説明

自浄性道路付帯設備

【課題】長期に亘って自浄性を発現させつつ被覆層の形成に係わる工程を簡便なものとでき、また道路付帯設備の表面が耐溶剤性の低いものであっても支障なく被覆層が形成された自浄性道路付帯設備を提供する。
【解決手段】被覆層2が、水酸基含有フッ素樹脂組成物、イソシアネート系硬化剤、フッ素系界面活性剤、紫外線吸収剤、及びオルガノシリケート化合物を含有するコーティング組成物に、光触媒微粒子を含有させることで長時間屋外に曝されても密着性と高い透明性を維持できるが、道路付帯設備の外面に1コート1ベークにより被覆層を形成できることで形成に係わる工程を簡便なものとでき、且つ耐溶剤性の低い道路付帯設備1の外面に形成しても溶剤により表面が侵されることが少なく、外面に支障なく被覆層を形成することができる。更に配合された光触媒微粒子により高い親水性が発現されて高度な防汚性能を発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に自浄性で無色透明な被覆層が形成されることで、外面に付着した汚染物質が雨水等によって比較的容易に洗い流されて表面が清浄に保たれる自浄性道路付帯設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路付帯設備の外面に自浄性の無色透明な被覆層を形成し、道路付帯設備の透明性や、表面の色調、記号、模様等が視認される状態を保持しつつ、外面に付着した汚染物質が雨水等によって比較的容易に洗い流されて表面が清浄に保たれる自浄性道路付帯設備としては、例えば道路又は鉄道の遮音壁の表面を半導体光触媒含有層で被覆してなり、前記光触媒含有層は光触媒の粒子が分散されたシリコーンによって形成されており、前記光触媒含有層の表面はシリコーン分子のケイ素原子に結合した有機基が光触媒の作用により少なくとも部分的に水酸基に置換されたシリコーン誘導体で形成されており、前記光触媒が太陽光によって光励起されるに応じて前記層の表面が親水化され、もって、疎水性の汚染物質が遮音壁の表面に付着するのが防止され、若しくは、遮音壁が降雨にさらされた時に遮音壁の表面に付着した汚れが雨水により洗い流されるようになっている道路又は鉄道の遮音壁が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、透明なコーティング組成物として、フルオロオレフィン単位に基づくフッ素含有量10重量%以上でありテトラヒドロフラン中で測定される固有粘度が0.05〜2.0dl/gの範囲にあるフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体、および、シクロヘキサノンを20重量%以上含有する溶剤、を含む耐溶剤性の低い合成樹脂用コーティング組成物が開示されている(例えば特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特許第3124491号公報
【特許文献2】特許第2613202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の自浄性道路付帯設備では、光触媒含有層を外面に形成することから、含有された光触媒に光が照射されて活性化されると、道路付帯設備が合成樹脂等の光触媒の酸化作用により分解される物質から形成されている場合には、光触媒含有層と道路付帯設備との間に保護層を設ける必要が生じ、形成に係わる工程が煩雑なものであった。
【0006】
また、特許文献2に記載のような透明なコーティング組成物を用いた場合、1コート1ベークによる塗装が可能となり、形成に係わる工程は簡便なものとはできるものの、道路付帯設備自体がポリカーボネート樹脂製であったり、道路付帯設備の外側に合成樹脂製の塗膜等、道路付帯設備の表面が耐溶剤性の低いものから形成されたりしている場合、下地が溶剤により侵されて、道路付帯設備が備えるべき透明性や、被覆層を透して視認されるべき表面の色調、記号、模様等が損なわれる恐れがあるものであった。
【0007】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、長期に亘って自浄性を発現させつつ被覆層の形成に係わる工程を簡便なものとでき、また道路付帯設備の表面が耐溶剤性の低いものであっても支障なく被覆層が形成された自浄性道路付帯設備を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる自浄性道路付帯設備は、道路付帯設備の外面に透明な被覆層が形成され、前記被覆層が、水酸基含有フッ素樹脂組成物及びイソシアネート系硬化剤を含有するコーティング組成物に、樹脂固形分100重量部当たり、フッ素系界面活性剤0.01〜1.0重量部、紫外線吸収剤1〜15重量部、オルガノシリケート化合物1〜30重量部、及び光触媒機能を備えた光触媒微粒子0.05〜20重量部を含有させたクリヤーコーティング組成物を用いて形成されたものであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係わる自浄性道路付帯設備によれば、被覆層が長時間屋外に曝されても密着性と高い透明性を維持できるが、道路付帯設備の外面に1コート1ベークにより被覆層を形成できることで形成に係わる工程を簡便なものとでき、且つ耐溶剤性の低い道路付帯設備の外面に形成しても溶剤により表面が侵されることが少なく、外面に支障なく被覆層を形成することができる。更に配合された光触媒微粒子により高い親水性が発現されて高度な防汚性能を発揮させることができる。
