薄板ガラスの切断方法及び薄板ガラス
【課題】薄板ガラスをレーザビームの照射熱で溶断するに際し、薄板ガラスの溶断端面間の隙間を管理し、溶断端面近傍の形状を良好に維持する。
【解決手段】500μm以下の厚みのガラス基板Gの切断部Cにレーザビームを照射し、ガラス基板Gを溶断する薄板ガラス切断方法であって、ガラス基板Gの厚みをa、切断部Cで対向するガラス基板Gの溶断端面Ga1,Gb1間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように最小隙間を管理する。
【解決手段】500μm以下の厚みのガラス基板Gの切断部Cにレーザビームを照射し、ガラス基板Gを溶断する薄板ガラス切断方法であって、ガラス基板Gの厚みをa、切断部Cで対向するガラス基板Gの溶断端面Ga1,Gb1間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように最小隙間を管理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、500μm以下の厚みの薄板ガラス板を溶断する切断技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板を切断する方法としては、ガラス板の表面にダイヤモンドカッタなどでスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線に曲げ応力を作用させて割断する方法(曲げ応力による割断)が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、上記の曲げ応力を利用した切断方法の場合、切断面にクラックが形成され易く、そのクラックを起点としてガラス板が破損するという問題が生じるおそれがあった。そこで、上記の曲げ応力を利用した切断方法に代えて、レーザビームをガラス板の切断部に照射し、その照射熱によって切断部を溶融して切断する、いわゆる溶断が採用される場合もある。
【0004】
この種の溶断によるガラス板の切断方法としては、例えば特許文献1には、デフォーカスした炭酸ガスレーザ光により予備加熱を行った後に、微小点に集光した炭酸ガスレーザ光を集光した炭酸ガスレーザ光を被切断部に照射することにより溶断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−251138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、主として1mm以上の厚板ガラスを所定形状に切断することを課題としているが、このような厚板ガラスは、機械的強度に優れている。
【0007】
これに対し、近年、ディスプレイ用途等に用いられている薄板ガラス、特に500μm以下の厚みの薄板ガラスの場合、上記の厚板ガラスに比して、機械的強度が遥かに弱い。そのため、かかる薄板ガラスを溶断により切断する場合には次のような特有の問題が生じ得る。
【0008】
すなわち、第一に、薄板ガラスを溶断後に分離する際に溶断端面同士が接触すると、薄板ガラスが容易に破損するという問題がある。そのため、溶断により薄板ガラスの切断部を溶融除去して、溶断後に対向する薄板ガラスの溶断端面間の隙間をある程度確保する必要がある。
【0009】
第二に、薄板ガラスに加えられる熱量が大きくなると、図13に示すように、溶融状態にある切断部Cが下方に垂れ下がるなどして、薄板ガラスGの溶断端面近傍に形状不良が生じるという問題がある。このような形状不良が生じると、製品として供することができずに不良品として扱わざるを得ない事態を招く。そして、このような薄板ガラスの溶断端面近傍の形状不良は、薄板ガラスの溶融除去量を増加させて溶断端面間の隙間を大きくするに連れて顕著になる。そのため、薄板ガラスの溶断端面間の隙間を過度に大きくすることはできない。更に、熱量が多くなるため、溶断端面付近のガラス温度も上昇し、歪により薄板ガラスが変形したり、破損したりするおそれがある。
【0010】
したがって、薄板ガラスを溶断して切断する場合には、溶断によって形成される溶断端面間の隙間を厳格に管理する必要があるが、特許文献1を始め、従来このような観点から対策が講じられていないのが実情である。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑み、薄板ガラスをレーザビームの照射熱で溶断するに際し、薄板ガラスの溶断端面間の隙間を管理し、溶断端面近傍の形状を良好に維持することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために創案された発明は、500μm以下の厚みの薄板ガラスの切断部にレーザビームを照射し、前記薄板ガラスを溶断する薄板ガラス切断方法であって、前記薄板ガラスの厚みをa、前記切断部で対向する前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように前記最小隙間を管理することに特徴づけられる。
【0013】
このような方法によれば、薄板ガラスの厚みとの相対的な関係で、薄板ガラスの溶断端面間の隙間が厳格に管理されることから、薄板ガラスの溶断端面近傍の形状を良好に維持しつつ、溶断された薄板ガラスを安全に分離することができる。更には、歪による薄板ガラスの変形や破損を回避することが可能となる。一方、b/aが2を超えると、溶断により溶融除去される薄板ガラスの量が多くなり過ぎて、溶断端面近傍に付与される熱量が過度に大きくなる。その結果、薄板ガラスの溶断端面近傍に垂れ下がりなどの形状不良が生じたり、歪による薄板ガラスの変形や破損が発生するおそれがある。また、b/aが0.1未満になると、溶断端面同士が接近し過ぎ、分離時に溶断端面同士が接触して薄板ガラスが破損するおそれがある。
【0014】
上記の方法において、前記レーザビームをデフォーカスの状態で前記切断部に照射することが好ましい。
【0015】
すなわち、薄板ガラスが溶断の対象であるから、デフォーカスしたレーザビームであっても切断部を十分に溶断することが可能となる。そして、このようにデフォーカスしたレーザビームを切断部に照射する場合、レーザビームのエネルギー密度が、切断部に対応する位置で小さくなることから、照射位置周辺におけるエネルギーの変化量も小さくなる。そのため、ガラス板の反りや振動などによって、照射位置が多少変動したとしても、切断部に加わる照射熱が変化し難く、ほぼ同条件で溶断を実行することができるという利点がある。
【0016】
上記の方法において、前記レーザビームのスポット径が、前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間よりも小さいことが好ましい。
【0017】
このようにすれば、実際に溶融除去される範囲よりも狭い範囲にレーザビームが照射される。そのため、レーザビームの照射部からの熱伝導によって、薄板ガラスの溶断端面に対してアニール処理が施されることが期待できる。したがって、このようにアニール効果がある場合には、1回のレーザビームの照射によって、薄板ガラスの溶断と溶断端面のアニール処理を同時に行うことができ、後工程等で別途アニール処理を施す必要がなくなる。
【0018】
上記の方法において、前記溶断端面が、凸曲面をなすことが好ましい。
【0019】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面は、面取りを施した場合と同等以上の効果が得られ、端面強度が上がる。そのため、切断工程以後の工程に流した際に端面に欠けが生じ難くなり、取り扱いが容易になると共に歩留まりが向上するという利点がある。
【0020】
上記の方法において、前記溶断端面が、火造り面であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面の表面が滑らかに連続するため、溶断端面からの発塵を防止することができる。また、このように溶断端面の表面が滑らかになると、パーティクルが入り込み難くなるため、工程での汚れを防止することもできる。
【0022】
上記の方法において、前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であって、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることが好ましい。ここでいう算術平均粗さRa及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS 2001に基づくものとする。
【0023】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面の表面が滑らかに連続するため、溶断端面からの発塵を防止することができる。また、このように溶断端面の表面が滑らかになると、パーティクルが入り込み難くなるため、工程での汚れを防止することもできる。一方、Raが0.3μmを越えたり、RSmが150μm未満となる場合には、薄板ガラスの溶断端面が粗面(ザラザラの状態)となって、溶断端面にパーティクルが入り込んで除去し難くなる。
【0024】
上記の方法において、前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面に、圧縮応力が作用することから、溶断端面に仮にクラック等の欠陥が形成されていても、その欠陥を塞ぐ方向に力が作用する。その結果、薄板ガラスの端面強度の向上を図ることができる。更に、万一薄板ガラスの端面にクラックが生じた場合でも、そのクラックの近傍にテンション層があるので、クラックが端面に沿って進展し、平面側には進展しない。そのため、ガラス基板としての形状を維持でき、ガラス基板としての性能が損なわれることがない。一方、圧縮応力が20MPaよりも小さい場合、薄板ガラスが破損したとき、クラックの走る方向が任意となり、ガラス基板としての性能が損なわれるおそれがある。また、圧縮応力が500MPaよりも大きい場合、クラック近傍のテンション層の影響で、薄板ガラスが自爆する可能性がある。
