説明

自動車の消臭抗菌方法及び消臭抗菌手段を具備した自動車

【課題】 この発明は、部材の成形時に光触媒を層着して自動消臭自動車とすることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、自動車の内壁材及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させた後、自動車に取り付けることを特徴とした自動車の消臭抗菌方法により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車内のような、小さい閉空間内で発生する臭気、菌類又は閉空間内へ持ち込まれた臭気、菌類を自動的に消臭、抗菌することを目的とした自動車の消臭抗菌方法及び消臭抗菌手段を具備した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来自動車内で、例えばタバコの臭いその他臭気が発生した場合には換気し、又は換気と共に消臭剤の散布が行われている。
【0003】
また光触媒又は空気触媒を用いた脱臭材及びその製品、又は脱臭装置が知られている。
【特許文献1】特許第3033995号
【特許文献2】特開2001−61949
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の消臭剤の散布は、臭気生成の都度の散布が面倒であるのみならず、効力の持続時間が短い問題点があった。また一般的に臭気の性質に応じて異なる消臭剤を必要とする問題点があった。
【0005】
前記特許文献1の製品は、悪臭の存在する壁面あるいは悪臭を導入する経路中に塗布し、消臭脱臭機能を有するとされているが、少なくとも酸化チタンについては紫外線照射を考慮しなければならないので、大いに制約を受ける問題点がある。
【0006】
また特許文献2については、脱臭装置を付属させなければならないので、自動車などにはなじまない問題点がある。
【0007】
また自動車が完成された点で消臭処理をするのは、作業上著しい困難性があり、自動車購買者が行うのは消臭剤を散布する程度であって、現状と大差がないものと認められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、自動車の内壁材又は内装材に、消臭抗菌処理を施すので、原則的には、処理所の増加程度ですみ、比較的負担を軽くして目的を達成できる利点がある。
【0009】
即ちこの発明は、自動車の内壁材及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させた後、自動車に取り付けることを特徴とした自動車の消臭抗菌方法であり、自動車の内壁材及び内装材は、天井、ドアー、窓硝子の内壁材及びシート、カーペット、各種パネル類の内装材、エアコンのダクト、フィルターとするものであり、光触媒は、酸化チタンとするものである。また、光触媒の付着は、光触媒と有機又は無機のバインダとを混合し、この混合物を噴霧又は塗布により光触媒層を設けるものであり、空気触媒は、チタニア系化合物又は天然キレート鉄イオンミネラルの単独又は混合物とするものであり、チタニア系化合物は、リン酸チタニア化合物としたものである。
【0010】
次に他の発明は、自動車の内壁及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させ、自動車内で発生した臭気を自動消臭できるようにしたことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車であり、自動車の内壁材及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させると共に、前記自動車内へ、前記光触媒を照射できる紫外線発生器を設置したことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車であり、紫外線発生器は、ブラックライトとしたものである。
【0011】
また他の発明は、完成自動車を密封し、車内各部の表面の一部又は全部に光触媒と、空気触媒を単独付着又は併用付着させたことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車である。
【0012】
この発明により消臭しようとする対象臭は、タバコ臭、アミン、メルカプタン、インドール、スカトールなどであり、有毒ガスとしては、ホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素などがある。またこの発明における光触媒は、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、硫化亜鉛(ZuS)、硫化カドニウム(CdS)及び硫化水銀(HgS)がある。また光触媒反応としては、吸着、脱離、酸化、水素化、水素周位体交換などがある。
【0013】
