説明

船舶推進装置の制御装置、及び船舶

【課題】内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の抑止とメンテナンスの簡易化を実現する。
【解決手段】 船外機のエンジンにおいて、クランクシャフト66の回転角を検知する第一の回転角検知手段80と、排気用カムシャフト64の回転角を検知する第二の回転角検知手段90とを設ける。エンジン側ECU42には、第一の回転角検知手段80の検知した回転角及び第二の回転角検知手段90の検知した回転角に基づいてクランクシャフト66の逆転の有無を判定する逆転判定部421と、逆転判定部421がクランクシャフト66の逆転を検知したときにシフト用歯車機構を強制的にニュートラル状態に移行させるギヤ機構操作部422とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶推進装置、及びこれらを操作するハンドル装置やリモコン装置等を電気的に接続させた船舶推進装置の制御装置、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に設けられ、プロペラ等を回転させることで船体に推進力を付与する船舶推進装置は、クランクシャフトが逆方向に回転してしまうと、吸排気の方向が逆になり、航行時に水中に延出した排気管から逆流した水が「内燃機関」としてのエンジンのシリンダ内に侵入してしまう事態が生ずる。そのため、エンジンの内部への侵入を防止すべく、クランクシャフトの逆転を検知するための船舶用航行状態制御装置が必要になる。
【0003】
従来からこの種の船舶用航行状態制御装置においては、特許文献1、及び特許文献2に記載されたようなものがある。即ち、特許文献1には、ピストンの進退方向の運動を回転方向の運動に変換するクランクを備えたクランクシャフトが設けられた内燃機関(船舶用内燃機関)を有し、内燃機関の駆動によって船体に推進力を付与する船舶推進装置を制御する、船舶推進装置の制御装置において、内燃機関の気筒を判別する気筒判別手段、所定クランク角度ごとに所定個数のクランク角度信号を発生するクランク角度信号発生手段、クランク角度信号発生手段が発生するクランク角度信号をカウントするカウンタ、前記気筒判別手段によって気筒が判別されたとき、カウンタのカウント値が所定個数の倍数であるか否か判断するカウント値倍数判断手段、およびカウント値倍数判断手段によってカウント値が所定個数の倍数ではないと判断されたとき、内燃機関が逆転したと判断して前記内燃機関を停止、より具体的には点火および燃料噴射を停止する機関停止手段を備えた船舶推進装置の制御装置(逆転防止装置)が記載されている。
【0004】
また、引用文献2には、ピストンの進退方向の運動を回転方向の運動に変換するクランクを備えたクランクシャフトと、新気を吸気通路、クランク室、掃気通路を経て燃焼室に供給し、燃焼室より上流部に燃料噴射のためのインジェクタと、燃焼室に点火プラグとを配置し、パルサー信号に基づき運転状態に応じた点火時期で点火するとともに、燃料を噴射する内燃機関(2サイクル燃料噴射式内燃機関)を有し、内燃機関の駆動によって船体に推進力を付与する船舶推進装置を制御する、船舶推進装置の制御装置において、エンジンの逆転検知手段を配置し、逆転が検知された時、点火を停止する一方、燃料噴射は継続するようにした船舶推進装置の制御装置が記載されている。
【0005】
これらにおいては、クランクシャフトの逆転が検知されたとき、エンジンの燃焼を停止させることでエンジンの内部への水の侵入の防止を図っている。
【特許文献1】特開2003−120397号公報
【特許文献2】特開平9−79125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記引用文献1及び2に記載の発明においては、例えば船舶のギヤがフォワードからリバースに切り替わったとき(あるいはリバースからフォワードに切り替わったとき)にプロペラからの反力が急に大きくなり、この反力がクランクシャフトの回転トルクよりも大きくなってクランクシャフトが逆回転する場合がある。このような場合、エンジンの燃焼が停止した後もプロペラが慣性力によりリバース方向(あるいはフォワード方向)に回転を続け、この慣性力がエンジンに伝達されることになる。このため、引用文献1及び2に記載の発明においては、この慣性力によるエンジンの駆動によってエンジンの内部に水が侵入してしまう事態が生ずるという問題がある。
【0007】
一方、引用文献1及び2に記載の発明においては、クランクシャフトの逆転を検知するための複雑な機構や多くのセンサ類が必要であり、そのため内燃機関の製造コストが高くなり、メンテナンスに要する労力が過大になるという問題がある。更に、上述したようなエンジンの内部に水が浸入する事態を防止するための特別の動作を行わせる場合には、かかる動作を行わせるための特別の機構が必要となり、内燃機関の製造やメンテナンスに要する労力が過大になるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の抑止とメンテナンスの簡易化を実現できる船舶推進装置の制御装置、及び船舶を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ピストンの進退方向の運動を回転方向の運動に変換するクランクシャフトが設けられた内燃機関を有し、該内燃機関の駆動によって船体に推進力を付与する船舶推進装置を制御する、船舶推進装置の制御装置において、前記内燃機関の駆動時における前記クランクシャフトの逆転を検知する逆転検知手段と、該逆転検知手段において前記クランクシャフトの逆転が検知された際に、前記船舶推進装置に設けられたギヤ機構を強制的にニュートラル状態に移行させるギヤ機構操作手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記逆転検知手段は、前記クランクシャフトの回転角を検知する第一の回転角検知手段と、前記内燃機関に設けられて前記クランクシャフトに連動して駆動されるカムシャフトの回転角を検知する第二の回転角検知手段と、前記第一の回転角検知手段の検知した回転角及び前記第二の回転角検知手段の検知した回転角に基づいて前記クランクシャフトの逆転の有無を判定する逆転判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記第一の回転角検知手段は、前記クランクシャフトの特定回転角位置に設けられた第一のマーキング部と前記クランクシャフトの周囲の特定位置に設けられて該特定位置における前記第一のマーキング部の通過の如何を検知する第一の通過検知手段とを備え、前記第二の回転角検知手段は、前記カムシャフトの特定回転角位置に設けられた第二のマーキング部と前記カムシャフトの周囲の特定位置に設けられて該特定位置における前記マーキング部の通過の如何を検知する第二の通過検知手段とを備え、前記逆転判定手段は前記カムシャフトが正転しているときと異なるタイミングにおいて前記第一のマーキング部及び前記第二のマーキング部が検知された場合に前記クランクシャフトが逆転したものと判定する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記第一のマーキング部又は前記第二のマーキング部のうち少なくとも何れか一方は、前記クランクシャフト又は前記カムシャフトの周囲の特定回転角位置に突設された突起部、又は所定間隔で突設された複数の前記突起部を特定回転角位置において欠落させた欠落部であり、前記第一の通過検知手段又は前記第二の通過検知手段のうち少なくとも一方は、前記突起部の突設位置に近接して設けられた磁気センサであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記逆転検知手段において前記クランクシャフトの逆転が検知された際に、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給するインジェクタの駆動、及び、前記燃焼室において前記インジェクタから噴射される燃料に点火するイグニッションコイルの駆動を停止させる駆動停止手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記内燃機関の回転数が所定以上のときに前記ギヤ機構操作手段における処理を回避させる処理回避手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、船舶であって、請求項1乃至6の何れか一つに記載の船舶推進装置の制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関の駆動時におけるクランクシャフトの逆転を検知する逆転検知手段と、逆転検知手段においてクランクシャフトの逆転が検知された際に、船舶推進装置に設けられたギヤ機構を強制的にニュートラル状態に移行させるギヤ機構操作手段とを備えたことにより、内燃機関の駆動時にクランクシャフトの逆転が発生した場合にこの逆転を検知して、ギヤ機構をクランクシャフトの逆転が発生しないニュートラル状態に移行させることができる。また、ギヤ機構操作手段は、内燃機関の通常動作時にギヤ機構がとり得る状態のひとつであるニュートラル状態に移行させるものであるため、ギヤ機構等に特別な動作を行わせる必要がなく、特段複雑な構成にする必要がない。従って、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の抑止とメンテナンスの簡易化を実現できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、逆転検知手段において、クランクシャフトの回転角を検知する第一の回転角検知手段と、内燃機関に設けられてクランクシャフトに連動して駆動されるカムシャフトの回転角を検知する第二の回転角検知手段とを検知手段としたことにより、少ない個数の検知手段によって構成することができる。また、第一の回転角検知手段の検知した回転角及び第二の回転角検知手段の検知した回転角に基づいてクランクシャフトの逆転の有無を判定する逆転判定手段を備えたことにより、クランクシャフトの回転角とカムシャフトの回転角の相対的な関係に基づいてクランクシャフトの逆転を確実に検知できる。これにより、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を一層確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の一層の抑止とメンテナンスの一層の簡易化を実現できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、第一の回転角検知手段は、クランクシャフトの特定回転角位置に設けられた第一のマーキング部とクランクシャフトの周囲の特定位置に設けられて特定位置における第一のマーキング部の通過の如何を検知する第一の通過検知手段とを備え、第二の回転角検知手段は、カムシャフトの特定回転角位置に設けられた第二のマーキング部とカムシャフトの周囲の特定位置に設けられて特定位置におけるマーキング部の通過の如何を検知する第二の通過検知手段とを備え、逆転判定手段はカムシャフトが正転しているときと異なるタイミングにおいて第一のマーキング部及び第二のマーキング部が検知された場合にクランクシャフトが逆転したものと判定することにより、クランクシャフト及びカムシャフトに設けられた特定回転角位置の位置関係及び特定回転角位置の通過状態によってクランクシャフトの逆転の如何を検知できる。また、クランクシャフト及びカムシャフトの特定回転角位置はこの特定回転角位置に設けたマーキング部によって検知できるので、特定回転角位置を検知するための構成を簡易な構成として形成できる。