説明

蒸煮冷却システムおよび蒸煮システム

【課題】 簡易な構成で複数の調理容器の制御が可能で、食材の処理量の変化にも容易に対応できる蒸煮冷却システムの提供。
【解決手段】 食材14が収容される複数の調理容器3と、各調理容器3内へ蒸気供給する給蒸手段11と、各調理容器3内を減圧する減圧手段22と、減圧された各調理容器3内を復圧する復圧手段31と、これらを統一的に制御する制御手段40とを備える。制御手段40は、一または複数の調理容器3ごとに、給蒸、減圧および復圧を可能に、給蒸手段11、減圧手段22および復圧手段31を制御する。給蒸手段11は、軟水装置17からの軟水13を貯留する給水タンク18と、一次ボイラからの蒸気を熱源として軟水13を加熱して清浄蒸気にする二次ボイラ12とを備える。そして、軟水装置17、給水タンク18、および二次ボイラ12が、複数の調理容器3,3…に共通的に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食材を蒸気により加熱調理した後に真空冷却できる蒸煮冷却システム、および食材を蒸気により加熱調理する蒸煮システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食材を収容した調理容器内に蒸気を供給することで、食材を蒸し煮(蒸煮)して調理すると共に、加熱調理後には調理容器内を減圧することで真空冷却を図る蒸煮冷却機が知られている。
【特許文献1】特許第2781373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の蒸煮冷却機は、一つの調理容器のみを備えるだけであった。このため、食材の処理量の変化には、複数台の蒸煮冷却機を用意するしかなかったが、制御が統一されず作業が煩雑であり、また設置スペースやコストにおいても課題があった。また、蒸煮冷却機にて加熱調理して真空冷却後に、真空冷却機やブラストチラーなどの各種冷却装置にてさらに冷却したい場合があるが、蒸煮冷却機と冷却装置との処理能力に差があるのが通常である。そのため、蒸煮冷却機による処理後、冷却装置へ搬入するまでの待ち時間に差ができ、それによって食材の品質が安定しないおそれがあるが、これを防止するために、冷却装置の処理能力に合わせて蒸煮冷却機の処理量を調整できると好適である。
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、簡易な構成で複数の調理容器の制御が可能で、食材の処理量の変化にも容易に対応できる蒸煮冷却システムおよび蒸煮システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、食材が収容される複数の調理容器と、前記各調理容器内へ蒸気供給する一または複数の給蒸手段と、前記各調理容器内を減圧する一または複数の減圧手段と、減圧された前記各調理容器内を復圧する一または複数の復圧手段と、一または複数の前記調理容器ごとに、給蒸、減圧および復圧を可能に、前記給蒸手段、前記減圧手段および前記復圧手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする蒸煮冷却システムである。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、複数の調理容器ごとに蒸煮や真空冷却を制御可能であり、しかもその制御を統一して行うことができる。また、使用する調理容器の数を容易に変更することができ、処理量の変化に簡易に対応することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記給蒸手段は、蒸気生成用の水を貯留する給水タンクを備え、この給水タンクは、複数の前記調理容器に共通して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、給水タンクを共通化することで、簡易な構成および管理が可能となり、省スペースにもできる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記給蒸手段は、一次ボイラからの蒸気を熱源として純水または軟水を加熱して清浄蒸気を生成する二次ボイラを備え、この二次ボイラは、複数の前記調理容器に共通して設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システムである。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記二次ボイラにて純水または軟水から蒸気を発生させることで、一般的な通常のボイラよりもクリーンで安全な蒸気を得ることができる。そして、このような清浄蒸気を用いることで、より安全に食材を加熱調理することができる。しかも、その二次ボイラを共通化することで、簡易な構成および管理が可能となり、省スペースにもできる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記給蒸手段は、一次ボイラからの蒸気を熱源として純水または軟水を加熱して清浄蒸気を生成する二次ボイラと、そのための純水または軟水を貯留する給水タンクとを備え、前記給水タンクは、複数の前記調理容器に共通して設けられており、前記二次ボイラは、複数の前記調理容器それぞれに個別に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システムである。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記二次ボイラにて純水または軟水から蒸気を発生させることで、一般的な通常のボイラよりもクリーンで安全な蒸気を得ることができる。そして、このような清浄蒸気を用いることで、より安全に食材を加熱調理することができる。そして、その純水または軟水を貯留する給水タンクを共通化することで、簡易な構成および管理が可能となり、省スペースにもできる。一方、二次ボイラは個別に設置することで、二次ボイラの万一の故障や、点検や保守の際にも、他の調理容器に影響を与えることがない。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記軟水を製造する軟水装置が、複数の前記調理容器に共通して設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蒸煮冷却システムである。