説明

荷電粒子線システム、およびパターン計測方法

【課題】一次荷電粒子線を用いて、試料上の多数の測定点を迅速に処理することができる技術を提供する。
【解決手段】統括制御部201において、計算部201aは、半導体ウェハ13上の各測定点(一次荷電粒子線11の照射位置)について、データ格納部201bに格納されている半導体ウエハ13の表面電位分布関数から求まる当該測定点での表面電位の確からしさを求め、この確からしさに基づいて当該測定点での荷電粒子線光学系10の設定パラメータ(例えばリターディング電圧)の振り幅を決定する。そして、決定した振り幅の範囲で設定パラメータを変化させながら一次荷電粒子線の集束状態を調べ、測定に用いる設定パラメータを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を用いて、半導体ウェハ等の試料に形成された回路パターンを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の試料に形成された回路パターンを計測する技術として、荷電粒子線システムがある。荷電粒子線システムは、試料に一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する。そして、検出した二次荷電粒子を画像化して表示装置に表示する。
【0003】
荷電粒子線システムにおいて、試料上の多数の測定点を迅速に処理するためには、各測定点に照射される一次荷電粒子線の集束調整等に要する時間を短縮することが好ましい。一次荷電粒子線の集束条件は、一次荷電粒子線の加速電圧、試料に印加される電圧、および試料の高さ等から決定される。例えばレーザ光を試料に照射し、その反射光を利用して試料の高さを検出する。そして、得られた高さ情報を、荷電粒子線光学系の制御装置(例えば対物レンズの制御装置)にフィードバックし、一次荷電粒子線が各測定点で集束するように、荷電粒子線光学系の設定パラメータを決定する。
【0004】
半導体製造プロセスにおいて、半導体ウェハに形成された回路パターンの測定に荷電粒子線システムを用いる場合、この測定よりも前のプロセスでの処理によって半導体ウェハが帯電することがある。例えばレジスト塗布において、レジスト塗布に用いるスピンコータによる摩擦により、レジストを構成する物質が分極して、半導体ウェハが帯電することがある。また、エッチングにおいて、エッチングに用いるプラズマによって半導体ウェハが帯電することがある。荷電粒子線システムにおいて、試料が帯電していると、一次荷電粒子線の軌道が乱れ、測定点で集束せず、このため計測精度が低下する。特許文献1には、この問題を解決するための技術が開示されている。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、真空チャンバ内への搬送経路に表面電位計を設置し、この表面電位計を用いて、一次荷電粒子線による計測に先立って、半導体ウェハの中心を含む直線上の表面電位を測定する。次に、表面電位の測定結果を用いて、予め定義された関数の係数を決定することにより、半導体ウェハの中心を含む直線上の表面電位を表現する近似関数を求める。半導体ウェハは、同心円状に帯電する傾向(回転対称性)がある。この特性を利用して、半導体ウェハの中心を含む直線上の表面電位を表現する近似関数から、半導体ウェハ全面の表面電位分布を表現する近似関数を求める。この半導体ウェハ全面の表面電位分布を表現する近似関数を用いて、半導体ウェハの測定点における表面電位を算出し、算出した表面電位を用いて、一次荷電粒子線の集束調整の際に半導体ウェハに印加するリターディング電圧を補正する。このようにすることで、半導体ウェハが帯電している場合でも、半導体ウェハの所望の測定点で一次荷電粒子線を集束させることができる。
【0006】
【特許文献1】国際公開第03/007330号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、帯電した半導体ウェハの表面電位分布形状は、帯電の原因となった半導体プロセスあるいはそのプロセス条件によって変化する。このため、半導体ウェハの各測定点における表面電位計での表面電位測定結果が、予め定義された近似関数によく当てはまる場合とそうでない場合とがある。図11(A)、(B)は、半導体ウェハの表面電位分布の代表的な例を示している。ここで、符号901は半導体ウェハの各測定点の測定電位を示している。符号902は半導体ウェハの各測定点の測定電位901を用いて係数(定数を含む)が決定された、予め定義された近似関数を示している。ここでは、予め定義された近似関数として、f(r)=ar+br+cで表される四次の項までを含む偶関数を想定している。
【0008】
図11(A)では、半導体ウェハの各測定点の測定電位901が半導体ウェハの中心から外側へいくにつれて、表面電位の変化率がなだらかに上昇している。このような場合、上記の偶関数がよく当てはまる。一方、図11(B)では、半導体ウェハの各測定点の測定電位901が、半導体ウエアの中心を含む内部で略一定であり、その周縁部で急峻に変化している。このような場合、どのように係数を調整しても、上記の偶関数では当てはまりが悪く、残差(近似関数により求められる予測値と実際の測定値との差)が大きい。
【0009】
荷電粒子線システムを用いて、半導体ウェハに形成された回路パターンを測定する場合、通常、リターディング電圧を設定値の周りで振りながら(変化させながら)、ビームの集束状態を調べ、リターディング電圧の最適値を調べる。特許文献1に記載の技術では、近似関数を用いて測定点の表面電位を予測し、この予測値を元に最適と思われるリターディング電圧を設定する。そして、リターディング電圧をこの設定値の周りで振りながら、ビームの集束状態を調べ、リターディング電圧の最適値を調べる。しかし、上述の残差が大きいと、各測定点でのリターディング電圧の振り幅が大きくなる。このため、各測定点に照射される一次荷電粒子線の集束調整等に要する時間が長くなり、試料上の多数の測定点を迅速に処理することができない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、一次荷電粒子線を用いて、試料上の多数の測定点を迅速に処理することができる技術を提供することにある。
【0011】
具体的には、本発明の目的の一つは、試料の各測定点に照射される一次荷電粒子線の集束調整等に要する時間を短縮することにある。また、本発明の他の目的の一つは、試料の表面電位分布を表す近似関数の精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、試料の各測定点ついて、表面電位分布を表す近似関数から求まる当該測定点での表面電位の確からしさを求め、この確からしさに基づいて当該測定点での荷電粒子線光学系の設定パラメータ(例えばリターディング電圧)の振り幅を決定する。そして、決定した振り幅の範囲で設定パラメータを変化させながら一次荷電粒子線の集束状態を調べ、測定に用いる設定パラメータを決定する。
【0013】
例えば、本発明の第一の態様の荷電粒子線システムは、半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出する処理と、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整幅を、前記予測値および前記振り幅により特定される表面電位の範囲に応じて決定する処理と、を行う。
【0014】
また、本発明の第二の態様は、予め定義された近似関数を複数用意し、試料の各測定点の測定電位を用いて各近似関数の係数(定数を含む)を決定する。そして、係数が決定された近似関数各々について、試料の各測定点の測定電位の当てはまりのよさを検定し、最も当てはまりのよい近似関数を、試料の表面電位分布を表す近似関数に選択する。
【0015】
例えば、本発明の第二の態様の荷電粒子線システムは、半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、最小二乗法により、予め用意された複数の関数各々の係数を算出する処理と、
それぞれ係数が決定され複数のた関数各々について、前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値の当てはまりのよさを検定し、最も当てはまりのよい関数を、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数に決定する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を行う。
【0016】
また、本発明の第三の態様は、試料の各測定点の測定電位を滑らかに繋ぐ複数の多項式からなる関数を求め、これを試料の表面電位分布を表す近似関数に決定する。
【0017】
例えば、本発明の第三の態様の荷電粒子線システムは、半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、スプライン補間により、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を算出する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一次荷電粒子線を用いて、試料上の多数の測定点を迅速に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態が適用された走査電子顕微鏡システムの概略構成図である。
【0021】
図示するように、本実施形態の走査電子顕微鏡システムは、荷電粒子線光学系10と、制御系20と、搬送系30と、試料室40と、を有する。
【0022】
荷電粒子線光学系10は、一次荷電粒子線11を出射する荷電粒子源101と、引出電極102a、102bと、コンデンサレンズ103と、アライメントコイル104と、偏向コイル105と、対物レンズ106と、二次荷電粒子12を検出する二次荷電粒子検出器107と、高さ検出用レーザ発光器108と、ポジションセンサ109と、を有する。
