自己位置推定装置、方法、及びプログラム
【課題】自己位置の推定精度を向上させる。
【解決手段】自己位置推定装置1は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて視点毎に二次元マップを作成するマップ作成部2と、複数の二次元マップの中から直線部が比較的多い二次元マップを抽出するマップ抽出部3と、抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、移動体の自己位置を推定する位置推定部4とを備える。
【解決手段】自己位置推定装置1は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて視点毎に二次元マップを作成するマップ作成部2と、複数の二次元マップの中から直線部が比較的多い二次元マップを抽出するマップ抽出部3と、抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、移動体の自己位置を推定する位置推定部4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のエリア内を移動する移動体の自己位置を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自律移動体等には、エリア内の状況と自己位置とを正確に推定する技術が必要とされる。この種の技術として、光波測距儀(レーザレンジファインダ)等を用いて環境地図の作成と自己位置の推定とを同時に行うことができるSLAM(Simultaneously Localization and Mapping)等が知られている。
【0003】
特許文献1は、自律移動体の自己位置を推定するシステムにおいて、環境に置かれた物体の位置・形状、自律移動体の自己位置等の推定精度を簡単且つ安価に向上させることを目的として、水平方向に照射線を走査することにより自律移動体と物体との相対位置及び物体の表面形状を取得し、当該取得された情報と予めデータベースに記憶された物体の表面形状等に関する情報とを照合させ、当該照合が一致した場合にデータベースに記憶された物体の情報を走行計画手段に送信し、当該照合が不一致の場合に走査により取得された物体の情報を走行計画手段に送信する構成を開示している。
【0004】
また、同種の技術として、特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−146381号公報
【特許文献2】特開2009−205226号公報
【特許文献3】特開2005−310043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図20は、従来の自己位置推定装置において生じ得る課題を示している。移動体101は、計測センサ部、例えばレーザレンジファインダのレーザ照射部102が一箇所に固定されたものである。レーザ照射部102からのレーザ光の照射により取得された物体との距離等の環境データに基づいて、SLAM等の技術により環境地図の作成、自己位置の推定等が行われる。
【0007】
上記構成においては、レーザ照射部102が一箇所に固定されているため、レーザ光の走査エリアは同一平面上に限定される。従って、環境地図の作成等の処理は、唯一の走査エリアから得られる環境データに基づいて行われなければならない。しかしながら、当該走査エリアに、例えば格子状のもの、変形しやすいもの、ガラス等の測距処理が困難な障害物103が存在する場合、自己位置の推定精度が著しく低下する可能性が高い。
【0008】
そこで、本発明は、環境中に測距処理が困難な障害物が存在しても、自己位置の推定精度を高く維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成部と、複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出部と、前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定部とを備える自己位置推定装置である。
【0010】
また、前記マップ作成部は、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定するものであることが好ましい。
【0011】
また、前記位置推定部は、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外するものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記装置と同様の技術思想に基づく自己位置推定方法及びプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる視点から取得される複数の二次元マップのうち、直線部が最も多い二次元マップを選択的に使用して移動体の自己位置が推定される。これにより、推定精度を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自己位置推定装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る移動体の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る移動体が利用される状況を例示する図である。
【図4】実施の形態1における環境地図を作成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図6】第2のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図7】第3のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図8】実施の形態1における自己位置を推定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第1のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図10】第2のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図11】第3のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図12】スキャンデータにおける測定点及び角度を例示する図である。