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、軟水装置を共通化することで、さらに簡易な構成および管理が可能となり、省スペースにもできる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、複数の前記調理容器の内、食材の量に応じた数の調理容器が使用され、前記制御手段は、その使用される調理容器について制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システムである。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、所望の数の調理容器のみを制御することで、食材の量の変化に対応することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記複数の調理容器、前記給蒸手段、前記減圧手段、および前記復圧手段を有し、前記各調理容器において前記食材を前記給蒸手段による加熱後、前記減圧手段により第一設定温度まで真空冷却する一または複数の蒸煮冷却機と、この蒸煮冷却機にて前記第一設定温度まで冷却された食材を、第二設定温度までさらに冷却する冷却装置とを備え、前記蒸煮冷却機の前記調理容器の稼動台数を調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システムである。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、食材は、蒸煮冷却機にて加熱調理後に第一設定温度まで冷却された後、さらに冷却装置にて第二設定温度まで冷却される。従って、蒸煮冷却機にて粗熱を取った後、冷却装置にてさらに冷却することができる。しかも、その際、蒸煮冷却機では第一設定温度まで真空冷却することで、冷却装置へ搬入する食材の温度を一定させ、食材の品質を安定させることができる。さらに、冷却装置の処理量に応じて、蒸煮冷却機の調理容器を所望数だけ運転することができる。
【0019】
さらに、請求項8に記載の発明は、食材が収容される複数の調理容器と、前記各調理容器内へ蒸気供給する一または複数の給蒸手段と、一または複数の前記調理容器ごとに、給蒸を可能に、前記給蒸手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする蒸煮システムである。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、複数の調理容器ごとに蒸煮を制御可能であり、しかもその制御を統一して行うことができる。また、使用する調理容器の数を容易に変更することができ、処理量の変化に簡易に対応することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、簡易な構成で複数の調理容器の制御が可能で、食材の処理量の変化にも容易に対応できる蒸煮冷却システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の蒸煮冷却システムは、食材を加熱調理後、真空冷却により粗熱取りをなす蒸煮冷却機と、この蒸煮冷却機からの食材をさらに冷却する冷却装置とを備えている。この冷却装置は、真空冷却機またはブラストチラーなどから構成され、前記蒸煮冷却機により実現可能な冷却温度よりも低い温度まで冷却できる能力を有している。
【0023】
前記蒸煮冷却機は、密閉可能な調理容器内に食材を収容し、調理容器内へ蒸気を供給(給蒸)して食材を加熱調理し、加熱調理後には調理容器内を減圧することで食材を真空冷却する。この蒸煮冷却機は、食材を収容する調理容器、調理容器内へ蒸気供給する給蒸手段、調理容器内を減圧する減圧手段、減圧された調理容器内を復圧する復圧手段、調理容器内に溜まった凝縮水などを排出する排水手段、およびこれら各手段を制御する制御手段などを備えて構成される。
【0024】
調理容器は、食材を収容して密閉可能な容器である。本実施形態では、一つの蒸煮冷却機に、複数の調理容器が備えられている。各調理容器の容量は、同じとするが、互いに異なる容量とすることができる。各調理容器は、前面に開閉可能な扉を設けた略直方体状の処理槽でもよいし、上面に開閉可能な蓋を設けた有底筒状の釜でもよい。本実施形態では、上方にのみ開口した有底円筒状の容器本体に、蓋体がパッキンを介して気密状態に開閉可能に設けられてなる。容器本体の底面および蓋体の上面は、それぞれ緩やかな略半球面状に外方へ膨出して形成されている。このようにして調理容器を球面にて形成することは、耐圧性を高める上で好ましい。
【0025】
各調理容器内には、食材が収容される。本実施形態では、容器本体内に着脱可能に収容される調理鍋を介して、調理容器に食材が出し入れされる。本実施形態の調理鍋は、上方にのみ開口した有底円筒状である。この調理鍋は、典型的にはステンレスなどの金属製である。
【0026】
調理鍋は、調理容器の内面から離隔して配置される。そのために、調理容器内の底部には、下向きコ字形状材が配置されて、調理鍋の載置部が水平に設けられる。あるいは、調理容器の底面からやや上方位置に、スノコ状に複数の棒材が水平に架け渡されて、調理鍋の載置部が設けられる。そして、このようにして形成された載置部に調理鍋が載せられることで、調理鍋は調理容器の底面から浮いた状態で保持される。また、その状態では、調理鍋の周側面は、調理容器の内面から離隔して配置される。このように配置することで、給蒸手段による蒸気を調理容器内に供給した際には、その蒸気が調理鍋の全周囲に行き渡ることになる。また、調理容器の底部に、凝縮水を溜めることもできる。
【0027】
ところで、調理容器と調理鍋とを共通化し、調理鍋を介さずに食材を調理容器内へ直接に投入するよう構成することもできる。この場合、調理容器の容器本体を内外二重構造とし、周側面および底面に連続的な空間を形成し、この空間および調理容器の内部空間に対して、給蒸手段による蒸気供給、減圧手段による真空引き、およびその後の復圧手段による復圧がなされる。
【0028】
給蒸手段は、調理容器内へボイラからの蒸気を供給する手段である。この蒸気は、一次ボイラからの蒸気を熱源とする二次ボイラにて純水または軟水を加熱して得た清浄蒸気とするのがよい。これにより、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が、調理容器への蒸気に混入されるおそれがなく衛生的である。二次ボイラへの給水は、給水タンクからなされる。軟水を使用する場合について具体的に説明すると、軟水装置から生成された軟水は、給水タンクに貯留され、この給水タンクから二次ボイラに軟水が供給される。