【0023】
制御系20は、統括制御部201と、ユーザインターフェース部202と、荷電粒子線光学系制御装置203と、ステージ制御装置204と、加速電圧制御装置205と、コンデンサレンズ制御部206と、増幅器207と、アライメント制御部208と、偏向信号制御部209と、対物レンズ制御部210と、二次荷電粒子像表示装置211と、リターディング制御部212と、試料ステージ位置検出器213と、表面電位計214と、を有する。
【0024】
搬送系30は、試料である半導体ウェハ13を保持するウェハカセット301と、搬送アーム302と、ウェハ搬送装置303と、プローブ304と、試料交換室305と、ゲートバルブ306a、306bと、を有する。
【0025】
試料室40は、一次荷電粒子線11の入射方向に対して垂直方向に半導体ウェハ13を移動させる試料ステージ401を有する。
【0026】
統括制御部201は、ユーザインターフェース部202を介してオペレータより入力された検査レシピ情報(一次荷電粒子の加速電圧、半導体ウェハ13に関する情報、測定点の位置情報等)に従い、荷電粒子線光学系制御装置203、ステージ制御装置204、およびウェハ搬送装置303を介して、システム全体の制御を行う。
【0027】
統括制御部201から命令を受けたウェハ搬送装置303は、搬送アーム302を操作してウェハカセット301から半導体ウェハ13を取り出す。そして、真空に保持されている試料交換室305を大気圧にある外部から分離するゲートバルブ306aを開け、半導体ウェハ13を試料交換室305に搬入する。試料交換室305に入った半導体ウェハ13は、ゲートバルブ306bを介して試料室110に搬送され、試料ステージ401上に固定される。
【0028】
荷電粒子光学系制御装置203は、統括制御部201からの命令に従い、加速電圧制御装置205、コンデンサレンズ制御部206、増幅器207、アライメント制御部208、偏向信号制御部209、対物レンズ制御部210、およびリターディング制御部212を制御する。
【0029】
引出電極102a、102bにより荷電粒子源101から引き出された一次荷電粒子線11は、コンデンサレンズ103、対物レンズ106により集束され、試料ステージ401上の半導体ウェハ13に照射される。なお、荷電粒子源101から引き出された一次荷電粒子線11は、アライメントコイル104によりその軌道を調整され、偏向信号制御部209から信号を受けた偏向コイル105により、半導体ウェハ13上を二次元に走査される。
【0030】
試料ステージ401上の半導体ウェハ13には、リターディング制御部212から一次荷電粒子線11を減速するためのリターディング電圧(電子顕微鏡の場合は負電圧)が印加されている。半導体ウェハ13への一次荷電粒子線11の照射に起因して、半導体ウェハ13から二次荷電粒子12が放出される。この二次荷電粒子12は、二次荷電粒子検出器107により検出され、増幅器207を介して二次荷電粒子像表示装置211の輝度信号として使用される。二次荷電粒子像表示装置211の走査信号と偏向コイル105の偏向信号とは同期している。このため、二次荷電粒子像表示装置211には、半導体ウェハ13に形成された回路パターン形状が忠実に再現される。なお、二次荷電粒子12とは、一次荷電粒子線11の照射に伴い半導体ウエア13から二次的に放出される荷電粒子であり、一般的には二次電子、オージェ電子、反射電子、二次イオンと呼ばれるものを指す。
【0031】
上記構成の走査電子顕微鏡システムにおいて、半導体ウェハ13上の回路パターンを高速に計測するためには、試料ステージ11が所望の測定点に移動したときの半導体ウェハ13の高さを検出し、その高さに応じて対物レンズ106の焦点距離を調整する、いわゆる集束調整が必要である。このため、レーザ光を用いたウェハ高さ検出機構が設けられている。試料ステージ位置検出器213により試料ステージ位置を検出し、所望の位置近傍に試料ステージ401が接近したときに、高さ検出用レーザ発光器108が試料ステージ401上の半導体ウェハ13にレーザ光を照射する。そして、その反射光をポジションセンサ109で受光し、その受光位置から半導体ウェハ13の高さを検出する。この半導体ウェハ13の高さ情報は対物レンズ106の焦点距離にフィードバックされる。つまり、対物レンズ制御部210は、ポジションセンサ109が検出した半導体ウェハ13の高さ情報に基づいて対物レンズ106の焦点距離を調節する。その結果、試料ステージ4901が所定の位置に到達した際には、一次荷電粒子線11は半導体ウェハ13上に集束される。したがって、半導体ウェハ13の回路パターンの検出を、オペレータによる操作なしに自動で行うことができる。
【0032】
本実施形態において、対物レンズ106は電磁レンズであり、励磁電流によって焦点距離が決定される。半導体ウェハ13上に一次荷電粒子線11が集束するために必要な励磁電流は、一次荷電粒子線11の加速電圧、半導体ウェハ13の表面電位、および半導体ウェハ13の高さの関数で表される。この関数は光学シミュレーションまたは実測により導出することができる。
【0033】
半導体ウェハ13が帯電していない場合、半導体ウェハ13の表面電位は、測定点の位置にかかわらずリターディング電圧と等しくなる。この場合、半導体ウェハ13上に一次荷電粒子線11が集束するために必要な励磁電流は、一次荷電粒子線11の加速電圧および半導体ウェハ13の高さの関数となる。したがって、一次荷電粒子線11の加速電圧が一定ならば、ポジションセンサ109で検出した半導体ウェハ13の測定点における高さ情報を対物レンズ106の焦点距離にフィードバックすることで、この測定点で一次荷電粒子線11を集束させることができる。
【0034】
しかし、半導体ウエア13が帯電している場合、半導体ウェハ13の表面電位は、測定点の位置に応じて変化する。この場合、半導体ウェハ13上に一次荷電粒子線11が集束するために必要な励磁電流は、一次荷電粒子線11の加速電圧、半導体ウェハ13の表面電位、および半導体ウェハ13の高さの関数となる。したがって、一次荷電粒子線11の加速電圧が一定でも、ポジションセンサ109で検出した半導体ウェハ13の測定点における高さ情報のみならず、この測定点における表面電位を対物レンズ106の焦点距離にフィードバックさせなければ、この測定点で一次荷電粒子線11を集束させることができない。ここで、測定点の高さ情報は、上述したように、高さ検出用レーザ発光器108およびポジションセンサ109を用いて測定開始直前に(リアルタイムで)計測することができる。しかし、測定点の表面電位を測定開始直前に(リアルタイムで)計測することは現実的でない。
【0035】
そこで、本実施形態では、測定に先立って半導体ウェハ13の表面電位を計測し、この計測結果を用いて半導体ウェハ13の表面電位分布を表す近似関数(表面電位分布関数)を求める。そして、この表面電位分布関数を用いて測定点での表面電位を算出し、この表面電位とリターディング電圧との和が所定の一定電圧となるように、リターディング制御部212を制御する。このようにすることで、半導体ウェハ13上に一次荷電粒子線11が集束するために必要な励磁電流の条件を、半導体ウェハ13が帯電していない場合と同様に扱えるようにしている。つまり、一次荷電粒子線11の加速電圧が一定ならば、ポジションセンサ109で検出した半導体ウェハ13の測定点における高さ情報を対物レンズ106の焦点距離にフィードバックすることで、この測定点で一次荷電粒子線11を集束させることができるようにしている。
【0036】
次に、表面電位分布関数の算出手順について説明する。
【0037】
搬送アーム302によってウェハカセット301から取り出された半導体ウェハ1は、図示していない搬送路を通って試料交換室305に搬入される。この際、表面電位計214は、プローブ304を用いて、搬送路を流れる半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の点で表面電位を測定し、測定結果を統括制御部201に送信する。統括制御部201は、表面電位計214から受信した測定結果を測定点の位置情報と共に、データ格納部201bに格納する。ここで、測定点の位置情報は、例えば最初の測定点からの直線距離(この場合、最初の測定点は原点となる)で表してもよい。この直線距離は表面電位計214での各測定点の測定時刻(最初の測定点が測定されてからの経過時間)および搬送路の搬送速度を用いて算出できる。本実施形態では、半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の33点で表面電位を測定することで、33組の測定データ(x,y)を得ている。ここでxは測定点の位置情報、yは測定点の表面電位、そして、iは測定点の識別番号(1≦i≦33)である。
【0038】
次に、統括制御部201は、データ格納部201bに格納された測定データを用いて、計算部201aにより半導体ウェハ13の表面電位分布関数を求める。先ず、計算部201aは、予め登録された複数のモデル関数各々について、データ格納部201bに格納された測定データを用いて最小二乗法により当該関数の係数(定数:0次の係数を含む)を算出する。本実施形態では、図2に示す4つのモデル関数2011〜2014を用意している。これらのモデル関数2011〜2014は、半導体ウェハ13の表面電位分布によくフィットする関数として経験的に選び出されたものである。本実施形態では、モデル関数毎に、3つの係数a、b、cのそれぞれについて、所定の最小二乗法の式に33個の測定データを代入して、これらの測定データが最もよく当てはまる値を算出する。そして、図2に示すように、各係数の算出結果2015を対象のモデル関数2011〜2014に対応付けて、データ格納部201bに格納する。
【0039】
