説明

血管新生および/またはリンパ脈管新生を阻害する方法

プロ蛋白質転移酵素阻害剤は、蛋白質分解プロセシングおよびVEGF-CおよびVEGF-Dの活性化を減らし、血管新生および/またはリンパ脈管新生を阻害することが判明した。血管新生および/またはリンパ脈管新生を阻害するための、および患者において、腫瘍および/または網膜障害のような過剰血管新生に関連する疾患、ならびに悪性疾患の転移性拡大、黄斑変性、炎症媒介疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜障害、および乾癬のようなリンパ脈管新生に関連した疾患を治療するための方法および組成物を開示する。本発明の方法および組成物は、抗-プロ蛋白質転移酵素抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素発現を阻害するためのsiRNAよりなる群から選択されるプロ蛋白質転移酵素アンタゴニスト、ならびにプロ蛋白質転移酵素阻害剤を利用する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
血管内皮成長因子-C(VEGF-C)およびVEGF-Dは分泌型糖蛋白質であり、それぞれVEGF受容体-2(VEGFR-2)およびVEGFR-3(Achen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:548-553,1998;Joukov et al.,EMBO J.15:290-298,1996)に結合し活性化させる。VEGFR-2およびVEGFR-3は細胞表面受容体チロシンキナーゼであり、VEGFR-2は主に血管に発現していて、VEGFR-3は主にリンパ内皮に発現している(総説については、Stacker et al.,FASEB J.16:922-934,2002を参照のこと)。VEGFR-3はリンパ脈管新生(リンパ管成長)のシグナルとなり(Veikkola et al.,EMBO J.20:1223-1231,2001)、他方、VEGFR-2は血管新生(血管成長)のシグナルであると考えられている。ヒトVEGF-CおよびVEGF-Dは生体内にて血管新生およびリンパ脈管新生を共に刺激する(Byzova et al.,Blood 99:4434-4442,2002;Veikkola et al.,EMBO J.20:1223-1231,2001;Marconcini et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:9671-9676,1999;Risanen et al., Circ.Res.92:1098-1106,2003;Bhardwaj et al., Human Gene Therapy 14:1451-1462,2003;Rutanen et al.,Circulation 109:1029-1035,2004;Cao et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14389-14394,1998; Jeltsch et al.,Science 276:1423-1425,1997)。
【0002】
重要なことには、腫瘍においてVEGF-CおよびVEGF-Dによって誘導される血管新生は固形腫瘍成長および転移拡大を促進することができ、そしてこれらの成長因子によって誘導されるリンパ脈管新生は腫瘍細胞のリンパ管およびリンパ節への転移拡大を促進する(Skobe et al.,Nature Med.7:192-198,2001;Stacker et al.,Nature Med.7:186-191,2001;Mandriota et al.,EMBO J.20:672-682,2001;Karpanen et al.,Cancer Res.61:1786-1790,2001;Skobe et al.,Am.J.Pathol.159:893-903,2001)。さらに、臨床病理学的データは、蔓延しているヒト癌のある範囲においては、これらの成長因子についての役割を示している。例えば、VEGF-D発現は、結直腸癌における全体および無病生存率の双方に対して独立した予後因子であると報告されており(White et al.,Cancer Res.62:1669-1675,2002)、VEGF-C のmRNAレベルは、肺癌においてはリンパ節転移に関係しており(Niki et al.,Clin.Cancer Res.6:2431-2439,2000)、乳癌においてはリンパ管侵潤および短期無病生存率の相関がある(Kinoshita et al.,Brest Cancer Res.Treat.66:159-164,2001;総説については、Stacker et al.,FASEB J.16:922-934,2002およびStacker et al.,Nature Rev.Cancer 2:573-583,2002参照のこと)。
【0003】
VEGF-CおよびVEGF-Dは、各々、N-末端プロペプチド、C-末端プロペプチド、およびVEGFR-2およびVEGFR-3に対する結合部位を含む中枢VEGF相同性ドメイン(VHD)を有する全長型で細胞から分泌される(Joukov et al.,EMBO J.16:3898-3911,1997;Stacker et al., J.Biol.Chem.274:32127-32136,1996)。引き続いて、プロペプチドはVHDから蛋白質分解性切断を受け、高い親和性でVEGFR-2およびVEGFR-3に結合するVHDダイマーよりなる成熟型となる。VEGFR-2およびVEGFR-3に対する成熟型VEGF-Dの親和性は、各々、プロセシングされていない形態の親和性よりもほぼ290倍および40倍強く(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274:32127-32136,1999)、プロセシングによる受容体親和性の同様な増大はVEGF-Cについても観察された(Joukov et al.,EMBO J.16:3898-3911,1997)。このように、VEGF-CおよびVEGF-Dの蛋白質分解プロセシングは、これらの成長因子を活性化させるためのメカニズムである。
【0004】
プロ蛋白質転移酵素は、コンセンサス配列Arg-Xaa-(Lys/Arg)-Argの後を切断することにより前駆体蛋白質を処理するプロテアーゼのファミリーである(総説については、Nakayama, Biochem.J.327:625-635,1997参照)。このコンセンサス配列は、VEGF-CおよびVEGF-Dが切断される部位と同様である。最初に同定されたプロ蛋白質転移酵素のメンバーであるフリンは、基質アナログであるデカノイル-Arg-Val-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-RVKR-CMK)によって強力に阻害される(Steineke-Grober et al.,EMBO J.11:2407-2414,1992;Sugrue et al.,J.Gen.Virol.82:1375-1386,2001;Hallenberger et al.,Nature 360:358-361 1992)。
【発明の開示】
【0005】
(関連出願への相互参照)
本出願は、その開示を明示的にここに引用して援用する、2004年5月20日に出願された米国仮出願第60/572,469号の優先権を主張する。
【0006】
今回、プロ蛋白質転移酵素阻害剤による処理は、VEGF-CおよびVEGF-Dの蛋白質分解プロセシングおよび活性化を阻害でき、血管新生および/またはリンパ脈管新生を阻害できると判明した。
【0007】
血管新生および/またはリンパ脈管新生の阻害によって、プロ蛋白質転移酵素阻害剤は、患者において、腫瘍および/または網膜障害のような過剰な血管新生に関連する疾患、ならびに悪性腫瘍の転移拡散、黄斑変性、炎症媒介疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜障害および乾癬のようなリンパ脈管新生に関連する疾患を治療するのに有用である。
【0008】
1つの実施形態において、本発明が、血管新生またはリンパ脈管新生阻害有効量の、抗−プロ蛋白質転移酵素抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素発現を阻害するためのsiRNAよりなる群から選択されるプロ蛋白質転移酵素アンタゴニストをそれを必要とする生物に投与することを含む、血管新生またはリンパ脈管新生を阻害する方法を提供する。
【0009】
また、血管新生またはリンパ脈管新生阻害有効量の、プロ蛋白質転移酵素阻害剤、あるいは抗−プロ蛋白質転移酵素抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素発現を阻害するためのsiRNAよりなる群から選択されるアンタゴニスト、および医薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物も提供される。
【0010】
添付の図面によって示される代表的な実施形態を参照して本発明はさらに詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
多数のプロ蛋白質転移酵素阻害剤が知られている。そのような阻害剤の例はプロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメント、抗トリプシンの阻害性変異体、およびペプチジルハロアルキルケトン阻害剤を含む。プロ蛋白質転移酵素の代表的な阻害性プロセグメントは、(PC6Aとしても知られた)PC5A、(PC6Bとしても知られた)PC5B、PACE4、(PC3としても知られた)PC1、PC2、PC4、PC7およびフリンの阻害性プロセグメントを含む(Thomas,Nature Reviews Mol.Cell Biol.3(2002)753-766;Zhong et al.,J.Biol.Chem.274:33913-33920,1999)。代表的な抗トリプシンの阻害性変異体は、多数のプロ蛋白質転移酵素を阻害する天然由来の抗トリプシンから作製された変異体であるα-1抗トリプシンポートランド(Portland)である(Jean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998) 7293-7298)。代表的なペプチジルハロメチルケトン阻害剤はデカノイル-Arg-Val-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-RVKR-CMK)、デカノイル-Phe-Ala-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-FAKR-CMK)、デカノイル-Arg-Glu-Ile-Arg-クロロメチルケトン(Dec-REIR-CMK)、およびデカノイル-Arg-Glu-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-REKR-CMK)を含む(Stieneke-Grober,A.et al.,EMBO J.11(1992)2407-2414;Jean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998) 7293-7298;Garten W.et al.,Virology 72(1989) 25-31)。説明のために本発明は代表的な基質アナログであるDec-RVKR-CMKを用いた典型例を参照して記載するが、本発明はそれに限定されない。
