説明

蓄電素子モジュール

【課題】圧力解放機構の作動状況を簡易な構造で信頼性良く検知可能な安全性の高い蓄電素子モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の蓄電素子モジュール8は、電極体10と、内部の圧力が所定の圧力以上となったときに開放する圧力開放機構2を備えた蓄電素子容器14と、を有する蓄電素子1の複数個が電気的に接続された蓄電素子モジュール8において、蓄電素子容器14内の圧力が所定の圧力以上となったときに圧力解放機構2から排出される排出物が当接可能な位置にもうけられ、排出物と当接したときに電気的な特性が変化する電気素子90と、電気素子の電気的な特性の変化を検出する検出装置7と、を有することを特徴とする。本発明の蓄電素子モジュール8は、蓄電素子1の圧力解放機構2の作動に伴い飛散する電解液などの排出物を検知でき、簡易な構造にて信頼性良く圧力解放機構2の作動状況を検知することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内部の圧力上昇に伴い、筐体の破裂を抑止するために作動する安全弁の作動状態を簡易な構造で信頼性良く検知することができる蓄電素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型コンピュータ、小型携帯機器、自動車等に用いられるクリーンなエネルルギー源として高性能二次電池の開発が盛んである。ここで用いられる二次電池には、小型軽量でありながら大容量・高出カであること、即ち高エネルギー密度・高出力密度であることが求められている。高エネルギー密度・高出力密度を達成できる二次電池としては、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池が有力視されている。これら二次電池は、要求される出力、電力に応じ複数の単電池を直列及び並列に接続し、電池モジュールを構成している。
【0003】
リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池は、過充電や内部短絡等の異常時には、電解液の分解ガスが発生する。分解ガスが発生すると、電池の内圧が上昇する。電池の内圧の上昇による電池の破裂を抑えるため、一定以上の圧力となった場合に電池内圧を開放する安全弁が設けられている。異常により内圧が上昇した時には、安全弁が作動し電池内圧を開放するが、その際、電池の内部に存在する可燃性の電解液及び電解液分解ガスが飛散する。電池の安全弁から飛散した可燃性の電解液及び電解液分解ガスによる火災、爆発、人体への影響が懸念されるため、安全弁の作動状況を検知し、早期に電池の充放電を停止する必要があった。
【0004】
このような問題に対して、複数の単電池を直列及び並列に接続し構成される電池モジュールでは、安全弁の作動を直接的に検知する手段が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1には、安全弁の破断する部分に一体的に設けられ、安全弁の破断に伴い断線する導線の導通状態を検知することにより、安全弁の作動状態を検知する検知装置が開示されている。
【0006】
また、安全弁の作動を間接的に検知する手段が特許文献2〜3に開示されている。
【0007】
特許文献2には、電池温度を検出する電池センサーを、安全弁から排出されるガス温度を検出するセンサーに併用して、簡単な構造で、異常な使用状態で確実に電流遮断するパック電池が開示されている。
【0008】
特許文献3には、相互に僅かな隙間を介して配設された2以上の導電性部材から構成され、安全弁近傍に配設された検出電極と安全弁を介して噴出する内容物により検出電極で発生する短絡を検出する蓄電素子が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された検知装置では、安全弁の破断する部分に一体的に設けられた導体の導通状態を検知することにより、安全弁の作動状態を検知するものであるが、各単電池の安全弁上に導体を配置しなけらばならず、単電池の数の増加に伴い配線等の構造が複雑になるといった問題を有していた。
【0010】
また、特許文献2に開示されたパック電池では、安全弁上に設置されたの温度センサにて、安全弁の作動に伴い飛散するガスの温度を検出することにより、安全弁の作動状態を検知するものであるが、開弁初期に安全弁から飛散するガスの温度は、通常使用時の電池温度との判別が困難であり、安全弁作動状況の検知の信頼性に欠けるという問題を有していた。
【0011】
