説明

表示装置の検査装置及び検査方法

【課題】例えば、液晶プロジェクタ等の表示装置を検査する検査装置において、適切な検査を行う。
【解決手段】検査装置(100)は、表示装置(1100)に対して、複数のステップからなる検査を実行する表示装置の検査装置であって、複数のステップの各々において、表示装置が前記画像を表示する際における、表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更させつつ、画像を投影するように表示装置を制御する第1制御手段(110、120)と、複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、表示装置を制御する第2制御手段(120)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶プロジェクタ等の表示装置を検査する検査装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の検査装置として、例えば液晶プロジェクタのように、画像をスクリーンに投影して表示する表示装置を検査するものがある。このような表示装置の画像表示に関する性能検査は、組み込まれる液晶パネルの大きさが極めて小さいため、実際にスクリーンに投影された画像を目視により評価することにより行われる。
【0003】
例えば特許文献1では、液晶パネルのコモン電圧を変更することによって、表示画像のフリッカレベルを検査する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−149123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
投影された画像の評価を効果的に行うためには、特許文献1に開示されたフリッカレベルを含む、様々な項目や条件について検査を行う必要がある。そのため、これらの多くのパラメータについて、高精度且つ正確に検査を行うためには、高度な専門性と熟練を備えた者が検査を行う必要があるという実践上の問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、表示装置の検査を容易に行うことが可能な検査装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は上記課題を解決するために、画像を投影して表示する表示装置に対して、複数のステップからなる検査を実行する表示装置の検査装置であって、前記複数のステップの各々において、前記表示装置が前記画像を表示する際における、前記表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更させつつ、前記画像を投影するように前記表示装置を制御する第1制御手段と、前記複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、前記表示装置を制御する第2制御手段とを備える。
【0008】
本発明に係る検査装置は、複数のステップからなる検査を実行する。検査対象となる表示装置の画像特性を効果的に評価するためには、様々な項目や条件について検査を行うことが望ましい。そのため、本発明に係る検査装置では、以下に説明する複数のステップを実行することによって、表示装置によって投影される画像を効果的に検査することができる。尚、本願明細書では、複数のステップからなる一連の検査を検査フローと呼ぶこととする。
【0009】
検査フローに含まれるステップの各々に着目すると、本発明に係る検査装置は、そのステップ中に、第1制御手段によって表示装置を制御することによって画像の投影を行う。例えば、スクリーンにテスト画像を投影する。この際、第1制御手段は更に、表示装置が前記画像を表示する際における、表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更しつつ、画像を投影するように表示装置を制御する。尚、ここでの「検査対象パラメータ」とは、変更させることで、投影される画像が変化するようなパラメータであり、例えば表示装置を制御するための制御信号の幅やタイミング等である。「少なくとも一つ」とは、一つのステップにおいて変更可能な検査対象パラメータは複数であってもよいという意である。夫々のステップにおいて変更する検査対象パラメータは、そのステップで評価すべき画像特性によって予め決められている。
【0010】
表示装置によって投影された画像は、例えば目視や撮像によって評価される。即ち、各ステップにおいて投影された画像をユーザが目視により又はコンピュータを用いて自動により評価する。
【0011】
第1制御手段による表示装置の投影は、検査のステップ毎、即ち、上述した検査対象パラメータが変更される毎に行われる。ここで投影される画像は、典型的には、検査対象パラメータが変更される毎に1枚の静止画像を投影するが、例えば複数枚の静止画像を投影してもよいし、動画像を投影してもよい。即ち、投影される画像は、検査対象パラメータを変更した際の、投影された画像の変化を検出できるような画像であればよい。また、動画像を投影することで、ちらつき或いはフリッカー、動物体の残像或いは尾引き現象などの動的な異常等についても検出可能となる。
【0012】
複数の検査対象パラメータは、相互に依存する場合がある。例えば、ある特定の検査対象パラメータを変更すると、他の検査対象パラメータの値も変化してしまう場合がある。そのため、複数のステップを実行する順番が不適切であると、全ての検査対象パラメータを適切な値に調整することが困難になったり、仮に調整可能であっても、検査に要する時間が著しく長くなってしまうおそれがある。そこで、本発明において実行される検査フローに含まれる複数のステップは、予め実行される順番が規定されている。
【0013】