【0029】
これら軟水装置、給水タンク、または二次ボイラは、複数の調理容器それぞれに設置してもよいし、複数または全部の調理容器にて共用するように構成することもできる。その際、給水タンクのみを共通にして、二次ボイラは調理容器ごとに設置することができる。また、給水タンクおよび二次ボイラの双方を、複数または全部の調理容器に共通のものとすることもできる。軟水装置についても同様に、各調理容器に対し個別に設置してもよいし、複数または全部の調理容器に共通のものとしてもよい。
【0030】
減圧手段は、調理容器内の空気を真空引きすることで調理容器内を減圧する手段であり、真空ポンプ、またはそれに代えてもしくはそれに加えて、エゼクタなどを備えてなる。減圧手段は、さらに熱交換器を備え、この熱交換器を介して調理容器内の空気を吸引して、調理容器内を減圧可能に構成されている。この熱交換器にて、吸引空気中の蒸気は、冷却および凝縮される。この冷却および凝縮作用をなすために、熱交換器には冷却水が供給される。
【0031】
熱交換器の冷却水は、熱交換器を通過後、貯水タンクに溜められる。貯水タンクに溜められる水は、予め熱交換器を通過することで、ある程度温度が高められた温水となる。従って、この温水を、使用後の調理鍋の洗浄などに使用すれば、排熱を有効利用することができる。
【0032】
また、前記熱交換器を利用して、前記二次ボイラへの純水または軟水を予熱することもできる。つまり、純水または軟水は、予め熱交換器の冷却水として利用されることで予熱された後、二次ボイラへ供給されて蒸気とされる。この場合も、排熱を有効利用することができる。さらに、熱交換器にて予熱した純水または軟水は、二次ボイラへ供給するだけでなく、上述したように調理鍋などの洗浄水として利用してもよい。
【0033】
復圧手段は、減圧手段により減圧された調理容器内を復圧する手段である。具体的には、減圧された調理容器内へ外気を導入して、調理容器内を大気圧まで復圧することができる。調理容器内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。
【0034】
排水手段は、調理容器内の水を外部へ排出する手段である。給蒸手段による蒸気供給などにより、調理容器内の底部には凝縮水が溜まる。あるいは、後述するように、真空冷却時には所望により外部から給水されることがある。排水手段は、これら調理容器内の底部に溜まった水を、外部へ排出する。この排出を容易にするために、排水手段の排水ラインは、通常は調理容器の底部に接続される。
【0035】
制御手段は、前記給蒸手段、前記減圧手段、前記復圧手段、前記排水手段、前記二次ボイラなどを制御する。つまり、これら各手段は、制御手段により制御され、典型的には空気排除工程、給蒸工程、真空冷却工程、復圧工程が順次になされる。このような制御は、調理容器内の圧力を検出する圧力センサ、または調理容器内の温度を検出する温度センサなどの出力を利用して行うことができる。あるいは、前記各手段を作動させる時間を調整して、調理容器内を所望の圧力または温度に調整することもできる。また、前記制御手段は、一または複数の調理容器ごとに、給蒸、減圧および復圧などを可能に、前記給蒸手段、前記減圧手段および前記復圧手段などを制御する。
【0036】
さらに、制御手段は、前記二次ボイラの圧力制御と水位制御を行う。二次ボイラの圧力制御とは、二次ボイラにて生成される清浄蒸気の圧力を、二次ボイラ用圧力センサに基づき把握して、一次ボイラから二次ボイラへ蒸気供給するための給蒸弁を操作することでなされる。一方、二次ボイラの水位制御とは、二次ボイラ内の純水または軟水の水位を、水位センサに基づき制御することをいう。
【0037】
空気排除工程は、減圧手段を作動させて、調理容器内を設定圧力または設定温度まで減圧する工程である。これにより、調理容器内の空気が排除され、蒸気による加熱調理を有効に行うことができる。このような空気排除は、給蒸手段によって調理容器の上部から蒸気供給を行いつつ、調理容器の下部から排水手段を介して空気排除することによってなすこともできる。そして、所望により、調理容器内を減圧状態に設定時間だけ保持した後、給蒸工程へ移行する。
【0038】
給蒸工程は、空気排除された調理容器内へ給蒸手段により蒸気供給して、食材を加熱調理する工程である。この給蒸工程は、調理容器内を大気圧より低い圧力に制御して蒸気により加熱する低圧給蒸調理と、調理容器内を大気圧より高い圧力に制御して蒸気により加熱する高圧給蒸調理の少なくとも一方を含む。加熱調理後には、所望により、調理容器内を密閉して、食材の蒸らしが図られる。
【0039】
真空冷却工程は、減圧手段により調理容器内を減圧して食材を冷却する工程である。この際、調理鍋の底部に、凝縮水が接触した状態であれば、均一で効果的に真空冷却することができる。ここで、外部から調理容器内へ給水し、その水を調理鍋に接触させて真空冷却を図ってもよい。この際、凝縮水に加えて外部から給水してもよいし、凝縮水を排出手段にて排水した後、外部から給水してもよい。真空冷却後には、所望により、調理容器内を設定温度に維持される。
【0040】
復圧工程は、復圧手段による調理容器内が大気圧まで戻される。そして、所望により、前記真空冷却工程にて粗熱が取られた食材は、真空冷却機やブラストチラーなどの冷却装置に移され、さらに冷却される。
【0041】
ところで、前記各手段の全部または一部、特に、各調理容器、減圧手段、二次ボイラ、軟水器、制御器を共通の基台に装備することで、一つのユニットとして前記蒸煮冷却システムを構築することができる。また、真空冷却機能を持たない蒸煮システムとすることもできる。この場合、前記減圧手段と前記復圧手段を省略することができ、システムに用いる蒸煮機を調理容器に大気開放で給蒸して加熱調理する蒸煮機とすることができる。
【実施例1】
【0042】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸煮冷却システムの実施例1を示す概略構成図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮冷却システムは、食材を加熱調理後に第一設定温度まで真空冷却する一または複数の蒸煮冷却機1と、この蒸煮冷却機1にて第一設定温度まで冷却された食材を第二設定温度までさらに冷却する一または複数の冷却装置2とを備えて構成される。
