説明

薬液供給瓶及び半導体製造装置

【課題】 気体と薬液が接触しない液送方式を容易に実現する薬液供給瓶及び半導体製造装置を提供する。
【解決手段】 容器10内には伸縮性袋12が設けられている。伸縮性袋12は、容器10に設けられたガス導入口13から与えられるガス圧力に応じて大きさが可変となっている。薬液導出口14は、伸縮性袋12の膨張途中で塞がらないような位置に設けられている。伸縮性袋12は、薬液11の薬液導出口14への経路を確保しながら膨張する。薬液11は、伸縮性袋12の膨張により容器10内の容積が小さくなる分、薬液導出口14から外部に押し出されるようになる。密栓部材15は、容器10が図示しない所定の半導体製造装置にセットされ、その半導体製造装置における塗布部の配管端部に結合されるときに外される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造に係り、特に液体ソースの薬液を供給する薬液供給瓶及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造に必要なレジスト液、SOG(spin on glass)液、あるいはTEOS(tetraethoxysilane)等の液体ソースの薬液は、圧送方式やポンプによる送液技術を利用して所定の各処理装置に供給される。具体的にはN,Heガスによって薬液を圧送する方式を用いるもの、バブリングによって薬液を供給する方式、送液ポンプで薬液を供給する方式等が知られている。
【0003】
例えば従来では、ホトレジスト塗布装置のホトレジスト供給機構に関し、薬液加圧装置の出口に、加圧された密閉容器に納められた伸縮性予備室の入口を接続し、予備室の出口から弁を通じて薬液を供給する。レジストボトル内のレジスト液はポンプ装置に吸引されフィルターハウジング内に圧送され濾過される。濾過されたレジスト液は上記伸縮性予備室に充填される。レジスト液の供給は予備室の出口に設けられた制御弁を開くことによって行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−77122号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の送液方式では、薬液が気体に触れるため、薬液中に気体が溶け込む。液中に溶け込んだ気体は集合して気泡の状態になる。この気泡は塗布工程において塗布斑の原因となる。対策として、薬液供給配管途中に脱気システムを設置する方法がある。この脱気システムは真空排気等の付帯設備が必要である。このため、システムの定期的なメンテナンスが必要となり、コスト、安定稼動上から不利となる。
【0005】
また、有機SOG等、空気に触れるとゲル化する薬品に関しては、薬液瓶内で変質が始まり、長期間の使用には問題が生じる。そのため、短期間(例えば24時間以内)の薬液交換を要する。また、プラズマCVD装置等にTEOS等の液体ソースを供給する場合、液中に窒素分が混入していると放電インピーダンスが変化し、異常放電、膜室変動の原因となる。この対策としてHeガスによるバブリングが採用されているが、ガス単価等でNに比べて不利である。
【0006】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたもので、気体と薬液が接触しない液送方式を容易に実現する薬液供給瓶及び半導体製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薬液供給瓶は、薬液が充填される容器と、前記容器内に設けられ、圧力に応じて大きさが可変の伸縮性袋と、前記容器に設けられ、前記伸縮性袋内に圧力を与えるガス導入口と、前記容器に設けられ、前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口と、前記薬液導出口を閉塞する密栓部材と、を具備している。
【0008】
上記本発明に係る薬液供給瓶によれば、容器内の伸縮性袋を大きくする(膨らませる)ことで、容器内の薬液の容積を小さく変化させることができる。その分、薬液は薬液導出口から外部に押し出される。これにより、薬液は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくなる。
【0009】
なお、上記本発明に係る薬液供給瓶は、次のいずれかの特徴を有することにより、薬液の無駄なく供給効率の高い構成となり得る。
前記伸縮性袋は、ガスが供給されることにより、最終的には前記容器内の形状に近くなるように膨張することを特徴とする。
前記伸縮性袋は、ガスが供給されることにより、前記薬液の前記薬液導出口への経路を確保しながら膨張することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る薬液供給瓶は、薬液が充填される容器と、前記容器内に設けられ、圧力に応じて前記薬液の容積を可変とする密閉しきい板と、前記容器に設けられ、前記密閉しきい板に圧力を与えるガス導入口と、前記容器に設けられ、前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口と、前記薬液導出口を閉塞する密栓部材と、を具備している。
