説明

色変換テーブルの作成方法、作成装置およびコンピュータプログラム

【課題】 画像データ生成装置が生成した画像データを、当該装置に依存する色空間とは異なる色空間で適切に再現できる色変換テーブルを作成する。
【解決手段】 機器依存色空間における第1種表色値の複数の代表値に、異なる色空間における第2種表色値をそれぞれ対応付けた色変換テーブルの作成方法は、カラーチャートを対象物として画像データ生成装置を用いて生成される、カラーパッチの色を表す複数の第1種表色値である複数の参照値と第2種表色値を対応付けた対応データを生成する。そして、参照値を用いた内挿と、内挿結果を用いた外挿とを用いて、複数の代表値に対応付ける第2種表色値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ生成装置に依存する色空間の表色値を他の色空間の表色値に変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ、デジタルカメラなど対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置は、その装置に依存する色空間(機器依存色空間)における表色値で構成された画像データを生成する。一般的に、機器依存色空間における表色値を他の画像処理装置(例えば、プリンタ、ディスプレイ)にて適切に再現するために、機器依存色空間における表色値を、他の色空間(例えば、機器非依存色空間)における表色値に変換している。この変換には、機器依存色空間における表色値と、他の色空間における表色値との対応関係を記述した色変換テーブル(例えば、ICCプロファイル)が用いられている。
【0003】
特許文献1は、スキャナに依存するRGB値を、プリンタの印刷データの生成に用いるCMY値に変換するための色変換テーブルを作成する技術を開示している。この技術では、複数の参照RGB値のそれぞれにCMY値を対応付けた参照データを用いて、色変換テーブルに記述すべき代表RGB値に対応付けるべきCMY値を求めるために、内挿法の1種である三角錐補間を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−174567号公報
【特許文献2】特開2001−124242号公報
【特許文献3】特開2008−312117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術では、三角錐補間行うための参照RGB値が選択できない代表RGB値が存在する場合には、当該代表RGB値に適切なCMY値を対応付けることができない可能性があった。この結果、CMY色空間では、スキャナが生成した画像データを適切に再現できない可能性があった。かかる問題は、スキャナに依存するRGB値を、CMY値に変換する色変換テーブルに限らず、対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置用の色変換テーブルの作成において共通する問題であった。
【0006】
本発明の主な利点は、対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置が生成した画像データを、当該装置に依存する色空間とは異なる色空間で適切に再現できる色変換テーブルを作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置に依存する機器依存色空間である第1の色空間における表色値である第1種表色値の複数の代表値に、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間における表色値である第2種表色値を対応付けた色変換テーブルの作成方法であって、(a)複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを対象物として前記画像データ生成装置を用いて生成される、前記カラーチャートの各カラーパッチの色をそれぞれ表す複数の前記第1種表色値である複数の参照値を取得する工程と、(b)前記(a)工程において取得された複数の前記参照値のそれぞれに、前記参照値に対応する前記カラーパッチの色を表す前記第2種表色値を対応付けた対応データを生成する工程と、(c)前記対応データを用いて、前記第1種表色値の複数の代表値に対応付ける前記第2種表色値をそれぞれ決定する工程と、を備え、前記(c)工程は、(c−1)前記参照値を用いた内挿によって、前記複数の代表値の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する工程と、(c−2)前記内挿によって前記第2種表色値が対応付けられた前記代表値を用いた外挿によって、前記複数の代表値の他の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する工程と、を備える、作成方法。
【0009】
上記構成の作成方法によれば、参照値を用いた内挿によって第2種表色値が対応付けられた代表値を用いた外挿によって、他の代表値に対応付ける第2種表色値を決定することができる。この結果、例えば、参照値を用いた内挿によって対応付ける第2種表色値を決定することができない代表値が存在する場合でも、上記外挿によって当該代表値に適切な第2種表色値を対応付けることができる。この結果、画像データ生成装置が生成した画像データを、装置に依存する色空間とは異なる色空間で適切に再現できる色変換テーブルを作成することができる。
【0010】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、例えば、色変換テーブルを作成する作成装置、作成システム、これらの装置またはシステムの機能、または、上記作成方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における色変換テーブル作成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ICCプロファイルについて説明する図である。
【図3】プロファイル更新処理およびプロファイル作成処理の処理ステップを示すフローチャートである。
【図4】参照対応データについて説明する図である。
【図5】三角錐補間が適用される代表値REVと最近傍法が適用される代表値REVについて説明する図である。
【図6】単位ベクトルについて説明する図である。
【図7】第1特定代表値REV1および第1特定代表値REV1に対応付けるLab値の算出について説明する図である。
【図8】第2特定代表値REV2および第2特定代表値REV2に対応付けるLab値の算出について説明する図である。
【図9】基準2が用いられる場合に代表値REVについて採用されるLab値について概念的に示す図である。
【図10】上記実施例における作成方法で作成したICCプロファイルPFDと比較例における作成方法で作成したICCプロファイルとを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.実施例:
