説明

色素増感型太陽電池

【課題】そのシール材が、長期にわたる封止において膨潤や劣化を生じず、しかもシール性が極めて高い色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】不透明または半透明で他方が透明である一対の電極基板1,1’がそれらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記一対の電極基板1,1’間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部にシール材7を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液5が封入されてなる色素増感型太陽電池であって、上記シール材7が下記の(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材7と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆されている。
(A)分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極基板を対向して接着シールし、電解質液を封入してなる色素増感型太陽電池に関し、シール材が耐電解質液性に富み、接着シール性が高く耐久性に優れている色素増感型太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
色素が担持されたTiO等の半導体膜付き透明導電基板と対向電極基板との間に、レドックス系電解質液を封入した色素増感型太陽電池は、太陽光の変換効率が高いことから、次世代低価格太陽電池として有望視されている。
【0003】
しかし、ヨウ素やヨウ化リチウム等のレドックス系電解質液をガラス基板やプラスチックフィルム基板に封入した場合、従来から使用されているエチレン−メタクリル酸共重合アイオノマー樹脂をシール材料として用いると、上記電解質液の液漏れや外界からの吸湿を防止することができないため、この種の色素増感型太陽電池は、耐久性に劣るという問題があった。一方、液晶シール材料として、公知のエポキシ樹脂系シール材料やウレタン樹脂系シール材料、光硬化アクリル樹脂系シール材料が用いられているが、これらシール材料は、その極性構造に由来して電解質液による膨潤が生じ、それによって色素増感型太陽電池の構造に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
このようなことから、液状エポキシ樹脂やシリコーン樹脂を用い、上記電解質液を封止(シール)することが提案されている(特許文献1参照)。一方、耐電解質液性に比較的優れるエラストマーを用いた色素増感型太陽電池用シール材料として、シランカップリング剤を含有し、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有する、ポリイソプレン系重合体とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、ヒドロシリル化触媒により重合してなるシール材が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−30767号公報
【特許文献2】特開2004−95248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の封止材料(シール材)は、長期にわたる封止の際に、電解質液により樹脂の膨潤や劣化等が起き、シール材として充分な性能を有していない。また、上記特許文献2に記載のシール材を硬化するには、80〜150℃の加熱を必要とし、この加熱による電解質液の蒸発等によって、シール材の接着部分に剥離が生じ電解質液が液漏れしてしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、そのシール材が、長期にわたる封止において膨潤や劣化を生じず、しかもシール性が極めて高い色素増感型太陽電池の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、一方が不透明または半透明で他方が透明である一対の電極基板がそれらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記一対の電極基板間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部にシール材を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液が封入されてなる色素増感型太陽電池であって、上記シール材が下記の(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆されていることを第1の要旨とする。
(A)分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物。
【0008】
また、本発明は、少なくとも一方が透明である一対の電極基板がそれらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記一対の電極基板間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部にシール材を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液が封入されてなる色素増感型太陽電池であって、上記少なくとも一方の電極基板の内側面に、所定形状の集電配線用導電材が分布配設された状態で、その集電配線用導電材が被覆保護材により被覆保護され、上記シール材および上記被覆保護材が下記の(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆され、上記被覆保護材と接する集電配線用導電材の部分がガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方により被覆されていることを第2の要旨とする。
(A)分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物。
【0009】
<本発明に至る経緯>
本発明者らは、色素増感型太陽電池において、耐電解質液性および接着性に優れ、しかも高い耐久性を備えた封止を実施するため、研究を重ねた。その過程で、封止材として光重合性樹脂を有効成分とする光重合性樹脂組成物が有用であると想起し、さらに研究を重ねた。その結果、封止材として、光重合性樹脂組成物のなかでも特定のものが有効であること、さらに、その封止材が電極基板と接する部分にも特殊表面被覆処理を施すことが、効果の発現のために必須であることを見いだすに至った。
【0010】
そして、これまで本発明者らは、色素増感型太陽電池の電極基板として、「一対の透明導電電極膜を有するガラス基板」のような透明な電極基板を用いることを前提とし、この一対の、電極基板の両方が透明な、色素増感型太陽電池の封止材について鋭意検討を行い、それにもとづき既に、特許出願(特願2007−110739)を行っている。
【0011】
しかしながら、本発明者らが、さらに研究を重ねた結果、色素増感型太陽電池は、電極基板の両方が透明である必要はなく、一方のみが透明であれば、他方の電極基板は必ずしも透明である必要はないことが判明した。そして、他方の電極基板としては、様々な材質の基板を用いることができるが、上記封止材および特殊表面被覆処理は、このような様々な材質の基板に対しても用いることができることが判明した。
【0012】
さらに、上記封止材の構成材料である特定の光重合性樹脂組成物は、色素増感型太陽電池の封止材として用いるだけでなく、電極基板の内側面(電解質液側)に配設される集電配線用導電材の、電解質液からの浸食を防止するコーティング材として用いた場合においても、非常に有用であることを見いだしたものである。
【0013】
このように、本発明者らは、本発明の最大の特徴である、前記特定の光重合性樹脂組成物を、基板材質に左右されることのない封止材として用いること、また、封止材だけでなく、上記配線用導電材のコーティング材、すなわち配線用導電材の被覆保護材としても用いることを見いだし、本発明に到達するに至ったものである。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の色素増感型太陽電池は、シール材が、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、かつ上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆されている。すなわち、本発明では、シール材が光重合性硬化体からなるため加熱硬化が不要となり、加熱による電解質液の蒸発に伴うシール部の剥離が生じない。また、シール材としての上記光重合性硬化体は、特殊な光重合性組成物(A)からなるものであり、長期にわたる封止の際にも、電解質液による膨潤や劣化が生じない。そのうえ、電極基板に対する上記特定のシランカップリング剤の作用と相まって、高い接着力を発揮し、高度な耐久性を発現する。
【0015】
そして、上記シランカップリング剤は、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤であり、その使用により、電極基板の表面被覆処理層に光重合が可能な(メタ)アクリロイル基が存在することになり、これが光重合性組成物(A)中の(メタ)アクリロイル基とともに光重合の際、同時に反応し、強固な接着性を発現する。
【0016】
また、本発明において、一方の不透明または半透明な電極基板が、金属からなるものであると、より光電変換効率に優れるようになる。
【0017】
さらに、一方の不透明または半透明な電極基板が、カーボン製導電膜を有する基板からなるものであると、より安価で、より軽い色素増感型太陽電池が得られるようになる。
【0018】
また、電極基板の内側面に、所定形状の集電配線用導電材が分布配設された状態で、その集電配線用導電材が被覆保護材により被覆保護され、上記シール材および上記被覆保護材が上記光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆され、上記被覆保護材と接する集電配線用導電材の部分がガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方により被覆されていると、集電配線の断線等が防止でき色素増感型太陽電池の故障を防ぐことができるとともに、シール材と被覆保護材とで同じ材料を用いることができることから、より生産性・作業性が向上するようになる。
【0019】
そして、光重合性組成物(A)が層状珪酸塩または絶縁性球状無機質充填剤を含有しているときには、シール材および被覆保護材等の透湿度が低減し、長期にわたる封止においても大気中からの吸湿量が少なく、耐久性に一層優れるようになり、さらに、チクソトロピー性が増加し、シール幅の寸法精度が向上するようになる。
【0020】
さらに、シランカップリング剤として、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたときには、シール材の接着性に一層優れるようになる。
【0021】
また、水添エラストマー誘導体の主鎖として、水添ポリブタジエンまたは水添ポリイソプレンからなるものを用いたときには、主鎖の非極性構造により、電解質液に対する耐久性がより一層優れるようになる。
【0022】
さらに、水添エラストマー誘導体が、ポリイソシアネートを連結基として水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを、反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体または水添ポリイソプレン誘導体のときには、シール材および被覆保護材等の接着性により一層優れるようになり、耐久性に優れるようになる。
【0023】
また、水添エラストマー誘導体が、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを、反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体または水添ポリイソプレン誘導体のときにも上記と同様、シール材および被覆保護材等の接着性により一層優れるようになり、耐久性に優れるようになる。
【0024】
そして、光重合性組成物(A)として、水添エラストマー誘導体に加えて、ポリ(メタ)アクリレート化合物類を用いるときには、シール材および被覆保護材等の架橋密度が高まり、耐久性に一層優れるようになり、また、光重合開始剤を用いるときには、紫外線(UV)硬化性に優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0026】
本発明の色素増感型太陽電池は、先に述べたように第1の要旨と第2の要旨とからなり、これらは、つぎに示す同一の特別な技術的特徴を有する。すなわち、一対の電極基板と、シール材と、上記電極基板とシール材により形成された閉じた空間に封入されている電解質液とを備えた色素増感型太陽電池において、シール材が、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆されているという構成に、本発明の最大の特徴がある。なお、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、下記に示すアクリロイル基およびそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0027】