次に、計算部201aは、以上のようにして係数が算出されたモデル関数のそれぞれについて、χ二乗値および自由度νを算出する。χ二乗値は、例えば次式(数1)で算出できる。
【0040】
【数1】

ここで、nは測定点の数である。σはi番目の測定点xで表面電位を測定したときの測定誤差である。σはi(測定点)にかかわらず一定としてもよい。yは測定点xで測定した表面電位(観測度数)である。そして、f(x)は、モデル関数に対応付けられている係数の値が設定されたモデル関数を用いて算出した、測定点xの表面電位(期待度数)である。
【0041】
自由度νは、測定データの数nからモデル関数の係数(定数:0次の係数も含む)の数mを差し引くことで算出する(ν≡n-m)。本実施形態の場合、測定点の数は33個である。また、いずれもモデル関数も係数の数は3個である(図2参照)。したがって、自由度νは30となる。
【0042】
次に、計算部201aは、図2に示すように、モデル関数毎に算出したχ二乗値2016および自由度ν2017を、対象のモデル関数2011〜2014に対応付けて、データ格納部201bに格納する。
【0043】
それから、計算部201aは、モデル関数それぞれについて、以上のようにして算出したχ二乗値および自由度νを用いて、測定データ(x,y)のモデル関数に対する当てはまりのよさを検定する。
【0044】
モデル関数が妥当であった場合、すなわち、モデル関数により求まる表面電位の、測定データが示す表面電位からの誤差が正規分布に従っている場合、χ二乗値は、自由度νのχ二乗分布に従う。したがって、自由度νのχ二乗分布において、χ二乗値=自由度νを検定すればよい。そこで、自由度νのχ二乗分布において、χ二乗値が自由度νを超える確率Pを算出する。この確率Pは、例えば次式(数2)で算出できる。
【0045】
【数2】

ここで、Γ関数は次式(数3)で定義される。
【0046】
【数3】

モデル関数2011〜2014のそれぞれについて、χ二乗値、自由度νが図2に示すとおりである場合、確率Pは、46.6%、10.5%、1.2%、0.1%となる。計算部201aは、図2に示すように、モデル関数毎に算出した確率Pを、測定データ(x,y)のモデル関数に対する当てはまりのよさを示す指標値2018として、対象のモデル関数2011〜2014に対応付けてデータ格納部201bに格納する。
【0047】
次に、計算部201aは、データ格納部201bを参照し、最も高い指標値Pに対応付けられているモデル関数を選択する。図2に示す例では、モデル関数2011が選択される。それから、選択したモデル関数の各係数に、当該モデル関数に対応付けられてデータ格納部201bに登録されている当該係数の値を設定して、半導体ウェハ13の表面電位分布を表す表面電位分布関数を生成する。
【0048】
次に、計算部201aは、生成した表面電位分布関数f(x)の変数x(半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の位置情報)を半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離情報rに変換する。半導体ウェハ13は同心円状に帯電する傾向があるため、半導体ウエア13の表面電位分布が半導体ウェハ13の中心に対して回転対象性を有することを仮定できる。そこで、計算部201aは、f(x)が最小となる変数の値xを求め、これを半導体ウェハ13の中心に決定する。そして、r=x-xとして、表面電位分布関数f(x)を表面電位分布関数f(r)に変換し、データ格納部201bに格納する。
【0049】
図3は、図2に示すモデル関数2011〜2104それぞれについて、当該モデル関数の各係数に当該モデル関数に対応付けられている係数の値を設定し、変数x(半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の位置情報)を半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離情報rに変換したものをプロットしたものである。また、図3において、符号501(黒点)は実際の測定データを示している。図3から明らかなように、最も高い指標値Pを持つモデル関数2011の測定データ501に対する当てはまりが最もよい。
【0050】
次に、半導体ウェハ13に一次荷電粒子線11を照射して測定する際のリテーディング電圧の調整手順を説明する。
【0051】
上述したように、半導体ウェハ13が帯電していない場合、半導体ウェハ13の表面電位はリターディング電圧Vと等しい。これに対して、半導体ウェハ13が帯電している場合、半導体ウェハ13の表面電位は、リターディング電圧と半導体ウェハ13の帯電による電位との和になる。このため、半導体ウェハ13の表面電位を、半導体ウェハ13が帯電していない場合と同じ一定電位に揃えるためには、半導体ウェハ13に印加するリターディング電圧を補正する必要がある。半導体ウェハ13の帯電による電位をVs、リターディング電圧をVrとした場合、V=V-Vとなるように、リターディング電圧Vrを設定すればよい。
【0052】
そこで、統括制御部201の計算部201aは、荷電粒子線光学系制御装置203およびステージ制御装置204を介して、試料ステージ検出器213から測定点(一次荷電粒子線照射位置)のステージ座標を受信すると、このステージ座標と半導体ウェハ13の試料ステージ401に対する設置位置(オフセット位置)とを用いて、測定点の半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離rを求める。そして、求めた距離rをデータ格納部201bに格納されている表面電位分布関数f(r)に代入し、測定点における表面電位の予測値Vexp(=f(r))を算出する。
【0053】
次に、計算部201aは、半導体ウェハ13の測定点におけるリターディング電圧の振り幅Vvarを決定する。上記の手順によって生成された表面電位分布関数f(r)であっても、それが半導体ウェハ13の表面電位分布を完全に再現することは困難である。そこで、測定点でのリターディング電圧Vの初期値をV-Vexp-Vvar/2に設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態(合焦状態)を調べる。集束していない場合は、リターディング電圧を現在の値から所定の電圧値dvだけ高く設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態を調べる。計算部201aは、集束状態を検出するまでこの処理を繰り返す。但し、リターディング電圧VがV-Vexp+Vvar/2に到達した場合は、この測定点での測定を中止し、荷電粒子線光学系制御装置203およびステージ制御装置204を介して、試料ステージ401を制御し、一次荷電粒子線照射位置を次の測定点に移動させる。
【0054】
なお、本実施形態では、リターディング電圧Vをdvきざみで、振り幅Vvarだけ振る(変化させる)。このため、リターディング電圧Vの最適値を求めるのに要する時間はVvar/dvに比例する。したがって、測定時間短縮の観点から、振り幅Vvarはできるだけ小さいことが望ましい。しかし、振り幅Vvarが小さすぎると、最適値がリターディング電圧Vの変化幅から外れるため、集束調整を自動的に行うことができなくなる。そこで、本実施形態では、より高速にリターディング電圧Vの最適値を求めるために、測定点に応じてリターディング電圧Vの振り幅Vvarを動的に変化させ、振り幅Vvarの最適化を行っている。振り幅Vvarの最適化は、次の要領で行う。
【0055】
先ず、計算部201aは、一次荷電粒子線の照射による測定に先立って(例えば表面電位分布関数f(r)の生成時に)、表面電位分布関数f(r)の各係数の分散を求め、データ格納部201bに格納する。本実施形態では、モデル関数2011〜2014各々の3つの係数a、b、cを最小二乗法により求めた。したがって、本実施形態では、表面電位分布関数f(r)の最小二乗法により求めた3つの係数a、b、c各々の分散σ、σ、σを算出する。なお、最小二乗法における係数の分散の求め方は、例えば、William H. Press、William T. Vetterling、Saul A. Teukolsky、Brian P. Flannery 著、丹慶 勝市、佐藤 俊郎、奥村 晴彦、小林 誠 訳、技術評論社 発行 「ニューメリカルレシピ・イン・シー 日本語版 C言語による数値計算のレシピ」に詳しい。最小二乗法により求めた係数の分散は、測定データがモデル関数の周りにどの程度ばらついているかによって決まる。ばらつきが小さい場合は分散も小さく、ばらつきが大きい場合は分散も大きい。
【0056】
さて、計算部201aは、一次荷電粒子線の照射による測定に際し、データ格納部201bに格納されている表面電位分布関数f(r)の各係数a、b、cの分散σ、σ、σを用いて、表面電位分布関数f(r)から求めた測定点の表面電位における分散σ(r)を算出する。誤差伝播の考え方を適用して、次式(数4)により算出することができる。
【0057】
【数4】

ここで、rは測定点の半導体ウェハ中心からの距離である。誤差伝播に関しては、例えば、Taylor, John R 著、 林 茂雄、馬場 凉 訳、東京化学同人 発行 「An Introduction to ERROR ANALYSIS : The Study of Uncertainties in Physical Measurements」に詳しい。
【0058】
図4は、横軸をウェハ中心からの距離rとし、縦軸を測定点の分散σとして、上記数4で表される関数をプロットした図である。図示するように、数4で表される関数502は、半導体ウェハ13のウェハ中心に比べてその周辺部で分散σが大きくなっている。このことから、半導体ウェハ13のウェハ中心部に比べてその周辺部で、表面電位分布関数f(r)で求めた表面電位(予測値)の測定データ(実測値)に対するばらつきが大きいことが分かる。つまり、半導体ウェハ13のウェハ中心では表面電位の真の値(実測値)が予測値と近い確率が高く、周辺部では離れている確率が高い。
