説明

自動車の後部車体構造

【課題】自動車の後部車体構造において、後突荷重がリヤサブフレームより車体前方の車体部材へ伝達効率よく伝達されるようにすること。
【解決手段】リヤサブフレーム60の左右のサイドメンバ62の各々の前端部に左右のコネクションフレーム74の後端部を結合し、左右のコネクションフレーム74は、各々、左右のサイドメンバ62の延在方向に同方向に延在してサイドメンバ62とで一直線状をなすものとし、前端部をフロントフロアフレーム17等の車体前部の車体構成部材に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部車体構造に関し、特に、リヤサイドフレームに結合されてリヤサスペンションメンバを支持するリヤサブフレームを配置された後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の後部車体構造として、リヤサイドフレームやリヤフロアクロスメンバ等に結合されてリヤサスペンションメンバを支持するリヤサブフレーム(サスペンション支持部)を配置されたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この後部車体構造では、リヤサブフレームの前部をセンタピラーの下端部に連結するブレースメンバが設けられることにより、後突荷重が、リヤサイドフレームとは別に、リヤサブフレームとブレースメンバとを荷重伝達経路として、サイドシル等、車体前方の車体部材へ伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−232030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の後部車体構造では、リヤサイドフレームは左右のリヤサイドフレームより更に車幅方向内側に位置していて、ブレースメンバは、名の通り、リヤサイドフレームの縦骨部材(車体前後方向に延在する部材)とセンタピラーの下端部とに対して傾斜角度をもった筋交いとして存在するから、荷重伝達経路で見て、リヤサイドフレームとブレースメンバとの接続部、ブレースメンバとセンタピラー下端部との接続部の双方において比較的大きい角度の屈曲部ができる。
【0006】
このため、リヤサブフレームとブレースメンバとを荷重伝達経路として、後突荷重を車体前方の車体部材へ伝達することが直線経路によって行われず、特に、ブレースメンバに曲げモーメントが作用し、後突荷重をリヤサブフレームより車体前方の車体部材へ伝達効率よく伝達することができない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、自動車の後部車体構造において、後突荷重がリヤサブフレームより車体前方の車体部材へ伝達効率よく伝達されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による自動車の後部車体構造は、車体前後方向に延在する左右のリヤサイドフレーム間にリヤサスペンションを支持するリヤサブフレームを配置された自動車の車体後部構造であって、前記リヤサブフレームは、車体前後方向に延在する左右のサイドメンバと、車体幅方向に延在して前記左右のサイドメンバを互いに接続する車体前側と車体後側の二つのクロスビームとにより井形に構成されて前記リヤサイドフレームに連結され、前記左右のサイドメンバの各々の前端部に左右のコネクションフレームの後端部が結合され、当該左右のコネクションフレームは、各々、前記左右のサイドメンバの延在方向に同方向に延在して前記サイドメンバとで一直線状をなして車体前後方向に延在し、前端部を車体前部の車体構成部材に連結されている。
【0009】
本発明による自動車の後部車体構造において、前記車体前部の車体構成部材は、車体前後方向に延在する左右のフロントフロアフレームであることを特徴とする。
【0010】
本発明による自動車の後部車体構造において、前記左右のリヤサイドフレームは、上方へ傾斜した部分を有し、当該上方へ傾斜した部分の前部と前記リヤサイドフレームの中間部に前記リヤサブフレームの前記左右のサイドメンバの前部と中間部が連結されている。
【0011】
