説明

荷台部、および同荷台部を備えた運搬車両

【課題】運搬車両の荷台部に被運搬物を積み降ろしする際、運搬車両の後方に存在する車両等に対して積み降ろし作業中の運搬車両の発見を容易にすることにより、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性を向上させるとともに、重大事故の危険性を減少させる。
【解決手段】運搬車両1は、シャシ10上に被運搬物である車両Wを積載するための荷台部20を備えている。荷台部20は、運搬車両1の後方に向ってスライドするとともに、同荷台部20の後端部が地上Gに接地する設置する角度で傾斜するようにシャシ10上に組み付けられている。荷台部20の上面中央部には、運搬車両1の前後方向に沿って警告表示24が形成されている。警告表示24は、荷台部20が傾斜した状態において、運搬車両1の後方から荷台部20上を見て警告表示24が三角停止表示板を表わす正三角形に見えるように赤色の反射性塗料によって二等辺三角形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被運搬物を荷台部に積み降ろしするために、同荷台部の少なくとも一部が傾斜して形成され、または同荷台部が傾斜するように構成された運搬車両用の荷台部、およびこれらの荷台部を備えた運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両などの被運搬物を荷台部に積載して運搬する運搬車両がある。このような運搬車両においては、荷台部に被運搬物を積み降ろしするために、荷台部の後部が傾斜して形成され、および/または同荷台部が傾斜するように構成されている。例えば、下記特許文献1には、被運搬物を積載する荷台部の後部が地上に向って傾斜して形成されるとともに、同荷台部の端部に荷台部と地上とを繋ぐ歩み板が備えられた運搬車両が開示されている。また、下記特許文献2ないし下記特許文献4には、被運搬物を積載する荷台部の姿勢が地上に向って傾斜するように構成されるとともに、同荷台部の端部に荷台部と地上とを繋ぐ歩み板が備えられた運搬車両がそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開平10−129331号公報
【特許文献2】特開2000−203326号公報
【特許文献3】特開2000−255314号公報
【特許文献4】特開2002−87142号公報
【0003】
しかしながら、上記各特許文献1〜4にそれぞれ開示された運搬車両においては、路上で荷台部に被運搬物を積み降ろしする際、運搬車両の後方から接近する車両の運転手が前方の運搬車両の存在に気付かない、または気付くのが遅れることがある。通常、荷台部に被運搬物を積み降ろしするに際しては、運搬車両のハザードランプ(非常点滅表示灯)を点滅させることにより運搬車両の後方を含む運搬車両の周囲の車両等に対して運搬車両の存在を知らせる。また、車両の幅方向における両端に車幅灯を備える運搬車両においては、ハザードランプに加えて同車幅灯を点灯させることにより運搬車両の後方を含む運搬車両の周囲の車両等に対して運搬車両の存在を知らせる。これらにより、積み降ろし作業中の運搬車両に対する後続の車両等の追突などの事故を未然に防止している。
【0004】
しかし、荷台部に被運搬物を積み降ろしするために荷台部と地上との間に歩み板を架設した場合、または荷台部を地上に向って傾斜させた場合には、架設した歩み板または傾斜させた荷台部によって運搬車両の後部に設けられているハザードランプや車幅灯の一部または全部を覆い隠し運搬車両の後方の車両に対する注意喚起が妨げられる。このため、運搬車両の荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の危険性が増大するという問題がある。特に、夜間における被運搬物の積み降ろし作業においては、ハザードランプや車幅灯の一部または全部を覆い隠されることにより積み降ろし作業中の運搬車両の発見が遅れ、重大事故に繋がる危険性が増大する。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、運搬車両の荷台部に被運搬物を積み降ろしする際、運搬車両の後方に存在する車両等に対して積み降ろし作業中の運搬車両の発見を容易にすることにより、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性を向上させるとともに、重大事故の危険性を減少させることができる荷台部、および同荷台部を備えた運搬車両を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被運搬物を運搬するための運搬車両に搭載され、被運搬物を荷台部に積み降ろしするために同荷台部の少なくとも一部が傾斜して形成された荷台部、または同荷台部が傾斜するように運搬車両に組み付けられる荷台部において、荷台部における前記傾斜して形成された部分、または前記傾斜するように組み付けられる荷台部の表面に、運搬車両の存在を示すための警告表示部材を備えたことにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、被運搬物が積載される荷台部の傾斜した部分、または運搬車両内に傾斜するように組み付けられる荷台部の表面に、運搬車両の存在を示すための警告表示部材が形成されている。