説明

蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置

【課題】ツインエントリターボチャージャーの過渡性能を向上することのできる蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】複数の気筒を有するエンジン本体10と、ツインエントリターボチャージャー20と、エンジン本体からツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tに至る排気系部分を、排気行程の順番が連続しない気筒に連通する排気通路ごとにそれぞれ構成する第1及び第2の排気通路32A及び32Bと、ガスを蓄圧する蓄圧手段40と、第1及び第2の排気通路32A及び32Bのそれぞれと蓄圧手段40とを連通する配管44A及び44Bと、該配管を介して、第1及び第2の排気通路32A及び32Bのそれぞれに所定の位相差でもって蓄圧されたガスを供給可能な蓄圧アシスト制御手段60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインエントリ過給エンジンの制御装置、特に、タービンの上流に蓄圧されたガスを供給する蓄圧アシスト機構を備える蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボチャージャー等の過給器を備え出力トルクの向上を図るようにしたエンジンは広く知られている。また、かかるターボチャージャーにおいて、排気干渉を防止することで応答性を改善すべく、タービンハウジング内に隔壁を設けることによって独立した2つのスクロールを形成するようにした、いわゆるツインエントリターボチャージャーも知られている。そして、このようなツインエントリターボチャージャーでは、排気干渉を避けるべく、排気行程の順番が連続しない気筒の排気通路で構成される複数の排気グループが、それぞれ、互いに異なるスクロール部に各別に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、ターボチャージャーでは、特に、その加速初期におけるいわゆるターボラグを改善する目的で、タービンの上流に蓄圧された空気などを供給する蓄圧アシスト機構を設けるようにした提案が、種々、なされている。
【0004】
このうち、例えば、特許文献2には、排出管に排気ガスを排出するエンジンと、排気ガスが噴き付けられる排気タービンを備える過給器と、排気タービンに供給される補助空気が蓄圧される蓄圧タンクとを備えるエンジンにおいて、エンジンより排出される排気ガスを補助空気として蓄圧タンクに蓄圧するように排気ガスを排出管から取り出し、且つ、蓄圧タンクに蓄圧された補助空気を、排出管を介して排気タービンに供給するための開口が排出管における排気タービンよりも上流側に設けられた内燃機関用過給システムが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−170220号公報
【特許文献2】特開2008−2276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたような、排気行程の順番が連続しない気筒の排気通路で構成される複数の排気グループが、それぞれ、互いに異なるスクロール部に各別に接続されているツインエントリターボチャージャーに対し、いわゆるターボラグを改善する目的で、例えば、特許文献2に開示された内燃機関用過給システムを組み合わせることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述のツインエントリターボチャージャーにおいては、エンジン本体から排気タービンに至る部分が、排気行程の順番が連続しない気筒の排気通路で構成される排気グループ毎に別個に形成されているので、単に、排出管における排気タービンよりも上流側に補助空気を供給するのみでは、排気干渉を十分に回避するのが困難であり、ツインエントリターボチャージャーの過渡性能を十分に向上させることができず、さらなる検討を要するものであった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、かかる従来の問題を解消し、エンジン本体から排気タービンに至る部分が、排気行程の順番が連続しない気筒の排気通路で構成される排気グループ毎に別個に形成されているツインエントリターボチャージャーの過渡性能を十分に向上することのできる蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の一形態に係る蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置は、複数の気筒を有するエンジン本体と、ツインエントリターボチャージャーと、前記エンジン本体から前記ツインエントリターボチャージャーのタービンに至る排気系部分を、排気行程の順番が連続しない気筒に連通する排気通路ごとにそれぞれ構成する第1及び第2の排気通路と、ガスを蓄圧する蓄圧手段と、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれと前記蓄圧手段とを連通する配管と、該配管を介して、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれに所定の位相差でもって蓄圧されたガスを供給可能な蓄圧アシスト制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この一形態によれば、複数の気筒を有するエンジン本体からツインエントリターボチャージャーのタービンに至る排気系部分に、排気行程の順番が連続しない気筒に連通する排気通路ごとに第1及び第2の排気通路がそれぞれ構成される。そして、蓄圧手段に蓄圧されたガスは、蓄圧アシスト制御手段により第1及び第2の排気通路のそれぞれに所定の位相差でもって供給される。したがって、排気行程の順番が連続しない気筒に連通する排気通路ごとの第1及び第2の排気通路に所定の位相差でもって蓄圧されたガスが供給されるので、排気干渉を生ずることがないとともに、動圧過給効果を損なうことがなく、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を十分に向上させることができる。
【0011】
ここで、上記一形態の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置において、前記蓄圧アシスト制御手段は、前記第1の排気通路に連通された気筒及び前記第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁のほぼ開タイミングから所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしてもよい。
【0012】
この形態によれば、第1の排気通路に連通された気筒及び第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングに合わせて所定の位相角期間に亘りガスが供給されるので、それぞれの気筒から排出される排気ガスの圧力にアシストガス圧が重畳され、動圧過給の絶対値を上げることができる。この結果、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を十分に向上させることができる。
【0013】
また、上記一形態の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置において、前記蓄圧アシスト制御手段は、前記第1の排気通路に連通された気筒及び前記第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングのほぼ中間の位相角位置から所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしてもよい。
