ブラケット21を有する取付部を設けてなる第1実施形態に比べて、大きくすることができる。このため、上記ボンネットフード1を下部後方に押圧する方向に作用する荷重Fの大きさが同じでも、上記第1変形例では、該荷重Fに応じて上記連結ピン28を支点にシュラウド3を揺動変位させる方向に作用するモーメントMを第1実施形態に比べて大きな値とすることができる。
【0045】
したがって、上記のようにシュラウド3の揺動支点となる連結ピン28からシュラウド3の上端部までの距離Lを充分に確保することにより、ボンネットフード1の前端部上に障害物Sが倒れ込んで所定の荷重Fがボンネットフード1の前端部に作用した場合に、上記シュラウド3をスムーズに揺動変位させることができるとともに、これに対応してボンネットフード1の前端部を効果的に下方へ変位させることにより、上記荷重Fを、より効果的に吸収することができるとともに、上記障害物Sが受ける衝撃をさらに緩和することができるという利点がある。
【0046】
図7は、上記実施形態の第2変形例を示している。該第2変形例では、シュラウド3に設けられた取付ブラケット21の突片25とバンパービーム6に設けられた支持ブラケット22の支持板27との相対変位を規制することにより、通常時に上記シュラウド3の取付ブラケット21が連結ピン28を支点として回動変位するのを規制する規制部材35と、所定荷重の入力時に該規制部材35による取付ブラケット21の回動規制状態を解除する規制解除部材36とが上記シュラウド3の取付部に設けられている。
【0047】
上記規制部材35は、取付ブラケット21の突片25と支持ブラケット22の支持板27とを係合する係合ピンからなっている。上記支持ブラケット22の支持板27には、連結ピン28の上方部から斜め上前方に向けて延びる長孔37が形成され、該長孔37に沿って上記規制部材35を摺動可能に支持されている。また、上記取付ブラケット21の突片25には、支持ブラケット22の長孔37に対応して斜め上前方に向けて延びるとともに先端部が開口したスリット溝38が形成され、該スリット溝38内に上記係合ピンからなる規制部材35が圧入された状態に保持されている。
【0048】
上記規制部材35が取付ブラケット21のスリット溝38内に保持された状態では、上記連結ピン28を中心として取付ブラケット21および支持ブラケット22の相対回転しようとしても、上記支持ブラケット22に形成された長孔37の側壁面に規制部材35が当接してその移動が阻止される。このため、通常時には、上記連結ピン28を支点としたシュラウド3の回動変位が上記規制部材35により規制されることにより、シュラウド3が起立状態に保持されるようになっている。
【0049】
上記規制解除部材36は、基端部が連結ピン28に固定されるとともに、この固定部から下方に延びるとともに車体の前方側に延びるように設置されたロアスティフナー39と、該ロアスティフナー39からなる上記連結ピン28に伝達された回転力に応じて上記規制部材35を規制解除位置に駆動する駆動カム40とからなっている。上記ロアスティフナー39の前端部には、バンパーフェース4の前方に突出することにより、車体の前端部が歩行者の足等からなる障害物に衝突する際に最初に当接する当接部39aが設けられている。
【0050】
上記当接部39aに障害物が当接してロアスティフナー39の前端部を後退させる方向に所定の荷重Tが入力されると、該ロアスティフナー39および駆動カム40が図7の反時計方向に駆動されて回転する。該駆動カム40の回転に応じ、規制部材35が上記長孔37およびスリット溝38に沿って斜め上向きに押動され、上記規制部材35がスリット溝38外に押し出された時点で、該規制部材35による取付ブラケット21の回動規制状態が解除されるようになっている。
【0051】
上記第2変形例のように、連結ピン28を支点として取付ブラケット21が回動変位するのを規制する規制部材35と、所定荷重Tの入力時に該規制部材35による取付ブラケット21の回動規制状態を解除する規制解除部材36とを設けた構造とした場合には、通常時に、上記規制部材35により取付ブラケット21の回動変位を規制してシュラウド3の揺動を防止できるという利点がある。そして、上記ロアスティフナー39の前端部に設けられた当接部39aが歩行者の足等からなる障害物に当接して、該当接部39aの前端部を後退させる方向の所定荷重Tが入力されたときには、ロアスティフナー39および駆動カム40が回転して上記規制解除部材36による取付ブラケット21の回動規制状態が解除され、上記連結ピン28を支点としたシュラウド3の揺動変位が許容されることになる。
【0052】