【0026】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、500μm以下の厚みであり、レーザビームで溶断された溶断端面を有する薄板ガラスであって、前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることに特徴づけられる。
【0027】
この場合、前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明によれば、薄板ガラスの厚みとの相対的な関係で、薄板ガラスの溶断端面間の隙間が厳格に管理される。その結果、薄板ガラスの溶断端面近傍に形状を良好に維持することができる。また、溶断端面同士を接触させることなく、溶断された薄板ガラスを安全に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断側面である。
【図2】第1実施形態に係るガラス板切断装置を示す平面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】第1実施形態に係るガラス板切断装置で溶断された直後のガラス基板の状態を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図9】第5実施形態に係るガラス板切断装置の第2吸引ノズルを示す斜視図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図11】本発明の溶断対象となるガラス板の他の一例を示す図である。
【図12】薄板ガラスの強度評価を行っている状態を示す図である。
【図13】薄板ガラスを溶断により切断した場合に生じる問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下では、薄板ガラスは、厚み500μm以下のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板とするが、勿論、切断対象の薄板ガラスは、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に限定されるものではない。例えば、太陽電池用、有機EL照明用、タッチパネル用、デジタルサイネージ用等、種々の分野に利用される薄板ガラス基板や、その有機樹脂との積層体などに適用が可能である。なお、薄板ガラスの厚みは、300μm以下、特に200μm以下であることが好ましい。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るガラス板切断装置1は、平置き姿勢のガラス基板Gを下方から支持する支持ステージ2と、この支持ステージ2に支持されたガラス基板Gを溶断分離するレーザビーム照射器3とを備えている。
【0032】
支持ステージ2は、ステージ本体21と、ステージ本体21の上面に沿って移動するコンベア22とを備えている。ガラス基板Gは、コンベア22の移動により切断予定線CLに沿った搬送方向下流側(図中の矢印A方向)に搬送される。このとき、ステージ本体21は、コンベア22をガイドする役割を果たす。なお、コンベア22には図示しない多数の通気孔が形成されており、この通気孔を介してガラス基板Gをコンベア22上に吸着保持しながら搬送するようになっている。勿論、ガラス基板Gを吸着せずに、コンベアによってガラス基板Gの幅方向端部を表裏両側から挟持して搬送するなど、他の搬送方法を採用してもよい。
【0033】
ステージ本体21及びコンベア22は、図2に示すように、ガラス基板Gの幅方向に間隔を置いて2つに分離されており、ガラス基板Gの切断予定線CLの下方位置に非支持空間Sを有している。この非支持空間Sでは、ガラス基板Gの下面と支持ステージ2が接触しておらず、ガラス基板Gの下面が非支持空間Sに対して露出している。
【0034】
レーザビーム照射器3は、図3に示すように、レーザビームLBを伝搬させる内部空間を有し、この空間内にレンズ31を備えている。この実施形態では、レンズ31で集光されたレーザビームLBは、微焦点に集光してガラス基板Gの上面に焦点位置FPを合わせた状態で、切断部(レーザビームLBを照射して溶断を行なっている部分)Cに照射される。そして、このレーザビームLBの照射熱によって切断予定線CLに沿ってガラス基板Gを溶断し、製品となる製品部Gaと、廃棄等され製品とならない非製品部Gbとに分離する。なお、レーザビームLBの焦点位置FPは、ガラス基板Gの厚み方向中間位置であってもよい。また、レーザビームLBの焦点位置FPをガラス基板Gの上方に設定し、レーザビームLBをデフォーカスした状態で切断部Cに照射するようにしてもよい。
【0035】
更に、ガラス板切断装置1は、製品部Gaとなる側の上方位置から切断部Cに向かって斜め下方にサイドアシストガスA1を噴射するサイドアシストガス噴射ノズル4を備えている。このサイドアシストガスA1は、ドロスなどの溶融異物を非製品部Gb側へ吹き飛ばす役割を果たす。
【0036】
以上のように構成されたガラス板切断装置1の動作を説明する。
【0037】
図1及び図2に示すように、支持ステージ2のコンベア22によってガラス基板Gを搬送し、搬送経路上に静止状態で配置されたレーザビーム照射器3から照射されるレーザビームLBをガラス基板Gの切断予定線CLに沿って走査する。
【0038】
そして、このようにレーザビームLBを照射しながら、図3に示すように、ガラス基板Gの製品部Gaとなる側の上方位置に配置されたサイドアシストガス噴射ノズル4からガラス基板Gの切断予定線CL上に位置する切断部Cに向かって斜め下方にサイドアシストガスA1を噴射する。これにより、切断部Cから溶融異物が除去され、溶断が効率的に行なわれる。また、溶融異物が非製品部Gb側へ吹き飛ばされるので、製品部Gaに溶融異物が付着する事態を防止することができる。ここで、「溶融異物」は、ガラス基板Gの溶断時に発生するドロス等の異物を意味し、溶融状態にあるもの、固化状態にあるものの双方を含む。
【0039】
また、ガラス基板Gの上方空間において、ガラス基板Gに対してガスを噴射する手段は、サイドアシストガス噴射ノズル4のみである。そして、このサイドアシストガス噴射ノズル4は、ガラス基板Gの切断部Cに対してサイドアシストガスA1を斜めに噴射するので、ガラス基板Gの切断部Cに対して真上から略鉛直に噴射する場合(例えば、センターアシストガスを噴射する場合)に比べて、溶融状態にある切断部C近傍を下方に押圧する力は作用し難い。そのため、溶融状態にあるガラス基板Gの切断部C近傍の下方への垂れ下がりを防止することができる。そして、このように切断部Cの垂れ下がりを防止した状態で、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物は非製品部Gbとなる側に優先的に飛散するため、製品部Gaの溶断端面Ga1に溶融異物が溜まり難くなる。
【0040】
更に、上記のようにガラス基板Gを溶断すれば、ガラス基板Gの切断部Cの一部が溶融除去され、製品部Gaの溶断端面Ga1と、非製品部Gbの溶断端面Gb1との間には隙間が形成される。そのため、この隙間の分だけ製品部Gaの溶断端面Ga1と、非製品部Gbの溶断端面Gb1とが離間しているので、溶断端面Ga1,Gb1同士が接触して破損する事態を防止しつつ、製品部Gaと非製品部Gbとを円滑に分離できる。
【0041】
詳細には、図4に示すように、ガラス基板Gの厚みをaとし、溶断後における製品部Gaの溶断端面Ga1と非製品部Gbの溶断端面Gb1との間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足する最小隙間bを溶断により形成するように管理されている。このようにすれば、ガラス基板Gの厚みとの相対的な関係で、製品部Gaの溶断端面Ga1と非製品部Gbの溶断端面Gb1間の隙間が厳格に管理されることから、製品部Gaの溶断端面Ga1近傍の形状を良好に維持しつつ、製品部Gaと非製品部Gbを安全に分離することができる。すなわち、b/aが2を超えると、溶断により溶融除去される薄板ガラスGの量が多くなり過ぎて、製品部Gaの溶断端面Gb1に形状不良が生じるおそれがある。更には、歪による薄板ガラスの変形や破損のおそれもある。一方、b/aが0.1未満になると、溶断端面Ga1,Gb1同士が接近し過ぎ、分離時に溶断端面Ga1,Gb1同士が接触して製品部Ga(又は非製品部Gb)が破損するおそれがある。
【0042】
ここで、最小隙間bの大きさを調整する方法としては、(1)レーザビームLBの出力パワーを変更する、(2)ガラス基板Gに対するスポット径の大きさを変更する、(3)ガラス基板Gの表面(上面)に対するサイドアシストガスA1の仮想中心線L1の傾斜角α1(図3を参照)を変更する、(4)サイドアシストガスA1などのガラス基板Gに供給されるガスの噴射圧を変更する、(5)レーザビームのパルス幅やパターンを変更する、などの溶断条件の変更が挙がられる。
【0043】
レーザビームLB及びサイドアシストガスA1の諸条件は、以下の通りである。なお、レーザビームLB及びサイドアシストガスA1の諸条件は、勿論、これに限定されるものではない。
【0044】
レーザビームLBのスポット径は、図4の最小隙間bよりも小さく設定される。
【0045】
レーザビームLBの照射エネルギーは、ガラス基板Gの上面において、100〜100000[W/mm2]に設定される。
【0046】
サイドアシストガスA1の噴射圧は、0.01〜0.5[MPa]に設定される。
【0047】
サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、25°〜60°、好ましくは30°〜50°、より好ましくは35°〜45°に設定される。すなわち、ガラス基板Gの表面に対するサイドアシストガスA1の傾斜角が25°未満であると、サイドアシストガスA1がガラス基板Gに浅く入射し過ぎて、切断部CにサイドアシストガスA1を効率よく供給できないという問題が生じるおそれがある。一方、ガラス基板Gの表面に対するサイドアシストガスA1の傾斜角が60°を超えると、サイドアシストガスA1がガラス基板Gに深く入射し過ぎて、切断部C近傍を下方に押圧する力が大きくなるおそれがある。したがって、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は上記数値範囲内であることが好ましく、この範囲であれば、サイドアシストガスA1を切断部Cに効率よく供給しつつ、サイドアシストガスA1が切断部C近傍を下方に押圧する力を適切に抑えることができる。
