説明

自発光表示装置

【課題】放熱性に優れ、熱による発光素子の劣化が小さい自発光表示装置を提供する。
【解決手段】基板上に形成された薄膜トランジスタの上に、第1電極と、第1の発光層を有する第1有機発光層と、第2電極とが、この順に形成された発光素子を、基板上に薄膜トランジスタを介して、2次元に配置することにより、表示領域を構成する自発光表示装置であって、第1電極が、表示領域の内部で連続膜として形成され、かつ、表示領域外で放熱線に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自発光表示装置に関し、特に、有機EL(Electro Luminescence)表示装置に好適に用いられる自発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子は与えられたエネルギーを全て光に変換することは出来ず、与えられたエネルギーの一部から熱も発生する。発光素子を発光させることにより発生する熱によって表示装置の温度は上昇し、発光素子の電流―輝度特性の劣化が進行する。また、基板の温度上昇により基板上に配置される薄膜トランジスタの熱ドリフトも問題となり、表示ムラの発生に繋がる。
【0003】
特許文献1に開示されている発光素子からなる電気光学装置においては、発光素子の光取り出し方向とは反対の側の、発光素子と基板の間に放熱部を設けている。放熱部は発光領域と非発光領域に跨って構成されており、基板に形成された放熱部全体で熱を貯え、温度分布を均す構成としている。しかし、放熱部は発光素子と絶縁膜を介して積層されており、発光素子で発生した熱をすばやく受容することがしにくい構成となっている。また、放熱部は、熱伝導性の良いという理由から金属などから構成されるが、回路や配線との間に発生する寄生容量を避けるために、放熱部と回路や配線の重なりが小さくなるように配置する必要がある。しかし、充分な放熱性を得るためには画素ピッチを小さくしづらく、また、発光素子の開口率向上とも相反する要素を持つ。
【特許文献1】特開2005−5252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子を発光させることにより発生する熱により、発光素子の劣化が進行する。また、表示領域内にて一部に熱負荷が発生すると、発光素子の劣化進行が面内で異なり、表示ムラとして認識される問題となる。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、熱拡散性に優れる構造を有し、発熱による素子劣化進行を抑えることができる自発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による自発光表示装置は、基板上に形成された薄膜トランジスタの上に、第1電極と、第1の発光層を有する第1有機発光層と、第2電極とが、この順に形成された発光素子を、前記基板上に前記薄膜トランジスタを介して、2次元に配置することにより、表示領域を構成する自発光表示装置であって、前記第1電極が、前記表示領域の内部で連続膜として形成され、かつ、前記表示領域外で放熱線に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自発光表示装置では熱拡散性に優れる構造を有するため、表示領域において温度分布を均一にすると共に、表示装置の温度上昇をより小さくできる。また、基板上に配置される薄膜トランジスタの熱ドリフトを抑制し、表示ムラの発生を低減できる。
【0008】
更には、放熱部配置のための占有領域を設ける必要がないため、表示領域においては画素ピッチを狭く、開口率を大きくすることが可能となり、表示領域外においては額縁幅を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
なお、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。また以下に説明する実施例は、発明の幾つかの実施例であって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1は画素領域から周辺部における断面構造を模式的に示す図である。図1に示す断面構造を有する画素により、図2に示す本発明の有機EL表示装置が構成されている。
【0012】
図1を用いて、本発明に係る有機EL表示装置を説明する。図1は、画素群からなる表示領域のうち周辺部を示す概略断面図であり、最外周画素から2個の画素と、表示領域外に設けられた電源線にかけてを示している。
【0013】
第1絶縁層2、薄膜トランジスタ3、第2絶縁層4、平坦化層5が形成された絶縁性基板1の上に、第1電極11、第1の発光層を有する第1有機発光層12、第2電極13a、13bが形成されている。第1電極11は、平坦化層5上に形成された電源線6と接続されている。そして、電源線6、平坦化膜5、第1電極11、第2電極13a、13bを覆うように保護膜7が形成されている。
【0014】
