説明

蛍光X線分析装置

【課題】 本発明は、蛍光X線分析(XRF)装置に関する。
【解決手段】 XRF装置は、アナライザ結晶(6)とシリコンドリフト検出器(34)の両方を用いる。この組み合わせを利用することにより、バックグラウンド及びピークの重なりに関する問題を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線分析(XRF)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
XRFは、試料の特性を測定する周知技術である。多数の異なる構成が知られている。
【0003】
波長分散XRF(WDXRF)では、X線源からのX線が試料に入射する。これらのX線は蛍光X線を生じさせる。つまり、あるエネルギー範囲のX線が放出され、そのX線は、試料材料の特徴を表すものとして役割を果たす。
【0004】
図1に図示された第1構成では、X線は、線源としての管2から放出されて、試料4に入射する。試料からのX線は、平坦なアナライザ結晶6に入射する。その平坦なアナライザ結晶6は、ブラッグの式に従って試料からのX線を回折して、検出器8へ向かわせる。角度θでアナライザ結晶を、及び角度2θで検出器8をそれぞれ動かすことにより、平坦なアナライザ結晶によって回折されて検出器へ入射するX線の波長が変化するため、検出器を動かすことで、ある範囲の波長すなわちエネルギーの測定が可能となる。アナライザ結晶により、異なる波長間で明瞭な差異が与えられる。X線は、平行板コリメータ11,13を通過する。
【0005】
この構成のある変化型では、図2に図示された弯曲アナライザ結晶10が、試料4に隣接する第1スリット12及び検出器8に隣接する第2スリット14と共に用いられる。弯曲アナライザ結晶10は、第1スリット12を通過する特定のエネルギーのX線のみを第2スリット14上で結像するモノクロメータとして機能する。
【0006】
この方法では、弯曲結晶10により、異なる波長すなわちエネルギー間で明瞭な差異が与えられる。一般的には、各エネルギーにつき、異なる弯曲アナライザ結晶が用いられる。あるいはその代わりに、弯曲アナライザ結晶10はゴニオメータ上にマウントされ、かつ図1の方法と同様に回転しても良い。
【0007】
ある範囲のエネルギーでの測定を行うため、エネルギー分散XRF(EDXRF)として知られる代替方法が用いられても良い。この方法では、試料によって放出されるX線が、エネルギーの関数として強度を測定することが可能な検出器で直接的に測定される。そのような検出器はたとえば、ある範囲のエネルギーを同時に測定するシリコンドリフト検出器であって良い。シリコンドリフト検出器は結晶を必要としない。なぜなら結晶は一波長のみを検出器へ導き、かつEDXRFの全ての点で多種類の波長が測定されるからである。その代わり検出器は通常、試料近くに直接マウントされる。
【非特許文献1】ジェンキンス(R.Jenkins)、グッド(R.W.Gould)、及びゲック(D.Gedcke)、「定量的X線分光」(“Quantitative X-Ray Spectrometry”)、1995年、pp.408
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状の分光計で生じる問題は、測定しようとする試料からのブラッグ反射信号に加えて、バックグラウンド信号が存在することである。これは、多数の発生源から生じる放射線であり、かつ検出器はそのような放射線を拾ってしまう。バックグラウンドの発生源には、管からの散乱、試料からの蛍光放射線、並びに、光路、管、結晶、及び/又は検出器内の不純物が含まれる。
【0009】
バックグラウンドの主要な原因は、試料によって散乱される管のスペクトルであると一般的には信じられている。このことについては非特許文献1を参照して欲しい。ここには、「バックグラウンドへの最も重要な寄与は試料によって散乱されるX線管スペクトルによるものである…」と書かれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、請求項1に記載のXRF装置が供される。
【0011】
従来のWDXRFのように、試料、線源、アナライザ結晶、及び検出器の構成を利用した測定エネルギーの選択に加えて、検出器、備え付けの測定電子機器、又はコンピュータも、出力エネルギー窓を選択して良い。出力エネルギー窓内でのX線強度は、出力信号として出力される。
【0012】
最初に、エネルギー分解の固体検出器をアナライザ結晶と併用しても、利点が生まれないものと思われる。その理由は、アナライザ結晶は事実上特定のエネルギーを選択するので、検出器が多種類のエネルギーを同時に受け取らないためである。従ってそのような多種類のエネルギーを同時に測定できるという通常の利点は実現されない。
【0013】
しかし結晶とエネルギー分解検出器との併用は予期せぬ利点を生み出す。
【0014】
WDXRF法において比較的高いエネルギー分解能の検出器を用いることにより、バックグラウンドへの様々な寄与を特定することができるため、補正が可能となる。以降では、本発明の方法を用いることで顕著な改善がなされる例が示される。
【0015】
本発明の発明者らは、試料からの散乱された蛍光放射線によって生じるバックグラウンド散乱は実際には重要であることを認識していた。特に従来のWDXRFでは、一般的に、試料から放出される多数の強い蛍光X線ピークが存在する。アナライザ結晶がブラッグ角で配向していないときでさえ、比較的小さな振幅であるとはいえ一部のX線が結晶によって散乱される。このことは、X線管のスペクトルがより重要であるという従来の見解(上記参照)とは対照的である。様々な寄与を分離することにより、バックグラウンド補正の改善が可能となる。
【0016】
具体的には、処理手段は、以下の手順により、ピークエネルギーでのピークX線強度を出力するように備えられて良い。
【0017】
その手順とは:
測定ピークであるそのピークのX線スペクトルを測定する手順;
