説明

血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を含む複合薬

【課題】血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を含む複合薬の提供。
【解決手段】本発明は、血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を含む新規の複合薬に関し、上記血小板凝集阻害剤は、アスピリン又はクロピドグレルであることが好ましい。
上記血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を含む複合薬は、心筋梗塞(心臓発作)、心停止、末梢血管疾患(症候性頚動脈疾患を含む)、鬱血心不全、虚血性心疾患、狭心症(不安定狭心症を含む)、突然心臓死、不安定狭心症、並びに、脳梗塞、脳血栓症、脳虚血及び一過性脳虚血発作等の脳血管性障害、バイパス術(血管形成)、血管内補綴の配置及び再狭窄に関連する障害、並びに、慢性関節リウマチ及び骨関節炎等の関節炎症状、並びに、喘息又は気道若しくは呼吸器の炎症性障害を含む炎症性障害の治療に有用であろうことが予見される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を含む、新規の複合薬に関する。血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤の複合薬は、本発明の範囲内において、特に、心筋梗塞(心臓発作)や発作等の心血管障害を患う患者の危険性を低減するために適用される。
【0002】
本発明の血小板凝集阻害剤は、アスピリン又はクロピドグレル(clopidogrel)のいずれかであることが好ましい。
【背景技術】
【0003】
アセチルサリチル酸(ASA)、より一般的にはアスピリンは、(心筋梗塞等の)心血管障害や(発作等の)脳血管性障害等の危険性のある患者に低用量(約100mg、鎮痛効果を発揮させる際に服用される通常の用量よりも少ない)で長期間投与した場合にこれらの危険性を低減することが知られている。アスピリンの効果は、アラキドン酸からプロスタグランジン及び血小板凝集誘導性のトロンボキサンA(TxA)までの経路に必要なシクロオキシゲナーゼ酵素の不可逆的「自殺」阻害剤としての作用であることが知られている。
【0004】
クロピドグレルは、血小板アデニル酸シクラーゼ結合ADP受容体に対する特異的かつ不可逆的な阻害剤であり、対応する血小板受容体(GP−IIb/IIIa糖タンパク質)とフィブリノーゲンの結合を阻害する。クロピドグレルは、商品名PLAVIX(登録商標)で市販されていて、抗血栓症剤として使用されている。
【0005】
PPARα活性剤であるフィブラート系薬剤は、血漿トリグリセリド及びコレステロール値を低下させること、及び、LDLコレステロールレベルの高い患者における虚血性心疾患の予防において有用であることが報告されている。また、これらは、高レベルのフィブリノーゲン及びPAI−1を適度に減少させることができる。フィブラート化合物(例えばゲムフィブロジル、フェノフィブラート、ベザフィブラート及びシプロフィブラート)は、血漿HDLコレステロールのレベルを上昇させる。フィブラート系薬剤が単独で血小板凝集を阻害できるということは、文献中に報告されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Renaudら, Haemostasis, 1979, 8, 82−95
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤の併用投与は、心血管疾患を発症する危険性のある患者、及び/又は、心血管障害にかかる危険性のある患者にとって有用であると期待される効果をもたらすことが、今回予想外にも発見された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に、アスピリン及びフィブラート系薬剤の併用による血小板凝集阻害効果は、これら2つの成分を別々に使用した場合の効果を合わせたものよりも大きい、すなわち、2つの成分間には相乗作用があるということが発見された。特に、アラキドン酸の濃度が1mMである場合、ラットをアスピリン及びフィブラート系薬剤を併用して治療すると、ラットの血小板凝集が強く阻害されるが、この複合薬中の2つの物質をそれぞれ単独で、アラキドン酸1mMの存在下で同用量使用しても、凝集阻害活性はない、又は、あまりない。こうした発見によって、これら2つの成分のより少ない用量での使用を考慮することができ、これは、これらの有効物質に関連する副作用の低減につながる。
【0008】
従って、本発明は、血小板凝集阻害剤、フィブラート系薬剤、及び、医薬品に許容される1つ以上の補形薬を含む新規の複合薬に関する。また、本発明は、心血管疾患又は障害の予防又は治療用の薬剤の製造における、血小板凝集阻害剤、フィブラート系薬剤、及び、医薬品に許容される1つ以上の補形薬の使用、並びに、血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤の有効量の併用投与を含む、心血管疾患又は障害の予防又は治療方法に関する。この方法において使用されるフィブラート系薬剤は、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラート及びシプロフィブラートからなる群より選択できる。
【0009】
本発明の新規複合薬及び新たな用途において好ましいフィブラート系薬剤は、フェノフィブラート、又は、その活性代謝産物、フェノフィブリン酸のいずれかである。
【0010】
本発明の範囲内において好ましい血小板凝集阻害剤は、アスピリン又はクロピドグレルである。
【0011】
本発明において最も好ましい複合薬は、有効成分としてアスピリン及びフェノフィブラート、又は、クロピドグレル及びフェノフィブラートを含む。
【0012】
(発明の詳細な記述)
本発明の範囲内において、「アスピリン」は、精製アスピリンだけでなく、アスピリンの塩、溶媒和物及び複合体(包接錯体等)も指す。
【0013】
アスピリンについて、錠剤、分散性/緩衝性錠剤、及び、腸溶性錠剤などを含む多くの異なる種類の投与形態が知られている。アスピリンについて、本発明の範囲内におけるアスピリン−フィブラート系薬剤の併用の基礎として上記のいずれの形態でも考慮することができる。
【0014】
アスピリンの分散性/緩衝性錠剤について、これらは概して、アスピリンの酸性度を中和するための塩基性金属酸化物、水酸化物又は炭酸塩を含み、従って、患者に長期的に処方された場合には胃腸性(GI)出血が緩和される。このような薬剤は、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び、これらの種に基づく水酸化物及び炭酸塩の混合物を含んでいてよい。このような薬剤の量は、アスピリンの使用量によって異なると考えられるが、通常は1回分の用量当たり10〜1000mgの範囲であろう。
【0015】
好ましくは、本発明の範囲内で使用されるアスピリンが錠剤型調製物、分散性/緩衝性錠剤型調製物、又は、腸溶性錠剤型調製物のいずれであっても、以下からなる群の1つ以上を含む補形薬の存在下で調製されるであろう:クエン酸、炭酸カルシウム、サッカリンナトリウム、フタル酸ジエチル、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、二酸化チタン及びアラビアゴム粉末。