本発明による自動車の後部車体構造において、前記左右のサイドメンバは、後部に車体幅方向外方に屈曲して車体後方へ延在する後部屈曲部を有し、前部に車体幅方向外方に屈曲して車体前方へ延在する前部屈曲部を有し、前記後部屈曲部と前記前部屈曲部をもって前記リヤサイドフレームに連結されている。
【0012】
本発明による自動車の後部車体構造は、更に、車体幅方向に延在して前記左右のリヤサイドフレームの後端部を互いに接続するリヤエンドクロスメンバと、前記リヤエンドクロスメンバより車体前方において車体幅方向に延在して前記左右のリヤサイドフレームの中間部を互いに接続するスペアタイヤパンクロスメンバと、車体前後方向に延在して前端部を前記スペアタイヤパンクロスメンバに結合され、後端部を前記リヤエンドクロスメンバに結合されたスペアタイヤパンフレームとを有し、前記スペアタイヤパンフレームは前記前端部を前記スペアタイヤパンクロスメンバとの結合に併せて前記リヤサブフレームにも結合されている。
【0013】
本発明による自動車の後部車体構造において、前記コネクションフレームは、燃料タンクロアフレームを兼ねており、燃料タンクを、リヤフロアパネルの前端部に沿って車体幅方向に延在するミドルフロアクロスメンバと前記リヤサブフレームの車体前側のクロスビームとの間において前記コネクションフレーム上に配置される。
【0014】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記左右のサイドメンバは、前部近傍に他の部分より上下方向に屈曲し易い屈曲容易部を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による自動車の後部車体構造によれば、リヤサブフレームの左右のサイドメンバと左右のフロントフロアフレームとを連結する左右のコネクションフレームが左右のサイドメンバとで一直線状をなして車体前後方向に延在していることにより、後突荷重を車体前方へ伝達することが、直線経路によって行われる。これにより、コネクションフレームに作用する曲げモーメントが減少し、後突荷重をリヤサブフレームより車体前方へ伝達効率よく伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による自動車の後部車体構造の一つの実施例を示す底面図。
【図2】本実施例による後部車体構造の側面図。
【図3】本実施例による後部車体構造に用いられるリヤサブフレームの斜視図。
【図4】図2の線A−Aに沿った断面図。
【図5】図2の線B−Bに沿った断面図。
【図6】図2の線C−Cに沿った断面図。
【図7】図2の線D−Dに沿った断面図。
【図8】(a)、(b)は本実施例による後部車体構造における後突時のリヤサブフレームの折れ曲がり過程を示す側面図。
【図9】屈曲容易部が設定されていない場合の後突時のリヤサブフレームの折れ曲がり過程を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明による自動車の後部車体構造の実施例を、図1〜図7を参照して説明する。
【0018】
これらの図において、1はフロントフロアパネルを、3はリヤフロアパネルを、5は左右の後輪(リヤタイヤ)を各々示している。
【0019】
フロントフロアパネル1の車幅方向の左右両側部には車体前後方向に延在する左右のサイドシル7が溶接等によって結合されている。フロントフロアパネル1の車幅方向中央部には車体前後方向に延在するドーム形断面のトンネル部9が形成されている。
【0020】
リヤフロアパネル1の前端部には当該前端部に沿って車体幅方向に延在するミドルフロアクロスメンバ11とミドルフロアクロスメンバスチフナ13(図4)がある。ミドルフロアクロスメンバ11とミドルフロアクロスメンバスチフナ13とは組み合わさって箱形断面形状(閉じ断面形状)をなし、フロントフロアパネル1の後端部と溶接等によって結合している。
【0021】
ミドルフロアクロスメンバ11には、トンネル部9の左右縁部に沿って車体前後方向に延在する溝形断面形状の左右のトンネル部フレーム15の後端部と、車体幅方向で見て左右のサイドシル7と左右のトンネル部フレーム15との間にあって車体前後方向に延在する溝形断面形状の左右のフロントフロアフレーム17の後端部が各々溶接等によって結合されている。トンネル部フレーム15、フロントフロアフレーム17は、サイドシル7に平行に車体前後方向に延在し、フロントフロアパネル1を補強支持している。
