説明

蛍光体含有接着性シリコーン組成物、該組成物からなる組成物シート、及び該シートを使用する発光装置の製造方法

【課題】蛍光体が均一に分散し、しかもその分散状態が経時的に安定であり、室温下、未硬化状態で固体ないし半固体であるため取扱い容易である付加硬化型接着性シリコーン組成物、該組成物からなり従来のアセンブリー装置を使用してLEDチップの表面上に容易に形成することができる接着性シリコーン組成物シートを提供する。
【解決手段】蛍光体を含有し、未硬化状態において室温で固体状もしくは半固体状である付加硬化型接着性シリコーン組成物及び該組成物からなる接着性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDチップ表面に配置し接着することでLEDの青色光及び紫外光を変換させることが可能な、未硬化状態(即ち、非加熱処理下)において、室温で固体又は半固体の付加硬化型蛍光体含有接着性シリコーン組成物、該組成物からなるシート、該シートを加熱硬化して得られるシート状硬化物、該シリコーン組成物シートを利用する発光装置の製造方法、並びに発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)の分野では波長変換のために蛍光体を使用することは知られている(特許文献1)。シリコーン樹脂は耐光性に優れることからLEDチップを封止、保護のために被覆する材料として注目されている(特許文献2)
【0003】
一般に、白色LEDでは、蛍光体を分散させたシリコーン樹脂やエポキシ樹脂でLEDチップを被覆するなどの方法により蛍光体をチップ近傍に分散させて青色光を擬似白色光に変換させている。しかし蛍光体の樹脂層中での分散が不均一であったり偏りがあったりすると色ずれが起こりやすいため、均一な白色光を作り出すには蛍光体が被覆樹脂層中に均一に分散することが必要である。そのために、スクリーン印刷や、蛍光体を沈降により分散させる方法等が検討されているが、製造工程が複雑化したり、得られる安定化の程度が不十分であったりする問題があった。したがって、蛍光体をチップ表面に均一に分散させることができる容易な技術求められている。
【0004】
また、LED等においては、LEDチップを被覆する樹脂層には高い耐熱性、耐紫外線性等も求められる。さらに、従来の製造装置でかかる樹脂層を形成することができると好都合である。
【0005】
【特許文献1】特表2005−524737
【特許文献2】特開2004−339482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、蛍光体が均一に分散し、しかもその分散状態が経時的に安定であり、室温下、未硬化状態で固体ないし半固体であるため取扱い容易である付加硬化型接着性シリコーン組成物、該組成物からなり従来のアセンブリー装置を使用してLEDチップの表面上に容易に形成することができる接着性シリコーン組成物シートを提供することにある。さらに、該シートを使用して蛍光体含有硬化シリコーン樹脂層でLEDチップの表面が被覆されたLED発光装置を製造する方法を提供することも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一に、
(A)R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3a4bSiO(4-a-b)/2単位からなり(ここで、R1、R2、及びR3は独立に水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を示し、R4は独立にビニル基又はアリル基を示し、aは0、1又は2で、bは1又は2で、かつa+bは2又は3である。)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含むレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(B)R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3cdSiO(4-c-d)/2単位からなり(ここで、R1、R2及びR3は独立に上記の通りであり、cは0、1又は2で、dは1又は2で、かつc+dは2又は3である。)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含むレジン構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基及びアリル基の合計に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜4.0となる量、
(C)白金族金属系触媒:有効量、及び
(D)蛍光体
を含有する室温で固体状もしくは半固体状である付加硬化型接着性シリコーン組成物を提供する。
【0008】
上記の接着性シリコーン組成物においては、(A)成分及び(B)成分の一方又は両方がシラノール基を含有するものであることが、該組成物の接着性が良好となる点で好ましい。
【0009】
本発明は、第二に、上記の付加硬化型シリコーン組成物をシート状に成形してなる接着性シリコーン組成物シートを提供する。
【0010】
該シリコーン組成物シートを硬化して得られるシート状硬化物は硬質樹脂でありながら可撓性に優れ、表面のタックが少なく、しかも従来の成形装置でも容易に成形可能であるという利点がある。
【0011】
該層状硬化物は透明性が高く、その内部には蛍光体が均一に分散し、しかもその分散性の安定性が高いという長所を有するため、LEDチップの表面に形成する封止体あるいは被覆として有用である。
【0012】
そこで、本発明は、第四に、LEDチップの表面に、上記の接着性シリコーン組成物シートを配置し、該組成物シートを加熱硬化させて蛍光体含有硬化シリコーン樹脂層で前記の表面を被覆することを含む被覆LEDチップを有する発光装置の製造方法を提供する。
【0013】
この発明ではLEDチップの表面に組成物シートが配置され、少なくともその表面が硬化シリコーン樹脂層で被覆される。半導体チップの表面ばかりでなく、半導体チップを含むLED素子の装置全面に組成物シートが配置され、硬化樹脂層で被覆されてもよい。
【0014】
