説明

船のエネルギーシステムを運転するための方法およびこの方法に適したエネルギーシステム

プロペラ(7)に連結された軸系(6)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの主機(2)と、船の電気網(4)用の電気エネルギーを発生するための発電機設備(12)と、主機(2)よりも高速で作動し、発電機設備(12)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの補機(5)と、発電機設備(12)から電気網(4)に供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、軸系(6)を駆動するための機械エネルギーに変換することによって、または主機(2)から軸系(6)に引き渡される機械エネルギーの少なくとも一部を、電気網(4)に供給するための電気エネルギーに変換することによって、電気網(4)と軸系(6)の間にエネルギーの流れ(13)を実現するための機構(8)とを含むエネルギーシステム(1)が、極力僅かな設置機械出力において、多種多様な要求に関して最適な運転を可能としなければならない。このため、このエネルギーの流れ(13)の方向および値を制御することによってプロペラ(7)の駆動用および電気網(4)用に必要なエネルギーが提供され、かつ主機(2)と前記少なくとも1つの補機(5)とから成る総システムが設定可能な運転点で運転されることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載した船、特に大型貨物船のエネルギーシステムを運転するための方法および請求項10の前文に記載したこの方法に適したエネルギーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなエネルギーシステムは例えば独国特許出願公開第3531990号明細書により公知である。
【0003】
船内のエネルギーシステムは、船およびその電気負荷を運転するためのエネルギーを発生し変換し伝送するのに役立つ。大型貨物船、例えばコンテナ船用のエネルギーシステムはふつう、軸系、例えばプロペラに連結されたプロペラ軸を駆動するための機械エネルギーを発生するための低速で作動する2サイクルディーゼル機関の態様の主機を含む。このような機関の駆動出力は約10MWで始まり、現在約100MWに達している。
【0004】
付加的にエネルギーシステムは、船の電気網用電気エネルギーを発生するための1つの発電機設備と、発電機設備を駆動するための約2〜4MWの出力で主機よりも高速で作動する有利には中速ないし高速で作動する4サイクルディーゼル機関の態様の複数の補機とを含む。各補機はふつう発電機設備のそれぞれ1つの発電機を駆動する。例えばやはり電気エネルギーを機械エネルギーに変換する補助駆動装置、熱、冷熱および光を発生するための電気機器、航法、通信および船を制御するための電気機器等の電気負荷は、電気網から電気エネルギーを供給される。
【0005】
独国特許出願公開第3531990号明細書により公知の船用エネルギーシステムはさらに電動機/発電機を有し、この電動機/発電機は電気網から出力を取り出して駆動軸に転送し、または主機の過剰な駆動出力を搭載電気系統に引き渡す。こうして電動機/発電機により、発電機設備から電気網に供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、軸系を駆動するための機械エネルギーに変換することによって、または主機から軸系に引き渡される機械エネルギーの少なくとも一部を電気網に供給するための電気エネルギーに変換することによって、電気網と軸系との間に、従って主機から電気網への、もしくは電気網からプロペラへのエネルギーの流れを発生することができる。これにより、ディーゼル機関の態様で船に設置された総出力は一層良好に利用することができる。
【0006】
競争圧力が強まる時代に貨物船の所有者は船の調達費および運転費を極力低く抑えようと努める。その際、調達費の主要部分となるのは船内に設置された機械出力用の費用であり、運転費では燃料費と整備費である。運転費は、設置機械のその都度の運転点に依存した一連の運転パラメータによって決まる。主要な運転パラメータは燃料消費量である。燃料消費量を下げることによって同じ燃料量において航行距離は増大させることができ、または一定した航行距離において所要の燃料量は、従ってタンク用スペース需要および重量も、減らすことができる。機械の作動時間を最適化することによって整備費は節約することができる。さらに、船の運転時例えば港湾領域内では排気エミッション規則を守らねばならず、または発生する騒音を極力低くしなければならない。