上記構成によれば、通常時には、上記規制部材35により取付ブラケット21の回動変位を規制してシュラウド3を安定した起立状態に維持しつつ、車体前部が歩行者等に当接して上記ボンネットフード1の前端部上に障害物Sが倒れ込む可能性がある衝突事故の発生時には、ロアスティフナー39の前端部(当接部39a)に歩行者の足等からなる障害物に当接した時点で、取付ブラケット21の回動規制状態を解除することができる。したがって、上記ロアスティフナー39により歩行者が足を払われて、その大腿部等が上記ボンネットフード1上に倒れ込む前に、上記シュラウド3を揺動可能状態とすることができる。このため、上記ボンネットフード1上に歩行者が倒れ込んだときに、上記連結ピン28を支点としてシュラウド3をスムーズに揺動変位させて、ボンネットフード1の前端部を下方に変位させることにより、上記歩行者が受ける衝撃を確実に緩和できるという利点がある。
【0053】
なお、上記ロアスティフナー39および駆動カム40等からなる規制解除手段36により、上記規制部材35による取付ブラケット21の回動規制状態を、所定荷重Tの入力時に解除するように構成した上記第2変形例に代え、図8および図9に示す第3変形例のように、シュラウド3に設けられた取付ブラケット21の突片25と、バンパービーム6に設けられた支持ブラケット22の支持板27とを係脱可能に係止する係止ピン41aを有するソレノイドアクチュエータ41を設け、該ソレノイドアクチュエータ41に、上記取付ブラケット21が回動変位するのを規制する規制部材としての機能と、所定荷重の入力が検出された時に該規制部材による取付ブラケット21の回動規制状態を解除する規制解除部材としての機能とを兼ね備えさせるように構成してもよい。
【0054】
上記構成によれば、通常時には、上記係止ピン41aをソレノイドアクチュエータ41のケーシング41bから突出させた状態に保持して取付ブラケット21の回動変位を規制することにより、シュラウド3を安定した起立状態に支持することができる。そして、車体の前部に障害物が当接したことが衝突センサにおいて検出された場合には、上記ソレノイドアクチュエータ41を作動させることにより、上記係止ピン41aによる取付ブラケット21の回動規制状態を解除して、上記連結ピン28を支点にシュラウド3が揺動変位するのを許容することができる。また、上記構成に代えて、所定荷重の入力時に該荷重をワイヤーケーブルにより上記係止ピンに伝達して、取付ブラケット21の回動規制状態を解除する方向に駆動する駆動部材を設けた構造とすることもできる。
【0055】
図10および図11は、本発明の第2実施形態に係る自動車の前部車体構造を示している。この第2実施形態に係る前部車体構造では、車体の前部下方(フロントサイドフレーム8の設置部よりも下方)において、車幅方向に延びるように設置されたロアクロスメンバ、または前輪用のサスペンションを支持するサスペンションフレーム等からなるサブフレーム(ペリメータフレーム)42が配設されるとともに、該サブフレーム42の左右両側方部から前方側に延びる延設部材43が設けられている。
【0056】
上記延設部材43の車幅方向内方側壁面には、シュラウド3の下部を回動可能に支持する支持ピン44がエンジンルームの中央側に向けて突設されるとともに、上記シュラウド3の左右両側面下部には、上記支持ピン44の先端部が挿入される挿入孔が形成されたマウントラバー45が固定されている。そして、該マウントラバー45の挿入孔に上記支持ピン44の先端部が挿入されることにより、上記支持ピン44を支点としてシュラウド3が揺動変位するとともに、これに対応して上記シュラウド3の上部が後退可能に支持されている。
【0057】
上記第2実施形態に示すように、車体の前部下方にサブフレーム42を配設するとともに、該サブフレーム42の左右両側方部から前方側に延設された延設部材43に、シュラウド3の下部を回動可能に支持する支持ピン44を設けた構造とした場合には、前部車体の下方部を補強すること等を目的として設置された上記サブフレーム42を利用してシュラウド3の下端部を安定して支持することができる。したがって、簡単な構成でシュラウド3の下端部を回動可能に支持することにより、該シュラウド3の揺動支点となる支持ピン44からシュラウド3の上端部までの距離Lを充分に大きくすることができる。このため、上記ボンネットフード1の前端部上に障害物が倒れ込んで所定の荷重がボンネットフード1の前端部に作用した場合に、上記シュラウド3をスムーズに揺動変位させることができるとともに、これに対応してボンネットフード1の前端部を効果的に下方へ変位させることにより、上記荷重を、より効果的に吸収することができるとともに、上記障害物が受ける衝撃をさらに緩和することができるという利点がある。