そして、本発明は、第五に、上記の製造方法により得られる被覆LEDチップを有する発光装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接着性シリコーン組成物及びそれよりなる組成物シートは未硬化状態で室温において固体又は半固体であるので取り扱い易く作業性が良好である。したがって、該組成物シートはLEDチップ表面に容易に配置し接着することができる。また、未硬化状態で固体又は半固体であるので充填された蛍光体が、組成物または組成物シートの保管中に分離も沈降も起こさない。また、該シリコーン組成物シートは通常のダイボンドマウンター等のマウント装置でも容易にLEDチップ表面に配置し、接着させることができる。そして、こうして接着した組成物シートを硬化させることで、蛍光体が均一に分散した硬化樹脂層を均一な層厚で効率よく安定に形成することができる。したがって、該組成物シートを用いる本発明のLED発光装置の製造方法は量産性に優れている。また、得られる蛍光体含有シリコーン樹脂層では蛍光体が均一に分散しているので色ずれは起こり難く、演色性が良好である。さらに、このシリコーン樹脂層は、硬質樹脂でありながら可撓性に優れ、表面のタックが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。なお、本明細書において、「室温」とは15〜30℃の温度を意味する。
【0017】
〔付加硬化型接着性シリコーン組成物〕
【0018】
−(A)レジン構造のオルガノポリシロキサン−
本発明の組成物の重要な(A)成分であるレジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3a4bSiO(4-a-b)/2単位からなり(ここで、R1、R2、及びR3は水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を示し、R4は独立にビニル基又はアリル基を示し、aは0、1又は2で、bは1又は2で、かつa+bは2又は3である。)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個、好ましくは8〜30個、更に好ましくは10〜20個である構造を部分的に含有するレジン構造のオルガノポリシロキサンである。
【0019】
なお、上記のR22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造とは、一般式(1):
【0020】
【化1】

【0021】
(ここで、mは5〜50の整数)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を意味する。
【0022】
(A)成分のオルガノポリシロキサン中に存在するR22SiO単位全体の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特には80モル%以上(80〜100モル%)が、分子中でかかる一般式(1)で表される連鎖構造を形成していることが好ましい。
【0023】
(A)成分の分子中においては、R22SiO単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R1SiO1.5単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R3a4bSiO(4-a-b)/2単位の中のR4(独立にビニル基又はアリル基)は、後述する(B)成分が有するR3cdSiO(4-c-d)/2単位のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)とヒドロシリル化付加反応することにより本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0024】
(A)成分を構成する必須の三種のシロキサン単位のモル比、即ち、R1SiO1.5単位:R22SiO単位:R3a4bSiO(4-a-b)/2単位のモル比は、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、合計で100)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0025】
また、この(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に10,000〜100,000の範囲にあると、該ポリマーは固体もしくは半固体状であり作業性、硬化性などから好適である。
【0026】
このようなレジン構造のオルガノポリシロキサンは、各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で上記三種のシロキサン単位が所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解縮合を行うことによって合成することができる。
【0027】
ここで、R1SiO1.5単位の原料としては、MeSiCl3、EtSiCl3、PhSiCl3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類などを例示できる。
【0028】
22SiO単位の原料としては、
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
(ここで、m=5〜50の整数(平均値)、n=0〜50の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0033】
また、R3a4bSiO(4-a-b)/2単位は、R34SiO単位、R324SiO0.5単位、R42SiO単位、及びR342SiO0.5単位から選ばれる1種のシロキサン単位又は2種以上のシロキサン単位の組み合わせであることを示す。その原料としては、Me2ViSiCl、MeViSiCl2、Ph2ViSiCl、PhViSiCl2等のクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するメトキシシラン類等のアルコキシシラン類などを例示することができる。
【0034】
なお、本発明において、(A)成分のオルガノポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R1SiO1.5単位、R22SiO単位及び/又はR3a4bSiO(4-a-b)/2単位に、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれる。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)、好ましくは5モル%以下(0〜5モル%)程度含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R1(HO)SiO単位、R1(HO)2SiO0.5単位、R22(HO)SiO0.5単位が挙げられる。
【0035】
−(B)レジン構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン−
本発明の組成物の重要な(B)成分であるレジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3cdSiO(4-c-d)/2単位からなり(ここで、R1、R2、及びR3は上記の通りであり、cは0,1又は2で、dは1又は2で、かつc+dは2又は3である)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個、好ましくは8〜30個、更に好ましくは10〜20個である直鎖状のシロキサン構造を部分的に含有するレジン構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0036】