こうしてエネルギーシステムは多種多様な要請を受けており、多種多様な境界条件のもとで柔軟に反応しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのことを前提に本発明の課題は、極力僅かな設置機械出力においてエネルギーシステムの運転を多種多様な要求に関して柔軟に最適化することができる冒頭に指摘したエネルギーシステムの運転方法を明示することである。さらに、この方法を実施するのに適したエネルギーシステムが明示されねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決は請求項1に係る方法によってなされる。この方法の有利な諸構成はそれぞれ請求項2ないし9の対象である。この方法を実施するのに適したエネルギーシステムは請求項10の対象である。このエネルギーシステムの有利な諸構成はそれぞれ請求項11ないし14の対象である。
【0009】
本発明に係る方法では、一方で電気網と軸系との間のエネルギーの流れの方向および値を制御することによって、プロペラの駆動用および電気網用に必要なエネルギーが提供され、しかし他方で主機と前記少なくとも1つの補機とから成る総システムが設定可能な運転点で運転される。
【0010】
その際本発明は、大抵の運転事例において主機の出力または前記少なくとも1つの補機の出力のいずれかが一部利用されるだけであるとの認識から出発する。電気網から軸系へのエネルギーの流れによって、補機の側に存在する予備出力はプロペラを駆動するのに利用することができ、こうして補機が付加的に負荷され、主機は負担軽減される。その逆に軸系から電気網へのエネルギーの流れによって主機は付加的に負荷され、同時に補機が負担軽減される。
【0011】
エネルギーの流れの方向および値を制御することによって予備出力は柔軟に扱うことができ、エネルギーシステム内で全体として一層良好に利用することができ、それとともに所望する船舶速度用、プロペラ駆動用および電気負荷用に必要なエネルギーを提供することができる。しかし特に、エネルギー発生機において不必要な予備出力は避けることもでき、従って設置機械出力用調達費を減らすことができる。こうして、主機は1つまたは2つ少ないシリンダで実施することが可能であり、そのことから主機用費用とそのスペース需要が低下する。
【0012】
しかし個々のエネルギー発生機のエネルギーの流れと結び付いた付加的負荷または負担軽減は運転点の変化、従ってその運転パラメータの変化、例えば燃料消費量、エミッションまたは作動時間の変化と結び付いている。それとともに、エネルギーの流れの方向および値を制御することによってこれらの運転パラメータは適切に変更することができ、これにより総システム用の設定可能な運転点は調整することができる。
【0013】
設定可能な運転点は単数または複数の運転パラメータによって特徴付けることができる。好ましくは、運転パラメータは、主機と少なくとも1つの補機とから成る総システムの補機の燃料需要、排気エミッションおよび/または作動時間を含む。その場合、主機と少なくとも1つの補機とから成る総システム用もしくは総システム内の前記少なくとも1つの補機の燃料需要または排気エミッションまたは作動時間は設定可能な運転点で最少である。
【0014】
好ましくは、複数の運転パラメータにそれぞれ異なる優先度が割り当てられており、設定可能な運転点で運転パラメータはそれらの優先度の順序で最適化されている。例えば、第1優先度は総システムの極力低い排気エミッションに妥当し、第2優先度は総システムの極力低い燃料消費量に妥当し、第3優先度は総システム内の補機の極力少ない作動時間に妥当する。
【0015】
電気網と軸系との間にエネルギーの流れを実現するための機構は、好ましくは、軸系と機械的に連結されかつインバータを介して船舶電源と電気的に結合された電動機/発電機ユニットを含む。その際、電動機/発電機ユニットとは、電動機としても発電機としても運転することのできる電気機械のことである。その際、インバータは電動機/発電機ユニットからのもしくはそこへのエネルギーの流れの方向および値を制御するのに役立ち、電動機/発電機ユニットはこの電気エネルギーを機械エネルギーもしくはその逆に変換するのに役立つ。
【0016】
本発明に係るエネルギーシステムは、
プロペラに連結された軸系を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの主機と、
船の電気網用の電気エネルギーを発生するための発電機設備と、
主機よりも高速で作動し、発電機設備を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの補機と、