【0010】
また前記道路付帯設備は、ポリウレタン系樹脂製のポール部を備えた道路標識柱であって、前記ポールの上にウレタン系、エポキシ系及びアクリル系の群から選ばれた少なくとも1つのプライマーを介して被覆層が形成されていれば、プライマーによってポールに対する被覆層の高い密着性が得られると共に、プライマーが耐溶剤性の低いものであっても被覆層の形成時にプライマーが侵されることがなく、ポール部が備えるべき色調等を損なうことを少なくでき好ましい。
【0011】
また前記光触媒微粒子は、表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により光触媒性結晶が被覆されたものであれば、塗膜マトリックスが光触媒機能によって分解されにくくなって長期に亘って自浄性を発現させることができ、また道路付帯設備の表面が脆弱なものであっても光触媒微粒子により道路付帯設備の表面が分解される恐れをなくして支障なく被覆層を形成することができる。
【0012】
また前記被覆層は、ポール部の外面と、ポール部に貼着された反射シートの外面とに形成されていれば、ポール部の外面と併せて、とりわけ汚染物質の付着による視認性低下が問題視される場合が多い反射シートにおいて、耐溶剤性が低い外面であっても被覆層の形成時に外面が侵されることなく、再帰反射性を損なうことなく反射シートの外面にも自浄性を備えさせることができ好ましい。
【0013】
また前記道路付帯設備は、再帰反射性を備えた反射体であって、反射部の上に透明な合成樹脂製のカバーが形成され、該カバーの外面に被覆層が形成されていれば、カバーを形成する合成樹脂の耐溶剤性が低い場合でも、被覆層の形成時にカバーを侵す恐れが小さく、カバーの透明性を保持して反射体の再帰反射性を損ねることがなく好ましい。
【0014】
また前記被覆層は、透明な合成樹脂製のフィルムの外面に形成され、該フィルムが前記被覆層を外側にして道路付帯設備の外面に貼着されることで道路付帯設備の上に被覆層が形成されているものであれば、道路付帯設備が既存のものであっても被覆層が形成されたフィルムを貼着するのみで容易に外面を被覆層とすることができ、また合成樹脂製のフィルムが耐溶剤性の低いものであっても、フィルムの外面への被覆層の形成時にフィルムが侵されて透明性が損なわれることを少なくでき好ましい。
【0015】
また前記反射体は、可とう性の基材の一方の面に反射部が形成され、他方の面の上に粘着層が形成されたものであれば、基材がたわむ範囲で種々の形状の道路付帯設備に対して貼着して外面を被覆層として、容易に自浄性を備えさせることができ好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる自浄性道路付帯設備によれば、被覆層が長時間屋外に曝されても密着性と高い透明性を維持できるが、道路付帯設備の外面に1コート1ベークにより被覆層を形成できることで形成に係わる工程を簡便なものとでき、且つ耐溶剤性の低い道路付帯設備の外面に形成しても溶剤により表面が侵されることが少なく、外面に支障なく被覆層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第一の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は外面の詳細を示す縦断面図である。まず(a)において、道路付帯設備は道路標識柱1Aであり、道路標識柱1Aは、地表面に固着されるベース部1A2と、ベース部1A2から上方に突設されるポール部1A1とから形成されており、ポール部1A1の上方には上下三段に亘って反射シート1A3が巻回されている。ポール部1A1及びベース部1A2は、ポリウレタン系樹脂から形成されており、ポール部1A1は車両の衝突等により曲がり且つ復元できるものである。かかる道路標識柱1Aは、一般にポール部1A1は橙色や緑色の鮮やかな色調となされて昼間における誘目性が高められ、且つ反射シート1A3により、車両の前照灯等が照射された際に再帰反射が起こり、夜間における視認性が高められるものであるが、道路標識柱1Aは一般に道路の側縁に沿って設けられるものであり、自動車の排気ガス等に由来する煤塵や道路周辺の塵埃等の汚染物質が付着し、上述の誘目性や視認性が損なわれる恐れがあるものである。
