説明

表示素子用基板

【課題】本発明の目的は、ガスバリア性がより良好な表示素子用基板を提供することにある。
【解決手段】2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であることを特徴とする表示素子用基板。該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする表示素子用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示素子用基板に関する。さらに詳しくはフレキシブルディスプレイ等のディスプレイに用いられる表示素子用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子用基板は表示素子に用いられている。表示素子は、フレキシブルディスプレイ等のディスプレイに用いられている。フレキシブルディスプレイは、機器等の曲面に設置することができる柔軟性を有するディスプレイであり、表示素子として有機EL素子を用いたフレキシブルディスプレイ、表示素子として液晶素子を用いたフレキシブルディスプレイ等が挙げられる。また、表示素子用基板としては、基材フィルムに無機酸化物膜からなるガスバリア層と樹脂層とがこの順に積層されてなるフィルムが、特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−89163号公報(第1頁〜第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表示素子用基板は、ガスバリア性が十分ではなく、該基板を用いてなる表示素子の耐久性が十分ではなかった。本発明の目的は、ガスバリア性がより良好で、耐久性がより良好な表示素子を得ることができる表示素子用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記の表示素子用基板および表示素子を提供するものである。
<1>2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であることを特徴とする表示素子用基板。
<2>2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする表示素子用基板。
<3>2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、さらに無機層状化合物および樹脂からなる層を有し、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該無機層状化合物および樹脂からなる層とが接し、該無機層状化合物および樹脂からなる層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする表示素子用基板。
<4>液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層に用いられる樹脂が、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の樹脂である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<5>さらに無機層を有し、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と該無機層とが接する前記<1>〜<4>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<6>無機層が金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の無機物からなる前記の表示素子用基板。
<7>無機層状化合物が、粒径が5μm以下でありアスペクト比が50以上5000以下の無機層状化合物である前記<3>〜<6>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<8>さらに導電性を有する層を有し、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と導電性を有する層とが接する前記<1>〜<4>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<9>さらに導電性を有する層を有し、無機層と導電性を有する層とが接する前記<5>〜<7>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<10>水蒸気透過度が0.2g/m2/day以下でかつ酸素透過度が0.1cc/m2/day以下である前記<1>〜<9>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<11>20℃〜150℃の温度範囲における平均線膨張率が、−10ppm/℃以上25ppm/℃以下であることを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれかに記載の表示素子用基板。
<12>前記<1>〜<11>のいずれかに記載の表示素子用基板を用いてなることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用基板。
<13>下記の(a)〜(e)を有することを特徴とする表示素子。
(a)前記<1>〜<7>のいずれかに記載の基板。
(b)導電性を有する層。
(c)電界印加により、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が発現する有機層。
(d)透明導電性を有する層。
(e)透明な封止材。
<14>下記の(a´)〜(d´)の工程を含む製法により得られることを特徴とする表示素子。
(a´)前記<1>〜<7>のいずれかに記載の基板の液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面に、導電性を有する層を形成する工程。
(b´)工程(a´)で得られる導電性を有する層側の表面に、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が電界印加により発現する有機層を形成する工程。
(c´)工程(b´)の有機層側の表面に、透明導電性を有する層を形成し、積層体を得る工程。
(d´)工程(c´)により得られた積層体の表面の一部または全部を、透明な封止材で封止し、表示素子を得る工程。
<15>前記<13>または<14>記載の表示素子を用いてなることを特徴とするフレキシブルディスプレイ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表示素子用基板は柔軟性を有し、かつガスバリア性がより良好である。また本発明の表示素子用基板を用いてなる表示素子も柔軟性を有し、ガスバリア性がより良好であり、耐久性が良好であるため、本発明の表示素子用基板はフレキシブルディスプレイにより好適に使用でき、特に表示素子として有機EL素子を用いたフレキシブルディスプレイに好適に使用できるため、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について説明する。
本発明の表示素子用基板は、2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であることを特徴とする。このような構成とすることで、本発明の表示素子用基板は、より良好なガスバリア性を示すことができる。
【0009】
次に、本発明の表示素子用基板が有する液晶ポリエステル樹脂層について説明する。該液晶ポリエステル樹脂層は、(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる。
【0010】
(A)液晶ポリエステルとしては、例えば、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および芳香族ジオールを重合させて得られるもの、
(2)同種または異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させて得られるもの、
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの、
などが挙げられる。
【0011】
また、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、および芳香族ジオールの代わりに、これらのエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0012】
ここで、カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステル生成反応を促進するような酸塩化物、酸無水物などの反応性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0013】
また、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールは、エステル形成性を阻害しない程度であれば、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基などで置換されていてもよい。
【0014】
該液晶ポリエステルの繰返し構造単位としては、下記の(1)芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し構造単位、(2)芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位、(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位を例示することができる。
【0015】
(1)芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:

上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0016】
(2)芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位:

上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0017】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位:

上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0018】
(A)液晶ポリエステルは、耐熱性、機械的特性、加工性のバランスの点から、上記式(ア)で表される繰り返し構造単位を、(A)の繰り返し構造単位総モル数に対して30モル%以上含むことが好ましい。
【0019】
また、上記式(ア)で表される繰り返し構造単位を含む(A)液晶ポリエステルの繰り返し構造単位の組み合わせとしては、下記(I)〜(VI)から選ばれるいずれかに示されるものがより好ましい。また、さらにガスバリア性を良好にする意味で(I)、(II)、(III)、(V)または(VI)の、全芳香族ポリエステルがさらに好ましい。特に好ましくは(I)〜(III)の構造を有する全芳香族ポリエステルである。
【0020】
(I)