これにより、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を一層確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の一層の抑止とメンテナンスの一層の簡易化を実現できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第一のマーキング部又は第二のマーキング部のうち少なくとも何れか一方は、クランクシャフト又はカムシャフトの周囲の特定回転角位置に突設された突起部、又は所定間隔で突設された複数の突起部を特定回転角位置において欠落させた欠落部であることにより、特定回転角を示すマーキング部を簡易な構成として形成できる。また、第一の通過検知手段又は第二の通過検知手段のうち少なくとも一方は、突起部の突設位置に近接して設けられた磁気センサであることにより、通過検知手段を簡易な構成として形成できる。これにより、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を一層確実に防止し、内燃機関の製造コストの高騰の一層の抑止とメンテナンスの一層の簡易化を実現できる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、逆転検知手段においてクランクシャフトの逆転が検知された際に、内燃機関の燃焼室に燃料を供給するインジェクタの駆動、及び、燃焼室においてインジェクタから噴射される燃料に点火するイグニッションコイルの駆動を停止させる駆動停止手段を備えたことにより、クランクシャフトの逆転を助長させる要因である、クランクシャフトの逆転時における燃焼室での燃焼が生じる要因を遮断し、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を一層確実に防止できる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、内燃機関の回転数が所定以上のときにギヤ機構操作手段における処理を回避させる処理回避手段を備えたことにより、通常航行時等、エンジンが低速で回転している時以外の場合に誤検知が起こってギヤ機構が強制的にニュートラル状態に移行させられてしまい、クランクシャフトの逆転が起きていないのにギヤ機構がニュートラル位置に移行し航行トラブルが生じてしまう事態を防止できる。これにより、ギヤの状態の如何に関わらず内燃機関の内部に水が侵入してしまう事態を確実に防止しつつ、航行の安全を図ることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、上記効果を有する船舶用航行状態制御装置が搭載された船舶を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1乃至図9には、この発明の実施の形態を示す。
【0025】
まず構成を説明すると、この実施の形態の船舶は、図1に示すように、船体10の船尾に「船舶推進装置」としての船外機11が取り付けられ、この船外機11は船体10の操船席に配置されたリモコン操作手段13,キースイッチ装置14及びハンドル装置15等により制御されるようになっている。
【0026】
船外機11は、図1に示すように、「内燃機関」としてのエンジン16が上部に配置され、このエンジン16の出力がドライブシャフト17、シフト装置18及びプロペラシャフト20を介してプロペラ19を回転させるように構成されている。
【0027】
この実施の形態におけるエンジン16は、図2に示す通り、可変バルブタイミング機構を有する4サイクルエンジンであるが、シリンダの数や配置はどのようなものであってもよい。なお、以下一のシリンダ及び一のピストンの構成について説明するが、当該エンジン16に設けられたシリンダ及びピストンは全て当該一のシリンダ及び一のピストンと同様の構成をとるものである。
【0028】
エンジン16には、シリンダブロック51の上側にシリンダヘッド52がヘッドボルト53により取り付けられている。そのシリンダブロック51には、シリンダ室54が形成され、このシリンダ室54内にピストン55が上下方向に進退自在に配設されている。このピストン55にはコンロッド55aの一端部が連結されており、このコンロッド55aの他端部は、図2に示す、ピストン55の進退方向の運動を回転方向の運動に変換するクランク(図示せず)を備えたクランクシャフト66に接続されている。クランクシャフト66には、図1に示すドライブシャフト17に動力を伝達する、歯車等の動力伝達機構(図示せず)が設けられている。
【0029】
また、シリンダヘッド52には、吸気ポート56及び排気ポート57が形成され、これら各ポート56,57の、燃焼室58に臨む開口56a,57aが吸気バルブ59及び排気バルブ60により開閉されるようになっている。吸気ポート56には燃焼室58に供給するための燃料を噴射するインジェクタ61が設けられている。燃焼室58には、燃料に点火するイグニッションコイル65(図6参照。図2、図3には図示せず。)が設けられている。
【0030】
これら各バルブ59,60は、コイルスプリング62a,62bにより、開口56a,57aを閉じる方向に付勢され、吸気用カムシャフト63及び排気用カムシャフト64により、開閉駆動されるようになっている。
【0031】
これら吸気用・排気用カムシャフト63,64とクランクシャフト66との端部にそれぞれ吸気用・排気用カムプーリ68,69及びクランクプーリ70が設けられ、これら各プーリ68,69,70及び3つの中間プーリ71,72,73の間にカムベルト75が掛け渡されることにより、このカムベルト75を介してクランクシャフト66の駆動力が吸気用・排気用カムシャフト63,64に伝達されるようになっている。
【0032】
クランクシャフト66、排気用カムシャフト64及びそれらの周辺には、エンジン16の駆動時におけるクランクシャフト66の逆転を検知する逆転検知手段を形成する、第一の回転角検知手段80及び第二の回転角検知手段90が設けられている。
【0033】