【0016】
クロピドグレルは、チエノピリジン(thienopyridine)クラスの血小板凝集阻害剤であり、その化学名はメチル(4)−(S)−α−(o−クロロフェニル)−6,7−ジヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン−5−アセテートである。
【0017】
本発明の範囲内において、「クロピドグレル」は、酢酸エステルとしてのクロピドグレルだけでなく、クロピドグレルの遊離カルボン酸型、この遊離酸の他のエステル、及び/又は、その医薬品に許容される塩を指す。特に、硫酸との付加塩(クロピドグレル硫酸塩及びクロピドグレル硫酸水素塩)等の硫酸クロピドグレル付加塩も、用語「クロピドグレル」に含まれることとする。
【0018】
本発明において、フィブラート系薬剤を、フィブリン酸(fibric acid)誘導体並びにこのフィブリン酸誘導体の医薬品に許容される塩及びエステルを含むPPARαアゴニスト(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αアゴニスト)として定義する。フィブリン酸誘導体は、VLDL等のトリグリセリド高含有リポタンパク質値を低減し、HDL値を上昇させ、LDL値に様々な影響を及ぼす。VLDL値に対する効果は主に、特に筋肉中における、リポタンパク質リパーゼ活性の増大に起因するようである。これにより、含まれているVLDLトリグリセリドの加水分解が増大し、VLDLの異化も増大する。また、フィブリン酸薬剤は、例えば肝臓におけるアポC−III(リポタンパク質リパーゼ活性の阻害剤)の産生を減少させることにより、VLDLの組成を変える可能性がある。また、これらの化合物については、おそらく脂肪酸の合成阻害及び脂肪酸の酸化促進によって、肝臓におけるVLDLトリグリセリドの合成を減少させることについても報告されている。
【0019】
フィブラート化合物は、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラート、シプロフィブラート、及び、これらの類似体、誘導体及び医薬品に許容される塩を含むが、これらに限定されない。
【0020】
フェノフィブラートはTricor(登録商標)カプセルとして市販されている。このカプセル1つに、微粉化フェノフィブラート67mgが含まれる。
【0021】
フェノフィブラートの活性代謝産物であるフェノフィブリン酸は、おそらくはトリグリセリド合成阻害により循環血中に放出されるVLDLを低減することによって、かつ、トリグリセリド高含有リポタンパク質(すなわちVLDL)の異化を刺激することによって、血漿トリグリセリドレベルを低下させる。
【0022】
クロフィブラートは、Atromid−S(登録商標)カプセルとして市販されている。
このカプセル1つに、クロフィブラート500mgが含まれる。クロフィブラートは、トリグリセリドを多く含む超低密度リポタンパク質分画を減少させることによって、高濃度の血清脂質を低下させる。血清コレステロールは減少する可能性がある。これは、リポタンパク質(特にVLDL)の肝臓からの放出を阻害することができ、リポタンパク質リパーゼの作用を増強することができる。クロフィブラートの一日の用量は2gが推奨され、分けて投与される。
【0023】
ゲムフィブロジルは、Lopid(登録商標)錠として市販されている。この錠剤1つに、ゲムフィブロジル600mgが含まれる。ゲムフィブロジルは、血清トリグリセリド及び超低密度リポタンパク質コレステロールを減少させ、高密度リポタンパク質コレステロールを増加させる脂質調節剤である。ゲムフィブロジルの一日の用量は1200mgが推奨され、二回に分けて投与される。
【0024】
フィブラート系薬剤はPPARαアゴニストを含む;PPARαアゴニストは、米国特許第6008239号中に記載されるアッセイによって識別することができる。PPARαアゴニストの医薬品に許容される塩及びエステルも、本発明の範囲内に含まれる。PPARαアゴニストである化合物は、米国特許第6008239号、国際特許WO97/27847号、国際特許WO97/27857号、国際特許WO97/28115号、国際特許WO97/28137号及び国際特許WO97/28149号中に記載される化合物等を含む。国際特許WO92/10468号及び国際特許WO01/80852号中に記載されるフィブラート化合物も、本明細書中に参照される。
【0025】
本発明によれば、好ましいフィブラート系薬剤はフェノフィブラートであり、化学的には2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチルプロパン酸1−メチルエチルエステルとしても知られる。また、本発明において好ましい活性フィブラート系物質としては、フェノフィブラートの活性代謝産物である遊離酸フェノフィブリン酸(この遊離酸の化学名は2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチルプロパン酸)がある。
【0026】
フィブラート系薬剤の粒子径は小さくてよい。フィブラート系薬剤は、例えば微粉化又は界面活性剤と共微粉化されていてよい。両性、非イオン性、カチオン性又はアニオン性の任意の界面活性剤が好適である。上記界面活性剤の例としては次が挙げられる:ラウリル硫酸ナトリウム、モノオレイン酸塩、モノラウリン酸塩、モノパルミチン酸塩、モノステアリン酸塩、又は、ポリオキシエチレンソルビタンの別のエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS;ドキュセート(docusate)ナトリウムとしても知られる)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、ポリオキシエチレンリシン油(polyoxyethylene ricin oil)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、ポロクサマー(poloxamer)、及び、これらの混合物。好ましい界面活性剤は、ヨーロッパ特許EP0330532号中に記載のもの等の、フェノフィブラートと(共)微粉化されていてもよいラウリル硫酸ナトリウムである。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、フィブラート系薬剤の粒子の平均粒子径は約20μm未満、好ましくは約10μm未満である。
【0028】
また、フィブラート系薬剤は、例えば粉砕、ホモジナイズ又は析出法により取得可能なナノ粒子の形状としてもよい。ナノ粒子組成物の製造方法は、米国特許第5518187号、第5718388号、第5862999号、第5665331号、第5662883号、第5560932、第5543133号、第5534270号、第5510118号、第5470583号、及び、米国特許出願第2003/0224058号中に記載されており、これらの詳細はすべて参照されている。
【0029】