【0021】
(II)

【0022】
(III)

【0023】
(IV)

【0024】
(V)

【0025】
(VI)

【0026】
上記(I)〜(VI)における組合せの(A)液晶ポリエステルは、例えば特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報、特公昭63−3891号公報、特公昭56−18016号公報、特開平2−51523号公報などに記載の方法に準拠して製造し得る。これらの中で好ましい組合せとしては(I)、(II)または(IV)、さらに好ましくは(I)または(II)が挙げられる。
【0027】
また、本発明における(A)液晶ポリエステルは、耐熱性の観点から、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位を30〜80モル%、上記芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位を25〜10モル%、上記芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位を35〜10モル%含有することが好ましい。
【0028】
次に(B)液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体について説明する。液晶ポリエステルと反応性を有する官能基としては、液晶ポリエステルと反応性を有するものであればよいが、好ましくはオキサゾリル基やエポキシ基、アミノ基であり、さらに好ましくはエポキシ基である。これらの官能基は他の官能基の一部として存在していてもよく、そのような例としてはグリシジル基等が挙げられる。
【0029】
共重合体(B)において、上記の液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を共重合体中に導入する方法としては、例えば共重合体の合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、共重合体に該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0030】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する単量体としては、グリシジル基を含有する単量体が好ましく使用される。グリシジル基を含有する単量体としては、例えば下記一般式

(式中、Rは、エチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基を表し、Xは、−C(O)O−、−CH2−O−または

