説明

色域生成装置、色域生成方法、及び色域生成プログラム

【課題】高精度で且つ高速に色変換が可能となる色域を生成する色域生成装置、色域生成方法、及び色域生成プログラムを提供する。
【解決手段】色域生成部18は、分割数設定用情報出力部20から出力される分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成して色変換部14へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色域生成装置、色域生成方法、及び色域生成プログラムに係り、より詳しくは、入力側と出力側のカラー画像信号の色再現可能領域が異なる場合にカラー画像信号に対して色変換処理を行う際の基礎となる色域を生成する色域生成装置、色域生成方法、及び色域生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を出力する機器として、例えばCRTやカラーLCDなどの表示装置や、プリンタなどの印刷機器等がある。これらの出力装置では、それぞれの出力方式の違いなどによって、再現可能な色範囲、すなわち色域が異なっている。このため、例えばCRT上で作成した画像をプリンタで印刷する場合など、異なる出力装置で同じ画像データによる出力を行おうとすると、再現できない色が生じる可能性がある。このような場合、少なくとも再現できない色については最も近いと考えられる色に置き換えて出力し、画像全体としてその出力装置においては最良の画質で再現できるようにしている。このとき、与えられるカラー画像信号を、出力装置の色域内の色に置き換える色の写像(Color Mapping)、すなわち色変換処理が必要となる。
【0003】
このような色変換処理を行うためには、入力された画像信号の色が出力装置の色域内の色か否かを判断する必要があり、出力装置の色域を求めておかなければならない。
【0004】
特許文献1には、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)の成分により表現される色再現域の境界色を決定し、決定した境界色からK(黒)成分を変化させて色の軌跡を取得することにより色再現域を作成する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、補正した一次色を用いて混色を推定し、実測されたパッチの色と推定されたパッチの色との差に基づいて決定された補正係数を用いて各混色を補正し、補正した混色に基づいて色域を予測する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、色材の総量制限に対応した色域を形成するために、色域外郭を構成する頂点や頂点を結ぶ各軸上の点を抽出する場合に、各軸上の点を不均等な割り付けで抽出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−101863号公報
【特許文献2】特開2004−64544号公報
【特許文献3】特開2005−63093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載された発明では、作成された色域の精度と色域外郭を構成するポリゴンのポリゴン数との対応関係に不整合が発生したり、色域のデータ量が増大し、圧縮・写像の速度低下が発生したりする等の問題があった。
【0008】
図7には、デバイスに非依存の色空間であるLab色空間における色域100の一部を複数のポリゴン102に分割した例を示した。この例の場合、主要色Bの最大彩度点と主要色Mの最大彩度点とを結ぶB−M線上に分割ポイント104を2つ設けてB−M線を3つに分割し、B−M線より高明度側の領域、低明度側の領域も共通の分割ポイント104によって複数のポリゴンに分割している。このように、高明度側領域及び低明度側領域を同じように分割した場合、特にプリンタの場合には、図7に示すように低明度側領域の各ポリゴンのサイズが小さくなり、低明度側の色域外郭の形状に不具合が発生したり、ポリゴンの数が増大して色域外郭情報のデータ量が増大したりする等の問題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載された発明では、色域の低明度領域を高精度に作成することができるが、各軸上の点を不均等に割り付けるのが困難である等の問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、高精度で且つ高速に色変換が可能となる色域を生成する色域生成装置、色域生成方法、及び色域生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の色変換装置は、分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定する設定手段と、前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成する生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、デバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、分割領域毎に設定した分割数で外郭面を分割して色域の外郭情報を生成するので、分割領域毎に適切に分割数を設定することができる。