図1は、実施例における色変換テーブル作成システムの構成を示すブロック図である。図2は、ICCプロファイルについて説明する図である。色変換テーブル作成システム1000(図1)は、スキャナRGB値をLab値に変換するためのICCプロファイル(図2(a))を作成するシステムである。ここで、スキャナRGB値は、スキャナに依存する機器依存RGB色空間SCP(図2(b):以下、スキャナRGB色空間SCPとも呼ぶ。)における表色値である。Lab値は、機器独立色空間であるCIELAB色空間(L*a*b*色空間)における表色値である。
【0013】
ICCプロファイルPFDは、図2(a)に示すように、4913個のスキャナRGB値のそれぞれに、スキャナRGB値が表す色を表すLab値を対応付けた色変換テーブルである。本実施例では、スキャナRGB値におけるR(red)、G(Green)、B(blue)の各値は、8ビット(256階調)で表される。ICCプロファイルPFDにおける4913個のスキャナRGB値は、スキャナRGB色空間SCPにおいて、RGBの各値を、0〜255の間の17の特定値のいずれかに設定して得られる値である。ここで、17個の特定値は、16×m(mは0≦m≦15の整数)で表される16の値と255である。すなわち、4913個のスキャナRGB値は、3次元直交座標系でスキャナRGB色空間SCPを表現した場合に、立方体で表される色域に等間隔格子状に配置される(図2(b))。以下、これらの4913個のスキャナRGB値を、単に、代表値REVとも呼ぶ。
【0014】
図2(b)において、K点(ブラック点)、R点(レッド点)、G点(グリーン点)、B点(ブルー点)は、それぞれ、スキャナRGB値が(0,0,0)、(255,0,0)、(0,255,0)、(0,0,255)である点を示している。同様に、C点(シアン点)、M点(マゼンタ点)、Y点(イエロー点)、W点(ホワイト点)は、それぞれ、スキャナRGB値が、(0,255,255)、(255,0,255)、(255,255,0)、(255,255,255)である点を示している。以下、スキャナRGB色空間SCPにおける色域の各頂点について、上述の用語(K点など)を用いる。また、図2(b)において、W点とK点とを結ぶ一点破線GLは、スキャナRGB色空間SCPにおける無彩色軸を表す。
【0015】
・色変換テーブル作成システム1000の構成
図1の色変換テーブル作成システム1000は、色変換テーブル作成装置としてのサーバ100と、複合機200とを備えている。サーバ100と複合機200は、LAN500およびインターネット700を介して、通信可能に接続されている。
【0016】
サーバ100は、CPU110と、内部記憶装置(ROM、RAMなど)や外部記憶装置(ハードディスクドライブなど)などの記憶装置140と、ネットワークに接続するためのインタフェースを含む通信部130と、を備えている。記憶装置140には、色変換テーブルを作成する機能をCPU110に実現させるコンピュータプログラムPMと、測色データSPDと、が格納されている。コンピュータプログラムPMは、CD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供され得る。
【0017】
測色データSPDは、カラーチャート400aに配置された複数のカラーパッチ410を分光測色機(例えば、X-rite社のi1iSis)を用いて測色して得られるデータである。
【0018】
本実施例のカラーチャート400aには、4913種類の異なる色をそれぞれ表す4913個のカラーパッチ410aが配置されている。4913個のカラーパッチ410aは、標準的なRGB色空間であるsRGB(standard RGB)色空間において、RGBの各値を、上述したスキャナRGB値の4913個の代表値REVと同じ値に設定して得られる4913種類の表色値に対応している。すなわち、カラーチャート400aは、上述したsRGB色空間において4913個のカラーパッチ410aの色を表現した画像データを、所定のプリンタを用いて印刷することによって作成される。
【0019】
測色データSPDは、図1に示すように、カラーチャート400aの4913個のカラーパッチ410aの色をそれぞれ測色して得られた4913個のLab値である。測色データSPDにおけるLab値を、以下では、測色値MVとも呼ぶ。
【0020】
CPU110は、コンピュータプログラムPMを実行することにより、プロファイル作成部M20として機能する。プロファイル作成部M20は、上述したICCプロファイルを作成する機能部である。プロファイル作成部M20は、スキャンデータ取得部M21と、測色データ取得部M22と、参照対応データ生成部M23と、代表対応データ生成部M24とを備えている。代表対応データ生成部M24は、内挿処理部M241と、外挿処理部M242と、最近傍処理部M243とを備えている。
【0021】
複合機200は、CPU210と、内部記憶装置や外部記憶装置などの記憶装置240と、ネットワークに接続するためのインタフェースを含む通信部250と、操作パネルや各種のボタンを含む操作部260と、インクジェット式のプリンタ部270と、フラットベッド式のスキャナ部280と、を備えている。
【0022】
スキャナ部280は、対象物(原稿)からの透過光または反射光を、光電変換素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device))によって受光して、対象物を表す画像データを生成する。光電変換素子は、カラーフィルターを介して、対象物からの光を受光するように構成されており、生成される画像データは、光電変換素子、カラーフィルター、光源などの特性に依存した上述のスキャナRGB値で構成されている。
【0023】
記憶装置240には、各種のプログラムやデータ(図示省略)とともに、スキャナ部280用の上述したICCプロファイルPFDが格納されている。また、記憶装置240には、スキャンデータSCDを格納する領域が確保されている。
【0024】
CPU210は、記憶装置240に格納されたプログラムを実行することにより、複合機200の全体を制御する装置制御部M35として機能するとともに、後述するプロファイル更新処理を実行するプロファイル更新部M30として機能する。プロファイル更新部M30は、スキャンデータSCDを作成するスキャンデータ作成部M31を備えている。
【0025】
スキャンデータSCDは、カラーチャート400bを複合機200のスキャナ部280を用いて読み取り、カラーチャート400bの画像データを生成することによって得られるデータである。
【0026】
カラーチャート400bは、上述したカラーチャート400aと同一のカラーチャート、または、カラーチャート400aの複製品である。カラーチャート400bのカラーパッチ410bの色は、カラーチャート400aのカラーパッチ410aの色と比較して、実用上、同一とみなして良い程度の同一性を有していれば良い。図1において、カラーパッチ410aに付された番号と同じ番号が付されたカラーパッチ410bは、同じ色である。
【0027】
スキャンデータSCDは、図1に示すように、カラーチャート400bの4913個のカラーパッチ410bの色をそれぞれ表す4913個のスキャナRGB値を含む。スキャンデータSCDにおけるスキャナRGB値を、以下では、参照値SVとも呼ぶ。
【0028】
なお、色変換テーブル作成システム1000は、複合機200およびサーバ100と通信可能に接続された計算機300を備えても良い。計算機300はプロファイル更新部M40を備え、プロファイル更新部M40はスキャンデータ作成部M41を備えている。これらの機能部は、複合機200が備える同名の機能部M30、M31とそれぞれ同様の機能を有する。すなわち、後述するプロファイル更新処理は、複合機200と計算機300のいずれをクライアントとして行われても良い。
