説明

血液培養サンプルから抗生物質を除去するための方法

1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルから抗生物質を含めた微生物増殖阻害剤を除去するための方法が提供される。この方法は、サンプルまたはサンプルを含有する培養増殖培地を、微生物増殖阻害剤を除去するが問題の微生物をサンプルまたは培養増殖培地中に残したままにする逆相吸着媒体と接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、体液標本などの生体サンプルから、抗生物質を含めた微生物増殖阻害剤を除去し、そのサンプル中の1種または複数の微生物を検出し同定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの状況において、生体液中の病原微生物の検出および同定は、可能な限り最短時間で行わなければならない。例えば、敗血症などの一部の微生物感染では、治療に利用可能な抗生物質が広範囲にわたるにも関わらず、死亡率が高いままである。患者が生存するチャンスを高めるため、感染微生物の正体(identity)が確認される前に、抗生物質または抗生物質の混合物が患者にしばしば投与される。しかし、ほとんどの場合、可能な限り最も有効な治療を実現するために、感染微生物の正体に基づいた特定の抗生物質療法レジメを可能な限り早く処方すべきである。
【0003】
典型的には、生体サンプル、例えば体液標本を、培養およびその後の分析を実施する目的で得る場合、このサンプルを対象から採取し、培養増殖培地中で、ある期間、例えば数時間インキュベートする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4174277号明細書
【特許文献2】米国特許第4632902号明細書
【特許文献3】米国特許第5624814号明細書
【特許文献4】米国特許第5314855号明細書
【特許文献5】米国特許第5897782号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分析される生体サンプルが培養増殖培地での微生物の増殖を遅らせまたは防止する可能性がある抗生物質などの阻害性薬剤を含有する場合、感染性微生物の単離および迅速な特徴付けが困難である可能性がある。そのような状況下では、サンプル中に阻害性薬剤が存在すると、アッセイにおいて偽陰性応答をもたらす可能性がある。このように、生体サンプルから抗生物質を除去するための改善された方法が、当技術分野で求められている。本明細書に開示される主題は、全体的にまたは部分的に、当技術分野におけるこれらおよびその他の要求に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される主題は、1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルから、抗生物質を含めた微生物増殖阻害剤を除去するための方法を提供する。本明細書に開示される方法は、1種または複数の微生物を含有することが疑われる血液、尿、髄液、または腹水標本を含めた体液標本などの生体サンプルを逆相吸着媒体と接触させるステップであって、前述の吸着媒体は、サンプルから、微生物増殖の阻害剤を選択的に除去するものであるステップを含む。1種または複数の微生物は、サンプル中に存在する場合、吸着媒体によって吸着されず、したがって実質的に全ての微生物がサンプル中に残されたままである。細菌などの感染微生物をサンプルまたは培養増殖培地中に残して増殖させながら、サンプルから微生物増殖の阻害剤を除去する能力は、感染微生物の迅速な単離および同定を促進させる。
【0007】
したがって、本明細書に開示される主題の一態様では、1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルから、1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、この方法は、1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルを逆相吸着媒体と接触させて、生体サンプルから1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するステップを含む。本明細書に開示される方法での使用に適した逆相吸着媒体には、限定するものではないが疎水性樹脂、マグネシウム−シリケートゲル、アルキル官能化シリカゲルを含めた官能化シリカゲル、シリカゲル、およびこれらの組合せを含めた疎水性吸着媒体が含まれる。
【0008】
別の態様では、微生物を培養するための方法が提供され、この培地は、液体栄養培地と、存在する場合には微生物増殖の阻害剤を培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含む。
【0009】
さらに別の態様では、感染微生物を体液サンプル中で増殖させ検出するための方法が提供され、この方法は、液体栄養培地と、存在する場合には微生物増殖阻害剤をサンプルまたは培養増殖培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含む培養増殖培地を提供するステップ;培養増殖培地に体液サンプルを接種するステップ;接種された培養増殖培地を、感染微生物を増殖させるのに十分な条件下で培養するステップ;および感染微生物の増殖を検出するステップを含む。いくつかの実施形態では、感染微生物の増殖を検出するステップは、感染微生物によって産生された代謝副産物を検出するステップを含む。
【0010】
別の態様では、1種または複数の微生物増殖阻害剤を含有することが疑われる生体サンプルを受容するための培養増殖容器が提供され、この容器は、培養増殖培地と、存在する場合にはサンプルまたは培養増殖培地中の1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含む。
【0011】
本明細書に開示される主題によって全体的にまたは部分的に対処される、本明細書に開示される主題のいくつかの態様について、これまで述べてきたが、その他の態様は、以下に最も良く記述される添付の実施例に関して説明が進むにつれて明らかにされよう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本明細書に開示される主題について、本明細書に開示される主題のいくつかであって全てではない実施形態が例示されている添付の実施例を参照しながら、以下により十分に記述する。本明細書に記述される、本明細書に開示される主題の多くの修正例およびその他の実施形態は、本明細書に開示される主題が関係する技術分野の当業者なら思い浮かべ、先の記述に示された教示の利益を有するであろう。したがって、本明細書に開示される主題は、開示される特定の実施形態に限定されず、修正例およびその他の実施形態は、添付特許請求の範囲内に含まれるものと理解されたい。特定の用語が本明細書で用いられるが、これらの用語は、一般的かつ記述的な意味でのみ使用され、限定を目的するものではない。