【図13】図12の角度に基づいて作成されるヒストグラムを例示するグラフである。
【図14】第1のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図15】第2のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図16】第3のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図17】第2のレーザ照射部に対応するヒストグラムにおける閾値を例示するグラフである。
【図18】連結性がないデータを例示する図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る移動体の構成を示す図である。
【図20】従来の自己位置推定装置において生じ得る課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る自己位置推定装置1の構成を示している。自己位置推定装置1は、所定のエリア内を自律的に移動する移動体に備えられる。自己位置推定装置1により取得された自己位置を示す情報は、当該移動体の自律移動制御に用いられる。自己位置推定装置1は、マップ作成部2、マップ抽出部3、及び位置推定部4を有する。
【0016】
マップ作成部2は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、これらの視点毎に二次元マップを作成する。当該視点とは、移動体の周囲の環境に関する情報を取得するレンジファインダ等の機構の一部であり、例えばレーザレンジファインダのレーザ照射部、撮像装置のレンズ部等である。各視点に対応する複数の二次元マップは、マージ等されることなく個別にデータベースに保持される。
【0017】
マップ抽出部3は、マップ作成部2により取得された複数の二次元マップの中から、直線部が比較的多い二次元マップを抽出する。二次元マップは、エリア内に存在する障害物等の形状を直線及び曲線の組み合わせにより表現する。マップ抽出部3は、このような二次元マップを構成する線のうち直線部を認識し、直線部の全線に対する比率等が多い二次元マップを抽出する。
【0018】
位置推定部4は、マップ抽出部3により抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、移動体の自己位置を推定する。これにより、直線部を多く含む二次元マップを基準として移動体の自己位置が推定される。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る移動体11の構造を概略的に示している。移動体11は、レーザレンジファインダの一部を構成する3つのレーザ照射部12A,12B,12Cを備える。各レーザ照射部12A,12B,12Cは、垂直方向に所定の間隔を空けて配置され、それぞれスキャン用のレーザ光を水平方向に照射する。
【0020】
図3は、移動体11が利用される状況を例示している。本例においては、移動体11は壁面21に囲まれた室内で利用され、当該室内には、幾つかの障害物22,23,24,25が存在する。
【0021】
図4は、自己位置推定装置1が環境地図を作成する際の処理の流れを示している。環境地図の作成時には、全てのレーザ照射部12A,12B,12Cが同時刻にそれぞれ環境データを取得する(S101)。次いで、各レーザ照射部12A,12B,12Cにより取得された各環境データに基づいて、各レーザ照射部12A,12B,12Cに対応する3つの二次元マップを作成する(S102)。これら3つの二次元マップは、それぞれ個別に記憶される(S103)。
【0022】
図5はレーザ照射部12Aに対応する二次元マップ30A、図6はレーザ照射部12Bに対応する二次元マップ30B、そして図7はレーザ照射部12Cに対応する二次元マップ30Cを例示している。
【0023】
図8は、自己位置推定装置1が自己位置を推定する際の処理の流れを示している。先ず、各レーザ照射部12A,12B,12Cによりそれぞれ環境のスキャンデータが取得される(S201)。図9はレーザ照射部12Aに対応するスキャンデータ31A、図10はレーザ照射部12Bに対応するスキャンデータ31B、そして図11はレーザ照射部12Cに対応するスキャンデータ31Cを例示している。
【0024】
次いで、各スキャンデータ31A,31B,31Cについて、隣り合う計測点(Zn,Zn+1)を結んだ線と所定の基準線との成す角度θnを算出し、当該角度θnに基づいてヒストグラムを作成する(S202)。図12は、測定点(Zn,Zn+1)及び角度θnを例示している。図13は、角度θnに基づいて作成されるヒストグラムを例示している。本例では、θn=angle(Zn)=atan((Zn+1.y−Zn.y)/(Zn+1.x−Zn.x))、度数=histgram(θn)の関係が成り立つ。当該度数が大きい程、二次元マップ30A,30B,30Cを構成する線の当該度数に対応する部分が直線に近いということになる。
【0025】
また、図14はレーザ照射部12A(スキャンデータ31A)に対応するヒストグラム32A、図15はレーザ照射部12B(スキャンデータ31B)に対応するヒストグラム32B、そして図16はレーザ照射部12C(スキャンデータ31C)に対応するヒストグラム32Cを示している。
【0026】
次いで、各ヒストグラム32A,32B,32Cにおいて、閾値Tを超える度数に対応する角度の個数を算出し、当該個数が最も多いものに対応する二次元マップ30A,30B,30Cを抽出する(S203)。本例においては、当該閾値Tを超す度数となる角度の個数は、図15に示すヒストグラム32Bが最も多いため、これに対応する二次元マップ30Bが抽出される。
【0027】
次いで、抽出された二次元マップ30Bに対応するヒストグラム32Bから、閾値L以下のデータを削除する(S204)。図17は、ヒストグラム32Bにおける閾値Lを例示している。
【0028】
次いで、残ったデータのうち連結性がないデータを削除する(S205)。図18は、連結性がないデータ33を例示している。
【0029】
次いで、抽出された二次元マップ30BとステップS204,S205によりフィルタリングされたデータとをマッチングさせ(S206)、移動体11の自己位置(x,y,θ)を推定する(S207)。
【0030】