さらに、特許文献3に開示された蓄電素子では、2以上の導電性部材から構成される電極問に安全弁の作動に伴い飛散する内容物の短絡により、安全弁の作動状態を検知するものであるため、電極間の結露による短絡で誤作動が懸念される。また、短絡検出の手段として、短絡を検出する電極間に並列に電圧が印加された抵抗素子を接続し、その低抗素子の端子電圧を監視することが例示されているが、この構成では電極である導電性部材間に電位差が印加されるため、マイグレーションによる短絡に伴う誤作動も懸念される。このように、特許文献3に開示された蓄電素子でも、安全弁作動状況の検知信頼性に欠けるという問題を有していた。
【特許文献1】特開2005−322471号公報
【特許文献2】特開平11−25938号公報
【特許文献3】特開2005−197279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、安全弁などの圧力解放機構の作動状況を簡易な構造で信頼性良く検知することで安全性の高い蓄電素子モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明者らは検討を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0014】
本発明の蓄電素子モジュールは、電極体を電解液とともに内部に密封しかつ内部の圧力が所定の圧力以上となったときに開放して内部の圧力を低下する圧力開放機構を備えた蓄電素子容器を有する蓄電素子の複数個が電気的に接続された蓄電素子モジュールにおいて、蓄電素子容器内の圧力が所定の圧力以上となったときに圧力解放機構から排出される排出物が当接可能な位置にもうけられ、排出物と当接したときに電気的な特性が変化する電気素子と、電気素子の電気的な特性の変化を検出する検出装置と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成とすることで、蓄電素子モジュールを構成する蓄電素子の圧力開放機構の作動に伴い飛散する電解液などの排出物を検知でき、簡易な構造で信頼性良く圧力開放機構の作動状況を検知することが可能となった。
【0016】
本発明の請求項2に記載の蓄電素子モジュールは、請求項1に記載の構成に加え、電気素子は、導電性高分子よりなり排出物が接触する略線状の線状部材を有し、検出手段は、線状部材の電気抵抗の変化を検出することを特徴としている。電気素子が導電性高分子よりなる線状部材よりなることで、排出物と接触したときに線状部材が溶解あるいは溶解が進行して断線し、電気素子の電気抵抗が大きく変化する(上昇する)。抵抗が大きく変化することから、電気的な特性の変化を容易に検出できる。電気素子が導電性高分子よりなる線状部材よりなることで、特に、排出物が電解液よりなるときに電気抵抗の変化を検出できるようになる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の蓄電素子モジュールは、請求項2に記載の構成に加え、導電性高分子は、ポリチオフェンであることを特徴としている。ポリチオフェンは、特に、非水電解液電池の電解液に溶解するため、排出物が非水電解液電池の電解液であるときには排出物が接触すると溶解して線状部材が断線し、電気的な特性の変化を容易に検出できる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の蓄電素子モジュールは、請求項1に記載の構成に加え、電気素子は、ガスセンサの検出部であることを特徴としている。このような構成となることで、ガスセンサの検出部が排出物と接触したときに、通常は検出部の電気抵抗が大きく変化する(低下する)。抵抗が大きく変化することから、電気的な特性の変化を容易に検出できる。電気素子がガスセンサの検出部よりなることで、特に、排出物が電解液が分解してなるガス状の物質よりなるときに電気抵抗の変化を検出できるようになる。
【0019】
本発明の請求項5に記載の蓄電素子モジュールは、請求項4に記載の構成に加え、ガスセンサは、還元性ガスを検出する半導体ガスセンサであることを特徴としている。ガスセンサが半導体ガスセンサよりなることで、非水電解液電池の電解液が分解したときに発生するH2、CH4などの還元性ガスを検出できるため、特に、排出物が電解液の分解ガスよりなるときに電気抵抗の変化を検出できるようになる。
【0020】
本発明の請求項6に記載の蓄電素子モジュールは、請求項5に記載の構成に加え、ガスセンサの検出部は、SnO2、ZnOより選ばれる少なくとも一種よりなることを特徴とする。検出部がこれらの材質より構成されることで、排出物が電解液の分解ガスよりなるときに電気抵抗の変化を検出できるようになる。
【0021】