を表す。)
で示される不飽和カルボン酸グリシジルエステル、不飽和グリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0031】
ここで、不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸ジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸グリシジルエステルなどを挙げることができる。
【0032】
不飽和グリシジルエーテルとしては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が例示される。
【0033】
上記の共重合体(B)は、好ましくは、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を0.1〜30重量%含有する共重合体である。
【0034】
また、上記の共重合体(B)は、熱可塑性樹脂であってもよいし、ゴムであってもよいし、熱可塑性樹脂とゴムとの混合物であってもよい。本発明の表示素子用基板の熱安定性や柔軟性の点で、ゴムがより好ましい。
【0035】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基をゴム中に導入する方法としては、例えばゴムの合成段階で、該官能基を有する単量体を共重合により導入することも可能であるし、ゴムに該官能基を有する単量体をグラフト共重合することも可能である。
【0036】
液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するゴムの具体例で、エポキシ基を有するゴムとしては、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムを挙げられる。
【0037】
ここで(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸またはメタクリル酸とアルコールから得られるエステルである。アルコールとしては、炭素原子数1〜8のアルコールが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記の二種以上を併用してもよい。
【0038】
得られる液晶ポリエステル樹脂層の熱安定性や機械的性質の点で、前記ゴムの組成としては、(メタ)アクリル酸エステル単位が好ましくは40重量%を超え97重量%未満、さらに好ましくは45〜70重量%、エチレン単位が好ましくは3重量%以上50重量%未満、さらに好ましくは10〜49重量%、不飽和カルボン酸グリシジルエーテル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%である。
【0039】
該ゴムは、例えばフリーラジカル開始剤による塊状重合、乳化重合、溶液重合などによって製造することができる。なお、代表的な重合方法は、特開昭48−11388号公報、特開昭61−127709号公報などに記載された方法であり、フリーラジカルを生成する重合開始剤の存在下、圧力500kg/cm2以上、温度40〜300℃の条件により製造することができる。
【0040】
上記のゴム以外のゴムとしては、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するアクリルゴムや、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有するビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムを例示することができる。
【0041】
ここでいうアクリルゴムとして好ましくは、式(1)〜(3)
CH2=CH−C(O)−OR1 (1)
CH2=CH−C(O)−OR2OR3 (2)
CH2=CR4H−C(O)−O(R5(C(O)O)nR6 (3)
(式中、R1は炭素原子数1〜18のアルキル基またはシアノアルキル基を示す
。R2は炭素原子数1〜12のアルキレン基を、R3は炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。R4は水素原子またはメチル基、R5は、炭素原子数3〜30のアルキレン基、R6は炭素原子数1〜20のアルキル基またはその誘導体、nは1〜20の整数を示す。)
で表される化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分とするものである。
【0042】
上記式(1)で表されるアクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、シアノエチルアクリレートなどを挙げることができる。
【0043】
また、上記式(2)で表されるアクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えばメトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレートなどを挙げることができる。これらの一種または二種以上を該アクリルゴムの主成分として用いることができる。
【0044】
このようなアクリルゴムの組成として、必要に応じて上記式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体を用いることができる。
このような不飽和単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ハロゲン化スチレン、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルナフタレン、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ベンジルアクリレート、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
【0045】
上記アクリルゴムの好ましい組成としては、上記式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体40.0〜99.9重量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル0.1〜30.0重量%、上記の一般式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体と共重合可能な不飽和単量体0.0〜30.0重量%である。アクリルゴムの組成をこのようにすることで、ポリエステル樹脂層の耐熱性や耐衝撃性、成形加工性が良好となる傾向にある。
【0046】
該アクリルゴムの製法としては、例えば特開昭59−113010号公報、特開昭62−64809号公報、特開平3−160008号公報、あるいはWO95/04764などに記載されているような周知の製法を用いることができ、ラジカル開始剤の存在下で乳化重合、懸濁重合、溶液重合あるいはバルク重合等で製造することができる。
【0047】
また、前記のビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体ゴムとしては、例えば(i)ビニル芳香族炭化水素化合物を主体とするシーケンスと(ii)共役ジエン化合物を主体とするシーケンスとからなるブロック共重合体をエポキシ化して得られるゴム、該ブロック共重合体の水添物をエポキシ化して得られるゴム等が挙げられる。
【0048】
ここでビニル芳香族炭化水素化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。
【0049】
かかるビニル芳香族炭化水素化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体またはその水添物は、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報等に記載されているような方法で製造することができる。
【0050】
さらに、共重合体(B)に用いるゴムとして好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムが用いられる。
【0051】
共重合体(B)に用いるゴムは、必要に応じて加硫を行い、加硫ゴムとして用いることができる。
上記の(メタ)アクリル酸エステル−エチレン−(不飽和カルボン酸グリシジルエステルおよび/または不飽和グリシジルエーテル)共重合体ゴムの加硫は、例えば、多官能性有機酸、多官能性アミン化合物、イミダゾール化合物などを用いることで達成される。