【0059】
そこで、本実施形態では、測定点における分散σを用いてこの測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。すなわち、計算部201aは、測定点の半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離rを上記の数4に代入して分散σを求め、この分散σに基づき、マージンを考慮して測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。例えば分散σに所定の係数(例えば3)を乗算して、測定点の振り幅Vvarを計算する。
【0060】
そして、測定点でのリターディング電圧Vの初期値をV-Vexp-Vvar/2に設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態(合焦状態)を調べる。集束していない場合は、リターディング電圧を現在の値から所定の電圧値dvだけ高く設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態を調べる。計算部201aは、集束状態を検出するまでこの処理を繰り返す。但し、リターディング電圧VがV-Vexp+Vvar/2に到達した場合は、この測定点での測定を中止し、荷電粒子線光学系制御装置203およびステージ制御装置204を介して、試料ステージ401を制御し、一次荷電粒子線照射位置を次の測定点に移動させる。
【0061】
このようにすることで、測定点の位置にかかわらずリターディング電圧Vの振り幅Vvarを一律に設定する場合に比べ、自動的に振り幅を最適化することができる。すなわち、表面電位の予測値と真の値(実測値)とが比較的近い半導体ウェハ13のウェハ中心部では、リターディング電圧Vの振り幅Vvarを小さく設定することができる。このため、より高速にリターディング電圧Vの最適値を求めることができる。
【0062】
本発明者等は、本実施形態を適用してリターディング電圧Vの振り幅Vvarを測定点に応じて変化させた場合と、測定点にかかわらず一定とした場合とで、その他の条件は同じにして、各測定点でリテーディング電圧の調整に係る時間の総和を調べた。その結果、測定点にかかわらず一定とした場合は、半導体ウェハ13の17点の測定点各々に対して10秒ずつ、合計で170秒かかった。一方、測定点に応じて変化させた場合は、10秒を要したのは半導体ウェハ13のウェハ中心から最も遠い4点のみで、残りのうち8点は3秒、ウェハ中心に最も近い5点は1秒しか要しなかった。すなわち、半導体ウェハ一枚あたりの調整時間が、170秒から69秒に短縮した。
【0063】
なお、リターディング電圧Vの振り幅Vvar内で、リターディング電圧Vの最適値が見つからなかった場合は、リターディング電圧Vの振り幅Vvarをより大きく設定し直しして、再度最適値を探索するようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、表面電位の分散σに比例したリターディング電圧Vの振り幅Vvarを設定した。しかし、例えばV=a+σなどの他の関数を用いて効果が得られる場合もある。また、分散σに対して必ずしも連続的に振り幅Vvarを決定する必要はない。分散σにに応じて振り幅Vvarに適した値を、予め設定された数種類の値の中から選んでもよい。
【0065】
また、本実施形態では、半導体ウェハ13の表面電位分布が回転対称性を持つことを前提としている。しかし、本発明は、回転対称性のない半導体ウェハ13の表面電位分布にも適用可能である。この場合は、半導体ウェハ13の表面電位分布関数として、半導体ウエア13のウェハ中心からの距離rと偏角θとに依存する関数f(r,θ)を定義すればよい。
【0066】
<第2実施形態>
上記の第1実施形態では、予め用意しておいた複数のモデル関数のうち測定データとの当てはまりが最もよいモデル関数を用いて半導体ウェハ13の表面電位分布関数を生成した。これに対し、本実施形態では、測定データ間の表面電位を補間することで半導体ウェハ13の表面電位分布関数を生成する。また、上記の第1実施形態では、測定点における分散σを用いてこの測定点におけるリターディング電圧Vの振り幅Vvarを決定した。これに対し、本実施形態では、測定点を含む所定領域にて表面電位分布関数がとり得る表面電位値を用いてこの測定点におけるリターディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。なお、本実施形態が適用された走査電子顕微鏡システムの概略構成は、第1実施形態のものと同様である。
【0067】
先ず、表面電位分布関数の算出手順について説明する。
【0068】
搬送アーム302によってウェハカセット301から取り出された半導体ウェハ1は、図示していない搬送路を通って試料交換室305に搬入される。この際、表面電位計214は、第1実施形態と同様、プローブ304を用いて、搬送路を流れる半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の点で表面電位を測定し、測定結果を統括制御部201に送信する。統括制御部201は、表面電位計214から受信した測定結果を測定点の位置情報と共に、データ格納部201bに格納する。本実施形態では、半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の23点で表面電位を測定することで、23組の測定データ(x,y)を得ている。ここでxは測定点の位置情報、yは測定点の表面電位、そして、iは測定点の識別番号(1≦i≦23)である。
【0069】
次に、統括制御部201は、データ格納部201bに格納された測定データを用いて、計算部201aにより半導体ウェハ13のウェハ中心の位置情報を検出する。本実施形態では、半導体ウェハ13の帯電分布が、多くの場合、概略同心円状であることを利用し、最小二乗法により偶関数を横軸方向に移動した関数を求め、この関数の対象性を利用して半導体ウェハ13のウェハ中心の位置を求める。具体的には、計算部201aは、予め用意された四次の項とオフセット項とを含む偶関数、例えばf(x)=a(x-x)4+bの各係数a、b、xについて、測定データを用いて最小二乗法により算出する。ここで、係数xは、半導体ウェハ13のウェハ中心の位置情報である。図5(A)は、測定データと、該測定データから最小二乗法により求めた偶関数f(x)=a(x-x)4+bとをプロットした図である。符号503(黒点)が測定データ、符号504(点線)が偶関数f(x)である。
【0070】
次に、計算部201aは、データ格納部201bに格納された測定データを補間することで、半導体ウェハ13の表面電位分布関数を求める。先ず、計算部201aは、半導体ウェハ13のウェハ中心x以上(または以下)の領域において、隣接する測定データによって形成される区間各々の補間式を算出する。最も簡単に求めることができる補間式は、2点を直線で結ぶ線形補間である。しかし、多項式、有理関数あるいは三角関数を用いた補間がより正確である。本実施形態では、多項式を用いた補間方法の一つである三次スプライン補間を用いる。スプライン補間は、関数の一階導関数が区間の境界で連続となることを要請しながら、各区間を三次の多項式で補間する方法である。図5(B)は図5(A)に示す23点の測定データ503のうち、ウェハ中心x以上の領域にある12点の測定データによって形成された11区間のそれぞれについてスプライン補間により求めた補間式505(実線)をプロットした図である。計算部201aは、ユーザインターフェース部202を介して、このスプライン補間により求めた各区間の補間式をオペレータに表示する。また、計算部201aは、各区間の補間式をデータ格納部201bに格納する。
【0071】
なお、スプライン補間は測定区間が短いほど精度が上がる。しかし、測定点が増えるため、測定に要する時間が長くなる。そこで、半導体ウェハ13の表面電位の変化が大きい領域のみ、測定点を増やすようにしてもよい。
【0072】
図6は本発明の第2実施形態における表面電位分布関数の算出手順の変形例を説明するためのフロー図である。
【0073】
先ず、計算部201aは、予め設定された測定条件に従い、表面電位計214に、搬送路を流れる半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の測定点で表面電位を測定させ、各測定データ(x,y)をデータ格納部201bに格納する(S101)。
【0074】
次に、計算部201aは、データ格納部201bに格納されている各測定データについて、隣接する測定点間各々の測定データの表面電位差ΔV(=y-yi-1、但し2≦i≦測定数)を計算する(S102)。
【0075】
それから、計算部201aは、表面電位差ΔVが所定の基準値を超えている測定点間(区間)があるか否かを調べる(S103)。そのような区間があるならば(S103でYES)、この区間(例えば中点)に測定点を追加する(S104)。そして、計算部201aは、表面電位計214に、搬送路を流れる半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の、追加した測定点を含む複数の測定点で表面電位を測定させ、各測定データ(x,y)をデータ格納部201bに格納する(S105)。その後、S102に戻る。
【0076】
一方、表面電位差ΔVが所定の基準値を超えている区間がない場合(S103でNO)、スプライン補間により各区間の補間式を算出し(S106)、データ格納部201bに格納する(S107)。
【0077】
次に、半導体ウェハ13に一次荷電粒子線11を照射して測定する際のリテーディング電圧の調整手順を説明する。
【0078】
