説明

自走式計測装置、診断装置および自動診断システム

【課題】高精度な位置決めができ、他装置との分担・連携作業が可能で、かつ、計測が行われた場所と計測結果との対比を明確にすることができる。
【解決手段】GPSから自装置の位置情報を取得する位置情報受信部107と、補正情報発信装置113から位置情報を補正するための補正データを受信する位置補正情報受信部109と、位置情報および補正データから現在位置を算出する位置算出部108と、当該現在位置に基づいて、予め設定された所定の計測地点まで自装置を移動させる移動部111と、その計測地点で検査対象101の内部状態を検出して検出データを出力するセンサ部103及び解析部104と、上記現在位置と検出データとを計測データとして合成するデータ生成部105と、計測データを外部に伝送する通信部106−1と、駆動電力の発電を行う電源部110を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自走式計測装置、診断装置および自動診断システムに関し、特に、ビル等のコンクリート建造物の壁面検査等を行うための自走式計測装置、診断装置および自動診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビル・橋梁等のコンクリート建造物では壁面検査をロボットを用いて実施することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の壁面検査ロボットシステムは、壁面を有する構造物の床上の所望位置に移動するための移動機構を有するロボット本体と検査機構部とを有し、かつ、当該検査機構部を壁面に倣い移動させるためにロボット本体に設けられているアーム機構とを有している。
【0004】
特許文献1に記載の壁面検査ロボットシステムにおいては、ロボット本体は検査壁面の走行移動エリアに搬入後、検査方向が床面から上方または天井から下方により、方向転換機構でアーム機構の伸縮方向に向きを変え、上下方向はアーム機構で、前後方向は移動台車の前後進移動で、目標位置ヘアクセスする。検査位置は、壁面をある一定の長さのピッチで格子状の交差点毎に検査を行うことから、操作部や表示・記録部または打撃診断装置から入力する検査対象設備の情報である壁面寸法・形状、検査ピッチ、打撃鋼球の選定などの条件を入力し設定する。
【0005】
これにより、制御部からの指令でアーム機構の伸縮長さと車輪の移動距離を指示し、伸縮位置検知器で伸縮長さを、走行距離計で前後移動距離を把握し、ガイド車輪の接触センサで先端の壁面接触状況を、案内輪の接触センサで壁面との倣い走行及び操舵量、重心位置や安定度を把握し、制御部に伝え、必要に応じて位置や重心の補正を行う。
【0006】
外界の状況把握は作業監視カメラと外界センサにより作業状況や障害物を把握し、制御部に伝え、移動経路生成に活用することができ、衝突や接触については衝突検知バンパーで検知し制御部に伝え動作停止や回避動作を行う。
【0007】
先端の検査機構部は、壁面への接触状況を複数のガイド車輪の接触圧センサにより制御部が把握し、最適な姿勢での押し付け状況になるように、継ぎ手部または方向転換機構やアーム機構または操舵機構を動作させる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−301665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の壁面検査ロボットシステムは、壁面検査のために設備側にゴンドラやガイドマストなどが不要であるなどの点で可搬性があり、低コストを図ったものであったが、壁面検査ロボットシステムが複数ある場合の連携作業が考慮されていないという問題点や、GPSでの位置情報を用いているため、自律移動ではセンチメートルレベルでの高精度な位置決めが難しいという問題点があった。また、検査データとロボット位置情報とを組み合わせたデータマップでは現場写真との対比がわかりにくいという問題点があった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、他装置との連携作業が可能で、高精度な位置決めができ、計測が行われた場所と計測結果との対比が明瞭な自走式計測装置、診断装置および自動診断システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、外部との通信により自装置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報を補正する位置情報補正手段と、補正された前記位置情報に基づいて、予め設定された所定の計測地点まで自装置を移動させる移動手段と、前記所定の計測地点で検査対象の内部状態を検出して検出データを出力するセンサ手段と、自装置の駆動電力の発電を行う電源手段とを備えた自走式計測装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、外部との通信により自装置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報を補正する位置情報補正手段と、補正された前記位置情報に基づいて、予め設定された所定の計測地点まで自装置を移動させる移動手段と、前記所定の計測地点で検査対象の内部状態を検出して検出データを出力するセンサ手段と、自装置の駆動電力の発電を行う電源手段とを備えた自走式計測装置であるので、高精度な位置決めができ、位置情報が正確であるため分担作業が可能となって他装置との連携作業が可能で、計測が行われた場所と計測結果との対比も明確にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る自走式計測装置を図に基づいて説明する。