第2電極13a、13bは各画素に対応するパタン電極から構成され、画素毎に制御される薄膜トランジスタ3とコンタクトホール14a、14bを介して接続している。すなわち、第2電極が発光素子毎に薄膜トランジスタと接続されている。そして、各画素の発光制御は第1電極11と第2電極13a、13bの間に印加する電圧を制御することにより行われる。
【0015】
第1電極11は画素を跨ぐように、隣り合う画素の第1電極11と同層にて形成され繋がっており、表示領域外に配置される電源線6に接続されている。本実施例においては、図2に示すように、表示領域面内において第1電極11が全ての画素を跨いで同層にて繋がっており、1つの連続膜により構成されている。
【0016】
本実施例の構成では、1画素を単色発光させることが可能であり、3個の画素にてRGBを発光制御することで1ピクセルとして表示させることができる。
【0017】
本実施例において、第1電極11は熱伝導性の高い導電性材料から構成される。本発明の構成では発熱する第1有機発光層12に熱拡散経路となる第1電極11が接触している。各画素にて発生した熱は、発光素子の電極である第1電極11が熱伝導性の高い材料で構成されていることから、第1電極11に熱が拡散し、接続されている第1電極11全体に熱を分散することができる。
【0018】
第1電極11とは別に熱拡散経路となる放熱部を設ける場合がある。この場合、例えば、平坦化層5と第2絶縁層4の間に放熱部を設けると、0.1〜0.3μmの厚さの第1有機発光層12に対し、1.5〜2.5μmの平坦化膜5を介して配置される熱拡散経路への放熱は充分ではない。そのため、発光素子との間に介在する平坦化膜5などに局所的に熱を貯えてしまう。さらに、より絶縁性基板1側の位置に放熱部を設ける場合には、より放熱部への熱拡散性は低下し、間に介在する層に熱を貯えてしまう。
【0019】
これに対し、本実施例の構成では、発光素子を構成する第1電極11自身が熱拡散経路となるため、発熱部と放熱部の間に介在する層はなく、熱拡散性に優れる。
【0020】
本発明では、更に、第1電極11が、第1電極11と同等もしくはそれ以上の熱伝導性を有する材料からなる電源線6に接続されており、発生した熱をより大きな面積で分散することができる構成となっている。
【0021】
画素で発生した熱は、第1電極11、電源線6により絶縁性基板1の面内に分散され、絶縁性基板1および保護膜7の表面を介して、自発光表示装置の外部に放熱される。自発光表示装置外部への放熱は、外部との接触面積が広いほど効率よく行われるため、本発明の構成により、表示領域の一部に発生した熱負荷が集中することを抑制し、自発光表示装置の面全体に熱を分散することが、効果的である。
【0022】
図1、2では電源線6を覆うように第1電極11が形成されているが、電源線6と第1電極11の間で十分な熱伝導性が確保されていれば、必ずしも電源線6を覆う必要はなく、接続していればよい。
【0023】
図2において、電源線6は表示領域の短辺方向の両側に表示領域と同じ長さを持って配置した例を示しているが、本発明は図2の形態に限定されるものではない。放熱線の面積を大きくした形態がより好ましく、この時、表示領域の長辺方向に電源線6を配置することができる。また、自発光表示装置外部への放熱のために、絶縁性基板1、保護膜7に接する新たな放熱経路を設置することも可能であり、この時、放熱経路に対して効率よく放熱できるように、電源線6を表示領域外側の任意の場所に配置できる。例えば、自発光表示装置の温度上昇を防ぐために、絶縁性基板1に放熱シートを介して金属板を配置する場合、絶縁性基板1面内において、放熱シートの接着面に対応するように、可能な限り大きな放熱線を配置することが放熱のためには有効となる。
【0024】
また、本発明の構成においては、第1電極11と繋がる放熱バッファ線を配置することが可能である。発光を制御する第1電極11と連続する膜で形成することが可能であり、発光素子を構成する第1電極11を拡大する形で、配置することが出来る。また、表示領域の周辺において電源線6と連続する膜で形成することが可能である。つまり、発光素子を制御するために必要な第1電極11、電源線6のレイアウトに加えて、放熱のためにバッファ涼気となる放熱バッファ線を配置することで、より自発光表示装置の面全体に熱を分散することが可能となる。
【0025】
図2においては、放熱線6と繋がる放熱バッファ線9が表示領域の周囲、長辺側に配置される例を示している。
【0026】
本発明における表示領域とは、図1に示す断面構成を有する画素が2次元に配置され構成されている領域を指しており、表示駆動を行わない、もしくは、非発光処理を行った画素からなる非発光領域を発光領域の周囲に設けることもできる。
【0027】