【0019】
(b)において、ポール部1A1の外面には、2液熱硬化型ウレタン変性アクリル系のプライマー層3Aが形成され、更にプライマー層3Aの外面に、水酸基含有フッ素樹脂組成物及びイソシアネート系硬化剤を含有するコーティング組成物に、樹脂固形分100重量部当たり、フッ素系界面活性剤0.01〜1.0重量部、紫外線吸収剤1〜15重量部、オルガノシリケート化合物1〜30重量部、及び光触媒機能を備え表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により光触媒性結晶が被覆された光触媒微粒子0.05〜20重量部を含有させたクリヤーコーティング組成物を用いて20μmの層厚で被覆層2が形成されている。被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、ポール部1A1の外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面が清浄に保たれるようになされる。
【0020】
またポール1A1の外面に貼着された反射シート1A3は、プライマー層3Aを介して貼着されている。一般に反射シート1A3はポリウレタン系樹脂に対しての密着性が低く、プライマー層を介して貼着して密着性を確保するものであるが、一方被覆層2についても単独でポール部1A1に対する必要十分な密着性が得られるとしても、ポール部1A1が可とう性のポリウレタン系樹脂であることから、ポール部1A1の変形により被覆層2の割れ等が発生する恐れがある。ポール部1A1の全体にプライマー層3Aが形成され、プライマー層3A上に被覆層2が形成され且つ反射シート1A3が貼着されることで、反射シート1A3の密着性が確保されると共に、被覆層2はプライマー層3Aが介在することで密着性を向上させ割れ等の発生の恐れを小さくできるが、ポール部1A1外面にプライマー層3Aを形成する際に、反射シート1A3の貼着部分のみを塗り分ける必要などがなく、ポール部1A1外面全体にプライマーを塗布して更に工程を簡便なものとできる。
【0021】
ポール部1A1の外面にプライマー層3Aを形成するためのプライマーとしては、ポリウレタン系樹脂及び被覆層に対して高い密着性が得られるものであれば特に限定されるものではなく、1液又は2液の湿気硬化型ウレタン系プライマー、1液又は2液の熱硬化型ウレタン系プライマー、2液エポキシ変形ウレタン系プライマー、2液湿気硬化型エポキシ樹脂等を好適に用いることができるが、とりわけ架橋性を有するものを用いるのが好ましく、例えばポール部1A1がウレタン系樹脂からなるものであれば、ウレタン変性アクリル系プライマーを用いることで高い密着性及びポール部1A1に対する追随性が得られて耐久性を高いものとすることができる。
【0022】
また、反射シート1A3の表面についても同じ被覆層2を設けるようにしてもよい。反射シート1A3はガラスビーズ反射材1A31の上にカバー1A32が設けられて形成されたものであり、カバー1A32の表面に20μm程度の膜厚で被覆層2が設けられていることで、被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物により、被覆層2表面に親水性が発現され、ポール部1A1の外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面が清浄に保たれるようになされる。被覆層2の形成においては、ポール部1A1と同様にプライマーを塗布した上で形成してもよいが、反射シート1A3の表面がポリオレフィン系樹脂等の活性水素を有する材料から形成されている場合には、反射シート1A3表面にクリヤーコーティング組成物を直接塗布して被覆層2を形成することもできる。
【0023】
光触媒性結晶は、光触媒機能を発現して親水化が図られるものであれば特に限定されるものではなくFe、CuO、In、WO、FeTiO、PbO、V、FeTiO、Bi、Nb、SrTiO、ZnO、BaTiO、CaTiO、KTaO、SnO、ZrOなどの金属酸化物半導体材料を用いてよいが、比較的低廉で扱いが簡便である酸化チタンが好適に用いられる。また酸化チタンの中でも活性の高いアナターゼ型の二酸化チタンが好適である。
【0024】
またオルガノシリケート化合物が含有されていることで、一旦発現された光触媒性結晶の親水性を維持できると共に、被覆層2の形成時に流動状態の被覆層2において、主成分である水酸基含有フッ素樹脂組成物に含有される水酸基と反発するオルガノシリケート化合物が表面付近に配向するが、その際にオルガノシリケート化合物が光触媒微粒子をも一緒に表面付近に押し上げることで、表面付近の光触媒微粒子の量を増やす効果も期待できる。かかる状態において用いられる光触媒性結晶は、粒径が大きすぎると流動状態の被覆層2中で移動しにくくなることから、0.1μm〜5μm程度の粒径のものを用いるのが好ましい。