【0013】
「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲も含めた本出願で使用される場合、「1つまたは複数」を指す。したがって例えば、「サンプル」と言う場合には、文脈が逆の意味(例えば、複数のサンプル)などを明示しない限り、複数のサンプルが含まれる。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise、comprises、およびcomprising)」という単語は、文脈がその他を必要としない限り、非排他的な意味で使用される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、値を指す場合、いくつかの実施形態では指定された値から±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では1%、いくつかの実施形態では0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の変化量を包含するものとするが、そのような変化量は、開示された方法を行うのにまたは開示された組成物を用いるのに適しているからである。
【0016】
I.培養増殖培地または生体サンプルから1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するための方法
A.概論
体液標本中の細菌などの微生物の存在は、ある体積の標本を培養増殖培地に接種し、濁度の外観を観察することによって、または微生物により産生された代謝副産物を検出することによって検出することができるが、これらはどちらも微生物増殖を示すものである。しかし、1種または複数の抗菌薬が投与された対象から得られた生体サンプル中の微生物の検出および同定は難しくなる可能性がある。そのような状況下では、1種または複数の抗菌薬は、微生物と共に培養増殖培地に移される可能性がある。培養増殖培地中の1種または複数の抗菌薬の存在は、微生物増殖を阻害しまたは微生物を死滅させる可能性があり、したがって微生物の単離および同定が妨げられる。いくつかの状況下では、培養増殖培地中の抗菌薬の存在は、微生物の単離を2週間超も遅らせる可能性があり、微生物感染の診断および治療に有害になる可能性がある。さらに、例えば血液サンプルでは、問題の微生物の単離は、血清、血漿、または溶解赤血球中に含有される微生物増殖の阻害剤により、余分なインキュベーション期間を必要とする可能性もある。同様の問題は、体液が尿であるか、髄液であるか、膿瘍浸出物であるか、血清であるか、および腹水であるかなど、検査される体液のタイプに関わらず存在する。
【0017】
先に開示された方法において、生体サンプルからの抗生物質の除去は、樹脂を使用することによって実現することができる。典型的には、これらの樹脂は、ポリスチレンをベースにし、ジビニルベンゼンと架橋している。そのような樹脂は、荷電樹脂、例えばイオン交換樹脂、または非荷電樹脂にすることができる。結合される物質が負にまたは正に帯電した場合、イオン交換樹脂を使用することができる。DOWEX(商標)イオン交換樹脂(The Dow Chemical Co.、Midland、Michigan)およびAMBERLITE(商標)イオン交換ポリマー樹脂(Rohm and Haas Company、Philadelphia、Pennsylvania)を含めた様々な市販の樹脂を使用して、生体サンプルから抗生物質を除去することができる。
【0018】
生体サンプルから抗生物質を除去するための樹脂ベースの方法は、典型的には2ステッププロセスを含み、最終的には細菌に関して培養されるサンプル、例えば血液サンプルを、適切に調製された樹脂床に最初に通し、次いで、おそらくは樹脂によって抗生物質およびその他の感染物質が除去された濾液を液体増殖培地に添加して、サンプル中に存在する任意の細菌の生物学的増幅を行う。この方法は、参照によりその全体が組み込まれているMelnickらの文献(例えば、特許文献1参照)(以下、「第‘277号特許」)の対象である。この方法では、樹脂がイオン交換樹脂または非荷電樹脂であり、非イオン性界面活性剤で最初に処理しなければならず、例えば流動化しなければならない。そのような樹脂を非イオン性界面活性剤で処理しない場合、サンプル中に存在し得る任意の細菌が、サンプル中に存在し得る望ましくない抗生物質と同様に、除去される可能性がある。
【0019】
生体サンプルから抗生物質を除去するための別の樹脂ベースの方法は、参照によりその全体がそれぞれ本明細書に組み込まれているWatersらの文献(例えば、特許文献2および3参照)(以下、それぞれ「第‘902号特許」および「第‘814号特許」)に開示されている。文献(例えば、特許文献2および3参照)に開示された方法は、調製された樹脂、即ち非イオン性界面活性剤で流動化させた樹脂を増殖培地に直接添加して、増殖相中に抗生物質の除去が連続的に行われるようなステップを含み、かつMelnickらの文献(例えば、特許文献1参照)に開示された2ステッププロセスを必要としない。Watersらの文献(例えば、特許文献2および3参照)に開示された方法は、現在、標準的な樹脂ベースの抗生物質除去方法とみなされ、広く使用されている。
【0020】
生体サンプルから抗生物質を除去する別の手法は、活性炭を増殖培地中に置くステップ(例えば、Thorpeらの特許文献4参照)、または生体液を、活性化炭素繊維から形成された繊維材料に通すステップ(例えば、Chatelinらの特許文献5参照)を含む。しかし、この活性炭法は一般に、上で論じた樹脂ベースの方法ほど堅固ではないと認識されている。
【0021】
B.1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するための方法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、逆相クロマトグラフィの原理を使用することによって、液体培地でのサンプルの培養中に、血液サンプルを含めた生体サンプルから抗生物質などの微生物増殖の阻害剤およびその他の妨害物質を除去するための方法を提供する。高性能液体クロマトグラフィおよび薄層クロマトグラフィなどの標準的なクロマトグラフィ法には、順相クロマトグラフィおよび逆相クロマトグラフィが含まれる。順相クロマトグラフィでは、2つの相が確立され、不動の、即ち固定極性(親水性)相と、移動無極性(疎水性)相とが確立される。逆相クロマトグラフィでは、やはり2つの相が確立されるが、これら相は、順相クロマトグラフィに対して逆である。即ち、逆相クロマトグラフィは、移動極性(親水性)相および不動の、即ち固定無極性(疎水性)相を含む。