従って、色域外郭を高精度に生成することができ、生成した色域の外郭情報を用いて色変換する際に高速に色変換すること等が可能となる。
【0013】
なお、請求項2に記載したように、前記分割数設定用情報は、前記デバイスのデバイス特性情報、前記デバイスのデバイス種別情報、生成した色域の使用目的情報、及び生成した色域を用いて色変換する入力画像の画像特性情報の少なくとも一つを含む構成とすることができる。
【0014】
また、請求項3に記載したように、前記デバイス特性情報は、前記デバイスの色域における予め定めた所定色の彩度及び明度の少なくとも一方に関する情報、前記所定色の中間調特性情報、及び前記色域の体積に関する情報の少なくとも一つを含む情報である構成とすることができる。
【0015】
また、請求項4に記載したように、前記デバイス種別情報は、前記デバイスがモニタ、スキャナ、及びプリンタの何れかであることを示す情報である構成とすることができる。
【0016】
また、請求項5に記載したように、前記使用目的情報は、前記色域を表示させる色域表示処理、色変換用の色変換係数を作成する色変換係数作成処理、及び入力画像信号が色域外であることを警告する色域警告処理の何れかが、前記デバイスの色域の使用目的であることを示す情報である構成とすることができる。
【0017】
また、請求項6に記載したように、前記画像特性情報は、入力画像の種類及び前記入力画像が前記色域内で主に使用する領域に関する情報の少なくとも一方を含む情報である構成とすることができる。
【0018】
また、請求項7に記載したように、前記分割領域は、明度方向及び色相角方向の少なくとも一方で分割される領域である構成とすることができる。
【0019】
また、請求項8に記載したように、前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の高明度側領域については、前記色域における予め定めた所定色の最大彩度点における彩度に基づいて分割数を設定する構成とすることができる。
【0020】
また、請求項9に記載したように、前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の低明度側領域については、前記色域における予め定めた所定色の最大彩度点における明度及び前記色域の最小明度に基づいて分割数を設定する構成とすることができる。
【0021】
また、請求項10に記載したように、前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の高明度側領域の分割数よりも、前記色域の低明度側領域の分割数が少なくなるように分割数を設定するようにしてもよい。
【0022】
また、請求項11に記載したように、前記分割領域が色相角方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、隣接する主要色間の色相角に基づいて分割数を設定する構成とすることができる。
【0023】
また、請求項12に記載したように、前記色域が高明度側領域と低明度側領域とに分割され且つ両領域の境界におけるポリゴンの頂点が一致しない場合、前記設定手段は、前記ポリゴンの頂点が一致するように、さらに前記ポリゴンを分割する構成とすることができる。
【0024】
請求項13記載の発明の色域生成方法は、分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成することを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、デバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、分割領域毎に設定した分割数で外郭面を分割して色域の外郭情報を生成するので、分割領域毎に適切に分割数を設定することができる。従って、色域外郭を高精度に生成することができ、生成した色域の外郭情報を用いて色変換する際に高速に色変換すること等が可能となる。
【0026】