【0012】
Dec-RVKR-CMKまたはPCの阻害性プロセグメントのようなプロ蛋白質転移酵素の阻害剤は、VEGF-CおよびVEGF-Dの活性化の阻害に用いることができ、それにより、血管新生、リンパ脈管新生および部分的にプロセシングされたまたは十分にプロセシングされたVEGF-CまたはVEGF-Dによって誘導される他の生物学的効果を阻害できる。本発明の使用のために特に関連する臨床的状況は、癌の治療におけるものであり、そこでは、これらの成長因子によって誘導される血管新生およびリンパ脈管新生は固形腫瘍成長および/または転移拡大を促進できる。しかしながら、本発明は、血管新生および/またはリンパ脈管新生が病理学、例えば、目における黄斑変性の基礎となる他の状況においても有用である。他の適用は、炎症媒介疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜障害および乾癬の治療を含む。
【0013】
VEGF-CおよびVEGF-Dの十分にプロセシングされた形態のみがVEGF受容体2(VEGFR-2)に結合し、ならびにVEGF受容体3(VEGFR-3)への増大した結合を呈するため、プロ蛋白質転移酵素阻害剤の使用により全長成長因子のプロセシングを変化させ、それにより、VEGFR-2およびVEGFR-3活性化の相対的速度を変調できる。このようにして、プロ蛋白質転移酵素阻害剤の投与をにより血管新生およびリンパ脈管新生の間のバランスに影響を生じさせることができる。
【0014】
プロ蛋白質転移酵素阻害剤は、所望の作用部位への注射のような局所的または全身投与、あるいは静脈内投与などの公知の経路によって投与することができる。阻害剤は公知の担体および/またはアジュバント、ならびに血管新生および/またはリンパ脈管新生に関連する病理学的疾患の治療用の他の活性剤と混合して投与することができる。用法・用量は当業者が決定することができる。ヒト患者の治療では、典型的な用量は体重キログラム当たり0.1mgおよび100mgの間となる。
【0015】
図1および2は、各々、Dec-RVKR-CMKで処理した後のVEGF-C-FULL-N-MycまたはVEGF-D-FULL-N-FLAGを発現する293EBNA細胞から分泌されたヒトVEGF-C(図1)およびVEGF-D(図2)のウエスタンブロット解析を示す。各図面の頂部における数字は、Dec-RVKR-CMK(mM)の濃度、およびメタノールの濃度(%v/v)を示す。種々のVEGF-CおよびVEGF-D種の同一性は左側に示す。右側の数字は、分子量マーカーの位置(kDa)を示す。
【0016】
前記した阻害剤、またはそうでなければ当業者に知られた阻害剤に加えて、中和抗体を用いてプロ蛋白質転移酵素(「標的蛋白質」)の生物学的作用(例えば、機能または発現)を阻害することもできる。本発明の1つの実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドを拮抗剤として用いる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、標的の翻訳を阻害することによって標的発現を阻害する。さらなる実施形態において、拮抗剤は小さな干渉性RNA(siRNA 、RNA干渉性核酸、RNAiとしても知られている)である。siRNAは、プロ蛋白質転移酵素をコードする遺伝子またはポリヌクレオチド(「標的遺伝子」)に相同であって、標的遺伝子の発現に干渉する、長さが典型的には21n.t.である二本鎖RNA分子である。また、後により詳細に記載するように、DNA酵素;リボザイムおよびトリプレックス形成性核酸分子を利用して、標的遺伝子発現または標的蛋白質の機能を阻害する方法も提供される。
【0017】
本発明に適した抗体は、ポリクローナル抗体でもよい。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。抗体はアイソフォーム特異的でもよい。本発明のモノクローナル抗体またはその結合断片はFab断片、F(ab)2断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fd’断片またはFv断片でもよい。ドメイン抗体(dAbs)(総説については、Holt et al.,2003,Trends in Biotechnology 21:484-490参照)もまた、本発明の方法として適している。
【0018】
公知の抗原に対する抗体を生産する種々の方法は当業者に良く知られている(例えば、Harlow & Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY参照;またWO 01/25437参照)。特に、適当な抗体は化学合成や細胞内免疫法(すなわち、イントラボディ技術)、または好ましくは、組換え発現技術によって生産することができる。抗体を生産する方法は、さらに、当該分野で良く知られたハイブリドーマ技術を含むことができる。
【0019】
本発明に従い、抗体またはその結合断片は、標的蛋白質またはその抗原性断片、好ましくは、抗体が生体内に投与された場合に抗体によって認識されるエピトープに特異的に結合することができるものとして特徴付けることができる。抗体は標的蛋白質−誘導免疫原性成分での免疫化によって動物宿主において誘導することができ、あるいは免疫細胞の試験管内免疫化(感作)によって形成することができる。抗体は、適当な細胞系が抗体をコードした適当なDNAで形質転換され、トランスフェクトされ、感染され、または形質導入される組換え系で生産することもできる。別法として、抗体は精製された重鎖および軽鎖の生化学的再構成によって構築することができる。
【0020】
抗体はヒトからのもの、あるいはヒト以外の動物、好ましくは、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびブタのような哺乳動物からのものでもよい。好ましいのはマウスモノクローナル抗体およびその抗原結合断片または部分である。加えて、キメラ抗体およびハイブリッド抗体も本発明に含まれる。キメラ抗体の生産のための技術は、例えば、Morrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855;Neuberger et al.,1984,Nature,312:604-608;およびTakeda et al.,1985,Nature,314:452-454に記載されている。ヒト治療目的では、ヒト化またはより好ましくはヒト抗体を用いる。
【0021】
さらに、単一鎖抗体もまた本発明に適する(例えば、Hustonに対する米国特許第5,476,786号および第5,132,405号;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879-5883;Ladner et al.に対する米国特許第4,946,778号;Brid,1988,Science,242:423-426およびWard et al.,1989,Nature,334:544-546)。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖および軽鎖免疫グロブリン断片をアミノ酸ブリッジを介して連結し、その結果、単一鎖ポリペプチドを得ることによって形成される。一価抗体もまた、本発明に含まれる。
【0022】
抗標的抗体の送達について多くの送達経路が当業者に知られている。例えば、直接的注射は抗体を注目する部位に送達するのに適しているであろう。また、膜内に抗体を含むリポソームを利用して、標的遺伝子発現または機能が阻害される領域にリポソームを特異的に送達することも可能である。これらのリポソームはモノクローナル抗体に加えて、次いで腫瘍部位で放出される前記したような他の治療剤を含有するように生産できる(例えば、Wolff et al.,1984,Biochem.et Biophys.Acta.802:259)。
【0023】
また、本発明は、アンチセンス核酸分子、およびそのようなアンチセンス分子を含む組成物も提供する。細胞におけるアンチセンスRNAの構成的な発現は、恐らくは翻訳の阻害またはスプライシングの妨げを介して、遺伝子発現を阻害することが知られてきた。スプライシングでの干渉は、あまり保存されていないイントロン配列の使用を可能するためより高い特異性を持ち、他種におけるホモログでは起こらずに、ある1つの種の遺伝子産物の発現を阻害することになる。
【0024】
アンチセンス成分という用語は、ある特定のmRNA分子に対してそのアンチセンスRNAが十分に相補的であり、mRNAの翻訳が阻害されるようにアンチセンスRNAとmRNAとの間に分子ハイブリダイゼーションを引き起こすようなRNA配列またはその配列をコードするDNA配列に対応する。そのようなハイブリダイゼーションは生体内条件下で起こり得る。このアンチセンス分子は、アンチセンスRNAが標的遺伝子(またはmRNA)にハイブリダイズでき、作用がスプライシング、転写または翻訳のレベルにおけるものであるかを問わず、標的遺伝子発現を阻害するように、長さが約18から30ヌクレオチドの標的遺伝子に対して十分な相補性を有するものでなければならない。本発明のアンチセンス成分は、コーディング配列、3’または5’非翻訳領域、または他のイントロン配列を含めた、標的cDNAのいくつかの部分のいずれか、あるいは標的mRNAに対してハイブリダイズできる。
【0025】
アンチセンスRNAはベクターを介する形質転換またはトランスフェクションによって細胞に送達されるが、そのベクターは宿主細胞においてアンチセンスRNAが発現されるように
プロモーターを含む適当な調節配列とアンチセンスRNAをコードするDNAが配置されたレトロウイルスベクターおよびプラスミドを包含する。一つの実施形態において、アンチセンス用に標的cDNA断片を含有するベクターの安定なトランスフェクションおよび構成的発現が達成され、あるいはそのような発現は組織または発生特異的プロモーターの制御下に置くことができる。送達はリポソームによって達成することができる。
【0026】