【0043】
図2は、本実施例の蒸煮冷却機1を示す構成図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮冷却機1は、複数の調理容器3,3…を備える。図1および図2では、一台の蒸煮冷却機1に二つの調理容器3,3を備えた例を示しているが、図3に示すように、三つの調理容器3,3,3を備えてもよいし、あるいはそれ以上の調理容器3を設置してもよい。
【0044】
図2に示すように、各調理容器3は、それぞれ容器本体4に蓋体5が開閉可能に設けられて構成される。各容器本体4は、上方にのみ開口した有底円筒状とされ、その底面は緩やかな円弧状に下方へ膨出して形成されている。また、各容器本体4の上端部には、径方向外側へ延出して第一フランジ6が形成されている。
【0045】
一方、各蓋体5は、容器本体4と対応した直径に形成され、下方にのみ開口した短円筒状とされ、その上面は緩やかな円弧状に上方へ膨出して形成されている。また、各蓋体5の下端部には、径方向外側へ延出して第二フランジ7が形成されている。このような蓋体5は、容器本体4に対し開閉可能に設けられる。容器本体4の上部開口を蓋体5で閉じる際には、容器本体4の第一フランジ6と蓋体5の第二フランジ7とが、パッキン8を介して重ね合わされる。これにより、調理容器3を密閉することができる。
【0046】
各調理容器3内には、それぞれ調理鍋9が着脱可能に収容される。各調理鍋9は、調理容器3よりも小さく形成され、上方にのみ開口した有底円筒状である。各調理鍋9は、ステンレスやアルミニウムなどから形成される。ところで、各容器本体4内の内周面の下部には、複数の棒材10,10…が間隔を空けて平行に架け渡されて設けられている。従って、調理鍋9は、その下面をこれら棒材10,10…に保持されることで、容器本体4の底面から上方へ浮いた状態で保持される。また、調理鍋9は、容器本体4と同軸上に配置される。その状態では、調理鍋9の外周面は、容器本体4の内周面から離隔して配置される。
【0047】
ところで、各調理容器3や各調理鍋9は、適宜に設計されるが、本実施例の各調理容器3は、第一種圧力容器の小型圧力容器規格内のものとされる。また、各調理容器3や各調理鍋9の大きさは、適宜に設定されるが、本実施例では、各調理容器3は100リットル、各調理鍋9は60リットルの容量とされている。また、一つの蒸煮冷却機1に備えられる複数の調理容器3,3…は、互いに大きさを変えてもよいが、本実施例ではすべて同じ大きさに形成されている。
【0048】
各調理容器3には、調理容器3内に蒸気を供給可能に、給蒸手段11が接続されている。本実施例の給蒸手段11は、一次ボイラ(不図示)と二次ボイラ(リボイラ)12とを備え、一次ボイラからの蒸気を熱源として、二次ボイラ12にて軟水13を加熱して蒸気化し、そのようにして生成された清浄蒸気を調理容器3内へ供給する。一次ボイラは、通常の一般的なボイラから構成されるが、そのような一次ボイラによる蒸気には、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が混入するおそれが残る。ところが、調理容器3内へ供給される蒸気は、直接に食材14に接触し得るものである。そこで、二次ボイラ12にて軟水13を加熱して清浄蒸気を生成し、この清浄蒸気を調理容器3内へ供給するのである。
【0049】
具体的には、二次ボイラ12は、ステンレス製の熱交換器であり、軟水13を加熱して蒸気に変換する。軟水13を加熱するために、二次ボイラ12には、一次ボイラからの蒸気が給蒸弁15を介して供給される。このようにして一次ボイラから供給された蒸気は、二次ボイラ12にてステンレス配管内へ供給される軟水13を加熱し、清浄蒸気を生成する。一次ボイラからの蒸気は、二次ボイラ12にて使用後、スチームトラップ16を介して排出される。
【0050】
二次ボイラ12へ軟水13を供給するために、給蒸手段11は軟水装置17を備える。本実施例の軟水装置17は、イオン交換樹脂を使用して、供給された水を軟水13へ変換する。この軟水装置17にて作られた軟水13は給水タンク18に貯留され、この給水タンク18の軟水13が第一給水ポンプ19を介して二次ボイラ12へ供給される。
【0051】
そして、二次ボイラ12に供給された軟水13は、上述したように、一次ボイラからの蒸気にて加熱されて清浄蒸気に変換され、給蒸ライン20を介して各調理容器3内へ供給される。給蒸ライン20の中途には、給蒸操作弁21が設けられている。本実施例の給蒸操作弁21は、調理容器3内への給蒸の有無と、給蒸する場合の蒸気量を調整可能な構成であり、典型的には比例制御弁から構成される。この給蒸操作弁21を調整することで、調理容器3内の圧力、ひいては温度を調整することができる。この調理容器4内の圧力調整は、給蒸操作弁21だけでなく減圧手段22を制御することによっても、行うことができる。
【0052】
ところで、前記給蒸手段11は、各調理容器3それぞれに個別に設けてもよいし、複数の調理容器3,3…に共通的に設けてもよい。個別に設ける場合には、各調理容器3それぞれに、軟水装置17、給水タンク18、および二次ボイラ12を個別に設置すればよい。一方、複数の調理容器3,3…に共通的に設ける場合には、軟水装置17、給水タンク18、および二次ボイラ12の内、いずれか一以上の構成を共通化することができる。たとえば、軟水装置17のみを共通化する場合には、一の軟水装置17からの軟水が、複数の給水タンク18,18…へ分配され、その各給水タンク18からの軟水が、それに接続された各二次ボイラ12を介して各調理容器3へ供給される。
【0053】
また、給水タンク18を共通化する場合には、後述する実施例2のように、一の給水タンク18からの軟水が複数の二次ボイラ12,12…へ分配され、その各二次ボイラ12からの清浄蒸気が、それに接続された各調理容器3へ供給される。この際、給水タンク18に加えて、軟水装置17も共通化しておくのが好ましい。
【0054】
本実施例では、図2に示すように、軟水装置17、給水タンク18、および二次ボイラ12を、複数の調理容器3,3…に対し共通化し、統一した一つのものとしている。具体的には、一つの軟水装置17と、この軟水装置17からの軟水13を貯留する一つの給水タンク18と、この給水タンク18からの軟水13が第一給水ポンプ19により供給される一つの二次ボイラ12とを、複数の調理容器3,3…に対し共通的に設置している。そして、この共通の二次ボイラ12からの給蒸ライン20を、分岐させて複数の調理容器3,3…それぞれへ接続し、この分岐した各給蒸ライン20に、それぞれ給蒸操作弁21,21…を設けている。従って、各給蒸操作弁21を操作することで、各調理容器3への給蒸の有無などを制御できる。