本発明の請求項7に記載の蓄電素子モジュールは、請求項1に記載の構成に加え、電気素子は、複数の圧力解放機構からの排出物と当接することを特徴とする。つまり、ひとつの電気素子で複数の圧力解放機構の作動を検出でき、蓄電素子モジュールの圧力解放機構の動作を検知することができる。電気素子が複数の圧力解放機構からの排出物と当接する構成としては、圧力解放機構からの排出物を捕集する容器内や圧力解放機構からの排出物を排出するダクト内に電気素子を配置する構成とすることができる。
【0022】
本発明の請求項8に記載の蓄電素子モジュールは、請求項1に記載の構成に加え、蓄電素子は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする。本発明の蓄電素子モジュールを構成する蓄電素子は、電極体を電解液とともに蓄電素子容器内に収容した構成であればその種類が限定されるものではなく、リチウム電池、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、ポリマー電池、ラジカル電池等の非水電解液二次電池などにより構成することができる。そして、本発明の蓄電素子モジュールは、高エネルギー密度・高出力密度を達成できる二次電池のリチウムイオン二次電池であることが特に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の蓄電素子モジュールの詳細について実施例を用いて説明する。本発明の蓄電素子モジュールの実施例としてリチウムイオン二次電池モジュールを用いて説明するが、本発明の蓄電素子モジュールは、このリチウムイオン二次電池モジュールに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
まず、従来公知の製造方法でリチウム二次電池1を製造した。まず、シート状の正極板11および負極板12を製造し、セパレータを介して積層した状態で長尺方向に渦巻状に巻回した。この巻回体をプレス成形等の方法で径方向に圧縮して扁平形状の巻回型電極体10を製造した。そして、金属製の電池容器14の一部を構成する蓋体140に一体に接合された電極端子6,6にこの巻回型電極体10を接合し、電解液とともに電池容器14の残りの部分を構成する槽状の電池容器本体141に収容し、当接部をレーザ溶接等の方法で気密的・液密的に接合した。このようにして、電池容器14内に電極体10と電解液とが封入されたリチウム二次電池1が製造された。なお、リチウム二次電池1は、直方体状の外周形状を有し、電池容器14の上面に正極端子60及び負極端子61が突出している。また、リチウム二次電池1の電池容器14の上面であって、一対の電極端子60,61の間には、電池容器14内部の圧力が所定の圧力以上に上昇したときに開裂する安全弁2がもうけられている。
【0025】
そして、5個のリチウムイオン二次電池1を電気的に直列に接続した状態で、幅方向に並べ、幅方向の両端部にアルミニウム製の拘束プレート3,3を配置し、二枚の拘束プレート3,3を鉄製の拘束バンド4で拘束して5個の電池を一体化した。5個のリチウムイオン二次電池1のそれぞれの安全弁2は、幅方向にのびる直線上に並んだ。
【0026】
そして、絶縁性をもつ樹脂(本実施例においてはポリプロピレン)よりなる帯状の固定台の両端部を一対の拘束プレート3,3に固定して配置した。固定台50は、5個のリチウムイオン二次電池1のそれぞれの安全弁2に小間隔を隔てた位置で安全弁2に対向して配置され、固定台50の安全弁2に対向した表面に導電性高分子(本実施例ではポリチオフェン)よりなる線状の検知素子90を配置した。
【0027】
そして、検知素子90を抵抗変化検知手段7に接続した。抵抗変化検知手段7は、検知素子90(R2)と固定抵抗(R1)を直列に接続し直列回路を構築し、この直列回路間に一定電圧を印加し、固定抵抗(R1)を流れる電圧の変動を監視する手段とした。なお、本実施例の抵抗変化検知手段7は、検知素子90の抵抗変化を検知する手段の一例であり、この形態のみに限定されるものではない。
【0028】
このようにして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8が製造できた。本実施例のリチウム二次電池モジュール8を図1〜4に示した。なお、図1はリチウム二次電池1の構成を示し、図2及び3は本実施例のリチウム二次電池モジュール8を示し、図4は抵抗変化検知手段7の回路を示した図である。
【0029】
(動作)
本実施例のリチウム二次電池モジュール8の動作を以下に説明する。
【0030】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、5個のリチウム二次電池1が直列に接続されてなる電池モジュールであり、通常の電池モジュールと同様に充放電を行うことができる。
【0031】