したがって、被運搬物を荷台部に積載する際に荷台部と地上との間に歩み板を架設し、または荷台部を地上に向って傾斜させることにより運搬車両のハザードランプや車幅灯の一部または全部を覆い隠す場合であっても、運搬車両の後方に存在する車両等に対して運搬車両の存在を知らせることができる。これにより、運搬車両の後方に存在する車両等は、前方に運搬車両が存在することを容易に発見することができる。この結果、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性が向上するとともに、重大事故の危険性が減少する。
【0008】
この場合、前記運搬車両において、前記警告表示部材は、例えば、電光発光部材、蛍光部材、および反射部材のうちの少なくとも1つで構成するとよい。これによれば、特に、夜間における被運搬物の積み降ろし作業において、被運搬物の積み降ろし作業中の運搬車両の発見が容易となり、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性がより向上するとともに、重大事故の危険性がより減少する。なお、電光発光部材とは、電気エネルギーを光エネルギーに変換する機器(例えば、電球、LEDなど)である。このような電光発光部材を警告表示部材として用いれば、日中でも被運搬物の積み降ろし作業中の運搬車両の発見が容易となる。また、蛍光部材とは、ルミネセンス(luminescence)現象によって光を放出する部材や物質である。また、反射部材とは、照射された光の全部または一部を跳ね返す部材である。
【0009】
また、この場合、前記荷台部において、前記警告表示部材は、荷台部における前記傾斜して形成された部分、または前記傾斜した状態の荷台部を略水平方向から見て認識可能な文字、図形および記号うちの少なくとも1つで構成するとよい。これによれば、荷台部における傾斜した部分、または傾斜させた荷台部の表面、すなわち、傾斜した表面に水平方向から見て認識可能な文字、図形、または記号によって警告表示部材が形成される。これにより、荷台部を見る者が警告表示部材の意味を容易に理解でき、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性を向上させることができるとともに、重大事故の危険性を減少させることができる。
【0010】
また、この場合、前記荷台部において、前記荷台部は、同荷台部に被運搬物を積み降ろしするための歩み板を備え、警告表示部材は、前記歩み板上に形成されるとよい。これによれば、荷台部に加えて歩み板上にも警告表示部材が形成される。このため、荷台部上に積載した被運搬物によって荷台部上に形成した警告表示部材の一部または全部が覆われ、運搬車両の後方から警告表示部材を視認できない場合であっても、歩み板上に形成された警告表示部材によって運搬車両の後方に存在する車両等に対して運搬車両の存在を知らせることができる。これにより、運搬車両の後方に存在する車両等は、前方に運搬車両が存在することを容易に発見することができる。この結果、荷台部への被運搬物の積み降ろし作業の安全性がより向上するとともに、重大事故の危険性がより減少する。
【0011】
また、本発明は荷台部として実施できるばかりでなく、同荷台部を備えた運搬車両として実施できるものである。具体的には、被運搬物を荷台部に積み降ろしするために、同荷台部の少なくとも一部が傾斜して形成され、または同荷台部が傾斜するように構成された運搬車両において、荷台部における前記傾斜して形成された部分、または前記傾斜するように構成された荷台部の表面に、運搬車両の存在を示すための警告表示部材を備えればよい。このように構成された本発明に係る運搬車両によれば、上記荷台部に係る発明と同様の作用効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る荷台部および同荷台部備える運搬車両の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A)は、本発明に係る荷台部を備えた運搬車両の外観を示した平面図であり、図1(B)は、同運搬車両の側面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。また、本実施形態において、「前後」の関係は、車両の前後を基準とする。すなわち、車両の運転席側が前であり、同運転席の反対側が後ろである。本実施形態に係る運搬車両1は、自動車などの車両Wを1台だけ積載することができ、同車両Wを運搬する所謂車両運搬車である。
