説明

草刈り機

【課題】 推進力不足が発生しにくい状態で小回り旋回をすることができる草刈り機を提供する。
【解決手段】 左右の後車輪2を各別に変速駆動する一対の後輪変速装置32,32を備えてある。両後輪変速装置32の電動アクチュエータ及び操向センサ34が連係された操向制御手段33を備えてある。前車輪1が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態に操向操作されると、操向制御手段33は、旋回内側に位置する後車輪2が旋回外側に位置する後車輪2よりも低回転速度で駆動されるように両後輪変速装置32,32を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前車輪を操向操作自在に備え、左右一対の非操向型後車輪を備えた草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記草刈り機において、従来、たとえば特許文献1に示されるように、左右後輪2それぞれへの伝動を各別に断続する操向クラッチ27、及び、前輪1の直進姿勢からの設定角度以上の操向作動に連動して旋回内側の後輪2に対する操向クラッチ27を切り作動させる連動手段を備えたものを開発した。
【0003】
【特許文献1】特開2003−170859号公報(段落〔0022〕―〔0024〕、図2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術を採用したものにあっては、旋回走行の際、旋回内側の後車輪が推進力を発揮せず、傾斜地など走行箇所によっては、推進力不足になることがあった。
【0005】
本発明の目的は、旋回走行の際、スムーズに小回り旋回することができるものでありながら、推進力不足が発生しにくい草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、左右一対の前車輪を操向操作自在に備え、左右一対の非操向型後車輪を備えた草刈り機において、
前記左右一対の後車輪を各別に変速駆動する一対の後輪変速装置を備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回内側に位置する後車輪が旋回外側に位置する後車輪よりも低回転速度で駆動され、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど、旋回内側の後車輪に対応する後輪変速装置がより低速の速度状態になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の後輪変速装置が同一の速度状態になるように、前記前車輪の操向作動に連係させて前記一対の後輪変速装置を操作する操向変速手段を備えてある。
【0007】
すなわち、前車輪が前記横向き側操向状態に操向操作されると、操向変速手段が一対の後輪変速装置を操作することにより、旋回内側の後車輪が旋回外側の後車輪よりも低回転速度で駆動された状態になり、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど旋回内側の後車輪の駆動速度がより低速になる。これにより、前車輪を直進向きから設定角以上横向きになった操向状態にして旋回走行する際、旋回内側の後車輪が旋回外側の後車輪よりも低速で駆動される速度差を左右後輪の間に発生させながら、かつ、前車輪の設定角からの横向き角度を大にするほどより大きな速度差を発生させながら、さらに、旋回外側の後車輪にも旋回内側の後車輪にも推進力を発揮させながら旋回走行することができる。
【0008】
従って、本第1発明によれば、前車輪を設定角以上に横向きに操向操作して旋回走行する際、旋回内側の後車輪が前車輪の操向角度に適応した低速度で駆動されてスムーズに小回り旋回することができるものでありながら、旋回外側の後車輪のみならず、旋回内側の後車輪にも推進力を発揮させて傾斜地などでも推進力不足が発生しにくいなど有利な状態で旋回走行することができる。
【0009】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記左右一対の前車輪を各別に変速駆動する一対の前輪変速装置を備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回内側に位置する前車輪が旋回外側に位置する前車輪よりも低回転速度で駆動され、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど、旋回内側の前車輪に対応する前輪変速装置がより低速の速度状態になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の前輪変速装置が同一の速度状態になるように、前記一対の前輪変速装置が前記操向変速手段によって前車輪の操向作動に連係させて変速操作されるように構成してある。
【0010】
すなわち、前車輪が前記横向き側操向状態に操向操作されると、操向変速手段が一対の前輪変速装置を操作することにより、旋回内側の前車輪が旋回外側の前車輪よりも低回転速度で駆動された状態になり、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど旋回内側の前車輪の駆動速度がより低速になる。これにより、前車輪を直進向きから設定角以上横向きになった操向状態にして旋回走行する際、旋回内側の前車輪が旋回外側の前車輪よりも低速で駆動される速度差を左右前輪の間に発生させながら、かつ、前車輪の設定角からの横向き角度を大にするほどより大きな速度差を発生させながら、さらに、旋回外側の前車輪にも旋回内側の前車輪にも推進力を発揮させながら旋回走行することができる。
【0011】
従って、本第2発明によれば、前車輪を設定角以上に横向きに操向操作して旋回走行する際、旋回内側の後車輪が前車輪の操向角度に適応した低速度で駆動されるのみならず、旋回内側の前車輪も前車輪の操向角度に適応した低速度で駆動されてスムーズに小回り旋回することができるものでありながら、旋回外側の前後輪のみならず、旋回内側の前輪にも後輪にも推進力を発揮させて傾斜地などでも推進力不足がより発生しにくい有利な状態で旋回走行することができる。
【0012】
本第3発明にあっては、本第1又は第2発明の構成において、前記各後輪変速装置が無段変速装置である。
【0013】
