説明

血流量およびインスリン様成長因子増加装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子増加方法

【課題】多量の炭酸ガスナノバブルによって、血流量およびインスリン様成長因子を増加させる装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子を増加させる方法を提供する。
【解決手段】浴槽1と、当該浴槽1内の浴槽水中に炭酸ガスナノバブルを発生させるためのナノバブル発生部41と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸バブルを用いた、血流量およびインスリン様成長因子増加装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子増加方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小さな直径を有する気泡(バブル)には様々な生理作用があることが知られており、現在、このような気泡を作製する技術およびその効果に対する注目が高まっている。
【0003】
上記気泡は、その直径に応じて、マイクロバブル、マイクロナノバブルおよびナノバブルに分類することができる。具体的には、マイクロバブルは、その発生時において10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは、その発生時において数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは、その発生時において数百nm以下の直径を有する気泡である。なお、マイクロバブルは、発生後の収縮運動によって、その一部がマイクロナノバブルに変化することがある。
【0004】
マイクロバブルに関しては研究が進んでおり、マイクロバブルが有する様々な生理作用が明らかにされている。例えば、マイクロバブルの生理作用として、1)牡蠣やホタテの成長促進作用、2)インスリン様成長因子−1の生産促進作用、3)血流量増加作用が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、従来から、オゾンガスからなるマイクロバブル(オゾンマイクロバブル)を利用する廃液処理装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。上記廃液処理装置では、オゾン発生装置によって作製されたオゾンガスと廃液とを、加圧ポンプを用いて混合することによって、オゾンガスからなるマイクロバブルを作製している。そして、当該マイクロバブルが廃液中の有機物と化学反応することによって、廃液中の有機物が酸化分解される。
【0006】
また、従来から、二酸化炭素からなるマイクロバブル(炭酸ガスマイクロバブル)の製造方法および製造装置が用いられている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、マイクロバブル発生装置の空気導入系に炭酸ガス容器と減圧弁とを配し、ある条件の圧力と流量とで、炭酸ガスを空気導入系へ供給することによって、二酸化炭素からなるマイクロバブルを作製することが可能であることが記載されている。なお、炭酸ガスの溶解効率は、理論量の100%に近く、使用ガスの量が少なくて良いとともに、経済的である。また、製造装置もコンパクトであることが記載されている。
【0007】
しかしながら、上述したようなマイクロバブルを用いる技術では、マイクロバブルが有する生理作用を最大限に引き出すことができないという問題点を有している。例えば、上記炭酸ガスマイクロバブルなどは、皮膚からの吸収量が低いので、インスリン様成長因子−1の生産促進作用や血流量増加作用が低いという問題点を有している。それ故、現在、マイクロバブルよりもさらに直径が小さなナノバブルに対する注目が高まっており、ナノバブルを作製するための装置およびその利用方法に対する注目が高まっている。
【0008】
例えば、従来から、液体を原料としてナノバブルを作製する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。上記作製方法は、液体中において、1)上記液体の一部を分解ガス化する工程、2)上記液体に超音波を印加する工程、または3)上記液体の一部を分解ガス化する工程および上記液体に超音波を印加する工程、からなるものである。なお、液体の一部を分解ガス化する工程として、電気分解法または光分解法を用いることができることが記載されている。
【0009】
更に、従来から、ナノバブルの利用方法、およびナノバブルを利用した各種装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。より具体的には、上記特許文献4には、ナノバブルが、浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、または静電分極の実現によって、界面活性作用および殺菌作用を示すことが記載されている。更に、特許文献4には、ナノバブルが有する界面活性作用および殺菌作用を用いて、各種物体を洗浄する技術および汚濁水を浄化する技術が記載されている。更に、特許文献4には、ナノバブルを用いて生体の疲労を回復する方法が記載されている。なお、特許文献4では、水を電気分解するとともに、当該水に超音波振動を加えることによって、ナノバブルを作製している。
【特許文献1】特開2004−321959号公報(平成16年11月18日公開)
【特許文献2】特開2006−320675号公報(平成18年11月30日公開)
【特許文献3】特開2003−334548号公報(平成15年11月25日公開)
【特許文献4】特開2004−121962号公報(平成16年4月22日公開)
【非特許文献1】岡嶋等著、「マイクロバブルの医療への応用と可能性」、クリーンテクノロジー、2007、Vol.17、No.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のナノバブル製造装置およびナノバブル製造方法では、炭酸ガスナノバブルを多量に製造することができないので、炭酸ガスナノバブルが有する生理作用(例えば、血流量増加作用およびインスリン様成長因子−1の生産促進作用など)を最大限に発揮することができないという問題点を有している。
【0011】
従来から、炭酸泉に含まれる炭酸ガスが、血流量を増加させることが広く知られている。炭酸泉に含まれる炭酸ガスの濃度が約1000ppmである温泉が欧州(例えばドイツ等)に存在し、当該温泉は各種の医学的治療に用いられている。なお、日本には、炭酸泉に含まれる炭酸ガスの濃度が約1000ppm以上である温泉は存在しない。したがって、医学的治療を目的とする場合、炭酸ガス濃度が1000ppmを超える炭酸ガスナノバブルを製造する必要があるが、上記従来のナノバブル製造装置およびナノバブル製造方法では、炭酸ガス濃度が1000ppmを超える炭酸ガスナノバブルを製造することができないという問題点を有している。
【0012】
また、炭酸ガスナノバブルの人体への効果は、炭酸ガスナノバブルの直径が1μm以下であって、数十nm前後である場合に顕著であると言われている。しかしながら、上記従来のナノバブル製造装置およびナノバブル製造方法では、人体に十分な効果を及ぼし得るほどの直径を有する炭酸ガスナノバブルを多量に製造することができないという問題点を有している。
【0013】
更に、上記従来のナノバブル製造装置およびナノバブル製造方法では、例えば、生薬由来の薬効成分または保湿剤由来の保湿成分を浴槽水に溶け込ませたあと、当該薬効成分または保湿成分を炭酸ガスナノバブルと同時に、効率よく体内に取り込ませることができないという問題点を有している。
【0014】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、多量の炭酸ガスナノバブルによって、血流量およびインスリン様成長因子を増加させる装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子を増加させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、上記課題を解決するために、浴槽と、当該浴槽内の浴槽水中に炭酸ガスナノバブルを発生させるためのナノバブル発生手段と、を備えることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、浴槽水には、粒子径が小さい炭酸ガスナノバブルが含まれている。直径の大きなバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面ではじけて消滅する。また、マイクロバブルは直径が小さな微細気泡であって、水中で縮小して、ついには消滅(完全溶解)してしまう。一方、ナノバブルは、マイクロバブルよりも更に直径が小さなバブルであって、いつまでも水の中に存在することが可能である。つまり、炭酸ガスナノバブルは、炭酸ガスマイクロバブルと比較して、浴槽水の中で安定に長時間存在することができる。したがって、炭酸ガスナノバブルを用いることによって、皮膚から体内へ多量の炭酸ガスを吸収させることができる。そして、多量の炭酸ガスを吸収させることによって、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0017】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記浴槽水は、ラジウムイオンを含んでいることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、ラジウムイオンは血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができるので、より血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0019】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記浴槽水は、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、浴槽水には、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つが含まれている。それ故。炭酸ガスナノバブルが体内に吸収されるときに、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つも同時に吸収させることができる。また、体内の血流量が増加しているので、毛細血管等を介して薬効成分および保湿成分を体内に均等に拡散させることができ、その結果、薬効成分および保湿成分の効果を上昇させることができる。