【0013】
(運搬車両1の構成)
運搬車両1は、運搬車両1の前後方向(図示左右方向)に延びて形成されたシャシ10を備えている。シャシ10は、運搬車両の骨格となる図示しないフレームにエンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、ディファレンシャル、サスペンションなどの一連の駆動系、制動装置、および操舵装置(ステアリング機構)(いずれも図示せず)などを備えて構成されている。シャシ10における運搬車両1の前部側(図示左側)および後部側(図示右側)には、運搬車両1が地上G上を走行するための左右一対のタイヤ11a,11b(それぞれ一方のみ図示)がそれぞれ配置されている。また、シャシ10における後端部には、運搬車両1の後方に向って発光する一対の尾灯12が運搬車両1の車幅方向に並んで設けられている(一方の尾灯12のみ図示)。尾灯12は、運搬車両1の夜間運行時、後退時、および制動時に点灯させる図示しない常灯ランプと、運搬車両1の右左折時および緊急停止時などに点滅させる図示しない非常灯ランプとから構成されている。
【0014】
シャシ10の前部上には、キャビン13が設けられている。キャビン13は、運搬車両1を運転するための運転室であり、運搬車両1を運転するためのハンドル等の各種操作子、運搬車両1の運行状態等を示す各種計器類、および運転者が着座する運転席などを備えている。このキャビン13の外側前面には、運搬車両1の前方に向って発光する一対の前照灯13aが運搬車両1の車幅方向に並んで設けられている(一方の前照灯13aのみ図示)。前照灯13aは、運搬車両1の夜間運行時に点灯させる図示しない常灯ランプと、運搬車両1の右左折時や緊急停止時などに点滅させる図示しない非常灯ランプとから構成されている。
【0015】
シャシ10上におけるキャビン13の後方には荷台部20が設けられている。荷台部20は、被運搬物である車両Wを載置するための荷台であり、シャシ10上において水平状態と傾斜状態の2つの姿勢をとることができるように組み付けられている。具体的には、図2(A),(B)に示すように、荷台部20は、図示しないスライド機構によって運搬車両1の後方に向ってスライドするとともに、図示しないチルト機構によって荷台部20の後端部が地上Gに設置する角度(概ね10°〜15°)で傾斜するようにシャシ10上に組み付けられている。
【0016】
荷台部20の後端部には、側面視略三角形状の歩み板21が設けられている。歩み板21は、荷台20が地上Gに接地した状態で荷台20の上面と地上Gとの間に架設されて荷台20の上面と地上Gとを繋ぐ渡し部材であり、荷台部20の後端部にヒンジ21aを中心として回動自在に支持されている。この歩み板21は、シャシ10上における荷台部20の姿勢が水平な場合に起立した状態で支持されるとともに、同荷台部20の姿勢が傾斜した場合に地上Gに向って傾倒した状態で支持される。歩み板21の前方における荷台部20の上面両側には、歩み板固定具21bが設けられている。歩み板固定具21bは、起立した状態の歩み板21を固定支持する部品であり、歩み板21に対して着脱自在に構成されている。一方、キャビン13側における荷台部20の前端部には、門型に形成された補強枠22が起立した状態で設けられている。また、キャビン13側における荷台部20の上面には、一対の車止め23が固着されている。
【0017】
荷台部20の上面中央部には、運搬車両1の前後方向に沿って警告表示24が形成されている。警告表示24は、荷台部20が傾斜した状態において、運搬車両1の後方に存在する車両等に対して運搬車両1の存在を知らせるための警告表示部材である。この警告表示24は、荷台部20の全面に亘って描かれた二等辺三角形で構成されており、光を反射する赤色の反射性塗料によって形成されている。この警告表示24を形成する二等辺三角形は、荷台部20が傾斜した状態において、運搬車両1の後方から荷台部20上を見て、換言すれば、運搬車両1の後方から水平視して警告表示24が三角停止表示板を表わす正三角形に見える形状で形成されている。
【0018】
シャシ10上におけるキャビン13と荷台部20との間には、荷台部操作盤25が設けられている。荷台部操作盤25は、シャシ10上の荷台部20の姿勢を水平状態および傾斜状態に変化させるための操作スイッチで構成されている。運搬車両1におけるその他の構成については、本発明に直接関係しないため、その説明は省略する。
【0019】
(運搬車両の作動)