【0011】
上記本発明に係る薬液供給瓶によれば、容器内の密閉しきい板をスライドさせることで、容器内の薬液充填容積を小さく変化させることができる。その分、薬液は薬液導出口から外部に押し出される。これにより、薬液は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくなる。
【0012】
なお、上記本発明に係る薬液供給瓶は、次のいずれかの特徴を有することにより、薬液の無駄なく供給効率の高い構成となり得る。
前記密閉しきい板は、前記薬液の接触側と反対側の前記容器内にガスが供給されることにより、最終的には前記容器内の前記薬液の容量がなくなるようにスライドすることを特徴とする。
前記密閉しきい板は、前記薬液の接触側と反対側の前記容器内にガスが供給されることにより、前記薬液の前記薬液導出口への経路を確保しながらスライドすることを特徴とする。
前記容器内壁に前記密閉しきい板の偏向防止用のガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る半導体製造装置は、薬液の塗布部が設けられた処理室と、前記塗布部への配管経路途中に設けられた薬液制御バルブと、ガス供給機構と、前記ガス供給機構からの配管経路途中に設けられたガス制御バルブと、薬液が充填された容器内において、前記ガス供給機構からの配管経路と結合されガス圧力により前記薬液の容積を可変とする容積制御部材が設けられ、前記容積制御部材に応じて前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口が前記塗布部への配管経路につなげられる薬液供給瓶と、を具備している。
【0014】
上記本発明に係る半導体製造装置によれば、容積制御部材を内部に備える薬液供給瓶によって、容器内の薬液の容積を小さく変化させることができる。その分、薬液は薬液導出口から外部に押し出される。これにより、薬液は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくして塗布部へ到達させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る薬液供給瓶の要部を示す構成図である。薬液供給瓶B1は容器10を有する。容器10は、薬液11が充填される耐薬液性能の容器であり、例えば硬質フッ素系樹脂容器である。その他、アルミナコーティング等の金属容器であることも考えられる。容器10内部は円筒形、楕円筒形を含め、角柱の角を丸めた形態等様々な形が考えられる。薬液11は、レジスト、SOG、あるいはTEOS等の液体ソースが考えられる。容器10内には伸縮性袋12が設けられている。伸縮性袋12は、例えば耐薬液性能の炭素原子の鎖状結合、CとFの化合物でなるニトリル系またはフッ素系ゴムで構成される。
【0016】
伸縮性袋12は、容器10に設けられたガス導入口13から与えられるHeやN等の不活性ガスの圧力に応じて大きさが可変となっている。この不活性ガスは、図示しないがガス供給パネルから所定の半導体製造装置につながり、その半導体製造装置によって供給制御される。伸縮性袋12が破線に示すように膨らむことによって容器10内の薬液充填容積を小さくすることができる。薬液導出口14は、伸縮性袋12の膨張途中で塞がらないような位置に設けられている。伸縮性袋12は、薬液11の薬液導出口14への経路を確保しながら膨張する。伸縮性袋12は、最終的には容器10内の形状に近くなるように膨張することが望ましい。
【0017】
薬液11は、伸縮性袋12の膨張により容器10内の容積が小さくなる分、薬液導出口14から外部に押し出されるようになる。密栓部材15は、容器10が図示しない所定の半導体製造装置にセットされ、その半導体製造装置における塗布部の配管端部に結合されるときに外される。
【0018】
上記実施形態の構成によれば、容器10内の伸縮性袋12を大きくする(膨らませる)ことで、容器10内の薬液11の容積を小さく変化させることができる。その分、薬液11は薬液導出口14から外部に押し出される。これにより、薬液11は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくなる。
【0019】
図2(a),(b)は、図1の変形例を示す要部の構成図である。図1と同様の箇所には同一の符号を付して説明は省略する。このように、セットする半導体製造装置に合うように容器10の薬液導出口14、ガス導入口13、内部の伸縮性袋12の形や配置を変える構成も考えられる。
【0020】