すなわち、前車輪が操向操作されると、後輪変速装置の速度状態が前車輪の種々異なる操向角度に適応した速度状態になるように後輪変速装置を無段階に変速させ、旋回内側の後車輪が前車輪の種々異なる横向き角度により適応した速度で駆動されるようにしながら旋回走行することができる。
【0014】
従って、本第3発明によれば、旋回外側の後車輪にも旋回内側の後車輪にも推進力を発揮させながらスムーズに小回り旋回走行することができるものを、旋回内側の後車輪と旋回外側の後車輪の速度差として、前車輪の種々異なる横向き操向角度により適応した速度差を発生させてよりスムーズに小回り旋回できる状態にして得ることができる。
【0015】
本第4発明にあっては、左右一対の前車輪を操向操作自在に備え、左右一対の非操向型後車輪を備えた草刈り機において、
左右一対の後車輪に各別に伝動作用する一対の後輪摩擦クラッチを備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回外側に位置する後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチが入り状態で、旋回内側に位置する後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチが滑り伝動状態になるように、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大になるほど、旋回内側の後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチの滑り度合いがより大になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の後輪摩擦クラッチが入り状態になるように、前記前車輪の操向作動に連係させて前記一対の後輪摩擦クラッチを操作する操向制御手段を備えてある。
【0016】
すなわち、前車輪が前記横向き側操向状態に操向操作されると、操向制御手段が一対の後輪摩擦クラッチを入り状態や滑り伝動状態に操作することにより、旋回内側の後車輪が旋回外側の後車輪よりも低回転速度で駆動された状態になり、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど旋回内側の後車輪の駆動速度がより低速になる。これにより、前車輪を直進向きから設定角以上横向きになった操向状態にして旋回走行する際、旋回内側の後車輪が旋回外側の後車輪よりも低速で駆動される速度差を左右後輪の間に発生させながら、かつ、前車輪の設定角からの横向き角度を大にするほどより大きな速度差を発生させながら、さらに、旋回外側の後車輪にも旋回内側の後車輪にも推進力を発揮させながら旋回走行することができる。
【0017】
従って、本第4発明によれば、前車輪を設定角以上に横向きに操向操作して旋回走行する際、旋回内側の後車輪が前車輪の操向角度に適応した低速度で駆動されてスムーズに小回り旋回することができるものでありながら、旋回外側の後車輪のみならず、旋回内側の後車輪にも推進力を発揮させて傾斜地などでも推進力不足が発生しにくいなど有利な状態で旋回走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
〔第1実施例〕
図1に示すように、左右一対の操向操作自在な前車輪1、左右一対の非操向型の駆動自在な後車輪2を備え、かつ、車体前部に位置したエンジン3を有した原動部、車体後部に位置した運転座席4が装備された運転部を備えた自走車体の車体フレーム5の前後輪間に、リンク機構6を介して草刈り装置10を連結するとともに、車体後部に位置するミッションケース7から草刈り装置10に前記エンジン3の駆動力を伝達するように構成して、乗用型草刈り機を構成してある。
【0019】
この草刈り機は、草刈りや芝刈り作業を行なうものであり、リンク機構6に連動されている昇降シリンダ(図示せず)を伸縮操作すると、この昇降シリンダがリンク機構6を車体フレーム5に対して上下に揺動操作することにより、草刈り装置10を接地ゲージ輪11が地面上に接地した下降作業状態と、接地ゲージ輪11が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。草刈り装置10を下降作業状態にして自走車体を走行させると、草刈り装置10は、刈り刃ハウジング12の内部の車体横方向での複数箇所で車体上下向きの軸芯まわりで回動駆動されるブレード形の回転刈り刃13によって草や芝を刈り込み処理していく。
【0020】
図2に示すように、前記各前車輪1は、前輪支持体20に前車軸まわりで遊転自在な状態で支持されている。左右の前車輪1,1それぞれの前輪支持体20は、車体フレーム5に車体前後向きのローリング軸芯21aまわりでローリング自在に連結されている前輪支持フレーム21の端部に車体上下向きの操向軸芯Pまわりで車体前後方向に揺動自在に支持されている。
【0021】
各前輪支持体20に前記操向軸芯Pまわりで一体揺動自在に備えられた揺動アーム22をタイロッド23によって連動させてある。一方の前輪支持体20に前記操向軸芯Pまわりで一体揺動自在に備えられたナックルアーム24を、連動ロッド25を介してピットマンアーム26に連動させてある。このピットマンアーム26は、このピットマンアーム26に一体回動自在に備えられたセクタギヤ27、このセクタギヤ27に噛合ったピニオンギヤ28、このピニオンギヤ28が一体回動自在に連結している回転自在なハンドル支軸を介してステアリングホイール29に連動させてある。
【0022】
図2に示すように、前記エンジン3の駆動力が前記ミッションケース7の入力軸7aに伝達され、前記ミッションケース7において、前記入力軸7aからの駆動力がベベルギヤ機構30と回転伝動軸31とによって左後輪側と右後輪側とに分岐され、左後輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸31の一端側から後輪変速装置32を介して左側の後車輪2に伝達され、右後輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸31の他端側から後輪変速装置32を介して右側の後車輪2に伝達されるように構成してある。
【0023】