【0014】
この形態によれば、第1の排気通路に連通された気筒及び第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングのほぼ中間の位相角位置から所定の位相角期間に亘りガスが供給されるので、第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて、それぞれの気筒の排気行程の間で排気通路に排気ガスの排出がない期間の中程でガスが供給されることとなり、動圧過給の頻度を上げることができる。この結果、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を十分に向上させることができる。
【0015】
なお、前記配管は、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて各気筒の排気ポート又はその直下流に連通された構成とされてもよい。
【0016】
この構成によれば、各気筒の排気ポート又はその直下流にガスが供給されるので、各気筒の排気ポート又はその直下流において背圧が高まり、内部EGR量を増大させてNOxを低減させることができる。
【0017】
ここで、上記構成において、前記蓄圧アシスト制御手段は、前記各気筒の排気行程又は排気弁の開弁中においてガスを供給することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、排気弁が開いている排気行程において各気筒の排気ポート又はその直下流において背圧が高められるので、上述の効果に加えて、効率良く、内部EGR量を増大させNOxを低減させることができる。
【0019】
また、上記一形態の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置において、前記配管が、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて各気筒の排気ポート又はその直下流に連通されている第1の配管と、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて前記ツインエントリターボチャージャーのタービン入口又はその近傍に連通されている第2の配管とから構成され、前記蓄圧アシスト制御手段は、部分負荷運転時において前記第1の配管を介してガスを供給するとともに、加速要求時において前記第2の配管を介してガスを供給することを特徴とする。
【0020】
この形態によれば、部分負荷運転時においては各気筒の排気ポート又はその直下流に連通されている第1の配管を介してガスが供給され、加速要求時においてはツインエントリターボチャージャーのタービン入口又はその近傍に連通されている第2の配管を介してガスが供給される。したがって、部分負荷運転時においては各気筒の排気ポート又はその直下流における背圧を高め、内部EGR量を増大させてNOxを低減させることができるとともに、加速要求時においては排気干渉を生ずることや動圧過給効果を損なうことがなく、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本発明が適用された蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置の第1の実施形態の概要を示すシステム図であり、10は複数の気筒(本実施形態では、図1の上方から順に気筒番号を付して不図示の#1〜#4気筒の4つ)を有するエンジン本体である。
【0023】
このエンジン10の吸気系としては、上流端にエアクリーナ11が設けられた吸気通路12、この吸気通路12に連通された不図示のサージタンク、さらに吸気マニフォルド13を備え、この吸気マニフォルド13のそれぞれの枝管が吸気ポートに連通されている。そして、吸気マニフォルド13の上流の吸気通路12に吸気絞り弁14が設けられ、該吸気絞り弁14の上流の吸気通路12にはツインエントリターボチャージャー20のコンプレッサ20Cが配設されている。さらに、各気筒の吸気ポートの直上流には、不図示の燃料噴射弁が配設され、また、シリンダヘッドの気筒毎に不図示の点火プラグが配設されている。
【0024】
一方、エンジン10の排気系としては、#1〜#4気筒の排気ポートにそれぞれの枝管が連通する第1及び第2の排気マニフォルド31A及び31Bにより排気が合流され、第1及び第2の排気マニフォルド31A及び31Bにそれぞれ第1及び第2の排気通路32A及び32Bが接続されている。具体的に説明すると、本実施の形態では、エンジン10の排気行程が隣り合わず、点火順序が奇数番目の#1気筒、#4気筒の排気ポートにそれぞれの枝管が連通する第1の排気マニフォルド31Aが第1の排気通路32Aに接続され、点火順序が偶数番目の#2気筒、#3気筒の排気ポートにそれぞれの枝管が連通する第2の排気マニフォルド31Bが第2の排気通路32Bに接続されている。
【0025】
そして、第1及び第2の排気通路32A及び32Bの下流端は、ツインエントリターボチャージャー20のスクロール部の入口にそれぞれ接続されている。なお、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tにおいては、そのハウジング内に、タービン軸線とほぼ垂直な方向に広がる仕切壁が設けられ、この仕切壁によってスクロール部がタービン軸線方向に2分されている。したがって、このツインエントリターボチャージャー20ないしタービン20Tでは、排気干渉が起こるのが防止され、過給効率が高まることとなる。
【0026】
ここで、本明細書の説明において、一方のスクロール部に連通される第1の排気通路32Aに接続される第1の排気マニフォルド31A及び他方のスクロール部に連通される第2の排気通路32Bに接続される第2の排気マニフォルド31Bに関して、排気通路と排気マニフォルドとを特に区別する必要がないときは、第1の排気マニフォルド31A及び第2の排気マニフォルド31Bをそれぞれ包含して、第1の排気通路32A及び第2の排気通路32Bと称することとする。
【0027】
さらに、ツインエントリターボチャージャー20におけるスクロール部の下流端は1つの排気管33に接続され、この排気管33には排気絞り弁34及び三元触媒などを内蔵する触媒コンバータ35が配設されている。なお、36は排気マフラーである。
【0028】
ここで、排気絞り弁34は、本実施の形態では、タービン20Tの下流側で触媒コンバータ35の上流側に設けられているが、下流側に設けられてもよい。本実施の形態では、排気絞り弁34はバタフライ弁であり、例えば、電動モータであるアクチュエータ37により駆動される。排気絞り弁34は、その閉弁時には第1及び第2の排気通路32A及び32Bを流れる排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体を効果的にせき止め、排気絞り弁34よりも下流側へのそのような流体の流れを概ね遮断する遮断弁として機能する。なお、排気絞り弁34は、閉弁時に、排気通路の流路断面積を50%程度減少させるような構成を有する弁であってもよく、あるいは、閉弁時に、第1及び第2の排気通路32A及び32Bを完全に閉塞するような構成を有する弁であってもよい。
【0029】