生体内療法での現在好ましい方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの直接的送達であり、発現ベクターに構築されたアンチセンスcDNA断片の安定なトランスフェクションの代わるものである。長さが15〜30塩基の大きさを有し、コーディング配列、3’または5’非翻訳領域、またはその他のイントロン配列を含めた、標的cDNAのいくつかの部分のいずれかに対して、あるいは標的mRNAに対してハイブリダイズ可能な配列を持つアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。標的に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドについての配列は、最も優れたアンチセンス効果を有するものとして好ましくは選択される。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列についての標的部位を支配する因子は、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性および標的配列の接近性を含む。配列は、標的蛋白質翻訳および標的関連表現型の阻害、例えば、培養中の細胞における細胞増殖の阻害を測定することによって、それらのアンチセンス活性の能力について試験管内でスクリーニングすることができる。一般にRNAのほとんどの領域(5’および3’非翻訳領域、AUG開始、コーディング、スプライス接合およびイントロン)はアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて標的とすることができることは知られている。
【0027】
好ましい標的アンチセンスオリゴヌクレオチドは、安定であり、ヌクレアーゼに対して高い抵抗性を有し、適当な薬物動態学を保有しており、それらが非毒性用量において標的組織部位に移動することを可能とし、かつ原形質膜を横切る能力を有するオリゴヌクレオチドである。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることもできる。ホスホジエステル結合ならびに複素環または糖の修飾は、効率の上昇を供することができる。ホスホロチオエートを用いて、ホスホジエステル結合を修飾する。N3’-P5’ホスホルアミデート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化させ、かつRNAに対する結合を増大させるとして記載されてきた。ペプチド核酸(PNA)結合はリボースおよびホスホジエステル骨格の完全な置換であって、ヌクレアーゼに対して安定でありRNAに対する結合親和性を増大させ、RNAse Hによる切断を可能としない。その基本的な構造は、アンチセンス成分として最適化できる修飾になじみやすい。複素環の修飾に関しては、ある種の複素環修飾は、RNAse H活性に干渉することなくアンチセンス効果を増加させることが判明した。そのような修飾の例はC-5チアゾール修飾である。最後に、糖の修飾も考えることができる。2’-O-プロピルおよび2’-メトキシエトキシリボース修飾は細胞培養において、および生体内にてヌクレアーゼに対するオリゴヌクレオチドを安定化させる。
【0028】
送達経路は、前記の基準に従って最良のアンチセンス効果を供するものであろう。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる試験管内および生体内アッセイは、カチオン性リポソームによって、レトロウイルスベクターによって媒介される送達および直接的送達が効果的であることを示した。もう一つの可能な送達態様は、標的細胞の細胞表面マーカーに対する抗体を用いた標的化である。標的に対する、またはその受容体に対する抗体はこの目的で用いることができる。
【0029】
別法として、遺伝子発現を阻害するまたは干渉する核酸配列を用いて(例えば、siRNA、リボザイム、アプタマー)、標的蛋白質をコードするRNAまたはDNAの活性を阻害または干渉することができる。
【0030】
siRNA技術は、真核生物細胞で起こり得る配列特異的転写後遺伝子抑制のプロセスに関する。一般に、このプロセスは、その配列と相同である二本鎖RNA(dsRNAという)によって誘導される特別な配列のmRNAの分解を含む。例えば、特定の一本鎖mRNA(ss mRNA)の配列に対応する長いdsRNAの発現は、そのメッセージを不安定化し、それにより、対応する遺伝子の発現に「干渉」する。従って、その遺伝子についてのmRNAの全てまたは実質的部分に対応するdsRNAを導入することによって、いずれの選択された遺伝子も抑制することができる。長いdsRNAが発現する場合、最初にそれはリボヌクレアーゼIIIによって長さが21ないし22塩基対程度の短いdsRNAオリゴヌクレオチドに処理されるようである。従って、siRNAは、比較的短い相同なdsRNAの導入または発現によって効果が生じる。事実、比較的短い相同なdsRNAの使用は、後に議論するある種の利点を有するであろう。
【0031】
哺乳動物細胞は二本鎖RNA(dsRNA)によって影響される少なくとも2つの経路を有する。siRNA(配列-特異的)経路において前記したように開始dsRNAはまず短い干渉性(si)RNAに分断される。このsiRNAは、約21ヌクレオチドのセンスおよびアンチセンス鎖を有し、各3’末端においてヌクレオチドが2塩基突出したほぼ19ヌクレオチドsiRNAを形成する。短い干渉性RNAは、特異的メッセンジャーRNAが分解のために標的化されるのを可能とする配列情報を供すると考えられる。対照的に、非特異的経路は、いずれの配列のdsRNAによっても、長さが少なくとも約30塩基対である限りは、引き起こされる。
【0032】
dsRNAが二つの酵素を活性化するために非特異的効果は生じる:活性型が翻訳開始因子eIF2をリン酸化して全ての蛋白質合成を停止させるPKR、および全てのmRNAを標的とする非特異的酵素であるRNase Lを活性化する分子を合成する2’,5’オリゴアデニル酸シンテターゼ(2’,5'-AS)である。非特異的経路はストレスまたはウイルス感染に対する宿主応答を現しており、一般には、非特異的経路の効果はよく最小化されている。意義深いことには、より長いdsRNAが非特異的経路を誘導するのに必要なようで、従って、約30塩基対よりも短いdsRNAが、RNAiによる遺伝子抑制を行うのに好ましい(Hunter et al.,1975,J.Biol.Chem.250:409-17;Manche et al.,1992,Mol.Cell.Biol.12:5239-48;Minks et al.1979,J.Biol.Chem.,254:10180-3;およびElbashir et al.,2001,Nature 411:494-8参照)。siRNAは、HeLa細胞、NIH/3T3細胞、COS細胞、293細胞およびBHK-21細胞を含めた種々の細胞型において遺伝子発現を減少させる有効な手段であることが判明し、典型的には、アンチセンス技術を用いて達成されるものよりもより低いレベルまで遺伝子の発現を減少させ、事実、頻繁に発現を完全に排除する(Bass,2001,Nature 411:428-9参照)。哺乳動物細胞において、siRNAは、典型的なアンチセンス実験で用いられる濃度の数桁の濃度において効果を発揮する(Elbashir et al.,2001,Nature 411:494-8)。
【0033】
RNAiが効果を発揮するのに用いられる二本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは、長さが30塩基対未満であり、より好ましくは、約25、24、23、22、21、20、19、18または17のリボ核酸の塩基対を含む。所望により、dsRNAオリゴヌクレオチドは3’突出末端を含んでもよい。例示的な2-ヌクレオチド3’突出はいずれのタイプのリボヌクレオチド残基から構成されていてもよく、2'-デオキシチミジン残基から構成されていてもよく、これは、RNA合成のコストを低下させ、細胞培地やトランスフェクトした細胞内でのsiRNAのヌクレアーゼに対する抵抗性を増強する(Elbashi et al.,2001,Nature 411:494-8参照)。
【0034】
50、75、100さらには500の塩基対またはそれ以上のより長いdsRNAを、本発明のある実施形態で利用することもできる。RNAiを行うためのdsRNAの例示的な濃度は約0.05nM、0.1nM、0.5nM、1.0nM、1.5nM、25nMまたは100nMであるが、処理する細胞の性質、遺伝子標的、および当業者が容易に認識できる他の因子に応じて他の濃度を利用することもできる。
【0035】
例示的には、dsRNAは試験管内で化学的に合成したり、適当な発現ベクターを用いて生体内で生産することができる。例示的な合成RNAは当該分野で知られた方法を用いて化学的に合成された21ヌクレオチドRNAを含む。合成オリゴヌクレオチドは、当該分野で知られた方法を用いて、よく脱保護され、ゲル精製される(例えば、Elbashir et al.,2001,Genes Dev.15:188-200参照)。より長いRNAは当該分野で知られたT7 RNAポリメラーゼプロモーターのようなプロモーターから転写できる。試験管内プロモーターの下流に可能な両方の向きで配置された単一RNA標的は、標的の両方の鎖を転写して、所望の標的配列のdsRNAオリゴヌクレオチドを作製する。前記RNA種のいずれも、標的核酸において表される核酸配列の一部を含むように設計される。
【0036】
オリゴヌクレオチドの設計において利用する特異的な配列は、標的の発現された遺伝子メッセージ内に含まれるヌクレオチドのいずれかの連続配列であろう。当該分野で知られたプログラムおよびアルゴリズムを用いて、適当な標的配列を選択することができる。加えて、特定の一本鎖核酸配列の二次的構造を予測するように設計されたプログラムを利用し、折り畳まれたmRNAから露出した一本鎖領域で配列選択が起こるようにすることにより、最適な配列を選択することができる。適当なオリゴヌクレオチドを設計するための方法および組成物は、例えばここにその内容を引用して援用する米国特許第6,251,588号に見出すことができる。
【0037】