図3(a)は、本発明の第2実施形態に係る薬液供給瓶の要部を示す構成図である。図3(b)は、薬液供給瓶の容器内の上面図を示す。薬液供給瓶B2は容器20を有する。容器20は、薬液21が充填される耐薬液性能の容器であり、例えば硬質フッ素系樹脂容器である。その他、アルミナコーティング等の金属容器であることも考えられる。薬液21は、円筒形、楕円筒形、角柱形態等様々な形が考えられるが、ここではガイド部26の付いた角柱形態とする。ガイド部26は、後述する密閉しきい板27のスライドを精度よくスムーズにするため、偏向抑制に寄与する。また、ガイド部26は角柱形態の容器20の角を丸める働きもある。
【0021】
薬液21は、第1実施形態と同様である。レジスト、SOG、あるいはTEOS等の液体ソースが考えられる。容器20内には密閉しきい板27が設けられている。密閉しきい板27は、例えば耐薬液性能のフッ素樹脂系の硬質盤271の周囲にフッ素系ゴム272が固着され、容器20内壁及びガイド部26に密着しながらスライド可能となっている。
【0022】
密閉しきい板27は、容器20に設けられたガス導入口23から与えられるHeやN等の不活性ガスの圧力に応じてスライドし、容器20内の薬液21の充填容積を小さく変化させることができる。この不活性ガスは、図示しないがガス供給パネルから所定の半導体製造装置につながり、その半導体製造装置によって供給制御される。密閉しきい板27が破線に示すようにスライドすることによって容器20内の薬液充填容積は小さくなる。薬液導出口24は、密閉しきい板27の膨張途中で塞がらないような位置に設けられている。すなわち、密閉しきい板27は、薬液21の接触側と反対側の容器内にガスが供給されることにより、薬液21の薬液導出口24への経路を確保しながらスライドする。密閉しきい板27は、最終的には容器20内の薬液21の容量がなくなるようにスライドすることが望ましい。
【0023】
薬液21は、密閉しきい板27のスライドにより容器20内の薬液充填容積が小さくなる分、薬液導出口24から外部に押し出されるようになる。密栓部材25は、容器20が図示しない所定の半導体製造装置にセットされ、その半導体製造装置における塗布部の配管端部に結合されるときに外される。
【0024】
上記実施形態の構成によれば、容器20内の密閉しきい板27をスライドさせることで、容器20内の薬液21の充填容積を小さく変化させることができる。その分、薬液21は薬液導出口24から外部に押し出される。これにより、薬液21は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくなる。
【0025】
図4(a),(b)は、図3の変形例を示す要部の構成図である。図3と同様の箇所には同一の符号を付して説明は省略する。このように、セットする半導体製造装置に合うように容器20の薬液導出口24、ガス導入口23の配置、容器20や内部の密閉しきい板27の形を変える構成も考えられる。
【0026】
図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体製造装置の構成を示すブロック図である。半導体製造装置30本体の処理室31には、塗布部32が設けられている。処理室31には被処理基板等図示しないが、半導体製造装置30は、液体ソースを利用するレジスト塗布装置、SOG塗布装置、CVD装置等である。塗布部32は、配管経路33につながり、配管経路33途中に少なくとも薬液制御バルブ34が設けられている。また、ガス供給機構35は、配管経路36につながり、配管経路36途中に少なくともガス制御バルブ37が設けられている。
【0027】
例えば、前記第1実施形態のような薬液供給瓶B1がセットされる。すなわち、配管経路33と薬液導出口14が結合され、配管経路36とガス導入口13が結合される。薬液11が充填された容器10内において、ガス供給機構35からのガス圧力により伸縮性袋12が膨張して薬液11の容量を小さくし、その分だけ薬液11が薬液導出口14から塗布部32に向かって押し出される。
あるいは、例えば、前記第2実施形態のような薬液供給瓶B2がセットされる。すなわち、配管経路33と薬液導出口24が結合され、配管経路36とガス導入口23が結合される。薬液21が充填された容器20内において、ガス供給機構35からのガス圧力により密閉しきい板27がスライドして薬液11の容量を小さくし、その分だけ薬液11が薬液導出口24から塗布部32に向かって押し出される。
【0028】
上記実施形態の構成によれば、伸縮性袋12や密閉しきい板27のような容積制御部材を内部に備える薬液供給瓶によって、容器11や21の薬液充填容積を小さく変化させることができる。その分、薬液11(または21)は薬液導出口14(または24)から外部、すなわち塗布部32に向かって押し出される。これにより、薬液11(または21)は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくして塗布部32へ到達させることができる。