【0021】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、炭酸ガスを発生させるための炭酸ガス発生手段と、前記炭酸ガスを一時的に滞留させた後に、前記炭酸ガスの少なくとも一部を前記ナノバブル発生手段に供給する炭酸ガス滞留手段と、を備えていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、炭酸ガス発生手段から発生する炭酸ガスを炭酸ガス滞留手段に一時的に滞留させるので、ほとんど全ての炭酸ガスを、炭酸ガスナノバブル作製のために用いることができる。そして、炭酸ガスナノバブルを用いて、血流量とインスリン様成長因子を効率よく増加させることができる。
【0023】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記炭酸ガスナノバブルを前記浴槽内に乱流状態で吐出する乱流作製手段を備えていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、乱流状態の炭酸ガスナノバブルが浴槽内に吐出される。したがって、凹凸部分を有する人体の皮膚(例えば、足の表面)から、炭酸ガスナノバブルを効果的に吸収させることができる。その結果、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0025】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、生薬から薬効成分を抽出するための薬効成分抽出槽、または保湿剤から保湿成分を抽出するための保湿成分抽出槽の少なくとも1つを備えており、前記炭酸ガスナノバブルは、前記薬効成分抽出槽または保湿成分抽出槽の少なくとも1つを経由して前記浴槽内に供給される構成であることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、薬効成分抽出槽では薬効成分が抽出され、保湿成分抽出槽では保湿成分が抽出される。そして、薬効成分および保湿成分を含んだ状態で、炭酸ガスナノバブルが浴槽内に吐出される。したがって、薬効成分および保湿成分を皮膚から吸収させることができる。
【0027】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記薬効成分抽出槽および前記保湿成分抽出槽には、ヒーターおよび温度計が備えられており、前記温度計によって測定された前記薬効成分抽出槽内および前記保湿成分抽出槽内の水温に基づいて、前記ヒーターの温度が調節されるものであることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、薬効成分抽出槽内および前記保湿成分抽出槽内の水温を調節することによって、生薬から薬効成分を抽出する効率を上げるとともに、保湿剤から保湿成分を抽出する効率を上昇させることができる。その結果、薬効成分および保湿成分の効果をより効率的に引き出すことができる。
【0029】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記生薬は、ショウブ、ユズ、トウキ、カミツレ、センキュウ、チンピ、人参、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、カミツレ、トウヒ、アロエ、ショウキョウ、カンゾウおよびケイヒからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、これら生薬の薬効を単独、または複合的に生体に及ぼすことができる。
【0031】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記保湿剤は、海藻、果物、液状ラノリン、グリセリン、カゼイン、オリーブ油、大豆油、パラフィン、ワセリン、プロピレングリコールおよびハチミツからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、これら保湿剤の保湿効果を単独、または複合的に生体に及ぼすことができる。
【0033】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度を測定するための溶存炭酸ガス計が備えられており、前記溶存炭酸ガス計の測定結果に基づいて、前記炭酸ガス滞留手段から前記ナノバブル発生手段に供給される炭酸ガスの量が調節されることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、炭酸ガス滞留手段からナノバブル発生手段に供給される炭酸ガスの量を調節することによって、浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度を所望の濃度に維持することができる。つまり、浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度が高ければ、炭酸ガス滞留手段からナノバブル発生手段に供給される炭酸ガスの量を少なくし、浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度が低ければ、炭酸ガス滞留手段からナノバブル発生手段に供給される炭酸ガスの量を多くすることができる。それによって、浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度を調節することができる。
【0035】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、前記浴槽水の温度を測定するための浴槽用温度計が備えられており、前記浴槽用温度計によって測定される浴槽水の温度に基づいて、前記浴槽に供給される高温水の量が調節されることが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、浴槽内の浴槽水の温度を所望の温度に維持することができる。つまり、浴槽内の浴槽水の温度が低ければ、前記浴槽に高温水が供給され、浴槽内の浴槽水の温度が高ければ、前記浴槽への高温水の供給が中止される。その結果、浴槽水の温度を、炭酸ガスナノバブル、ラジウムイオン、薬効成分および保湿成分を吸収しやすい温度に調節することができる。
【0037】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法は、上記課題を解決するために、炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させることを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、浴槽水には、粒子径が小さい炭酸ガスナノバブルが含まれている。直径の大きなバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面ではじけて消滅する。また、マイクロバブルは直径が小さな微細気泡であって、水中で縮小して、ついには消滅(完全溶解)してしまう。一方、ナノバブルは、マイクロバブルよりも更に直径が小さなバブルであって、いつまでも水の中に存在することが可能である。つまり、炭酸ガスナノバブルは、炭酸ガスマイクロバブルと比較して、浴槽水の中で安定に長時間存在することができる。したがって、炭酸ガスナノバブルを用いることによって、皮膚から体内へ多量の炭酸ガスを吸収させることができる。そして、多量の炭酸ガスを吸収させることによって、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0039】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法では、前記浴槽水は、ラジウムイオンを含んでいることが好ましい。
【0040】
上記構成によれば、ラジウムイオンは血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができるので、より血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0041】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法では、前記浴槽水は、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0042】
上記構成によれば、浴槽水には、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つが含まれている。それ故。炭酸ガスナノバブルが体内に吸収されるときに、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つも同時に吸収させることができる。また、体内の血流量が増加しているので、毛細血管等を介して薬効成分および保湿成分を体内に均等に拡散させることができ、その結果、薬効成分および保湿成分の効果を上昇させることができる。