【化1】

【0028】
まず、本発明のうち、第1の要旨に係る色素増感型太陽電池(以下、「電池I」という場合がある)について説明する。
【0029】
《電池I》
電池Iは、通常、図1に例示される構造になっている。すなわち、電池Iには、不透明または半透明である電極基板1’と、透明である電極基板1が、それらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記電極基板1,1’間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部に、本発明の特徴である特殊な光重合性組成物(A)からなるシール材7(メインシール)を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液5が封入されている。そして、シール材7と接する電極基板1,1’の部分には、本発明で用いる特殊なシランカップリング剤からなる被覆膜7’が形成されている。
【0030】
そして、電池Iは、通常、図1に例示するように、上記電極基板1上に、酸化チタン膜等の多孔質半導体膜3が形成されており、この多孔質半導体膜3に増感色素4が吸着している。また、他方の電極基板1’の導電電極面には、白金等の極薄膜からなる触媒膜6が形成されている。これにより、図1では、上側の電極基板1’が正極となり、下側の電極基板1が負極となる。
【0031】
また、電池Iには、図1の電極基板1’に示すように、通常、電解質液を注入するための開孔部が設けられているが、この開孔部は、シール材8(エンドシール)によりシールされ、このシールは薄片ガラス等の封着材9により封着されるのが一般である。以下、この図1の電池Iにもとづき本発明の電池Iを説明するが、本発明はこの図1に限定されるものではない。以下、電池Iの各構成について項を分けて説明する。
【0032】
〈電極基板1,1’〉
上記正極の電極基板1’は、不透明または半透明な電極基板であり、負極の電極基板1が透明な電極基板である。そして、上記透明とは、通常、可視光線透過率80%を超えるもののことをいい、半透明とは、可視光線透過率0%を超え80%以下のことをいい、不透明とは可視光線透過率0%のことをいう。本発明における可視光線透過率は、市販されている一般的な可視光線透過率測定器で測定することができる。
【0033】
上記透明な電極基板1としては、透明であれば特に限定されるものではない。このような透明な電極基板の基板としては、例えば、白板ガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラス、セラミックス等からなる無機質製基板、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂製基板、有機無機ハイブリット基板等があげられる。なかでも、耐熱性等の点から、無機質製基板であることが好ましい。
【0034】
そして、一般に、上記透明基板には導電性がないことから、この透明基板を電極基板とするため、この透明基板を支持基板とし、この片面に透明導電膜が備えられる。この透明導電膜としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO),フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、酸化スズ等が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、透明な支持基板そのものが、導電性プラスチックのように、導電性を有する材質からなるものであれば、透明導電膜を備える必要はなく、支持基板そのものを電極基板として用いることができる。
【0035】
つぎに、前記不透明または半透明な電極基板1’としては、上記のように、通常、可視光線透過率が80%以下のものをいうが、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下である。
【0036】
このような不透明または半透明な電極基板1’の材質としては、大きく分けて、つぎの2つに分類される。まず1つ目に分類される電極基板は、基板自体が導電性を有する不透明または半透明な基板である。このような基板としては、例えば、チタン、タングステン、金、銀、銅等の金属からなる基板、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン等のカーボンからなる基板があげられ、具体的には、金属やカーボンを主成分とする基板であればよい。ここで主成分とするとは、全体の過半を占める成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む趣旨である。なお、この場合には、基板自体を電極基板とすることができるため、特に導電膜等を基板に設ける必要はない。
【0037】
2つ目に分類される電極基板は、基板自体に導電性がない、または基板自体の導電性が低いことから、基板に充分な導電性を付与するため、基板を支持基板として、この支持基板に導電膜等を設けたものであって、全体として不透明または半透明な電極基板である。このような電極基板は、その支持基板としては透明・不透明を問わないが、通常、導電膜が不透明または半透明であることから、電極基板全体として、不透明または半透明となるものである。
【0038】
このような電極基板の支持基板としては、例えば、特に制限されるものではないが、ガラス等の無機質製基板、樹脂製基板等があげられる。なかでも、耐久性の点から、無機質製基板が好ましい。また、上記導電膜としては、特に制限されるものではないが、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン等からなるカーボン製の導電膜や、チタン、金、銀、銅等からなる金属製の導電膜等があげられる。なかでも、軽さの点から、カーボン製の導電膜が好ましい。また、導電膜は、多層積層体であってもよい。
【0039】
また、上記導電膜は、厚みを変えることにより半透明から不透明へと、可視光線透過率を変化させることができる。上記導電膜の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましい。
【0040】
なお、本発明においては、上記負極の電極基板1が不透明または半透明な電極基板で、正極の電極基板1’が透明な電極基板であってもよい。
【0041】
〈多孔質半導体膜3〉
つぎに、上記電極基板1上に形成される多孔質半導体膜3は、特に制限されるものではないが、例えば、酸化チタン等からなる多孔質のn型金属酸化物半導体であることが好ましい。また、多孔質半導体膜3を形成する半導体粒子は、粒状体、針状体,チューブ状体,柱状体等の線状体、またはこれら種々の線状体が集合してなるものが好適である。
【0042】
〈増感色素4〉
また、上記多孔質半導体膜3に吸着している増感色素4としては、例えば、太陽光の波長300〜2000nmの光を吸収し、かつ多孔質半導体膜3に吸着する増感色素等があげられる。増感色素4の材料としては、例えば、シリコン,砒化ガリウム,インジウムリン,カドミウムセレン,硫化カドミウム,CuInSe等の無機系半導体、酸化クロム,酸化鉄,酸化ニッケル等の無機顔料、ルテニウム錯体系,ポルフィリン系,フタロシアニン系,メロシアニン系,クマリン系,インドリン系等の有機色素等があげられる。
【0043】
〈電解質液5〉
さらに、上記両電極基板1,1’間の空隙に封入される電解質液5は、電解質を含有する液体のことであり、電解質と液体媒体とからなる。電解質としては、例えば、ヨウ素系の第4級アンモニウム塩、リチウム塩等があげられる。液体溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリル等があげられ、これにヨウ化テトラプロピルアンモニウム,ヨウ化リチウム,ヨウ素等を混合して電解質液が調製される。
【0044】
〈触媒膜6〉
また、前記電極基板1,1’のうち、図1中の上側の電極基板1’には、電極基板の内側面(電解質液側)に、白金あるいはカーボン等の極薄膜からなる触媒膜6が設けられる。これにより、電極基板1’において、正孔の移動性がよくなる。なかでも、白金蒸着膜がより好ましく用いられる。ただし、この触媒膜6は、必須の構成ではない。
【0045】
〈被覆膜7’〉
電極基板1,1’のシール材7との接触部分には、先に述べた(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤の塗布等による被覆膜7’が形成されている。この(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤としては、例えば、アクリロキシアルキルシラン、メタクリロキシアルキルシラン等があげられる。好適には、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがあげられ、より好適には、光重合反応性が高い3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランがあげられる。これら(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0046】
〈シール材〉
電極基板1,1’の間に介装されるシール材7は、前記光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体からなる。この光重合性組成物(A)は、水添エラストマー誘導体を必須成分とするものであり、好ましくは主成分とするものである。その水添エラストマー誘導体は、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有していれば、特に限定するものではないが、その水添エラストマー誘導体の主鎖が、水添ポリブタジエンまたは水添ポリイソプレンからなることが好ましい。
【0047】
この水添エラストマー誘導体の主鎖となる水添ポリブタジエンとしては、例えば、水添1,4−ポリブタジエン、水添1,2−ポリブタジエン、水添1,4−ポリブタジエンと水添1,2−ポリブタジエンとの共重合体等があげられる。また、水添ポリイソプレンとしては、例えば、水添1,4−ポリイソプレン、水添1,2−ポリイソプレン、水添1,4−ポリイソプレンと水添1,2−ポリイソプレンとの共重合体等があげられる。
【0048】
上記水添エラストマー誘導体として、さらに好ましくは、ポリイソシアネートを連結基として、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを、反応させて得られる水添ポリブタジエン誘導体(a1成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a2成分)がある。また、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを、反応させて得られる水添ポリブタジエン誘導体(a3成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a4成分)もある。
【0049】
ここで、ポリイソシアネートを連結基として、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを、反応させて得られる水添ポリブタジエン誘導体(a1成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a2成分)の合成に用いる各成分について述べる。
【0050】
上記水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールとしては、両末端に水酸基等の反応性官能基を有するテレキリックポリマーであることが好ましく、例えば、両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンまたは水添ポリイソプレン等があげられる。
【0051】
水添ポリブタジエンポリオールとしては、好適には数平均分子量が500〜5000の液状水添ポリブタジエンポリオールがあげられ、上記水添ポリイソプレンポリオールとしては、好適には数平均分子量が500〜130000の液状水添ポリイソプレンポリオールがあげられる。
【0052】
上記連結基として作用するポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでもヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の飽和ジイソシアネートが好適に用いられる。
【0053】