【0052】
また、液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する熱可塑性樹脂の具体例で、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂としては、(I)エチレン単位が50〜99重量%、(II)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、(III)エチレン系不飽和エステル化合物単位が0〜50重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を挙げることができる。
【0053】
エチレン系不飽和エステル化合物(III)としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられ、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0054】
該エポキシ基含有エチレン共重合体の具体例としては、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸メチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびアクリル酸エチル単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0055】
該エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる高圧ラジカル重合法により製造することができる。また、ポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造することができる。
【0056】
本発明における液晶ポリエステル樹脂層は、前記のような(A)液晶ポリエステルを連続相として含有することが好ましい。また、本発明の液晶ポリエステル樹脂層は、前記のような(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体を分散相として含有することが好ましい。液晶ポリエステル樹脂層をこのような構成とすることで、該液晶ポリエステル樹脂層のガスバリア性、耐熱性をより向上することができる。
【0057】
上記の液晶ポリエステル樹脂層の組成の一実施態様としては、(A)は56.0〜99.9重量%、好ましくは65.0〜99.9重量%、さらに好ましくは70〜98重量%、および(B)44.0〜0.1重量%、好ましくは35.0〜0.1重量%、さらに好ましくは30〜2重量%である。
(A)が56.0重量%未満であると得られる液晶ポリエステル樹脂層の水蒸気バリア性、耐熱性が低下する場合がある。また、(A)が99.9重量%を超えると液晶ポリエステル層の成形加工性が低下する場合があり、また価格的にも高価なものとなる。
【0058】
このような液晶ポリエステル樹脂層を構成する(A)および(B)からなる液晶ポリエステル樹脂を製造する方法としては、たとえば、溶液状態で(A)および(B)を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で上記(A)および(B)を混練する方法が好ましい。この溶融混練には一軸もしくは二軸の押出機、または一軸もしくは二軸の各種ニーダー等の混練装置を用いることができ、中でも二軸の混練機が好ましい。溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は、200〜360℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは230〜350℃である。
【0059】
混練に際しては、(A)および(B)を予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で均一に混合してもよいし、混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給してもよい。
【0060】
必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を(A)および(B)の樹脂の製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0061】
本発明における液晶ポリエステル樹脂層は、同時に二軸延伸可能なインフレーション成形によるものが好ましい。すなわち、(A)および(B)からなる樹脂を環状スリットのダイを備えた溶融混練押出機に供給し、シリンダー設定温度好ましくは200〜360℃、さらに好ましくは230〜350℃で溶融混練する。次に、押出機の環状スリットから上方または下方へ溶融樹脂が押出される(この方向(長手方向)がMD方向であり、フィルム面内でそれに直行する方向がTD方向である)。環状スリット間隔は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜2mm、環状スリットの直径は、通常20〜1000mm、好ましくは50〜300mmである。
【0062】
インフレーション成形において、好ましいブロー比は、通常1.5〜10、好ましいMD延伸倍率は、1.5〜40である。
インフレーション成形時の設定条件が上記の範囲外であると、厚さが均一でしわの無い高強度の液晶ポリエステル樹脂層を得るのが困難となる場合がある。
膨張させた液晶ポリエステル樹脂層は、その円周を空冷あるいは水冷させた後、ニップロールを通過させて引き取る。
【0063】
インフレーション成形に際しては、樹脂の組成に応じて、溶融体液晶ポリエステル樹脂層が均一な厚みで表面平滑な状態に膨張するような条件を選択することができる。
インフレーション成形以外の方法であると、液晶ポリエステル樹脂層が二軸延伸されず強度が十分でない場合がある。また、インフレーション成形以外の方法による二軸延伸は、コスト面で問題がでてくることがある。
【0064】
本発明における液晶ポリエステル樹脂層の厚みは、ガスバリア性と柔軟性の点で、3μm以上500μm未満、より好ましくは、5μm以上300μm未満、さらに好ましくは、8μm以上200μm未満である。厚みが3μm未満、または500μm以上であると、柔軟性が損なわれる場合がある。
【0065】
本発明の表示素子用基板は、2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が上記の液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層である。ここで、液晶ポリエステル樹脂層は1層であることが製造の面で好ましい。また、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層に用いる樹脂としては、耐熱性の高い樹脂が挙げられる。該樹脂としては、そのガラス転移温度(Tg)が150℃以上のものが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の樹脂として、具体的には、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂が挙げられ、また、これらの樹脂の中でもエチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂またはポリエーテルサルホン樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂がより好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が180℃以上の樹脂を用いることがさらに好ましく、特に好ましくは190℃以上の樹脂を用いることである。
【0066】
また、本発明の表示素子用基板は、2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする。この表面平均粗さ(Ra)が5nmを超えると、この表示素子用基板を表示素子に用いるときに組み合せる導電層との密着性、あるいは基板のガスバリア性の観点で好ましくない。また、より前記の密着性を向上することができるので、表面平均粗さ(Ra)は、3nm以下であることが好ましい。ここで、表面平均粗さとは、日本規格協会発行のJIS B 0601(平成13年1月20日改正)の段落[4.2.1]に記載の算術平均粗さに相当する値であり、樹脂層表面の断面曲線の平均線から求める値であり、具体的には、セイコーインスツルメント社製Nanopics等の装置を用いて算出することができる値である。