【0043】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法では、前記炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させるとともに、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを経口投与することが好ましい。
【0044】
上記構成によれば、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つは経口投与によって体内に吸収される。したがって、薬効成分および保湿成分を皮膚から吸収する場合と比較して、より多くの薬効成分および保湿成分を体内に吸収することができる。また、体内の血流量が増加しているので、毛細血管等を介して薬効成分および保湿成分を体内に均等に拡散させることができ、その結果、薬効成分および保湿成分の効果を、より上昇させることができる。
【0045】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法では、前記薬効成分は、ショウブ、ユズ、トウキ、カミツレ、センキュウ、チンピ、人参、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、カミツレ、トウヒ、アロエ、ショウキョウ、カンゾウおよびケイヒからなる群より選択される少なくとも1つの生薬由来の薬効成分であることが好ましい。
【0046】
上記構成によれば、これら生薬の薬効を単独、または複合的に生体に及ぼすことができる。
【0047】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加方法では、前記保湿成分は、各種海藻、各種果物、液状ラノリン、グリセリン、カゼイン、オリーブ油、大豆油、パラフィン、ワセリン、プロピレングリコールおよびハチミツからなる群より選択される少なくとも1つの保湿剤由来の保湿成分であることが好ましい。
【0048】
上記構成によれば、これら保湿剤の保湿効果を単独、または複合的に生体に及ぼすことができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子増加方法は、以上のように、炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させることによって、炭酸ガスナノバブルを皮膚から体内に吸収させる。
【0050】
それゆえ、少量しか皮膚表面から吸収されなかった炭酸ガスの量を上昇させることができるという効果を奏する。また、皮膚から吸収された炭酸ガスは毛細血管中に取り込まれることによって、全身に巡り、拡散することが可能になる。その結果、血流量およびインスリン様成長因子量を増加させることができるという効果を奏する。
【0051】
インスリン様成長因子は各種疾患(例えば、中枢神経疾患、心血管系疾患、代謝異常疾患、消化器疾患、運動器疾患、皮膚科領域疾患)に関与することが知られている。更に具体的には、中枢神経疾患としては、アルツハイマー病および認知症等を挙げることができる。また、心血管系疾患としては、慢性心不全、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞等を挙げることができる。また、代謝異常疾患としては、糖尿病、肥満および高脂血症等を挙げることができる。また、消化器疾患としては、胃潰瘍および肝機能低下症等を挙げることができる。また、運動器疾患としては、関節リウマチおよび関節炎等を挙げることができる。また、皮膚科領域疾患としては、皮膚老化および脱毛等を挙げることができる。さらに、インスリン様成長因子は赤血球産生促進作用または免疫機能活性化作用(例えば、ナチュラルキラー細胞の活性化作用)等を介して、各種疾患の病状の改善に寄与することが知られている。したがって、本発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置、並びに血流量およびインスリン様成長因子増加方法は、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることによって、これら各種疾患を治療することができるという効果を奏する。
【0052】
また、炭酸ガスナノバブルは人体の皮膚を洗浄する効果が高いので、洗顔料、シャンプー、またはボディーソープの量を減少させることもできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明の一実施形態について図1ないし図16に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0054】
〔実施の形態1〕
図1に、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置を示す。
【0055】
本実施の形態の増加装置42は、浴槽1およびナノバブル発生部41(ナノバブル発生手段)を含む。以下に、炭酸ガスナノバブルを発生させる機構と、本実施の形態の増加装置42の各構成について説明する。
【0056】
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、まず、バルブ43が開かれて、浴槽1中に浴槽水が供給される。浴槽1の水位が満水時の水位17となれば、バルブ43が閉じられて、浴槽1へ浴槽水を供給するのを止める。なお、浴槽1中に供給される浴槽水の温度は特に限定されず、適宜好適な温度の浴槽水を浴槽1中に供給すればよい。例えば、37℃〜42℃の温度に調節された浴槽水を、浴槽1中に供給することが好ましい。また、浴槽1中の浴槽水の温度を37℃〜42℃に維持するために、本実施の形態の増加装置42に、湯を沸騰させるための構成を追加することもできる。
【0057】
浴槽1中に供給された浴槽水は、浴槽1に備えられたバルブ4およびドレイン配管5によって廃棄することができる。つまり、浴槽1中に浴槽水を蓄える時には、バルブ4が閉じられ、浴槽1中の浴槽水を廃棄する時には、バルブ4が開かれる。バルブ4が開かれれば、ドレイン配管5を介して浴槽1中に蓄えられた浴槽水が廃棄される。
【0058】
浴槽1としては特に限定されないが、各種浴槽を用いることができる。例えば、家庭用、医療用、ホテル用、旅館用、温泉用の浴槽を用いることができる。浴槽1の大きさも特に限定されない。例えば、ヒトの全身が入る程度の大きさであってもよいし、ヒトの足のみが入る程度の大きさであってもよい。また、浴槽1の材料も特に限定されない。例えば、浴槽1の材料として、合成樹脂等の各種材料を用いることができる。
【0059】
収容部2中には、炭酸ガス発泡固形剤3(炭酸ガス発生手段)が投入される。そして、浴槽水と接触した炭酸ガス発泡固形剤3からは、炭酸ガスが放出される。収容部2中に投入される炭酸ガス発泡固形剤3の数としては特に限定されず、発生させたい炭酸ガスナノバブルの量に応じて、適宜必要数の炭酸ガス発泡固形剤3を収容部2中に投入すればよい。例えば、多くの炭酸ガスナノバブルを発生させたい場合には、複数の炭酸ガス発泡固形剤3を収容部2中に投入すればよい。更に具体的には、収容部2中に投入される炭酸ガス発泡固形剤3の数は、10分間に略80リットルの炭酸ガスを発生することができる数であることが好ましい。上記構成によれば、多量の炭酸ガスナノバブルを発生させることができる。
【0060】
上記炭酸ガス発泡固形剤3は特に限定されず、適宜公知の炭酸ガス発泡固形剤を用いることができる。例えば、花王株式会社製の「バブ」(商標登録)を用いることができるが、これに限定されない。炭酸ガス発泡固形剤3は、経済性および効能等を考慮して、適宜選択することができる。
【0061】
炭酸ガス発泡固形剤3から放出された炭酸ガスは、炭酸ガス滞留部6(炭酸ガス滞留手段)によって一時的に滞留される。炭酸ガス滞留部6の形および大きさは特に限定されず、炭酸ガス発泡固形剤3から放出される炭酸ガスを効率よく滞留させることができる形および大きさであればよい。例えば、炭酸ガス滞留部6の形としては、浴槽1の底面に向かって開口を有する形であることが好ましい。上記構成でありかつ、上記収容部2が炭酸ガス滞留部部6の下方に存在すれば、炭酸ガス発泡固形剤3から放出される炭酸ガスを、炭酸ガス滞留部6によって効率的に滞留させることができる。
【0062】
炭酸ガス滞留部6によって滞留された炭酸ガスは、管8を介してナノバブル発生部41へと送られる。このとき、ナノバブル発生部41へ送られる炭酸ガスの量は、管8に設けられているバルブ10の開閉動作によって調節される。つまり、バルブ10を開くことによって、ナノバブル発生部41へ炭酸ガスが供給される。一方、バルブ10を閉じることによって、ナノバブル発生部41への炭酸ガスの供給が止められる。
【0063】
管7は、浴槽1中に蓄えられた浴槽水の一部をナノバブル発生部41へと送るために設けられている。このとき、ナノバブル発生部41へと送られる浴槽水の量は、管7に設けられているバルブ9の開閉動作によって調節される。つまり、バルブ9を開くことによって、ナノバブル発生部41へ湯が供給される。一方、バルブ10を閉じることによって、ナノバブル発生部41への湯の供給が止められる。
【0064】
上述したように、ナノバブル発生部41へ炭酸ガスと浴槽水とが供給され、当該炭酸ガスと浴槽水とを用いて、炭酸ガスナノバブルが作製される。以下に、ナノバブル発生部41における炭酸ガスナノバブルの作製機構について説明する。
【0065】
ナノバブル発生部41は、気液混合循環ポンプ11、マイクロバブル発生部12および気体せん断部13を含んでいる。