なお、R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造とは、(A)成分に関して上述した通り、(B)成分中に存在するR22SiO単位の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特には80モル%以上(80〜100モル%)が、(B)成分の分子中で前記一般式(1)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を形成していることを意味する。
【0037】
(B)成分の分子中においても、R22SiO単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R1SiO1.5単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R3cdSiO(4-c-d)/2単位の中のケイ素に結合した水素原子は、上述した(A)成分が有するアルケニル基とヒドロシリル化付加反応することにより本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0038】
(B)成分を構成する必須の三種のシロキサン単位のモル比、即ち、R1SiO1.5単位:R22SiO単位:R3cdSiO(4-c-d)/2単位のモル比は、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、合計で100)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0039】
また、この(B)成分のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に10,000〜100,000の範囲にあるものが作業性、硬化物の特性などの点から好適である。
【0040】
このようなレジン構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で上記三種のシロキサン単位が所要のモル比となるように組み合わせ、共加水分解を行うことによって合成することができる。
【0041】
ここで、R1SiO1.5単位の原料としては、MeSiCl3、EtSiCl3、PhSiCl3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシランや、それぞれのクロロシランに対応するメトキシシランなどのアルコキシシラン等が例示できる。
【0042】
22SiO単位の原料としては、
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
(ここで、m=5〜50の整数(平均値)、n=0〜50の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0047】
また、R3cdSiO(4-c-d)/2単位は、R3HSiO単位、R32HSiO0.5単位、H2SiO単位、R32SiO0.5単位から選ばれる1種又は2種以上のシロキサン単位の任意の組み合わせであることを示し、その原料としては、Me2HSiCl、MeHSiCl2、Ph2HSiCl、PhHSiCl2等のクロロシラン類、これらのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類などを例示することができる。
【0048】
なお、本発明において、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R1SiO1.5単位、R22SiO単位及び/又はR3SiO(4-c-d)/2単位に、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれる。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)、好ましくは5モル%以下(0〜5モル%)程度含有することが好ましい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R1(HO)SiO単位、R1(HO)2SiO0.5単位、R22(HO)SiO0.5単位が挙げられる。
【0049】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中のビニル基及びアリル基の合計量に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)のモル比で0.1〜4.0となる量、特に好ましくは0.5〜3.0、更に好ましくは0.8〜2.0となる量であることが好ましい。0.1未満では硬化反応が進行せず、シリコーン硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、硬化物の物性が経時的に変化する原因となる。
【0050】
本発明では、接着性付与のために(A)成分及び(B)成分の一方又は両方がシラノール基を含有するものであることが好ましい。該シラノール基の量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンまたは(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、 0.01〜0.3モル/100g、好ましくは0.05〜0.2モル/100gである。シラノール基の含有量が多すぎると硬化後の硬度変化が激しく好ましくない。また、シラノール基の含有量が少なすぎると接着性が十分に発揮されない。
【0051】
−(C)白金族金属系触媒−
この触媒成分は、本発明の組成物の付加硬化反応を促進させるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがある。該触媒としてはヒドロシリル化反応を促進するものとして従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・mH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・mH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・mH2O,PtO2・mH2O,(ここで、mは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができる。これらの触媒は一種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0052】