また、検査フローに含まれるステップ数が多い場合、手動による操作などユーザの技量に依存する割合が多い方法で検査を実行しようとすると、人的要因によるミス(即ち、ヒューマンエラー)を招き、正確な検査を行うことが困難になってしまう。本発明に係る検査装置によれば、予め各ステップの順が決められた検査フローに従って、所定の順番でステップを進めることで、容易に検査を完了することができるため、このようなミスが生じる可能性を低く抑えることができる。
【0014】
第2制御手段は、検査フローに含まれる複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、表示装置を制御する。ここに「所定の順番で実行される」とは、一のステップが実行された後に、該一のステップの後に実行されるべき他のステップが実行されることを意味する。ここでの他のステップは、一のステップに対して固定されていてもよいし、条件或いは条件分岐に応じて、可変であってもよい。
【0015】
従って、上述のように熟達していないユーザであっても、所定の信号を検査装置から表示装置に供給するだけで、予め決められた順番に沿って、各ステップの検査を実行することができる。即ち、検査フローを進める際に、ユーザの判断が介入する余地を少なく抑えることができるので、より正確且つ迅速に表示装置の検査を実行することができる。
【0016】
以上説明したように、極めて容易な操作で、表示装置の検査を正確且つ迅速に行うことが可能な検査装置を実現することができる。
【0017】
本発明の検査装置の一の態様では、前記第2制御手段は、前記複数のステップが順次実行される検査フローに含まれる一のステップが実行された後に、該一のステップを除く他のステップが実行されるように、前記表示装置を制御する。
【0018】
この態様によれば、予め各ステップの実行順が定められている検査フローにおいて、任意のタイミングで、特定のステップを実行することができる。つまり、検査フローを実行している途中で、検査フローに規定された順番に反する特定のステップを実行する必要が生じた場合に、割り込み的にステップを追加することができる。例えば検査フローの途中で、すでに実行済みのステップを再度行う必要が生じた場合であっても、実行中の一連の検査を中断することなく、対応することができる。このような状況への対応は、実践上極めて重要であり、検査効率を著しく向上させることができる。
【0019】
上述の割り込み的にステップを追加可能な態様では、前記第2制御手段は、前記他のステップが実行された後、該他のステップから前記検査フローに従って、前記複数のステップが順次実行されるように、前記表示装置を制御してもよい。
【0020】
この態様によれば、検査フローの途中で、すでに実行済みのステップから検査フローを実行し直す必要が生じた場合に対応することができる。即ち、すでに実行済みのステップに戻って、検査フローの途中から一連の検査をやり直すことができる。このような状況への対応は、実践上極めて重要であり、検査効率を著しく向上させることができる。
【0021】
また、上述の割り込み的にステップを追加可能な態様では、前記第2制御手段は、前記他のステップが実行された後、前記一のステップから前記検査フローに従って、前記複数のステップが順次実行されるように、前記表示装置を制御してもよい。
【0022】
この態様によれば、検査フローの途中で、本来の検査フローの順番に従わないステップを実行する必要が生じた場合に、割り込み的にステップを挿入し、挿入したステップの実行が完了したのち、再度検査フローを中断した時点から検査を再開することができる。このような状況への対応は、実践上極めて重要であり、検査効率を著しく向上させることができる。
【0023】
本発明の検査装置の他の態様では、前記複数のパラメータは、前記表示装置の駆動電圧、駆動タイミング、表示パターン及びレジスタ設定のうち少なくとも一つを含む。
【0024】
この態様によれば、表示装置の投影画像の画像特性を評価する際に重要なパラメータである駆動電圧、駆動タイミング、表示パターン及びレジスタ設定を変更することによって、変更前後の画質変化を検査することができる。ここに「レジスタ設定」とは、表示装置に内蔵された又は外付けされたコントローラに備えられる、表示モード設定用のレジスタにおけるビット配列の設定、即ち2値等のデジタルデータの設定を意味する。レジスタにおける特定のビット配列は、特定の表示モードに予め対応付けられており、コントローラは、このレジスタ設定に対応する表示モードで表示を行うように表示装置を制御する。
【0025】
本発明の検査方法は上記課題を解決するために、画像を投影して表示する表示装置に対して、複数のステップからなる検査を実行する表示装置の検査方法であって、前記複数のステップの各々において、前記表示装置が前記画像を表示する際における、前記表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更させつつ、前記画像を投影するように前記表示装置を制御する第1工程と、前記複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、前記表示装置を制御する第2工程とを備える。
【0026】
本発明に係る検査方法によれば、上述した本発明の検査装置の場合と同様に、極めて容易な操作で、表示装置の検査を正確且つ迅速に行うことが可能である。
【0027】
尚、本発明の検査方法においても、上述した本発明の検査装置における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る検査装置と、検査対象であるプロジェクタの具体的な設置例を示す斜視図である。
【図2】表示装置の一例たるプロジェクタの構成例を示す平面図である。
【図3】表示装置の一例たるプロジェクタに組み込まれた液晶パネルの概略構成を示すブロック回路図である。