クランクシャフト66及びその近傍には第一の回転角検知手段80が設けられている。具体的には、図6にイメージを示す通り、この第一の回転角検知手段80は、クランクシャフト66の周囲の特定位置に突設された複数の「第一のマーキング部」としての突起部81,81,・・・8134と、欠落部82と、これら突起部81,81,・・・8134及び欠落部82に近接して設けられた「第一の通過検知手段」としての磁気センサ83とから成る。突起部81,81,・・・8134はクランクシャフト66の「特定回転角位置」である中心部から10°ごとの位置(つまり0°,10°,20°,・・・,320°,330°の位置)に均等間隔に突設されている。欠落部82は、図6にイメージを示す通り、突起部81,81,・・・8134が全て10°ごとの間隔に全て均等に突設されたとしたら突起部8135,8136が突設される位置(つまり「特定回転角位置」である340°,350°の位置)に、これら突起部8135,8136が欠落した状態に形成されている。
【0034】
また、排気用カムシャフト64及びその近傍には、第二の回転角検知手段90が設けられている。具体的には、図6にイメージを示す通り、この第二の回転角検知手段90は、排気用カムシャフト64の周囲の特定位置に突設された複数の「第二のマーキング部」としての突起部91,91,・・・91と、欠落部92と、これら突起部91,91,・・・91及び欠落部92に近接して設けられた「第二の通過検知手段」としての磁気センサ93とから成る。突起部91,91,・・・91は排気用カムシャフト64の「特定回転角位置」である中心部から30°ごとの位置(つまり0°,30°,60°,・・・150°の位置)に均等間隔に突設されている。欠落部92は、図6にイメージを示す通り、突起部91,91,・・・91が全て30°ごとの間隔に全て均等に突設されたとしたら突起部91,91,・・・9112が突設される位置(つまり180°,210°,240°,270°,300°,330°の位置)において、これら突起部91,91,・・・9112が欠落した状態に形成されている。
【0035】
なお、吸気用カムシャフト63及びその近傍にも、「第二の回転角検知手段」と同様の回転角検知手段が設けられていてもよい。
【0036】
船外機11の下部には、図1に示す通り、ケーシング23内に略水平に配設されたプロペラシャフト20にプロペラ19が取り付けられている。図4、図5に示す通り、このプロペラシャフト20は、前・後推進切換機能を果す「ギヤ機構」としてのシフト用歯車機構24を介して上下方向に設けられたドライブシャフト17に連結されている。このシフト用歯車機構24は、プロペラシャフト20に回転可能に装着された前進用歯車25と後進用歯車26を備えている。これら歯車25,26は、上方から見て右回転駆動されるドライブシャフト17に固定されたピニオン27に噛合して、互いに逆方向に回転される。
【0037】
ここでは、前進用歯車25は船の前進方向(図4で左方向)の後側に配置され、後進用歯車26は前進方向の前側に配置されている。
【0038】
プロペラシャフト20は筒状に形成され、内側が燃焼室58で燃焼した排気ガスの導通路を形成しており、図1に示す通り、先端部が開口して排気口20dを形成している。
【0039】
図4、図5に示す通り、プロペラシャフト20の外面には、前進用歯車25及び後進用歯車26の間においてスリーブ状のドッグクラッチ28がスプライン結合され、このドッグクラッチ28はプロペラシャフト20の軸方向に摺動可能となっている。このドッグクラッチ28には、軸方向の両側に突出する爪28aがそれぞれ形成されている。また、前進用歯車25及び後進用歯車26には、前記爪28aに対向する爪25a,26aがそれぞれ形成され、これら爪25a,26a、28aの噛合によりクラッチが形成されている。
【0040】
また、プロペラシャフト20の前端部側には、軸方向に沿う前端が開口された挿入孔20aが形成され、この挿入孔20aには、シフトスリーブ29が軸方向にスライド自在に挿入されている。プロペラシャフト20の挿入孔20aの側壁には、軸方向に長い長孔20bが形成されている。
【0041】
そして、前記シフトスリーブ29及びドッグクラッチ28には、直径方向に沿う貫通孔29b,28bが形成されており、ピン30がドッグクラッチ28の貫通孔28b、プロペラシャフト20の長孔20b及びシフトスリーブ29の貫通孔29bに挿入されている。
【0042】
前記シフトスリーブ29が移動することにより、ピン30は長孔20bの範囲内で軸方向へ移動され、このピン30を介してプロペラシャフト20軸方向に沿って、ドッグクラッチ28が移動されるようになっている。
【0043】
また、前記シフトスリーブ29には、プロペラシャフト20の凹部20cに係脱するディテントボール31がシフトスリーブ29外周面から出没自在に設けられ、このディテントボール31は、スプリング32及び押圧部材33により突出方向に付勢されている。
【0044】
さらに、前記シフトスリーブ29の前端部29aには、図4に示すように、スライド自在に設けられたシフター34が連結されており、このシフター34には、上下方向に沿う係合溝34aが形成されている。
【0045】
そして、シフト切換装置21のシフトシャフト35の下端において、その回動中心軸に対してクランク状に偏心した個所に設けられた駆動ピン35aが、シフター34の係合溝34aに挿入されている。このシフトシャフト35の回動で駆動ピン35aが偏心して回転することにより、シフター34がスライドして、ドッグクラッチ28はスライドされる。
【0046】
前記シフトシャフト35が一方向に回動させられることでドッグクラッチ28が一方向にスライドされ、又、シフトシャフト35が他方向に回動させられることでドッグクラッチ28が他方向にスライドされる。
【0047】
このシフトシャフト35は、上方向に延長され、図5に示すように、前記シフトシャフト35の上端部35bにレバー36が固定されている。このレバー36の先端部にレバーシフトロッド37の一端部が回動自在に連結され、このレバーシフトロッド37の他端部が、シフトレール38にスライド自在に設けられたスライダー39に回動自在に連結されている。このスライダー39が前記シフトアクチュエータ22によって所定の方向にスライドされることにより、レバーシフトロッド37及びレバー36を介してシフトシャフト35が所定の方向に回動される。
