説明

表示装置

【課題】透過型表示装置の黒浮きを抑える。
【解決手段】表示装置は、第1の表示モジュール13と第2の表示モジュール14とを積層して構成される。バックライト部材は高輝度白色LED11(図1(b))および導光板12によって構成され、表示装置を第1の表示モジュール13側から照明する。第1の表示モジュール13は、TN型の液晶パネル13cを第1の偏光板13aと第2の偏光板13bとで挟んだモノクロ液晶表示素子によって構成される。第2の表示モジュール14は、液晶パネル14cと偏光板14bとの間にカラーフィルタ14aを挟んだTFTカラー液晶表示素子によって構成される。第2の表示モジュール14は、供給される画像信号に応じて照明光を変調することにより、RGB各色の光像を生成する。第1の表示モジュール13は、供給される画像信号に応じて照明光を減衰させることにより、画像の低輝度領域を表現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像などを表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどで構成される透過型の光像形成素子を背面から照明することにより、光像形成素子に形成されている像を可視化する方式の表示装置が知られている。表示装置の観察者は、光像形成素子を透過した光像を観察する。この方式の表示装置による表示輝度は、照明光(いわゆるバックライトによる光)を明るくすることによって高められる。特許文献1には、バックライトを冷陰極蛍光ランプと発光ダイオードアレイとで構成し、照明光を明るくすることによって高輝度表示を行う表示装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−140110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光像形成素子は、表示画面の中で明るく表現したい領域の透過率を高めて高輝度領域を表現し、表示画面の中で暗く表現したい領域の透過率を低くして低輝度領域を表現する。一般に、光像形成素子の透過率は高い側も低い側もそれぞれ有限である。このため、上述したようにバックライトを明るくする場合、表示画面の中で「黒」を表現したい領域(すなわち、光像形成素子の透過率を最低にする領域)について、当該領域へ入射される照明光が完全に遮光されずにわずかに透過する現象、いわゆる黒浮きが目立ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明による表示装置は、画像信号に応じて像を形成する透過型の光像形成素子と、光像形成素子を照明する照明手段と、照明手段および光像形成素子間に配設され、照明手段からの照明光量を所定領域ごとに減少させる調光手段とを備えることを特徴とする。
調光手段をモノクロ液晶パネルによって構成してもよく、マトリクス状の領域ごとに照明手段からの照明光量を減少させるとよい。
照明手段は導光板を含み、導光板、液晶パネルおよび光像形成素子が積層されていることを特徴とする。
調光手段は、表示画面の中で暗く表現する領域の照明光量を減少させることもできる。
調光手段は、表示データの輝度レベルが黒浮き抑制を必要とする所定の閾値以下の場合に照明光量を減少させてもよく、この場合、照明手段の照明輝度の高低に応じて閾値を増減させることもできる。
請求項7に記載の発明による表示装置は、画像信号に応じて像を形成する透過型の光像形成素子と、光像形成素子を照明する照明手段と、照明手段および光像形成素子間に配設され、照明手段からの照明光量を所定領域ごとに減少させる調光手段と、所定輝度より低輝度で表示する領域より狭い範囲において照明光量を減少するように、調光手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
制御手段は、照明光量を減少する領域の境界において照明光量の減少率を段階的に変化させるように調光手段を制御することもできる。
制御手段は、画像信号によって示される輝度情報であって、光像形成素子上の注目画素、および当該注目画素の周囲の画素のそれぞれに対応する輝度情報に基づいて、照明光量を減少させる領域を決定することもできる。
制御手段は、画像信号によって示される輝度情報であって、光像形成素子上の注目画素、および当該注目画素の周囲の画素のそれぞれに対応する輝度情報に基づいて、注目画素を照明する照明光量の減少率を決定することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明による表示装置では、明るい表示領域の明るさを損なうことなしに黒浮きを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態による表示装置の構成を説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。図1(a)において、表示装置100は有効表示領域100a内に画像やテキストなどを表示する。
【0008】