mRNAは、一般には、リボヌクレオチドの配列内での蛋白質合成を指令するための情報を含む直線状分子と考えられるが、ほとんどのmRNAは多数の二次および三次構造を含むことが示されている。RNAにおける二次構造エレメントは、ほとんどが、同一RNA分子の異なる領域の間でのワトソン-クリックタイプの相互作用によって形成される。重要な二次構造エレメントは、分子内二本鎖領域、ヘアピンループ、二重鎖RNAにおける膨らみ、および内部ループを含む。二次構造エレメントが相互に、あるいは一本鎖領域と接触するようになってより複雑な三次元構造を生じる場合に、三次構造エレメントが形成される。多数の研究者は、非常に多数のRNA二本鎖構造の結合エネルギーを測定しており、RNAの二次構造を予測するのに用いることができる規則のセットを導いている(例えば、Jaeger et al.,1989,Proc.Napl.Acad.Sci.USA 86:7706;およびTurner et al.,1988,Annu.Rev.Biophys. Biophys.Chem.17:167参照)。この規則はRNA構造エレメントの同定において有用であり、そして特に、siRNA、リボザイムまたはアンチセンス技術において標的とするmRNAの好ましいセグメントを表す一本鎖RNA領域を同定するのに有用である。従って、標的mRNAの好ましいセグメントは、dsRNAオリゴヌクレオチドを媒介するsiRNAの設計、ならびに本発明の適当なリボザイムおよびハンマーヘッドリボザイム組成物の設計のために同定できる(後記参照)。
【0038】
dsRNAオリゴヌクレオチドは、当該分野で知られたリポソームのような担体組成物、例えば、接着性細胞系についての製造業者によって記載されたリポフェクタミン2000(Life Technologies)を用いる異種標的遺伝子でのトランスフェクションによって細胞に導入できる。内因性遺伝子を標的化するためのdsRNAオリゴヌクレオチドのトランスフェクションは、オリゴフェクタミン(Life Technologies)を用いて行うことができる。哺乳動物細胞のトランスフェクション効率は、hGFPをコードしたpAD3との共トランスフェクション後に蛍光顕微鏡によりチェックできる(Kehlenback et al.,1998,J.Cell Biol.141:863-74)。siRNAの有効性は、dsRNAの導入の後に多数のアッセイのいずれかによって評価できる。これらは、新しい蛋白質合成が抑制され内在性プールのターンオーバーが十分である時間の後の標的遺伝子産物を認識する抗体を用いたウエスタンブロット分析、逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応、および存在する標的mRNAレベルを決定するためのノーザンブロット分析を含む。
【0039】
siRNA技術のさらなる組成物、方法および適用は、ここに引用して援用する米国特許出願第6,278,039号、第5,723,750号および第5,244,805号に提供される。
【0040】
リボザイムはRNAの特異的切断を触媒できる酵素RNA分子である。(総説については、Rossi,1994,Current Biology 4:469-471参照)。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、それに続くヌクレオチド内分解切断事象を含む。リボザイム分子の組成物は、好ましくは、標的mRNAに相補的な1以上の配列、およびmRNA切断を担うよく知られた触媒配列、または機能的に同等な配列を含む(例えば、ここに引用してその全体を援用する米国特許第5,093,246号参照)。標的mRNA転写体を触媒により切断するように設計されたリボザイム分子を用いて、主題の対象標的mRNAの翻訳を妨げることができる。
【0041】
部位特異的認識配列においてmRNAを切断するリボザイムを用いて標的mRNAを破壊できるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAとで相補的な塩基対を形成するフランキング領域によって指示される位置においてmRNAを切断する。好ましくは、標的mRNAは二つの塩基の以下の配列:5’-UG-3’を有する。ハンマーヘッドリボザイムの構築および生産は当該分野で良く知られており、その内容をここに引用して援用するが、Haseloff and Gerlach,1988,Nature 334;585-591;およびPCT出願番号WO 89/05852により十分に記載されている。ハンマーヘッドリボザイム配列はトランスファーRNA(tRNA)のような安定なRNAに埋め込んで生体内での切断効率を増加させることができる(Perriman et al.,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6175-79;De Feyter, and Gaudron, Methods in Molecular Biology, Vol.74,Chapter 43,“Expressing Ribozymes in Plants”, Edited by Turner P.C, Humana Press Inc.,Totowa,N.J.)。特に、RNAポリメラーゼIIIを媒介としたtRNA融合リボザイムの発現は当該分野でよく知られている(Kawasaki et al.,1998,Nature 393:284-9;Kuwabara et al.,1998,Nature Biotechnol.16:961-5;およびKuwabara et al.,1998,Mol.Cell 2:617-27;Koseki et al.,1999,J.Virol 73:1868-77;Kuwabara et al.,1999,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:1886-91;Tanabe et al., 2000,Nature 406:473-4参照)。典型的には、与えられた標的cDNA配列内には多数の潜在的ハンマーヘッドリボザイム切断部位がある。好ましくは、リボザイムは、切断認識部位を標的mRNA-5’末端近くに位置させて効率を増大させ、非機能的mRNA転写体の細胞内蓄積を最小化させる。さらに、標的mRNAの異なる部分をコードする標的に位置したいずれの切断認識部位の使用も、一つまたは他の標的遺伝子の選択的標的化を可能とするであろう。
【0042】
遺伝子標的化リボザイムは、必ず、二つの領域に対して相補的なハイブリダイジング領域、標的mRNAの長さが少なくとも5の各々、好ましくは各6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20連続ヌクレオチドを含む。加えて、リボザイムは、標的センスmRNAを自己触媒的に切断する高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を保有する。
【0043】
また、本発明のリボザイムは、(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られた)Tetrahymena thermophilaに天然に生じ、Zaug, et al.,1984,Science,224:574-578;Zaug, et al., 1986, Science 231:470-475;Zaug, et al., 1986,Nature 324:429-433;公開された国際特許出願No.WO 88/04300およびBeen, et al.,1986,Cell 47:270-216に広範囲に記載されているもののようなRNAエンドリボヌクレアーゼ(“Cech型のリボザイム”)も含む。Cech型のリボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズし、しかるのち、標的RNAの切断が起こる8つの塩基対活性部位を有する。本発明は、標的遺伝子または核酸配列に存在する8つの塩基対活性部位配列を標的とするCech型のリボザイムを含む。
【0044】
リボザイムは(例えば、安定性の改善や標的化等のために)修飾されたオリゴヌクレオチドから構成することができ、生体内で標的遺伝子を発現する細胞に送達される必要がある。送達の好ましい方法は、トランスフェクトされた細胞が内在性標的メッセージを破壊し、翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを生じるように、強力な構成的プロモーターの制御下にあるリボザイムを「コードする」DNAコンストラクトを用いることができる。リボザイムは、アンチセンス分子とは異なり、触媒であるため、より低い細胞内濃度が効率で必要とされる。
【0045】
ある実施形態において、リボザイムは、まずRNAiによる効果的なノックダウンを引き起こすのに十分な配列部分を同定することによって設計できる。次いで、同一配列部分をリボザイムに取り込むことができる。本発明のこの態様において、リボザイムまたはsiRNAの遺伝子-標的部分は、標的核酸の少なくとも5、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20以上の連続ヌクレオチドの実質的に同一の配列である。
【0046】
長い標的RNA鎖において、かなりの数の標的部位はリボザイムに接近できない。なぜならば、それらは二次または三次構造内に隠れるからである(Birikh et al.,1997,Eur.J.Biochem.245:1-16)。標的RNAの接近性の問題を克服するためには、典型的にはコンピュータによる二次構造予測を用いて、最も一本鎖であるような、あるいは「開いた」立体配置を有する標的を同定する(Jaeger et al.,1989,Methods Enzymol.183:281-306参照)。他のアプローチは、莫大な数の候補ハイブリダイジングオリゴヌクレオチド分子を評価することを含む二次構造予測に対する系列的なアプローチを利用する(Milner et al.,1997,Nat.Biotechnol.15:537-41;およびPatzel and Sczakiel,1998,Nat.Biotechnol.16:64-8参照)。加えて、その内容をここに引用して援用する米国特許第6,251,588号は、オリゴヌクレオチドプローブ配列を評価して、標的核酸配列へのハイブリダイゼーションに対する能力を予測する方法を記載する。本発明の方法は、一本鎖であると予測される標的mRNA配列の好ましいセグメントを選択するためのそのような方法の使用、さらには、本発明のsiRNAオリゴヌクレオチドおよびリボザイム双方の設計において、好ましくは標的mRNAの約10〜20連続ヌクレオチドを含む同一または実質的に同一の標的mRNA配列の便宜な利用を提供する。
【0047】
別法として、標的遺伝子発現は、遺伝子の調節領域(すなわち、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化して、身体中の標的細胞における遺伝子の転写を妨げる三重ラセン構造を形成することによって低下させることができる(一般に、Helene,C.1991,Anticancer Drug Des.6:569-84;Helene, C, et al.,1992,Ann.N.Y.Acad.Sci.,660:27-36;およびMaher,L.J.,1992,Bioassays,14:807-15参照)。
【0048】