【0066】
まず、管8を介して炭酸ガスがマイクロバブル発生部12中に供給されるとともに、管7を介して浴槽水がマイクロバブル発生部12中に供給される。マイクロバブル発生部12中の炭酸ガスと浴槽水とは、気液混合循環ポンプ11によって混合・せん断され、その結果、炭酸ガスナノバブルが形成される。
【0067】
上記気液混合循環ポンプ11は高揚程のポンプであればよく、適宜公知のポンプを用いることができる。具体的には、上記気液混合循環ポンプ11は、揚程40m以上の高揚程のポンプ、換言すれば4kg/cm以上の圧力で気液混合物を押し出すことができるポンプであることが好ましい。上記構成によれば、多量の炭酸ガスナノバブルを作製することができる。さらに、気液混合循環ポンプ11は、2ポールを有するポンプであることが好ましい。ポンプには、2ポールを有するポンプと4ポールを有するポンプとが存在し、2ポールを有するポンプの方が、4ポールを有するポンプと比較してトルクが安定している。したがって、より安定に多量の炭酸ガスナノバブルを作製することができる。
【0068】
マイクロバブル発生部12の形状は特に限定されないが、当該マイクロバブル発生部12中にて回転せん断流を効率よく発生させるためにも、円筒形であることが好ましい。
【0069】
マイクロバブル発生部12中の炭酸ガスおよび浴槽水には気液混合循環ポンプ11によって圧力がかけられ、その結果、マイクロバブル発生部12中に、液体(浴槽水)および気体(炭酸ガス)の混相旋回流が発生する。更に詳細には、気液混合循環ポンプ11にはインペラと呼ばれる羽根が備えられており、当該羽根を高速回転させることによって、混相旋回流が形成される。マイクロバブル発生部12の中心部には、上記混相旋回流が高速にて旋回する結果生じる気体空洞部が形成される。そして、気液混合循環ポンプ11によって更に気体空洞部に圧力を加えることによって、気体空洞部は竜巻状の細長い形状になる。その結果、より高速で旋回する回転せん断流を発生させることができる。
【0070】
上記気体空洞部に気体(例えば、炭酸ガスなど)を炭酸ガス滞留部6から自給させながら混相旋回流を高速旋回させることによって、上記混相旋回流を切断・粉砕することができる。なお、切断・粉砕は、マイクロバブル発生部12の出口近傍における、マイクロバブル発生部12の内外の気液混合物の旋回速度の差によって生じる。
【0071】
上記回転せん断流の回転速度は特に限定されないが、500〜600回転/秒であることが好ましい。なお、上記回転せん断流の回転速度は、上記羽根(インペラ)の回転速度を調節することによって設定することができる。上記構成によれば、多量の炭酸マイクロバブルを作製することができ、その結果、多量の炭酸ガスナノバブルを作製することができる。
【0072】
すなわち、マイクロバブル発生部12において、流体力学的に気液混合物の圧力を制御することによって負圧形成部から気体(例えば、炭酸ガス)を吸入し、気液混合循環ポンプ11によって上記気液混合物を高速流体運動させることによって負圧部を形成し、これによって、マイクロバブルを発生させることができる。換言すれば、気液混合循環ポンプ11によって浴槽水と炭酸ガスとを効果的に自給混合溶解し、気液混合物を圧送することによって、マイクロバブル白濁水を製造することができる。そして、マイクロバブル発生部12にて作製された炭酸マイクロバブルは、管を介して気体せん断部13に圧送される。つまり、上記マイクロバブル白濁水に圧力をかけた状態にて、当該マイクロバブル白濁水を気体せん断部13内に送り込む。このとき気液混合循環ポンプ11は高揚程のポンプであるので、揚程が40m以上であれば、4kg/cm以上の圧力をかけた状態にて、マイクロバブル白濁水を気体せん断部13内に送り込むことができる。
【0073】
気体せん断部13の形は、上記マイクロバブル発生部12よりも上面および下面の直径が短い円筒形であることが好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル発生部12にて形成された回転せん断流を気体せん断部13に圧送することによって、気体せん断部13中にて、マイクロバブル発生部12にて形成された回転せん断流をより細くすることができるとともに、回転せん断流の回転速度を上昇させることができる。その結果、マイクロバブル発生部12にて形成された炭酸ガスマイクロバブルを用いて炭酸ガスナノバブルを作製することができるとともに、超高温の極限反応場を形成することができる。超高温の極限反応場では、熱が発生されるとともに、フリーラジカルが発生される。そして、フリーラジカルは皮膚に付着し易いので、フリーラジカルを含むナノバブルは更に皮膚から吸収され易くなる。
【0074】
以上のようにして、マイクロバブル発生部12において炭酸マイクロバブルが形成された後、気体せん断部13において、上記炭酸ガスマイクロバブルを用いて炭酸ガスナノバブルが形成される。
【0075】
上記気体せん断部13にて形成された炭酸ガスナノバブルは、管14を介してナノバブル吐出口23またはナノバブル吐出口24に供給される。また、管14にはバルブ21およびバルブ22が設けられており、上記バルブ21およびバルブ23の開閉動作によって、ナノバブル吐出口23およびナノバブル吐出口24へ供給される炭酸ガスナノバブルの量が調節される。
【0076】
ナノバブル吐出口23に供給された炭酸ガスナノバブルは、第1乱流形成部25を介して浴槽1中に放出される。一方、ナノバブル吐出口24に供給された炭酸ガスナノバブルは、第2乱流形成部26を介して浴槽1中に放出される。第1乱流形成部25および第2乱流形成部26の形は炭酸ガスナノバブルを含む乱流を形成することができる形であればよく、特に限定されない。第1乱流形成部25および第2乱流形成部26としては、適宜公知の構成を用いればよい。
【0077】
図1に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、2つのナノバブル吐出口が形成されているが、ナノバブル吐出口の数は特に限定されず、炭酸ガスナノバブルを噴射したい対象の形および大きさに応じて、適宜必要な数のナノバブル吐出口を設けることができる。このとき、乱流形成部も、ナノバブル吐出口の数に応じて、適宜設けることができる。
【0078】
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置には、溶存炭酸ガス計20および溶存炭酸ガス調節部19が備えられている。溶存炭酸ガス計20は、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を測定している。上記溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度に関する情報は溶存炭酸ガス調節部19へと送られ、溶存炭酸ガス調節部19は、上記炭酸ガスの濃度に関する情報に基づいて、バルブの開閉動作を制御する。その結果、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を調節することができる。以下に、炭酸ガスの濃度の調節方法について説明する。
【0079】
まず、溶存炭酸ガス計20によって、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度が測定される。溶存炭酸ガス計20としては特に限定されず、適宜公知の溶存炭酸ガス計を用いることができる。当該溶存炭酸ガス計20の測定結果は、溶存炭酸ガス調節部19へと送られる。溶存炭酸ガス調節部19には、予め、浴槽1中の浴槽水に溶かしたい炭酸ガスの濃度が設定されている(設定値)。そして、溶存炭酸ガス調節部19は、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値以上であれば、浴槽1中の浴槽水の炭酸ガスナノバブルの量を減少させるようにバルブを動作させ、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値よりも低ければ、浴槽1中の浴槽水の炭酸ガスナノバブルの量を増加させるようにバルブを動作させる。
【0080】
なお、上記設定値としては特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、上記設定値としては、1000ppmであることが好ましい。上記濃度であれば、炭酸ガスナノバブルを効率よく皮膚から吸収することができる。その結果、体内の血流量およびインスリン様成長因子の量を増加させることができる。
【0081】
具体的には、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値以上であれば、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ16およびバルブ9を開くとともに、バルブ10を閉じる。その結果、マイクロバブル発生部12には、管7を介して浴槽水が供給されるとともに、管15を介して空気が供給される。なお、管15は、炭酸ガス以外の気体(例えば、浴室内の空気など)をマイクロバブル発生部12に供給できるように配管されている。このとき、気体せん断部13にて作製されるナノバブルは炭酸を含まないので、浴槽1中の湯に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度は、設定濃度まで減少する。
【0082】