【0022】
抗生物質、または微生物増殖のその他の阻害剤は、逆相クロマトグラフィ分離プロセスの移動相と固定層との間で分配することができる。標的分子、例えば抗生物質が親水性であるよりも疎水性である場合、この標的分子は、主に疎水性固定相と結合することになる。本明細書に開示される主題のいくつかの実施形態では、固定相材料は、細菌増殖に使用される水ベースの媒体よりも極性が低く、即ちより疎水性である。
【0023】
したがって、本明細書に開示される主題は、1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルから、1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するための方法を提供し、この方法は:(a)逆相吸着媒体を提供するステップと;(b)1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルを逆相吸着媒体と接触させて、生体サンプルから1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するステップとを含む。
【0024】
本明細書で使用される「選択的に除去する」という用語は、存在する場合にはサンプル中の微生物を実質的に全て残したまま、生体サンプルから、1種または複数の微生物増殖阻害剤を吸着し、単離し、抽出し、またはその他の手段によって除去することを含むものとする。「実質的に全て」とは、いくつかの実施形態ではサンプル中に微生物の99%超が残る;いくつかの実施形態では98%超、いくつかの実施形態では97%超;いくつかの実施形態では95%超;いくつかの実施形態では90%超;いくつかの実施形態では85%超;いくつかの実施形態では80%超;いくつかの実施形態ではサンプル中に微生物の75%超が残ることを意味する。
【0025】
逆相吸着媒体は、疎水性樹脂、マグネシウム−シリケートゲル、アルキル官能化シリカゲル、シリカゲル、およびこれらの組合せを含むことができる。より具体的には、逆相吸着媒体は、オクチル官能化(C8)シリカゲル;オクタデシル官能化(C18)シリカゲル;CALBIOSORB(商標)(EMD Chemicals,Inc.、San Diego、California)などの疎水性樹脂;FLORISIL(登録商標)(U.S.Silica Company、Berkeley Springs、West Virginia)などのマグネシア−シリカゲル;およびSikica Gel A(Riedel−de Haen)(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)などのシリカゲルなどの疎水性逆相クロマトグラフィ材料を含むことができる。そのような吸着材料を、本明細書では「逆相吸着媒体」、「吸着剤」、または「阻害剤除去剤」とも呼ぶ。限定するものではないがブチルジメチル(C−4)シリカゲル、フェニル結合シリカゲル、およびシアノプロピル結合シリカゲルを含めたその他の逆相吸着媒体も、本明細書に開示される方法で使用することができる。しかし、必ずしも全ての疎水性吸着媒体が、本明細書に開示される方法で使用するのに適しているわけではない。本明細書に開示されるように、驚くべきことに、最良の吸着剤はいくらか親水性または極性の特徴を有することが見出された。
【0026】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、微生物が細菌であり、1種または複数の微生物増殖阻害剤が抗生物質である。より一般には、本明細書で使用される「微生物増殖の阻害剤」という文言は、1種または複数の抗生物質などの抗菌薬を含む。したがって、「微生物増殖の阻害剤」、「抗菌薬」、「阻害性薬剤」、または「阻害剤」という用語は、限定するものではないが抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、および防腐剤を含めた、微生物または病原微生物の増殖、例えば成長を防止することが意図される任意の薬剤を示すのに使用される。
【0027】
代表的な種類の抗生物質には、限定するものではないがマクロライド、セファロスポリン、テトラサイクリン、フルオロキノロンを含めたキノリン、アミノグリコシド、糖ペプチド、カルバセフェム、カルバペネム、モノバクタム、ペニシリン、スルホンアミド、ポリペプチド、およびこれらの組合せが含まれる。抗生物質のこれら一般的分類に属する代表的な抗生物質を以下に示す。
【0028】
アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、およびパロモマイシンを含むがこれらに限定されないアミノグリコシド;ゲルダナマイシンおよびヘルビマイシンを含むがこれらに限定されないアンサマイシン。ロラカルベフを含むがこれに限定されないカルバセフェム。エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、およびメロペネムを含むがこれらに限定されないカルバペネム。セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、およびセファレキシンを含むがこれらに限定されない第1世代セファロスポリン。セファクロア、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、およびセフロキシムを含むがこれらに限定されない第2世代セファロスポリン。セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、およびセフジニルを含むがこれらに限定されない第3世代セファロスポリン。セフェピムを含むがこれに限定されない第4世代セファロスポリン。テイコプラニンおよびバンコマイシンを含むがこれらに限定されない糖ペプチド。アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリトロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、およびスペクチノマイシンを含むがこれらに限定されないマクロライド。アズトレオナムを含むがこれに限定されないモノバクタム。アモキシシリン、アムピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、およびチカルシリンを含むがこれらに限定されないペニシリン。バシトラシン、コリスチン、およびポリミキシンBを含むがこれらに限定されないポリペプチド。シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、およびトロバフロキサシンを含むがこれらに限定されないキノロン。マフェニド、プロントシル、スルファセトアミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム−スルファメトキサゾール(co−トリモキサゾール(TMP−SMX))を含むがこれらに限定されないスルホンアミド。デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリンを含むがこれらに限定されないテトラサイクリン。および、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタムブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファムピン、およびチニダゾールを含むがこれらに限定されないその他の抗生物質。