そして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8を構成するリチウム二次電池1のひとつにおいて過充電や内部短絡等の異常が発生し、電池容器内で電解液の分解ガスが発生する。電解液の分解ガスが発生すると、電池容器の内部の圧力が上昇し、所定の圧力以上となったときに安全弁2が開裂する。
【0032】
安全弁2が開裂すると、安全弁2から電解液の分解ガスが電解液をともなって噴出する。安全弁2から噴出した電解液は、小間隔を隔てて対向した位置に配置された固定台50および検知素子90に吹き付けられ、当接(付着)する。検知素子90に付着した電解液は、付着した部分において検知素子90を構成するポリチオフェンを溶解する。検知素子90は線状に形成されており、溶解により断線する。
【0033】
線状の検知素子90が断線すると、抵抗変化検知手段7中の固定抵抗(R1)を流れる電圧が大きく低下し、抵抗変化検知手段7はこの電圧の低下を検知する。
【0034】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、抵抗変化検知手段7が固定抵抗(R1)を流れる電圧の低下を検知したときに、安全弁2から吹き出した電解液が付着して検知素子90が断線した判断でき、安全弁2が開裂したことが検知できる。
【0035】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、安全弁2の開裂を検知したら、警告を発したり、充放電を停止することができる。これにより、電池内部から飛散した電解液や分解ガスによる被害を最小限に抑えられるので、安全性の高い電池モジュールを提供することが可能となった。
【0036】
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして、リチウム二次電池1を製造し、一対のアルミニウム製の拘束プレート3,3と鉄製の拘束バンド4で拘束して5個のリチウム二次電池1を一体化した。
【0037】
そして、樹脂等の絶縁部材(本実施例においてはポリプロピレン)で構成されたダクト部材55をアルミ製の拘束プレート3に固定した。ダクト部材55は、リチウム二次電池1の並んだ方向にのびる箱状を有し、その底面55aがリチウム二次電池1の上面と当接する。ダクト部材55は、リチウム二次電池1の上面にもうけられた安全弁2に対応した位置に貫通孔550を有し、かつリチウム二次電池1の並んだ方向の一方の側面に内部のガスを排出する排出孔551が開口している。つまり、一体化した5個のリチウム二次電池1に固定されたダクト部材55は、それぞれのリチウム二次電池1の安全弁2から噴出した電解液の分解ガスが貫通孔550から内部に流入し、流入した分解ガスを捕集し、排出孔551から排出する。
【0038】
そして、ダクト部材55の内周面であって排出孔に対向した表面には、実施例1の時と同様な検知素子90が配置されている。検知素子90は、実施例1の時と同様に抵抗変化検知手段7に接続されている。
【0039】
このようにして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8が製造できた。本実施例のリチウム二次電池モジュール8を図5〜7に示した。なお、図5は、本実施例のリチウム二次電池モジュール8を示した図であり、図6〜7はダクト部材55の構成を示した図である。
【0040】
本実施例のリチウム電池モジュール8は、ダクト部材55の貫通孔550と安全弁2とが連通する構成となっているため、安全弁2から飛散した電解液はダクト部材55の内部にもうけられ検知素子90に電解液が付着する。これにより、実施例1の時と同様に、安全弁2の開裂を検知できる。
【0041】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、ダクト部材55が安全弁2から飛散した電解液を捕集することで、より電解液が検知素子90に付着しやすくなっている。さらに、ダクト部材55は、安全弁2から飛散した電解液の分解ガスも捕集することで、反応性や可燃性の高い分解ガスを捕集して安全に排出でき、リチウム二次電池モジュール8の安全性が向上した。
【0042】
(実施例3)
まず、実施例1と同様にして、リチウム二次電池1を製造し、一対のアルミニウム製の拘束プレート3,3と鉄製の拘束バンド4で拘束して5個のリチウム二次電池1を一体化した。
【0043】
そして、絶縁性をもつ樹脂(本実施例においてはポリプロピレン)よりなる帯状の固定台の両端部を一対の拘束プレート3,3に固定して配置した。固定台50は、5個のリチウムイオン二次電池1のそれぞれの安全弁2に小間隔を隔てた位置で安全弁2に対向して配置され、固定台50の安全弁2に対向した表面に半導体ガスセンサの検知部95(本実施例においてはSnO2よりなる)が位置するように半導体ガスセンサを配置した。