一方、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値よりも低ければ、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ9およびバルブ10を開くとともに、バルブ16を閉じる。その結果、その結果、マイクロバブル発生部12には、管7を介して浴槽水が供給されるとともに、管8を介して炭酸ガスが供給される。このとき、気体せん断部13では、炭酸ガスナノバブルが作製されるので、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度は、設定濃度まで上昇する。以上のようにして、浴槽1中の湯に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を所望の値に調節することができる。
【0083】
なお、ナノバブル発生部41を構成している気液混合循環ポンプ11、マイクロバブル発生部12、気体せん断部13、バルブ16(ニードルバルブ)、ナノバブル吐出口23およびナノバブル吐出口24は、市販されているものを用いることができる。具体的には、株式会社 協和機設の商品を用いることができる(例えば、バビダスHYK型など)。
【0084】
また、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、図2に示すように、炭酸ガス発泡固形剤3の代わりに液化炭酸ガスボンベ60(炭酸ガス発生手段)が用いられるとともに、収容部2の上方に、ラジウムイオン溶出部53が設けられる構成であり得る。以下に、各構成について説明する。
【0085】
液化炭酸ガスボンベ60は、管57を介して散気管55に連結されている。上記管57にはバルブ56およびバルブ58が設けられており、当該バルブ56およびバルブ58によって、散気管55から吐出される炭酸ガスの量が調節されている。上記上記散気管55は、収納部2中に設けられており、当該散気管55の上方にラジウムイオン溶出部53が設けられている。
【0086】
上記液化炭酸ガスボンベ60には炭酸ガスが貯蔵されており、当該炭酸ガスは、減圧弁として機能するバルブ58によって形成される引圧によって、管57およびバルブ56を介して散気管55から吐出される。
【0087】
また、バルブ56は、溶存炭酸ガス調節部19によって開閉動作が制御される。そして、バルブ56の開閉動作を制御することによって、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を調節することができる。
【0088】
具体的には、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値以上であれば、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ56を閉じる。その結果、散気管55から炭酸ガス滞留部6へ供給される炭酸ガスの量を減少させることができるとともに、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を設定濃度まで減少させることができる。
【0089】
一方、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値よりも低ければ、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ56を開く。その結果、散気管55から炭酸ガス滞留部6へ供給される炭酸ガスの量を増加させることができるとともに、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を設定濃度まで上昇させることができる。
【0090】
なお、バルブ56の開閉動作は、バルブ9、バルブ10およびバルブ16の開閉動作と連動して制御されてもよい。具体的には、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値以上であれば、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ16およびバルブ9を開くとともに、バルブ10およびバルブ56を閉じる。その結果、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を設定濃度まで減少させることができる。一方、溶存炭酸ガス計20によって測定された炭酸ガスの濃度が上記設定値よりも低ければ、溶存炭酸ガス調節部19は、信号線18を介して、バルブ9、バルブ10およびバルブ56を開くとともに、バルブ16を閉じる。その結果、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を設定濃度まで上昇させることができる。
【0091】
ラジウムイオン溶出部53は、収納部51および当該収納部51中に収納されたラジウム鉱石52を含む。
【0092】
収納部51はラジウム鉱石52を収納し得るものであればよく特に限定されない。収納部51は、収納部51の下方に設けられる散気管55によって放出される炭酸ガスがラジウム鉱石52と十分に接触して、その結果、ラジウムイオンが浴槽1中の湯の中に容易に溶出することができるような構造であることが好ましい。例えば、収納部51の構造としては、樹脂またはステンレスからなる容器であって、当該容器の内部と外部とを繋ぐ多くの開口を有する容器を用いることが好ましい。
【0093】
ラジウム鉱石52としては特に限定されず、自然界に存在するラジウム鉱石であって、放射線を発生するラジウム鉱石を用いることができる。ラジウム鉱石52の形状または性能等も特に限定されず、適宜、価格および産地に基づいて選択すればよい。具体的には、ラジウム鉱石52としては、黄麦堂株式会社製の「ラジウムボール」(商標登録)、株式会社ムース製の「玉川の鉱石」(商標登録)、または、株式会社エヌ・エス・ティー製の「ラジウム健康の湯」(商標登録)等を用いることができる。
【0094】
上記ラジウム鉱石52に含まれるラジウム量は、例えば、堀場製作所製の「Radi」(商標登録)によって測定することができる。したがって、好適な放射線を発生させることができるラジウム鉱石を、上記ラジウム鉱石52として用いればよい。
【0095】
例えば、ラジウム鉱石52として直径約1cmのラジウムボールを用いれば、当該ラジウム鉱石52によって、毎時0.601マイクロシーベルトの放射線を発生させることができる。医療効果のある湯治湯として有名な秋田県玉川温泉にはラジウムが含まれており、当該ラジウムによって、毎時0.734マイクロシーベルトの放射線が発生している。したがって、上記構成によれば、医療効果がある湯治湯に近い量の放射線を発生させることができる。秋田県玉川温泉は、他の温泉地とは異なり、療養・静養を目的とした湯治湯である。秋田県玉川温泉は山奥にあるため、冬季は営業を中止している。しかしながら、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置によれば、季節に関係なく、容易に炭酸ガスナノバブルを用いて治療を行うことができる。
【0096】
以下に、本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置について、複数の別の実施の形態について説明する。なお、先に説明した実施の形態と同じ構成については同じ符号を付け、その詳細な説明を省略する。
【0097】
〔実施の形態2〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態1」にて説明した構成と、pH計28およびpH調節部27が設けられている点が異なる。
【0098】
具体的には、図3および図4に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、溶存炭酸ガス調節部19の代わりにpH調節部27が設けられているとともに、溶存炭酸ガス計20の代わりにpH計28が設けられている。
【0099】
浴槽1中の浴槽水の溶存炭酸ガス濃度が高いほど、浴槽水のpH値は低くなる。したがって、pH計28を用いれば、浴槽1中の浴槽水の溶存炭酸ガス濃度を検出することができる。
【0100】
pH計28は特に限定されず、適宜公知のpH計を用いればよい。また、上述したように、浴槽1中の浴槽水の溶存炭酸ガス濃度と、湯のpH値とは相関関係があることが知られている。したがって、予め、相関関係のデータを準備するとともに、当該データをpH調節部27に格納しておけば、溶存炭酸ガス濃度を浴槽水のpH値に基づいて調節することが可能になる。なお、上記相関関係のデータは、周知の方法によって実験を介して得ることができる。
【0101】
pH調節部27は、浴槽水のpH値、換言すれば溶存炭酸ガス濃度に基づいて、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を調節する。このとき、pH調節部27は、バルブ9、バルブ10、バルブ16およびバルブ56の開閉動作によって、浴槽1中の浴槽水に溶け込んでいる炭酸ガスの濃度を調節する。各バルブの開閉動作の制御については「実施の形態1」にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0102】
〔実施の形態3〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態1」にて説明した構成に対して、1つのナノバブル吐出口が設けられるとともに、乱流形成部が削除されている。
【0103】
具体的には、図5および図6に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、ナノバブル発生部41にて作製された炭酸ガスナノバブルは、1箇所(ナノバブル吐出口23)から浴槽1中に放出されたあと、浴槽1内に充満する。
【0104】
したがって、上記構成によれば、増加装置42の構成を簡略化することができる。また、上記構成によれば、入浴することによって全身から炭酸ガスナノバブルを吸収することができ、その結果、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることができる。