例えばナノ粒子フィブラート系薬剤分散体は、フィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート)を粉砕した後、フィブラート系薬剤がほとんど溶解しない液体分散媒中においてフィブラート系薬剤粒子を分散させ、続いて、粉砕媒体存在下において機械的手段の使用によりフィブラート系薬剤粒子径を所望有効平均粒子径まで小さくすることにより取得できる。分散媒は、例えば水、ヒマワリ油、エタノール、t−ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン又はグリコールであってよい。好ましい分散媒は水である。
【0030】
フィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート)粒子は、少なくとも一種の表面安定化剤の存在下でサイズを小さくすることができる。また、フィブラート系薬剤粒子は、摩擦後に一種以上の表面安定化剤と接触させることができる。希釈剤等の他の化合物を、サイズを小さくする過程においてフィブラート系薬剤/表面安定化剤組成物に添加可能である。分散体は連続的に又はバッチ式で製造可能である。一種以上の表面安定化剤を併用可能である。使用可能な有用な表面安定化剤には公知の有機及び無機の医薬補形薬が含まれるが、これらに限定されない。このような補形薬には様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然物質及び界面活性剤が含まれる。表面安定化剤には非イオン性、アニオン性、カチオン性、イオン性及び両性イオン性界面活性剤が含まれる。好適な表面安定化剤は米国特許出願2003/0224058号中に記載されるものであり、その内容は本明細書中で参照し、以下に記載する。
【0031】
所望のナノ粒子状フィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート)の別の形成方法は微小析出による方法である。これは、有毒溶媒又は可溶化重金属不純物を全く含有しない一種以上の表面安定化剤、及び、一種以上のコロイド安定性増強界面活性剤の存在下における、溶解性の低い有効薬剤の安定分散体の調製方法である。この方法は例えば以下を含む:(1)好適な溶媒中へのフィブラート系薬剤の溶解;(2)段階(1)で得た調製物の、少なくとも一種の表面安定化剤を含む溶液への添加;及び、(3)段階(2)で得た調製物の、適切な非溶媒の使用による析出。この方法の実施後、形成された塩が存在する場合に、従来の方法による分散体の透析又はろ過及び濃縮によって、これを完全に除去可能である。
【0032】
また、ナノ粒子状フィブラート系薬剤はホモジナイズにより取得可能である:ナノ粒子状有効薬剤組成物を調製する典型的なホモジナイズ法は、米国特許第5510118号中に記載されている。この方法は、フィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート)粒子を液体分散媒中において分散させること、これに続いて、分散体のホモジナイズによりフィブラート系薬剤の粒子径を所望粒子径まで小さくすることを含む。フィブラート系薬剤粒子は、少なくとも一種の表面安定化剤の存在下でサイズを小さくすることが可能である。また、フィブラート系薬剤粒子は、摩擦前又は摩擦後に一種以上の表面安定化剤と接触させることができる。希釈剤等の他の化合物を、サイズを小さくする前に、その間に又はその後でフェノフィブラート/表面安定化剤組成物に添加可能である。分散体は連続的に又はバッチ式で製造可能である。
【0033】
本発明によれば、ナノ粒子状フィブラート系薬剤の平均粒子径は約2000nm未満、好ましくは約1000nm未満、より好ましくは約100nm未満、最も好ましくは約50nm未満である。
【0034】
本明細書中において、「併用投与」とは、約3〜約4時間までの間に二種以上の化合物を一人の患者に投与することを意味する。例えば、併用投与とは、(1)第一の化合物と第二の化合物とを同時に投与すること;(2)第一の化合物を投与し、その約2時間後に第二の化合物を投与すること;及び、(3)第一の化合物を投与し、その約4時間後に第二の化合物を投与すること;を包含する。本明細書中に記載するように、本発明は、患者にアスピリン及びフィブラート系薬剤、又は、クロピドグレル及びフィブラート系薬剤を併用投与することを包含する。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態において、キットは、1回分の用量を多数回含んで提供され、これらの中にはフィブラート系薬剤のみを含むもの、及び、アスピリンのみを含むもの(又は、クロピドグレルのみを含むもの)がある。上記キットは、両有効物質(すなわち、アスピリン(又はクロピドグレル)、及び、フィブラート系薬剤)を別々に投与される患者についての指示書を含んでいてよい。
【0036】
本発明の好ましくかつ有利な実施形態において、両有効物質(アスピリン(又はクロピドグレル)及びフィブラート系薬剤)の1回分の用量が、一回分の医薬調製物中に組み合わせた状態で提供される。こうすることによって、患者に両有効物質を同時に投与することができる。
【0037】
本発明の組成物は、経腸投与又は非経口投与(非経口投与は、皮下、筋肉内、皮内、乳房内及び静脈内投与、並びに、従来公知の他の投与方法を含む)が好ましい。対象となる併用は、従来技術に従って湿潤剤及び懸濁剤又は許容される薬剤を好適に分散させて調製された、水性又は油性の注射用無菌懸濁液の形で点滴によって投与可能である。また、対象となる併用は、ネブライザー用のエアゾール若しくは溶液の形で吸入によって、又は、薬剤と適切な非刺激性補形薬とを混合することにより調製された坐薬(常温では固体であるが、直腸温では液体であるため、直腸内で溶けて薬が放出される)の形で直腸経由で投与することもできる。このような材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
【0038】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、経口投与に好適な形状、より好ましくは錠剤、顆粒、カプセル又は粉末等の固体状である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、治療上有効量の血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤の組み合わせと医薬品に許容される少なくとも一種の担体、佐剤又は他の補形薬とを含む医薬組成物を含み、上記担体、佐剤又は他の補形薬は本発明の範囲内において有効物質としての直接的な薬学的効果を有さないと考えられるが、上記担体、佐剤又は他の補形薬は、本発明の複合薬の有効物質が患者の循環系に放出される割合に対して当然影響を及ぼすであろう。血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤以外の第三の又は二次的な有効物質の存在は本発明中において除外されないが、本発明の組成物は血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤のみを二種の単独の有効物質として含むことが好ましいであろう。従って、本発明の好ましい組成物は、本質的に単一の血小板凝集阻害剤(アスピリン又はクロピドグレル)と単一のフィブラート系薬剤のみからなり、上記組成物中の他の要素は、本質的な薬学的活性を有さず、本発明の機能において血小板凝集阻害剤+フィブラート系薬剤の複合物の作用特性を著しく変化させない補形薬であろう。