転写の阻害のために三重ラセン形成で用いるべき核酸分子は、好ましくは、一本鎖であって、デオキシリボヌクレオチドで構成される。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、フーグスチーン塩基対合規則を介して三重ラセン形成を促進する必要があり、概してプリンまたはピリミジンいずれかの大きいストレッチが二重鎖の一つの鎖に存在することが必要である。ヌクレオチド配列はピリミジンを基本とすることができ、その結果、TATおよびCGCトリプレットが三重ラセンの3つの会合した鎖を横切ることとなる。ピリミジンリッチな分子は、その鎖に対して平行な向きの二重鎖の単一鎖のプリンリッチな領域に対して塩基相補性を提供する。加えて、例えば、G残基のストレッチを含有する、プリンリッチな核酸分子を選択することができる。これらの分子は、GC対がリッチなDNA二重鎖とで三重ラセンを形成し、ここに、プリン残基の大部分は標的化二重鎖の単一鎖に位置し、その結果、CGCトリプレットが三重鎖中の三つの鎖を横切ることとなる。
【0049】
別法として、三重ラセン形成のために標的となりうる標的配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作り出すことによって増加させることができる。スイッチバック分子は、二重鎖の最初の一つの鎖と、次いで、他方の鎖とで塩基対合し、プリンまたはピリミジンいずれかの大きなストレッチが二重鎖の一つの鎖に存在する必要性を排除するように、交互5’-3’、3’-5’様式で合成される。
【0050】
本発明のさらなる態様は、標的遺伝子の発現を阻害するためのDNA酵素の使用に関する。DNA酵素は、アンチセンスおよびリボザイム技術双方のメカニズム的特徴のいくつかを取り込んでいる。DNA酵素は特定の標的核酸配列を認識するように設計され、アンチセンスオリゴヌクレオチドとかなりよく似ている。しかしながら、DNA酵素は触媒であって、標的核酸を特異的に切断する。
【0051】
現在二つの基本的なタイプのDNA酵素があるが、その両方ともSantoroおよびJoyceによって同定された(例えば、米国特許第6,110,462号参照)。10〜23DNA酵素は、二つのアームを連結するループ構造を含む。二つのアームは、特定の標的核酸分子を認識することよる特異性を提供し、他方、ループ構造は生理学的条件下で触媒的機能を提供する。
【0052】
簡単に述べると、標的核酸を特異的に認識し、それを切断する理想的なDNA酵素を設計するためには、当業者は、まず、ユニークな標的配列を同定しなければならない。これは、アンチセンスオリゴヌクレオチドについて概説したのと同一のアプローチを用いてなすことができる。好ましくは、ユニークなまたは実質的な配列はほぼ18から22ヌクレオチドのG/Cリッチなものである。高G/C含有量は、DNA酵素と標的配列の間のより強い相互作用を保証するのを補助する。
【0053】
DNA酵素を合成する場合、酵素をメッセージに標的化する特異的アンチセンス認識配列は、DNA酵素の二つのアームを含み、DNA酵素ループが二つの特異的アームの間に置かれるように分割される。
【0054】
DNA酵素を作製し、それを投与する方法は、例えば、米国特許第6,110,462号に見出すことができる。同様に、試験管内または生体内においてDNAリボザイムを送達する方法は、前記で詳細に概説したような、送達RNAリボザイムと同様な方法である。加えて、当業者であれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドのように、DNA酵素を所望により修飾して、安定性を改善し、分解に対する抵抗性を改善できることを認識するであろう。
【0055】
本発明のアンタゴニストの投与のための用量範囲は、所望の効果を生じるのに十分大きなものである。用量は、望まない交差反応、アナフィラキシー反応等のような有害な副作用を引き起こすほど大きなものであってはならない。一般に、用量は、年齢、疾患、性別、および患者の障害の程度により変化するが、これは当業者によって決定することができる。合併症の場合の用量は個々の医師によって調整できる。
【0056】
本発明のアンタゴニストは注射または時間をかけた漸次的灌流によって非経口的に投与できる。アンタゴニストは静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮的に投与することができる。
【0057】
本発明のもう一つの実施形態は、生理学上および/または医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤と共に、1以上のプロ蛋白質転移酵素阻害剤、またはプロ蛋白質転移酵素に対する抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対する適当なアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素発現を阻害するためのsiRNAを含む医薬組成物に関する。生理学上許容される担体、賦形剤、または安定化剤は当業者に公知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th edition, (Ed.) A.Osol,Mack Publishing Company, Easton, Pa.,1985参照)。許容される担体、賦形剤または安定化剤は使用される用量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのような蛋白質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含めた、単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩-形成対イオン;および/またはTween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤を含む。
【実施例1】
【0058】
Dec-RVKR-CMKによるVEGF-CおよびVEGF-Dの蛋白質分解プロセシングの阻害
VEGF-C-FULL-N-Myc(M-末端においてMycがタグ付着した全長VEGF-C)またはVEGF-D-FULL-N-FLAG(N-末端においてFLAGがタグ付着した全長VEGF-D)をコードする発現構築物により安定的にトランスフェクトされた293EBNA細胞は、VEGF-CまたはVEGF-Dの全長型または部分プロセス型を培地に分泌する(Jukov et al.,EMBO J.16:3898-3911 1997;Stacker et al., J.Biol.Chem.274:32127-32136,1999)。これらの細胞を24ウェルプレートにおいて、ウェル当たり8×104細胞で播種し一晩増殖させた。これらのプレートで培養を開始する時点において、終濃度が0、1、10、50または100mMとなるようにDec-RVKR-CMK(Calbiochem)(メタノールに溶解させた)を増殖培地に追加した。溶媒対照培養も作製し、阻害剤で処理した培養に存在するのと同濃度となるメタノールを追加した。(湿潤環境下37℃、10%CO2)18時間の増殖後、条件細胞培地を細胞から除去し、遠心によって清澄化した(5分、250×g,4℃)。
【0059】
VHDおよびC-末端プロペプチド(R&D Systems)に結合する抗VEGF-C抗体の添加により、VEGF-C種を条件培地から免疫沈降させた。VEGF-DのVHD内に結合するA2抗血清の添加によって、VEGF-D種を免疫沈降させた(Stacker et al., J.Biol.Chem.274:32127-32136,1999)。穏やかに攪拌しつつ、免疫複合体を4℃にて2時間形成させ、10mLのプロテインAセファロースビーズの添加、そして穏やかに振盪しながら4℃で2時間インキュベーションを行い沈殿させた。プロテインAセファロース複合体を遠心(5分,250×g,4℃)によって回収し、氷冷50mMトリス、150mM NaCl, pH8.0で二回洗浄した。次いで、VHDおよびVEGF-CのC末端、またはVEGF-DのVHD(R&D Systems)に対するビオチニル化抗体、およびストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Zymed)を用いたウエスタンブロットによって、沈殿したVEGF-CおよびVEGF-D種を分析した(図1および2)。
【0060】
図1は、293 VEGF-C-FULL-N-Myc細胞からの免疫沈降試料のウエスタンブロットを示す。対照試料におけるバンド(最も左のレーン)は従前に特徴付けられており(Joukov et al.,EMBO J.16:3898-3911 1997)、それは以下の通りである:50kDaのバンドは全長VEGF-Cであり、33kDaのバンドはN-末端プロペプチド(N-pro)に結合したVHDであって、22kDaのバンドはVHDよりなる成熟VEGF-Cサブユニットである。
【0061】
図2は、293 VEGF-D-FULL-N-FLAG細胞からの免疫沈降試料のウエスタンブロットを示す。対照試料におけるバンド(最も左側のレーン)は従前に特徴付けられており(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274:32127-32136,1999)それは以下の通りである:48kDaバンドは全長VEGF-Dであり、33kDa種はN-末端プロペプチド(N-pro)に結合したVHDであって、21kDaバンドはVHDよりなる成熟VEGF-Dサブユニットである。
【0062】
VEGF-C-FULL-N-MycまたはVEGF-D-FULL-N-FLAGいずれかを発現する293EBNA細胞のDec-RVKR-CMKでの処理の結果では、VEGF-CおよびVEGF-Dの完全長および部分プロセス型は、用量依存的に存在量が劇的に減少した。最高濃度(100mM)のDec-RVKR-CMKにおいて、VEGF-Dの全長型のみが検出されたが、これは蛋白質分解プロセシングが完全に阻害されていることを示している。メタノールで処理された細胞では、VEGF-CまたはVEGF-Dのプロセシングは変化を示さなかった。
【0063】
これらの結果は、プロ蛋白質転移酵素阻害剤での処理は、蛋白質分解プロセシングおよびVEGF-CおよびVEGF-Dの活性化を阻害できることを示す。このように、プロ蛋白質転移酵素阻害剤により生体内でこの活性化を阻害することによってVEGF-Cおよび/またはVEGF-D活性に関連する疾患、例えば、血管新生および/またはリンパ脈管新生に関連する疾患を治療することが可能である。
【実施例2】
【0064】
全てのPC阻害剤は、N-末端およびC-末端部位の両方の切断においてVEGF-Dのプロセシングを阻害する。
【0065】