【0048】
シフトアクチュエータ22は、駆動源としてのDCモータであるシフトモータ47や減速機構等を有し、スライダー39を所定の方向に駆動させるように構成されている。
【0049】
シフトアクチュエータ22には、図6に示すように、シフトポジションセンサ40が設けられ、このシフトポジションセンサ40により、シフト位置(前進位置、中立位置、後進位置)が検出されてその検出情報(信号)がエンジン側ECU41(Electronic Control Unit、電子制御装置)に入力されるようになっている。
【0050】
また、図1に示す通り、エンジン側ECU41は、リモコン操作手段13に設けられた電子制御ユニットとしてのリモコン側ECU44、及び、ハンドル装置15に設けられた電子制御ユニットとしてのハンドル側ECU46と信号線としてのハーネス12a,12bによって接続されている。これにより、操船席側におけるリモコンシフトレバー45の操作情報やハンドル48の操作情報をハーネス12a,12bを介したネットワーク通信によってエンジン側ECU41に送信し、エンジン側ECU41に、それらの操作情報に基づいて船外機11の操舵やエンジン16の駆動状態の制御を行わせるようになっている。
【0051】
図6の機能ブロック図に示す通り、エンジン側ECU41はCPU(Central Processing Unit)42、通信トランシーバ回路101、センサインターフェース回路102a、102b、102c、インジェクタドライバ回路103、イグニッションコイルドライバ回路104、シフトアクチュエータドライバ回路105を有する。CPU42は図示せぬROM(Read Only Memory)等に記憶された各種プログラム等の演算処理を行い、エンジン側ECU41における処理全体を制御する。通信トランシーバ回路101はリモコン側ECU44との通信に必要な各種処理を行う。センサインターフェース回路102a、102b、102cは各クランクシャフト66及び各排気用カムシャフト64毎に設けられた磁気センサ83,93、シフトポジションセンサ40から送信された信号をCPU42に供給するために必要な各種処理を行う。インジェクタドライバ回路103、イグニッションコイルドライバ回路104、シフトアクチュエータドライバ回路105は、CPU42における処理結果に基づいて、各クランクシャフト66及び各排気用カムシャフト64毎に設けられたインジェクタ61及びイグニッションコイル65、ならびにシフトアクチュエータ22を駆動させるために必要な各種処理を行う。
【0052】
エンジン側ECU41のCPU42には、記憶装置49に記憶されたプログラムの演算処理の結果等によって、逆転検知手段を形成する機能手段が形成される。具体的には、「逆転判定手段」としての逆転判定部421、「ギヤ機構操作手段」としてのギヤ機構操作部422、「駆動停止手段」としての駆動停止部423、「処理回避手段」としての処理回避部424が機能手段として形成される。逆転判定部421は、磁気センサ83の検知したクランクシャフト66の回転角及び磁気センサ93の検知した排気用カムシャフト64の回転角に基づくクランクシャフト66の逆転の有無の判定、及び、エンジン16の回転数の検知を行う(詳しくは後述する。)。ギヤ機構操作部422はクランクシャフト66の逆転が検知された際に、シフト用歯車機構24を強制的にニュートラル状態に移行させる。駆動停止部423は、クランクシャフト66の逆転が検知された際に、インジェクタ61の駆動、及び、イグニッションコイル65の駆動を停止させる。処理回避部424は、エンジン16の回転数が所定以上のときにはギヤ機構操作部422における処理を回避させる。
【0053】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
【0054】
図7は、この実施の形態に係る制御の基本手順を示すフローチャート図である。同図に示す通り、エンジン16が始動し(ステップS11)、駆動を開始するとクランクシャフト66、吸気用カムシャフト63、及び排気用カムシャフト64が駆動する。これに伴い、磁気センサ83は突起部81,81,・・・8134の通過を検知し、磁気センサ93は突起部91,91,・・・91の通過を検知する。磁気センサ83、93は突起部81,81,・・・8134、突起部91,91,・・・91の通過に伴い検知信号を生成し、この検知信号をエンジン側ECU41のCPU42に送信する。
【0055】
一の磁気センサ83、及び一の磁気センサ93において生成された検知信号は、図9の(b)のタイムチャートに示すようになる。同図に示す通り、磁気センサ83,93の位置を突起部81,81,・・・8134、及び突起部91,91,・・・91が通過したときは磁界が強くなるので、信号には周期的な起伏が形成される。一方、磁気センサ83,93の位置を欠落部82,92が通過したときには、信号に起伏は形成されず、同じ信号強度が持続する。
【0056】
そして、クランクシャフト66が回転を続ければ、磁気センサ83の検知した信号は突起部81,81,・・・8134の通過により周期的な起伏が形成された第一ブロック201と欠落部82の通過により平坦な信号が持続する第二ブロック202とが交互に表れて、クランクシャフト66の回転数と回転角とを検知できる。一方、排気用カムシャフト64が回転を続ければ、磁気センサ93の検知した信号は突起部91,91,・・・91の通過により周期的な起伏が形成された第三ブロック203と欠落部82の通過により平坦な信号が持続する第四ブロック204とが交互に表れ、排気用カムシャフト64の回転数と回転角とを検知できる。
【0057】