【0040】
上記で議論されるように、本発明の新規の複合薬にとって好ましいフィブラート系薬剤はフェノフィブラート又はその活性代謝産物であるフェノフィブリン酸のいずれかであり、本発明の範囲内において好ましい血小板凝集阻害剤はアスピリン又はクロピドグレルである。従って、本発明において最も好ましい複合薬は、単独の有効成分として、(i)アスピリン及びフェノフィブラート、又は、(ii)クロピドグレル及びフェノフィブラートを含む。
【0041】
本発明の化合物で医薬組成物を調製する際、医薬品に許容される不活性担体(補形薬)は固体又は液体のいずれであってもよい。固体調製物には、粉末、錠剤、コーティング錠、糖剤、トローチ、甘味入り錠剤、分散可能な顆粒、カプセル及びサッシェが含まれる。
【0042】
本発明の医薬組成物は一種以上の従来公知の補形薬を含んでよい。上記補形薬には、(a)表面安定化剤、(b)バインダー、(c)充填剤、(d)滑剤、(e)流動促進剤、(f)懸濁剤、(g)甘味料、(h)香料、(i)防腐剤、(j)バッファー、(k)湿潤剤、(l)崩壊剤、(m)発泡剤、(n)保湿剤、(o)溶解遅延剤、(p)吸収促進剤、(q)吸着剤が含まれる。
【0043】
a)表面安定化剤
本発明の範囲内で使用可能な表面安定化剤の例としては、ポリマー、低分子量オリゴマー、天然物質、並びに、非イオン性、アニオン性、カチオン性、イオン性及び両性イオン性界面活性剤を含む界面活性剤、並びに、これらの混合物が挙げられる。
【0044】
表面安定化剤の代表例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(現在ヒプロメロース(hypromellose)として知られる)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(ドキュセートナトリウムとしても知られる)、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)乳化ワックス、ソルビタンエステル(例えばSpan(登録商標)80及びSpan(登録商標)20等の市販のSpan(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばセトマクロゴール1000等のマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(ポリオキソル(polyoxol))(例えば市販のCremophor(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばTween 20(登録商標)及びTween 80(登録商標)(ICI Speciality Chemicals社)等の市販のTween(登録商標);ポリエチレングリコール(例えばCarbowax3550(登録商標)及び934(登録商標)(ユニオン・カーバイド社))、ポリオキシエチレンステアリン酸塩、膠質二酸化ケイ素、リン酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロースフタル酸塩、非結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシド及びホルムアルデヒドを有する4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(Tyloxapol(登録商標)、Superione(登録商標)及びTriton(登録商標)としても知られる)、ポロクサマー(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体であるPluronic F68(登録商標)及びF108(登録商標));ポロキサミン(poloxamine)(例えばTetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても知られる、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのエチレンジアミンへの連続添加による三官能基ブロック共重合体(BASFワイアンドット社、ニュージャージー州パーシッパニー));Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASFワイアンドット社);アルキルアリールポリエーテルスルホン酸塩であるTriton X−200(登録商標)(Rohm and Haas社);ステアリン酸スクロース及びジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodestas F−110(登録商標)(クローダ社);Olin−10G(登録商標)又はSurfactant 10−G(登録商標)(Olin Chemicals社、コネチカット州スタンフォード)としても知られるp−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール);Crodestas SL−40(登録商標)(クローダ社);SA9OHCO(登録商標)(イーストマン・コダック社);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル β−D−グルコピラノシド;n−デシル β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノニル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル β−D−グルコピラノシド;オクチル−β−D−チオグルコピラノシド;PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンと酢酸ビニルのランダム共重合体等が含まれる。
【0045】
望ましい場合には、本発明のナノ粒子状フィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート)組成物は、リン脂質を含まずに調製してもよい。
【0046】
有用なカチオン性表面安定化剤の例としては、ポリマー、生体高分子、多糖類、セルロース化合物、アルギン酸塩、リン脂質及び非ポリマー性化合物、例えば、両性イオン性安定化剤、ポリn−メチルピリジニウム、アントリルピリジニウムクロリド、カチオン性リン脂質、キトサン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン(polybrene)、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミドブロミド(PMMTMABr)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)及びポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルサルフェート等が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
