説明

血管障害および加齢黄斑変性症の治療および診断のための方法および試薬

ヒト対象が血管障害および/または加齢黄斑変性症(AMD)を発症する傾向を決定するためのスクリーニング方法、疾患を治療するか、またはその発症を抑制するための治療的化合物または予防的化合物、ならびに患者を治療して、疾患の症状を緩和するか、その発病を予防もしくは遅延させるか、またはその進行を抑制する方法を開示する。本発明は、ヒト第1染色体上のCFHおよびCFHR-4をコードするDNAの間に通常は位置するCFHR-1遺伝子および/またはCFHR-3遺伝子を欠失しているゲノムを有する個人は、AMDを発症するリスクが低く、かつ動脈瘤のような血管疾患を発症するリスクが高いという知見に基づいている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年8月23日に出願された米国特許仮出願第60/840,073号に対して優先権を主張する。本出願はまた、2006年7月13日に出願された米国特許仮出願第60/831,018号に対しても優先権を主張する。これらの出願は両方とも、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究および開発のもとで行われた発明に対する権利に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与されたNIH R01 EY11515およびR24 EY017404のもとで政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、加齢黄斑変性症および血管疾患などの補体媒介疾患に対するスクリーニング方法および治療方法に関する。本発明は、生物学および医学の分野で応用される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
補体因子H(CFH)は、補体系の重要な調節因子として作用する多機能性タンパク質である。Zipfel, 2001、「Factor H and disease: a complement regulator affects vital body functions」、Semin Thromb Hemost. 27:191-9(非特許文献1)を参照されたい。因子Hタンパク質の活性には、(1)C反応性タンパク質(CRP)への結合、(2)C3bへの結合、(3)ヘパリンへの結合、(4)シアル酸への結合、(5)内皮細胞表面への結合、(6)細胞インテグリン受容体への結合、(7)微生物を含む病原体への結合(米国特許公報第20070020647号(特許文献1)の図3を参照されたい)、および(8)C3b補助因子活性が含まれる。HF1、CFH、およびHFとして公知の因子H遺伝子は、ヒト第1染色体上の1q32位に位置している。1q32座位は、いくつかの補体経路関連遺伝子を含む。補体活性化調節因子(RCA)遺伝子クラスターと呼ばれる、これらの遺伝子の1グループは、因子H、5種の因子H関連タンパク質(それぞれFHR-1、FHR-2、FHR-3、FHR-4、およびFHR-5、またはCFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、およびCFHR5)をコードする遺伝子、ならびに凝固因子XIIIのβサブユニットをコードする遺伝子を含む。因子Hおよび因子H関連タンパク質は、ほぼ全体がショートコンセンサスリピート(SCR)から構成される。因子HおよびFHL1は、それぞれSCR1〜20およびSCR1〜7から構成される。FHR-1、FHR-2、FHR-3、FHR-4、およびFHR-5は、それぞれ、5個、4個、5個、5個、および8個のSCRから構成される。セントロメアからテロメアまでの遺伝子の順序は、FH/FHL1、FHR-3、FHR-1、FHR-4、FHR-2、およびFHR-5である。
【0005】
因子H遺伝子
因子HのcDNAは、155kDaの見かけの分子量を有する1231アミノ酸長のポリペプチドをコードする(Ripoche et al., 1988, Biochem J 249:593-602(非特許文献2)を参照されたい)。FHL-1(また、HFL1またはCFHTとも呼ばれている)として公知の、選択的にスプライシングされた形態の因子Hがある。FHL-1は、因子Hのエキソン1〜9に本質的に対応する(Ripoche et al., 1988, Biochem J 249:593-602(非特許文献2)を参照されたい)。FHL1 cDNAは、45〜50kDaの見かけの分子量を有する449アミノ酸長のポリペプチドをコードする。FH1およびFHL1の最初の445個のアミノ酸は同一であり、FHL1は4個の独特なC末端アミノ酸を有する(エキソン9とエキソン10の間のイントロン中に位置している選択的エキソン10Aによってコードされている)。ヒト因子HおよびFHL1のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、それぞれアクセッション番号Y00716およびX07523である。ヒト因子H cDNAの参照型の3926塩基ヌクレオチド配列のGenBankアクセッション番号はY00716であり、そのポリペプチドのGenBankアクセッション番号はY00716である。ヒト因子Hの切断型である、HFL1の参照型の1658塩基ヌクレオチド配列のGenBankアクセッション番号はX07523であり、そのポリペプチド配列のGenBankアクセッション番号はX07523である。因子Hの遺伝子配列(150626塩基長)のGenBankアクセッション番号はAL049744である。因子Hのプロモーターは、因子H遺伝子のコード領域の5'側に位置している。
【0006】
FHR-1遺伝子
FHR-1遺伝子は、CFHR1、CFHL1、CFHL、FHR1、およびHFL1としても公知である。FHR-1のcDNAは、39kDaの予測分子量を有する330アミノ酸長のポリペプチドをコードする(Estaller et al., 1991, J. Immunol. 146:3190-3196(非特許文献3)を参照されたい)。ヒトFHR-1のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、アクセッション番号はM65292である。FHR-1遺伝子配列は、GenBankアクセッション番号AL049741で登録されている。
【0007】
FHR-2遺伝子
FHR-2遺伝子は、CFHR2、CFHL2、FHR2、およびHFL3としても公知である。FHR-2のcDNAは、31kDaの予測分子量を有する270アミノ酸長のポリペプチドをコードする(Strausberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:16899-16903(非特許文献4)を参照されたい)。ヒトFHR-2のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、アクセッション番号はBC022283である。FHR-2遺伝子配列は、GenBankアクセッション番号AL139418で登録されている。
【0008】
FHR-3遺伝子
FHR-3遺伝子は、CFHR3、CFHL3、FHR3、およびHLF4としても公知である。FHR-3のcDNAは、38kDaの予測分子量を有する330アミノ酸長のポリペプチドをコードする(Strausberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:16899-16903(非特許文献4)を参照されたい)。ヒトFHR-3のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、アクセッション番号はBC058009である。FHR-3遺伝子配列は、GenBankアクセッション番号AL049741で登録されている。
【0009】
FHR-4遺伝子
FHR-4遺伝子は、CFHR4、CFHL4、およびFHR4としても公知である。FHR-4のcDNAは、38kDaの予測分子量を有する331アミノ酸長のポリペプチドをコードする(Skerka et al., 1991, J. Biol. Chem. 272:5627-5634(非特許文献5)を参照されたい)。ヒトFHR-4のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、アクセッション番号はX98337である。FHR-4遺伝子配列は、GenBankアクセッション番号AF190816(5'末端)、AL139418(3'末端)、およびBX248415で登録されている。
【0010】
FHR-5遺伝子
FHR-5遺伝子は、CFHR5、CFHL5、およびFHR5としても公知である。CFHR5のcDNAは、65kDaの見かけの分子量を有する569アミノ酸長のポリペプチドをコードする(McRae et al., 2001, J. Biol.Chem. 276:6747-6754(非特許文献6)を参照されたい)。ヒトCFHR5のcDNAおよびアミノ酸の配列データは、EMBL/GenBankデータライブラリー中に存在し、アクセッション番号はAF295327である。ヒトCFHR5の参照型の2821塩基ヌクレオチド配列のGenBankアクセッション番号はAF295327であり、そのポリペプチド配列のGenBankアクセッション番号はAAK15619である。CFHR5ゲノム配列は、GenBankアクセッション番号AL139418 (5'末端)およびAL353809 (3'末端)で登録されている。FHR-5プロモーターは、CFHR5遺伝子のコード領域の5'側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公報第20070020647号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Zipfel, 2001、「Factor H and disease: a complement regulator affects vital body functions」、Semin Thromb Hemost. 27:191-9
【非特許文献2】Ripoche et al., 1988, Biochem J 249:593-602
【非特許文献3】Estaller et al., 1991, J. Immunol. 146:3190-3196
【非特許文献4】Strausberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:16899-16903
【非特許文献5】Skerka et al., 1991, J. Biol. Chem. 272:5627-5634
【非特許文献6】McRae et al., 2001, J. Biol.Chem. 276:6747-6754
【発明の概要】
【0013】
発明の簡単な概要
1つの局面において、本発明は、ヒト対象が血管障害および/または加齢黄斑変性症(AMD)を発症する傾向を決定するためのスクリーニング方法であって、第1染色体の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間の欠失の存在または不在を検出するための、対象に由来する生物試料の分析を含み、欠失の存在は、その対象が血管障害を発症するリスクが高く、AMDを発症するリスクが低いという証拠であるスクリーニング方法を提供する。
【0014】
血管障害の例には、腹部大動脈瘤(AAA)および脳頭蓋内動脈瘤などの動脈瘤が含まれる。
【0015】
1つの態様において、本方法は、補体因子H関連3(CFHR3)遺伝子の少なくとも一部分の存在または不在を検出する段階を含む。関連した態様において、CFHR3遺伝子のタンパク質コード領域全体が欠失している。関連した態様において、CFHR3遺伝子全体が欠失している。関連した態様において、CFHR3遺伝子全体およびCFHR3遺伝子と補体因子H関連1(CFHR1)遺伝子の間の領域が欠失している。
【0016】
1つの態様において、本方法は、補体因子H関連1(CFHR1)遺伝子の少なくとも一部分の存在または不在を検出する段階を含む。関連した態様において、CFHR1遺伝子のタンパク質コード領域全体が欠失している。関連した態様において、CFHR1遺伝子全体が欠失している。関連した態様において、CFHR1遺伝子全体およびCFHR1遺伝子と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子の間の領域が欠失している。関連した態様において、CFHR1遺伝子全体およびCFHR1遺伝子とCFHR3遺伝子の間の領域が欠失している。
【0017】
1つの態様において、本方法は、CFHR3遺伝子の少なくとも一部分およびCFHR1遺伝子の少なくとも一部分の存在または不在を検出する段階を含む。関連した態様において、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のタンパク質コード領域全体の両方が欠失している。関連した態様において、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子の全体が欠失している。
【0018】
1つの態様において、a)CFH遺伝子とCFHR3遺伝子の間の配列;b)CFHR3遺伝子とCFHR1遺伝子の間の配列;c) CFHR1遺伝子とCFHR4遺伝子の間の配列より選択される遺伝子間配列の欠失または部分的欠失。さらに別の態様において、CFH遺伝子の少なくとも一部分が欠失している(例えば、エキソン22の少なくとも一部分が欠失している)。
【0019】
1つの態様において、欠失の存在または不在は、第1染色体の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間でコードされる遺伝子産物についてアッセイすることによって検出され、その際、遺伝子産物の不在または遺伝子産物の発現レベルの低下により、欠失の存在が示される。別の態様において、CFHR1遺伝子産物および/またはCFHR3遺伝子産物の存在または不在が検出され、その際、遺伝子産物の不在により、欠失が示される。一例では、遺伝子産物はタンパク質である。別の態様において、欠失の存在または不在を検出する段階は、対象に由来する染色体または核酸(例えばDNAもしくはRNA)を分析することによって実施される。
【0020】
1つの態様において、欠失の存在または不在は、切断されたCFHR1遺伝子産物またはCFHR3遺伝子産物についてアッセイすることによって検出され、その際、切断された遺伝子産物の検出により、欠失が示される。好ましい態様において、CFHR1遺伝子は部分的に欠失しており、切断型のポリペプチド遺伝子産物を発現する。
【0021】
1つの態様において、対象は、欠失を含む染色体のCFH遺伝子のコード領域の1277位にT遺伝子型を有する。
【0022】
対象は、欠失に関してホモ接合性またはヘテロ接合性でよい。したがって、1つの態様において、欠失は対象の両方の第1染色体中に存在する。
【0023】
欠失の存在または不在は、例えば、対象に由来する染色体試料または核酸(例えばDNAもしくはRNA)試料を分析することによって、患者由来の生物試料中で検出することができる。欠失の存在または不在はまた、例えば、対象に由来する生物試料、例えば、対象の体液試料もしくは組織試料中の(欠失した)DNAによってコードされるタンパク質の存在もしくは不在を決定することによって、対象の体液試料もしくは組織試料中のCFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチドの変種もしくは切断型を検出することによって、または対象の体液試料もしくは組織試料中のCFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチドのレベルを測定することによって、検出することもできる。
【0024】
生物試料は、本発明において使用するのに適している、患者から採取された任意の試料である。体液を含む生物試料の例には、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、および唾液が含まれる。1つの態様において、体液は、血液、血清、または尿である。組織試料を含む生物試料の例には、皮膚生検材料および頬擦過標本が含まれる。1つの態様において、組織試料は皮膚生検材料である。
【0025】
タンパク質(量または存在)は、例えば、サンドイッチイムノアッセイ法、競合イムノアッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、フルオロフォア標識イムノアッセイ法、ELISA、またはウェスタンブロットなどのイムノアッセイ法を用いて検出することができる。質量分析法もまた、使用することができる。変種タンパク質(量または存在)は、例えば、変種に特異的な抗体を用いて検出することができる。切断型タンパク質(量または存在)は、例えば、ウェスタンブロット解析または質量分析法により、タンパク質の大きさの差に基づいて検出することができる。
【0026】
特定の態様において、本方法は、検出する段階において、対象が血管障害を発症するリスクがより高いことを示す、欠失の存在、例えばCFHR1遺伝子もしくはCFHR3遺伝子の欠失、または対応する遺伝子産物の不在もしくは減少(例えば、遺伝子産物の量もしくは活性)を決定する段階を含む。
【0027】
他の態様において、本方法は、検出する段階において、対象が血管障害を発症するリスクがより低いことを示す、欠失の不在、例えばCFHR1遺伝子もしくはCFHR3遺伝子の存在、または対応する遺伝子産物の存在もしくは増加(例えば、遺伝子産物の量もしくは活性)を決定する段階を含む。
【0028】
別の態様において、本方法は、検出する段階において、対象がAMDを発症するリスクがより低いことを示す、欠失の存在、例えばCFHR1遺伝子もしくはCFHR3遺伝子の欠失、または対応する遺伝子産物の不在もしくは減少(例えば、遺伝子産物の量もしくは活性)を決定する段階を含む。
【0029】
さらに別の態様において、本方法は、検出する段階において、対象がAMDを発症するリスクがより高いことを示す、欠失の不在、例えばCFHR1遺伝子もしくはCFHR3遺伝子の存在、または対応する遺伝子産物の存在もしくは増加(例えば、遺伝子産物の量もしくは活性)を決定する段階を含む。遺伝子産物の増加は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%またはそれ以上でよい。
【0030】
特定の態様において、本方法は、AMDおよび/または血管疾患を示す少なくとも1種の他の遺伝的変種またはバイオマーカーを検出する段階をさらに含む。本発明において検出することができる遺伝的変種には、補体因子H(CFH)遺伝子、HTRA1遺伝子、補体因子B(BF)遺伝子、および/または補体成分2(C2)遺伝子の遺伝的変種が含まれる。ある態様において、遺伝的変種は、本明細書において説明するもののような1つまたは複数の多型部位を含む。
【0031】
別の局面において、本発明は、対象にCFHR1ポリペプチドおよび/またはCFHR3ポリペプチドを投与することによって、血管障害を有する(すなわち、その症状を提示している)か、または血管障害を発症するリスクがある対象を治療するための方法を提供する。ポリペプチドは、完全長のCFHR1ポリペプチドまたはその断片もしくは一部分でよい。ポリペプチドは、完全長のCFHR3ポリペプチドまたはその断片もしくは一部分でよい。
【0032】
別の局面において、本発明は、CFHR3タンパク質またはその断片および少なくとも1種の薬学的に有効な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。別の局面において、本発明は、CFHR1タンパク質またはその断片および少なくとも1種の薬学的に有効な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0033】
別の局面において、本発明は、血管障害の治療用の医薬を調製するための、CFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の少なくとも一部分の遺伝子産物を含むタンパク質の使用を提供する。
【0034】
別の局面において、本発明は、CFHR3タンパク質もしくはCFHR1タンパク質またはその断片をコードする核酸を含む遺伝子治療用ベクターを提供する。ベクターは、多数の細胞型においてCFHR3遺伝子またはCFHR1遺伝子の発現を駆動するプロモーターを含んでよい。あるいは、ベクターは、特定の細胞型でのみ、例えば、網膜細胞または腎臓細胞においてのみ、CFHR3遺伝子またはCFHR1遺伝子の発現を駆動するプロモーターを含んでもよい。関連した局面において、CFHR3タンパク質もしくはCFHR1タンパク質またはその断片をコードする遺伝子治療用ベクターおよび薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物が提供される。
【0035】
別の局面において、本発明は、CFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子の発現を減少させるか、またはCFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子の遺伝子産物の活性もしくは量を減少させる作用物質を投与することによって、加齢黄斑変性症(AMD)を有する(すなわち、その症状を提示している)か、または発症しやすい対象を治療する方法を提供する。作用物質には、CFHR1遺伝子および/またはCFHR3遺伝子の発現を減少させるアンチセンスRNA、siRNA、またはリボザイムが含まれる。関連した局面において、例えば、プラスマフェレーシス、または、例えば、抗CFHR1抗体および/もしくは抗CFHR3抗体を用いる、抗体に基づいた阻害を用いることによって、タンパク質のレベルを低下させる。
【0036】
別の局面において、本発明は、抗CFHR1抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、抗CFHR1抗体は、CFHR1ポリペプチドのアミノ末端に特異的に結合する。別の局面において、本発明は、抗CFHR3抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。1つの態様において、抗CFHR3抗体は、CFHR3ポリペプチドのカルボキシル末端に特異的に結合する。
【0037】
別の局面において、本発明は、血管障害および/またはAMDに対する対象の罹病性を診断するための診断キットであって、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列内の欠失の存在または不在を検出する核酸プライマーまたはプローブを含む診断キットを提供する。
【0038】
別の局面において、本発明は、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列内の欠失の存在または不在を検出する、マイクロアレイのような基板上に固定化された核酸プライマーまたはプローブを含む診断装置を提供する。
【0039】
別の局面において、本発明は、血管障害および/またはAMDに対する対象の罹病性を診断するための診断キットであって、対象の体液試料または組織試料中の補体因子H関連3(CFHR3)タンパク質またはその変種もしくは切断型、および/または補体因子H関連1(CFHR1)タンパク質またはその変種もしくは切断型の存在または不在を検出する抗体を含む診断キットを提供する。
【0040】
別の局面において、本発明は、血管障害を治療する際に使用するための作用物質をスクリーニングするための薬物スクリーニング方法を提供する。この方法は、a)(i)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドを発現する細胞と(ii)試験物質とを混合する段階;b)培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルを測定する段階;ならびにc)試験物質の存在下で培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルを参照値と比較する段階を含み、該参照値は、試験物質の不在下で培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルであり、試験物質の存在下で培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルがより高い場合、その試験物質が血管障害を治療するために有用であり得ることが示される。
【0041】
別の局面において、本発明は、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列において欠失を有する対象を特定し、その欠失を含む染色体中に含まれる遺伝子によってコードされるCFH遺伝子の配列を決定し、かつ、そのCFH遺伝子によってコードされるタンパク質であって、野生型CFHとは異なり、AMDが発症しないように保護する可能性が高いCFHタンパク質であるタンパク質の配列を決定することにより、AMDが発症しないように保護する可能性が高いCFHタンパク質を同定するための方法を提供する。本発明はまた、この方法を用いて得られる保護性のCFHタンパク質も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】染色体1q32上の補体活性化調節因子(RCA)遺伝子クラスターの構成、ならびに補体因子H(CFH)、因子H様1(CFHL1)ならびに因子H関連1、2、3、4、および5(CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、およびCFHR5)中のショートコンセンサスリピート(SCR)として公知の約60アミノ酸のドメインの配置を示す図である。CFHは20個のSCRを有する。これらのSCRのうちのいくつかと相互作用する相手が決定されており、かつ、右上に示されている(CRP、C反応性タンパク質;Hep、ヘパリン)。補体因子H様1(CFHL1)は、CFHのスプライスアイソフォームであるが、補体因子H関連タンパク質1〜5(CFHR1〜5)は、独自の遺伝子(CFHR1〜5)によってそれぞれコードされている。楕円の中の数字によって示すように、CFHR1〜5のSCRは、CFH中のSCRのいくつかに類似している。例えば、CFHR5は9個のSCRを有し、最初の2個は因子HのSCR6およびSCR7に類似しており、したがって、CRP結合特性およびヘパリン結合特性を有する。CFHR5のSCR5〜7は、因子HのSCR12〜14に類似しており、かつ、C3b結合特性およびヘパリン結合特性を有するため、対応する楕円形の中に数字12〜14が記載されている。
【図2】CFHおよび因子H関連タンパク質をコードする遺伝子中の相同な領域(ゲノム重複)を示す。エキソンは、縦線として示されている。同じ文字(例えば、A、A'、およびA'')で標識された領域は、実質的に同一な配列を有する。
【図3】抗ヒトCFH抗体を用いた、患者7名に由来する血清タンパク質のウェスタンブロットを示す。FHL-1、CFHR1、およびCFHR2は、それぞれ、CFH、CFHR1、およびCFHR2の切断型の位置を示す。使用された抗ヒトCFH抗体は、CFHR1およびCFHR2とも交差反応する。SSCP解析および直接DNA配列決定によって決定されたように、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のホモ接合性欠失を有する患者2名(197-02および325-02)の血清中でCFHR1は検出されない。
【図4】CFH遺伝子、CFHR3遺伝子、およびCFHR1遺伝子のSSCP解析を示す。1、2、3、および4は、DNAをPCR増幅するためにCFH遺伝子のエキソン22に由来するプライマーを用いて観察した4種の異なるSSCPパターンを示す。SSCPパターン1、2、および3は、CFHR3およびCFHR1のホモ接合性非欠失またはヘテロ接合性欠失に対応し、パターン4は、CFHR3およびCFHR1のホモ接合性欠失に対応する。
【図5】患者20名に由来する白血球中のCFHおよびCFH関連遺伝子1〜5のPCR解析を示し、CFHエキソン22プライマーを用いてSSCPパターンに基づいて4つのグループに分けている(パターン1〜4は図4で説明したとおりである)。左から右に、各パネル(ゲル)において、SSCPパターン1、2、3、および4を提示する患者にそれぞれ由来する白血球由来DNA試料5個を、図のように、CFH、CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、およびCFHR5に特異的なプライマーを用いたPCRに供した。SSCP解析および直接DNA配列決定により、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のホモ接合性欠失が示される場合、PCRで増幅可能なCFHR3 DNAおよびCFHR1 DNAは検出されない。
【図6】CFHタンパク質(SEQ ID NO:2)、CFHR1タンパク質(SEQ ID NO:4)、およびCFHR3タンパク質(SEQ ID NO:6)のアミノ酸アライメントを示す。
【図7】CFH遺伝子(SEQ ID NO:1)、CFHR1遺伝子(SEQ ID NO:3)、およびCFHR3遺伝子(SEQ ID NO:5)のヌクレオチドアライメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
1 定義
以下の定義は、本発明の理解を助けるために提供される。他に規定されない限り、本明細書において使用されるすべての技術分野専門用語、記号、および他の科学的または医学的な用語または専門用語は、医学および分子生物学の当業者によって一般に理解される意味を有すると意図される。一部の場合において、一般に理解される意味を有する用語は、明確にし、かつ/または参照を容易にするために本明細書において定義され、本明細書においてそのような定義を含めることは、当技術分野において一般に理解されていることとの実質的な相違を表すと想定すべきではない。
【0044】
「血管障害」は、血管系の疾患または病態である。血管障害の1つのタイプは、腹部大動脈瘤または脳頭蓋内動脈瘤などの動脈瘤である。血管障害の他のタイプには、高血圧、脳血管発作、一過性脳虚血発作(例えば脳卒中)が含まれる。血管障害のさらに他のタイプには、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、拡張蛇行静脈、および末梢血管疾患が含まれる。
【0045】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、または「オリゴヌクレオチド」は、任意の長さのポリマー型ヌクレオチドであり、DNAまたはRNAでよく、かつ、一本鎖または二本鎖でよい。核酸には、プロモーターまたは他の調節配列が含まれ得る。オリゴヌクレオチドは、通常、合成的手段によって調製される。二本鎖核酸の1つの鎖の配列に言及することにより、相補配列が定義され、かつ、文脈から特に明らかである場合を除いて、核酸の1つの鎖に言及することにより、その相補物にも言及することになる。特定の用途のために、細胞内での安定性を高め、かつ半減期を延長するために、核酸(例えば、RNA)分子を改変してもよい。可能な改変には、分子主鎖内のホスホジエステラーゼ結合の代わりにホスホロチオアートまたは2'-O-メチルを使用することが含まれるが、それに限定されるわけではない。改変核酸には、内因性エンドヌクレアーゼによって通常ほど容易に認識されない、ペプチド核酸(PNA)、ならびにイノシン、クエオシン、およびワイブトシンなど非伝統的な塩基を有する核酸、ならびに、アセチル化、メチル化、チオ化、および同様に改変した形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンが含まれる。
【0046】
