蓄電器
【課題】課題は、信頼性の高い蓄電器を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、金属容器に収納された発電要素体40を構成し、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体41の捲回中心部に、発電要素体40の熱膨張係数が電極捲回体41の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属容器の熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体41の熱膨張係数よりも大きい金属捲芯50を設けることにより、解決することができる。
【解決手段】上記課題は、金属容器に収納された発電要素体40を構成し、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体41の捲回中心部に、発電要素体40の熱膨張係数が電極捲回体41の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属容器の熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体41の熱膨張係数よりも大きい金属捲芯50を設けることにより、解決することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的エネルギーの蓄積及び放出が可能な蓄電器に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電器に関する背景技術としては、例えば特許文献1,2に開示された技術が知られている。特許文献1,2には、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した積層体を捲芯に捲回して電極捲回群(発電要素)を構成する技術が開示されている。捲芯は、銅或いはアルミニウム若しくはそれらを主材とする合金材などの金属材料、又はポリピレン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミド,ポリフェニレンサルファイトなどの樹脂材料により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−156240号公報
【特許文献2】特開2007−311274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電器は、電極捲回群が電気化学的反応によって発熱する。また、蓄電器は、複数の構成部品の多くが金属部材から構成されている。このようなことから、蓄電器では、発熱によって各構成部品が熱膨張する。ここで、各構成部品は異なる熱膨張係数を有する。このため、蓄電器では、各構成部品の熱膨張係数の差に応じた熱応力が構成部品間、例えば接合部分に作用する。しかも、熱応力は各構成部品の熱膨張係数の差が大きければ大きいほど大きくなる。一方、蓄電器には高い信頼性が要求される。このような要求に応えるためには、各構成部品の熱膨張係数の差に応じて作用する熱応力を小さく抑えることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の代表的な発明の一つは、信頼性の高い蓄電器を提供する。
【0006】
ここに、本願の代表的な発明の一つは、金属収容体に収納され、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体の捲回中心部に、蓄電要素体の熱膨張係数が電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属収納体の熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような特徴を有する本願の代表的な発明の一つでは、例えば、金属収納体の熱膨張係数と蓄電要素体の熱膨張係数との差を小さくすることができるので、蓄電要素体と金属収納体との間の熱膨張係数の差に応じて、蓄電要素体と金属収納体との間の各部位に作用する熱応力を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本願の代表的な発明の一つによれば、信頼性の高い蓄電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(実施形態1)プラグインハイブリッド自動車の駆動システムの構成を示すブロック図。
【図2】(実施形態1)図1の電池モジュールの構成を示す斜視面。
【図3】(実施形態1)図2の扁平角型電池セルの構成を示す部分切欠き斜視図。
【図4】(実施形態1)図3の電極捲回体の構成を示す斜視図。
【図5】(実施形態1)図4の電極捲回体を電極捲芯に捲回した状態と集電部構成を示す側面図。
【図6】(実施形態1)図5の電極捲芯の構成を示す上面図。
【図7】(実施形態1)図6の電極捲芯の構成を示す側面図。
【図8】(実施形態1)図6の電極捲芯の構成を示す正面図。
【図9】(実施形態1)図6の電極捲芯のA−A′矢視断面を示す断面図。
【図10】(実施形態2)電極捲芯の構成を示す上面図。
【図11】(実施形態2)図10の電極捲芯の構成を示す側面図。
【図12】(実施形態3)扁平角型電池セルの構成を示す斜視図。
【図13】(実施形態3)図12の扁平角型電池セルの内部構成の一部分を示す部分断面図。
【図14】(実施形態4)円筒型電池セルの構成を示す断面図。
【図15】(実施形態4)図14の電極捲芯の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
以下に説明する実施形態では、本願の発明を、移動体の電源システム、例えばプラグインハイブリッド自動車に搭載された電源システムを構成するバッテリ装置(蓄電装置)の二次電池セル(蓄電器)に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0012】
バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、プラグインハイブリッド自動車を電動力(回転動力)によって駆動する場合に直流電力として放電される。放電された直流電力は、インバータ装置(電力変換装置)によって位相制御された所定の交流電力に変換された後、車両の力行時にモータとして機能してプラグインハイブリッド自動車駆動用電動力を発生するモータジェネレータ(回転電機)に供給される。バッテリ装置への電気エネルギーの充電は、車両の減速時の回生によって得られた交流電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から得られた交流電力によって行われる。回生電力は、車両側から供給された動力によってモータジェネレータが発電機として駆動されることにより得られた交流電力であり、インバータ装置によって電圧が制御された所定の直流電力に変換された後、バッテリ装置に供給されて充電される。
【0013】
また、バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、内燃機関であるエンジンを始動する場合、ラジオなどのカーオーディオ,カーナビゲーション装置,ライトなどの電装品を駆動する場合に直流電力として使用される場合もある。この場合、バッテリ装置から放電された直流電力は、電力変換装置によって、位相制御された所定の交流電力に変換されたり、電圧が制御(昇降圧)された所定の直流電力に変換されたりした後、各電気負荷や他の蓄電装置に供給される。バッテリ装置への電気エネルギーの充電は、家庭電源である商用電源から取り込んだ単相交流電力,電気ステーションや商業施設に設けられた電気スタンドを介して購入した単相或いは三相交流電力によって行われる。この場合、商用電源や電気スタンドの外部電源から供給された単相或いは三相交流電力は、プラグインハイブリッド自動車に搭載された充電器によって電圧が制御された所定の直流電力に変換された後、バッテリ装置に供給されて充電される。
【0014】
以下に説明する実施形態の構成は、商用電源や電気スタンドなどの外部電源から供給された交流電力をバッテリ装置に充電するための充電器を持たない(車両の減速時の回生によって得られた電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から得られた電力により充電する)ハイブリッド自動車,車両の駆動源として内燃機関を持たない(電動力を発生するモータを車両の唯一の駆動源とする)純粋な電気自動車などの乗用車,電動バイク,電動自転車などの二輪車,ハイブリッド電車などの鉄道車両,ハイブリッドトラックなどの貨物自動車,ハイブリッドバスなどの乗合自動車,建設機械やフォークリフトトラックなどの産業用車両,電動福祉機器など、他の移動体の電源システムを構成するバッテリ装置の二次電池セルにも適用できる。
【0015】
それらの移動体には、バッテリ装置を電源として電動力を発生するモータ(移動体側から動力の供給を受けて電力を発生する場合にはジェネレータを兼ねる)と、バッテリ装置とモータとの間の電力を制御するインバータ装置とが搭載されている。また、原動機によって駆動されて電力を発生する発電機を備え、バッテリ装置を充電する場合もある。
【0016】
また、以下に説明する実施形態の構成は、無停電用電源(バックアップ用電源)や、風力発電,太陽光発電,分散型電力貯蔵システムなどの電源を構成するバッテリ装置(据え置き型)の二次電池セルにも適用できる。
【0017】
バッテリ装置を構成する二次電池セルとしてはリチウムイオン電池セルを例に挙げて説明する。
【0018】
以下に説明する実施形態の構成は、鉛電池,ニッケル水素電池,電気二重層キャパシタ,ハイブリッドキャパシタなど、他の二次電池や他の蓄電器にも適用できる。
【0019】
二次電池セルは、発電(蓄電)要素体を金属ケース内に収納した蓄電器であり、発電要素体の電気化学的反応によって電気エネルギーを充放電する。
【0020】
発電要素体は、正極活物質を塗布した正極集電箔(例えばアルミニウム或いはそれを主材とする合金)と、セパレータと、負極活物質を塗布した負極集電箔(例えば銅或いはそれを主材とする合金)との積層体を捲回して構成した電極捲回体を、主要な構成要素として備えている。正極集電箔及び負極集電箔は電極捲回体に占める割合が正極活物質及び負極活物質などの他の部材に比べて非常に大きい。このようなことから、発電要素体は、複数の金属部材が一塊まりになった金属体として考えるということができる。
【0021】
金属ケースには外部導体接続導体(例えば端子)が固定されている。外部導体接続導体は電極捲回体に対して直接、接合されることにより、電極捲回体と電気的に接続されている。或いは外部導体接続導体と電極捲回体の両者が内部接続導体に接合されることにより、電極捲回体と電気的に接続されている。
【0022】
電極捲回体は電気化学反応によって発熱する。このため、発電要素体はその発熱によって熱膨張する。また、その発熱によって金属ケースなども熱膨張する。このとき、電極捲回体,外部導体接続導体,内部接続導体,電極捲回体と外部導体接続導体との接合部,電極捲回体又は外部導体接続導体と内部接続導体との接合部などには、発電要素体の熱膨張係数と金属ケースの熱膨張係数との差に起因する熱応力が作用する。熱応力は、両者の熱膨張係数の差が大きければ大きいほど大きくなる。
【0023】
一方、二次電池セル、特にリチウムイオン電池セルには高い信頼性が要求される。このような要求に応えるためには、電極捲回体の発熱によって、電極捲回体,外部導体接続導体,内部接続導体,電極捲回体と外部導体接続導体との接合部,電極捲回体又は外部導体接続導体と内部接続導体との接合部などに作用する熱応力を小さく抑えることが好ましい。
【0024】
そこで、以下に説明する実施形態では、金属ケースに収納され、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体を有する発電要素体の捲回中心部に、発電要素体の熱膨張係数が電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属ケースの熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を設けている。金属部材の熱膨張係数としては、例えば金属ケースの熱膨張係数と電極捲回体の熱膨張係数との間の中間値に設定する。
【0025】
このように、以下に説明する実施形態では、熱膨張係数が金属ケースの熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を電極捲回体の捲回中心部に設けているので、発電要素体の熱膨張係数を電極捲回体側の熱膨張係数から金属ケース側の熱膨張係数に近づけて、金属ケースの熱膨張係数と発電要素体の熱膨張係数との差を小さくすることができ、発電要素体と金属ケースとの間の熱膨張係数の差に応じて、発電要素体と金属ケースとの間の各部位に作用する熱応力を小さく抑えることができる。従って、以下に説明する実施形態では、熱応力によって正極集電箔,負極集電箔,正極活物質及び負極活物質などに生じる損傷を抑えることができる。それ故、以下に説明する実施形態では、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、以下に説明する実施形態では、上述のように、正極集電箔,負極集電箔,正極活物質及び負極活物質などにおいて、熱応力によって生じる損傷を抑えることができるので、二次電池セルの長寿命化を図ることができる。
【0027】
金属部材は、少なくとも、正極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作した第1金属片と、負極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作した第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成している。第1金属片としては、例えば電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有するアルミニウム又はアルミニウムを主材とする合金を用いている。第2金属片としては、例えば電極捲回体の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する銅又は銅を主材とする合金を用いている。
【0028】
このように、正極金属箔及び負極金属箔に用いられる金属材料を用いて金属部材を構成すると、正極と負極との間を電気的に導通させる電解質として、金属ケース内に注液された電解液(リチウムイオンを含む非水系有機溶媒)に対する耐腐食性を確保することができ、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、金属部材は電極捲回体の金属捲芯を兼ねている。
【0030】
さらに、金属部材は、平板状の連結体であり、電極捲回体の捲回中心部に配置され、積層体が捲回された捲回部と、この捲回部の一つの端部に形成され、正極金属箔の正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、捲回部の正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、負極金属箔の負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部とを具備している。
【0031】
金属ケースが扁平角型形状のものである場合には、第1及び第2金属片を平板状部材によって形成する。第1及び第2金属片のそれぞれには、互いに係合可能な係合部が設けられている。そして、第1及び第2金属片は、電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結される。
【0032】
金属ケースが円筒形状のものである場合には、第1及び第2金属片を円柱状部材によって形成する。第1及び第2金属片のそれぞれには、端部にネジ部が形成されている。そして、第1及び第2金属片は、それぞれのネジ部が、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結されることにより、電気的に絶縁した状態で連結される。
【0033】
さらに、以下に説明する実施形態では、正極集電部及び負極集電部を、電極捲回体に対する捲回体部の配置位置を捲回体部の平面に垂直な方向における高さ基準位置としたとき、未塗布部分接合部位の高さ位置が、高さ基準位置に対して一方側にずれた高さ位置になるように、捲回部に設けると共に、正極側の未塗布部分に、正極集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位を正極集電部に対する接合部位として接合し、負極側の未塗布部に、負極集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位を負極集電部に対する接合部位として接合している。
【0034】
このように、金属部材の捲回部を凹ました段差形状とし、集電部に対する金属箔の未塗布部分の接合を、集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位にて行うと、金属箔の未塗布部分の曲げ変形を小さくし、金属箔の未塗布部分に発生する歪を小さくすることができるので、各金属箔の未塗布部分の接合部位の信頼性を向上させ、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0035】
以下、図面を用いて、各実施形態を具体的に説明する。
【0036】
〔実施形態1〕
第1実施形態を図1乃至図9に基づいて説明する。
【0037】
まず、図1を用いて、バッテリ装置100を含むプラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成について説明する。
【0038】
図1は、プラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成及びその一部を構成する電動駆動装置の各コンポーネントの電気的な接続構成を示す。
【0039】
尚、図1において、太い実線は強電系を示し、細い実線は弱電系を示す。
【0040】
プラグインハイブリッド自動車(以下、「PHEV」と記述する)1はパラレルハイブリッド方式の駆動システムを備えている。
【0041】
パラレルハイブリッド方式の駆動システムは、内燃機関であるエンジン4とモータジェネレータ200とを駆動輪2に対してエネルギーの流れ的に並列に配置(構造的には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4とモータジェネレータ200とを機械的に直列に接続)し、エンジン4の回転動力による駆動輪2の駆動,モータジェネレータ200の回転動力による駆動輪2の駆動、及びエンジン4とモータジェネレータ200の両方の回転動力による駆動輪2の駆動ができるように構成されている。すなわちパラレルハイブリッド方式の駆動システムは、エンジン4を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源として用いられるエンジン駆動装置と、モータジェネレータ200を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源及びPHEV1の電力発生源として用いられる電動駆動装置とを備えている。
【0042】
ハイブリッド方式としては、内燃機関であるエンジンの回転動力を用いて発電機を駆動し、この駆動によって発生した電力を用いてモータジェネレータを駆動し、この駆動によって発生した回転動力を用いて駆動輪を駆動する、いわゆるエンジンから駆動輪までのエネルギーの流れがシリーズであるシリーズハイブリッド方式がある。また、ハイブリッド方式としては、上記パラレルハイブリッド方式と上記シリーズハイブリッド方式とを組み合わせたシリーズ・パラレルハイブリッド方式(エンジンの回転動力の一部を発電用モータジェネレータに分配して発電させ、これにより得られた電力により駆動用モータジェネレータを駆動できるように、遊星歯車機構などの動力伝達機構を用いてエンジンと2つのモータジェネレータとを機械的に接続した方式)がある。本実施形態では、パラレルハイブリッド方式の駆動システムを例に挙げて説明するが、以下において説明する本実施形態のバッテリ装置100は、前述した他のハイブリッド方式の駆動システムのバッテリ装置に適用しても構わない。
【0043】
図示省略した車体のフロント部或いはリア部には車軸3が回転可能に軸支されている。車軸3の両端には一対の駆動輪2が設けられている。図示省略したが、車体のリア部或いはフロント部には、両端に一対の従動輪が設けられた車軸が回転可能に軸支されている。PHEV1では、駆動輪2を前輪とし、従動輪を後輪とした前輪駆動方式を採用している。駆動方式としては後輪駆動方式や4輪駆動方式(前後輪の一方をエンジン駆動装置により駆動し、他方を電動駆動装置により駆動する方式)を採用しても構わない。
【0044】
車軸3の中央部にはデファレンシャルギア(以下、「DEF」と記述する)7が設けられている。車軸3はDEF7の出力側に機械的に接続されている。DEF7の入力側には変速機6の出力軸が機械的に接続されている。DEF7は、変速機6によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の車軸3に分配する差動式動力分配機構である。変速機6の入力側にはモータジェネレータ200の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ200の入力側には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4の出力側が機械的に接続されている。クラッチ5は、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達する場合には締結状態になり、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達しない場合には切離し状態になるように制御される。
【0045】
尚、モータジェネレータ200及びクラッチ5は、変速機6の筐体の内部に収納されている。
【0046】
モータジェネレータ200は、電機子巻線211を備えた電機子(本実施形態では固定子)210と、電機子210に空隙を介して対向配置され、永久磁石221を備えた界磁(本実施形態では回転子)220を有する回転電機であり、力行時にはモータとして、発電時(回生時)にはジェネレータとして、それぞれ機能する。
【0047】
本実施形態では、モータジェネレータ200として、三相交流同期機(永久磁石界磁型)を用いた場合を例に挙げて説明するが、他の三相交流同期機(巻線界磁型)や三相交流誘導機(界磁鉄心に短絡された導体バーが装着された界磁を用いたもの)を用いても構わない。
【0048】
モータジェネレータ200がモータとして機能する場合、すなわちPHEV1の力行時やエンジン4を始動する時など、回転動力が必要な運転モードにある場合には、バッテリ装置100に蓄積された電気エネルギーがインバータ装置300を介して電機子巻線211に供給される。これにより、モータジェネレータ200は電機子210と界磁220との間の磁気的作用により回転動力(機械エネルギー)を発生し、その回転動力を出力する。モータジェネレータ200から出力された回転動力は、PHEV1の力行時には、変速機6及びDEF7を介して車軸3に伝達され、駆動輪2を駆動し、エンジン4の始動時には、クラッチ5を介してエンジン4に伝達され、エンジン4を駆動する。
【0049】
モータジェネレータ200がジェネレータとして機能する場合、すなわちPHEV1の減速時や制動時などの回生時及びPHEV1の走行中にバッテリ装置100の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードにある場合には、駆動輪2或いはエンジン4から伝達された機械エネルギー(回転動力)がモータジェネレータ200に伝達され、モータジェネレータ200が駆動される。このように、モータジェネレータ200が駆動されると、電機子巻線211には電機子210と界磁220との間の磁気的作用により電圧が誘起される。これにより、モータジェネレータ200は電力を発生し、その電力を出力する。モータジェネレータ200から出力された電力はインバータ装置300を介してバッテリ装置100に供給される。これにより、バッテリ装置100は充電される。
【0050】
モータジェネレータ200の駆動は、電機子210とバッテリ装置100との間の電力がインバータ装置300によって制御されることにより制御される。すなわちインバータ装置300はモータジェネレータ200の制御装置である。インバータ装置300は、スイッチング半導体素子のスイッチング動作によって電力を直流から交流に、交流から直流に変換する電力変換装置であり、パワーモジュール310,パワーモジュール310に実装されたスイッチング半導体素子を駆動する駆動回路330,パワーモジュール310の直流側に電気的に並列に接続され、直流電圧を平滑する電解コンデンサ320、及びパワーモジュール310のスイッチング半導体素子のスイッチング指令を生成し、このスイッチング指令に対応する信号を駆動回路330に出力するモータ制御装置340を備えている。
【0051】
パワーモジュール310は、二つの(上アーム及び下アームの)スイッチング半導体素子を電気的に直列に接続し直列回路(一相分のアーム)が三相分、電気的に並列に接続(三相ブリッジ接続)されて電力変換回路が構成されるように、六つのスイッチング半導体素子を基板上に実装し、アルミワイヤなどの接続導体によって電気的に接続した構造体である。
【0052】
スイッチング半導体素子としては金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)或いは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。ここで、電力変換回路をMOSFETによって構成する場合、ドレイン電極とソース電極との間には寄生ダイオードが存在するので、別途、それらの間にダイオード素子を実装する必要がない。一方、電力変換回路をIGBTによって構成する場合、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはダイオード素子が存在していないので、別途、それらの間にダイオード素子を電気的に逆並列に接続する必要がある。
【0053】
各上アームの下アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、コレクタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の正極側に電気的に接続されている。各下アームの上アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、エミッタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の負極側に電気的に接続されている。各アームの中点、すなわち上アームの下アーム接続側(IGBTの場合、上アームのエミッタ電極側)と下アームの上アーム接続側(IGBTの場合、下アームのコレクタ電極側)との接続点はパワーモジュール310の交流側から外部に導出され、電機子巻線211の対応する相の巻線に電気的に接続されている。
【0054】
電解コンデンサ320は、スイッチング半導体素子の高速スイッチング動作に起因して生じる電圧変動を抑制する平滑用コンデンサである。平滑用コンデンサとしては電解コンデンサ320の代わりにフィルムコンデンサを用いてもよい。
【0055】
モータ制御装置340は、車両全体の制御を司る車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路330に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310とは熱的に隔絶されたインバータ筐体内に配置されている。
【0056】
駆動回路330は、モータ制御装置340から出力されたスイッチング指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成し、六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310の近傍、例えばパワーモジュール310のケース上部に配置されている。
【0057】
車両制御装置8は、運転者からのトルク要求,車両の速度など、車両の運転状態を示す複数の状態パラメータに基づいて、モータ制御装置340に対するモータトルク指令信号及びエンジン制御装置(図示省略)に対するエンジントルク指令信号をそれぞれ生成し、それぞれトルク指令信号を、対応する制御装置に出力する。
【0058】
尚、エンジン制御装置は、エンジン4のコンポーネントである空気絞り弁,燃料噴射弁,吸排気弁などの駆動を制御する電子機器であり、車両制御装置8の出力信号から取得したエンジントルク指令信号に基づいて各コンポーネントの駆動指令信号を生成し、各駆動指令信号を各コンポーネントの駆動回路に出力する。
【0059】
バッテリ装置100は、モータジェネレータ200の駆動用電源を構成する、公称出力電圧200ボルト以上の高電圧で、これまでのハイブリッド自動車用駆動バッテリよりも出力密度及びエネルギー密度が高い蓄電装置であり、ジャンクションボックス400を介してインバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。バッテリ装置100としてはリチウムイオンバッテリ装置を用いている。
【0060】
バッテリ装置100は、インバータ装置300及び充電器500によって充放電される蓄電装置であり、主要部として電池モジュール110及び制御装置を備えている。
【0061】
電池モジュール110及び制御装置は、センサ,冷却装置(例えば冷却媒体として空気を電池モジュール110に送風する冷却ファン),リレーなどを含む他の構成部品と共に1つの電源筐体内に収納されている。電源筐体は、車室内の座席の下或いはトランクルーム若しくは床下などに設置される。電源筐体には、インバータ装置300及び充電器500など、バッテリ装置100と同様の高電圧電気機器を一緒に収納してもよい。この収納方式によれば、高電圧ケーブルの這い回しが容易になると共に、配線距離の短縮によってインダクタンスを低減し、電気的な損失を低減できる。
【0062】
電池モジュール110は電気エネルギーの貯蔵庫であり、インバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。
【0063】
電池モジュール110は、電気エネルギーの蓄積及び放出(直流電力の充放電)が可能な複数のリチウムイオン電池セル10(以下、単に「電池セル10」と記述する)を備えている。複数の電池セル10は、収納ケース(モジュールケース)の内部に配置されて電気的に直列に接続されている。これにより、電池モジュール110には一つの組電池が構成される。電池セル10は電池モジュール110における最小の構成単位であり、単電池と呼ばれる場合もある。電池セル10としては、公称出力電圧が3.0〜4.2ボルト(平均公称出力電圧が3.6ボルト)のものを用いた場合を例に挙げて説明するが、これ以外の電圧仕様のものを用いても構わない。
【0064】
複数の電池セル10は、その状態管理上及び制御上、所定の単位数により区分されて複数の電池群に分けられている。別な言い方をすれば、所定の数の電池セル10が電気的に直列に接続されて一つの電池群が構成され、その電池群が複数、電気的に直列に接続されて組電池が構成されている。所定の単位数としては、例えば4個,6個,10個,12個…というように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって等区分とする。また、所定の単位数としては、4個と6個との組み合わせ…と言うように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって複合区分とする場合もある。
【0065】
PHEV1においては、実際には100本前後〜200本前後の電池セル10が搭載され、電気的に直列或いは直並列に接続される。
【0066】
電池モジュール110の正極側とインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側との間の充放電路には、電池モジュール110からインバータ装置300(パワーモジュール310)に供給される電流、或いはインバータ装置300(パワーモジュール310)から電池モジュール110に供給される電流を検出するための電流計測手段(電流センサ又は電流計測回路)が電気的に直列に接続されている。電池モジュール110の両極間(正極側と負極側との間)には、電池モジュール110の両極間電圧を検出するための電圧計測手段(電圧センサ又は電圧計測回路)が電気的に並列に接続されている。電池モジュール110の内部には、複数の温度計測手段(サーミスタ或いは熱電対などのセンサ又は温度計測回路)が設けられている。
【0067】
制御装置は、複数の電子回路部品から構成された電子制御装置であり、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、インバータ装置300及び充電器500に許容充放電量を提供して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する。