前記各後輪変速装置32は、前記回転伝動軸31の駆動力によって駆動される可変容量形でアキシャルプランジャ形の油圧ポンプ(図示せず)、及び、この油圧ポンプからの圧油によって駆動されるアキシャルプランジャ形の油圧モータ(図示せず)を備えて成る静油圧式の無段変速装置によって構成してあり、前記油圧ポンプに備えられた斜板軸で成る操作部(図示せず)が回動操作されることにより、前記回転伝動軸31からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ、前進側と後進側のいずれにおいても無段階に変速して油圧モータから出力して後車輪2を前進側や後進側に無段階に変速して駆動するように前進側や後進側の伝動状態になったり、油圧モータからの出力を停止して後車輪2の駆動を停止するように中立状態になったりする。
【0024】
図3に示すように、前記各後輪変速装置32を、これの前記操作部に連動された電動アクチュエータ32aによって変速操作するように構成し、各後輪変速装置32の前記電動アクチュエータ32aを操向変速手段33に連係させてある。この操向変速手段33には、操向センサ34、各後輪変速装置32の変速センサ32b、変速指令手段35も連係させてある。
【0025】
操向センサ34は、前記ピットマンアーム26に連動された回転ポテンショメータで成り、ピットマンアーム26の揺動位置及び揺動方向の検出結果を基に前車輪1の操向揺動角及び操向揺動方向を検出し、この検出結果を電気信号にして操向変速手段33に出力する。
【0026】
各変速センサ32bは、後輪変速装置32の操作部に連動された回転ポテンショメータで成り、後輪変速装置32の変速状態を操作部の操作位置に基づいて検出してこの検出結果を電気信号にして操向変速手段33に出力する。
【0027】
変速指令手段35は、運転部に設けた変速ペダル36に連動された回転ポテンショメータで成り、変速ペダル36(図2参照)によって操作されて、後輪変速装置32を操作させるべき変速指令を電気信号にして操向変速手段33に出力する。
【0028】
操向変速手段33は、マイクロコンピュータを利用して成り、操向センサ34の検出結果を入力してこの検出結果を基に、左右の前車輪1が直進側操向状態と、直進向きから左横向き側に設定角(10〜15度)以上横向きに揺動した左向きの横向き側操向状態と、直進向きから右横向き側に設定角(10〜15度)以上横向きに揺動した右向きの横向き側操向状態とのいずれにあるかを判断し、この判断結果と、変速指令手段35からの変速指令とを基に、左後輪用の後輪変速装置32の変速センサ32bによる検出結果に基づいて左後車輪2の後輪変速装置32が制御目標の変速状態になったか否かを判断しながら、右後輪用の変速装置32の変速センサ32bによる検出結果に基づいて右後車輪2の後輪変速装置32が制御目標の変速状態になったか否かを判断しながら前記両後輪変速装置32を次の如く変速操作する。
【0029】
前車輪1の前記直進側操向状態としては、前車輪1が直進向きの操向姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから左横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角(10〜15度)未満である左横向き姿勢になった操向状態、前車輪1が直進向きから右横向きに揺動した姿勢になっていても、その横向き揺動角度が設定角(10〜15度)未満である右横向き姿勢になった操向状態のそれぞれを設定してある。
【0030】
操向変速手段33は、左右の前車輪1が直進側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、両後輪変速装置32の電動アクチュエータ32aを操作して、左右の後車輪2が変速ペダル36の操作位置に対応した駆動状態や停止状態になるように両後輪変速装置32を操作する。すなわち、変速ペダル36が中立位置にある場合、左後車輪2も右後車輪2も駆動停止されるように両後輪変速装置32を中立状態に操作する。変速ペダル36が前進側に踏み込み操作された場合、左後車輪2と右後車輪2が前進側に同一の駆動速度で駆動されるように両後輪変速装置32を前進側に、かつ、同一の速度状態に変速操作する。変速ペダル36が後進側に踏み込み操作された場合、左後車輪2と右後車輪2が後進側に同一の駆動速度で駆動されるように両後輪変速装置32を後進側に、かつ、同一の速度状態に変速操作する。
【0031】
操向変速手段33は、左右の前車輪1が左向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、右後車輪2の後輪変速装置32の電動アクチュエータ32aを操作して、右後車輪2の後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側の変速状態に操作する。これとともに、操向センサ34からの検出結果を基に、左後車輪2の後輪変速装置32の電動アクチュエータ32aを操作して、左後車輪2の後輪変速装置32が右後車輪2の後輪変速装置32よりも低速の変速状態になるように、かつ、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度が大であるほど、左後車輪2の後輪変速装置32がより低速の変速状態になるように左後車輪2の後輪変速装置32を変速操作する。このとき、変速ペダル36が前進側に操作されておれば、左後車輪2の後輪変速装置32も右後車輪2の後輪変速装置32と同様に前進側に操作し、変速ペダル36が後進側に操作されておれば、左後車輪2の後輪変速装置32も右後車輪2の後輪変速装置32と同様に後進側に操作する。
【0032】
操向変速手段33は、左右の前車輪1が右向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、左後車輪2の後輪変速装置32の電動アクチュエータ32aを操作して、左後車輪2の後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側の変速状態に操作する。これとともに、操向センサ34からの検出結果を基に、右後車輪2の後輪変速装置32の電動アクチュエータ32aを操作して、右後車輪2の後輪変速装置32が左後車輪2の後輪変速装置32よりも低速の変速状態になるように、かつ、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度が大であるほど、右後車輪2の後輪変速装置32がより低速の変速状態になるように右後車輪2の後輪変速装置32を変速操作する。このとき、変速ペダル36が前進側に操作されておれば、右後車輪2の後輪変速装置32も左後車輪2の後輪変速装置32と同様に前進側に操作し、変速ペダル36が後進側に操作されておれば、右後車輪2の後輪変速装置32も左後車輪2の後輪変速装置32と同様に後進側に操作する。