【0055】
ところで、軟水装置17、給水タンク18、または二次ボイラ12の共通化は、一つの蒸煮冷却機1の調理容器3,3…すべてに対してではなく、その内の一部の調理容器3に対してであってもよい。また、本実施例では調理容器3一つずつに給蒸操作弁21を個別に設置しているが、複数の調理容器3,3…ごとに共通的な給蒸操作弁21を設けて、グループ分けした制御を可能としてもよい。これらのことは、後述する他の手段22,31,36についても同様であり、また制御手段(制御器)40による共通的な制御も同様である。
【0056】
以上のようにして、給蒸手段11が接続された各調理容器3には、その調理容器3内の空気を外部へ吸引して、調理容器3内を減圧する減圧手段22がそれぞれ接続されている。本実施例では、各調理容器3に接続された減圧ライン23に、減圧操作弁24を介して真空発生装置25が接続されている。具体的には、減圧ライン23には、熱交換器26と逆止弁(不図示)を介して真空ポンプ27を設けている。
【0057】
熱交換器26には、冷却水が供給されることで、調理容器3内から吸引した空気中の蒸気を、冷却し凝縮させることができる。熱交換器26へ供給される冷却水は、使用後には貯水タンク28に貯留される。この貯水タンク28は、第二給水ポンプ29を介して洗浄ガン30などに接続されている。このようにして、熱交換器26で排熱を利用して温められた温水は、使用後の調理鍋9などの洗浄に利用することができる。
【0058】
このような減圧手段22は、本実施例では各調理容器3それぞれに個別に設けているが、前記給蒸手段11と同様に、複数の調理容器3,3…に共通的に設けてもよい。特に、貯水タンク28や洗浄ガン30などは、共通化することができる。
【0059】
各調理容器3には、減圧手段22にて減圧された後、復圧するための復圧手段31がそれぞれ接続されている。本実施例の復圧手段31は、調理容器3に接続された復圧ライン32が、除菌フィルター33を介して外気と連通可能に設けられている。この復圧ライン32の中途には、復圧操作弁34が開閉可能に設けられており、この復圧操作弁34の開放により、調理容器3内は大気圧に開放可能とされている。
【0060】
各調理容器3には、調理容器3内に溜まった凝縮水35などを外部へ排出するための排水手段36が接続されている。具体的には、各調理容器3の底面中央に排水ライン37が接続され、この排水ライン37には排水弁38が開閉可能に設けられている。
【0061】
さらに、各調理容器3には、圧力センサ39が設けられている。この圧力センサ39により、調理容器3内の圧力が検出される。但し、圧力センサ39に代えて、温度センサを利用することも可能である。圧力と温度とを換算することで、いずれのセンサでも利用できる。
【0062】
前記給蒸手段11、減圧手段22、復圧手段31、排水手段36、二次ボイラ12などは、制御手段40により制御される。この制御手段40は、それが把握する時間や前記圧力センサ39からの検出信号などに基づいて、前記各手段11,22,31,36,12を制御する制御器である。具体的には、給蒸操作弁21、減圧操作弁24、復圧操作弁34、排水弁38、圧力センサ39などは、制御器40に接続されており、この制御器40は、所定のプログラムに基づき、後述するように、調理容器3内の食材14の蒸煮とその後の真空冷却を行う。
【0063】
また、制御器40は、二次ボイラ12の圧力制御と水位制御を行う。二次ボイラ12の圧力制御は、前記ステンレス配管内に設けた二次ボイラ用圧力センサ(不図示)を用いて行う。すなわち、この二次ボイラ用圧力センサ(不図示)に基づき、二次ボイラ12にて生成される清浄蒸気の圧力を検出し、一次ボイラ(不図示)から二次ボイラ12へ蒸気供給するための給蒸弁15の開閉を操作する。また、二次ボイラ12の水位制御は、二次ボイラ12の前記ステンレス配管内の純水または軟水の水位を、水位センサ(不図示)に基づき制御して行う。
【0064】
ところで、本実施例の蒸煮冷却機1は、図1に示すように、一つの基台1Aに、補機ボックス1Bと前記各調理容器3とが備えられており、一つのユニットを構成している。そして、前記補機ボックス1Bには、前記各手段の一部または全部が備えられている。本実施例では、減圧手段22、復圧手段31、排水手段36、二次ボイラ12、軟水装置17、制御器40、給水タンク18および貯水タンク28が備えられている。
【0065】
しかも、制御器40は、複数の調理容器3,3…に共通的に設けるのが好ましい。すなわち、一つの制御器40にて、複数の調理容器3,3…の前記各手段11,22,31,36(給蒸操作弁21、減圧操作弁24、復圧操作弁34、排水弁38など)を制御可能とする。この際、一または複数の調理容器3ごとに、その運転の有無や運転内容を個別に制御可能とするのが好ましい。
【0066】
次に、本実施例の蒸煮冷却機1の使用について説明する。図4は、本実施例の蒸煮冷却機1の使用例を示すフローチャートである。本実施例の蒸煮冷却機1で調理する食材(食品でもよい)14は、特に問わないが、ここでは煮物を作る場合を例に説明する。そのために、まず調理容器3の蓋体5を開けて、調理容器3内に調理鍋9をセットする(ST1)。そして、調理鍋9に食材14を投入する(ST2)。ここでは、煮物の具材と煮汁などを調理鍋9へ投入し、その後、容器本体4に蓋体5を取り付けて調理容器3を密閉する(ST3)。
【0067】
この初期状態では、給蒸操作弁21と減圧操作弁24は閉じられ、復圧操作弁34と排水弁38は開かれている。そして、この状態から、典型的には、空気排除工程(ST4)、真空保持工程(ST5)、給蒸工程(ST6)、蒸らし工程(ST7)、および真空冷却(粗熱取り)工程(ST8)、復圧工程(ST9)が順次に行われる。但し、これらは適宜に変更可能であり、たとえば蒸らし工程(ST7)を省略することもできる。
【0068】
前記空気排除工程(ST4)では、給蒸操作弁21、復圧操作弁34、および排水弁38を閉じる一方、減圧操作弁24を開いた状態で、真空発生装置25を駆動する。これにより、調理容器3内の空気を、減圧ライン23を介して調理容器3外へ排出することができる。このような調理容器3内からの空気排除は、圧力センサ39を利用することで、設定圧力まで行ってもよいし、あるいは設定時間だけ行うようにしてもよい。この空気排除工程は、給蒸操作弁21を開いた状態で給蒸して行うこともできる。