そのピークエネルギーから離れた値である、少なくとも1種類の測定エネルギー及びそれに対応する出力エネルギーでのブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを測定する手順;
測定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを用いて、ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;並びに
測定されたピークであるX線スペクトルから、推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、そのピークでの補正されたピークであるX線強度を出力する手順;
である。
【0018】
エネルギー分解検出器を用いることにより、散乱放射線バックグラウンドの補正が可能となる。その理由は、散乱放射線バックグラウンドは、測定エネルギーとは異なるエネルギーだからである。この補正により、この散乱放射線バックグラウンド成分が除去されるので、バックグラウンドが減少する。これにより、XRFスペクトルのわずかなピークの検出が、より容易となる。これは微量分析に非常に有用である。
【0019】
しかも結晶及びエネルギー分解検出器を併用することで、重なったピークの処理も可能となる。これらはたとえば、結晶の蛍光から、つまり試料ではなく結晶でのXRFで、生じる恐れがある。たとえば試料中のNa又はMgからのピークは、W/Si多層結晶からのピークと重なってしまう恐れがある。あるいは、重なったピークは、試料中の様々な元素から生じる恐れがある。重なったピークはまた、管、たとえばフィルタ、フィルタ輪、コリメータ、結晶ホルダのような光路中の部品、又は包装物から生じる恐れもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明をより良く理解するため、添付の図を参照しながら、実施例について説明する。
【0021】
図及び概略図は正しい縮尺で描かれていない。同様の部品は、各異なる図においても同一の参照番号が与えられている。
【0022】
図3を参照すると、本発明によるWDXRFの応用は、X線源2、X線用の試料4を保持する試料ステージ30、及び駆動手段33によってゴニオメータの回転軸32の周りを回転し、かつその軸32上にマウントされた平坦なアナライザ単結晶6を有する。アナライザ結晶は、たとえばLiF、PE、TlAP、InSb、Geであり、又はたとえばW/Si、Mo/B4C、Ni/C、Cr/C、Fe/Sc、若しくはLa/B4Cの多層構造であって良い。1次コリメータ11及び2次コリメータ13は、試料から検出器へX線を導く。X線はアナライザ結晶によって反射される。コリメータは概略的に図示され、かつ実際には如何なる形式のコリメータが用いられても良いことに留意して欲しい。
【0023】
図1の構成とは異なり、この場合での検出器は、エネルギーの関数として放射線強度を測定するシリコンドリフト検出器(SDD)34である。
【0024】
検出器34及び駆動手段33は、制御電子機器36と接続される。制御電子機器36にはたとえば、適当なソフトウエアを有するコンピュータが含まれて良い。
【0025】
この構成におけるX線のスポットサイズは、10mm2又は5mm2程度であると思われる従来のシリコンドリフト検出器よりも一般的には大きい。従って図4に図示されているように、検出器34は、共通基板40上に集積された複数の検出器素子38の2次元アレイで構成される。各検出器素子38は本質的に、単一のシリコンドリフト検出器である。他の形式及び構成の検出器素子38も可能である。たとえば測定時間がかかってしまうが、単一セグメントの検出器を用いることも可能である。
【0026】
使用中、試料4は試料ステージ30上にマウントされ、かつX線源2のスイッチがオンにされる。続いて結晶6及び検出器34が、制御電子機器36によって制御される駆動手段33によって、ゴニオメータの軸32の周りを回転することである範囲のエネルギーを走査する。結晶6は角度θで回転する。検出器34は2倍の角度である2θで回転する。角度走査つまりはエネルギー走査が行われることで、検出器34上でのブラッグ反射したX線強度は変化する。制御電子機器36は、ブラッグ反射の出力エネルギー付近で狭いエネルギー窓を選択し、出力エネルギーの関数としての出力強度として、この窓内でのX線強度を出力する。
【0027】
この構成では、検出器34は、ある範囲のエネルギーで測定を行い、制御電子機器36で窓の選択が行われる。そのような選択は、最も簡便にはソフトウエアで行われる。
【0028】
一の方法では、アナライザ結晶6が回転することで、選択された出力エネルギー及びその出力エネルギー付近のエネルギーの狭い窓は、結晶の配向、検出器、及び試料によって選択される測定エネルギーに追随する。狭い窓の適切なサイズについては後述する。このようにして、エネルギーの関数として強度が1つのグラフに出力される。
【0029】
このようにして、エネルギーの走査が実行される。この走査はバックグラウンドを減少させ、特に高強度ピークのX線が結晶中で散乱することによって生じるバックグラウンドへの寄与を除去する。このことは特に有利な点である。なぜなら、残りのバックグラウンドの大半はエネルギーの減少と共に減少する従来のバックグラウンドであり、かつこのことを考慮して、適切なソフトウエアによって補正することは可能だからである。たとえバックグラウンドが増大する又は一定である場合でさえ、バックグラウンドを減少させることの利点が享受されることは明らかである。
【0030】
適当なソフトウエアが、多数の追加機能を有することのできる制御電子機器に組み込まれて良い。そのような追加機能には、たとえばスクリーン上に結果を表示する、結果をプリントアウトする、又は様々な方法で結果を解析する能力が含まれる。
【0031】
図5は、SDD(最底部の曲線)についてのkeV単位で表された分解能をエネルギーの関数として図示している。図では、従来のシンチレータ検出器(上方の曲線)、並びに密閉型及びフロー型検出器(真ん中の2本の曲線)との比較がなされている。SDD検出器を用いることで、エネルギー分解能が顕著に改善されるのが分かる。このような分解能の改善によって、本発明は可能となる。