本実施例では、図2に示すように、第1電極11が表示領域面内において同層にて繋がっている例を示している。すなわち、第1電極11が、表示領域の内部で連続膜として形成され、かつ、前記表示領域外で放熱線に接続されている例を示している。しかし、本発明は、本構成に限定されるものではない。第1電極11は、ライン状に形成される場合においても、第1電極11が発光面積以上の幅で形成されているために、高い熱拡散性を有する。表示領域を構成する任意の画素において、第1電極11が表示領域外に形成される電源線6に同層で接続されていればよく、表示領域における第1電極11の形状、繋がっている方向は限定されない。
【0028】
以上に述べた本実施例の構成は、熱拡散性に優れる構造を有し、発熱による素子劣化進行を抑えることができる。
【0029】
以下、本実施例について更に詳細に説明する。
【0030】
本実施例では、第1電極11は高反射率の導電性材料であり、反射電極となる。例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の金属を50〜300nm程度形成した膜からなることが好ましい。反射率が高い部材であるほど、光取り出し効率を向上できるからである。また、これらの金属膜は放熱性に優れており、高い熱拡散効果が得られる。
【0031】
第2電極13a、13bは透過率の高い導電性材料であり、光取り出し電極となる。各画素から発せられた光は、第2電極13a、13bを介して取り出される。本実施例にかかる有機EL表示装置はトップエミッション型の有機EL表示装置である。
【0032】
第2電極13a、13bの電極材料としては、透過率の高い材料が好ましい。例えば、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電膜、Ag、Au、Alなどの金属を10nm〜30nm程度形成した半透過膜でもよい。
【0033】
電源線6は、熱伝導性が高い材料であれば特に限定されないが、薄膜トランジスタ3のいずれかの構成層、あるいは第1電極11と同一材料かつ同膜構造で形成することができる。本実施例では、形成した平坦化膜7上に、電源線6を形成し、続いて第1電極11を形成する形態を記しているが、電源線6を第1電極11で同時に形成してもよい。
【0034】
放熱バッファ線は熱伝導性が高い材料であれば特に限定されないが、薄膜トランジスタ3のいずれかの構成層、あるいは第1電極11と同一材料かつ同膜構造で形成することができる。
【0035】
有機発光層は以下の様に形成される。
【0036】
第1有機発光層は、有機発光材料、正孔注入材料、電子注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。正孔注入材料又は正孔輸送材料に有機発光材料をドーピングする、または電子注入材料又は電子輸送材料に有機発光材料をドーピングする等により発色の選択の幅を広げることができる。さらに、有機発光層は、発光効率の観点からアモルファス膜であることが好ましい。
【0037】
各色の有機発光材料は、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等が使用できる。また、これらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体が使用できる。但し、本発明の構成として例示の材料に限定されるものではない。
【0038】
有機発光層は、正孔注入、正孔輸送、電子注入、電子輸送の各単機能を持つ層であってもよいし、複合機能を持つ層であってもよい。
【0039】
有機発光層の膜厚は0.05μm〜0.3μm程度が良く、好ましくは0.05〜0.15μm程度である。
【0040】
正孔注入及び輸送材料としては、フタロシアニン化合物、トリアリールアミン化合物、導電性高分子、ペリレン系化合物、Eu錯体等が使用できるが、本発明の構成として限定されるものではない。
【0041】
電子注入及び輸送材料の例としては、アルミに8−ヒドロキシキノリンの3量体が配位したAlq3、アゾメチン亜鉛錯体、ジスチリルビフェニル誘導体系等を使用できる。
【0042】
次に、透明電極を成膜、及び、パターニングを行い、第2電極13a、13bを形成する。このとき、コンタクトホール14a、14bを介して、第2電極13a、13bと薄膜トランジスタ3とが接続される。
【0043】
透明電極のパターニング方法としては、前述のレーザー加工で行うことができる。YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用するものを用いる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、基板上に所定のパタンで照射する。
【0044】
また、他のパターニング方法としては電極材料を加熱し、メタルマスクを使用して蒸着によって形成しても良い。また、電極材料が形成された基板を絶縁性基板1と対向させてレーザーアブレーションにより転写しても良い。
【0045】
このようにして形成された有機EL表示装置の等価回路を図3に示す。
【0046】
各画素は、スイッチング用TFT101a、101bと駆動用TFT102a、102bと、有機発光素子(有機EL素子)12と、コンデンサ103a、103bで構成されている。