また、上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等の単官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の2官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(グリセリンジメタクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多管能ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類が用いられ、好適には架橋密度を向上できる2官能以上の多官能ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類が用いられる。本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0054】
上記合成時における、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオール、ポリイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類の配合割合は、つぎの通りである。
【0055】
上記ポリイソシアネートは、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールの水酸基当量(水酸基1個当たりの平均分子量)の1当量に対して、2〜10当量の割合で配合することが好ましく、より好ましくは4〜8当量の範囲である。すなわち、2当量未満では直鎖状高分子量ポリマーが生成しやすくなる傾向があり、10当量を超えると、多量の未反応のイソシアネート基が残存しやすくなる傾向がみられるからである。
【0056】
また、上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類は、上記ポリイソシアネートのイソシアネート当量(イソシアネート基1個当たりの分子量)の1当量に対して、1〜2当量に設定することが好ましく、より好ましくは1.1〜1.3当量の範囲である。すなわち、1当量未満では、イソシアネート基が残存する傾向があり、2当量を超えると、多量のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類が残存しやすくなる傾向がみられるからである。
【0057】
前記水添ポリブタジエン誘導体(a1成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a2成分)の合成は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールとポリイソシアネートとを、チタン,スズ等の金属やジブチル錫ラウレート等の有機金属塩等の触媒下において反応させる。そして、上記水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールの水酸基とイソシアネート基との反応が充分終了した後、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類を加えて残余のイソシアネート基を反応させることで水添エラストマー誘導体が得られる。生成する水添エラストマー誘導体が、高粘調や半固体状な場合は、30〜80℃に加温したり、または、トルエンやキシレン等の溶媒を反応系に加えたりする。これにより反応が円滑になり、合成が一層容易になる。
【0058】
上記の合成反応の進行度合いは、例えば、赤外吸収スペクトルにおいて、反応の進行とともに、イソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が減少することから、このイソシアネート基由来の特性吸収帯を測定することにより確認することができる。また、合成反応の終点は、イソシアネート基由来の特性吸収帯が消失することで確認することができる。
【0059】
そして、反応終了後、アセトニトリル等の溶剤で可溶分を洗浄,除去し、その後エバポレーター等で溶剤除去などの公知の方法により、本発明の、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体が得られる。
【0060】
他方、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを、反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体(a3成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a4成分)の合成に用いる各成分について述べる。
【0061】
上記水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールとしては、両末端に水酸基等の反応性官能基を有するテレキリックポリマーであることが好ましく、例えば、両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンまたは水添ポリイソプレン等があげられる。
【0062】
水添ポリブタジエンポリオールとしては、好適には数平均分子量が500〜5000の液状水添ポリブタジエンポリオールがあげられ、水添ポリイソプレンポリオールとしては、好適には数平均分子量が500〜130000の液状水添ポリイソプレンポリオールがあげられる。
【0063】
上記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等があげられる。
【0064】
上記合成時における、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオール、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類の配合割合は、つぎの通りである。
【0065】
上記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類は、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールの水酸基当量(水酸基1個当たりの平均分子量)の1当量に対して、1〜3当量の割合で配合することが好ましく、より好ましくは1.2〜2当量の範囲である。すなわち、1当量未満では未反応の水酸基が残存しやすくなる傾向がみられ、3当量を超えると、未反応のイソシアネート基が残存しやすくなる傾向がみられるからである。
【0066】
ここで、前記水添ポリブタジエン誘導体(a3成分)または水添ポリイソプレン誘導体(a4成分)の合成は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールと、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを、チタン,スズ等の金属やジブチル錫ラウレート等の有機金属塩等の触媒下において反応させることにより行われる。上記水添ポリブタジエンポリオールまたは水添ポリイソプレンポリオールの水酸基と、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類のイソシアネート基とを、反応させることで水添エラストマー誘導体が得られる。生成する水添エラストマー誘導体が、高粘調や半固体状な場合は、30〜80℃に加温したり、または、トルエンやキシレン等の溶媒を反応系に加えたりする。これにより反応が円滑になり、合成が一層容易になる。
【0067】
上記の合成反応の進行度合いは、例えば、赤外吸収スペクトルにおいて、反応の進行とともに、イソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が減少することから、このイソシアネート基由来の特性吸収帯を測定することにより確認することができる。また、合成反応の終点は、イソシアネート基由来の特性吸収帯が消失することで確認することができる。
【0068】
そして、反応終了後、アセトニトリル等の溶剤で可溶分を洗浄,除去し、その後エバポレーター等で溶剤除去などの公知の方法により、本発明の、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体が得られる。
【0069】
このような、上記水添エラストマー誘導体の含有量は、本発明における光重合性組成物(A)全体に対して、1〜99重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは10〜90重量%の範囲である。
【0070】
本発明において、シール材7に用いる光重合性組成物(A)は、先に述べた各種の水添エラストマー誘導体を必須成分とするものであり、層状珪酸塩,絶縁性球状無機質充填剤を任意成分として含有させることができる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。
【0071】
上記層状珪酸塩は、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味し、天然物であっても合成物であってもよい。上記層状珪酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイトおよびノントロライト等のスメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカ、バーミキュライト、ハロイサイト等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、層間のNaイオンを陽イオンでイオン交換した有機溶媒との親和性に優れる有機化処理した膨潤性マイカおよび親油性スメクタイトの少なくとも一方が好適に用いられる。
【0072】
上記層状珪酸塩の形状としては、特に限定されるものではないが、平均長さが0.005〜10μm、厚みが0.001〜5μmの結晶粒子であることが好ましく、そのアスペクト比は、10〜500であることが好ましい。
【0073】
上記層状珪酸塩は、層間にNaイオンなどの金属カチオンが配位した構造を有する層状粘土鉱物であり、このNaイオンを、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム,塩化アミノラウリン酸,第4級アンモニウム塩,第4級ホスホニウム塩等でイオン交換した有機化処理層状珪酸塩が好ましく用いられる。このようなNaイオンをイオン交換した上記有機化処理層状珪酸塩は、樹脂との親和性が高まることにより、3本ロールやボールミル等の高せん断分散機によって、樹脂中へ容易に分散するようになる。
【0074】
また、上記絶縁性球状無機質充填剤は、例えば、シリカ粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、珪酸カルシウム粉末等の絶縁性球状無機質充填剤があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、水添エラストマー誘導体への分散性において、充填剤表面を疎水性から親水性まで任意に設計が可能であり、樹脂成分との親和性を向上しやすいという点から、上記シリカ粉末を用いることが好ましく、特に好ましくは溶融球状シリカ粉末を用いることである。
【0075】
上記絶縁性球状無機質充填剤は、平均粒子径が0.01〜1μmであり、最大粒子径が10μm以下のものが好ましく、より好ましくは平均粒子径が0.05〜1μmであり、最大粒子径が1μm以下である。すなわち、平均粒子径が0.01μm未満では比表面積が大きくなりすぎて、硬化体の透湿度の低減効果が不充分であり、平均粒子径が1μmを超えるとシール材の紫外線透明性が損なわれ、光硬化性が損なわれる傾向がみられるからである。また、最大粒子径においても10μmを超えると、同様に紫外線透明性が損なわれ、光硬化性が損なわれる傾向がみられる。
【0076】
上記平均粒子径や最大粒子径は、例えばレーザー回折散乱式粒度分布測定器を用いて測定することができる。そして、上記平均粒子径や最大粒子径は、母集団から任意に抽出される試料を用い、上記測定装置を利用して導出される値である。
【0077】
また、上記層状珪酸塩の中でも有機化処理された層状珪酸塩と、絶縁性球状無機質充填剤とは、その表面を化学的に修飾することが好ましい。これにより、水添エラストマー誘導体等の樹脂成分との親和性がより向上し、未硬化溶液の粘度低下や層状珪酸塩,絶縁性球状無機質充填剤の分散性向上に寄与するからである。
【0078】
このような化学修飾に用いられる化合物としては、有機化処理層状珪酸塩および絶縁性球状無機質充填剤の表面に存在する水酸基やカルボキシル基等の官能基と反応できるものであれば、特に限定されるものではないが、より好ましくはシランカップリング剤,シリル化剤などの反応性シラン化合物、チタネート化合物、イソシアネート化合物などがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0079】
上記化学修飾に用いられる化合物は、有機溶媒中での表面処理方法など従来公知の無機質充填剤の表面処理方法と同様の方法で用いられる。
【0080】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0081】
上記シリル化剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリフロロプロピルトリクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンなどがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0082】