【0032】
実験が行われ、結果が図6から図10に与えられている。上述したように、感度の増大した領域を有するマルチセグメントSDDを用いることが一般的には好ましい。その結果、測定がより迅速になる。その場合、たとえば0.05°から1°のように小さなステップサイズが用いられて良い。しかしマルチセグメントSDDは、これらの初期段階での実験には利用できないので、代わりに単一セグメントSDDが用いられ、低いX線強度を補償するために測定時間が延長された。
【0033】
試料は、60kVのX線で照射されたZnOである。1次コリメータは、試料とLiF結晶との間に存在する。2次コリメータは、LiF200結晶と検出器との間に存在する。
【0034】
図6は、3つの異なる検出器を用いて、ブラッグ角(2θ=41.8°)で測定された出力エネルギーの関数としてのZnスペクトルを図示している。3つの異なる検出器とは具体的に、ガス充填比例計数管(中程度のピーク)、NaIシンチレーション計数管(広いピーク)、及びSDD(狭いピーク)である。SDDの分解能が改善されているのが明確に見える。
【0035】
図7は、角度2θをZnKα及びZnKβのピーク付近である34°に固定して(従って測定エネルギーも固定されている)測定したスペクトルを(出力エネルギーの関数として)図示している。これらの条件では、多数の強度成分が見られる。一の成分は、ZnKαピークからの寄与、つまり試料から放出されるZnKαのX線である。たとえアナライザ結晶が、検出器へ向けてZnKα蛍光をブラッグ反射させる上で丁度良い角度ではないとしても、一部のZnKαはそれでもなお検出器上で散乱して、最大のピークとして見いだされる。
【0036】
同様の成分は、上と同じようにしてZnKβ蛍光から生じるZnKβピークである。
【0037】
ブラッグ反射ピークは、アナライザ結晶6によって検出器へ向けてブラッグ反射される上で丁度良いエネルギーのX線放射線に対応する。丁度良いエネルギーとは測定エネルギーのことで、この場合約10.5keVである。たとえこのエネルギーで蛍光X線が(ほとんど)存在しないとしても、一部のX線はこのエネルギーで試料によって散乱される。その結果顕著なピークが見いだされることになる。
【0038】
3つの小さな成分も見いだされる。これらは、シリコンドリフト検出器34の筐体内の元素からの汚染から生じるピークである。そのような元素とは具体的には、Mn、Fe、及びNiである。
【0039】
θ-2θ走査が実行され、LiF2000結晶及びSDDを用いたその結果が図8に与えられている。ステップサイズΔ2θは1°である。単一セグメントSDDを用いることで測定に時間がかかるので、大きなステップサイズが用いられた。
【0040】
図7のピークの特定を行うため、多数の角度2θについて実験が繰り返された。不純物ピークのみならず、散乱ZnKα及びZnKβピークも、様々な2θに対して同一エネルギーの位置に存在したままである。他方ブラッグ反射ピークは2θの関数であるエネルギーに位置する。それは、ブラッグエネルギーが2θの関数であるため、予想されることである。
【0041】
図9は、測定強度を、出力エネルギー(keV)と角度2θの両方の関数として3次元プロットに図示している。エネルギーと角度の両方の関数として変化するピークであるブラッグピークが、明確に特定可能である。他の寄与が特定可能であるため、これらの効果を計算して補正することは可能である。たとえば散乱に起因するピークは、ZnKαについては8.63keVで一定のエネルギーを有し、及びZnKβについては9.57keVで一定のエネルギーを有する。また角度2θが34°の場合では、ブラッグ反射は、10から11keVの間のピークである。よって図7のピークが特定される。
【0042】
一旦バックグラウンドのブラッグ反射ピーク強度が既知となると、たとえばZnKαピークのような測定ピーク強度への寄与が測定可能となる。測定ピークは補正可能である。図9(及び図7)では、角度2θが34°の場合、全エネルギーには2つ以上の成分が存在する-これらの成分を分離して、バックグラウンド補正を正確に計算できるのは、本発明の方法だけである、ことに留意して欲しい。
【0043】
このグラフから、データを記録してバックグラウンド補正を実行するには多数の方法があることが分かる。1つの方法は、図9に図示されているように、出力エネルギーと測定エネルギーの両方の関数としてのデータを記録し、続いて範囲の絞り込み(windowing)(つまり狭い範囲の適用)及びバックグラウンド補正をソフトウエア上で実行することである。他の方法は、測定エネルギーと出力エネルギーを一緒に走査して、狭い範囲内のデータのみを記録する方法である。その理由は、バックグラウンドのブラッグピークは、出力エネルギーと測定エネルギーとが一致する地点でのピークだからである。それは図9の曲線で示されている。
【0044】
バックグラウンド補正を表している図8に戻ると、この図は、SDD検出器を用いた全測定強度を角度2θの関数として示している。SDDはエネルギーの関数として強度を測定するので、円を用いてプロットされている全強度は、特定可能な様々なエネルギーの寄与によって構成されている。図8では、ZnKα成分、ZnKβ成分、及び全強度のブラッグ反射成分は、ダイアモンド、正方形、及び三角形でそれぞれ特定されている。
【0045】
エネルギー分散WDXRF測定にSDDを使用しなければ、全強度しか測定できない。明らかなように、SDDを用いれば、他の寄与を補正することによって、バックグラウンド強度をはるかに小さくすることが可能である。たとえば角度2θが35°の場合では、ブラッグ反射ピークの測定強度は、全強度の1/3未満である。ブラッグ反射ピークが真のバックグラウンドである。
【0046】
このようにバックグラウンドを減少させることは当然のこととして、本明細書で試験されているZnOよりも弱いピークを有する試料の測定を行うときに、相当重要である。
【0047】