図1(b)において、表示装置100は第1の表示モジュール13と第2の表示モジュール14とを積層して構成されている。積層された2つの表示モジュール13、14は、バックライト部材によって第1の表示モジュール13側から照明される。バックライト部材は高輝度白色LED11および導光板12によって構成される。導光板12は、少なくとも上記有効表示領域100aより広い面積を有する。導光板12は、白色LED11から発せられ、導光板12の側面(図1(b)において下)から導光板12内に入射された光を有効表示領域100a内で輝度が均一な面照明光に変換し、この面照明光で第1の表示モジュールを照明する。
【0009】
図2(a)は、表示装置100の内部構造を説明するために図1(b)の一部を拡大した図である。図2(a)において、第1の表示モジュール13は、たとえば、周知のTN型の液晶パネル13cを第1の偏光板13aと第2の偏光板13bとで挟んだモノクロ液晶表示素子によって構成される。第2の偏光板13bを通過する光の偏光方向と、第1の偏光板13aを通過する光の偏光方向とは90度異なるように配設されている。
【0010】
液晶パネル13cは、不図示の透明電極から電圧が印加されない状態では、液晶層内の液晶分子の配列(配向)によって液晶層の中に入射された光の偏光方向を90度回転させる。これにより、第1の偏光板13aを介して液晶パネル13c内に入射された偏光光は、液晶層内で90度回転された後に第2の偏光板13bを通過して第1の表示モジュール13から射出され、第2の表示モジュール14へ照明光として入射される。
【0011】
一方、不図示の透明電極から電圧が印加された液晶パネル13cは、液晶層内の液晶分子の配列が変わり、入射光の偏光方向を90度回転させなくなる。これにより、第1の偏光板13aを介して液晶パネル13c内に入射された偏光光は、第2の偏光板13bを通過できないために第1の表示モジュール13から射出される透過光量が小さくなる。液晶分子の配列変化が印加電圧に比例することから、液晶層を進行する光の偏光方向の回転比率も印加電圧に比例する。したがって、第1の表示モジュール13を透過して第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、液晶パネル13cに対する印加電圧の増加に伴って減少する。
【0012】
液晶パネル13cは、画像信号に基づいて後述する表示制御回路から入力される駆動信号に応じた任意の電圧を、マトリクス状に分割された所定領域(画素)ごとに印加可能に構成されている。これにより、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を画素単位で増減することができる。
【0013】
第2の表示モジュール14は、たとえば、液晶パネル14cと偏光板14bとの間にカラーフィルタ14aを挟んだ周知のTFTカラー液晶表示素子によって構成される。液晶パネル14cは、その入射面側(第1の表示モジュール13側)の配向方向を、上記第2の偏光板13bを通過する光の偏光方向と合わせるように配設されている。偏光板14bを通過する光の偏光方向は、上記第2の偏光板13bを通過する光の偏光方向に対して90度異なるように配設される。
【0014】
液晶パネル14cは、不図示の透明電極から電圧が印加されない状態では、液晶層内の液晶分子の配向によって液晶層の中に入射された光の偏光方向を90度回転させる。これにより、第1の表示モジュール13を介して液晶パネル14c内に入射された偏光光は、液晶層内で90度回転された後にカラーフィルタ14aおよび偏光板14bを通過して第2の表示モジュール14から射出される。
【0015】
一方、不図示の透明電極から電圧が印加された液晶パネル14cは、液晶層内の液晶分子の配向を変え、入射光の偏光方向を90度回転させない。これにより、液晶パネル14c内に入射された偏光光は、カラーフィルタ14aを通過後に偏光板14bを通過できないため、第2の表示モジュール14から射出される透過光量が小さくなる。
【0016】
カラーフィルタ14aは、たとえば、RGB各色の色フィルタが交互に配列されたものである。液晶パネル14cは、画像信号に基づいて後述する表示制御回路から入力される駆動信号に応じた任意の電圧を、マトリクス状に分割された所定領域(色フィルタのサブピクセル)ごとに印加可能に構成されている。これにより、第2の表示モジュール14から射出される透過光量を色単位で増減することができる。
【0017】
図2(b)および(c)は、それぞれ液晶パネル13cおよび液晶パネル14cにおいてマトリクス状に分割された所定領域を説明する図である。図2(b)において、液晶パネル13cの画素は、略正方形状に構成される。第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、この略正方形状ごとに調節可能である。
【0018】
図2(c)において、液晶パネル14cのサブピクセルは、RGB1組が図2(b)の1画素(略正方形状)に対応するように構成される。つまり、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、RGBのサブピクセル1組ごとに調節可能である。
【0019】