【0029】
以下により詳細に示されるように、生体サンプルは、体液サンプルを含むことができる。いくつかの実施形態では、体液サンプルは、血液標本、尿標本、髄液標本、または腹水標本を含むことができる。
【0030】
C.微生物を培養するための培地
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、微生物を培養するための培地を提供し、この培地は、液体栄養培地と、存在する場合には微生物増殖の阻害剤を培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含んでいる。いくつかの実施形態では、液体栄養培地は、高浸透圧培地である。逆相吸着媒体は、疎水性樹脂、マグネシウムシリケートゲル、シリカゲル、アルキル官能化シリカゲル、およびこれらの組合せと、上述のものを含むことができる。
【0031】
したがって、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、逆相吸着媒体が増殖培地中に配置される。問題の1種または複数の微生物の培養に使用するのに適した任意の増殖培地は、本明細書に開示される方法を用いて使用することができる。増殖培地での1種または複数の微生物の培養は、当然ながら、特定のタイプの培地で増殖することになる微生物に限られる。代表的な増殖培地には、限定するものではないがBACTEC(商標)増殖培地(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)を含めた市販されている増殖培地が含まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、大豆−カゼイン消化ブロスなどの一般的な増殖培地を使用することができる。そのようなブロスは、例えば、カゼインの消化物、例えば膵液消化物と、大豆ミールの消化物、例えばパパイン消化物を水溶液中に含有することができる。当業者なら、そのような培養ブロスは、限定するものではないが酵母エキス、動物組織消化物、スクロース、デキストロース、フルクトース、アルギニン、ヘミン、メナジオン、チオール、ピリドキサルHCl(ビタミンB6)、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリアネトールスルホン酸ナトリウム(SPS)、およびこれらの組合せを含めたその他の成分も含むことができることを理解されよう。いくつかの実施形態では、増殖培地は、限定するものではないがNADまたは第V因子を含めた増殖因子を含む。そのような増殖因子は、ヘモフィルス(Haemophilus)種などの選好性微生物の回収および検出を改善するサプリメントとして使用することができる。
【0033】
本明細書に開示される培地と共に使用するのに適した代表的な好気性および嫌気性微生物には、限定するものではないがアシネトバクターバウマンニー(Acinetobacter baumannii);アシネトバクタールウォフィー(Acinetobacter lwoffii);アルカリ糞便菌(Alcaligenes faecalis);バクテロイデスフラギリス(Bacteroides fragilis);バクテロイデスブルガタス(Bacteroides vulgatus);カンジダアルビカンス(Candida albicans);カンジダ(トルロプシス)グラブラタ(Candida(Torulopsis)glabrata);ヒストリチクス菌(Clostridium histolycum);ウェルシュ菌(Clostridium perfringens);コリネバクテリウムJ−K(Corynebacterium J−K);クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus
Neoformans);エンテロバクタークロアカエ(Enterobacter cloacae);大腸菌(Escherichia coli);インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae);パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae);肺炎かん菌(Klebsiella pneumoniae);淋菌(Neisseria gonorrhoeae);髄膜炎菌(Neisseria meningitidis);プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis);プロビデンシアスチュアルティー(Providencia stuartii);緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);セラチアマルセッセンス(Serratia marcescens);黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis);ステノトロホモナス(キサントモナス)マルトフィリア(Stenotrophomonas(Xanthomonas)maltophilia);肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae);化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes);A群連鎖球菌(Group A Streptococcus);およびD群連鎖球菌(Group D Streptococcus)が含まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体は、増殖ボトル内に配置される。逆相吸着媒体は、サンプルまたは培養増殖培地をボトル内に入れる前または後に、ボトル内に配置することができる。したがって、培養増殖ボトルは、培養増殖培地、逆相吸着媒体、または培養増殖培地と逆相吸着媒体との混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、1種または複数の微生物増殖阻害剤を含有することが疑われる生体サンプルを受容するための培養増殖容器を含み、この容器は、培養増殖培地と、存在する場合には1種または複数の微生物増殖阻害剤をサンプルまたは培養増殖培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含んでいる。培養増殖容器は、ボトル、バイアル、チューブ、または生体サンプルを受容するための任意の適切な容器を含むことができる。