【0029】
・色変換テーブル作成システム1000によるICCプロファイルの作成
図3は、プロファイル更新処理およびプロファイル作成処理の処理ステップを示すフローチャートである。プロファイル更新処理は、複合機200または計算機300が、サーバ100を利用してスキャナ部280用のICCプロファイルPFDを更新する処理である。プロファイル作成処理は、クライアントからの要求に応じてサーバ100がICCプロファイルPFDを作成する処理である。以下では、複合機200がクライアントである場合を例に説明する。例えば、ユーザからICCプロファイルを更新する指示を操作部260を受け付けると、クライアントである複合機200のプロファイル更新部M30は、プロファイル更新処理を開始する。
【0030】
ステップS210では、複合機200のスキャンデータ作成部M31は、スキャナ部280を用いて、上述したスキャンデータSCDを生成する。例えば、スキャンデータ作成部M31は、ユーザにカラーチャート400bを原稿としてスキャナ部280にセットするように促すメッセージを操作部260の操作パネルに表示する。スキャンデータ作成部M31は、カラーチャート400bをスキャナ部280を用いてスキャンして、カラーチャート400bの画像データ(JPEG形式などに変換される前のRGBデータ)を取得する。スキャンデータ作成部M31は、取得した画像データに基づいて上述したスキャンデータSCDを生成する。なお、スキャンデータ作成部M31は、取得した画像データをそのままサーバ100に送信して、サーバ100が、スキャンデータSCDを生成しても良い。
【0031】
ステップS220では、プロファイル更新部M30は、スキャンデータSCDをサーバ100に対して送信する。サーバ100のプロファイル作成部M20のスキャンデータ取得部M21がスキャンデータSCDを取得する(ステップS101)と、プロファイル作成処理が開始される。
【0032】
ステップS102では、プロファイル作成部M20の測色データ取得部M22は、記憶装置140に格納された測色データSPDを取得する。測色データSPDの取得は、他の計算機、例えば、サーバ100とは異なるサーバから取得するように構成されても良い。また、例えば、カラーチャート400bが記憶媒体(CD−ROM)などに格納された測色データSPDとセットで販売されるように場合には、複合機200から(ユーザから)、測色データSPDを取得するように構成されても良い。この場合には、複合機200において、後述する参照対応データCODを生成して、サーバ100に送信しても良い。
【0033】
ステップS103では、プロファイル作成部M20の参照対応データ生成部M23は、参照対応データCODを生成する。図4は、参照対応データについて説明する図である。図4(a)に示すように参照対応データCODは、スキャンデータSCDの参照値SVと、測色データSPDのLab値との対応関係を規定したデータである。具体的には、同じ色のカラーパッチ410a、410bの色をそれぞれ表す参照値SVとLab値とが互いに対応付けられている。
【0034】
図4(b)は、スキャナRGB色空間SCPに、参照対応データCODに含まれる参照値SVをプロットした図である。図4(b)に示すように、参照値SVは、スキャナRGB色空間SCPの色域に均等に分布していない。特に、色域の表面近傍には参照値SVが少ない。例えば、B点とC点を結ぶ辺の近傍、および、R点とY点とを結ぶ辺の近傍には、参照値SVが少ないことが解る。これは、スキャナはなるべく広い範囲の色を再現することができるように設計されるので、スキャナにおいて一般的に起こる現象である。つまり、スキャナ部280のCCDが、弱い光に対して反応しなかったり、強い光に対して飽和したりすると、これらの光の情報を適切な表色値に変換できない。これを避けるために、スキャナ部280のCCDが、容易に、無反応になったり飽和したりしないように、光源やCCDの特性が調整されている。この結果、スキャナ部280は、一般的な対象物(例えば、カラーチャート400bや写真)をスキャンした場合には、スキャナRGB値の最小値(0)や最大値(255)に対応する信号を出力しにくい特性を有する。この結果、スキャナRGB値の最小値(0)や最大値(255)に対応する色域表面の参照値SVを得ることが困難である。
【0035】
ステップS104〜ステップS117では、プロファイル作成部M20の代表対応データ生成部M24は、参照対応データCODを用いて、スキャナRGB色空間SCPに配置された上述した4913個の代表値REVに対応付けるLab値をそれぞれ決定する。
【0036】
ステップS104では、代表対応データ生成部M24は、4913個の代表値REVのうちの1つの代表値REVを対象代表値として選択する。
【0037】
ステップS105では、代表対応データ生成部M24は、対象代表値に対応付けるLab値を得るために、内挿の一種である三角錐補間を適用可能か否かを判断する。三角錐補間は、参照値SVの中から、対象代表値を内部に含む最小の三角錐を形成する4つの参照値SV選択し、選択された4つの参照値SVに対応付けられたLab値の重み付け平均値を、対象代表値に対応付けるLab値とする内挿法である。重み付けは、選択された各参照値SVと代表値REVとのスキャナRGB色空間SCPにおける距離に応じて行われる。代表対応データ生成部M24は、対象代表値を内部に含む三角錐を、いずれの参照値SVを用いても形成出来ない場合には、三角錐補間を適用できないと判断し、該三角錐を、いずれかの参照値SVを用いても形成出来る場合には、三角錐補間を適用できると判断する。
【0038】
三角錐補間を適用できると判断すると(ステップS105:YES)、代表対応データ生成部M24の内挿処理部M241は、三角錐補間を用いて、対象代表値に対応付けるLab値を算出する(ステップS106)。一方、三角錐補間を適用できないと判断すると(ステップS105:NO)、代表対応データ生成部M24の最近傍処理部M243は、最近傍法を用いて、対象代表値に対応付けるLab値を仮に決定する(ステップS107)。最近傍法は、参照値SVのうち、対象代表値とのスキャナRGB色空間SCPにおける距離が最も近い参照値SVに対応付けられたLab値を、当該対象代表値に対応付ける方法である。
【0039】
ステップS108では、代表対応データ生成部M24は、全ての代表値REVを対象代表値として選択したか否かを判断する。代表対応データ生成部M24は、全ての代表値REVを対象代表値として選択したと判断すると(ステップS108:YES)、ステップS109に処理を進める。一方、代表対応データ生成部M24は、未だ対象代表値として選択されていない代表値REVがあると判断すると(ステップS108:NO)、ステップS104に戻って対象代表値を選択し、ステップS105〜S107の処理を繰り返す。
【0040】
図5は、三角錐補間が適用される代表値REVと、最近傍法が適用される代表値REVについて説明する図である。説明のために、代表値REVの各成分(R、G、B)の値を、以下の式で、(r、g、b)に置き換える。式は、R成分について代表して示すが、他の成分も同様である。