発電機設備から電気網に供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、軸系を駆動するための機械エネルギーに変換することによって、または主機から軸系に引き渡される機械エネルギーの少なくとも一部を、電気網に供給するための電気エネルギーに変換することによって、電気網と軸系の間にエネルギーの流れを実現するための機構と、
プロペラの駆動用および電気網への供給用に必要なエネルギーが提供可能であり、かつ主機と前記少なくとも1つの補機とから成る総システムが設定可能な運転点で運転可能であるように、電気網と軸系との間にエネルギーの流れを実現するための機構によってエネルギーの流れの方向および値を制御するための制御機構とを含む。
【0017】
本発明と、従属請求項の特徴による本発明のその他の有利な諸構成が、以下で図の実施例に基づいて詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1が著しく簡略して示す本発明に係るエネルギーシステム1は、主機としての低速で作動する1つの2サイクルディーゼル機関2と、電気エネルギーを電気網4に供給する複数の発電機3を含む1つの発電機設備12と、中速ないし高速で作動する4サイクルディーゼル機関5として実施される4つの補機とを含み、各補機は発電機設備12の各1つの発電機3を駆動する。ふつうそれぞれ1つの発電機3と1つのディーゼル機関5が1つのディーゼル発電機組立体14もしくは14’を形成する。その際、ディーゼル発電機組立体14’はディーゼル発電機組立体の1つ14が故障時の予備として設けられている。ディーゼル機関2はプロペラ軸6を介して、船を駆動するためのプロペラ7を駆動し、ふつう10MW超の定格出力を有する。貨物船用個別機関の場合、出力範囲は約100MWで終了する。ディーゼル機関5はふつう5MW以下の出力を有する。
【0019】
ユニットとして形成される軸電動機/発電機8はプロペラ軸6と機械的に連結され、インバータ9、場合によっては変圧器10とスイッチ11とを介して電気網4と電気的に結合されている。軸電動機/発電機8は、好ましくは低速で作動する同期機として形成されており、有利には伝動装置を介装することなくプロペラ軸6に直接作用する。しかし軸電動機/発電機8は伝動装置を介してプロペラ軸6に連結しておくこともでき、または主機のクランク軸と、しかもプロペラ軸から遠く離れた末端で、連結しておくことができる。同期機の場合、インバータ9を介して軸電動機/発電機8に電界エネルギーが供給され、またやはり電気網4に結合された詳しくは図示しない第2インバータを介して励起エネルギーが供給される。インバータ9は軸電動機/発電機8および電気網の種類に応じて例えば電流中間回路インバータまたは電圧中間回路インバータとして形成しておくことができる。この点について当業者には多種多様なインバータ技術が公知である。軸電動機/発電機8およびインバータ9を頼りに電気網4とプロペラ軸6との間にエネルギーの流れ13が実現可能である。好ましくは、軸電動機/発電機8の定格出力はディーゼル機関2の定格出力の少なくとも5%である。
【0020】
電気網4からスイッチ11’を介して、例えばやはり電気エネルギーを機械エネルギーに変換する補助駆動装置、熱、冷熱および光を発生するための電気機器、航法、通信および船を制御するための電気機器等の電気負荷に電気エネルギーが供給される。
【0021】
コンテナ船の場合ディーゼル発電機組立体14はふつう、電気網4によって最大必要とされる出力に合せて設計されている。実際の出力需要Pが時間tとの関係で図2に概略示してある。大抵の船舶航行時間の間、基本荷重PBが例えば船の照明装置、航法システム、通信システムおよび制御システム用に必要とされるにすぎない。付加的に港湾領域ではスラスター用の付加的出力PTが必要とされる。船の積み込み後の第1時間では冷凍コンテナの冷却用に付加的冷却出力PRが必要とされる。従って、ディーゼル発電機組立体13は最大出力Pmax=PG+PR+PTに合せて設計されている。しかしこの最大電気出力は港湾領域の外側では、従って船の大抵の運転時間の間はまったく必要とされない。それゆえに、必要のない予備出力はプロペラ軸6の駆動に利用することができ、船の一定した最大駆動出力においてディーゼル機関2は一層低い出力で設計することができ、またはディーゼル機関2の一定した駆動出力において船の総駆動出力、従ってその航行速度は高めることができる。軸電動機/発電機8はこのため電動機運転で運転され、このためインバータ9を介して網4から電気エネルギーを供給される。こうしてエネルギーの流れ13は電気網4からプロペラ軸6へと向かう。
【0022】
その逆に、軸電動機/発電機8を頼りにディーゼル機関2の予備出力は網4に電気エネルギーを付加的に供給するのに利用することもできる。軸電動機/発電機8を発電機運転で運転する場合、ディーゼル機関2からプロペラ軸6に引き渡される機械エネルギーの一部は電気エネルギーに変換され、インバータ9を介して網4に供給される。その場合、エネルギーの流れ13はプロペラ軸6から電気網4へと向かう。