請求項14記載の発明の色域生成プログラムは、分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定するステップと、前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成するステップと、を含む処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、デバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、分割領域毎に設定した分割数で外郭面を分割して色域の外郭情報を生成するので、分割領域毎に適切に分割数を設定することができる。従って、色域外郭を高精度に生成することができ、生成した色域の外郭情報を用いて色変換する際に高速に色変換すること等が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、高精度で且つ高速に色変換が可能となる色域を生成する、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0030】
先ず、はじめに、色変換装置の概略構成を説明する。図1は、本発明に係る色変換装置の概略構成例を示すブロック図である。ここで説明する色変換装置は、例えばディジタル複写機やプリンタ等といった画像出力装置に搭載され、若しくはその画像出力装置に接続するサーバ装置に搭載され、またはその画像出力装置に動作指示を与えるコンピュータ(ドライバ装置)に搭載されて用いられるものである。
【0031】
同図に示すように、色変換装置10は、入力色空間変換部12、色変換部14、出力色空間変換部16、色域生成部18、分割数設定用情報出力部20、及びメモリ22を備えている。
【0032】
入力色空間変換部12は、入力側デバイスに依存した入力画像信号を入力プロファイルに基づいてデバイス非依存の画像信号に変換する。入力画像信号としては、例えば、CRT等に表示させるためのRGB色空間におけるカラー画像信号、CMYK色空間におけるカラー画像信号が挙げられる。また、デバイス非依存の画像信号としては、Lab色空間におけるカラー画像信号やJCH色空間におけるカラー画像信号が挙げられる。
【0033】
色変換部14は、色域生成部18で生成された入力側デバイス及び出力側デバイスのデバイス非依存の色空間における色域外郭情報等に基づいて、入力色空間変換部12からのデバイス非依存の入力画像信号を色変換し、出力色空間変換部16へ出力する。なお、色変換方法については、種々公知の手法を用いることができる。
【0034】
出力色空間変換部16は、色変換部14で色変換されたデバイス非依存の画像信号を、出力プロファイルに基づいて出力デバイスに依存した出力画像信号に変換して出力する。出力画像信号としては、例えば、プリンタ等に印刷させるためのCMY色空間あるいはCMYK色空間のカラー画像信号が挙げられる。本実施形態では、出力画像信号はCMYK色空間のカラー画像信号である場合について説明する。
【0035】
色域生成部18は、詳細は後述するが、分割数設定用情報出力部20から出力された分割数設定用情報等に基づいて、入力側デバイス及び出力デバイスのデバイス非依存の色空間、例えばLab色空間における色域外郭を表わす色域外郭情報を生成し、これらを色変換部14へ出力する。
【0036】
分割数設定用情報出力部20は、例えば入力側デバイス及び出力側デバイスのデバイス特性情報、入力側デバイス及び出力側デバイスのデバイス種別情報、生成した色域の使用目的情報、及び生成した色域を用いて色変換する入力画像の画像特性情報の少なくとも一つを含む分割数設定用情報を色域生成部18に出力する。この分割数設定用情報は、詳細は後述するが、デバイスの色域外郭情報を生成するのに必要な情報であり、例えば予め記憶されていたり、入力側デバイスの色再現特性を表わす入力プロファイルや出力側デバイスの色再現特性を表わす出力プロファイル等に基づいて生成されたりする情報である。
【0037】
これらの各部12〜22は、例えば画像出力装置、サーバ装置またはドライバ装置が具備するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなるコンピュータが、所定プログラムを実行することによって、それぞれ実現されたものとすることができる。
【0038】
次に、色域生成部18で実行される処理ルーチンについて、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、ステップ100では、分割数設定用情報出力部20に色域外郭情報を生成すべきデバイスのデバイス種別情報を要求して取得し、そのデバイスを設定する。例えば色域外郭情報を生成すべきデバイスがCMYKのプリンタである場合には、そのプリンタを、色域外郭情報を生成すべきプリンタとして設定する。以下では、CMYKプリンタを設定した場合について説明する。なお、色域外郭情報を生成するデバイスをユーザー操作によって指定できるようにしてもよい。