次に、このように構成された運搬車両1の作動について説明する。本作動説明においては、路上で車両Wを運搬車両1に積載する場合について説明する。まず、作業者は、運搬車両1におけるキャビン13内に乗り込み運搬車両1を操縦して、車両Wを積載する場所に向う。この場合、運搬車両1は、荷台部20をシャシ10上において水平姿勢を維持した状態で走行する。そして、運搬車両1が車両Wを積載する現場に到着した場合には、作業者は、運搬車両1を路肩に停止させた後、ハザードランプを点滅させる。具体的には、作業者は、キャビン13の前面に設けられた前照灯13aの非常灯ランプと、シャシ10の後端部に設けられた尾灯12の非常灯点滅ランプとをそれぞれ点滅させる。これにより、運搬車両1の周囲に存在する車両等に対して運搬車車両1の存在を知らせることができる。
【0020】
次に、作業者は、荷台部20上に車両Wを積み込む作業を開始する。具体的には、作業者は、荷台部操作盤25を操作して荷台部20を運搬車両1の後方にスライドさせるとともに、同荷台部20を傾斜させて荷台部20の後端部を地上Gに接地させる。そして、作業者は、歩み板固定具21bを歩み板21から取り外して歩み板21を回動自在にするとともに、歩み板21を回動させて歩み板21の端部を地上Gに接地させる。これにより、荷台部20および歩み板21によって地上Gから連続的に繋がった登坂路Rが形成される。この場合、シャシ10の後端部に設けられた尾灯12は、尾灯12の後方に変位した荷台部20によって覆われる。このため、運搬車両1の後方に向けて点滅する尾灯12の点滅光は荷台部20によって遮られる。
【0021】
一方、荷台部20の上面には、同上面の略全面に亘って赤色の二等辺三角形からなる警告表示24が形成されている。このため、荷台部20が傾斜した状態の運搬車両1を同運搬車両1の後方から見ると(略水平視)、図2(B)に示すように、荷台部20の上面における略全面に亘って形成された赤色の正三角形からなる警告表示24を視認することができる。これにより、運搬車両1の後方から運搬車両1に接近する車両等に対して運搬車両1の存在を示すことができるとともに、同運搬車両1に接近する車両は運搬車両1の存在を認識することができる。特に、車両Wの積み込み作業を夜間に行う場合においては、運搬車両1の後方から運搬車両1に接近する車両の前照灯の光により警告表示24が反射して発光するため、運搬車両1に接近する車両は運搬車両1の存在をより明確に認識することができる。
【0022】
次に、作業者は、車両Wを自走させて搬送路Rを登坂させることにより荷台部20上に積載する。この場合、荷台部20上に積載した車両Wによって荷台部20上に形成された警告表示24の一部または全部が覆われ、運搬車両1の後方から警告表示24を視認できなくなることがある。しかし、荷台部20上に車両Wを積載する際に車両Wのハザードランプを点滅、および/または車両Wの尾灯に備えられている反射板により運搬車両1の後方からの運搬車両1の視認性を確保することができる。
【0023】
運搬車両1の荷台部20に車両Wを積載した場合には、作業者は、歩み板21を起立させて歩み板固定具12aによって固定するとともに、荷台部操作盤25を操作して荷台部20を水平姿勢に復帰させる(図1(A),(B)参照)。そして、作業者は、荷台部20上の車両Wを適宜固定した後、運搬車両1のハザードランプの点滅を停止させる。これにより、荷台部20上への車両Wの積み込み作業が終了する。次に、作業者は、キャビン13内に乗り込み運搬車両1を操縦して車両Wの運搬を開始する。この場合、運搬車両1は、前記と同様に、荷台部20を水平な姿勢に保った状態で走行し運搬する。運搬車両1が車両Wの運搬先に到着した場合には、作業者は、車両Wの積み込み作業時と同様に、運搬車両1を路肩に停止させた後、ハザードランプを点滅させて車両Wの積み降ろし作業を開始する。
【0024】
具体的には、荷台部20に積載されている車両Wの固定を解除した後、荷台部操作盤25を操作して荷台部20を運搬車両1の後方にスライドさせるとともに、同荷台部20を傾斜させて荷台部20の後端部を地上Gに接地させる。そして、作業者は、歩み板固定具21bを歩み板21から取り外して歩み板21を回動自在にするとともに、歩み板21を回動させて歩み板21の端部を地上Gに接地させる。これにより、荷台部20および歩み板21によって地上Gから連続的に繋がった登坂路Rが形成される。この場合、前記車両Wの積み込時と同様に、シャシ10の後端部に設けられた尾灯12の点滅光は荷台部20によって遮られるが、車両Wのハザードランプを点滅させること、および/または、車両Wの尾灯12に備えられている反射板により運搬車両1の後方からの運搬車両1の視認性を確保することができる。
【0025】
次に、作業者は、車両Wを自走させることにより登坂路Rを下降させて荷台部20上から車両Wを降ろす。これにより、荷台部20の上面に形成された警告表示24が現れ、運搬車両1の後方から運搬車両1に接近する車両等に対して運搬車両1の存在を示すことができる。そして、作業者は、歩み板12を起立させて歩み板固定具12aによって固定するとともに、荷台部操作盤25を操作して荷台部20を水平姿勢に復帰させた後、運搬車両1のハザードランプの点滅を停止させる。これにより、荷台部20上からの車両Wの積み降ろし作業が終了する。