【0048】
なお、製品部Gaへの溶融異物の付着を防止する観点からは、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、15°〜45°に設定されることが好ましい。したがって、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状と製品部Gaへの溶融異物の付着とを考慮した場合には、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、25°〜45°に設定されることが好ましい。
【0049】
サイドアシストガスA1の指向方向は、切断部C近傍であればよい。例えば、図示例では、サイドアシストガスA1の仮想中心線L1が、切断部Cと交差するようにしているが、仮想中心線L1が、切断部Cよりも製品部Gaとなる側でガラス基板Gの上面や下面と交差するようにしてもよい。
【0050】
サイドアシストガスA1としては、例えば、酸素(又は空気)、水蒸気、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどのガスを単独又は他ガスと混同した状態で用いる。また、サイドアシストガスA1は、熱風として噴射してもよい。
【0051】
以上のようにして溶断されたガラス基板Gは、次のような特徴を有する。
【0052】
第一に、図4に示すように、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状が、略円弧状の良好な凸曲面形状となる。付言すれば、製品部Gaの溶断端面Ga1は、火造り面で構成される。なお、非製品部Gbの溶断端面Gb1には、サイドアシストガスA1によって吹き飛ばされた溶融異物(ドロスなど)が付着し、溶断端面Gb1の形状が、略円弧状から逸脱する場合もある。
【0053】
第二に、製品部Gaの溶断端面Ga1の算術平均粗さRaが、0.3μm以下で、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上となる。ここで、Raの下限値およびRSmの上限値について説明するならば、Raは限りなく零に近いことが望ましく、RSmは限りなく無限大に近いことが望ましい。しかしながら、実用上は加工設備等による限界があるため、Raの下限値やRSmの上限値を規定する意義は乏しい。そのため、上記では、Raの下限値とRSmの上限値を設けていない。
【0054】
第三に、製品部Gaの溶断端面Ga1の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaとなる。
【0055】
(第2実施形態)
図5に示すように、本発明の第2実施形態に係るガラス板切断装置1は、第1実施形態に係るガラス板切断装置1の構成に、更に、センターアシストガス噴射ノズル5を付加したものである。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0056】
センターアシストガス噴射ノズル5は、レーザビーム照射器3の先端部に接続されており、レーザビーム照射器3の内部空間(レンズ31よりも下方の空間)にセンターアシストガスA2を供給する。レーザビーム照射器3の内部空間に供給されたセンターアシストガスA2は、レーザビーム照射器3の先端からガラス基板Gの切断部Cに向かって真下に噴射される。すなわち、レーザビーム照射器3の先端からは、レーザビームLBが出射されると共に、センターアシストガスA2が噴射される。センターアシストガスA2は、ガラス基板Gを溶断する際に生じる溶融異物をガラス基板Gの切断部Cから除去する役割と、その溶融異物からレーザビーム照射器3のレンズ31等の光学部品を保護する役割、更には、レンズの熱を冷却する役割を果たす。
【0057】
そして、サイドアシストガスA1の噴射圧をP1、センターアシストガスA2の噴射圧をP2とした場合に、P2/P1は0〜2に設定される。詳細には、例えば、センターアシストガスA2の噴射圧は、0〜0.02[MPa]に設定され、サイドアシストガスA1の噴射圧は、0.01〜0.5[MPa]に設定される。そして、好ましくは、サイドアシストガスA1の噴射圧が、センターアシストガスA2の噴射圧よりも大きく設定される。例えば、P2/P1は、0.1〜0.5に設定される。この場合、センターアシストガスA2の噴射圧は、レーザビーム照射器3のレンズ31等の光学部品を溶融異物から保護できる程度の圧力に設定することが好ましい。
【0058】
このようにすれば、センターアシストガスA2の噴射圧が相対的に弱められることから、主として、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物を吹き飛ばすことになる。このサイドアシストガスA1は、製品部Gaとなる側の上方位置から切断部Cに向かって斜め下方に噴射されることから、センターアシストガスA2に比べて、溶融状態にあるガラス基板Gの切断部C近傍を下方に押圧する力は弱い。したがって、サイドアシストガスA1の噴射圧を、センターアシストガスA2の噴射圧よりも大きくすることで、溶融状態にあるガラス板Gの切断部Cの垂れ下がりを防止することができる。そして、このように切断部Cの垂れ下がりを防止した状態で、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物は非製品部Gbとなる側に優先的に飛散するため、製品部Gaの溶断端面Ga1に溶融異物が溜まり難くなる。したがって、図4に示した場合と同様に、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状を略円弧状の良好な形状に維持することが可能となる。
【0059】
サイドアシストガスA1とセンターアシストガスA2は、同種のガスであってもよいし、異種のガスであってもよい。
【0060】
(第3実施形態)
図6に示すように、本発明の第3実施形態に係るガラス板切断装置1が、第1〜2実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、ガラス基板Gの下方空間に、補助サイドアシストガス噴射ノズル6を備えている点にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。なお、図示例では、センターアシストガス噴射ノズル5を設けているが省略してもよい。
【0061】
補助サイドアシストガス噴射ノズル6は、ガラス基板Gの製品部Gaとなる側の下方位置に配置され、切断部Cに向かって斜め上方に補助サイドアシストガスA3を噴射する。
【0062】
更に、この実施形態では、製品部Ga側のステージ本体21の非支持空間Sに面する側面部21aが、上方が下方よりもガラス基板Gの切断部Cに接近するように傾斜したテーパ面をなしている。そして、このテーパ面をなす側面部21aによって、補助サイドアシストガス噴射ノズル6から噴射される補助サイドアシストガスA3を斜め上方に案内し、ガラス基板Gの切断部Cに供給するようになっている。なお、図示例では、非製品部Gb側のステージ本体21の非支持空間Sに面する側面部21aも、上方が下方よりもガラス基板Gの切断部Cに接近するように傾斜したテーパ面をなしている。勿論、製品部Ga側のステージ本体21の側面部21aのみをテーパ面としてもよい。
【0063】
以上のようにすれば、サイドアシストガスA1とサイドアシストガスA3によって、ガラス基板Gの切断部Cに生じた溶融異物を、非製品部Gbとなる側に効率よく吹き飛ばすことが可能となる。また、ガラス基板Gの下面に補助サイドアシストガスA3が作用することから、ガラス基板Gの切断部C近傍を下方から支持する効果も期待でき、切断部C近傍の垂れ下がり防止に寄与するものと考えられる。
【0064】
補助サイドアシストガスA3の噴射圧は、例えば、0.01〜0.5[MPa]に設定される。
【0065】
ガラス基板Gの裏面(下面)に対する補助サイドアシストガスA3の傾斜角α2は、15°〜70°、好ましくは20°〜60°、より好ましくは25°〜45°に設定される。
【0066】
補助サイドアシストガスA3の指向方向は、切断部C近傍であればよい。例えば、図示例では、補助サイドアシストガスA3の仮想中心線L2が、切断部Cと交差するようにしているが、仮想中心線L2が、切断部Cよりも製品部Gaとなる側でガラス基板Gの上面や下面と交差するようにしてもよい。
【0067】
補助サイドアシストガスA3は、サイドアシストガスA1と同種のガスであってもよいし、異種のガスであってもよい。
【0068】
なお、この第3実施形態では、サイドアシストガスA1と補助サイドアシストガスA3は、同時にガラス基板Gの切断部Cに噴射するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス基板Gの切断部Cが貫通するまでは、サイドアシストガスA1で切断部Cの溶融異物を吹き飛ばし、ガラス基板Gの切断部Cが貫通した後は、サイドアシストガスA1を止めて、補助サイドアシストガスA3で切断部Cの溶融異物を吹き飛ばすようにしてもよい。
【0069】
(第4実施形態)
図7に示すように、本発明の第4実施形態に係るガラス板切断装置1が、第3実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、補助サイドアシストガスA3の供給方法にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0070】
第4実施形態では、支持ステージ2のステージ本体21に、斜め上方に向かって延在し、一端が非支持空間Sに連通するガス流通路21bが形成されている。このガス流通路21bの他端には、補助サイドアシストガス噴射ノズル6の噴射口が接続されている。補助サイドアシストガス噴射ノズル6から噴射された補助サイドアシストガスA3を、ガス流通路21bを通じて斜め上方に誘導して非支持空間Sに開放し、ガラス基板Gの切断部Cに供給する。