そして、クランクシャフト66と排気用カムシャフト64とは連動し同期して回転しているので、正転していれば(即ち正常な回転方向に回転していれば)一〜数個の第一ブロック201と一〜数個の第三ブロック203とは連動して同じタイミングで出現する。図9の(b)のタイムチャートを例にとると、二つの第一ブロック201で形成されたクランクシャフト66の特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングに第三ブロック203の6つの信号隆起が出現している。クランクシャフト66が正転していれば、第三ブロック203の信号隆起はその後も全て特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングにおいて出現することになる。
【0058】
一方、クランクシャフト66の回転が逆転した場合(即ち正常な回転方向と反対方向に回転した場合)には、第三ブロック203の信号隆起の出現タイミングは正転時とは異なるものになるため、クランクシャフト66の特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングにおいて第三ブロック203の信号は正しく出現しない。
【0059】
本実施形態においては、この性質を用いてクランクシャフト66の逆転の有無を判定する。
【0060】
また、第二ブロック202の出現間隔や第四ブロックの204の出現間隔を確認することにより、エンジン16の回転数を検知することも可能になる。逆転判定部421においては、このような検知方法によってエンジン16の回転数の検知も行う。
【0061】
具体的には、逆転判定部421は、エンジン16の回転数の検知を行い、エンジン16の回転数が所定回転、ここでは2,000rpm以下になった場合(ステップS12の“Yes”)、クランクシャフト66の逆転の有無の判定をエンジン16の気筒ごとに判定する。
【0062】
エンジン16の特定の気筒(「第一気筒」とする。)についてクランクシャフト66の逆転の有無の判定を開始した逆転判定部421は、逆転する磁気センサ83,93からそれぞれ出力された信号を取得して、双方の信号を比較し、磁気センサ83から入力された特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングに磁気センサ93から入力された第三ブロック203の信号隆起が出現するか否かを確認する。そして、特定回転角範囲205の信号出現時に第三ブロック203の信号隆起が確認できなかった場合(ステップS13の“No”)には、逆転判定部421は逆転判定のカウントを行う(ステップS14)。一方、磁気センサ83から入力された特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングに磁気センサ93から入力された第三ブロック203の信号隆起が確認できた場合(ステップS13の“Yes”)には、逆転判定のカウントは行わない。
【0063】
なお、当該エンジン16は複数の気筒数を有し、図9の(a)のタイムチャートに示す通り、各気筒の燃焼サイクルは異なっているため、各気筒が同様の構成を有する場合、気筒毎の確認のタイミングは相違することになる。そのため、第一気筒の判定が完了すると、以後、逆転判定部421は、第二気筒、第三気筒、・・・と、磁気センサ83から入力された特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングに磁気センサ93から入力された第三ブロック203の信号隆起が出現するか否かの確認を気筒の本数分であるN回(N>1、8気筒のエンジン16であればN=8)行う。そして、特定回転角範囲205の信号が出現するタイミングに第三ブロック203の信号隆起が確認できなかった場合(ステップS13,S13,・・・S13の“No”)には、逆転判定部421は上記と同様に逆転判定のカウントを行う(ステップS14,S14,・・・S14)。そして、全ての気筒について上記の確認を一巡して行ったときに逆転判定のカウント数が気筒の本数分であるN回になった場合(ステップS15の“Yes”)、逆転判定部421はクランクシャフト66が逆転したものと判定する(ステップS16)。
【0064】
図8は、逆転判定部421においてクランクシャフト66が逆転したものと判定された場合の具体的手順を示すフローチャートである。同図に示す通り、この場合、駆動停止部423がイグニッションコイル65への通電を停止させて燃料への点火を停止させ(ステップS161)、また、インジェクタ61への通電を停止させて燃料の噴射を停止させる(ステップS162)。また、ギヤ機構操作部422はシフト用歯車機構24を強制的にニュートラル状態に移行させる(ステップS163)。即ち、ギヤ機構操作部422はシフトアクチュエータ22を駆動させ、スライダー39をスライドさせてドッグクラッチ28をスライドさせ、シフト用歯車機構24を強制的にニュートラル位置に移行させる。
【0065】
一方、全ての気筒について上記の確認を一巡して行ったときに逆転判定のカウント数が所定回数であるN回にならなかった場合(ステップS15の“No”)、逆転判定部421は逆転判定のカウントを1つインクリメントさせ(ステップS17)、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0066】
そして、ステップS161〜S163の処理が全て終了した場合(ステップS16)、又はエンジン16の回転数が所定回転(2,000rpm)以下になった場合(ステップS12の“No”)、逆転判定部421は処理を終了させる。このとき、処理回避部424はギヤ機構操作部422における処理を回避させて、シフト用歯車機構24がニュートラル位置に移行する事態の発生を防止する(ステップS18)。
【0067】
なお、上記手順において、エンジン16の回転数の判定手順(ステップS12)は特定回転角範囲205の信号出現時に第三ブロック203の信号隆起の確認手順(ステップS13,S13,・・・S13)の前に行ったが、これに代えて、このエンジン16の回転数の判定手順を、逆転判定のカウント数が気筒の本数分であるN回になった場合(ステップS15の“Yes”)の後に行うことも可能である。