【0023】
エネルギーシステム1はさらに、エネルギーシステム1の運転を最適化するための運転最適化機構15を含む。運転最適化機構15がエネルギーの流れ13の方向および値を制御して、プロペラの駆動用に必要とされる駆動出力でプロペラ軸6が駆動され、所要の電気エネルギーが電気網4に供給され、他方で低速で作動するディーゼル機関2と高速で作動するディーゼル機関5とから成るエネルギー発生機の総システムが設定可能な運転点で運転されるようにする。
【0024】
船の運転時(図3参照)、第1ステップ20において運転最適化機構15に船員は最適化すべき運転パラメータを問い合わせる。これは例えば出力ユニット16、例えばディスプレイに表示された選択メニューを頼りに行うことができる。船員は引き続き入力ユニット17、例えばキーボードを介して、表示された単数または複数の運転パラメータを選択し、選択した運転パラメータに優先度を割り当てることができる。選択的に、最適化すべき運転パラメータは運転最適化機構15内に既に固定式に記憶させておくこともできる。
【0025】
引き続き運転最適化機構はステップ21においてプロペラ7の駆動用および電気網4用の実際のエネルギー需要を検出する。このために必要なデータは例えば船の主制御装置、機関テレグラフ、船舶電源制御装置等から得ることができる。
【0026】
引き続きステップ22において低速で作動するディーゼル機関2および高速で作動するディーゼル機関5の実際の運転点が、最適化すべき運転パラメータに関して求められ、またそこから、低速で作動するディーゼル機関2と高速で作動するディーゼル機関5とから成る総システムの実際の運転点が、最適化すべき運転パラメータに関して求められる。運転点もしくは最適化すべき運転パラメータの判定は、ディーゼル機関2、5の運転パラメータ、例えばその燃料消費量を測定することによって直接行われるか、または別の測定した運転パラメータからこの運転パラメータを導き出すことによって間接的に行われるかのいずれかである。
【0027】
それを受けてステップ23では運転最適化機構によって総システム用の実際のエネルギー需要をカバーするための最適運転点が求められ、同時に総システム用運転パラメータがそれらの優先度の順序で最適化される。このため運転最適化機構15内にディーゼル機関2、5のそれぞれについて、ディーゼル機関のエネルギー出力と各運転パラメータ、例えば各燃料消費量、エミッションまたは作動時間との関係を示すデータが記憶されている。
【0028】
図4はこのため例示的に燃料消費量Cと出力Pとの関係を2サイクルディーゼル機関2について示し、図5は4サイクルディーゼル機関5について示す。図6は2サイクルディーゼル機関2の排気エミッションEと出力Pとの関係を示す。
【0029】
最適化すべき運転パラメータに関して総システムの最適運転点と実際の運転点との間に偏差がある場合、偏差はステップ24において出力ユニット16で船員に表示することができ、こうして船員は例えば行動勧告を出力することによって、電気網4からプロペラ軸6またはその逆へのエネルギーの流れの最適な方向および値が調整され、こうして総システムの運転点が最適運転点に近づくよう促すことができる。偏差に関する特定限界値を上まわると、運転最適化機構15からスピーカ18を介して音響警報信号を発することもできる。
【0030】
選択的に、運転最適化機構はステップ24において自動的に、またプロペラ軸6と電気網4との間のエネルギーの流れ13を相応に制御することによって自動化されて、総システムの運転点を所望の最適運転点に近づけることもできる。運転最適化機構15はこのため制御線路19を介して一方でインバータ9と結合され、他方でエネルギー発生機、すなわちディーゼル機関2、5の詳しくは図示しない制御機構と結合され、これによりディーゼル機関2およびディーゼル機関5の出力、従って運転点、インバータ9内の電気の流れ、従って軸電動機/発電機8を介してのエネルギーの流れを制御し、最適化すべき運転パラメータがそれらの優先度の順序で最適化されるようにする。
【0031】
運転最適化機構15によっていまや、図3にステップ24からステップ21へのリターンで示唆したように、実際のエネルギー需要が持続的に求められ、エネルギー需要の変化時に最適運転点が求められ、引き続き実際の運転点の偏差が船員に表示され、またはエネルギーの流れ13の相応する制御によって総システム用最適運転点が自動的に調整される。運転最適化機構15内の自己学習構造を頼りになお他の最適化を行うことができる。
【0032】