【0025】
また光触媒性結晶として、チタン原子又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換した酸化チタンを用いれば、紫外光のみならず、可視光をも活用して高い光触媒機能を発現させることができる。更にはこれら窒素ドープ及び/又は硫黄ドープ型の酸化チタン微粒子に、鉄、銅等の金属イオンを導入して更に光触媒機能を高めたものも好適に用いることができる。また金属樹脂積層板が屋内で用いられる場合には、かかる可視光に対して高い光触媒機能を発現する光触媒性結晶を用いることで、紫外光の照射されない環境下においても光触媒機能を発現させて防汚性能を発揮することが可能となり得る。
【0026】
光触媒性結晶の表面の一部を被覆する保護物質としては、モンモリロナイト、タルク、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸塩、炭化ケイ素、アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、セラミックス、アパタイト、チタンアパタイト、マグネシア、コーディライト、セピオライト、水酸化カルシウム等又はこれらの複合体が挙げられるが、これらの内、光触媒性結晶への付着を容易に行うことができ、且つ水酸基含有の塗料ビヒクル樹脂に含有される水酸基と反発させて光触媒微粒子の塗膜層1表面への浮上を促進させることができる多孔質シリカを好適に用いることができる。これらの物質を光触媒性結晶とミキサーにより混練したり、水等の溶媒に分散させてその溶液中に光触媒性結晶を適宜の時間浸漬したりして、光触媒性結晶の表面に保護物質を点在する結晶状に析出させたり、マスクメロンのネット構造状に析出させたりすること等で形成することができる。
【0027】
図2は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第二の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は断面の詳細を示す横断面図である。まず(a)において、道路付帯設備は防護柵1Bであり、地表面に間隔をおいて立設された支柱1B1間に、パイプを溶接して形成した縦格子パネル1B2が取り付けられて形成されたものである。支柱1B1及び縦格子パネル1B2はポリエステル系樹脂粉体塗料を用いて亜鉛めっき鋼管の外面に塗装が施されているものである。塗装は、一般には誘目性を高める必要がある場所においては白色等の明度の高い色調のものが用いられ、都市部等周囲の景観に配慮する必要がある場所においては濃茶色等の明度の低い色調のものがよく用いられる。しかしながら、これらの防護柵1Bについても、道路周辺に設置される場合が多く、道路標識柱1Aの場合と同様に自動車の排気ガス等に由来する煤塵や道路周辺の塵埃等の汚染物質が付着し、上述の誘目性や景観性が損なわれる恐れがある。
【0028】
次に(b)は(a)の縦格子パネル1B2の縦格子部分の横断面図であるが、亜鉛めっき鋼管1B3の外面にポリエステル系樹脂粉体塗料を用いて80〜100μmの厚みで塗膜層3Bが形成されており、塗膜層3Bの外面に、第一の実施形態と同じクリヤーコーティング組成物を用いて20μmの層厚の被覆層2が形成されている。ポリエステル系樹脂は耐溶剤性が比較的低いものであるが、本発明に係わる被覆層2であればポリエステル系樹脂を侵すことがなく、塗装により発現されるべき色調や意匠を損なうことなく防護柵1Bの色調が被覆層2を透して視認できるようになされる。また被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、外面に付着した汚染物質が雨水等が降り注ぐことで容易に洗い流されるようになされる。被覆層2は、汚染物質の付着による誘目性や景観性が損なわれる度合いが大きい縦格子パネル1B2のみに形成してもよく、支柱1B1にも形成して防護柵1B全体において自浄性を発現させるようにしてもよい。
【0029】
図3は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第三の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は断面の詳細を示す断面図である。(a)に示す如く、道路付帯設備は高欄1Cであり、防護柵1Bと同様に間隔をおいて地表面から立設させた支柱1C1間に横梁1C2が差し渡されて形成され、外面にはポリエステル系樹脂粉体塗料による塗装が施されたものである。高欄1Cについても上述の実施形態と同様に、道路周辺に設置される場合が多く、自動車の排気ガス等に由来する煤塵や道路周辺の塵埃等の汚染物質が付着し、上述の誘目性や景観性が損なわれる恐れがあるが、被覆層2を支柱1C1や横梁1C2の外面に形成しておくことで、外面に親水性が発現されて外面に付着した汚染物質が、雨水等が降り注ぐことで容易に洗い流されるようになされる。(b)に示す如く、横梁1C2上に形成された塗膜層3Bの外面に被覆層2を設けることで、塗膜層3Bの色調や意匠を損なうことなく、被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、ポール部1A1の外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面が清浄に保たれるようになされる。