【0035】
培養増殖培地中にまたはある体積の培養増殖培地を含有する容器内に置いた場合、逆相吸着媒体は、いくつかの実施形態において、増殖培地を約5%から約25重量/体積%;いくつかの実施形態において、増殖培地を約10%から約20重量/体積%;いくつかの実施形態において、増殖培地を約12.5%から約17.5重量/体積%;いくつかの実施形態において、増殖培地を約15.0重量/体積%;およびいくつかの実施形態において、増殖培地を約10重量/体積%含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、培養増殖容器内に置かれたサンプル体積が、約5mLから約7mLの範囲を有する。いくつかの実施形態では、増殖バイアルまたはボトルは、サンプル体積が約10mLまでの血液が収容されるように処方される。さらにその他の実施形態では、増殖バイアルまたはボトルは、最大約25mLまたはそれ以上のサンプル体積が収容されるように処方することができる。そのような大量のサンプル体積を添加することによって、より高い検出速度およびより速い検出時間をもたらすことができる。より小さいバイアル、例えば血液標本を収容することができるバイアルは、一般に、その体積が約3mL未満であり、例えば小児患者から得られたサンプルに使用することもできる。
【0037】
D.感染微生物を体液サンプル中で増殖させ、検出するための方法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される主題は、感染微生物を体液サンプル中で増殖させ、検出するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は:(a)液体栄養培地と、存在する場合には1種または複数の微生物増殖阻害剤をサンプルまたは培養増殖培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含む培養増殖培地を提供するステップと;(b)培養増殖培地に体液サンプルを接種するステップと;(c)接種された培養増殖培地を、感染微生物を増殖させるのに十分な条件下で培養するステップと;(d)感染微生物の増殖を検出するステップとを含む。いくつかの実施形態では、液体栄養培地が高浸透圧培地である。逆相吸着媒体は、上述のように、疎水性樹脂、マグネシウムシリケートゲル、シリカゲル、アルキル官能化シリカゲル、およびこれらの組合せを含むことができる。
【0038】
生体サンプルから1種または複数の抗菌薬を吸着しまたは除去する、本明細書に開示される方法は、対象から生体サンプルを採取した直後およびサンプルを培養する前に実施することができる。そのような方法は、妨害の発生を低減させることができ、存在する場合には分析されるサンプル中の微生物の増殖を促進させることができる。
【0039】
上述の接種および培養ステップ中、サンプルは、逆相吸着媒体が入っている培養増殖ボトル内に置くことができる。ボトルは、増殖相中に連続的に撹拌することができ、それによって、逆相吸着媒体と連続的に接触する極性移動相が生成されおよび再生される。任意の特定の理論に拘泥するものではないが、微生物増殖阻害剤、例えば抗生物質と、逆相吸着媒体とを結合する推進力は、増殖培地または溶媒に曝された抗生物質分子の無極性セグメントの面積の減少と考えられる。この疎水性作用は、配列分子−極性溶媒の界面の最小化に関連したエントロピーからの自由エネルギーの減少によって支配される。このメカニズムは、標的分子、即ち1種または複数の微生物増殖阻害剤が、増殖培地の水性(極性)環境の代わりに疎水性の無極性逆相媒体に優先的に結合するよう十分な疎水特性を有するので、実現することができる。この場合も、いずれか1つの特定の理論に拘泥するものではないが、本明細書に開示される方法の効力は、「溶媒」、例えば極性が高い(親水性)、水ベースの液体細菌培養増殖培地に起因し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、感染微生物の増殖の検出は、感染微生物によって産生された代謝副産物を検出するステップを含む。そのような実施形態では、培養増殖ブロスを、本明細書で培養増殖ボトルとも呼ばれる培養増殖バイアルに、例えばBACTEC(商標)増殖ボトル(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)であってCO2で富化されたボトル、いくつかの実施形態ではCO2とN2との組合せで富化されたボトルに入れることができる。そのような培養増殖バイアルまたはボトルは、例えば、血液を含めた生体サンプル中の細菌や酵母などの微生物を培養し検出する、蛍光機器と併せて使用することができる。微生物が、増殖培地に接種されたサンプル中に存在する場合、微生物が増殖培地中の成分を代謝するときにCO2が産生されることになる。そのような実施形態では、バイアルは、微生物の増殖によって産生されるCO2の速度および量を測定することができる、化学センサを含むことができる。
【0041】
代表的な実施形態では、サンプルは、増殖培地中である期間、例えば約72時間以下インキュベートし、センサは、蛍光の増大を検出するため定期的にモニタするが、これはバイアル中に存在するCO2の量に比例するものである。バイアル内のCO2増加の速度および量によって決定される正の応答は、サンプル中に生存可能な微生物が存在することを示す。
【0042】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、生体サンプルは、体液標本を含む。体液標本は、血液、尿、髄液、または腹水を含むことができる。より具体的には、本明細書で使用される「サンプル」という用語は、生物源から得られたサンプルを含めた任意の液体または流体サンプルを含み、本明細書では生体液と呼ぶことができる。本明細書で使用される「生体液」という用語は、全血または全血成分、例えば赤血球、白血球、血小板、血清、および血漿など;腹水;尿;唾液;汗;乳;滑液;腹水;羊水;過脳脊髄液(percerebrospinal fluid);リンパ液;肺塞栓症;脳脊髄液;心膜液;頸膣サンプル;組織抽出物;細胞抽出物;および問題の1種または複数の微生物を含有することが疑われる身体のその他の構成成分を含めた生理液など、生命体を含有しまたは含有することが疑われる任意の流体を含む。生理液に加え、環境または食物生産アッセイの性能に向けた水および食品などのその他の液体サンプルが、本明細書に開示される主題と共に使用するのに適している。分析物を含有することが疑われる固体材料も、試験サンプルとして使用することができる。ある場合には、アッセイで使用される液体媒体を形成するために固体試験サンプルに修正を加えることが有益と考えられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、サンプルは、血液からの血漿の調製や粘性流体の希釈など、使用前に前処理を行うことができる。そのような処理方法は、妨害化合物の濾過、蒸留、濃縮、不活性化、および試薬の添加を含むことができる。