通常の使用では、試料を測定するためにユーザーがしなければならないことは、角度2θの関数としてX線強度を記録することである。ここでX線強度は、測定エネルギー周辺である出力エネルギーの狭い範囲内で測定される。測定エネルギー2θに依存する。
【0048】
検出器及びプロセッサによって決定される出力エネルギーの狭い範囲は、エネルギーに対して一定である必要はなく、変化して良い。割合で表すと、狭い範囲は、低エネルギーでの出力エネルギーの割合が大きくなるだろう。しかし絶対値で表すと、狭い範囲は、低エネルギーでの絶対サイズが小さくなるだろう。範囲は全幅で表される。つまり出力エネルギーを範囲の中心にとることで、その範囲は、(出力エネルギー)-((狭い範囲)/2)から(出力エネルギー)+((狭い範囲)/2)となる。
【0049】
具体的には、狭い範囲は、1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満、1keVから5keVの出力エネルギーについては1keV未満、5keVから10keVの出力エネルギーについては2keV未満で、かつ10keVよりも大きな出力エネルギーについては5keV未満であって良い。
【0050】
範囲が狭くなることで結果を改善することができる。たとえばその範囲は、1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満、1keVから5keVの出力エネルギーについては0.5keV未満、5keVから10keVの出力エネルギーについては1keV未満で、かつ10keVよりも大きな出力エネルギーについては2keV未満となりうる。さらに改善された範囲は、1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満、1keVから5keVの出力エネルギーについては0.5keV未満、5keVから10keVの出力エネルギーについては0.8keV未満で、かつ10keVよりも大きな出力エネルギーについては1keV未満となりうる。
【0051】
また狭い範囲はエネルギーのステップ関数である必要がないことにも留意して欲しい。たとえば2keVから30keVまでの走査については、一定のエネルギー範囲である1keVが用いられて良い。あるいはその代わりに、滑らかな関数が用いられても良い。適切な走査範囲は、1keVから30keVであって良い、あるいは測定される元素によっては、さらに狭い又は異なる範囲が適切である。
【0052】
あるいはその代わりに、測定データを狭い範囲に限定する方法には、狭い関数によって測定データをデコンボリューションする方法が考えられる。
【0053】
これは具体的には、ピークをたとえばガウス(正規分布)関数にフィッティングすることによって行われて良い。この場合では、当該方法によって課される狭いエネルギー範囲はピークの幅である。そのような狭いエネルギー範囲は、適当な指標によって課される。ピークの幅についての一の指標は、最大強度の1/10でのピークの全幅(最大強度の1/10での全幅-FWTM)である。他の指標は、ピーク幅の指標として用いられる標準偏差σである。ピーク幅は、(ピーク位置)-3σから(ピーク位置)+3σの範囲によって表されて良い。ガウシアン形状のピークについては、これら2つの指標はほとんど同じである。
【0054】
(ピーク位置)-3σから(ピーク位置)+3σのピーク幅、つまり全幅6σの指標を用いるとき、全幅は、上述した狭いエネルギー範囲内でなければならない。つまり1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満、1keVから5keVの出力エネルギーについては1keV未満、5keVから10keVの出力エネルギーについては2keV未満で、かつ10keVよりも大きな出力エネルギーについては5keV未満である。恐らく全幅6σは、上述したより狭い好適範囲内である。
【0055】
図10は、適切な出力エネルギー範囲を表している。太線は、測定エネルギーを2θの関数として表している。その線周辺の狭い窓は、実施例中でのエネルギー出力の狭い範囲を表している。広い窓は、従来技術のWDXRF法で測定された非常に広いエネルギー範囲を表している。
【0056】
よってたとえば2θが30°の場合、従来技術に係る方法では、検出器は広範囲にわたってエネルギーを記録し、かつ実験結果は7keVから19keVの範囲で記録されたエネルギーである。よってこれは、多量のバックグラウンド放射線を含むことになる。対照的に、本発明では、最終結果として表れる出力エネルギー周辺のエネルギー範囲は一般的に、非常に狭い。このような非常に広いエネルギー範囲となる理由は、用いられる検出器の分解能が不十分だからである。
【0057】
このようにして測定されたピークのX線強度は、他のピークからの寄与を排除する。なぜならこれらの他のピークは一定だからである。しかしそれでもなおブラッグ反射ピークからのバックグラウンドの寄与は含まれる。よってX線ピークの真の強度を決定するため、ピーク測定エネルギーよりも、わずかに大きいあるいは小さなブラッグ反射ピークのX線強度が測定される。そしてそのX線強度は、バックグラウンド補正のために測定されたピーク強度から差し引かれる。
【0058】
精度を改善するため、X線強度は、ピークエネルギーよりも高いエネルギーでも低い高いエネルギーでも、関数としての測定が可能である。ここで支配的な寄与は、ブラッグ反射ピークからのバックグラウンドであり、かつ測定エネルギーと出力エネルギーとが同一の地点で生じるピークでのバックグラウンド強度を推定するためのフィッティングが実行される。簡便な方法としては線形フィッティングが実行される。あるいはその代わりに、多項フィッティング又は他のフィッティングが実行されても良い。
【0059】
このようにして、そのシステムは、近接エネルギーピーク又は低エネルギーピークを測定することができる。たとえば所謂“エスケープピーク”をそのシステム内で測定することが可能である。(検出器に用いられている元素である)Siに最も近い元素であるPについて考える。Pのエスケープピークのエネルギーは0.3keV(2.0keV-1.7keV)で、SDDによって測定可能である。通常、検出器を構成する元素よりもわずかに大きな元素についてこのようなピークは、低エネルギーでは検出器ノイズによって見えなくなる。