上記自己位置推定装置1によれば、異なる視点(レーザ照射部12A,12B,12C)から取得される複数の二次元マップ(30A,30B,30C)のうち、直線部が最も多い二次元マップを用いて移動体の自己位置が推定される。これにより、推定精度を大きく向上させることができる。
【0031】
実施の形態2
図19は、実施の形態2に係る自己位置推定装置に係る移動体51の構造を概略的に示している。移動体51は、レーザレンジファインダの一部を構成する1つのレーザ照射部52を備える。
【0032】
レーザ照射部52は、レーザ光の照射角度を上下に変化させる機構を有する。このような構成によっても、複数の二次元マップを作成することができ、これらの中から直線部の多い二次元マップを、上記実施の形態1と同様の手法により、選択的に使用することができる。本実施の形態によれば、レーザ照射部52を複数設けることなく、上記実施の形態1と同様に、推定精度を向上させることができる。
【0033】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【符号の説明】
【0034】
1 自己位置推定装置
2 マップ作成部
3 マップ抽出部
4 位置推定部
11,51 移動体
12A,12B,12C,52 レーザ照射部
21 壁面
22,23,24,25 障害物
30A,30B,30C 二次元マップ
31A,31B,31C スキャンデータ
32A,32B,32C ヒストグラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のエリア内を移動する移動体の自己位置を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自律移動体等には、エリア内の状況と自己位置とを正確に推定する技術が必要とされる。この種の技術として、光波測距儀(レーザレンジファインダ)等を用いて環境地図の作成と自己位置の推定とを同時に行うことができるSLAM(Simultaneously Localization and Mapping)等が知られている。
【0003】
特許文献1は、自律移動体の自己位置を推定するシステムにおいて、環境に置かれた物体の位置・形状、自律移動体の自己位置等の推定精度を簡単且つ安価に向上させることを目的として、水平方向に照射線を走査することにより自律移動体と物体との相対位置及び物体の表面形状を取得し、当該取得された情報と予めデータベースに記憶された物体の表面形状等に関する情報とを照合させ、当該照合が一致した場合にデータベースに記憶された物体の情報を走行計画手段に送信し、当該照合が不一致の場合に走査により取得された物体の情報を走行計画手段に送信する構成を開示している。
【0004】
また、同種の技術として、特許文献2,3が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−146381号公報
【特許文献2】特開2009−205226号公報
【特許文献3】特開2005−310043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図20は、従来の自己位置推定装置において生じ得る課題を示している。移動体101は、計測センサ部、例えばレーザレンジファインダのレーザ照射部102が一箇所に固定されたものである。レーザ照射部102からのレーザ光の照射により取得された物体との距離等の環境データに基づいて、SLAM等の技術により環境地図の作成、自己位置の推定等が行われる。
【0007】
上記構成においては、レーザ照射部102が一箇所に固定されているため、レーザ光の走査エリアは同一平面上に限定される。従って、環境地図の作成等の処理は、唯一の走査エリアから得られる環境データに基づいて行われなければならない。しかしながら、当該走査エリアに、例えば格子状のもの、変形しやすいもの、ガラス等の測距処理が困難な障害物103が存在する場合、自己位置の推定精度が著しく低下する可能性が高い。
【0008】
そこで、本発明は、環境中に測距処理が困難な障害物が存在しても、自己位置の推定精度を高く維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成部と、複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出部と、前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定部とを備える自己位置推定装置である。
【0010】
また、前記マップ作成部は、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定するものであることが好ましい。
【0011】
また、前記位置推定部は、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外するものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記装置と同様の技術思想に基づく自己位置推定方法及びプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる視点から取得される複数の二次元マップのうち、直線部が最も多い二次元マップを選択的に使用して移動体の自己位置が推定される。これにより、推定精度を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自己位置推定装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る移動体の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る移動体が利用される状況を例示する図である。
【図4】実施の形態1における環境地図を作成する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第1のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図6】第2のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図7】第3のレーザ照射部に対応する二次元マップを例示する図である。