VEGF-DはVHDのN-およびC-末端において蛋白質分解処理されて、VHDのダイマーよりなる成熟型を生じさせる(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)。293EBNA細胞によるVEGF-D誘導体のプロセシングに対する、全てのPCの阻害剤であるDec-RVKR-CMKの効果をモニターして(Jean et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA95 7293-7298,1998)、PCがこれらの両方の切断事象を行うことができることを確立した。
【0066】
N-末端プロペプチドおよび(VEGF-DΔCという)FLAGエピトープを持つカルボキシル末端においてタグが付着したVHDよりなるヒトVEGF-Dの切形誘導体をコードする発現プラスミド(図3、頂部パネル)は従前に記載されている(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)。VEGF-DΔC蛋白質構築物はVHDからのN-末端プロペプチドの切断実験を容易とする。VEGF-DΔC発現プラスミドで安定にトランスフェクトされた293EBNA細胞の条件培地は、プロセシングされていないVEGF-DΔC、および蛋白質分解によりプロセシングされたVHDを含めた、VEGF-D蛋白質の混合物を含有する。第二の細胞系は、FLAGエピトープおよびC-末端プロペプチドを持つアミノ末端においてタグが付着したVHDよりなるヒトVEGF-Dの切断誘導型であるVEGF-DΔNをコードする発現構築物を用いた293EBNA細胞の安定的なトランスフェクションによって作製した(図3、頂部パネル)。この蛋白質構築体は、VHDからのC-末端プロペプチドの切断の実験を容易とする。VEGF-DΔNを発現する293EBNA細胞の条件培地は、プロセシングされていないVEGF-DΔN、および蛋白質分解によりプロセシングされたVHDよりなるVEGF-D蛋白質の混合物を含有する。全長VEGF-DについてのpAPEX-3構築物の2-kb EcoRV断片を、VEGF-DΔNΔC-FLAGについてのpAPEX-3構築物の2-kb EcoRV断片で置き換えることによってVEGF-DDN発現プラスミドを構築した(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)。
【0067】
VEGF-DΔCまたはVEGF-DΔNを発現する293EBNA細胞系を、最終濃度が0、1、10、50または100mMとなるようにメタノールに溶解させたDec-RVKR-CMKを追加した培地にて、24-ウェルプレート(8×104細胞/ウェル)に撒いた。18時間のインキュベーション(湿潤化インキュベーター中37℃,10%CO2)後に、条件細胞培地を取り出し、遠心(5分,250×g,4℃)によって清澄化した。VHDのカルボキシル-末端に付着したFLAGエピトープに結合する、M2-アガローズビーズ(Sigma-Aldrich)の添加によって293EBNA VEGF-DDC細胞の条件培地から、およびVHD内のエピトープに結合するA2抗血清の添加(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)、続いての、プロテイン-Aセファロースビーズとのインキュベーションによって、293EBNA VEGF-DΔN細胞の条件培地から、VEGF-D種を免疫沈降させた。ビーズおよび結合した蛋白質を遠心(5分,250×g,4℃)によって回収し、トリス緩衝生理食塩水(TBS;50mM トリス-Cl,150mM NaCl,pH 8.0)で2回洗浄した。次いで、還元条件でSDS-PAGEを行い、ヒトVEGF-D(R&D Systems)のVHDに対するビオチニル化抗体、およびストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Zymed)を用いてウエスタンブロッティングを行い、沈殿したVEGF-D種を分析した。
【0068】
図3は、VEGF-DΔCおよびVEGF-DΔNの模式的マップ(上方パネル)、および293EBNA VEGF-DΔC細胞からの(中央パネル)、および293EBNA VEGF-DΔN細胞からの(下方パネル)免疫沈降VEGF-D蛋白質のウエスタンブロットを示す。頂部パネルにおいては、「F」はFLAGペプチドを示し、「N-pro」はN-末端プロペプチドを示し、「C-pro」はC-末端プロペプチドを示す。中央パネルでは、対照試料におけるバンド(レーン1)はプロセシングされていないVEGF-DΔC(〜33kDa)、およびN-末端プロペプチドの蛋白質分解除去によって生じたVHD(〜21kDa)よりなる。293EBNA VEGF-DΔC細胞のDec-RVKR-CMKでの処理に続き、成熟VHDを表すバンドは用量依存的に存在量が低下ている(レーン2-5)。用いたDec-RVKR-CMKの最高濃度においては(100mM;レーン5)、プロセシングされていないVEGF-DΔCのみが検出され、これは、蛋白質分解プロセシングが完全に阻害されていることを示す。下方パネルでは、対照試料におけるバンド(レーン1)は、プロセシングされていないVEGF-DΔN(〜44kDa)、およびアミノ-末端プロペプチドの蛋白質分解除去によって生じたVHD(〜21kDa)よりなる。293EBNA VEGF-DΔN細胞のDec-RVKR-CMKでの処理に続いて、成熟VHDを表すバンドは用量依存的に存在量が低下している(レーン2-5)。用いたDec-RVKR-CMKの最高濃度においては(100mM;レーン5)、プロセシングされていないVEGF-DΔNのみが検出され、これは、蛋白質分解プロセシングが完全に阻害されたことを示す。中央および下方双方のパネルでは、溶媒特異的効果についてコントロールとするためのメタノール単独で処理した細胞は、VEGF-Dのプロセシングについて変化を示さなかった(レーン6-9)。Dec-RVKR-CMK(mM)およびメタノール(%容量/容量)の濃度をこれらのパネルの上方に示し、VEGF-D種の同一性は左側に示し、分子量標準(kDa)のサイズは右側に示す。
【0069】
これらの結果は、全てのPCの阻害剤がVEGF-DのVHDからのN-およびC-末端プロペプチド双方の切断を阻害することを示し、これは、このプロテアーゼファミリーのメンバーがこの成長因子の活性化で重要であり得ることを示す。
【実施例3】
【0070】
VEGF-Dは活性なフリンを欠くLoVo細胞においてプロセシングされない。
【0071】
LoVo細胞系は、プロ蛋白質転移酵素を広く発現しているメンバーである(Nakayama,Biochem.J.327 625-635,1997)酵素的に活性なフリンを欠くヒト結腸癌腫系である(Takahashi et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.195 1019-1026 1993;Takahashi et al.,J.Biol.Chem.270 26565-26569,1995)。その結果、LoVo細胞は多数のプロ蛋白質を処理できない(Nakayama,Biochem.J.327 625-635,1997)。従って、LoVo細胞系をプロセシング欠乏バックグラウンドとして用いてVEGF-Dの蛋白質分解活性化に対する個々のPCの効果をモニターすることができるかどうかを確証するために、LoVo細胞がVEGF-Dをプロセシングする能力について分析した。
【0072】
LoVoおよび293EBNA細胞を、FLAGエピトープを持つアミノ末端においてタグが付着した全長VEGF-D(pVDAPEX FULL-N-FLAG)、FLAGエピトープを持つアミノ末端でタグが付着したVEGF-DΔN(pVDAPEXDN)、またはFLAGエピトープを持つカルボキシル末端においてタグが付着したVEGF-DΔC(pVDAPEXDC)をコードする発現構築物で一過的にトランスフェクトした(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)。48時間のインキュベーション(湿潤化インキュベーター中37℃,10%CO2)の後に、FLAGエピトープに結合するM2-アガロースビーズ(Sigma-Aldrich)の添加によって条件培地を免疫沈降させた。穏やかに振盪しつつ4℃にて2時間免疫複合体を形成させた。ビーズおよび結合した蛋白質を遠心(5分,250×g,4℃)によって回収し、トリス緩衝生理食塩水(TBS;50mM トリス-Cl、150mM NaCl,pH8.0)で2回洗浄した。次いで、沈殿したVEGF-D種を還元条件SDS-PAGE、M2-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma-Aldrich)を用いたウエスタンブロッティングにより分析した。
【0073】
図4は、VEGF-D発現構築体での一過性トランスフェクションの後における(A)293EBNAおよび(B)LoVo細胞の条件培地から免疫沈降したVEGF-D種を比較するウエスタンブロットを示す。細胞をトランスフェクトするのに用いた発現構築物は以下の通りである:レーン1 pAPEX3:レーン2 pVDAPEX FULL-N-FLAG:レーン3 pVDAPEXΔN:レーン4 pVDAPEXΔC。293EBNA細胞における蛋白質分解プロセシングはプロセシングされていない(レーン2において〜48kDaバンド、レーン3における〜44kDaバンド、およびレーン4における〜33kDaバンド)およびプロセシングされたVEGF-D誘導体(レーン2における〜33kDaバンド、レーン3における〜21kDaバンド、およびレーン4における〜21kDaバンド)の検出へとつながる。対照的に、LoVo細胞で発現させた場合、プロセシングされていないVEGF-D誘導体のみが検出されている。蛋白質のプロセシングされた形態は、ブロットのより長い露光の後においてさえ、LoVo細胞の条件培地からは検出されなかった。分子量標準(kDa)のサイズは右側に示す。
【0074】
これらの知見は、LoVo細胞がVEGF-Dをプロセシングできず、この細胞系は、VEGF-DをプロセシングできるPCを同定することを目的とした共発現実験のための適当なバックグラウンドとなることを示している。
【実施例4】
【0075】
個々のPCによるVEGF-Dのプロセシング
プロテアーゼのPCファミリーのどのメンバーがVEGF-Dを活性化できるかを確証するために、LoVo細胞をVEGF-D誘導体について、および種々のPCについての発現構築体で共トランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞をVEGF-Dをプロセシングするための能力について分析した。
【0076】