【0068】
制御装置は、機能上、2つの階層に分かれて構成されており、バッテリ装置100内において上位(親)に相当するバッテリ制御装置130と、バッテリ制御装置130に対して下位(子)に相当するセル制御装置120とを備えている。
【0069】
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120を構成する電子回路部品はそれぞれ、独立した回路基板に実装されている。セル制御装置120を構成する電子回路部品が実装された回路基板は、セル制御装置120の機能上、電池モジュール110の内部に配置されている。バッテリ制御装置130を構成する電子回路部品が実装された回路基板は別途、制御装置用ケースの内部に収納され、電池モジュール110の近傍に配置されている。バッテリ制御装置130及びセル制御装置120を構成する電子回路部品を共通の一つの回路基板により構成する場合には、その回路基板を制御装置用ケースの内部に収納し、そのケースを電池モジュール110の近傍に配置する。
【0070】
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、信号伝送回路によってお互いに信号の授受ができるようになっているが、電気的には絶縁されている。これは、お互いの動作電源が異なり、お互いに基準電位が異なるためである。すなわちセル制御装置120は、シャーシグランドから浮動状態にある電池モジュール110を電源とし、バッテリ制御装置130は、シャーシグランドを基準電位とする車載補機用低圧バッテリ(例えば14ボルト系バッテリ)を電源としているためである。このため、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120の間を結ぶ信号伝送路上にはフォトカプラ,容量性結合素子,変圧器などの絶縁140が設けられている。これにより、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、お互いに基準電位の異なる信号を用いて信号伝送ができる。絶縁140は、セル制御装置120を構成する電子回路部品が実装された回路基板に実装されている。
【0071】
信号伝送回路は、少なくとも2つの異なる使われ方をするシリアル通信用の信号伝送回路から構成されている。本実施形態では、信号伝送回路として、LIN(Local Interconnect Network)と呼ばれる、CAN(Controller Area Network)に準拠する通信規格を採用した信号伝送回路を用いている。信号伝送回路は、バッテリ制御装置130から出力された通信コマンド信号、すなわち通信(制御)内容を示すデータ領域など、複数の領域が設けられた複数バイトの信号を伝送する。
【0072】
バッテリ制御装置130から信号伝送回路を介して出力される通信コマンド信号には、電池セルの検出された端子電圧の送信を要求するための指令信号,電池セルの充電状態の調整を実行させるための指令信号,セル制御装置120を起動させるための指令信号,セル制御装置120の動作を停止させるための指令信号,セル制御装置120から通知された異常の内容を確認するための指令信号などが含まれている。
【0073】
セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された指令信号に基づいてバッテリ制御装置130の手足となって動作し、複数の電池セル10のそれぞれの状態を管理及び制御する。このため、セル制御装置120は、複数の電池セル10の両端子(正極側端子及び負極側端子)に電圧検出用配線を介して電気的に接続されており、複数の電池セル10のそれぞれの端子間電圧を検出している。
【0074】
また、セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された、充電状態の調整に関する指令信号に基づいて、複数の電池セル10のうち、充電状態の調整が必要な電池セル10について充電状態を調整している。このため、複数の電池セル10のそれぞれの端子間にはバイパス回路が電気的に並列に接続されている。バイパス回路は、抵抗とスイッチング半導体素子とを電気的に直列に接続した直列回路により構成されている。電池セル10について充電状態はセル制御装置120がバイパス回路のスイッチング半導体素子のオンオフを制御することにより調整することができる。
【0075】
バッテリ制御装置130は、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、車両制御装置8又はモータ制御装置340に許容充放電量を通知して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する電子制御装置であって、マイクロコンピュータやディジタルシグナルプロセッサなどの演算処理装置により構成されており、記憶装置など含む他の電子回路部品と共に回路基板に実装されている。
【0076】
バッテリ制御装置130には、前述した電流計測手段,電圧計測手段及び温度計測手段から出力された計測信号,セル制御装置120から出力された、複数の電池セルの端子間電圧に関する検出信号,セル制御装置120から出力された異常信号,イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号を含む複数の信号が入力されている。イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる、バッテリ制御装置130,車両制御装置8,モータ制御装置340などの自動車内の複数の制御装置の間を接続してお互いの情報を送受信するための信号伝送回路を介してバッテリ制御装置130に入力されている。
【0077】
バッテリ制御装置130は、それらの入力信号から得られた情報、予め設定された、電池セルの特性情報及び演算に必要な演算情報を含む複数の情報に基づいて、電池モジュール110の状態(例えば電池モジュール110の充電状態「以下、SOC(State Of Charge)と記述する」及び劣化状態「以下、SOH(State Of Health)と記述する」などを検知するための演算,電池モジュール110を制御するための演算、及び電池モジュール110の充放電量を制御するための演算を含む複数の演算を実行する。そして、バッテリ制御装置130は、それらの演算結果に基づいて、セル制御装置120に対する指令信号,電池モジュール110の充放電量を制御するための許容充放電量に関する信号,電池モジュール110のSOCに関する信号、及び電池モジュール110のSOHに関する信号を含む複数の信号を生成して出力する。
【0078】
それらの出力信号のうち、許容充放量(許容充放電電流又は許容充放電電力)に関する信号,SOCに関する信号,SOHに関する信号、及び異常状態通知に関する信号を含む複数の出力信号は、上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340に対して、車内ローカルエリアネットワークを介して出力される。
【0079】
モータ制御装置340は、バッテリ制御装置130から出力された許容充放電量に関する信号、及び車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、或いはバッテリ制御装置130から出力された許容充放電量を考慮して車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、パワーモジュール310におけるスイッチングを制御する。これにより、インバータ装置300は、許容充放電量の範囲内で、トルク指令信号に基づく交流電力をモータジェネレータ200に供給できるように、或いはトルク指令信号に基づいてモータジェネレータ200から得られた交流電力を直流電力に変換して供給できるように、電池モジュール110を充放電させる。すなわちバッテリ制御装置130によるインバータ装置300の制御によって電池モジュール110の充放電が制御される。
【0080】
バッテリ制御装置130はリーク検出装置を備えている。リーク検出装置は、電池モジュール110からモータジェネレータ200までの強電系と、弱電系の基準電位となるシャーシグランドとの間に、それらの間の電気的な接続によってリークが生じているか否かを検出する。
【0081】
バッテリ装置100には、バッテリ装置100よりも電圧の低いバッテリ(図示省略)が電気的に接続されている。低圧バッテリは、ライトやオーディオなどの車載補機及び電子制御装置などの動作電源である、公称出力電圧12ボルトの鉛電池であり、図示省略したDC−DCコンバータを介してバッテリ装置100に電気的に接続されている。DC−DCコンバータは、直流電力を、所定の電圧に昇降圧された直流電力に変換するための電力変換装置である。
【0082】
家庭の商用電源560或いは電気スタンドの給電装置からバッテリ装置100を充電するプラグインモードの場合、充電器500の外部電源接続端子に電気的に接続された電源ケーブルの先端の電源プラグ550を商用電源560側のコンセント570に差し込み或いは電気スタンドの給電装置から延びる電源ケーブルを充電器500の外部電源接続端子に接続し、充電器500と商用電源560或いは電気スタンドの給電装置とを電気的に接続する。これにより、単相或いは三相の交流電力が商用電源560或いは電気スタンドの給電装置から充電器500に供給される。充電器500は、供給された交流電力を直流電力に変換し、かつバッテリ装置100の充電電圧に調整した後、バッテリ装置100に供給する。これにより、バッテリ装置100は充電される。
【0083】
尚、本実施形態では、家庭の商用電源560と充電器500とを電気的に接続し、バッテリ装置100を充電する場合を例に挙げて説明するが、電気スタンドの給電装置からの充電も基本的には家庭の商用電源560からの充電と同じように行われる。但し、家庭の商用電源560からの充電と電気スタンドの給電装置からの充電とでは、充電器500に供給される電流容量及び充電時間が異なり、電気スタンドの給電装置からの充電の方が、家庭の商用電源560からの充電よりも電流容量が大きく、かつ充電時間が速い、すなわち急速充電ができる。
【0084】
充電器500は、家庭の商用電源560から供給された交流電力を直流電力に変換すると共に、この変換された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧に昇圧してバッテリ装置100に供給する電力変換装置であり、交直変換回路510,昇圧回路520,駆動回路530及び充電制御装置540を主な構成機器として備えている。
【0085】
交直変換回路510は、外部電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換回路であり、例えば複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、外部電源から供給された交流電力を直流電力に整流するために設けられた整流回路、及び整流回路の直流側に電気的に接続され、整流回路の出力の力率を改善するために設けられた力率改善回路を備えている。交流電力を直流電力に変換する回路としては、ダイオード素子が逆並列に接続された複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成された回路を用いても構わない。
【0086】
昇圧回路520は、交直変換回路510(力率改善回路)から出力された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧まで昇圧するための電力変換回路であり、例えば絶縁型のDC−DCコンバータにより構成されている。絶縁型のDC−DCコンバータは、変圧器,変圧器の一次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成され、交直変換回路510から出力された直流電力を交流電力に変換して変圧器の一次側巻線に入力する変換回路,変圧器の二次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、変圧器の二次側巻線に発生した交流電力を直流電力に整流する整流回路,整流回路の出力側(直流側)の正極側に電気的に直列に接続された平滑リアクトル,整流回路の出力側(直流側)の正負極間に電気的に並列に接続された平滑コンデンサから構成されている。
【0087】
充電制御装置540は、充電器500によるバッテリ装置100の充電終始や、充電時に充電器500からバッテリ装置100に供給される電力,電圧,電流などを制御するために、車両制御装置8から出力された信号や、バッテリ装置100の制御装置から出力された信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路530に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0088】
車両制御装置8は、例えば充電器500の入力側の電圧を監視し、充電器500と外部電源の両者が電気的に接続されて充電器500の入力側に電圧が印加され、充電開始状態になったと判断した場合には、充電を開始するための指令信号を、バッテリ装置100の制御装置から出力されたバッテリ状態信号に基づいてバッテリ装置100が満充電状態になったと判断した場合には、充電を終了するための指令信号を、それぞれ充電制御装置540に出力する。このような動作は、モータ制御装置340或いはバッテリ装置100の制御装置が行ってもよいし、バッテリ装置100の制御装置と協調して充電制御装置540が自ら行ってもよい。
【0089】
バッテリ装置100の制御装置は、充電器500からバッテリ装置100に対する充電が制御されるように、バッテリ装置100の状態を検知してバッテリ装置100の許容充電量を演算し、この演算結果に関する信号を充電器500に出力する。
【0090】
駆動回路530は、充電制御装置540から出力されたトルク指令信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対する駆動信号を発生し、複数のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0091】
尚、交直変換回路510がスイッチング半導体素子によって構成されている場合には、充電制御装置540から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号が駆動回路530に出力され、駆動回路530から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対する駆動信号が交直変換回路510のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力され、交直変換回路510のスイッチング半導体素子のスイッチングが制御される。
【0092】
ジャンクションボックス410の内部には第1及び第2正極側リレー410,430及び第1及び第2負極側リレー420,440が収納されている。
【0093】
第1正極側リレー410はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第1負極側リレー420はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2正極側リレー430は充電器500(昇圧回路520)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2負極側リレー440は充電器500(昇圧回路500)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。
【0094】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420は、モータジェネレータ200の回転動力が必要な運転モードにある場合及びモータジェネレータ200の発電が必要な運転モードにある場合に投入され、車両が停止モードにある場合(イグニションキースイッチが開放された場合)、電動駆動装置或いは車両に異常が発生した場合及び充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に開放される。一方、第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440は、充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に投入され、充電器500によるバッテリ装置100の充電が終了した場合及び充電器500或いはバッテリ装置100に異常が発生した場合に開放される。
【0095】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、車両制御装置8から出力される開閉指令信号によって制御される。第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、他の制御装置、例えばモータ制御装置340或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、充電制御装置540から出力される開閉指令信号によって制御される。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、他の制御装置、例えば車両制御装置8或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。
【0096】
以上のように、本実施形態では、バッテリ装置100とインバータ装置300と充電器500との間に第1正極側リレー410,第1負極側リレー420,第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440を設けて、それらの間の電気的な接続を制御するようにしているので、高電圧である電動駆動装置に対する高い安全性を確保できる。
【0097】
次に、図2乃至図9を用いて、電池セル10及び複数の電池セル10を備えた電池モジュール110の構成について説明する。
【0098】
図2は電池モジュール110の外観構成を示す。図3は電池セル10の外観及び内部の構成を示す。図4は電極捲回体41(金属捲芯50を省略)の外観構成を示す。図5は、金属捲芯50に対する電極捲回体41の捲回状態及び集電部の構成を示す。図6乃至図9は金属捲芯50の外観構成を示す。
【0099】
本実施形態では、12個の電池セル10を用いて一つの組電池を構成した電池モジュール110を例に挙げて説明する。
【0100】
まず、電池セル10の構成について説明する。
【0101】
図3に示すように、電池セル10は角型電池セルであり、密閉された扁平直方体形状の電槽20を備えている。電槽20は、対向配置された、最も面積が大きい矩形状の2つの主面(例えば上面と下面)と、この2つの主面の4辺(4縁)に沿って2つの主面に垂直に設けられ、主面よりも面積が小さい矩形状の4つの副面(対向配置された2組の側面)とを備えると共に、2つの主面の間の長さが主面の4辺の長さよりも短い6面体(短角柱)であり、2つの構成要素によって構成されている。2つの構成要素の一方は、2つの主面及び3つの副面を備え、残りの1つの副面に対応する部分が開口した扁平直方体形状の容器体である電池缶21である。2つの構成要素の他方は、電池缶21の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶21の開口部の輪郭に合致するように形成された矩形状の平板である電池蓋22である。電池缶21と電池蓋22の両者はレーザビーム溶接によって接合されている。電槽20(電池缶21及び電池蓋22)は金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0102】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、電池セル10の搭載方向に関係なく、扁平直方体形状の容器体である電池缶21の開口部側とは反対側の面を底面、この底面の4辺に沿って底面に垂直に設けられた4面のうち、底面の長辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第1側面、底面の短辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第2側面と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0103】
また、本実施形態では、説明の便宜上、平行に対向配置された2つの長辺、この長辺に直交すると共に、並行に対向配置され、長辺よりも長さが短い2つの短辺により形成される矩形平面形状を備えた構成要素において、長辺と同じ方向に延びる(短辺が対向する)方向を長手方向,短辺と同じ方向に延びる(長辺が対向する)方向を短手方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0104】
電池蓋22には、その外表面から外に向かって突出するように、外部導体と接続するための外部導体接続導体である正極外部端子30及び負極外部端子31が設けられている。正極外部端子30は電池蓋22の長手方向一方側端部に配置され、負極外部端子31は電池蓋22の長手方向他方側端部に配置されている。電池蓋22と正極側外部端子30との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための正極シール材32が設けられている。電池蓋22と負極側外部端子31との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための負極シール材33が設けられている。電槽20の内部において、正極外部端子30には、内部接続導体である正極接続板(図示省略)が、正極シール材32によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。電槽20の内部において、負極外部端子31には、内部接続導体である負極接続板34が、負極シール材33によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。このように、正極外部端子30及び負極外部端子31と電槽20との間が電気的に絶縁されているので、電槽20は電気的に中立状態、すなわち電位を持たない状態になっている。
【0105】
正極外部端子30は円柱形状の金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。負極外部端子31は円柱形状の金属製部材であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。正極シール材32及び負極シール材33は、電気的な絶縁性を有する樹脂製部材であり、その材質としてポリフェニレンサルファイド(PPS)或いはポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)を用いている。負極接続板34は、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。正極接続板は負極接続板34と同じ形状のものであって、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0106】
電槽20(電池缶21)の内部には発電要素体40が収容されている。発電要素体40は、電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入される。電槽20(電池缶21)の内部には、電池蓋22に設けられた注液孔70を介して電解液が注入されている。注液孔70は、電池蓋22をその外表面から内表面に貫通した貫通孔であり、電槽20の内部に電解液を注入した後、レーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
【0107】
電解液としては、例えばエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1:1の混合溶液中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lとなるように溶解した非水系の有機溶媒を用いている。
【0108】
尚、電解質としては、LiClO4,LiAsF6,LiBF4,LiB(C6H5)4,CH3SO3Li,CF3SOLiなどやこれらの混合物を用いてもよい。また、非水電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン,γ−ブチルラクトン,テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン,ジエチルエーテル,スルホラン,メチルスルホラン,アセトニトリル,プロピオニトリル,プロピオニトリルなど、少なくとも1種以上の混合溶媒を用いてもよい。
【0109】
発電要素体40には正極接続板及び負極接続板34が機械的かつ電気的に接続されている。これにより、正極外部端子30及び負極外部端子31が発電要素体40と電気的に接続されると共に、発電要素体40が電池蓋22によって機械的に支持される。すなわち電池缶11の内部において発電要素体40は電池蓋22にぶら下がった状態にある。電池蓋22,正極外部端子30及び負極外部端子31,正極シール材32及び負極シール材33,正極接続板及び負極接続板34は予め機械的に一体化されて、電池蓋アセンブリとして組み立てられる。発電要素体40は電池蓋アセンブリの正極接続板及び負極接続板34に予め機械的に接続されて、発電要素アセンブリとして組み立てられた後、電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入されて電池缶21の内部に収容される。
【0110】
図4,図5に示すように、発電要素体40は、後述する金属捲芯50と、セパレータ44,負極板43,セパレータ44,正極板42をその順に積層したシート状の積層体を金属捲芯50の周りに扁平形状に捲回した電極捲回体41とを備えている。
【0111】
尚、図4では金属捲芯50の図示を省略している。図5ではセパレータ44の図示を省略している。
【0112】
また、本実施形態では、説明の便宜上、電極捲回体41の捲回方向を電極捲回方向、電極捲回体41の扁平捲回面上において電極捲回方向に直交する方向を電極幅方向、電極捲回体41の扁平捲回面を垂直に貫く方向を電極扁平方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0113】
さらに、本実施形態では、説明の便宜上、電極板の電極捲回方向と同じ方向を極板捲回方向、電極板の電極幅方向と同じ方向を極板幅方向、電極板の電極扁平方向と同じ方向を極板垂直方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0114】
正極板42は、極板幅方向一端部に、正極活物質合剤を塗布しない未塗工部45が設けられるように、正極集電箔上に正極活物質合剤を塗布して構成している。正極集電箔は、例えば厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔(アルミニウム板)である。正極活物質合剤は、正極活物質として量論組成のマンガン酸リチウム(化学式LiMnO2)100重量部に対し、導電材として10重量部の鱗片状黒鉛,結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を添加,混練したものであり、アルミニウム箔(アルミニウム板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
【0115】
負極板43は、極板幅方向他端部に、負極活物質合剤を塗布しない未塗工部46が設けられるように、負極集電箔上に負極活物質合剤を塗布して構成している。負極集電箔は、例えば厚さ10μmの帯状の銅箔(銅板)である。負極活物質合剤は、負極活物質として非晶質炭素粉末100重量部に対して、結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルビロリドン(NMP)を添加、混練したものであり、銅箔(銅板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
【0116】
尚、正極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムイオンを挿入したリチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶中のリチウムや遷移金属の一部をそれら以外の元素で置換あるいはドープした材料などを用いてもよい。例えばスピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウム(例えば、Li1+xMn2−xO4),マンガン酸リチウムの一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物(例えば、Li1+xMyMn2−x−yO4,MはCo,Ni,Fe,Cu,Al,Cr,Mg,Zn,V,Ga,B,Fの少なくとも1種),層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、これらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム−金属複合酸化物などがある。また、結晶構造については、スピネル系,層状系,オリビン系のいずれの結晶構造を有していてもよい。
【0117】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを脱挿入可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材,コークスなどの炭素質材料などを用いてもよい。また、粒子形状としては、鱗片状,球状,繊維状,塊などを用いてもよい。
【0118】
さらに、結着材(バインダ)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリスチレン,ポリブタジエン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレン/ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ニトロセルロース,シアノエチルセルロース,各種ラテックス,アクリロニトリル,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,フッ化プロピレン,フッ化クロロプレン,アクリル系樹脂などの重合体及びこれらの混合体などを用いてもよい。
【0119】
セパレータ44は、正極板42及び負極板43が直接接触しないようにするための微多孔性部材であり、例えば厚さ30μmのポリエチレン製の帯状部材である。セパレータ44は極板幅方向寸法が正極板42及び負極板43の極板幅方向寸法よりも小さい。
【0120】
電極捲回体41において、正極板42の未塗工部45と負極板43の未塗工部46は互いに反対側に位置している。すなわち電極捲回体41の電極幅方向一方側に正極板42の未塗工部45が配置され、その他方側に負極板43の未塗工部46が配置されるように、正極板42と負極板43とを電極捲回体41の電極幅方向において相反する方向にずらして積層している。このような構成によれば、電極捲回体41の本体部分(正極板42及び負極板43の活物質合剤塗工部位とセパレータ44との積層部分)から、後述する集電箔となる未塗工部45,46がはみ出す(露出する)ように、電極捲回体41を形成することができる。
【0121】
図6乃至図9に示すように、金属捲芯50は、2つの金属片を連結(結合)部材により連結(結合)させた連結(結合)体、かつ矩形状の平板をその長手方向中央から長手方向両側に所定距離(等距離)進んだ部分を直角(平板に対して垂直な方向)に折り曲げて窪ませた或いは突出させた、断面が矩形波(パルス波)形状の成型体であり、捲回部51,正極集電部52及び負極集電部53の3つの要素から構成されている。
【0122】
捲回部51は、金属捲芯50の長手方向中央部に位置すると共に、電極捲回体41の捲回中心部に配置されて、電極捲回体41の本体部分が捲回された矩形状の平板部分である。捲回部51の長手方向の長さは電極捲回体41の本体部分(正極板42及び負極板43の活物質合剤塗工部位とセパレータ44との積層部分)の電極幅方向の長さよりも長い。これは、未塗工部45,46を正極集電部52及び負極集電部53に集積して固定したとき、未塗工部45,46に生じる変形部分(電極幅方向の長さ)を考慮しているためである。捲回部51の長手方向は電極幅方向と同じ方向になる。捲回部51の短手方向は電極捲回方向と同じ方向になる。
【0123】
正極集電部52は、捲回部51の長手方向一方側端部に位置して、捲回部51の長手方向一方側端部から連続して延びて形成された、断面がL字状の部分であり、捲回部51を水平方向に対して平行に配置としたとき、捲回部51の長手方向一方側端部から垂直方向一方側に直角に折れ曲がって延び、この後、水平方向で捲回部51から遠ざかる方向に直角に折れ曲がって延びるように形成されている。すなわち正極集電部52は、捲回部51の平面に対して垂直な垂直面部52aと、捲回部51の平面に対して平行な水平面部52bとを備えている。水平面部52bは、後述するように、正極板42の未塗工部45の接合部として機能する。
【0124】