【0030】
本発明に係わる被覆層が適用される塗装としては、ポリエステル系樹脂粉体塗料に限定されるものではなく、溶剤系、粉体系を問わず適用することができ、フッ素樹脂系塗装、エポキシ樹脂系塗装、ウレタン樹脂系塗装、アクリル樹脂系塗装等に用いることができる。
【0031】
図4は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第四の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は断面の詳細を示す断面図である。(a)において、道路付帯設備は透光性の防音パネル1Dであり、アルミニウム合金押出形材からなる枠体1D2が額縁状に形成され、枠体1D2の内側に透明なポリカーボネート樹脂からなる透明な面板1D1が設けられている。防音パネル1Dは道路の側縁に沿って設置され、道路騒音の周辺への伝播を防止するものであるが、透明な面板1D1を用いることで遮音性と共に採光性及び眺望性も得ることができるが、面板1D1に汚染物質が付着すると透明な面板1D1を用いることによる利点が損なわれることとなる。
【0032】
(b)は面板1D1の横断面図であるが、面板1D1の外面に透光性のプライマー層3Dが形成され、プライマー層3D上に第一の実施形態と同じ被覆層2が20μmの膜厚で形成されている。被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、面板1D1の外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面が清浄に保たれて採光性及び眺望性を維持できるようになされている。面板1D1を形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂に限定されず、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いてもよい。プライマー層3Dを設けるには、第一の実施形態に示したプライマーを用いて形成することができる。またプライマー層3Dを設けずに、UV処理を行った面板1D1に直接クリヤーコーティング組成物を塗布して被覆層2を形成することもできる。
【0033】
図5は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第五の実施形態を示すもので、(a)は全体を示す斜視図、(b)は断面の詳細を示す断面図である。(a)において、道路付帯設備は道路側縁に適宜間隔をおいて設置される視線誘導標1Eであり、視線誘導標1Eは支柱1E2の上端に取り付けられた誘導標本体1E3に、プリズム反射体である再帰反射体1E1が填め込まれて形成されたものである。かかる視線誘導標1Eは、再帰反射体1E1に汚染物質が付着すると、車両の前照灯を再帰反射する性能が低下し、視線誘導標1Eとしての機能が著しく損なわれる。かかる付着した汚染物質を除去するために、従来は風圧により回転する払拭子を取り付けたり、光触媒含有層を設けたりしていたが、前者は払拭子の破損や払拭子又は再帰反射体の摩耗が懸念され、後者は形成に係わるコストが高くなるのが難点であった。
【0034】
(b)において、再帰反射体1E1のプリズム反射材1E11を覆う透明なポリカーボネート樹脂製のカバー1E12外面にプライマー層3Eが形成され、プライマー層3Eを介してカバー1E12の上に被覆層2が20μmの膜厚で設けられている。被覆層2は第一の実施形態に示したものと同じであり、プライマー層3Eについても第一の実施形態に示したものを用いることができる。また第四の実施形態に示したように、カバー1E12にUV処理等を行った上で直接被覆層2を形成してもよい。かかる被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、再帰反射体1E1の外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面が清浄に保たれて光の透過性が維持されるようになり、以て視線誘導効果を保持できるようになされている。更に被覆層2により、再帰反射体1E1等の摩耗の懸念もなく、また光触媒含有層を設けるよりも安価にて親水性を具備させることができる。