【0071】
(第5実施形態)
図8に示すように、本発明の第5実施形態に係るガラス板切断装置1が、第3実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、溶断過程で生じる溶融異物を吸引する構成を備えている点にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0072】
すなわち、非製品部Gbとなる側の上方位置に配置された第1吸引ノズル7と、非製品部Gbとなる側の下方位置に配置された第2吸引ノズル8とを備えている。
【0073】
第1吸引ノズル7は、その仮想中心線L3を切断部Cに指向させた状態で、サイドアシストガス噴射ノズル4と向かい合うように配置され、ガラス基板Gの上方空間の溶融異物を吸引する。ガラス基板Gの表面(上面)に対する第1吸引ノズル7の仮想中心線L3の傾斜角β1は、α1±15°以内、好ましくは、α1±10°以内、より好ましくはα1±5°以内の範囲に設定される。
【0074】
一方、第2吸引ノズル8は、その吸引口を上方に指向させた状態で、補助サイドアシストガス噴射ノズル6と向かい合うように配置されており、ガラス基板Gの下方空間、換言すれば、非支持空間Sの溶融異物を吸引する。ここで、第2吸引ノズル8を、切断部Cの真下から非製品部Gb側に偏倚させて配置しているのは、サイドアシストガスA1や補助サイドアシストガスA3によって、溶融異物が非支持空間S内において非製品部Gb側に吹き飛ばされながら下降するからである。
【0075】
そして、第1吸引ノズル7及び第2吸引ノズル8は、サイドアシストガスA1及び補助サイドアシストガスA3によって非製品部Gb側に吹き飛ばされた溶融異物を吸引する。このようにすれば、サイドアシストガスA1及び補助サイドアシストガスA3によって切断部Cから吹き飛ばした溶融異物が、周辺空間に浮遊して再び製品部Gaに付着するという事態を確実に防止することができる。
【0076】
なお、この第5実施形態では、第1吸引ノズル7と第2吸引ノズル8によって、同時に溶融異物を吸引するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス基板Gの切断部Cが貫通するまでは、第1吸引ノズル7で溶融異物を吸引し、ガラス基板Gの切断部Cが貫通した後は、第2吸引ノズル8で溶融異物の溶融異物を吸引するようにしてもよい。また、第1吸引ノズル7を省略して、第2吸引ノズル8のみで溶融異物を吸引するようにしてもよい。
【0077】
ここで、ガラス基板Gの下方空間に配置された第2吸引ノズル8は、図9に示すように、ガラス基板Gの切断予定線CL方向に沿って長尺な吸引口81を有する。これは、ガラス基板Gの下方空間において、溶融異物が切断予定線CL方向に沿った広範囲に飛散する傾向があるためである。なお、レーザビーム照射器3等によるスペース上の制約がなければ、ガラス基板Gの上方空間に配置された第1吸引ノズル7も、切断予定線CLの延在方向に沿って長尺な吸引口を有するようにしてもよい。
【0078】
(第6実施形態)
勿論、図10に示すように、第4実施形態に係るガラス板切断装置1(図7を参照)に、第1吸引ノズル7および第2吸引ノズル8を配置してもよい。
【0079】
なお、本発明は、上記第1〜6実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、ガラス基板Gをオーバーフローダウンドロー法などで成形した場合、図11に示すように、ガラス基板Gの幅方向中央部の厚みよりも、ガラス基板Gの幅方向両端部の厚みが相対的に分厚くなる。そして、幅方向中央部が製品部Gaとされ、幅方向両端部が非製品部(耳部と称される)Gbとされる。したがって、本発明に係る切断方法及び切断装置を、このようなガラス基板Gの非製品部Gbとなる耳部の除去に利用してもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、溶断分離された薄板ガラスGの一方が製品部Gaで、他方が非製品部Gbの場合を説明したが、双方を製品部Gaとする場合にも、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0082】
本発明の有用性を実証するために対比試験を行った。
【0083】
この対比試験の試験条件は次のとおりである。まず、図3に示した態様で、アシストガスを吹き付けながら、縦300mm×横300mmの大きさの薄板ガラスの切断部に対して、波長10.6μmのCO2レーザを照射して、薄板ガラスを溶断して切断する。次に、このように溶断された薄板ガラスの溶断端面近傍に対して、二次加工(例えば、レーザによるアニールや電気加熱によるアニール)することでアニール処理を施す。このような一連の切断工程を、薄板ガラスの厚みaと、溶断端面間の最小隙間bを変化させて行う。そして、それぞれの切断工程を経て溶断された薄板ガラスについて、(1)溶断端面の擦れの状態、(2)溶断端面の形状、(3)強度をそれぞれ検査した。なお、溶断された薄板ガラスの強度は、図12に示すように、それぞれの薄板ガラスGを順次、二枚の板状体9で挟み且つU字状に50mm/分の速度で長手方向に曲げが生じるように押し曲げていく二点曲げにより強度を評価した。この評価は、押し曲げにより破壊したときの二枚の板状体9の間隔に基づいて破壊強度を算出する。これらの試験結果は、下記に示すとおりである。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
以上の表1及び表2によれば、b/aが0.1以上のとき、分離時に薄板ガラスの溶断端面同士の接触により生じる擦れが全くないか、或いは実質的に問題にならない程度に抑えることが可能であることが認識できる。そのため、このような範囲に管理すれば、分離時に薄板ガラスの溶断端面同士が接触して破損するという事態を確実に低減することができる。
【0087】
また、b/aが2以下のとき、薄板ガラスの溶断端面の形状が良好に維持されることが認識できる。そのため、このような範囲に管理すれば、薄板ガラスの製品品位が低下したり、或いは、後工程で溶断端面を起点として薄板ガラスが破損するという事態を確実に低減することができる。
【0088】
したがって、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように、最小隙間bを管理すれば、薄板ガラスの溶断端面近傍の形状を良好に維持しつつ、分離時やその後の工程で薄板ガラスが破損するという事態を確実に低減できる。なお、このような作用効果は、溶断するためにレーザビームを照射する以外に、予備加熱やアニール処理を要することなく享受できる。
【0089】
なお、より安定した品位を要求する場合は、溶断直後にレーザ等によるアニール処理を施してもよい。
【0090】
上記実施例8〜10で形成された溶断端面の算術平均粗さRaは、0.08〜0.18μmで、粗さ曲線要素の平均長さRSmは、250〜400μmであり、溶断端面の汚れの除去を容易に行うことができた。一方、薄板ガラスをスクライブ線に沿って折り割りした後にダイヤ研磨を施した割断端面を比較例として挙げると、その割断端面は、Raが0.4〜0.6μmで且つRSmが80〜140μmであり、割断端面の汚れを十分に除去することができなかった。
【0091】
また、上記実施例1〜10で形成された溶断端面の圧縮歪(残留圧縮応力)は、80〜180MPaであった。端面に傷を入れて、クラックを発生させると、エッジに沿ってクラックが進展し、ガラス基板としての性能を損なうことがなかった。一方、比較例として作製したレーザ割断された薄板ガラスの端面の圧縮歪は、0〜15MPaであり、傷を入れてクラックを発生させると、クラックが面方向に進展して薄板ガラスが2つに割れ、ガラス基板としての性能を失うに至った。
【符号の説明】
【0092】
1 ガラス板切断装置
2 支持ステージ
21 ステージ本体
22 コンベア
3 レーザビーム照射器
31 レンズ
4 サイドアシストガス噴射ノズル
5 センターアシストガス噴射ノズル
6 補助サイドアシストガス噴射ノズル
7 第1吸引ノズル
8 第2吸引ノズル
A1 サイドアシストガス
A2 センターアシストガス
A3 補助サイドアシストガス
C 切断部
G ガラス基板
Ga 製品部
Ga1 溶断端面
Gb 非製品部
Gb1 溶断端面
LB レーザビーム
S 非支持空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、500μm以下の厚みの薄板ガラス板を溶断する切断技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板を切断する方法としては、ガラス板の表面にダイヤモンドカッタなどでスクライブ線を形成した後、そのスクライブ線に曲げ応力を作用させて割断する方法(曲げ応力による割断)が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、上記の曲げ応力を利用した切断方法の場合、切断面にクラックが形成され易く、そのクラックを起点としてガラス板が破損するという問題が生じるおそれがあった。そこで、上記の曲げ応力を利用した切断方法に代えて、レーザビームをガラス板の切断部に照射し、その照射熱によって切断部を溶融して切断する、いわゆる溶断が採用される場合もある。
【0004】
この種の溶断によるガラス板の切断方法としては、例えば特許文献1には、デフォーカスした炭酸ガスレーザ光により予備加熱を行った後に、微小点に集光した炭酸ガスレーザ光を集光した炭酸ガスレーザ光を被切断部に照射することにより溶断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−251138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、主として1mm以上の厚板ガラスを所定形状に切断することを課題としているが、このような厚板ガラスは、機械的強度に優れている。
【0007】