【0067】
該液晶ポリエステル樹脂層としては、上記のものを用いればよい。また、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層としては、上記のものを用いればよい。
【0068】
また、液晶ポリエステル樹脂層と、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層とを接する際に、接着性向上の目的で、液晶ポリエステル樹脂層の表面についてあらかじめ表面処理を施すことができる。この表面処理法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、スパッタリング処理、溶剤処理、紫外線処理、研磨処理、赤外線処理、オゾン処理などが挙げられる。
【0069】
また、本発明の表示素子用基板は、2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、さらに無機層状化合物および樹脂からなる層を有し、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該無機層状化合物および樹脂からなる層とが接し、該無機層状化合物および樹脂からなる層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする。この表面平均粗さ(Ra)が5nmを超えると、この表示素子用基板を表示素子に用いるときに組み合せる導電層との密着性、あるいは基板のガスバリア性の観点で好ましくない。また、より前記の密着性を向上することができるので、表面平均粗さ(Ra)は、3nm以下であることが好ましい。また、表面平均粗さは、前記と同じ手法で求めることができる。
【0070】
該液晶ポリエステル樹脂層としては、上記のものを用いればよい。また、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層としては、上記のものを用いればよい。
【0071】
また、無機層状化合物および樹脂からなる層に用いる無機層状化合物としては、後述する方法により測定されるアスペクト比が50以上5000以下で、平均粒径が5μm以下のものが好ましい。アスペクト比が50未満では、ガスバリア性が低下する傾向がある。一方アスペクト比が5000を越える無機層状化合物は、その製造が容易でない場合がある。製造の点からは、アスペクト比は50以上2000以下がより好ましく、100〜1000の範囲がさらに好ましい。ここで、アスペクト比(Z)は、式Z=L/aで計算される。Lは、溶媒中、動的光散乱法により測定した平均粒径であり、aは、無機層状化合物の平均単位厚みである。単位厚みaは、粉末X線回折測定によって得られる無機層状化合物の回折ピークから算出することができる値である。
さらに、無機層状化合物の大きさ、すなわち、溶媒中、動的光散乱法により測定した平均粒径は5μm以下であり、50nm以上3μm以下の範囲がより好ましく、さらに好ましくは100nm以上2μm以下の範囲である。無機層状化合物の平均粒径が5μmを超えると樹脂中での無機層状化合物の分散が容易でない場合があり、平均粒径が50nm未満であると、ガスバリア性が低下する場合がある。
【0072】
無機層状化合物としては、粘土鉱物を好ましく用いることができる。粘土鉱物としては、具体的にはカオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。取扱いの容易性から、カオリナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、タルクなどが好ましい。
【0073】
また、無機層状化合物および樹脂からなる層に用いる樹脂としては、耐熱性の高い樹脂が挙げられる。具体的には、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂が挙げられる。
【0074】
また、無機層状化合物および樹脂からなる層に用いる樹脂としては、無機層状化合物と樹脂との重量比は、通常は、無機層状化合物/樹脂の重量比が5/95〜90/10の範囲であり、重量比が5/95〜50/50の範囲であることが好ましい。無機層状化合物/樹脂の重量比が5/95より小さい場合には、ガスバリア性が低下する傾向があり、90/10より大きい場合には製膜性が良好ではない場合がある。
【0075】
また、無機層状化合物および樹脂からなる層に用いる樹脂としては、10μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。10μmを超えると表示素子用基板の柔軟性が低下する場合がある。
【0076】
また、本発明の表示素子用基板は、さらに導電性を有する層を有し、上記の液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と導電性を有する層とが接していてもよい。この導電性を有する層は、後述の表示素子の陽極または陰極となってもよいし、パターン化されていてもよい。
【0077】
導電性を有する層としては、導電性の金属酸化物膜、金属薄膜等が用いられる。具体的な材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド、金、白金、銀、銅等が用いられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法により導電性を有する層を形成することができる。また、導電性を有する層としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の導電膜を用いてもよい。
【0078】
本発明の表示素子用基板は、ガスバリア性の観点から、さらに無機層を有し、前記の液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と該無機層とが接することが好ましい。該無機層としては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物または金属酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の無機物からなる層が好ましく、無機物として具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウム、銅、ニッケル及びそれらの組合せからなるものが挙げられる。より好ましくは、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、さらに好ましくは酸窒化ケイ素である。
【0079】
該無機層の厚みは、1nm以上1000nm以下が好ましく、さらに好ましくは10nm以上500nm以下である。1nm未満であると製膜が難しく、1000nmより厚いと、クラックを生じる傾向がある。また、液晶ポリエステル樹脂層と該無機層とが接した表示素子用基板は、ガスバリア性の観点で好ましくない。
【0080】
また、本発明の表示素子用基板は、さらに導電性を有する層を有し、無機層と導電性を有する層とが接していてもよい。この導電性を有する層は、後述の表示素子の陽極または陰極となってもよいし、パターン化されていてもよい。導電性を有する層としては上記のものが挙げられる。
【0081】
また、本発明の表示素子用基板は、反射防止膜、耐磨耗性膜等の膜を積層して用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等が含有されてもよい。
【0082】
次に、本発明の表示素子用基板の製造方法について説明する。
液晶ポリエステル樹脂層の製法としては、上記の製法を挙げることができる。
液晶ポリエステル樹脂層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層とを接する方法、または無機層状化合物および樹脂からなる層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層とを接する方法としては、例えば液晶ポリエステル樹脂層または後述の無機層状化合物および樹脂からなる層の表面に、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂を含む塗工液を塗布し、乾燥し、熱処理を行ってコーティングする方法や、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂からなる層を後からラミネートする方法により形成することができる。具体的な方法としては、ダイレクトグラビア法;リバースグラビア法;マイクログラビア法;2本ロールビートコート法やボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。ラミネートする場合は、これから接する表面について、コロナ処理やアンカーコート剤による処理を行ってもよい。