【0040】
ステップ102では、分割数設定用情報出力部20に使用目的情報を要求して取得し、取得した使用目的情報に応じて色域外郭を複数のポリゴン(多角形領域)に分割する際の標準分割数を設定する。使用目的情報は、どのような目的で色変換装置10を使用するかを表わす情報である。従って、標準分割数は、使用目的毎に設定される。
【0041】
ここで、標準分割数は、例えば図3に示すような、あるデバイスのLab空間における色域30の外郭面を複数の多角形状のポリゴン32に分割する際の、ポリゴン32の総数で表わしてもよいし、例えば主要色(Y,M,C,R,G,B)間を結ぶ主要色線34上に設ける分割ポイントにより主要色線が分割される数で表わしてもよいが、分割の度合いを示すことができる数であれば、これらに限られるものではない。
【0042】
使用目的としては、例えば所望のデバイスの色域を高速表示する色域高速表示処理に使用する場合、色再現の特徴を示すインテントに応じた色変換を行うためやデバイスの種類に応じた色変換を行うための色変換係数を作成する色変換係数作成処理に使用する場合、入力画像信号が色域内であるか否かを判断し色域外の場合に警告する色域警告処理に使用する場合等があるが、これに限られるものではない。
【0043】
そして、例えば色域高速表示処理に使用する場合は、色域の表示速度を高めるために、標準分割数を予め定めた基準分割数よりも小さい数であって色域の表示速度を高めるのに適した数に設定する。なお、基準分割数は、例えばあらゆる使用目的における標準分割数の平均的な分割数である。
【0044】
また、色変換係数作成処理に使用する場合は、高精度に色変換することが要求されるため、標準分割数を基準分割数よりも大きい数であって高精度に色変換するのに適した数に設定する。
【0045】
また、色域警告処理に使用する場合は、入力画像信号が色域内か否かが判ればよいため、さほど高精度であることは要求されない。従って、この場合は標準分割数を基準分割数よりも小さい数であって入力画像信号が色域内か否かを判断するのに適した数に設定する。
【0046】
なお、本実施形態では、使用目的毎に標準分割数を設定するようにしているが、使用目的に拘わらず標準分割数を基準分割数に設定するようにしてもよい。
【0047】
ステップ104では、分割数設定用情報出力部20にデバイス特性情報を要求して取得する。ここでは、例えばデバイス特性情報として例えば主要色(Y,M,C,R,G,B)の最大彩度、最小明度(K)のデータを取得する。分割数設定用情報出力部20は、これらのデータを予め定め記憶しておいてもよいし、デバイスの特性を表わすプロファイルデータ等から算出してもよい。
【0048】
ステップ106では、取得したデバイス特性情報に基づいて、色域外郭を複数の分割領域に分割した分割領域毎に分割数を設定する。ここでは、色域を高明度側領域及び低明度側領域の2つの分割領域に分割し、低明度側領域の分割数が高明度側領域の分割数よりも少なくなるように設定する。なお、高明度側領域とは、例えば主要色(Y,M,C,R,G,B)の最大彩度点の明度よりも高い明度を有する領域であり、低明度側領域とは、高明度側領域以外の領域、すなわち主要色の最大彩度点の明度以下の明度を有する領域である。
【0049】
分割数の設定は、例えば以下のように行う。まず各主要色の最大彩度点の平均明度を求め、この各主要色の最大彩度点の平均明度と最小明度との差分Liを求める。そして、この差分Liと予め定めた基準差分Lbとを比較し、その比較結果に基づいて低明度側領域の分割数DLを設定する。例えば、Li≧Lbの場合、すなわち低明度側領域のサイズがそれほど小さくない場合には、標準分割数をDSとして、DL=DS×Cとする。ただし、Cは分割係数であり、C<1の任意の数である。すなわち、分割数DLを標準分割数DSよりも小さい数に設定する。一方、Li<Lbの場合、すなわち色域の低明度側領域のサイズが小さい場合には、DL=DS×C×(Li/Lb)とする。ここで、Li/Lbは1未満の値となるので、分割数DLは、Li≧Lbの場合よりもさらに小さい数に設定される。なお、高明度側領域の分割数DHは、標準分割数DSに設定する。また、高明度側領域の分割数DHは、主要色の最大彩度に基づいて設定してもよい。例えば最大彩度が高いほど分割数を大きくし、最大彩度が低いほど分割数を小さくしてもよい。
【0050】
例えば図3の例では、高明度側領域30Aについては、主要色Bと主要色Mとを結ぶB−M線上に分割ポイント36Aを2つ設定して高明度側領域30Aの分割数を3とし、低明度側領域30Bについては、B−M線上に分割ポイント36Bを1つ設定して低明度側領域30Bの分割数を2としている。
