説明

衝突物保護装置

【課題】 フロントピラーの上面に膨張展開させたエアバッグのずれを確実に防ぐことができる衝突物保護装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 車両2の上面に膨張展開させるエアバッグ10を備えている衝突物保護装置1であって、エアバッグ10は、フロントウインドガラス2aの下部に沿って膨張展開する本体部11と、この本体部11の両端部から屈曲してフロントピラー2bに沿って膨張展開する一対のピラー部12とが形成されており、膨張展開させたピラー部12において、車両2の上面に重なる領域12gには、ピラー部12の内部を長手方向に沿って区画するストラップ12aと、ピラー部12の内周面との接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部12hが形成され、この窪み部12hは、フロントピラー2bの上面が入り込む位置に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が衝突物に衝突したときに、衝撃を吸収して衝突物を保護する衝突物保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両への衝突を検知または予知したときに、車両の上面にエアバッグを膨張展開させることにより、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和する衝突物保護装置としては、車両のフロントウインドガラスの下部に沿って膨張展開する本体部と、この本体部の両端部から屈曲して車両のフロントピラーに沿って膨張展開する一対のピラー部とが形成された筒状の袋体からなるエアバッグを備えている衝突物保護装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この衝突物保護装置では、膨張展開させたエアバッグの軸断面形状が真円形状となるため、車両の上面に重なる領域の幅が狭くなっており、エアバッグが膨張展開するときに生じる揺れや、膨張展開後に作用する風圧や衝突物からの押圧力によって、エアバッグが車両の上面でずれてしまう可能性がある。特に、本体部から屈曲して膨張展開した各ピラー部は、先端部が固定されないため、車両の上面でずれ易くなっている。
【0004】
そこで、フロントピラーに沿って膨張展開させるピラー部の内部に、その内部を長手方向に沿って区画するストラップを延設し、ピラー部の上面部と下面部とをストラップを介して繋ぐことにより、膨張展開させたピラー部において、車両の上面に重なる領域に、ストラップとピラー部の内周面との接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部を形成する構成がある。この構成では、膨張展開させたピラー部の軸断面形状が幅広になるため、車両の上面に重なる領域の幅が広くなっている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−264146号公報(段落0015、図4)
【特許文献2】特開2003−306100号公報(段落0022、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、膨張展開させたピラー部において、車両の上面と重なる領域に窪み部を形成する構成では、車両の上面に重なる領域の幅を広くすることはできるが、窪み部が車両の上面に接触しないため、膨張展開させたピラー部と車両の上面との接触面積が少なくなってしまう。したがって、ピラー部と車両の上面との摩擦抵抗を十分に確保して、ピラー部のずれを確実に防ぐことができなかった。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、フロントピラーの上面に膨張展開させたエアバッグのずれを確実に防ぐことができる衝突物保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、車両への衝突を検知または予知したときに、車両の上面に膨張展開させるエアバッグを備えている衝突物保護装置であって、エアバッグは、筒状の袋体であり、車両のフロントウインドガラスの下部に沿って膨張展開する本体部と、本体部の両端部から屈曲して車両のフロントピラーに沿って膨張展開する一対のピラー部とが形成されており、膨張展開させたピラー部において、車両の上面に重なる領域には、ピラー部の内部を長手方向に沿って区画するストラップと、ピラー部の内周面との接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部が形成され、窪み部は、フロントピラーの上面が入り込む位置に形成されていることを特徴としている。
【0008】
このように、車両のフロントピラーに沿って膨張展開させたピラー部において、車両の上面に重なる領域に溝状の窪み部が形成され、この窪み部にフロントピラーの上面が入り込むように構成されているため、膨張展開させたピラー部をフロントピラーに係止させることができる。また、膨張展開させたピラー部の窪み部にフロントピラーの上面が入り込むことにより、ピラー部と車両の上面との接触面積を十分に確保することができる。これにより、膨張展開させたピラー部のずれを確実に防ぐことができ、エアバッグによってフロントピラーが覆われた状態を保つことができる。