これに対し、近年、ディスプレイ用途等に用いられている薄板ガラス、特に500μm以下の厚みの薄板ガラスの場合、上記の厚板ガラスに比して、機械的強度が遥かに弱い。そのため、かかる薄板ガラスを溶断により切断する場合には次のような特有の問題が生じ得る。
【0008】
すなわち、第一に、薄板ガラスを溶断後に分離する際に溶断端面同士が接触すると、薄板ガラスが容易に破損するという問題がある。そのため、溶断により薄板ガラスの切断部を溶融除去して、溶断後に対向する薄板ガラスの溶断端面間の隙間をある程度確保する必要がある。
【0009】
第二に、薄板ガラスに加えられる熱量が大きくなると、図13に示すように、溶融状態にある切断部Cが下方に垂れ下がるなどして、薄板ガラスGの溶断端面近傍に形状不良が生じるという問題がある。このような形状不良が生じると、製品として供することができずに不良品として扱わざるを得ない事態を招く。そして、このような薄板ガラスの溶断端面近傍の形状不良は、薄板ガラスの溶融除去量を増加させて溶断端面間の隙間を大きくするに連れて顕著になる。そのため、薄板ガラスの溶断端面間の隙間を過度に大きくすることはできない。更に、熱量が多くなるため、溶断端面付近のガラス温度も上昇し、歪により薄板ガラスが変形したり、破損したりするおそれがある。
【0010】
したがって、薄板ガラスを溶断して切断する場合には、溶断によって形成される溶断端面間の隙間を厳格に管理する必要があるが、特許文献1を始め、従来このような観点から対策が講じられていないのが実情である。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑み、薄板ガラスをレーザビームの照射熱で溶断するに際し、薄板ガラスの溶断端面間の隙間を管理し、溶断端面近傍の形状を良好に維持することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために創案された発明は、500μm以下の厚みの薄板ガラスの切断部にレーザビームを照射し、前記薄板ガラスを溶断する薄板ガラス切断方法であって、前記薄板ガラスの厚みをa、前記切断部で対向する前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように前記最小隙間を管理することに特徴づけられる。
【0013】
このような方法によれば、薄板ガラスの厚みとの相対的な関係で、薄板ガラスの溶断端面間の隙間が厳格に管理されることから、薄板ガラスの溶断端面近傍の形状を良好に維持しつつ、溶断された薄板ガラスを安全に分離することができる。更には、歪による薄板ガラスの変形や破損を回避することが可能となる。一方、b/aが2を超えると、溶断により溶融除去される薄板ガラスの量が多くなり過ぎて、溶断端面近傍に付与される熱量が過度に大きくなる。その結果、薄板ガラスの溶断端面近傍に垂れ下がりなどの形状不良が生じたり、歪による薄板ガラスの変形や破損が発生するおそれがある。また、b/aが0.1未満になると、溶断端面同士が接近し過ぎ、分離時に溶断端面同士が接触して薄板ガラスが破損するおそれがある。
【0014】
上記の方法において、前記レーザビームをデフォーカスの状態で前記切断部に照射することが好ましい。
【0015】
すなわち、薄板ガラスが溶断の対象であるから、デフォーカスしたレーザビームであっても切断部を十分に溶断することが可能となる。そして、このようにデフォーカスしたレーザビームを切断部に照射する場合、レーザビームのエネルギー密度が、切断部に対応する位置で小さくなることから、照射位置周辺におけるエネルギーの変化量も小さくなる。そのため、ガラス板の反りや振動などによって、照射位置が多少変動したとしても、切断部に加わる照射熱が変化し難く、ほぼ同条件で溶断を実行することができるという利点がある。
【0016】
上記の方法において、前記レーザビームのスポット径が、前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間よりも小さいことが好ましい。
【0017】
このようにすれば、実際に溶融除去される範囲よりも狭い範囲にレーザビームが照射される。そのため、レーザビームの照射部からの熱伝導によって、薄板ガラスの溶断端面に対してアニール処理が施されることが期待できる。したがって、このようにアニール効果がある場合には、1回のレーザビームの照射によって、薄板ガラスの溶断と溶断端面のアニール処理を同時に行うことができ、後工程等で別途アニール処理を施す必要がなくなる。
【0018】
上記の方法において、前記溶断端面が、凸曲面をなすことが好ましい。
【0019】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面は、面取りを施した場合と同等以上の効果が得られ、端面強度が上がる。そのため、切断工程以後の工程に流した際に端面に欠けが生じ難くなり、取り扱いが容易になると共に歩留まりが向上するという利点がある。
【0020】
上記の方法において、前記溶断端面が、火造り面であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面の表面が滑らかに連続するため、溶断端面からの発塵を防止することができる。また、このように溶断端面の表面が滑らかになると、パーティクルが入り込み難くなるため、工程での汚れを防止することもできる。
【0022】
上記の方法において、前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であって、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることが好ましい。ここでいう算術平均粗さRa及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS 2001に基づくものとする。
【0023】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面の表面が滑らかに連続するため、溶断端面からの発塵を防止することができる。また、このように溶断端面の表面が滑らかになると、パーティクルが入り込み難くなるため、工程での汚れを防止することもできる。一方、Raが0.3μmを越えたり、RSmが150μm未満となる場合には、薄板ガラスの溶断端面が粗面(ザラザラの状態)となって、溶断端面にパーティクルが入り込んで除去し難くなる。
【0024】
上記の方法において、前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、薄板ガラスの溶断端面に、圧縮応力が作用することから、溶断端面に仮にクラック等の欠陥が形成されていても、その欠陥を塞ぐ方向に力が作用する。その結果、薄板ガラスの端面強度の向上を図ることができる。更に、万一薄板ガラスの端面にクラックが生じた場合でも、そのクラックの近傍にテンション層があるので、クラックが端面に沿って進展し、平面側には進展しない。そのため、ガラス基板としての形状を維持でき、ガラス基板としての性能が損なわれることがない。一方、圧縮応力が20MPaよりも小さい場合、薄板ガラスが破損したとき、クラックの走る方向が任意となり、ガラス基板としての性能が損なわれるおそれがある。また、圧縮応力が500MPaよりも大きい場合、クラック近傍のテンション層の影響で、薄板ガラスが自爆する可能性がある。
【0026】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、500μm以下の厚みであり、レーザビームで溶断された溶断端面を有する薄板ガラスであって、前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることに特徴づけられる。
【0027】
この場合、前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明によれば、薄板ガラスの厚みとの相対的な関係で、薄板ガラスの溶断端面間の隙間が厳格に管理される。その結果、薄板ガラスの溶断端面近傍に形状を良好に維持することができる。また、溶断端面同士を接触させることなく、溶断された薄板ガラスを安全に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断側面である。
【図2】第1実施形態に係るガラス板切断装置を示す平面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】第1実施形態に係るガラス板切断装置で溶断された直後のガラス基板の状態を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図9】第5実施形態に係るガラス板切断装置の第2吸引ノズルを示す斜視図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係るガラス板切断装置を示す縦断面図である。
【図11】本発明の溶断対象となるガラス板の他の一例を示す図である。
【図12】薄板ガラスの強度評価を行っている状態を示す図である。
【図13】薄板ガラスを溶断により切断した場合に生じる問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下では、薄板ガラスは、厚み500μm以下のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板とするが、勿論、切断対象の薄板ガラスは、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に限定されるものではない。例えば、太陽電池用、有機EL照明用、タッチパネル用、デジタルサイネージ用等、種々の分野に利用される薄板ガラス基板や、その有機樹脂との積層体などに適用が可能である。なお、薄板ガラスの厚みは、300μm以下、特に200μm以下であることが好ましい。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るガラス板切断装置1は、平置き姿勢のガラス基板Gを下方から支持する支持ステージ2と、この支持ステージ2に支持されたガラス基板Gを溶断分離するレーザビーム照射器3とを備えている。