ターボチャージャー20は、タービン20Tに導入する排気のエネルギーによりコンプレッサ20Cが回転駆動され、空気を吸入、加圧して過給するものであり、タービン20Tの入口ノズル部に流量可変機構としての不図示の可変ノズルを有していてもよい。この可変ノズルは、例えば直流モータ等の電動アクチュエータからなる不図示の可変ノズル作動用アクチュエータにより駆動されて、その「全閉」、「全開」およびそれらの間の中間位置をとる。なお、可変ノズルの「全閉」とは、可変ノズルを形成する可動ベーンにより、ノズルが最小流路面積に絞られた状態、可変ノズルの「全開」とは、同じく、ノズルが最大流路面積に開けられた状態を意味する。
【0030】
さらに、本実施の形態では、蓄圧アシスト機構の一部を構成する蓄圧タンク40は、その一端が、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bがそれぞれ介設された第1及び第2の入口通路42A及び42Bを介して、第1及び第2の排気マニフォルド31A及び31Bにそれぞれ接続されている。また、蓄圧タンク40の他端は、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bがそれぞれ介設された第1及び第2の出口通路44A及び44Bを介して、タービン20Tの上流側の第1及び第2の排気通路32A及び32Bにそれぞれ接続されている。なお、第1の蓄圧バルブ41A及び第2の蓄圧バルブ41B、第1のアシストバルブ43A及び第2のアシストバルブ43Bはともに、例えば、ポペット弁であり、電動モータや電磁アクチュエータからなる不図示のアクチュエータにより駆動される。
【0031】
ここで、第1及び第2の排気通路32A及び32Bの圧力(圧力エネルギー)は、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bが閉じられた状態で、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bを開くことにより、第1及び第2の入口通路42A及び42Bを介して、アシストガス(排気ガス又は空気)の移動を伴いつつ蓄圧タンク40内に回収される。他方、蓄圧タンク40内に蓄えられた圧力は、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bが閉じられた状態で第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bを開くことにより、第1及び第2の出口通路44A及び44Bを介して、第1及び第2の排気通路32A及び32Bにアシストガスが放出されて利用に供される。すなわち、本実施の形態では、蓄圧タンク40内への圧力回収及びそこからの圧力放出が、それぞれ、第1及び第2の入口通路42A及び42Bと、第1及び第2の出口通路44A及び44Bという別々の通路を介して行われる。しかし、例えば、第1の蓄圧バルブ41Aの代わりに第1のアシストバルブ43A、及び第2の蓄圧バルブ41Bの代わりに第2のアシストバルブ43Bを用いて、回収と放出とを同一のバルブにより行わせてもよい。
【0032】
また、エンジン10には、エンジン10の回転数を求めるためのクランク角センサ51、要求負荷を検出するためのアクセルペダルの踏み込み量に比例した信号を出力するアクセル開度センサ52が設けられている。さらに、エンジン10の冷却水温を検出する水温センサ53や過給圧を制御するのに用いられる吸気圧力センサ54、吸気絞り弁14の開度を検出するスロットル開度センサ55、蓄圧タンク40内の圧力を検出する蓄圧タンク圧力センサ56、第1及び第2の排気通路32A及び32Bの排気ガスすなわち燃焼ガスや空気である流体の背圧を検出するための第1及び第2の背圧センサ57A及び57B、及び吸入空気量を検出するためのエアフローメーター58などが設けられ、上述のセンサとともに、これらの各種センサの出力信号がCPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータや、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等で構成される電子式コントロールユニット(ECU)60に送られるようになっている。
【0033】
ECU60は、各センサから送られてきた出力値に応じて、燃料噴射量、点火時期、過給圧等を制御する。なお、燃料噴射量、点火時期、過給圧等の制御のために使用される制御値は、例えば縦軸にエンジンの負荷をとり、横軸にエンジン回転数をとったエンジン10の運転状態を表すマップに、エンジン10の要求特性等に合わせて実験的に求めた最適値が制御値として設定されており、これらのマップはECU60のテーブルに保存されている。
【0034】
ここで、上述の構成になる本発明の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置における、蓄圧タンク40内へ蓄圧するための圧力回収制御ルーチンの一例について、図2のフローチャートを参照して簡単に説明することにする。なお、この圧力回収制御ルーチンは所定周期(例えば、約20ms毎)で実行される。また、この場合、以下の説明から明らかになるように、蓄圧タンク40内に回収される排気ガスは概ね空気である。
【0035】
そこで、エンジン10が起動され制御が開始されると、まずECU60は、ステップS201において、回収フラグが「1」、すなわちONであるか否かを判定する。ここで、回収フラグが「1」とは、圧力回収が行われる所定条件が満たされていることを表す。これに対してそれが「0」ということは、圧力回収が行われる所定条件が満たされていないことを表す。制御開始の初期状態では同回収フラグはリセットされているため、ここでは否定判定される。なお、本実施形態において、圧力回収のための所定条件が満たされるとは、以下の記載から明らかなように、フュエルカットの実行中であること、および、蓄圧タンク40内の圧力が所定圧以下であることの2つが満たされることである。
【0036】
そこで、ステップS201で否定判定されると、次のステップS203で、フュエルカット(実行)中か否かが判定される。具体的には、フュエルカット中か否かは、燃料噴射量が「0」とされているか否かで判定される。そして、上記ステップS203でフュエルカット中であるとして肯定判定されると、次のステップS205に進み、蓄圧タンク40内の圧力が、蓄圧タンク40に許容される上限圧以下か否かが判定される。蓄圧タンク40内に十分な圧力の排気ガスが蓄えられているのに、さらに圧力回収が行われることを防ぐためである。蓄圧タンク40内の圧力は蓄圧タンク圧力センサ56からの出力信号に基づいて導出される。なお、上記ステップS203及びこのステップS205で否定判定されると、該ルーチンは一旦終了される。なお、上限圧としては、例えば、ゲージ圧で400kPaという値が設定されている。
【0037】
ここで、上述のフュエルカットにおいては、例えば、エンジン回転数が所定回転数(フュエルカット回転数)以上であり、且つ、アクセル開度が0%、すなわちアクセルペダルが踏まれていない車両の減速ないしは航続走行状態のときに、燃料噴射弁からの燃料噴射を停止(フュエルカット)するように設定されている。なお、このようなフュエルカット状態が続いて、エンジン回転数が低下して別の所定回転数(フュエルカット復帰回転数)に達すると、燃料噴射は再開される。また、このようにフュエルカット状態のときは、吸気絞り弁14が閉じ側に制御されるように、プラグラムは設定されているが、後述する圧力回収のときには、強制的に吸気絞り弁14は開状態になるように制御される。
【0038】
さらに、上記図2のフローチャートのステップS205で肯定判定されると、圧力回収の所定条件が満たされているとして、次のステップS207で、回収フラグが「1」にセットされる。これにより、エンジン10の通常の制御よりも、圧力回収用の制御が優先して行われることになる。そして、ステップS209に進み排気絞り弁34がアクチュエータ37に作動信号が出力されて閉弁制御され、また、次のステップS211で吸気絞り弁14が開弁制御される。なお、このように回収フラグが「1」の間は、吸気絞り弁14が開弁するように制御される。これは、吸入空気量を増大し、圧力回収用に排気ガスの圧力を高めるためである。