「ハイブリダイゼーションプローブ」は、核酸の相補鎖に塩基特異的な様式で結合することができる核酸である。このようなプローブには、核酸およびペプチド核酸が含まれる(Nielsen et al., 1991)。ハイブリダイゼーションは、当技術分野において公知であるストリンジェントな条件下で実施することができる。例えば、BergerおよびKimmel (1987) METHODS IN ENZYMOLOGY、152巻: GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES, San Diego:Academic Press, Inc.; Sambrook et al. (1989)MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory; Sambook (2001) 第3版; Rychlik, W.およびRhoads, R.E.、1989, Nucl. Acids Res. 17, 8543; Mueller, P.R. et al. (1993)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 15.5, Greene Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley and Sons, New York;ならびにAndersonおよびYoung、QUANTITATIVE FILTER HYBRIDIZATION IN NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION(1985)を参照されたい。本明細書において使用される場合、「プローブ」という用語はプライマーを含む。プローブおよびプライマーは、「オリゴヌクレオチド」と呼ばれることがある。
【0047】
「プライマー」という用語は、適切な条件下、適切な緩衝液中、かつ適切な温度での鋳型指示DNA合成の開始点の役割を果たすことができる一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの適切な長さは、プライマーの意図された用途に応じて変わるが、典型的には、15〜30ヌクレオチドの範囲である。プライマー配列は、鋳型に対して厳密に相補的である必要はないが、鋳型とハイブリダイズするのに十分な程度相補的でなければならない。「プライマー部位」という用語は、プライマーがハイブリダイズする標的DNAの領域を意味する。「プライマーペア」という用語は、増幅しようとするDNA配列の5'末端にハイブリダイズする5'上流プライマー、および増幅しようとする配列の3'末端の相補物にハイブリダイズする3'下流プライマーを含む、1組のプライマーを意味する。
【0048】
短いプローブおよびプライマーの場合の例示的なハイブリダイゼーション条件は、算出されたTmより約5〜12℃低い温度である。Tmを計算するための式は公知であり、14塩基未満のオリゴの場合、Tm=4℃×(プライマー中のGおよびCの数)+2℃×(プライマー中のAおよびTの数)が含まれ、かつ、反応は50mM一価陽イオンの存在下で実施されると想定する。より長いオリゴの場合、以下の式を使用することができる:Tm=64.9℃+41℃×(プライマー中のGおよびCの数-16.4)/N(式中、Nはプライマーの長さである)。一般に使用される別の式は、試薬の塩濃度を考慮に入れる(Rychlik、前記、Sambrook、前記、Mueller、前記):Tm=81.5℃+16.6℃×(log10[Na+]+[K+])+0.41℃×(%GC)-675/N(式中、Nはオリゴ中のヌクレオチドの数である)。前述の式は、ある種の用途の場合の開始点を提供する。しかしながら、個々のプローブおよびプライマーの設計は、付加的な因子または異なる因子を考慮に入れてよい。本発明の方法において使用するためのプローブおよびプライマーの設計方法は、当技術分野において周知である。
【0049】
「多型性」という用語は、ある個体群における2種またはそれ以上の遺伝的に決定された代替配列または対立遺伝子の存在を意味する。「多型部位」とは、配列の分岐が存在する座位である。多型部位は、少なくとも2つの対立遺伝子を有する。2対立遺伝子多型は2つの対立遺伝子を有する。3対立遺伝子多型は3つの対立遺伝子を有する。2倍体生物は、対立遺伝子型がホモ接合性またはヘテロ接合性でよい。多型部位は、一塩基対くらいに小さくてもよい。多型部位の例には、制限断片長多型(RFLP)、可変数タンデム反復(VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、および単純配列反復が含まれる。本明細書において使用される場合、「多型」への言及は、1組の多型(すなわちハプロタイプ)を包含し得る。
【0050】
「一塩基多型(SNP)」は、対立遺伝子配列間の変異部位である、単一のヌクレオチドによって占められた多型部位で生じる。通常、対立遺伝子の高度に保存された配列が、この部位の前および後にある。SNPは、通常、多型部位での1つのヌクレオチドによる別のヌクレオチドの置換が原因で起こる。1つのプリンが別のプリンによって置換されること、または1つのプピリミジンが別のピリミジンによって置換されることは、トランジションと呼ばれている。ピリミジンによるプリンの置換または逆の場合は、トランスバージョンと呼ばれる。同義SNPとは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しない、コード領域中の1つのヌクレオチドによる別のヌクレオチドの置換を意味する。非同義SNPとは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更する、コード領域中の1つのヌクレオチドによる別のヌクレオチドの置換を意味する。SNPはまた、参照対立遺伝子と比べた1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入から生じる場合もある。
【0051】
「欠失」という用語は、核酸配列に関係する場合、参照配列または野生型配列と比べて1つまたは複数の塩基が欠けているという、対立遺伝子の遺伝学における通常の意味を有する。欠失は、一塩基対くらいに短くてもよい。本発明において検出される欠失は、より長くてよく、例えば、少なくとも100bp、少なくとも200bp、少なくとも300bp、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、少なくとも1000bp、少なくとも1100bp、少なくとも1200bp、少なくとも1300bp、少なくとも1400bp、少なくとも1500bp、少なくとも1600bp、少なくとも1700bp、少なくとも1800bp、少なくとも1900bp、少なくとも2000bp、少なくとも2500bp、少なくとも3000bp、少なくとも3500bp、少なくとも4000bp、少なくとも4500bp、少なくとも5000bp、少なくとも6000bp、少なくとも7000bp、少なくとも8000bp、少なくとも9000bp、少なくとも10,000bp、少なくとも15,000bp、少なくとも20,000bp、少なくとも30,000bp、少なくとも40,000bp、少なくとも50,000bp、少なくとも75,000bp、少なくとも100,000bp、少なくとも125,000bp、少なくとも150,000bp、少なくとも200,000bp、または少なくとも250,000bpの欠失でよい。
【0052】
「ハプロタイプ」という用語は、ある個体の遺伝子内部の多型部位の1組の多型または対立遺伝子の呼称を意味する。例えば、「112」因子Hハプロタイプとは、最初の2つの多型部位のそれぞれに対立遺伝子1を含み、かつ第3の多型部位に対立遺伝子2を含む因子H遺伝子を意味する。「ディプロタイプ」はハプロタイプのペアである。
【0053】
「単離された」核酸とは、組成物中に存在する主な種である核酸種を意味する。「単離された」とは、核酸が、自然界では結合している少なくとも1種の化合物から分離されていることを意味する。精製された核酸は、存在するすべての高分子種の(モルベースで)少なくとも約50、80、または90パーセントを構成する。
【0054】
2つのアミノ酸配列は、それらが少なくとも約80%同一、好ましくは少なくとも約90%同一、より好ましくは少なくとも約95%、少なくとも約98%同一、または少なくとも約99%同一である場合、「実質的な同一性」を有するとみなされる。配列同一性パーセンテージは、典型的には、2つの配列間の最適なアライメントを決定し、かつそれら2つの配列を比較することによって算出される。配列の最適なアライメントは、検査によって、またはSmithおよびWaterman、1981 , Adv. Appl. Math. 2:482の局所的相同性アルゴリズムを用いて、NeedlemanおよびWunsch、1970, J. Mol. Biol. 48:443の相同性アライメントアルゴリズムを用いて、PearsonおよびLipman、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444の類似性検索方法を用いて、(例えば、ギャップスコアリングのためなどの)アミノ酸比較用の初期設定パラメーターを用いて、(例えば、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison, Wisにおいて)これらのアルゴリズムをコンピュータによって実行することにより、実施することができる。特定の長さまたは領域に関して2つの配列間の配列同一性を記述することが望ましい場合がある(例えば、2つの配列は、少なくとも500塩基対長に渡って少なくとも95%の同一性を有すると記述する場合がある)。通常、長さは、少なくとも約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000アミノ酸、または参照タンパク質の完全長である。2つのアミノ酸配列はまた、1、2、もしくは3残基だけ、または2〜20残基、2〜10残基、3〜20残基、もしくは3〜10残基だけ異なる場合には、実質的な同一性を有するとみなすことができる。
【0055】
「連鎖」とは、同じ染色体上での位置が原因で、遺伝子、対立遺伝子、座位、または遺伝子マーカーが一緒に遺伝される傾向を説明する。連鎖は、それら2つの遺伝子、対立遺伝子、座位、または遺伝子マーカーの間の組換え率によって測定することができる。典型的には、互いから50センチモルガン(cM)以内の距離に存在する座位は連鎖している。連鎖したマーカーは、同じ遺伝子または遺伝子クラスター内に存在し得る。「連鎖不平衡」または「対立遺伝子関連」とは、その集団における任意の特定の対立遺伝子頻度の見込みによって予想されるよりも頻繁な、近隣の染色体位置での特定の対立遺伝子または遺伝子マーカーと特殊な対立遺伝子または遺伝子マーカーとの優先的な関連を意味する。連鎖不平衡にあるマーカーは、そのマーカーそれ自体が疾患を引き起こさない場合でも、疾患に対する罹病性を検出する際に特に有用であり得る。
【0056】
「罹病性」、「傾向」、および「リスク」という用語は、ある個体が障害(例えば、病態、疾病、障害、または疾患)を発症する可能性が対照集団と比べて高いことまたは低いことのいずれかを意味する。一例を挙げれば、対照集団は、障害が無いか、またはアッセイする遺伝子型も表現型も持たない集団(例えば、年齢、性別、人種、および/または民族性をマッチさせた集団)の個体群でよい。一部の文脈において、診断(diagnosing)およびスクリーニング(screening)という用語は同義的に使用される(例えば、当業者は、疾患を発症する傾向を診断することができる)。
【0057】
「診断する」および「診断」という用語は、個体が特定の障害(例えば、病態、疾病、障害、または疾患)を有するかどうかを決定または特定する能力を意味する。
【0058】
本明細書において使用される「スクリーニングする」または「スクリーニング」という用語は、幅広い意味を有する。これは、診断のため、または、無症候の対象が以後の人生で障害を発症する罹病性、傾向、リスク、もしくはリスク評価を決定するためのものであるプロセスを含む。スクリーニングはまた、対象の予後、すなわち、対象がある障害と診断された場合に、その障害の経過を前もって決定すること、ならびに障害を治療するための治療法選択肢の有効性の評価も含む。
【0059】
「部分」、「断片」、および/または「切断型」という用語は、因子H関連遺伝子産物(例えば、CFHR3遺伝子産物またはCFHR1遺伝子産物)に関して使用される場合、完全長配列より小さな核酸配列またはポリペプチド配列(すなわち、完全長の遺伝子またはポリペプチドの一部分)を意味する。CFHR3またはCFHR1の遺伝子またはポリペプチドの一部分または断片または切断型は、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、または少なくとも300ヌクレオチド長またはアミノ酸長でよい。典型的には、この部分は、少なくとも1つ、しばしば少なくとも2つ、および時々少なくとも3つまたは4つの完全なSCRを含む。
【0060】
本明細書において使用される場合、「遺伝子産物」という用語は、RNA(例えば、mRNA)または遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。「タンパク質コード領域」は、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする、遺伝子内のDNA/RNA配列の領域である。
【0061】
「アッセイ」とは、試験物質、例えば、核酸または遺伝子の産物の存在もしくは量または特性を検出または測定する手順である。
【0062】
「阻害する」および「低減させる」という用語は、遺伝子発現または遺伝子産物活性の部分的または全面的な阻害を含む、発現または活性の任意の阻害、低減、または減少を意味する。
【0063】
2 CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子における多型性とAMDおよび血管障害を発症するリスクとの関連
CFH遺伝子の多型部位およびハプロタイプとAMDを発症する可能性との相関が発見された。あらゆる目的のためにそれぞれその全体が参照により組み入れられる、Hageman et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102:7227-32; Haines et al., 2005, Science 308:419-21; Klein et al., 2005, Science 308:385-9; Edwards et al., 2005, Science 308:421-4、および米国特許公報第20070020647号を参照されたい。CFHリスクハプロタイプおよびCFH保護性ハプロタイプの両方が公知である。リスクの上昇に特に関連している多型性には、rs1061170(402H;エキソン9)、rs203674(イントロン10)における変種対立遺伝子、および残基1210(1210C;エキソン22)における多型性が含まれる。リスクの低下に特に関連している多型性には、IVS6(イントロン6、rs3766404)における変種対立遺伝子を含む保護性のH2ハプロタイプ、ならびにIVS1(イントロン1、rs529825)における変種対立遺伝子および変種対立遺伝子(I62)(エキソン2、rs800292)を含むH4ハプロタイプが含まれる。
【0064】
AMD保護性ハプロタイプが、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列(すなわち、CFHR1タンパク質およびCFHR3タンパク質をコードするDNA配列)内の欠失に遺伝学的に関係していることが、以下に発見された。以下の実施例1を参照されたい。CFHR1座位およびCFHR3座位における欠失が、AMDを発症するリスクの低下に関連しているという発見には、AMDを発症するリスクを確定するために個体をスクリーニングすること、およびAMDに苦しんでいるか、またはAMDを発症するリスクが高い個体に対する新規かつ最適な治療的アプローチの特定を含む、いくつかの具体的な応用例がある。以下の実施例1で考察するように、欠失遺伝子型はCFH H4ハプロタイプと主に関連している。Hageman et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102:7227-32を参照されたい。したがって、この欠失は、H4ハプロタイプが保護性である病態のリスク低下に関するマーカーの役割を果たす。
【0065】
さらに、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列(すなわち、CFHR1タンパク質およびCFHR3タンパク質をコードするDNA配列)内の欠失が、大動脈動脈瘤のような血管疾患を発症するリスクの上昇に関係していることも、以下に発見された。以下の実施例1を参照されたい。CFHR1座位およびCFHR3座位における欠失が、血管障害を発症するリスクの上昇に関連しているという発見には、血管障害を発症するリスクを確定するために個体をスクリーニングすること、および血管障害に苦しんでいるか、または血管障害を発症するリスクが高い個体に対する新規かつ最適な治療的アプローチの特定を含む、いくつかの具体的な応用例がある。
【0066】
3 スクリーニング法
本明細書において説明する発見に基づいて、対象が第1染色体の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)のエキソン1の5'末端との間に位置する領域内に欠失を有するか否かを決定することによって、AMDまたは血管疾患に対する対象のリスクを評価することができる。欠失の程度は、様々な個体または集団において異なってよい。例えば、1つの態様において、CFHエキソン22とCFHR4エキソン1の間の領域の大半のすべてが欠失している。あるいは、例えば、CFHエキソン22とCFHR4エキソン1の間の領域全体より小さいが、CFHR1コード配列を含むか、もしくはCFHR3コード配列を含むか、両方を含むか、または非コード(例えば遺伝子内の)配列を含む欠失のように、その領域の一部分が欠失していてもよい。個体は、欠失に関してホモ接合性でもよく(両方の第1染色体がその領域中に欠失を有する)、または欠失に関してヘテロ接合性でもよい。
【0067】
例として、かつ非限定的に、CFHR1および/またはCFHR3のホモ接合性欠失は、体液試料もしくは組織試料中のCFHR1タンパク質および/もしくはCFHL3タンパク質の不在から(図3を参照されたい)、CFHエキソン22の3'末端とCFHR4エキソン1の5'末端との間の領域でコードされるRNAの不在(例えば、CFHR1 mRNAおよび/もしくはCFHL3 mRNAの不在の不在)によって、またはCFHエキソン22の3'末端とCFHR4エキソン1の5'末端との間の領域中の領域におけるゲノムDNAの不在によって検出することができる。DNA配列またはRNA配列の存在または不在は、PCRのような当技術分野で公知の方法を用いて決定することができる。核酸配列の不在は、組織試料のアッセイにおける増幅されたPCR産物の不在から推定される(図5を参照されたい)。遺伝子解析のための方法としてPCRが頻繁に本明細書に引用されるが、他の多くの解析方法が公知であり、欠失を検出するために適していることが理解されると考えられる。例として、かつ非限定的に、「核酸試料の解析」という見出しを付けたセクションで、いくつかを後述する。
【0068】
CFHR1および/またはCFHR3のテロ接合性欠失は、例として、かつ非限定的に、(1)CFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子の両方の対立遺伝子を有する対照に由来する量と比べた、体液試料もしくは組織試料中のタンパク質の量の減少から、(2)欠失の無いホモ接合体の同様の試料に由来する量と比べた、組織試料中のRNA、DNA、もしくは増幅させたPCR産物の量の減少から、または(3)直接DNA配列決定、定量的PCR、もしくは当技術分野において公知の他の方法を用いたアッセイ法によって、決定することができる。例えば、ヘテロ接合体における遺伝子産物の量は、欠失の無いホモ接合体と比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、約50%またはそれ以上、減少している場合がある。試料中のmRNAまたはDNAの2倍の差を検出することができると考えられる定量的なPCRおよび方法が利用可能である。
【0069】
上述したように、欠失は、CFHエキソン22とCFHR4エキソン1の間の領域中に存在するが、その領域全体に及ばなくてもよい。CFHR1遺伝子および/またはCFHR3遺伝子の一部分の欠失(「部分的欠失」)により、CFHR1および/またはCFHR3のRNAおよびポリペプチドの切断型が生じ得る。このような部分的欠失は、完全長タンパク質と比べた、体液試料または組織試料中のタンパク質のサイズの差によって、RNAのサイズの差を検出することによって、ならびに、欠失を含む核酸と欠失を含まない核酸を区別するために選択されたプライマーを用いた、生物試料中のDNAまたはRNAのPCR増幅を含む、当技術分野において周知の様々な方法によって、確認することができる。当技術分野において公知の方法を用いて、ホモ接合体をヘテロ接合体と区別することができる(例えば、実施例1を参照されたい)。
【0070】
核酸解析に適したプライマーまたはプローブの選択、設計、および製造は、当技術分野において周知である。当業者は、適切な組み合わせのプライマーを用いて欠失を検出することができる。ある態様において、プライマーまたはプローブは、補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列中の任意の位置でハイブリダイズするように設計される。例えば、両方のプライマーをCHFR3遺伝子中に配置して、その存在または不在を検出することができる。別の例において。他の例において、1つまたは複数のプライマーは、遺伝子間(非コード)配列、例えば、CFHR3とCFHR1の間、またはCFHR1とCFHR4の間の遺伝子間配列内に配置される。
【0071】
別の態様において、本発明は、遺伝子変換のような遺伝情報の非相互的な移動を検出する方法を含む。1つの例において、遺伝子変換は、3' CFHR1遺伝子の一部分によるCFH遺伝子の3'部分の置換をもたらし、その結果、CFH遺伝子とCFHR1遺伝子の両方に由来する配列を有するキメラタンパク質が生成する。
【0072】
3.1 核酸試料の解析
遺伝子配列における多型性および欠失を検出するための方法は当技術分野において周知であり、かつ、本発明で使用するために適合させることができる。
【0073】
1つの態様において、ゲノムDNAが解析される。ゲノムDNAのアッセイの場合、ゲノムDNAまたはRNAを含む実質的に任意の生物試料、例えば、有核細胞が適している。例えば、ゲノムDNAは、患者対象および対照対象から採取した末梢血白血球から得ることができる(QIAamp DNA Blood Maxi kit, Qiagen, Valencia, CA)。他の適切な試料には、唾液、頬擦過標本、網膜、腎臓、皮膚、もしくは肝臓または他の器官もしくは組織の生検材料、羊水、および脳脊髄液(CSF)試料などが含まれる。あるいは、RNAまたはcDNAをアッセイしてもよい。診断的アッセイ法または他のアッセイ法において使用するために患者試料から核酸を精製または部分的に精製するための方法は、周知である。
【0074】
核酸における多型性および欠失を検出するための方法には、非限定的に、サザンブロット解析(Kees et al.、「Homozygous Deletion of the p16/MTS1 Gene in Pediatric Acute Lymphoblastic Leukemia Is Associated With Unfavorable Clinical Outcome」、Blood 89:4161-4166、Fizzotti et al.、「Detection of homozygous deletions of the cyclin-dependent kinase 4 inhibitor (p16) gene in acute lymphoblastic leukemia and association with adverse prognostic features」、Blood 85(10):2685-2690、Kitada et al.、「Mutations in the parkin gene cause autosomal recessive juvenile parkinsonism」、Nature 392(9):605-608を参照されたい)、ノーザンブロット解析(Fieschi et al.、「A novel form of complete IL-12/IL-23 receptor b1 deficiency with cell surface-expressed nonfunctional receptors」、Immunobiology 104(7):2095-2101を参照されたい)が含まれ、かつ、PCRに基づいた方法のような増幅に基づいた方法が、試料中の欠失を検出するために使用される。PCRプライマーは、公知の変異に隣接するDNA配列を標的とするように設計してよく、その際、WT DNAを用いた増幅反応との比較におけるPCR産物の大きさの変化により、変異体鋳型が同定される。プライマーはまた、欠失した配列を標的にしてもよく、その際、PCR産物の不在により、変異体鋳型が同定され(Kitada et al.、「Mutations in the parkin gene cause autosomal recessive juvenile parkinsonism」、Nature 392:605-608)、マルチプレックスPCR(Chong et al.、「Single-tube multiplex-PCR screen for common deletional determinants of α-thalassemia」、Blood 95(1):360-362)が含まれる。
【0075】
多型性(例えば、欠失)はまた、対立遺伝子特異的プローブ、対立遺伝子特異的プライマーの使用、直接配列解析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)解析、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析、および変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)解析によって検出することもできる。DNAにおける多型性を検出するための他の周知の方法には、分子ビーコン(Molecular Beacons)技術(例えば、Piatek et al., 1998; Nat. Biotechnol. 16:359-63; TyagiおよびKramer、1996, Nat. Biotechnology 14:303-308;ならびにTyagi, et al., 1998, Nat. Biotechnol. 16:49-53を参照されたい)、インベーダー(Invader)技術(例えば、Neri et al., 2000, Advances in Nucleic Acid and Protein Analysis 3826:117-125および米国特許第6,706,471号を参照されたい)、核酸配列ベースの増幅(Nasba)(Compton, 1991)、スコーピオン(Scorpion)技術(Thelwell et al., 2000, Nuc. Acids Res, 28:3752-3761およびSolinas et al., 2001、「Duplex Scorpion primers in SNP analysis and FRET applications」 Nuc. Acids Res, 29:20)の使用、および制限断片長多型(RFLP)解析などが含まれる。
【0076】
多型性を解析するための対立遺伝子特異的プローブの設計および使用は、例えば、Saiki et al., 1986; Dattagupta、EP235,726、およびSaiki、WO89/11548によって記述されている。手短に言えば、対立遺伝子特異的プローブは、2つのセグメントが異なる多形型を示す場合、一方の個体に由来する標的DNAのセグメントにハイブリダイズするが、別の個体由来の対応するセグメントにはハイブリダイズしないように設計される。十分にストリンジェントであり、その結果、所与のプローブが2つの対立遺伝子のうち一方のみに本質的にハイブリダイズするハイブリダイゼーション条件が選択される。典型的には、対立遺伝子特異的プローブは、多型部位がプローブの中心位置と合うように標的DNAのセグメントにハイブリダイズするように設計される。
【0077】
欠失および多型性を解析するための例示的なプローブは実施例1の表1に示すが、他の多くのものが当業者によって設計され得る。
【0078】
対立遺伝子特異的プローブはしばしばペアで使用され、ペアの一方のメンバーは標的配列の参照対立遺伝子にハイブリダイズするように設計されており、かつ、他方のメンバーは変種対立遺伝子にハイブリダイズするように設計されている。同じ標的遺伝子配列内の複数の多型性を同時に解析するために、同じ支持体上にプローブのいくつかのペアを固定化することができる。
【0079】
多型性を解析するための対立遺伝子特異的プライマーの設計および使用は、例えばWO93/22456およびGibbs, 1989によって記述されている。手短に言えば、対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーが特定の対立遺伝子型に対して完全な相補性を示す場合のみ、多型部位と重複する標的DNA上の部位にハイブリダイズし、かつ、標準的なPCRプロトコールに従ってDNA増幅を開始するように設計されている。一塩基ミスマッチはDNA増幅を妨げ、検出可能なPCR産物は形成されない。この方法は、多型部位がプライマーの3'最末端にある場合に最も良く機能する。この位置は、プライマーからの伸長に対して最も不安定であるためである。
【0080】
PCRを用いて作製した増幅産物は、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を用いて解析することができる。様々な対立遺伝子は、配列依存性の融解特性および溶液中での電気泳動移動に基づいて同定することができる。Erlich編、PCR Technology, Principles and Applications for DNA Amplification、7章(W. H. FreemanおよびCo、New York, 1992)を参照されたい。
【0081】
標的配列の対立遺伝子は、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析を用いて区別することができる。様々な対立遺伝子は、一本鎖PCR産物の配列および構造依存的な電気泳動移動に基づいて同定することができる(Orita et al., 1989)。増幅させたPCR産物は、標準プロトコールに従って作製し、かつ加熱または別の方法で変性させて一本鎖生成物を形成させることができ、この一本鎖生成物は、リフォールディングするか、または塩基配列に部分的に依存している2次構造を形成し得る。
【0082】
標的配列の対立遺伝子は、変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)解析を用いて区別することができる。様々な対立遺伝子は、一本鎖PCR産物のクロマトグラフィーでの移動の変化によって、塩基の差に基づいて同定することができる(FruehおよびNoyer-Weidner、2003, Clin Chem Lab Med. 41(4):452-61)。増幅させたPCR産物は、標準プロトコールに従って作製し、かつ加熱または別の方法で変性させて一本鎖生成物を形成させることができ、この一本鎖生成物は、リフォールディングするか、または塩基配列に部分的に依存している2次構造を形成し得る。
【0083】
多型性の直接配列解析は、当技術分野において周知であるDNA配列決定手順を用いて遂行することができる。Sambrook et al., MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL(第2版、CSHP, New York 1989)およびZyskind et al., RECOMBINANT DNA LABORATORY MANUAL(Acad. Press, 1988)を参照されたい。
【0084】
ホモ接合体欠失は、当技術分野において公知の様々な方法によって同定することができる。例えば、1つのアプローチにおいて、DNA試料は、さらに解析するために増幅される。ある態様において、2つのCFHR1-特異的プライマーペアが使用される。例えば、