【0069】
このような減圧後、さらに減圧操作弁24も閉じて、真空保持工程(ST5)が設定時間だけ行われる。食材14を減圧状態に保持することで、真空含浸効果により、だし汁や煮崩れ防止剤などを具材に円滑で確実に浸透させることができる。特に、煮崩れ防止剤は、具材が煮える前に浸透させるべきものであるから、この真空保持工程(ST5)を行うことは有効である。
【0070】
真空保持後の給蒸工程(ST6)では、減圧操作弁24、復圧操作弁34、および排水弁38を閉じた状態で、給蒸操作弁21を開いて、調理容器3内へ蒸気を供給する。これにより、調理容器3内の調理鍋9に収容された食材14を加熱調理することができる。この際、上述したように、調理容器3内へ供給される蒸気は、二次ボイラ12にて軟水13から生成された清浄蒸気である。従って、安全で安心の加熱調理を実現することができる。また、調理鍋9の全周囲に清浄蒸気を行き渡らせることで、短時間での加熱料理がなされる。
【0071】
蒸煮のための給蒸工程(ST6)では、給蒸により調理容器3内の圧力を調整することで、調理容器3内の温度を調整することができる。本実施例では、60℃から130℃の範囲にて、自由な温度に設定して加熱調理を可能としている。この際、たとえば、段階的に温度を上げるなどの操作も可能である。このようにして調理容器3の圧力を調整することで、飽和蒸気温度が調整される。これにより、食材温度が調理容器3内の飽和蒸気温度より高くなることがなく、焦げ付きの少ない調理が可能である。また、沸騰が防止されると共に、空気排除工程(ST4)や真空保持工程(ST5)にて食材14内の溶存気体を予め抜いていることもあって、加熱時の吹きこぼれも防止することができる。
【0072】
設定時間の蒸煮後、前記給蒸操作弁21も閉じて、設定時間だけ蒸らし工程(ST7)が行われる。但し、上述したように、この蒸らし工程(ST7)は省略される場合もある。
【0073】
その後の真空冷却工程(ST8)では、給蒸操作弁21、復圧操作弁34、および排水弁38を閉じる一方、減圧操作弁24を開いた状態で、真空発生装置25を駆動する。これにより、調理容器3内の空気を、減圧ライン23を介して調理容器3外へ排出し、調理容器3内を真空冷却することができる。この際、熱交換器26に冷却水を供給することで、調理容器3内から吸引された空気中の蒸気は、熱交換器26にて冷却され凝縮される。冷却水は、熱交換器26にて温められることになり、その温められた水は貯水タンク28に貯められる。
【0074】
本実施例では、蒸煮冷却機1の減圧手段22の能力を考慮して、前記真空冷却工程(ST8)では、第一設定温度まで冷却されることで粗熱取りのみがなされ、その後、真空冷却機などの冷却装置2にて、第二設定温度まで本格的に冷却がなされる。また、本実施例では、真空冷却工程(ST8)にて第一設定温度まで冷却された食材14は、その第一設定温度にて保持可能とされる。これは、蒸煮冷却機1と冷却装置2との処理量の差に基づき、蒸煮冷却後の食材14が冷却装置2に搬入されるまでの待ち時間差により、品質に差が出るのを防止するためである。また、減圧下で保持することは、真空含浸効果により、具材への煮汁の染み込みを良くする効果もある。
【0075】
前記第一設定温度における保持は、一定時間ごとに減圧手段22を駆動または停止する動作を繰り返してもよいし、或いは調理容器3内の圧力(つまり温度)をセンサ39で計測して、所定の上限圧力まで上昇した場合に、減圧手段22を駆動して所定の下限圧力まで減圧して放置し、再び前記上限圧力まで達したら前記下限圧力まで減圧するという動作を繰り返してもよい。或いは、復圧手段31を作動させて調理容器3内へ空気導入しながら、連続的に減圧手段22を駆動させることで、調理容器3内の圧力を所定圧力に保持するようにしてもよい。
【0076】
真空冷却工程(ST8)にてどの程度まで冷却して保持するかは、適宜に設定されるが、本実施例では、第一設定温度は50℃から70℃までの範囲で設定される。これは、50℃未満の温度では雑菌増殖のおそれが出てくる反面、70℃を超えると調理が進んでしまうことを考慮したものである。
【0077】
ところで、真空冷却時には、調理鍋9の底に触れる程度の水が、調理容器3の底部にあるのが好ましい。この場合、その水の蒸発時の気化熱により、調理鍋9内の食材14を効果的で均一に冷却することができる。この水は、調理容器3内に溜まる凝縮水35を利用してもよいし、この凝縮水35に代えてまたはそれに加えて、外部から給水してもよい。たとえば、図2において点線で示すように、給水弁41を介して給水ライン42を各調理容器3に接続しておき、真空冷却工程(ST8)の直前に、排水弁38を一旦開けて凝縮水35を排水した後、排水弁38を閉じて前記給水弁41を開き、調理容器3内に所望量の水を供給するようにしてもよい。この場合、その給水量は、給水ライン42に設けた流量計(不図示)により把握することができる。
【0078】
以上のようにして、蒸煮後に粗熱取りがなされた後、所望時には復圧手段31を作動させて、調理容器3内を大気圧まで復圧する。つまり、復圧操作弁34を開ければよい。その後、蓋体5が取り外され(ST9)、食材14および調理鍋9が調理容器3から取り出される(ST10,ST11)。取り出された食材14は、図1に示すように、ホテルパン43などに移されて、ワゴン44などを介して冷却装置2の処理槽45に搬入され、さらに冷却装置2にて最終的な所望温度まで冷却される。
【0079】
この冷却装置2としては、ブラストチラーなどでもよいが、本実施例では真空冷却機が使用される。この真空冷却機は、従来公知の構成であり、密閉可能な処理槽45と、この処理槽45内を減圧する真空ポンプやエゼクタなどを備え、蒸煮冷却機1の減圧手段22により実現されるよりも低い温度に真空冷却する機能を有する減圧機構(不図示)、および減圧された処理槽45内を復圧する復圧機構(不図示)などを備えて構成される。
【0080】
一方、蒸煮冷却機1においては、前記復圧操作弁34を開いた後、さらに排水弁38も開いて、調理容器3内の水が排水され、取り出された調理鍋9に代えて、別の調理鍋9を新たにセットすることで、直ちに次の調理に移ることができる。そして、取り出された使用後の調理鍋9は、洗浄される(ST12)。この洗浄には、貯水タンク28に貯められた温水を利用でき、排熱を有効活用することができる。