【0047】
ここで、スイッチング用TFT101a、101bのゲート電極は、ゲート信号線105に接続されている。また、スイッチング用TFT101a、101bのソース領域はソース信号線106a、106bに、ドレイン領域は駆動用TFT102a、102bのゲート電極に接続されている。また、駆動用TFT102a、102bのソース領域は電源供給線107に、ドレイン領域は有機発光素子12の一方の電極に接続されている。図1の画素においては、第2電極13a、13bに接続されている。なお、有機発光素子12の他方の電極は、図1の第1電極11に接続されている。またコンデンサ103a、103bは電極のそれぞれが、駆動用TFT102a、102bのゲート電極とGNDとに接続されるように形成されている。このように、駆動用TFT102a、102bと有機EL素子が直列に接続されており、有機EL素子に流れる電流を駆動用TFT102a、102bで制御する。
【0048】
本実施例において、第1電極13a、13bにTFTスイッチング素子が接続され、第1電極11が共通電極として接続されている。
【0049】
以上、本実施例に述べた自発光表示装置において、画素内において発生した熱は発光素子を構成する第1電極11が画素を横断し、表示領域外に形成される電源線へと繋がる構造を有する。従って、表示領域において温度分布を均一にすると共に、表示装置の温度上昇をより小さくできる。
【0050】
また、発光素子と薄膜トランジスタの間には第2絶縁層と平坦化膜層が形成されており、発光素子から薄膜トランジスタまでの距離が離れている。発光素子からの熱が前記トランジスタに影響する前に放熱部により逃がすことができるため、基板上に配置される薄膜トランジスタの熱ドリフトを抑制し、表示ムラの発生を低減できる。
【0051】
更には、放熱部配置のための占有領域を設ける必要がないため、表示領域においては画素ピッチを狭く、開口率を大きくすることが可能となり、表示領域外においては額縁幅を小さくできる。
【実施例2】
【0052】
本実施例の形態について、図4を用いて説明する。図4は画素領域から周辺部における断面構造を模式的に示す図である。
【0053】
本実施例においては、第2電極13a、13b上に、第2の発光層を有する第2有機発光層15、第3電極16が形成されている。第3電極16は共通電極となっている。電源線6は薄膜トランジスタ3を形成する工程において同時に形成されており、第1絶縁層2上に形成されている。電源線6は第2絶縁層4、平坦化層5が除去された領域において、第1電極11と繋がっている。
【0054】
第3電極16は共通電極であり、第1電極11と電気的に接続している。図4では表示領域の外周にて第1電極11と第3電極16が接続している場合を示しているが、接続箇所は表示領域内であっても表示領域外でもよく、同じ電圧が供給される。第1電極11と第3電極16を導通させるコンタクトホールは表示領域内にて、第3電極16の電位が等しく保たれるように任意数配置してもよい。第3電極16は第1電極11を介して、電源線6と繋がっている。
【0055】
第3電極16の材料としては、透過率の高い材料が好ましく、例えば、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電膜や、ポリアセチレンなどの有機導電膜からなることが好ましい、さらに、Ag、Alなどの金属を10nm〜30nm程度形成した半透過膜でもよい。第3電極16はスパッタ、蒸着等により形成する。
【0056】
その他の構成については、実施例1と同様のレイアウト、画素構造を有する。
【0057】
このようにして形成された有機EL表示装置の等価回路を図5に示す。
【0058】
各画素は、スイッチング用TFT101a、101bと駆動用TFT102a、102bと、有機発光素子12、15と、コンデンサ103a、103bで構成されている。
【0059】
本実施例において、第1電極13a、13bにTFTスイッチング素子101a、101bが接続され、第1電極11、第3電極16が共通電極として接続されている。
【0060】
本実施例の構成では、1画素を2つの色に発光させることが可能であり、2個の画素にてRGBを発光制御することで1ピクセルとして表示させることができる。例えば、1つの画素でRとBを発光制御し、もう一方の画素でGとBを時分割で発光制御するなどの構成をとることができる。
【0061】
もしくは、有機発光層を非発光化処理することができ、一方の画素の2つの有機発光層のうちの1層を非発光化処理することにより、一方の画素でB、もう一方の画素でRとGを時分割で発光制御する構成をとることができる。
【0062】
非発光処理としては、電極形成後に紫外線照射をすることで非発光化させることができる。光としては、水銀ランプなどの一般的なUV光をマスクして照射したり、エキシマレーザーなどの紫外光レーザーを用いたりしても良い。
【0063】