である。別の態様において、CFHR3-特異的プライマーペアが使用される。例えば、

である。正確な大きさのPCR産物が不在である場合、CFHL1遺伝子および/またはCFHL3遺伝子が欠失していることが示唆される。
【0085】
同様に、ヘテロ接合体欠失も、当技術分野において公知の様々な方法によって同定することができる。例えば、1つのアプローチにおいて、DNA試料は、さらに解析するために、例えば上記に挙げた同じプライマーを用いて増幅され、続いて、直接配列決定される。ヘテロ接合体は、例えば、1つのピークが、SNP位置(CFHR1の場合rs460897、rs16840561、rs4230、rs414628、CFHR3の場合rs1061170)において、(大きさの等しいピークと対照的に)第2のピークの約半分の高さであるクロマトグラムを特徴とする。別の態様、すなわちParAllele遺伝子型解析データを使用するプロトコールにおいて、コピー数解析が実施され、これら2つの遺伝子の領域中の鍵となるマーカー(MRD_3855、MRD_3856、MRD_3857、rs385390、rs389897)の遺伝子型を特定できない試料が同定される。コピー数0を割り付けられた全試料(CN0と呼ばれる)において、欠失を含むハプロタイプが定義されることが可能になる。欠失ハプロタイプを定義した後、連鎖不平衡を用いて、試料が欠失を有し得るかどうかを推測する。具体的には、試料が、ハプロタイプを定義するものと異なる対立遺伝子に関してホモ接合性である場合、その試料は欠失を有さない。
【0086】
生物試料中の多型性を検出するための多種多様な他の方法が、当技術分野において公知である。例として、かつ非限定的に、例えば、Ullman et al.、「Methods for single nucleotide polymorphism detection」、米国特許第6,632,606号; Shi, 2002、「Technologies for individual genotyping:detection of genetic polymorphisms in drug targets and disease genes」 Am J Pharmacogenomics 2:197-205、およびKwok et al., 2003、「Detection of single nucleotide polymorphisms」 Curr Issues Biol. 5:43-60を参照されたい。
【0087】
3.2 タンパク質試料の解析
CFHR1遺伝子産物およびCFHR3遺伝子産物ならびにそれらの変種または断片などのタンパク質を検出するために適応させることができるタンパク質解析方法が周知である。これらの方法には、電気泳動(キャピラリー電気泳動ならびに1次元および2次元の電気泳動を含む)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法、質量分析法などの生化学的分析方法、ならびに液体またはゲル沈降反応、免疫拡散法(一次元免疫拡散または二重免疫拡散)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ法、およびウェスタンブロット法など様々な免疫学的方法が含まれる。
【0088】
例えば、本発明を実施するのに適した、いくつかの十分に確立した免疫学的結合アッセイ形式が公知である(例えば、Harlow, E.; Lane, D. ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL. Cold Spring Harbor, N.Y:Cold Spring Harbor Laboratory; 1988;およびAusubel et al.,(2004) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York NY.を参照されたい)。アッセイ法は、例えば、競合的または非競合的でよい。典型的には、免疫学的結合アッセイ法(またはイムノアッセイ法)は、分析物に特異的に結合し、かつしばしば、それを固定する「捕捉物質」を利用する。1つの態様において、捕捉物質は、変種もしく野生型のCFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチドまたは部分配列(例えば、CFHR1もしくはCFHR3の断片もしくは切断型)に特異的に結合する部分である。結合されたタンパク質は、例えば、検出可能に標識された抗CFHR1抗体または抗CFHR3抗体を用いて検出することができる。
【0089】
3.3 複数の多型性およびマーカーを用いたスクリーニング
診断的方法において、CFHR1多型性および/またはCFHR3多型性の解析は、AMDまたは血管疾患(例えばAAA)に関連した他の遺伝子における多型性の解析、AMDのタンパク質マーカーの検出(例えば、あらゆる目的のためにそれぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる、Hageman et al.、特許公報US20030017501;US20020102581;WO0184149;およびWO0106262;ならびに米国特許出願第11/706,154号(表題「Protective Complement Proteins and Age-Related Macular Degeneration」)および第11/706,074号(表題「Variants in Complement Regulatory Genes Predict Age-Related Macular Degeneration」); Gorin et al., US20060281120;ならびにHoh, WO2007/044897を参照されたい)、AMDまたは血管疾患の他のリスク要因(家族歴など)の評価と組み合わせてよい。
【0090】
例えば、CFHR1多型性および/またはCFHR3多型性(例えば、欠失)の解析は、補体因子H遺伝子(CFH)における多型性の解析と組み合わせることができる。検出され得るCFH遺伝子の遺伝的変種には、ヒトCFHのコード領域の1277位におけるT遺伝子型、rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち任意の1つまたは複数;イントロン2(IVS2またはinsTT)、rs2274700、エキソン10A、およびrs375046のうち任意の1つまたは複数;rs529825およびrs800292のうち1つまたは両方;rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち1つまたは複数;rs529825およびrs800292、ならびにrs3766404のうち少なくとも1つ;ならびにrs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち少なくとも1つ;少なくともrs529825、rs800292、rs3766404、rs1061170、およびrs203674;ならびに/またはエキソン22(R1210C)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Hartman et al., 2006、「HTRA1 promoter polymorphism in wet age-related macular degeneration」Science 314:989-92を参照されたい。
【0091】
特定の態様において、CFHR1多型性および/またはCFHR3多型性の解析は、HTRA1遺伝子(PRSS11遺伝子としても公知)、補体因子B(BF)遺伝子、および/または補体成分2(C2)遺伝子における多型性の解析と組み合わせることができる。検出され得るHTRA1遺伝子の遺伝的変種には、rs10490924、rs11200638、rs760336、およびrs763720のうち少なくとも1つが含まれるが、それに限定されるわけではない。HTRA1遺伝子内の一塩基多型(SNP)はそれぞれ、AMDを発症するリスクの上昇と関連付けられている。検出され得るBF遺伝子の遺伝的変種には、BF遺伝子のrs641153におけるAもしくはG、またはBFタンパク質の32位におけるRもしくはQ;および/またはBF遺伝子のrs4151667におけるAもしくはT、またはBFタンパク質の9位におけるLもしくはHの存在が含まれる。検出され得るC2タンパク質の遺伝的変種には、C2遺伝子のrs547154におけるGもしくはT;および/またはC2遺伝子のrs9332379におけるCもしくはG、またはC2タンパク質の318位におけるDのEが含まれる。例えば、Gold et al., 2006 「Variation in factor B (BF) and complement component 2 (C2)genes is associated with age- related macular degeneration 」Nat Genet. 38:458-62を参照されたい。
【0092】
さらに、CFHR1多型性および/またはCFHR3多型性の解析は、AMDに関連するタンパク質マーカーの解析と組み合わせることもできる。タンパク質マーカーには、フィビュリン-3、ビトロネクチン、β-クリスタリンA2、β-クリスタリンA3、β-クリスタリンA4、β-クリスタリンS、グルコース調節タンパク質78kD(GRP-78)、カルレチキュリン、14-3-3タンパク質ε、セロトラスフェリン、アルブミン、ケラチン、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ビリン2、補体1q結合タンパク質/ヒアルロン酸結合タンパク質(「補体1q成分」)、アミロイドA(alアミロイドA)、アミロイドP成分、C5およびCSb-9の末端複合体、HLA-DR、フィブリノーゲン、第X因子、プロトロンビン、補体3、補体5、および補体9、補体反応性タンパク質(CRP)、HLA-DR、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質E、抗キモトリプシン、p2ミクログロブリン、トロンボスポンジン、エラスチン、コラーゲン、ICAM-1、LFA1、LFA3、B7、IL-1、IL-6、IL-12、TNF-α、GM-CSF、熱ショックタンパク質、コロニー刺激因子(GM-CSF、M-CSF)、ならびにIL-10が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0093】
4 治療方法
ある態様において、本発明は、CFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチド、またはCFHR1ポリペプチドおよび/もしくはCFHR3ポリペプチドの少なくとも1つの部分、またはその混合物を対象に投与することにより、CFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子内の欠失、またはCFHR1遺伝子産物および/もしくはCFHR3遺伝子産物の量もしくは活性の減少に関連した疾患を治療および/または予防する方法を提供する。1つの例において、疾患は、血管疾患である。
【0094】
ある態様において、本発明は、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドを減少させるか、または阻害する少なくとも1種の作用物質を対象に投与することにより、CFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子内の欠失の不在、またはCFHR1遺伝子産物および/もしくはCFHR3遺伝子産物の量もしくは活性の未変化もしくは増加に関連した疾患を治療および/または予防する方法を提供する。1つの例において、疾患は、AMDである。
【0095】
4.1 血管障害の予防および治療
血管障害(例えば動脈瘤)を発症する可能性が高いと特定された対象を、CFHR1ポリペプチドおよび/もしくはCFHR3ポリペプチドまたは生物学的に活性なその断片もしくは変種を投与することによって、治療することができる。治療的ポリペプチドは、(例えば静脈内注入によって)全身的に、または(例えば、眼もしくは肝臓などの器官もしくは組織に直接)局所的に投与することができる。これらのポリペプチドは、野生型(天然に存在する)ポリペプチドの配列を有してよく、または、天然に存在する形態と実質的に同一のアミノ酸配列を有してよい。
【0096】
CFHR1ポリペプチドおよびCFHR3ポリペプチドまたは生物学的に活性なその断片もしくは変種は、血液(血清もしくは血漿)から単離してよく、または従来の組換え技術を用いて作製してよい(Ausubel et al., 2004, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New Yorkを参照されたい)。組換え発現は、一般に、原核生物宿主(例えば大腸菌(E.coli))および真核生物宿主(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞)内での発現用に適合されている、DNAの転写を駆動するためのプロモーターを含む発現ベクター中にCFHR1遺伝子またはCFHR3遺伝子を導入する段階を含んだ。適切な宿主細胞には、大腸菌のような細菌、酵母、糸状菌、昆虫細胞、ならびに、典型的には不死化された、マウス細胞株、ハムスター細胞株、ヒト細胞株、およびサル細胞株を含む哺乳動物細胞が含まれる。通常、プロモーターは、哺乳動細胞内での発現用の真核生物プロモーターである。通常、転写調節配列は、異種プロモーターおよび任意で、宿主細胞によって認識されるエンハンサーを含む。市販されている発現ベクターを使用することができる。発現ベクターは、宿主に認識される複製系、増幅可能な遺伝子、選択マーカー、および宿主ゲノム中に挿入するのに有用な宿主配列などを含んでよい。
【0097】
別の態様において、組換えCFHR1または組換えCFHR3は、完全長ポリペプチド、その変種、またはその断片である。1つの態様において、断片は、生物学的に活性な断片である。この状況において、生物学的に活性なCFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドは、野生型CFHR1または野生型CFHR3に関連した活性を有する。例えば、いくつかの態様において、断片は、ヘパリンおよび/またはCRPおよび/またはC3bタンパク質への結合活性を有する。好ましくは、断片は、野生型タンパク質の少なくとも一部分に対して実質的な配列同一性を有する。生物学的に活性な断片は、例えば、少なくとも100残基、200残基、500残基、700残基、900残基、または1100残基など野生型タンパク質に実質的に同一な様々な長さの配列を含んでよい。あるいは、生物学的に活性な断片は、CFHR1またはCFHR3に実質的に同一な少なくとも1つのSCR、好ましくは少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つのSCRを含んでよい。
【0098】
特定の態様において、生物学的に活性な断片は、少なくともSCR6〜7を含む。別の態様において、生物学的に活性な断片は、少なくともSCR19〜20を含む。別の態様において、生物学的に活性なCFHは、少なくともSCR1を含む。
【0099】
特定の態様において、治療的因子Hポリペプチドは、キメラタンパク質または融合タンパク質であり、他のタンパク質に由来する配列を含む。例えば、治療的因子Hポリペプチドは、ヒトCFHR1またはヒトCFHR3の一部分、ならびに、少なくとも部分的に、他のタンパク質(例えば、CR1、MCP、DAF、C4BP、CR2、CFH)由来のSCR(もしくはCCP)コンセンサスドメインおよび/または人工SCR(CCP)コンセンサス配列からなる部分を含んでよい。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,545,619号を参照されたい。
【0100】
4.1.1 CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドを含む治療的組成物
本発明は、野生型または変種(例えば、中立的変種もしくは保護性変種)でよく、かつ、スプライス変種および組換え融合タンパク質を含む、完全長型、切断型、または生物学的に活性な断片でよい、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドの治療的調製物を提供する。治療的CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドは、組換えによって作製することができる。治療的タンパク質は、(例えば、培養した細菌細胞または真核細胞において)組換えによって作製し、当技術分野において周知であり、かつ本明細書において説明する方法を用いて精製することができる。あるいは、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドは、培養RPE細胞(例えば初代培養物)またはCFHR1もしくはCFHR3を内因的に発現する他の細胞から単離することもできる。FDA承認を受けなければならない組換えポリペプチドまたは精製ポリペプチドは、効力およびアイデンティティに関して試験され、無菌であり、外来性物質を取り除かれていなければならず、かつ、製品中のすべての成分(すなわち、保存剤、希釈剤、および補助剤など)が、純度、品質の基準を満たさなければならず、かつ、患者に対して有害であってはならない。
【0101】
本発明は、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチド、および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む組成物を提供する。「薬学的に許容される賦形剤または担体」という用語は、化合物の所望の剤形を調製するのに使用される媒体を意味する。薬学的に許容される賦形剤または担体は、1種または複数種の溶剤、希釈剤、または他の液状ビヒクル、分散助剤もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張化剤、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、および滑沢剤などを含んでよい。RemingtonのPharmaceutical Sciences、第15版、E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, PA, 1975)、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、A.H. Kibbe編(American Pharmaceutical Assoc. 2000)は、薬学的組成物を製剤化する際に使用される様々な担体およびその調製のための公知の技術を開示する。薬学的組成物は、当技術分野において公知の技術に従って、徐放化剤または生分解性物質を用いて製剤化してよい。1つの態様において、薬学的に許容される賦形剤は、(例えば眼内注射によって)眼に投与された場合に、哺乳動物(例えばヒト患者)に対して有害ではない。眼内投与の場合、例として、かつ非限定的に、治療物質は、Balanced Salt Solution(平衡塩類溶液)(BSS)またはBalanced Salt Solution Plus(平衡塩類溶液Plus )(BSS Plus))(Alcon Laboratories, Fort Worth, Texas, USA)に溶かして投与することができる。関連した局面において、本発明は、治療的に許容されるCFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドを任意で凍結乾燥調製物として含む、滅菌済み容器、例えばバイアルを提供する。
【0102】
CFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチド、または生物学的に活性なその断片をある個体に投与する量を決定することができる。1つの態様において、外来性のCFHR1またはCFHR3は、健常個体におけるCFHR1またはCFHR3の血漿中濃度と同様のレベルを実現するのに十分な量、すなわち、約50〜600マイクログラム/ml、例えば約100〜560マイクログラム/mlの血漿中レベルを実現するのに十分な量で、個体に投与することができる。ある個体(例えば、160ポンドの対象)に投与されるCFHR1またはCFHR3の量は、例として、かつ非限定的に、約10ミリグラム/用量〜約5000ミリグラム/用量、約50ミリグラム/用量〜約2000ミリグラム/用量、約100ミリグラム/用量〜約1500ミリグラム/用量、約200ミリグラム/用量〜約1000ミリグラム/用量、または約250ミリグラム/用量〜約750ミリグラム/用量でよい。ある個体にCFHR1またはCFHR3を投与することができる頻度は、例として、かつ非限定的に、1日当たり2回、1日当たり1回、1週当たり2回、1週当たり1回、2週間毎に1回、1ヶ月当たり1回、2ヶ月毎に1回、6ヶ月毎に1回、または1年当たり1回でよい。CFHR1またはCFHR3をある個体に投与する量および頻度は、治療過程をモニターすることによって、医師が容易に決定することができる。
【0103】
あるいは、CFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチドまたは生物学的に活性なその断片は、以下にさらに説明する遺伝子治療法または細胞治療法を用いて、個体に投与することもできる。
【0104】
4.1.2 遺伝子治療法
別のアプローチにおいて、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドは、外来性ポリヌクレオチドにコードされるタンパク質をインビボで発現させることによって(すなわち、遺伝子治療によって)投与される。1つの例において、遺伝子治療は、CFHR1ポリペプチドもしくはCFHR3ポリペプチドまたはCFHR1もしくはCFHR3の生物学的に活性な断片を発現するベクターを細胞中に導入する段階を含む。細胞は、内因性の細胞(すなわち、患者由来の細胞)または操作された外来性細胞でよい。
【0105】
ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性でよい。アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、αウイルス、ラブドウイルス、およびパピローマウイルスに由来するものを含む、動物ウイルスに由来するいくつかのベクターが利用可能である。通常、ウイルスは、それ以上複製しないように弱毒化されている(例えば、Kay et al. 2001, Nature Medicine 7:33-40を参照されたい)。
【0106】
ポリペプチドをコードする核酸は、典型的には、プロモーターおよびエンハンサーなど、個体の標的細胞においてDNAの転写を駆動する調節エレメントに連結されている。プロモーターは、あらゆる細胞型において遺伝子の発現を駆動してよい。あるいは、プロモーターは、特定の細胞型でのみ、例えば、網膜、肝臓、または腎臓の細胞においてのみ、CFHR1遺伝子またはCFHR3遺伝子の発現を駆動してもよい。ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結された調節エレメントは、しばしば、ベクター中にクローニングされる。
【0107】
当業者によって理解されるように、遺伝子治療用ベクターは、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む(かつ、例えば、プロモーター、エンハンサー、他の調節エレメントを含んでよい)。プロモーターは構成的または誘導性でよい。プロモーターは、RPEのような標的組織内での優先的な遺伝子発現を目標とするように選択することができる(最近の総説については、Sutanto et al., 2005、「Development and evaluation of the specificity of a cathepsin D proximal promoter in the eye」 Curr Eye Res. 30:53-61 ; Zhang et al., 2004、「Concurrent enhancement of transcriptional activity and specificity of a retinal pigment epithelial cell-preferential promoter」 Mol Vis. 10:208-14; Esumi et al., 2004、「Analysis of the VMD2 promoter and implication of E-box binding factors in its regulation」 J Biol Chem 279:19064-73; Camacho-Hubner et al., 2000、「The Fugu rubripes tyrosinase gene promoter targets transgene expression to pigment cells in the mouse」 Genesis. 28:99-105、およびその中の参考文献を参照されたい)。
【0108】
適切なウイルスベクターには、DNAウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターなど)、ならびにRNAウイルスベクター(レトロウイルスベクターなど)が含まれる。1つの態様において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが使用される。最近の総説については、Auricchio et al., 2005、「Adeno-associated viral vectors for retinal gene transfer and treatment of retinal diseases」Curr Gene Ther. 5:339-48; Martin et al., 2004, Gene therapy for optic nerve disease, Eye 18:1049-55; Ali, 2004、「Prospects for gene therapy」Novartis Found Symp. 255:165-72; Hennig et al., 2004、「AAV-mediated intravitreal gene therapy reduces lysosomal storage in the retinal pigmented epithelium and improves retinal function in adult MPS VII mice」Mol Ther. 10:106-16; Smith et al., 2003、「AAV-Mediated gene transfer slows photoreceptor loss in the RCS rat model of retinitis pigmentosa」Mol Ther. 8:188-95; Broderick et al., 2005、「Local administration of an adeno-associated viral vector expressing IL-10 reduces monocyte infiltration and subsequent photoreceptor damage during experimental autoimmune uveitis」Mol Ther. 12:369-73; Cheng et al., 2005、「Efficient gene transfer to retinal pigment epithelium cells with long-term expression.」 Retina 25:193-201 ; Rex et al.、「Adenovirus-mediated delivery of catalase to retinal pigment epithelial cells protects neighboring photoreceptors from photo-oxidative stress. 」Hum Gene Ther. 15:960-7、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0109】
