説明

自動車用霜取り装置及び自動車の霜取り方法

【課題】自動車の霜取りのための暖機運転を無くし又は減らすことで、COの排出削減を図ることが可能な自動車用霜取り装置及び自動車の霜取り方法の提供。
【解決手段】熱供給源と、該熱供給源に受熱側端部を接続したヒートパイプと、該ヒートパイプの放熱側に設けられ、該ヒートパイプにより加温された熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出する送出手段とを有することを特徴とする自動車用霜取り装置。この自動車用霜取り装置を用い、熱供給源からヒートパイプを通して熱輸送して熱媒を加温し、その熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出し、該ガラスの霜取りを行うことを特徴とする自動車の霜取り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱供給源からヒートパイプを通して熱輸送して熱媒を加温し、その熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出し、該ガラスの霜取りを行うことによって、自動車の霜取り用暖機運転を無くし又は減らすことで、COの排出削減を図ることが可能な自動車用霜取り装置及び自動車の霜取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季等、低温環境下で駐車していた自動車は、フロントガラスやサイドガラスが結露・氷結し、そのままの状態では運転者の視界が悪くなるため、フロントガラスやサイドガラスを温める「霜取り」を行う必要がある。従来、フロントガラスやサイドガラスが結露・氷結した場合には、スタート前に自動車のエンジンを駆動させ、霜取りを行って結露を取り除き、視界が確保できてから走行する。この霜取りのための暖機運転の所用時間は、外気温により異なり、冬場等の低温時には長時間の暖機運転を行う場合が多い。
【0003】
従来、自動車のウインドウの曇りを除去するための技術として、例えば、特許文献1に開示されているように、必要なときに車内の送風機を駆動させてウインドウの曇りを除去する機能を有する自動車が知られている。
なお、本発明において用いている一般的なヒートパイプに関しては、例えば、非特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許第3894166号公報
【非特許文献1】http://www.fujikura.co.jp/elect_material/ej1_130/ej1_130.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車のエンジンを暖機運転すると、周囲に余分なCOを大量に排気してしまうことになる。周知の如くCOは、地球規模で進行している地球温暖化の原因の一つとされ、世界各国でCOの排出量をできる限り削減するための方策が研究されている。かかる事情に照らし、自動車本来の走行するという目的ではなく、フロントガラスやサイドガラスの霜取りのために大量のCOを排出する、この暖機運転を無くす又は減らすことが望まれている。
【0005】
また、この霜取りのための暖機運転は、運転開始までに時間を要するため、時間のロスという点でも暖機運転を無くす又は減らすことが望まれている。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、自動車の霜取りのための暖機運転を無くし又は減らすことで、COの排出削減を図ることが可能な自動車用霜取り装置及び自動車の霜取り方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、熱供給源と、該熱供給源に受熱側端部を接続したヒートパイプと、該ヒートパイプの放熱側に設けられ、該ヒートパイプにより加温された熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出する送出手段とを有することを特徴とする自動車用霜取り装置を提供する。
【0008】
本発明の自動車用霜取り装置において、熱媒は、水又は空気であることが好ましい。
【0009】
本発明の自動車用霜取り装置において、熱供給源は、ヒートポンプ式給湯器であることが好ましい。
【0010】
本発明の自動車用霜取り装置において、送出手段からの熱媒の送出を予め設定した時間で実行させるタイマーを有していることが好ましい。
【0011】
また本発明は、前述した本発明に係る自動車用霜取り装置を用い、熱供給源からヒートパイプを通して熱輸送して熱媒を加温し、その熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出し、該ガラスの霜取りを行うことを特徴とする自動車の霜取り方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動車の霜取りのための暖機運転が不要となり、余計なCOの発生を抑制でき、COの削減を達成できる。
本発明によれば、自動車の霜取りのための暖機運転が不要となり、タイマーと連動させて運転前にフロントガラス等を霜取りしておけば、直ちに自動車を発進させることができ、時間の節約につながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る自動車用霜取り装置の一実施形態を示す構成図である。図1中、符号1はヒートパイプ、2は熱供給源、3は水タンク、4は温水(熱媒)、5は自動車、6は駐車場、7は住宅である。
【0014】
本実施形態の自動車用霜取り装置は、熱供給源2と、該熱供給源2に受熱側端部を接続したヒートパイプ1と、該ヒートパイプ1の放熱側端部に、該ヒートパイプ1により熱媒である水を加熱可能に接続された水タンク3と、該水タンク3内の温水4を自動車5のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出する図示していない注水器(送出手段)とを有することを特徴としている。
【0015】