【0083】
また、無機層状化合物および樹脂からなる層を接する方法としては、工業的に通常用いられる方法により形成することができ、液晶ポリエステル樹脂層の表面に、無機層状化合物と樹脂と溶媒との混合物を塗布し、乾燥し、熱処理を行ってコーティングする方法や、無機層状化合物および樹脂からなる層をラミネートする方法により形成することができる。コーティングする方法としては、ダイレクトグラビア法;リバースグラビア法;マイクログラビア法;2本ロールビートコート法やボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。ラミネートする場合は、これから接する表面について、コロナ処理やアンカーコート剤による処理を行ってもよい。
【0084】
ここで、無機層状化合物は、そのそれぞれの粒子の多くが、該粒子の最大の面を本発明の表示素子用基板の面と略平行になるように配向(これを「面方向に配向」という。)していることが好ましい。無機層状化合物が配向している場合には、表示素子用基板のガスバリア性が向上する傾向がある。そこで、塗布の方法としては、無機層状化合物の粒子を面方向に配向させるよう、基板と平行方向に働く力(シェア)をかける方法であるロールコーティング法またはドクターナイフ法が好ましい。
【0085】
無機層状化合物と樹脂と溶媒との混合物について、無機層状化合物および樹脂としては前記のものを用いて、例えば、樹脂を溶媒に溶解させた溶液と、無機層状化合物を溶媒により膨潤・へき開させて得られる分散液とを混合する方法、該分散液を樹脂に添加して混合させる方法、該溶液に無機層状化合物を添加して膨潤・へき開させながら混合する方法、また樹脂と無機層状化合物とを加熱混練して得られた混練物と溶媒とを混合する方法により製造することができ、前三者が好ましい。前記溶媒としては、無機層状化合物を膨潤・へき開させることができるものが好ましく、例えば、水、メタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、アセトン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。また、前記分散液を製造するに際し、無機層状化合物の分散性を向上するために、無機層状化合物の表面処理を行うことが好ましい。表面処理剤としては、4級アンモニウム塩などが用いられる。
【0086】
無機層を接する方法としては、例えば工業的に通常用いられる真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法およびゾル−ゲル法などが挙げられる。
【0087】
また導電性を有する層を接する方法としては、例えば工業的に通常用いられる真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法およびゾル−ゲル法などが挙げられる。
【0088】
また、本発明の表示素子用基板を用いてなる表示素子の耐久性が向上するので、本発明の表示素子用基板のガスバリア性は、水蒸気透過度が0.2g/m2/day以下でかつ酸素透過度が0.1cc/m2/day以下である場合が好ましく、水蒸気透過度が0.1g/m2/day以下でかつ酸素透過度が0.05cc/m2/day以下である場合がさらに好ましい。
【0089】
また、本発明の表示素子用基板を用いてなる表示素子の密着性が向上するので、本発明の表示素子用基板は、20℃〜150℃の温度範囲における平均熱線膨張率が−10ppm/℃以上25ppm/℃以下である場合が好ましく、−5ppm/℃以上20ppm/℃以下の範囲である場合がさらに好ましい。
【0090】
次に、本発明の表示素子用基板を有する表示素子について説明する。
本発明の表示素子用基板を有する表示素子としては、下記の(a)〜(e)を有するものが挙げられる。
(a)上記<1>〜<7>のいずれかに記載の本発明の表示素子用基板。
(b)導電性を有する層。
(c)電界印加により、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が発現する有機層。
(d)透明導電性を有する層。
(e)透明な封止材。
【0091】
また、本発明の表示素子用基板を用いてなる表示素子としては、例えば、下記の(a´)〜(d´)の工程を含む製法により得られるものが挙げられる。
(a´)上記<1>〜<7>のいずれかに記載の本発明の表示素子用基板の液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面に、導電性を有する層を形成する工程。
(b´)工程(a´)で得られる導電性を有する層側の表面に、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が電界印加により発現する有機層を形成する工程。
(c´)工程(b´)で得られる有機層の表面に、透明導電性を有する層を形成し、積層体を得る工程。
(d´)工程(c´)により得られた積層体の表面の一部または全部を、透明な封止材で封止し、表示素子を得る工程。
【0092】
導電性を有する層としては、上記のものをあげることができ、導電性を有する層の形成方法としては、上記の方法が挙げられる。また、導電性を有する層はパターン化されていてもよい。パターン化の方法としては、マスクを用いたスパッタリングやレジストワークによる手法が挙げられる。
また、工程(a´)において、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面とは、液晶ポリエステル樹脂層の表面ではなく、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の表面または無機層の表面のことである。また、この導電性を有する層は、表示素子において、後述の陰極または陽極の役割を果たす。
【0093】
透明導電性を有する層とは、透明性かつ導電性を有する層であり、パターン化されていてもよい。透明導電性を有する層の形成方法としては、例えば工業的に通常用いられる真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法およびゾル−ゲル法などが挙げられ、また、パターン化の方法としては、マスクを用いたスパッタリングやレジストワークによる手法が挙げられる。また、この透明導電性を有する層は、表示素子において後述の陰極または陽極の役割を果たし、前記の導電性を有する層が陰極の役割を果たすときは、該透明導電性を有する層は陽極の役割を果たし、導電性を有する層が陽極の役割を果たすときは、該透明導電性を有する層は陰極の役割を果たす。
【0094】
また、透明導電性を有する層が陽極となる場合、透明導電性を有する層としては、導電性の金属酸化物膜、金属薄膜等が用いられる。具体的な材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド、金、白金、銀、銅等が用いられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法により透明導電性を有する層を形成することができる。また、透明導電性を有する層としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0095】
また、透明導電性を有する層が陰極となる場合、具体的な材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムから選ばれる金属、およびこれらの金属のうち2つ以上から選ばれる合金、あるいはこれらの金属のうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫から選ばれる1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられ、真空蒸着法、スパッタリング法、または熱圧着によるラミネート法により透明導電性を有する層を形成することができる。またこれらの材料が不透明である場合には、これらの材料を透明にするために、層厚を薄くしてもよいし、抵抗値を低下させるために、上記の陽極となる場合の材料を積層してもよい。
【0096】