フリンのオープンリーディングフレーム、PC5およびPC7のポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅によって、プロ蛋白質転移酵素発現プラスミドを構築した。これらのプロテアーゼをコードするクローン化cDNAはAmerican Type Culture Collectionから供給され、増幅反応のための鋳型DNAとして用いた。オープンリーディングフレームの増幅で用いたオリゴヌクレオチドは、PCR産物のクローニングを容易とするための制限酵素部位を含んだ。PCR産物の適当な制限酵素での消化、T4 DNAリガーゼでの同様に消化されたpcDNA3への連結によって、PCR産物をpcDNA3(Invitrogen,Carlsbad USA)にクローン化した。HindIIIおよびXbaIでの消化の後、フリンおよびPC7の増幅したオープンリーディングフレームをpcDNA3に連結した。NotIおよびXbaIでの消化の後に、PC5の増幅されたオープンリーディングフレームをpcDNA3に連結した。制限マッピングによって所望のDNA断片を含有することが示された組換えプラスミドを双方の鎖について配列決定して、突然変異の存在を排除した。プロ蛋白質転移酵素発現構築体をpcDNA3:フリン、pcDNA3:PC5およびpcDNA3:PC7と命名した。
【0077】
プロ蛋白質転移酵素発現構築体を用いて、pVDAPEX FULL-N-FLAG、pVDAPEXΔNまたはpVDAPEXΔCとの組合せにおいてLoVo細胞を共トランスフェクトした。48時間のインキュベーション(湿潤化インキュベーター中37℃,10%CO2)の後に、条件培地を取り出し、遠心(5分,250×g,4℃)によって清澄化した。pVDAPEX FULL-N-FLAGと組み合わせたPC発現構築体でトランスフェクトされた細胞からのVEGF-D種を、VHD内のエピトープに結合するA2抗血清の添加によって条件培地から免疫沈降させた(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)。穏やかに振盪しつつ、免疫複合体を4℃にて2時間形成させ、10mLのプロテイン-Aセファロースビーズの添加、およびさらに2時間のインキュベーションによって沈降させた。pVDAPEXΔNまたはpVDAPEXΔCと組み合わせてPC発現構築体でトランスフェクトされたLoVo細胞からの条件培地を、M2-アガロースビーズ(Sigma-Aldrich)で免疫沈降させた。沈殿した蛋白質を遠心(5分,250´g,4℃)によって回収し、トリス-緩衝化生理食塩水(TBS;50mMトリス-Cl,150mM NaCl,pH8.0)で2回洗浄し、還元SDS-PAGE、およびヒトVEGF-D(R&S Systems)のVHDに対するビオチニル化抗体、続いて、pVDAPEX FULL-N-FLAGでトランスフェクトされた細胞からの材料の場合にはストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Zymed)を用いる、あるいはpVDAPEXΔNまたはpVDAPEXΔCでトランスフェクトされた細胞からの材料の場合にはM2-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma-Aldrich)を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。
【0078】
図5は、PC発現構築体とVEGF-D発現構築体とで共トランスフェクトされたLoVo細胞の条件培地のウエスタンブロットの分析を示す。分子量標準のサイズ(kDa)を図面の左側に示し、バンドの同一性を右側に示す。図5Aは、ヒトフリン、PC5またはPC7をコードする発現構築体と組み合わせたpVDAPEX FULL-N-FLAGでのLoVo細胞の共トランスフェクションの結果を示す。LoVo細胞を用いるDNA組合せは以下の通りであった:レーン1、pAPEX3+pcDNA3;レーン2、pVDAPEX FULL-N-FLAG+pcDNA3;レーン3、pVDAPEX FULL-N-FLAG+pcDNA3:フリン;レーン4、pVDAPEX FULL-N-FLAG+pcDNA3:PC5;レーン5、pVDAPEX FULL-N-FLAG+pcDNA3:PC7。VEGF-D-FULL-N-FLAGのプロセシングは、PC発現構築体の不存在下においては観察されなかった(レーン2)。pcDNA3:フリンの導入の結果、〜48kDaのVEGF-D FULL-N-FLAG蛋白質の〜21kDa成熟VHD種のほとんど完全な変換がもたらされた(レーン3)。pcDNA3:PC5での共トランスフェクションの結果、条件培地で検出される三つの断片、プロセシングされていないVEGF-D FULL-N-FLAG(〜48kDa)、アミノ-末端プロペプチドおよびVHD(〜33kDa)よりなる部分的にプロセシングされた形態、および十分にプロセシングされた成熟VHD(〜21kDa)がもたらされた(レーン4)。これらの知見は、フリンおよびPC5がVEGF-DのVHDについての双方のプロペプチドを切断できることを示す。pVDAPEX FULL-N-FLAGのpcDNA3:PC7の共トランスフェクションは、プロセシングされていない蛋白質および部分的にプロセシングされた〜33kDa型を生じるが、成熟VDHを生じない(レーン5)ことを示し(成熟VHDはブロットのより長い露光でさえ検出されなかった)、これは、PC7がC-末端プロペプチドを除去することができるが、N-末端プロペプチドをVHDから除去できないことを示す。
【0079】
図5Bは、LoVo細胞の、pVDAPEXΔN、およびフリン、PC5またはPC7をコードする発現構築体での共トランスフェクションの結果を示す。細胞をトランスフェクトするのに用いたDNA組合せは以下の通りであった:レーン1、pAPEX3+pcDNA3;レーン2、pVDAPEXΔN+pcDNA3;レーン3、pVDAPEXΔN+pcDNA3:フリン;レーン4、pVDAPEXΔN+pcDNA3:PC5;レーン5、pVDAPEXΔN+pcDNA3:PC7。単一〜44kDa種は条件培地で検出されなかった(レーン2)ため、LoVo細胞はPC発現構築体の不存在下ではVEGF-DDNをプロセシングしなかった。LoVo細胞の、pVDAPEXΔNおよびpcDNA3:フリンの共トランスフェクションの結果、VEGF-DΔNの21kDa成熟VHD種への完全な変換がもたらされた(レーン3)。pcDNA3:PC5またはpcDNA3:PC7の存在の結果、成熟VHDへプロッセッシングされるVEGF-DΔNの一部が得られた(レーン4および5)。これらの結果は、フリン、PC5およびPC7は、全て、VEGF-DΔNのVHDからのC-末端プロペプチドの蛋白質分解切断を触媒できることを示す。
【0080】
図5Cは、LoVo細胞の、pVDAPEXΔC、およびフリン、PC5またはPC7をコードする発現構築体の共トランスフェクションを示す。LoVo細胞をトランスフェクトするのに用いたDNA組合せは以下の通りであった:レーン1、pAPEX3+pcDNA3;レーン2、pVDAPEXΔC+pcDNA3;レーン3、pVDAPEXΔC+pcDNA3:フリン;レーン4、pVDAPEXΔC+pcDNA3:PC5;レーン5、pVDAPEXΔC+pcDNA3:PC7。PC発現構築体の不存在下において、無傷VEGF-DΔCに対応する、単一〜33kDa蛋白質バンドが検出された(レーン2)。pVDAPEXΔCおよびpcDNA3:フリンでの共トランスフェクションの結果、成熟VHDを表す単一〜21kDa種をもたらした(レーン3)。成熟VHDを生じさせるプロセシングもまた、pVDAPEXΔCおよびpcDNA3:PC5で共トランスフェクトされた細胞の条件培地で検出された(レーン4)。しかしながら、pVDAPEXΔCおよびpcDNA3:PC7発現構築体の共トランスフェクションの結果、VEGF-DΔCのプロセシングはもたらされなかった(レーン5)。
【0081】
これらの結果は、フリンおよびPC5がVEGF-DのVHDからのN-末端およびC-末端プロペプチド双方の切断を促進することができ、PC7はC-末端プロペプチドの切断を促進できるに過ぎないことを示す。
【実施例5】
【0082】
フリンによって生じたVEGF-Dの成熟型は、VEGFR-2およびVEGFR-3に結合する。
【0083】
293EBNA細胞によって生じたVEGF-Dの成熟型は、受容体チロシンキナーゼVEGFR-2およびVEGFR-3に対する活性化リガンドである(Achen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95 548-553,1998)。従って、受容体結合実験を行って、トランスフェクトされたLoVo細胞においてフリンによって生じたVEGF-Dの成熟型がこれらの受容体に対するリガンドであることを確立した。
【0084】
(VEGFR-2-IgおよびVEGFR-3-Igといわれる)ヒトIgGのFc部分に連結されたヒトVEGFR-2またはVEGFR-3の細胞外ドメインよりなる可溶性融合蛋白質を用い、受容体細胞外ドメインへの結合を調べた(Achen et al.,Proc.Natl.Acad.Aci.USA 95 548-553,1998)。プロテイン-Aセファロースビーズを、VEGFR-2-IgまたはVEGFR-3-Igを発現する293EBNA細胞の条件培地と共に一晩インキュベートして、可溶性受容体構築体を沈殿させた。プロテイン-Aセファロースビーズに結合した可溶性受容体を遠心(5分,250´g,4℃)によって回収し、結合緩衝液(リン酸緩衝化生理食塩水中0.5%(w/v)BSA、0.02%(v/v) Tween 20,10mg/mLヘパリン)で2回洗浄した。次いで、プロテイン-Aセファロースビーズに結合した可溶性受容体を、pVDAPEX FULL-N-FLAGおよびpcDNA3:フリンで室温にて3時間共トランスフェクトされたLoVo細胞の条件培地と共にインキュベートし、結合緩衝液で2回洗浄した。還元SDS-PAGE、およびヒトVEGF-D(R&D Systems)のVHDに対するビオチニル化抗体、続いて、ストレプトアビジン-ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Zymed)でのウエスタンブロッティングによって、VEGFR-2-IgおよびVEGFR-3-Ig構築体に結合した蛋白質を分析した。
【0085】
図6は、(A)VEGFR-2-Igおよび(B)VEGFR-3-Igを用いる受容体結合実験の結果を示す。pAPEX3およびpcDNA3でトランスフェクトされた細胞の培地中で成熟VEGF-D種は検出されず(レーン1)、またpVDAPEX FULL-N-FLAGおよびpcDNA3でトランスフェクトされた細胞の培地でも検出されなかった(レーン2)。VEGFR-2-IgおよびVEGFR-3-Igは共に、pVDAPEX FULL-N-FLAGおよびpcDNA3:フリンでトランスフェクトされたLoVo細胞の培地から〜21kDaのVEGF-D種を沈殿させた(レーン3;矢印によって示す)。分子量標準のサイズは各パネルの左側に示し、星印は全ての試料で観察された非特異的バンドを示す。