【0039】
そして、次のルーチンのステップS201では回収フラグが「1」であるので肯定判定され、次のステップS213で、再度、フュエルカット中か否かが判定される。ここで肯定判定されると次のステップS215に進み、再度、蓄圧タンク40内の圧力が上記上限圧以下か否か判定される。なお、ステップS213およびステップS215での判定が再度行われるのは、ステップS207で回収フラグが「1」にされた後に、圧力回収の所定条件が満たされなくなった場合に、圧力回収を終了させるためである。
【0040】
さて、ステップS215で肯定判定されると次のステップS217で、蓄圧タンク40内の圧力が、第1及び第2の排気通路32A及び32Bの圧力(背圧)以下か否かが判定される。このとき既に、排気絞り弁34が閉弁制御されているので、時間の経過につれて、排気絞り弁34によってせき止められた排気ガスの圧力(圧力エネルギー)は高くなる。そして、その圧力が回収可能な程度にまで高まっているかを調べるために、ステップS217での判定が行われる。ステップS217で否定判定される場合にはステップS219に進み、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bが閉弁ないしは閉弁状態に維持される。すなわち、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bが既に閉じられている場合には、その状態が維持されることを意味している。他方、ステップS217で肯定判定される場合にはステップS221に進み、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bが開弁制御される。これにより、第1及び第2の排気通路32A及び32Bの高められた圧力は、第1及び第2の入口通路42A及び42Bを介した排気ガスの移動を伴いつつ、蓄圧タンク40内に回収される。
【0041】
上述のように、高い圧力すなわち高い圧力エネルギーを有する排気ガス(ここでは主に空気)が回収されることで、蓄圧タンク40内の圧力は増す。こうした圧力回収は、上記ステップS213あるいはステップS215で否定判定されない限りは概ね続けて行われる。
【0042】
そして、上述の圧力回収中に、運転状態が変化したことなどに伴い、ステップS213あるいはステップS215で否定判定されるに至ると、圧力回収を終了させるための制御が行われる。すなわち、それらのいずれかで否定判定されるとステップS223に進み、第1及び第2の蓄圧バルブ41A及び41Bが閉弁制御されるとともに、排気絞り弁34が開弁制御される。そして、次のステップS225で回収フラグが「0」にリセットされる。この結果、エンジン10は圧力回収を行わない通常の制御状態に復帰され、吸気絞り弁14はエンジン運転状態に基づいて制御されるようになる。
【0043】
次に、第1の実施の形態における蓄圧アシスト制御ルーチンの一例について図3のフローチャートを参照して説明する。なお、この蓄圧アシスト制御ルーチンも所定周期(例えば、20ms毎)で実行される。
【0044】
そこで、制御がスターとすると、ステップS301において、アシストフラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、アシストフラグが「1」であるとは、ターボチャージャー20の作動をアシストする必要があることを表し、これに対してそれが「0」であるということは、そのような必要がないことを表わしている。初期状態ではアシストフラグは「0」にリセットされているので、ここでは否定判定される。
【0045】
ステップS301において否定判定されると、次のステップS303に進みエンジン回転数Neが所定回転数Net以下か否かが判定される。エンジン回転数Neが所定回転数Netより高いときには、ターボチャージャー20の作動に関してアシストの必要がないことから、ステップS303で否定判定されて、当該ルーチンは一旦終了される。他方、ステップS303でエンジン回転数Neが所定回転数Net以下であるとして肯定判定されると、ステップS305へ進む。
【0046】
そして、次のステップS305では、加速要求の有無が判定される。この加速要求の有無の判定は、本実施の形態では、アクセル開度Apに基づいて行われる。アクセル開度Apが所定値Apt以上であるか否かにより行われる。これは、アクセル開度Apが所定値Apt以上であるにもかかわらず、ステップS303の判定でエンジン回転数Neが所定回転数Net以下であることは、加速要求があるにもかかわらず、エンジン10の回転上昇が遅れていることを意味するからである。なお、この加速要求の有無は、ある開度を超えるとともに、単位時間当たりのアクセル開度Apの変化量、すなわちその開き速度(アクセル開度Ap開き速度)が所定速度を超えたときに加速要求有りと判定するようにしてもよい。
【0047】
上記ステップS303及びステップS305で肯定判定されると、次のステップS307において、アシストフラグが「1」にセットされ、本ルーチンは一旦終了される。そして、次のルーチンにおけるステップS301においてアシストフラグが「1」か否かが判定される。ここでは、肯定判定される結果、次のステップS309に進み、再度、エンジン回転数Neが所定回転数Net以下か否かが判定される。そして、エンジン回転数Neが所定回転数Net以下であるとして肯定判定されると、ステップS311へ進みアクセル開度Apが所定値Apt以上であるか否かにより、再度、加速要求の有無ないしは加速要求が継続しているが否かが判定される。
【0048】
そして、上記ステップS309及びステップS311で肯定判定されると、次のステップS313に進む。このステップS313では、ステップS309で用いたエンジン回転数Ne及びステップS311で用いたアクセル開度Apに基づいて目標過給圧Ptが算出される。この目標過給圧Ptに関しては、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Apをパラメータとして予め実験などにより求められた目標過給圧Ptの値が、ECU60に保管されているマップから読み出される。
【0049】
そして、次のステップS315において、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bが後述する所定の位相差をもって開閉制御されることによる作動アシストが開始される。作動アシストが開始されると、この作動アシストの終了時期を得るためにステップS317に進み、吸気圧センサ54で検出される実過給圧Paが上述の目標過給圧Ptと比較され、目標過給圧Ptに到達したか否かが判定される。そして、実過給圧Paが目標過給圧Ptに到達せず否定判定される限りにおいて、本ルーチンは一旦終了されて次のルーチンがスタートされる。なお、目標過給圧Ptに到達し肯定判定されると、後述するように、ステップS319に進むことになる。
【0050】
このステップS319においては、上述の第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bの開閉制御が終了される。換言すると、この第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bが全閉に閉制御される。なお、このステップS319に対しては、上述のステップS309及びステップS311において否定判定、換言すると、加速要求が継続していないと判定された場合も進み、同様に、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bが全閉に閉制御される。そして、その後、ステップS321に進みアシストフラグが「0」にリセットされる。