【0060】
測定ピークでのバックグラウンドエネルギーを補正するため、実施例は:
あるピークエネルギーを有するX線スペクトルの測定ピークを測定する手順;
前記ピークエネルギーから離れている、少なくとも1種類の測定エネルギーとそれに対応する出力エネルギーに位置するブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを測定する手順;
前記の測定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを用いて、前記ピークエネルギーでの前記ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;及び
前記X線スペクトルの測定ピークから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、前記ピークのX線強度の補正ピークを出力する手順;
を実行する。
【0061】
これは、図9のグラフで与えられるデータから直接的に実行されて良い。図9では、ブラッグ反射バックグラウンドピークは明確に識別される。その理由は、ブラッグ反射バックグラウンドピークは、出力エネルギーと測定エネルギーの両方の関数として曲線状に変化するピークだからである。あるいはその代わりに、狭いエネルギー範囲でのX線強度の単純な記録に基づいて補正されても良い。その理由は、測定エネルギーと出力エネルギーとが等しくなり、かつ両方が走査の際に一緒に変化するように、測定エネルギーと出力エネルギーは両方とも、並行して走査されるからである。
【0062】
他の態様では、コリメータはSDDの分解能で調整可能である。これにより、ピークの裾と重なりの分離を可能にする広いコリメータ間隔が可能となる。如何なるフィルタもまた調節可能である。従来のWD-XRFでは、フィルタは、干渉するX線管の線を除去し、管等からのスペクトル上の不純物を抑制するのに用いられて良い。これらのフィルタは、薄くしても良いし、あるいはなくしても良い。
【0063】
たとえ本説明が、出力エネルギー周辺のエネルギーの狭い範囲について記載しているとしても、このことは、狭い範囲のエネルギーだけが、SDDによって実際に測定され、かつ記録されていることを意味しない。測定エネルギーでのX線強度のみを保存して記憶スペースを減少させることは確かに便利である。しかし実施例によっては、SDDによって検出されるエネルギーと測定エネルギー(すなわち角度2θと等価)の両方の関数として、X線強度は保存される。図9は、このようにしてとられた測定結果を図示している。
【0064】
このようにして記録される他の散乱ピーク強度に関する追加の情報は、試料の組成に関する追加の情報を供することができる。
【0065】
従って他の有利な方法を利用することで、X線強度がエネルギーの関数として測定され、かつ第1出力は、角度2θと等価である測定エネルギーの関数としてのX線強度を含む。
【0066】
それに加えて、X線強度は、一定のエネルギーに対して、より厳密には所定の別なエネルギー周辺のエネルギーについての一定の窓で、2θの関数として測定されて良い。これらの別なエネルギーは、(たとえばZnKαエネルギーのような)散乱X線に対応するエネルギー、又は不純物ピークに対応するエネルギーであって良い。これらの測定は、バックグラウンドを減少させ、かつ定量的分析を改善するのに用いられて良い。
【実施例1】
【0067】
図11は、本発明による第2実施例を図示している。この実施例では、平坦結晶6は、弯曲結晶10と第1及び第2スリットに置き換えられている。図3の構成が、図1の従来技術と同一の利点を供するので、この構成は、図2の従来技術と同一の利点を供する。
【0068】
シリコンドリフト検出器34は、スリットを通過するX線を測定するため、検出器素子で構成される、多くの線形アレイを必要とすることに留意して欲しい。よってこの用途では、シリコンドリフト検出器34は、別個の検出器素子38からなる線を有して良い。
【0069】
本発明は、最大25乃至は30keV又はそれ以上の、広いエネルギー範囲にわたって使用されて良い。しかしシリコンドリフト検出器によるX線の捕獲は、たとえば15keVのような高いエネルギーでは有効ではない。つまりかなりの割合の高エネルギーX線がシリコンドリフト検出器をまっすぐ通過するので、測定されない。
【0070】
よって、平坦結晶又は弯曲結晶と共に用いることのできる他のシリコンドリフト検出器は、図12に図示されているように、シリコンドリフト検出器34の前方にシンチレータ結晶80を有する。シンチレータ結晶80は、X線を捕獲し、かつ特定波長の光子を放出する。捕獲されるX線のエネルギーが大きければ大きいほど生成される光子の数は多くなる。これらは、下に存在するシリコンドリフト検出器によって捕獲される。
【0071】
シンチレータ結晶とシリコンドリフト検出器との結合は良好なものとなりうるので、このような併用により、光電子増倍管を用いる従来のシンチレータと比較して、分解能を増大させることが可能である。
【0072】
シンチレータ結晶80は、たとえばNaI、LaCl3又は他の材料のような如何なる適当な材料であって良い。
【0073】
本発明の他の実施例について、図13から図17を参照して説明する。上の一実施例では、測定されたピークへのブラッグバックグラウンドの寄与は、様々な条件でのブラッグバックグラウンドを測定することによって補正された。様々な条件とはつまり、様々な角度2θである。対照的にこの実施例では、ブラッグバックグラウンドは、同一測定条件つまり同一の角度2θ、での測定が可能な、異なるエネルギーに位置する高次ブラッグピークによって決定される。
【0074】