また、各ピラー部は、フロントウインドガラスの下部に沿って膨張展開する本体部の両端部から屈曲して形成されており、エアバッグを膨張展開させたときに、内圧によって屈曲部に張力が生じることにより、ピラー部の基部が本体部に支持された状態となる。そのため、膨張展開させたピラー部が基部から振れてしまうことを防ぐことができる。
そして、膨張展開させたピラー部のずれを確実に防ぐことにより、ピラー部を形成するときに、あらかじめピラー部のずれを考慮して、ピラー部の幅を広く形成する必要がなくなり、エアバッグを小型化することができるため、エアバッグを膨張展開させるためのガスを発生させるインフレータを小さくすることができ、車両に対して容易に搭載することができる。
【0009】
前記した衝突物保護装置において、膨張展開させた本体部には、本体部の上面部と下面部とを繋いでいる結合部材が設けられているように構成することができる。
【0010】
このように、フロントウインドガラスの下部に沿って膨張展開させる本体部に、本体部の上面部と下面部とを繋いでいる結合部材を設けることにより、車両の上面に重なる領域には、窪み部が形成されることになる。これにより、膨張展開させた本体部の軸断面形状が幅広になり、車両の上面に重なる領域の幅を広くすることができるため、本体部をずれ難くすることができ、エアバッグ全体のずれを防ぐことができる。
なお、結合部材は、上面部と下面部とを縫い合わせる糸や、本体部の内部に設けたストラップなど、その構成は限定されるものではない。
【0011】
前記した衝突物保護装置において、エアバッグは、膨張展開させたピラー部の基部が車両のフードに乗り上げることにより、膨張展開させたピラー部が基部を支点としてフロントピラーに押し付けられる形状に形成することができる。
【0012】
このように、ピラー部を膨張展開させたときに、車両のフードに乗り上げたピラー部の基部を支点として、ピラー部がフロントピラーに押し付けられるように構成することにより、ピラー部とフロントピラーとの密着性を高めることができるため、ピラー部のずれを効果的に防ぐことができる。
【0013】
前記した衝突物保護装置において、エアバッグは、本体部に取り付けられたインフレータで発生したガスによって膨張展開するように構成されていることが望ましい。
【0014】
このように、本体部および各ピラー部にそれぞれインフレータを取り付けることなく、本体部に取り付けられたインフレータで発生したガスによってエアバッグ全体を膨張展開させることにより、衝突物保護装置を簡易な構成にすることができる。
【0015】
前記した衝突物保護装置において、ピラー部には、ストラップが複数設けられているように構成するができる。
【0016】
このように、ピラー部にストラップを複数設けることにより、膨張展開させた各ピラー部において、車両の上面に重なる領域に窪み部を複数形成することができ、さらに、各ストラップの間隔や角度を調整することによって、車両の上面に重なる領域を下面側が凹状になるように湾曲させることができるため、車両の上面に重なる領域を、各種のフロントピラーに対応させて変形させることにより、ピラー部とフロントピラーとの密着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衝突物保護装置によれば、車両のフロントピラーに沿って膨張展開させたピラー部において、車両の上面に重なる領域に形成された溝状の窪み部に、フロントピラーの上面が入り込むように構成されているため、膨張展開させたピラー部をフロントピラーに係止させることができるとともに、膨張展開させたピラー部と車両の上面との接触面積を十分に確保することができる。また、エアバッグを膨張展開させたときに、本体部とピラー部との屈曲部に張力が生じることにより、ピラー部の基部が本体部に支持された状態となるため、膨張展開させたピラー部が基部から振れてしまうことを防ぐことができる。
これにより、膨張展開させたピラー部のずれを確実に防ぐことができ、エアバッグによってフロントピラーが覆われた状態を保つことができるため、車両が衝突物に衝突しときに、その衝突物に加えられる衝撃力を確実に吸収緩和することができる。
そして、膨張展開させたピラー部のずれを防ぐことにより、ピラー部を形成するときに、あらかじめピラー部のずれを考慮して、ピラー部の幅を広く形成する必要がなくなり、エアバッグを小型化することができるため、エアバッグを膨張展開させるためのガスを発生させるインフレータを小さくすることができ、車両に対して容易に搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)はエアバッグを膨張展開させる前の状態の平面図、(b)はエアバッグを膨張展開させた後の状態の平面図である。図2は、本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)は図1(a)のA−A断面図、(b)は図1(b)のB−B断面図である。図3は、本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)は図1(b)のC−C断面図、(b)は図1(b)のD−D断面図である。
【0019】
本実施形態では、自動車である車両が走行中に衝突物と衝突し、その衝突物が車両前部の上面に二次衝突したときに、その衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和するために車両前部に搭載された衝突物保護装置を例として説明する。
【0020】
衝突物保護装置1は、図1に示すように、車両2と衝突物との衝突を検知または予知する衝突判定装置(図示せず)と、衝突判定装置が車両2への衝突を検知または予知したときに、車両2の上面に膨張展開するエアバッグ10とを備えている。