表示装置100の有効表示領域100aは、第2の表示モジュール14による有効表示領域に対応し、第1の表示モジュール13の有効表示領域は、少なくとも有効表示領域100aより広くするように構成される。以上説明した導光板12、第1の表示モジュール13および第2の表示モジュール14は、略密着するように重ね合わされ、表示装置100を構成する。
【0020】
表示装置100は、供給される画像信号に応じて第2の表示モジュール14が白色LED11からの光を変調することにより、RGB各色の光像を生成する。第2の表示モジュール14を構成する液晶パネル14cの駆動は、液晶表示素子に対する周知の駆動方式と同様に行われるため、その説明を省略する。観察者は、第2の表示モジュール14から射出されるRGB色の透過光によって合成されるフルカラー像を観察する。
【0021】
一方、表示装置100は、供給される画像信号に応じて第1の表示モジュール13が白色LED11からの光を減衰させることにより、観察される画像の低輝度領域の黒浮きを抑制する。第1の表示モジュール13を構成する液晶パネル13cの駆動は、以下のように行われる。
【0022】
図3は、供給される画像信号(第2の表示モジュール14で表示されるデータ)によって示される輝度と第1の表示モジュール13で行う照明光の調光率(照明光の透過率)との関係を説明する図である。図3において、横軸はデータ輝度を表し、表示装置100の入力信号の最大値(フルスケール)入力に対する百分率で表す。縦軸は照明光の透過率を表し、液晶パネル13cの電極に電圧を印加しない状態(便宜上透過率100%とする)に対する百分率で表す。
【0023】
図3によれば、画像信号のデータの輝度レベル(RGBのうち少なくとも1色の輝度)があらかじめ定められる閾値(たとえば、フルスケールの5%)を超える場合、この画像信号に対応する液晶パネル13cのマトリクス領域には電圧が印加されない。すなわち、輝度レベルがフルスケールの5%を超える領域については第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最大にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を最大にする。
【0024】
また、画像信号のデータの輝度レベル(RGB全ての輝度)がフルスケールの5%以下の場合、この画像信号に対応する液晶パネル13cのマトリクス領域には、輝度レベルの大きさに比例した透過率となるよう、各画素毎に電圧が印加される。すなわち、輝度レベルがフルスケールの5%に相当する領域については第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最大にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を大きくする。また、輝度レベルがフルスケールの5%未満に相当する領域については第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を徐々に低下させ、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を徐々に減少させる。さらにまた、輝度レベルがフルスケールの0%に相当する領域については第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最小にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を略0にする。
【0025】
これにより、表示画面の中で暗く表現したい領域(すなわち、第2の表示モジュール14を構成する液晶パネル14cの透過率が最低にされる領域)を照明する照明光量が小さく絞られるので、液晶パネル14cによって完全な遮光状態が得られない場合であっても、この領域の液晶パネル14cを透過するRGB色の透過光は、その絶対レベルが小さく抑えられる。この結果、観察者が観察画像の中で黒浮きを観察することがなくなる。また、黒浮きを小さくできる分、光源の輝度を上げることが可能で、その結果、表示画像のダイナミックレンジを大きくすることが可能となる。
【0026】
フルスケールの5%の輝度レベルは、たとえば、画像信号が8ビットフルスケールで表現されている場合、12.5LSBに対応する。また、画像信号が12ビットフルスケールで表現されている場合には、204LSBに対応する。
【0027】
以上説明した第一の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)第1の表示モジュール13の液晶パネル13cおよび第2の表示モジュール14の液晶パネル14c間で偏光板13bを共用したので、両液晶パネルの両側にそれぞれ偏光板を設ける場合に比べて、偏光板を1枚削減することができる。
【0028】
(2)第1の表示モジュール13を透過させた照明光で第2の表示モジュール14を照明するとともに、照明光を所定領域単位(上記の例ではRGBのサブピクセル1組ごと)で調光(照明光量を調節)可能に構成したので、表示画面の中で暗く表現したい領域のみを選択的に暗く表現できる。明るく表現したい領域の明るさを損なうことなく暗い部分の黒浮きが抑えられる結果、高画質の表示を行うことができる。とくに、コンピュータグラフィック画像などのダイナミックレンジの広い表現が必要な場合(階調数が大きい)に有効である。