【0032】
支持ステージ2は、ステージ本体21と、ステージ本体21の上面に沿って移動するコンベア22とを備えている。ガラス基板Gは、コンベア22の移動により切断予定線CLに沿った搬送方向下流側(図中の矢印A方向)に搬送される。このとき、ステージ本体21は、コンベア22をガイドする役割を果たす。なお、コンベア22には図示しない多数の通気孔が形成されており、この通気孔を介してガラス基板Gをコンベア22上に吸着保持しながら搬送するようになっている。勿論、ガラス基板Gを吸着せずに、コンベアによってガラス基板Gの幅方向端部を表裏両側から挟持して搬送するなど、他の搬送方法を採用してもよい。
【0033】
ステージ本体21及びコンベア22は、図2に示すように、ガラス基板Gの幅方向に間隔を置いて2つに分離されており、ガラス基板Gの切断予定線CLの下方位置に非支持空間Sを有している。この非支持空間Sでは、ガラス基板Gの下面と支持ステージ2が接触しておらず、ガラス基板Gの下面が非支持空間Sに対して露出している。
【0034】
レーザビーム照射器3は、図3に示すように、レーザビームLBを伝搬させる内部空間を有し、この空間内にレンズ31を備えている。この実施形態では、レンズ31で集光されたレーザビームLBは、微焦点に集光してガラス基板Gの上面に焦点位置FPを合わせた状態で、切断部(レーザビームLBを照射して溶断を行なっている部分)Cに照射される。そして、このレーザビームLBの照射熱によって切断予定線CLに沿ってガラス基板Gを溶断し、製品となる製品部Gaと、廃棄等され製品とならない非製品部Gbとに分離する。なお、レーザビームLBの焦点位置FPは、ガラス基板Gの厚み方向中間位置であってもよい。また、レーザビームLBの焦点位置FPをガラス基板Gの上方に設定し、レーザビームLBをデフォーカスした状態で切断部Cに照射するようにしてもよい。
【0035】
更に、ガラス板切断装置1は、製品部Gaとなる側の上方位置から切断部Cに向かって斜め下方にサイドアシストガスA1を噴射するサイドアシストガス噴射ノズル4を備えている。このサイドアシストガスA1は、ドロスなどの溶融異物を非製品部Gb側へ吹き飛ばす役割を果たす。
【0036】
以上のように構成されたガラス板切断装置1の動作を説明する。
【0037】
図1及び図2に示すように、支持ステージ2のコンベア22によってガラス基板Gを搬送し、搬送経路上に静止状態で配置されたレーザビーム照射器3から照射されるレーザビームLBをガラス基板Gの切断予定線CLに沿って走査する。
【0038】
そして、このようにレーザビームLBを照射しながら、図3に示すように、ガラス基板Gの製品部Gaとなる側の上方位置に配置されたサイドアシストガス噴射ノズル4からガラス基板Gの切断予定線CL上に位置する切断部Cに向かって斜め下方にサイドアシストガスA1を噴射する。これにより、切断部Cから溶融異物が除去され、溶断が効率的に行なわれる。また、溶融異物が非製品部Gb側へ吹き飛ばされるので、製品部Gaに溶融異物が付着する事態を防止することができる。ここで、「溶融異物」は、ガラス基板Gの溶断時に発生するドロス等の異物を意味し、溶融状態にあるもの、固化状態にあるものの双方を含む。
【0039】
また、ガラス基板Gの上方空間において、ガラス基板Gに対してガスを噴射する手段は、サイドアシストガス噴射ノズル4のみである。そして、このサイドアシストガス噴射ノズル4は、ガラス基板Gの切断部Cに対してサイドアシストガスA1を斜めに噴射するので、ガラス基板Gの切断部Cに対して真上から略鉛直に噴射する場合(例えば、センターアシストガスを噴射する場合)に比べて、溶融状態にある切断部C近傍を下方に押圧する力は作用し難い。そのため、溶融状態にあるガラス基板Gの切断部C近傍の下方への垂れ下がりを防止することができる。そして、このように切断部Cの垂れ下がりを防止した状態で、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物は非製品部Gbとなる側に優先的に飛散するため、製品部Gaの溶断端面Ga1に溶融異物が溜まり難くなる。
【0040】
更に、上記のようにガラス基板Gを溶断すれば、ガラス基板Gの切断部Cの一部が溶融除去され、製品部Gaの溶断端面Ga1と、非製品部Gbの溶断端面Gb1との間には隙間が形成される。そのため、この隙間の分だけ製品部Gaの溶断端面Ga1と、非製品部Gbの溶断端面Gb1とが離間しているので、溶断端面Ga1,Gb1同士が接触して破損する事態を防止しつつ、製品部Gaと非製品部Gbとを円滑に分離できる。
【0041】
詳細には、図4に示すように、ガラス基板Gの厚みをaとし、溶断後における製品部Gaの溶断端面Ga1と非製品部Gbの溶断端面Gb1との間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足する最小隙間bを溶断により形成するように管理されている。このようにすれば、ガラス基板Gの厚みとの相対的な関係で、製品部Gaの溶断端面Ga1と非製品部Gbの溶断端面Gb1間の隙間が厳格に管理されることから、製品部Gaの溶断端面Ga1近傍の形状を良好に維持しつつ、製品部Gaと非製品部Gbを安全に分離することができる。すなわち、b/aが2を超えると、溶断により溶融除去される薄板ガラスGの量が多くなり過ぎて、製品部Gaの溶断端面Gb1に形状不良が生じるおそれがある。更には、歪による薄板ガラスの変形や破損のおそれもある。一方、b/aが0.1未満になると、溶断端面Ga1,Gb1同士が接近し過ぎ、分離時に溶断端面Ga1,Gb1同士が接触して製品部Ga(又は非製品部Gb)が破損するおそれがある。
【0042】
ここで、最小隙間bの大きさを調整する方法としては、(1)レーザビームLBの出力パワーを変更する、(2)ガラス基板Gに対するスポット径の大きさを変更する、(3)ガラス基板Gの表面(上面)に対するサイドアシストガスA1の仮想中心線L1の傾斜角α1(図3を参照)を変更する、(4)サイドアシストガスA1などのガラス基板Gに供給されるガスの噴射圧を変更する、(5)レーザビームのパルス幅やパターンを変更する、などの溶断条件の変更が挙がられる。
【0043】
レーザビームLB及びサイドアシストガスA1の諸条件は、以下の通りである。なお、レーザビームLB及びサイドアシストガスA1の諸条件は、勿論、これに限定されるものではない。
【0044】
レーザビームLBのスポット径は、図4の最小隙間bよりも小さく設定される。
【0045】
レーザビームLBの照射エネルギーは、ガラス基板Gの上面において、100〜100000[W/mm2]に設定される。
【0046】
サイドアシストガスA1の噴射圧は、0.01〜0.5[MPa]に設定される。
【0047】
サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、25°〜60°、好ましくは30°〜50°、より好ましくは35°〜45°に設定される。すなわち、ガラス基板Gの表面に対するサイドアシストガスA1の傾斜角が25°未満であると、サイドアシストガスA1がガラス基板Gに浅く入射し過ぎて、切断部CにサイドアシストガスA1を効率よく供給できないという問題が生じるおそれがある。一方、ガラス基板Gの表面に対するサイドアシストガスA1の傾斜角が60°を超えると、サイドアシストガスA1がガラス基板Gに深く入射し過ぎて、切断部C近傍を下方に押圧する力が大きくなるおそれがある。したがって、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は上記数値範囲内であることが好ましく、この範囲であれば、サイドアシストガスA1を切断部Cに効率よく供給しつつ、サイドアシストガスA1が切断部C近傍を下方に押圧する力を適切に抑えることができる。
【0048】
なお、製品部Gaへの溶融異物の付着を防止する観点からは、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、15°〜45°に設定されることが好ましい。したがって、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状と製品部Gaへの溶融異物の付着とを考慮した場合には、サイドアシストガスA1の傾斜角α1は、25°〜45°に設定されることが好ましい。
【0049】
サイドアシストガスA1の指向方向は、切断部C近傍であればよい。例えば、図示例では、サイドアシストガスA1の仮想中心線L1が、切断部Cと交差するようにしているが、仮想中心線L1が、切断部Cよりも製品部Gaとなる側でガラス基板Gの上面や下面と交差するようにしてもよい。
【0050】
サイドアシストガスA1としては、例えば、酸素(又は空気)、水蒸気、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどのガスを単独又は他ガスと混同した状態で用いる。また、サイドアシストガスA1は、熱風として噴射してもよい。
【0051】
以上のようにして溶断されたガラス基板Gは、次のような特徴を有する。
【0052】
第一に、図4に示すように、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状が、略円弧状の良好な凸曲面形状となる。付言すれば、製品部Gaの溶断端面Ga1は、火造り面で構成される。なお、非製品部Gbの溶断端面Gb1には、サイドアシストガスA1によって吹き飛ばされた溶融異物(ドロスなど)が付着し、溶断端面Gb1の形状が、略円弧状から逸脱する場合もある。
【0053】
第二に、製品部Gaの溶断端面Ga1の算術平均粗さRaが、0.3μm以下で、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上となる。ここで、Raの下限値およびRSmの上限値について説明するならば、Raは限りなく零に近いことが望ましく、RSmは限りなく無限大に近いことが望ましい。しかしながら、実用上は加工設備等による限界があるため、Raの下限値やRSmの上限値を規定する意義は乏しい。そのため、上記では、Raの下限値とRSmの上限値を設けていない。
【0054】