他の有用なカチオン性安定化剤としては、カチオン性脂質、スルホニウム、ホスホニウム及び四級アンモニウム化合物、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ヤシ油トリメチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ヤシ油メチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ヤシ油ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド又はブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド又はブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ(ethenoxy))アンモニウムクロリド又はブロミド、N−アルキル(C12−18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C14−18)ジメチル−ベンジルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N−アルキル(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハライド、アルキル−トリメチルアンモニウム塩及びジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシ化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩及び/又はエトキシ化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N−ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、クロリド一水和物、N−アルキル(C12−14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウムクロリド及びドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT(登録商標)336)、POLYQUAT(登録商標)10、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル(脂肪酸のコリンエステル等)、塩化ベンザルコニウム、ステアラルコニウムクロリド化合物(ステアリルトリモニウムクロリド及びジステアリルジモニウムクロリド等)、セチルピリジニウムブロミド又はクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、MIRAPOL(登録商標)及びALKAQUAT(登録商標)(Alkaril Chemical社)、アルキルピリジニウム塩等;アルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート及びビニルピリジン等のアミン、ラウリルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、アルキルピリジニウム塩及びアルキルイミダゾリウム塩等のアミン塩、並びに、アミンオキシド;イミドアゾリニウム(imide azolinium)塩;プロトン化四級化アクリルアミド;ポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]及びポリ−[N−メチルビニルピリジニウムクロリド]等のメチル化四級ポリマー;並びに、カチオン性グアーガムが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
上記典型的なカチオン性表面安定化剤及び他の有用なカチオン性表面安定化剤は文献(J.Cross and E.Singer,Cationic Surfactants:Analytical and Biological Evaluation(Marcel Dekker,1994);P.and D.Rubingh(Editor),Cationic Surfactants:Physical Chemistry (Marcel Dekker,1991);及び、J.Richmond,Cationic Surfactants:Organic Chemistry,(Marcel Dekker,1990))中に記載されている。
【0049】
本発明のフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって好ましい表面安定化剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、及び/又は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(ドキュセートナトリウムとしても知られる)である。
【0050】
b) バインダー
本発明の範囲内で使用できるバインダーの例としては、アラビアゴム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、硬化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、液状グルコース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、キサンタンガム、トラガカントゴム、ゼイン、及び、これらの混合物が含まれる。
【0051】
本発明によるフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって好ましいバインダーは次のとおりである:ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又は、ポビドン(ポリビニルピロリドン)。
【0052】
c) 充填剤/希釈剤
本発明の範囲内で使用可能な充填剤/希釈剤の例としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、スクロース、デキストレート、デキストリン、リン酸カルシウム、グリセリルパルミトステアレート(glyceryl palmitostearate)、硬化植物油、カオリン、ラクトース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、結晶セルロース、ケイ化結晶セルロース、ポリメタクリレート、塩化カリウム、粉末セルロース、糊化デンプン、塩化ナトリウム、ソルビトール、デンプン、タルク及びリン酸カルシウム、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0053】
本発明によるフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって好ましい充填剤/希釈剤は次のとおりである:スクロース、ラクトース、マンニトール及び/又はデンプン。
【0054】
d) 滑剤
本発明の範囲内で使用可能な滑剤(滑沢剤)の例としては、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、グリセリルパルミトステアレート、硬化ヒマシ油、硬化植物油、軽油、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム(sodium stearyl fumarate)、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸亜鉛、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0055】