【0029】
(3)導光板12を含むバックライト部材、液晶パネル13cを含む第1の表示モジュール13、および液晶パネル14c、カラーフィルタ14aを含む第2の表示モジュール14を積層し、これらを略密着させたので、表示装置100の小型化および画素単位の調光制御を実現できる。
【0030】
上述したように第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を変化させる閾値は、5%に限らず、3%でも15%でも適宜変更してよい。
【0031】
また、上述した閾値について、バックライト部材11、12による照明光の輝度に応じて変化させる構成にしてもよい。図4は、バックライト部材11、12による照明光の輝度(光源輝度)と閾値(スレッショルド)との関係を説明する図である。図4において、横軸は光源輝度を表し、縦軸は閾値を表す。
【0032】
図4によれば、光源輝度の増加とともに閾値が高く変更され、たとえば、光源輝度の増加に比例させて閾値をフルスケールの約5%〜約10%の範囲で変更する。これにより、表示画面の中で暗く表現したい領域(すなわち、第2の表示モジュール14を構成する液晶パネル14cの透過率が最低にされる領域)を透過するRGB色の透過光は、光源輝度が高い場合においても、その絶対レベルを小さく抑えることができる。この結果、観察者が観察画像の中で黒浮きを観察することがなくなる。
【0033】
上述した閾値の変更は、バックライト部材11、12による照明光の輝度が可変に構成される場合には設定される照明光の輝度に応じて変更し、バックライト部材11、12による照明光の輝度が固定(変更不可)の場合には、表示装置100の調整・保守時などに、搭載されているバックライト部材11、12による照明光の輝度に応じた値に設定すればよい。
【0034】
また、表示装置100へ供給される画像信号の階調数(階調表現のビット長)に応じて、制御を切り替える構成にしてもよい。この場合、たとえば、画像信号の階調数が8ビット表現されている場合、有効表示領域100aの全域で第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最大にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を最大にする。一方、画像信号の階調数が12ビットや16ビット表現されている場合には、上述したように、第1の表示モジュール13を透過して第2の表示モジュール14を照明する照明光量の透過率を、供給される画像信号に応じて所定領域単位(上記の例ではRGBのサブピクセル1組ごと)で調光する。
【0035】
(変形例1)
第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を、RGB各色のサブピクセルごとに調節可能に構成してもよい。図5(a)は、この場合の表示装置100の内部構造を説明するための拡大図である。図5(a)において、第1の表示モジュール13は、たとえば、周知のTN液晶パネル13dを第1の偏光板13aと第2の偏光板13bとで挟んだモノクロ液晶表示素子によって構成される。第2の偏光板13bおよび第1の偏光板13a間の偏光方向が90度異なるように配設される点は、上述した実施形態と同様である。
【0036】
図5(b)および図5(c)は、図5(a)のTN液晶パネル13dおよび液晶パネル14cにおいてマトリクス状に分割された所定領域を説明する図である。図5(b)において、TN液晶パネル13dの画素は、第2の表示モジュール14側のサブピクセルごとに構成される。第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、このサブピクセルごとに調節可能である。
【0037】
図5(c)において、液晶パネル14cのサブピクセルは、RGBそれぞれの色が図5(b)の1画素に対応するように構成される。つまり、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、RGB各色のサブピクセルごとに調節可能である。このように構成することにより、高精細の黒浮き抑制制御を行うことができる。
【0038】
第1の表示モジュール13においてマトリクス状に分割される領域と、第2の表示モジュール14においてマトリクス状に分割される領域との対応は、上述した実施形態の1:3(RGBのサブピクセル1組)や、変形例で示した1:1(サブピクセルごと)に限らず、RGBのサブピクセル4組分の領域に対応させて調光する1:12や、RGBのサブピクセル9組分の領域に対応させて調光する1:27としてもよい。
【0039】
(第二の実施形態)
第1の表示モジュール13(液晶パネル13c)のマトリクス領域の透過率を変化させる場合、第2の表示モジュール14上のRGBサブピクセルの組、および当該サブピクセルの組の周辺に位置するサブピクセルの組の輝度レベルに基づき、当該サブピクセルの組へ照明光を透過する第1の表示モジュール13(液晶パネル13c)のマトリクス領域の透過率を決定するようにしてもよい。輝度レベルは、表示装置100へ供給される画像信号によって示される。