【0051】
ステップ108では、分割領域毎に設定した分割数に応じて色域外郭を複数のポリゴンに分割し、色域外郭情報を生成する。この色域外郭情報は、例えば各ポリゴンとそのポリゴンの各頂点の明度、彩度のデータ(L、a、bの各値)との対応関係を表わす情報としてもよいし、各頂点の明度、彩度のデータと、各頂点がどのように連結されているか、すなわち各頂点がどの頂点と連結されるかを表わす連結情報を含む情報としてもよい。
【0052】
各ポリゴンの頂点は、例えば色域の外郭を構成する多数の外郭点群の中から選択することにより設定することができる。なお、外郭点群のデータは、例えばデバイスのプロファイルデータ等に基づいて予め求めておき、予めメモリ22に記憶しておいてもよいし、その都度求めるようにしてもよい。外郭点群のデータを求める方法は種々公知の手法を用いることができる。
【0053】
ステップ110では、生成した色域外郭情報を色変換部14へ出力する。本ルーチンの処理を、入力側デバイス及び出力側デバイスの各々について行って色域外郭情報を各々生成して色変換部14へ出力することにより、色変換部14では、これらの色域外郭情報等に基づいて、入力画像信号を出力側デバイスの色域内の画像信号に変換して出力することができる。
【0054】
このように、デバイスがCMYKプリンタの場合、低明度側領域の分割数を高明度側領域の分割数よりも小さくして色域外郭情報を生成するので、低明度側の色域外郭の形状に不具合が発生したり、ポリゴンの数が増大して色域外郭情報のデータ量が増大したりするのを防ぐことができる。
【0055】
なお、上記では、デバイスがCMYKプリンタの場合において、高明度側領域と低明度側領域とでポリゴンの分割数を異ならせているが、K(黒)の成分が含まれる度合いに応じて色域を複数に分割し、その領域毎に分割数を設定するようにしてもよい。例えば、図4に示すように、色域をK=0%の第1の領域40(高明度側領域)、0<K<100%の第2の領域42、K=100%の第3の領域44に分割し、第1の領域40の分割数をD1、第2の領域42の分割数をD2、第3の領域44の分割数をD3の関係がD1>D2>D3となるように分割数を設定する。すなわち低明度側ほど分割数が小さくなるように設定する。これにより、低明度側の色域外郭の形状に不具合が発生したりするのを効果的に防ぐことができる。
【0056】
また、例えばステップ104でデバイス特性情報として色域の体積に関する情報を取得し、高明度側領域と低明度側領域の体積を比較し、体積の大きい方の分割数を大きく、体積の小さい方の分割数を小さくするようにしてもよい。
【0057】
また、入力画像の画像特性、例えば画像の種類によっては、生成される色域外郭を高精度に生成する必要があるものと、それほど高精度に生成する必要がないものとがある。従って、例えばステップ104でデバイス特性情報として入力画像の画像特性情報を取得し、入力画像の画像特性に応じて分割数を設定するようにしてもよい。例えば、入力画像が写真の場合には、色域外郭付近のデータは少ないため、それほど高精度に色域外郭を生成する必要はない。このため、画像特性情報が、入力画像が写真であることを示している場合には、分割数を通常よりも小さい数に設定する。また、入力画像がグラフィックスの場合には、色域外郭付近のデータが多いため、高精度に色域外郭を生成する必要がある。このため、画像特性情報が、入力画像がグラフィックスであることを示している場合には、分割数を通常よりも大きい数に設定する。また、画像特性情報に、色域内で主に使用される領域やあまり使用されない領域の情報を含めることもできる。この場合、主に使用される領域については分割数を大きく設定し、あまり使用されない領域については分割数を小さく設定するようにしてもよい。
【0058】
また、例えばステップ104でデバイス特性情報として主要色の中間調特性、例えばγ特性(階調カーブ)を取得し、このγ特性に基づいて分割数を設定するようにしてもよい。例えば、階調カーブが急な領域ほど分割数を大きく、階調カーブが緩い領域ほど分割数を小さく設定するようにしてもよい。
【0059】
また、高明度側領域と低明度側領域とでポリゴンの分割数を異ならせた場合、高明度側領域30Aと低明度側領域30Bとの境界におけるポリゴンの頂点が一致しない場合がある。例えば図3に示すように、前記境界における低明度側領域30Bのポリゴン32Bの頂点36Bは、高明度側領域30Aのポリゴン32Aのどの頂点とも接続されておらず、ポリゴンの辺上に位置している。この場合、色域外郭情報を、各ポリゴンとそのポリゴンの各頂点の明度、彩度のデータ(L、a、bの各値)との対応関係を表わす情報とした場合は特に問題はない。しかしながら、色域外郭情報を、各頂点の明度、彩度のデータと、各頂点がどのように連結されているか、すなわち各頂点がどの頂点と連結されるかを表わす連結情報を含む情報とした場合には、上記のようにポリゴンの頂点が他のポリゴンの辺上に位置するような分割をすることはできない。従って、このような場合には、ポリゴン32Aの辺上にある頂点36Bとポリゴン32Aの頂点とを結ぶ線38Aによってポリゴン32Aを図5に示すようにさらに分割する。また、頂点36Aについても同様に頂点36Aとポリゴン32Bの頂点とを結ぶ線38Bによってポリゴン32Bをさらに分割する。これにより、全てのポリゴンの頂点同士を連結させることができる。