【0033】
つまり、ステアリングホイール29を回転操作することにより、ピットマンアーム26が揺動操作されて連動ロッド25を介してナックルアーム24を揺動操作して一方の前輪支持体20を揺動操作し、この前輪支持体20がタイロッド23を介して他方の前輪支持体20を揺動操作し、左右の前車輪1が操向軸芯Pまわりで車体フレーム5に対してステアリングホイール29の回転方向に対応した揺動方向に、ステアリングホイール29の操作角度に対応した揺動角度を揺動する。すなわち、左右の前車輪1を直進向きの操向状態や、直進向きから左向きや横向きに揺動した横向きの操向状態に操向操作することができる。
【0034】
そして、前車輪1を、直進側操向状態に操向操作すると、すなわち、直進向きの操向姿勢、又は、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢、又は、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢になった状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35による変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、両後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作して、左右の後車輪2がエンジン3からの駆動力によって変速ペダル36の操作位置によって決まる前進側や後進側の駆動方向に、かつ、変速ペダル36の操作位置によって決まる駆動速度で駆動され、自走車体が左右後輪2の駆動力によって変速ペダル36の操作位置に対応した速度で前進側や後進側に直進向きや、前車輪1の揺動向きに対応した向きに走行する。
【0035】
前車輪1を、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった左横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35の変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、旋回外側に位置する右後車輪2に対応した後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作しながら、旋回内側に位置する左後車輪2に対応した後輪変速装置32を前車輪1の操向作動に連係させて右後車輪2に対応した後輪変速装置32よりも低速の変速状態に変速操作して、旋回外側に位置する右後車輪2が変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、変速ペダル36の操作位置に対応した駆動回転速度で駆動され、旋回内側に位置する左後車輪2が旋回外側に位置する右後車輪2よりも低回転速度で駆動され、自走車体が左右の後車輪2の駆動力によって、左右後輪2の速度差による小回り旋回で左向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度を大にするほど、操向変速手段33が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側の右後車輪2に対応する後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に維持しながら、旋回内側の左後車輪2に対応する後輪変速装置32をより低速の変速状態に変速操作して、旋回内側の左後車輪2がより低回転速度になった状態で左右後輪2が駆動され、左右後輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0036】
前車輪1を、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった右横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35の変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、旋回外側に位置する左後車輪2に対応した後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作しながら、旋回内側に位置する右後車輪2に対応した後輪変速装置32を前車輪1の操向作動に連係させて左後車輪2に対応した後輪変速装置32よりも低速の変速状態に変速操作して、旋回外側に位置する左後車輪2が変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、変速ペダル36の操作位置に対応した駆動回転速度で駆動され、旋回内側に位置する右後車輪2が旋回外側に位置する左後車輪2よりも低回転速度で駆動され、自走車体が左右の後車輪2の駆動力によって、左右後輪2の速度差による小回り旋回で右向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度を大にするほど、操向変速手段33が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側の左後車輪2に対応する後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に維持しながら、旋回内側の右後車輪2に対応する後輪変速装置32をより低速の変速状態に変速操作して、旋回内側の右後車輪2がより低回転速度になった状態で左右後輪2が駆動され、左右後輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0037】
〔第2実施例〕