【図4】本実施形態に係る検査装置によって実行される検査内容のフローチャート図である。
【図5】図4における各ステップにおける具体的な検査内容を示す表である。
【図6】プリセットステップにおける具体的な検査内容を示す表である。
【図7】本実施形態に係る検査装置のコントローラの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る検査装置100と、検査対象であるプロジェクタ1100の具体的な設置例を示す斜視図である。
【0031】
検査装置100は、検査対象であるプロジェクタ1100に対し種々の制御信号を送信するチェッカー110と、チェッカーを制御するためのコントローラ120とから構成されている。チェッカー110は、コントローラ120から入力された命令に基づいてプロジェクタ1100に種々の制御信号を送信することにより、プロジェクタ1100に対応する画像をスクリーン200上に投影させることができる。スクリーン200上に投影された画像は、観測者300が目視することによって評価される。或いは、このような目視に代えて、撮像装置で撮像してパターン認識することによって評価される。
【0032】
コントローラ120には、レジスタ121が接続されている。レジスタ121は、実行される検査のモードを設定する際に、各検査モードに対応して設定される一種の4ビットメモリである。本実施形態では、例えば、標準モードで検査を行う場合はレジスタ設定を「1000」、特殊モードで検査を行う場合はレジスタ設定を「0100」、COM調整の検査を行う場合はレジスタ設定を「0010」と設定する。これらのモードの切り替えは、微小レバーのスイッチで人間の指先や工具のドライバの先により物理的なスイッチによって行われてもよいし、レジスタ121が外付けのコンピュータやコントローラ120自体に組み込まれることにより電気的に行われてもよい。
【0033】
ここで検査対象であるプロジェクタ1100の構造について、図2を参照して具体的に説明する。ここに図2は、本発明の「表示装置」の一例であるプロジェクタ1100の構成例を示す平面図である。
【0034】
図2に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0035】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投影されることとなる。
【0036】
続いて、図3を参照して、プロジェクタ1100に組み込まれた液晶パネル1110の構造について説明する。図3は、プロジェクタ1100に組み込まれた液晶パネル1110の概略構成を示すブロック回路図である。
【0037】
図3において、液晶パネル1110は、表示パネル1と、データ線駆動回路101と、走査線駆動回路104とを備えて構成されている。データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104は、検査装置100のチェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号を取得し、表示パネル1に画像信号に対応する画像を表示する。
【0038】
表示パネル1は、液晶(LCD)等を含んでなる複数の画素部72によって構成され、当該画素部72に画像信号に対応する駆動電圧が印加されることによって画像を表示する。具体的には、図3に示すように、走査線3aと、データ線6aとが、夫々X方向及びY方向に延在しており、走査線3a及びデータ線6aの交差に対応するようにマトリクス状に配列された画素スイッチング用TFT30及び駆動電圧の保持特性を向上させるための蓄積容量70が配置されることによって、画素部72が形成されている。本実施形態では特に、表示パネル1には、m本の走査線3aが、X(行)方向に延在して形成され、n本のデータ線6aがY(列)方向に沿って延在して形成されている。また、m本の走査線3aの夫々には、走査信号G(但し、各走査線に対応する走査信号をG1からGmと表す)が供給されることにより、対応する画素部72を書き込み可能な状態にすることができる。
【0039】
走査線駆動回路101は、検査装置100のチェッカー110から、垂直スタートパルスDY、走査側転送クロックCLYを取得し、表示パネル1の走査線3aに対して走査信号G1、G2、G3、…、Gmを出力する。垂直スタートパルスDYは、フレーム毎に走査側(Y側)に対する走査の開始タイミングで出力されるパルス信号である。走査側転送クロックCLYは、走査側(Y側)の水平走査を規定する信号である。また、走査線駆動回路101には、走査線駆動回路101を駆動するための電源電圧である走査線駆動回路用低位側電圧(即ち接地電位)VSSYおよび走査線駆動回路用高位側電圧VDDYが印加される。
【0040】
データ線駆動回路101は、検査装置100のチェッカー110から、水平スタートパルスDXと、データ転送クロックCLXと、画像信号VIDEOとを取得し、表示パネル1のデータ線6aに対してデータ信号S1、S2、S3、…、Snを出力する。水平スタートパルスDXは、水平期間毎にデータ線駆動回路101へデータ転送を開始するタイミングを決めるパルス信号であって、走査側転送クロックCLYのレベル遷移(即ち、立ち上がり及び立ち下がり)に同期して出力される。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路101へデータを転送するタイミングを規定する信号である。また、データ線駆動回路104には、データ線駆動回路104を駆動するための電源電圧であるデータ線駆動回路用低位側電圧(即ち接地電位)VSSXおよびデータ線駆動回路用高位側電圧VDDXが印加される。
【0041】