【0105】
〔実施の形態4〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態1」にて説明した構成に対して、生薬31が充填された収容容器32が入っている抽出槽30が設けられている。
【0106】
抽出槽30の設置場所は特に限定されないが、浴槽1の外部であることが好ましい。上記構成によれば、抽出槽30が浴槽1の外部に別に設けられていることによって、薬効成分の抽出効率を高めることができる。つまり、薬効成分の抽出効果を最大限にする条件は、人体にとって有害である場合がある(例えば、高温処理など)。しかしながら、浴槽1と抽出槽30とを別々に設ければ、浴槽1内の条件を人体にとって最適な条件に設定することができるとともに、抽出槽30内の条件を薬効成分の抽出に最適な条件に設定することができる。その結果、血流量およびインスリン様成長因子の増加効果を上げることができる。
【0107】
収容容器32の形状は、生薬31の薬効成分を抽出し易い形状であればよく、特に限定されない。例えば、収容容器32の形状は網目状の袋であることが好ましい。
【0108】
また、上記収容容器32内に充填される生薬31は特に限定されず、目的に応じて適宜公知の生薬を用いることができる、例えば、生薬31は、ショウブ、ユズ、トウキ、カミツレ、センキュウ、チンピ、人参、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、カミツレ、トウヒ、アロエ、ショウキョウ、カンゾウおよびケイヒからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0109】
具体的には、図7および図8に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、バルブ29を開くとともに、バルブ21およびバルブ22を閉じる。その結果、ナノバブル発生部41にて作製された炭酸ガスナノバブルを含む湯は、抽出槽30中に供給される。抽出槽30では、生薬31の薬効成分が、炭酸ガスナノバブルを含む湯へと抽出される。そして、薬効成分および炭酸ガスナノバブルを含む湯は、管61を介して浴槽1へと供給される。
【0110】
上記構成によれば、炭酸ガスナノバブルが皮膚から吸収されるときに、薬効成分も同時に皮膚から吸収される。そして、皮膚から吸収された薬効成分は、毛細血管内に取り込まれることによって、全身に巡り、拡散することができる。その結果、全身に薬理効果を及ぼすことができる。従来、経口剤または注射等によって、医薬品の薬効成分を全身に拡散させるのが一般的な方法であったが、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置であれば、薬効成分および炭酸ガスナノバブルの両方を同時に、炭酸ガスナノバブルが吸収され易い条件にて皮膚から吸収させることができる。
【0111】
〔実施の形態5〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態1」にて説明した構成に対して、保湿剤34が充填された収容容器32が入っている抽出槽30が設けられている。
【0112】
抽出槽30の設置場所は特に限定されないが、浴槽1の外部であることが好ましい。上記構成によれば、抽出槽30が浴槽1の外部に別に設けられていることによって、保湿成分の抽出効率を高めることができる。つまり、保湿成分の抽出効果を最大限にする条件は、人体にとって有害である場合がある(例えば、高温処理など)。しかしながら、浴槽1と抽出槽30とを別々に設ければ、浴槽1内の条件を人体にとって最適な条件に設定することができるとともに、抽出槽30内の条件を保湿成分の抽出に最適な条件に設定することができる。その結果、血流量およびインスリン様成長因子の増加効果を上げることができる。
【0113】
収容容器32の形状は、保湿剤34の保湿成分を抽出し易い形状であればよく、特に限定されない。例えば、収容容器32の形状は網目状の袋であることが好ましい。
【0114】
また、上記収容容器32内に充填される保湿剤34は特に限定されず、目的に応じて適宜公知の生薬を用いることができる、例えば、保湿剤34は、各種海藻、各種果物、液状ラノリン、グリセリン、カゼイン、オリーブ油、大豆油、パラフィン、ワセリン、プロピレングリコールおよびハチミツからなる群より選択される少なくとも1つの保湿剤であることが好ましい。
【0115】
具体的には、図9および図10に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、バルブ29を開くとともに、バルブ21およびバルブ22を閉じる。その結果、ナノバブル発生部41にて作製された炭酸ガスナノバブルを含む湯は、抽出槽30中に供給される。抽出槽30では、保湿剤34の保湿成分が、炭酸ガスナノバブルを含む湯へと抽出される。そして、保湿成分および炭酸ガスナノバブルを含む湯は、管61を介して浴槽1へと供給される。
【0116】
上記構成によれば、炭酸ガスナノバブルが皮膚から吸収されるときに、保湿成分も同時に皮膚から吸収される。そして、皮膚から吸収された保湿成分は、毛細血管内に取り込まれることによって、全身に巡り、拡散することができる。その結果、全身に保湿効果を及ぼすことができる。従来、経口剤または注射等によって、医薬品の薬効成分を全身に拡散させるのが一般的な方法であったが、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置であれば、保湿成分および炭酸ガスナノバブルの両方を同時に、炭酸ガスナノバブルが吸収され易い条件にて皮膚から吸収させることができる。
【0117】
〔実施の形態6〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態4」または「実施の形態5」にて説明した構成に対して、更に分散管35が設けられている。
【0118】
図11および図12に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態4」または「実施の形態5」にて説明した収容容器32の下方に、分散管35が設けられている。そして、上記分散管35は、バルブ29を介して管14に連結されている。本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、バルブ29が開かれ、かつバルブ21およびバルブ22を閉じられると、ナノバブル発生部41にて作製された炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水が、抽出槽30中の収容容器32に向かって吐出される。収容容器32には生薬31または保湿剤34が充填されているので、上記構成によれば、薬効成分または保湿成分を効率よく抽出することができる。つまり、炭酸ガスナノバブルが有する洗浄力によって、薬効成分または保湿成分を効率よく抽出することができる。
【0119】
分散管35の位置としては特に限定しないが、炭酸ガスナノバブルを直接収容容器32に向かって吐出することができる位置であることが好ましい。上記構成によれば、より効率的に、薬効成分および保湿成分を抽出することができる。
【0120】
薬効成分または保湿成分を多く含む炭酸ガスナノバブルを含有する湯は、管61を介して浴槽1へと供給される。
【0121】
上記構成によれば、炭酸ガスナノバブルが皮膚から吸収されるときに、より多くの薬効成分または保湿成分も同時に皮膚から吸収される。そして、皮膚から吸収された薬効成分保湿成分は、毛細血管内に取り込まれることによって、全身に巡り、拡散することができる。その結果、全身に対して、より確実に薬理効果または保湿効果を及ぼすことができる。
【0122】
〔実施の形態7〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態6」にて説明した構成に対して、更にヒーター36が設けられている。
【0123】
ヒーター36は抽出槽30中に設けられており、当該ヒーター36によって抽出槽30中の浴槽水が加熱され、その結果、収容容器32に充填されている生薬31または保湿剤34が加熱される。そして、生薬31または保湿剤34が加熱されることによって、これらに含まれる薬効成分または保湿成分を、より効率よく抽出することができる。
【0124】
ヒーター36としては特に限定されず、適宜公知のヒーターを用いることができる。また、上記ヒーター36を設ける位置も特に限定されず、抽出槽30中の浴槽水を加熱することができる位置であればよい。例えば、図13および図14に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、「実施の形態6」にて説明した分散管35の上方でありかつ収容容器32の下方である位置に、ヒーター36が設けられていることが好ましい。
【0125】
薬効成分または保湿成分を多く含む炭酸ガスナノバブルを含有する湯は、管61を介して浴槽1へと供給される。
【0126】
上記構成によれば、炭酸ガスナノバブルが皮膚から吸収されるときに、より多くの薬効成分または保湿成分も同時に皮膚から吸収される。そして、皮膚から吸収された薬効成分保湿成分は、毛細血管内に取り込まれることによって、全身に巡り、拡散することができる。その結果、全身に対して、より確実に薬理効果または保湿効果を及ぼすことができる。
【0127】
〔実施の形態8〕
本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置は、「実施の形態7」にて説明した構成に対して、更に、第1温度調節部37、温度計38、温度計39および第2温度調節部40が設けられている。
【0128】