【0051】
ここで、上述のステップS315で実行される第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bの開閉制御による作動アシストについて、図4をも参照しつつ、より詳しく説明することとする。
【0052】
まず、この作動アシストの第1の形態は、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒及び第2の排気通路32Bに連通された#2、#3気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングから所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしている。すなわち、第1の排気通路32Aに対しては、#1気筒の排気弁の開タイミングと#4気筒の排気弁の開タイミングとに合わせて第1のアシストバルブ43Aが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、アシストガスが供給される。一方、第2の排気通路32Bに対しては、#3気筒の排気弁の開タイミングと#2気筒の排気弁の開タイミングとに合わせて第2のアシストバルブ43Bが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられてアシストガスが供給されるのである。
【0053】
ここで、図4は、エンジン10の点火順序が#1、#3、#4、#2である場合の、#3気筒及び#2気筒に連通された第2の排気通路32Bにおける背圧脈動の様子を示すグラフであり、本実施形態のツインエントリターボチャージャー20における背圧脈動の様子が太い実線で示されている(なお、細い実線は、排気マニフォルドが1つの排気通路に集合されるシングルエントリターボチャージャーにおける背圧脈動の様子を参考のために示している)。図4において、クランク角が−180°、0°、+180°及び+360°の位置は、それぞれ、#3気筒、#4気筒、#2気筒及び#1気筒の排気行程開始時期(下死点)を表している。なお、それぞれの気筒における排気弁の開タイミングは、図示からも明らかなように、排気行程開始時期よりも若干(例えば、45°)早い。但し、エンジンが排気弁の可変タイミング機構を備えている場合には、この排気弁の開タイミングは運転状態に応じて変更され、下死点前20°〜60°となり得る。また、本明細書において、排気弁の開タイミングとは、厳密に排気弁の開き始めそのものと厳密に解する必要はなく、この排気弁の開タイミングは、排気弁の開き始め付近という程度に幅をもって解してもよい。
【0054】
そこで、上述の作動アシストの第1の形態では、#3気筒及び#2気筒に連通された第2の排気通路32Bに関して、#3気筒における排気弁の開タイミング(−180°より若干早い)位置(図4においてT13O)、及び#2気筒における排気弁の開タイミング(+180°より若干早い)位置(図4においてT12O)で第2のアシストバルブ43Bが開かれ、それぞれの約90°クランク角の経過後(図4において、T13C及びT12C)に閉じられて、蓄圧タンク40からパルス的にアシストガスが供給されることになる。なお、図示はしないが、#1、#4気筒の場合も同様である。
【0055】
この作動アシストの第1の形態によれば、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒及び第2の排気通路32Bに連通された#3、#2気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングに合わせて所定の位相角期間(上述の例では約90°クランク角)に亘りアシストガスがパルス的に供給されるので、それぞれの気筒から排出される排気ガスの圧力にアシストガス圧が重畳され、動圧過給の絶対値を上げることができる。この結果、ツインエントリターボチャージャー20における過渡性能を向上させることができるのである。
【0056】
また、上述の作動アシストの第2の形態は、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒、及び、第2の排気通路32Bに連通された#2、#3気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングのほぼ中間の位相角位置から、所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしている。すなわち、第1の排気通路32Aに対しては、#1気筒の排気弁の開タイミングと#4気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置に合わせて第1のアシストバルブ43Aが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、蓄圧タンク40からパルス的にアシストガスが供給される。一方、第2の排気通路32Bに対しては、#3気筒の排気弁の開タイミングと#2気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置に合わせて第2のアシストバルブ43Bが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、蓄圧タンク40からパルス的にアシストガスが供給されるのである。
【0057】
そこで、上述の作動アシストの第1の形態の場合と同じように、#3気筒及び#2気筒に連通された第2の排気通路32Bに関して、背圧脈動の様子を示すグラフである図4とともに説明すると、作動アシストの第2の形態では、#3気筒及び#2気筒に連通された第2の排気通路32Bに関して、#3気筒の排気弁の開タイミングと#2気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置(図4においてT23O)、及び、#2気筒の排気弁の開タイミングと#3気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置(図4においてT22O)、換言すると、#3気筒及び#2気筒の排気弁の開タイミングから、180°クランク角遅らせた位相角位置に合わせて、第2のアシストバルブ43Bが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後(図4において、T23C及びT22C)に閉じられて、蓄圧タンク40からパルス的にアシストガスが供給されることになる。なお、図示はしないが、#1、#4気筒の場合も同様である。
【0058】
この作動アシストの第2の形態によれば、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒、及び、第2の排気通路32Bに連通された#3、#2気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングのほぼ中間の位相角位置(図4においてT23O及びT22O)から所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)に亘り、アシストガスがパルス的に供給されるので、第1及び第2の排気通路32B,32Bのそれぞれにおいて、それぞれの気筒の排気行程の間で、排気通路に排気ガスの排出がない期間の中程でガスが供給されることとなり、動圧過給の頻度を上げることができる。この結果、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を十分に向上させることができるのである。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を、図5を参照して説明する。上述の第1の実施形態においては、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bがそれぞれ設けられた、配管としての、第1及び第2の出口通路44A及び44Bが、第1及び第2の排気通路32A及び32Bのそれぞれにおいて、タービン20Tの近傍の上流に連通されていた。これに対し、第2の実施形態では、かかる第1及び第2の出口通路44A及び44Bの先端部がそれぞれさらに分岐され、各気筒の排気ポートの直下流に連通されている点のみが相違する。したがって、図5において、第1の実施形態と同一機能部位には図1で用いたのと同一の符号を付し、重複説明を避ける。