(C)成分の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、前記(A)成分及び(B)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1〜500ppm、特に好ましくは0.5〜100ppmの範囲で使用される。
【0053】
−(D)蛍光体−
(D)成分の蛍光体は、公知の蛍光体であればいずれのものであってもよく、その配合量は(A)〜(C)の全成分100質量部に対して、通常0.1〜100質量部の範囲が好ましく、1〜80質量部の範囲がより好ましい。(D)成分の蛍光体は、例えば、シーラスレーザー測定装置などのレーザー光回折法による粒度分布測定における粒径の範囲として、通常その粒径が10nm以上であればよく、好適には10nm〜10μm、より好適には10nm〜1μm程度のものが使用される。
【0054】
蛍光物質は、例えば、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類硫化物蛍光体、アルカリ土類チオガレート蛍光体、アルカリ土類窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体蛍光体、Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。
【0055】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。)などがある。また、MSi:EuのほかMSi10:Eu、M1.8Si0.2:Eu、M0.9Si0.110:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。)などもある。
【0056】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。)などがある。
【0057】
Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体には、M(POX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、Eu及びMnの少なくとも1種である。)などがある。
【0058】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、MX:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、Eu及びMnの少なくとも1種である。)などがある。
【0059】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl:R、SrAl1425:R、CaAl:R、BaMgAl1627:R、BaMgAl1612:R、BaMgAl1017:R(Rは、Eu、Mn、Eu及びMnの少なくとも1種である。)などがある。
【0060】
アルカリ土類硫化物蛍光体には、LaS:Eu、YS:Eu、GdS:Euなどがある。
【0061】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、YAl12:Ce、(Y0.8Gd0.2Al12:Ce、Y(Al0.8Ga0.212:Ce、(Y,Gd)(Al,Ga)12の組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTbAl12:Ce、LuAl12:Ceなどもある。
【0062】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、ZnGeO:M、MGa:Eu(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。)などがある。
【0063】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0064】
Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体とは、モル%表示で、CaCO をCaOに換算して20〜50モル%、Alを0〜30モル%、SiOを25〜60モル%、AlNを5〜50モル%、希土類酸化物または遷移金属酸化物を0.1〜20モル%とし、5成分の合計が100モル%となるオキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体である。尚、オキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体では、窒素含有量が15質量%以下であることが好ましく、希土類酸化物イオンの他に増感剤となる他の希土類元素イオンを希土類酸化物として蛍光ガラス中に0.1〜10モル%の範囲の含有量で共賦活剤として含むことが好ましい。
【0065】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0066】
−その他の配合剤−
本発明の組成物には、上述した(A)〜(D)成分以外にも、必要に応じて、それ自体公知の各種の添加剤を配合することができる。
【0067】
・無機充填剤:
例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機充填剤、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛等の非補強性無機充填剤等を挙げることができる。これらの無機充填剤は、合計で、(A)及び(B)成分の合計量100質量部当り600質量部以下(0〜600質量部)の範囲で適宜配合することができる。
【0068】
・接着助剤:
また、本発明の組成物には、接着性を付与するため、接着助剤を必要に応じて添加できる。接着助剤としては、例えば、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2種又は3種含有する直鎖状又は環状のケイ素原子数4〜50個、好ましくは4〜20個程度のオルガノシロキサンオリゴマー、下記一般式(2)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
【0069】
【化8】

【0070】
〔式中、Rは、下記式(3)
【0071】
【化9】

【0072】
(ここで、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、vは1〜6、特に1〜4の整数である。)
で表される有機基、又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、Rの少なくとも1個は式(3)の有機基である。)
【0073】