【0081】
ところで、前記初期状態(ST3)、真空保持工程(ST5)、復圧工程および最後の排水工程においては、本実施例では減圧操作弁24は閉じているが、この減圧操作弁24は開いていてもよい。また、給蒸工程(ST6)において、排水弁38を時々開くように制御してもよい。さらに、真空冷却工程(ST8)において、調理容器3内に溜めておく水の量も適宜に変更可能である。特に、本実施例では、真空冷却工程(ST8)における目標温度は、せいぜい50℃までの粗熱取りであるため、外部から給水された水の温度が目標温度以下であれば、食材冷却の阻害要因となることはない。また、上記制御において、各工程における設定圧力または温度は、特定の圧力または温度に限らず、ある程度幅のある圧力域または温度域であってもよい。
【0082】
ところで、蒸煮冷却機1にて第一設定温度まで粗熱を取った後、冷却装置2にて第二設定温度までさらに冷却する場合において、蒸煮冷却機1と冷却装置2との間で、処理可能量が互いに異なる場合がある。蒸煮冷却機1の処理量が冷却装置2の処理量よりも多ければ、蒸煮冷却により第一設定温度まで冷却された食材14は、小分けされて冷却装置2にて繰り返し冷却処理されることになる。その場合でも、上述したように、蒸煮冷却機1において、食材14を第一設定温度に保持できるので、冷却装置2への搬入待ち時間差によっても食材温度が変わることはなく、品質を安定させることができる。また、このような場合、冷却装置2(またはその処理槽45)を複数用意しておけば、蒸煮冷却機1からの食材14を小分けして、一度に複数の冷却装置2,2…(処理槽45,45…)にて第二設定温度まで冷却することができる。
【0083】
逆に、蒸煮冷却機1の一の調理容器3が冷却装置2の処理量よりも少なくても、本実施例では上述したように、複数の調理容器3を備えるので、所望の数の調理容器3を使用すればよい。そして、これら複数の調理容器3からの食材14をまとめて冷却装置2で冷却するのである。さらに、図1に示すように、複数の調理容器3を備える蒸煮冷却機1を複数用意し、それら調理容器3にてそれぞれ食材14を加熱調理後に第一設定温度まで粗熱を取り、その後、それら食材14をまとめて一または複数の冷却装置2にて第二設定温度まで冷却してもよい。
【0084】
このように、本実施例の蒸煮冷却機1は、複数の調理容器3,3…を備え、冷却装置2の処理量など、食材14の処理量に合わせて、所望の数の調理容器3のみを作動可能である。しかも、給蒸手段11や制御手段40などが適宜、複数の調理容器3,3…に対して共通化されており、構成および制御が簡易である。ここで、複数の調理容器3,3…からの食材14をまとめて冷却装置2へ搬入する関係からは、各調理容器3における蒸煮冷却が並列的に行われるように制御するのが好ましい。但し、各調理容器3における処理が時間的に前後しても、食材14は第一設定温度に維持されるので、冷却装置2への搬入時間差により品質に差が出るのが防止される。
【実施例2】
【0085】
図5および図6は、蒸煮冷却機1の実施例2を示す構成図である。本実施例2の蒸煮冷却機1も、基本的には前記実施例1の蒸煮冷却機1と同様の構成である。そのため、以下においては、両者の異なる点を中心に説明する。また、実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
【0086】
図2などを用いて説明したように、前記実施例1では、制御器40の他、軟水装置17、給水タンク18、および二次ボイラ12を、複数の調理容器3,3…で共用した構成であったが、図5および図6に示すように、本実施例2では、制御器40、軟水装置17および給水タンク18は、複数の調理容器3,3…で共用するが、二次ボイラ12は各調理容器3に個別に設置している。
【0087】
つまり、図6に示すように、軟水装置17からの軟水13は、共通の給水タンク18に貯留され、その給水タンク18からの軟水13が、各二次ボイラ12へ分配される。そして、各調理容器3には、それ専用の二次ボイラ12からの清浄蒸気が供給可能とされている。二次ボイラ12のみを個別に設置することで、二次ボイラ12の万一の故障や、点検や保守の際にも、他の調理容器3の運転に影響を与えることがない。
【実施例3】
【0088】
図7は、蒸煮冷却機1の実施例3を示す構成図である。この図7においては、調理容器3を一つだけ示しているが、前記実施例1および実施例2と同様に、実際には複数の調理容器3,3…を備え、制御手段40や給蒸手段11などは複数の調理容器3,3…で適宜共通化される。
【0089】
本実施例3の蒸煮冷却機1も、基本的には前記実施例1の蒸煮冷却機1と同様の構成である。そのため、以下においては、両者の異なる点を中心に説明する。また、実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
【0090】
本実施例3においては、前記実施例1における貯水タンク28が給水タンク18と共用されている。つまり、実施例3においては、給水タンク18のみを備え、実施例1における貯水タンク28は省略している。
【0091】
そして、実施例3では、軟水装置17からの軟水13は、熱交換器26を通された後、給水タンク18に貯留され、その給水タンク18の軟水13が二次ボイラ12へ供給される。従って、蒸煮冷却機1の使用に伴って出る排熱を利用して、予め熱交換器26にて軟水13を予熱することができ、二次ボイラ12における軟水13の清浄蒸気への変換を円滑で省エネルギに行うことができる。
【0092】
また、本実施例3においても、給水タンク18の軟水13は、洗浄ガン30などを介して、使用後の調理鍋9などの洗浄に利用することができる。洗浄水に軟水13を利用し、しかも排熱を利用した温水であるから、洗浄力を一層高めることができる。
【0093】
この実施例3の蒸煮冷却機1においても、食材14の加熱調理後には第一設定温度まで真空冷却した後、真空冷却機などの冷却装置2に移して、第二設定温度まで真空冷却することができる。
【0094】
なお、本発明の蒸煮冷却システムは、上記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。例えば、調理鍋9に穴開き鍋を使用することで、蒸煮冷却機1において蒸し調理をすることもできる。また、上記各実施例では、冷却装置2として、真空冷却機を用いたが、ブラストチラーなど、その他の各種の冷却装置を使用してもよい。さらに、上記各実施例では、調理鍋9の上面は開放したが、蒸気は通すが水は通さない透湿防水性素材の蓋を被せてもよい。