【0022】
リヤフロアパネル3の車幅方向の左右両側部には車体前後方向に延在する箱形断面形状の左右のリヤサイドフレーム21が溶接等によって結合されている。左右のリヤサイドフレーム21は、各々、前端部を左右のサイドシル7の後端部に溶接等によって結合されている。リヤサイドフレーム21は、サイドシル7との接続を行う前側部分21Aは後輪5の配置のために、サイドシル7との結合部より車体後方に向かうに従って車幅方向内側になる方向に傾斜している。リヤサイドフレーム21の後側部分21Bはサイドシル7より車幅方向内側にあって車体前後方向に延在して前側部分21Aに連続している。
【0023】
また、左右のリヤサイドフレーム21の前側部分21Aは、図2に示されているように、車体後方に向かうに従って車体上下方向上側になる方向に傾斜している。これにより、リヤサイドフレーム21の後側部分21Bは、前側部分21Aの前端によるサイドシル7との接続部より高い位置にある。
【0024】
左右のリヤサイドフレーム21の後端部には車幅方向に延在する箱形断面形状のリヤエンドクロスメンバ23の左右の端部が溶接等によって結合されている。
【0025】
リヤエンドクロスメンバ23にはリヤバンパエクステンション25によって箱形断面形状のリヤバンパビーム27が取り付けられている。
【0026】
リヤサイドフレーム21及びリヤエンドクロスメンバ23にはリアパネル29が結合されている。リアパネル29にはリアパネルセンタスチフナ31が結合されている。リアパネル29の上部にはリアパネル上部クロスメンバ33が溶接等によって結合されている。リアパネル29の下部は、左右のリヤサイドフレーム21の後端部と、後述する左右のスペアタイヤパンフレーム39の後端部およびスペアタイヤパン43の後端部を連結するように、リヤエンドクロスメンバ23が溶接等によって結合されている(図4参照)。
【0027】
左右のリヤサイドフレーム21の後側部分21Bの車体前後方向の中間部には、車幅方向に延在するスペアタイヤパンクロスメンバ35の左右端部が溶接等によって結合されている。スペアタイヤパンクロスメンバ35は、互いに結合された上部メンバ35Aと下部メンバ35Bとにより構成され、箱形断面形状になしている(図6参照)。
【0028】
左右のリヤサイドフレーム21の前側部分21Aと後側部分21Bとの接続部近傍には、車幅方向に延在する溝形断面形状のリヤフロアクロスメンバ37の左右端部が溶接等によって結合されている。
【0029】
スペアタイヤパンクロスメンバ35とリヤエンドクロスメンバ23との間には左右2本の溝形断面形状のスペアタイヤパンフレーム39が設けられている。スペアタイヤパンフレーム39は、前端をスペアタイヤパンクロスメンバ35の下部延長部35C(図6参照)に、後端をリヤエンドクロスメンバ23の下部延長部23C(図2参照)に各々溶接等によって結合され、リヤサイドフレーム21の後側部分21Bが配置されている高さ位置より低い位置にあって車体前後方向にリヤサイドフレーム21の後側部分21Bと平行に延在している。
【0030】
リヤフロアクロスメンバ37とスペアタイヤパンクロスメンバ35との間には左右2本の溝形断面形状のリヤフロアセンタフレーム41が設けられている。リヤフロアセンタフレーム41は、車体前後方向にリヤサイドフレーム21の後側部分21Bと平行に延在し、前端をリヤフロアクロスメンバ37に、後端をスペアタイヤパンクロスメンバ35に各々溶接等によって結合されている。
【0031】
左右のリヤサイドフレーム21とスペアタイヤパンクロスメンバ35とリヤエンドクロスメンバ23によって囲まれた部分には、これらに溶接等によって結合されたスペアタイヤパン43が設けられている。スペアタイヤパン43には、車室内側にスペアタイヤTのホイールを固定するためのスペアタイヤアンカ44が取り付けられている。スペアタイヤパン43は左右のリヤサイドフレーム21の内側で、横幅(車幅方向幅)は、車幅全体の50〜70%程度であることが好ましい。
【0032】