この発明における空気触媒としてのチタニア系化合物又は天然キレート鉄イオンミネラルは、空気中に含まれている酸素や水分と反応して、活性酸素たるOH(水酸化ラジカル、O−(スーパーオキサンドアニオン)を生成し、その強力な酸化力により、汚れ、臭い、細菌の元となる有機物を分解する。前記のように空気触媒は、紫外線などを必要としないので、自動車内でも有効に分解効力を発揮する。
【0014】
また、光触媒と、空気触媒によれば、活性酸素とは、別に水酸基(OH)による皮膜も形成するため、親水性となり、塗布面に汚れなどが付き難く、かつ落ち易い作用効果もある。
【0015】
この発明による光触媒はその粉末5〜95質量%と、無機けい素(例えばメタノールシリカゾル)6〜90質量%と、若干の添加剤を加えて、対象物(金属板、合成樹脂板、その他の材料)に噴霧付着し、20μm〜50μmの厚さに塗布する。
【0016】
前記塗布は、目的とする板の全面もしくは一部である。例えば、自動車室内の消臭抗菌については、前面塗布の必要がないので、最も加工し易い部材(例えば金属板、合成樹脂板など)に全面処理し、他は処理しない場合も考えられる。例えば、車内容積を1mとした場合に、前記光触媒塗布面積は1m〜2mで目的を達成することができる。
【0017】
また自動車の場合には、フロント硝子から入る太陽光線中の紫外線目当てに、フロントに面する前部座席を重点的に光触媒による消臭抗菌処理することも実用的である。例えば、フロントの機器類パネル、窓、座席、天井などの表面材を処理すれば、目的を達成することができる。また、光の届きにくい場所のシート、パネルなどは、空気触媒処理すると合理的である。
【0018】
前記における金属酸化物の光触媒としては、酸化チタンが代表的であるので、これについて説明する。
【0019】
酸化チタンに紫外線(波長400mm以下)を当てると活性酸素を生じ、これに接触するものを酸化する。一般に臭気は殆んど有機物であるから、これを前記活性酸素で酸化すれば、二酸化炭素と水になり、無臭化し、消臭化と抗菌化される。前記の他、細菌も表皮を酸化して分解し殺し、太陽の汚染物質である窒素酸化物も酸化して硝酸にするなど、総て無害化する。
【0020】
自動車内において太陽光線(3%は紫外線)が入るのは比較的少ないが、窓から直接照射する部分もかなりある。然し乍ら、車内の酸化チタン薄膜に反応させるにはブラックライトなど、紫外線放射電球を適宜位置に設置すれば、効率よく脱臭できるし、光線の当たらない場所は空気触媒によれば確実に処理できる。
【0021】
また酸化チタンに紫外線が当たると、超親水性になる。そこで、酸化チタンを自動車の窓硝子へ付けると、油分その他の異物を浮上させ、取れ易くする。このことは、窓硝子の汚染を防止し、汚物の除去を容易にすることとなる。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、自動車の内壁、内装その他のパネルに触媒層(光触媒と空気触媒)を設けたので、例えば酸化チタン層が紫外線に照射され、空気触媒が空気に接触すると、活性酸素を生じ、臭気その他を分解して無害化し、かつ抗菌性を発揮する。従って、自動消臭抗菌効果がある。
【0023】
また光触媒、空気触媒の一方又は両方を窓硝子の外側へ塗布すれば、汚れにくくなり、かつ汚れを取り易くする効果がある。
【0024】
この発明の自動車は、完成時に消臭能を内蔵しているので、爾後生じた臭気を自動的に消臭する効果がある。また酸化チタンの場合には、耐久性が長く(例えば5年以上)特別の処理をすることなく、車内に生成された臭気を自動的に消臭する効果がある。
【0025】
また自動車の壁材、内装材又はパネルなどの製造時に酸化チタン層を設けるので、層着の為の余分の労力、エネルギーを使用することなく、消臭できる効果がある。またこの発明の実施により、自動消臭車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明は、自動車の内壁材、内装材及びパネル材を成形処理する際に、リン酸チタニア化合物又は酸化チタン粉末を、有機・無機バインダーと混合し、これを前記内壁材等に塗着する。この部品を使用して自動車を造れば、消臭、抗菌処理したこの発明の自動車が出来上がる。
【実施例1】
【0027】
この発明の実施例を図1について説明すれば、自動車1の製造に際し、その内壁材2、内装材3及び各種計器用のパネル4並びに座席5に酸化チタンと無機バインダーとの混合物を塗布し、又は空気触媒を塗布した後、通常の要領により自動車を製造すれば、自動消臭抗菌機能付の自動車ができる。
【0028】
前記実施例においては、一応各材料の表面全部に酸化チタン膜等を設けたが、必ずしも全面積に設ける必要はない。従って特定物(例えば、内装材のみ)のみを処理し、又は各部材の一部(例えば、表面積50%〜80%)を処理することができる。
【0029】
前記実施例において、紙その他酸化チタンに侵され易い物の表面に、酸化チタン層を設ける場合には、まず酸化チタンに強い保護層(プラスチックフィルム)を設け、この保護層の上へ酸化チタン層を設ける。