先ず、統括制御部201の計算部201aは、荷電粒子線光学系制御装置203およびステージ制御装置204を介して、試料ステージ検出器213から測定点(一次荷電粒子線照射位置)のステージ座標を受信すると、このステージ座標と半導体ウェハ13の試料ステージ401に対する設置位置(オフセット位置)とを用いて、測定点の半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離rを求める。そして、求めた距離rを含む区間(測定点間)の補間式をデータ格納部201bから読み出して、この補間式に距離rを代入し、測定点における表面電位の予測値Vexpを算出する。それから、計算部201aは、測定点におけるリターディング電圧Vの基準値を、V=V-Vexpに設定する。ここで、Vは、半導体ウェハ13が帯電していない場合のリターディング電圧である。
【0079】
次に、計算部201aは、半導体ウェハ13の測定点におけるリターディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。本実施形態では、表面電位分布関数を最小二乗法ではなくスプライン補間で生成している。このため、表面電位分布関数の各係数の分散を求めることができない。そこで、計算部201aは、測定点を含む区間で当該区間の補間式により特定される表面電位分布関数がとり得る表面電位値を用いて、この測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。
【0080】
図7はスプライン補間により求めた各区間(測定点間)の補間式により特定される表面電位分布関数をプロットした図である。ここで、符号506(黒点)は表面電位計214による表面電位の測定データ、符号507(実線)はスプライン補間により得られた電位分布関数、そして、符号508(三角)は電位分布関数507により得られる一次荷電粒子線の照射位置x’の表面電位の予測値Vexpである。
【0081】
図7において、照射位置x’を含む区間(測定点間)は区間bである。この区間bにおいて、補間式がとり得る最大値(Vmax)は区間aとの境界点である。一方、補間式がとり得る最小値(Vmin)は区間bにおける極小点である。この区間b内の最大値と最小値の差Vrange(=Vmax-Vmin)は、補間式の区間b内の変動の大きさを示す値である。表面電位の変動が区間b内で充分に緩やかである場合、照射位置x’における真の表面電位(測定値)と予測値Vexpとの差は、区間b内の最大値と最小値の差Vrange以内に収まると考えられる。そこで、計算部201aは、リターディング電圧Vの振り幅Vvarを、例えばVvar=a(例えばa=2)×Vrangeのように、Vrangeと関連付けて設定する。これにより、表面電位の変化率が大きな区間ではリターディング電圧の振り幅Vvarを大きくし、一方、表面電位の変化率が小さな区間ではリターディング電圧Vの振り幅Vvarを小さく設定することができる。このため、半導体ウェハ13内の全領域においてリターディング電圧Vの振り幅Vvarを一律に設定する場合に比べ、より高速にリターディング電圧Vの最適値を求めることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、一次荷電粒子線の照射位置が含まれる区間における補間式がとり得る表面電位の最大値および最小値を用いてリターディング電圧Vの振り幅Vvarを求めた。しかし、本発明はこれに限定されない。これとは別に、補間式の微分係数によりリターディング電圧の振り幅Vvarを求めてもよい。
【0083】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態として、量産工程において、上記の第1実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハ13のパターンを測定する場合を例にとり説明する。
【0084】
図8は本発明の第1実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハ13のパターンを測定する場合の動作手順を説明するためのフロー図である。
【0085】
先ず、統括制御部201は、表面電位計214を用いて測定対象の半導体ウェハ13の表面電位を測定する(S201)。上述したように、表面電位計214は、プローブ304を用いて、ウェハカセット301から取り出され、試料交換室305に搬入される半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の点で表面電位を測定し、測定結果を統括制御部201に送信する。統括制御部201は、表面電位計214から受信した測定結果を測定点の位置情報と共に、データ格納部201bに格納する。
【0086】
次に、統括制御部201は、計算部201aを用いて最小二乗法により予め用意された複数のモデル関数各々の各係数を算出する。そして、各係数が算出されたモデル関数の中から測定データとの当てはまりが最もよいモデル関数を検出し、これを表面電位分布関数に決定する(S202)。
【0087】
具体的には、計算部201aは、予め登録された複数のモデル関数各々について、データ格納部201bに格納された測定データを用いて最小二乗法により当該関数の係数を算出する。次に、計算部201aは、以上のようにして係数が算出されたモデル関数のそれぞれについて、χ二乗値および自由度νを算出する。それから、計算部201aは、モデル関数それぞれについて、以上のようにして算出したχ二乗値および自由度νを用いて、χ二乗値が自由度νを超える確率(指標値)Pを算出することで、測定データ(x,y)のモデル関数に対する当てはまりのよさを検定する。そして、最も高い確率(指標値)値Pに対応付けられているモデル関数を選択し、これを半導体ウェハ13の表面電位分布を表す表面電位分布関数に決定する。
【0088】
次に、統括制御部201は、ステージ制御装置204を用いて、試料ステージ401に載置された半導体ウェハ11の所望の測定(観察)点が一次荷電粒子線の照射位置にくるように、この試料ステージ401を移動する(S203)。
【0089】
次に、統括制御部201は、計算部201aを用いて、半導体ウェハ11の測定点における表面電位の予測値Vexpを算出する(S204)。計算部201aは、試料ステージ検出器213から受信した測定点(一次荷電粒子線の照射位置)のステージ座標と半導体ウェハ13の試料ステージ401に対する設置位置(オフセット位置)とを用いて、測定点の半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離rを求める。そして、求めた距離rを表面電位分布関数に代入し、測定点における表面電位の予測値Vexpを算出する。それから、計算部201aは、測定点におけるリターディング電圧Vの基準値を、V=V-Vexpに設定する。ここで、Vは、半導体ウェハ13が帯電していない場合のリターディング電圧である。
【0090】
次に、統括制御部201は、表面電位分布関数の各係数の分散σ、σ、σを求め、求めた各係数の分散σ、σ、σを用いて、表面電位分布関数から求めた測定点の表面電位における分散σを算出する。また、半導体ウェハ11の測定点におけるリターディング電圧の振り幅Vvarを算出するのに用いる係数(パラメータ)Aを初期値(例えば3)に設定する(S205)。
【0091】
次に、統括制御部201は、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを判断する(S206)。これは、同一ロットまたは同一プロセスで製作された半導体ウェハ13の表面電位は互いに似ている場合が多いことを考慮し、履歴を利用してリターディング電圧Vの振り幅Vvarを決定するためである。具体的には、ユーザインターフェース部202を介してオペレータから、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを示す情報を受付ける。あるいは、測定対象の半導体ウェハ13に付与された識別情報(例えばロット番号およびウェハ番号)から、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを判断する。
【0092】
測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目である場合(S206でYES)、測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarについて、利用できる履歴が存在しない。この場合、S205で決定した係数Aおよび分散σを用いてリターディング電圧Vの振り幅Vvar(=A・σ)を算出する(S208)。
【0093】
上述したように、同一ロットあるいは同一プロセス内の1枚目の半導体ウェハ13は、参照できる履歴データがない。したがって、表面電位分布関数により得られる表面電位の予測値Vexpが真の値からどの程度離れているのか不明である。このため、振り幅Vvarは、算出結果よりも若干大きめに設定するとよい。
【0094】
一方、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの2枚目以降である場合(S206でNO)、統括制御部201は、測定点の位置情報に対応付けてデータ格納部201bに蓄積されている残差の総和を算出する。そして、算出した総和に応じてS205で設定した係数Aを補正する(S207)。例えば、残差の総和に所定の係数を乗算した値を、係数Aに加算して補正する。
【0095】
それから、統括制御部201は、S205で決定した分散σおよびS207で補正した係数Aを用いて、リターディング電圧Vの振り幅Vvar(=A・σ)を算出する(S208)。
【0096】
以上のようにして、振り幅Vvarを算出したならば、統括制御部201は、この振り幅VvarとS204で決定したリテーディング電圧Vとを用いて、リテーディング電圧Vの最適値を検出する(S209)。