【0044】
この半導体ガスセンサを抵抗変化検知手段7に接続した。抵抗変化検知手段7は、ガスセンサ13の検知部95(R2)と固定抵抗(R1)を直列に接続して直列回路を構築した。そして、直列回路間に一定電圧を印加し、固定抵抗(R1)を流れる電圧の変動を監視する手段とした。ここで、半導体ガスセンサは、センサとして使用される温度が高い(200〜400℃)ため、検知部95を加熱するヒーターをもつ。このヒーター(固定抵抗(R3))も抵抗変化検知手段7に接続され、検知部95(R2)と固定抵抗(R1)を直列に接続した直列回路と電気的に並列な状態で接続された回路を構築した。なお、本実施例の抵抗変化検知手段7は、検知部(R2)の抵抗変化を検知する手段の一例であり、この形態のみに限定されるものではない。
【0045】
このようにして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8が製造できた。本実施例のリチウム二次電池モジュール8を図8〜10に示した。なお、図8及び9は、本実施例のリチウム二次電池モジュール8を示した図であり、図10は抵抗変化検知手段7の回路を示した図である。
【0046】
(動作)
本実施例のリチウム二次電池モジュール8の動作を以下に説明する。
【0047】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、5個のリチウム二次電池1が直列に接続されてなる電池モジュールであり、通常の電池モジュールと同様に充放電を行うことができる。
【0048】
そして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8を構成するリチウム二次電池1のひとつにおいて過充電や内部短絡等の異常が発生し、電池容器内で電解液の分解ガスが発生する。分解ガスが発生すると、電池容器の内部の圧力が上昇し、所定の圧力以上となったときに安全弁2が開裂する。
【0049】
安全弁2が開裂すると、安全弁2から電解液の分解ガスが噴出する。安全弁2から噴出した分解ガスは、小間隔を隔てて対向した位置に配置された固定台50および検知部95に吹き付けられ、当接(付着)する。分解ガスは還元性ガス(H2、CH4など)を含み、検知部95に付着すると、検知部95の電気抵抗が低下する。
【0050】
検知部95の電気抵抗が低下すると、抵抗変化検知手段7中の固定抵抗(R1)を流れる電圧が大きく上昇する。本実施例において、抵抗変化検知手段7はこの電圧の上昇を検知する。
【0051】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、抵抗変化検知手段7が固定抵抗(R1)を流れる電圧の上昇を検知したときに、安全弁2から吹き出した分解ガスが検知部95に付着した判断でき、安全弁2が開裂したことが検知できる。
【0052】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、実施例1の時と同様に、安全弁2の開裂を検知したら、警告を発したり、充放電を停止することができる。これにより、電池内部から飛散した電解液や分解ガスによる被害を最小限に抑えられるので、安全性の高い電池モジュールを提供することが可能となる。
【0053】
(実施例4)
まず、実施例3と同様にして、リチウム二次電池1を製造し、一対のアルミニウム製の拘束プレート3,3と鉄製の拘束バンド4で拘束して5個のリチウム二次電池1を一体化した。
【0054】
そして、樹脂等の絶縁部材(本実施例においてはポリプロピレン)で構成されたダクト部材55をアルミ製の拘束プレート3に固定した。ダクト部材55は、リチウム二次電池1の並んだ方向にのびる箱状を有し、その底面55aがリチウム二次電池1の上面と当接する。ダクト部材55は、リチウム二次電池1の上面にもうけられた安全弁2に対応した位置に貫通孔550を有し、かつリチウム二次電池1の並んだ方向の一方の側面に内部のガスを排出する排出孔551が開口している。つまり、一体化した5個のリチウム二次電池1に固定されたダクト部材55は、それぞれのリチウム二次電池1の安全弁2から噴出した電解液の分解ガスが貫通孔550から内部に流入し、流入した分解ガスを捕集し、排出孔551から排出する。
【0055】
そして、ダクト部材55の内周面であって貫通孔550に対向した表面には、実施例3の時と同様な検知部95が配置されている。検知部95は、実施例3の時と同様に抵抗変化検知手段7に接続されている。
【0056】