本発明によるフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって好ましい滑剤(滑沢剤)は次のとおりである:タルク及び/又はステアリン酸マグネシウム。
【0056】
e) 流動促進剤
本発明の範囲内で使用可能な流動促進剤の例としては、膠質二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク及びリン酸カルシウム、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0057】
f) 懸濁剤
本発明の範囲内で使用可能な懸濁剤の例としては、アラビアゴム、寒天、カラギーナン、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、デンプン、トラガカントゴム、キサンタンガム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、結晶セルロース、セルロース分散体、プロピレングリコールアルギン酸塩、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、カルボマー、膠質無水ケイ酸、ポリビニルアルコール、ポビドン及びゼラチンが含まれる。
【0058】
g) 甘味料
本発明の範囲内で使用可能な甘味料の例としては、任意の天然又は人工甘味料、例えば、スクロース、ブドウ糖、グリセリン、ラクトース、液状グルコース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、及び、これらの混合物が含まれる。
【0059】
h) 香料
本発明の範囲内で使用可能な香料の例としては、エチルマルトール(ethyl maltol)、エチルバニリン、フマル酸、リンゴ酸、マルトール、メントール、バニリン、Magnasweet(MAFCO社の商標)、バブルガム風味及び果物風味、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0060】
i) 防腐剤
本発明の範囲内で使用可能な防腐剤の例としては、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、ブチルパラベン、セトリミド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロルクレゾール、クレゾール、エチルパラベン、グリセリン、イミド尿素(imidurea)、メチルパラベン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコール、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸及びチオマーサル(thiomersal)が含まれる。
【0061】
(j) バッファー
本発明の範囲内で使用可能なバッファーの例としては、リン酸塩、重炭酸塩、トリス−ヒドロキシメチルエチルアミン、グリシン、ホウ酸塩、クエン酸塩が含まれる。
【0062】
(k) 湿潤剤
本発明の範囲内で使用可能な湿潤剤の例としては、セチルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロクサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体、モノステアリン酸グリセリンが含まれる。
【0063】
(l) 崩壊剤
本発明の範囲内で使用可能な崩壊剤の例としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、膠質二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウムとして知られる架橋ポリマー種、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、グアーガム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、結晶セルロース、ポラクリリンナトリウム、粉末セルロース、糊化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、及び、これらの混合物が含まれる。
【0064】
本発明によるフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって好ましい崩壊剤は次のとおりである:クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン及び/又はデンプングリコール酸ナトリウム。
【0065】
(m) 発泡剤
本発明の範囲内で使用可能な発泡剤の例としては、有機酸及び炭酸塩又は重炭酸塩等の発泡剤対が含まれる。好適な有機酸には、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸及びアルギン酸、並びに、これらの無水物及び酸性塩が含まれる。好適な炭酸塩及び重炭酸塩には、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム(sodium glycine carbonate)、L−リジン炭酸塩及びアルギニン炭酸塩が含まれる。
また、発泡剤対は構成要素である重炭酸ナトリウムのみでもよい。
【0066】
(n) 保湿剤
本発明の範囲内で使用可能な保湿剤の例としてはグリセリンを挙げることができる。
【0067】
(o) 溶解遅延剤
本発明の範囲内で使用可能な溶解遅延剤の例としてはパラフィンを挙げることができる。
【0068】
(p) 吸収促進剤
本発明の範囲内で使用可能な吸収促進剤の例としては四級アンモニウム化合物を挙げることができる。
【0069】
(q) 吸着剤
本発明の範囲内で使用可能な吸着剤の例としてはカオリン及びベントナイトを挙げることができる。
【0070】
本発明によるフィブラート系薬剤及び血小板凝集阻害剤の併用にとって、特にフェノフィブラート及びアスピリンの併用にとって好ましい補形薬には、以下が含まれる:ラウリル硫酸ナトリウム及び/又はジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(ドキュセートナトリウムとしても知られる)等の表面安定化剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はポビドン(ポリビニルピロリドン)等のバインダー;スクロース、ラクトース、マンニトール及び/又はデンプン等の充填剤/希釈剤(デンプンの場合は、圧縮補助剤);タルク及び/又はステアリン酸マグネシウム等の滑剤(滑沢剤);並びに、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン及び/又はデンプングリコール酸ナトリウム等の崩壊剤。
【0071】
本発明のフェノフィブラート及びアスピリンの複合薬を製造する好ましい一方法において、一方では、フェノフィブラート及びラウリル硫酸ナトリウムの複合物を、(クエン酸、炭酸カルシウム、サッカリンナトリウム、フタル酸ジエチル、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、二酸化チタン及びアラビアゴム粉末の1つ以上を含んでいてよい)補形薬を含むアスピリン調製物と合わせる。続いて、湿式造粒、スプレー乾燥又は直接圧縮製造工程を使用することによって、本発明のフェノフィブラート−アスピリン複合物を製造することができる。