【0097】
具体的には、統括制御部201は、測定点でのリターディング電圧Vの初期値をV-Vexp-Vvar/2に設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態(合焦状態)を調べる。集束していない場合は、リターディング電圧Vを現在の値から所定の電圧値dvだけ高く設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態を調べる。計算部201aは、集束状態を検出するまでこの処理を繰り返す。そして、二次荷電粒子像表示装置211は、合焦状態で検出した二次荷電粒子の像を表示する。
【0098】
次に、統括制御部201は、以上のようにしてリターディング電圧Vの最適値を検出したならば、この最適値とS204で決定したリテーディング電圧Vの基準値との差分を求め、この残差を履歴データとして、測定点の位置情報に対応付けてデータ格納部201bに蓄積する(S210)。この残差が小さいほど、表面電位分布関数による半導体ウェハ13の表面電位の再現性が高いことを示す。
【0099】
それから、統括制御部201は、データ格納部201b等に登録されている測定対象の半導体ウェハ13の全測定点について、一次荷電粒子線による測定が終了したか否かを判断する(S211)。終了している場合(S210でYES)、このフローを終了する。一方、終了していない場合は(S210でNO)、未測定の測定点を測定するべくS203に戻る。
【0100】
なお、本実施形態では、リターディング電圧Vの振り幅VvarをVvar=A・σにより算出した。しかし、本発明はこれに限定されない。これとは別の式、例えば蓄積された残差Vresを用いて、Vvar=σ+Vres、またはVvar=√(σ+Vres)などを用いてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、同一ロットまたは同一プロセス内の全ての半導体ウェハ13について、複数の測定点で表面電位を測定し、その測定データを元に表面電位分布関数を算出している。しかし、同一ロットまたは同一プロセス内において、半導体ウェハ13の表面電位分布のばらつきが十分に小さい場合は、例えば同一ロットまたは同一プロセス内の1枚目についてのみ複数の測定点で表面電位の測定を行って表面電位分布関数を生成し、2枚目以降の半導体ウェハ13については、1枚目の半導体ウェハ13に対して生成した表面電位分布関数を流用することにより、複数の測定点での表面電位の測定を省略するようにしてもよい。
【0102】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態として、量産工程において、上記の第2実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハ13のパターンを測定する場合を例にとり説明する。
【0103】
図9は本発明の第2実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハ13のパターンを測定する場合の動作手順を説明するためのフロー図である。
【0104】
先ず、統括制御部201は、表面電位計214を用いて測定対象の半導体ウェハ13の表面電位を測定する(S301)。上述したように、表面電位計214は、プローブ304を用いて、ウェハカセット301から取り出され、試料交換室305に搬入される半導体ウェハ13のウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の点で表面電位を測定し、測定結果を統括制御部201に送信する。統括制御部201は、表面電位計214から受信した測定結果を測定点の位置情報と共に、データ格納部201bに格納する。
【0105】
次に、統括制御部201は、計算部201aを用いてスプライン補間により測定対象の半導体ウェハ13の表面電位分布関数を生成する(S302)。計算部201aは、データ格納部201bに格納された隣接する測定点間(区間)の測定データをスプライン補間し、各区間の補間式を半導体ウェハ13の表面電位分布関数としてデータ格納部201bに格納する。
【0106】
次に、統括制御部201は、ステージ制御装置204を用いて、試料ステージ401に載置された半導体ウェハ11の所望の測定(観察)点が一次荷電粒子線の照射位置にくるように、この試料ステージ401を移動する(S303)。
【0107】
次に、統括制御部201は、計算部201aを用いて、半導体ウェハ11の測定点における表面電位の予測値Vexpを算出する(S304)。計算部201aは、試料ステージ検出器213から受信した測定点(一次荷電粒子線の照射位置)のステージ座標と半導体ウェハ13の試料ステージ401に対する設置位置(オフセット位置)とを用いて、測定点の半導体ウェハ13のウェハ中心からの距離rを求める。そして、求めた距離rを含む区間(測定点間)の補間式をデータ格納部201bから読み出して、この補間式に距離rを代入し、測定点における表面電位の予測値Vexpを算出する。それから、計算部201aは、測定点におけるリターディング電圧Vの基準値を、V=V-Vexpに設定する。ここで、Vは、半導体ウェハ13が帯電していない場合のリターディング電圧である。
【0108】
次に、統括制御部201は、計算部201aを用いて、半導体ウェハ11の測定点におけるリターディング電圧Vの振り幅Vvarを算出する(S305)。計算部201aは、測定点を含む区間の補間式および当該区間の両端の位置情報(表面電位の測定データ)をデータ格納部201bから読み出す。そして、この補間式により特定される表面電位分布関数が当該区間に対応する距離rの範囲でとり得る表面電位値を用いて、この測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarを決定する。
【0109】
次に、統括制御部201は、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを判断する(S306)。これは、同一ロットまたは同一プロセスで製作された半導体ウェハ13の表面電位は互いに似ている場合が多いことを考慮し、履歴を利用してリターディング電圧Vの振り幅Vvarを決定するためである。具体的には、ユーザインターフェース部202を介してオペレータから、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを示す情報を受付ける。あるいは、測定対象の半導体ウェハ13に付与された識別情報(例えばロット番号およびウェハ番号)から、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目か否かを判断する。
【0110】
測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの1枚目である場合(S306でYES)、測定点におけるリテーディング電圧Vの振り幅Vvarについて、利用できる履歴が存在しない。この場合、S304およびS305で決定したリテーディング電圧Vおよび振り幅Vvarを用いて、リテーディング電圧Vの最適値を検出する(S308)。
【0111】
具体的には、統括制御部201は、測定点でのリターディング電圧Vの初期値をV-Vexp-Vvar/2に設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態(合焦状態)を調べる。集束していない場合は、リターディング電圧を現在の値から所定の電圧値dvだけ高く設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態を調べる。計算部201aは、集束状態を検出するまでこの処理を繰り返す。そして、二次荷電粒子像表示装置211は、合焦状態で検出した二次荷電粒子の像を表示する。
【0112】
上述したように、同一ロットあるいは同一プロセス内の1枚目の半導体ウェハ13は、参照できる履歴データがない。したがって、スプライン補間により得られる表面電位の予測値Vexpが真の値からどの程度離れているのか不明である。このため、振り幅Vvarは、S305で決定した値よりも若干大きめに設定するとよい。
【0113】
一方、測定対象の半導体ウェハ13が同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハの2枚目以降である場合(S306でNO)、統括制御部201は、測定点の位置情報に対応付けてデータ格納部201bに蓄積されている残差の総和を算出する。そして、算出した総和に応じてS305で決定した振り幅Vvarを補正する(S307)。例えば、残差の総和に所定の係数を乗算した値を、振り幅Vvarに加算して補正する。
【0114】
それから、統括制御部201は、S304で決定したリテーディング電圧VおよびS306で補正した振り幅Vvarを用いて、リテーディング電圧Vの最適値を検出する(S308)。
【0115】
具体的には、統括制御部201は、測定点でのリターディング電圧Vの初期値をV-Vexp-Vvar/2に設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態(合焦状態)を調べる。集束していない場合は、リターディング電圧を現在の値から所定の電圧値dvだけ高く設定し、測定点に照射した一次荷電粒子線による二次荷電粒子の撮像信号から一次荷電粒子線の集束状態を調べる。計算部201aは、集束状態を検出するまでこの処理を繰り返す。そして、二次荷電粒子像表示装置211は、合焦状態で検出した二次荷電粒子の像を表示する。
【0116】
さて、統括制御部201は、以上のようにしてリターディング電圧Vの最適値を検出したならば、この最適値とS304で決定したリテーディング電圧Vの基準値との差分を求め、この残差を履歴データとして、測定点の位置情報に対応付けてデータ格納部201bに蓄積する(S309)。この残差が小さいほど、表面電位分布関数による半導体ウェハ13の表面電位の再現性が高いことを示す。