【0021】
衝突判定装置は、車両2に搭載されたセンサやレーダ(図示せず)からの信号に基づいて、車両2と衝突物との衝突を検知または予知するECU(Electronic Control Unit)によって構成されており、車両2への衝突を検知または予知したときには、エアバッグ10を膨張展開させるためのガスを発生させるインフレータ20,20を作動させるように構成されている。なお、衝突判定装置は、既存の装置を用いて構成されており、その構成は限定されるものではない。
【0022】
エアバッグ10は、図1(b)に示すように、筒状の袋体であり、車両2のフロントウインドガラス2aの下部に沿って膨張展開する本体部11と、この本体部11の両端部から屈曲して車両2のフロントピラー2b,2bに沿って膨張展開する一対のピラー部12,12とが形成されている。
【0023】
膨張展開する前のエアバッグ10は、図2(a)に示すように、車両2のフード2cの下方に配置されているリテーナ2eの内部に折り畳まれた状態で収納されている。このリテーナ2eは、カウルトップ2dの前部に開口しており、その開口部は、カウルトップ2dと同一面を構成する蓋体2fによって塞がれている。
【0024】
なお、本実施形態では、図1(a)に示すように、本体部11に二台のインフレータ20,20が取り付けられており、各インフレータ20,20で発生したガスによって、エアバッグ10が膨張展開するように構成されている。
このように、本体部11および各ピラー部12,12にそれぞれインフレータ20を取り付けることなく、本体部11に取り付けられた各インフレータ20,20で発生したガスによってエアバッグ10全体を膨張展開させることにより、衝突物保護装置1を簡易な構成にすることができる。
そして、エアバッグ10が膨張展開するときには、図2(b)および図3(a)に示すように、その膨張力によってリテーナ2eの開口部から蓋体2f(図2(a)参照)を分離して、車両2の上面に膨張展開することになる。
【0025】
エアバッグ10の本体部11は、図1(b)および図2(b)に示すように、車両2のフロントウインドガラス2aの下部に沿って、車幅方向に膨張展開する筒状の袋体であり、内部を長手方向に沿って区画する二枚のストラップ11a,11a(特許請求の範囲における「結合部材」)が延設されている。各ストラップ11a,11aはフロントウインドガラス2aに対して略垂直になるように配置された仕切壁であり、各ストラップ11a,11aの上端縁11b,11bおよび下端縁11c,11cが、本体部11の内周面11dに接続されることにより、本体部11の上面部11eと下面部11fとが各ストラップ11a,11aを介して繋がれている。
【0026】
このように、本体部11では、各ストラップ11a,11aの上端縁11b,11bおよび下端縁11c,11cが内周面11dに接続され、本体部11の上面部11eと下面部11fとが各ストラップ11a,11aを介して繋がれているため、本体部11を膨張展開させたときには、各ストラップ11a,11aと内周面11dとの接続部によって、本体部11の外周面が内方に引き込まれた状態となる。
これにより、膨張展開させた本体部11において、車両2の上面に重なる領域11gには、各ストラップ11a,11aと内周面11dとの接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部11h,11hが長手方向に沿って形成されることになる。この窪み部11h,11hが形成されることによって、膨張展開させた本体部11の軸断面形状が幅広になり、本体部11の下面側が平坦状になるため、車両2の上面に重なる領域の幅が広くなっている。
【0027】
エアバッグ10の各ピラー部12,12は、図1(b)および図3に示すように、車両2の各フロントピラー2b,2bに沿って、上下方向に膨張展開する筒状の袋体である。なお、各ピラー部12,12は同一の構成であるため、以下の説明では、車両2の正面から見て右側のピラー部12について説明し、左側のピラー部12については説明を省略する。
【0028】
ピラー部12には、内部を長手方向に沿って区画するストラップ12aが延設されており、このストラップ12aはフロントウインドガラス2aに対して略垂直になるように配置された仕切壁であり、ストラップ12aの上端縁12bおよび下端縁12cが、ピラー部12の内周面12dに接続されることにより、ピラー部12の上面部12eと下面部12fとがストラップ12aを介して繋がれている。
【0029】
このように、ピラー部12では、ストラップ12aの上端縁12bおよび下端縁12cが内周面12dに接続され、ピラー部12の上面部12eと下面部12fとがストラップ12aを介して繋がれているため、ピラー部12を膨張展開させたときには、本体部11と同様に、ストラップ12aの上端縁12bおよび下端縁12cと内周面12dとの接続部によって、ピラー部12の外周面が内方に引き込まれた状態となる。
これにより、膨張展開させたピラー部12において、車両2の上面に重なる領域12gには、ストラップ12aと内周面12dとの接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部12hが長手方向に沿って形成されることになる。この窪み部12hが形成されることによって、膨張展開させたピラー部12の軸断面形状が幅広になり、ピラー部12の下面側が平坦状になるため、車両2の上面に重なる領域の幅が広くなっている。