r=(R−128)/16 (R=16×m(mは0≦m≦15の整数)の場合)
r=8 (R=255の場合)
すなわち、代表値REVの各成分(R、G、B)の値がが取り得る17個の値(0,16,32,48,64,80,96,112,128,144,160,176,192,208,224,240,255)を、中央値である
128を0とした17個の置換値(−8〜+8)に置き換えて考える。この置換値では、図5(a)に示すように、スキャナRGB色空間SCPの色域の8つの頂点(R、G、B、K、W、C、M、Y)の各成分の値の絶対値は、8で表される。また、この置換値では、スキャナRGB色空間SCPの中心O(置換前の値で(128,128,128))は、(0,0,0)で表される。ここで、色空間の中心は、色空間の無彩色軸上の位置であり、色空間における色域で無彩色軸を区切って出来る線分(RGB色空間の場合には、K点とW点とを結ぶ線分GL(図5(a)))の中心である。以下では、代表値REVの値として、この置換値を用いて説明する。また、特定の代表値REVを特定する場合には、置換値を用いて、代表値REV(r、g、b)とも記述し、この代表値REVに対応するLab値をLab(r、g、b)とも記述する。
【0041】
ここで、3つの成分値の絶対値が全てnである8つの代表値REVを頂点とする立方体を第n層の立方体CBと定義する(図5(a))。nを層番号とも呼び、第n層の立方体CBの表面上に位置する代表値REVを第n層の代表値REVとも呼ぶ。第n層の代表値REVは、3つの成分値の絶対値のうちの最大値がnである代表値REVである。例えば、スキャナRGB色空間SCPの色域表面に位置する代表値REVは、第8層の代表値である。機器依存RGB色空間SCPの中心Oは、第0層の代表値REVと呼べる。
【0042】
図8(b)には、第n層の代表値のそれぞれについて、所定のカラーチャート400aを用いて作成された参照値SVを用いて三角錐補間を適用できる割合と、三角錐補間を適用できずに最近傍法が適用される割合を示した。第0層〜第2層までの代表値REVは、全て三角錐補間を適用可能であったが、第3層以降の層の代表値REVは、層番号が大きくなるにつれて、三角錐補間を適用できない割合が増加した。第8層(色域表面)の代表値REVは、全て三角錐補間を適用できない。
【0043】
以下のステップS109〜S116(図3)では、三角錐補間が適用できない代表値REVが含まれる第3層〜第8層までの代表値REVの全てについて、三角錐補間が適用できる中心O(第0層の代表値REV)と第1層の代表値REVと、これらの代表値REVに対応付けられたLab値を用いた外挿によって、対応付けるLab値を算出している。
【0044】
ステップS109では、代表対応データ生成部M24の外挿処理部M242は、単位ベクトルを形成する。図6は、単位ベクトルについて説明する図である。単位ベクトルは、中心Oを始点とし、第1層の26個の代表値REVのそれぞれを終点とする26個のベクトルである。具体的には、図6に示すように、単位ベクトルは、6つの第1種単位ベクトルV1〜V6と、12個の第2種単位ベクトルV7〜V18と、8つの第3種単位ベクトルV19〜V26である。第1種単位ベクトルは、3つのベクトル成分のうちの1つの絶対値が1で、他の2つが0であるベクトルである。すなわち、第1種単位ベクトルは、中心Oを始点とし、第1層立方体の6つの面の中心をそれぞれ終点とする。第2種単位ベクトルは、3つのベクトル成分のうちの2つの絶対値が1で、他の1つが0であるベクトルである。すなわち、第2種単位ベクトルは、中心Oを始点とし、第1層立方体の12の辺の中心をそれぞれ終点とする。第3種ベクトルは、3つのベクトル成分の絶対値がそれぞれ1であるベクトルである。すなわち、第3種ベクトルは、中心Oを始点とし、第1層立方体の8つの頂点をそれぞれ終点とする。以下では、単位ベクトルは、終点の代表値REVを用いて、例えば、図6に示す単位ベクトルV1は、単位ベクトル(1、0、0)とも記述する。
【0045】
ステップS110では、外挿処理部M242は、26個の単位ベクトルのそれぞれについて、対応するLab値の変化量(変化ベクトル)ΔLabを算出する。変化量ΔLabは、対応する単位ベクトルの記述を用いて、例えば、単位ベクトル(1、0、0)に対応する変化量ΔLabは、ΔLab(1、0、0)とも記述する。なお、ΔLabは、ステップS106において三角錐補間によって算出された第1層の代表値REVに対応するLab値を用いて、算出される。例えば、ΔLab(1、0、0)=Lab(1、0、0)−Lab(0、0、0)である。
【0046】
ステップS111では、外挿処理部M242は、第1特定代表値REV1を1つ選択する。図7は、第1特定代表値REV1および第1特定代表値REV1に対応付けるLab値の算出について説明する図である。図7には、スキャナRGB色空間SCPにおけるG=128(置換値では、g=0)の平面のうち、R≦128かつG≧128(置換値では、r≦0かつg≧0)の範囲が示されている。
【0047】
第1特定代表値REV1は、第3層〜第8層の代表値REVのうち、上述した各単位ベクトルの延長線上に位置する代表値REVである。図7には、単位ベクトル(−1、0、1)の延長線上に位置する6つの第1特定代表値REV1を1重丸で、単位ベクトル(0、0、1)の延長線上に位置する6つの第1特定代表値REV1を2重丸で、単位ベクトル(−1、0、0)の延長線上に位置する6つの第1特定代表値REV1を黒丸でそれぞれ図示した。
【0048】
以上の説明から解るように、第3層〜第8層立方体の表面のそれぞれに、各単位ベクトルに対応した26個の第1特定代表値REV1が設定される。したがって、本実施例では、層の数6×26=156個の第1特定代表値REV1が設定され、ステップS111では、これらの中から1つずつ第1特定代表値REV1が選択される。
【0049】
ステップS112では、外挿処理部M242は、ステップS111にて選択された第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を算出する。具体的には、外挿処理部M242は、対象とする第1特定代表値REV1が、どの単位ベクトルの延長線上に位置するかを特定する。対象とする第1特定代表値REV1が属する層の層番号をnとすると、外挿処理部M242は、特定された単位ベクトルに対応するLab値の変化量ΔLabのn倍と、中心Oに対応するLab値との和を、対象とする第1特定代表値REV1に対応付けるLab値とする。例えば、図7の下側に式を示すように、第1特定代表値REV1(−n、0、0)に対応付けるLab値を表すベクトルLab(−n、0、0)は、Lab(0、0、0)+n×ΔLab(−1、0、0)とされる。
【0050】
ステップS113では、外挿処理部M242は、156個の第1特定代表値REV1の全てをステップS111にて選択したか否かを判断する。外挿処理部M242は、全ての第1特定代表値REV1を選択したと判断すると(ステップS113:YES)、ステップS114に処理を進める。一方、外挿処理部M242は、未だ選択されていない第1特定代表値REV1があると判断すると(ステップS113:NO)、ステップS111に戻って、未選択の第1特定代表値REV1を選択し、上述したステップS112の処理を繰り返す。
【0051】