上記チタネート化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート化合物やその低分子量縮合物などがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0083】
上記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートなどの(メタ)アクリロキシイソシアネート化合物などがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0084】
上記A成分中の層状珪酸塩の配合量は、シール材全体の合計に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。すなわち、0.1重量%未満ではシール材の透湿度の低下が不充分であり、20重量%を超えると未硬化シール材の液粘度が極度に高くなり、塗工に支障をきたす傾向がみられるからである。
【0085】
また、上記A成分中の絶縁性球状無機質充填剤の配合量は、シール材全体の合計に対して30〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは40〜60重量%である。すなわち、30重量%未満ではシール材の透湿度の低下が不充分である傾向がみられ、70重量%を超えると未硬化シール材の液粘度が極度に高くなり、塗工に支障をきたす傾向がみられるからである。
【0086】
この光重合性組成物(A)には、必要に応じて、ポリ(メタ)アクリレート化合物類(b成分)および光重合開始剤(c成分)を任意成分として含有させることができる。
【0087】
上記ポリ(メタ)アクリレート化合物類(b成分)は、本発明の光重合性組成物(A)中の水添エラストマー誘導体に対し、成分配合時には希釈剤として、硬化時には架橋剤として作用する。このポリ(メタ)アクリレート化合物類として、例えば、多官能(メタ)アクリレートがあげられる。
【0088】
この多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート類、およびその他ポリ(メタ)アクリレート化合物があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。好適には水添エラストマー誘導体との相溶性が良好な点で、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートが賞用される。
【0089】
なお、本発明においては、色素増感型太陽電池のシール構成による接着性を低下させない範囲で、ポリ(メタ)アクリレート化合物類(b成分)として、上記多官能(メタ)アクリレートとともに単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。
【0090】
この単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類があげられ、それぞれ単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0091】
また、上記ポリ(メタ)アクリレート化合物類(b成分)の配合量は、本発明の光重合性組成物(A)全体に対して、1〜99重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは10〜90重量%の範囲である。
【0092】
上記光重合開始剤(c成分)としては、公知の光ラジカル発生剤が用いられる。例えば、2,2−ジメトキ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0093】
上記光重合開始剤(c成分)の含有量は、本発明の光重合性組成物(A)全体に対して、0.1〜30重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。すなわち、0.1重量%未満では、重合度が不充分となる傾向があり、30重量%を超えると、分解残渣が多くなり、シール材の耐久性が低下する傾向がみられるからである。
【0094】
本発明においてシール材7に用いる光重合性組成物(A)には、上記成分以外にその用途に応じて、他の添加剤である、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、無機質充填剤、有機質充填剤、各種スペーサー、溶剤等を必要に応じ、適宜に配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0095】
このようにして得られる光重合性組成物(A)は、例えば、UVランプ等により紫外線を照射した後、必要に応じて所定の温度でのポストキュアーを行なうことにより硬化させ、シール材7とされる。
【0096】
〈エンドシール材8〉
図1の電池Iでは、電解質液注入のための開孔部が上側の電極基板1’に設けられている。しかし、この開孔部が設けられる位置は、電極基板1’に限定するものではなく、上記シール材7や電極基板1等に設けることもできる。そして、上記開孔部は、エンドシール材8によりエンドシールされる。このエンドシール材8として、通常、上記と同様の光重合性組成物(A)、および硬化方法を用いることができる。さらに、そのエンドシール材8を封着するための薄片ガラス等の封着材9は、従来公知のものが用いられる。
【0097】
〈電池Iの製法〉
つぎに、上記材料から構成される電池Iの製法について述べる。すなわち、前記図1に示した電池Iは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0098】
まず、電極基板1を準備し、この電極基板の導電電極面(電解質液側)に、例えば、酸化チタンペーストを5〜50μmの厚みで塗布し、400〜600℃で0.5〜3時間焼成して、多孔質半導体膜3を形成する。ついで、多孔質半導体膜が形成された電極基板を、濃度調整した増感色素4のエタノール溶液に浸漬する。その後無水エタノールに浸漬することにより余剰の増感色素4を取り除き、乾燥することにより増感色素4が吸着した多孔質半導体膜3が得られる。シール材7と接するこの電極基板1部分に、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤を用いて表面被覆処理をする。この表面被覆処理は、例えば、メタノールやエタノール等の有機溶媒に、上記(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤を0.01〜5.0重量%の範囲で溶解させて、上記シール材7と接する電極基板1部分に塗布等し、60〜150℃の範囲で加熱することにより行われる。これにより、塗布した部分が被覆膜7’を形成する。
【0099】
他方、上記電極基板1と対向配設される電極基板1’において、この電極基板1’上の導電電極面(電解質液側)に、スパッタリング法等により白金蒸着膜等の触媒膜6を蒸着形成する。そして、シール材7と接するこの電極基板1’部分にも、上記電極基板1と同様に、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤を塗布して表面被覆処理する(被覆膜7’)。
【0100】
そして、予め作製された上記光重合性組成物(A)を、電極基板1および1’の少なくとも一方の所定部分に塗布し、シール材7の未硬化物を形成する。そして、導電電極面を内側にした状態で、電極基板1および1’をシール材7により貼り合せ、高圧水銀灯等の紫外線照射装置を用いて、照射強度0.5〜10000mW/cmで、照射時間0.5〜600秒間の条件で、紫外線照射(窒素雰囲気中であることが好ましい)して硬化させ、メインシールを行う。
【0101】
そして、貼り合せた電極基板1’の開孔部より、電解質液5を注入し、さらに、上記シール材7および被覆膜7’と同様の組成物を塗布した薄片ガラス等の封着材9を載せ、上記と同様に、紫外線照射し組成物を硬化させて封口(エンドシール8)を行なう。このようにして、図1に示す電池Iが得られる。
【0102】
上記図1の電池Iの大きさとしては、シール材等は、目的および用途により、適宜、適当な厚み(基板間)および幅にして用いることができ、通常、幅が1〜5mm程度,厚みが50〜500μmであることが好ましい。
【0103】
なお、電極基板1,1’は、図1のように、負極の電極基板1が透明で、正極の電極基板1’が不透明または半透明であることが好ましいが、電極基板1が不透明または半透明で、電極基板1’が透明であってもよい。
【0104】
つぎに、本発明の第2の要旨に係る色素増感型太陽電池(以下「電池II」という場合がある)について説明する。
【0105】
《電池II》
電池IIは、通常、図2に例示される構造になっている。すなわち、一対の電極基板2,2’の双方が、電池Iの電極基板1と同様、透明な電極基板である。そして、上記電極基板2の内側面に、線状の集電配線用導電材10が所定間隔で並設され(図2において、紙面の表面から裏面に向かって配設される)、被覆保護材11により被覆保護されている。この被覆保護材11は、光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体からなっている。そして、上記被覆保護材11と接する集電配線用導電材の部分がガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方により被覆されている(図示せず)。それ以外の部分は、前述した電池I(図1)と実質的に同様であり、同一または相当部分に同一符号を付している。
【0106】
以下に、電池IIの上記特徴部分の構成要素について、項を分けて説明する。
【0107】
〈電極基板2,2’〉
図2の電極基板2,2’は、上記のように、いずれも透明な電極基板であり、電池Iの透明な電極基板1と同様のものが用いられる。しかし、電池IIにおいては、少なくとも一方が透明であればよく、負極の電極基板2が透明で、正極の電極基板2’が不透明または半透明の電極基板の態様、また、負極の電極基板2が不透明または半透明で、正極の電極基板2’が透明の電極基板の態様にすることも可能である。ここでいう不透明または半透明の電極基板は、電池Iの電極基板1’について述べたものと同様のものが用いられる。
【0108】
〈集電配線用導電材10〉
また、図2では、集電配線用導電材10が電極基板2の導電電極面に分布配設されている。この集電配線により、導電電極面の電気抵抗が小さくなり、光電変換効率が向上するようになる。上記集電配線用導電材10としては、例えば、導電性を有する金属や金属酸化物、炭素材料や導電性高分子などが好適に用いられる。金属としては、例えば、白金、金、銀、ルテニウム、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タンタル、およびそれらの合金等があげられる。炭素材料としては、特に限定はされないが、例えば、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン等があげられる。また、FTO、ITO、酸化インジウム、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いた場合には、透明または半透明であるため増感色素層への入射光量を増加させることができるため、好適に用いられる。
【0109】
また、この集電配線用導電材10は、10〜3000μm幅、1〜100μm厚みの形状であることが好ましい。
【0110】
そして、この集電配線用導電材10の分布配設としては、電極基板の導電電極面上に、例えば、縞状、格子状、放射格子状、網目状等に分布配設されることがあげられ、好ましくは格子状に配設されることである。
【0111】
〈導電材の表面被覆処理〉
上記集電配線用導電材10は、後記の被覆保護材11により被覆保護されるが、その接着性を高めるため、表面被覆処理がなされる。この表面被覆処理は、電極基板上の集電配線用導電材と、被覆保護材との接触部分に、ガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方の塗布等により、皮膜(図示せず)を形成することにより行われる。上記被覆保護材11は、封止材(シール材7)ほどの高度の接着性は要求されないため、下記のガラス剤やシランカップリング剤を用いれば足りる。
【0112】
上記ガラス剤としては、例えば、Si,B,Biの酸化物が主成分であるSiO−Bi−MO系、またはB−Bi−MO系(Mは一種以上の金属元素を示し、Xは1〜3の正数を示す)等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0113】
また、上記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがあげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。先に述べた(メタ)アクリロキシアルキルシラン類も好適に用いられる。
【0114】
〈被覆保護材11〉