負極集電部53は、正極集電部52と対をなすように正極集電部52と同じ形状にて構成された部位、すなわち捲回部51の長手方向他方側端部に位置して、捲回部51の長手方向他方側端部から連続して延びて形成された、断面がL字状の部分であり、捲回部51を水平方向に対して平行に配置としたとき、捲回部51の長手方向他方側端部から垂直方向一方側に直角に折れ曲がって延び、この後、水平方向で捲回部51から遠ざかる方向に直角に折れ曲がって延びるように形成されている。すなわち負極集電部53はそれぞれ、捲回部51の平面に対して垂直な垂直面部53aと、捲回部51の平面に対して平行な水平面部53bとを備えている。水平面部53bは、後述するように、負極板43の未塗工部46の接合部として機能する。
【0125】
垂直面部52a,53a及び水平面部52b,53bは矩形状の平板であり、それぞれの長手方向が捲回部51の短手方向と同じ方向になるように、かつ短手方向が捲回部51の長手方向と同じ方向になるように配置されている。また、垂直面部52a,53a及び水平面部52b,53bは、それぞれの長手方向の長さが捲回部51の短手方向の長さよりも短く、短手方向の長さが捲回部51の長手方向の長さよりも短い。さらに、水平面部52b,53bの高さ(捲回部51の平面に垂直な方向における水平面部52b,53bと捲回部51との平面間距離)は、電極捲回体41の捲回中心から電極捲回体41の外周表面までの厚さの約1/2に設定されている。
【0126】
捲回部51の長手方向中間位置よりも負極集電部52寄りの位置には異種金属の境界部位56がある。この境界部位56を境界として捲回部51の長手方向一方側(正極集電部51側)及び正極集電部51は、アルミニウム製或いはアルミニウムを主材とする合金製の第1金属片54から形成されている。また、その境界部位56を境界として捲回部51の長手方向他方側(負極集電部52側)及び負極集電部52は、銅製或いは銅を主材とする合金製の第2金属片55から形成されている。第1金属片54及び第2金属片55は板厚が例えば1.5mm程度の薄肉板である。
【0127】
境界部位56では、同一平面上において、第1金属片54の第2金属片55側端部と第2金属片55の第1金属片54側端部とが隙間を介して対向している。境界部位56には第1金属片54と第2金属片との係合部が形成されている。第2金属片55の第1金属片54側端部は縁の形状が略J字状になるように形成されている。第1金属片54の第2金属片55側端部は縁の形状が、上下左右に反転した略J字状になるように形成されている。このように形成された第1金属片54及び第2金属片55の端部同士は、お互いに入り組むように隙間を介して係合されている。
【0128】
具体的に説明すると、第1金属片54の第2金属片55側端部は、捲回部51の短手方向一方側端部から中央部にかけて、捲回部51の長手方向に2段階の長さで矩形状に連続して切欠かれている。第2金属片55の第1金属片54側端部は、捲回部51の短手方向他方側端部から中央部にかけて、捲回部51の長手方向に2段階の長さで矩形状に連続して切欠かれている。第1金属片54の2段階の切欠き部分は第2金属片55寄りの第1切欠き部における捲回部51の短手方向の長さがもう一方の第2切欠き部における捲回部51の短手方向の長さよりも短い。第2金属片55の2段階の切欠き部分は第1金属片54寄りの第1切欠き部における捲回部51の短手方向の長さがもう一方の第2切欠き部における捲回部51の短手方向の長さよりも短い。これにより、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位が、第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位よりも捲回部51の短手方向一方側に突出した形状になる。第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位が、第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位よりも捲回部51の短手方向他方側に突出した形状になる。
【0129】
このような形状によれば、第1金属片54と第2金属片55とを係合したとき、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位が、第2金属片55の第2切欠き部によって第1切欠き部よりも余計に切欠かれた部位(窪み部位)に、第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位が、第1金属片54の第2切欠き部によって第1切欠き部よりも余計に切欠かれた部位(窪み部位)に、それぞれ係合し、お互いの第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位同士が、捲回部51の長手方向の配置位置が入れ替わった状態で捲回部51の短手方向にオーバーラップし、捲回部51の長手方向に対向するようになる。
【0130】
尚、第1金属片54の第1切欠き部と第2金属片55の第1切欠き部、第1金属片54の第2切欠き部と第2金属片55の第2切欠き部、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位と第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位、第1金属片54の第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位と第2金属片55の第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位は、それぞれ、捲回部51の長手方向及び短手方向の長さが等しい。
【0131】
捲回部51(第1金属片54及び第2金属片55)の短手方向両端部には、板厚がその他の部位よりも薄くなるように切削加工された連結(結合)部57が形成されている。連結部57は捲回部51の長手方向一方側端部から他方側端部にわたって形成されており、連結(結合)部材58によってその外側全体が覆われている。これにより、第1金属片54及び第2金属片55は連結(結合)される。連結部材58は第1金属片54と第2金属片55との間の隙間にも挿入されている。連結部材58は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の樹脂部材であり、第1金属片54と第2金属片55とを連結する役目の他に、第1金属片54と第2金属片55との間の隙間において第1金属片54と第2金属片55との間を電気的に絶縁する役目も担っている。
【0132】
連結部57における連結部材58の外側は半円状に面取りされている。これは、金属捲芯50に対して電極捲回体41を捲回するとき、金属捲芯50の角部によって電極捲回体41が損傷することを防止するためである。連結部57における連結部材58の直径は捲回部51の板厚とほぼ同じである。このようにすれば、損傷につながる余分な変形を電極捲回体41に与えることなく、電極捲回体41を金属捲芯50に捲回することができる。
【0133】
金属捲芯50は、電極捲回体41を捲回するときの軸芯としての機能を担う他に、発電要素体40の線膨張係数(物質固有の指数であり、温度1℃の上昇によって物質の長さが変化(増加)するときの割合を表した熱膨張係数の一つ)を調整するための機能を担っている。このため、金属捲芯50は線膨張係数が所定の値に設定されている。本実施形態では、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数(23.0〜23.5×10-6/℃)と銅の線膨張係数(16.5〜16.8×10-6/℃)との中間の値(19.8〜20.2×10-6/℃)に設定している。
【0134】
尚、熱膨張係数としては、体積の変化割合を示す体膨張係数があり、線膨張係数を3倍することにより換算できる。
【0135】
金属捲芯50の線膨張係数の設定は、捲回部51の長手方向における第1金属片54及び第2金属片55の占める割合、すなわち第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位と第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位との境界中央から捲回部51の長手方向一方側端部までの長さ(a)と、その境界中央から捲回部51の長手方向他方側端部までの長さ(b)との比率(a:b)を変えることにより調整することができる。本実施形態では、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定するために、aの値をbの値よりも大きく、すなわちアルミニウムを主材とする第1金属片54の捲回部51に占める割合を、銅を主材とする第2金属片55の捲回部51に占める割合よりも大きくしている。
【0136】
電池セル10を構成する金属製部品は、アルミニウムを主材とする金属部品と、銅を主材とする金属部品と、アルミニウムと銅とが混在した金属部品とに分けられる。それらの線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品、例えば電槽20,正極外部端子30,正極接続板(図示省略)が最も大きく、銅を主材とする金属部品、例えば負極外部端子31,負極接続板34が最も小さい。アルミニウムと銅とが混在した金属部品、例えば発電要素体40,電極捲回体41,金属捲芯50の線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との間にある。
【0137】
ここで、電極捲回体41の線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値よりも、銅を主材とする金属部品の線膨張係数に近い値にあり、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数との差が大きい。捲芯を使用しないなどの場合には、電極捲回体41の線膨張係数が発電要素体40の線膨張係数となり、実施形態の説明の冒頭に述べた課題が生じる。
【0138】
そこで、本実施形態では、前述のように、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値とし、この金属捲芯50に電極捲回体41を捲回している。これにより、本実施形態では、発電要素体40の線膨張係数を電極捲回体41の線膨張係数よりも大きく(金属捲芯50の線膨張係数と電極捲回体41の線膨張係数との間に設定)し、アルミニウムを主材とする金属部品、例えば電槽20との線膨張係数との差を小さくしている。
【0139】
以上のように、発電要素体40の線膨張係数を金属捲芯50によって調整してなる本実施形態によれば、線膨張係数が電極捲回体41の線膨張係数と電槽20の線膨張係数との間に位置する金属捲芯50により、発電要素体4の線膨張係数と電槽20の線膨張係数との差に応じて、電極捲回体41を構成する集電箔や活物質,発電要素体40から電槽20に至るまでの部品、さらには各部品間の接合部などに作用する熱応力を小さく抑制することができ、それらが損傷に至る可能性を低くして、電池セル10に対する信頼性を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、金属捲芯50を、アルミニウムを主材とする第1金属片54及び銅を主材とする第2金属片55から製作しているので、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができる。
【0141】
尚、本実施形態によれば、金属捲芯50を、アルミニウムを主材とする第1金属片54及び銅を主材とする第2金属片55から製作した場合を例に挙げて説明したが、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができ、かつ前述したように、発電要素体40の線膨張係数を調整できる金属材料、例えばニッケルなどがあれば、それを用いても構わない。
【0142】
また、本実施形態によれば、金属捲芯50を電極捲回体41の捲回中心部に設けたので、電極捲回体41の内部の中心部から発熱を金属捲芯50を介して電極捲回体41の外部に正負極の両側から効率良く引き出すことができるので、電極捲回体41の内部の中心部から冷却することができる。金属捲芯50によって引き出された熱は、正極及び負極外部端子30,31に正極及び負極接続板34を介して伝達され、正極及び負極外部端子30,31から電池セル10の外部(電池モジュール110の冷却媒体流路)に放出することができる。
【0143】
電極捲回体41は、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体を、図5(a)に示すように、捲回部51の短手方向に捲回することにより製作される。このとき、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面に、捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部52b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部52bの位置よりも内周側に位置する捲回部位の未塗工部45が集積されながら、また、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面に、捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部53b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部53bの位置よりも内周側に位置する捲回部位の未塗工部46が集積されながら、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体が捲回され、電極捲回体41が製作される。
【0144】
尚、正極板42及び負極板43を含む積層体を金属捲芯50の捲回部51に対して捲回するにあたっては、正極板42及び負極板43を含む積層体の捲き始め及び捲き終わりにおいて、セパレータ44のみを2〜3周程度、余分に捲回している。また、正極板42及び負極板43を含む積層体を金属捲芯50の捲回部51に対して捲回するにあたっては、負極板43の長さを正極板42の長さよりも長くし、電極捲回体41の最内周及び最外周において、正極板42が負極板43に対して捲回方向にはみ出すことがないようにしている。
【0145】
図5(a)に示すように、電極捲回体41を製作した後、図5(b)に示すように、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部45、すなわち捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部52b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部52bの位置よりも外周側に位置する捲回部位の未塗工部45を、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面に外周側から押圧して集積すると共に、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部46、すなわち捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部53b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部53bの位置よりも外周側に位置する捲回部位の未塗工部46を、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面に外周側から押圧して集積する。
【0146】
この後、正極集電部52の水平面部52bに対する未塗工部45の集積部位を外周側から押さえ板59により押圧した状態で、また、負極集電部53の水平面部53bに対する未塗工部46の集積部位を外周側から押さえ板60により押圧した状態で、当該集積部位のそれぞれが超音波溶接によって接合される。
【0147】
押さえ板59は、アルミミウムを主材とする矩形状の金属片(平板)であり、その長手方向が電極捲回方向となるように、未塗工部45の集積部位に配置されている。押さえ板60は、銅を主材とする矩形状の金属片(平板)であり、その長手方向が電極捲回方向となるように、未塗工部46の集積部位に配置されている。
【0148】
本実施形態によれば、正極集電部52及び負極集電部53の水平面部52b,53bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部45,46のみを集積して接合しているので、正極集電部52及び負極集電部53の水平面部52b,53bの両側の表面に、この表面と対向する未塗工部45,46を集積して接合する場合と比べて、未塗工部45,46の集積及び接合によって集電箔が受ける負荷を小さくすることができ、温度変化や振動などを起因とする外力が集電箔に作用したとき、この外力を受けて集電箔の接合部位及びその周辺部位などが破損に至る可能性を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、集電箔の接合部位及びその周辺部位などの信頼性を高めることができ、電池セル10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0149】
しかも、本実施形態によれば、高さが電極捲回体41の捲回中心から外周表面までの厚さの約1/2に設定された水平面部52b,53bに対して未塗工部45,46を集積しているので、金属捲芯50に段差を設けない場合に比べて、集積による未塗工部45,46の電極捲回体41本体側部位の変形を均一にすることができ、集電箔に発生する歪を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、集電箔の接合部位及びその周辺部位などの信頼性をさらに高めることができ、電池セル10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0150】
未塗工部45,46の集積部位を溶接した後、発電要素体40は、前述した電池蓋アセンブリに対して、電極捲回体41の電極捲回方向両端部に電極幅方向に渡って形成された捲回折り返し部の一方側が電池蓋22の長手方向に沿って、電池蓋22の内面と対向するように組み付けられる。この後、正極接続板が押さえ板59に、負極接続板34が押さえ板60に、それぞれ超音波溶接により接合される。これにより、電極捲回体41の正極板42と正極外部端子30とが、電極捲回体41の負極板43と負極外部端子31とが、それぞれ、機械的及び電気的に接続され、発電要素アセンブリが組み立てられる。
【0151】
正極接続板及び負極接続板34の両者は、材質が異なっているものの、構成要素及び形状が同じである。このようなことから、以下では、図3に図示されている負極接続板34を代表に挙げて、その構成を説明する。
【0152】
図3に示すように、負極接続板34は、端子接続部34a,側面部34b及び接続片部34cの3つの要素が一体成形された成形体であり、平板が所定の形状に成型された成型品である。このように、複数の要素が一体成形された成形体を接続板として用いることにより、負極接続板34の強度及び剛性を高くすることができる。
【0153】
端子接続部34aは、負極外部端子31に機械的に接続された矩形状の金属片(平板)である。端子接続部34aは、その平面が電池蓋22の内面及び電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側と対向するように、かつ電池蓋22の内面及び電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側に沿って、電池蓋22の長手方向及び電極捲回体41の電極幅方向と同じ方向に延びるように、さらには長手方向が電池蓋22の長手方向及び電極捲回体41の電極幅方向と同じ方向になるように配置されている。
【0154】
側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側(正極側外部端子30側とは反対側)端部から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側端部から電池缶21の底面側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、電池缶21の第2側面の内面及び電極捲回体41の電極幅方向負極側端部に対向するように、かつ電池缶21の第2側面の内面及び電極捲回体41の電極幅方向負極側端部に沿って、電池缶21の底面側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び電極捲回体41の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部は、押さえ板60の長手方向他方側(電極捲回体41の捲回折り返し部の他方側)端部に対応する位置まで延びている。
【0155】
接続片34cは、側面部34bの短手方向における電極捲回体41の未塗工部46の集積側端部の縁から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。接続片34cは、側面部34bの短手方向における電極捲回体41の未塗工部46の集積側端部、かつ側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部から押さえ板60の長手方向一方側(電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側)端部に対応する位置に至る部位の縁から発電要素体40側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、押さえ板60と対向するように、かつ発電要素体40側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び電極捲回体41の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。接続片34cの押さえ板60との接合面の面積は押さえ板60の平面の面積よりも小さい。
【0156】
接続片34cの長手方向の3箇所には、接続片34cを押さえ板60に超音波溶接するための溶接部34dが形成されている。溶接部34dは、接続片34cの平面を窪ませ、他の部位よりも肉厚を薄くした薄肉部である。
【0157】
発電要素アセンブリの組み立て後、発電要素アセンブリは、電極捲回体41の捲回折り返し部の他方側が挿入側となって、電池缶21の内部に電池缶21の開口部から挿入される。これにより、発電要素体40は電池缶21の内部に収容される。この後、電池缶21に電池蓋22がレーザビーム溶接によって接合される。
【0158】
電池缶21に電池蓋22が接合された後、電池蓋22の長手方向中央部よりも負極外部端子31寄りに設けられた注液孔70から電解液が電槽20内に注入される。電解液を注入後、注液孔70はレーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
【0159】
電池セル10の内部にはガス排出弁が設けられている。ガス排出弁は、電池セル10に何らかの異常が生じ、電解液が気化して内圧が上昇した場合、所定の内圧で作動して、電池セル10の外部にミスト状態のガスを放出し、電池セル10を保護するための安全弁である。電池蓋22の長手方向中央部にはガス排出弁が開放した場合、電槽20内部に発生したガスを電槽20の内部から外部に導くためのガス排出管80が設けられている。
【0160】
次に、12個の電池セル10を用いて構成した電池モジュール110の構成を説明する。
【0161】
電池セル10は、正極外部端子30及び負極外部端子31が設けられた電池蓋22が上面となり、その電池蓋22と対向する電池缶21の底面が載置面となるように縦置きされている。電池モジュール110は、縦置きされた電池セル10と、冷却媒体(空気)を形成すると共に電池セル10を保持するセルホルダ(図示省略)とが交互に一列に配置された状態で、上下面が開放された直方体形状のモジュールケース600に収納されて固定されている。セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10は、電池セル10の電池蓋22と電池缶21の底面との対向方向に延びる中心軸を回転軸として180度回転させた回転対称の関係になっている。このため、セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10間では、正極外部端子30と負極外部端子31との配置が反対になっている。
【0162】
電池セル10とセルホルダとの配列体は4つの側部からモジュールケース600によって強固に固定されている。このような構成によれば、外部からの振動や外部からの衝撃などに対する耐性が向上し、それらの外力から電池セル10を保護することができる。
【0163】
セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10の一方の正極外部端子30及びその他方の負極外部端子31の両者はバスバー601によって接続されている。これにより、配列方向一方側端部に配置された電池セル10から、配列方向他方側端部に配置された電池セル10に向かって順に、前段の電池セル10の負極外部端子31と後段の電池セル10の正極外部端子30とがバスバー601によって接続され、12個の電池セル10が、配列方向一方側端部に配置された電池セル10から、配列方向他方側端部に配置された電池セル10に向かって順に電気的に直列に接続される。
【0164】
セルボルダを介して配列方向に隣接する電池セル10の間には冷却媒体流通路が形成されている。冷却媒体流通路は、電池缶21の主面に沿って冷却媒体が電池缶21の底面側から電池蓋22側に向かって或いはその逆方向に向かって流通するように設けられている。電池缶21の底面側に対応する電池モジュール110の部位には、冷却媒体を冷却媒体流通路に導く或いは冷却媒体流通路から排出された冷却媒体を外部に導くためのダクト(図示省略)が設けられている。電池蓋22側に対応する電池モジュール110の部位には、冷却媒体流通路から排出された冷却媒体を外部に導く或いは冷却媒体を冷却媒体流通路に導くためのダクト(図示省略)が設けられている。冷却媒体は、図示省略した冷却ファンによって供給,排出される。
【0165】
尚、本実施形態では、電池セル10を気体状の冷却媒体(空気)によって冷却する場合を例に挙げて説明したが、液体状の冷却媒体(不凍液)を、例えばモジュールケース600に流通させて電池セル10を冷却するようにしても構わない。
【0166】
電池セル10の配列体の配列方向に直交する方向の中央部には、電池蓋22の長手方向中央部に設けられたガス排出管80が配列体の配列方向に一列に配列されている。ガス排出管80のそれぞれには、12個の電池セル10に対して共通に設けられ、電池セル10の配列方向に延びるガス排出ダクト602が接続されている。ガス排出ダクト602は、電池セル10からガス排出管80を介して排出されたガスを、冷却媒体が流通する空間とは分離して、電池モジュール110の外部(PHEV1の車外)に導いて排出するための流路である。
【0167】
尚、電池セル10から排出されるガスは、冷却媒体と一緒に電池モジュール110から排出しても問題ない。電池セル10から排出されるガスを冷却媒体と一緒に流通させるか或いは分離するかは、電池モジュール110の車両搭載場所などに応じて適宜選択すればよい。例えば電池モジュール110を車室内に配置して、車室内に導入される空気によって電池モジュール110を冷却する場合には、冷却媒体と排出ガスとを分離することが好ましい。
【0168】
以上のように構成された電池モジュール110は、モータジェネレータ200の駆動電圧に応じて複数、電気的に直列或いは並列若しくは直並列に接続されて、モータジェネレータ200の駆動電源として使用される。電池モジュール110の状態管理及び状態制御は、電池セル10に電気的に接続されたセル制御装置120,セル制御装置120に信号伝送回路を介して接続されたバッテリ制御装置130によって行われる。セル制御装置120は、電池モジュール110のそれぞれに対応して設けられ、対応する電池モジュール110の近傍に配置されている。バッテリ制御装置130は、電池モジュール110のそれぞれに対応して設けられたセル制御装置120に対して共通に設けられ、ループ状或いはパラレル状の信号伝送回路を介してセル制御装置120との間で信号を送受信する。
【0169】
〔実施形態2〕
第2実施形態を図10及び図11に基づいて説明する。
【0170】
図10及び図11は金属捲芯50の外観構成を示す。
【0171】
本実施形態は第1実施形態の改良例であり、金属捲芯50の構成の一部が異なっている。
【0172】
尚、第1実施形態と同じ名称の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。但し、第1実施形態と同じ名称の構成要素であっても、第1実施形態と比較して構成が異なっている部分がある場合には、その異なる部分についてのみ構成を説明する。また、第1実施形態に無い構成要素については新たな符号を付してその構成を説明する。
【0173】
本実施形態では、図11に示すように、捲回部51の外面の全てを連結部材58によって略均一の厚さで覆い、第1金属片54及び第2金属片55を連結すると共に、第1金属片54と第2金属片55との間を電気的に絶縁している。この場合、第1実施形態のように連結部を設ける必要がない。捲回部51の短手方向両端部において、連結部材58の外側は半円状に面取りされている。
【0174】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に構成された金属捲芯50を発電要素体40に備えているので、第1実施形態と同様の作用効果を達成できる。
【0175】
また、本実施形態によれば、捲回部51の外面の全てを連結部材58によって覆っているので、金属捲芯50の捲回部51の外表面に第1金属片54及び第2金属片55と連結部材58との異材界面がなくなり、第1金属片54及と第2金属片55とを同一平面に保持し易くすることができる。これにより、本実施形態によれば、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体が捲回し易くなり、電極捲回体41を形成し易くすることができる。従って、本実施形態によれば、電池セル10の製造工程における電極捲回体41の捲回作業性を向上させることができ、製造コストなどの低減などを図ることができる。
【0176】
尚、連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面の部分を覆う、或いは一つ又は複数の穴をあけた状態で連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面を覆う、というように、金属捲芯50の捲回部51の外表面に第1金属片54及び第2金属片55と連結部材58との異材界面が存在しても、第1金属片54及と第2金属片55とを同一平面に保持し易くできる場合には、それらのように、連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面を覆っても構わない。この場合、金属捲芯50の軽量化を図ることができる。
【0177】
〔実施形態3〕
第3実施形態を図12及び図13に基づいて説明する。
【0178】
図12は電池セル10の外観構成を示す。図13は電池セル10の負極側の内部構成を示す。
【0179】
本実施形態は第1実施形態の変形例であり、電池セル10の形状は第1実施形態と同じ扁平角型形状であるが、正極側外部端子30及び負極側外部端子31の形状やそれらの電槽20に対する配置などが異なっている。
【0180】
尚、第1実施形態と同じ名称の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。但し、第1実施形態と同じ名称の構成要素であっても、第1実施形態と比較して構成が異なっている部分がある場合には、その異なる部分についてのみ構成を説明する。また、第1実施形態に無い構成要素については新たな符号を付してその構成を説明する。
【0181】
図12に示すように、本実施形態の電槽20は、第1実施形態と同様に、扁平直方体形状の構造体であり、第1実施形態と同様に、2つの構成要素から構成されているが、第1実施形態とは2つの構成要素の区分が異なっている。すなわち本実施形態では、1つの主面及び4つの副面を備え、残りの1つの主面に対応する部分が開口した扁平直方体形状の容器体である電池缶21と、電池缶21の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶21の開口面輪郭に合致するように形成された矩形状の平板である電池蓋22とをもって電槽20が構成されている。
【0182】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、電池セル10の搭載方向に関係なく、扁平直方体形状の容器体である電池缶21の開口部側とは反対側の面を底面、この底面の4辺に沿って底面に垂直に設けられた4面のうち、底面の長辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第1側面、底面の短辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第2側面と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0183】