遺伝子治療用ベクターは、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)要件に従って製造して、製品を患者に投与するのに適切にしなければならない。本発明は、GMP要件に従って製造および試験される遺伝子治療用ベクターを含む、患者に投与するのに適した遺伝子治療用ベクターを提供する。FDA承認を受けなければならない遺伝子治療用ベクターは、効力およびアイデンティティに関して試験され、無菌であり、外来性物質を取り除かれていなければならず、かつ、製品中のすべての成分(すなわち、保存剤、希釈剤、および補助剤など)が、純度、品質の基準を満たさなければならず、かつ、患者に対して有害であってはならない。例えば、核酸調製物は、マイコプラズマを含まないことが実証される。例えば、Islam et al., 1997, An academic centre for gene therapy research and clinical grade manufacturing capability, Ann Med 29, 579-583を参照されたい。
【0110】
遺伝子治療用ベクターを投与するための方法は公知である。1つの態様において、CFHR1発現ベクターまたはCFHR3発現ベクターは、(例えば、静脈内に、または輸注によって)全身に導入される。1つの態様において、発現ベクターは、局所に(すなわち、特定の組織または器官、例えば肝臓に直接)導入される。1つの態様において、発現ベクターは、(例えば、眼内注射によって)眼中に直接導入される。当業者によって理解されるように、発現ベクターのために選択されるプロモーターは、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドを発現する標的細胞に依存する。いくつかの態様において、細胞型に特異的なプロモーターが使用され、かつ、他の態様において、構成的または一般的プロモーターが使用される。最近の総説については、例えば、Dinculescu et al., 2005、「Adeno-associated virus-vectored gene therapy for retinal disease」Hum Gene Ther. 16:649-63; Rex et al., 2004、「Adenovirus-mediated delivery of catalase to retinal pigment epithelial cells protects neighboring photoreceptors from photo-oxidative stress」 Hum Gene Ther. 15:960-7; Bennett, 2004、「Gene therapy for Leber congenital amaurosis」Novartis Found Symp. 255:195-202; Hauswirth et al.、「Range of retinal diseases potentially treatable by AAV-vectored gene therapy」Novartis Found Symp. 255:179-188、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0111】
したがって、1つの局面において、本発明は、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドをコードする遺伝子治療用ベクター、任意でウイルスベクターを含む調製物であって、この遺伝子治療用ベクターが、ヒト対象に投与するのに適しており、かつ、ヒト対象に投与するのに適した(例えば、GLP技術を用いて製造された)賦形剤中に存在する調製物を提供する。任意で、遺伝子治療用ベクターは、網膜色素上皮細胞において優先的または特異的に発現されるプロモーターを含む。
【0112】
生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、および共重合体(PLGA))中への封入のような、CFHR1遺伝子配列またはCFHR3遺伝子配列を導入するための非ウイルス的方法もまた、使用することができる(最近の総説については、例えば、Bejjani et al., 2005、「Nanoparticles for gene delivery to retinal pigment epithelial cells」Mol Vis. 11:124-32; Mannermaa et al., 2005、「Long-lasting secretion of transgene product from differentiated and filter-grown retinal pigment epithelial cells after nonviral gene transfer」Curr Eye Res. 2005 30:345-53、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい)。あるいは、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドをコードする核酸をリポソーム中に詰め込んでもよく、または、詰め込まず、ベクターを用いずに、個体に核酸を送達することもできる。
【0113】
4.1.3 細胞治療法
別のアプローチにおいて、CFHR1ポリペプチドまたはCFHR3ポリペプチドは、内在性または外来性のCFHR1ポリヌクレオチドまたはCFHR3ポリヌクレオチドにコードされるタンパク質をインビボで発現させることによって(すなわち、細胞治療によって)投与される。例えば、肝細胞移植が、多くの形態の肝不全を支援するために、器官全体の移植の代替方法として使用されている(例えば、Ohashi et al., Hepatocyte transplantation:clinical and experimental application, J Mol Med. 2001 79:617-30を参照されたい)。この方法によれば、肝細胞または他のCFHR1発現細胞もしくはCFHR3発現細胞が、治療を必要とする患者に投与される(例えば、注入される)。これらの細胞は、肝臓または他の器官に移動し、かつ、治療的タンパク質を産生する。同様に、例えば、Alexandrova et al., 2005、「Large-scale isolation of human hepatocytes for therapeutic application」Cell Transplant. 14(10):845-53; Cheong et al., 2004、「Attempted treatment of factor H deficiency by liver transplantation」Pediatr Nephrol. 19:454-8; Ohashi et al., 2001、「Hepatocyte transplantation:clinical and experimental application」J Mol Med. 79:617-30; Serralta et al., 2005、「Influence of preservation solution on the isolation and culture of human hepatocytes from liver grafts」Cell Transplant. 14(10):837-43; Yokoyama et al., 2006、「In vivo engineering of metabolically active hepatic tissues in a neovascularized subcutaneous cavity」Am. J. Transplant. 6(1):50-9; Dhawan et al., 2005、「Hepatocyte transplantation for metabolic disorders, experience at King's College hospital and review of literature.」Acta Grastroenterol. Belg. 68(4):457-60; Bruns et al., 2005、「Injectable liver:a novel approach using fibrin gel as a matrix for culture and intrahepatic transplantation of hepatocytes」Tissue Eng. 11(11-12):1718-26も参照されたい。使用され得る他の細胞型には、例として、かつ非限定的に、腎臓細胞および膵臓細胞が含まれる。1つの態様において、投与される細胞は、組換え型のCFHR1タンパク質またはCFHR3タンパク質を発現するように操作される。
【0114】
別の関連したアプローチにおいて、治療的な臓器移植が使用される。身体全身のCFHR1およびCFHR3の大半は肝臓によって産生されるため、肝臓組織の移植が好ましい方法となる。Gerber et al., 2003、「Successful (?) therapy of hemolytic-uremic syndrome with factor H abnormality」Pediatr Nephrol. 18:952-5を参照されたい。
【0115】
別のアプローチにおいて、CFHR1タンパク質またはCFHR3タンパク質は、眼中への注射(例えば硝子体内)によって、またはカプセル化された細胞を介して、眼の裏側に送達される。一例として、Neurotech社製のカプセル化細胞技術(Encapsulated Cell Technology)(ECT)は、眼の裏側への治療的因子の持続的長期的送達を可能にする独特な技術である。(http://www.neurotech.fr)を参照されたい。ECT埋め込み物は、半透性の中空糸膜中に封入された、特定の治療的タンパク質を産生するように遺伝的に改変された細胞からなる。これらの細胞は、埋め込み物の中から眼中へと拡散する治療的タンパク質を継続的に産生する(Bush et al., 2004、「Encapsulated cell-based intraocular delivery of ciliary neurotrophic factor in normal rabbit:dose-dependent effects on ERG and retinal histology」 Invest Ophthalmol Vis Sci. 45:2420-30.)。ECT器具によってヒトの眼に送達されたCNTFは、第一相臨床試験に登録された患者10名において完全に成功し、かつ最小限の合併症しか伴わないことが最近示された(Sieving et al., 2006、「Ciliary neurotrophic factor (CNTF) for human retinal degeneration:phase I trial of CNTF delivered by encapsulated cell intraocular implants」Proc Natl Acad Sci USA 103(10):3896-901)。同様に、Song et al., 2003、「Photoreceptor protection by cardiotrophin-1 in transgenic rats with the rhodopsin mutation s334ter」 IOVS, 44(9):4069-75; Tao et al., 2002、「Encapsulated Cell-Based Delivery of CNTF Reduces Photoreceptor Degeneration in Animal Models of Retinitis Pigmentosa」 IOVS, 43 10:3292-3298;およびHammang et al.、米国特許第6,649,184号も参照されたい。本発明の1つの態様において、ある形態のCFHR1またはCFHR3は細胞中で発現され、かつカプセル化された形態で投与される。1つの態様において、使用される細胞は、米国微生物株保存機関(American Type Culture Collection)(P.O.Box 1549, Manassas, VA 20108)から入手可能なNTC-201ヒトRPE株(ATCC番号 CRL-2302)である。
【0116】
4.2 AMDの予防および治療
AMDを発症する可能性が高いと特定されるか、AMDの症状を提示しているか、またはAMDに罹患しやすい対象を、CFHR1遺伝子および/またはCFHR3遺伝子の遺伝子産物の発現、活性、または量を減少させることによって、治療することができる。例えば、CFHR1遺伝子もしくはCFHR3遺伝子の転写を阻害すること、CFHR1 RNAもしくはCFHR3 RNAの翻訳を阻害すること、(例えば、プラスマフェレーシス、抗体を対象とするプラスマフェレーシスによって)CFHR1タンパク質もしくはCFHR3タンパク質の量もしくは活性を減少させること、またはCFHR1結合部分もしくはCFHR3結合部分(例えば、ヘパリンもしくは抗体)と複合体を形成させること、または阻害性核酸の投与を含む、眼中または全身のCFHR1またはCFHR3のレベルを減少させる任意の方法が、治療のために使用され得る。いくつかの態様において、CFHR1またはCFHR3のレベルは、他の組織と比べて、眼(例えばRPE)において優先的に減少させられる。例として、かつ非限定的に、いくつかの方法を下記に手短に説明する。
【0117】
4.2.1 阻害性核酸
阻害性核酸は公知であり、アンチセンス核酸、干渉RNA、およびリボザイムなどが含まれる(例えば、Gomes et al., 2005、「Intraocular delivery of oligonucleotides」Curr Pharm Biotechnol. 6:7-15;およびHenry et al., 2004、「Setting sights on the treatment of ocular angiogenesis using antisense oligonucleotides」Trends Pharmacol Sci 25:523-7; PCT公報WO98/53083; WO99/32619; WO99/53050; WO00/44914; WO01/36646; WO01/75164; WO02/44321;および米国特許第6,107,094号; Sui et al., 2002、「A DNA vector-based RNAi technology to suppress gene expression in mammalian cells」 Proc Natl Acad Sci USA 99:5515-20;ならびにKasaharaおよびAoki、2005、「Gene silencing using adenoviral RNA vector in vascular smooth muscle cells and cardiomyocytes」Methods Mol Med. 112:155-72;米国特許US6180399;US5869254;US6025167;US5854038;US5591610;US5667969;US5354855;US5093246;US5180818;US5116742;US5037746;およびUS4987071;Dawson et al., 2000、「Hammerhead ribozymes selectively suppress mutant type I collagen mRNA in osteogenesis imperfecta fibroblasts」 Nucleic Acids Res. 28:4013-20; Blalock et al., 2004 「Hammerhead ribozyme targeting connective tissue growth factor mRNA blocks transforming growth factor-beta mediated cell proliferation」 Exp Eye Res. 78:1127-36; Kuan et al., 2004、「Targeted gene modification using triplex- forming oligonucleotides」 Methods Mol Biol. 262:173-94を参照されたい)。
【0118】
阻害性核酸は、薬学的組成物として、または遺伝子治療法もしくは細胞治療法を用いて投与できることが、理解されると考えられる。
【0119】
4.2.2 抗体および抗体治療
1つの局面において、これらのタンパク質の活性または量を減少させる抗CFHR1結合物質または抗CFHR3結合物質(例えば抗体)は、AMDに罹患しているか、またはAMDのリスクがある個体に投与される。抗体は、全身的または局所的に投与してよい(例えば、Gaudreault et al., 2005、「Preclinical pharmacokinetics of Ranibizumab (rhuFabV2) after a single intravitreal administration」 Invest Ophthalmol Vis Sci. 46:726-33を参照されたい)。
【0120】
1つの態様において、抗CFHR1抗体は、CFHR1、特にヒトCFHR1のエピトープに特異的に結合する。特定の態様において、抗CFHR1抗体は、CFHR1ポリペプチドのアミノ末端内に位置するエピトープに特異的に結合する。特に、抗CFHR1抗体は、図6に示すSEQ ID NO:4のアミノ酸1〜143の間に位置するエピトープに特異的に結合する。他の態様において、抗CFHR1抗体は、図1に示すCFHR1のショートコンセンサスリピート(SCR)6および/またはSCR7内のエピトープに特異的に結合する。CFHR1 SCR6のアミノ酸配列は、対応するCFH SCRに対して35%相同であり、CFHR SCR7のアミノ酸配列は、対応するCFH SCRに対して45%相同である。本発明の抗CFHR1抗体は、CFHR1に特異的に結合し、かつ、CFHとも、CFHT、CFHR2、CFHR3、CFHR4、またはCFHR5を含む他の因子H関連タンパク質とも交差反応しない。特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するには、様々なイムノアッセイ形式を使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ法は、ある抗原と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するためにルーチン的に使用される。HarlowおよびLane(1988)Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。抗CFHR1抗体の作製のために最も免疫原性が高いエピトープを決定するためにCFHR1タンパク質のエピトープをマッピングすることは、当業者の技能の範囲内である。
【0121】
別の態様において、抗CFHR3抗体は、CFHR3、特にヒトCFHR3のエピトープに特異的に結合する。特定の態様において、抗CFHR3抗体は、CFHR3ポリペプチドのカルボキシル末端内に位置するエピトープに特異的に結合する。例えば、抗CFHR3抗体は、図6に示すSEQ ID NO:6のアミノ酸144〜330の間のエピトープに特異的に結合し得る。他の態様において、抗CFHR3抗体は、図1に示すCFHR3のSCR8、SCR19、および/またはSCR20内のエピトープに特異的に結合する。CFHR3 SCR8のアミノ酸配列は、対応するCRH SCRに対して63%相同であり、CFHR3 SCR19のアミノ酸配列は、対応するCFH SCRに対して62%相同であり、CFHR3 SCR20のアミノ酸配列は、対応するCFH SCRに対して36%相同である。本発明の抗CFHR3抗体は、CFHR3に特異的に結合し、かつ、CFHとも、CFHT、CFHR1、CFHR2、CFHR4、またはCFHR5を含む他の因子H関連タンパク質とも交差反応しない。抗CFHR3抗体の作製のために免疫原性であり得るエピトープを決定するためにCFHR3タンパク質をエピトープマッピングすることは、当業者の技能の範囲内である。
【0122】
前述の各抗体は、完全な抗体、例えばモノクローナル抗体でよいことが理解される。あるいは、結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片でよく、または生合成された抗体結合部位でよい。抗体断片には、Fab、Fab'、(Fab')2、またはFv断片が含まれる。このような抗体断片を作製するための技術は、当業者に公知である。いくつかの生合成された抗体結合部位が当技術分野において公知であり、例えば、単鎖Fv分子またはsFv分子が含まれ、これらは、例えば米国特許第5,476,786号に記載されている。他の生合成された抗体結合部位には、二重特異性または二機能性の結合タンパク質、例えば、少なくとも2種の異なる抗原に結合する抗体または抗体断片である二重特異性抗体または二機能性抗体が含まれる。例えば、二重特異性結合タンパク質は、CFHR1、CFHR3、および/または別の抗原に結合することができる。二重特異性抗体を作製するための方法は当技術分野において公知であり、例えば、ハイブリドーマを融合することによるもの、またはFab'断片を連結することによるものが含まれる。例えば、Songsivilai et al. (1990) CLIN. EXP. IMMUNOL. 79:315-325; Kostelny et al. (1992) J. IMMUNOL. 148:1547-1553を参照されたい。
【0123】
抗CFHR1抗体および抗CFHR3抗体は、当技術分野において周知の技術を用いて作製することができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞を形成するための標準的な融合技術を用いて作製することができる。G. Kohler, et al., Nature, 256:456(1975)を参照されたい。あるいは、モノクローナル抗体は、Huse, et al., Science, 256:1275(1989)の方法によって細胞から作製することもできる。
【0124】
本明細書において説明する抗体のCDRが、CFHR1またはCFHR3に対する結合特異性を与えることが理解される。本明細書において説明する抗体は、診断用物質および/または治療物質として使用することができる。抗体の所期の用途に応じて性能を最適化するために本発明の抗体を改変できることが理解される。例えば、抗体が治療物質として使用される場合、抗体を改変して、対象とする受容者におけるその免疫原性を減少させることができる。あるいは、またはさらに、別のタンパク質またはペプチド、例えば、増殖因子、サイトカイン、またはサイトトキシンに抗体を融合または結合させることもできる。このような改変は、当技術分野において公知のルーチンな遺伝子操作技術を用いることによって実現することができる。
【0125】
抗体および抗体断片の抗原性を減少させるための様々な技術が、当技術分野において公知である。これらの技術を用いて、本発明の抗体の抗原性を減少または排除することができる。例えば、抗体がヒトに投与される予定である場合、抗体は好ましくは、ヒトにおける抗原性を減少させるように操作される。このプロセスは、しばしばヒト化と呼ばれる。好ましくは、ヒト化結合タンパク質は、それが由来する元の非ヒト化結合タンパク質と同じまたは実質的に同じ抗原親和性を有する。
【0126】
1つの周知のヒト化アプローチにおいて、1つの種、例えばマウスに由来する抗体の免疫グロブリン定常領域が第2の異なる種、例えばヒトに由来する免疫グロブリン定常領域で置換されたキメラタンパク質が作製される。この例において、結果として生じる抗体は、マウス-ヒトキメラであり、ヒト定常領域配列は原則としては、対応物であるマウス配列よりも免疫原性が少ない。このタイプの抗体工学は、例えば、Morrison, et al. (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851-6855、Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608;米国特許第6,893,625号(Robinson);第5,500,362号(Robinson);および第4,816,567号(Cabilly)において説明されている。
【0127】
CDRグラフティングとして公知である別のアプローチにおいて、関心対象の抗体の軽鎖および重鎖の可変領域のCDRは、別の種に由来するフレームワーク(FR)中に移植される。例えば、マウスCDRをヒトFR配列中に移植することができる。いくつかの態様において、抗CFHR1抗体または抗CFHR3抗体の軽鎖および重鎖の可変領域のCDRは、ヒトFRまたはコンセンサスなヒトFR中に移植される。コンセンサスなヒトFRを作製するために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖のアミノ酸配列に由来するFRを整列させて、コンセンサスなアミノ酸配列を特定する。CDRグラフティングは、例えば、米国特許第7,022,500(Queen)号;第6,982,321号(Winter);第6,180,370号(Queen);第6,054,297号(Carter);第5,693,762号(Queen);第5,859,205号(Adair);第5,693,761号(Queen);第5,565,332号(Hoogenboom);第5,585,089号(Queen);第5,530,101号(Queen);Jones et al. (1986) NATURE 321:522-525; Riechmann et al. (1988) NATURE 332:323-327; Verhoeyen et al. (1988) SCIENCE 239:1534-1536;およびWinter (1998) FEBS LETT 430:92-94において説明されている。
【0128】
さらに、マウスにおいて完全ヒト抗体を作製することも可能である。このアプローチにおいて、ヒト抗体は、マウスの抗体産生遺伝子が、ヒトの抗体産生遺伝子の実質的な部分によって置換されているトランスジェニックマウスを用いて調製される。このようなマウスは、マウス免疫グロブリン分子の代わりにヒト免疫グロブリン分子を産生する。例えば、WO98/24893(Jacobovitz et al.)およびMendez et al., 1997, Nature Genetics 15:146-156を参照されたい。完全ヒト抗CFHR1モノクローナル抗体および/または完全ヒト抗CFHR3モノクローナル抗体は、以下のアプローチを用いて作製することができる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニックマウスは、関心対象の抗原、例えばCFHR1またはCFHR3で免疫化される。次いで、そのマウスに由来するリンパ細胞をマウスから獲得し、次いでそれらを骨髄型の細胞株と融合させて、不死性のハイブリドーマ細胞株を調製する。これらのハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、CFHR1またはCFHR3に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定する。
【0129】
