説明

蒸気吸収式チラーを使用した希釈窒素圧縮機動力の低減

【課題】希釈窒素圧縮機吸気冷却システムを提供する。
【解決手段】本希釈窒素圧縮機吸気冷却システム(200)は、ボトミングサイクル熱源(212)と、該ボトミングサイクル熱源によって動力供給されかつ希釈窒素を冷却する(202)ように構成された蒸気吸収式チラー(201)と、該蒸気吸収式チラーから冷却した希釈窒素を受ける希釈窒素圧縮機(203)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、改良型の統合ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
統合ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラントは、段階間が明確に異なる2段階燃焼を行う。第1段階は、石炭又は重油のような化石燃料を部分酸化させるためのガス化装置を含み、また第2段階は、ガスタービン燃焼器を利用してガス化装置によって生成された燃料ガスを燃焼させるようにする。ガスタービン燃焼器の性能は、加圧希釈窒素を付加することによって高められる。IGCCにおける空気分離ユニット(ASU)からの希釈窒素は、希釈窒素圧縮機(DGAN)によって段階的に加圧されかつ冷却タワー水源によって各段階間で中間冷却される。加圧窒素は次に、ガスタービン燃焼器に供給される。DGAN圧縮機は、付随負荷として動力を消費する。DGAN圧縮機は、大量の動力を消費して、IGCC発電プラントの全体効率を低下させるおそれがある
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,555,738号公報
【特許文献2】米国特許第6,058,695号公報
【特許文献3】米国特許第6,170,263 B1号公報
【特許文献4】米国特許第6,216,436 B1号公報
【特許文献5】米国特許第7,178,348 B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本技術分野では、IGCC発電プラントと関連して作動するDGAN圧縮機によって消費される動力負荷を低減する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によると、希釈窒素圧縮機吸気冷却システムは、ボトミングサイクル熱源と、該ボトミングサイクル熱源によって動力供給されかつ希釈窒素を冷却するように構成された蒸気吸収式チラーと、該蒸気吸収式チラーから冷却した希釈窒素を受ける希釈窒素圧縮機とを含む。
【0006】
本発明の別の態様によると、希釈窒素圧縮機の吸気を冷却する方法は、統合ガス化複合サイクルシステムからのボトミングサイクル熱源を使用して蒸気吸収式チラーに動力供給するステップと、蒸気吸収式チラーによって希釈窒素を直接冷却するステップと、冷却した希釈窒素を希釈窒素圧縮機入口に送るステップとを含む。
【0007】
これらの及びその他の利点及び特徴は、図面と関連させてなした以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【0008】
本発明と見なされる主題は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲において具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明の上記の及びその他の目的、特徴及び利点は、添付図面と関連させてなした以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】蒸気吸収式チラー(VAC)の実施形態を示す図。
【図2】VACと関連したDGAN圧縮機入口の実施形態を示す図。
【図3】VACと関連したDGAN圧縮機入口の実施形態を示す図。
【図4】DGAN圧縮機吸気に供給される窒素を冷却する方法の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この詳細な説明は、図面を参照しながら実施例によって、その利点及び特徴と共に本発明の実施形態を説明する。
【0011】
DGAN動力消費量は、DGAN圧縮機吸気温度に正比例する。所定の質量流量の場合に、DGAN圧縮機の動力消費量は、より高温においてより大きく、また窒素の密度は、温度が上昇するにつれて低下する。吸気窒素温度を冷却することにより、より密度が高い窒素が得られて、必要な加圧がより少なくなりかつDGAN圧縮機動力消費量が減少する。例えば、DGAN圧縮機動力の動力消費量は、約40°Fの吸気温度の低下によって約2MWほど減少させることができる。
【0012】
IGCC発電プラントのボトミングサイクルからの低位熱又は廃棄熱を使用して、蒸気吸収式チラー(VAC)システムを作動させることができる。VACは、チリング媒体を生成して、窒素がDGAN圧縮機の入口に到達する前に該窒素を冷却することができる。冷却することにより、圧縮機を通る体積流量が減少して、圧縮機仕事量が減少することになる。従って、プラント付随負荷が低下して、IGCC発電プラントの実施形態では、約1MW〜1.8MWの出力利得及び約0.08%〜0.12%の正味効率向上が得られることになる。
【0013】