また、本実施形態では、説明の便宜上、平行に対向配置された2つの長辺、この長辺に直交すると共に、並行に対向配置され、長辺よりも長さが短い2つの短辺により形成される矩形平面形状を備えた構成要素において、長辺と同じ方向に延びる(短辺が対向する)方向を長手方向,短辺と同じ方向に延びる(長辺が対向する)方向を短手方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0184】
さらに、本実施形態では、説明の便宜上、電極捲回体41の捲回方向を電極捲回方向、電極捲回体41の扁平捲回面上において電極捲回方向に直交する方向を電極幅方向、電極捲回体41の扁平捲回面を垂直に貫く方向を電極扁平方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0185】
発電要素体40は第1実施形態と同様に製作されるが、電槽20に対する挿入方向が第1実施形態とは異なっている。本実施形態では、発電要素体40を、電極捲回体41の電極扁平方向の一方側(電極捲回体41の未塗工部45,46の集積側)を挿入側として、電槽20の主面の一つに対応する電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入している。すなわち本実施形態は、第1実施形態のように、発電要素体40を、電槽20を構成する2組の副面の一方の対向方向一方側から他方側に向かって挿入、すなわち電池缶21の開口面積が小さい開口部から電池缶21の深さが深い方向に挿入するということはせず、電槽20を構成する1組の主面電の対向方向一方側から他方側に向かって挿入、すなわち電池缶21の開口面積が大きい開口部から電池缶21の深さが浅い方向に挿入するようにしている。
【0186】
電池缶21の底面において、正極集電部52の未塗工部45の集積部分及び負極集電部53の未塗工部46の集積部分と対向する部位、すなわち電池缶21の底面の長手方向両端部、かつ電池缶21の底面の短手方向中央部には、電池蓋22側に窪んだ窪み部23,24が設けられている。窪み部23,24は、電池缶21の底面の長手方向両端部、かつ電池缶21の底面の短手方向中央部に配置され、電池蓋22側に最も窪んだ矩形状の平面部23a,24a、電池缶21の底面の短手方向両端部側から平面部23a,24aに向かうにしたがって、電池缶21の底面側から電池蓋22側に傾斜した傾斜部23b,24bから構成されている。
【0187】
平面部23a,24aはその長手方向が電池缶21の底面の短手方向と同じ方向になるように形成されている。平面部23a,24aには、その壁面を電池缶21の内部から外部に向かって貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔は、平面部23a,24aの長手方向に長い楕円或いは長丸形状の孔であり、正極集電部52の未塗工部45の集積部分及び負極集電部53の未塗工部46の集積部分と対向している。
【0188】
平面部23aに設けられた貫通孔には正極シール材32を介して正極外部端子30が装着されている。平面部24aにもうけられた貫通孔には負極シール材33を介して負極外部端子31が挿着されている。正極外部端子30及び負極外部端子31は、複数の構成要素が一体成形された成形体であり、平板が所定の形状に成型された成型品である。正極シール材32及び負極シール材33は、正極外部端子30及び負極外部端子31と電池缶21との間を電気的に絶縁すると共に、電池缶21内部を気密及び液密に保つための封止部材である。
【0189】
正極外部端子30は、平面部23aに設けられた貫通孔に対応する部位を始点、電池缶21の第2側面の一方に対応する部位を終点として、平面部23aに設けられた貫通孔から電池缶21の第2側面の一方の側に向かって延び、電池缶21の底面の長手方向端部の縁において所定の曲率をとりながら電池蓋22側に略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。負極外部端子31は、平面部24aに設けられた貫通孔に対応する部位を始点、電池缶21の第2側面の他方に対応する部位を終点として、平面部24aに設けられた貫通孔から電池缶21の第2側面の他方の側に向かって延び、電池缶21の底面の長手方向端部の縁において所定の曲率をとりながら電池蓋22側に略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。正極シール材32は、正極外部端子30の電池缶21との対向面に沿って正極外部端子30と同様に変形しながら延びている。負極シール材33は、負極外部端子31の電池缶11との対向面に沿って負極外部端子31と同様に変形しながら延びている。
【0190】
正極外部端子30の平面部23aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部23aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状で電池缶21の底面側から電池蓋22側に窪んだ(突出した)窪み部(突起部)が形成されている。正極外部端子30の窪み部は、平面部23aに設けられた貫通孔を貫通して正極集電部52の未塗工部45の集積部分に当接し、電池缶21の底面側の開口部から超音波溶接により正極集電部52の未塗工部45の集積部分に接合されている。正極外部端子30の窪み部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。正極外部端子30の鍔部は、矩形状の平板状態で、電池缶21の第2側面の一方の側に向かって延び、前述したように略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。正極外部端子30の電池缶21の第2側面の一方との対向部位は、電池缶21の第2側面の一方の面と対面し、長手方向が電池缶21の第2側面の一方の長手方向と同じ方向である矩形状の第1平板部と、第1平板部の長手方向の一方側端部から、所定の曲率をとりながら電池缶21の第2側面の一方から遠ざかる方向に、略直角に折れ曲がって延びる矩形状の第2平板部とをもって構成された、断面がL字形状の金属片により構成されている。
【0191】
負極外部端子31の平面部24aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部24aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状で電池缶21の底面側から電池蓋22側に窪んだ(突出した)窪み部(突起部)が形成されている。負極外部端子31の窪み部は、平面部24aに設けられた貫通孔を貫通して負極集電部53の未塗工部46の集積部分に当接し、電池缶21の底面側の開口部から超音波溶接により負極集電部53の未塗工部46の集積部分に接合されている。負極外部端子31の窪み部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。負極外部端子31の鍔部は、矩形状の平板状態で、電池缶21の第2側面の他方の側に向かって延び、前述したように略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。負極外部端子31の電池缶21の第2側面の他方との対向部位は、電池缶21の第2側面の他方の面と対面し、長手方向が電池缶21の第2側面の他方の長手方向と同じ方向である矩形状の第1平板部と、第1平板部の長手方向の一方側端部から、所定の曲率をとりながら電池缶21の第2側面の他方から遠ざかる方向に、略直角に折れ曲がって延びる矩形状の第2平板部とをもって構成された、断面がL字形状の金属片により構成されている。
【0192】
正極シール材32は、正極外部端子30と電池缶21との間に配置され、正極外部端子30とほぼ同様の形状になっている。正極シール材32の平面部23aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部23aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状の管部(筒部)が形成されている。正極シール材32の管部は、平面部23aに設けられた貫通孔の縁と正極外部端子30の窪み部の外壁面との間に設けられている。正極シール材32の管部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。正極シール材32の鍔部は、矩形状の平板状態で、正極外部端子30の形状に沿って変形しながら延びており、最終的には、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。
【0193】
負極シール材33は、負極外部端子31と電池缶21との間に配置され、負極外部端子31とほぼ同様の形状になっている。負極シール材33の平面部24aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部24aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状の管部(筒部)が形成されている。負極シール材33の管部は、平面部24aに設けられた貫通孔の縁と負極外部端子31の窪み部の外壁面との間に設けられている。負極シール材33の管部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。負極シール材33の鍔部は、矩形状の平板状態で、負極外部端子31の形状に沿って変形しながら延びており、最終的には、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。
【0194】
電池缶21の第1側面の一方の長手方向中央部には、電槽20の内部に設けられたガス排出弁(図示省略)が開放した場合、電槽20内部に発生したガスを電槽20の内部から外部に導くためのガス排出管80が設けられている。
【0195】
電池蓋21の長手方向一方側端部の壁面上には、電槽20内に電解液を注液するための注液孔(図示省略)が設けられている。
【0196】
正極外部端子30及び負極外部端子31の形状やそれらの電槽20に対する配置などが第1実施形態とは異なる本実施形態においても、第1実施形態と同様に、電槽20と発電要素体40との線膨張係数の大きさ違いによる熱応力の課題があったが、第1実施形態と同様に構成された金属捲芯50を発電要素体40に備えることにより、その課題を解決することができた。従って、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を達成できる。
【0197】
〔実施形態4〕
第4実施形態を図14及び図15に基づいて説明する。
【0198】
図14は電池セル710の内部構成を示す。図15は電極捲回体741の金属捲芯750の構成を示す。
【0199】
本実施形態は、円筒型電池セル710に、本願の発明を適用した場合の例である。
【0200】
図14に示すように、円筒型の電池セル710は、密閉された円筒形状の電槽720を備えている。電槽720は、一端側に開口部が設けられた有底円筒形状の容器体である電池缶721と、この電池缶721の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶721の開口部の輪郭と同じ形状になるように形成された円形状の封口体である電池蓋722から構成されている。電槽720の内部には発電要素体740が収納され、電解液が注液されている。
【0201】
円筒型の電池セル710の場合、電池蓋722が正極の電位を、電池缶721が負極の電位を、それぞれ持つように構成されている。このため、電池蓋722はシール材734を介して電池缶721に気密及び液密に固定されている。また、電池缶721と電池蓋722との間はシール材734によって電気的に絶縁されている。
【0202】
電池缶721の底面の中央部には、内面側から外面側に突出した円形状の突部が形成されている。突部外側の突面は負極外部端子731として機能する。電池缶721の開口部側端の外周面には外周面側から内周面側に窪んだ環状のくびれが設けられている。このくびれは電池缶721に電池蓋722を固定するために設けられている。電池缶721は、鉄或いは鉄を主材とする合金を材質とする圧延鋼板製である。電池缶721にはニッケルメッキが施されている。
【0203】
電池蓋722は防爆機構を構成しており、内面側から外面側に突出した円形状の突部が中央部に形成された円板形状のキャップ722a、このキャップ722aの内面と対向するように配置され、キャップ722aに固定された円板形状のガス排出弁722bから構成されている。ガス排出弁722bは、外周縁部の先端部がキャップ722aの外面側に突出して内側に折り曲げられ、キャップ722aの外周縁部の外面を締め付けることにより、すなわちかしめることにより、キャップ722aに固定されている。また、ガス排出弁722bは、外周側から中心部に向かうにしたがってキャップ722a側とは反対側に膨らんだ、いわゆる皿バネであり、ダイアフラムとも呼ばれている。電槽720の内部に発生したガスにより、電槽720の内部の圧力が異常に高まると、ガス排出弁722bは開裂する。また、ガス排出弁722bは、その内圧によってキャップ722a側に膨出してキャップ722aと発電要素体740との電気的な接続を断ち、過電流を抑制する。
【0204】
キャップ722aの突部外側の突面は正極外部端子730として機能する。キャップ722aの突部の中心部には、ガス排出弁722bが開裂したとき、電槽720内部のガスを外部に排出するためのガス排出口(図示省略)が設けられている。キャップ722aの材質には電池缶721と同じ材質を用いている。キャップ722aには電池缶721と同じようにニッケルメッキを施している。ガス排出弁722bの材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0205】
電池蓋722の外径は、電池缶721のくびれによって電池缶721の内周面に形成された環状の突起の内径よりも大きく、電池缶721の開口部の内径よりも小さい。電池蓋722の外周縁部が、電池缶721のくびれによって電池缶721の内周面に形成された環状の突起の上にシール材734を介して載せられ、電池缶721の開口部側先端部が内側に折り曲げられて、外周縁部に締め付けられることにより、すなわちかしめられることにより、電池蓋722は電池缶721の開口部側端部に固定され、電池缶721の開口部を塞ぐ。
【0206】
シール材734は、電池缶721の開口部側内面の形状に沿うように形成された短管形状の、電気的絶縁性を有する部材であり、ガスケットとも呼ばれ、電池蓋722の外周縁と電池缶721の開口部内面との間に配置されて、電池蓋722と電池缶721との間を気密及び液密に封止する。シール材734の材質にはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を用いている。
【0207】
発電要素体740は、第1乃至第3実施形態と同様に構成された積層体を、金属捲芯750に円筒形状或いは円柱形状に捲回した電極捲回体741を備えている。ただ、第1乃至第3実施形態と異なるのは、電極捲回体741の正極未塗工部に正極タブ747が、負極未塗工部に負極タブ748が、それぞれ設けられている点である。正極タブ747及び負極タブ748は、対応する未塗工部の活物質塗工側とは反対側の縁から活物質塗工側とは反対側の方向(金属捲芯750が延びる方向と同じ方向)に向かって垂直に延びた細長い集電用箔(板)であり、対応する未塗工部の捲回方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0208】
金属捲芯750は、第1乃至第3実施形態と同様に、2つの金属片を連結(結合)させて形成した円筒形状或いは中空円柱形状の連結(結合)体である。
【0209】
図15に示すように、金属捲芯750は、円筒形状或いは中空円柱形状の第1金属片754と、円筒形状或いは中空円柱形状の第2金属片755と、円筒形状或いは中空円柱形状の連結(結合)部材758とを備えており、第1金属片754と第2金属片755とが連結部材758によって軸方向に連結(結合)されることにより構成されている。第1金属片754の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。第2金属片755の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。連結部材758は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の管状樹脂ジョイント部材である。
【0210】
第1金属片754の軸長は第2金属片755及び連結部材758の軸長よりも長い。第2金属片755の軸長は連結部材758の軸長よりも短い。すなわち各部材の軸長は第1金属片754>連結部材758>第2金属片755の関係になっている。また、第1金属片754,第2金属片755及び連結部材758の外径は等しい。
【0211】
第1金属片754及び第2金属片755の軸方向両端部の外周面上には雄ねじが形成されている。連結部材758の軸方向両端部の内周面上には雌ねじが形成されている。連結部材758の軸方向一方側端部に第1金属片754が螺合され、連結部材758の軸方向他方側端部に第2金属片755が螺合されることにより、一つの円筒形状或いは中空円柱形状の金属捲芯750が形成され、その外周面上に電極捲回体751が捲回される。
【0212】
第1金属片754の連結部材758側とは反対側端部には円筒形状或いは中空円柱形状の第1覆い部材761が螺合されている。第2金属片755の連結部材758側とは反対側端部には円筒形状或いは中空円柱形状の第2覆い部材762が螺合されている。第1覆い部材761及び第2覆い部材762は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の管状樹脂キャップ部材であり、対応する金属片側端部の内周面上に雌ねじが形成されている。
【0213】
第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は等しい。また、第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は第2金属片755の軸長と等しい。さらに、第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は第1金属片754及び連結部材758の軸長よりも短い。第1覆い部材761及び第2覆い部材762の外径は、第1金属片754,第2金属片755及び連結部材758の外径と等しい。
【0214】
第1覆い部材761,第1金属片754,連結部材758,第2金属片755及び第2覆い部材762は同軸上にその順番にしたがって配置され、軸方向に隣接する部材同士が螺子連結されることにより、一つの金属捲芯750を構成する。
【0215】
尚、本実施形態では、螺子連結により、第1金属片754と第2金属片755とを連結する場合を例に挙げて説明したが、第1金属片754及び第2金属片755を連結部材758に対してインサートモールドしてその両者を連結しても構わない。
【0216】
第1覆い部材761の第1金属片754側とは反対側端部には正極集電部材763が設けられている。正極集電部材763は環状円板形状の導電性部材である。正極集電部材763の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0217】
正極集電部材763の内周部には、電極捲回体741の正極タブ747が突出する側及びガス排出弁722bと対向する環円板部の内周縁から第1金属片754側に直角に折れ曲がって延びた円管状部或いは円筒状部が形成されている。この円管状部或いは円筒状部の内周側は第1覆い部材761の外周側に圧入により嵌合されている。これにより、正極集電部材763は金属捲芯750に対して一体に固定されることになる。
【0218】
正極集電部材763の外周部には、電極捲回体741の正極タブ747が突出する側及びガス排出弁722bと対向する環円板部の外周縁から電極捲回体741側に末広がり状に折れ曲がって延びた円錐台形状の管状部或いは筒状部が形成されている。この円錐台形状の管状部或いは筒状部の外周面上には複数の正極タブ747が超音波溶接により接合されている。
【0219】
ガス排出弁722bと正極集電部材763との間は正極接続板765によって機械的及び電気的に接続されている。正極接続板765は、延び方向を180度反転させる折り返し部と、この折り返し部の両端部から互いに対向して並行に延びる第1及び第2延び部とを備えたJ字形状或いは略U字形状の矩形帯板であり、導電性部材である。正極接続板765の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。第1延び部は第2延び部よりも長く延びている。
【0220】
正極集電部材763の環円板部の電極捲回体741側とは反対側の平面部中央には、中空部を塞ぐように正極接続板765の第1延び部の第2延び部との対向側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。ガス排出弁722bの中央部には、正極接続板765の第2延び部の第1延び部との対向側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。これにより、電極捲回体741の正極が正極集電部材763、正極接続板765及びガス排出弁722bを介してキャップ722aに電気的に接続され、キャップ722aが正極側の電位を持つ。
【0221】
第2覆い部材762の第2金属片755側とは反対側端部には負極集電部材764が設けられている。負極集電部材764は環状円板形状の導電性部材である。負極集電部材764の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。
【0222】
負極集電部材764の内周部には、電極捲回体741の負極タブ748が突出する側及び電池缶721の底面と対向する環円板部の内周縁から第2金属片755側に直角に折れ曲がって延びた円管状部或いは円筒状部が形成されている。この円管状部或いは円筒状部の内周側は第2覆い部材762の外周側に圧入により嵌合されている。これにより、負極集電部材764は金属捲芯750に対して一体に固定されることになる。
【0223】
負極集電部材764の外周部には、電極捲回体741の負極タブ748が突出する側及び電池缶721の底面と対向する環円板部の外周縁から電極捲回体741側に末広がり状に折れ曲がって延びた円錐台形状の管状部或いは筒状部が形成されている。この円錐台形状の管状部或いは筒状部の外周面上には複数の負極タブ748が超音波溶接により接合されている。
【0224】
電池缶721の底面と負極集電部材764の間は負極接続板766によって機械的及び電気的に接続されている。負極接続板766は、逆円錐台形状の容器部と、容器部の開口側端部の縁から外側に、負極集電部材764の環円板部及び電池缶721の底面に対して水平に延び、負極集電部材764の環円板部と対向する環円板鍔部とを備えた円形状の円板であり、導電性部材である。負極接続板766の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。
【0225】
負極集電部材764の環円板部の電極捲回体741側とは反対側の内周側平面部には、負極接続板766の環円板鍔部の容器部側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。電池缶721の底面の内面中央部には、負極接続板766の容器部の外面がスポット溶接により接合されている。これにより、電極捲回体741の負極が負極集電部材764及び負極接続板766を介して電池缶721の底面に電気的に接続され、電池缶721が負極側の電位を持つ。
【0226】
図示省略したが、電池缶721の外周面は、電気的な絶縁性を有するフィルム状の部材によって覆われている。
【0227】
金属捲芯750は線膨張係数が所定の値に設定されている。本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数を、第1乃至第3実施形態と同様に、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定している。
【0228】
金属捲芯750の線膨張係数は、第1金属片754及び第2金属片755の軸長の長さを変えることにより調整することができる。本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定するために、第1金属片754の軸長が第2金属片755の軸長よりも大きくしている。
【0229】
ここで、電極捲回体741の線膨張係数はアルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との間にあり、銅の線膨張係数との差よりもアルミニウムの線膨張係数との差が大きい。金属捲芯750の線膨張係数がアルミニウムの線膨張係数に近い、すなわちアルミニウムの線膨張係数との差が小さい場合には、電極捲回体741の線膨張係数との差が大きくなり、その差による大きな熱応力が、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部に作用し、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部の剥離や損傷に至る可能性が大きくなる。
【0230】
そこで、本実施形態では、前述のように、金属捲芯750の線膨張係数を、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値とし、この金属捲芯750の線膨張係数を電極捲回体741の線膨張係数に近づけて、すなわち電極捲回体741の線膨張係数との差を小さくしている。これにより、本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数と電極捲回体741の線膨張係数との差に応じて、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部に作用する熱応力を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部が剥離や損傷に至る可能性が低くなり、電池セル710に対する信頼性を向上させることができる。
【0231】
また、本実施形態によれば、金属捲芯750を、アルミミウムを主材とする第1金属片754及び銅を主材とする第2金属片755から製作しているので、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができる。
【0232】
尚、本実施形態によれば、金属捲芯750を、アルミミウムを主材とする第1金属片754及び銅を主材とする第2金属片755から製作した場合を例に挙げて説明したが、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができ、かつ前述したように、金属捲芯750の線膨張係数を所定の値に調整できる金属材料、例えばニッケルなどがあれば、それを用いても構わない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的エネルギーの蓄積及び放出が可能な蓄電器に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電器に関する背景技術としては、例えば特許文献1,2に開示された技術が知られている。特許文献1,2には、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した積層体を捲芯に捲回して電極捲回群(発電要素)を構成する技術が開示されている。捲芯は、銅或いはアルミニウム若しくはそれらを主材とする合金材などの金属材料、又はポリピレン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリイミド,ポリフェニレンサルファイトなどの樹脂材料により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−156240号公報
【特許文献2】特開2007−311274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電器は、電極捲回群が電気化学的反応によって発熱する。また、蓄電器は、複数の構成部品の多くが金属部材から構成されている。このようなことから、蓄電器では、発熱によって各構成部品が熱膨張する。ここで、各構成部品は異なる熱膨張係数を有する。このため、蓄電器では、各構成部品の熱膨張係数の差に応じた熱応力が構成部品間、例えば接合部分に作用する。しかも、熱応力は各構成部品の熱膨張係数の差が大きければ大きいほど大きくなる。一方、蓄電器には高い信頼性が要求される。このような要求に応えるためには、各構成部品の熱膨張係数の差に応じて作用する熱応力を小さく抑えることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の代表的な発明の一つは、信頼性の高い蓄電器を提供する。
【0006】
ここに、本願の代表的な発明の一つは、金属収容体に収納され、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体の捲回中心部に、蓄電要素体の熱膨張係数が電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属収納体の熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような特徴を有する本願の代表的な発明の一つでは、例えば、金属収納体の熱膨張係数と蓄電要素体の熱膨張係数との差を小さくすることができるので、蓄電要素体と金属収納体との間の熱膨張係数の差に応じて、蓄電要素体と金属収納体との間の各部位に作用する熱応力を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本願の代表的な発明の一つによれば、信頼性の高い蓄電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(実施形態1)プラグインハイブリッド自動車の駆動システムの構成を示すブロック図。
【図2】(実施形態1)図1の電池モジュールの構成を示す斜視面。
【図3】(実施形態1)図2の扁平角型電池セルの構成を示す部分切欠き斜視図。
【図4】(実施形態1)図3の電極捲回体の構成を示す斜視図。
【図5】(実施形態1)図4の電極捲回体を電極捲芯に捲回した状態と集電部構成を示す側面図。
【図6】(実施形態1)図5の電極捲芯の構成を示す上面図。
【図7】(実施形態1)図6の電極捲芯の構成を示す側面図。
【図8】(実施形態1)図6の電極捲芯の構成を示す正面図。
【図9】(実施形態1)図6の電極捲芯のA−A′矢視断面を示す断面図。
【図10】(実施形態2)電極捲芯の構成を示す上面図。
【図11】(実施形態2)図10の電極捲芯の構成を示す側面図。
【図12】(実施形態3)扁平角型電池セルの構成を示す斜視図。
【図13】(実施形態3)図12の扁平角型電池セルの内部構成の一部分を示す部分断面図。
【図14】(実施形態4)円筒型電池セルの構成を示す断面図。
【図15】(実施形態4)図14の電極捲芯の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
以下に説明する実施形態では、本願の発明を、移動体の電源システム、例えばプラグインハイブリッド自動車に搭載された電源システムを構成するバッテリ装置(蓄電装置)の二次電池セル(蓄電器)に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0012】
バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、プラグインハイブリッド自動車を電動力(回転動力)によって駆動する場合に直流電力として放電される。放電された直流電力は、インバータ装置(電力変換装置)によって位相制御された所定の交流電力に変換された後、車両の力行時にモータとして機能してプラグインハイブリッド自動車駆動用電動力を発生するモータジェネレータ(回転電機)に供給される。バッテリ装置への電気エネルギーの充電は、車両の減速時の回生によって得られた交流電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から得られた交流電力によって行われる。回生電力は、車両側から供給された動力によってモータジェネレータが発電機として駆動されることにより得られた交流電力であり、インバータ装置によって電圧が制御された所定の直流電力に変換された後、バッテリ装置に供給されて充電される。
【0013】
また、バッテリ装置に充電された電気エネルギーは、内燃機関であるエンジンを始動する場合、ラジオなどのカーオーディオ,カーナビゲーション装置,ライトなどの電装品を駆動する場合に直流電力として使用される場合もある。この場合、バッテリ装置から放電された直流電力は、電力変換装置によって、位相制御された所定の交流電力に変換されたり、電圧が制御(昇降圧)された所定の直流電力に変換されたりした後、各電気負荷や他の蓄電装置に供給される。バッテリ装置への電気エネルギーの充電は、家庭電源である商用電源から取り込んだ単相交流電力,電気ステーションや商業施設に設けられた電気スタンドを介して購入した単相或いは三相交流電力によって行われる。この場合、商用電源や電気スタンドの外部電源から供給された単相或いは三相交流電力は、プラグインハイブリッド自動車に搭載された充電器によって電圧が制御された所定の直流電力に変換された後、バッテリ装置に供給されて充電される。