【0068】
以上、この実施の形態においては、エンジン16の駆動時におけるクランクシャフト66の逆転を検知する逆転検知手段と、逆転検知手段においてクランクシャフト66の逆転が検知された際に、船外機11に設けられたシフト用歯車機構24を強制的にニュートラル状態に移行させるギヤ機構操作部422とを備えたことにより、エンジン16の駆動時にクランクシャフト66の逆転が発生した場合にこの逆転を検知して、シフト用歯車機構24をクランクシャフト66の逆転が発生しないニュートラル状態に移行させることができる。また、ギヤ機構操作部422は、エンジン16の通常動作時にシフト用歯車機構24がとり得る状態のひとつであるニュートラル状態に移行させるものであるため、シフト用歯車機構24等に特別な動作を行わせる必要がなく、特段複雑な構成にする必要がない。従って、ギヤの状態の如何に関わらず排気口20dからエンジン16の内部に水が侵入してしまう事態を確実に防止し、エンジン16の製造コストの高騰の抑止とメンテナンスの簡易化を実現できる。
【0069】
この実施の形態においては、逆転検知手段において、クランクシャフト66の回転角を検知する第一の回転角検知手段80と、エンジン16に設けられてクランクシャフト66に連動して駆動される排気用カムシャフト64の回転角を検知する第二の回転角検知手段90とを検知手段としたことにより、少ない個数の検知手段によって構成することができる。また、第一の回転角検知手段80の検知した回転角及び第二の回転角検知手段90の検知した回転角に基づいてクランクシャフト66の逆転の有無を判定する逆転判定部421を備えたことにより、クランクシャフト66の回転角と排気用カムシャフト64の回転角の相対的な関係に基づいてクランクシャフト66の逆転を確実に検知できる。
【0070】
この実施の形態においては、第一の回転角検知手段80は、クランクシャフト66の特定回転角位置に設けられた「第一のマーキング部」としての突起部81,81,・・・8134と、クランクシャフト66の周囲の特定位置に設けられて特定位置における突起部81,81,・・・8134の通過の如何を検知する「第一の通過検知手段」としての磁気センサ83とを備え、第二の回転角検知手段90は、排気用カムシャフト64の特定回転角位置に設けられた「第二のマーキング部」としての突起部91,91,・・・91と排気用カムシャフト64の周囲の特定位置に設けられて特定位置におけるマーキング部の通過の如何を検知する「第二の通過検知手段」としての磁気センサ93とを備え、逆転判定部421は排気用カムシャフト64が正転しているときと異なるタイミングにおいて「第一のマーキング部」としての突起部81,81,・・・8134及び「第二のマーキング部」としての突起部91,91,・・・91が検知された場合にクランクシャフト66が逆転したものと判定することにより、クランクシャフト66及び排気用カムシャフト64に設けられた特定回転角位置の位置関係及び特定回転角位置の通過状態によってクランクシャフト66の逆転の如何を検知できる。また、クランクシャフト66及び排気用カムシャフト64の特定回転角位置はこの特定回転角位置に設けたクランクシャフト66の突起部81,81,・・・8134及び排気用カムシャフト64の突起部91,91,・・・91によって検知できるので、特定回転角位置を検知するための構成を簡易な構成として形成できる。
【0071】
この実施の形態においては、「第一のマーキング部」はクランクシャフト66の周囲の特定回転角位置に突設された複数の突起部81,81,・・・8134であり、「第二のマーキング部」は排気用カムシャフト64の周囲の特定回転角位置に突設された突起部91,91,・・・91であることにより、特定回転角位置を示すマーキング部を簡易な構成として形成できる。また、「第一の通過検知手段」及び「第二の通過検知手段」は、突起部81,81,・・・8134、及び突起部91,91,・・・91の突設位置に近接して設けられた磁気センサ83,93であることにより、通過検知手段を簡易な構成として形成できる。
【0072】
この実施の形態においては、クランクシャフト66の逆転が検知された際に、インジェクタ61の駆動、及び、イグニッションコイル65の駆動を停止させる駆動停止部423を備えたことにより、クランクシャフト66の逆転を助長させる要因である、クランクシャフト66の逆転時における燃焼室58での燃焼が生じる要因を遮断できる。
【0073】
この実施の形態においては、エンジン16の回転数が所定以上のときにギヤ機構操作部422における処理を停止させる処理回避部424を備えたことにより、通常航行時等、エンジン16が低速で回転している時以外の場合に誤検知が起こってシフト用歯車機構24が強制的にニュートラル状態に移行させられてしまい、クランクシャフト66の逆転が起きていないのにシフト用歯車機構24がニュートラル位置に移行し航行トラブルが生じてしまう事態を防止できる。
【0074】
なお、上記実施の形態では、「第一のマーキング部」はクランクシャフト66の周囲の特定回転角位置に突設された複数の突起部81,81,・・・8134として形成され、「第二のマーキング部」は排気用カムシャフト64の周囲の特定回転角位置に突設された突起部91,91,・・・91として形成されたものとしたが、「第一のマーキング部」をクランクシャフト66の欠落部82として形成してもよいし、「第二のマーキング部」を排気用カムシャフト64の欠落部92として形成してもよい。
【0075】
上記実施の形態では、処理回避部424は、エンジン16の回転数が所定以上のときにはギヤ機構操作部422における、シフト用歯車機構24を強制的にニュートラル状態に移行させる処理を回避させるものとしたが、これに代えて、処理回避部424が磁気センサ83,93によるセンシング処理自体を中止させる処理を行うものとすることや、処理回避部424が磁気センサ83,93による処理の結果に基づくステップS13〜ステップS16の処理を中止させる処理を行うものとしてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、「船舶推進装置」について船外機11を適用したが、これに限らず、船内外機でも良いことは勿論である。また、上記実施の形態は例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の実施の形態に係る船舶の側面図である。