図1は、蒸気吸収式チラー(VAC)100の実施形態を示している。VAC100は、4つのセクション、すなわち吸収器101、蒸気発生器102、復水器103及び蒸発器104を含む。蒸発器104は、低圧又は真空に保たれる。蒸発器104内の真空により、アンモニア(NH)のような冷却剤が非常な低温で沸騰し、この沸騰している冷却剤は、冷却媒体から熱を吸収し、この冷却媒体が、導管109及び110を介して蒸発器104にまた該蒸発器104から循環する。冷却媒体と冷却剤との間の熱伝達により、冷却剤が蒸気に変化する。冷却剤蒸気は、吸収器101に送られる。吸収器101において、冷却剤蒸気は、水に吸収される。冷却剤エンリッチ水は、導管108を介して吸収器101から蒸気発生器102にポンプ圧送される。高温水又は水蒸気の形態をしたボトミングサイクルからの熱は、導管115を介して蒸気発生器102によって受けられ、低温になった水又は水蒸気が、導管116を介して蒸気発生器102から出力される。導管115内の高温水又は水蒸気からの熱は、蒸気発生器102内において、導管108からの冷却剤エンリッチ水に伝達される。導管115による高温水又は水蒸気からの熱は、導管108により受けた冷却剤エンリッチ水から冷却剤を沸騰させて取り除いて、冷却剤蒸気と高温水とを生じさせる。高温水は、導管107を介して吸収器に送られる。過剰な熱は、吸収器101内において、導管111及び112を介して循環する冷却タワーからの冷却水流によって高温水から取り除かれる。蒸気発生器102からの冷却剤蒸気は、導管105を介して復水器103に送られ、復水器103内において、冷却剤蒸気は、導管113及び114を介して循環する冷却タワーからの低温水と熱交換することによって液体に変化する。この液体冷却剤は次に、導管106を介して蒸発器104に送られて真空に戻され、蒸発器104内において、液体冷却剤は、導管109及び110内を循環する冷却媒体から熱を吸収する。冷却媒体は、導管109及び110を介して蒸発器104と窒素チラーとの間で循環するが、そのことについては、図2及び図3に関して以下で説明する。
【0014】
VAC100に動力供給する熱源は、IGCC発電プラントの全体性能に影響を与えないように選択することができる。VAC100の適当な作動に十分な流量、圧力及び温度を有するIGCC発電プラントにおける熱源を選択することができる。VAC100に動力供給するのに使用することができるIGCC発電プラントにおけるボトミングサイクル熱源の3つの実施例には、煙道ガス熱、蒸気シール調整器(SSR)からの水蒸気、及びが含まれる。
【0015】
煙道ガスを使用して、水を加熱することができる。幾つかの実施形態では、低圧エコノマイザ(LPE)により、煙道ガスを使用して水を加熱することができる。加熱した水は、VAC100に動力供給するために使用することができる。煙道ガスを使用して加熱した水は、約160°Fの温度及び約14.7psiの圧力までにすることができる。
【0016】
水蒸気は、約600°Fの温度及び約20psiの圧力でSSR出口からもたらされる。この水蒸気はまた、幾つかの実施形態ではVAC100に動力供給するために使用することができる。VAC100は、作動するのに約21psiの最低圧力を必要とし、従って水蒸気圧力は、蒸気圧縮機を使用することによって約25psiに上昇させることができる。蒸気圧縮機は、水蒸気温度を約665°Fまで上昇させることになる。水蒸気は、VAC内において凝縮され、約240°Fの温度の水としてグランドシール復水器(GSC)に吐出される。この水は、GSC内において復水を予熱するために使用することができ、或いは特定のIGCC発電プラントで予熱を必要としない場合にはGSCを迂回させることができる。
【0017】
水は、約200°Fで蒸発器ブローダウン流からもたらされる。この水はまた、幾つかの実施形態ではVAC100を作動させるのに利用することができる。
【0018】
図2は、煙道ガスを使用して加熱した水によって動力供給されるVACと関連したDGAN圧縮機吸気の実施形態200を示している。煙道ガスが導管213を介して低圧エコノマイザ(LPE)212に入力され、また煙道ガスは、導管214を介して排気筒(煙道)に出力される。LPE212は、煙道ガスを使用して水を加熱しかつ導管204を介してVAC201に高温水を送る。VAC201は、導管204を通して受けた加熱した水を使用して蒸気発生器に動力供給し、蒸気発生器は、図1に関して上述したように吸収器、蒸発器及び復水器に動力供給する。低温になった水又は水蒸気は、導管205を介してVAC201から出力される。VAC201からの冷却(チルド)媒体は、導管206及び207を介して窒素クーラ202にまた該窒素クーラ202から移動する。窒素クーラ202は、導管208を通して希釈窒素を受け、導管206及び207を介して循環するチルド媒体を使用して希釈窒素を冷却しかつ導管209を介して該冷却した希釈窒素をDGAN圧縮機入口203に出力する。
【0019】
図3は、水蒸気又は高温水によって動力供給されるVAC301と関連したDGAN圧縮機入口の実施形態300を示している。VAC301は、導管304を通して水蒸気又は高温水を受ける。導管304は、例えばSSR出口から水蒸気を運び或いは蒸発器ブローダウン流から高温水を運ぶことができる。導管304からの水蒸気又は高温水を使用して蒸気発生器に動力供給し、蒸気発生器は、図1に関して上述したように吸収器、蒸発器及び復水器に動力供給する。低温になった水又は水蒸気は、導管305を介してVAC301から出力され、SSRから水蒸気を受ける実施形態では、導管305は、グランドシール復水器(GSC)に連結することができる。VAC301によって生成された冷却(チルド)媒体は、導管306及び307を介して希釈窒素クーラ302にまた該希釈窒素クーラ302から移動する。窒素クーラ302は、導管308から窒素を受け、導管306及び307を介して循環するチルド媒体で希釈窒素を冷却しかつ導管309を介して該冷却した希釈窒素をDGAN圧縮機入口303に出力する。
【0020】