図1は、この発明の実施の形態1による自走式計測装置の構成を示すブロック図であり、図2はその外観図である。図1に示すように、自走式計測装置100は、位置情報発信装置(GPS)112からの位置情報を受信するとともに、補正情報発信装置113から当該位置情報を補正するための補正データを受信して、現在位置を算出した後に、検査対象101の計測を行う。また、必要に応じて、自走式計測装置100は計測データを診断機器等の他装置200に通信する。
【0014】
自走式計測装置100は、図1および図2に示すように、打撃部102と、センサ部103と、解析部104と、データ生成部105と、通信部106−1と、位置情報受信部107と、位置算出部108と、位置補正情報受信部109と、電源部110と、移動部111とが設けられている。各構成要素について以下に説明する。
【0015】
打撃部102は、予め設定された一定の力で検査対象101の計測点を打撃する。なお、この一定の力は、ユーザの操作により、変更可能なものとする。
センサ部103は、磁歪素子を有し、打撃部102の打撃によるエネルギーが、計測点から反射されてくるので、その反射エネルギー(振動)を磁歪素子を用いて測定するものである。
解析部104は、センサ部103で測定した反射エネルギーに基づいて、計測点の解析を行う。具体的には、測定された反射エネルギーから、欠陥までの深さを求め、当該深さの値と予め設定された所定の閾値との比較を行って、閾値以上であれば欠陥有りと判定し、そうでなければ、欠陥無しとして判定する。欠陥有りと判定した場合には、判定結果だけでなく、欠陥までの深さの値も出力する。
データ生成部105は、解析部104で得られた解析結果と、後述する位置算出部108で得られる現在位置データとを、合成する。
通信部106−1は、図2に示すように、アンテナを有して、データ生成部105で合成されたデータを外部に無線により通信する。図1の例においては、通信部106−1は、他装置200内に設けられている通信部106−2に対してデータを送信している。
位置情報受信部107は、位置情報発信装置(GPS)112から位置情報を受信する。
位置補正情報受信部109は、位置情報受信部107が受信した位置情報を補正するための補正データを補正情報発信装置113から受信する。補正情報発信装置113としては、例えば、三菱電機(株)製の高精度測位サービスPASを用いて、当該PASのデータセンターから補正情報を受信するようにすればよい。なお、このPASとは、GPS衛星と地上に予め設置された電子基準点網とを用いて、FKP(面補正パラメータ)方式による高い測位技術を実現し、高精度位置情報をセンチメートル単位でリアルタイムにデータセンターから提供するシステムである。但し、GPSからの位置データを補正できる補正データを提供するものであれば、このPAS以外のいずれのシステムを補正情報発信装置113として用いるようにしてもよい。
位置算出部108は、位置情報発信装置(GPS)112からの位置情報と補正情報発信装置113からの補正データとに基づいて、自走式計測装置100の現在位置データを算出するとともに、予め設定された計測間隔に応じて、位置算出部108で算出された現在位置データに基づいて次の計測位置を算出する。
電源部110は、自走式計測装置100の各構成要素を駆動するための電力を供給する。図2の例では、電源部110は太陽電池から構成されており、太陽光エネルギーにより発電を行っている。なお、この場合に限らず、風力等の他の自然エネルギーを利用した発電を行うものにしてもよく、さらには、燃料電池を用いるようにしてもよく、発電を行えるものであれば、いずれのものでもよい。
移動部111は、図2に示すように車輪等から構成されて、位置算出部108によって算出される次の計測位置に自走式計測装置100を移動させる。
【0016】
次に自走式計測装置100の動作について説明する。ユーザは道路・橋梁のコンクリート床版内部の剥離等の欠陥を診断するため、まず計測位置を自走式計測装置に設定する。計測位置はある一定の計測範囲をメッシュ状に切った交差点部分となることから、最初に計測を行う計測初期点、計測ピッチ(計測間隔)、計測点数を初期設定する。計測を開始すると、自走式計測装置100は、位置情報発信装置(GPS)112からの位置情報を位置情報受信部107で受信し、かつ、補正情報発信装置113からの補正データを位置補正情報受信部109で受信し、位置算出部108にて現在位置を算出する。計測開始時には現在位置にてすぐに計測を開始するが、次回以降は、計測ピッチ(計測間隔)に応じて、次の計測位置を算出し、移動部111を使用し移動する。移動後、打撃部102を検査対象101に接触させ、打撃部102により一定の力で検査対象101の計測点を打撃する。打撃によるエネルギーが、検査対象101を構成しているコンクリート内部の欠陥部に到達すると、欠陥部の深さに応じた反射エネルギー(振動)が返ってくるので、それを磁歪素子を用いたセンサ部103にて読み取る。読み取ったエネルギーを解析部104にてデータ変換し、欠陥有無、および、欠陥までの深さを解析する。データ生成部105では、解析部104で得られた解析データと位置算出部108での位置データとを計測データとして合成し、通信部106−1へ送信する。通信部106−1は、当該計測データを、診断機器等の他装置200へ通信する。