続いて図4から図6を参照して、本実施形態に係る検査装置100によって実行される検査内容について説明する。図4は、本実施形態に係る検査装置100によって実行される検査内容のフローチャート図である。図5は、図4における各ステップにおける具体的な検査内容を示す表である。
【0042】
本実施形態に係る検査装置100によって実行される検査は、主に、ステップS1からステップS7の7つのステップが順番に実行されることによって行われる。
【0043】
検査のスタート時において、検査対象であるプロジェクタ1100は、初期状態(具体的には、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDYが共に「15V」、駆動タイミングは「標準」、レジスタ設定は「標準」)に設定されている。ここで、駆動タイミングとは、例えば画像信号VIDEOやイネーブル信号ENBの供給タイミングであり、表示画像が更新される周波数に対応するパラメータである。
【0044】
ステップS1からステップS7の各ステップでは、本発明の「第1制御手段」及び「第2制御手段」の一例である検査装置100から、液晶パネル1110のデータ線駆動回路104に対し、種々の制御信号(具体的には、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY、駆動タイミング、表示パターン並びにレジスタ設定)を送信することによって、プロジェクタ1100に対応する画像を投影させる。
【0045】
ユーザ300は投影された画像を目視により評価し、必要に応じて、検査対象であるプロジェクタ1100の調整を行うことができる。即ち、各ステップにおいて検査結果が良好である場合には、ユーザ300の判断によって、後に説明するコントローラ120を操作することによって、検査を次のステップに進めることができる。また、検査結果が良好でない場合には、後に説明するコントローラ120を操作しないことによって現在のステップを維持し、その間にプロジェクタ1100の調整を行うことができる。
【0046】
ステップS1からステップS7の各ステップは、予め、実行される順番が規定されており、その内容は、予めチェッカー110に格納されたROM等に記憶されている。従って、ユーザ300は、ステップS1からステップS7の夫々のステップにおいてどのような検査が行われるのか完全に理解していなくとも、投影された画像の評価を行い、後述するコントローラ120上の操作ボタンを操作するだけで、ステップを正確且つ確実に進行することができる。即ち、本実施形態に係る検査装置100は、ユーザ300が検査内容に十分熟達していなくとも、単純な操作で実行させることができる。
【0047】
ここで、図5を参照して、ステップS1からステップS7の夫々のステップにおける検査内容について、詳細に説明する。
【0048】
ステップS1では、スクリーン200に投影された画像のフォーカス調整についての検査を実行する。図5に示すように、ステップS1では、クロスハッチパターンになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に、検査装置100から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号を入力することによって、クロスハッチパターンがスクリーン200に投影されるように、チェッカー110がプロジェクタ1100に命令する。即ち、ステップS1における本発明の「検査対象パラメータ」は表示パターンである。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY、駆動タイミング並びにレジスタ設定は変更されない。
【0049】
ステップS2では、プロジェクタ1100のCOM電圧調整のための検査が実行される。図5に示すように、ステップS2では、ステップS1に比べて駆動タイミングをCOM調整用のタイミングに設定すると共に、投影された画像がグレースケールになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。即ち、ステップS2における本発明の「検査対象パラメータ」は、駆動タイミング、表示パターン及びレジスタ設定である。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY並びにレジスタ設定は変更されない。
【0050】
ステップS3では、プロジェクタ1100の基本的な性能(例えば、投影画像の輝度やコントラスト比など)を確認するための検査が実行される。図5に示すように、ステップS3では、ステップS2に比べて駆動タイミングを標準に戻すと共に、投影された画像が中間調ラスタになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。即ち、ステップS3における本発明の「検査対象パラメータ」は、駆動タイミング、表示パターン及びレジスタ設定である。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY並びにレジスタ設定は変更されない。
【0051】
ステップS4では、プロジェクタ1100が投影する画像パターンを変化させた場合の画質を検査する。図5に示すように、ステップS4では、ステップS3に比べて投影される画像がウィンドウパターンになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。即ち、ステップS4における本発明の「検査対象パラメータ」は、表示パターンである。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY、駆動タイミング並びにレジスタ設定は変更されない。
【0052】