【0044】
サンプルは、対象から得られた任意のサンプルとすることができる。「対象」という用語は、サンプルを得ることができる生物、組織、または細胞を指す。対象は、状態または疾患の診断および/または治療などの医学的目的でヒト対象を含むことができ、また、医学的、獣医学的、または開発の目的での動物対象を含むことができる。対象は、組織培養物、細胞培養物、器官複製物、および肝細胞産生物などからのサンプル材料も含むことができる。適切な動物対象は、哺乳類および鳥類を含む。本明細書で使用される「鳥類」という用語は、限定するものではないがニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジを含む。本明細書で使用される「哺乳類」という用語は、限定するものではないが霊長類、例えばヒト、サル、および類人猿など;ウシ類、例えばウシおよび雄ウシなど;ヒツジ類、例えばヒツジなど;ヤギ類、例えばヤギなど;ブタ類、例えばブタおよび雄ブタなど;ウマ類、例えばウマ、ロバ、およびシマウマなど;野生および家飼いのネコを含むネコ類;イヌを含むイヌ類;ウサギおよび野ウサギを含むウサギ類;マウスおよびラットなどを含むげっ歯類を含む。好ましくは、対象は、哺乳類または哺乳類細胞である。より好ましくは、対象は、ヒトまたはヒト細胞である。ヒト対象には、限定するものではないが胎児、新生児、乳幼児、若年者、および成人対象が含まれる。さらに、「対象」は、状態または疾患に罹患しているまたは罹患している疑いがある患者を含むことができる。このように、「対象」および「患者」という用語は、本明細書では同義に使用される。対象は、生存可能性、分化、マーカー産生、および発現などに関する試験における、実験室またはバイオプロセス培養での細胞または細胞の収集物も指すことができる。
【0045】
本明細書に開示される方法は、疾患状況または状態の診断、予後、またはモニタに使用することができる。本明細書で使用される「診断」という用語は、疾患、障害、またはその他の医学的状態の存在、不在、重症度、または治療過程が評価される、予測プロセスを指す。本発明の目的において、診断は、治療から得られる結果を決定するための予測プロセスも含む。同様に、「診断する」という用語は、サンプル標本が状態または疾患の1つまたは複数の特徴を示すか否かを決定することを指す。「診断する」という用語は、1種または複数の微生物の存在または不存在を確立すること、または、タイプ、グレード、段階、もしくは同様の条件を含めた状態もしくは疾患の1つまたは複数の特徴を確立しもしくは他の手法で決定することを含む。本明細書で使用される「診断する」という用語は、ある形態の疾患を別の形態の疾患と区別することを含むことができる。「診断する」という用語は、状態または疾患の初期診断または検出、予後、およびモニタを包含する。
【0046】
「予後」という用語およびその派生語は、疾患または状態の経過の決定または予測を指す。疾患または状態の経過は、例えば、平均余命または生活の質に基づいて決定することができる。「予後」は、1つまたは複数の治療を行った場合および行わない場合の疾患または状態の時間的経過の決定を含む。(1種または複数の)治療が考えられる場合、予後は、疾患または状態の治療の効力を決定することを含む。
【0047】
「疾患または状態の経過をモニタする」のような「モニタする」という用語は、疾患または状態を有しまたは有することが疑われる対象から得られたサンプルの、進行中の診断を指す。
【0048】
本明細書で使用される「リスク」という用語は、特定の結果の可能性について評価する予測プロセスを指す。
【0049】
「マーカー」という用語は、サンプル中で検出された場合に疾患または状態の存在の特徴でありまたはその存在を示す、抗原を含めたタンパク質などの分子を指す。
【0050】
実施例
以下の実施例は、本明細書に開示される主題の代表的な実施形態を実施するために、当業者に指針が提供されるよう含めている。本発明の開示および当業者の一般的レベルに照らし、当業者なら、以下の実施例が単なる例示であり、本明細書に開示される主題の範囲から逸脱することなく、数多くの変更例、修正例、および変形例を用いることができることを理解することができる。以下の実施例は、例としてかつ限定することなく提供される。
【実施例1】
【0051】
概略的実験プロトコル
本明細書に開示された主題のいくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC29213(American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、Virginia)を試験生物として使用した。黄色ブドウ球菌ATCC29213を、培養物接種の前日に、5%ヒツジ血液(TSA II(商標))(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)を含むBBL(商標)TRYPTICASE(商標)大豆寒天上に筋を付けた、−70℃のフリーザストックから一晩増殖させた。プレートを逆さにし、35℃でインキュベートした。一組の培養物接種の当日、増殖物を、滅菌した綿棒でプレートから採取し、滅菌生理食塩液に懸濁させて、CRYSTAL SPEC(商標)手持ち式比濁計(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)で測定したとおり1.0マックファーランド濁度標準にした。この懸濁液を、標準好気性BACTEC(商標)培地(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)中に1×10-6に希釈し、各培養ボトルに、1cc注射器/27ゲージ針を使用してこの希釈液0.1mLを注入し、約10コロニー形成単位(CFU)/ボトルから約100CFU/ボトルの間が得られると予測された。抗菌薬を、接種直前に注射器で培養ボトルに添加した。
【0052】