【0060】
また、上記では、デバイスがCMYKプリンタの場合について説明したが、例えばデバイスがモニタの場合には、プリンタのように低明度側の色域外郭の形状に不具合が発生したりすることは少ない。このため、デバイスがプリンタの場合には、高明度側領域と低明度側領域とでポリゴンの分割数を異ならせることなく、同一としてもよい。
【0061】
また、デバイスがスキャナの場合、高明度側領域の中でも明度が高いハイライト領域の色域外郭を高精度に生成する必要がある。このため、図6に示すように、ハイライト領域50については、他の領域よりも分割数を大きくし、細かく分割するようにしてもよい。
【0062】
また、上記では、明度方向で分割数を異ならせる場合について説明したが、色相方向で分割数を異ならせるようにしてもよい。この場合、図2のステップ100,102は上記と同様の処理を行い、ステップ104において、デバイス特性情報として例えば主要色(Y,M,C,R,G,B)の最大彩度、色相のデータを取得する。そして、各主要色の最大彩度のデータから、隣接する主要色間の最大彩度の平均値を求める。例えば、YとGの最大彩度の平均値をC_YG、GとCの最大彩度の平均値をC_GC、CとBの最大彩度の平均値をC_CB、BとMの最大彩度の平均値をC_BM、MとRの最大彩度の平均値をC_MR、RとYの最大彩度の平均値をC_RYとする。そして、各主要色の最大彩度の平均値を基準彩度とする。
【0063】
また、各主要色の色相のデータから、隣接する主要色間の色相角の平均値を求める。例えば、YG間の色相角をHd_YG、GC間の色相角をHd_GC、CB間の色相角をHd_CB、BM間の色相角最大彩度の平均値をHd_BM、MR間の色相角をHd_MR、RY間の色相角をHd_RYとする。そして、各主要色間の色相角の平均値を基準色相角とする。
【0064】
そして、ステップ106において、隣接する主要色間の領域の各々について、すなわちYG間の領域、GC間の領域、CB間の領域、BM間の領域、MR間の領域、RY間の領域の各々について、例えば以下のように分割数を設定することができるが、分割数の設定の仕方はこれに限られるものではない。例えば、YG間の領域については、例えばC_YGが基準彩度より小さい場合は、標準分割数よりも小さい分割数でYG間の領域を分割する。また、C_YGが基準彩度より大きく且つHd_YGが基準色相角より大きい場合は、標準分割数よりも大きい分割数でYG間の領域を分割する。また、C_YGが基準彩度より大きく且つHd_YGが基準色相角より小さい場合は、標準分割数でYG間の領域を分割する。また、Hd_YGが基準色相角より大きい場合は、標準分割数よりも大きい分割数でYG間の領域を分割する。なお、他の領域についても同様である。このように、明度方向で分割数を異ならせるのではなく、色相方向で分割数を異ならせるようにしてもよい。
【0065】
このように分割数を設定した後は、ステップ108で色域外郭情報を作成し、ステップ110で色域外郭情報を色変換部14に出力する。
【0066】
以上、説明したように、本実施形態では、色域を複数に分割した分割領域毎に分割数を設定して各分割領域を複数のポリゴンに分割して色域外郭情報を生成するので、ポリゴン数の増大による色変換の速度の低下や色変換の精度の低下等を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】色変換装置の概略ブロック図である。
【図2】色域生成部で実行される処理のフローチャートである。
【図3】色域外郭の分割例を示す図である。
【図4】色域外郭の分割について説明するための図である。
【図5】色域外郭の分割例を示す図である。
【図6】色域外郭の分割例を示す図である。
【図7】従来における色域外郭の分割例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 色変換装置
12 入力色空間変換部
14 色変換部
16 出力色空間変換部
18 色域生成部
20 分割数設定用情報出力部
22 メモリ
30 色域
30A 高明度側領域
30B 低明度側領域
32 ポリゴン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定する設定手段と、