具体的には、1次ブラッグ反射強度と高次ブラッグ反射強度との間には関係が存在する。従って高次ピークは、1次でのバックグラウンド強度を求めるのに用いられて良い。実際2次のピークは1次のバックグラウンド強度を求めるのに最も適している。その理由は、2次のピークは、最も強度の大きな高次ピークだからである。X線管で散乱した線も同様に利用可能だが、強度は弱い。
【0075】
最初に校正用の線が作られなければならない。1次及び2次のブラッグ反射強度は、典型的な組を構成する複数の試料について、関心対象である元素の2θ角で測定される。便利なことに、これらの試料は基準となりうる。これらの基準は、関心対象である元素を含んではならないが、典型的なマトリックスを有する。全ての基準について、1次の強度が2次の強度に対してプロットされ、かつ校正用の線が得られる。この校正用の線は、関心対象である元素が解析される毎に用いられる。その解析は、同様な測定条件(X線管の設定、コリメータ、結晶、検出器)で実行されることが好ましい。2次のピーク強度は、測定スペクトルから決定される。1次ピークのバックグラウンドは、校正用の線から著癖的に得ることができる。
【0076】
マトリックス効果が一定、又は試料毎に計算できる場合では、様々な濃度で関心対象である元素を含む2以上の基準が、1次ブラッグ反射強度と2次ブラッグ反射強度との間の関係を校正するのに用いられて良い。感量(reciprocal sensitivity)E及び関係rは、回帰C=E*(R1-r*R2)*Mで決定される。ここでCは関心対象である元素の濃度、R1及びR2はそれぞれ1次及び2次のブラッグ反射強度で、Mはマトリックス効果である。
【0077】
高次の反射から1次ピークのバックグラウンドを決定する他の方法は、FP計算による方法である。最初にマトリックスを推定する。対応するスペクトルがシミュレーションされ、かつ測定スペクトルと比較される。このプロセスが、シミュレーションスペクトルでの高次ピークが、測定スペクトルの高次ピークと一致するまで繰り返される。ここで1次の強度は、シミュレーションスペクトルから直接得ることができる。
【0078】
鉱物学上の基準を用いた簡単な例を示すことで、新たなバックグラウンド方法を説明する。
【0079】
5つの典型的な鉱物学上の基準のパルス高さ分布は、NiKαブラッグ角で測定された。これらの基準は、非常に軽いマトリックスから非常に重いマトリックスまでの範囲を網羅する。基準の組成を以下の表に示す。

表1:鉱物学上の基準の組成(%)
【0080】
【表1】

図13は、NiKαブラッグ角(2θ=48.67°)で測定されたスペクトルを示している。高次ブラッグ反射(最大で5次!)及びX線管での散乱線を明確に分離することができる。さらにピークは、特に2次のピークが非常に強い。
【0081】
図14及び15では、1次及び2次の反射ピークが示されている(図13を拡大したものである)。それぞれのピーク強度の違いは、質量吸収係数(mac)と一致している。
【0082】
図16では、5つの鉱物学上の基準についての質量吸収係数が、エネルギーの関数として図示されている。最も軽いマトリックス(最も質量吸収係数が小さい1次のBGS_MON)では、散乱強度は最高となる。最も重いマトリックス(最も質量吸収係数が大きいTRMAC5)では、散乱強度は最低となる。よって1次反射及び2次反射については、それぞれのピーク強度の違いは同一である。これについては図14を参照して欲しい。
【0083】
図17では、1次ブラッグ反射ピーク強度が、2次ブラッグ反射ピーク強度に対してプロットされている。この場合では、ほぼ直線の校正用の線が得られる。この校正用の線は、関心対象である元素が解析される度に適用される。2次ピーク強度が決定され、かつ校正用の線から1次ピークのバックグラウンドを直接的に得ることができる。
【0084】
1次反射と2次反射との間に1以上の吸収端が存在するときには、その関係は簡単ではない(たとえば図16のバナジウムの1次ピークと2次ピーク参照)。なぜならそれぞれのピーク強度の違いが変化するからである。繰り返しになるが校正用の線を作ることができ、さらに1次ピークでのバックグラウンド強度をシミュレーションするため、FP計算が実行されて良い。
【0085】
このようにして、バックグラウンドチャネルが不要となり、測定時間を大幅に減少させることができる。関心対象のピークが測定され、同時に測定可能な高エネルギーピークから、ブラッグバックグラウンドの補正が決定される。シリコンドリフト検出器を用いることで、良好な結果が得られる程度に十分な分解能で、そのような高エネルギーピークを測定することが可能となる。
【0086】
当業者は、上述の実施例に修正及び追加を行うことが可能であることを理解する。たとえば当該装置は実際、たとえばX線シールド、真空用の筐体、試料を導入するエアロック、測定用の試料をつかみ、かつ設置するための装置等を有する。
【0087】
XRF装置は、多数の異なる検出器を有して良い。たとえば当該装置は、シンチレータを有していない検出器34、及び複数の種類のエネルギーを処理するシンチレータ結晶を有する別な検出器を含んで良い。所望の検出器は、必要な用途のための位置に移動させることが可能である。
【0088】
さらに、たとえ実施例中で、アナライザ結晶が回転するとしても、当業者は、測定を行うのに重要なのは様々な部品の相対位置である、よって測定を実行するのに、試料、検出器、アナライザ結晶、X線源、及びコリメータがそれぞれ様々な異なる運動をすることが可能であることを理解する。
【0089】
検出器はシリコンドリフト検出器である必要はなく、十分な分解能を有する他の固体検出器であって良い。特にエネルギーの関数としてX線強度を検出できる半導体検出器、たとえばGe若しくは他の半導体材料又は電荷結合素子(CCD)を用いたもの、が用いられても良い。半導体検出器は必ずしも従来の半導体材料を用いる必要はなく、たとえば半導体ポリマーや同様の材料といった均等物が用いられても良い。
【0090】
検出器の分解能はピークを分離するのに十分な程度に良好でなければならない。よって検出器の分解能は、検出器の分解能がピーク幅に左右されないように、測定の全範囲で用いられる狭いエネルギー範囲よりも良好でなければならない。
【0091】