【0060】
より具体的に説明すると、第1の出口通路44Aは分岐路44A1及び44A4に分岐され、それぞれ、#1気筒及び#4気筒の排気ポートの直下流、すなわち、第1の排気通路32Aに接続されている第1の排気マニフォルド31Aの各枝管に、連通されている。また、第2の出口通路44Bは分岐路44B2及び44B3に分岐され、それぞれ、#2気筒及び#3気筒の排気ポートの直下流、すなわち、第2の排気通路32Bに接続されている第2の排気マニフォルド31Bの各枝管に、連通されている。なお、上述の各分岐路44A1、44B2、44B3、44A4は、その先端のノズルが通路内の流れを妨げるように、カーテン状にスプレーする形状を有することが好ましい。なお、上述の各分岐路44A1、44B2、44B3、44A4は、各気筒の排気ポートそのものに連通されてもよい。
【0061】
そして、この第2の実施の形態における蓄圧アシスト制御ルーチンは、前述の第1の実施の形態の場合と同様に行われてもよい。
【0062】
この第2の実施形態によれば、各気筒の排気ポートの直下流にカーテン状にスプレーする形状でガスが供給されるので、各気筒の排気ポート又はその直下流において通路内の流れが妨げられて背圧が高まり、内部EGR量を増大させてNOxを低減させることができる。
【0063】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を、図6及び図7を参照して説明する。この第3の実施形態は、概ね上述の第1及び第2の実施形態の構成要素を組み合わせたものであるから、図6において、第1及び第2の実施形態と同一機能部位には、図1及び図5で用いたのと同一の符号を付して重複説明を避け、その相違点について説明する。
【0064】
すなわち、図6において、第1の配管としての、先端部が分岐された分岐路44A1及び44A4と分岐路44B2及び44B3とをそれぞれ有する、第1及び第2の出口通路44A及び44Bに加え、第1及び第2の排気通路32A及び32Bのそれぞれにおいて、蓄圧タンク40からツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍に連通されている第2の配管としての、第3及び第4の出口通路44C及び44Dが設けられている。そして、これらの第3及び第4の出口通路44C及び44Dには、第3及び第4のアシストバルブ43C及び43Dがそれぞれ設けられている。なお、これらの第3及び第4のアシストバルブ43C及び43Dも、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bと同様に、例えば、ポペット弁であり、電動モータや電磁アクチュエータからなる不図示のアクチュエータにより駆動される。
【0065】
そこで、上記の構成を有する第3の実施の形態における蓄圧アシスト制御ルーチンの一例について、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、この蓄圧アシスト制御ルーチンも所定周期(例えば、20ms毎)で実行される。
【0066】
そこで、制御がスタートすると、ステップS701において、アシストフラグが「1」、すなわちONであるか否かが判定される。ここで、アシストフラグが「1」であるとは、前述の場合と同様に、ターボチャージャー20の作動をアシストする必要があることを表し、これに対して、それが「0」であるということは、そのような必要がないことを表わしている。エンジン始動時などの制御開始時の初期状態ではアシストフラグは「0」にリセットされているので、ここでは否定判定される。
【0067】
ステップS701において否定判定されると、次のステップS703に進みエンジン回転数Neが所定回転数Net以下か否かが判定される。エンジン回転数Neが所定回転数Netより高いときには、ターボチャージャー20の作動に関してアシストの必要がないことから、ステップS703で否定判定されて、当該ルーチンは一旦終了される。他方、ステップS703でエンジン回転数Neが所定回転数Net以下であるとして肯定判定されると、ステップS705へ進む。
【0068】
そして、次のステップS705では、蓄圧アシストを必要とする部分負荷運転時であるか否かが判定される。この部分負荷運転時であるか否かの判定は、前実施の形態と同様に、アクセル開度Apに基づいて行われる。すなわち、アクセルペダルが僅かに踏み込まれた状態に対応する、アクセル開度Apが第1の所定値Apt1以上であるか否かにより行われる。
【0069】
上記ステップS703及びステップS705で肯定判定されると、次のステップS707において、アシストフラグが「1」にセットされ、本ルーチンは一旦終了される。そして、次のルーチンにおけるステップS701において、アシストフラグが「1」か否かが判定される。ここでは、肯定判定される結果、次のステップS709に進み、再度、エンジン回転数Neが所定回転数Net以下か否かが判定される。そして、エンジン回転数Neが所定回転数Net以下であるとして肯定判定されると、ステップS711へ進みアクセル開度Apが第1の所定値Apt1以上であるか否かにより、再度、部分負荷運転が継続しているが否かが判定される。
【0070】
そして、上記ステップS709及びステップS711で肯定判定されると、次のステップS713に進む。このステップS713では、部分負荷運転中での加速要求の有無が判定される。すなわち、アクセル開度Apが第2の所定値Apt2を超えたか否かが判定される。この第2の所定値Apt2はアクセルペダルが大きく踏み込まれた状態に対応し、ステップS709の判定でエンジン回転数Neが所定回転数Net以下であり、アクセル開度Apが第2の所定値Apt2を超えることは、加速要求があることを意味するからである。
【0071】
そこで、このステップS713で、アクセル開度Apが第2の所定値Apt2を超えない、すなわち、否定判定されたときは、加速要求がなく部分負荷運転が継続しているとしてステップS715に進み、上記ステップS709及びステップS711で用いられたエンジン回転数Ne及びアクセル開度Apに基づき、アシストガス量Gtが決定される。このアシストガス量Gtに関しては、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Apをパラメータとして予め実験などにより求められたアシストガス量Gtの値が、ECU60に保管されているマップから読み出される。なお、この決定されたアシストガス量Gtを満たすように、圧力センサ56により検出される蓄圧タンク40内に蓄圧されているガスの圧力に基づいて、後述するように、アシストバルブの開弁期間tが、同じく、ECU60に保管されているマップから読み出される。
【0072】