前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成する生成手段と、
を備えた色域生成装置。
【請求項2】
前記分割数設定用情報は、前記デバイスのデバイス特性情報、前記デバイスのデバイス種別情報、生成した色域の使用目的情報、及び生成した色域を用いて色変換する入力画像の画像特性情報の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の色域生成装置。
【請求項3】
前記デバイス特性情報は、前記デバイスの色域における予め定めた所定色の彩度及び明度の少なくとも一方に関する情報、前記所定色の中間調特性情報、及び前記色域の体積に関する情報の少なくとも一つを含む情報であることを特徴とする請求項2記載の色域生成装置。
【請求項4】
前記デバイス種別情報は、前記デバイスがモニタ、スキャナ、及びプリンタの何れかであることを示す情報であることを特徴とする請求項2記載の色域生成装置。
【請求項5】
前記使用目的情報は、前記色域を表示させる色域表示処理、色変換用の色変換係数を作成する色変換係数作成処理、及び入力画像信号が色域外であることを警告する色域警告処理の何れかが、前記デバイスの色域の使用目的であることを示す情報であることを特徴とする請求項2記載の色域生成装置。
【請求項6】
前記画像特性情報は、入力画像の種類及び前記入力画像が前記色域内で主に使用する領域に関する情報の少なくとも一方を含む情報であることを特徴とする請求項2記載の色域生成装置。
【請求項7】
前記分割領域は、明度方向及び色相角方向の少なくとも一方で分割される領域であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の色域生成装置。
【請求項8】
前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の高明度側領域については、前記色域における予め定めた所定色の最大彩度点における彩度に基づいて分割数を設定することを特徴とする請求項7記載の色域生成装置。
【請求項9】
前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の低明度側領域については、前記色域における予め定めた所定色の最大彩度点における明度及び前記色域の最小明度に基づいて分割数を設定することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の色域生成装置。
【請求項10】
前記分割領域が明度方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、前記色域の高明度側領域の分割数よりも、前記色域の低明度側領域の分割数が少なくなるように分割数を設定することを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れか1項に記載の色域生成装置。
【請求項11】
前記分割領域が色相角方向で分割される領域の場合、前記設定手段は、隣接する主要色間の色相角に基づいて分割数を設定することを特徴とする請求項7乃至請求項10の何れか1項に記載の色域生成装置。
【請求項12】
前記色域が高明度側領域と低明度側領域とに分割され且つ両領域の境界におけるポリゴンの頂点が一致しない場合、前記設定手段は、前記ポリゴンの頂点が一致するように、さらに前記ポリゴンを分割することを特徴とする請求項7乃至請求項11の何れか1項に記載の色域生成装置。
【請求項13】
分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定し、
前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成する
色域生成方法。
【請求項14】
分割数設定用情報に基づいて、所定の色空間におけるデバイスの色域の外郭面を複数のポリゴンに分割する際の分割数を、前記色域を複数に分割した分割領域毎に設定するステップと、
前記分割領域毎に設定した分割数で前記外郭面を分割して前記色域の外郭情報を生成するステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるための色域生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−153992(P2008−153992A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340371(P2006−340371)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】