【0040】
図6(a)および(b)は、それぞれ液晶パネル14cおよび液晶パネル13cにおいてマトリクス状に分割された所定領域を説明する図である。
【0041】
図6(b)において、液晶パネル13cの画素は、略正方形状に構成される。第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、この略正方形状ごとに調節可能である。図6(a)において、液晶パネル14cのサブピクセルは、RGB1組が図6(b)の1画素(略正方形状)に対応するように構成される。つまり、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、RGBのサブピクセル1組単位で調節可能である。
【0042】
表示装置100は、第一の実施形態と同様に、供給される画像信号に応じて第2の表示モジュール14が白色LED11からの光を変調することにより、RGB各色の光像を生成する。観察者は、第2の表示モジュール14から射出されるRGB色の透過光によって合成されるフルカラー像を観察する。図6(a)の例では、RGBサブピクセルの組を1画素とすると、全49画素のうち23画素で白が表示され、26画素で黒が表示されている。
【0043】
一方、表示装置100は、供給される画像信号に応じて第1の表示モジュール13が白色LED11からの光を以下のように減衰させることにより、観察される画像の低輝度領域の黒浮きを抑制する。
【0044】
図6(a)の2行目D列に位置する画素(=RGBサブピクセルの組)に注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データ(RGB3色×9組)の輝度レベルの平均値を算出する。本例では、白を表示する画素が4画素、黒を表示する画素が5画素であるため、白の輝度を1とする場合の輝度平均値は(1(白)×4+0(黒)×5)/9=0.44となる。この場合、所定閾値(たとえば、フルスケールの12%とする)を超えるので、注目画素(=2行目D列)に対応する液晶パネル13cのマトリクス領域(注目画素へ照明光を透過する領域)には電圧を印加しない。すなわち、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値がフルスケールの12%を超える場合は、注目画素に対応する領域の第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最大にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を最大にする。
【0045】
図6(a)の3行目D列に位置する画素(=RGBサブピクセルの組)に注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データ(RGB3色×9組)の輝度レベルの平均値を算出する。本例では、白を表示する画素が1画素、黒を表示する画素が8画素であるため、輝度平均値は(1(白)×1+0(黒)×8)/9=0.11となる。このように、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値がフルスケールの12%未満に相当する場合は、注目画素(=3行目D列)へ透過する照明光量の透過率を上記輝度レベルの平均値に応じて徐々に低下させるように、液晶パネル13cのマトリクス領域に電圧を印加する。
【0046】
図6(a)の4行目D列に位置する画素(=RGBサブピクセルの組)に注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データ(RGB3色×9組)の輝度レベルの平均値を算出する。本例では、白を表示する画素が0画素、黒を表示する画素が9画素であるため、輝度平均値は(1(白)×0+0(黒)×9)/9=0となる。このように、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値が0に相当する場合は、注目画素(=4行目D列)へ透過する照明光量の透過率を最小にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を略0にするように、液晶パネル13cのマトリクス領域に電圧を印加する。
【0047】
フルスケールの12%の輝度レベルは、たとえば、画像信号が8ビットフルスケールで表現されている場合、30LSBに対応する。また、画像信号が12ビットフルスケールで表現されている場合には、491LSBに対応する。
【0048】
第二の実施形態によれば、第一の実施形態の作用効果に加えて次の作用効果が得られる。
(1)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素がともに黒く表示される(上記9画素分の輝度平均値が0)場合に、第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を小さく絞るようにした。これにより、黒表示(所定輝度以下の表示)を行う画素領域より狭い範囲で黒浮き発生を抑えることができる。