5 薬物スクリーニング/リスク変種因子Hまたは変種CFHR5のアンタゴニスト
本発明は、血管障害を治療する際に使用するための作用物質をスクリーニングするための薬物スクリーニング方法を提供する。この方法は、(i)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドを発現する細胞と(ii)試験物質とを混合する段階;(b)細胞中のCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルを測定する段階;ならびに(c)細胞中のCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルを参照値と比較する段階を含み、この参照値は、試験物質の不在下でのCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルであり、試験物質の存在下でのCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルがより高い場合、その試験物質が血管障害を治療するために有用であり得ることが示される。天然産物ライブラリーまたは合成コンビナトリアルライブラリーに由来する化合物をスクリーニングすることができる。タンパ質レベルの測定、mRNAレベルの測定、または他の方法を含む様々なアプローチを用いて、CFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベル。
【0130】
1つの態様において、この方法は、(i)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドを発現する細胞と(ii)試験物質とを混合する段階;b)細胞によって産生された(例えば、培地中に分泌された)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルを測定する段階;ならびにc)試験物質の存在下で培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルを参照値と比較する段階を含み、この参照値は、試験物質の不在下で産生された(または培地中に分泌された)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルであり、試験物質の存在下で培地中に分泌されたCFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドのレベルがより高い場合、その試験物質が血管障害を治療するために有用であり得ることが示される。天然産物ライブラリーまたは合成コンビナトリアルライブラリーに由来する化合物をスクリーニングすることができる。
【0131】
6 保護型の補体因子Hタンパク質の同定
前述したように、CFHR1座位およびCFHR3座位における欠失は、保護性ハプロタイプの存在に関係している。保護性ハプロタイプおよび保護型のCFHタンパク質は、Hageman et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102:7227-32および米国特許公報第20070020647号に記載されている。1つの局面において、本発明は、AMDを有するか、または発症するリスクがある対象に投与された場合に、AMDが発症しないように保護する可能性が高いCFHタンパク質を同定するための方法を提供する。この方法は、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列において欠失を有する対象を特定する段階、その欠失を含む染色体中に含まれる遺伝子によってコードされるCFH遺伝子の配列を決定する段階、およびそのCFH遺伝子によってコードされるタンパク質であって、野生型CFHとは異なり、AMDが発症しないように保護する可能性が高いCFHタンパク質であるタンパク質の配列を決定する段階を含む。本発明はまた、この方法を用いて得られる保護性のCFHタンパク質も提供する。米国特許公報第20070020647号は、AMD発症から保護し、かつAMDを治療する保護型のCFHタンパク質の使用を開示する。
【0132】
7 キットおよび診断装置
本発明は、CFHR1欠失またはCFHR3欠失を検出するための試薬、装置、およびキットを提供する。いくつかのアッセイ系が当技術分野において公知であり、かつ、血管障害またはAMDに関連している変異の存在を決定するための手段に到達することは、当業者の技能の範囲内である。マルチプルプライマー、マルチプルプローブ、プライマーの組み合わせ、またはプローブの組み合わせなどのキット試薬は、診断またはスクリーニングのために使用される前に、別々の容器中に含まれてよい。ある態様において、キットは、本明細書において説明する第1のCFHR1対立遺伝子またはCFHR3対立遺伝子に対するプローブ、プライマー、またはプライマーペアを含む第1の容器、および本明細書において説明する第2のCFHR1対立遺伝子またはCFHR3対立遺伝子に対するプローブ、プライマー、またはプライマーペアを含む第2の容器を含む。
【0133】
これらのキットは、多型の様々な型にハイブリダイズする、CFHR1および/またはCFHR3の対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドの1つまたは複数のペアを含んでよい。これらの対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドは、基板上に固定化されて提供されてよい。
【0134】
本発明はまた、診断方法、予後判定方法、薬物スクリーニング方法、および他の方法にとって有用な装置および試薬も提供する。1つの局面において、装置は、CFHR1遺伝子および/またはCFHR3遺伝子中の欠失を検出するために特異的な固定化されたプライマーまたはプローブを含み、かつ任意で、AMDに関連しているCFH中の多型部位を検出するために特異的な固定化されたプライマーまたはプローブも含む。例示的なプローブおよび多型部位は、米国特許公報第20070020647号に記載されている。
【0135】
1つの局面において、1種または複数種の因子Hならびに/またはCFHR5遺伝子産物および/もしくはCFHR1遺伝子産物および/もしくはCFHR3遺伝子産物(ポリヌクレオチドもしくはタンパク質)に対して特異的な固定化されたプライマーまたはプローブを含む装置が提供される。プライマーまたはプローブは、(例えば、特定の多型部位へのハイブリダイゼーションに基づいて)ポリヌクレオチドまたは(例えば、変種ポリペプチドへの特異的結合に基づいて)ポリペプチドに結合することができる。
【0136】
1つの態様において、複数の(少なくとも2つ、通常、少なくとも3つまたはそれ以上の)異なるプライマーまたはプローブが固定化されているアレイ形式が使用される。「アレイ」という用語は、通常の意味で使用され、通常は基板上に固定化されている複数のプライマーまたはプローブのそれぞれが、例えば基板上で、所定の位置(所在地)を有することを意味する。アレイ上のプライマーまたはプローブの数は、装置の性質および用途に応じて異なってよい。例えば、計量棒形式のアレイは、わずか2個の異なるプライマーまたはプローブを有する場合があるが、通常、2個より多い、およびしばしば、さらに多くのプライマーまたはプローブが存在する。核酸を表面に結合させるための1つの方法は、高密度のオリゴヌクレオチドアレイを作製することによる(Fodor et al., 1991, Science 251:767-73; Lockhart et al., 1996, Nature Biotech 14:1675;ならびに米国特許第5,578,832号; 第5,556,752号;および第5,510,270号を参照されたい)。いくつかの態様において、固定化された単一のプローブを含む装置が使用され得ることもまた、企図される。
【0137】
1つの態様において、複数の(少なくとも2つ、通常、少なくとも3つまたはそれ以上の)異なるプライマーまたはプローブが固定化されているアレイ形式が使用される。「アレイ」という用語は、通常の意味で使用され、通常は基板上に固定化されている複数のプライマーまたはプローブのそれぞれが、例えば基板上で、所定の位置(所在地)を有することを意味する。アレイ上のプライマーまたはプローブの数は、装置の性質および用途に応じて異なってよい。
【0138】
1つの態様において、固定化されたプローブは、抗体または他のCFHR1結合部分もしくはCFHR3結合部分である。
【0139】
様々な多型性およびハプロタイプを検出し、かつ、ヒト第1染色体上の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列内の欠失と組み合わせて使用して、ある個体が因子Hに関連した病態を発症する傾向を評価できることは、本開示によって指導される当業者に明らかになると考えられる。アッセイされ得るCFH多型性の例には、以下のSNPおよびSNPの組み合わせが含まれる:rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs1061170、rs203674、および任意でエキソン22(R1210C)を含む。1つの態様において、アレイは、以下の多型部位のうち少なくとも1つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含む:rs529825、rs800292、イントロン2(IVS2またはinsTT)、rs3766404、rs1061147、rs1061170、エキソン10A、rs203674、rs375046、および任意でエキソン22(R1210C)を含む。1つの態様において、アレイは、以下の多型部位のうち少なくとも1つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含む:(a)rs3753394、(b)rs529825、(c)rs800292、(d)イントロン2(IVS2またはinsTT)、(e)rs3766404、(f)rs1061147、(g)rs1061170、(h)rs2274700、(i)rs203674、(j)rs3753396、(j)rs1065489、および任意でエキソン22(R1210C)を含む。1つの態様において、アレイは、以下の多型部位のうち少なくとも1つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含む:rs800292(I62V)、IVS2(-18insTT)、rs1061170(Y402H)、およびrs2274700(A473A)。1つの態様において、アレイは、以下の多型部位のうち少なくとも1つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含む:rs9427661(-249T>C)、rs9427662(-20T>C)、およびrs12097550(P46S)。
【0140】
アレイは、上記の部位のうち2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含んでよい。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs800292における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs3766404における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061147における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061170における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs203674における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、エキソン22(R1210C)における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825およびrs800292における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つまたは3つにおける対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825およびrs800292における、rs3766404における、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つまたは3つにおける対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061170、およびrs203674における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、エキソン22(R1210C)における;およびrs529825における;rs800292における;rs3766404における;rs1061147における;rs1061170における;rs203674における;rs529825およびrs800292における;rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つもしくは3つにおける;rs529825およびrs800292、rs3766404、ならびにrs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つもしくは3つにおける;または、rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061170、およびrs203674における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、(a)rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち任意の1つもしくは複数、(b)イントロン2(IVS2もしくはinsTT)、rs2274700、エキソン10A、およびrs375046のうち任意の1つもしくは複数、(c)rs529825およびrs800292のうち1つもしくは両方、(d)rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち1つもしくは複数、(e)rs529825およびrs800292、ならびにrs3766404のうち少なくとも1つ、ならびにrs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち少なくとも1つ、(f)少なくともrs529825、rs800292、rs3766404、rs1061170、およびrs203674、(g)エキソン22(R1210C)、(h)エキソン22(R1210C)および(a)〜(g)のいずれか、または(i)rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs1061170、rs203674、イントロン2(IVS2もしくはinsTT)、rs2274700、エキソン10A、rs375046、およびエキソン22(R1210C)のうち任意の1つもしくは複数、ならびにrs9427661、rs9427662、およびrs12097550のうち任意の1つもしくは複数における対立遺伝子を識別する。
【0141】
アレイは、上記の部位のうち2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つにおける対立遺伝子を決定するためのプライマーまたはプローブを含んでよい。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs800292における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、イントロン2(IVS2またはinsTT)における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs3766404における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061147における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061170における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、エキソン10Aにおける対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs2274700における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs203674における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs375046における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、エキソン22(R1210C)における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825およびrs800292における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つまたは3つにおける対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825およびrs800292における、イントロン2における、rs3766404における、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つまたは3つにおける、エキソン10Aにおける、rs2274700における、ならびにrs375046における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、rs529825、rs800292、イントロン2(IVS2またはinsTT)、rs3766404、rs1061170、エキソン10A、rs2274700、rs203674、およびrs375046における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、これらのプライマーまたはプローブは、エキソン22(R1210C)における対立遺伝子、ならびにrs529825における;rs800292における;イントロン2(IVS2もしくはinsTT)における;rs3766404における;rs1061147における;rs1061170における;rs2274700における;エキソン10Aにおける;rs203674における;rs375046における;rs529825およびrs800292における;rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つもしくは3つにおける;rs529825およびrs800292、イントロン2(IVS2もしくはinsTT)、rs3766404;rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち2つもしくは3つ、rs2274700、エキソン10A、およびrs375046におけるか;またはrs529825、rs800292、イントロン2(IVS2もしくはinsTT)、rs3766404、rs1061170、rs2274700、エキソン10A、rs203674、およびrs375046における対立遺伝子を識別する。1つの態様において、装置は、キットに関する文脈で上記に挙げた部位における対立遺伝子の任意の組み合わせを識別する。
【0142】
1つの態様において、基板は、約1000個より少ない異なるプライマーもしくはプローブ、しばしば、約100個より少ない異なるプライマーもしくはプローブ、約50個より少ない異なるプライマーもしくはプローブ、または約10個より少ない異なるプライマーもしくはプローブを含む。この文脈において使用される場合、2つのプライマーが同じポリヌクレオチドに特異的に結合しない場合、一方のプライマーは第2のプライマーと「異なる」(すなわち、異なる遺伝子に対するcDNAプライマーなど)。この文脈において使用される場合、2つのプローブが同じポリペプチドにもポリヌクレオチドにも特異的に結合しない場合、一方のプローブは第2のプローブと「異なる」(すなわち、異なる遺伝子に対するcDNAプローブなど)。プライマーまたはプローブはまた、同じ遺伝子の異なる対立遺伝子(すなわち、CFHまたはCFHR5)をそれらが認識する場合、異なると記述されてよい。したがって、1つの態様において、本発明の診断装置は、CFHのみ、CFHR5のみ、CFHおよびCFHR5のみ、またはCFH、CFHR5、ならびにCFHおよび/もしくはCFHR5以外の最高20種、好ましくは最高10種、もしくは好ましくは最高5種の遺伝子の対立遺伝子を検出する。すなわち、この装置は、AMDおよび関係のある補体関連疾患をスクリーニングするのに特に適している。1つの態様において、この装置は、CFHおよび/またはCFHR1〜5のうち1種もしくは複数種のみを認識するプライマーまたはプローブを含む。関連した態様において、この装置は、CFHまたはCFHR1〜5以外の最高20種、好ましくは最高10種、または好ましくは最高5種の他の遺伝子に対するプライマーおよびプローブを含む。
【0143】
1つの態様において、固定化されたプライマーは、因子H遺伝子またはCHRF5遺伝子中の多型部位における対立遺伝子を識別することができる対立遺伝子特異的プライマーである。因子H遺伝子中の多型部位における対立遺伝子を特定するための例示的な対立遺伝子特異的プライマーは、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み入れられる、米国特許公報第20070020647号の表16Aに示されている。固定化された対立遺伝子特異的プライマーは、それらのプライマーに相補的な配列を有する核酸、RNAまたはDNAのいずれかに優先的にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは、蛍光検出を伴う一塩基伸長およびオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ法などを含む様々な方法によって検出することができる(Shi, M.M., 2001、「Enabling large-scale pharmacogenetic studies by high-throughput mutation detection and genotyping technologies」Clin.Chem. 47(2):164-172を参照されたい)。Affymetrix(Santa Clara, CA)、Protogene(Menlo Park, CA)、Genometrix(The Woodland, TX)、Motorola BioChip Systems(Northbrook, IL)、およびPerlegen Sciences(Mountain View, CA)を含む、多型部位を検出するためのマイクロアレイベースの装置が市販されている。
【0144】
本発明は、CFHR1タンパク質および/またはCFHR3タンパク質を検出するための試薬およびキットを提供する。いくつかのアッセイ系が当技術分野において公知であり、かつ、血管障害またはAMDに関連している、CFHR1および/もしくはCFHR3、またはその変種もしくは切断型の存在または不在を決定するための手段に到達することは、当業者の技能の範囲内である。抗CFHR3抗体もしくは抗CFHR1抗体または他のCFHR3結合部分もしくはCFHR1結合部分などのキット試薬は、診断またはスクリーニングのために使用される前に、別々の容器中に含まれてよい。ある態様において、キットは、CFHR1タンパク質またはその変種もしくは切断型に特異的に結合する抗体または結合部分を含む第1の容器、およびCFHR3タンパク質またはその変種もしくは切断型に特異的に結合する抗体または結合部分を含む第2の容器を含む。いくつかの態様において、結合部分は、核酸アプタマーのようなアプタマーである。アプタマーは、結合ポケットを形成することによって特定のリガンドを認識するランダム配列の膨大な集団からインビトロで選択されたRNA分子またはDNA分子である。アプタマーは、特定のタンパク質または他の分子に結合する3次元認識の能力がある核酸である。例えば、US20050176940「Aptamers and Antiaptamers」を参照されたい。
【0145】
したがって、本発明は、CFHR1タンパク質および/もしくはCFHR3タンパク質またはその一部分に特異的に結合することができる結合部分(例えば、CFHR1タンパク質および/もしくはCFHR3タンパク質またはその一部分と優先的に反応する標識された結合物、またはCFHR1 mRNAおよび/もしくはCFHR3 mRNAまたはその一部分と優先的に反応する標識された結合物、またはCFHR1 DNAおよび/もしくはCFHR3 DNAと優先的に反応する標識された結合物)を含む、本発明のスクリーニング方法を実施するための試薬を提供する。結合部分は、例えば、リガンド-受容体ペア、すなわち、特異的な結合相互作用を有することができる分子ペア(抗体-抗原、タンパク質-タンパク質、核酸-核酸、タンパク質-核酸、または当技術分野において公知である他の特異的結合ペアなど)のメンバーを含んでよい。任意で、結合部分は標識される(例えば、直接標識される)か、または結合部分と反応する標識分子を伴う(間接的に標識される)。検出可能な標識は、化学的方法または組換え法により、検出試薬に直接結合させるか、または検出試薬中に組み入れることができる。検出可能な標識の例には、放射性同位体、蛍光体、発色団(例えば、着色された粒子)、質量標識、高電子密度粒子、磁性粒子、スピン標識、およびケミルミネセンスを発する分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。標識するための方法は、当技術分野において周知である。
【0146】
キットは、体液中または組織試料中のCFHR3タンパク質またはCFHR1タンパク質を検出するために抗CFHR3抗体もしくは抗CFHR1抗体または他のCFHR3結合部分もしくはCFHR1結合部分を使用する方法の指示が記載された取扱い説明マニュアルを含んでよい。
【0147】
キットは、対照の抗体または結合部分を含んでよい。対照の抗体または結合部分の例は、CFHタンパク質に特異的に結合する抗体である。
【0148】
キットは、CFHR1タンパク質またはCFHR3タンパク質の異なる(すなわち、野生型でも完全長でもない)形態(例えば、変種または切断型)に特異的に結合する、1つまたは複数のペアの抗体または結合部分を含んでよい。
【0149】
1つの態様において、これらの抗体または結合部分は、規則正しいアレイのような固体支持体に固定化される。
【0150】
1つの態様において、これらの抗体または結合部分は、ウェスタンブロットにおいて使用される。
【0151】
実施例
実施例1
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析、および直接DNA配列解析を用いて、第1染色体上のCFH遺伝子とCFHR4遺伝子の間に位置する、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子における欠失を特徴付けた。CFH遺伝子およびCFH関連遺伝子1〜5のPCR増幅のために使用され得るプライマーの例を表1Aに示す。CFH遺伝子およびCFHR3遺伝子のSSCP解析のために使用され得るプライマーの例を表1Bに示す。CFH遺伝子、CFHR1遺伝子、およびCFHR3遺伝子の直接DNA配列解析のために使用され得るプライマーの例を表1Cおよび1Dに示す。
【0152】
(表1)CFH遺伝子およびCFHR1〜5遺伝子を検出するために使用されるプライマー