ステップS114では、外挿処理部M242は、第2特定代表値REV2を1つ選択する。図8は、第2特定代表値REV2と、第2特定代表値REV2に対応付けるLab値の算出について説明する図である。図8には、スキャナRGB色空間SCPにおける第4層立方体のG軸正方向側の面(G=192(置換値では、g=4)の面)が示されている。
【0052】
第2特定代表値REV2は、第3層〜第8層の代表値REVのうち、第1特定代表値REV1を除いた代表値REVである。図8には、第1特定代表値REV1を黒丸で、第2特定代表値REV2を白丸でそれぞれ図示した。
【0053】
ステップS115では、外挿処理部M242は、同一層の立方体の面上における第1特定代表値REV1を用いた内挿によって、ステップS114にて選択された第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を算出する。具体的には、外挿処理部M242は、対象とする第2特定代表値REV2と同一層の立方体の面上において、4つの第1特定代表値REV1を頂点とする最小の正方形であって、対象とする第2特定代表値REV2を含む正方形を特定する。外挿処理部M242は、特定された正方形の頂点に位置する4つの第1特定代表値REV1と、これらに対応付けられたLab値を用いた内挿によって、対象とする第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を算出する。対応付けられたLab値には、本実施例ではステップS112において算出されたLab値が用いられるが、ステップS105において三角錐補間によって算出されたLab値がある場合には、そのLab値を用いても良い。内挿には、いわゆる2次元線形法が用いられる。例えば、図8の下側に式を示すように、図8に2重丸で示した第2特定代表値REV2(1、4、−1)に対応付けるLab値を表すベクトルLab(−1、4、−1)は、{S1×Lab(0、4、−4)+S2×Lab(4、4、−4)+S3×Lab(0、4、0)+S4×Lab(4、4、0)}/Stotalとされる。S1〜S4は、図8においてそれぞれ異なるハッチングで示した領域の面積であり、Stotalは、S1〜S4の和である。
【0054】
ステップS116では、外挿処理部M242は、第2特定代表値REV2の全てを上述したステップS114にて選択したか否かを判断する。外挿処理部M242は、全ての第2特定代表値REV2を選択したと判断すると(ステップS116:YES)、ステップS117に処理を進める。外挿処理部M242は、未だ選択されていない第2特定代表値REV2があると判断すると(ステップS116:NO)、ステップS114に戻って未選択の第2特定代表値REV2を選択し、上述したステップS115の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS117では、代表対応データ生成部M24は、4913個の各代表値REVについて、採用するLab値を最終的に決定して、ICCプロファイルPFDを作成する。すなわち、上述した処理では、1つの代表値REVについて、ステップS104〜S108において得られたLab値(三角錐補間または最近傍法による)と、ステップS110〜ステップS116において得られたLab値(単位ベクトルを用いた外挿および当該外挿結果を用いた内挿による)とが重複している。代表対応データ生成部M24は、以下に示す2種類の基準のいずれか一方に従って、4913個の各代表値REVについて採用するLab値をそれぞれ決定する。
【0056】
・基準1
a)三角錐補間によって得られたLab値がある代表値REVに対応付けるLab値には、三角錐補間によって得られたLab値を採用する。b)三角錐補間によって得られたLab値がない代表値REVに対応付けるLab値には、最近傍法によって得られたLab値を採用せずに、ステップS110〜ステップS116において定められたLab値を採用する。
【0057】
・基準2
a)三角錐補間によって得られたLab値がある代表値REVに対応付けるLab値には、三角錐補間によって得られたLab値を採用する。b)三角錐補間によって得られたLab値がない代表値REVのうち、最近傍法によって得られたLab値に妥当性があると判断される代表値REVには、最近傍法によって得られたLab値を採用する。c)三角錐補間によって得られたLab値がない代表値REVのうち、最近傍法によって得られたLab値に妥当性がないと判断される代表値REVには、最近傍法によって得られたLab値を採用せずに、ステップS110〜ステップS116において算出されたLab値を採用する。
ここで、最近傍法によって定められたLab値に妥当性があるか否かの判断は、そのLab値が対応付けられている代表値REVと、そのLab値が参照対応データCODにおいて対応付けられている参照値SV(最近傍参照値)との距離がしきい値以下であるか否かによって行われる。すなわち、代表対応データ生成部M24は、代表値REVに、しきい値より近い最近傍参照値が存在する場合には、その代表値REVについて最近傍法によって定められたLab値に妥当性があると判断する。一方、代表対応データ生成部M24は、代表値REVに、しきい値より近い最近傍参照値が存在しない場合には、その代表値REVについて最近傍法によって定められたLab値に妥当性がないと判断する。しきい値は、例えば、代表値REVで形成される最小の立法体の対角線の長さ、すなわち、置換値で表すと、3の平方根に設定される。
【0058】
図9は、基準2が用いられる場合に、代表値REVについて採用されるLab値について概念的に示す図である。図9には、図7と同様の平面が示されている。図9において、クロスハッチングされた領域A1は、参照対応データCODの参照値SVが分布している参照値分布領域であり、この領域A1にある代表値REV(図9:1重丸)は、ほぼ、三角錐補間が適用可能である。シングルハッチングされたベクトル外挿採用領域A2にある代表値REV(図9:2重丸)には、ステップS110〜ステップS116(図3)において定められたLab値が採用される。参照値分布領域A1とベクトル外挿採用領域A2との間の領域は、最近傍法採用領域A3であり、この領域A3にある代表値REV(図9:黒丸)には、最近傍法によって定められたLab値が採用される。
【0059】
ICCプロファイルPFDが作成されると、サーバ100のプロファイル作成部M20は、作成されたICCプロファイルPFDを、クライアントである複合機200に対して送信して(ステップS118)、処理を終了する。
【0060】
複合機200のプロファイル更新部M30は、サーバ100からICCプロファイルPFDを受信すると、当該ICCプロファイルPFDを記憶装置240に格納(更新)して(ステップS230)、処理を終了する。
【0061】
以上説明した色変換テーブル作成システム1000によれば、参照値SVを用いた内挿である三角錐補間が適用可能な代表値REV(三角錐補間可能代表値)は、三角錐補間によってLab値を対応づける。そして、三角錐補間可能代表値と、当該代表値に対応付けられたLab値を用いた外挿によって、他の代表値REVに対応付けるLab値を決定する。この結果、三角錐補間によって対応付けるLab値を決定することができない代表値が存在する場合でも、上記外挿によって当該代表値REVに適切なLab値を対応付けることができる。この結果、複合機200のスキャナ部280が生成した画像データを、CIELAB色空間で適切に再現できるICCプロファイルPFDを作成することができる。