上記集電配線用導電材10は、電解質液による浸食による断線等を防止するため、被覆保護材11により被覆保護される。この被覆保護材11としては、耐電解液性および接着性に富む、分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物(A)を光重合させた光重合性硬化体が用いられる。具体的には、シール材7と同様の材料を用いることができる。
【0115】
〈電池IIの製法〉
つぎに、上記材料から構成される電池IIの製法について述べる。すなわち、前記図2に示した電池IIは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0116】
まず、電極基板2を準備し、この電極基板の導電電極面(電解質液側)に、例えば、導電材物質を、幅10〜3000μm×厚み1〜100μmの配線形状で、4〜20mm間隔の縞状になるよう分布塗布し、450〜750℃で0.5〜3時間焼成し、集電配線用導電材10を形成する。
【0117】
そして、上記ガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方等を、メタノールやエタノール等の有機溶媒に、例えば、0.01〜5.0重量%の範囲で溶解させて、この溶液またはペーストを、被覆保護材11と接する集電配線用導電材10の部分に、通常、塗布乾燥後に厚み0.01〜0.3mmになるように塗布等する。また、必要に応じて、被覆保護材11と接する電極基板2部分にも塗布等してもよい。ついで、この塗布等を室温で塗布処理を行った後に、好ましくは60〜700℃の範囲で加熱処理し、さらに、ガラス剤を用いる場合には、500〜700℃の範囲、シランカップリング剤を用いる場合には、60〜150℃の範囲で加熱することが好ましい。これにより塗布等の部分が、皮膜となり、表面被覆処理が完了する。
【0118】
ついで、表面被覆処理された集電配線用導電材10に、予め作製された上記光重合性組成物(A)を、通常、厚み0.01〜0.3mmで塗布等することにより、導電材を被覆保護する。そして、この光重合性組成物(A)に対し、高圧水銀灯等の紫外線照射装置を用いて紫外線照射する。この照射条件は、照射強度0.5〜10000mW/cmで、照射時間0.5〜600秒間の条件であることが好ましく、また、窒素雰囲気中で照射することが好ましい。この紫外線照射により、光重合性組成物が硬化し、被覆保護材11が形成される。
【0119】
つぎに、上記電極基板2上の、集電配線用導電材10および被覆保護材11に囲まれた凹部分に、例えば、酸化チタンペーストを5〜50μmの厚みで塗布し、通常450〜600℃で0.5〜3時間焼成して、多孔質半導体膜3を形成する。なお、スクリーン印刷等の精度の高い塗布方法を用いる場合には、上記集電配線用導電材の配設、その表面処理、そして被覆保護材の塗布等のいずれか工程の前に、多孔質半導体膜3を形成する工程を入れてもよい。
【0120】
そして、上記多孔質半導体膜が形成された電極基板を、濃度調整した増感色素4のエタノール溶液に浸漬する。その後無水エタノールに浸漬することによって余剰の増感色素4を取り除き、乾燥することにより増感色素4が吸着した多孔質半導体膜3が得られる。
【0121】
ついで、シール材7と接するこの電極基板2部分に、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤を用いて表面被覆処理する(被覆膜7’)。
【0122】
他方、上記電極基板2と対向配設される電極基板2’において、この電極基板2’上の導電電極面(電解質液側)に、白金蒸着膜等の触媒膜6を、スパッタリング法等を用いて10〜500nm厚に成膜する。そして、シール材7と接するこの電極基板2’部分に、上記電極基板2と同様、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤を塗布して表面被覆処理する(被覆膜7’)。
【0123】
そして、予め作製された上記光重合性組成物(A)を、電極基板2および2’の少なくとも一方の所定部分に塗布し、シール材7の未硬化物を形成する。そして、導電電極面を内側にした状態で、電極基板2および2’をシール材7の未硬化物により貼り合せ、高圧水銀灯等の紫外線照射装置を用いて、照射強度0.5〜10000mW/cmで、照射時間0.5〜600秒間の条件で、紫外線照射(窒素雰囲気中であることが好ましい)して硬化させ、メインシール7を行う。
【0124】
そして、貼り合せた電極基板2’の開孔部より、電解質液5を注入し、さらに、上記シール材7および被覆膜7’と同様の組成物を塗布した薄片ガラス等の封着材9を載せ、上記と同様に、紫外線照射し組成物を硬化させて封口(エンドシール8)を行なう。このようにして、図2のような電池IIが得られる。
【0125】
なお、図2の電池は、集電配線用導電材およびその被覆保護材等の形成が、電極基板2のみになされているが、対向する電極基板2’にも、上記電極基板2と同様に、形成してもよい。光電変換効率の点からは、集電配線用導電材およびその被覆保護材等を双方の電極基板に形成することが好ましい。電極基板2’にも、集電配線用導電材およびその被覆保護材等を形成する場合には、触媒膜6を成膜する前に行うことが好ましい。
【0126】
上記図2の色素増感型太陽電池について、シール材等は、目的および用途により、適宜、適当な厚み(基板間)および幅にして用いることができる。通常、幅が1〜5mm程度,厚みが50〜500μmである。
【0127】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0128】
まず、実施例に先立ち、下記に示す各成分の材料を準備ないし合成した。
【0129】
〔(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤〕
(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを準備した。
【0130】
〔エラストマー誘導体の合成〕
a.水添エラストマー誘導体aの合成
下記一般式(1)で示される両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン(数平均分子量:約1500、水酸基価:75 KOHmg/g、ヨウ素価:10 Img/100g、粘度30Pa・s/25℃)15g(0.01mol)、ノルボルネンジイソシアネート10.2g(0.05mol)、トルエン20gをそれぞれガラス製反応器にとり、窒素ガス気流下、50℃に加温した。その後、5重量%ジブチルチンラウレートの酢酸エチル溶液0.4gを加え、50℃で6時間反応させた。その後、ハイドロキノン0.001g、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン(グリセリンジメタクリレート)20.7g(0.09mol)を加え、60℃でさらに6時間反応させた。つぎに反応物を過剰のアセトニトリル中に投入・撹拌して洗浄し、固液分離、その後減圧乾燥により目的の水添エラストマー誘導体aを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR:サーモエレクトロン社製、Nicolet IR200)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC:東ソー社製、HLC−8120)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、6150であった。
【0131】
【化2】

【0132】
b.水添エラストマー誘導体bの合成
上記水添エラストマー誘導体aの合成に用いた数平均分子量約1500の水添ポリブタジエンを、上記一般式(1)で示される両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエン(数平均分子量:約3000、水酸基価:30 KOHmg/g、ヨウ素価:10 Img/100g、粘度80Pa・s/25℃)15g(0.005mol)に代えて用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体aと同様に合成し、水添エラストマー誘導体bを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、7500であった。
【0133】
c.水添エラストマー誘導体cの合成
上記水添エラストマー誘導体aの合成に用いた水添ポリブタジエンを、下記一般式(2)で示される両末端に水酸基を有する水添ポリイソプレン(数平均分子量:約2800、水酸基価:4 KOHmg/g、ヨウ素価:40 Img/100g、粘度1500Pa・s/25℃)140g(0.05mol)に代えて用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体aと同様に合成し、水添エラストマー誘導体cを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、28800であった。
【0134】
【化3】

【0135】
d.水添エラストマー誘導体dの合成
上記水添エラストマー誘導体aの合成に用いた数平均分子量約1500の水添ポリブタジエン15g(0.01mol)、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類である1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート7g(0.03mol)、5重量%ジブチルチンラウレートの酢酸エチル溶液0.3gを加え、窒素ガス気流下、50℃で6時間反応させた。つぎに反応物を過剰のアセトニトリル中に投入・撹拌して洗浄し、固液分離、その後減圧乾燥により目的の水添エラストマー誘導体dを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、5020であった。
【0136】
e.水添エラストマー誘導体eの合成
上記水添エラストマー誘導体dの合成に用いた数平均分子量約1500の水添ポリブタジエンを、上記水添エラストマー誘導体bの合成に用いた数平均分子量約3000の水添ポリブタジエン30g(0.01mol)に代え、トルエン15gを用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体dと同様に合成し、水添エラストマー誘導体eを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、7290であった。
【0137】
f.水添エラストマー誘導体fの合成
上記水添エラストマー誘導体dの合成に用いた数平均分子量約1500の水添ポリブタジエンを、上記一般式(2)で示される両末端に水酸基を有する水添ポリイソプレン(数平均分子量:約2500、水酸基価:50 KOHmg/g、臭素価5g/100g、粘度75Pa・s/30℃)30g(0.012mol)に代え、トルエン15gを用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体dと同様に合成し、水添エラストマー誘導体fを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、9790であった。
【0138】
g.不飽和エラストマー誘導体gの合成
上記水添エラストマー誘導体aの合成に用いた水添ポリブタジエンを、下記一般式(3)で示される両末端に水酸基を有する不飽和ポリブタジエン(数平均分子量:約1500、水酸基価:70 KOHmg/g、粘度90Pa・s/25℃)30g(0.02mol)に代えて用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体aと同様に合成し、不飽和エラストマー誘導体gを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、5900であった。
【0139】
【化4】

【0140】
h.不飽和エラストマー誘導体hの合成
上記水添エラストマー誘導体dの合成に用いた水添ポリブタジエンを、上記不飽和エラストマー誘導体gの合成に用いた上記一般式(3)で示される数平均分子量約1500の不飽和ポリブタジエン15g(0.01mol)に代えて用いた以外は、上記水添エラストマー誘導体dと同様に合成し、不飽和エラストマー誘導体hを得た。得られた反応物は、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)が消失し、また、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)での標準ポリスチレン換算重量平均分子量は、4900であった。
【0141】
〔ポリ(メタ)アクリレート化合物類〕
ポリ(メタ)アクリレート化合物類として、ジメチロールジシクロペンタンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを準備した。
【0142】
〔光重合開始剤〕
光重合開始剤として、チバスペシャルティケミカルズ社製、イルガキュア651の光ラジカル重合開始剤を準備した。
【0143】
〔有機化処理した層状珪酸塩〕
(1)有機化処理した膨潤性マイカ
マイカ層間のNaイオンをテトラアルキルアンモニウム化合物で置換した。これにより、平均長さ:5μm、厚さ:0.1〜0.5μm、アスペクト比:20〜30、真比重:2.5の有機化処理した膨潤性マイカを得た。