図4は、別の実施形態を備えた草刈り機の伝動構造を示し、この伝動構造にあっては、第1実施例の草刈り機における後輪伝動構造と同様の後輪伝動構造を備えている他、各前車輪1を支持する前輪支持体20を、前車輪1を駆動自在に支持する前輪駆動ケースによって構成し、各前輪支持体20を操向軸芯Pまわりで揺動操向自在に支持する前輪支持フレーム21を、各前輪支持体20に動力伝達する前輪伝動ケースによって構成し、ミッションケース7の入力軸7aからの駆動力が、ミッションケース7の前輪出力軸7bから回転伝動軸40を介して前輪支持フレーム21の入力軸21aに伝達され、この入力軸21aの駆動力がベベルギヤ機構41と回転伝動軸42とによって左前輪側と右前輪側とに分岐され、左前輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸42の一端側から前輪変速装置43を介して左側の前車輪1に伝達され、右前輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸42の他端側から前輪変速装置43を介して右側の前車輪1に伝達されるように構成してある。
【0038】
前記各前輪変速装置43は、各後輪変速装置32と同様に、静油圧式の無段変速装置によって構成されており、電動アクチュエータ43aによって変速操作されることにより、前記回転伝動軸42からの駆動力を前進側と後進側の駆動力に変換して、かつ、前進側と後進側のいずれにおいても無段階に変速して油圧モータから出力して前車輪1を前進側や後進側に無段階に変速して駆動するように前進側や後進側の伝動状態になったり、油圧モータの出力を停止して前車輪1の駆動を停止するように中立状態になったりする。
【0039】
図5に示すように、各後輪変速装置32の電動アクチュエータ32a及び変速センサ32b、操向センサ34が連係された操向変速手段33に、各前輪変速装置43の電動アクチュエータ43a及び変速センサ43bも連係されている。
【0040】
操向変速手段33は、マイクロコンピュータを利用して成り、第1実施形態を備えた草刈り機の操向変速手段33と同様に、操向センサ34、各変速センサ32bからの検出結果と、変速指令手段35からの変速指令とに基づいて両後輪変速装置32を変速操作する他、操向センサ34からの検出結果と、変速指令手段35からの変速指令とを基に、左前輪用の前輪変速装置43の変速センサ43bによる検出結果に基づいて左前輪用の前輪変速装置43が制御目標の変速状態になったか否かを判断しながら、かつ、右前輪用の前輪変速装置43の変速センサ43bによる検出結果に基づいて右前輪用の前輪変速装置43が制御目標の変速状態になったか否かを判断しながら両前輪変速装置43も変速操作する。
【0041】
すなわち、操向変速手段33は、左右の前車輪1が直進側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、両前輪変速装置43の電動アクチュエータ43aを操作して、左右の前車輪1が変速ペダル36の操作位置に対応した駆動状態や停止状態になるように両前輪変速装置43を操作する。すなわち、変速ペダル36が中立位置にある場合、左前車輪1も右前車輪1も駆動停止されるように両前輪変速装置43を中立状態に操作する。変速ペダル36が前進側に踏み込み操作された場合、左前車輪1と右前車輪1が前進側に同一の駆動速度で駆動されるように両前輪変速装置43を前進側に、かつ、同一の速度状態に変速操作する。変速ペダル36が後進側に踏み込み操作された場合、左前車輪1と右前車輪1が後進側に同一の駆動速度で駆動されるように両前輪変速装置43を後進側に、かつ、同一の速度状態に変速操作する。
【0042】
操向変速手段33は、前車輪1が左向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、右前車輪1の前輪変速装置43の電動アクチュエータ43aを操作して、右前車輪1の前輪変速装置43を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側の変速状態に操作する。これとともに、操向センサ34からの検出結果を基に、左前車輪1の前輪変速装置43の電動アクチュエータ43aを操作して、左前車輪1の前輪変速装置43が右前車輪1の前輪変速装置43よりも低速の変速状態になるように、かつ、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度が大であるほど、左前車輪1の前輪変速装置43がより低速の変速状態になるように左前車輪1の前輪変速装置43を変速操作する。このとき、変速ペダル36が前進側に操作されておれば、左前車輪1の前輪変速装置43も右前車輪1の前輪変速装置43と同様に前進側に操作し、変速ペダル36が後進側に操作されておれば、左前車輪1の前輪変速装置43も右前車輪1の前輪変速装置43と同様に後進側に操作する。
【0043】
操向変速手段33は、前車輪1が右向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、変速指令手段35からの変速指令を基に、左前車輪1の前輪変速装置43の電動アクチュエータ43aを操作して、左前車輪1の前輪変速装置43を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側の変速状態に操作する。これとともに、操向センサ34からの検出結果を基に、右前車輪1の前輪変速装置43の電動アクチュエータ43aを操作して、右前車輪1の前輪変速装置43が左前車輪1の前輪変速装置43よりも低速の変速状態になるように、かつ、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度が大であるほど、右前車輪1の前輪変速装置43がより低速の変速状態になるように右前車輪1の前輪変速装置43を変速操作する。このとき、変速ペダル36が前進側に操作されておれば、右前車輪1の前輪変速装置43も左前車輪1の前輪変速装置43と同様に前進側に操作し、変速ペダル36が後進側に操作されておれば、右前車輪1の前輪変速装置43も左前車輪1の前輪変速装置43と同様に後進側に操作する。
【0044】