図15および図16に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、抽出槽30に温度計39が設けられるとともに、抽出槽30の外部に第2温度調節部40が設けられている。温度計39、第2温度調節部40およびヒーター36は信号線44を介して信号の送受信を行い、その結果、抽出槽30内の浴槽水の温度が所望の温度に調節される。なお、抽出槽30内の浴槽水の温度は、生薬30または保湿剤34の種類に応じて適宜設定すればよい。
【0129】
具体的には、まず、温度計39によって抽出槽30内の浴槽水の温度が測定され、その測定結果が第2温度調節部40へ送られる。第2温度調節部40には予め抽出槽30内の浴槽水の設定温度が記録されている。そして、温度計39によって測定された浴槽水の温度が上記設定温度よりも高ければ、第2温度調節部40によってヒーター36の温度が下げられる。一方、温度計39によって測定された浴槽水の温度が上記設定温度よりも低ければ、第2温度調節部40によってヒーター36の温度が上げられる。上記構成によれば、生薬31または保湿剤34に応じて抽出槽30内の湯の温度を調節することによって、これらに含まれる薬効成分または保湿成分を、より効率よく抽出することができる。
【0130】
また、図15および図16に示すように、本実施の形態の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、浴槽1に温度計38が設けられるとともに、浴槽1の外部に第1温度調節部37が設けられている。温度計38、第1温度調節部37およびバルブ45は信号線18を介して信号の送受信を行い、その結果、浴槽1内の浴槽水の温度が所望の温度に調節される。なお、浴槽1内の浴槽水の温度は、適宜所望の温度に設定すればよい。例えば、浴槽1内の浴槽水の温度は、40℃以上であり42℃以下であることが好ましい。上記温度であれば、炭酸ガスナノバブルが特に発生し易いとともに、皮膚からの炭酸ガスナノバブルの吸収量が多い。したがって、血流量およびインスリン様成長因子を、より増加させることができる。
【0131】
具体的には、まず、温度計38によって浴槽1内の浴槽水の温度が測定され、その測定結果が第1温度調節部37へ送られる。第1温度調節部37には予め浴槽1内の浴槽水の設定温度が記録されている。そして、温度計38によって測定された湯の温度が上記設定温度よりも高ければ、第1温度調節部37によってバルブ45が閉じられる。その結果、浴槽1への高温の湯(例えば、上記設定温度よりも高温の湯)の供給が停止されるので、浴槽1内の湯の温度を設定温度に調節することができる。
【0132】
一方、温度計38によって測定された浴槽水の温度が上記設定温度よりも低ければ、第1温度調節部37によってバルブ45が開かれる。その結果、浴槽1への高温の湯(例えば、上記設定温度よりも高温の湯)の供給が開始されるので、浴槽1内の浴槽水の温度を設定温度に調節することができる。
【実施例】
【0133】
〔実施例1〕
本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置によって炭酸ガスナノバブルが製造されることを確認した。
【0134】
浴槽1としては、容量が200リットルのものを用い、気液混合循環ポンプ11としては、動力が三相200V×3.7KWのものを用いた。また、管15からの空気量を0.7リットル/分に設定した。また、炭酸ガス発泡固形剤3として、花王株式会社製の「バブ」(商標登録)を用いた。
【0135】
一方、本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置に対する対照には、浴槽1としては、容量が200リットルのものを用い、気液混合循環ポンプ11としては、炭相100V×0.4KWのものを用いた。また、管15からの空気量を1リットル/分に設定した。また、炭酸ガス発泡固形剤は用いなかった。
【0136】
上記装置によって作製されるバブルの直径は、LS粒度分布測定装置(BECKMAN COULTER社製)を用いて測定し、その具体的な測定方法は、上記LS粒度分布測定装置に添付のプロトコールに従った。
【0137】
図17(a)(b)に示すように、本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置では、直径が0.342μm(342nm)である炭酸ガスナノバブルが多く(体積(%)が10.6)作製されることが明らかになった。なお、図17(c)に示すように、本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置によって作製される炭酸ガスナノバブルの平均径は、0.629μm(629nm)であった。
【0138】
一方、図18(a)(b)(c)に示すように、対照実験では、炭酸ガスナノバブルが観察されなかった。
【0139】
〔実施例2〕
実施例1に示した本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置を用いて、炭酸ガスナノバブルを1日あたり約20分間、足(57歳ヒト)に対して噴射する処置を行った。なお、当該処置は、60日間行った。
【0140】
上記処置の後、インスリンの分泌量および血糖値を測定した。なお、インスリン様成長因子が増加すれば、膵臓によって分泌されるインスリンの量が増加する。したがって、インスリンの量を測定することによって、インスリン様成長因子の増減を測定することができる。
【0141】
インスリン分泌量および血糖値は、ブドウ糖負荷試験によって測定した。具体的には、75gのブドウ糖液を飲んだ後、0分後、30分後、60分後、120分後、180分後の各時間におけるインスリン分泌量および血糖値を測定した。なお、測定は、日赤病院にて周知の方法にて行った。また、対照実験としては、上記処置を行う前に、同様の実験を行った。表1および表2に、実験結果を示す。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
表1には、炭酸ガスナノバブルによる処置を行う前の測定結果を示し、表2には、炭酸ガスナノバブルによる処置を行った後の測定結果を示す。上記測定結果から、炭酸ガスナノバブルによる処置を行うことによって、インスリン量が増加するとともに血糖値が低下することが明らかになった。また、このことから、炭酸ガスナノバブルによる処置を行うことによって、インスリン様成長因子が増加していることが明らかになった。
【0145】
〔実施例3〕
実施例1に示した本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置を用いて、炭酸ガスナノバブルを1日あたり約20分間、足に対して噴射する処置を行った。なお、当該処置は、60日間、3人の被験者に対して行った(表中における「番号」は、各被験者を示す)。
【0146】
表3には、炭酸ガスナノバブルによる処置を行う前の血糖値、血圧、食事量、および体重に関する測定結果を示し、表4には、炭酸ガスナノバブルによる処置を行った後の血糖値、血圧、食事量、および体重に関する測定結果を示す。具体的には、表3に示すように、処置を行う前の空腹時血糖値は平均160mg/dlであり、処置を行う前の夕食後の血糖値は平均231mg/dlであった。一方、表4に示すように、処置を行った後の空腹時血糖値は平均141mg/dlであり、処置を行った後の夕食後の血糖値は平均127mg/dlであった。上記測定結果から、炭酸ガスナノバブルによる処置を行うことによって、血糖値が低下することが明らかになった。
【0147】
【表3】

【0148】
【表4】

【0149】
〔実施例4〕
糖尿病患者の症状を示すデータとしてヘモグロビンAlc(糖化ヘモグロビン)すなわちHbAlc(%)がある。HbAlc(%)は、糖尿病患者の長期における症状変化を示すデータである。血液中のヘモグロビンは、1〜2ヶ月で代謝されるので、HbAlc(%)は、1〜2ヶ月の血糖値の平均を示すと考えられており、HbAlc(%)の値をもって糖尿病の進行度合いが判定される。
【0150】
そこで、実施例1に示した本願発明の血流量およびインスリン様成長因子増加装置を用いて、炭酸ガスナノバブルによる処置を行うことによって、HbAlc(%)がどの程度変化するか検討した。具体的には、HbAlc(%)の値は、炭酸ガスナノバブルによる処置を行う前と、処置を行い始めてから7ヵ月後に測定した。なお、HbAlc(%)の値は、日赤病院にて周知の方法によって測定した。なお、57歳ヒトにおけるHbAlc(%)の値の変化を検討した。
【0151】
炭酸ガスナノバブルによる処置を行う前は、HbAlc(%)の値は9.4(%)であった。一方、炭酸ガスナノバブルによる処置を行い始めてから7ヵ月後には、HbAlc(%)の値は5.4(%)であった。なお、HbAlc(%)の正常値は、4.3〜5.8(%)である。また、軽度の糖尿病であれば、HbAlc(%)の値は5.8〜6.5(%)である。
【0152】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0153】
〔実施例5〕
炭酸ガスナノバブルを約20分間、足に対して噴射する処置を行った。その後、皮膚表面の1mm〜2mm内部の血管を流れる血流量を数回にわたって測定した。なお、血流量の測定は、血流量測定器(オメガフロー社製)を用いて行った。なお、具体的な測定方法は、上記血流量測定器に添付のプロトコール等にしたがって行った。
【0154】