抗菌原液を、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI、Wayne、Pennsylvania)の指針にしたがって予め調製し−70℃で貯蔵した。調製された各接種物の力価は、5%ヒツジ血液(TSA II(商標))血液寒天(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)を含んだBBL(商標)TRYPTICASE(商標)大豆寒天上に、注射器によって0.1mLを播くことによってなされた平板計数で確認し、次いでこれを逆さにし、35℃に設定してインキュベートした。コロニーを、翌日計数した。この特定の例では、BACTEC(商標)ボトル(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)での培養を、血液添加なしで行った。各ボトル内の全流体体積は、25mLであった。
【実施例2】
【0053】
阻害剤除去剤様の媒体調製
各阻害剤除去剤ごとに、2gを、20個の計量ボートのそれぞれに量り取り、次いで針が通されている60cc注射器のエンドセグメントを使用して、センサボトルに加えた。木製柄付き消毒綿の狭幅端部を使用して、樹脂を注射器セグメント内に押し通した。異なる計量ボートを、異なる阻害剤除去剤に使用した。7リットル(280×25mLに十分)のBBL(商標)TRYPTICASE(商標)大豆ブロス(TSB)(BD Diagnostic Systems、Sparks、Maryland)を、約30g/Lの濃度で調製した。Wheaton UNISPENSE(登録商標)液体ディスペンサ(Wheaton Science Products、Millville、New Jersey)を使用して、阻害剤吸着剤(除去剤)が入っているセンサボトルに25mL TSB/ボトルを充填した。次いでボトルに蓋をした。ボトルの4つのトレー、阻害剤除去剤の1タイプ当たり1つのトレーを、液体サイクルで、121℃で20分間オートクレーブ処理した。
【実施例3】
【0054】
代表的な逆相吸着媒体
いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体が疎水性樹脂であり、例えば、CALBIOSORB(商標)(EMD Biosciences、San Diego、California(カタログNo.206550))である。いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体がマグネシア−シリカゲルMgO 3.75 SiO2(x)H2Oであり、例えばFLORISIL(登録商標)(EMD Biosciences(カタログNo.FX0284−1))である。いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体がオクチル官能化シリカゲル[SiO]x−[CH2(CH26−CH3yであり、例えばC8−シリカゲル(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri(カタログNo.385441))である。いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体がオクタデシル官能化シリカゲル[SiO]x−[CH2(CH216−CH3yであり、例えばC18−シリカゲル(Sigma−Aldrich(カタログNo.377635))である。いくつかの実施形態では、逆相吸着媒体がシリカゲル(O=Si=O)であり、例えばシリカゲルA(Sigma−Aldrich(Riedel−de Haen、カタログNo.10081))である。
【実施例4】
【0055】
代表的な逆相吸着媒体の調製
CALBIOSORB(商標)を、60℃の蒸留水で5回洗浄した。過剰な液体を注ぎ出し、CALBIOSORB(商標)を、使用するまで4℃で保存した。FLORISIL(登録商標)を、60℃の蒸留水で5回洗浄した。過剰な液体を注ぎ出し、FLORISIL(登録商標)を、使用するまで4℃で保存した。C8−シリカゲルを無水エタノールで30分間洗浄した。エタノールを注ぎ出した後、60℃の蒸留水を使用してC8−シリカゲルを5回洗浄した。過剰な水を注ぎ出し、C8−シリカゲルを、使用するまで4℃で保存した。C18−シリカゲルを、C8−シリカゲルで使用したものと同じプロセスを使用して調製した。シリカゲルA(洗浄済み)を、60℃の蒸留水で5回洗浄した。シリカゲル(変換済み)を、最初に水の代わりに1N NaOHで洗浄し、その後、蒸留水(60℃)で5回洗浄することにより、残留NaOHを除去した。
【実施例5】
【0056】
代表的な抗生物質の調製
アジスロマイシン(AZM)、エリスロマイシンに関連した広域抗生物質を、ボトル内でmL当たり8.57μgで使用した。セフトリアキソンナトリウム(CTR)、セファロスポリンを、ボトル内でmL当たり2.86μgで使用した。ドキシサイクリンヒクレート(DOX)、テトラサイクリンを、ボトル内でmL当たり1.14μgで使用した。ガチフロキサシン(GAT)、広域フルオロキノロンを、ボトル内でmL当たり0.17μgで使用した。硫酸ゲンタマイシン(GEN)、アミノグリコシドを、ボトル内でmL当たり2.29μgで使用した。テイコプラニン(TEC)、バンコマイシンに関連した糖ペプチド抗生物質を、ボトル内でmL当たり1.14μgで使用した。
【実施例6】
【0057】
選択された抗生物質、即ち代表的な逆相吸着媒体によって選択的に除去される抗生物質を含有する培養増殖培地での、黄色ブドウ球菌の検出の結果を表1に示す。
【0058】
表1に示されるように、本明細書に開示される逆相吸着媒体のいくつかは、添加された黄色ブドウ球菌細胞を培地中で増殖させながら、培養増殖培地から抗生物質の1種または複数を除去するのに有効であった。FLORISIL(登録商標)(MgO 3.75 SiO2(x)H2O)は、最も有効な吸着媒体であることが見出され、樹脂が組み込まれた市販の培養増殖培地に十分匹敵するものであった。CALBIOSORB(商標)は、次に最も有効な吸着媒体であった。洗浄済みのシリカゲルは、AZMに対していくらか有効であったが、CTRに対しては有効でなかった。変換されたシリカゲルAは、CTRに対して有効であったが、AZMに対しては有効でなかった。C8シリカゲルは、C18シリカゲルよりも有効である。
【0059】
【表1】

【0060】

【0061】
全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、あたかも個々の刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献のそれぞれが参照により組み込まれることを具体的にかつ個別に示すかのごとく同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの特許出願、特許、およびその他の参考文献が本明細書で言及されるが、そのような参考文献は、これら文献のいずれかが当技術分野で共通の一般的知識の一部を形成するという了解を構成しないことが理解されよう。