第三に、製品部Gaの溶断端面Ga1の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaとなる。
【0055】
(第2実施形態)
図5に示すように、本発明の第2実施形態に係るガラス板切断装置1は、第1実施形態に係るガラス板切断装置1の構成に、更に、センターアシストガス噴射ノズル5を付加したものである。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0056】
センターアシストガス噴射ノズル5は、レーザビーム照射器3の先端部に接続されており、レーザビーム照射器3の内部空間(レンズ31よりも下方の空間)にセンターアシストガスA2を供給する。レーザビーム照射器3の内部空間に供給されたセンターアシストガスA2は、レーザビーム照射器3の先端からガラス基板Gの切断部Cに向かって真下に噴射される。すなわち、レーザビーム照射器3の先端からは、レーザビームLBが出射されると共に、センターアシストガスA2が噴射される。センターアシストガスA2は、ガラス基板Gを溶断する際に生じる溶融異物をガラス基板Gの切断部Cから除去する役割と、その溶融異物からレーザビーム照射器3のレンズ31等の光学部品を保護する役割、更には、レンズの熱を冷却する役割を果たす。
【0057】
そして、サイドアシストガスA1の噴射圧をP1、センターアシストガスA2の噴射圧をP2とした場合に、P2/P1は0〜2に設定される。詳細には、例えば、センターアシストガスA2の噴射圧は、0〜0.02[MPa]に設定され、サイドアシストガスA1の噴射圧は、0.01〜0.5[MPa]に設定される。そして、好ましくは、サイドアシストガスA1の噴射圧が、センターアシストガスA2の噴射圧よりも大きく設定される。例えば、P2/P1は、0.1〜0.5に設定される。この場合、センターアシストガスA2の噴射圧は、レーザビーム照射器3のレンズ31等の光学部品を溶融異物から保護できる程度の圧力に設定することが好ましい。
【0058】
このようにすれば、センターアシストガスA2の噴射圧が相対的に弱められることから、主として、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物を吹き飛ばすことになる。このサイドアシストガスA1は、製品部Gaとなる側の上方位置から切断部Cに向かって斜め下方に噴射されることから、センターアシストガスA2に比べて、溶融状態にあるガラス基板Gの切断部C近傍を下方に押圧する力は弱い。したがって、サイドアシストガスA1の噴射圧を、センターアシストガスA2の噴射圧よりも大きくすることで、溶融状態にあるガラス板Gの切断部Cの垂れ下がりを防止することができる。そして、このように切断部Cの垂れ下がりを防止した状態で、サイドアシストガスA1によって切断部Cに生じる溶融異物は非製品部Gbとなる側に優先的に飛散するため、製品部Gaの溶断端面Ga1に溶融異物が溜まり難くなる。したがって、図4に示した場合と同様に、製品部Gaの溶断端面Ga1の形状を略円弧状の良好な形状に維持することが可能となる。
【0059】
サイドアシストガスA1とセンターアシストガスA2は、同種のガスであってもよいし、異種のガスであってもよい。
【0060】
(第3実施形態)
図6に示すように、本発明の第3実施形態に係るガラス板切断装置1が、第1〜2実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、ガラス基板Gの下方空間に、補助サイドアシストガス噴射ノズル6を備えている点にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。なお、図示例では、センターアシストガス噴射ノズル5を設けているが省略してもよい。
【0061】
補助サイドアシストガス噴射ノズル6は、ガラス基板Gの製品部Gaとなる側の下方位置に配置され、切断部Cに向かって斜め上方に補助サイドアシストガスA3を噴射する。
【0062】
更に、この実施形態では、製品部Ga側のステージ本体21の非支持空間Sに面する側面部21aが、上方が下方よりもガラス基板Gの切断部Cに接近するように傾斜したテーパ面をなしている。そして、このテーパ面をなす側面部21aによって、補助サイドアシストガス噴射ノズル6から噴射される補助サイドアシストガスA3を斜め上方に案内し、ガラス基板Gの切断部Cに供給するようになっている。なお、図示例では、非製品部Gb側のステージ本体21の非支持空間Sに面する側面部21aも、上方が下方よりもガラス基板Gの切断部Cに接近するように傾斜したテーパ面をなしている。勿論、製品部Ga側のステージ本体21の側面部21aのみをテーパ面としてもよい。
【0063】
以上のようにすれば、サイドアシストガスA1とサイドアシストガスA3によって、ガラス基板Gの切断部Cに生じた溶融異物を、非製品部Gbとなる側に効率よく吹き飛ばすことが可能となる。また、ガラス基板Gの下面に補助サイドアシストガスA3が作用することから、ガラス基板Gの切断部C近傍を下方から支持する効果も期待でき、切断部C近傍の垂れ下がり防止に寄与するものと考えられる。
【0064】
補助サイドアシストガスA3の噴射圧は、例えば、0.01〜0.5[MPa]に設定される。
【0065】
ガラス基板Gの裏面(下面)に対する補助サイドアシストガスA3の傾斜角α2は、15°〜70°、好ましくは20°〜60°、より好ましくは25°〜45°に設定される。
【0066】
補助サイドアシストガスA3の指向方向は、切断部C近傍であればよい。例えば、図示例では、補助サイドアシストガスA3の仮想中心線L2が、切断部Cと交差するようにしているが、仮想中心線L2が、切断部Cよりも製品部Gaとなる側でガラス基板Gの上面や下面と交差するようにしてもよい。
【0067】
補助サイドアシストガスA3は、サイドアシストガスA1と同種のガスであってもよいし、異種のガスであってもよい。
【0068】
なお、この第3実施形態では、サイドアシストガスA1と補助サイドアシストガスA3は、同時にガラス基板Gの切断部Cに噴射するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス基板Gの切断部Cが貫通するまでは、サイドアシストガスA1で切断部Cの溶融異物を吹き飛ばし、ガラス基板Gの切断部Cが貫通した後は、サイドアシストガスA1を止めて、補助サイドアシストガスA3で切断部Cの溶融異物を吹き飛ばすようにしてもよい。
【0069】
(第4実施形態)
図7に示すように、本発明の第4実施形態に係るガラス板切断装置1が、第3実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、補助サイドアシストガスA3の供給方法にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0070】
第4実施形態では、支持ステージ2のステージ本体21に、斜め上方に向かって延在し、一端が非支持空間Sに連通するガス流通路21bが形成されている。このガス流通路21bの他端には、補助サイドアシストガス噴射ノズル6の噴射口が接続されている。補助サイドアシストガス噴射ノズル6から噴射された補助サイドアシストガスA3を、ガス流通路21bを通じて斜め上方に誘導して非支持空間Sに開放し、ガラス基板Gの切断部Cに供給する。
【0071】
(第5実施形態)
図8に示すように、本発明の第5実施形態に係るガラス板切断装置1が、第3実施形態に係るガラス板切断装置1と相違するところは、溶断過程で生じる溶融異物を吸引する構成を備えている点にある。以下、共通点についての説明は省略し、相違点についてのみ説明する。
【0072】
すなわち、非製品部Gbとなる側の上方位置に配置された第1吸引ノズル7と、非製品部Gbとなる側の下方位置に配置された第2吸引ノズル8とを備えている。
【0073】
第1吸引ノズル7は、その仮想中心線L3を切断部Cに指向させた状態で、サイドアシストガス噴射ノズル4と向かい合うように配置され、ガラス基板Gの上方空間の溶融異物を吸引する。ガラス基板Gの表面(上面)に対する第1吸引ノズル7の仮想中心線L3の傾斜角β1は、α1±15°以内、好ましくは、α1±10°以内、より好ましくはα1±5°以内の範囲に設定される。
【0074】
一方、第2吸引ノズル8は、その吸引口を上方に指向させた状態で、補助サイドアシストガス噴射ノズル6と向かい合うように配置されており、ガラス基板Gの下方空間、換言すれば、非支持空間Sの溶融異物を吸引する。ここで、第2吸引ノズル8を、切断部Cの真下から非製品部Gb側に偏倚させて配置しているのは、サイドアシストガスA1や補助サイドアシストガスA3によって、溶融異物が非支持空間S内において非製品部Gb側に吹き飛ばされながら下降するからである。
【0075】
そして、第1吸引ノズル7及び第2吸引ノズル8は、サイドアシストガスA1及び補助サイドアシストガスA3によって非製品部Gb側に吹き飛ばされた溶融異物を吸引する。このようにすれば、サイドアシストガスA1及び補助サイドアシストガスA3によって切断部Cから吹き飛ばした溶融異物が、周辺空間に浮遊して再び製品部Gaに付着するという事態を確実に防止することができる。
【0076】
なお、この第5実施形態では、第1吸引ノズル7と第2吸引ノズル8によって、同時に溶融異物を吸引するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、ガラス基板Gの切断部Cが貫通するまでは、第1吸引ノズル7で溶融異物を吸引し、ガラス基板Gの切断部Cが貫通した後は、第2吸引ノズル8で溶融異物の溶融異物を吸引するようにしてもよい。また、第1吸引ノズル7を省略して、第2吸引ノズル8のみで溶融異物を吸引するようにしてもよい。
【0077】
ここで、ガラス基板Gの下方空間に配置された第2吸引ノズル8は、図9に示すように、ガラス基板Gの切断予定線CL方向に沿って長尺な吸引口81を有する。これは、ガラス基板Gの下方空間において、溶融異物が切断予定線CL方向に沿った広範囲に飛散する傾向があるためである。なお、レーザビーム照射器3等によるスペース上の制約がなければ、ガラス基板Gの上方空間に配置された第1吸引ノズル7も、切断予定線CLの延在方向に沿って長尺な吸引口を有するようにしてもよい。