【0017】
図3に、実施の形態1に係る自走式計測装置100の動作を示すフローチャート図を示す。以下、図3のフローチャート図について説明する。ステップS101のスタートより検査を開始すると、まず、ユーザによりステップS102にて計測初期点、計測ピッチ、計測点数が初期設定される。初期設定が完了すると、自走式計測装置100はステップS103からステップS111の間の処理を計測点数だけ繰り返す。ステップSl04にて自走式計測装置100は自分自身の位置情報を位置情報発信装置(GPS)112から受信する。計測に当たってはセンチメートルレベルでの位置精度が必要なため、ステップSl05にて補正情報発信装置113から高精度の位置補正情報を入手する。その後、ステップSl06にて、ステップS104およびS105で入手した位置情報および補正情報から現在位置を割り出す。ステップSl07では、ステップS106の現在位置およびS102の初期設定値および計測完了点から次に計測すべき位置を算出し、移動量を計算する。ステップS108では、ステップSl07での移動量計算を元に移動を行い、ステップSl09にて前述の計測方法のように、打撃部102を検査対象101に接触させ、打撃部102により一定の力で計測点を打撃し、得られた反射エネルギー(振動)からデータ解析を行う。計測によって得られたデータは、ステップS110にて、診断装置等の外部の他装置200へ伝送される。
【0018】
以上のように、本実施の形態1によれば、以下のような効果が得られる。従来は計測前に検査手法の一つである人手による打音検査を行って、計測すべきポイント全てに予めペンキやチョーク等により目印をつける事前作業が必要であったが、本実施の形態1によれば、ユーザは計測のための簡単なデータを初期設定するだけで、計測点の正確な位置決めを行って計測点の検査を行うことが自動的にできるので、従来の事前作業が不要となり、作業効率化が図れ、また、計測中もユーザ(計測員)自身が計測地点の移動、位置決め、計測を行うことが必要なくなるなど、作業員の負荷軽減、および、コスト軽減が図れる。また、通信部106−1を有して他装置に計測データを通信することができるので、他装置との連携作業が可能であり、同一箇所を重複して検査してしまう等の無駄な作業の発生を防止することができ、さらに、各装置が作業範囲分担を行うことが可能となるので、効率的な計測ができる。さらに、位置情報発信装置(GPS)からの位置情報ではセンチメートルレベルでの高精度な位置決めが難しいので、補正情報発信装置113から高精度の位置補正情報を入手して補正するようにしたので、高精度な位置決めが可能である。そのため、測定位置不正確による作業やりなおし等が無くなり、作業効率が向上する。また、解析部104で得られた解析データと位置算出部108での位置データとを計測データとしてデータ生成部105で合成するようにしたので、解析データと位置データとの対応が明確になり、対比が明瞭になるという効果が得られる。さらに、初期設定項目、すなわち、作業指示内容も簡単であるため、作業員の負担も少なく、計測作業コストも軽減される。
【0019】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2に係る自走式計測装置100を図に基づいて説明する。図4は、この発明の実施の形態2による自走式計測装置を示す図である。図4に示すように、本実施の形態においては、自走式計測装置は複数台存在し、計測範囲を分担して計測を行っている。自走式計測装置100および201の構成は、上述の図1に示したものと同じであるため、ここでは同一符号により示し、ここではその説明を省略する。なお、図4においては、自走式計測装置201には、図の簡略化のために、データ生成部105と、通信部106−1と、位置算出部108のみが記載されているが、実際には、自走式計測装置100と同じ構成を有しているものとする。図5に、本実施の形態における自走式計測装置100および201の外観図を示す。
【0020】
次に動作について説明する。実施の形態1と同様に、計測初期設定を行い、計測を開始すると、本自走式計測装置100は、測定位置までの移動およびその位置での計測を行い、測定データを生成する。測定データは、近隣の他の自走式計測装置201に伝送され、最終的に、診断装置等の外部の他装置200(図1参照)に伝送される。近くに他の自走式計測装置201がない場合は、自走式計測装置100自身の中に測定データを蓄えておき、いずれかの他の自走式計測装置201が近づいて来て、通信路が確立した時点でデータ伝送する。すなわち、各自走式計測装置は、データ伝送する前に、所定周期で確認のための所定の信号を発信し、それに対して相手から返信信号が送信されてきたら、通信路が確立したと判定して、データ伝送を開始する。このようにして、本実施の形態においては、複数の自走式計測装置同士が自動的に通信相手を探索して相互に通信を行うことにより、ユーザが通信経路や通信手順などを指示することなく、自立的に通信ネットワークを形成し、移動しながら計測を継続する。各計測点の計測について計測完了か未完了かは、自走式計測装置同士が相互にデータをやり取りして確認しているため、1つの自走式計測装置が計測完了した点を別の自走式計測装置が重複して計測することはない。