【0014】
以下に説明する実施形態の構成は、商用電源や電気スタンドなどの外部電源から供給された交流電力をバッテリ装置に充電するための充電器を持たない(車両の減速時の回生によって得られた電力及び/又は原動機によって駆動される発電機から得られた電力により充電する)ハイブリッド自動車,車両の駆動源として内燃機関を持たない(電動力を発生するモータを車両の唯一の駆動源とする)純粋な電気自動車などの乗用車,電動バイク,電動自転車などの二輪車,ハイブリッド電車などの鉄道車両,ハイブリッドトラックなどの貨物自動車,ハイブリッドバスなどの乗合自動車,建設機械やフォークリフトトラックなどの産業用車両,電動福祉機器など、他の移動体の電源システムを構成するバッテリ装置の二次電池セルにも適用できる。
【0015】
それらの移動体には、バッテリ装置を電源として電動力を発生するモータ(移動体側から動力の供給を受けて電力を発生する場合にはジェネレータを兼ねる)と、バッテリ装置とモータとの間の電力を制御するインバータ装置とが搭載されている。また、原動機によって駆動されて電力を発生する発電機を備え、バッテリ装置を充電する場合もある。
【0016】
また、以下に説明する実施形態の構成は、無停電用電源(バックアップ用電源)や、風力発電,太陽光発電,分散型電力貯蔵システムなどの電源を構成するバッテリ装置(据え置き型)の二次電池セルにも適用できる。
【0017】
バッテリ装置を構成する二次電池セルとしてはリチウムイオン電池セルを例に挙げて説明する。
【0018】
以下に説明する実施形態の構成は、鉛電池,ニッケル水素電池,電気二重層キャパシタ,ハイブリッドキャパシタなど、他の二次電池や他の蓄電器にも適用できる。
【0019】
二次電池セルは、発電(蓄電)要素体を金属ケース内に収納した蓄電器であり、発電要素体の電気化学的反応によって電気エネルギーを充放電する。
【0020】
発電要素体は、正極活物質を塗布した正極集電箔(例えばアルミニウム或いはそれを主材とする合金)と、セパレータと、負極活物質を塗布した負極集電箔(例えば銅或いはそれを主材とする合金)との積層体を捲回して構成した電極捲回体を、主要な構成要素として備えている。正極集電箔及び負極集電箔は電極捲回体に占める割合が正極活物質及び負極活物質などの他の部材に比べて非常に大きい。このようなことから、発電要素体は、複数の金属部材が一塊まりになった金属体として考えるということができる。
【0021】
金属ケースには外部導体接続導体(例えば端子)が固定されている。外部導体接続導体は電極捲回体に対して直接、接合されることにより、電極捲回体と電気的に接続されている。或いは外部導体接続導体と電極捲回体の両者が内部接続導体に接合されることにより、電極捲回体と電気的に接続されている。
【0022】
電極捲回体は電気化学反応によって発熱する。このため、発電要素体はその発熱によって熱膨張する。また、その発熱によって金属ケースなども熱膨張する。このとき、電極捲回体,外部導体接続導体,内部接続導体,電極捲回体と外部導体接続導体との接合部,電極捲回体又は外部導体接続導体と内部接続導体との接合部などには、発電要素体の熱膨張係数と金属ケースの熱膨張係数との差に起因する熱応力が作用する。熱応力は、両者の熱膨張係数の差が大きければ大きいほど大きくなる。
【0023】
一方、二次電池セル、特にリチウムイオン電池セルには高い信頼性が要求される。このような要求に応えるためには、電極捲回体の発熱によって、電極捲回体,外部導体接続導体,内部接続導体,電極捲回体と外部導体接続導体との接合部,電極捲回体又は外部導体接続導体と内部接続導体との接合部などに作用する熱応力を小さく抑えることが好ましい。
【0024】
そこで、以下に説明する実施形態では、金属ケースに収納され、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体を有する発電要素体の捲回中心部に、発電要素体の熱膨張係数が電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が金属ケースの熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を設けている。金属部材の熱膨張係数としては、例えば金属ケースの熱膨張係数と電極捲回体の熱膨張係数との間の中間値に設定する。
【0025】
このように、以下に説明する実施形態では、熱膨張係数が金属ケースの熱膨張係数よりも小さく、電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材を電極捲回体の捲回中心部に設けているので、発電要素体の熱膨張係数を電極捲回体側の熱膨張係数から金属ケース側の熱膨張係数に近づけて、金属ケースの熱膨張係数と発電要素体の熱膨張係数との差を小さくすることができ、発電要素体と金属ケースとの間の熱膨張係数の差に応じて、発電要素体と金属ケースとの間の各部位に作用する熱応力を小さく抑えることができる。従って、以下に説明する実施形態では、熱応力によって正極集電箔,負極集電箔,正極活物質及び負極活物質などに生じる損傷を抑えることができる。それ故、以下に説明する実施形態では、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、以下に説明する実施形態では、上述のように、正極集電箔,負極集電箔,正極活物質及び負極活物質などにおいて、熱応力によって生じる損傷を抑えることができるので、二次電池セルの長寿命化を図ることができる。
【0027】
金属部材は、少なくとも、正極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作した第1金属片と、負極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作した第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成している。第1金属片としては、例えば電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有するアルミニウム又はアルミニウムを主材とする合金を用いている。第2金属片としては、例えば電極捲回体の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する銅又は銅を主材とする合金を用いている。
【0028】
このように、正極金属箔及び負極金属箔に用いられる金属材料を用いて金属部材を構成すると、正極と負極との間を電気的に導通させる電解質として、金属ケース内に注液された電解液(リチウムイオンを含む非水系有機溶媒)に対する耐腐食性を確保することができ、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、金属部材は電極捲回体の金属捲芯を兼ねている。
【0030】
さらに、金属部材は、平板状の連結体であり、電極捲回体の捲回中心部に配置され、積層体が捲回された捲回部と、この捲回部の一つの端部に形成され、正極金属箔の正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、捲回部の正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、負極金属箔の負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部とを具備している。
【0031】
金属ケースが扁平角型形状のものである場合には、第1及び第2金属片を平板状部材によって形成する。第1及び第2金属片のそれぞれには、互いに係合可能な係合部が設けられている。そして、第1及び第2金属片は、電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結される。
【0032】
金属ケースが円筒形状のものである場合には、第1及び第2金属片を円柱状部材によって形成する。第1及び第2金属片のそれぞれには、端部にネジ部が形成されている。そして、第1及び第2金属片は、それぞれのネジ部が、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結されることにより、電気的に絶縁した状態で連結される。
【0033】
さらに、以下に説明する実施形態では、正極集電部及び負極集電部を、電極捲回体に対する捲回体部の配置位置を捲回体部の平面に垂直な方向における高さ基準位置としたとき、未塗布部分接合部位の高さ位置が、高さ基準位置に対して一方側にずれた高さ位置になるように、捲回部に設けると共に、正極側の未塗布部分に、正極集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位を正極集電部に対する接合部位として接合し、負極側の未塗布部に、負極集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位を負極集電部に対する接合部位として接合している。
【0034】
このように、金属部材の捲回部を凹ました段差形状とし、集電部に対する金属箔の未塗布部分の接合を、集電部の未塗布部分接合部位の平面のうち、捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位にて行うと、金属箔の未塗布部分の曲げ変形を小さくし、金属箔の未塗布部分に発生する歪を小さくすることができるので、各金属箔の未塗布部分の接合部位の信頼性を向上させ、二次電池セルの信頼性を向上させることができる。
【0035】
以下、図面を用いて、各実施形態を具体的に説明する。
【0036】
〔実施形態1〕
第1実施形態を図1乃至図9に基づいて説明する。
【0037】
まず、図1を用いて、バッテリ装置100を含むプラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成について説明する。
【0038】
図1は、プラグインハイブリッド自動車1の駆動システムの構成及びその一部を構成する電動駆動装置の各コンポーネントの電気的な接続構成を示す。
【0039】
尚、図1において、太い実線は強電系を示し、細い実線は弱電系を示す。
【0040】
プラグインハイブリッド自動車(以下、「PHEV」と記述する)1はパラレルハイブリッド方式の駆動システムを備えている。
【0041】
パラレルハイブリッド方式の駆動システムは、内燃機関であるエンジン4とモータジェネレータ200とを駆動輪2に対してエネルギーの流れ的に並列に配置(構造的には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4とモータジェネレータ200とを機械的に直列に接続)し、エンジン4の回転動力による駆動輪2の駆動,モータジェネレータ200の回転動力による駆動輪2の駆動、及びエンジン4とモータジェネレータ200の両方の回転動力による駆動輪2の駆動ができるように構成されている。すなわちパラレルハイブリッド方式の駆動システムは、エンジン4を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源として用いられるエンジン駆動装置と、モータジェネレータ200を動力源とし、主としてPHEV1の駆動源及びPHEV1の電力発生源として用いられる電動駆動装置とを備えている。
【0042】
ハイブリッド方式としては、内燃機関であるエンジンの回転動力を用いて発電機を駆動し、この駆動によって発生した電力を用いてモータジェネレータを駆動し、この駆動によって発生した回転動力を用いて駆動輪を駆動する、いわゆるエンジンから駆動輪までのエネルギーの流れがシリーズであるシリーズハイブリッド方式がある。また、ハイブリッド方式としては、上記パラレルハイブリッド方式と上記シリーズハイブリッド方式とを組み合わせたシリーズ・パラレルハイブリッド方式(エンジンの回転動力の一部を発電用モータジェネレータに分配して発電させ、これにより得られた電力により駆動用モータジェネレータを駆動できるように、遊星歯車機構などの動力伝達機構を用いてエンジンと2つのモータジェネレータとを機械的に接続した方式)がある。本実施形態では、パラレルハイブリッド方式の駆動システムを例に挙げて説明するが、以下において説明する本実施形態のバッテリ装置100は、前述した他のハイブリッド方式の駆動システムのバッテリ装置に適用しても構わない。
【0043】
図示省略した車体のフロント部或いはリア部には車軸3が回転可能に軸支されている。車軸3の両端には一対の駆動輪2が設けられている。図示省略したが、車体のリア部或いはフロント部には、両端に一対の従動輪が設けられた車軸が回転可能に軸支されている。PHEV1では、駆動輪2を前輪とし、従動輪を後輪とした前輪駆動方式を採用している。駆動方式としては後輪駆動方式や4輪駆動方式(前後輪の一方をエンジン駆動装置により駆動し、他方を電動駆動装置により駆動する方式)を採用しても構わない。
【0044】
車軸3の中央部にはデファレンシャルギア(以下、「DEF」と記述する)7が設けられている。車軸3はDEF7の出力側に機械的に接続されている。DEF7の入力側には変速機6の出力軸が機械的に接続されている。DEF7は、変速機6によって変速されて伝達された回転駆動力を左右の車軸3に分配する差動式動力分配機構である。変速機6の入力側にはモータジェネレータ200の出力側が機械的に接続されている。モータジェネレータ200の入力側には、動力伝達制御機構であるクラッチ5を介してエンジン4の出力側が機械的に接続されている。クラッチ5は、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達する場合には締結状態になり、エンジン4の回転動力を駆動輪2に伝達しない場合には切離し状態になるように制御される。
【0045】
尚、モータジェネレータ200及びクラッチ5は、変速機6の筐体の内部に収納されている。
【0046】
モータジェネレータ200は、電機子巻線211を備えた電機子(本実施形態では固定子)210と、電機子210に空隙を介して対向配置され、永久磁石221を備えた界磁(本実施形態では回転子)220を有する回転電機であり、力行時にはモータとして、発電時(回生時)にはジェネレータとして、それぞれ機能する。
【0047】
本実施形態では、モータジェネレータ200として、三相交流同期機(永久磁石界磁型)を用いた場合を例に挙げて説明するが、他の三相交流同期機(巻線界磁型)や三相交流誘導機(界磁鉄心に短絡された導体バーが装着された界磁を用いたもの)を用いても構わない。
【0048】
モータジェネレータ200がモータとして機能する場合、すなわちPHEV1の力行時やエンジン4を始動する時など、回転動力が必要な運転モードにある場合には、バッテリ装置100に蓄積された電気エネルギーがインバータ装置300を介して電機子巻線211に供給される。これにより、モータジェネレータ200は電機子210と界磁220との間の磁気的作用により回転動力(機械エネルギー)を発生し、その回転動力を出力する。モータジェネレータ200から出力された回転動力は、PHEV1の力行時には、変速機6及びDEF7を介して車軸3に伝達され、駆動輪2を駆動し、エンジン4の始動時には、クラッチ5を介してエンジン4に伝達され、エンジン4を駆動する。
【0049】
モータジェネレータ200がジェネレータとして機能する場合、すなわちPHEV1の減速時や制動時などの回生時及びPHEV1の走行中にバッテリ装置100の充電が必要な時など、発電が必要な運転モードにある場合には、駆動輪2或いはエンジン4から伝達された機械エネルギー(回転動力)がモータジェネレータ200に伝達され、モータジェネレータ200が駆動される。このように、モータジェネレータ200が駆動されると、電機子巻線211には電機子210と界磁220との間の磁気的作用により電圧が誘起される。これにより、モータジェネレータ200は電力を発生し、その電力を出力する。モータジェネレータ200から出力された電力はインバータ装置300を介してバッテリ装置100に供給される。これにより、バッテリ装置100は充電される。
【0050】
モータジェネレータ200の駆動は、電機子210とバッテリ装置100との間の電力がインバータ装置300によって制御されることにより制御される。すなわちインバータ装置300はモータジェネレータ200の制御装置である。インバータ装置300は、スイッチング半導体素子のスイッチング動作によって電力を直流から交流に、交流から直流に変換する電力変換装置であり、パワーモジュール310,パワーモジュール310に実装されたスイッチング半導体素子を駆動する駆動回路330,パワーモジュール310の直流側に電気的に並列に接続され、直流電圧を平滑する電解コンデンサ320、及びパワーモジュール310のスイッチング半導体素子のスイッチング指令を生成し、このスイッチング指令に対応する信号を駆動回路330に出力するモータ制御装置340を備えている。
【0051】
パワーモジュール310は、二つの(上アーム及び下アームの)スイッチング半導体素子を電気的に直列に接続し直列回路(一相分のアーム)が三相分、電気的に並列に接続(三相ブリッジ接続)されて電力変換回路が構成されるように、六つのスイッチング半導体素子を基板上に実装し、アルミワイヤなどの接続導体によって電気的に接続した構造体である。
【0052】
スイッチング半導体素子としては金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)或いは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いている。ここで、電力変換回路をMOSFETによって構成する場合、ドレイン電極とソース電極との間には寄生ダイオードが存在するので、別途、それらの間にダイオード素子を実装する必要がない。一方、電力変換回路をIGBTによって構成する場合、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはダイオード素子が存在していないので、別途、それらの間にダイオード素子を電気的に逆並列に接続する必要がある。
【0053】
各上アームの下アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、コレクタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の正極側に電気的に接続されている。各下アームの上アーム接続側とは反対側(IGBTの場合、エミッタ電極側)はパワーモジュール310の直流側から外部に導出され、バッテリ装置100の負極側に電気的に接続されている。各アームの中点、すなわち上アームの下アーム接続側(IGBTの場合、上アームのエミッタ電極側)と下アームの上アーム接続側(IGBTの場合、下アームのコレクタ電極側)との接続点はパワーモジュール310の交流側から外部に導出され、電機子巻線211の対応する相の巻線に電気的に接続されている。
【0054】
電解コンデンサ320は、スイッチング半導体素子の高速スイッチング動作に起因して生じる電圧変動を抑制する平滑用コンデンサである。平滑用コンデンサとしては電解コンデンサ320の代わりにフィルムコンデンサを用いてもよい。
【0055】
モータ制御装置340は、車両全体の制御を司る車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路330に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310とは熱的に隔絶されたインバータ筐体内に配置されている。
【0056】
駆動回路330は、モータ制御装置340から出力されたスイッチング指令信号を受けて、六つのスイッチング半導体素子に対する駆動信号を生成し、六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成され、パワーモジュール310の近傍、例えばパワーモジュール310のケース上部に配置されている。
【0057】
車両制御装置8は、運転者からのトルク要求,車両の速度など、車両の運転状態を示す複数の状態パラメータに基づいて、モータ制御装置340に対するモータトルク指令信号及びエンジン制御装置(図示省略)に対するエンジントルク指令信号をそれぞれ生成し、それぞれトルク指令信号を、対応する制御装置に出力する。
【0058】
尚、エンジン制御装置は、エンジン4のコンポーネントである空気絞り弁,燃料噴射弁,吸排気弁などの駆動を制御する電子機器であり、車両制御装置8の出力信号から取得したエンジントルク指令信号に基づいて各コンポーネントの駆動指令信号を生成し、各駆動指令信号を各コンポーネントの駆動回路に出力する。
【0059】
バッテリ装置100は、モータジェネレータ200の駆動用電源を構成する、公称出力電圧200ボルト以上の高電圧で、これまでのハイブリッド自動車用駆動バッテリよりも出力密度及びエネルギー密度が高い蓄電装置であり、ジャンクションボックス400を介してインバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。バッテリ装置100としてはリチウムイオンバッテリ装置を用いている。
【0060】
バッテリ装置100は、インバータ装置300及び充電器500によって充放電される蓄電装置であり、主要部として電池モジュール110及び制御装置を備えている。
【0061】
電池モジュール110及び制御装置は、センサ,冷却装置(例えば冷却媒体として空気を電池モジュール110に送風する冷却ファン),リレーなどを含む他の構成部品と共に1つの電源筐体内に収納されている。電源筐体は、車室内の座席の下或いはトランクルーム若しくは床下などに設置される。電源筐体には、インバータ装置300及び充電器500など、バッテリ装置100と同様の高電圧電気機器を一緒に収納してもよい。この収納方式によれば、高電圧ケーブルの這い回しが容易になると共に、配線距離の短縮によってインダクタンスを低減し、電気的な損失を低減できる。
【0062】
電池モジュール110は電気エネルギーの貯蔵庫であり、インバータ装置300及び充電器500に電気的に接続されている。
【0063】
電池モジュール110は、電気エネルギーの蓄積及び放出(直流電力の充放電)が可能な複数のリチウムイオン電池セル10(以下、単に「電池セル10」と記述する)を備えている。複数の電池セル10は、収納ケース(モジュールケース)の内部に配置されて電気的に直列に接続されている。これにより、電池モジュール110には一つの組電池が構成される。電池セル10は電池モジュール110における最小の構成単位であり、単電池と呼ばれる場合もある。電池セル10としては、公称出力電圧が3.0〜4.2ボルト(平均公称出力電圧が3.6ボルト)のものを用いた場合を例に挙げて説明するが、これ以外の電圧仕様のものを用いても構わない。
【0064】
複数の電池セル10は、その状態管理上及び制御上、所定の単位数により区分されて複数の電池群に分けられている。別な言い方をすれば、所定の数の電池セル10が電気的に直列に接続されて一つの電池群が構成され、その電池群が複数、電気的に直列に接続されて組電池が構成されている。所定の単位数としては、例えば4個,6個,10個,12個…というように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって等区分とする。また、所定の単位数としては、4個と6個との組み合わせ…と言うように、最高電位側から最低電池側に向かって電位の順にしたがって複合区分とする場合もある。
【0065】
PHEV1においては、実際には100本前後〜200本前後の電池セル10が搭載され、電気的に直列或いは直並列に接続される。
【0066】
電池モジュール110の正極側とインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側との間の充放電路には、電池モジュール110からインバータ装置300(パワーモジュール310)に供給される電流、或いはインバータ装置300(パワーモジュール310)から電池モジュール110に供給される電流を検出するための電流計測手段(電流センサ又は電流計測回路)が電気的に直列に接続されている。電池モジュール110の両極間(正極側と負極側との間)には、電池モジュール110の両極間電圧を検出するための電圧計測手段(電圧センサ又は電圧計測回路)が電気的に並列に接続されている。電池モジュール110の内部には、複数の温度計測手段(サーミスタ或いは熱電対などのセンサ又は温度計測回路)が設けられている。
【0067】
制御装置は、複数の電子回路部品から構成された電子制御装置であり、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、インバータ装置300及び充電器500に許容充放電量を提供して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する。
【0068】
制御装置は、機能上、2つの階層に分かれて構成されており、バッテリ装置100内において上位(親)に相当するバッテリ制御装置130と、バッテリ制御装置130に対して下位(子)に相当するセル制御装置120とを備えている。
【0069】
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120を構成する電子回路部品はそれぞれ、独立した回路基板に実装されている。セル制御装置120を構成する電子回路部品が実装された回路基板は、セル制御装置120の機能上、電池モジュール110の内部に配置されている。バッテリ制御装置130を構成する電子回路部品が実装された回路基板は別途、制御装置用ケースの内部に収納され、電池モジュール110の近傍に配置されている。バッテリ制御装置130及びセル制御装置120を構成する電子回路部品を共通の一つの回路基板により構成する場合には、その回路基板を制御装置用ケースの内部に収納し、そのケースを電池モジュール110の近傍に配置する。
【0070】
バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、信号伝送回路によってお互いに信号の授受ができるようになっているが、電気的には絶縁されている。これは、お互いの動作電源が異なり、お互いに基準電位が異なるためである。すなわちセル制御装置120は、シャーシグランドから浮動状態にある電池モジュール110を電源とし、バッテリ制御装置130は、シャーシグランドを基準電位とする車載補機用低圧バッテリ(例えば14ボルト系バッテリ)を電源としているためである。このため、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120の間を結ぶ信号伝送路上にはフォトカプラ,容量性結合素子,変圧器などの絶縁140が設けられている。これにより、バッテリ制御装置130及びセル制御装置120は、お互いに基準電位の異なる信号を用いて信号伝送ができる。絶縁140は、セル制御装置120を構成する電子回路部品が実装された回路基板に実装されている。
【0071】
信号伝送回路は、少なくとも2つの異なる使われ方をするシリアル通信用の信号伝送回路から構成されている。本実施形態では、信号伝送回路として、LIN(Local Interconnect Network)と呼ばれる、CAN(Controller Area Network)に準拠する通信規格を採用した信号伝送回路を用いている。信号伝送回路は、バッテリ制御装置130から出力された通信コマンド信号、すなわち通信(制御)内容を示すデータ領域など、複数の領域が設けられた複数バイトの信号を伝送する。
【0072】
バッテリ制御装置130から信号伝送回路を介して出力される通信コマンド信号には、電池セルの検出された端子電圧の送信を要求するための指令信号,電池セルの充電状態の調整を実行させるための指令信号,セル制御装置120を起動させるための指令信号,セル制御装置120の動作を停止させるための指令信号,セル制御装置120から通知された異常の内容を確認するための指令信号などが含まれている。
【0073】
セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された指令信号に基づいてバッテリ制御装置130の手足となって動作し、複数の電池セル10のそれぞれの状態を管理及び制御する。このため、セル制御装置120は、複数の電池セル10の両端子(正極側端子及び負極側端子)に電圧検出用配線を介して電気的に接続されており、複数の電池セル10のそれぞれの端子間電圧を検出している。
【0074】
また、セル制御装置120は、バッテリ制御装置130から出力された、充電状態の調整に関する指令信号に基づいて、複数の電池セル10のうち、充電状態の調整が必要な電池セル10について充電状態を調整している。このため、複数の電池セル10のそれぞれの端子間にはバイパス回路が電気的に並列に接続されている。バイパス回路は、抵抗とスイッチング半導体素子とを電気的に直列に接続した直列回路により構成されている。電池セル10について充電状態はセル制御装置120がバイパス回路のスイッチング半導体素子のオンオフを制御することにより調整することができる。
【0075】
バッテリ制御装置130は、電池モジュール110の状態を管理及び制御すると共に、車両制御装置8又はモータ制御装置340に許容充放電量を通知して、電池モジュール110における電気エネルギーの出入りを制御する電子制御装置であって、マイクロコンピュータやディジタルシグナルプロセッサなどの演算処理装置により構成されており、記憶装置など含む他の電子回路部品と共に回路基板に実装されている。
【0076】
バッテリ制御装置130には、前述した電流計測手段,電圧計測手段及び温度計測手段から出力された計測信号,セル制御装置120から出力された、複数の電池セルの端子間電圧に関する検出信号,セル制御装置120から出力された異常信号,イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号を含む複数の信号が入力されている。イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340から出力された信号は、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる、バッテリ制御装置130,車両制御装置8,モータ制御装置340などの自動車内の複数の制御装置の間を接続してお互いの情報を送受信するための信号伝送回路を介してバッテリ制御装置130に入力されている。
【0077】
バッテリ制御装置130は、それらの入力信号から得られた情報、予め設定された、電池セルの特性情報及び演算に必要な演算情報を含む複数の情報に基づいて、電池モジュール110の状態(例えば電池モジュール110の充電状態「以下、SOC(State Of Charge)と記述する」及び劣化状態「以下、SOH(State Of Health)と記述する」などを検知するための演算,電池モジュール110を制御するための演算、及び電池モジュール110の充放電量を制御するための演算を含む複数の演算を実行する。そして、バッテリ制御装置130は、それらの演算結果に基づいて、セル制御装置120に対する指令信号,電池モジュール110の充放電量を制御するための許容充放電量に関する信号,電池モジュール110のSOCに関する信号、及び電池モジュール110のSOHに関する信号を含む複数の信号を生成して出力する。
【0078】
それらの出力信号のうち、許容充放量(許容充放電電流又は許容充放電電力)に関する信号,SOCに関する信号,SOHに関する信号、及び異常状態通知に関する信号を含む複数の出力信号は、上位制御装置である車両制御装置8又はモータ制御装置340に対して、車内ローカルエリアネットワークを介して出力される。
【0079】
モータ制御装置340は、バッテリ制御装置130から出力された許容充放電量に関する信号、及び車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、或いはバッテリ制御装置130から出力された許容充放電量を考慮して車両制御装置8から出力されたトルク指令信号を受けて、パワーモジュール310におけるスイッチングを制御する。これにより、インバータ装置300は、許容充放電量の範囲内で、トルク指令信号に基づく交流電力をモータジェネレータ200に供給できるように、或いはトルク指令信号に基づいてモータジェネレータ200から得られた交流電力を直流電力に変換して供給できるように、電池モジュール110を充放電させる。すなわちバッテリ制御装置130によるインバータ装置300の制御によって電池モジュール110の充放電が制御される。
【0080】
バッテリ制御装置130はリーク検出装置を備えている。リーク検出装置は、電池モジュール110からモータジェネレータ200までの強電系と、弱電系の基準電位となるシャーシグランドとの間に、それらの間の電気的な接続によってリークが生じているか否かを検出する。
【0081】
バッテリ装置100には、バッテリ装置100よりも電圧の低いバッテリ(図示省略)が電気的に接続されている。低圧バッテリは、ライトやオーディオなどの車載補機及び電子制御装置などの動作電源である、公称出力電圧12ボルトの鉛電池であり、図示省略したDC−DCコンバータを介してバッテリ装置100に電気的に接続されている。DC−DCコンバータは、直流電力を、所定の電圧に昇降圧された直流電力に変換するための電力変換装置である。