【0144】
(2)有機化処理した合成スメクタイト
スメクタイト層間の交換性陽イオン(Na、Mg2+、Li等)をテトラアルキルアンモニウム化合物で置換した。これにより、長さ:0.1〜2μm、厚さ:0.001〜0.025μm、アスペクト比:80〜1000、真比重:2.7の有機化処理した合成スメクタイトを得た。
【0145】
〔有機化処理した絶縁性球状無機質充填剤〕
(1)有機化処理した球状シリカα
水冷冷却管のついたガラス製フラスコに、表面水酸基濃度が0.002mmol/g、比表面積28.6m/gである平均粒子径0.1μm、最大粒子径2μmの球状合成シリカ20g、ヘキサメチレンジシラザン12.91g、ヘキサン100gを投入し、ヘキサンの沸点近傍(65〜69℃)で、2時間環流させた。その後、この球状合成シリカを、濾紙を用いて濾別し、40℃で6時間減圧乾燥させて有機化処理した球状シリカαを得た。得られた有機化処理した球状シリカαは、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のメチル基由来の特性吸収帯(2960cm−1近傍)の吸収を確認した。
【0146】
(2)有機化処理した球状シリカβ
水冷冷却管のついたガラス製フラスコに、表面水酸基濃度が0.002mmol/g、比表面積28.6m/gである平均粒子径0.1μm、最大粒子径2μmの球状合成シリカ20g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.7g、メタノール100g、酢酸0.054gを投入し、室温近傍(22〜26℃)で12時間撹拌した。その後、この球状合成シリカを、濾紙を用いて濾別し、遮光下、60℃で12時間減圧乾燥させて有機化処理した球状シリカβを得た。得られた有機化処理した球状シリカβは、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のアクリロイル基由来の特性吸収帯(1620cm−1近傍、1720cm−1近傍)の吸収を確認した。
【0147】
(3)有機化処理した球状シリカγ
水冷冷却管のついたガラス製フラスコに、表面水酸基濃度が0.002mmol/g、比表面積28.6m/gである平均粒子径0.1μm、最大粒子径2μmの球状合成シリカ20g、2−イソシアネートエチルメタクリレート22.34g、トルエン100g、5重量%ジブチルチンラウレートの酢酸エチル溶液2.3gを加え、遮光下、50℃で6時間反応させた。その後、この球状合成シリカを、濾紙を用いて濾別し、遮光下、60℃で12時間減圧乾燥させて有機化処理した球状シリカγを得た。得られた有機化処理した球状シリカγは、赤外吸収スペクトル(FT−IR)のイソシアネート基由来の特性吸収帯(2260cm−1近傍)の消失とともに、アクリロイル基由来の特性吸収帯(1620cm−1近傍、1720cm−1近傍)の吸収を確認した。
【0148】
まず、電池Iの実施例について詳述する。
【0149】
〔実施例1−1〕
下記の(I) 〜(II)に示す材料を作製し、それらを(III) に示すように組み立てた。
【0150】
(I) 特定の光重合性組成物(A成分、シール材)の作製
水添エラストマー誘導体として、上記水添エラストマー誘導体aを3g、ジメチロールジシクロペンタンジメタクリレートを7g、および光ラジカル重合開始剤を0.5g配合して、光重合性組成物(A)を作製した。
【0151】
(II) 特定のシランカップリング剤で表面被覆処理した電極基板等の作製
ITO透明導電膜が形成されているソーダライムガラス板(日本板硝子社製)を、10cm×10cm×厚み3mmに切断して、負極の電極基板(以下、「負極基板」と略すことがある)を準備する。この導電膜が形成されている負極基板の導電電極面に、酸化チタンペースト(触媒化成工業社製、18NR)を30μmの厚みで塗布した。この塗布した膜を500℃で1時間焼成することにより、多孔質半導体膜を得た。ついで、この多孔質半導体膜が形成されている負極基板を、濃度3×10−4mol/Lに調製したルテニウム錯体系の増感色素(SOLARONIX社製、ルテニウム535)のエタノール溶液に浸漬して16時間保持した。その後、無水エタノールに浸漬して、余剰な増感色素を取り除き、100℃にて乾燥することにより、増感色素を吸着した多孔質半導体膜が形成されている負極基板を形成した。この負極基板において、シール材と接する部分に、準備した1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布し、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した負極基板を作製した。
【0152】
また、この負極基板と対向配設される正極の電極基板(以下、「正極基板」と略すことがある)として、金属チタン板(10cm×10cm×厚み0.5mm)を準備した。この正極基板上に、熱分解法により白金(Pt)を50nmの厚みに成膜した。この正極基板において、シール材と接する部分にも、上記と同様に、1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布し、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した正極基板を作製した。なお、上記正極基板は、金属から形成されるため、不透明であった。
【0153】
さらに、シール材と接する薄片ガラスに、1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布し、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した薄片ガラスを作製した。
【0154】
(III) 色素増感型太陽電池の組み立て
一方の電極基板のシランカップリング剤と接する部分に、ディスペンサーを用いて上記シール材となる光重合性組成物(A)を幅5mm×厚み50μmで塗布し、その後もう一方の電極基板と、導電電極面を内側にした状態で対向して貼り合せ、窒素雰囲気中、透明な負極基板側より紫外線照射(10mW/cm×300秒)してメインシールを行なった。その後、対向して貼り合せた正極基板の開孔部(1mmΦ)より、0.05mol%LiIとIのアセトニトリル溶液(電解質液)を注入した。さらに、上記シール材となる光重合性組成物(A)を塗布した薄片ガラスを載せ、上記と同様に、窒素雰囲気中、紫外線照射(10mW/cm×300秒)により封口してエンドシールを行ない、目的とする色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0155】
〔実施例1−2〕
上記実施例1−1の正極基板に代えてつぎのものを使用した。まず、10cm×10cm×厚み0.5mmの形状に切断したソーダライムガラス(セントラル硝子社製)を準備し、この基板に、グラファイトシート(厚み100μm)を貼り付け、そのグラファイトシート面上に、熱分解法により白金を50nmの厚みに成膜した。この正極基板を用いる以外は、上記実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。なお、このグラファイトシートは黒色不透明であることから、上記正極基板は全体として不透明な電極基板であった。
【0156】
〔実施例1−3〕
上記実施例1−1の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布した以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0157】
〔実施例1−4〕
実施例1−1の光重合性組成物(A)に代えて、上記水添エラストマー誘導体aを7g、ジメチロールジシクロペンタンジメタクリレートを3g、および光ラジカル重合開始剤を0.5g配合した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0158】
〔実施例1−5〕
実施例1−1の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体aに代えて、水添エラストマー誘導体bを用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0159】
〔実施例1−6〕
実施例1−1の光重合性組成物(A)に代えて、上記水添エラストマー誘導体aを5g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを5g、および光ラジカル重合開始剤を0.5g配合した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0160】
〔実施例1−7〕
実施例1−1の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体aに代えて、水添エラストマー誘導体cを用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0161】
〔実施例1−8〕
実施例1−1の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体aに代えて、水添エラストマー誘導体dを用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0162】
〔実施例1−9〕
実施例1−8で用いたシランカップリング剤に代えて、シール材と接する部分に、1重量%の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布する以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0163】
〔実施例1−10〕
実施例1−8で用いた光重合性組成物(A)に代えて、上記水添エラストマー誘導体dを7g、ジメチロールジシクロペンタンジメタクリレートを3g、および光ラジカル重合開始剤を0.5g配合した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0164】
〔実施例1−11〕
実施例1−8で用いた光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体dに代えて、水添エラストマー誘導体eを用いる以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0165】
〔実施例1−12〕
実施例1−8で用いた光重合性組成物(A)に代えて、上記水添エラストマー誘導体dを5g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを3g、および光ラジカル重合開始剤を0.5g配合した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0166】
〔実施例1−13〕
実施例1−8で用いた光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体dに代えて、水添エラストマー誘導体fを用いる以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0167】
〔実施例1−14〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に代えて、実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に有機化処理した膨潤性マイカ1gを加え、3本ロールを用いて10回通し(ロールギャップ0.1μm)した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0168】
〔実施例1−15〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に代えて、実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に有機化処理した合成スメクタイト15gを加え、3本ロールを用いて10回通し(ロールギャップ0.1μm)した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0169】
〔実施例1−16〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に代えて、実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に有機化処理した球状シリカα10gを加え、3本ロールを用いて10回通し(ロールギャップ0.1μm)した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0170】
〔実施例1−17〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に代えて、実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に有機化処理した球状シリカβ10gを加え、3本ロールを用いて10回通し(ロールギャップ0.1μm)した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0171】