【0062】
さらに、上記外挿は、三角錐補間可能代表値である中心Oと、第1層の代表値REVとを結ぶ単位ベクトルと、単位ベクトルに対応するLab値の変化量ΔLabを用いて、単位ベクトルの延長線上、すなわち、単位ベクトルを形成する2つの代表値REVを通る直線上に位置する第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を決定する。さらに、第1特定代表値REV1と、第1特定代表値REV1に対応付けられたLab値とを用いた内挿である2次元線形法を用いて、第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を決定する。この結果、第1特定代表値REV1および第2特定代表値REV2に対応付ける適切なLab値を容易に決定することができる。
【0063】
第1特定代表値REV1は、第3〜第8層の各立方体について、各頂点、各辺の中心、各面の中心の計26カ所ずつ選択されている。このように選択することによって、第1特定代表値REV1を用いた内挿によって、第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を漏れなく決定することができる。第1特定代表値REV1を用いた内挿によれば、第1特定代表値REV1を用いた外挿よりも第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を精度良く算出することができる。そして、全ての第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を適切に決定できるように、第1特定代表値REV1と中心Oとを結ぶ線分上に位置する単位ベクトルを形成するための代表値REVが選択されている。すなわち、中心Oと、第1層の立方体の各頂点、各辺の中心、各面の中心の計26カ所を結ぶ単位ベクトル(図6)を形成している。従って、単位ベクトルを正の方向に延長することで、全ての第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を算出できるので、当該Lab値を精度良く算出することができる。この結果、第1特定代表値REV1および第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を適切に決定することができる。
【0064】
さらに、各単位ベクトルを形成する始点となる中心Oは、スキャナRGB色空間SCPの無彩色軸GL(図2)上に位置している。この結果、単位ベクトルに対応するLab値の変化量ΔLabが予期しない色相の変化をもたらす可能性を、無彩色軸GLを跨ぐ単位ベクトルを形成する場合より低くすることができる。そして、これらの単位ベクトルの方向にある第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を決定するので、このLab値が予期しない値になる可能性を低減できる。
【0065】
さらに、各単位ベクトルを形成する始点を、スキャナRGB色空間SCPの中心Oとしているので、一つの単位ベクトルで多数の第1特定代表値REV1に対応づけるLab値を決定することができる。この結果、少ない数の単位ベクトルを用いて効率良く、代表値REVに対応付けるLab値を決定することができる。
【0066】
さらに、参照値SVを用いた内挿である三角錐補間によって代表値REVに対応づけるLab値を決定する手法を、外挿より優先して用いるので、代表値REVにより適切なLab値を対応付けることができる。
【0067】
さらに、上記実施例におけるステップS117において、上述した基準2(図9参照)を用いる場合には、最近傍法をさらに併用するので、代表値REVに対応付けるLab値をより適切に決定することができる。具体的には、三角錐補間を用いて対応付けるLab値を決定することができない代表値REVについて、しきい値より近い距離に最近傍参照値が存在するかに応じて、適宜に最近傍法を採用する。この結果、最近傍法と、三角錐法を適用可能な代表値REVを用いた外挿とを使い分けて、対応付けるLab値を適切に決定することができる。
【0068】
図10は、上記実施例における作成方法で作成したICCプロファイルPFDと比較例における作成方法で作成したICCプロファイルとを比較するグラフである。なお、実施例のICCプロファイルPFDは、上述したステップS117では基準1を採用した。また、比較例における作成方法は、実施例と同じ参照対応データCODを用いて、三角錐補間が適用可能な代表値REVには、三角錐補間を用いてLab値を対応付け、三角錐補間が適用できない代表値REVには、最近傍法を用いてLab値を対応付ける方法である。
【0069】
図10(a)には、所定の代表値REVに、実施例のICCプロファイルPFDにおいて対応付けられているLab値のa*およびb*の値(丸印)と、比較例のICCプロファイルにおいて対応付けられているLab値のa*およびb*の値(菱形印)が示されている。また、図10(b)には、所定の代表値REVに、実施例のICCプロファイルPFDにおいて対応付けられているLab値のL*の値(丸印)と、比較例のICCプロファイルにおいて対応付けられているLab値のL*の値(四角印)が示されている。ここで、黒い印は、スキャナRGB色空間SCP(図2)におけるW点とC点とを結ぶ線(線W−Cと呼ぶ。)上の17個の代表値REV(k、8、8)(kは、−8≦k≦8の整数)について示している。また、白い印は、スキャナRGB色空間SCPにおけるW点とY点とを結ぶ線より1層内側の線(線W−Yと呼ぶ。)上の15個の代表値REV(8、8、j)(jは、−7≦j≦7の整数)について示している。
【0070】
線W−Cについての見ると、実施例のICCプロファイルPFDでは、比較例のICCプロファイルと比較して、色の変化が均等でかつ滑らかに再現できることが解る。特に、C点近傍(上述したk=−8〜−5)で特に実施例と比較例との差が顕著である。このように、実施例では、参照値を得ることが困難なスキャナRGB色空間SCPの色域表面近傍の色を、CIELAB色空間において、滑らかに再現することができる。
【0071】
スキャナRGB色空間SCPの色域表面から1層内側について見ても、図10に示す線W−Yについて見ると解るように、実施例のICCプロファイルPFDでは、比較例のICCプロファイルと比較して、色の変化が均等でかつ滑らかに再現できることが解る。
【0072】
B.変形例:
この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0073】
(1)上記実施例では、スキャナRGB色空間の表色値をCIELAB色空間の表色値に変換するためのICCプロファイルを作成しているが、これに代えて、例えば、デジタルカメラの機器依存RGB色空間の表色値をCIELAB色空間の表色値に変換するためのICCプロファイルの作成に本発明を適用しても良い。また、CIELAB色空間にの代わりに、他のあらゆる機器独立色空間、例えば、CIEXYZ色空間、CIELUV色空間が採用され得る。また、ICCプロファイルに限らず、機器依存色空間の表色値を、他のあらゆる色空間に変換する色変換テーブルの作成に本発明を適用しても良い。一般的に言えば、対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置に依存する機器依存色空間における表色値を、当該機器依存色空間とは異なる色空間における表色値に変換する色変換テーブルの作成に本発明を適用することができる。