左右のスペアタイヤパンフレーム39は、図7に示されているように、スペアタイヤパン43の底部と左右の側壁とがなす車室内側の隅角部に沿って配置され、スペアタイヤパン43の車室外側に配置されたスペアタイヤパンブラケット55とでスペアタイヤパン43を挟むようにしてボルト56によってスペアタイヤパン43に固定されている。
【0033】
リヤエンドクロスメンバ23の車幅方向中央部にはスペアタイヤパン43の下底面(車室外面))に結合するジャッキアップスチフナ51が溶接等によって取り付けられている。ジャッキアップスチフナ51にはジャッキアップロッド53が溶接等によって結合されている。
【0034】
左右のリヤサイドフレーム21の後側部分21Bには当該後側部分21Bより車幅方向で見て外側に配置された左右のリヤフロアサイドパネル49が溶接等によって結合されている。
【0035】
リヤフロアパネル3は、ミドルフロアクロスメンバ11とスペアタイヤパンクロスメンバ35との間に延在し、リヤフロアクロスメンバ37の部分で段違い折曲して車体後側が車体前側より高くなっており、ミドルフロアクロスメンバ11、リヤフロアクロスメンバ37、スペアタイヤパンクロスメンバ35、左右のリヤサイドフレーム21、2本のリヤフロアセンタフレーム41の各々に溶接等によって結合されている。
【0036】
左右のリヤサイドフレーム21間にはリヤサスペンションの構成部材を支持するリヤサブフレーム60が配置されている。リヤサブフレーム60は、車体前後方向に延在する左右のサイドメンバ62と、車体幅方向に延在して左右のサイドメンバ62を互いに接続する前側クロスビーム64及び後側クロスビーム66とにより井形に構成されている。左右のサイドメンバ62には、各々、アーチ状のアッパフレーム68が溶接等によって結合されている。本実施例では、サイドメンバ62、前側クロスビーム64、後側クロスビーム66、アッパフレーム68の全てが箱形断面形状に構成されている。
【0037】
左右のサイドメンバ62は、後部に車体幅方向外方に屈曲して車体後方へ延在する後部屈曲部72を、前部に車体幅方向外方に屈曲して車体前方へ延在する前部屈曲部70を各々一体を有し、左右の後部屈曲部72と左右の前部屈曲部70をもって4点で左右のリヤサイドフレーム21の車体前後方向の前部と中間部(後部)とに連結されている。
【0038】
後側クロスビーム66は、図6に示されているように、スペアタイヤパンフレーム39にスペアタイヤパン43、ブラケット46を介してボルト48によって連結されたスペアタイヤパンブラケット45とボルト47によって連結されている。
【0039】
図1に、左右それぞれの前部屈曲部70とリヤサイドフレーム21の前部(前側部分21
A)との連結点を符号Pによって示し、左右それぞれの後部屈曲部72とリヤサイドフレーム21の中間部(後側部分21B)との連結点を符号Qによって示している。この連結点Pにおける前部屈曲部70とリヤサイドフレーム21との連結、連結点Qにおける後部屈曲部72とリヤサイドフレーム21との連結は、各々ボルト締めにより行われている。連結点Qの連結構造については詳細に後述する。
【0040】
また、本実施例では、図3に示されている連結点Sをもって左右のアッパフレーム68が、各々、左右のリヤサイドフレーム21に連結されている。
【0041】
左右のサイドメンバ62の各々の前端部には箱形断面形状の左右のコネクションフレーム74の後端部が結合されている。左右のコネクションフレーム74は、各々、左右のサイドメンバ62の延在方向に同方向に延在してサイドメンバ62とで一直線状をなして車体前後方向に延在している。左右のコネクションフレーム74は、図1に連結点Rにより示されているように、前端部をミドルフロアクロスメンバ11および左右のフロントフロアフレーム17の後端部にボルト締めによって連結されている。
【0042】
連結点Rにおけるコネクションフレーム74とミドルフロアクロスメンバ11およびフロントフロアフレーム17との連結構造の詳細を、図5を参照して説明する。ミドルフロアクロスメンバ11とミドルフロアクロスメンバスチフナ13には溶接等によってサブフレームブラケット76が結合されている。コネクションフレーム74の先端部の中空部内にはカラー78が溶接等によって固定装着されている。
【0043】