【0153】
染色体1q上のCFHおよびそれに関連するハプロタイプのさらなる特徴付けを対象とする研究において、CFHL1遺伝子およびCFHL3遺伝子全体の完全欠失を同定した。CFHエキソン22プライマー(表1)を用いて作製したSSCPゲルを検査した際、CFHの他にCFHR1が増幅されたことに起因するいくつかの付加的な変異パターンが観察された。CFH特異的プライマーの別の組を設計することによって、CFHのエキソン22に変異がないことを決定した。CFHR1特異的プライマーを作製し、かつ、CFHR1の欠失を同定するために使用した。特異的プライマーを用いて、CFHR1遺伝子、CFHR2遺伝子、CFHR3遺伝子、CFHR4遺伝子、およびCFHR5遺伝子、ならびにCFHR3に対して5'側の介在配列をさらに解析することにより(表1D)、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の全長に渡って伸びる欠失が明らかになった。完全欠失の厳密な境界は決定されていないが、境界のマッピングは当業者の技能の範囲内である。
【0154】
SSCP解析および直接DNA配列決定を用いて、AMDの病歴がある患者およびAMDの病歴が無い患者の1074名の組におけるCFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のホモ接合性欠失の頻度を決定した。この同齢集団は、AMDの状態とは無関係に、血管疾患を含む他の全身性疾患を有する患者を含んだ。表2に示すように、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失は、試験した人物の約2.7%に存在した。
【0155】
(表2)CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失の頻度