【0074】
(2)上記実施例において測色データSPDおよびスキャンデータSCDを生成するためのカラーチャート400a、400bは一例であり、他の種類のカラーチャートを用いても良い。例えば、IT8.7/2標準カラーチャートや、IT8.7/3標準カラーチャートを用いても良い。
【0075】
(3)上記実施例における単位ベクトルの始点は、スキャナRGB色空間SCPの中心Oであるが、単位ベクトルの始点は、無彩色軸GL上の他の代表値REVであっても良い。また、単位ベクトルの始点は、1つの点に限られず、例えば、無彩色軸GL上に複数設定されても良い。また、単位ベクトルの始点は、無彩色軸GL上ではない代表値REVであっても良い。同様に、単位ベクトルの終点は、第1層の代表値REV以外の代表値REVであっても良い。単位ベクトルは、三角錐補間が適用可能な任意の2つの代表値REVによって形成されることが好ましい。また、単位ベクトルは、スキャナRGB色空間SCPの内側から外側へ向かう方向であることが好ましい。内側から外側へ向かう単位ベクトルであれば、一般的に参照点が少ないスキャナRGB色空間SCPの色域表面の代表値REVを決定するために用いるのに適切だからである。ここで、色空間において内側から外側へ向かう方向は、色空間の中心から遠ざかる方向とも言うことができる。また、単位ベクトルは、Lab値を対応付ける必要がある第2特定代表値REV2を適切に決定するのに必要な第1特定代表値REV1の全てが、いずれかの単位ベクトルの延長線上に位置するように、適切な数だけ形成されることが好ましい。
以上の説明から解るように、上記実施例におけるスキャナRGB色空間SCPの中心Oは、請求項における第1の代表値の一例であり、上記実施例における第1層の26個の代表値REVは、請求項における第2の代表値の一例である。また、上記実施例における第1特定代表値REV1は、請求項における第3の代表値の一例であり、上記実施例における第2特定代表値REV2は、請求項における第4の代表値の一例である。
【0076】
(4)上記実施例における三角錐補間を適用可能な代表値REVで形成した単位ベクトルを用いて、第1特定代表値REV1に対応付けるLab値を決定しているが、これに限らず、参照値を用いた内挿によって対応付けるLab値を決定可能な代表値REVを用いて、他の代表値REVに対応付ける代表値REVを決定するあらゆる方法を採用可能である。
以上の説明から解るように、上記実施例における三角錐補間は、請求項における参照値を用いた内挿の一例であり、上記実施例における単位ベクトルに基づいて第1特定代表値REV1および第2特定代表値REV2に対応付けるLab値を求める方法は、請求項における外挿の一例である。
【0077】
(5)上記実施例の色変換テーブル作成システム1000は、複合機200(スキャナ)のユーザがICCプロファイルを更新するために用いられているが、用途はこれに限られるものではない。例えば、スキャナ、スキャナを備える複合機やコピー機、デジタルカメラ等の画像データ生成装置の製造者がICCファイルを作成するために用いられても良い。この場合には、色変換テーブル作成システム1000の構成は、用途に応じて適宜に変更され得る。例えば、実施例におけるサーバ100と複合機200とは、通信可能に接続されていれば良く、インターネット700を介することなく、LANを介して接続されていても良いし、専用の通信ケーブルで接続されていても良い。
【0078】
(6)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100...サーバ、200...複合機、270...プリンタ部、280...スキャナ部、300...計算機、400a、400b...カラーチャート、M20...プロファイル作成部、M30、M40...プロファイル更新部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置に依存する機器依存色空間である第1の色空間における表色値である第1種表色値の複数の代表値に、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間における表色値である第2種表色値を対応付けた色変換テーブルの作成方法であって、
(a)複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを対象物として前記画像データ生成装置を用いて生成される、前記カラーチャートの各カラーパッチの色をそれぞれ表す複数の前記第1種表色値である複数の参照値を取得する工程と、
(b)前記(a)工程において取得された複数の前記参照値のそれぞれに、前記参照値に対応する前記カラーパッチの色を表す前記第2種表色値を対応付けた対応データを生成する工程と、
(c)前記対応データを用いて、前記第1種表色値の複数の代表値に対応付ける前記第2種表色値をそれぞれ決定する工程と、
を備え、
前記(c)工程は、
(c−1)前記参照値を用いた内挿によって、前記複数の代表値の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する工程と、
(c−2)前記内挿によって前記第2種表色値が対応付けられた前記代表値を用いた外挿によって、前記複数の代表値の他の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する工程と、
を備える、作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作成方法であって、
前記(c−2)工程は、
(c−2−1)前記(c−1)工程において、それぞれ前記第2種表色値が対応付けられた第1の代表値と第2の代表値とを結ぶベクトルと前記ベクトルに対応する前記第2種表色値の変化量を決定する工程と、
(c−2−2)前記第1の色空間において前記第1の代表値と前記第2の代表値を通る直線上に位置する第3の代表値に対応付ける前記第2種表色値を前記ベクトルと前記変化量を用いて決定する工程と、
(c−2−3)前記(c−2−2)工程において、それぞれ前記第2種表色値が対応付けられた複数の前記第3の代表値を用いた内挿を用いて、前記第3の代表値とは異なる第4の代表値に対応付ける前記第2種表色値を決定する工程と、
を備える、作成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の作成方法であって、
複数の前記第3の代表値は、前記第4の代表値を内挿できるように設定される、作成方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の作成方法であって、
前記第2の代表値は、前記第1の代表値と前記第3の代表値を結ぶ線分上に位置するように設定される、作成方法
【請求項5】
請求項4に記載の作成方法であって、
前記第1の代表値は、前記第1の色空間の無彩色軸上に位置する前記第1種表色値である、作成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の作成方法であって、