同様に一定のエネルギーでのX線強度測定にデコンボリューションが用いられても良い。
【0092】
当業者にとって明らかなように、制御電子機器、又は処理手段は、ハードウエアとソフトウエアとの如何なる組み合わせであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】従来技術に係るWDXRF装置を図示している。
【図2】他の従来技術に係るWDXRF装置を図示している。
【図3】本発明の第1実施例による装置を図示している。
【図4】図3の装置に用いられる検出器を図示している。
【図5】様々な検出器について計算した分解能を、エネルギーの関数として図示している。
【図6】ZnOについての測定結果を図示している。
【図7】ZnOについての測定結果を図示している。
【図8】ZnOについての測定結果を図示している。
【図9】ZnOについての測定結果を図示している。
【図10】本発明の実施例で用いられているエネルギー範囲を図示している。
【図11】本発明の第2実施例による装置を図示している。
【図12】本発明の第3実施例に用いられている検出器を図示している。
【図13】NiKαのブラッグ角(2θ=48.67°)での5つの鉱物学上の基準についての測定スペクトルを図示している。
【図14】NiKαのブラッグ角(2θ=48.67°)で測定された1次のブラッグ反射を図示している。
【図15】NiKαのブラッグ角(2θ=48.67°)で測定された2次のブラッグ反射を図示している。
【図16】質量吸収係数を、3つの鉱物学上の基準についてのエネルギーの関数として図示している。
【図17】NiKαのブラッグ角(2θ=48.67°)で測定された、3本の校正線である鉱物学上の基準での1次のブラッグ反射ピーク強度に対する2次のブラッグ反射ピーク強度を図示している。
【符号の説明】
【0094】
2 X線管
4 試料
6 アナライザ結晶
8 検出器
10 弯曲アナライザ結晶
11 平行板コリメータ
12 スリット
13 平行板コリメータ
14 スリット
30 試料ステージ
32 ゴニオメータの回転軸
33 駆動手段
34 シリコンドリフト検出器
36 制御電子機器
38 検出器素子
40 共通基板
80 シンチレータ結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線用の試料を保持する試料ホルダ;
該試料ホルダ中の試料へX線を導くX線源;
エネルギーの関数としてX線強度を検出するシリコンドリフト検出器;
前記試料からのX線を前記検出器へ導くアナライザ結晶;
前記試料からの信号を取得して、処理されたX線強度を出力するように備えられている処理手段;並びに
前記試料ホルダ中の試料、前記X線源、前記アナライザ結晶、及び前記検出器の配置を変化させることで、前記試料からのX線が前記アナライザ結晶によって前記検出器へ導かれるエネルギーに測定エネルギーを選ぶ配置変更手段;
を有する蛍光X線分析装置であって、
前記処理手段は、以下の手順によって、あるピークエネルギーに位置するピークのX線強度を出力するように備えられ、
前記以下の手順とは:
測定ピークであるX線スペクトルを測定する手順;
前記ピークエネルギーでのブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;及び
前記測定ピークであるX線スペクトルから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、補正されたピークである前記ピークのX線強度を出力する手順;
であり、
前記検出器及び前記処理手段は、出力エネルギー周辺の狭いエネルギー範囲内でX線を選択し、かつ前記狭いエネルギー範囲内でのX線強度を出力するように備えられ、
前記狭いエネルギー範囲は、
1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満の幅、
1keVから5keVの出力エネルギーについては1keV未満の幅、
5keVから10keVの出力エネルギーについては2keV未満の幅、及び
10keVよりも大きな出力エネルギーについては5keV未満の幅、
を有する、
蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記検出器がマルチセグメントシリコンドリフト検出器である、請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記検出器が、該検出器上にマウントされたシンチレータ結晶を有する、上記請求項のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記配置変更手段が、前記処理手段、及び前記結晶を回転させて前記測定エネルギーを走査するように備えられた駆動装置を有する、上記請求項のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記処理手段が、以下の手順によって、あるピークエネルギーに位置するピークのX線強度を出力するように備えられ、
前記以下の手順とは:
前記ピークに位置する測定ピークであるX線スペクトルを測定する手順;
前記ピークエネルギーから離れた値である、少なくとも1種類の測定エネルギー及びそれに対応する出力エネルギーでのブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを測定する手順であって、前記測定エネルギー及び出力エネルギーは同一のエネルギーを有し、該エネルギーは前記ピーク位置から離れている、手順;
前記の測定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを用いて、前記ピークエネルギーでの前記ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;並びに
前記測定ピークであるX線スペクトルから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、前記ピークでの補正されたピークであるX線強度を出力する手順;