【0058】
図12〜図14は、本発明の第3実施形態に係る自動車の前部車体構造を示している。この第3実施形態に係る前部車体構造では、前部車体の側壁部を構成するエプロンパネル46の上部前方からヘッドランプユニット47の設置部を通って車幅方向に延びるように設置された所定幅の保護部材48をシュラウド3の上部前方側に配設することにより、車体前部を保護するように構成されている。また、上記ヘッドランプユニット47の前部内面には、シュラウド3の上部外面に取付ボルト49により係脱可能に取り付けられる取付ブラケット50が設けられている。
【0059】
上記のように車体前部を保護する保護部材48を、上記シュラウド3の上部前方側に配設した場合には、上記ボンネットフード1の前端部上に作用する所定荷重Fに応じ、上記シュラウド3が揺動変位してボンネットフード1の前端部が下方へ変位することが上記保護部材48により阻害されるという事態の発生を効果的に防止しつつ、車体の前面が他車に衝突する等の前突事故の発生時に、その衝突荷重が上記シュラウド3の設置部に及ぶのを上記保護部材48により効果的に阻止することができるため、上記シュラウド3が損傷するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0060】
また、上記第3実施形態に示すように、ヘッドランプユニット47の前部内面をシュラウド3の上部外面に取付ボルト49により取り付けるように構成した場合には、上記ボンネットフード1の前端部上に作用する所定荷重Fに応じ、上記シュラウド3が揺動変位してボンネットフード1の前端部が下方へ変位することが上記ヘッドランプユニット47により阻害されるのを防止するための離脱機構を上記取付ブラケット50等に設ける必要がある。
【0061】
具体的には、図14に示すように、上記取付ブラケット50に前端部が開口したスリット溝51を形成し、該スリット溝51を挿通するように取付ボルト49が設置されてそのねじ軸が上記シュラウド3の上部外面に螺着されることによりヘッドランプユニット47の前部内面がシュラウド3の上部外面に止着されている。なお、図14において、符号52は、ヘッドランプとシュラウド3との連結状態を解除する際に、上記スリット溝51を拡開変形させて取付ボルト49の脱落を促進するために形成された切欠きを示している。
【0062】
上記構成によれば、ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重が入力されたときには、上記取付ボルト49が取付ブラケット50のスリット溝51から脱落して上記ヘッドランプユニット47とシュラウド3との連結状態か解除されるため、上記ボンネットフード1の前端部上に障害物Sが倒れ込んで所定の荷重Fがボンネットフード1の前端部に作用した場合に、上記シュラウド3をスムーズに揺動変位させることができるとともに、これに対応してボンネットフード1の前端部を効果的に下方へ変位させることにより、上記荷重Fを効果的に吸収することができるとともに、上記障害物Sが受ける衝撃を充分に緩和できるという利点がある。
【0063】
また、上記のようにボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重が入力されたときに、センターステー17の上部をラッチブラケット14の下面に止着する取付ボルト18が、センターステー上部のフランジ19に設けられたボルト挿通孔20から脱落することにより上記シュラウド3に対するセンターステー17の止着状態が解除されるように構成した上記実施形態に代え、あるいは該構成とともに、上記センターステー17とバンパービーム6との連結を解除可能に構成に構成してもよい。
【0064】
例えば図15に示すように、上記センターステー17の下部フランジ17aに、下端部が開口したスリットからなるボルト挿通孔53を形成し、該ボルト挿通孔53を挿通した取付ボルト54のねじ軸をバンパービーム6の上部フランジ6aに螺着する等により、上記センターステー17の下部をバンパービーム6の上部に止着した構造としてもよい。この構成によれば、上記ボンネットフード1からシュラウド3の前部上方に所定荷重が入力されたときには、上記取付ボルト54をボルト挿通孔53から脱落させて上記センターステー17とバンパービームとの止着状態を解除することにより、センターステー17によるシュラウド3の支持状態を解除してボンネットフードの前端部を下方へ容易に変位させることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ボンネットフード