ステップS5では、プロジェクタ1100の電源電圧を変化させた場合の振る舞いについて検査が行われる。図5に示すように、ステップS5では、ステップS4に比べて、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDYを20Vに上昇させると共に、投影される画像が中間調ラスタになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。即ち、ステップS5における本発明の「検査対象パラメータ」は、表示パターンである。このとき、駆動タイミング及びレジスタ設定は変更されない。
【0053】
ステップS6では、プロジェクタ1100の駆動タイミングを変化させた場合の振る舞いについて検査が行われる。図5に示すように、ステップS6では、ステップS5に比べて、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDYを15Vに戻すと共に、駆動タイミングを標準に比べて速い周波数になるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が出力される。即ち、ステップS6における本発明の「検査対象パラメータ」は、駆動タイミングである。このとき、表示パターン及びレジスタ設定は変更されない。
【0054】
ステップS7では、プロジェクタ1100の駆動条件を変化させた場合の振る舞いについて検査が行われる。図5に示すように、ステップS7では、ステップS6に比べて、レジスタ設定を特殊設定に変更している。即ち、ステップS7における本発明の「検査対象パラメータ」は、駆動タイミング及びレジスタ設定である。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY、表示パターン並びにレジスタ設定は変更されない。
【0055】
<割り込み制御>
以上では、ステップS1からステップS7を順次進行するという、基本的な検査フローの内容について説明した。本実施形態では、このような基本的な検査フローに加えて、割り込み的にステップを追加することができる。具体的には、図4に示すように、スタート時及びステップS6の実行時にプリセットステップPS1、ステップS1及びステップS4の実行時にプリセットステップPS2を割り込み的に介入させることができる。
【0056】
プリセットステップPS1では、スクリーン200に投影された画像のフォーカス調整についての検査が実行される。図6に示すように、プリセットステップPS1では、投影された画像がクロスハッチパターンになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY、駆動タイミング並びにレジスタ設定は変更されない。
【0057】
プリセットステップPS2では、プロジェクタ1100のCOM電圧調整のための検査が実行される。図6に示すように、プリセットステップPS2では、駆動タイミングをCOM調整タイミングに設定すると共に、投影された画像がグレースケールになるように、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104には、チェッカー110から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が入力される。このとき、データ線駆動回路用高位側電圧VDDX及び走査線駆動回路用高位側電圧VDDY並びにレジスタ設定は変更されない。
【0058】
このように、検査フローの途中で、本来の検査フローの順番に従わないステップを実行する必要が生じた場合に、割り込み的にプリセットステップを挿入し、挿入したプリセットステップの実行が完了したのち、再度検査フローを中断した時点から検査を再開することができる。このような状況への対応は、実践上極めて重要であり、検査効率を著しく向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、ユーザの判断によって、必要に応じてステップS2からステップS6の検査を行う必要がないと判断した場合には、ユーザの操作によって、ステップS1からステップS7に移動することができるように構成されている。また、ステップS5を実行した際に、もう一度ステップS2の検査を行う必要が生じたが生じた場合には、ユーザの操作によって、ステップS5からステップS2に移動することができるように構成されている。この場合、ステップS2に移動した後は、再びステップS3以降が順番に実行される。
【0060】
このように、本実施形態では、検査フローを実行している途中で、検査フローに規定された順番に反する特定のステップを実行する必要が生じた場合に、割り込み的にステップを追加することができる。このような状況への対応は、実践上極めて重要であり、検査効率を著しく向上させることができる。
【0061】
<ユーザの操作>
図7は本実施形態に係る検査装置100のコントローラ120の外観を示す斜視図である。
【0062】
上記に説明した各ステップ間の切り替えは、図7に示すコントローラ120のパネル上に配置されたスイッチ類を、ユーザ300が操作することによって行うことができる。
【0063】
図5に示すように、検査が開始されると、まずステップS1が実行される。ステップS1では、上述の通りフォーカス調整の検査が行われ、投影された画像をユーザ300が評価して良好な結果が得られた場合、ユーザ300はコントローラ120のパネル上にあるEnterボタン121を押すことによって、検査をステップS2に進めることができる。尚、ステップS2以降も、順次Enterボタン121を押すことによって、次のステップに移動することが可能になっている。また、ステップS1からステップS7のうち互いに前後するステップ間では、フォワードボタン122とリバースボタン123を押すことによって、ステップ間を自由に移動することができる。
【0064】