コネクションフレーム74はカラー78を貫通するボルト80によってサブフレームブラケット76に連結されている。このようにして、コネクションフレーム74の先端部はサブフレームブラケット76を介してミドルフロアクロスメンバ11とミドルフロアクロスメンバスチフナ13との結合体に固定連結されている。
【0044】
フロントフロアフレーム17の後端部にはバックアップブラケット82が溶接等によって結合されている。フロントフロアフレーム17の後端部とバックアップブラケット82にはボルト84によってサブフレームスティ86の前端部が固定連結されている。サブフレームスティ86の後端部はボルト80によってコネクションフレーム74に固定連結されている。このようにしてコネクションフレーム74の先端部はサブフレームスティ86を介してフロントフロアフレーム17の後端部に固定連結されている。
【0045】
連結点Qにおけるリヤサブフレーム60の後部屈曲部72とリヤサイドフレーム21との連結構造の詳細を、図7を参照して説明する。リヤサイドフレーム21の下部にはサブフレームマウントブラケット88の上部が溶接等によって結合されている。サブフレームマウントブラケット88の下部は、スペアタイヤパン43に溶接等によって結合され、更に、ボルト56によってスペアタイヤパンブラケット55と共締めでスペアタイヤパンフレーム39に固定連結されている。
【0046】
サブフレームマウントブラケット88とリヤサイドフレーム21とは当該双方に溶接等によって結合されたスティ90によって補強接続されている。リヤサイドフレーム21とサブフレームマウントブラケット88にはカラー92が溶接等によって固定装着されている。後部屈曲部72の中空部内にはカラー94が溶接等によって固定装着されている。後部屈曲部72は、カラー92、94を貫通するボルト96によってリヤサイドフレーム21に固定連結されている。このようにして、後部屈曲部72はサブフレームマウントブラケット88を介してリヤサイドフレーム21に固定連結されている。
【0047】
リヤサブフレーム60は、リヤサスペンション構成部材の支持体として、左右のサイドメンバ62の各々に、ロアアームフロントブラケット100と、センタアームブラケット102と、ロアアームリヤブラケット104とを設けられている。アッパフレーム68には、アッパアームフロントブラケット106と、アッパアームリヤブラケット106が設けられている。
【0048】
図4に示されているように、ミドルフロアクロスメンバ11とリヤサブフレーム60の前側クロスビーム64との間には、燃料タンク110が左右のコネクションフレーム74(図1参照)上に載置されるようにして配置されている。このようにして、コネクションフレーム74は燃料タンクロアフレームを兼ねている。
【0049】
つまり、燃料タンク110は、ミドルフロアクロスメンバ11とリヤサブフレーム60の前側クロスビーム64との前後間において、リヤフロアパネル3と左右のコネクションフレーム74との間にある。ミドルフロアクロスメンバ11とリヤサブフレーム60の前側クロスビーム64との前後間が車体前後方向の燃料タンク保護エリアになっている。
【0050】
左右のサイドメンバ62の前部近傍には開口部98が形成されている。開口部98により、サイドメンバ62の前部近傍は、後突に対して上述の燃料タンク保護エリアを保つことを目的として、他の部分より上下方向に屈曲し易い屈曲容易部になっている。
【0051】
また、リヤフロアパネル3のうち、リヤフロアクロスメンバ37とスペアタイヤパンクロスメンバ35との間(一段高くなっている部分)の下方は、キャニスタ112等の燃料タンク付属品の配置部になっている。
【0052】
次に、上述の構成による後部車体構造における後突荷重の伝達経路について説明する。
【0053】
リヤバンパビーム27に作用する後突荷重の伝達経路として、リヤバンパビーム27より左右のリヤサイドフレーム21を通って左右のサイトシル7へ向かう経路と、リヤエンドクロスメンバ23より左右のスペアタイヤパンフレーム39、リヤサブフレーム60の左右のサイドメンバ62、コネクションフレーム74を経由してフロントフロアフレーム17へ向かう経路とができる。リヤサイドフレーム21に作用する後突荷重の一部は、連結点Qよりリヤサブフレーム60の左右のサイドメンバ62、コネクションフレーム74を経由してフロントフロアフレーム17に分散伝達される。