〔実施例1−18〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に代えて、実施例1−1で用いた光重合性組成物(A)に有機化処理した球状シリカγ10gを加え、3本ロールを用いて10回通し(ロールギャップ0.1μm)した光重合性組成物を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0172】
〔比較例1−1〕
シール材と接する電極基板部分に、何ら表面被覆処理をしなかった以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0173】
〔比較例1−2〕
実施例1−1で用いたシランカップリング剤に代えて、シール材と接する電極基板部分に、1重量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布した以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0174】
〔比較例1−3〕
実施例1−1で用いた光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体aに代えて、不飽和エラストマー誘導体gを用いた以外は、実施例1−1と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0175】
〔比較例1−4〕
シール材と接する電極基板部分に、何ら表面被覆処理をしなかった以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0176】
〔比較例1−5〕
実施例1−8で用いたシランカップリング剤に代えて、シール材と接する電極基板部分に、1重量%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布した以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0177】
〔比較例1−6〕
実施例1−8で用いた光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体dに代えて、不飽和エラストマー誘導体hを用いた以外は、実施例1−8と同様にして、色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0178】
〔参考例1〕(双方透明ガラス基板)
上記実施例1−1の正極基板に代えて、つぎの正極基板を用いた。まず、ITO透明導電膜が形成されているソーダライムガラス板(日本板硝子社製)を、10cm×10cm×厚み3mmに切断して正極用の電極基板を準備した。この電極基板上に、熱分解法により白金(Pt)を50nmの厚みに成膜した。ついで、この電極基板の、シール材と接する部分にも、実施例1−1の基板と同様に、1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布して、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した正極基板を作製した。この正極基板を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、双方が透明な電極基板である色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0179】
このようにして得られた上記の各色素増感型太陽電池を用いて、40℃、90%RH(相対湿度)の恒温槽に50日間放置する試験を行った。そして、下記に示す方法にしたがって、液漏れ性および膨潤性の耐久性測定を行ない、その結果を後記の表1および表2に示す。
【0180】
<液漏れ性>
色素増感型太陽電池を上面から見た時の、組み立て直後における電解質液の充填面積に対する試験後の充填面積を、面積%として計測し、これを液漏れ性の指標とした。液漏れがない場合には、100面積%となり、数値が小さくなる程、液漏れの度合いが大きくなる。これは、電解質液が液漏れすると、液漏れ分だけ空間ができ、この部分には上記電解質液がなく、試験前に比べ試験後の電解質液の面積が減少することから、このように測定したものである。
【0181】
<膨潤性>
組み立てた色素増感型太陽電池内にある電解質液(ヨウ素を含有させたもの)に接触するシール材について、電解質液がシール材に浸透すると、シール材の幅方向(基板と平行に内側から外側に向かう方向)に、ヨウ素の着色が生じることから、その幅方向への、ヨウ素による着色長さを測定し、その着色長さを電解質液によるシール材の膨潤性(電解質液が浸透する結果、膨潤する)の指標とした。この着色長さが短いほど、膨潤しないことを示す。ここで、シール材の幅は、最大で5mmであることから、ヨウ素による着色長さも最大で5mmとなる。
【0182】
【表1】

【0183】
【表2】

【0184】
上記表1および表2より、実施例品は、液漏れ性の結果について、全て95面積%以上の充填面積を保っており、電解質液の液漏れはほとんどないといえる。また、膨潤性の結果についても、実施例1−4および実施例1−10のみ1.8mmの着色長さとなっているものの、実用に耐えるものであった。また、他の実施例品の着色長さは全て0.5mm以下であり、膨潤も少ないことから、各実施例品において、優れたシール性を有する色素増感型太陽電池が得られたといえる。また、参考例1の電極基板の両方が透明である色素増感型太陽電池と対比しても、耐久性に劣るものでないことが分かる。
【0185】
これに対して、比較例品は、液漏れ性の結果について、0〜70面積%の充填面積となっており、電解質液が液漏れしていることが明らかである。さらに、膨潤性の結果についても、比較例品は全て最大着色長さである5mmの着色長さとなり、大きな膨潤性を示す悪い結果となった。
【0186】
また、上記色素増感型太陽電池のシール材となる、硬化前の光重合性組成物(A)(実施例1−1における(I)に相当する材料)を用いて、下記に示す方法にしたがって、流動性およびシール幅寸法精度の測定を行い、その結果を後記の表3に示す。
【0187】
<流動性>
上記光重合性組成物(A)(実施例1−1および実施例1−16〜1−18のみ)について、東京計器社製EM型回転粘度計を用いて、25℃、5rpmでの粘度を測定した。併せて、チクソトロピー指数(0.5rpm粘度/5rpm粘度)を算出した。
【0188】
<シール幅寸法精度>
上記光重合性組成物(A)(実施例1−1および実施例1−16〜1−18のみ)を、電極基板のシランカップリング剤と接する部分にディスペンサーを用いて塗布し、その後もう一方の透明導電電極膜を有するガラス基板と、透明導電電極膜を内側にした状態で対向して貼り合わせ、窒素気流下、紫外線照射(3J/cm)してメインシールを行った際のシール部分のシール幅を測定した。
【0189】
【表3】

【0190】
上記表3の結果より、実施例1−16〜1−18の光重合性組成物は、絶縁性球状無機質充填剤を添加したことによりチクソトロピー性が特に増加し、シール幅の寸法精度が向上したことがわかる。特に、有機化処理した球状シリカαを添加した実施例1−16の光重合性組成物が、絶縁性球状無機質充填剤を添加した系において、最も低粘度であることから、ディスペンサーを用いた塗布作業性が向上し、優れたシール性を有する色素増感型太陽電池が得られるものである。
【0191】
上記の結果から、各実施例品は、液漏れ性および膨潤性ともに低く、シール材等が耐電解質液性、接着性等の耐久性に優れている。また、実施例1−16〜1−18品においては、シール幅の寸法精度も特に向上している。したがって、これらを用いた色素増感型太陽電池は、長期保存および長期使用に耐えうる極めて優れたものとなる。
【0192】
つぎに、本発明の電池IIの実施例について詳述する。
【0193】
〔実施例2−1〕
前記参考例1で用いた負極基板に代えて、参考例1の負極基板に集電配線等を配設した基板、すなわち、下記に示す「実施例2−1の負極基板」を用いた以外は、参考例1と同様にして、双方が透明な電極基板であって、一方の基板に集電配線が配設された色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0194】
a.実施例2−1の負極基板
まず、上記参考例1において用いた負極基板と同様の、透明導電膜を形成したガラス基板を準備する。この電極基板の導電電極面に、5mm間隔で集電用の銀配線(100μm幅、5μm厚)を、スクリーン印刷で塗布し、600℃で1時間焼成し、集電配線を形成した。その後、集電配線およびこの集電配線を配設した電極基板上の、本発明に係る被覆保護材と接する部分に、ガラスペースト(奥野製薬工業社製:G3−4965)をスクリーン印刷で30μm厚に塗布し、550℃で1時間焼成することによりガラス表面処理層を形成した。
【0195】
つぎに、この集電配線およびガラス表面処理層に囲まれた短冊状の部分にスクリーン印刷法を用いて異なる酸化チタンペーストを用いて二層の酸化チタンを形成させた。透明導電膜と電解液が接触すると透明導電膜から直接電解液に電子が移動するという逆電子が多くなるため、電極基板の上に下地層として電解液を遮蔽する緻密な酸化チタン膜を形成し、この酸化チタン膜の上に酸化チタンの多孔質電極膜を形成させた。具体的には、酸化チタンペースト(触媒化成工業社製、18NR)を、10μm厚で塗布し、80℃で乾燥した後、さらにその上に酸化チタン(堺化学社製、SSP)をペースト化しスクリーン印刷装置により20μmの厚みで塗布した。塗布した膜を500℃で一時間焼成し、酸化チタン多孔質膜を得た。
【0196】
その後、このガラス表面処理層に対し、本発明に係る光重合性組成物(A)を、スクリーン印刷を用いてコーティングし、高圧水銀灯により10mW/cm×300秒の照射条件で、窒素雰囲気中で紫外線照射を行い硬化した。これにより、電解質液による集電配線の断線や故障を防止するための、被覆保護材が得られた。
【0197】
この後、酸化チタン多孔質膜を形成した負極用の電極基板を、濃度3×10−4mol/Lに調整したルテニウム錯体系の色素(SOLARONIX社製、ルテニウム535)のエタノール溶液に浸漬して16時間保持した。その後、無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、100℃にて乾燥し、酸化チタン多孔質膜に増感色素が吸着した電極基板が得られた。
【0198】
この電極基板において、シール材と接する部分に、準備した1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布し、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した負極基板を作製した。
【0199】
〔実施例2−2〕
前記実施例1−1で用いた負極基板に代えて、上記実施例2−1の負極基板である透明な電極基板に集電配線等を配設した電極基板を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、一方が透明で、他方が不透明(金属)な電極基板であって、一方の電極基板に集電配線が配設された色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0200】
〔実施例2−3〕
前記実施例1−2で用いた負極の電極基板に代えて、上記実施例2−1の負極基板である透明な電極基板に集電配線等を配設した電極基板を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、一方が透明で、他方が不透明(カーボン膜含有)な電極基板であって、一方の電極基板に集電配線が配設された色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0201】
〔実施例2−4〕
上記実施例2−1で用いた正極基板に代えて、実施例2−1の正極基板に集電配線等を配設した基板、すなわち、下記に示す「実施例2−4の正極基板」を用いた以外は、実施例2−1と同様にして、双方が透明な電極基板であって、双方の基板に集電配線が配設された色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0202】
b.実施例2−4の正極基板
まず、上記参考例1において用いた正極基板と同様の、透明導電膜を形成したガラス基板を準備する。この電極基板の導電電極面に、5mm間隔で集電用の銀配線(100μm幅・5μm厚)を、スクリーン印刷で塗布し、600℃で1時間焼成し、集電配線を形成した。その後、集電配線およびこの集電配線を配設した電極基板上の、本発明に係る被覆保護材と接する部分に、ガラスペースト(奥野製薬工業社製:G3−4965)をスクリーン印刷で20μm厚に塗布し、550℃で1時間焼成することによりガラス表面処理層を形成した。そして、正極基板の導電電極面(電解質液側)の、後に被覆保護材を形成する部分(上記ガラス表面処理層を含む)にマスクを付け、スパッタリング法を用いて白金(Pt)を50nmの厚みとなるように、導電電極面上に成膜した。
【0203】
つぎに、上記ガラス表面処理層に対し、本発明に係る光重合性組成物(A)を、スクリーン印刷を用いてコーティングし、高圧水銀灯により10mW/cm×300秒の照射条件で、窒素雰囲気中で紫外線照射を行い硬化した。これにより、電解質液による集電配線の断線や故障を防止するための、被覆保護材が得られた。