一般式(2)におけるRの脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のアルケニル基、シクロヘキセニル基等の炭素原子数6〜8のシクロアルケニル基などが挙げられる。また、式(3)におけるRの一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、上記Rについて例示したアルケニル基及びシクロアルケニル基、さらにフェニル基等のアリール基などの炭素原子数1〜8、特に1〜6の一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0074】
さらに、接着助剤としては、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等、並びに、下記式に示される化合物が例示される。
【0075】
【化10】

【0076】
(式中、g及びhは各々0〜50の範囲の正の整数であって、しかもg+hが2〜50、好ましくは4〜20を満足するものである。)
【0077】
【化11】

【0078】
【化12】

【0079】
上記の有機ケイ素化合物の内、得られる硬化物に特に良好な接着性をもたらす化合物としては、一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基と、アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子(SiH基)とを有する有機ケイ素化合物である。
【0080】
接着助剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.2〜5質量部程度配合することができる。多すぎると硬化物の硬度に悪影響を及ぼしたり表面タック性を高める恐れがある。
【0081】
さらに必要に応じて本発明のシリコーン組成物シートが室温で固体ないし半固体を維持し液状にならない程度に液状シリコーン成分を添加することができる。このような液状シリコーン成分としては、室温(25℃)で粘度1〜100,000mPa.s程度のものが好ましく、例えばビニルシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、アルコキシシロキサン、ハイドロキシシロキサン及びこれらの混合物が挙げられ、添加量はシリコーン組成物シートが室温で固体ないし半固体を維持することが条件であり、通常シリコーン組成物シート全体に対して50質量%以下である。
【0082】
・硬化抑制剤:
本発明の組成物には必要に応じて適宜硬化抑制剤を配合することができる。硬化抑制剤としては、例えば、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基高含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイト、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。硬化抑制剤は(A)成分100質量部当り通常0.001〜1.0質量部、好ましくは0.005〜0.5質量部添加される。
等が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物の一典型例として、実質的に(A)〜(D)成分からなる組成物が挙げられる。ここで、「実質的に(A)〜(D)成分からなる」とは該組成物が(A)〜(D)成分以外に上述した任意成分の少なくとも1種を本発明の目的、効果を損なわない範囲において含みうることを意味する。
【0084】
−調製−
本発明のシリコーン組成物は、所要の成分を均一に混合することによって調製される。通常は、硬化が進行しないように2液に分けて保存され、使用時に2液を混合して硬化を行う。勿論、前述したアセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0085】
〔接着性シリコーン組成物シート〕
本発明の組成物シートは、上述した付加硬化型接着性シリコーン組成物からなるシートであり、厚さは通常1〜500μm、好ましくは10〜300μmである。この厚さで蛍光体の含有量や製造される発光装置の発光効率等によって適宜調整される。
【0086】
本発明の組成物をシート状に加工し、例えば冷凍して保存する。そして、必要時に加熱することにより直ちに硬化させ、高い硬度と表面タックのない可撓性硬化樹脂層を形成することができる。該硬化樹脂層は蛍光体を含有しているため青色または紫色LED素子等のチップ上に形成することで光変換安定な蛍光体層が形成できる。
【0087】
本発明の組成物をシート状に加工する手段として、例えばフィルムコータ、熱プレス機等をあげることができる。これらの手段を用いて組成物をシート状に加工するには、例えば組成物を、加圧用ベースフィルムと剥離フィルムとの間に挟み、熱プレス機を用いて通常60〜120℃、好ましくは70〜100℃の温度で、0.5〜10t/cm2、好ましくは1〜7t/cm2の圧力下で、約1〜約30分間、好ましくは2〜10分間圧縮成形を行う。
【0088】
加圧用ベースフィルムとしてはPETフィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等があげられ、剥離フィルムとしては、フッ素系樹脂コートしたPETフィルム、シリコーン樹脂コートしたPETフィルム、フッ素系樹脂フィルム等があげられる。
【0089】
こうして作製された組成物シートは、(D)成分の蛍光体を含まない状態で加熱硬化させた場合に得られる硬化シリコーン樹脂層が400nm〜可視光領域において光透過率が好ましくは90%以上であり、より好ましくは92%以上である。
【0090】
〔発光装置の製造方法〕
本発明の発光装置の製造方法によれば、LEDチップの表面に、上記の組成物シートが配置され、該組成物シートを加熱硬化させて蛍光体含有硬化シリコーン樹脂層で前記LEDチップ表面が被覆される。半導体チップの表面ばかりでなく、LEDチップ表面のほか装置全面が硬化シリコーン樹脂層で被覆されてもよい。
【0091】
具体的には、組成物シートは被覆するべき範囲、例えば、チップ表面またはチップ表面を含むLED素子の装置全面の大きさに応じて小片化した状態で使用する。すなわち、例えば上述したようにして得られた組成物シートをこれに積層している剥離フィルムごとチップサイズに切断して小片化する。得られた組成物シート片の剥離フィルムをはがし被覆すべき表面に接触するようにチップ上に配置し密着させた後に、チップ表面上に残った組成物シート片を加熱成形後硬化して被覆しようとする表面に硬化した蛍光体含有シリコーン樹脂層を形成し、ベースフィルムを剥離するがベースフィルムは先に剥離しても良い。
【0092】
なお、組成物シート片をLEDチップに圧着する場合または圧着しながら加熱硬化させる場合には、圧着は、フィルムボンダー等の装置を用い通常、室温〜300℃以下で、10MPa以下(通常0.01〜10MPa)の加圧下で行うことができ、好ましくは5MPa以下(例えば0.1〜5MPa)、特には0.5〜5MPaの加圧下である。
【0093】