【0086】
これらの結果は、293EBNA細胞によって生じた従前に特徴付けされた成熟型と同様に(Stacker et al.,J.Biol.Chem.274 32127-32136,1999)、フリンによって生じたVEGF-Dの成熟型は、VEGFR-2およびVEGFR-3の細胞外ドメインに結合することを示す。
結論
この研究は、PCがVEGF-Dの活性化を促進することができ、このプロセスが可能なプロテアーゼのこのファミリーの三つのメンバーを同定することを示す。フリンおよびPC5はVHDからのVEGF-Dのプロペプチド双方の切断を促進し、これらの酵素はこの成長因子を十分に活性化できることを示す。対照的に、PC7はVHDからの、C-末端プロペプチドの切断を促進するが、N-末端プロペプチドからの切断を促進しない。よって、PC7はVEGF-Dを部分的にしか活性化できない。PCは、VEGF-CおよびVEGF-Dが可能であるように、癌において発現できるという知見(Khatib et al.,Am.J.Pathol.160 1921-1935,2002)は、VEGFR-2およびVEGFR-3に対するVEGF-CおよびVEGF-Dの親和性を劇的に増強させるこの蛋白質分解活性化メカニズムが、腫瘍血管新生およびリンパ脈管新生を促進し、それにより、固形腫瘍増殖および転移拡大を容易とするのに重要であろうことを示す。従って、これらの成長因子のこの蛋白質分解活性化は、新規な抗癌治療剤についての有望な標的である。さらに、PCは、TGF-βおよびPDGF-Aのような腫瘍進行で重要であり得る他の成長因子を活性化するという知見(Dubois et al.,J.Biol.Chem.270 10618-10624,1995;Siegfried et al.,Cancer Res.63 1458-1463,2003)は、PCをなおより魅力的な治療剤とする。
【0087】
開示の完全さのために、本明細書中において引用する全ての刊行物論文はここに引用して明示的に引用する。
【0088】
これまでの記載および実施例は、本発明を説明するためにのみ記載したものであり、限定的なものであることを意図しない。本発明の精神および実態を取り込む記載された実施形態の修飾が当業者に起こり得るため、本発明は、添付の請求の範囲およびその同等物の範囲内にある全ての変形を含むと広く解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、代表的なプロ蛋白質転移酵素阻害剤での細胞の処理に続いて、タグド全長VEGF-Cを発現する細胞から分泌されたヒトVEGF-Cのウエスタンブロット分析である。
【図2】図2は、代表的なプロ蛋白質転移酵素阻害剤での細胞の処理に続いて、タグド全長VEGF-Dを発現する細胞から分泌されたヒトVEGF-Dのウエスタンブロット分析である。
【図3】図3は、VEGF-DΔCおよびVEGF-DΔNの模式的マップ(上方パネル)、および293EBNA VEGF-DΔC細胞(中央パネル)からの、および293EBNA VEGF-DΔN細胞(下方パネル)からの免疫沈降VEGF-D蛋白質のウエスタンブロットを示す。
【図4】図4は、VEGF-D発現構築体での一過的トランスフェクション後の、(A)293EBNAおよび(B)LoVo細胞の条件培地から免疫沈澱したVEGF-D種を比較するウエスタンブロットを示す。
【図5】図5は、PC発現構築体と共にVEGF-D発現構築体で共トランスフェクトしたLoVo細胞の条件培地のウエスタンブロット分析を示す。
【図6】図6は、(A)VEGFR-2-Igおよび(B)VEGFR-3-Igを用いる受容体結合実験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生またはリンパ脈管新生阻害有効量のプロ蛋白質転移酵素阻害剤をそれを必要とする生物に投与することを特徴とする血管新生またはリンパ脈管新生を阻害する方法。
【請求項2】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤が、プロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメント、抗トリプシンの阻害性変異体およびペプチジルハロアルキルケトン阻害剤よりなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤が、PACE4、PC1、PC2、PC3、PC4、PC5A、PC5B、PC6A、PC6B、PC7およびフリンよりなる群から選択されるプロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメントを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤がフリンまたはPC7の阻害性プロセグメントを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤がデカノイル-Arg-Val-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-RVKR-CMK)、デカノイル-Phe-Ala-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-FAKR-CMK)、デカノイル-Arg-Glu-Ile-Arg-クロロメチルケトン(Dec-REIR-CMK)、およびデカノイルArg-Glu-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-REKR-CMK)よりなる群から選択されるペプチジルハロアルキルケトン阻害剤である請求項2記載の方法。
【請求項6】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤がデカノイル-Arg-Val-Lys-Arg-クロロメチルケトン(Dec-RVKR-CMK)を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤が抗トリプシンの阻害性変異体である請求項2記載の方法。
【請求項8】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤がα-1抗トリプシンポートランド(Portland)を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
該生物が腫瘍を患っている請求項1記載の方法。
【請求項10】
該生物が黄斑変性を患っている請求項1記載の方法。
【請求項11】
該生物が哺乳動物である請求項1記載の方法。
【請求項12】
該哺乳動物がヒトである請求項11記載の方法。
【請求項13】
血管新生またはリンパ脈管新生阻害有効量の、抗−プロ蛋白質転移酵素抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素の発現を阻害するためのsiRNAよりなる群から選択されるプロ蛋白質転移酵素アンタゴニストをそれを必要とする生物に投与することを特徴とする血管新生またはリンパ脈管新生を阻害する方法。
【請求項14】
血管新生またはリンパ脈管新生阻害有効量の、プロ蛋白質転移酵素阻害剤、あるいは抗−プロ蛋白質転移酵素抗体、プロ蛋白質転移酵素をコードするポリヌクレオチドに対するアンチセンス核酸分子、およびプロ蛋白質転移酵素発現を阻害するためのsiRNAよりなる群から選択されるアンタゴニスト、および医薬上許容される賦形剤を含む、それを必要とする患者において血管新生またはリンパ脈管新生を阻害するための医薬組成物。
【請求項15】
有効量の請求項14記載の医薬組成物を患者に投与することを特徴とする、患者において癌、腫瘍成長、腫瘍転移、黄斑変性、炎症媒介疾患、関節リウマチ、糖尿病性網膜障害、および乾癬よりなる群から選択される疾患を治療する方法。
【請求項16】
腫瘍成長を阻害するための方法であって、該医薬組成物が腫瘍成長阻害有効量のプロ蛋白質転移酵素阻害剤を含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
癌転移を阻害するための方法であって、該医薬組成物が腫瘍成長阻害有効量のプロ蛋白質転移酵素阻害剤を含む請求項15記載の方法。
【請求項18】
炎症性疾患を治療するための方法であって、該医薬組成物が腫瘍成長阻害有効量のプロ蛋白質転移酵素阻害剤を含む請求項15記載の方法。
【請求項19】
該炎症性疾患が関節リウマチである請求項18記載の方法。
【請求項20】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤が、プロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメント、抗トリプシンの阻害性変種およびペプチジルハロアルキルケトン阻害剤よりなる群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項21】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤が、プロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメント、抗トリプシンの阻害性変種およびペプチジルハロアルキルケトン阻害剤よりなる群から選択される請求項14記載の医薬組成物。
【請求項22】
該プロ蛋白質転移酵素の阻害性プロセグメントが、PACE4、PC1、PC2、PC3、PC4、PC5A、PC5B、PC6A、PC6B、PC7およびフリンよりなる群から選択される請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
該プロ蛋白質転移酵素阻害剤がフリンまたはPC7の阻害性プロセグメントを含む請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−538096(P2007−538096A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527454(P2007−527454)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017639
【国際公開番号】WO2005/112971
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505291125)ラドウィグ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ (4)
【Fターム(参考)】