【図8】実施の形態1における自己位置を推定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第1のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図10】第2のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図11】第3のレーザ照射部に対応するスキャンデータを例示する図である。
【図12】スキャンデータにおける測定点及び角度を例示する図である。
【図13】図12の角度に基づいて作成されるヒストグラムを例示するグラフである。
【図14】第1のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図15】第2のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図16】第3のレーザ照射部に対応するヒストグラムを示すグラフである。
【図17】第2のレーザ照射部に対応するヒストグラムにおける閾値を例示するグラフである。
【図18】連結性がないデータを例示する図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る移動体の構成を示す図である。
【図20】従来の自己位置推定装置において生じ得る課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る自己位置推定装置1の構成を示している。自己位置推定装置1は、所定のエリア内を自律的に移動する移動体に備えられる。自己位置推定装置1により取得された自己位置を示す情報は、当該移動体の自律移動制御に用いられる。自己位置推定装置1は、マップ作成部2、マップ抽出部3、及び位置推定部4を有する。
【0016】
マップ作成部2は、移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、これらの視点毎に二次元マップを作成する。当該視点とは、移動体の周囲の環境に関する情報を取得するレンジファインダ等の機構の一部であり、例えばレーザレンジファインダのレーザ照射部、撮像装置のレンズ部等である。各視点に対応する複数の二次元マップは、マージ等されることなく個別にデータベースに保持される。
【0017】
マップ抽出部3は、マップ作成部2により取得された複数の二次元マップの中から、直線部が比較的多い二次元マップを抽出する。二次元マップは、エリア内に存在する障害物等の形状を直線及び曲線の組み合わせにより表現する。マップ抽出部3は、このような二次元マップを構成する線のうち直線部を認識し、直線部の全線に対する比率等が多い二次元マップを抽出する。
【0018】
位置推定部4は、マップ抽出部3により抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、移動体の自己位置を推定する。これにより、直線部を多く含む二次元マップを基準として移動体の自己位置が推定される。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る移動体11の構造を概略的に示している。移動体11は、レーザレンジファインダの一部を構成する3つのレーザ照射部12A,12B,12Cを備える。各レーザ照射部12A,12B,12Cは、垂直方向に所定の間隔を空けて配置され、それぞれスキャン用のレーザ光を水平方向に照射する。
【0020】
図3は、移動体11が利用される状況を例示している。本例においては、移動体11は壁面21に囲まれた室内で利用され、当該室内には、幾つかの障害物22,23,24,25が存在する。
【0021】
図4は、自己位置推定装置1が環境地図を作成する際の処理の流れを示している。環境地図の作成時には、全てのレーザ照射部12A,12B,12Cが同時刻にそれぞれ環境データを取得する(S101)。次いで、各レーザ照射部12A,12B,12Cにより取得された各環境データに基づいて、各レーザ照射部12A,12B,12Cに対応する3つの二次元マップを作成する(S102)。これら3つの二次元マップは、それぞれ個別に記憶される(S103)。
【0022】
図5はレーザ照射部12Aに対応する二次元マップ30A、図6はレーザ照射部12Bに対応する二次元マップ30B、そして図7はレーザ照射部12Cに対応する二次元マップ30Cを例示している。
【0023】
図8は、自己位置推定装置1が自己位置を推定する際の処理の流れを示している。先ず、各レーザ照射部12A,12B,12Cによりそれぞれ環境のスキャンデータが取得される(S201)。図9はレーザ照射部12Aに対応するスキャンデータ31A、図10はレーザ照射部12Bに対応するスキャンデータ31B、そして図11はレーザ照射部12Cに対応するスキャンデータ31Cを例示している。
【0024】
次いで、各スキャンデータ31A,31B,31Cについて、隣り合う計測点(Zn,Zn+1)を結んだ線と所定の基準線との成す角度θnを算出し、当該角度θnに基づいてヒストグラムを作成する(S202)。図12は、測定点(Zn,Zn+1)及び角度θnを例示している。図13は、角度θnに基づいて作成されるヒストグラムを例示している。本例では、θn=angle(Zn)=atan((Zn+1.y−Zn.y)/(Zn+1.x−Zn.x))、度数=histgram(θn)の関係が成り立つ。当該度数が大きい程、二次元マップ30A,30B,30Cを構成する線の当該度数に対応する部分が直線に近いということになる。
【0025】
また、図14はレーザ照射部12A(スキャンデータ31A)に対応するヒストグラム32A、図15はレーザ照射部12B(スキャンデータ31B)に対応するヒストグラム32B、そして図16はレーザ照射部12C(スキャンデータ31C)に対応するヒストグラム32Cを示している。
【0026】
次いで、各ヒストグラム32A,32B,32Cにおいて、閾値Tを超える度数に対応する角度の個数を算出し、当該個数が最も多いものに対応する二次元マップ30A,30B,30Cを抽出する(S203)。本例においては、当該閾値Tを超す度数となる角度の個数は、図15に示すヒストグラム32Bが最も多いため、これに対応する二次元マップ30Bが抽出される。
【0027】
次いで、抽出された二次元マップ30Bに対応するヒストグラム32Bから、閾値L以下のデータを削除する(S204)。図17は、ヒストグラム32Bにおける閾値Lを例示している。
【0028】