【図2】同実施の形態に係る船外機のシフト装置を示す要部の断面図である。
【図3】同上船外機のシフトアクチュエータ等を示す要部の平面図である。
【図4】同上船外機に設けられたエンジンにおけるカムシャフト、クランクシャフト等の配置関係を示す図である。
【図5】同上船外機に設けられたエンジンの断面図である。
【図6】同実施の形態に係る船舶推進装置の制御装置の主要部分を示す機能ブロック図である。
【図7】同実施の形態に係る船舶推進装置の制御装置の制御の基本手順を示すフローチャートである。
【図8】同実施の形態に係る船舶推進装置の逆転判定部においてクランクシャフトが逆転したものと判定された場合の具体的手順を示すフローチャートである。
【図9】同実施の形態に係る(a)気筒毎の燃焼サイクルを示すタイムチャート、(b)磁気センサが検知する信号を模式的に示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 船体
11 船外機(船舶推進装置)
24 シフト用歯車機構(ギヤ機構)
55 ピストン
64 排気用カムシャフト(カムシャフト)
66 クランクシャフト
16 エンジン(内燃機関)
80 第一の回転角検知手段
811,812,・・・8134 突起部(第一のマーキング部)
82 欠落部
83 磁気センサ(第一の通過検知手段)
90 第二の回転角検知手段
911,912,・・・916 突起部(第二のマーキング部)
92 欠落部
93 磁気センサ(第二の通過検知手段)
421 逆転判定部(逆転判定手段)
422 ギヤ機構操作部(ギヤ機構操作手段)
423 駆動停止部(駆動停止手段)
424 処理回避部(処理停止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの進退方向の運動を回転方向の運動に変換するクランクシャフトが設けられた内燃機関を有し、該内燃機関の駆動によって船体に推進力を付与する船舶推進装置を制御する、船舶推進装置の制御装置において、
前記内燃機関の駆動時における前記クランクシャフトの逆転を検知する逆転検知手段と、
該逆転検知手段において前記クランクシャフトの逆転が検知された際に、前記船舶推進装置に設けられたギヤ機構を強制的にニュートラル状態に移行させるギヤ機構操作手段とを備えたことを特徴とする船舶推進装置の制御装置。
【請求項2】
前記逆転検知手段は、前記クランクシャフトの回転角を検知する第一の回転角検知手段と、前記内燃機関に設けられて前記クランクシャフトに連動して駆動されるカムシャフトの回転角を検知する第二の回転角検知手段と、前記第一の回転角検知手段の検知した回転角及び前記第二の回転角検知手段の検知した回転角に基づいて前記クランクシャフトの逆転の有無を判定する逆転判定手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の船舶推進装置の制御装置。
【請求項3】
前記第一の回転角検知手段は、前記クランクシャフトの特定回転角位置に設けられた第一のマーキング部と前記クランクシャフトの周囲の特定位置に設けられて該特定位置における前記第一のマーキング部の通過の如何を検知する第一の通過検知手段とを備え、
前記第二の回転角検知手段は、前記カムシャフトの特定回転角位置に設けられた第二のマーキング部と前記カムシャフトの周囲の特定位置に設けられて該特定位置における前記マーキング部の通過の如何を検知する第二の通過検知手段とを備え、
前記逆転判定手段は前記カムシャフトが正転しているときと異なるタイミングにおいて前記第一のマーキング部及び前記第二のマーキング部が検知された場合に前記クランクシャフトが逆転したものと判定することを特徴とする請求項2に記載の船舶推進装置の制御装置。
【請求項4】
前記第一のマーキング部又は前記第二のマーキング部のうち少なくとも何れか一方は、前記クランクシャフト又は前記カムシャフトの周囲の特定回転角位置に突設された突起部、又は所定間隔で突設された複数の前記突起部を特定回転角位置において欠落させた欠落部であり、
前記第一の通過検知手段又は前記第二の通過検知手段のうち少なくとも一方は、前記突起部の突設位置に近接して設けられた磁気センサであることを特徴とする請求項3に記載の船舶推進装置の制御装置。
【請求項5】
前記逆転検知手段において前記クランクシャフトの逆転が検知された際に、前記内燃機関の燃焼室に燃料を供給するインジェクタの駆動、及び、前記燃焼室において前記インジェクタから噴射される燃料に点火するイグニッションコイルの駆動を停止させる駆動停止手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の船舶推進装置の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の回転数が所定以上のときに前記ギヤ機構操作手段における処理を回避させる処理回避手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の船舶推進装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つに記載の船舶推進装置の制御装置を備えたことを特徴とする船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−274970(P2008−274970A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115638(P2007−115638)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】