2 ラジエータ
3 シュラウド
6 バンパービーム
9 ストライカ
15 ラッチ
17 センターステー
21 取付ブラケット(取付部)
22 支持ブラケット
28 連結ピン
35 規制部材
36 規制解除部材
39 ロアスティフナー
40 駆動カム(駆動部材)
42 サブフレーム
44 支持ピン
48 保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部上面を開閉可能に覆うように設置されたボンネットフードと、該ボンネットフードの下方においてラジエータを保持する枠型状のシュラウドとを有する自動車の前部車体構造であって、上記シュラウドは、その上下方向略中央部またはその下方部に位置する取付部を介して車体側部材に取り付けられるとともに、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に入力される所定荷重に応じ、シュラウドがラジエータの保持状態を維持しつつ、上記取付部を中心に揺動変位するとともに、これに対応して上記シュラウドの上部が後退可能に支持されたことを特徴とする自動車の前部車体構造。
【請求項2】
上記シュラウドに取付ブラケットからなる取付部が設けられるとともに、シュラウドの前方側において車幅方向に延びるように設置されたバンパービームからなる車体側部材に上記取付部を介してシュラウドが取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項3】
上記バンパービームには、シュラウドの取付ブラケットに対応した支持ブラケットが設けられるとともに、該バーパービームの支持ブラケットと上記シュラウドの取付ブラケットとが連結ピンにより回動可能に連結されたことを特徴とする請求項2に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項4】
ボンネットフードの前部に設けられたストライカと、車体側部材に設けられたラッチと、該ラッチを支持するとともに、上記シュラウドの上部とバンパービームとを連結するように上下方向に延びるセンターステーとを有し、上記ボンネットフードからシュラウドの前部上方に所定荷重が入力されたときに、該センターステーと上記バンパービームまたはシュラウドの少なくとも一方との連結が解除可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項5】
上記バンパービームから下方に向けて支持ブラケットが突設されるとともに、上記シュラウドの下方部に取付ブラケットが設けられたことを特徴とする請求項3または4に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項6】
上記連結ピンを支点として取付ブラケットが回動変位するのを規制する規制部材と、所定荷重の入力時に上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する規制解除部材とを備えたことを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項7】
上記シュラウドの取付部よりも下方部から車体の前方側に延びるロアスティフナーを有し、該ロアスティフナーに入力された後退荷重に応じて上記規制部材による取付ブラケットの回動規制状態を解除する方向に駆動する駆動部材により上記規制解除部材が構成されたことを特徴とする請求項6に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項8】
車両の前突時に入力される衝撃荷重から車体の前部を保護する保護部材が、上記シュラウドの上部前方側に配設されたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の自動車の前部車体構造。
【請求項9】
車体の前部下方にサブフレームが配設されるとともに、該サブフレームの左右両側方部から前方側に延設された延設部材に、シュラウドの下部を回動可能に支持する支持ピンが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−173565(P2011−173565A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40692(P2010−40692)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】