【0026】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、車両Wが積載される荷台部20の表面に、運搬車両1の存在を示すための警告表示24が形成されている。したがって、車両Wを荷台部20に積載する際に、荷台部20を地上に向って傾斜させて運搬車両1の尾灯12を覆い隠す場合であっても、運搬車両1の後方に存在する車両等に対して運搬車両1の存在を知らせることができる。これにより、運搬車両1の後方に存在する車両等は、前方に運搬車両1が存在することを容易に発見することができる。この結果、荷台部20への車両Wの積み降ろし作業の安全性が向上するとともに、重大事故の危険性が減少する。
【0027】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態においては、赤色の反射塗料によって警告表示24を形成した。しかし、警告表示24は、運搬車両1の周囲から視認可能な形態であれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、赤色以外の色によって警告表示24を形成してもよいし、反射塗料以外の素材を用いて警告表示24を構成してもよい。例えば、反射塗料に代えて、または加えて蛍光塗料を用いて警告表示24を構成してもよい。この場合、蛍光塗料とは、ルミネセンス(luminescence)現象によって光を放出する物質で構成される塗料であり、暗所において発光するものである。また、塗料以外の素材、例えば、反射部材や蛍光部材で構成されるテープを荷台部20上に貼り付けて警告表示24を構成してもよい。
【0029】
さらに、警告表示24を電球やLEDなどの電気エネルギーを光エネルギーに変換する電光発光部材によって構成してもよい。これによれば、日中でも車両Wの積み降ろし作業中の運搬車両1の発見が容易となり、より安全に積み降ろし作業を行うことができる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0030】
また、上記実施形態においては、運搬車両1の後方から見て三角停止表示板を表わす正三角形状に見えるように警告表示24を形成した。しかし、警告表示24は、運搬車両1の周囲に対して何らかの注意を喚起する形態であれば、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、正三角形以外の図形や記号であってもよいし、「作業中」などの文字であってもよい(図3(A),(B)参照)。また、警告表示24を形成する大きさや数も適宜決定して用いればよい。なお、この警告表示24は、必ずしも何らかの意味を有するものである必要はなく、人目に付き易い形態であれば、運搬車両1の存在を知らせることができ本発明の目的を達成するものである。したがって、荷台部20が傾斜することにより警告表示24の形状が歪に変形するような形態であってもよいし、例えば、荷台部20の全面を反射塗料で塗り潰してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0031】
また、上記実施形態においては、荷台部20の上面に警告表示24を形成した。しかし、上記実施形態でも述べたように、荷台部20上に積載した車両Wによって荷台部20上に形成された警告表示24の一部または全部が覆われ、運搬車両1の後方から警告表示24を視認できなくなることがある。このため、荷台部20に加えて歩み板21の上面にも警告表示を形成するように構成してもよい(図3(A),(B)参照)。これによれば、荷台部20上の警告表示24が視認し難い場合であっても、運搬車両1の存在を運搬車両1の後方に対して知らせることができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、運搬車両1のシャシ10に対して傾斜する荷台部20の表面に警告表示24を形成した。しかし、警告表示24を形成する位置は、車両Wを荷台部20に積み降ろしする際に運搬車両1の後方から視認できる面、すなわち、運搬車両1の後方からの水平視に対して傾斜している荷台部20上の面であれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図3(A),(B)に示すように、荷台部20の後端部が地上Gに向って傾斜している傾斜面20a上に警告表示24を形成してもよい。この図3(A),(B)に示す変形例においては、警告表示30は、荷台部20の傾斜面20a上に形成された「作業中」の文字と、歩み板21上に形成された三角停止表示板を表わす正三角形とによって構成されている。なお、図3(A),(B)において、上記実施形態と同様の構成部分には、同上記実施形態と同一の符号を付している。