【0072】
本発明のフェノフィブラート及びアスピリンの複合薬を製造する別の好ましい方法において、一方では、フェノフィブラート、ドキュセートナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム及びスクロースの複合物を、(クエン酸、炭酸カルシウム、サッカリンナトリウム、フタル酸ジエチル、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、二酸化チタン及びアラビアゴム粉末の1つ以上を含んでいてよい)補形薬を含むアスピリン調製物と合わせる。続いて、湿式造粒又はスプレー乾燥又は直接圧縮製造工程を使用することによって、本発明のフェノフィブラート−アスピリン複合物を製造することができる。
【0073】
本発明の液体調製物には、注射用調製物、及び、経口投与用調製物も含まれる。
【0074】
注射剤については、液体調製物は、ポリエチレングリコール溶液等の溶液として調製することができる。
【0075】
経口投与用の液体の投与形態は、医薬品に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を含む。経口投与について、経口使用に好適な水溶液は、有効成分を水中に溶解し、必要であれば適切な上記着色剤、香料、安定化剤及び増粘剤を添加することにより調製可能である。有効化合物の溶解性を改善するために、エタノール、プロピレングリコール及び他の医薬品に許容される非水性溶媒を添加可能である。経口使用に好適な水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び他の公知の懸濁剤等の粘性物質と共に、微細化した有効成分を水中に分散させることにより調製可能である。
【0076】
また、使用直前に、経口投与用の液体状調製物に変化させることを目的とした固体の調製物もさらに含まれる。このような液体状物には、溶液、懸濁液及びエマルションが含まれる。これらの調製物は、活性成分以外に、着色剤、香料、安定化剤、バッファー、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、並びに、可溶化剤を含んでいてよい。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「有効量」は、患者に投与する用量又は有効量を指す。患者に投与する用量又は有効量、及び、患者への投与頻度は、既知の技術を使用し、かつ、類似状況下における結果を観察することにより、当業者は容易に決定可能である。有効量又は用量を決定する際、従事する診断医は、使用する化合物の作用の効能及び持続時間、治療する病気の性質及び重度、治療する患者の性別、年齢、体重、全身の健康状態及び反応性の個人差、並びに、関連する他の条件を含む(これらに限定されない)多くの要因を考慮する。
【0078】
本発明の組成物は、様々な有効物質の治療上有効量を含む。「治療上有効」という表現は、代替療法では通常生じる副作用を回避すると同時に、疾患を予防、又は、その疾患の重度を緩和可能な薬剤の効能を示す。「治療上有効」という表現は、「治療、予防又は抑制に有効」という表現と同等の意味を有することは明らかであり、また、これら両表現は、心血管疾患及び障害及びこれに関連する状態の予防又は治療を改善可能な併用療法における各薬剤の使用量について限定するための表現である。
【0079】
本発明の組成物、特に両有効物質(アスピリン及びフィブラート系薬剤)を含む1回分の用量は、好ましくは「1日1回用」調製物としても表すことができ、この場合の有効物質の量は、1日1回の投与で適切な治療効果を得られるようなものである。しかし、患者に治療上有効量の有効物質を与えるために一日にそれぞれ2回、3回又は4回投与する必要のある「1日2回用」、「1日3回用」又は「1日4回用」調製物が使用される場合も除外されない。
【0080】
アスピリンについて、本発明の範囲内における(例えば心血管疾患及び/又は障害を予防又は治療するための)1日分の有効用量は、約5〜約1500mg/日、好ましくは約10〜約650mg/日、より好ましくは約20〜約400mg/日、さらに好ましくは約50〜約325mg/日の範囲内である。特に好ましい用量は、約75〜約160mg/日である。最も好ましいアスピリン用量は、約75mg/日及び約81mg/日の2つである。
【0081】
クロピドグレルについて、本発明の範囲内における(例えば心血管疾患及び/又は障害を予防又は治療するための)1日分の有効用量は、約10〜約1000mg/日、好ましくは約25〜約600mg/日、さらに好ましくは約50〜約100mg/日の範囲内である。
【0082】
フィブラート系薬剤の1日分の有効用量は、約10〜約3000mg/日(1回以上に分けて投与)、好ましくは約10〜約300mg/日、最も好ましくは約40〜約300mg/日である。従って、本発明によるフィブラート系薬剤(好ましくはフェノフィブラート等)を含む1日1回用調製物は、フィブラート系薬剤有効成分を約40〜約300mg含んでよい。
【0083】
従って、アスピリン−フィブラート系薬剤複合薬の場合、フィブラート系薬剤用量に対するアスピリン用量の重量比(アスピリン:フィブラート系薬剤)は、約1:600〜約150:1、好ましくは約1:30〜約40:1、より好ましくは約1:15〜約15:1の範囲内であってよい。両有効物質を組み合わせた1回分の用量については、この重量比は、この1回分の用量(経口投与用の錠剤等)中に配合されている2つの有効物質の重量比に相当する。
【0084】
従って、クロピドグレル−フィブラート系薬剤複合薬の場合、フィブラート系薬剤用量に対するクロピドグレル用量の重量比(クロピドグレル:フィブラート系薬剤)は、約1:300〜約100:1、好ましくは約1:12〜約60:1、より好ましくは約1:6〜約2.5:1の範囲内である。
【0085】
上述のように、本発明の複合薬は、「心血管障害及び疾患」(本明細書中では、心筋梗塞(心臓発作)、心停止、末梢血管疾患(症候性頚動脈疾患を含む)、鬱血心不全、虚血性心疾患、狭心症(不安定狭心症を含む)、突然心臓死、不安定狭心症、並びに、脳梗塞、脳血栓症、脳虚血及び一過性脳虚血発作等の脳血管性障害を含む群としての使用が意図される)の治療及び/又は予防に有用であることが期待される。本発明の組成物による治療又は予防が目的とされる他の状態は次のとおりである:バイパス術(血管形成)、血管内補綴の配置及び再狭窄に関連する障害。本発明の複合薬が、慢性関節リウマチ及び骨関節炎等の関節炎症状、並びに、喘息又は気道若しくは呼吸器の炎症性障害を含む炎症性障害の治療に有用であろうことも予見される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
次の例に、本発明の実施形態を記載する。本明細書中に記載した本発明の説明又は実施を考察すれば、本願の請求項の範囲内に含まれる他の実施形態は当業者にとって明白であろう。実施例を伴う明細書は、単に具体例を示すものであり、実施例後に記載する請求項の示す本発明の範囲及び真意に含まれる。
【0087】