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
【0156】
最初の解析により、欠失ホモ接合体が、AMD症例よりも対照の個体において、より一般的であることが示唆された。CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のホモ接合性欠失とAMDとの関連があるかどうかを決定するために、SSCP解析および直接DNA配列決定によって、上記の患者集団の部分集団を解析した。表3に示すように、AMD患者576名および年齢を一致させた非AMD対照患者352名の研究において、欠失ホモ接合体は、対照の5.1%を占め、症例の1.2%を占める。CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失は、対照と強く関連しており(χ2=10.2およびP値=0.0014)、AMDに対するホモ接合性CFHR1/CFHR3欠失の著しく有意な保護効果が実証される。
【0157】
(表3)CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失と非AMDとの関連

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
【0158】
CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のホモ接合性欠失と血管障害との関連があるかどうかを決定するために、SSCP解析および直接DNA配列決定によって、上記の患者集団の2つの部分集団を解析した。表4Aに示すように、腹部大動脈瘤(AAA)患者26名および非AAA患者133名の研究により、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失がAAAと強く関連している(χ2=6.982329およびP値=0.0082)ことが明らかになった。表4Bに示すように、腹部大動脈瘤(AAA)患者86名および非AAA患者221名の第2の研究により、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失がAAAと関連している(χ2=4.05およびP値=0.0442)ことが明らかになった。
【0159】
(表4)CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失とAAAとの関連
A 研究1

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
B 研究2

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
【0160】
CFH遺伝子において以前に同定された保護性ハプロタイプがdel(Δ)CFHR1対立遺伝子に関連しているかどうかを決定するために、ハプロタイプ解析を実施した。表5A〜5Eに示すように、CFH遺伝子におけるdel(Δ)CFHR1対立遺伝子とSNPの関係から、強い連鎖不平衡が明らかになった。このハプロタイプ解析において使用されるSNPは、米国特許公報第20070020647号に記述されている。表中、文字は遺伝子型を指し、数字はSSCPシフトパターンを指す。
【0161】
(表5)del/del(Δ/Δ)CFHR1対立遺伝子を有する対象におけるCFH遺伝子ハプロタイプ解析
A プロモーター1〜エキソン3

B IVS6〜エキソン7b

C エキソン9〜エキソン16b

D エキソン17a〜エキソン19a

E エキソン20b〜エキソン22スプリット(CFHおよびCFHR1の両方を検出する)

【0162】
表6に示すように、2つの研究において、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失が、402Tを含むハプロタイプに関連していることが判明した。この欠失は、主要なCFHリスク対立遺伝子と同じ402Cを含むハプロタイプであるY402H上にはほとんど存在しない。del(Δ)CFHR1変異は、CFH H4ハプロタイプ、すなわち、AMDに対して保護性であることが以前に示されている、CFHのコード領域(コドン402)の1277位にTを有するハプロタイプに主に関連している。しかしながら、すべてのdel(Δ)CFHR1染色体がH4上にあるわけではなく、AMDに対するdel/del(Δ/Δ)CFHR1ホモ接合体の保護は、H4ホモ接合体よりもさらに強い。CFHエキソン22プライマーを用いてCFH遺伝子、CFHR1遺伝子、およびCFHR3遺伝子を直接DNA配列決定することによって、CFHR3遺伝子およびCFHR1遺伝子のヘテロ接合性欠失を検出した。
【0163】
(表6)CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失とCFHのコード領域(コドン402)の1277位のTT遺伝子型との関連
A 研究1