【0117】
次に、統括制御部201は、データ格納部201b等に登録されている測定対象の半導体ウェハ13の全測定点について、一次荷電粒子線による測定が終了したか否かを判断する(S310)。終了している場合(S310でYES)、このフローを終了する。終了していない場合(S310でNO)、未測定の測定点を測定するべくS303に戻る。
【0118】
本実施形態では、同一ロットまたは同一プロセス内の全ての半導体ウェハ13について、複数の測定点で表面電位を測定し、その測定データを元に表面電位分布関数を算出している。しかし、同一ロットまたは同一プロセス内において、半導体ウェハ13の表面電位分布のばらつきが十分に小さい場合は、上記の第3実施形態と同様に、例えば同一ロットまたは同一プロセス内の1枚目についてのみ複数の測定点で表面電位の測定を行って表面電位分布関数を生成し、2枚目以降の半導体ウェハ13については、1枚目の半導体ウェハ13に対して生成した表面電位分布関数を流用することにより、複数の測定点での表面電位の測定を省略するようにしてもよい。
【0119】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0120】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0121】
例えば、上記の各実施形態では、半導体ウェハ13に直接印加する電圧を調整することでリターディング電圧を決定している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば静電吸着装置を用いても、リターディング電圧を決定することができる。
【0122】
図10は半導体ウェハとこれを載置する静電吸着装置を示す図である。ここで、半導体ウェハ13は、静電吸着装置の誘電体602上に載置されている。誘電体602には、吸着電極603a、603bが埋設されている。このように吸着電極が2つに分割された静電吸着装置は双曲型と呼ばれている。
【0123】
吸着電極603a、603bには、それぞれ直流電源604a、604bが接続されてている。吸着電極603a、603bに与えられる電位は、それぞれ+Vボルト、-Vボルトである。誘電体602および半導体ウェハ13の内部を通って直流電源604aから直流電源604bに電流が流れ、これにより閉回路が形成さる。半導体ウェハ13と吸着電極604aとの間の抵抗をR、半導体ウェハ13と吸着電極604bとの間の抵抗をRとすると、半導体ウェハ13の電位は(R-R)/(R+R)となる。すなわち、VまたはVを調整することによって、リターディング電圧を決めることができる。
【0124】
また、上記の実施形態では、表面電位分布関数により算出した半導体ウェハ13の測定点における表面電位に応じて、リターディング電圧を調整することにより、一次荷電粒子線をこの測定点で集束させている。しかし、本発明はこれに限定されない。荷電粒子線光学系10のその他の設定パラメータ、例えば対物レンズ106の励磁電流、引出電極102a、102bの印加電圧等を調整することにより、一次荷電粒子線を測定点で集束させるようにしてもよい。
【0125】
また、上記の各実施形態では、本発明を走査電子顕微鏡システムに適用した場合を例にとり説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、電子線描画装置およびイオンビーム照射装置等の他の荷電粒子線応用装置にも適用可能である。
【0126】
また、上記の各実施形態の走査電子顕微鏡システムにおいて、荷電粒子線光学系制御装置203、ステージ制御装置204、加速電圧制御装置205、コンデンサレンズ制御部206、増幅器207、アライメント制御部208、偏向信号制御部209、対物レンズ制御部210、二次荷電粒子像表示装置211、リターディング制御部212、試料ステージ位置検出器213、および表面電位計214は、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)などの計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。
【0127】
また、統括制御部201、およびユーザインターフェース部202は、CPU、メモリ、HDD等の外部記憶装置、CD-ROMやDVD-ROM等の可搬性を有する記憶媒体から情報を読み出す読取装置、キーボードやマウスなどの入力装置、ディスプレイなどの出力装置、通信回線を介して相手装置と通信を行なうための通信装置、およびこれらの各装置を接続するバスを備えた一般的なコンピュータにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態が適用された走査電子顕微鏡システムの概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態で用いるモデル関数を説明するための図である。
【図3】図3は、図2に示すモデル関数各々について、当該モデル関数の各係数に当該モデル関数に対応付けられている係数の値を設定し、変数xを半導体ウェハのウェハ中心からの距離情報rに変換したものをプロットした図である。
【図4】図4は、横軸をウェハ中心からの距離rとし、縦軸を測定点の分散σとして、数4で表される関数をプロットした図である。
【図5】図5(A)は、測定データと、該測定データから最小二乗法により求めた偶関数f(x)=a(x-x)4+bとをプロットした図であり、図5(B)は、図5(A)に示す23点の測定データのうち、ウェハ中心x以上の領域にある12点の測定データによって形成された11区間のそれぞれについてスプライン補間により求めた補間式をプロットした図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態における表面電位分布関数の算出手順の変形例を説明するためのフロー図である。
【図7】図7は、スプライン補間により求めた各区間(測定点間)の補間式により特定される表面電位分布関数をプロットした図である。
【図8】図8は本発明の第1実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハのパターンを測定する場合の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態の走査電子顕微鏡システムを用いて、同一ロットまたは同一プロセスで作製された半導体ウェハ13のパターンを測定する場合の動作手順を説明するためのフロー図である。
【図10】図10は、半導体ウェハとこれを載置する静電吸着装置を示す図である。
【図11】図11(A)、(B)は、半導体ウェハの表面電位分布の代表的な例を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
10:荷電粒子線光学系、11:一次荷電粒子線、12:二次荷電粒子、13:半導体ウェハ、20:制御系、30:搬送系、40:試料室、101:荷電粒子源、102a、102b:引出電極、103:コンデンサレンズ、104:アライメントコイル、105:偏向コイル、106:対物レンズ、107:二次荷電粒子検出器、108:高さ検出用レーザ発光器、109:ポジションセンサ、201:統括制御部、202:ユーザインターフェース部、203:荷電粒子線光学系制御装置、204:ステージ制御装置、205:加速電圧制御装置、206:コンデンサレンズ制御部、207:増幅器、208:アライメント制御部、209:偏向信号制御部、210:対物レンズ制御部、211:二次荷電粒子像表示装置、212:リターディング制御部、213:試料ステージ位置検出器、214:表面電位計、301:ウェハカセット301、302:搬送アーム、303:ウェハ搬送装置、304:プローブ、305:試料交換室、306a、306b:ゲートバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出する処理と、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整幅を、前記予測値および前記振り幅により特定される表面電位の範囲に応じて決定する処理と、を行うこと
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線システムであって、
前記表面電位分布関数は、
前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて最小二乗法により係数が算出された関数であり、
前記制御手段は、前記振り幅を算出する処理において、
前予測値の分散を用いて、前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出すること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子線システムであって、
前記表面電位分布関数は、
前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いてスプライン補間により算出された関数であり、
前記制御手段は、前記振り幅を算出する処理において、
前記一次荷電粒子線の照射位置を含む所定領域で前記表面電位分布関数がとり得る表面電位の範囲を用いて、前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出すること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項4】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、最小二乗法により、予め用意された複数の関数各々の係数を算出する処理と、