【0021】
図6に、実施の形態2のフローチャート図を示す。以下、図6のフローチャート図について説明する。ステップS201のスタートより検査を開始すると、まず、ユーザによりステップS202にて計測初期点、計測ピッチ、計測点数を初期設定する。初期設定が完了すると、各自走式計測装置100および201は、ステップS203からステップS213の間の処理を計測点数だけ繰り返す。各自走式計測装置100および201は同じ動作を行うが、以下の説明では、自走式計測装置100の動作を中心に説明する。前記実施の形態1と同様に、ステップS204にて、自走式計測装置100は自分自身の位置情報を位置情報発信装置(GPS)112から受信する。計測に当たってはセンチメートルレベルでの位置精度が必要なため、ステップS205にて補正情報発信装置113から高精度の位置補正情報を入手する。その後、ステップS206にて、ステップS204およびステップS205で入手した位置情報および補正情報から現在位置を割り出す。ステップS207では、通信部106−1により入手した他の自走式計測装置によって計測完了となった計測点がどこであるかをチェックする。ステップS208では、ステップS206で得た現在位置と、ステップS202での初期設定値と、ステップS207での他の自走式計測装置での計測完了ポイントとに基づいて、次の計測すべき位置およびその位置までの移動量(距離)を算出する。ステップS209では、ステップS208で求めた移動量計算を元に移動を行う。ステップS210では前述の計測方法のように、打撃部102を検査対象101に接触させ、打撃部102により一定の力で計測点を打撃し、得られた反射エネルギー(振動)からデータ解析を行う。計測によって得られたデータはステップS211にて他の自走式計測装置201ヘ伝送する。ステップS212では、他の自走式計測装置201から伝送されてきたデータが有るか無いかをチェックし、有れば、ステップS215で、これを診断装置等の外部の他装置200へ伝送する。
【0022】
以上のように、この実施の形態2の発明によれば、上述の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、複数の自走式計測装置100および201が計測範囲を互いに分担し計測していくため、計測作業時間の短縮、および、計測員の負荷軽減が図れる。また、本発明においては、太陽電池を電源部110として用いるとともに、通信部106−1が無線通信を行うように構成しているため、電源ケーブルやデータ伝送用ケーブルなども不要であるから、複数台の自走式計測装置を用いても、作業時にケーブルスペース計画や現場電源確保などが不要であるため、検査が簡便に行えるようになる。
【0023】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3に係る自走式計測装置を図に基づいて説明する。図7に示すように、本実施の形態においては、複数台の自走式計測装置100,201が、診断機器等の外部の他装置200に接続される例について説明する。他装置200内には、図7に示すように、通信部106−2と、データマップ作成部114と、現場画像取込部115と、診断結果作成部116と、データ表示・保存部117とが設けられている。
通信部106−2は、自走式計測装置100および201の通信部106−1から伝送されてくる信号や伝送データを受信する。
データマップ作成部114は、各自走式計測装置100および201の通信部106−1から伝送されてくる伝送データに含まれる位置情報および計測データから、欠陥有無を判定するとともに、計測結果表を作成する。
現場画像取込部115は、計測現場を撮影したデジタルカメラ等の装置を接続して、当該装置から現場画像を取り込む。
診断結果作成部116は、現場画像と計測結果表を組み合わせてデータマップを作成する。具体的には、各計測位置の欠陥の深さをレベル化し、レベル毎に色分けして、計測位置の座標情報に基づいて、現場画像に色分けした結果を貼り付けてデータマップを作成する。
データ表示・保存部117は、診断結果作成部116が作成したデータマップを保存するとともに、ユーザの要求により、それを画面表示する。なお、通信部106−2が受信した伝送データもここで保存するようにしてもよい。
なお、自走式計測装置100,201の構成は、図1に示したものと同じであるが、図7においては、図の簡略化を図るために、通信部106−1のみ図示されている。
【0024】
次に動作について説明する。実施の形態1と同様に、計測初期設定を行い、計測後、各自走式計測装置100,201で計測されたデータは通信部106−1によって診断機器等の他装置200へ伝送される。伝送されたデータは、他装置200の受信部106−2で受信後、データマップ作成部114でデータ内の位置情報・計測値から欠陥有無を判断し、計測結果表を作成する。現場画像取込部115では現場画像を取得したデジタルカメラ等を他装置200ヘケーブル等で接続し、他装置200にてデータ取り込む操作を行うことにより、他装置200内へ取り込む。診断結果作成部116では現場画像取込部115での現場画像と計測結果表を組み合わせてデータマップとし、データ表示・保存部117を介して操作員ヘデータ提示する。
【0025】