【0029】
以上説明したように本発明によれば、容器内の伸縮性袋を大きくする(膨らませる)、あるいは密閉しきい板をスライドさせることで、容器内の薬液充填容積を小さく変化させることができる。容器内の薬液充填容積の変化分は、薬液導出口から外部に押し出される薬液量に反映される。これにより、薬液は気体に接触することなく供給制御でき、気体の溶け込みはほとんどなくなる。脱気システムがなくても信頼性の高い良好な塗布が期待できる。この結果、気体と薬液が接触しない液送方式を容易に実現する薬液供給瓶及び半導体製造装置を提供することができる。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施形態及び方法に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変更、応用を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る薬液供給瓶の要部を示す構成図。
【図2】図1の変形例を示す要部の構成図。
【図3】第2実施形態に係る薬液供給瓶の要部を示す構成図。
【図4】図3の変形例を示す要部の構成図。
【図5】第3実施形態に係る半導体製造装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0032】
10,20…容器、11,21…薬液、12…伸縮性袋、13,23…ガス導入口、14,24…薬液導出口、15…密栓部材、26…ガイド部、27…密閉しきい板、271…硬質盤、272…フッ素系ゴム、30…半導体製造装置、31…処理室、32…塗布部、33,36…配管経路、34…薬液制御バルブ、35…ガス供給機構、37…ガス制御バルブ、271…硬質盤、272…フッ素系ゴム、B1,B2…薬液供給瓶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填される容器と、
前記容器内に設けられ、圧力に応じて大きさが可変の伸縮性袋と、
前記容器に設けられ、前記伸縮性袋内に圧力を与えるガス導入口と、
前記容器に設けられ、前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口と、
前記薬液導出口を閉塞する密栓部材と、
を具備した薬液供給瓶。
【請求項2】
前記伸縮性袋は、ガスが供給されることにより、最終的には前記容器内の形状に近くなるように膨張する請求項1に記載の薬液供給瓶。
【請求項3】
前記伸縮性袋は、ガスが供給されることにより、前記薬液の前記薬液導出口への経路を確保しながら膨張する請求項1または2に記載の薬液供給瓶。
【請求項4】
薬液が充填される容器と、
前記容器内に設けられ、圧力に応じて前記薬液の容積を可変とする密閉しきい板と、
前記容器に設けられ、前記密閉しきい板に圧力を与えるガス導入口と、
前記容器に設けられ、前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口と、
前記薬液導出口を閉塞する密栓部材と、
を具備した薬液供給瓶。
【請求項5】
前記密閉しきい板は、前記薬液の接触側と反対側の前記容器内にガスが供給されることにより、最終的には前記容器内の前記薬液の容量がなくなるようにスライドする請求項4に記載の薬液供給瓶。
【請求項6】
前記密閉しきい板は、前記薬液の接触側と反対側の前記容器内にガスが供給されることにより、前記薬液の前記薬液導出口への経路を確保しながらスライドする請求項4または5に記載の薬液供給瓶。
【請求項7】
前記容器内壁に前記密閉しきい板の偏向防止用のガイド部が設けられている請求項4〜6のいずれか一つに記載の薬液供給瓶。
【請求項8】
前記容器内壁に設けられた前記密閉しきい板の偏向防止用のガイド部をさらに具備する請求項4〜6のいずれか一つに記載の薬液供給瓶。
【請求項9】
薬液の塗布部が設けられた処理室と、
前記塗布部への配管経路途中に設けられた薬液制御バルブと、
ガス供給機構と、
前記ガス供給機構からの配管経路途中に設けられたガス制御バルブと、
薬液が充填された容器内において、前記ガス供給機構からの配管経路と結合されガス圧力により前記薬液の容積を可変とする容積制御部材が設けられ、前記容積制御部材に応じて前記薬液が外部に押し出されるための薬液導出口が前記塗布部への配管経路につなげられる薬液供給瓶と、
を具備した半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−112500(P2007−112500A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308284(P2005−308284)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】