それぞれ係数が決定され複数の関数各々について、前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値の当てはまりのよさを検定し、最も当てはまりのよい関数を、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数に決定する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を行うこと
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、前記表面電位分布関数に決定する処理において、
それぞれ係数が決定された複数の関数各々について、χ二乗値が自由度νを超える確率を算出し、該確率が最も高い関数を前記最も当てはまりのよい関数として、前記表面電位分布関数に決定すること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項6】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御する制御手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、スプライン補間により、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を算出する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を行うこと
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項7】
請求項6に記載の荷電粒子線システムであって、
前記制御手段は、前記表面電位分布関数を算出する処理において、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハのウェハ中心を含む直線(直径)上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、最小二乗法により、偶関数を横軸方向に移動した関数を求め、求めた関数の線対称位置を前記半導体ウェハのウェハ中心として検出し、
前記半導体ウェハのウェハ中心位置以上または以下の領域に含まれる表面電位の測定値を用いて、スプライン補間により、前記半導体ウェハのウェハ中心位置からの距離を変数とする前記表面電位分布関数を算出すること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の荷電粒子線システムであって、
前記半導体ウェハが載置されるステージを備えた真空試料室と、
前記真空試料室に前記半導体ウェハを導入するための試料交換室と、
前記試料交換室に前記半導体ウェハを搬入するための搬送手段と、をさらに有し、
前記表面電位計測手段は、
前記試料交換室のウェハ導入口付近に配置されていること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の荷電粒子線システムであって、
前記設定パラメータは、
リターディング電圧であること
を特徴とする荷電粒子線システム。
【請求項10】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、を有する荷電粒子線システムにおいて、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御するためのコンピュータで読取可能なプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出する処理と、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整幅を、前記予測値および前記振り幅により特定される表面電位の範囲に応じて決定する処理と、を実行させること
を特徴とするコンピュータで読取可能なプログラム。
【請求項11】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムにおいて、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御するためのコンピュータで読取可能なプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、最小二乗法により、予め用意された複数の関数各々の係数を算出する処理と、
それぞれ係数が決定され複数の関数各々について、前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値の当てはまりのよさを検定し、最も当てはまりのよい関数を、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数に決定する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を実行させること
を特徴とするコンピュータで読取可能なプログラム。
【請求項12】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する荷電粒子線光学系と、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出する位置検出手段と、前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位を計測する表面電位計測手段と、を有する荷電粒子線システムにおいて、前記荷電粒子線光学系の設定パラメータを制御するためのコンピュータで読取可能なプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記表面電位計測手段により前記半導体ウェハ上の複数の位置で測定された表面電位値を用いて、スプライン補間により、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を算出する処理と、
前記表面電位分布関数を用いて、前記位置検出手段により検出された前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出する処理と、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための前記設定パラメータの調整を行う処理と、を実行させること
を特徴とするコンピュータで読取可能なプログラム。
【請求項13】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する半導体ウェハのパターン計測方法であって、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出し、
前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を用いて、前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出し、
前記予測値の真値に対するばらつきの大きさを表す振り幅を算出し、、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための設定パラメータの調整幅を、前記予測値および前記振り幅により特定される表面電位の範囲に応じて決定すること
を特徴とするパターン計測方法。
【請求項14】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する半導体ウェハのパターン計測方法であって、
前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位値を測定し、
前記複数の位置で測定した表面電位の測定値を用いて、最小二乗法により、予め用意された複数の関数各々の係数を算出し、
それぞれ係数が決定され複数の関数各々について、前記複数の位置で測定した表面電位の測定値の当てはまりのよさを検定し、最も当てはまりのよい関数を、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数に決定し、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出し、
前記表面電位分布関数を用いて、前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出し、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための設定パラメータの調整を行うこと
を特徴とするパターン計測方法。
【請求項15】
半導体ウェハに対して一次荷電粒子線を照射し、これにより発生する二次荷電粒子を検出する半導体ウェハのパターン計測方法であって、
前記半導体ウェハ上の複数の位置で表面電位値を測定し、
前記複数の位置で測定した表面電位の測定値を用いて、スプライン補間により、前記半導体ウェハの表面電位分布を表す表面電位分布関数を算出し、
前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置を検出し、
前記表面電位分布関数を用いて、前記一次荷電粒子線の照射位置における前記半導体ウェハの表面電位の予測値を算出し、
前記予測値を用いて、前記半導体ウェハ上の前記一次荷電粒子線の照射位置で前記一次荷電粒子線を集束させるための設定パラメータの調整を行うこと
を特徴とするパターン計測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−265833(P2007−265833A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90125(P2006−90125)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】