炭酸ガスナノバブルによる処置を行った後の血流量は、炭酸ガスナノバブルによる処置を行う前の1.3〜1.6倍の血流量(単位はQ/Q0)であった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上のように、本発明では、浴槽内に蓄えられた、炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させるため、血流量およびインスリン様成長因子を増加させることが可能となる。そのため、本発明は、各種疾患(例えば、中枢神経疾患、心血管系疾患、代謝異常疾患、消化器疾患、運動器疾患、皮膚科領域疾患)の治療に用いることができるのみならず、上記疾患の治療に関わる分野に広く応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置の実施の一形態を示す模式図である。
【図2】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置の他の実施の形態を示す模式図である。
【図3】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図4】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図5】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図6】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図7】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図8】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図9】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図10】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図11】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図12】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図13】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図14】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図15】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図16】本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置のさらに他の実施の形態を示す模式図である。
【図17】(a)〜(c)は、本発明における血流量およびインスリン様成長因子増加装置によって作製される炭酸ガスバブルの直径を示すグラフである。
【図18】(a)〜(c)は、従来技術によって作製される炭酸ガスバブルの直径を示すグラフである。
【符号の説明】
【0157】
1 浴槽
2 収容部
3 炭酸ガス発泡固形剤(炭酸ガス発生手段)
4・9・10・16・21・22・29・43・45・56・58 バルブ
5 ドレン配管
6 炭酸ガス滞留部(炭酸ガス滞留手段)
7・8・14・15・57・61 管
11 気液混合循環ポンプ
12 マイクロバブル発生部
13 気体せん断部
17 水位
18・44 信号線
19 溶存炭酸ガス調節部
20 溶存炭酸ガス計
23・24 ナノバブル吐出口
25 第1乱流形成部
26 第2乱流形成部
27 pH調節部
28 pH計
30 抽出槽
31 生薬
32 収容容器
34 保湿剤
35 分散管
36 ヒーター
37 第1温度調節部
38・39 温度計
40 第2温度調節部
41 ナノバブル発生部(ナノバブル発生手段)
42 増加装置
51 収納部
53 ラジウムイオン溶出部
55 散気管
60 液化炭酸ガスボンベ(炭酸ガス発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、当該浴槽内の浴槽水中に炭酸ガスナノバブルを発生させるためのナノバブル発生手段と、を備えることを特徴とする血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項2】
前記浴槽水は、ラジウムイオンを含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項3】
前記浴槽水は、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項4】
炭酸ガスを発生させるための炭酸ガス発生手段と、
前記炭酸ガスを一時的に滞留させた後に、前記炭酸ガスの少なくとも一部を前記ナノバブル発生手段に供給する炭酸ガス滞留手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項5】
前記炭酸ガスナノバブルを前記浴槽内に乱流状態で吐出する乱流作製手段を備えていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項6】
生薬から薬効成分を抽出するための薬効成分抽出槽、または保湿剤から保湿成分を抽出するための保湿成分抽出槽の少なくとも1つを備えており、
前記炭酸ガスナノバブルは、前記薬効成分抽出槽または保湿成分抽出槽の少なくとも1つを経由して前記浴槽内に供給される構成であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項7】
前記薬効成分抽出槽および前記保湿成分抽出槽には、ヒーターおよび温度計が備えられており、
前記温度計によって測定された前記薬効成分抽出槽内および前記保湿成分抽出槽内の水温に基づいて、前記ヒーターの温度が調節されるものであることを特徴とする、請求項6に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項8】
前記生薬は、ショウブ、ユズ、トウキ、カミツレ、センキュウ、チンピ、人参、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、カミツレ、トウヒ、アロエ、ショウキョウ、カンゾウおよびケイヒからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6または7に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項9】
前記保湿剤は、海藻、果物、液状ラノリン、グリセリン、カゼイン、オリーブ油、大豆油、パラフィン、ワセリン、プロピレングリコールおよびハチミツからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6〜8の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項10】
前記浴槽内の溶存炭酸ガスの濃度を測定するための溶存炭酸ガス計が備えられており、
前記溶存炭酸ガス計の測定結果に基づいて、前記炭酸ガス滞留手段から前記ナノバブル発生手段に供給される炭酸ガスの量が調節されることを特徴とする、請求項4〜9の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項11】
前記浴槽水の温度を測定するための浴槽用温度計が備えられており、
前記浴槽用温度計によって測定される浴槽水の温度に基づいて、前記浴槽に供給される高温水の量が調節されることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加装置。
【請求項12】
炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させることを特徴とする、血流量およびインスリン様成長因子増加方法。
【請求項13】
前記浴槽水は、ラジウムイオンを含んでいることを特徴とする、請求項12に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加方法。
【請求項14】
前記浴槽水は、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを含んでいることを特徴とする、請求項12または13に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加方法。
【請求項15】
前記炭酸ガスナノバブルを含む浴槽水を皮膚に接触させるとともに、薬効成分および保湿成分の少なくとも1つを経口投与することを特徴とする、請求項12または13に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加方法。
【請求項16】
前記薬効成分は、ショウブ、ユズ、トウキ、カミツレ、センキュウ、チンピ、人参、ウイキョウ、オウゴン、オウバク、カミツレ、トウヒ、アロエ、ショウキョウ、カンゾウおよびケイヒからなる群より選択される少なくとも1つの生薬由来の薬効成分であることを特徴とする、請求項14または15に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加方法。
【請求項17】
前記保湿成分は、各種海藻、各種果物、液状ラノリン、グリセリン、カゼイン、オリーブ油、大豆油、パラフィン、ワセリン、プロピレングリコールおよびハチミツからなる群より選択される少なくとも1つの保湿剤由来の保湿成分であることを特徴とする、請求項14〜16の何れか1項に記載の血流量およびインスリン様成長因子増加方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−214207(P2008−214207A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50639(P2007−50639)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】