図4は、DGAN圧縮機吸気に供給される窒素を冷却する方法400の実施形態を示している。ブロック401において、ボトミングサイクル熱源からの熱を使用してVACに動力供給する。ブロック402において、VACが、希釈窒素を冷却する。ブロック403において、冷却した希釈窒素が、DGAN入口に送られる。
【0021】
実施例としてのIGCC発電プラント、具体的にはイリノイ盆地産石炭をISO日において燃焼させる2つのガスタービン及び2つのガス化装置を備えたGeneral Electric社製マルチシャフトSTAG 207FB IGCCの場合には、初期のDGAN圧縮機吸気温度は、約80°Fである。DGAN圧縮機吸気温度は、熱源としてSSR水蒸気を使用したVACによって約64°Fに低下させて、DGAN圧縮機の動力消費量を約1MWほど改善し、かつ約0.08%の効率向上を得ることができる。DGAN圧縮機吸気温度は、熱源として煙道ガスを使用したVACによって約44°Fに低下させて、DGAN圧縮機動力消費量を約1.8MWほど改善し、かつ約0.12%の効率向上を得ることができる。VACシステムを据付けるのに必要な初期投資は、IGCC発電プラントのライフサイクル全体にわたる効率改善による節減額と比較すると、安価なものとなる。
【0022】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解される筈である。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の技術思想及び技術的範囲に相応するあらゆる数の変形、変更、置換え又は均等な構成を組込むように改良することができる。さらに、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるものと見なすべきでなく、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0023】
100 蒸気吸収式チラー
101 吸収器
102 蒸気発生器
103 復水器
104 蒸発器
105 導管
106 導管
107 導管
108 導管
109 導管
110 導管
111 導管
112 導管
113 導管
114 導管
115 導管
116 導管
200 VACと関連したDGAN圧縮機吸気
201 VAC
202 窒素クーラ
203 DGAN入口
204 導管
205 導管
206 導管
207 導管
208 導管
209 導管
212 LPE
213 導管
214 導管
300 VACと関連したDGAN圧縮機吸気
301 VAC
302 窒素クーラ
303 DGAN入口
304 導管
305 導管
306 導管
307 導管
308 導管
309 導管
400 DGAN圧縮機吸気に供給される窒素を冷却する方法
401 ボトミングサイクル熱源を使用してVACに動力供給する
402 VACが希釈窒素を冷却する
403 冷却した希釈窒素がDGAN入口に送られる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈窒素圧縮機吸気冷却システム(200)であって、
ボトミングサイクル熱源(212)と、
前記ボトミングサイクル熱源によって動力供給されかつ希釈窒素を冷却する(202)ように構成された蒸気吸収式チラー(201)と、
前記蒸気吸収式チラーから前記冷却した希釈窒素を受ける希釈窒素圧縮機(203)と、を含む、
システム。
【請求項2】
前記ボトミングサイクル熱源が、廃棄煙道ガスを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記廃棄煙道ガスを使用して水を加熱しかつ該加熱した水を前記蒸気吸収式チラー(201)に供給するように構成された低圧エコノマイザをさらに含む、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記ボトミングサイクル熱源が、蒸気シール調整器からの水蒸気を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記ボトミングサイクル熱源が、蒸発器ブローダウンを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記蒸気吸収式チラーが、チルド媒体を使用して前記希釈窒素を直接冷却する(202)、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
希釈窒素圧縮機の吸気を冷却する方法(400)であって、
統合ガス化複合サイクルシステムからのボトミングサイクル廃棄熱源を使用して蒸気吸収式チラーに動力供給するステップ(401)と、
前記蒸気吸収式チラーによって希釈窒素を冷却するステップ(402)と、
前記冷却した希釈窒素を希釈窒素圧縮機入口に供給するステップ(403)と、を含む、方法。
【請求項8】
前記ボトミングサイクル熱源が、廃棄煙道ガスを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記廃棄煙道ガスを使用して低圧エコノマイザ内で水を加熱するステップと、
前記加熱した水を前記蒸気吸収式チラーに供給するステップと、
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ボトミングサイクル熱源が、蒸気シール調整器からの水蒸気を含む、請求項7記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−106832(P2010−106832A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245010(P2009−245010)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】