スタート時及びステップS6を行った場合に良好な結果を得られたものの、再度フォーカス調整の検査を行いたい場合には、コントローラ120のパネル上にあるF1ボタン124aを押すことによって、割り込み的にプリセットステップPS1を実行することもできる。同様に、ステップS1及びステップS4を行った場合に、ステップS1及びステップS4において良好な結果を得られたものの、再度COM電圧の検査を行いたい場合には、コントローラ120のパネル上にあるF2ボタン124bを押すことによって、割り込み的にプリセットステップPS2を実行することもできる。尚、F3ボタン124c及びF4ボタン124dには、必要に応じて他のプリセットステップを記憶させることができる。
【0065】
更に、ユーザ300がステップS1を行った後に、ステップS2からステップS5の検査が不要と判断した場合には、コントローラ120のパネル上にあるJumpボタン125を押すことによって、ステップS7に移動することもできる。同様に、ユーザ300がステップS5を行った後に、再度ステップS2から検査をやり直したいと判断した場合には、コントローラ120のパネル上にあるJumpボタン125を押すことによって、ステップS5に移動することもできる。
【0066】
以上説明したように本実施形態に係る検査装置100によって実行される検査フローは、互いに条件の異なる多くのステップが特定の順番で並べられることによって構成されている。このような複雑な検査フローは、仮に、本発明の検査装置を用いずに全て手動で行おうとすると、検査に精通していないユーザが行うことは困難である。特に、各ステップを実行する順番や設定値を誤ったりすると、全ての検査対象パラメータを適切な値に調整することが困難になったり、仮に調整可能であっても、検査に要する時間が著しく長くなってしまう。その点、本実施形態に係る検査装置を用いることで、コントローラ120上の単純なボタン操作によって、このような複雑な検査フローを極めて容易に実行することが可能となる。即ち、複雑な検査フローにおいても、人的要因によるミス(即ち、ヒューマンエラー)を最小限に抑え、検査精度を向上させることができる。
【0067】
尚、ユーザによる目視に代えて、撮像装置で撮像してパターン認識することによって評価を実施する場合には、上述のボタン操作に変えて、各ステップにおける評価が自動的に完了する毎に、次のステップを行う旨の制御信号の付与操作がパネルに対して行われればよい。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う検査装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
100 検査装置、 110 チェッカー、 120 コントローラ、 121 レジスタ、 200 スクリーン、 300 ユーザ、 1100 プロジェクタ、 1110 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投影して表示する表示装置に対して、複数のステップからなる検査を実行する表示装置の検査装置であって、
前記複数のステップの各々において、前記表示装置が前記画像を表示する際における、前記表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更させつつ、前記画像を投影するように前記表示装置を制御する第1制御手段と、
前記複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、前記表示装置を制御する第2制御手段と
を備えることを特徴とする表示装置の検査装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、
前記複数のステップが順次実行される検査フローに含まれる一のステップが実行された後に、該一のステップを除く他のステップが実行されるように、前記表示装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の検査装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、
前記他のステップが実行された後、該他のステップから前記検査フローに従って、前記複数のステップが順次実行されるように、前記表示装置を制御することを特徴とする請求項2に記載の表示装置の検査装置。
【請求項4】
前記第2制御手段は、
前記他のステップが実行された後、前記一のステップから前記検査フローに従って、前記複数のステップが順次実行されるように、前記表示装置を制御することを特徴とする請求項2に記載の表示装置の検査装置。
【請求項5】
前記複数のパラメータは、前記表示装置の駆動電圧、駆動タイミング、表示パターン及びレジスタ設定のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置の検査装置。
【請求項6】
画像を投影して表示する表示装置に対して、複数のステップからなる検査を実行する表示装置の検査方法であって、
前記複数のステップの各々において、前記表示装置が前記画像を表示する際における、前記表示装置の内部動作に影響を与える複数のパラメータのうち、少なくとも一つの検査対象パラメータを変更させつつ、前記画像を投影するように前記表示装置を制御する第1工程と、
前記複数のステップの各々が、所定の順番で実行されるように、前記表示装置を制御する第2工程と
を備えることを特徴とする表示装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−250145(P2010−250145A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100615(P2009−100615)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】