そして、次のステップS717に進み、部分負荷時におけるアシストバルブの開閉制御が開始される。換言すると、第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bが後述する所定の位相差をもって開閉制御されることによる、部分負荷時の作動アシストが開始される。具体的には、第1の排気通路32Aに接続されている第1の排気マニフォルド31Aの各枝管にそれぞれ連通されている、第1の出口通路44Aの分岐路44A1及び44A4に、蓄圧タンク40から所定の位相差をもってガスがパルス的に供給される。すなわち、#1気筒の排気弁の開タイミングに合わせて第1のアシストバルブ43Aが開かれ、上記開弁期間t経過後に閉じられ、且つ、#4気筒の排気弁の開タイミングに合わせて同じく第1のアシストバルブ43Aが開かれ、上記開弁期間t経過後に閉じられて、アシストガスが供給される。一方、第2の排気通路32Bに接続されている第2の排気マニフォルド31Bの各枝管にそれぞれ連通されている、第2の出口通路44Bの分岐路44B2及び44B3にも、蓄圧タンク40から所定の位相差をもってガスが供給される。すなわち、#3気筒の排気弁の開タイミングに合わせて第2のアシストバルブ43Bが開かれ、上記開弁期間t経過後に閉じられ、且つ、#2気筒の排気弁の開タイミングに合わせて同じく第2のアシストバルブ43Bが開かれ、上記開弁期間t経過後に閉じられて、アシストガスがパルス的に供給されるのである。
【0073】
かくて、部分負荷運転時において、#1ないし#4気筒の各排気ポートの直下流に、それぞれの排気弁の開タイミングに合わせて、上述の各分岐路44A1、44B2、44B3、44A4の先端のノズルから、ガスがカーテン状にスプレーされる結果、各気筒の排気ポートにおける背圧が高められるので、内部EGR量が増大されてNOxが低減される。同時に、#1ないし#4気筒の各排気ポートの直下流に供給されたガスは、排気ガスのエネルギー(圧力及び/又は温度)を増大するように作用するので、下流に設けられているツインエントリターボチャージャー20の過給効果を高めることができる。このように、アシストガスをパルス的に供給することにより、蓄圧タンク40に蓄圧されているガスの消費量を極力低減することができる。
【0074】
また、上述のステップS713における加速要求の有無の判定で、アクセル開度Apが第2の所定値Apt2を超えた、すなわち、肯定判定されたときは、加速要求があったとしてステップS719に進み、ステップS709で用いたエンジン回転数Ne及びステップS711で用いたアクセル開度Apに基づいて目標過給圧Ptが算出される。この目標過給圧Ptに関しては、上述のように、エンジン回転数Ne及びアクセル開度Apをパラメータとして予め実験などにより求められた目標過給圧Ptの値が、ECU60に保管されているマップから読み出される。
【0075】
そして、次のステップS721において、第3及び第4のアシストバルブ43C及び43Dが後述する所定の位相差をもって開閉制御されることによる、加速要求時の作動アシストが開始される。なお、作動アシストが開始されると、この作動アシストの終了時期を得るためにステップS723に進み、吸気圧センサ54で検出される実過給圧Paが上述の目標過給圧Ptと比較され、目標過給圧Ptに到達したか否かが判定される。そして、実過給圧Paが目標過給圧Ptに到達せず否定判定される限りにおいて、本ルーチンは一旦終了されて次のルーチンがスタートされる。なお、目標過給圧Ptに到達し肯定判定されると、後述するように、ステップS725に進むことになる。
【0076】
ここで、上述のステップS721において、第3及び第4のアシストバルブ43C及び43Dの開閉制御による加速要求時の作動アシストについて説明する。この加速要求時の作動アシストに関して、前述の第1の実施形態の場合と同様に、第1又は第2の形態が可能である。
【0077】
すなわち、第1の形態では、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒及び第2の排気通路32Bに連通された#2、#3気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングから所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしている。具体的には、第1の排気通路32Aに対しては、#1気筒の排気弁の開タイミングと#4気筒の排気弁の開タイミングとに合わせて第4のアシストバルブ43Dが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にアシストガスが供給される。一方、第2の排気通路32Bに対しては、#3気筒の排気弁の開タイミングと#2気筒の排気弁の開タイミングとに合わせて第3のアシストバルブ43Cが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、同じく、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にアシストガスが供給されるのである。
【0078】
また、第2の形態では、第1の排気通路32Aに連通された#1、#4気筒及び第2の排気通路32Bに連通された#2、#3気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングのほぼ中間の位相角位置から所定の位相角期間に亘りガスを供給するようにしている。具体的には、第1の排気通路32Aに対しては、#1気筒の排気弁の開タイミングと#4気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置に合わせて第4のアシストバルブ43Dが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にアシストガスが供給される。一方、第2の排気通路32Bに対しては、#3気筒の排気弁の開タイミングと#2気筒の排気弁の開タイミングとの中間の位相角位置に合わせて第3のアシストバルブ43Cが開かれ、所定の位相角期間(例えば、約90°クランク角)経過後に閉じられて、同じく、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にアシストガスが供給されるのである。
【0079】
かくて、加速要求時においては、第1及び第2の排気通路32A及び32Bのそれぞれにおいて、ツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にそれぞれ連通されている第4及び第3の出口通路44D及び44Cを介して、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングに合わせた所定の位相差でもって蓄圧タンク40からガスが供給される。したがって、加速要求時において、排気干渉を生ずることや動圧過給効果を損なうことがなく、ツインエントリターボチャージャー20における過渡性能が向上される。
【0080】
ここで、再度、図7のフローチャートに戻って、上述のステップS721における、第3及び第4のアシストバルブ43C及び43Dの開閉制御による加速要求時の作動アシストの後のステップS723で、実過給圧Paが目標過給圧Ptに到達せず否定判定される限りにおいて、本ルーチンは一旦終了されて次のルーチンがスタートされる。
【0081】
一方、ステップS717での第1及び第2のアシストバルブ43A及び43Bの開閉制御による部分負荷時の作動アシストの継続中における、次のルーチンのステップS709又はステップS711において、エンジン回転数Neが所定回転数Net以下ではない、又は、アクセル開度Apが第1の所定値Apt1以下であるとのことにより、部分負荷運転は継続しておらず、加速要求もないと判定されると、ステップS725に進む。また、ステップS723で、実過給圧Paが目標過給圧Ptに到達したと肯定判定された場合もステップS725に進むことになる。