【0082】
家庭の商用電源560或いは電気スタンドの給電装置からバッテリ装置100を充電するプラグインモードの場合、充電器500の外部電源接続端子に電気的に接続された電源ケーブルの先端の電源プラグ550を商用電源560側のコンセント570に差し込み或いは電気スタンドの給電装置から延びる電源ケーブルを充電器500の外部電源接続端子に接続し、充電器500と商用電源560或いは電気スタンドの給電装置とを電気的に接続する。これにより、単相或いは三相の交流電力が商用電源560或いは電気スタンドの給電装置から充電器500に供給される。充電器500は、供給された交流電力を直流電力に変換し、かつバッテリ装置100の充電電圧に調整した後、バッテリ装置100に供給する。これにより、バッテリ装置100は充電される。
【0083】
尚、本実施形態では、家庭の商用電源560と充電器500とを電気的に接続し、バッテリ装置100を充電する場合を例に挙げて説明するが、電気スタンドの給電装置からの充電も基本的には家庭の商用電源560からの充電と同じように行われる。但し、家庭の商用電源560からの充電と電気スタンドの給電装置からの充電とでは、充電器500に供給される電流容量及び充電時間が異なり、電気スタンドの給電装置からの充電の方が、家庭の商用電源560からの充電よりも電流容量が大きく、かつ充電時間が速い、すなわち急速充電ができる。
【0084】
充電器500は、家庭の商用電源560から供給された交流電力を直流電力に変換すると共に、この変換された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧に昇圧してバッテリ装置100に供給する電力変換装置であり、交直変換回路510,昇圧回路520,駆動回路530及び充電制御装置540を主な構成機器として備えている。
【0085】
交直変換回路510は、外部電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換回路であり、例えば複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、外部電源から供給された交流電力を直流電力に整流するために設けられた整流回路、及び整流回路の直流側に電気的に接続され、整流回路の出力の力率を改善するために設けられた力率改善回路を備えている。交流電力を直流電力に変換する回路としては、ダイオード素子が逆並列に接続された複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成された回路を用いても構わない。
【0086】
昇圧回路520は、交直変換回路510(力率改善回路)から出力された直流電力をバッテリ装置100の充電電圧まで昇圧するための電力変換回路であり、例えば絶縁型のDC−DCコンバータにより構成されている。絶縁型のDC−DCコンバータは、変圧器,変圧器の一次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のスイッチング半導体素子のブリッジ接続により構成され、交直変換回路510から出力された直流電力を交流電力に変換して変圧器の一次側巻線に入力する変換回路,変圧器の二次側巻線に電気的に接続されると共に、複数のダイオード素子のブリッジ接続により構成され、変圧器の二次側巻線に発生した交流電力を直流電力に整流する整流回路,整流回路の出力側(直流側)の正極側に電気的に直列に接続された平滑リアクトル,整流回路の出力側(直流側)の正負極間に電気的に並列に接続された平滑コンデンサから構成されている。
【0087】
充電制御装置540は、充電器500によるバッテリ装置100の充電終始や、充電時に充電器500からバッテリ装置100に供給される電力,電圧,電流などを制御するために、車両制御装置8から出力された信号や、バッテリ装置100の制御装置から出力された信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)を生成し、駆動回路530に出力する電子回路装置であり、マイクロコンピュータなどの演算処理装置を含む複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0088】
車両制御装置8は、例えば充電器500の入力側の電圧を監視し、充電器500と外部電源の両者が電気的に接続されて充電器500の入力側に電圧が印加され、充電開始状態になったと判断した場合には、充電を開始するための指令信号を、バッテリ装置100の制御装置から出力されたバッテリ状態信号に基づいてバッテリ装置100が満充電状態になったと判断した場合には、充電を終了するための指令信号を、それぞれ充電制御装置540に出力する。このような動作は、モータ制御装置340或いはバッテリ装置100の制御装置が行ってもよいし、バッテリ装置100の制御装置と協調して充電制御装置540が自ら行ってもよい。
【0089】
バッテリ装置100の制御装置は、充電器500からバッテリ装置100に対する充電が制御されるように、バッテリ装置100の状態を検知してバッテリ装置100の許容充電量を演算し、この演算結果に関する信号を充電器500に出力する。
【0090】
駆動回路530は、充電制御装置540から出力されたトルク指令信号を受けて、昇圧回路520の複数のスイッチング半導体素子に対する駆動信号を発生し、複数のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する電子回路装置であり、スイッチング半導体素子や増幅器などの複数の電子部品が回路基板に実装されることにより構成されている。
【0091】
尚、交直変換回路510がスイッチング半導体素子によって構成されている場合には、充電制御装置540から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対するスイッチング指令信号が駆動回路530に出力され、駆動回路530から、交直変換回路510のスイッチング半導体素子に対する駆動信号が交直変換回路510のスイッチング半導体素子のゲート電極に出力され、交直変換回路510のスイッチング半導体素子のスイッチングが制御される。
【0092】
ジャンクションボックス410の内部には第1及び第2正極側リレー410,430及び第1及び第2負極側リレー420,440が収納されている。
【0093】
第1正極側リレー410はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第1負極側リレー420はインバータ装置300(パワーモジュール310)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2正極側リレー430は充電器500(昇圧回路520)の直流正極側とバッテリ装置100の正極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。第2負極側リレー440は充電器500(昇圧回路500)の直流負極側とバッテリ装置100の負極側との間の電気的な接続を制御するためのスイッチである。
【0094】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420は、モータジェネレータ200の回転動力が必要な運転モードにある場合及びモータジェネレータ200の発電が必要な運転モードにある場合に投入され、車両が停止モードにある場合(イグニションキースイッチが開放された場合)、電動駆動装置或いは車両に異常が発生した場合及び充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に開放される。一方、第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440は、充電器500によってバッテリ装置100を充電する場合に投入され、充電器500によるバッテリ装置100の充電が終了した場合及び充電器500或いはバッテリ装置100に異常が発生した場合に開放される。
【0095】
第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、車両制御装置8から出力される開閉指令信号によって制御される。第1正極側リレー410及び第1負極側リレー420の開閉は、他の制御装置、例えばモータ制御装置340或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、充電制御装置540から出力される開閉指令信号によって制御される。第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440の開閉は、他の制御装置、例えば車両制御装置8或いはバッテリ装置100の制御装置から出力される開閉指令信号によって制御しても構わない。
【0096】
以上のように、本実施形態では、バッテリ装置100とインバータ装置300と充電器500との間に第1正極側リレー410,第1負極側リレー420,第2正極側リレー430及び第2負極側リレー440を設けて、それらの間の電気的な接続を制御するようにしているので、高電圧である電動駆動装置に対する高い安全性を確保できる。
【0097】
次に、図2乃至図9を用いて、電池セル10及び複数の電池セル10を備えた電池モジュール110の構成について説明する。
【0098】
図2は電池モジュール110の外観構成を示す。図3は電池セル10の外観及び内部の構成を示す。図4は電極捲回体41(金属捲芯50を省略)の外観構成を示す。図5は、金属捲芯50に対する電極捲回体41の捲回状態及び集電部の構成を示す。図6乃至図9は金属捲芯50の外観構成を示す。
【0099】
本実施形態では、12個の電池セル10を用いて一つの組電池を構成した電池モジュール110を例に挙げて説明する。
【0100】
まず、電池セル10の構成について説明する。
【0101】
図3に示すように、電池セル10は角型電池セルであり、密閉された扁平直方体形状の電槽20を備えている。電槽20は、対向配置された、最も面積が大きい矩形状の2つの主面(例えば上面と下面)と、この2つの主面の4辺(4縁)に沿って2つの主面に垂直に設けられ、主面よりも面積が小さい矩形状の4つの副面(対向配置された2組の側面)とを備えると共に、2つの主面の間の長さが主面の4辺の長さよりも短い6面体(短角柱)であり、2つの構成要素によって構成されている。2つの構成要素の一方は、2つの主面及び3つの副面を備え、残りの1つの副面に対応する部分が開口した扁平直方体形状の容器体である電池缶21である。2つの構成要素の他方は、電池缶21の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶21の開口部の輪郭に合致するように形成された矩形状の平板である電池蓋22である。電池缶21と電池蓋22の両者はレーザビーム溶接によって接合されている。電槽20(電池缶21及び電池蓋22)は金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0102】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、電池セル10の搭載方向に関係なく、扁平直方体形状の容器体である電池缶21の開口部側とは反対側の面を底面、この底面の4辺に沿って底面に垂直に設けられた4面のうち、底面の長辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第1側面、底面の短辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第2側面と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0103】
また、本実施形態では、説明の便宜上、平行に対向配置された2つの長辺、この長辺に直交すると共に、並行に対向配置され、長辺よりも長さが短い2つの短辺により形成される矩形平面形状を備えた構成要素において、長辺と同じ方向に延びる(短辺が対向する)方向を長手方向,短辺と同じ方向に延びる(長辺が対向する)方向を短手方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0104】
電池蓋22には、その外表面から外に向かって突出するように、外部導体と接続するための外部導体接続導体である正極外部端子30及び負極外部端子31が設けられている。正極外部端子30は電池蓋22の長手方向一方側端部に配置され、負極外部端子31は電池蓋22の長手方向他方側端部に配置されている。電池蓋22と正極側外部端子30との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための正極シール材32が設けられている。電池蓋22と負極側外部端子31との間には両者間を電気的に絶縁すると共に、電槽20内部を気密及び液密に保つための負極シール材33が設けられている。電槽20の内部において、正極外部端子30には、内部接続導体である正極接続板(図示省略)が、正極シール材32によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。電槽20の内部において、負極外部端子31には、内部接続導体である負極接続板34が、負極シール材33によって電池蓋22から電気的に絶縁された状態で機械的及び電気的に接続されている。このように、正極外部端子30及び負極外部端子31と電槽20との間が電気的に絶縁されているので、電槽20は電気的に中立状態、すなわち電位を持たない状態になっている。
【0105】
正極外部端子30は円柱形状の金属製部材であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。負極外部端子31は円柱形状の金属製部材であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。正極シール材32及び負極シール材33は、電気的な絶縁性を有する樹脂製部材であり、その材質としてポリフェニレンサルファイド(PPS)或いはポリブチレンテレフタレート(PBT)若しくはペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)を用いている。負極接続板34は、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質として銅或いは銅を主材とする合金を用いている。正極接続板は負極接続板34と同じ形状のものであって、平板を所定の形状に成形した金属製の成形体であり、その材質としてアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0106】
電槽20(電池缶21)の内部には発電要素体40が収容されている。発電要素体40は、電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入される。電槽20(電池缶21)の内部には、電池蓋22に設けられた注液孔70を介して電解液が注入されている。注液孔70は、電池蓋22をその外表面から内表面に貫通した貫通孔であり、電槽20の内部に電解液を注入した後、レーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
【0107】
電解液としては、例えばエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1:1の混合溶液中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lとなるように溶解した非水系の有機溶媒を用いている。
【0108】
尚、電解質としては、LiClO4,LiAsF6,LiBF4,LiB(C6H5)4,CH3SO3Li,CF3SOLiなどやこれらの混合物を用いてもよい。また、非水電解液の溶媒としては、プロピレンカーボネート,エチレンカーボネート,ジメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン,γ−ブチルラクトン,テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン,ジエチルエーテル,スルホラン,メチルスルホラン,アセトニトリル,プロピオニトリル,プロピオニトリルなど、少なくとも1種以上の混合溶媒を用いてもよい。
【0109】
発電要素体40には正極接続板及び負極接続板34が機械的かつ電気的に接続されている。これにより、正極外部端子30及び負極外部端子31が発電要素体40と電気的に接続されると共に、発電要素体40が電池蓋22によって機械的に支持される。すなわち電池缶11の内部において発電要素体40は電池蓋22にぶら下がった状態にある。電池蓋22,正極外部端子30及び負極外部端子31,正極シール材32及び負極シール材33,正極接続板及び負極接続板34は予め機械的に一体化されて、電池蓋アセンブリとして組み立てられる。発電要素体40は電池蓋アセンブリの正極接続板及び負極接続板34に予め機械的に接続されて、発電要素アセンブリとして組み立てられた後、電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入されて電池缶21の内部に収容される。
【0110】
図4,図5に示すように、発電要素体40は、後述する金属捲芯50と、セパレータ44,負極板43,セパレータ44,正極板42をその順に積層したシート状の積層体を金属捲芯50の周りに扁平形状に捲回した電極捲回体41とを備えている。
【0111】
尚、図4では金属捲芯50の図示を省略している。図5ではセパレータ44の図示を省略している。
【0112】
また、本実施形態では、説明の便宜上、電極捲回体41の捲回方向を電極捲回方向、電極捲回体41の扁平捲回面上において電極捲回方向に直交する方向を電極幅方向、電極捲回体41の扁平捲回面を垂直に貫く方向を電極扁平方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0113】
さらに、本実施形態では、説明の便宜上、電極板の電極捲回方向と同じ方向を極板捲回方向、電極板の電極幅方向と同じ方向を極板幅方向、電極板の電極扁平方向と同じ方向を極板垂直方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0114】
正極板42は、極板幅方向一端部に、正極活物質合剤を塗布しない未塗工部45が設けられるように、正極集電箔上に正極活物質合剤を塗布して構成している。正極集電箔は、例えば厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔(アルミニウム板)である。正極活物質合剤は、正極活物質として量論組成のマンガン酸リチウム(化学式LiMnO2)100重量部に対し、導電材として10重量部の鱗片状黒鉛,結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を添加,混練したものであり、アルミニウム箔(アルミニウム板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
【0115】
負極板43は、極板幅方向他端部に、負極活物質合剤を塗布しない未塗工部46が設けられるように、負極集電箔上に負極活物質合剤を塗布して構成している。負極集電箔は、例えば厚さ10μmの帯状の銅箔(銅板)である。負極活物質合剤は、負極活物質として非晶質炭素粉末100重量部に対して、結着剤(バインダ)として10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルビロリドン(NMP)を添加、混練したものであり、銅箔(銅板)の両面に略均等かつ略均一に塗布されている。
【0116】
尚、正極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムイオンを挿入したリチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶中のリチウムや遷移金属の一部をそれら以外の元素で置換あるいはドープした材料などを用いてもよい。例えばスピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウム(例えば、Li1+xMn2−xO4),マンガン酸リチウムの一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物(例えば、Li1+xMyMn2−x−yO4,MはCo,Ni,Fe,Cu,Al,Cr,Mg,Zn,V,Ga,B,Fの少なくとも1種),層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、これらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム−金属複合酸化物などがある。また、結晶構造については、スピネル系,層状系,オリビン系のいずれの結晶構造を有していてもよい。
【0117】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを脱挿入可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材,コークスなどの炭素質材料などを用いてもよい。また、粒子形状としては、鱗片状,球状,繊維状,塊などを用いてもよい。
【0118】
さらに、結着材(バインダ)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリエチレン,ポリスチレン,ポリブタジエン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレン/ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ニトロセルロース,シアノエチルセルロース,各種ラテックス,アクリロニトリル,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,フッ化プロピレン,フッ化クロロプレン,アクリル系樹脂などの重合体及びこれらの混合体などを用いてもよい。
【0119】
セパレータ44は、正極板42及び負極板43が直接接触しないようにするための微多孔性部材であり、例えば厚さ30μmのポリエチレン製の帯状部材である。セパレータ44は極板幅方向寸法が正極板42及び負極板43の極板幅方向寸法よりも小さい。
【0120】
電極捲回体41において、正極板42の未塗工部45と負極板43の未塗工部46は互いに反対側に位置している。すなわち電極捲回体41の電極幅方向一方側に正極板42の未塗工部45が配置され、その他方側に負極板43の未塗工部46が配置されるように、正極板42と負極板43とを電極捲回体41の電極幅方向において相反する方向にずらして積層している。このような構成によれば、電極捲回体41の本体部分(正極板42及び負極板43の活物質合剤塗工部位とセパレータ44との積層部分)から、後述する集電箔となる未塗工部45,46がはみ出す(露出する)ように、電極捲回体41を形成することができる。
【0121】
図6乃至図9に示すように、金属捲芯50は、2つの金属片を連結(結合)部材により連結(結合)させた連結(結合)体、かつ矩形状の平板をその長手方向中央から長手方向両側に所定距離(等距離)進んだ部分を直角(平板に対して垂直な方向)に折り曲げて窪ませた或いは突出させた、断面が矩形波(パルス波)形状の成型体であり、捲回部51,正極集電部52及び負極集電部53の3つの要素から構成されている。
【0122】
捲回部51は、金属捲芯50の長手方向中央部に位置すると共に、電極捲回体41の捲回中心部に配置されて、電極捲回体41の本体部分が捲回された矩形状の平板部分である。捲回部51の長手方向の長さは電極捲回体41の本体部分(正極板42及び負極板43の活物質合剤塗工部位とセパレータ44との積層部分)の電極幅方向の長さよりも長い。これは、未塗工部45,46を正極集電部52及び負極集電部53に集積して固定したとき、未塗工部45,46に生じる変形部分(電極幅方向の長さ)を考慮しているためである。捲回部51の長手方向は電極幅方向と同じ方向になる。捲回部51の短手方向は電極捲回方向と同じ方向になる。
【0123】
正極集電部52は、捲回部51の長手方向一方側端部に位置して、捲回部51の長手方向一方側端部から連続して延びて形成された、断面がL字状の部分であり、捲回部51を水平方向に対して平行に配置としたとき、捲回部51の長手方向一方側端部から垂直方向一方側に直角に折れ曲がって延び、この後、水平方向で捲回部51から遠ざかる方向に直角に折れ曲がって延びるように形成されている。すなわち正極集電部52は、捲回部51の平面に対して垂直な垂直面部52aと、捲回部51の平面に対して平行な水平面部52bとを備えている。水平面部52bは、後述するように、正極板42の未塗工部45の接合部として機能する。
【0124】
負極集電部53は、正極集電部52と対をなすように正極集電部52と同じ形状にて構成された部位、すなわち捲回部51の長手方向他方側端部に位置して、捲回部51の長手方向他方側端部から連続して延びて形成された、断面がL字状の部分であり、捲回部51を水平方向に対して平行に配置としたとき、捲回部51の長手方向他方側端部から垂直方向一方側に直角に折れ曲がって延び、この後、水平方向で捲回部51から遠ざかる方向に直角に折れ曲がって延びるように形成されている。すなわち負極集電部53はそれぞれ、捲回部51の平面に対して垂直な垂直面部53aと、捲回部51の平面に対して平行な水平面部53bとを備えている。水平面部53bは、後述するように、負極板43の未塗工部46の接合部として機能する。
【0125】
垂直面部52a,53a及び水平面部52b,53bは矩形状の平板であり、それぞれの長手方向が捲回部51の短手方向と同じ方向になるように、かつ短手方向が捲回部51の長手方向と同じ方向になるように配置されている。また、垂直面部52a,53a及び水平面部52b,53bは、それぞれの長手方向の長さが捲回部51の短手方向の長さよりも短く、短手方向の長さが捲回部51の長手方向の長さよりも短い。さらに、水平面部52b,53bの高さ(捲回部51の平面に垂直な方向における水平面部52b,53bと捲回部51との平面間距離)は、電極捲回体41の捲回中心から電極捲回体41の外周表面までの厚さの約1/2に設定されている。
【0126】
捲回部51の長手方向中間位置よりも負極集電部52寄りの位置には異種金属の境界部位56がある。この境界部位56を境界として捲回部51の長手方向一方側(正極集電部51側)及び正極集電部51は、アルミニウム製或いはアルミニウムを主材とする合金製の第1金属片54から形成されている。また、その境界部位56を境界として捲回部51の長手方向他方側(負極集電部52側)及び負極集電部52は、銅製或いは銅を主材とする合金製の第2金属片55から形成されている。第1金属片54及び第2金属片55は板厚が例えば1.5mm程度の薄肉板である。
【0127】
境界部位56では、同一平面上において、第1金属片54の第2金属片55側端部と第2金属片55の第1金属片54側端部とが隙間を介して対向している。境界部位56には第1金属片54と第2金属片との係合部が形成されている。第2金属片55の第1金属片54側端部は縁の形状が略J字状になるように形成されている。第1金属片54の第2金属片55側端部は縁の形状が、上下左右に反転した略J字状になるように形成されている。このように形成された第1金属片54及び第2金属片55の端部同士は、お互いに入り組むように隙間を介して係合されている。
【0128】
具体的に説明すると、第1金属片54の第2金属片55側端部は、捲回部51の短手方向一方側端部から中央部にかけて、捲回部51の長手方向に2段階の長さで矩形状に連続して切欠かれている。第2金属片55の第1金属片54側端部は、捲回部51の短手方向他方側端部から中央部にかけて、捲回部51の長手方向に2段階の長さで矩形状に連続して切欠かれている。第1金属片54の2段階の切欠き部分は第2金属片55寄りの第1切欠き部における捲回部51の短手方向の長さがもう一方の第2切欠き部における捲回部51の短手方向の長さよりも短い。第2金属片55の2段階の切欠き部分は第1金属片54寄りの第1切欠き部における捲回部51の短手方向の長さがもう一方の第2切欠き部における捲回部51の短手方向の長さよりも短い。これにより、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位が、第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位よりも捲回部51の短手方向一方側に突出した形状になる。第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位が、第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位よりも捲回部51の短手方向他方側に突出した形状になる。
【0129】
このような形状によれば、第1金属片54と第2金属片55とを係合したとき、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位が、第2金属片55の第2切欠き部によって第1切欠き部よりも余計に切欠かれた部位(窪み部位)に、第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位が、第1金属片54の第2切欠き部によって第1切欠き部よりも余計に切欠かれた部位(窪み部位)に、それぞれ係合し、お互いの第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位同士が、捲回部51の長手方向の配置位置が入れ替わった状態で捲回部51の短手方向にオーバーラップし、捲回部51の長手方向に対向するようになる。
【0130】
尚、第1金属片54の第1切欠き部と第2金属片55の第1切欠き部、第1金属片54の第2切欠き部と第2金属片55の第2切欠き部、第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位と第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の部位、第1金属片54の第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位と第2金属片55の第2切欠き部に対応する残りの金属片の部位は、それぞれ、捲回部51の長手方向及び短手方向の長さが等しい。
【0131】
捲回部51(第1金属片54及び第2金属片55)の短手方向両端部には、板厚がその他の部位よりも薄くなるように切削加工された連結(結合)部57が形成されている。連結部57は捲回部51の長手方向一方側端部から他方側端部にわたって形成されており、連結(結合)部材58によってその外側全体が覆われている。これにより、第1金属片54及び第2金属片55は連結(結合)される。連結部材58は第1金属片54と第2金属片55との間の隙間にも挿入されている。連結部材58は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の樹脂部材であり、第1金属片54と第2金属片55とを連結する役目の他に、第1金属片54と第2金属片55との間の隙間において第1金属片54と第2金属片55との間を電気的に絶縁する役目も担っている。
【0132】
連結部57における連結部材58の外側は半円状に面取りされている。これは、金属捲芯50に対して電極捲回体41を捲回するとき、金属捲芯50の角部によって電極捲回体41が損傷することを防止するためである。連結部57における連結部材58の直径は捲回部51の板厚とほぼ同じである。このようにすれば、損傷につながる余分な変形を電極捲回体41に与えることなく、電極捲回体41を金属捲芯50に捲回することができる。
【0133】
金属捲芯50は、電極捲回体41を捲回するときの軸芯としての機能を担う他に、発電要素体40の線膨張係数(物質固有の指数であり、温度1℃の上昇によって物質の長さが変化(増加)するときの割合を表した熱膨張係数の一つ)を調整するための機能を担っている。このため、金属捲芯50は線膨張係数が所定の値に設定されている。本実施形態では、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数(23.0〜23.5×10-6/℃)と銅の線膨張係数(16.5〜16.8×10-6/℃)との中間の値(19.8〜20.2×10-6/℃)に設定している。
【0134】
尚、熱膨張係数としては、体積の変化割合を示す体膨張係数があり、線膨張係数を3倍することにより換算できる。
【0135】
金属捲芯50の線膨張係数の設定は、捲回部51の長手方向における第1金属片54及び第2金属片55の占める割合、すなわち第1金属片54の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位と第2金属片55の第1切欠き部に対応する残りの金属片の突出部位との境界中央から捲回部51の長手方向一方側端部までの長さ(a)と、その境界中央から捲回部51の長手方向他方側端部までの長さ(b)との比率(a:b)を変えることにより調整することができる。本実施形態では、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定するために、aの値をbの値よりも大きく、すなわちアルミニウムを主材とする第1金属片54の捲回部51に占める割合を、銅を主材とする第2金属片55の捲回部51に占める割合よりも大きくしている。