【0062】
前述の主題について、理解を明瞭にする目的で実例および例証としていくらか詳細に述べてきたが、当業者なら、ある変更および修正を、添付の特許請求の範囲内で実施できることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルから、1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するための方法であって、
(a)逆相吸着媒体を提供するステップと、
(b)1種または複数の微生物を含有することが疑われる生体サンプルを逆相吸着媒体と接触させて、生体サンプルから1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記逆相吸着媒体は、疎水性樹脂、マグネシウム−シリケートゲル、アルキル官能化シリカゲル、シリカゲル、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性樹脂は、CALBIOSORB(商標)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マグネシウム−シリケートゲルは、以下の化学式:MgO 3.75 SiO2(x)H2Oを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルキル官能化シリカゲルは、オクチル官能化シリカゲルまたはオクタデシル官能化シリカゲルであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生体サンプルは、体液サンプルを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記体液サンプルは、血液標本、尿標本、髄液標本、および腹水標本からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物は細菌であり、前記1種または複数の微生物増殖阻害剤は抗生物質であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗生物質は、マクロライド、セファロスポリン、テトラサイクリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、糖ペプチド、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
微生物を培養するための培地であって、液体栄養培地と、存在する場合には微生物増殖阻害剤を前記培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含むことを特徴とする培地。
【請求項11】
前記液体栄養培地は、高浸透圧培地であることを特徴とする請求項10に記載の培地。
【請求項12】
前記逆相吸着媒体は、疎水性樹脂、マグネシウムシリケートゲル、シリカゲル、アルキル官能化シリカゲル、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の培地。
【請求項13】
前記疎水性樹脂は、CALBIOSORB(商標)であることを特徴とする請求項12に記載の培地。
【請求項14】
前記マグネシウムシリケートゲルは、以下の化学式:MgO 3.75 SiO2(x)H2Oを有することを特徴とする請求項12に記載の培地。
【請求項15】
前記アルキル官能化シリカゲルは、オクチル官能化シリカゲルまたはオクタデシル官能化シリカゲルであることを特徴とする請求項12に記載の培地。
【請求項16】
前記微生物は細菌であり、前記微生物増殖阻害剤は抗生物質であることを特徴とする請求項10に記載の培地。
【請求項17】
前記抗生物質は、マクロライド、セファロスポリン、テトラサイクリン、フルオロキノロン、アミノグリコシド、糖ペプチド、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の培地。
【請求項18】
感染微生物を体液サンプル中で増殖させ検出するための方法であって、
(a)液体栄養培地と、存在する場合には微生物増殖阻害剤をサンプルまたは培養増殖培地から選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含む、培養増殖培地を提供するステップと、
(b)培養増殖培地に体液サンプルを接種するステップと、
(c)接種された培養増殖培地を、感染微生物を増殖させるのに十分な条件下で培養するステップと、
(d)感染微生物の増殖を検出するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記液体栄養培地は、高浸透圧培地であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記逆相吸着材料は、疎水性樹脂、マグネシウムシリケートゲル、シリカゲル、アルキル官能化シリカゲル、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性樹脂は、CALBIOSORB(商標)であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記マグネシウムシリケートゲルは、以下の化学式:MgO 3.75 SiO2(x)H2Oを有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記感染微生物は細菌であり、前記微生物増殖阻害剤は抗生物質であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記感染微生物の増殖の検出は、感染微生物によって産生された代謝副産物を検出するステップを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
1種または複数の微生物増殖阻害剤を含有することが疑われる生体サンプルを受容するための培養増殖容器であって、培養増殖培地と、存在する場合にはサンプルまたは培養増殖培地中の1種または複数の微生物増殖阻害剤を選択的に除去することが可能な逆相吸着媒体とを含むことを特徴とする容器。

【公表番号】特表2011−503577(P2011−503577A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533202(P2010−533202)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082452
【国際公開番号】WO2009/154650
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】