このようにして、本実施例のリチウム二次電池モジュール8が製造できた。本実施例のリチウム二次電池モジュール8を図11〜12に示した。なお、図11は、本実施例のリチウム二次電池モジュール8を示した図であり、図12はダクト部材55の構成を示した図である。
【0057】
本実施例のリチウム電池モジュール8は、ダクト部材55の貫通孔550と安全弁2とが連通する構成となっているため、安全弁2から飛散した分解ガスはダクト部材55の内部にもうけられた検知部95に付着する。これにより、実施例3の時と同様に、安全弁2の開裂を検知できる。
【0058】
本実施例のリチウム二次電池モジュール8は、ダクト部材55が安全弁2から吹き出した分解ガスを捕集することで、より分解ガスが検知部95に付着しやすくなっている。さらに、ダクト部材55は、安全弁2から飛散した分解ガスを捕集することで、反応性や可燃性の高い分解ガスを捕集して安全に排出でき、リチウム二次電池モジュール8の安全性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1のリチウム二次電池モジュールに用いられるリチウム二次電池の構成を示した図である。
【図2】実施例1のリチウム二次電池モジュールの構成を示した図である。
【図3】実施例1のリチウム二次電池モジュールの構成を示した側面図である。
【図4】実施例1のリチウム二次電池モジュールの抵抗変化検知手段の回路を示した図である。
【図5】実施例2のリチウム二次電池モジュールの構成を示した図である。
【図6】実施例2のリチウム二次電池モジュールのダクト部材を示した図である。
【図7】実施例2のリチウム二次電池モジュールのダクト部材の構成を示した図である。
【図8】実施例3のリチウム二次電池モジュールの構成を示した図である。
【図9】実施例3のリチウム二次電池モジュールの構成を示した側面図である。
【図10】実施例3のリチウム二次電池モジュールの抵抗変化検知手段の回路を示した図である。
【図11】実施例4のリチウム二次電池モジュールの構成を示した図である。
【図12】実施例4のリチウム二次電池モジュールのダクト部材の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0060】
1:リチウム二次電池 10:巻回型電極体
11:正極板 12:負極板
14:電池容器 140:蓋体
141:容器本体
2:安全弁
3:拘束プレート
4:拘束バンド
50:固定台 55:ダクト部材
550:貫通孔 551:排出孔
6:電極端子 60:正極端子
61:負極端子
7:抵抗変化検知手段
8:リチウム二次電池モジュール
90:検知素子 95:検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体を電解液とともに内部に密封しかつ内部の圧力が所定の圧力以上となったときに開放して該内部の圧力を低下する圧力開放機構を備えた蓄電素子容器を有する蓄電素子の複数個が電気的に接続された蓄電素子モジュールにおいて、
該蓄電素子容器内の圧力が所定の圧力以上となったときに該圧力解放機構から排出される排出物が当接可能な位置にもうけられ、該排出物と当接したときに電気的な特性が変化する電気素子と、該電気素子の電気的な特性の変化を検出する検出装置と、を有することを特徴とする蓄電素子モジュール。
【請求項2】
前記電気素子は、導電性高分子よりなり前記排出物が接触する略線状の線状部材を有し、前記検出手段は、該線状部材の電気抵抗の変化を検出する請求項1記載の蓄電素子モジュール。
【請求項3】
前記導電性高分子は、ポリチオフェンである請求項2記載の蓄電素子モジュール。
【請求項4】
前記電気素子は、ガスセンサの検出部である請求項1記載の蓄電素子モジュール。
【請求項5】
前記ガスセンサは、還元性ガスを検出する半導体ガスセンサである請求項4記載の蓄電素子モジュール。
【請求項6】
前記ガスセンサの検出部は、SnO2、ZnOより選ばれる少なくとも一種よりなる請求項5記載の蓄電素子モジュール。
【請求項7】
前記電気素子は、複数の前記圧力解放機構からの前記排出物と当接する請求項1記載の蓄電素子モジュール。
【請求項8】
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池である請求項1記載の蓄電素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−265658(P2007−265658A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85753(P2006−85753)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】