これにより、前車輪1を、直進側操向状態に操向操作すると、すなわち、直進向きの操向姿勢、又は、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢、又は、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢になった状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35による変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、両前輪変速装置43及び両後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作して、左右の前車輪1及び後車輪2がエンジン3からの駆動力によって変速ペダル36の操作位置によって決まる前進側や後進側の駆動方向に、かつ、変速ペダル36の操作位置によって決まる駆動速度で駆動され、自走車体が左右前輪1及び左右後輪2の駆動力によって変速ペダル36の操作位置に対応した速度で前進側や後進側に直進向きや、前車輪1の揺動向きに対応した向きに走行する。
【0045】
前車輪1を、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった左横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35の変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、旋回外側に位置する右前車輪1に対応した前輪変速装置43、及び、旋回外側に位置する右後車輪2に対応した後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作しながら、旋回内側に位置する左前車輪1に対応した前輪変速装置43、及び、旋回内側に位置する左後車輪2に対応した後輪変速装置32を前車輪1の操向作動に連係させて右前車輪1に対応した前輪変速装置43や右後車輪2に対応した後輪変速装置32よりも低速の変速状態に変速操作して、旋回外側に位置する右前車輪1及び右後車輪2が変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、変速ペダル36の操作位置に対応した駆動回転速度で駆動され、旋回内側に位置する左前車輪1及び左後車輪2が旋回外側に位置する右前車輪1及び右後車輪2よりも低回転速度で駆動され、自走車体が左右の前車輪1及び左右の後車輪2の駆動力によって、左右前輪1の速度差、及び、左右後輪2の速度差による小回り旋回で左向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度を大にするほど、操向変速手段33が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側の右前車輪1に対応する前輪変速装置43及び旋回外側の右後車輪2に対応する後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に維持しながら、旋回内側の左前車輪1に対応する前輪変速装置43、及び、旋回内側の左後車輪2に対応する後輪変速装置32をより低速の変速状態に変速操作して、旋回内側の左前車輪1及び左後車輪2がより低回転速度になった状態で左右前輪1及び左右後輪2が駆動され、左右前輪1及び左右後輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0046】
前車輪1を、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった右横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向変速手段33が変速指令手段35の変速指令と、操向センサ34による検出結果とを基に、旋回外側に位置する左前車輪1に対応した前輪変速装置43、及び、旋回外側に位置する左後車輪2に対応した後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、かつ、変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に変速操作しながら、旋回内側に位置する右前車輪1に対応した前輪変速装置43、及び、旋回内側に位置する右後車輪2に対応した後輪変速装置32を前車輪1の操向作動に連係させて左前車輪1に対応した前輪変速装置43や左後車輪2に対応した後輪変速装置32よりも低速の変速状態に変速操作して、旋回外側に位置する左前車輪1及び左後車輪2が変速ペダル36の操作位置に対応した前進側や後進側で、変速ペダル36の操作位置に対応した駆動回転速度で駆動され、旋回内側に位置する右前車輪1及び右後車輪2が旋回外側に位置する左前車輪1及び左後車輪2よりも低回転速度で駆動され、自走車体が左右の前車輪1及び左右の後車輪2の駆動力によって、左右前輪1の速度差、及び、左右後輪2の速度差による小回り旋回で右向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度を大にするほど、操向変速手段33が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側の左前車輪1に対応する前輪変速装置43及び旋回外側の左後車輪2に対応する後輪変速装置32を変速ペダル36の操作位置に対応した速度状態に維持しながら、旋回内側の右前車輪1に対応する前輪変速装置43、及び、旋回内側の右後車輪2に対応する後輪変速装置32をより低速の変速状態に変速操作して、旋回内側の右前車輪1及び右後車輪2がより低回転速度になった状態で左右前輪1及び左右後輪2が駆動され、左右前輪1及び左右後輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0047】
〔第3実施例〕
図6は、さらに別の実施形態を備えた草刈り機の伝動構造を示し、この伝動構造にあっては、エンジン3の駆動力がミッションケース7の入力軸7aによってミッションケース7の変速部(図示せず)に入力され、この変速部によって前進側や後進側に変換されるとともに所定の回転速度に変速された駆動力がベベルギヤ機構30と回転伝動軸31とによって左後輪側と右後輪側とに分岐され、左後輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸31の一端側から後輪摩擦クラッチ50を介して左側の後車輪2に伝達され、右後輪側に分岐された駆動力が、前記回転伝動軸31の他端側から後輪摩擦クラッチ50を介して右側の後車輪2に伝達されるように構成してある。