【0054】
このような経路による荷重伝達において、リヤサブフレーム60の左右のサイドメンバ62と左右のフロントフロアフレーム17とを連結する左右のコネクションフレーム74が左右のサイドメンバ62とで一直線状をなして車体前後方向に延在していることにより、後突荷重の車体前方への伝達が、直線経路によって行われることになる。これにより、コネクションフレーム74に作用する曲げモーメントが減少し、後突荷重がリヤサブフレーム60より車体前方へ伝達効率よく伝達される。
【0055】
リヤサブフレーム60は、左右のリヤサイドフレーム21が上方に傾斜した部分の前部(連結点P)と後部(連結点Q)の間に連結点Sで連結されているので、後突による上下フレームの相反するモーメントをキャンセルできる。
【0056】
スペアタイヤパンフレーム39からリヤサブフレーム60のサイドメンバ62への荷重伝達が、大きい曲げモーメントを生じることなく、良好に行われるよう、スペアタイヤパンフレーム39の曲げモーメントに関する中立軸位置とサイドメンバ62の後部連結部(連結点Q)位置とのオフセットは、ゼロ〜極力小さい設定になっている。
【0057】
また、サイドメンバ62からフロントフロアフレーム17への荷重伝達が、大きい曲げモーメントを生じることなく、良好に行われるよう、サイドメンバ62の前部連結部(連結点P)位置とフロントフロアフレーム17の曲げモーメントに関する中立軸位置とのオフセットは、ゼロ〜極力小さい設定になっている。
【0058】
スペアタイヤパンフレーム39はリヤサブフレーム60を介してリヤサイドフレーム21と連結するので、スペアタイヤパンフレーム39の支持剛性が向上すると共に、後突荷重の伝達をリヤサブフレーム60へ向けて直線的経路をもって行うことができる。
【0059】
フロントフロアフレーム17、リヤサブフレーム60のサイドメンバ62、スペアタイヤパンフレーム39が車体前後方向に略直線的に結合され、サイドメンバ62はリヤサイドフレーム21とも結合されるので、車体後部の剛性が効率よく向上する。
【0060】
オフセット衝突時には、リヤエンドクロスメンバ23、スペアタイヤパンクロスメンバ35、リヤフロアクロスメンバ37、ミドルフロアクロスメンバ11に加えて、リヤサブフレーム60の前側クロスビーム64、後側クロスビーム66も、衝突荷重を左右一方(衝突側)のリヤサイドフレーム21より他方(非衝突側)のリヤサイドフレーム21へ伝達する荷重伝達部材として有効に機能する。
【0061】
コネクションフレーム74は、燃料タンク110の下方にあるため、燃料タンク110の容量を確保するために、断面サイズを大きくし難い。このことに対して、リヤサブフレーム60は、リヤサスペンションの入力を直接受けるため、剛性、強度を高く設定する必要がある。このため、図9に示されているように、後突によって、コネクションフレーム74が途中で上下に折れ曲がり易い。コネクションフレーム74の折れ曲がりは、ミドルフロアクロスメンバ11とリヤサブフレーム60の前側クロスビーム64との間に画定されている燃料タンク保護エリアの変形を来すことになる。
【0062】
このことに対して、本実施例では、開口部98により、サイドメンバ62の前部近傍に、他の部分より上下方向に屈曲し易い屈曲容易部が設定される。これにより、後突時には、図8(a)、(b)に示されているように、サイドメンバ62が開口部98の部分で上下に屈曲する。このように屈曲したことで、サイドメンバ62が塑性ヒンジ状態になり、コネクションフレーム74に曲げモーメントが伝達し難くなり、コネクションフレーム74の折れ曲がりが回避される。
【0063】
このようにして、ミドルフロアクロスメンバ11とリヤサブフレーム60の前側クロスビーム64との間に画定されている燃料タンク保護エリアの変形が回避され、燃料タンク110の保護が図られる。
【0064】
なお、サイドメンバ62の屈曲容易部は、開口部98によるもの以外に、ビード、板厚低減、材料の強度低下等によっても構成することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 フロントフロアパネル