【0049】
(2)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素で黒く表示される画素が少ない(上記9画素分の輝度平均値が0より大きく、かつ所定閾値以下)場合は、これらの画素の表示輝度平均値に応じて第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を段階的に絞るようにした。これにより、表示画像の明暗の境界を形成する領域については徐々に照明光量が変化するから、観察者にとって観察像の明暗の境界が違和感なく自然に感じられる。
【0050】
(3)表示画像の明暗の境界を形成する領域に対する照明光量を絞ることで、明るく照明される領域の光が照明光量を減少すべき領域へ漏れたとしても目立ちにくくなるから、第1の表示モジュール13および第2の表示モジュール14の重ね合わせ時における組立要求精度(画素位置合わせ精度)を低くすることができる。
【0051】
(4)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素で黒く表示される画素がさらに少ない(上記9画素分の輝度平均値が所定閾値を超える)場合は、第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を絞らないようにした。これにより、表示画像の明るい領域およびその境界に位置する画素が明るく照明される。この結果、明るく表現する領域(所定輝度を超える表示領域)の明るさを損なうことがない。
【0052】
上述したように第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を変化させる閾値は、12%に限らず、10%でも18%でも適宜変更してよい。
【0053】
(変形例2)
第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を、RGB各色のサブピクセルごとに調節可能に構成してもよい。図7は、この場合の液晶パネル13cにおいてマトリクス状に分割された所定領域を説明する図である。図7において、液晶パネル13cの画素は、図6(a)に例示した第2の表示モジュール14側のサブピクセルに対応するように構成される。第2の表示モジュール14へ入射される照明光量は、このサブピクセル単位で調節可能である。
【0054】
この場合の表示装置100は、供給される画像信号に応じて第1の表示モジュール13が白色LED11からの光を以下のように減衰させることにより、観察される画像の低輝度領域の黒浮きを抑制する。
【0055】
図6(a)の2行目D列R画素について注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データの輝度レベルの平均値を算出する。本例では、明るく発色する(R、G、Bいずれかを発色する)画素が4画素、非発色の画素が5画素であるため、発色部の輝度を1とする場合の輝度平均値は(1(発色)×4+0(非発色)×5)/9=0.44となる。この場合、所定閾値(たとえば、フルスケールの12%)を超えるので、注目画素(2行目D列R画素)に対応する液晶パネル13cのマトリクス領域(注目画素へ照明光を透過する領域)には電圧を印加しない。すなわち、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値がフルスケールの12%を超える場合は、注目画素に対応する領域の第1の表示モジュール13による照明光量の透過率を最大にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を最大にする。
【0056】
図6(a)の3行目D列R画素に注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データの輝度レベルの平均値を算出する。本例では、明るく発色する(R、G、Bいずれかを発色する)画素が1画素、非発色の画素が8画素であるため、発色部の輝度を1とする場合の輝度平均値は(1(発色)×1+0(非発色)×8)/9=0.11となる。このように、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値がフルスケールの12%未満に相当する場合は、注目画素(3行目D列R画素)へ透過する照明光量の透過率を上記輝度レベルの平均値に応じて徐々に低下させるように、液晶パネル13cのマトリクス領域に電圧を印加する。
【0057】
図6(a)の4行目D列R画素に注目すると、表示装置100は、当該画素を中心とする横3画素×縦3画素の全9画素について、これら9画素内に含まれる画像信号の全データの輝度レベルの平均値を算出する。本例では、明るく発色する(R、G、Bいずれかを発色する)画素が0画素、非発色の画素が9画素であるため、発色部の輝度を1とする場合の輝度平均値は(1(発色)×0+0(非発色)×9)/9=0となる。このように、注目画素およびその周辺画素の輝度レベルの平均値が0に相当する場合は、注目画素(4行目D列R画素)へ透過する照明光量の透過率を最小にし、第2の表示モジュール14へ入射される照明光量を略0にするように、液晶パネル13cのマトリクス領域に電圧を印加する。