また、電界印加により、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が発現する有機層は、上記の導電性を有する層と透明導電性を有する層との間、すなわち上記の陰極および陽極からなる電極間に形成される。
工程(b´)において、導電性を有する層側の表面とは、工程(a´)における導電性を有する層の表面、または、導電性を有する層がパターン化されている場合は、表示素子用基板の表面(例えば、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の表面または無機層の表面)に該有機層が形成されることを意味する。
【0097】
電界印加により、光吸収の機能が発現する有機層に用いる有機化合物としては、二色性色素を含む液晶組成物などが挙げられる。
電界印加により、光散乱の機能が発現する有機層に用いる有機化合物としては、高分子分散型液晶などが挙げられる。
電界印加により、旋光の機能が発現する有機層に用いる有機化合物としては、コレステリック液晶組成物などが挙げられる。
【0098】
また、電界印加により、発光の機能が発現する有機層とは、発光層を必須とし、さらに電子輸送層および/または正孔輸送層を有していてもよい有機層である。
陽極、陰極および発光の機能が発現する有機層の構造としては、例えば、陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた構造(陽極/発光層/電子輸送層/陰極)(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。)、陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた構造(陽極/正孔輸送層/発光層/陰極)、陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた構造(陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)等が挙げられる。
【0099】
発光層に用いる有機化合物としては、低分子化合物、高分子化合物を用いることができ、塗布の容易性の点で高分子化合物が好ましく用いられる。低分子化合物としては、例えば特開昭57−51781号公報、同59−194393号公報に記載されているように、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などが用いられる。
また、高分子化合物としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第30巻、L1941頁(1991年))、ポリパラフェニレン誘導体(アドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)第4巻、36頁(1992年))などが用いられる。
発光層は、これらの有機化合物の粉末からの真空蒸着法、有機化合物の溶液を塗布し乾燥して形成する方法、インクジェット法、スピンコート法等により形成することができる。
【0100】
正孔輸送層に用いる有機化合物としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等が用いられ、正孔輸送層は、正孔輸送層に用いる有機化合物と高分子バインダーとの混合溶液を塗布し乾燥して形成する。
【0101】
電子輸送層に用いる有機化合物としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が用いられ、電子輸送層は、電子輸送層に用いる有機化合物の粉末からの真空蒸着法、または電子輸送層に用いる有機化合物の溶液を塗布し、乾燥して形成する。
【0102】
また、透明な封止材は、工程(a´)、(b´)および(c´)で得られた積層体の一部または全部を封止する役割を果たす。また、封止する前の積層体は、透明導電性を有する層等の保護の目的でさらに保護層を有していてもよい。
【0103】
透明な封止材は、本発明の目的を損なわない限りで透光性を有する封止材であり、得られる表示素子の柔軟性を低下させないような材料である。具体的には樹脂からなるものなどが挙げられる。樹脂としては、具体的には、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ドモン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体;ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン−アクリロニトリル系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂等が挙げられる。
【0104】
この透明な封止材は、厚さが20μm以上1000μm(1mm)以下の範囲のフィルム状のものであり、この厚さは20μm以上500μm以下の範囲がより好ましく、20μm以上300μm以下の範囲がさらに好ましい。
【0105】
透明な封止材を設ける方法としては、前記の樹脂を含む塗工液を積層体に塗布し、乾燥し、熱処理を行ってコーティングする方法や、前記の樹脂からなる層を後からラミネートする方法により形成することができる。コーティングする方法としては、ダイレクトグラビア法;リバースグラビア法;マイクログラビア法;2本ロールビートコート法やボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。ラミネートする場合は、これから接合する表面について、コロナ処理やアンカーコート剤などの処理を行ってもよい。
【0106】
本発明の表示素子用基板を有する表示素子は、陽極および陰極の配置等により、さまざまなパターンで発光させることにより、フレキシブルディスプレイ等のディスプレイとすることができる。面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、特定のパターン状の発光を得るためには、面状の表示素子表面にその特定のパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極を特定のパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。さらに、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。発光色の異なる複数の発光層を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いれば、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動してもよく、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。
【0107】
本発明の表示素子用基板を有する表示素子を用いてなるフレキシブルディスプレイ等のディスプレイは、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどのディスプレイとして用いることができる。さらに、自発光型でかつ薄くすることができ、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源等として好適に用いることができる。また、本発明の表示素子用基板は、曲面状の光源や表示装置にも使用できる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
比較例1
(1)液晶ポリエステル(A)の製造
p―ヒドロキシ安息香酸16.6Kg(12.1モル)、6―ヒドロキシ−2−ナフトエ酸8.4Kg(4.5モル)および無水酢酸18.6Kg(18.2モル)を櫛型攪拌翼付きの重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら昇温し、320℃で1時間、さらに2.0torrの減圧下で320℃で1時間重合させた。この間に、副生する酢酸を系外へ留出し続けた。その後、徐々に冷却し、180℃で取り出し、ポリマーを得た。
この得られたポリマーを細川ミクロン(株)製のハンマーミルで粉砕し、2.5mm以下の粒子とした。これを更にロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下で240℃で5時間処理することによって、下記繰り返し単位および比率からなる液晶ポリエステルを得た。以下該液晶ポリエステルをA―1と略記する。A−1は流動開始温度が270℃で、粒子状であった。