図8に実施の形態3のフローチャート図を示す。以下、図8のフローチャート図について説明する。ステップS301のスタートより診断を開始すると、他装置200ではステップS302からステップS307の間の処理を計測点数だけ繰り返す。ステップS303にて各自走式計測装置100および201から計測データを受信後、ステップS304にてデータマップ作成部114により計測値から欠陥有無を診断する。ステップS304で.得られたデータをステップS305にて位置情報と組み合わせ、測定結果表を作成する。この測定結果表は位置情報(計測開始点からのx方向距離、y方向距離)、欠陥有無(深さzcm部分に欠陥有り)とで構成される。この測定結果表をステップS306にて現場画像と合成する。現場画像はデジタルカメラ等から取り込み後、画像に位置情報を付加しておき、この位置情報をキーに測定結果表をマッピングしデータマップとする。データマップは計測結果の理解を助けるために作成するもので、各計測地点の欠陥位置の深さをレベル化しレベル毎に色分けしたものを計測地点の座標情報を用いて現場画像に重ね合わせて表示したものである。図9に実施の形態3によるデータマップの一例を示す。図9に示すように、欠陥の深さに基づき、例えば、重度なものは赤、中度は黄色、軽度は緑というように、色分けして欠陥箇所が現場画像内に表示されている。
【0026】
以上のように、この実施の形態3の発明によれば、上記実施の形態1および2と同様の効果が得られるとともに、さらに、従来はデータマップは計測終了後に計測員が別途作成する必要があったものが自動生成され、計測員が行う必要がなくなるため、計測員の負荷軽減、工数の削減が図れる。また、計測位置を正確に位置決めできるため、現場画像と計測位置との対応付けの精度が高いので、現場画像に自動的に測定結果を貼り付け、レベルに応じた色で色分けして表示するようにしたので、ユーザは欠陥の有る位置を一目で知ることができ、作業の効率化の向上および利便性の向上を図ることができる。
【0027】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4に係る自走式計測装置について図に基づいて説明する。図10において、自走式計測装置100,201および診断機器等の他装置200の構成は、上記の実施の形態3と同様であるため、ここでは、その説明は省略する。なお、図10において、自走式計測装置201は、自走式計測装置100と同様の構成を有しているが、図の簡略化のために、通信部106−1のみを図示している。
【0028】
次に動作について説明する。上記の実施の形態1および2と同様にして自走式計測装置にて計測されたデータは、実施の形態3の診断機器などの他装置200に伝送された後、計測位置および計測結果によって、欠陥か否かを自動的に診断し、測定結果表ヘマッピングする。実施の形態3との動作の違いは、実施の形態3においては、各自走式計測装置から他装置200へデータ伝送を行っていたが、本実施の形態においては、各自走式計測装置100および201が、自装置による計測データを他の自走式計測装置201および100に送信するとともに、他装置200へも当該計測データの伝送を行う点である。また、本実施の形態においては、他装置から計測データを受信した場合には、それも、他装置200に伝送する。
【0029】
図11に実施の形態4のフローチャート図を示す。以下、図11のフローチャート図について説明する。自走式計測装置ではステップS401のスタートより検査を開始すると、実施の形態1と同様に、計測初期点、計測ピッチ、計測点数を初期設定後、ステップS402からステップ412,および、ステップS423,並びに、ステップS413との間で位置算出、計測、データ伝送を繰り返す。データは、ステップS411で自装置による計測データを伝送し、ステップS423で他装置による計測データを伝送する。これらのデータは、それぞれ、診断機器等の他装置200に伝送され、ステップS417にて他装置200が受信する。受信後はステップS416からステップS420のステップを繰り返し、データマップを自動生成する。動作の詳細については、上記の実施の形態1〜3と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0030】
以上のように、実施の形態4の発明によれば、上記の実施の形態1〜3と同様の効果が得られるとともに、さらに、計測に伴う事前準備、計測作業、診断、検査資料作成といった検査の一連の業務を自動化するのでコスト削減が図れる。
【0031】
なお、上記の説明においては、他装置200から自走式計測装置100,201にデータを伝送することについては説明していないが、必要に応じて、そのようにしてもよい。例えば、他装置200が、1つの自走式計測装置から計測データを受信した場合に、それを、他の自走式計測装置に伝送するようにすれば、万一、通信の不具合あるいは通信漏れ等により伝送データが欠落して他装置が計測した箇所を再度計測してしまうといったトラブルが発生しにくくなり、さらに、効率化が図れる。
【0032】