本実施例の構成において、画素内において発生した熱は、画素を横断する第1電極11により表示領域面内に分散されると共に、表示領域外に形成される電源線6へと繋がる構造を有する。従って、第1電極11、電源線6により表示領域において発生した熱を分散させることができる。続いて、絶縁性基板1および保護膜7の表面を介して、自発光表示装置の外部に放熱される。
【0064】
よって、表示領域において温度分布を均一にすると共に、表示装置の温度上昇をより小さくできる。また、基板上に配置される薄膜トランジスタの熱ドリフトを抑制し、表示ムラの発生を低減できる。
【0065】
更には、放熱部配置のための占有領域を設ける必要がないため、表示領域においては画素ピッチを狭く、開口率を大きくすることが可能となり、表示領域外においては額縁幅を小さくできる。
【実施例3】
【0066】
本実施例の形態について、図6を用いて説明する。図6は画素領域から周辺部における断面構造を模式的に示す図である。
【0067】
本実施例においては、第2電極13a、13b上に、第2有機発光層15、第3電極16a、16b、第3の発光層を有する第3有機発光層18、第4電極19が形成されている。第4電極19は共通電極となっている。電源線6は薄膜トランジスタ3を形成する工程において同時に形成されており、第1絶縁層2上に形成されている。電源線6は第2絶縁層4、平坦化層5が除去された領域において、第1電極11と繋がっている。
【0068】
第4電極19は共通電極であり、第1電極11と電気的に接続している。図6では表示領域の外周にて第1電極11と第4電極19が接続している場合を示しているが、接続箇所は表示領域内であっても表示領域外でもよく、同じ電圧が供給される。第1電極11と第4電極19を導通させるコンタクトホールは表示領域内にて、第4電極19の電位が等しく保たれるように任意数配置してもよい。第4電極19は第1電極11を介して、電源線6と繋がっている。
【0069】
第3電極16、第4電極19の材料としては、透過率の高い材料が好ましい。例えば、ITO、IZO、ZnOなどの透明導電膜や、ポリアセチレンなどの有機導電膜からなることが好ましい。さらに、Ag、Alなどの金属を10nm〜30nm程度形成した半透過膜でもよい。第3電極16はスパッタ、蒸着等により形成する。
【0070】
画素Paにおいては、コンタクトホール17aにより第2電極13aと第3電極16aが接続されており、ショートしている。このため、第2有機発光層15には電圧が印加されず、発光しない構成となっている。同様に、画素Pbにおいては第3電極16bと第4電極19が接続されており、第3有機発光層が発光しない構成となっている。
【0071】
その他の構成については、実施例1と同様のレイアウト、画素構造を有する。
【0072】
このようにして形成された有機EL表示装置の等価回路を図7に示す。
【0073】
各画素は、スイッチング用TFT101a、101bと駆動用TFT102a、102bと、有機発光素子12、15、18と、コンデンサ103a、103bで構成されている。
【0074】
本実施例において、第1電極13a、13bにTFTスイッチング素子が接続され、第1電極11、第4電極19が共通電極として接続されている。
【0075】
画素Paにおいては、コンタクトホール17aにより第2電極13aと第3電極16aが接続されており、同電位となる。よって、第1電極11と第2電極13a間に電圧を印加することにより第1有機発光層12の発光制御を行い、第3電極16aと第4電極19の間において電圧を印加することにより第3有機発光層18の発光制御を行う。
【0076】
画素Pbにおいては、コンタクトホール20bにより第3電極16aと第4電極19が接続されており、同電位となる。よって、第1電極11と第2電極13b間に電圧を印加することにより第1有機発光層12の発光制御を行い、第2電極13bと第3電極16bの間において電圧を印加することにより第2有機発光層15の発光制御を行う。
【0077】
本実施例の構成では、1画素を2つの色に発光させることが可能であり、2個の画素にてRGBを発光制御することで1ピクセルとして表示させることができる。例えば、1つの画素でRとBを発光制御し、もう一方の画素でGとBを時分割で発光制御するなどの構成をとることができる。本実施例では、第1有機発光層12がR、第2有機発光層13がG、第3有機発光層18がBの発光を行うように積層されており、画素PaではRとB、画素PbではRとGの発光を行う。
【0078】
コンタクトホール17a、20bの形成方法としては、レーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用するものを用いる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、基板上に所定のパタンで照射する。コンタクトホールの径としては、2μm〜15μmが好ましい。
【0079】