【0136】
電池セル10を構成する金属製部品は、アルミニウムを主材とする金属部品と、銅を主材とする金属部品と、アルミニウムと銅とが混在した金属部品とに分けられる。それらの線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品、例えば電槽20,正極外部端子30,正極接続板(図示省略)が最も大きく、銅を主材とする金属部品、例えば負極外部端子31,負極接続板34が最も小さい。アルミニウムと銅とが混在した金属部品、例えば発電要素体40,電極捲回体41,金属捲芯50の線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との間にある。
【0137】
ここで、電極捲回体41の線膨張係数は、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値よりも、銅を主材とする金属部品の線膨張係数に近い値にあり、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数との差が大きい。捲芯を使用しないなどの場合には、電極捲回体41の線膨張係数が発電要素体40の線膨張係数となり、実施形態の説明の冒頭に述べた課題が生じる。
【0138】
そこで、本実施形態では、前述のように、金属捲芯50の線膨張係数を、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値とし、この金属捲芯50に電極捲回体41を捲回している。これにより、本実施形態では、発電要素体40の線膨張係数を電極捲回体41の線膨張係数よりも大きく(金属捲芯50の線膨張係数と電極捲回体41の線膨張係数との間に設定)し、アルミニウムを主材とする金属部品、例えば電槽20との線膨張係数との差を小さくしている。
【0139】
以上のように、発電要素体40の線膨張係数を金属捲芯50によって調整してなる本実施形態によれば、線膨張係数が電極捲回体41の線膨張係数と電槽20の線膨張係数との間に位置する金属捲芯50により、発電要素体4の線膨張係数と電槽20の線膨張係数との差に応じて、電極捲回体41を構成する集電箔や活物質,発電要素体40から電槽20に至るまでの部品、さらには各部品間の接合部などに作用する熱応力を小さく抑制することができ、それらが損傷に至る可能性を低くして、電池セル10に対する信頼性を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、金属捲芯50を、アルミニウムを主材とする第1金属片54及び銅を主材とする第2金属片55から製作しているので、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができる。
【0141】
尚、本実施形態によれば、金属捲芯50を、アルミニウムを主材とする第1金属片54及び銅を主材とする第2金属片55から製作した場合を例に挙げて説明したが、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができ、かつ前述したように、発電要素体40の線膨張係数を調整できる金属材料、例えばニッケルなどがあれば、それを用いても構わない。
【0142】
また、本実施形態によれば、金属捲芯50を電極捲回体41の捲回中心部に設けたので、電極捲回体41の内部の中心部から発熱を金属捲芯50を介して電極捲回体41の外部に正負極の両側から効率良く引き出すことができるので、電極捲回体41の内部の中心部から冷却することができる。金属捲芯50によって引き出された熱は、正極及び負極外部端子30,31に正極及び負極接続板34を介して伝達され、正極及び負極外部端子30,31から電池セル10の外部(電池モジュール110の冷却媒体流路)に放出することができる。
【0143】
電極捲回体41は、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体を、図5(a)に示すように、捲回部51の短手方向に捲回することにより製作される。このとき、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面に、捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部52b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部52bの位置よりも内周側に位置する捲回部位の未塗工部45が集積されながら、また、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面に、捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部53b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部53bの位置よりも内周側に位置する捲回部位の未塗工部46が集積されながら、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体が捲回され、電極捲回体41が製作される。
【0144】
尚、正極板42及び負極板43を含む積層体を金属捲芯50の捲回部51に対して捲回するにあたっては、正極板42及び負極板43を含む積層体の捲き始め及び捲き終わりにおいて、セパレータ44のみを2〜3周程度、余分に捲回している。また、正極板42及び負極板43を含む積層体を金属捲芯50の捲回部51に対して捲回するにあたっては、負極板43の長さを正極板42の長さよりも長くし、電極捲回体41の最内周及び最外周において、正極板42が負極板43に対して捲回方向にはみ出すことがないようにしている。
【0145】
図5(a)に示すように、電極捲回体41を製作した後、図5(b)に示すように、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部45、すなわち捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部52b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部52bの位置よりも外周側に位置する捲回部位の未塗工部45を、正極集電部52の水平面部52bの捲回部51側とは反対側の表面に外周側から押圧して集積すると共に、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部46、すなわち捲回部51を境界として電極捲回体41の水平面部53b側半分で、かつ電極捲回体41の水平面部53bの位置よりも外周側に位置する捲回部位の未塗工部46を、負極集電部53の水平面部53bの捲回部51側とは反対側の表面に外周側から押圧して集積する。
【0146】
この後、正極集電部52の水平面部52bに対する未塗工部45の集積部位を外周側から押さえ板59により押圧した状態で、また、負極集電部53の水平面部53bに対する未塗工部46の集積部位を外周側から押さえ板60により押圧した状態で、当該集積部位のそれぞれが超音波溶接によって接合される。
【0147】
押さえ板59は、アルミミウムを主材とする矩形状の金属片(平板)であり、その長手方向が電極捲回方向となるように、未塗工部45の集積部位に配置されている。押さえ板60は、銅を主材とする矩形状の金属片(平板)であり、その長手方向が電極捲回方向となるように、未塗工部46の集積部位に配置されている。
【0148】
本実施形態によれば、正極集電部52及び負極集電部53の水平面部52b,53bの捲回部51側とは反対側の表面と対向する未塗工部45,46のみを集積して接合しているので、正極集電部52及び負極集電部53の水平面部52b,53bの両側の表面に、この表面と対向する未塗工部45,46を集積して接合する場合と比べて、未塗工部45,46の集積及び接合によって集電箔が受ける負荷を小さくすることができ、温度変化や振動などを起因とする外力が集電箔に作用したとき、この外力を受けて集電箔の接合部位及びその周辺部位などが破損に至る可能性を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、集電箔の接合部位及びその周辺部位などの信頼性を高めることができ、電池セル10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0149】
しかも、本実施形態によれば、高さが電極捲回体41の捲回中心から外周表面までの厚さの約1/2に設定された水平面部52b,53bに対して未塗工部45,46を集積しているので、金属捲芯50に段差を設けない場合に比べて、集積による未塗工部45,46の電極捲回体41本体側部位の変形を均一にすることができ、集電箔に発生する歪を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、集電箔の接合部位及びその周辺部位などの信頼性をさらに高めることができ、電池セル10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0150】
未塗工部45,46の集積部位を溶接した後、発電要素体40は、前述した電池蓋アセンブリに対して、電極捲回体41の電極捲回方向両端部に電極幅方向に渡って形成された捲回折り返し部の一方側が電池蓋22の長手方向に沿って、電池蓋22の内面と対向するように組み付けられる。この後、正極接続板が押さえ板59に、負極接続板34が押さえ板60に、それぞれ超音波溶接により接合される。これにより、電極捲回体41の正極板42と正極外部端子30とが、電極捲回体41の負極板43と負極外部端子31とが、それぞれ、機械的及び電気的に接続され、発電要素アセンブリが組み立てられる。
【0151】
正極接続板及び負極接続板34の両者は、材質が異なっているものの、構成要素及び形状が同じである。このようなことから、以下では、図3に図示されている負極接続板34を代表に挙げて、その構成を説明する。
【0152】
図3に示すように、負極接続板34は、端子接続部34a,側面部34b及び接続片部34cの3つの要素が一体成形された成形体であり、平板が所定の形状に成型された成型品である。このように、複数の要素が一体成形された成形体を接続板として用いることにより、負極接続板34の強度及び剛性を高くすることができる。
【0153】
端子接続部34aは、負極外部端子31に機械的に接続された矩形状の金属片(平板)である。端子接続部34aは、その平面が電池蓋22の内面及び電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側と対向するように、かつ電池蓋22の内面及び電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側に沿って、電池蓋22の長手方向及び電極捲回体41の電極幅方向と同じ方向に延びるように、さらには長手方向が電池蓋22の長手方向及び電極捲回体41の電極幅方向と同じ方向になるように配置されている。
【0154】
側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側(正極側外部端子30側とは反対側)端部から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。側面部34bは、端子接続部34aの長手方向一方側端部から電池缶21の底面側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、電池缶21の第2側面の内面及び電極捲回体41の電極幅方向負極側端部に対向するように、かつ電池缶21の第2側面の内面及び電極捲回体41の電極幅方向負極側端部に沿って、電池缶21の底面側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び電極捲回体41の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部は、押さえ板60の長手方向他方側(電極捲回体41の捲回折り返し部の他方側)端部に対応する位置まで延びている。
【0155】
接続片34cは、側面部34bの短手方向における電極捲回体41の未塗工部46の集積側端部の縁から連続して形成された矩形状の金属片(平板)である。接続片34cは、側面部34bの短手方向における電極捲回体41の未塗工部46の集積側端部、かつ側面部34bの端子接続部34a側とは反対側端部から押さえ板60の長手方向一方側(電極捲回体41の捲回折り返し部の一方側)端部に対応する位置に至る部位の縁から発電要素体40側に向かって、所定の曲率をとりながら略直角に折れ曲がっていると共に、その平面が、押さえ板60と対向するように、かつ発電要素体40側に延びるように、さらには長手方向が電池缶21の第2側面の長手方向及び電極捲回体41の電極捲回方向と同じ方向になるように配置されている。接続片34cの押さえ板60との接合面の面積は押さえ板60の平面の面積よりも小さい。
【0156】
接続片34cの長手方向の3箇所には、接続片34cを押さえ板60に超音波溶接するための溶接部34dが形成されている。溶接部34dは、接続片34cの平面を窪ませ、他の部位よりも肉厚を薄くした薄肉部である。
【0157】
発電要素アセンブリの組み立て後、発電要素アセンブリは、電極捲回体41の捲回折り返し部の他方側が挿入側となって、電池缶21の内部に電池缶21の開口部から挿入される。これにより、発電要素体40は電池缶21の内部に収容される。この後、電池缶21に電池蓋22がレーザビーム溶接によって接合される。
【0158】
電池缶21に電池蓋22が接合された後、電池蓋22の長手方向中央部よりも負極外部端子31寄りに設けられた注液孔70から電解液が電槽20内に注入される。電解液を注入後、注液孔70はレーザビーム溶接によって気密及び液密に封止される。
【0159】
電池セル10の内部にはガス排出弁が設けられている。ガス排出弁は、電池セル10に何らかの異常が生じ、電解液が気化して内圧が上昇した場合、所定の内圧で作動して、電池セル10の外部にミスト状態のガスを放出し、電池セル10を保護するための安全弁である。電池蓋22の長手方向中央部にはガス排出弁が開放した場合、電槽20内部に発生したガスを電槽20の内部から外部に導くためのガス排出管80が設けられている。
【0160】
次に、12個の電池セル10を用いて構成した電池モジュール110の構成を説明する。
【0161】
電池セル10は、正極外部端子30及び負極外部端子31が設けられた電池蓋22が上面となり、その電池蓋22と対向する電池缶21の底面が載置面となるように縦置きされている。電池モジュール110は、縦置きされた電池セル10と、冷却媒体(空気)を形成すると共に電池セル10を保持するセルホルダ(図示省略)とが交互に一列に配置された状態で、上下面が開放された直方体形状のモジュールケース600に収納されて固定されている。セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10は、電池セル10の電池蓋22と電池缶21の底面との対向方向に延びる中心軸を回転軸として180度回転させた回転対称の関係になっている。このため、セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10間では、正極外部端子30と負極外部端子31との配置が反対になっている。
【0162】
電池セル10とセルホルダとの配列体は4つの側部からモジュールケース600によって強固に固定されている。このような構成によれば、外部からの振動や外部からの衝撃などに対する耐性が向上し、それらの外力から電池セル10を保護することができる。
【0163】
セルホルダを介して配列方向に隣接する電池セル10の一方の正極外部端子30及びその他方の負極外部端子31の両者はバスバー601によって接続されている。これにより、配列方向一方側端部に配置された電池セル10から、配列方向他方側端部に配置された電池セル10に向かって順に、前段の電池セル10の負極外部端子31と後段の電池セル10の正極外部端子30とがバスバー601によって接続され、12個の電池セル10が、配列方向一方側端部に配置された電池セル10から、配列方向他方側端部に配置された電池セル10に向かって順に電気的に直列に接続される。
【0164】
セルボルダを介して配列方向に隣接する電池セル10の間には冷却媒体流通路が形成されている。冷却媒体流通路は、電池缶21の主面に沿って冷却媒体が電池缶21の底面側から電池蓋22側に向かって或いはその逆方向に向かって流通するように設けられている。電池缶21の底面側に対応する電池モジュール110の部位には、冷却媒体を冷却媒体流通路に導く或いは冷却媒体流通路から排出された冷却媒体を外部に導くためのダクト(図示省略)が設けられている。電池蓋22側に対応する電池モジュール110の部位には、冷却媒体流通路から排出された冷却媒体を外部に導く或いは冷却媒体を冷却媒体流通路に導くためのダクト(図示省略)が設けられている。冷却媒体は、図示省略した冷却ファンによって供給,排出される。
【0165】
尚、本実施形態では、電池セル10を気体状の冷却媒体(空気)によって冷却する場合を例に挙げて説明したが、液体状の冷却媒体(不凍液)を、例えばモジュールケース600に流通させて電池セル10を冷却するようにしても構わない。
【0166】
電池セル10の配列体の配列方向に直交する方向の中央部には、電池蓋22の長手方向中央部に設けられたガス排出管80が配列体の配列方向に一列に配列されている。ガス排出管80のそれぞれには、12個の電池セル10に対して共通に設けられ、電池セル10の配列方向に延びるガス排出ダクト602が接続されている。ガス排出ダクト602は、電池セル10からガス排出管80を介して排出されたガスを、冷却媒体が流通する空間とは分離して、電池モジュール110の外部(PHEV1の車外)に導いて排出するための流路である。
【0167】
尚、電池セル10から排出されるガスは、冷却媒体と一緒に電池モジュール110から排出しても問題ない。電池セル10から排出されるガスを冷却媒体と一緒に流通させるか或いは分離するかは、電池モジュール110の車両搭載場所などに応じて適宜選択すればよい。例えば電池モジュール110を車室内に配置して、車室内に導入される空気によって電池モジュール110を冷却する場合には、冷却媒体と排出ガスとを分離することが好ましい。
【0168】
以上のように構成された電池モジュール110は、モータジェネレータ200の駆動電圧に応じて複数、電気的に直列或いは並列若しくは直並列に接続されて、モータジェネレータ200の駆動電源として使用される。電池モジュール110の状態管理及び状態制御は、電池セル10に電気的に接続されたセル制御装置120,セル制御装置120に信号伝送回路を介して接続されたバッテリ制御装置130によって行われる。セル制御装置120は、電池モジュール110のそれぞれに対応して設けられ、対応する電池モジュール110の近傍に配置されている。バッテリ制御装置130は、電池モジュール110のそれぞれに対応して設けられたセル制御装置120に対して共通に設けられ、ループ状或いはパラレル状の信号伝送回路を介してセル制御装置120との間で信号を送受信する。
【0169】
〔実施形態2〕
第2実施形態を図10及び図11に基づいて説明する。
【0170】
図10及び図11は金属捲芯50の外観構成を示す。
【0171】
本実施形態は第1実施形態の改良例であり、金属捲芯50の構成の一部が異なっている。
【0172】
尚、第1実施形態と同じ名称の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。但し、第1実施形態と同じ名称の構成要素であっても、第1実施形態と比較して構成が異なっている部分がある場合には、その異なる部分についてのみ構成を説明する。また、第1実施形態に無い構成要素については新たな符号を付してその構成を説明する。
【0173】
本実施形態では、図11に示すように、捲回部51の外面の全てを連結部材58によって略均一の厚さで覆い、第1金属片54及び第2金属片55を連結すると共に、第1金属片54と第2金属片55との間を電気的に絶縁している。この場合、第1実施形態のように連結部を設ける必要がない。捲回部51の短手方向両端部において、連結部材58の外側は半円状に面取りされている。
【0174】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に構成された金属捲芯50を発電要素体40に備えているので、第1実施形態と同様の作用効果を達成できる。
【0175】
また、本実施形態によれば、捲回部51の外面の全てを連結部材58によって覆っているので、金属捲芯50の捲回部51の外表面に第1金属片54及び第2金属片55と連結部材58との異材界面がなくなり、第1金属片54及と第2金属片55とを同一平面に保持し易くすることができる。これにより、本実施形態によれば、金属捲芯50の捲回部51に対して正極板42及び負極板43を含む積層体が捲回し易くなり、電極捲回体41を形成し易くすることができる。従って、本実施形態によれば、電池セル10の製造工程における電極捲回体41の捲回作業性を向上させることができ、製造コストなどの低減などを図ることができる。
【0176】
尚、連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面の部分を覆う、或いは一つ又は複数の穴をあけた状態で連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面を覆う、というように、金属捲芯50の捲回部51の外表面に第1金属片54及び第2金属片55と連結部材58との異材界面が存在しても、第1金属片54及と第2金属片55とを同一平面に保持し易くできる場合には、それらのように、連結部材58によって金属捲芯50の捲回部51の外表面を覆っても構わない。この場合、金属捲芯50の軽量化を図ることができる。
【0177】
〔実施形態3〕
第3実施形態を図12及び図13に基づいて説明する。
【0178】
図12は電池セル10の外観構成を示す。図13は電池セル10の負極側の内部構成を示す。
【0179】
本実施形態は第1実施形態の変形例であり、電池セル10の形状は第1実施形態と同じ扁平角型形状であるが、正極側外部端子30及び負極側外部端子31の形状やそれらの電槽20に対する配置などが異なっている。
【0180】
尚、第1実施形態と同じ名称の構成要素には第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。但し、第1実施形態と同じ名称の構成要素であっても、第1実施形態と比較して構成が異なっている部分がある場合には、その異なる部分についてのみ構成を説明する。また、第1実施形態に無い構成要素については新たな符号を付してその構成を説明する。
【0181】
図12に示すように、本実施形態の電槽20は、第1実施形態と同様に、扁平直方体形状の構造体であり、第1実施形態と同様に、2つの構成要素から構成されているが、第1実施形態とは2つの構成要素の区分が異なっている。すなわち本実施形態では、1つの主面及び4つの副面を備え、残りの1つの主面に対応する部分が開口した扁平直方体形状の容器体である電池缶21と、電池缶21の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶21の開口面輪郭に合致するように形成された矩形状の平板である電池蓋22とをもって電槽20が構成されている。
【0182】
尚、本実施形態では、説明の便宜上、電池セル10の搭載方向に関係なく、扁平直方体形状の容器体である電池缶21の開口部側とは反対側の面を底面、この底面の4辺に沿って底面に垂直に設けられた4面のうち、底面の長辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第1側面、底面の短辺に沿って底面に垂直に設けられた2つの対向面を第2側面と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0183】
また、本実施形態では、説明の便宜上、平行に対向配置された2つの長辺、この長辺に直交すると共に、並行に対向配置され、長辺よりも長さが短い2つの短辺により形成される矩形平面形状を備えた構成要素において、長辺と同じ方向に延びる(短辺が対向する)方向を長手方向,短辺と同じ方向に延びる(長辺が対向する)方向を短手方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0184】
さらに、本実施形態では、説明の便宜上、電極捲回体41の捲回方向を電極捲回方向、電極捲回体41の扁平捲回面上において電極捲回方向に直交する方向を電極幅方向、電極捲回体41の扁平捲回面を垂直に貫く方向を電極扁平方向と、それぞれ定義し、これ以降の説明において用いることにする。
【0185】
発電要素体40は第1実施形態と同様に製作されるが、電槽20に対する挿入方向が第1実施形態とは異なっている。本実施形態では、発電要素体40を、電極捲回体41の電極扁平方向の一方側(電極捲回体41の未塗工部45,46の集積側)を挿入側として、電槽20の主面の一つに対応する電池缶21の開口部から電池缶21の内部に挿入している。すなわち本実施形態は、第1実施形態のように、発電要素体40を、電槽20を構成する2組の副面の一方の対向方向一方側から他方側に向かって挿入、すなわち電池缶21の開口面積が小さい開口部から電池缶21の深さが深い方向に挿入するということはせず、電槽20を構成する1組の主面電の対向方向一方側から他方側に向かって挿入、すなわち電池缶21の開口面積が大きい開口部から電池缶21の深さが浅い方向に挿入するようにしている。
【0186】
電池缶21の底面において、正極集電部52の未塗工部45の集積部分及び負極集電部53の未塗工部46の集積部分と対向する部位、すなわち電池缶21の底面の長手方向両端部、かつ電池缶21の底面の短手方向中央部には、電池蓋22側に窪んだ窪み部23,24が設けられている。窪み部23,24は、電池缶21の底面の長手方向両端部、かつ電池缶21の底面の短手方向中央部に配置され、電池蓋22側に最も窪んだ矩形状の平面部23a,24a、電池缶21の底面の短手方向両端部側から平面部23a,24aに向かうにしたがって、電池缶21の底面側から電池蓋22側に傾斜した傾斜部23b,24bから構成されている。
【0187】
平面部23a,24aはその長手方向が電池缶21の底面の短手方向と同じ方向になるように形成されている。平面部23a,24aには、その壁面を電池缶21の内部から外部に向かって貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔は、平面部23a,24aの長手方向に長い楕円或いは長丸形状の孔であり、正極集電部52の未塗工部45の集積部分及び負極集電部53の未塗工部46の集積部分と対向している。
【0188】
平面部23aに設けられた貫通孔には正極シール材32を介して正極外部端子30が装着されている。平面部24aにもうけられた貫通孔には負極シール材33を介して負極外部端子31が挿着されている。正極外部端子30及び負極外部端子31は、複数の構成要素が一体成形された成形体であり、平板が所定の形状に成型された成型品である。正極シール材32及び負極シール材33は、正極外部端子30及び負極外部端子31と電池缶21との間を電気的に絶縁すると共に、電池缶21内部を気密及び液密に保つための封止部材である。
【0189】
正極外部端子30は、平面部23aに設けられた貫通孔に対応する部位を始点、電池缶21の第2側面の一方に対応する部位を終点として、平面部23aに設けられた貫通孔から電池缶21の第2側面の一方の側に向かって延び、電池缶21の底面の長手方向端部の縁において所定の曲率をとりながら電池蓋22側に略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。負極外部端子31は、平面部24aに設けられた貫通孔に対応する部位を始点、電池缶21の第2側面の他方に対応する部位を終点として、平面部24aに設けられた貫通孔から電池缶21の第2側面の他方の側に向かって延び、電池缶21の底面の長手方向端部の縁において所定の曲率をとりながら電池蓋22側に略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。正極シール材32は、正極外部端子30の電池缶21との対向面に沿って正極外部端子30と同様に変形しながら延びている。負極シール材33は、負極外部端子31の電池缶11との対向面に沿って負極外部端子31と同様に変形しながら延びている。
【0190】
正極外部端子30の平面部23aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部23aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状で電池缶21の底面側から電池蓋22側に窪んだ(突出した)窪み部(突起部)が形成されている。正極外部端子30の窪み部は、平面部23aに設けられた貫通孔を貫通して正極集電部52の未塗工部45の集積部分に当接し、電池缶21の底面側の開口部から超音波溶接により正極集電部52の未塗工部45の集積部分に接合されている。正極外部端子30の窪み部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。正極外部端子30の鍔部は、矩形状の平板状態で、電池缶21の第2側面の一方の側に向かって延び、前述したように略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。正極外部端子30の電池缶21の第2側面の一方との対向部位は、電池缶21の第2側面の一方の面と対面し、長手方向が電池缶21の第2側面の一方の長手方向と同じ方向である矩形状の第1平板部と、第1平板部の長手方向の一方側端部から、所定の曲率をとりながら電池缶21の第2側面の一方から遠ざかる方向に、略直角に折れ曲がって延びる矩形状の第2平板部とをもって構成された、断面がL字形状の金属片により構成されている。
【0191】
負極外部端子31の平面部24aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部24aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状で電池缶21の底面側から電池蓋22側に窪んだ(突出した)窪み部(突起部)が形成されている。負極外部端子31の窪み部は、平面部24aに設けられた貫通孔を貫通して負極集電部53の未塗工部46の集積部分に当接し、電池缶21の底面側の開口部から超音波溶接により負極集電部53の未塗工部46の集積部分に接合されている。負極外部端子31の窪み部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。負極外部端子31の鍔部は、矩形状の平板状態で、電池缶21の第2側面の他方の側に向かって延び、前述したように略直角に折れ曲がり、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。負極外部端子31の電池缶21の第2側面の他方との対向部位は、電池缶21の第2側面の他方の面と対面し、長手方向が電池缶21の第2側面の他方の長手方向と同じ方向である矩形状の第1平板部と、第1平板部の長手方向の一方側端部から、所定の曲率をとりながら電池缶21の第2側面の他方から遠ざかる方向に、略直角に折れ曲がって延びる矩形状の第2平板部とをもって構成された、断面がL字形状の金属片により構成されている。
【0192】
正極シール材32は、正極外部端子30と電池缶21との間に配置され、正極外部端子30とほぼ同様の形状になっている。正極シール材32の平面部23aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部23aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状の管部(筒部)が形成されている。正極シール材32の管部は、平面部23aに設けられた貫通孔の縁と正極外部端子30の窪み部の外壁面との間に設けられている。正極シール材32の管部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。正極シール材32の鍔部は、矩形状の平板状態で、正極外部端子30の形状に沿って変形しながら延びており、最終的には、電池缶21の第2側面の一方の面上まで延びている。
【0193】
負極シール材33は、負極外部端子31と電池缶21との間に配置され、負極外部端子31とほぼ同様の形状になっている。負極シール材33の平面部24aに設けられた貫通孔との対向部位には、平面部24aに設けられた貫通孔と同じ輪郭形状の管部(筒部)が形成されている。負極シール材33の管部は、平面部24aに設けられた貫通孔の縁と負極外部端子31の窪み部の外壁面との間に設けられている。負極シール材33の管部の縁には、外側の輪郭が矩形状の鍔部が形成されている。負極シール材33の鍔部は、矩形状の平板状態で、負極外部端子31の形状に沿って変形しながら延びており、最終的には、電池缶21の第2側面の他方の面上まで延びている。
【0194】
電池缶21の第1側面の一方の長手方向中央部には、電槽20の内部に設けられたガス排出弁(図示省略)が開放した場合、電槽20内部に発生したガスを電槽20の内部から外部に導くためのガス排出管80が設けられている。
【0195】
電池蓋21の長手方向一方側端部の壁面上には、電槽20内に電解液を注液するための注液孔(図示省略)が設けられている。