なお、上記の実施の形態1〜4においては、道路・橋梁等のコンクリート床版内部の欠陥を検知・計測する用途の場合を例に挙げて説明したが、その場合に限らず、ビル等のコンクリート建造物の壁面検査や、地盤や地殻の検査等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施の形態1に係る自走式計測装置の構成を示したブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る自走式計測装置の外観を示した斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る自走式計測装置の動作を示したフローチャート図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る自走式計測装置の構成を示したブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る自走式計測装置の外観を示した斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る自走式計測装置の動作を示したフローチャート図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る自走式計測装置の構成を示したブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る自走式計測装置の動作を示したフローチャート図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る自走式計測装置におけるデータマップの一例を表す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る自走式計測装置の構成を示したブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る自走式計測装置の動作を示したフローチャート図である。
【符号の説明】
【0034】
100 自走式計測装置、101 検査対象、102 打撃部、103 センサ部、104 解析部、105 データ生成部、106−1,106−2 通信部、107 位置情報受信部、108 位置算出部、109 位置補正情報受信部、110 電源部、111 移動部、112 位置情報発信装畳(GPS)、113 補正情報発信装置、114 データマップ作成部、115 現場画像取込部、116 診断結果作成部、117 データ表示・保存部、200 他装置、201 自走式計測装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部との通信により自装置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報を補正する位置情報補正手段と、
補正された前記位置情報に基づいて、予め設定された所定の計測地点まで自装置を移動させる移動手段と、
前記所定の計測地点で検査対象の内部状態を検出して検出データを出力するセンサ手段と、
自装置の駆動電力の発電を行う電源手段と
を備えたことを特徴とする自走式計測装置。
【請求項2】
前記センサ手段により得られる前記検出データと、前記位置情報補正手段により得られる補正された前記位置情報とを、計測データとして合成するデータ生成手段と、
前記計測データを他装置に対して送信する通信手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の自走式計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自走式計測装置から前記計測データを受信する受信手段と、
前記計測地点の現場画像が入力される現場画像取得手段と、
前記計測データを前記現場画像に貼り付けた診断結果を作成する診断結果作成手段と、
前記診断結果を保存する診断結果保存手段と、
前記診断結果を表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする診断装置。
【請求項4】
検査対象の検査を行う自走式計測装置と、前記自走式計測装置による検査結果の診断を行う診断装置とから構成される自動診断システムであって、
前記自走式計測装置は、
外部との通信により自装置の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報を補正する位置情報補正手段と、
補正された前記位置情報に基づいて、予め設定された所定の計測地点まで自装置を移動させる移動手段と、
前記所定の計測地点で前記検査対象の内部状態を検出して検出データを出力するセンサ手段と、
自装置の駆動電力の発電を行う電源手段と
前記センサ手段により得られる前記検出データと、前記位置情報補正手段により得られる補正された前記位置情報とを、計測データとして合成するデータ生成手段と、
前記計測データを前記診断装置に対して送信する通信手段と
を有し、
前記診断装置は、
前記自走式計測装置の前記通信手段から送信されてくる前記計測データを受信する受信手段と、
前記計測地点の現場画像が入力される現場画像取得手段と、
前記計測データを前記現場画像に貼り付けた診断結果を作成する診断結果作成手段と、
前記診断結果を蓄積する診断結果蓄積手段と、
前記診断結果を表示する表示手段と
を有している
ことを特徴とする自動診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−18164(P2007−18164A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197649(P2005−197649)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】