である、
請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記処理手段が、以下の手順によって、あるピークエネルギーに位置するピークのX線強度を出力するように備えられ、
前記以下の手順とは:
前記ピークに位置する測定ピークであるX線スペクトルを測定する手順;
高次ブラッグ反射バックグラウンドピーク、又はX線管からの散乱線を測定する手順;
前記の高次ブラッグ反射バックグラウンドピーク、又はX線管からの散乱線のX線スペクトルを用いて、前記ピークエネルギーでの前記ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;及び
前記測定ピークであるX線スペクトルから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、前記ピークでの補正されたピークであるX線強度を出力する手順;
である、
請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項7】
蛍光X線測定の実行方法であって:
X線を試料へ導く手順;
前記検出器へ入射するX線の強度をエネルギーの関数として測定するX線強度測定手順;
アナライザ結晶によって前記試料から放出されるX線を検出器へ導く導光手順;並びに
前記試料ホルダ中の試料、前記X線源、前記アナライザ結晶、及び前記検出器の配置を変化させることで、前記試料からのX線が前記アナライザ結晶によって前記検出器へ導かれるエネルギーに測定エネルギーを選ぶ配置変更手順;
を有し、さらに
狭いエネルギー範囲内でX線を選択する選択手順;及び
前記狭いエネルギー範囲内でX線強度を出力する出力手順;
を有する方法であって、
前記狭いエネルギー範囲は、
1keV未満の出力エネルギーについては0.4keV未満の幅、
1keVから5keVの出力エネルギーについては1keV未満の幅、
5keVから10keVの出力エネルギーについては2keV未満の幅、及び
10keVよりも大きな出力エネルギーについては5keV未満の幅、
を有する、
方法。
【請求項8】
あるピークエネルギーでのピーク強度を計算する手順をさらに有する方法であって、
前記計算の手順は:
前記ピークに位置する測定ピークであるX線スペクトルを測定する手順;
前記ピークエネルギーから離れた値である、少なくとも1種類の測定エネルギー及びそれに対応する出力エネルギーでのブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを測定する手順であって、前記測定エネルギー及び出力エネルギーは同一のエネルギーを有し、該エネルギーは前記ピーク位置から離れている、手順;
前記の測定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを用いて、前記ピークエネルギーでの前記ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;並びに
前記測定ピークであるX線スペクトルから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、前記ピークでの補正されたピークであるX線強度を出力する手順;
である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
あるピークエネルギーでのピーク強度を計算する手順をさらに有する方法であって、
前記計算の手順は:
前記ピークに位置する測定ピークであるX線スペクトルを測定する手順;
高次ブラッグ反射バックグラウンドピーク、又はX線管からの散乱線のX線スペクトルを測定する手順;
前記の高次ブラッグ反射バックグラウンドピーク、又はX線管からの散乱線のX線スペクトルを用いて、前記ピークエネルギーでの前記ブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを推定する手順;及び
前記測定ピークであるX線スペクトルから、前記の推定されたブラッグ反射バックグラウンドピークのX線スペクトルを差し引くことにより、前記ピークでの補正されたピークであるX線強度を出力する手順;
である、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記配置変更手順が、前記アナライザ結晶及び検出器を回転させる手順を有する、請求項7、8、又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定エネルギーが変化に伴い、前記出力エネルギーは、前記測定エネルギーと同一のエネルギーのまま変化する、請求項7、8、9、又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定エネルギーが変化に伴い、所定の一定出力エネルギーでの前記の測定されたX線強度を出力する手順をさらに有する、請求項7から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記X線強度を、測定エネルギー及び前記出力エネルギーの関数として3次元プロットで出力する手順をさらに有する、請求項7から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記X線強度測定手順が、エネルギーの関数としての前記の測定されたX線強度を、前記検出器から処理手段へ出力する手順を有し、かつ
前記選択手順が、前記処理手段内で前記狭いエネルギー範囲を選択する手順を有する、
請求項7から13のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−256698(P2008−256698A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98500(P2008−98500)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(503310327)
【Fターム(参考)】