次いで、残ったデータのうち連結性がないデータを削除する(S205)。図18は、連結性がないデータ33を例示している。
【0029】
次いで、抽出された二次元マップ30BとステップS204,S205によりフィルタリングされたデータとをマッチングさせ(S206)、移動体11の自己位置(x,y,θ)を推定する(S207)。
【0030】
上記自己位置推定装置1によれば、異なる視点(レーザ照射部12A,12B,12C)から取得される複数の二次元マップ(30A,30B,30C)のうち、直線部が最も多い二次元マップを用いて移動体の自己位置が推定される。これにより、推定精度を大きく向上させることができる。
【0031】
実施の形態2
図19は、実施の形態2に係る自己位置推定装置に係る移動体51の構造を概略的に示している。移動体51は、レーザレンジファインダの一部を構成する1つのレーザ照射部52を備える。
【0032】
レーザ照射部52は、レーザ光の照射角度を上下に変化させる機構を有する。このような構成によっても、複数の二次元マップを作成することができ、これらの中から直線部の多い二次元マップを、上記実施の形態1と同様の手法により、選択的に使用することができる。本実施の形態によれば、レーザ照射部52を複数設けることなく、上記実施の形態1と同様に、推定精度を向上させることができる。
【0033】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【符号の説明】
【0034】
1 自己位置推定装置
2 マップ作成部
3 マップ抽出部
4 位置推定部
11,51 移動体
12A,12B,12C,52 レーザ照射部
21 壁面
22,23,24,25 障害物
30A,30B,30C 二次元マップ
31A,31B,31C スキャンデータ
32A,32B,32C ヒストグラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成手段と、
複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出手段と、
前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定手段と、
を備える自己位置推定装置。
【請求項2】
前記マップ作成手段は、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定する、
請求項1に記載の自己位置推定装置。
【請求項3】
前記位置推定手段は、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外する、
請求項2に記載の自己位置推定装置。
【請求項4】
移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成ステップと、
複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出ステップと、
前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定ステップと、
を備える自己位置推定方法。
【請求項5】
前記マップ作成ステップは、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定する、
請求項4に記載の自己位置推定方法。
【請求項6】
前記位置推定ステップは、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外する、
請求項5に記載の自己位置推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法を実行させるための自己位置推定プログラム。
【請求項1】
移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成手段と、
複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出手段と、
前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定手段と、
を備える自己位置推定装置。
【請求項2】
前記マップ作成手段は、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定する、
請求項1に記載の自己位置推定装置。
【請求項3】
前記位置推定手段は、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外する、
請求項2に記載の自己位置推定装置。
【請求項4】
移動体の複数の視点から取得される環境データに基づいて、前記視点毎に二次元マップを作成するマップ作成ステップと、
複数の前記二次元マップの中から直線部が比較的多い前記二次元マップを抽出するマップ抽出ステップと、
前記抽出された二次元マップと、当該抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データとの照合結果に基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定ステップと、
を備える自己位置推定方法。
【請求項5】
前記マップ作成ステップは、前記各視点から照射線を平面状に走査させることにより前記環境データを取得するものであって、隣り合う2つの計測点を結んだ線と所定の基準線とがなす角度に基づいて前記直線部の多さを判定する、
請求項4に記載の自己位置推定方法。
【請求項6】
前記位置推定ステップは、前記抽出された二次元マップと同一の視点から取得される環境データのうち、前記直線部であることを示す度数が一定値に満たないデータ、及び他のデータとの連続性が認められないデータを、前記照合の対象から除外する、
請求項5に記載の自己位置推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法を実行させるための自己位置推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−73250(P2013−73250A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209482(P2011−209482)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]