また、ピラー部12を膨張展開させたときに、車両2の上面に重なる領域12gに形成される溝状の窪み部12hは、フロントピラー2bの上面が入り込む位置に形成されている。
【0030】
さらに、本実施形態のエアバッグ10では、膨張展開させたピラー部12の基部12iが、車両2のフード2cの後部上面に乗り上げる形状に形成されている。これにより、フロントピラー2bに沿って、膨張展開させたピラー部12の基部12iが上方(矢印E方向)に押し上げられた状態となるため、ピラー部12全体に対して、基部12iを支点として下方(矢印F方向)に向けて回転モーメントが作用することになり、ピラー部12が基部12iを支点としてフロントピラー2bに押し付けられることになる。
【0031】
以上のように構成された衝突物保護装置1は、次のように動作して本発明の作用効果を奏する。
図1(a)に示すように、衝突判定装置(図示せず)が、車両2に搭載されたセンサやレーダ(図示せず)からの信号に基づいて、車両2への衝突を検知または予知したときには、衝突判定装置は各インフレータ20,20を作動させることになり、各インフレータ20,20で発生したガスによって、図1(b)に示すように、エアバッグ10が車両2の上面に膨張展開することになる。
【0032】
そして、図2(b)に示すように、フロントウインドガラス2aの下部に沿って膨張展開させた本体部11において、車両2の上面に重なる領域11gには、各ストラップ11a,11aと内周面11dとの接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部11h,11hが形成されることになる。
この窪み部11h,11hが形成されることによって、膨張展開させた本体部11の軸断面形状が幅広になり、本体部11の下面側が平坦状になるため、車両2の上面に重なる領域11gの幅を広くすることができる。これにより、膨張展開後に作用する風圧や衝突物からの押圧力による本体部11のずれを防ぐことができ、エアバッグ10全体のずれを防ぐことができる。
【0033】
また、図3に示すように、フロントピラー2bに沿って膨張展開させたピラー部12において、車両2の上面に重なる領域12gには、ストラップ12aと内周面12dとの接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部12hが形成されることになる。
この窪み部12hが形成されることによって、膨張展開させたピラー部12の軸断面形状が幅広になり、ピラー部12の下面側が平坦状になるため、車両2の上面に重なる領域12gの幅を広くすることができる。これにより、膨張展開後に作用する風圧や衝突物からの押圧力によるピラー部12のずれを防ぐことができる。
さらに、窪み部12hにフロントピラー2bの上面が入り込むことになるため、ピラー部12をフロントピラー2bに係止させることができるとともに、ピラー部12と車両2の上面との接触面積を十分に確保することができるため、膨張展開させたピラー部12のずれを確実に防ぐことができ、エアバッグ10によってフロントピラーが覆われた状態を保つことができる。
【0034】
また、ピラー部12は、図1(b)に示すように、フロントウインドガラス2aの下部に沿って膨張展開する本体部11の両端部から屈曲して形成されており、エアバッグ10を膨張展開させたときに、内圧によって屈曲部に張力が生じることにより、ピラー部12の基部12iが本体部11に支持された状態となるため、ピラー部12が基部12iから振れてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
また、膨張展開させたピラー部12は、車両2のフードに乗り上げた基部12iを支点として、フロントピラー2bに押し付けられるように構成されているため、ピラー部12とフロントピラー2bとの密着性を高めることができ、ピラー部12のずれを効果的に防ぐことができる。
【0036】
このように、衝突物保護装置1では、膨張展開させたピラー部12のずれを確実に防ぐことができ、エアバッグ10によってフロントピラー2bが覆われた状態を保つことができるため、車両2が衝突物に衝突しときに、その衝突物に加えられる衝撃力を確実に吸収緩和することができる。
そして、膨張展開させたピラー部12のずれを確実に防ぐことにより、ピラー部12を作成するときに、あらかじめピラー部12のずれを考慮して、ピラー部12の幅を広く形成する必要がなくなり、エアバッグ10を小型化することができるため、エアバッグ10を膨張展開させるためのガスを供給するインフレータ20を小さくすることができ、車両2に対して容易に搭載することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。図4は、本実施形態における衝突物保護装置の他の構成を示した図で、ストラップが複数設けられたピラー部の横断面図である。
例えば、本実施形態では、図3(b)に示すように、ピラー部12の内部に一枚のストラップ12aを設けているが、ピラー部12の内部にストラップ12aを複数設けてもよい。
図4に示すように、内部に二枚のストラップ12a,12aを設けたピラー部12´では、二枚のストラップ12a,12aの上端縁12b,12bの間隔よりも下端縁12c,12cの間隔を狭めることにより、膨張展開させたピラー部12´において、車両2の上面に重なる領域12gを、フロントピラー2bの上面の形状に対応させて、下面側が凹状になるように湾曲させている。この構成では、ピラー部12´とフロントピラー2bとの密着性を高めることができる。
【0038】