【0196】
正極外部端子30及び負極外部端子31の形状やそれらの電槽20に対する配置などが第1実施形態とは異なる本実施形態においても、第1実施形態と同様に、電槽20と発電要素体40との線膨張係数の大きさ違いによる熱応力の課題があったが、第1実施形態と同様に構成された金属捲芯50を発電要素体40に備えることにより、その課題を解決することができた。従って、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を達成できる。
【0197】
〔実施形態4〕
第4実施形態を図14及び図15に基づいて説明する。
【0198】
図14は電池セル710の内部構成を示す。図15は電極捲回体741の金属捲芯750の構成を示す。
【0199】
本実施形態は、円筒型電池セル710に、本願の発明を適用した場合の例である。
【0200】
図14に示すように、円筒型の電池セル710は、密閉された円筒形状の電槽720を備えている。電槽720は、一端側に開口部が設けられた有底円筒形状の容器体である電池缶721と、この電池缶721の開口部を塞ぎ、輪郭が電池缶721の開口部の輪郭と同じ形状になるように形成された円形状の封口体である電池蓋722から構成されている。電槽720の内部には発電要素体740が収納され、電解液が注液されている。
【0201】
円筒型の電池セル710の場合、電池蓋722が正極の電位を、電池缶721が負極の電位を、それぞれ持つように構成されている。このため、電池蓋722はシール材734を介して電池缶721に気密及び液密に固定されている。また、電池缶721と電池蓋722との間はシール材734によって電気的に絶縁されている。
【0202】
電池缶721の底面の中央部には、内面側から外面側に突出した円形状の突部が形成されている。突部外側の突面は負極外部端子731として機能する。電池缶721の開口部側端の外周面には外周面側から内周面側に窪んだ環状のくびれが設けられている。このくびれは電池缶721に電池蓋722を固定するために設けられている。電池缶721は、鉄或いは鉄を主材とする合金を材質とする圧延鋼板製である。電池缶721にはニッケルメッキが施されている。
【0203】
電池蓋722は防爆機構を構成しており、内面側から外面側に突出した円形状の突部が中央部に形成された円板形状のキャップ722a、このキャップ722aの内面と対向するように配置され、キャップ722aに固定された円板形状のガス排出弁722bから構成されている。ガス排出弁722bは、外周縁部の先端部がキャップ722aの外面側に突出して内側に折り曲げられ、キャップ722aの外周縁部の外面を締め付けることにより、すなわちかしめることにより、キャップ722aに固定されている。また、ガス排出弁722bは、外周側から中心部に向かうにしたがってキャップ722a側とは反対側に膨らんだ、いわゆる皿バネであり、ダイアフラムとも呼ばれている。電槽720の内部に発生したガスにより、電槽720の内部の圧力が異常に高まると、ガス排出弁722bは開裂する。また、ガス排出弁722bは、その内圧によってキャップ722a側に膨出してキャップ722aと発電要素体740との電気的な接続を断ち、過電流を抑制する。
【0204】
キャップ722aの突部外側の突面は正極外部端子730として機能する。キャップ722aの突部の中心部には、ガス排出弁722bが開裂したとき、電槽720内部のガスを外部に排出するためのガス排出口(図示省略)が設けられている。キャップ722aの材質には電池缶721と同じ材質を用いている。キャップ722aには電池缶721と同じようにニッケルメッキを施している。ガス排出弁722bの材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0205】
電池蓋722の外径は、電池缶721のくびれによって電池缶721の内周面に形成された環状の突起の内径よりも大きく、電池缶721の開口部の内径よりも小さい。電池蓋722の外周縁部が、電池缶721のくびれによって電池缶721の内周面に形成された環状の突起の上にシール材734を介して載せられ、電池缶721の開口部側先端部が内側に折り曲げられて、外周縁部に締め付けられることにより、すなわちかしめられることにより、電池蓋722は電池缶721の開口部側端部に固定され、電池缶721の開口部を塞ぐ。
【0206】
シール材734は、電池缶721の開口部側内面の形状に沿うように形成された短管形状の、電気的絶縁性を有する部材であり、ガスケットとも呼ばれ、電池蓋722の外周縁と電池缶721の開口部内面との間に配置されて、電池蓋722と電池缶721との間を気密及び液密に封止する。シール材734の材質にはペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を用いている。
【0207】
発電要素体740は、第1乃至第3実施形態と同様に構成された積層体を、金属捲芯750に円筒形状或いは円柱形状に捲回した電極捲回体741を備えている。ただ、第1乃至第3実施形態と異なるのは、電極捲回体741の正極未塗工部に正極タブ747が、負極未塗工部に負極タブ748が、それぞれ設けられている点である。正極タブ747及び負極タブ748は、対応する未塗工部の活物質塗工側とは反対側の縁から活物質塗工側とは反対側の方向(金属捲芯750が延びる方向と同じ方向)に向かって垂直に延びた細長い集電用箔(板)であり、対応する未塗工部の捲回方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0208】
金属捲芯750は、第1乃至第3実施形態と同様に、2つの金属片を連結(結合)させて形成した円筒形状或いは中空円柱形状の連結(結合)体である。
【0209】
図15に示すように、金属捲芯750は、円筒形状或いは中空円柱形状の第1金属片754と、円筒形状或いは中空円柱形状の第2金属片755と、円筒形状或いは中空円柱形状の連結(結合)部材758とを備えており、第1金属片754と第2金属片755とが連結部材758によって軸方向に連結(結合)されることにより構成されている。第1金属片754の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。第2金属片755の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。連結部材758は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の管状樹脂ジョイント部材である。
【0210】
第1金属片754の軸長は第2金属片755及び連結部材758の軸長よりも長い。第2金属片755の軸長は連結部材758の軸長よりも短い。すなわち各部材の軸長は第1金属片754>連結部材758>第2金属片755の関係になっている。また、第1金属片754,第2金属片755及び連結部材758の外径は等しい。
【0211】
第1金属片754及び第2金属片755の軸方向両端部の外周面上には雄ねじが形成されている。連結部材758の軸方向両端部の内周面上には雌ねじが形成されている。連結部材758の軸方向一方側端部に第1金属片754が螺合され、連結部材758の軸方向他方側端部に第2金属片755が螺合されることにより、一つの円筒形状或いは中空円柱形状の金属捲芯750が形成され、その外周面上に電極捲回体751が捲回される。
【0212】
第1金属片754の連結部材758側とは反対側端部には円筒形状或いは中空円柱形状の第1覆い部材761が螺合されている。第2金属片755の連結部材758側とは反対側端部には円筒形状或いは中空円柱形状の第2覆い部材762が螺合されている。第1覆い部材761及び第2覆い部材762は、電気的な絶縁性及び熱収縮性を有するポリプロピレン製の管状樹脂キャップ部材であり、対応する金属片側端部の内周面上に雌ねじが形成されている。
【0213】
第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は等しい。また、第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は第2金属片755の軸長と等しい。さらに、第1覆い部材761及び第2覆い部材762の両者の軸長は第1金属片754及び連結部材758の軸長よりも短い。第1覆い部材761及び第2覆い部材762の外径は、第1金属片754,第2金属片755及び連結部材758の外径と等しい。
【0214】
第1覆い部材761,第1金属片754,連結部材758,第2金属片755及び第2覆い部材762は同軸上にその順番にしたがって配置され、軸方向に隣接する部材同士が螺子連結されることにより、一つの金属捲芯750を構成する。
【0215】
尚、本実施形態では、螺子連結により、第1金属片754と第2金属片755とを連結する場合を例に挙げて説明したが、第1金属片754及び第2金属片755を連結部材758に対してインサートモールドしてその両者を連結しても構わない。
【0216】
第1覆い部材761の第1金属片754側とは反対側端部には正極集電部材763が設けられている。正極集電部材763は環状円板形状の導電性部材である。正極集電部材763の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。
【0217】
正極集電部材763の内周部には、電極捲回体741の正極タブ747が突出する側及びガス排出弁722bと対向する環円板部の内周縁から第1金属片754側に直角に折れ曲がって延びた円管状部或いは円筒状部が形成されている。この円管状部或いは円筒状部の内周側は第1覆い部材761の外周側に圧入により嵌合されている。これにより、正極集電部材763は金属捲芯750に対して一体に固定されることになる。
【0218】
正極集電部材763の外周部には、電極捲回体741の正極タブ747が突出する側及びガス排出弁722bと対向する環円板部の外周縁から電極捲回体741側に末広がり状に折れ曲がって延びた円錐台形状の管状部或いは筒状部が形成されている。この円錐台形状の管状部或いは筒状部の外周面上には複数の正極タブ747が超音波溶接により接合されている。
【0219】
ガス排出弁722bと正極集電部材763との間は正極接続板765によって機械的及び電気的に接続されている。正極接続板765は、延び方向を180度反転させる折り返し部と、この折り返し部の両端部から互いに対向して並行に延びる第1及び第2延び部とを備えたJ字形状或いは略U字形状の矩形帯板であり、導電性部材である。正極接続板765の材質にはアルミニウム或いはアルミニウムを主材とする合金を用いている。第1延び部は第2延び部よりも長く延びている。
【0220】
正極集電部材763の環円板部の電極捲回体741側とは反対側の平面部中央には、中空部を塞ぐように正極接続板765の第1延び部の第2延び部との対向側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。ガス排出弁722bの中央部には、正極接続板765の第2延び部の第1延び部との対向側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。これにより、電極捲回体741の正極が正極集電部材763、正極接続板765及びガス排出弁722bを介してキャップ722aに電気的に接続され、キャップ722aが正極側の電位を持つ。
【0221】
第2覆い部材762の第2金属片755側とは反対側端部には負極集電部材764が設けられている。負極集電部材764は環状円板形状の導電性部材である。負極集電部材764の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。
【0222】
負極集電部材764の内周部には、電極捲回体741の負極タブ748が突出する側及び電池缶721の底面と対向する環円板部の内周縁から第2金属片755側に直角に折れ曲がって延びた円管状部或いは円筒状部が形成されている。この円管状部或いは円筒状部の内周側は第2覆い部材762の外周側に圧入により嵌合されている。これにより、負極集電部材764は金属捲芯750に対して一体に固定されることになる。
【0223】
負極集電部材764の外周部には、電極捲回体741の負極タブ748が突出する側及び電池缶721の底面と対向する環円板部の外周縁から電極捲回体741側に末広がり状に折れ曲がって延びた円錐台形状の管状部或いは筒状部が形成されている。この円錐台形状の管状部或いは筒状部の外周面上には複数の負極タブ748が超音波溶接により接合されている。
【0224】
電池缶721の底面と負極集電部材764の間は負極接続板766によって機械的及び電気的に接続されている。負極接続板766は、逆円錐台形状の容器部と、容器部の開口側端部の縁から外側に、負極集電部材764の環円板部及び電池缶721の底面に対して水平に延び、負極集電部材764の環円板部と対向する環円板鍔部とを備えた円形状の円板であり、導電性部材である。負極接続板766の材質には銅或いは銅を主材とする合金を用いている。
【0225】
負極集電部材764の環円板部の電極捲回体741側とは反対側の内周側平面部には、負極接続板766の環円板鍔部の容器部側とは反対側の平面部がスポット溶接により接合されている。電池缶721の底面の内面中央部には、負極接続板766の容器部の外面がスポット溶接により接合されている。これにより、電極捲回体741の負極が負極集電部材764及び負極接続板766を介して電池缶721の底面に電気的に接続され、電池缶721が負極側の電位を持つ。
【0226】
図示省略したが、電池缶721の外周面は、電気的な絶縁性を有するフィルム状の部材によって覆われている。
【0227】
金属捲芯750は線膨張係数が所定の値に設定されている。本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数を、第1乃至第3実施形態と同様に、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定している。
【0228】
金属捲芯750の線膨張係数は、第1金属片754及び第2金属片755の軸長の長さを変えることにより調整することができる。本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数を、アルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との中間の値に設定するために、第1金属片754の軸長が第2金属片755の軸長よりも大きくしている。
【0229】
ここで、電極捲回体741の線膨張係数はアルミニウムの線膨張係数と銅の線膨張係数との間にあり、銅の線膨張係数との差よりもアルミニウムの線膨張係数との差が大きい。金属捲芯750の線膨張係数がアルミニウムの線膨張係数に近い、すなわちアルミニウムの線膨張係数との差が小さい場合には、電極捲回体741の線膨張係数との差が大きくなり、その差による大きな熱応力が、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部に作用し、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部の剥離や損傷に至る可能性が大きくなる。
【0230】
そこで、本実施形態では、前述のように、金属捲芯750の線膨張係数を、アルミニウムを主材とする金属部品の線膨張係数と銅を主材とする金属部品の線膨張係数との中間値とし、この金属捲芯750の線膨張係数を電極捲回体741の線膨張係数に近づけて、すなわち電極捲回体741の線膨張係数との差を小さくしている。これにより、本実施形態では、金属捲芯750の線膨張係数と電極捲回体741の線膨張係数との差に応じて、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部に作用する熱応力を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、正極集電部材763と正極タブ747との間の接合部及び負極集電部材764と負極タブ748との間の接合部が剥離や損傷に至る可能性が低くなり、電池セル710に対する信頼性を向上させることができる。
【0231】
また、本実施形態によれば、金属捲芯750を、アルミミウムを主材とする第1金属片754及び銅を主材とする第2金属片755から製作しているので、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができる。
【0232】
尚、本実施形態によれば、金属捲芯750を、アルミミウムを主材とする第1金属片754及び銅を主材とする第2金属片755から製作した場合を例に挙げて説明したが、各極の電池電位によって腐食されることなく、導電性機能を得ることができ、かつ前述したように、金属捲芯750の線膨張係数を所定の値に調整できる金属材料、例えばニッケルなどがあれば、それを用いても構わない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体を有しており、
前記電極捲回体の捲回中心部には、前記蓄電要素体の熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が前記金属収納体の熱膨張係数よりも小さく、前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材が設けられている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電器において、
前記金属部材は、少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は、熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きく、
前記第2金属片は、熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも小さい、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は、前記正極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作されており、
前記第2金属片は、前記負極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電器において、
前記第1金属片はアルミニウム又はアルミニウムを主材とする合金から製作されており、
前記第2金属片は銅又は銅を主材とする合金から製作されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項6】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は前記金属部材に占める割合が前記第2金属片よりも大きい、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項7】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は扁平角型形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
平板状のものであって、
互いに係合可能な係合部を備えていると共に、
電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項8】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は円筒形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
円柱状のものであって、
それぞれ、端部にネジ部を備えていると共に、
それぞれのネジ部を、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結することにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項9】
請求項1に記載の蓄電器において、
前記金属部材は、
前記積層体の捲回の際に用いられる金属捲芯であり、
少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電器において、
前記金属捲芯は、
前記電極捲回体の捲回中心部に配置され、前記積層体が捲回された捲回部と、
前記捲回部の一つの端部に形成され、前記正極金属箔の前記正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、
前記捲回部の前記正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、前記負極金属箔の前記負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部と、を具備している、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項11】
請求項10に記載の蓄電器において、
前記正極集電部及び前記捲回部の一部は前記第1金属片によって構成されており、
前記負極集電部及び前記捲回部の残りの部分は前記第2金属片によって構成されており、
前記金属捲芯は、前記第1及び第2金属片の前記捲回群に対応する部位同士が前記連結材を介して連結されて構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項12】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が金属捲芯に捲回されて形成された電極捲回体を有しており、
前記金属捲芯は、少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項13】
請求項12に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は扁平角型形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
平板状のものであって、
互いに係合可能な係合部を備えていると共に、
電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項14】
請求項12に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は円筒形状のものであり、
少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されており、
前記第1及び第2金属片は、
円柱状のものであって、
それぞれ、端部にネジ部を備えていると共に、
それぞれのネジ部を、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結することにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項15】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体の内部に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、
金属捲芯と、
直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が前記金属捲芯に捲回されて形成された電極捲回体と、を有しており、
前記金属捲芯は、
平板状金属部材から成形されたものであって、
前記電極捲回体の捲回中心部に配置され、前記積層体が捲回された捲回部と、
前記捲回部の一つの端部に形成され、前記正極金属箔の前記正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、
前記捲回部の前記正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、前記負極金属箔の前記負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部と、を具備しており、
前記正極集電部及び前記負極集電部は、前記電極捲回体に対する前記捲回体部の配置位置を前記捲回体部の平面に垂直な方向における高さ基準位置としたとき、前記未塗布部分接合部位の高さ位置が、前記高さ基準位置に対して一方側にずれた高さ位置になるように、前記捲回部に設けられており、
前記正極側の未塗布部分は、前記正極集電部の前記未塗布部分接合部位の平面のうち、前記捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位が前記正極集電部に対する接合部位として前記正極集電部に接合されており、
前記負極側の未塗布部分は、前記負極集電部の前記未塗布部分接合部位の平面のうち、前記捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位が前記負極集電部に対する接合部位として前記負極集電部に接合されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項1】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が捲回されて形成された電極捲回体を有しており、
前記電極捲回体の捲回中心部には、前記蓄電要素体の熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きくなるように、熱膨張係数が前記金属収納体の熱膨張係数よりも小さく、前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きい金属部材が設けられている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電器において、
前記金属部材は、少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は、熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも大きく、
前記第2金属片は、熱膨張係数が前記電極捲回体の熱膨張係数よりも小さい、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は、前記正極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作されており、
前記第2金属片は、前記負極金属箔に用いられている金属材料或いはその金属材料を主材とする合金から製作されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電器において、
前記第1金属片はアルミニウム又はアルミニウムを主材とする合金から製作されており、
前記第2金属片は銅又は銅を主材とする合金から製作されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項6】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記第1金属片は前記金属部材に占める割合が前記第2金属片よりも大きい、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項7】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は扁平角型形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
平板状のものであって、
互いに係合可能な係合部を備えていると共に、
電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項8】
請求項2に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は円筒形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
円柱状のものであって、
それぞれ、端部にネジ部を備えていると共に、
それぞれのネジ部を、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結することにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項9】
請求項1に記載の蓄電器において、
前記金属部材は、
前記積層体の捲回の際に用いられる金属捲芯であり、
少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電器において、
前記金属捲芯は、
前記電極捲回体の捲回中心部に配置され、前記積層体が捲回された捲回部と、
前記捲回部の一つの端部に形成され、前記正極金属箔の前記正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、
前記捲回部の前記正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、前記負極金属箔の前記負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部と、を具備している、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項11】
請求項10に記載の蓄電器において、
前記正極集電部及び前記捲回部の一部は前記第1金属片によって構成されており、
前記負極集電部及び前記捲回部の残りの部分は前記第2金属片によって構成されており、
前記金属捲芯は、前記第1及び第2金属片の前記捲回群に対応する部位同士が前記連結材を介して連結されて構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項12】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が金属捲芯に捲回されて形成された電極捲回体を有しており、
前記金属捲芯は、少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項13】
請求項12に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は扁平角型形状のものであり、
前記第1及び第2金属片は、
平板状のものであって、
互いに係合可能な係合部を備えていると共に、
電気的な絶縁性を有する樹脂部材によって互いに固定され、かつ互いの係合部が、電気的な絶縁性を有する樹脂部材を介して係合されることにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項14】
請求項12に記載の蓄電器において、
前記金属収容体は円筒形状のものであり、
少なくとも、第1金属片と、前記第1金属片とは熱膨張係数の異なる第2金属片とを、電気的な絶縁性を有する連結材を介して連結した連結体により構成されており、
前記第1及び第2金属片は、
円柱状のものであって、
それぞれ、端部にネジ部を備えていると共に、
それぞれのネジ部を、電気的な絶縁性を有する連結管のネジ部に締結することにより、電気的に絶縁した状態で連結されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【請求項15】
外部導体接続導体が固定された金属収納体と、
前記金属収納体の内部に収納された蓄電要素体と、を有し、
前記蓄電要素体は、
金属捲芯と、
直接或いは内部接続導体を介して前記外部導体接続導体に接続されると共に、正極活物質が塗布された正極金属箔及び負極活物質が塗布された負極金属箔を含む積層体が前記金属捲芯に捲回されて形成された電極捲回体と、を有しており、
前記金属捲芯は、
平板状金属部材から成形されたものであって、
前記電極捲回体の捲回中心部に配置され、前記積層体が捲回された捲回部と、
前記捲回部の一つの端部に形成され、前記正極金属箔の前記正極活物質の未塗布部分が接合された正極集電部と、
前記捲回部の前記正極集電部が形成された端部とは反対側の端部に形成され、前記負極金属箔の前記負極活物質の未塗布部分が接合された負極集電部と、を具備しており、
前記正極集電部及び前記負極集電部は、前記電極捲回体に対する前記捲回体部の配置位置を前記捲回体部の平面に垂直な方向における高さ基準位置としたとき、前記未塗布部分接合部位の高さ位置が、前記高さ基準位置に対して一方側にずれた高さ位置になるように、前記捲回部に設けられており、
前記正極側の未塗布部分は、前記正極集電部の前記未塗布部分接合部位の平面のうち、前記捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位が前記正極集電部に対する接合部位として前記正極集電部に接合されており、
前記負極側の未塗布部分は、前記負極集電部の前記未塗布部分接合部位の平面のうち、前記捲回部側とは反対側に面する平面と対向する部位が前記負極集電部に対する接合部位として前記負極集電部に接合されている、
ことを特徴とする蓄電器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−216382(P2011−216382A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84786(P2010−84786)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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