【0204】
この電極基板の周端部の、シール材と接する部分に、準備した1重量%の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液を塗布し、150℃で10分間乾燥し、シランカップリング剤で表面被覆処理した正極基板を作製した。
【0205】
〔比較例2−1〕
上記実施例2−1の負極基板において、本発明に係る被覆保護材を用いなかった以外は、実施例2−1と同様にして、双方が透明な電極基板であって、一方の基板に集電配線が配設された色素増感型太陽電池を組み立てた。
【0206】
上記被覆保護材の耐久性、すなわち色素増感型太陽電池の耐久性を評価するため、上記実施例および比較例の各色素増感型太陽電池を用い、下記に示す方法にしたがって色素増感型太陽電池の故障発生率の測定を行い、その結果を後記の表4に示す。また、参考までに、下記に示す方法にしたがって光電変換効率を測定し、その結果も後記の表4に併せて示す。
【0207】
<故障発生率>
作製した各色素増感型太陽電池に対し、擬似太陽光100mW/cmの照射条件(いわゆる「1Sun」の照射条件)の場合に、各色素増感型太陽電池が最大出力点(Pmax)で稼働するように小型抵抗を取り付け、負荷を調整した。また、各色素増感型太陽電池ごとに、電圧・電流を等間隔の時間でレコーダーに記録させた。各実施例および比較例の色素増感型太陽電池ごとにその電池を25個ずつ準備し、上記の状態となるように設置した。そして、その設置から1ヶ月後に稼働している電池数を数え、下記の式(4)にしたがって故障発生率を算出した。その結果を表4に示す。
【0208】
故障発生率(%)=〔1−(稼働電池数/設置電池数)〕×100 …(4)
【0209】
<光電変換効率>
作製した上記各色素増感型太陽電池について、ソーラーシミュレータ(山下電装社製、YS−100H型)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの擬似太陽光の照射条件を、100mW/cm(いわゆる「1Sun」の照射条件)として光電変換効率を測定し、下記の式(5)にしたがってエネルギー変換効率ηを算出した。
【0210】
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P …(5)
〔式(5)において、ηはエネルギー変換効率(%)、Vocは開放電圧(V)、Jscは短絡電流密度(mA/cm)、F.F.はFilling Factorの略で曲線因子を示し、また、Pは入射光強度(mW/cm)を示す〕
【0211】
【表4】

【0212】
上記表4の結果より、実施例2−1〜2−4の色素増感型太陽電池は、故障発生率が0%であり、耐久性に優れる色素増感型太陽電池であることが分かる。これに対し、本発明に係る被覆保護材を用いていない比較例2−1は、故障が発生しており、信用性に劣るものであることが分かる。
【0213】
このように、電池IIの実施例が全て耐久性に優れるのは、本発明に係る被覆保護材が耐電解質液性に富み、接着性が高いことによるものと推察される。
【0214】
なお、光電変換効率を測定した結果、正極基板が金属からなる実施例2−2は、集電配線を負極基板にしか配設していない色素増感型太陽電池であるが、正極および負極の両方の電極基板に集電配線を配設した実施例2−4よりも、高いエネルギー変換効率を示すことが分かった。これにより、実施例2−2は、耐久性に優れるとともに、高い光電変換効率を有する実用性の高い色素増感型太陽電池であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明の色素増感型太陽電池は、シール材が特定の光重合性組成物からなる光重合性硬化体であるため、加熱硬化が不要となり、加熱による電解質液の蒸発に伴うシール部の剥離が生じず、長期にわたる封止の際にも、電解質液による膨潤や劣化が生じないものである。そのうえ、ガラス基板に対する上記特定のシランカップリング剤の作用と相まって、高い接着力を発揮し、高度な耐久性を発現する。したがって、特に耐久性が要求される色素増感型太陽電池の分野において、高い信頼性を有するものとして広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】第1の要旨に係る色素増感型太陽電池の一例を示す断面図である。
【図2】第2の要旨に係る色素増感型太陽電池の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0217】
1 透明な電極基板(負極)
1’不透明または半透明な電極基板(正極)
5 電解質液
7 シール材(メインシール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が不透明または半透明で他方が透明である一対の電極基板がそれらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記一対の電極基板間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部にシール材を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液が封入されてなる色素増感型太陽電池であって、上記シール材が下記の(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
(A)分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物。
【請求項2】
上記不透明または半透明な電極基板が、金属からなる請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項3】
上記不透明または半透明な電極基板が、カーボン製導電膜を有する基板からなる請求項1記載の色素増感型太陽電池。
【請求項4】
少なくとも一方が透明である一対の電極基板がそれらの基板の導電電極面を内側にした状態で所定間隔を保って配設され、上記一対の電極基板間の空隙が、それら基板の内側面の周縁部にシール材を配設することによりシールされ、そのシールされた空隙内に、電解質液が封入されてなる色素増感型太陽電池であって、上記少なくとも一方の電極基板の内側面に、所定形状の集電配線用導電材が分布配設された状態で、その集電配線用導電材が被覆保護材により被覆保護され、上記シール材および上記被覆保護材が下記の(A)を光重合させた光重合性硬化体からなり、上記シール材と接する電極基板の部分が(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤で被覆され、上記被覆保護材と接する集電配線用導電材の部分がガラス剤およびシランカップリング剤の少なくとも一方により被覆されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
(A)分子両末端の少なくとも一方に、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水添エラストマー誘導体を必須成分とする光重合性組成物。
【請求項5】
上記(A)の光重合性組成物が、層状珪酸塩を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項6】
上記(A)の光重合性組成物が、絶縁性球状無機質充填剤を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項7】
上記(メタ)アクリロキシアルキルシラン類シランカップリング剤が、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランである請求項1〜6のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項8】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体の主鎖が、水添ポリブタジエンからなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項9】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体の主鎖が、水添ポリイソプレンからなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項10】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体が、ポリイソシアネートを連結基として水添ポリブタジエンポリオールとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体である請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項11】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体が、ポリイソシアネートを連結基として水添ポリイソプレンポリオールとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを反応させてなる水添ポリイソプレン誘導体である請求項1〜7および請求項9のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項12】
上記(A)の光重合性組成物が、その組成物中の水添エラストマー誘導体として下記の(a1)成分を用い、これに下記の(b)成分および(c)成分を含有させてなるものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
(a1)ポリイソシアネートを連結基として水添ポリブタジエンポリオールとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体。
(b)ポリ(メタ)アクリレート化合物類。
(c)光重合開始剤。
【請求項13】
上記(A)の光重合性組成物が、その組成物中の水添エラストマー誘導体として下記の(a2)成分を用い、これに下記の(b)成分および(c)成分を含有させてなるものである請求項1〜7および請求項9のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
(a2)ポリイソシアネートを連結基として水添ポリイソプレンポリオールとヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物類とを反応させてなる水添ポリイソプレン誘導体。
(b)ポリ(メタ)アクリレート化合物類。
(c)光重合開始剤。
【請求項14】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体が、水添ポリブタジエンポリオールと(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体である請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項15】
上記(A)の光重合性組成物中の水添エラストマー誘導体が、水添ポリイソプレンポリオールと(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを反応させてなる水添ポリイソプレン誘導体である請求項1〜7および請求項9のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項16】
上記(A)の光重合性組成物が、その組成物中の水添エラストマー誘導体として下記の(a3)成分を用い、これに下記の(b)成分および(c)成分を含有させてなるものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
(a3)水添ポリブタジエンポリオールと(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを反応させてなる水添ポリブタジエン誘導体。
(b)ポリ(メタ)アクリレート化合物類。
(c)光重合開始剤。
【請求項17】
上記(A)の光重合性組成物が、その組成物中の水添エラストマー誘導体として下記の(a4)成分を用い、これに下記の(b)成分および(c)成分を含有させてなるものである請求項1〜7および請求項9のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
(a4)水添ポリイソプレンポリオールと(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物類とを反応させてなる水添ポリイソプレン誘導体。
(b)ポリ(メタ)アクリレート化合物類。
(c)光重合開始剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−266778(P2009−266778A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118478(P2008−118478)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】