【0078】
(第6実施形態)
勿論、図10に示すように、第4実施形態に係るガラス板切断装置1(図7を参照)に、第1吸引ノズル7および第2吸引ノズル8を配置してもよい。
【0079】
なお、本発明は、上記第1〜6実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、ガラス基板Gをオーバーフローダウンドロー法などで成形した場合、図11に示すように、ガラス基板Gの幅方向中央部の厚みよりも、ガラス基板Gの幅方向両端部の厚みが相対的に分厚くなる。そして、幅方向中央部が製品部Gaとされ、幅方向両端部が非製品部(耳部と称される)Gbとされる。したがって、本発明に係る切断方法及び切断装置を、このようなガラス基板Gの非製品部Gbとなる耳部の除去に利用してもよい。
【0081】
また、上記の実施形態では、溶断分離された薄板ガラスGの一方が製品部Gaで、他方が非製品部Gbの場合を説明したが、双方を製品部Gaとする場合にも、本発明を適用することができる。
【実施例】
【0082】
本発明の有用性を実証するために対比試験を行った。
【0083】
この対比試験の試験条件は次のとおりである。まず、図3に示した態様で、アシストガスを吹き付けながら、縦300mm×横300mmの大きさの薄板ガラスの切断部に対して、波長10.6μmのCO2レーザを照射して、薄板ガラスを溶断して切断する。次に、このように溶断された薄板ガラスの溶断端面近傍に対して、二次加工(例えば、レーザによるアニールや電気加熱によるアニール)することでアニール処理を施す。このような一連の切断工程を、薄板ガラスの厚みaと、溶断端面間の最小隙間bを変化させて行う。そして、それぞれの切断工程を経て溶断された薄板ガラスについて、(1)溶断端面の擦れの状態、(2)溶断端面の形状、(3)強度をそれぞれ検査した。なお、溶断された薄板ガラスの強度は、図12に示すように、それぞれの薄板ガラスGを順次、二枚の板状体9で挟み且つU字状に50mm/分の速度で長手方向に曲げが生じるように押し曲げていく二点曲げにより強度を評価した。この評価は、押し曲げにより破壊したときの二枚の板状体9の間隔に基づいて破壊強度を算出する。これらの試験結果は、下記に示すとおりである。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
以上の表1及び表2によれば、b/aが0.1以上のとき、分離時に薄板ガラスの溶断端面同士の接触により生じる擦れが全くないか、或いは実質的に問題にならない程度に抑えることが可能であることが認識できる。そのため、このような範囲に管理すれば、分離時に薄板ガラスの溶断端面同士が接触して破損するという事態を確実に低減することができる。
【0087】
また、b/aが2以下のとき、薄板ガラスの溶断端面の形状が良好に維持されることが認識できる。そのため、このような範囲に管理すれば、薄板ガラスの製品品位が低下したり、或いは、後工程で溶断端面を起点として薄板ガラスが破損するという事態を確実に低減することができる。
【0088】
したがって、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように、最小隙間bを管理すれば、薄板ガラスの溶断端面近傍の形状を良好に維持しつつ、分離時やその後の工程で薄板ガラスが破損するという事態を確実に低減できる。なお、このような作用効果は、溶断するためにレーザビームを照射する以外に、予備加熱やアニール処理を要することなく享受できる。
【0089】
なお、より安定した品位を要求する場合は、溶断直後にレーザ等によるアニール処理を施してもよい。
【0090】
上記実施例8〜10で形成された溶断端面の算術平均粗さRaは、0.08〜0.18μmで、粗さ曲線要素の平均長さRSmは、250〜400μmであり、溶断端面の汚れの除去を容易に行うことができた。一方、薄板ガラスをスクライブ線に沿って折り割りした後にダイヤ研磨を施した割断端面を比較例として挙げると、その割断端面は、Raが0.4〜0.6μmで且つRSmが80〜140μmであり、割断端面の汚れを十分に除去することができなかった。
【0091】
また、上記実施例1〜10で形成された溶断端面の圧縮歪(残留圧縮応力)は、80〜180MPaであった。端面に傷を入れて、クラックを発生させると、エッジに沿ってクラックが進展し、ガラス基板としての性能を損なうことがなかった。一方、比較例として作製したレーザ割断された薄板ガラスの端面の圧縮歪は、0〜15MPaであり、傷を入れてクラックを発生させると、クラックが面方向に進展して薄板ガラスが2つに割れ、ガラス基板としての性能を失うに至った。
【符号の説明】
【0092】
1 ガラス板切断装置
2 支持ステージ
21 ステージ本体
22 コンベア
3 レーザビーム照射器
31 レンズ
4 サイドアシストガス噴射ノズル
5 センターアシストガス噴射ノズル
6 補助サイドアシストガス噴射ノズル
7 第1吸引ノズル
8 第2吸引ノズル
A1 サイドアシストガス
A2 センターアシストガス
A3 補助サイドアシストガス
C 切断部
G ガラス基板
Ga 製品部
Ga1 溶断端面
Gb 非製品部
Gb1 溶断端面
LB レーザビーム
S 非支持空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500μm以下の厚みの薄板ガラスの切断部にレーザビームを照射し、前記薄板ガラスを溶断する薄板ガラス切断方法であって、
前記薄板ガラスの厚みをa、前記切断部で対向する前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように前記最小隙間を管理することを特徴とする薄板ガラスの切断方法。
【請求項2】
前記レーザビームをデフォーカスの状態で前記切断部に照射することを特徴とする請求項1のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項3】
前記レーザビームのスポット径が、前記最小隙間よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項4】
前記溶断端面が、凸曲面をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項5】
前記溶断端面が、火造り面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項6】
前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平
均長さRSmが、150μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に
記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項7】
前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項8】
レーザビームで溶断された溶断端面を有し、厚みが500μm以下の薄板ガラスであって、
前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることを特徴とする薄板ガラス。
【請求項9】
前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることを特徴とする請求項8に記載の薄板ガラス。
【請求項1】
500μm以下の厚みの薄板ガラスの切断部にレーザビームを照射し、前記薄板ガラスを溶断する薄板ガラス切断方法であって、
前記薄板ガラスの厚みをa、前記切断部で対向する前記薄板ガラスの溶断端面間の最小隙間をbとした場合に、0.1≦b/a≦2なる関係を満足するように前記最小隙間を管理することを特徴とする薄板ガラスの切断方法。
【請求項2】
前記レーザビームをデフォーカスの状態で前記切断部に照射することを特徴とする請求項1のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項3】
前記レーザビームのスポット径が、前記最小隙間よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項4】
前記溶断端面が、凸曲面をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項5】
前記溶断端面が、火造り面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項6】
前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平
均長さRSmが、150μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に
記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項7】
前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄板ガラスの切断方法。
【請求項8】
レーザビームで溶断された溶断端面を有し、厚みが500μm以下の薄板ガラスであって、
前記溶断端面の算術平均粗さRaが、0.3μm以下であり、且つ、粗さ曲線要素の平均長さRSmが、150μm以上であることを特徴とする薄板ガラス。
【請求項9】
前記溶断端面の残留圧縮応力が、20MPa〜500MPaであることを特徴とする請求項8に記載の薄板ガラス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−75818(P2013−75818A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203278(P2012−203278)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】
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