【0035】
図6は、本発明に係わる自浄性道路付帯設備に適用されるフィルムを示す断面図である。フィルム1Fは、透明なポリオレフィン系合成樹脂からなる基材1F1の一方の面上に直接被覆層2が設けられて形成され、他方の面上には透明な粘着層1F2が設けられて全体が透明となされたものである。被覆層2は第一の実施形態と同じクリヤーコーティング組成物を基材1F1の表面に直接塗布して形成されたものであり、被覆層2の膜厚は20μm程度となされている。かかるフィルム1Fを、標識板の標識面、透光性の遮音壁、サインの表示面、シェルターの屋根面等に粘着層1F2を用いて貼着することで、既設の道路付帯設備の機能を損なうことなく外面に容易に被覆層2を形成し、その被覆層2に含有されるオルガノシリケート化合物及び光触媒微粒子中の光触媒性結晶により、被覆層2表面に高度な親水性が発現され、フィルム1Fの外面に付着した煤塵や塵埃等が、雨水等が降り注がれることで洗い流されやすくなり、表面を清浄に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第二の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第三の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第四の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる自浄性道路付帯設備の、第五の実施形態を示す説明図である。
【図6】本発明に係わる自浄性道路付帯設備に適用されるフィルムを示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1A 道路付帯設備(道路標識柱)
1B 道路付帯設備(防護柵)
1C 道路付帯設備(高欄)
1D 道路付帯設備(防音パネル)
1E 道路付帯設備(視線誘導標)
2 被覆層
3 プライマー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路付帯設備の外面に透明な被覆層が形成され、前記被覆層が、水酸基含有フッ素樹脂組成物及びイソシアネート系硬化剤を含有するコーティング組成物に、樹脂固形分100重量部当たり、フッ素系界面活性剤0.01〜1.0重量部、紫外線吸収剤1〜15重量部、オルガノシリケート化合物1〜30重量部、及び光触媒機能を備えた光触媒微粒子0.05〜20重量部を含有させたクリヤーコーティング組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする自浄性道路付帯設備。
【請求項2】
前記光触媒微粒子は、表面の一部が前記光触媒機能に対して不活性な保護物質により光触媒性結晶が被覆されたものであることを特徴とする請求項1に記載の自浄性道路付帯設備。
【請求項3】
前記道路付帯設備は、ポリウレタン系樹脂製のポール部を備えた道路標識柱であって、前記ポールの上にウレタン系、エポキシ系及びアクリル系の群から選ばれた少なくとも1つのプライマーを介して被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自浄性道路付帯設備。
【請求項4】
前記被覆層は、ポール部の外面と、ポール部に貼着された反射シートの外面とに形成されていることを特徴とする請求項3に記載の自浄性道路付帯設備。
【請求項5】
前記道路付帯設備は、再帰反射性を備えた反射体であって、反射部の上に透明な合成樹脂製のカバーが形成され、該カバーの外面に被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自浄性道路付帯設備。
【請求項6】
前記被覆層は、透明な合成樹脂製のフィルムの外面に形成され、該フィルムが前記被覆層を外側にして道路付帯設備の外面に貼着されることで道路付帯設備の上に被覆層が形成されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自浄性道路付帯設備。
【請求項7】
前記反射体は、可とう性の基材の一方の面に反射部が形成され、他方の面の上に粘着層が形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自浄性道路付帯設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−121278(P2008−121278A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306104(P2006−306104)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】