【実施例2】
【0030】
この発明において、内壁材2の表面に酸化チタン層9を設ける場合の実施例を図2に基づいて説明すると、内壁材2をコンベア6で矢示7の方向へ移送しつつ、ノズル8から酸化チタン液を噴霧して、内壁材2の内面に必要厚さ(例えば50μm)を設ける。
【0031】
前記酸化チタン液は、50質量%で、無機バインダー50質量%である。前記酸化チタンは、5〜90質量%、無機バインダー5〜90質量%で、添加剤を0〜10質量%加える。
【0032】
前記無機バインダーは、例えばメタノールシリカゾルを用いるが、これに限定されない。この実施例では、無機バインダーを用いたが、有機バインダーでも良く、その他のバインダーを使用することもできる。要は安定し、強固に付着していて、触媒の能力を阻害しなければ、色々のバインダーを使用することができる。
【実施例3】
【0033】
この発明において、リン酸チタニア化合物を液状にし、これを自動車部品の全面又は一部面に塗布し、この部品を使用して自動車の壁面、床面その他を覆えば、この発明の自動車ができる。
【0034】
前記リン酸チタニア化合物は、部品面積1mにつき、5g〜10g使用する。
【0035】
前記自動車に用いる部材等の処理面積は、内容積1mに対し1cm〜2cmあれば目的を達成することができる。
【実施例4】
【0036】
この発明の他の実施例について説明すると、出荷直前の自動車を密封し、車内へ空気触媒液の散布ノズルを入れて所定量(例えば、1m当り7cm)噴霧する。又は、噴霧後密封することもできる。
【0037】
前記噴霧後5〜10時間で定着するので、窓を開放して換気し、爾後通常の販売手段に沿って取扱うことができる。
【0038】
前記自動車を船舶等で移送する場合には、移送中に空気触媒又は光触媒で処理することができるので、処理時間、待時間は不必要である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施例の使用状態を示す説明図。
【図2】同じく部材に酸化チタン層を設ける場合の説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 自動車
2 内壁部材
3 内装材
4 パネル
5 座席
6 コンベア
8 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内壁材及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させた後、自動車に取り付けることを特徴とした自動車の消臭抗菌方法。
【請求項2】
自動車の内壁材及び内装材は、天井、ドアー、窓硝子の内壁材及びシート、カーペット、各種パネル類の内装材、エアコンのダクト、フィルターとすることを特徴とした請求項1記載の自動車の消臭抗菌方法。
【請求項3】
光触媒は、酸化チタンとすることを特徴とした請求項1記載の自動車の消臭抗菌方法。
【請求項4】
光触媒の付着は、光触媒と有機又は無機のバインダとを混合し、この混合物を噴霧又は塗布により光触媒層を設けることを特徴とした請求項1記載の自動車の消臭抗菌方法。
【請求項5】
空気触媒は、チタニア系化合物又は天然キレート鉄イオンミネラルの単独又は混合物とすることを特徴とする請求項1記載の自動車の消臭抗菌方法。
【請求項6】
チタニア系化合物は、リン酸チタニア化合物としたことを特徴とする請求項5記載の自動車の消臭抗菌方法。
【請求項7】
自動車の内壁及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させ、自動車内で発生した臭気を自動消臭できるようにしたことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車。
【請求項8】
自動車の内壁材及び内装材の全部又は一部に光触媒と空気触媒を単独付着又は併用付着させると共に、前記自動車内へ、前記光触媒を照射できる紫外線発生器を設置したことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車。
【請求項9】
紫外線発生器は、ブラックライトとしたことを特徴とする請求項8記載の消臭抗菌手段を具備した自動車。
【請求項10】
完成自動車を密封し、車内各部の表面の一部又は全部に光触媒と、空気触媒を単独付着又は併用付着させたことを特徴とする消臭抗菌手段を具備した自動車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−14481(P2007−14481A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197721(P2005−197721)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(396018726)株式会社ROSECC (7)
【Fターム(参考)】