本実施例の構成において、画素内において発生した熱は、画素を横断する第1電極11により表示領域面内に分散される。また、表示領域外に形成される電源線6へと繋がる構造を有するため、第1電極11、電源線6により表示領域において発生した熱を分散させることができる。続いて、絶縁性基板1および保護膜7の表面を介して、自発光表示装置の外部に放熱される。
【0080】
よって、表示領域において温度分布を均一にすると共に、表示装置の温度上昇をより小さくできる。また、基板上に配置される薄膜トランジスタの熱ドリフトを抑制し、表示ムラの発生を低減できる。
【0081】
更には、放熱部配置のための占有領域を設ける必要がないため、表示領域においては画素ピッチを狭く、開口率を大きくすることが可能となり、表示領域外においては額縁幅を小さくできる。
【0082】
なお、上述したように、第1電極乃至第4電極の材料を選択することにより、前記第1電極が、他の何れの電極よりも高い反射率を有するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施例1における有機EL表示装置の表示領域から電源線への構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施例における有機EL表示装置の電極レイアウトの一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例1における有機EL表示装置の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の実施例2における有機EL表示装置の表示領域から電源線への構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施例2における有機EL表示装置の等価回路を示す図である。
【図6】本発明の実施例3における有機EL表示装置の表示領域から電源線への構成を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施例3における有機EL表示装置の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 絶縁性基板
2 第1絶縁層
3 薄膜トランジスタ(TFT)
4 第2絶縁層
5 平坦化層
6 電源線
7 保護膜
8 端子部
9 放熱バッファ線
11 第1電極
12 第1有機発光層
13a、13b 第2電極
15 第2有機発光層
16、16a、16b 第3電極
18 第3有機発光層
19 第4電極
14a、14b、17a、20b コンタクトホール
101a、101b スイッチング用TFT
102a、102b 駆動用TFT
103a、103b コンデンサ
105 ゲート信号線
106a、106b ソース信号線
107 電源供給線
Pa、Pb 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された薄膜トランジスタの上に、第1電極と、第1の発光層を有する第1有機発光層と、第2電極とが、この順に形成された発光素子を、前記基板上に前記薄膜トランジスタを介して、2次元に配置することにより、表示領域を構成する自発光表示装置であって、
前記第1電極が、前記表示領域の内部で連続膜として形成され、かつ、前記表示領域外で放熱線に接続されていることを特徴とする自発光表示装置。
【請求項2】
前記第1電極が電源線と接続され、前記第2電極が前記発光素子毎に前記薄膜トランジスタと接続されることを特徴とする請求項1に記載の自発光表示装置。
【請求項3】
前記第2電極の上に、第2の発光層を有する第2有機発光層と、第3電極とが、この順に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自発光表示装置。
【請求項4】
前記第1有機発光層と、前記第2有機発光層のうち、或る1層が非発光処理されていることを特徴とする請求項3に記載の自発光表示装置。
【請求項5】
前記第3電極の上に、第3の発光層を有する第3有機発光層と、第4電極とが、この順に積層されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自発光表示装置。
【請求項6】
前記第1有機発光層と、前記第2有機発光層と、前記第3有機発光層のうち、或る1層が非発光処理されていることを特徴とする請求項5に記載の自発光表示装置。
【請求項7】
前記第1電極が放熱バッファ線を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の自発光表示装置。
【請求項8】
前記第1電極が、他の何れの電極よりも高い反射率を有する請求項1乃至7に記載の自発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−92923(P2010−92923A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258645(P2008−258645)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】