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
**CFH402遺伝子型は、ヒトCFHのコード領域の1277位の両方の対立遺伝子上のヌクレオチドを指す。Tはコドン402にチロシンをもたらすのに対し、Cはコドン402にヒスチジンをもたらす。
***直接DNA配列決定によって決定されるように、患者474名のうち、約22+/-4%が、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失に関してヘテロ接合性(+/Δ)である。

B 研究2

*遺伝子型は、SSCP解析および直接配列決定による、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子の欠失(Δ)または非欠失(+)を指す。
**CFH402遺伝子型は、ヒトCFHのコード領域の1277位の両方の対立遺伝子上のヌクレオチドを指す。Tはコドン402にチロシンをもたらすのに対し、Cはコドン402にヒスチジンをもたらす。
【0164】
ウェスタンブロット法によって、通常は豊富な血清タンパク質であるCFHR1タンパク質が、CFHR1/CFHR3欠失に関してホモ接合性の個体に由来する血清中に存在しないことが決定された。図3は、抗ヒトCFH抗体を用いた、(52名の試料セットのうちの)患者7名に由来する血清タンパク質の代表的なウェスタンブロットを示す。一次元SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって血清タンパク質を分離し、ニトロセルロースメンブレンに移した。移動後、メンブレンを5%脱脂粉乳でブロックし、洗浄し、次いで、ヤギ抗ヒトCFH(Calbiochem、1:1000希釈)と共にインキュベートした。インキュベーション後、メンブレンを洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させたウサギ抗ヤギIg抗体(Abcam、1:4000希釈)と共にインキュベートした。インキュベーション後、メンブレンを洗浄し、次いで、エキストラビジン(extravidin)(1:1500希釈)と共にインキュベートした。試料197-02および325-02は、TT402遺伝子型(保護性のCFH H4ハプロタイプ)を有する患者に由来した。これらは、SSCP解析および直接配列決定によって決定されるように、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失を有する。図3は、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失を有する患者に由来する血清中でCFHR1はまったく検出されないことを示す。
【0165】
同じ抗ヒトCFH抗体を使用するウェスタンブロット法を用いて、さらに40名の患者に由来する血清中のCFHおよびCFHR1を検出し、CFHエキソン22プライマーを用いてSSCPパターンに基づいて分類した。パターン1〜3は、CFHR1およびCFHR3の非欠失に関してホモ接合性またはヘテロ接合性のもの(+/+、+/Δ)に対応し、パターン4は、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失(Δ/Δ)に対応する(図4を参照されたい)。SSCPパターン4を提示している患者に由来する血清試料10個はすべてCFHR1を示さないのに対し、SSCPパターン1〜3を提示している患者に由来する血清試料30個はすべて、少なくともいくらかのCFHR1を示す(データ不掲載)。したがって、CFHR1 del/del(Δ/Δ)遺伝子型を有する個体に由来する血清の解析から、それらが任意の検出可能なCFHR1タンパク質を欠いていることが示される。このタンパク質解析により、これらの個体がCFHR1遺伝子およびコードされるタンパク質の両方を欠くことが裏付けられる。CFHR1およびCFHR3の欠失に関してヘテロ接合性である個体は、血清試料のタンパク質解析により、CFHR1に対応するバンドの強度が、ヘテロ接合性(+/Δ)患者ではホモ接合性非欠失(+/+)患者と比べてほぼ半分の強度であるということに基づいて、認識することができる。
【0166】
白血球由来のDNAを用いたPCR実験を実施して、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失を有する患者がCFHR1 DNAおよびCFHR3 DNAを有さないことを確認した。図5は、患者20名のDNA試料に由来するCFHおよびCFHR1〜5のPCR解析を示し、前述のCFHエキソン22プライマーを用いてSSCPパターンに基づいて4つのグループに分類している。パターン1〜3は、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性非欠失またはヘテロ接合性欠失(+/+、+/Δ)に対応し、パターン4は、CFHR1およびCFHR3のホモ接合性欠失(Δ/Δ)に対応する。左から右に、SSCPパターン1、2、3、および4を提示する患者にそれぞれ由来する試料5個を、図のように、CFH、CFHR1、CFHR2、CFHR3、CFHR4、およびCFHR5に特異的なプライマーを用いたPCRに供した。この図は、CFH DNA、CFHR4 DNA、およびCFHR5 DNAが全試料において増幅されるのに対し、CFHR1 DNAおよびCFHR3 DNAは、SSCPパターン1〜3を提示している患者に由来する試料においては増幅されるが、SSCPパターン4を提示している患者に由来する試料においては増幅されないことを示す。CFHR2 DNAは、一部の試料において増幅されたが、全試料において増幅されるわけではなかった。したがって、SSCPおよび直接配列決定により、CFHR1遺伝子およびCFHR3遺伝子のホモ接合性欠失が示される場合、PCRで増幅可能なCFHR1 DNAおよびCFHR3 DNAは試料中で検出されない。
【0167】
実施例2:抗CFHR1モノクローナル抗体および抗CFHR3モノクローナル抗体の作製
組換えヒトCFHR1または組換えヒトCFHR3でマウスを免疫化する。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって最も高い抗CFHR1活性および抗CFHR3活性を示す血清を有するマウス2匹をその後の融合のために選択し、かつ、適切なマウスから脾臓およびリンパ節を採取する。B細胞を採取し、かつ骨髄腫株と融合させる。融合産物を、ほぼクローン性になるまで、1つまたは複数のプレート上で段階的に希釈する。ELISAにより、結果として生じる融合物の上清を、hCFHR1またはhCFHR3に対する結合に関してスクリーニングする。CFHR1またはCFHR3に対する抗体を含むことが確認された上清を、後述するようなインビトロの機能試験によってさらに特徴付ける。ハイブリドーマのパネルを選択し、かつそれらのハイブリドーマをサブクローニングし、増殖させる。次いで、標準的な条件下でのプロテインA/G樹脂を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって、モノクローナル抗体を精製する。
【0168】
抗CFHR1抗体および抗CFHR3抗体は、当技術分野において周知の補体活性化アッセイ法を用いたインビトロの機能試験によってさらに特徴付けることができる。例えば、補体活性化アッセイ法は、溶液中(例えば、血液中の液相)または固定化した表面上で実施することができる。例示的なアッセイ法では、基板に結合するCFH、C3b、ヘパリン、および/またはC反応性タンパク質(CRP)を妨害または減少させる抗CFHR1抗体および/または抗CFHR3抗体の能力を測定してよい。
【0169】
本発明を特定の態様に関して詳細に説明したが、以下の特許請求の範囲において説明するように、修正および改善は、本発明の範囲および精神の範囲内であることを当業者は認識するであろう。本明細書に引用されるすべての刊行物および特許文献は、そのような刊行物または文献のそれぞれが具体的かつ個別に参照により本明細書に組み入れられることが示されるかのように、参照により本明細書に組み入れられる。刊行物および特許文献(特許、公開特許出願、および未公開の特許出願)の引用は、任意のこのような文献が関連する先行技術であることを認めるものとして意図されるのでもなく、その内容または日付に関するいかなる承認となるものでもない。書面による説明によって本発明をここに説明したが、当業者は、本発明が様々な態様において実施され得ること、および前述の説明が、例示のためであって、以下の特許請求の範囲を限定するためではないことを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1染色体の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間の領域における欠失の存在または不在を検出するために、該対象由来の生物試料を分析する段階を含む、ヒト対象が血管障害および/または加齢黄斑変性症(AMD)を発症する傾向を決定するためのスクリーニング方法であって、
欠失の存在により、該対象が血管障害を発症するリスクが高く、AMDを発症するリスクが低いことが示される、スクリーニング方法。
【請求項2】
欠失の存在または不在が、第1染色体の補体因子H(CFH)遺伝子のエキソン22の3'末端と補体因子H関連4(CFHR4)遺伝子のエキソン1の5'末端との間でコードされる遺伝子産物についてアッセイすることによって検出され、該遺伝子産物の不在または該遺伝子産物の発現レベルの低下により、欠失の存在が示される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
CFHR1遺伝子産物および/またはCFHR3遺伝子産物の存在または不在が検出され、遺伝子産物の不在が欠失を示している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
遺伝子産物がタンパク質である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
CFHR3遺伝子のタンパク質コード領域全体が欠失している、請求項3記載の方法。
【請求項6】
CFHR1遺伝子のタンパク質コード領域全体が欠失している、請求項3記載の方法。
【請求項7】
CFHR3遺伝子とCFHR1遺伝子の間の配列およびCFHR1遺伝子とCFHR4遺伝子の間の配列より選択される遺伝子内配列の欠失を検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
対象が欠失に関してホモ接合性である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
生物試料が、血液、血清、尿、または組織試料である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
検出段階が、イムノアッセイ法または質量分析法を用いて遺伝子産物を検出することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項11】
欠失の存在または不在が、切断されたCFHR1遺伝子産物またはCFHR3遺伝子産物についてアッセイすることによって検出され、切断された遺伝子産物の検出により、欠失が示される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
欠失の存在または不在を検出することを含む段階が、対象に由来する染色体または核酸を分析することによって実施される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
核酸がDNAまたはRNAである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
血管障害が動脈瘤である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
対象が、欠失を含む染色体のCFH遺伝子のコード領域の1277位に遺伝子型Tを有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
a)rs529825、rs800292、rs3766404、rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち任意の1つまたは複数、
b)イントロン2(IVS2またはinsTT)、rs2274700、エキソン10A、およびrs375046のうち任意の1つまたは複数、
c)rs529825およびrs800292のうち1つまたは両方、
d)rs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち1つまたは複数、
e)rs529825およびrs800292のうち少なくとも1つ、ならびにrs3766404、ならびにrs1061147、rs1061170、およびrs203674のうち少なくとも1つ、
f)少なくともrs529825、rs800292、rs3766404、rs1061170、およびrs203674、
g)エキソン22(R1210C)、ならびに
h)エキソン22(R1210C)および(a)〜(g)のいずれか
からなる群より選択される1つまたは複数の多型部位を検出することを含む、補体因子H(CFH)遺伝子の遺伝的変種を検出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
フィビュリン-3、ビトロネクチン、β-クリスタリンA2、β-クリスタリンA3、β-クリスタリンA4、β-クリスタリンS、グルコース調節タンパク質78kD(GRP-78)、カルレチキュリン、14-3-3タンパク質ε、セロトラスフェリン、アルブミン、ケラチン、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ビリン2、補体1q結合タンパク質/ヒアルロン酸結合タンパク質(「補体1q成分」)、アミロイドA(alアミロイドA)、アミロイドP成分、C5およびCSb-9の末端複合体、HLA-DR、フィブリノーゲン、第X因子、プロトロンビン、補体3、補体5、および補体9、補体反応性タンパク質(CRP)、HLA-DR、アポリポタンパク質A、アポリポタンパク質E、抗キモトリプシン、p2ミクログロブリン、トロンボスポンジン、エラスチン、コラーゲン、ICAM-1、LFA1、LFA3、B7、IL-1、IL-6、IL-12、TNF-α、GM-CSF、熱ショックタンパク質、コロニー刺激因子(GM-CSF、M-CSF)、ならびにIL-10からなる群より選択される黄斑変性症に関連した分子を対象由来の試料中で検出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
rs10490924、rs11200638、rs760336、およびrs763720のうち少なくとも1種からなる群より選択される多型部位を検出することを含む、HTRA1遺伝子の遺伝的変種を対象由来の試料中で検出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
a)BF遺伝子のrs641153におけるAもしくはG、またはBFタンパク質の32位におけるRもしくはQ、
b)BF遺伝子のrs4151667におけるAもしくはT、またはBFタンパク質の9位におけるLもしくはH、
c)C2遺伝子のrs547154におけるGもしくはT、および
d)C2遺伝子のrs9332379におけるCもしくはG、またはC2タンパク質の318位におけるDのE
からなる群より選択される多型部位を検出することを含む、補体因子B(BF)遺伝子および/または補体成分2(C2)遺伝子の遺伝的変種を対象由来の試料中で検出する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
血管障害を有するかまたは発症するリスクがある対象を治療する方法であって、CFHR1ポリペプチド、CFHR3ポリペプチド、CFHR1ポリペプチド、および/もしくはCFHR3ポリペプチドの少なくとも1つの部分、またはそれらの混合物を該対象に投与する段階を含む、方法。
【請求項21】
CFHR1ポリペプチドを投与する段階を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
完全長CFHR1ポリペプチドを投与する段階を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
CFHR3ポリペプチドを投与する段階を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
完全長CFHR3ポリペプチドを投与する段階を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
血管疾患が動脈瘤である、請求項20記載の方法。
【請求項26】
CFHR3タンパク質またはその断片および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
CFHR1タンパク質またはその断片および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
CFHR3ポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子治療用ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
CFHR1ポリペプチドまたはその断片をコードする遺伝子治療用ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項30】
AMDを有するかまたは発症するリスクがある対象を治療する方法であって、CFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子の発現を減少させるかまたはCFHR1遺伝子および/もしくはCFHR3遺伝子の遺伝子産物の活性もしくは量を減少させる作用物質を投与する段階を含む、方法。
【請求項31】
作用物質が、CFHR1遺伝子および/またはCFHR3遺伝子の発現を減少させるアンチセンスRNA、siRNA、またはリボザイムである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
プラスマフェレーシスによって、CFHR1遺伝子産物および/またはCFHR3遺伝子産物のレベルを低下させる段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
CFHR1タンパク質に対する抗体および/またはCFHR3タンパク質に対する抗体を投与することによって、CFHR1遺伝子産物および/またはCFHR3遺伝子産物のレベルを低下させる段階を含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
抗CFHR1抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項35】
CFHR1ポリペプチドのアミノ末端に結合する抗CFHR1抗体を含む、請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項36】
抗CFHR3抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
CFHR3ポリペプチドのカルボキシル末端に結合する抗CFHR3抗体を含む、請求項36記載の薬学的組成物。
【請求項38】
請求項1記載のスクリーニング方法を実施するためのキットであって、ヒト第1染色体上のCFH遺伝子のエキソン22の3'末端とCFHR4遺伝子のエキソン1の5'末端との間のDNA配列内の欠失の存在もしくは不在、ならびに/またはCFHR1遺伝子産物および/もしくはCFHR3遺伝子産物の存在もしくは不在を検出するための試薬を含む、キット。
【請求項39】
請求項1記載のスクリーニング方法を実施するためのキットであって、CFHR1タンパク質および/もしくはCFHR3タンパク質またはその一部分と優先的に反応する抗体を含む、キット。
【請求項40】
a)(i)CFHR3ポリペプチドおよび/またはCFHR1ポリペプチドを発現する細胞と
(ii)試験物質と
を混合する段階;
b)CFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルを測定する段階、ならびに
c)該試験物質の存在下でのCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルを、該試験物質の不在下でのCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルである参照値と比較する段階
を含む、血管障害を治療する際に使用するための作用物質をスクリーニングする方法であって、
該試験物質の存在下でのCFHR3遺伝子および/またはCFHR1遺伝子の発現レベルが高い場合、該試験物質が血管障害を治療するために有用であり得ることが示される、方法。
【請求項41】
血管障害の治療用の医薬を調製するための、CFHR3遺伝子の少なくとも一部分の遺伝子産物を含むタンパク質の使用。
【請求項42】
血管障害の治療用の医薬を調製するための、CFHR1遺伝子の少なくとも一部分の遺伝子産物を含むタンパク質の使用。
【請求項43】
加齢黄斑変性症(AMD)の治療用の医薬を調製するための、CFHR1のエピトープに結合する抗体の使用。
【請求項44】
加齢黄斑変性症(AMD)の治療用の医薬を調製するための、CFHR3のエピトープに結合する抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【公表番号】特表2009−544280(P2009−544280A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519713(P2009−519713)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/073514
【国際公開番号】WO2008/008986
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011433)ユニバーシティー オブ アイオワ リサーチ ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】