【0048】
各後輪摩擦クラッチ50は、この後輪摩擦クラッチ50のクラッチボディ(図示せず)に内装された油圧ピストン(図示せず)を備え、ミッションケース7に設けられた制御弁51の操作によって油圧ピストンに供給される油圧の圧力調整が行なわれることにより、クラッチプレート間の滑り伝動がほとんど発生しなくて入力回転数と出力回転数が同一又はそれに近い状態で後車輪2に動力伝達する入り状態や、クラッチプレート間の滑り伝動が発生して出力回転数が入力回転数よりも減少した状態で後車輪2に動力伝達する滑り伝動状態に変化するようになっている。また、滑り伝動状態に操作された場合においても、前記制御弁51の操作によって油圧ピストンに供給される油圧が減圧側や増圧側に調整されることにより、クラッチプレート間の滑り度合いが大なって出力回転数の入力回転数に対する比率が小になったり、クラッチプレート間の滑り度合いが小なって出力回転数の入力回転数に対する比率が大になったりするようにクラッチプレート間の滑り度合を変更調節することができるようになっている。
【0049】
図7に示すように、前記各後輪摩擦クラッチ50の前記制御弁51の電動操作部を操向制御手段52に連係させてある。この操向制御手段52には、第1実施例の操向センサ34と同様の操向センサ34、各後輪摩擦クラッチ50のクラッチセンサ53も連係させてある。
【0050】
各クラッチセンサ53は、後輪摩擦クラッチ53の操作状態を検出し、この検出結果を電気信号にして操向制御手段52に出力する。
【0051】
操向制御手段52は、マイクロコンピュータを利用して成り、第1実施例の操向変速手段33と同様に、操向センサ34の検出結果を基に、左右一対の前車輪1が直進側操向状態と、直進向きから左横向き側に設定角(10〜15度)以上横向きに揺動した左向きの横向き側操向状態と、直進向きから右横向き側に設定角(10〜15度)以上横向きに揺動した右向きの横向き側操向状態とのいずれにあるかを判断し、この判断結果を基に、左後輪用の後輪摩擦クラッチ50のクラッチセンサ53による検出結果に基づいて左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50が制御目標の操作状態になったか否かを判断しながら、かつ、右後輪用の後輪摩擦クラッチ50のクラッチセンサ53による検出結果に基づいて右後車輪2の後輪摩擦クラッチ50が制御目標の操作状態になったか否かを判断しながら両後輪摩擦クラッチ50を次の如く操作する。
【0052】
すなわち、操向制御手段52は、左右の前車輪1が直進側操向状態にあると判断した場合、両後輪摩擦クラッチ50の制御弁51を操作して、両後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作する。
【0053】
操向制御手段52は、左右の前車輪1が左向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、右後車輪2の後輪摩擦クラッチ50の制御弁51を操作して、右後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作する。これとともに、左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50の制御弁51を操作して、左後車輪2の駆動回転速度が右後車輪2の駆動回転速度よりも低速になるように左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を滑り伝動状態に操作する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度が大であるほど、左後車輪2の駆動回転速度がより低速になるように左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を滑り度合いがより大になった滑り伝動状態に操作する。
【0054】
操向制御手段52は、左右の前車輪1が右向きの横向き側操向状態にあると判断した場合、左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50の制御弁51を操作して、左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作する。これとともに、右後車輪2の後輪摩擦クラッチ50の制御弁51を操作して、右後車輪2の駆動回転速度が左後車輪2の駆動回転速度よりも低速になるように左後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を滑り伝動状態に操作する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度が大であるほど、右後車輪2の駆動回転速度がより低速になるように右後車輪2の後輪摩擦クラッチ50を滑り度合いがより大になった滑り伝動状態に操作する。
【0055】
これにより、左右の前車輪1を、直進側操向状態に操向操作すると、すなわち、直進向きの操向姿勢、又は、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢、又は、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)未満の揺動角度を揺動した操向姿勢になった状態に操向操作すると、操向制御手段52が、操向センサ34による検出結果を基に、両後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作し、これにより、左右の後車輪2がエンジン3からの駆動力によって変速部の操作状態によって決まる前進側や後進側の駆動方向に、かつ、変速部の操作状態によって決まる駆動速度で駆動され、自走車体が左右後輪2の駆動力によって前進側や後進側に直進向きや、前車輪1の揺動向きに対応した向きに走行する。
【0056】