このように、ピラー部12または本体部11の内部に設けるストラップ12a,11a(図2(a)および図3(b)参照)の枚数や、各ストラップ12a,11aの間隔および角度を調整することにより、車両2の上面に重なる領域12g,11gを、車両2の上面の形状に対応させて変形させることができ、各種の車両において、エアバッグ10と車両2の上面との密着性を高めることができる。
【0039】
また、図1(b)に示すように、車両2の各フロントピラー2b,2bに沿って膨張展開する各ピラー部12,12は、車両2のフロントウインドガラス2aの下部に沿って膨張展開する本体部11の両端部から屈曲して形成されているため、本体部11の車幅方向の長さ、および本体部11に対する各ピラー部12,12の角度を調整することにより、本発明の衝突物保護装置1を各種の車両に適用することができる。
【0040】
また、本実施形態では、図3(a)に示すように、ピラー部12をフロントピラー2bに沿って膨張展開するように形成しているが、膨張展開させたピラー部12の先端部側をフロントピラー2bに対して下方に向かって屈曲または湾曲するようにピラー部12の形状を形成した場合には、膨張展開させたピラー部12がフロントピラー2bに対して確実に押し付けられるため、ピラー部12とフロントピラー2bとの密着性を高めることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、図2(b)に示すように、本体部11の上面部11eと下面部11fとを各ストラップ11a,11aを介して繋ぐことにより、車両2の上面に重なる領域11gに溝状の窪み部11hを形成して、本体部11の下面側を平坦状にしているが、本体部11の上面部11eと下面部11fとを糸によって複数箇所で縫い合わせることにより、車両2の上面に重なる領域11gに窪み部を複数形成して、本体部11の下面側を平坦状にすることもできる。このように、本体部11の上面部11eと下面部11fとを繋ぐための結合部材は、ストラップや糸等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)はエアバッグを膨張展開させる前の状態の平面図、(b)はエアバッグを膨張展開させた後の状態の平面図である。
【図2】本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)は図1(a)のA−A断面図、(b)は図1(b)のB−B断面図である。
【図3】本実施形態の衝突物保護装置を示した図で、(a)は図1(b)のC−C断面図、(b)は図1(b)のD−D断面図である。
【図4】本実施形態における衝突物保護装置の他の構成を示した図で、複数のストラップが設けられたピラー部の横断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 衝突物保護装置
2 車両
2a フロントウインドガラス
2b フロントピラー
2c フード
10 エアバッグ
11 本体部
11a ストラップ
12 ピラー部
12a ストラップ
12i 基部
20 インフレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への衝突を検知または予知したときに、前記車両の上面に膨張展開させるエアバッグを備えている衝突物保護装置であって、
前記エアバッグは、筒状の袋体であり、前記車両のフロントウインドガラスの下部に沿って膨張展開する本体部と、前記本体部の両端部から屈曲して前記車両のフロントピラーに沿って膨張展開する一対のピラー部とが形成されており、
膨張展開させた前記ピラー部において、前記車両の上面に重なる領域には、前記ピラー部の内部を長手方向に沿って区画するストラップと、前記ピラー部の内周面との接続部によって内方に引き込まれた溝状の窪み部が形成され、
前記窪み部は、前記フロントピラーの上面が入り込む位置に形成されていることを特徴とする衝突物保護装置。
【請求項2】
膨張展開させた前記本体部において、前記車両の上面に重なる領域には、前記本体部の上面部と下面部とを繋いでいる結合部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衝突物保護装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、膨張展開させた前記ピラー部の基部が前記車両のフードに乗り上げることにより、膨張展開させた前記ピラー部が前記基部を支点として前記フロントピラーに押し付けられる形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の衝突物保護装置。
【請求項4】
前記エアバッグは、前記本体部に取り付けられたインフレータで発生したガスによって膨張展開するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の衝突物保護装置。
【請求項5】
前記ピラー部には、前記ストラップが複数設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の衝突物保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−335173(P2006−335173A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161064(P2005−161064)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】