【0095】
また、上記実施例では、蒸煮冷却機1を冷却装置2と併用した例について説明したが、場合によっては蒸煮冷却機1のみで使用可能なことは勿論である。さらに、各調理容器3に副制御器(不図示)を設け、主制御器40からの指令に基づき、この副制御器を介して各調理容器3における運転を制御するようにしてもよい。
【0096】
また、この発明は、食材の加熱調理後に真空冷却する蒸煮冷却機1を用いた蒸煮冷却システムに好適に実施されるが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、真空冷却機能を持たない蒸煮機46,例えば調理容器3に大気開放で給蒸して加熱調理するだけの蒸煮機46を用いた蒸煮システムにも適用可能である。この場合、前記各実施例の蒸煮冷却機1における減圧手段22および復圧手段31を省略することができ、蒸煮時に蒸気を排出する排蒸路(図示省略)を設け、それ以外の構成は、前記各実施例と同様の構成を採用できる。この蒸煮機46においても、図8に示すように、共通の基台48に複数の調理容器3,3…を備え、補機ボックス47内の共通の制御器にて各調理容器3における運転を制御できる。この蒸煮システムに用いる蒸煮機46は、大気開放で給蒸して加熱調理するものだけでなく、大気圧以上の高圧蒸気により加熱するもの、大気圧以下の低圧蒸気により加熱するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の蒸煮冷却システムの実施例1を示す概略斜視図である。
【図2】実施例1の蒸煮冷却機を示す概略構成図である。
【図3】実施例1の蒸煮冷却システムの変形例を示す概略斜視図である。
【図4】実施例1の蒸煮冷却機の運転例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の蒸煮冷却システムの実施例2を示す概略斜視図である。
【図6】実施例2の蒸煮冷却機を示す概略構成図である。
【図7】実施例1および実施例2の蒸煮冷却機の変形例を示す構成図である。
【図8】実施例1および実施例2のさらに別の変形例であり、蒸煮機とした場合の全体構成を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0098】
1 蒸煮冷却機
2 冷却装置(真空冷却機)
3 調理容器
9 調理鍋
11 給蒸手段
12 二次ボイラ(リボイラ)
14 食材
17 軟水装置
18 給水タンク
22 減圧手段
28 給水タンク
31 復圧手段
40 制御手段(制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材が収容される複数の調理容器(3,3…)と、
前記各調理容器(3)内へ蒸気供給する一または複数の給蒸手段(11)と、
前記各調理容器(3)内を減圧する一または複数の減圧手段(22)と、
減圧された前記各調理容器(3)内を復圧する一または複数の復圧手段(31)と、
一または複数の前記調理容器(3)ごとに、給蒸、減圧および復圧を可能に、前記給蒸手段(11)、前記減圧手段(22)および前記復圧手段(31)を制御する制御手段(40)と
を備えることを特徴とする蒸煮冷却システム。
【請求項2】
前記給蒸手段(11)は、蒸気生成用の水を貯留する給水タンク(18)を備え、
この給水タンク(18)は、複数の前記調理容器(3,3…)に共通して設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項3】
前記給蒸手段(11)は、一次ボイラからの蒸気を熱源として純水または軟水を加熱して清浄蒸気を生成する二次ボイラ(12)を備え、
この二次ボイラ(12)は、複数の前記調理容器(3,3…)に共通して設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項4】
前記給蒸手段(11)は、一次ボイラからの蒸気を熱源として純水または軟水を加熱して清浄蒸気を生成する二次ボイラ(12)と、そのための純水または軟水を貯留する給水タンク(18)とを備え、
前記給水タンク(18)は、複数の前記調理容器(3,3…)に共通して設けられており、
前記二次ボイラ(12)は、複数の前記調理容器(3,3…)それぞれに個別に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項5】
前記軟水を製造する軟水装置(17)が、複数の前記調理容器(3,3…)に共通して設けられている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項6】
複数の前記調理容器(3,3…)の内、食材の量に応じた数の調理容器(3)が使用され、
前記制御手段(40)は、その使用される調理容器(3)について制御する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項7】
前記複数の調理容器(3,3…)、前記給蒸手段(11)、前記減圧手段(22)、および前記復圧手段(31)を有し、前記各調理容器(3)において前記食材を前記給蒸手段(11)による加熱後、前記減圧手段(22)により第一設定温度まで真空冷却する一または複数の蒸煮冷却機(1)と、
この蒸煮冷却機(1)にて前記第一設定温度まで冷却された食材を、第二設定温度までさらに冷却する冷却装置(2)とを備え、
前記蒸煮冷却機(1)の前記調理容器(3)の稼動台数を調整する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蒸煮冷却システム。
【請求項8】
食材が収容される複数の調理容器(3,3…)と、
前記各調理容器(3)内へ蒸気供給する一または複数の給蒸手段(11)と、
一または複数の前記調理容器(3)ごとに、給蒸を可能に、前記給蒸手段(11)を制御する制御手段(40)と
を備えることを特徴とする蒸煮システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−181001(P2006−181001A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375958(P2004−375958)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】