3 リヤフロアパネル
5 後輪
7 サイドシル
9 トンネル部
11 ミドルフロアクロスメンバ
15 トンネル部フレーム
17 フロントフロアフレーム
21 リヤサイドフレーム
23 リヤエンドクロスメンバ
27 リヤバンパビーム
35 スペアタイヤパンクロスメンバ
37 リヤフロアクロスメンバ
39 スペアタイヤパンフレーム
41 リヤフロアセンタフレーム
43 スペアタイヤパン
60 リヤサブフレーム
62 サイドメンバ
64 前側クロスビーム
66 後側クロスビーム
68 アッパフレーム
74 コネクションフレーム
110 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延在する左右のリヤサイドフレーム間にリヤサスペンションを支持するリヤサブフレームを配置された自動車の車体後部構造であって、
前記リヤサブフレームは、車体前後方向に延在する左右のサイドメンバと、車体幅方向に延在して前記左右のサイドメンバを互いに接続する車体前側と車体後側の二つのクロスビームとにより井形に構成されて前記リヤサイドフレームに連結され、
前記左右のサイドメンバの各々の前端部に左右のコネクションフレームの後端部が結合され、当該左右のコネクションフレームは、各々、前記左右のサイドメンバの延在方向に同方向に延在して前記サイドメンバとで一直線状をなして車体前後方向に延在し、前端部を車体前部の車体構成部材に連結されている車体後部構造。
【請求項2】
前記車体前部の車体構成部材は、車体前後方向に延在する左右のフロントフロアフレームである請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記左右のリヤサイドフレームは、上方へ傾斜した部分を有し、
当該上方へ傾斜した部分の前部と前記リヤサイドフレームの中間部に前記リヤサブフレームの前記左右のサイドメンバの前部と中間部が連結されている請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記左右のサイドメンバは、後部に車体幅方向外方に屈曲して車体後方へ延在する後部屈曲部を有し、前部に車体幅方向外方に屈曲して車体前方へ延在する前部屈曲部を有し、
前記後部屈曲部と前記前部屈曲部をもって前記リヤサイドフレームに連結されている請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項5】
車体幅方向に延在して前記左右のリヤサイドフレームの後端部を互いに接続するリヤエンドクロスメンバと、
前記リヤエンドクロスメンバより車体前方において車体幅方向に延在して前記左右のリヤサイドフレームの中間部を互いに接続するスペアタイヤパンクロスメンバと、
車体前後方向に延在して前端部を前記スペアタイヤパンクロスメンバに結合され、後端部を前記リヤエンドクロスメンバに結合されたスペアタイヤパンフレームとを有し、
前記スペアタイヤパンフレームは前記前端部を前記スペアタイヤパンクロスメンバとの結合に併せて前記リヤサブフレームにも結合されている請求項1から4の何れか一項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記コネクションフレームは、燃料タンクロアフレームを兼ねており、燃料タンクを、フロントフロアパネルの後端部に沿って車体幅方向に延在するミドルフロアクロスメンバと前記リヤサブフレームの車体前側のクロスビームとの間において前記コネクションフレーム上に配置される請求項1から5の何れか一項に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記左右のサイドメンバは、前部近傍に他の部分より上下方向に屈曲し易い屈曲容易部を有する請求項1から6の何れか一項に記載の車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−247622(P2010−247622A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98253(P2009−98253)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】