前車輪1を、直進向きから左横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった左横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向制御手段52が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側に位置する右後車輪2に対応した後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作し、旋回内側に位置する左後車輪2に対応した後輪摩擦クラッチ50を滑り伝動状態に操作して、旋回内側の左後車輪2が旋回外側の右後車輪2よりも低速回転する状態で左右の後車輪2が駆動され、自走車体が左後車輪2及び右後車輪2の駆動力によって、左右の後車輪2の速度差による小回り旋回で左向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの左横向き角度を大にするほど、操向制御手段52が操向センサ34による検出結果を基に、旋回内側の左後車輪2に対応する後輪摩擦クラッチ50を滑り度合いがより大になった滑り伝動状態に操作し、旋回内側の左後車輪2と旋回外側の右後車輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0057】
前車輪1を、直進向きから右横向きに設定角(10〜15度)以上横向きになった右横向きの横向き側操向状態に操向操作すると、操向制御手段52が操向センサ34による検出結果を基に、旋回外側に位置する左後車輪2に対応した後輪摩擦クラッチ50を入り状態に操作し、旋回内側に位置する右側の後車輪2に対応した後輪摩擦クラッチ50を滑り伝動状態に操作して、旋回内側の右後車輪2が旋回外側の左後車輪よりも低速回転する状態で左右の後車輪2が駆動され、自走車体が左後車輪2及び右後車輪2の駆動力によって、左右の後車輪2の速度差による小回り旋回で右向きに旋回走行する。このとき、前車輪1の設定角(10〜15度)からの右横向き角度を大にするほど、操向制御手段52が操向センサ34による検出結果を基に、旋回内側の右後車輪2に対応する後輪摩擦クラッチ50を滑り度合いがより大になった滑り伝動状態に操作し、旋回内側の右後車輪2と旋回外側の左後車輪2の速度差がより大になった状態で自走車体が旋回走行する。
【0058】
〔別実施例〕
前輪用変速装置や後輪用変速装置としては、上記実施例の如く静油圧式の無段変速装置を採用して実施する他、ベルト無段変速装置を採用したり、ギヤ式の変速装置を採用したりしても本発明の目的を達成することができるのであり、こられを総称して後輪変速装置32、前輪変速装置43と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】乗用型草刈り機全体の側面図
【図2】操向構造及び伝動構造の概略図
【図3】後輪変速制御のブロック図
【図4】別の実施例を備えた草刈り機の操向構造及び伝動構造の概略図
【図5】別の実施例を備えた草刈り機の前後輪変速制御のブロック図
【図6】さらに別の実施例を備えた草刈り機の伝動構造の概略図
【図7】さらに別の実施例を備えた草刈り機の後輪変速制御のブロック図
【符号の説明】
【0060】
1 前車輪
2 後車輪
32 後輪変速装置
33 操向変速手段
43 前輪変速装置
50 後輪摩擦クラッチ
52 操向制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前車輪を操向操作自在に備え、左右一対の非操向型後車輪を備えた草刈り機であって、
前記左右一対の後車輪を各別に変速駆動する一対の後輪変速装置を備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回内側に位置する後車輪が旋回外側に位置する後車輪よりも低回転速度で駆動され、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど、旋回内側の後車輪に対応する後輪変速装置がより低速の速度状態になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の後輪変速装置が同一の速度状態になるように、前記前車輪の操向作動に連係させて前記一対の後輪変速装置を操作する操向変速手段を備えてある草刈り機。
【請求項2】
前記左右一対の前車輪を各別に変速駆動する一対の前輪変速装置を備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回内側に位置する前車輪が旋回外側に位置する前車輪よりも低回転速度で駆動され、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大であるほど、旋回内側の前車輪に対応する前輪変速装置がより低速の速度状態になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の前輪変速装置が同一の速度状態になるように、前記一対の前輪変速装置が前記操向変速手段によって前車輪の操向作動に連係させて変速操作されるように構成してある請求項1記載の草刈り機。
【請求項3】
前記各後輪変速装置が無段変速装置である請求項1又は2記載の草刈り機。
【請求項4】
左右一対の前車輪を操向操作自在に備え、左右一対の非操向型後車輪を備えた草刈り機であって、
左右一対の後車輪に各別に伝動作用する一対の後輪摩擦クラッチを備え、
前記左右一対の前車輪が直進向きから設定角以上横向きになった横向き側操向状態にあると、旋回外側に位置する後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチが入り状態で、旋回内側に位置する後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチが滑り伝動状態になるように、かつ、前車輪の前記設定角からの横向き角度が大になるほど、旋回内側の後車輪に対応する前記後輪摩擦クラッチの滑り度合いがより大になるように、前記左右一対の前車輪が直進側操向状態にあると、前記一対の後輪摩擦クラッチが入り状態になるように、前記前車輪の操向作動に連係させて前記一対の後輪摩擦クラッチを操作する操向制御手段を備えてある草刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−264376(P2006−264376A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81516(P2005−81516)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】