本発明の組成物シートの硬化は、通常50〜200℃、特に70〜180℃の温度で行われ、加熱時間は1〜30分、特に2〜10分程度でよい。また、二次硬化(ポストキュア)を行うことができ、そのための温度は通常50〜200℃、特に70〜180℃であり、時間は0.1〜10時間、特に1〜4時間でよい。通常、一次硬化の後二次硬化させる。
【実施例】
【0094】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で粘度は25℃の値である。また、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。Phはフェニル基、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0095】
[合成例1]
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A1)−
PhSiCl3で示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1mol%)、ClMe2SiO(Me2SiO)33SiMe2Cl:529g(3.2mol%)、MeViSiCl2:84.6g(9.7mol%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ビニル基含有樹脂(A1)を合成した。この樹脂の重量平均分子量は62,000、融点は60℃の固体であった。このもののビニル基含有量は、0.10モル/100gである。
【0096】
[合成例2]
−ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B1)−
PhSiCl3で示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1mol%)、ClMe2SiO(Me2SiO)33SiMe2Cl:529g(3.2mol%)、MeHSiCl2:69g(9.7mol%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有樹脂(B1)を合成した。このもののヒドロシリル基含有量は、0.12モル/100gである。この樹脂の重量平均分子量は58,000、融点は58℃の固体であった。
【0097】
[合成例3]
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A2)−
PhSiCl3で示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1mol%)、ClMe2SiO(Me2SiO)33SiMe2Cl:529g(3.2mol%)、Me2ViSiCl:72.3g(9.7mol%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ビニル基含有樹脂(A2)を合成した。このもののビニル基含有量は、0.09モル/100gである。この樹脂の重量平均分子量は63,000、融点は63℃の固体であった。
【0098】
[合成例4]
−ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B2)−
PhSiCl3で示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1mol%)、ClMe2SiO(Me2SiO)33SiMe2Cl:529g(3.2mol%)、Me2HSiCl:56.7g(9.7mol%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有樹脂(B2)を合成した。このもののヒドロシリル基含有量は、0.11モル/100gである。この樹脂の重量平均分子量は57,000、融点は56℃の固体であった。
【0099】
[実施例1]
合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A1):189g、合成例2で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B1):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1gを加えてベース組成物を調製した。該ベース組成物90質量部に対して、さらに粒径5μm(平均粒径)の蛍光体(YAG)を10質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、蛍光体含有シリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物は、25℃において可塑性の固体であった。
【0100】
こうして得られた組成物を下記の測定に供し評価した。
【0101】
1)色度測定
組成物を、PETフィルム(加圧用ベースフィルム)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5t/cm2の圧力下で5分間圧縮成形を行い、厚さ50μmのフィルム状に成形した。得られた組成物フィルムを剥離フィルムとの積層体の状態で半導体チップのサイズに切断して小片化した。図1に示すように、得られた積層体フィルム片を組成物層側がLEDのGaN系半導体チップ1の表面に接触するように上に載せた後に剥離フィルム(図示略)を組成物層から除去した。次に、フィルムボンダーで150℃/0.5MPaで5分間加熱圧着してLEDチップ1上に硬化した蛍光体含有シリコーン樹脂層2を形成した。更にこれを150℃で60分間加熱して2次硬化させた。この様にして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂層2で被覆されたLEDチップ1を用いて、セラミック回路基板3上に図1に示す様なフリップチップ構造の発光半導体(LED)装置を作製した。図中、4はハンダボールである。このようなLED装置各3個を発光させて大塚電子製(LP−3400)により色度を測定した。
【0102】
2)機械的特性
組成物をコンプレッション成形機にて圧縮成形し、150℃,5分で加熱成形して硬化物を得た。更にこれを150℃,4時間で2次硬化させたものについて、JIS K 6251及びJIS K 6253に準拠し、引張強度(0.2mm厚)、硬度(タイプD型スプリング試験機を用いて測定)及び伸び率(0.2mm厚)を測定した。
【0103】
3)表面のタック性
上記機械特性の評価と同様に2次硬化させた硬化物表面のタック性を指触にて確認した。更に、市販の銀紛(平均粒径5μm)中に硬化物を置き、取り出し後、エアーを吹き付けて表面に埃のように付着した銀粉が取れるか試験した。
【0104】
4)蛍光体の分散安定性