船内に設置された出力の利用および最適運転点の調整における柔軟性は、主機2の廃熱から電気エネルギーを発生するための廃熱回収システムの少なくとも1つの発電機を発電機設備が付加的に含むことによってなお改善することができる。
【0033】
この点について図7は図1に示すエネルギーシステム1を示しており、このエネルギーシステムは、ディーゼル機関2の詳しくは図示しない廃熱回収システムのタービン31、32によって駆動される1つの発電機33を付加的に有し、発生されたその電気エネルギーは電気網4に供給可能、また電気網4、インバータ9および軸電動機/発電機8を介して機械エネルギーとしてもプロペラ軸6に供給可能である。ところで発電機33の出力を5MW、ディーゼル機関5によって海側で提供される出力を5MW、軸電動機/発電機8の出力を10MWと仮定して、ディーゼル機関2の駆動出力は10MWだけ小さくすることができ、従って例えばディーゼル機関2は11ではなく僅かに9つのシリンダで実施することができる。電気網4とプロペラ軸6との間のエネルギーの流れ13を制御することによって設置出力は最適に利用することができ、さらに総システムは所定の最適運転点で運転することができる。
【0034】
図8に示すエネルギーシステム31は、なお1つの第2軸発電機/電動機38を含み、これが機械的にプロペラ軸6と連結され、またインバータ39を介して電気網4と電気的に結合されていることによって、図7に示すエネルギーシステムと相違している。例えば10MWの高出力の軸電動機/発電機の代わりに、いまや半分の出力、すなわち例えばそれぞれ5MWの2つの軸電動機/発電機8、38を設けることができ、図5に示すエネルギーシステムにおけると同じ諸利点を達成することができる。
【0035】
最適運転点の調整における柔軟性のさらなる高まりは、プロペラが7枚のプロペラ羽根を有し、プロペラ羽根がそのピッチを調整駆動装置によって調整可能であることによって可能である。最適運転点の調整における柔軟性の高まりの他に、一定した総駆動出力において、ディーゼル機関2用に必要な出力はさらになお低減することができ、図7、図8の実施例の場合、ディーゼル機関2は9つの代わりに僅かに8つのシリンダで実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コンテナ船用の本発明に係るエネルギーシステムを示す。
【図2】図1の電気網の出力需要Pと時間との関係を示す線図である。
【図3】設定可能な最適運転点を調整するための方法経過を示す。
【図4】ディーゼル機関の燃料需要および排気エミッションと発生された出力との関係を示す線図の例を示す。
【図5】ディーゼル機関の燃料需要および排気エミッションと発生された出力との関係を示す線図の例を示す。
【図6】ディーゼル機関の燃料需要および排気エミッションと発生された出力との関係を示す線図の例を示す。
【図7】廃熱回収システムの1つの発電機と単一の軸電動機/発電機とを有する図1のエネルギーシステムを示す。
【図8】廃熱回収システムの1つの発電機と2つの軸電動機/発電機とを有する図1のエネルギーシステムを示す。
【符号の説明】
【0037】
1 エネルギーシステム
2 主機
3 補機
4 電気網
5 補機
6 軸系
7 プロペラ
8 機構
9 インバータ
12 発電機設備
13 エネルギーの流れ
15 制御機構
C 燃料需要
E 排気エミッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ(7)に連結された軸系(6)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの主機(2)と、
船の電気網(4)用の電気エネルギーを発生するための発電機設備(12)と、
主機(2)よりも高速で作動し、発電機設備(12)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの補機(5)と、
発電機設備(12)から電気網(4)に供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、軸系(6)を駆動するための機械エネルギーに変換することによって、もしくは主機(2)から軸系(6)に引き渡される機械エネルギーの少なくとも一部を、電気網(4)に供給するための電気エネルギーに変換することによって、電気網(4)と軸系(6)の間にエネルギーの流れ(13)を実現するための機構(8)とを含む船、特に大型貨物船のエネルギーシステム(1)を運転するための方法において、
このエネルギーの流れ(13)の方向および値を制御することによって、プロペラ(7)の駆動用および電気網(4)用に必要なエネルギーが提供され、主機(2)と前記少なくとも1つの補機(5)とから成る総システムが設定可能な運転点で運転される方法。
【請求項2】