またA−1は偏光顕微鏡で観察した際、加圧下で280℃以上の温度で光学異方性を示した。
【0110】
(2)共重合体(B)
特開昭61−127709号公報の実施例5に記載の方法に準じて、アクリル酸メチル/エチレン/グリシジルメタクリレート=59.0/38.7/2.3(重量比)のゴムを得た。以下該ゴムをB−1と略称する。
【0111】
(3)液晶ポリエステル樹脂層の製造
A−1(95重量%)と、B−1(5重量%)との溶融混練を、日本製鋼(株)製TEX−30型二軸押出機を用いて、シリンダー設定平均温度300℃、スクリュー回転数250rpmで行って組成物を得た。この組成物は、加圧下で265℃以上で光学的異方性を示した。この組成物の溶融押出しを、円筒ダイを備えた60mmφの単軸押出機を用いてシリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数60rpmで行い、直径50mm、リップ間隔(環状スリット間隔)1.0mm、ダイ設定温度305℃の円筒ダイの上方から、筒状溶融樹脂を押出した。この筒状溶融樹脂の中空部へ乾燥空気を圧入し、膨張させ、次に冷却させたのちニップロールに通してフィルムAB−1を得た。ブロー比2.5、ドローダウン比(MD延伸倍率)10であり、フィルムAB−1の実測平均厚みは40μmであった。
フィルムAB−1の表面平均粗さ(Ra)は、8.6nm(10μm□)であった。またフィルムAB−1の水蒸気透過度を40℃で測定したところ、0.29g/m2/dayであった。また、23℃での酸素透過度は0.84cc/m2/day以下であった。
【0112】
実施例1
側管に三方コックおよびジムロートを取り付け、主管にフッ素樹脂製攪拌翼を装着した100mL三口フラスコに、ポリエーテルサルホン(以下、「PES」という。)(住友化学工業製、PES5200p(商品名)、Tgは230℃)15gと、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」という。)45gとを入れ、80℃にて3時間攪拌し、PESの25重量%NMP溶液である溶液Cを調製した。
比較例1で得られたフィルムAB−1の表面に、バーコーター(テスター産業製、SA−203型)を用いて、厚さ15μmのPES層(樹脂層)を塗布し、基板1を作製した。得られた基板1のPES層側の表面平均粗さ(Ra)は、0.2nm(10μm□)であった。また基板1の20℃〜150℃の温度範囲における平均線膨張率は−1.8ppm/℃であった。
【0113】
実施例2
実施例1で得られた基板1のPES層側の表面に、スパッタリングにより120℃の条件下でAl23を厚さが150nmとなるように形成し、基板2を作製した。基板2の水蒸気透過度を40℃で測定したところ、0.12g/m2/dayであった。また、23℃での酸素透過度は0.01cc/m2/day以下であった。
【0114】
実施例3
無機層状化合物および樹脂からなる層の形成
イオン交換水3000gにポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA117H(商品名))100gを入れ、低速攪拌条件下(1500rpm、周速度約4m/秒)で95℃に昇温し、1時間攪拌して溶解させることにより、溶液Dを得た。続いて、該溶液Dを攪拌したまま65℃まで温度を下げた後、該溶液Dに、イオン交換水1600gと1−ブタノール376gとを予め混合してなるアルコール水溶液を滴下した。滴下終了後、65℃でさらに無機層状化合物として高純度の天然モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製、クニピアG(商品名)、アスペクト比は200〜1000nm)を粉末のまま50g添加し、撹拌条件を高速攪拌条件(3000rpm、周速度約8m/秒)に切替えて90分間撹拌、分散させることにより、混合液Eを得た。次に、超高圧ホモジナイサー(Microfluidics Corporation製、M110−E/H型)に混合液Eを通し、1.750kgf/cm2で1回処理することで、無機層状化合物が分散した塗工液F得た。前記フィルムAB−1の表面に、バーコーター(テスター産業製、SA−203型)を用いて、厚さ1.4μmの無機層状化合物および樹脂からなる層を形成し、基板3を得た。さらに、基板3の上に実施例1で得られた溶液Cをバーコーター(テスター産業製、SA−203型)を用いて厚さ15μmのPES層(樹脂層)を実施例1と同様に形成し、基板4を得た。基板4のPES層側の表面平均粗さ(Ra)は、1.7nm(10μm□)であった。また基板4の20℃〜150℃の温度範囲における平均線膨張率は−1.1ppm/℃であった。
【0115】
実施例4
実施例3で得られた基板4のPES層側の表面に、スパッタリングにより120℃の条件下でAl23を厚さが150nmとなるように形成し、基板5を作製した。基板5の水蒸気透過度を40℃で測定したところ、0.16g/m2/dayであった。また、23℃での酸素透過度は0.01cc/m2/day以下であった。
【0116】
比較例2
200μmのPESフィルムを用意し、その表面に、スパッタリングにより酸窒化ケイ素からなる150nmの無機層を形成し、40℃で水蒸気透過度を測定したところ、0.6g/m2/dayであった。また、23℃での酸素透過度は2.9cc/m2/dayであった。
【0117】
実施例5
実施例1で得られた基板1のPES層側の表面に、スパッタリングにより酸窒化ケイ素からなる150nmの無機層を形成し、基板5を作製した。基板5の水蒸気透過度を40℃で測定したところ、0.22g/m2/dayであった。また、23℃での酸素透過度は0.01cc/m2/day以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であることを特徴とする表示素子用基板。
【請求項2】
2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする表示素子用基板。
【請求項3】
2層以上の樹脂層を有する表示素子用基板であって、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が(A)液晶ポリエステルおよび(B)該液晶ポリエステルと反応性を有する官能基を有する共重合体から実質的になる液晶ポリエステル樹脂層であり、2層以上の樹脂層のうちの少なくとも1層が該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層であり、さらに無機層状化合物および樹脂からなる層を有し、該液晶ポリエステル樹脂層の少なくとも1層と該無機層状化合物および樹脂からなる層とが接し、該無機層状化合物および樹脂からなる層と該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層の少なくとも1層とが接し、該液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面平均粗さ(Ra)が5nm以下であることを特徴とする表示素子用基板。
【請求項4】
液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層に用いられる樹脂が、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項5】
さらに無機層を有し、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と該無機層とが接する請求項1〜4のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項6】
無機層が金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属酸窒化物からなる群より選ばれる1種以上の無機物からなる請求項5記載の表示素子用基板。
【請求項7】
無機層状化合物が、粒径が5μm以下でありアスペクト比が50以上5000以下の無機層状化合物である請求項3〜6のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項8】
さらに導電性を有する層を有し、液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層と導電性を有する層とが接する請求項1〜4のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項9】
さらに導電性を有する層を有し、無機層と導電性を有する層とが接する請求項5〜7のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項10】
水蒸気透過度が0.2g/m2/day以下でかつ酸素透過度が0.1cc/m2/day以下である請求項1〜9のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項11】
20℃〜150℃の温度範囲における平均線膨張率が、−10ppm/℃以上25ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の表示素子用基板。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の表示素子用基板を用いてなることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用基板。
【請求項13】
下記の(a)〜(e)を有することを特徴とする表示素子。
(a)請求項1〜7のいずれかに記載の基板。
(b)導電性を有する層。
(c)電界印加により、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が発現する有機層。
(d)透明導電性を有する層。
(e)透明な封止材。
【請求項14】
下記の(a´)〜(d´)の工程を含む製法により得られることを特徴とする表示素子。
(a´)請求項1〜7のいずれかに記載の基板の液晶ポリエステル樹脂層以外の樹脂層側の表面に、導電性を有する層を形成する工程。
(b´)工程(a´)で得られる導電性を有する層側の表面に、光吸収、光散乱、旋光および発光から選ばれる少なくとも1つの機能が電界印加により発現する有機層を形成する工程。
(c´)工程(b´)の有機層側の表面に、透明導電性を有する層を形成し、積層体を得る工程。
(d´)工程(c´)により得られた積層体の表面の一部または全部を、透明な封止材で封止し、表示素子を得る工程。
【請求項15】
請求項13または14記載の表示素子を用いてなることを特徴とするフレキシブルディスプレイ。

【公開番号】特開2006−323373(P2006−323373A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113075(P2006−113075)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】