前記第1の代表値は、前記第1の色空間の中心に位置する前記第1種表色値である、作成方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の作成方法であって、
前記(c−1)工程において、前記参照値を用いた内挿によって前記対応付ける前記第2種表色値を決定することができる前記代表値は、前記(c−1)工程において、対応付ける前記第2種表色値が決定され、
前記(c−1)工程において、対応付ける前記第2種表色値を決定することができない前記代表値は、前記(c−2)工程において、対応付ける前記第2種表色値が決定される、作成方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の作成方法であって、
前記(c)工程は、さらに、
(c−3)前記(c−1)工程および前記(c−2)工程において、前記第2種表色値が対応付けられる前記代表値とは異なる前記代表値に、前記第1の空間における距離が最も近い前記参照値に対応付けられた前記第2種表色値を対応付ける工程
を備える、作成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の作成方法であって、
前記(c−1)工程において、前記参照値を用いた内挿によって対応付ける前記第2種表色値を決定することができる前記代表値は、前記(c−1)工程において、対応付ける前記第2種表色値が決定され、
前記(c−1)工程において、対応付ける前記第2種表色値を決定することができない前記代表値のうち、第1の空間における距離がしきい値より近い前記参照値が存在する前記代表値は、前記(c−3)工程において、対応付ける前記第2種表色値が決定され、
前記(c−1)工程において、対応付ける前記第2種表色値を決定することができない前記代表値のうち、前記第1の空間における距離が前記しきい値より近い前記参照値が存在しない前記代表値は、前記(c−2)工程において対応付ける前記第2種表色値が決定される、作成方法。
【請求項10】
対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置に依存する機器依存色空間である第1の色空間における表色値である第1種表色値の複数の代表値に、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間における表色値である第2種表色値を対応付けた色変換テーブルを作成する作成装置であって、
複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを対象物として前記画像データ生成装置を用いて生成される複数の参照値であって、前記カラーチャートの各カラーパッチの色をそれぞれ表す複数の前記第1種表色値である前記複数の参照値のそれぞれに、前記参照値に対応する前記カラーパッチの色を表す前記第2種表色値を対応付けた対応データを取得する参照対応データ取得部と、
前記対応データを用いて、前記第1種表色値の複数の代表値に対応付ける前記第2種表色値をそれぞれ決定する代表対応データ生成部と、
を備え、
前記代表対応データ生成部は、
前記参照値を用いた内挿を用いて、前記複数の代表値の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する内挿処理部と、
前記内挿を用いて前記第2種表色値が対応付けられた前記代表値を用いた外挿を用いて、前記複数の代表値の他の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する外挿処理部と、
を備える、作成装置。
【請求項11】
対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置に依存する機器依存色空間である第1の色空間における表色値である第1種表色値の複数の代表値に、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間における表色値である第2種表色値を対応付けた色変換テーブルを作成するコンピュータプログラムであって、
複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを対象物として前記画像データ生成装置を用いて生成される複数の参照値であって、前記カラーチャートの各カラーパッチの色をそれぞれ表す複数の前記第1種表色値である前記複数の参照値のそれぞれに、前記参照値に対応する前記カラーパッチの色を表す前記第2種表色値を対応付けた対応データを取得する参照対応データ取得機能と、
前記対応データを用いて、前記第1種表色値の複数の代表値に対応付ける前記第2種表色値をそれぞれ決定する代表対応データ生成機能と、
をコンピュータに実現させ、
前記代表対応データ生成機能は、
前記参照値を用いた内挿を用いて、前記複数の代表値の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する内挿処理機能と、
前記内挿を用いて前記第2種表色値が対応付けられた前記代表値を用いた外挿を用いて、前記複数の代表値の他の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する外挿処理機能と、
を含む、コンピュータプログラム。
【請求項12】
機器依存色空間である第1の色空間における表色値である第1種表色値の複数の代表値に、前記第1の色空間とは異なる第2の色空間における表色値である第2種表色値を対応付けた色変換テーブルを作成する作成システムであって、
前記第1種表色値によって対象物を表す画像データを生成する画像データ生成装置と、
複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを対象物として前記画像データ生成装置を用いて生成される複数の参照値であって、前記カラーチャートの各カラーパッチの色をそれぞれ表す複数の前記第1種表色値である前記複数の参照値を取得する参照値取得手段と、
取得された前記参照値のそれぞれに、前記参照値に対応する前記カラーパッチの色を表す前記第2種表色値を対応付けた対応データを生成する参照対応データ生成手段と、
前記対応データを用いて、前記第1種表色値の複数の代表値に対応付ける前記第2種表色値をそれぞれ決定する代表対応データ生成手段と、
を備え、
前記代表対応データ生成手段は、
前記参照値を用いた内挿を用いて、前記複数の代表値の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する内挿処理手段と、
前記内挿を用いて前記第2種表色値が対応付けられた前記代表値を用いた外挿を用いて、前記複数の代表値の他の一部に対応付ける前記第2種表色値を決定する外挿処理手段と、
を備える、作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249053(P2012−249053A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118821(P2011−118821)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】