設定可能な運転点が単数または複数の運転パラメータ(C、E)によって特徴付けられる請求項1記載の方法。
【請求項3】
運転パラメータが、主機(2)と少なくとも1つの補機(3)とから成る総システムの補機(5)の燃料需要(C)、エミッション(E)および/または作動時間を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
主機(2)と少なくとも1つの補機(5)とから成る総システム用もしくは総システム内の前記少なくとも1つの補機の燃料需要(C)または排気エミッション(E)または作動時間が、設定可能な運転点で最少である請求項1記載の方法。
【請求項5】
複数の運転パラメータ(C、E)にそれぞれ異なる優先度が割り当てられており、設定可能な運転点で運転パラメータがそれらの優先度の順序で最適化されている請求項2記載の方法。
【請求項6】
電気網(4)と軸系(6)との間にエネルギーの流れ(13)を実現するための機構が、軸系(6)と機械的に連結されかつインバータ(9)を介して電気網(4)と電気的に結合された電動機/発電機ユニット(8)を含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
運転中、設定可能な運転点に対する実際の運転点の偏差が求められる請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
実際の運転点を設定可能な運転点に近づけるための措置を開始するために船員に偏差が表示される請求項7記載の方法。
【請求項9】
偏差のとき、電気網(4)と軸系(6)との間のエネルギーの流れ(13)の方向および値を制御することによって実際の運転点が設定可能な運転点に自動的に近づけられる請求項7記載の方法。
【請求項10】
特に請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法を実施するための船用エネルギーシステム(1)であって、
プロペラ(7)に連結された軸系(6)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの主機(2)と、
船の電気網(4)用の電気エネルギーを発生するための発電機設備(12)と、
主機(2)よりも高速で作動し、発電機設備(12)を駆動するための機械エネルギーを発生するための少なくとも1つの補機(5)と、
発電機設備(12)から電気網(4)に供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、軸系(6)を駆動するための機械エネルギーに変換することによって、または主機(2)から軸系(6)に引き渡される機械エネルギーの少なくとも一部を、電気網(4)に供給するための電気エネルギーに変換することによって、電気網(4)と軸系(6)の間にエネルギーの流れ(13)を実現するための機構(8)とを含むものにおいて、
プロペラ(7)の駆動用および電気網(4)への供給用に必要なエネルギーが提供可能であり、かつ主機(2)と前記少なくとも1つの補機(5)とから成る総システムが設定可能な運転点で運転可能であるように、電気網と軸系との間にエネルギーの流れを実現するための機構(8)によってエネルギーの流れ(13)の方向および値を制御するための制御機構(15)を含むエネルギーシステム。
【請求項11】
電気網(4)と軸系(6)との間にエネルギーの流れ(13)を実現するための機構が、軸系(6)と機械的に連結されかつインバータ(9)を介して電気網(4)と電気的に結合された電動機/発電機ユニット(8)を含む請求項10記載のエネルギーシステム。
【請求項12】
発電機設備(12)が、主機(2)の廃熱から電気エネルギーを発生するための廃熱回収システムの発電機(33)を少なくとも1つ含む請求項11記載のエネルギーシステム。
【請求項13】
電動機/発電機ユニット(8)の定格出力が主機(2)の定格出力の少なくとも5%である請求項12記載のエネルギーシステム。
【請求項14】
プロペラ(7)が、調整駆動装置によってそのピッチを調整可能なプロペラ羽根を有する請求項13記載のエネルギーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−521363(P2009−521363A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547913(P2008−547913)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068336
【国際公開番号】WO2007/073980
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】