このヒートパイプ1としては、熱供給源2から、自動車5のフロントガラスやサイドガラスの霜取り用として十分な温度と量の温水4を供給できる熱量を熱輸送できれば良く、その構造、材質、寸法、使用液体などは特に限定されず、従来より周知の各種市販品の中から適宜選択して用いることができる。本発明において、特に好ましいヒートパイプ1としては、非特許文献1に開示されたヒートパイプが挙げられる。
【0016】
本実施形態の自動車用霜取り装置において、熱供給源2としては、自動車5のフロントガラスやサイドガラスの霜取り用として十分な温度と量の温水4を加温する熱を、ヒートパイプ1を通して供給できれば良く、特に限定されない。例えば、図1に示した住宅7においては、深夜電力利用のヒートポンプ式給湯器等を利用可能である。これ以外にも、電気ヒーターやガスを用いた家庭用給湯設備などを用いることができる。さらに、本発明の自動車用霜取り装置を、多数台の自動車5を駐車する大型駐車設備等に用いる場合には、ボイラーを使用した給湯設備、温泉や地熱を用いた給湯設備、焼却炉廃熱や発電所廃熱を用いた給湯設備などを熱供給源として用いることもできる。なお、熱供給源2の加熱温度(ヒートパイプ1を加熱する温度)は、80〜90℃程度とすることが望ましいが、それ以下の温度(例えば、50〜60℃)であっても有効である。
【0017】
本実施形態の自動車用霜取り装置において、熱媒である水を収容する水タンク3としては、霜取り使用時に自動車5のフロントガラスやサイドガラスの霜取り用として十分な量の水を貯留し、ヒートパイプ1でその水を適温まで加温するタイプの水タンクや、或いは霜取り使用時に水が供給されてヒートパイプ1の放熱側端部と接触して加温され、そのまま注水されるタイプの水タンクなどが挙げられる。この水タンク3には、水の供給配管と水量調整手段等を設けることができる。
【0018】
この水タンク3の注水側に設けられる注水器としては、切替弁によって温水4の注水/停止を制御可能なシャワー装置、或いは、温水4を加圧空気と共に噴出させる加圧機構を有する噴射装置などを用いることができる。温水4の注水方向や量は、手動又は自動で変えることができる。
【0019】
さらに、本実施形態の自動車用霜取り装置において、注水器からの温水4の注水を予め設定した時間で実行させるタイマーを有していることが好ましい。このように、霜取りをタイマーと連動させることで、実際に乗員が乗り込む時間になれば、フロントガラスやサイドガラスの霜取りが終了しており、暖機運転なしで自動車5をスタートさせることができる。
【0020】
本発明の自動車の霜取り方法は、熱供給源2からヒートパイプ1を通して熱輸送して熱媒である水を加温し、その温水4を駐車場6に駐車してある自動車5のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出(注水)し、該ガラスの霜取りを行うことを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、自動車の霜取りのための暖機運転が不要となり、余計なCOの発生を抑制でき、COの削減を達成できる。
本発明によれば、自動車の霜取りのための暖機運転が不要となり、タイマーと連動させて運転前にフロントガラス等を霜取りしておけば、直ちに自動車を発進させることができ、時間の節約につながる。
【0022】
なお、前述した実施形態では、熱媒として水を用い、加温した温水4を自動車5のフロントガラスやサイドガラスに向けて注水し、該ガラスの霜取りを行う構成としたが、本発明において熱媒は水に限定されず、空気などの他の熱媒を用いることができる。熱媒として空気を用いる場合には、ヒートパイプ1の放熱側端部に、空気の流路及びブロワを設け、該ブロワを駆動させて流路内に空気を流し、その空気をヒートパイプ1の放熱側端部と接触させて加温し、その加温空気を自動車5に吹き付けるような構成とすることが望ましい。この場合、空気とヒートパイプ1の放熱側端部との接触面積を増加させるために、放熱側端部に銅やアルミニウムなどのメッシュ板やハニカム材からなる伝熱部材を取り付けておくことが好ましい。
また、複数の熱媒、例えば温水と加温空気とを交互に供給して霜取りを行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る自動車用霜取り装置の一実施形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1…ヒートパイプ、2…熱供給源、3…水タンク、4…温水(熱媒)、5…自動車、6…駐車場、7…住宅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱供給源と、該熱供給源に受熱側端部を接続したヒートパイプと、該ヒートパイプの放熱側に設けられ、該ヒートパイプにより加温された熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出する送出手段とを有することを特徴とする自動車用霜取り装置。
【請求項2】
熱媒が、水又は空気であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用霜取り装置。
【請求項3】
熱供給源が、ヒートポンプ式給湯器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用霜取り装置。
【請求項4】
送出手段からの熱媒の送出を予め設定した時間で実行させるタイマーを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用霜取り装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用霜取り装置を用い、熱供給源からヒートパイプを通して熱輸送して熱媒を加温し、その熱媒を自動車のフロントガラスやサイドガラスに向けて送出し、該ガラスの霜取りを行うことを特徴とする自動車の霜取り方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−51385(P2009−51385A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220893(P2007−220893)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】