(実施例)
血小板凝集に対するフィブラート系薬剤(フェノフィブラート)及びアスピリンの併用の効果を評価するために、試験を実施した。この試験において、フェノフィブラートとアスピリンを経口経路(p.o.)でラットに併用投与し、アラキドン酸に誘導される血小板凝集に対する効果を観察した。
【0088】
<方法>
対象体重300〜350gの雄OFA−SD(IOPS Caw)ラット40匹(チャールス・リバー社、フランス)を試験に使用した。
【0089】
温度(19.5〜24.5℃)、相対湿度(45〜65%)及び明暗サイクル12時間に制御された部屋にラットを収容し、試験中ずっと、ろ過した水道水、及び、実験用標準固形飼料(SAFE社、フランス)を自由に摂取させた。動物設備内の部屋の中で、ケージ1つあたりラットを4匹ずつ収容し、少なくとも5日間の順応期間を与えた。ラットは尾で個体を識別した。
【0090】
この試験において、ラットを以下のように8匹ずつ5群に分けた。
1群:媒体のみ
2群:フェノフィブラート(300mg/kg、p.o.×10日間)
3群:アスピリン(3mg/kg、p.o.×1日間)
4群:フェノフィブラート(300mg/kg、p.o.×10日間)+アスピリン(3mg/kg、p.o.×1日間)
5群:フェノフィブラート(30mg/kg、p.o.×1日間)
【0091】
順応期間終了後、ラットは尾で個体を識別し、箱10個に4匹ずつ分けた。
【0092】
その後、体重を測定し、連続して10日間、媒体(メチルセルロース1%水溶液)又は試験物質フェノフィブラートを1日1回経口投与して治療した。治療の最後日に、ラットに上記のアスピリンも投与して治療した。アスピリン(アセチルサリチル酸:acetyl saliclylic acid)はシグマ社(フランス)から入手し、フェノフィブラートはフルニエ・ラボラトリーズ(フランス)の供給であった。試験物質及び媒体は、投与前に毎日測定した体重に合わせて、容量5ml/kgをp.o.経路で1日1回投与した。
【0093】
治療最終日(10日目)、強制経口投与して2時間後に、ラットをイソフルランで麻酔し、ヘパリンを入れたプラスチックチューブ中に、腹大動脈から採取した血液サンプルを集めた。
【0094】
その後、得られた血液を、GPKR遠心分離機(ベックマン社、フランス)を使用して250gで10分間遠心分離し、PRP(多血小板血漿)を得た。その後、サンプルを再び2000gで10分間遠心分離して、乏血小板血漿(PPP)を得た。
【0095】
血小板を計数した後、PRPサンプルをそれぞれ、(T540 Cell Counter(ベックマン社、フランス)を使用して)必要容量の均質なPPP中に血小板6x10個/mLが含まれるように合わせた。
【0096】
Born法(Born, Nature, 1962, 194, 927−929)により、使い捨てガラスキュベット中に入れた血小板懸濁液0.3mLを濁度式凝集検出計(Chrono−Dual 440濁度式凝集検出計、ベックマンコールター社、フランス)中に配置して、37℃での回転数1100/分で撹拌し、血小板の凝集を記録した。
【0097】
試験した各PRPサンプルはいずれも、アラキドン酸[AA]によって血小板凝集が引き起こされた。
【0098】
結果を凝集の大きさで示すが、これはmm単位で測定し、最大凝集に対する割合%で表した。
【0099】
統計分析は、一方向の分散分析の後に媒体群に対する多重比較(Dunnettのt検定)(凝集量%)を実施した。等分散試験が失敗した場合には、Kruskall−Wallisの一方向の分散分析が提案された。p<0.05である場合に有意差があると考える。
【0100】
<結果>
下記表1は、異なる用量でのアスピリン単独、フェノフィブラート単独、並びに、アスピリン及びフェノフィブラートの併用による、ラット血小板凝集に及ぼす効果を示す。
【0101】
表1:ラット血小板凝集に対するex vivo効果
【0102】
【表1】

【0103】
N.B.値は平均±標準誤差として表す。は、コントロール群に対してp<0.05であることを示す。
【0104】
フェノフィブラート及びアスピリンの併用3mg/kgによれば、この両有効物質を別々に同じ濃度投与した場合と比較して、アラキドン酸(AA)濃度1mMにおいて凝集が減少した。この濃度1mMにおいて、アスピリン単独3mg/kg又はフェノフィブラート単独によっては血小板凝集は減少しなかったが、併用治療によれば、治療していないコントロールラット由来の血小板と比較して、統計的な有意差(凝集の減少45%)を示す結果が得られる。従って、血小板凝集の阻害におけるフェノフィブラート及びアスピリンの相乗的な効果が、アラキドン酸(AA)濃度1mMについて実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板凝集阻害剤、フィブラート系薬剤、及び、医薬品に許容される1つ以上の補形薬を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記血小板凝集阻害剤は、アスピリン又はクロピドグレルである
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記フィブラート系薬剤は、フェノフィブラート、又は、フェノフィブリン酸である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記血小板凝集阻害剤はアスピリン、前記フィブラート系薬剤はフェノフィブラートであり、かつ、前記医薬組成物は更なる薬理学的有効物質を含まない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記血小板凝集阻害剤はクロピドグレル、前記フィブラート系薬剤はフェノフィブラートであり、かつ、前記医薬組成物は更なる薬理学的有効物質を含まない
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
心血管疾患及び障害の予防又は治療用の薬剤の製造における、血小板凝集阻害剤、フィブラート系薬剤、及び、医薬品に許容される1つ以上の補形薬の使用。
【請求項7】
前記血小板凝集阻害剤は、アスピリン又はクロピドグレルである
ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記フィブラート系薬剤は、フェノフィブラート、又は、フェノフィブリン酸である
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
前記血小板凝集阻害剤及びフィブラート系薬剤を同時に又は連続して投与する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−507574(P2008−507574A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523071(P2007−523071)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053603
【国際公開番号】WO2006/010748
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(505199382)フルニエ ラボラトリーズ アイルランド リミテッド (8)
【Fターム(参考)】