【0082】
このステップS725においては、上述の第1ないし第4のアシストバルブ43Aないし43Dの開閉制御が終了される。換言すると、この第1ないし第4のアシストバルブ43Aないし43Dが全閉に閉制御される。そして、その後、ステップS727に進みアシストフラグが「0」にリセットされる。
【0083】
したがって、本第3の実施形態によれば、部分負荷運転時においては#1ないし#4の各気筒の排気ポート又はその直下流に連通されている各分岐路44A1、44B2、44B3、44A4を介してガスが供給され、加速要求時においてはツインエントリターボチャージャー20のタービン20Tの入口又はその近傍にそれぞれ連通されている第4及び第3の出口通路44D及び44Cを介してガスが供給されるので、部分負荷運転時においては各気筒の排気ポート又はその直下流における背圧を高め、内部EGR量を増大させてNOxを低減させることができるとともに、加速要求時においては排気干渉を生ずることや動圧過給効果を損なうことがなく、ツインエントリターボチャージャーにおける過渡性能を向上させることができる。
【0084】
なお、上記においては、本発明をガソリンエンジンに適用した実施形態につき説明したが、本発明はこれに限られず、ディーゼルエンジンにも適用できることは言うまでもない。
【0085】
また、上記実施形態では、フュエルカット実行中に蓄圧タンクに回収された排気ガスすなわち空気をツインエントリターボチャージャーのタービンの上流に供給するようにしたが、蓄圧タンクに蓄えられるのは、このようなガスに限定されない。例えば、フュエルカット実行中以外のとき、例えば、排気ブレーキ時に排気通路から排気ガスの圧力エネルギーが蓄圧タンクに回収されて蓄えられ、それがツインエントリターボチャージャーに供給されてもよい。あるいは、別に設けたエアコンプレッサなどの駆動により加圧された大気を蓄圧タンクに蓄えるようにしてもよい。この場合、このエアコンプレッサは電動モータあるいはクランクシャフトの回転力を用いて駆動され得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明が適用された蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置の第1の実施形態の概要を示すシステム図である。
【図2】本発明の制御装置による圧力回収制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態による蓄圧アシスト制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】エンジンの点火順序が#1、#3、#4、#2である場合の#3気筒及び#2気筒に連通された第2の排気通路における背圧脈動の様子、及びアシストガス供給のタイミングを示すグラフである。
【図5】本発明が適用された蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置の第2の実施形態の概要を示すシステム図である。
【図6】本発明が適用された蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置の第3の実施形態の概要を示すシステム図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による蓄圧アシスト制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
10 エンジン
12 吸気通路
13 吸気マニフォルド
14 吸気絞り弁
20 ツインエントリターボチャージャー
20C コンプレッサ
20T タービン
31A 第1排気マニフォルド
31B 第2排気マニフォルド
32A 第1排気通路
32B 第2排気通路
34 排気絞り弁
40 蓄圧タンク
41A 第1蓄圧バルブ
41B 第2蓄圧バルブ
42A 第1入口通路
42B 第2入口通路
43A 第1アシストバルブ
43B 第2アシストバルブ
43C 第3アシストバルブ
43D 第4アシストバルブ
44A 第1出口通路
44B 第2出口通路
44C 第3出口通路
44D 第4出口通路
51 クランク角センサ
52 アクセル開度センサ
60 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するエンジン本体と、
ツインエントリターボチャージャーと、
前記エンジン本体から前記ツインエントリターボチャージャーのタービンに至る排気系部分を、排気行程の順番が連続しない気筒に連通する排気通路ごとにそれぞれ構成する第1及び第2の排気通路と、
ガスを蓄圧する蓄圧手段と、
前記第1及び第2の排気通路のそれぞれと前記蓄圧手段とを連通する配管と、
該配管を介して、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれに所定の位相差でもって蓄圧されたガスを供給可能な蓄圧アシスト制御手段と、
を備えることを特徴とする蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。
【請求項2】
前記蓄圧アシスト制御手段は、前記第1の排気通路に連通された気筒及び前記第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁のほぼ開タイミングから所定の位相角期間に亘りガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。
【請求項3】
前記蓄圧アシスト制御手段は、前記第1の排気通路に連通された気筒及び前記第2の排気通路に連通された気筒において、それぞれの気筒の排気弁の開タイミングの中間の位相角位置から所定の位相角期間に亘りガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。
【請求項4】
前記配管は、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて各気筒の排気ポート又はその直下流に連通されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。
【請求項5】
前記蓄圧アシスト制御手段は、前記各気筒の排気行程又は排気弁の開弁中においてガスを供給することを特徴とする請求項4に記載の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。
【請求項6】
前記配管が、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて各気筒の排気ポート又はその直下流に連通されている第1の配管と、前記第1及び第2の排気通路のそれぞれにおいて前記ツインエントリターボチャージャーのタービン入口又はその近傍に連通されている第2の配管とから構成され、
前記蓄圧アシスト制御手段は、部分負荷運転時において前記第1の配管を介してガスを供給するとともに、加速要求時において前記第2の配管を介してガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の蓄圧アシスト付ツインエントリ過給エンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−7603(P2010−7603A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169287(P2008−169287)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】