【0033】
また、荷台部20が傾斜する構成の運搬車両1においても、荷台部20を傾斜させるための機構は、上記実施形態以外の構成であってもよいことは、当然である。例えば、運搬車両1におけるシャシ10の前部を持ち上げることにより荷台部20をシャシ20とともに傾斜させるように構成してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0034】
また、上記実施形態においては、1台の車両Wを積載して運搬する運搬車両1に本発明を適用した。しかし、運搬車両1に積載される被運搬物の種類や数は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、被運搬物を積み降ろしするために荷台部20の少なくとも一部が傾斜した荷台部20、または荷台部20が傾斜するように構成された運搬車両1に広く適用できるものである。
【0035】
また、上記実施形態においては、荷台部20を備える運搬車両1に本発明を適用した。しかし、本発明は、被運搬物を運搬する運搬車両に搭載され、被運搬物を積み降ろしするために荷台部の少なくとも一部が傾斜した荷台部、または運搬車両内において傾斜するように組み付けられる荷台部に広く適用できるものであり、必ずしも、車両を運搬するための運搬車両の発明としてのみ適用されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る荷台部を備える運搬車両の全体構成を模式的に示す図であり、(A)は同運搬車両の平面図であり、(B)は同運搬車両の側面図である。
【図2】図1に示す運搬車両において荷台部が傾斜した状態を示す図であり、(A)は同運搬車両の平面図であり、(B)は同運搬車両の側面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る荷台部を備える運搬車両の全体構成を模式的に示す図であり、(A)は同運搬車両の平面図であり、(B)は同運搬車両の側面図である。
【符号の説明】
【0037】
G…地上、W…車両、1…運搬車両、10…シャシ、11a,11b…タイヤ、12…尾灯、13…キャビン、20…荷台部、21…歩み板、22…補強枠、23…車止め、24…警告表示、25…荷台部操作盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物を運搬するための運搬車両に搭載され、前記被運搬物を荷台部に積み降ろしするために同荷台部の少なくとも一部が傾斜して形成された荷台部、または同荷台部が傾斜するように前記運搬車両に組み付けられる荷台部において、
前記荷台部における前記傾斜して形成された部分、または前記傾斜するように組み付けられる荷台部の表面に、前記運搬車両の存在を示すための警告表示部材を備えたことを特徴とする荷台部。
【請求項2】
請求項2に記載した荷台部において、
前記警告表示部材は、電光発光部材、蛍光部材、および反射部材のうちの少なくとも1つで構成される荷台部。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した荷台部において、
前記警告表示部材は、前記荷台部における前記傾斜して形成された部分、または前記傾斜した状態の荷台部を略水平方向から見て認識可能な文字、図形および記号うちの少なくとも1つで構成される荷台部。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した荷台部において、
前記荷台部は、同荷台部に前記被運搬物を積み降ろしするための歩み板を備え、
前記警告表示部材は、前記歩み板上に形成された荷台部。
【請求項5】
被運搬物を荷台部に積み降ろしするために、同荷台部の少なくとも一部が傾斜して形成され、または同荷台部が傾斜するように構成された運搬車両において、
前記荷台部は、前記請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した荷台部を備えることを特徴とする運搬車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−154561(P2009−154561A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331678(P2007−331678)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【特許番号】特許第4229399号(P4229399)
【特許公報発行日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(304010466)
【出願人】(507420880)
【Fターム(参考)】