アルミナ基盤上に形成された直径6mm、中央部深さ2mmの凹部に上記の調製直後の樹脂組成物を入れ、上記機械特性の評価の場合と同様に加熱硬化して厚さ2mm、直径6mmの円盤状成形物を成形した。この成形物の上部表面層(上側表面から厚さ0.5mmの層)と下部表面層(下側表面から厚さ0.5mmの層)のそれぞれから一部切り取り、各々を800℃にて加熱して灰化し、得られた灰中の蛍光体の含有量(質量%)を測定し、上部と下部における含有量を比較した。
【0105】
さらに、該組成物を−20℃の冷凍庫内に3月間保管した後に、組成物を上記と同様に成形し、同様にして上部と下部における蛍光体の含有量を比較した。こうして蛍光体の分散安定性を測定した。
【0106】
これらの各測定結果を表1に示す。
【0107】
[実施例2]
合成例3で得られたビニル基含有樹脂(A−2):189g、合成例4で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−2):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1gを加えてベース組成物を調製した。このベース組成物70質量部に、さらに粒径5μm(平均粒径)の蛍光体(YAG)を30質量部加えた後、これらを60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、蛍光体含有シリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物は、25℃において可塑性の固体であった。該組成物を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0108】
[比較例1]
実施例1において、ベース組成物90質量部に代えて、室温で液体のビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂を主剤とする市販の付加反応硬化型シリコーンワニスであるKJR−632(商品名、信越化学工業(株)製)90質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして蛍光体含有シリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物について実施例1と同様にして各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0109】
[比較例2]
実施例1において、ベース組成物に代えて、室温で液体のビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂を主剤とする市販の付加反応硬化型シリコーンワニスであるKJR−632L−1(商品名、信越化学工業(株)製)を使用した。このKJR−632L−170質量部に対して、実施例1で用いたものと同じ粒径5μm(平均粒径)の蛍光体(YAG)30質量部を加えた後、60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく攪拌し、蛍光体含有シリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物について、実施例1と同様にして各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
(注)
*1:ビニル基含有樹脂中のケイ素原子結合ビニル基に対するヒドロシリル基含有樹脂中のケイ素原子結合水素原子のモル比
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例において色度の測定のために作製したフリップチップ構造の発光半導体(LED)装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0113】
1 LEDチップ(フリップチップ)
2 蛍光体含有シリコーン樹脂層
3 セラミック回路基板
4 金バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3a4bSiO(4-a-b)/2単位からなり(ここで、R1、R2、及びR3は独立に水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基を示し、R4は独立にビニル基又はアリル基を示し、aは0、1又は2で、bは1又は2で、かつa+bは2又は3である。)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含むレジン構造のオルガノポリシロキサン、
(B)R1SiO1.5単位、R22SiO単位、及びR3cdSiO(4-c-d)/2単位からなり(ここで、R1、R2及びR3は独立に上記の通りであり、cは0、1又は2で、dは1又は2で、かつc+dは2又は3である。)、
上記R22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含むレジン構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基及びアリル基の合計に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜4.0となる量、
(C)白金族金属系触媒:有効量、及び
(D)蛍光体
を含有する室温で固体状もしくは半固体状である付加硬化型接着性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分及び(B)成分の一方又は両方がシラノール基を含有するものである請求項1に係る接着性シリコーン組成物。
【請求項3】
(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して(D)成分の蛍光体を0.1〜100質量部含有する請求項1または2に係る接着性シリコーン組成物。
【請求項4】
(D)成分の蛍光体の粒径が10nm以上である請求項1〜3のいずれか一項に係る接着性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物をシート状に成形してなる接着性シリコーン組成物シート。
【請求項6】
LEDチップの表面に、請求項5に記載の接着性シリコーン組成物シートを配置し、該組成物シートを加熱硬化させて蛍光体含有硬化シリコーン樹脂層で前記LEDチップの表面を被覆することを含む被覆LEDチップを有する発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により得られる被覆LEDチップを有する発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235368(P2009−235368A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99858(P2008−99858)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】