【0058】
以上説明した変形例2のように構成することにより、以下のように高精細の黒浮き抑制制御を行うことができる。
(1)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素がともに非発色にされる(上記9画素分の輝度平均値が0)場合に、第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を小さく絞ったので、非発色にする(所定輝度以下にする)画素領域より狭い範囲について黒浮き発生を抑えることができる。
【0059】
(2)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素で非発色にされる画素が少ない(上記9画素分の輝度平均値が0より大きく、かつ所定閾値以下)場合は、これらの画素の表示輝度平均値に応じて第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を段階的に絞ったので、観察者にとって観察像の明暗の境界が違和感なく自然に感じられる。
【0060】
(3)表示画像の明暗の境界を形成する画素に対する照明光量を絞ることで、明るく照明される領域の光が照明光量を減少すべき領域へ漏れたとしても目立ちにくくなるから、第1の表示モジュール13および第2の表示モジュール14の重ね合わせ時における組立要求精度(画素位置合わせ精度)を低くすることができる。
【0061】
(4)第2の表示モジュール14の表示画面の中で、注目画素および注目画素と縦横に連続する画素で非発色にされる画素がさらに少ない(上記9画素分の輝度平均値が所定閾値を超える)場合は、第2の表示モジュール14の注目画素を照明する照明光量を絞らないので、明るく表現する領域(所定輝度を超える領域)の明るさを損なうことがない。
【0062】
以上の説明では、注目画素および注目画素の周囲の画素の輝度値の平均値に基づいて、注目画素を照明する照明光量の透過率を決定した。輝度平均値を算出する範囲は適宜変更してよい。また、上記例のように輝度の単純平均を算出する代わりに、重み付け平均を算出するようにしてもよい。
【0063】
図8は、上述した表示装置100を搭載する電子機器の例としてフォトビューワを説明する図である。フォトビューワは、画像データによる再生画像を表示装置100に表示させる。表示画像は、メモリカード53に記録されている所定の画像(たとえば、操作部材54からの操作信号によってあらかじめ指定されている画像)や、CPU51がメモリカード53に記録されている画像から選択した画像、あるいは、外部インターフェイス52を介して外部の装置から供給される画像データによる画像である。
【0064】
CPU51は、制御プログラムに基づいて、フォトビューワ内の各部から入力される信号を用いて所定の演算を行うなどして、フォトビューワの各部に対する制御信号を送出することにより、画像表示動作を制御する。なお、制御プログラムはCPU51内の不図示の不揮発性メモリに格納されている。
【0065】
操作部材54は、使用者による操作に応じた操作信号をCPU51へ出力する。メモリカード53はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって構成され、CPU51の指令によりデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。
【0066】
表示制御回路15は、CPU51から出力される画像信号に応じて第2の表示モジュール14および第1の表示モジュール13をそれぞれ駆動する信号を生成し、生成した駆動信号で第2の表示モジュール14および第1の表示モジュール13をそれぞれ駆動する。
【0067】
表示制御回路15はさらに、CPU51から出力される点灯指示に応じてバックライト11を指示された輝度で点灯させる。点灯したバックライト11は、第1の表示モジュール13を介して第2の表示モジュール14を照明する。
【0068】
以上のフォトビューワにおいて、メモリカード53に記録されている画像データによる再生画像を表示装置100に表示させるには、CPU51がメモリカード53から画像データを読み出し、読み出した画像データを用いて表示装置100の表示ピクセル数に応じた表示データを生成し、生成した表示データを画像信号として表示制御回路15へ送る。また、バックライト点灯指示を表示制御回路15へ送る。表示データは、第2の表示モジュール14における各ピクセルの輝度レベル情報を含む。表示制御回路15は、表示データが有する輝度レベル情報を用いて第1の表示モジュール13による照明光量の透過率、すなわち、照明光量の減少率を決定し、照明光量の制御を行う。
【0069】
以上の説明では、有効表示領域100a内の所定領域ごとに透過光量を調節する調光素子としてTN型の液晶パネル13c(13d)を使用したが、このようなモノクロ液晶表示素子の代わりに、ポリマーネットワーク液晶やエレクトロクロミック素子なども用いて構成してもよい。
【0070】
表示装置100は、デジタルカメラ、電子書籍ビューワ、フォトビューワ、コンピュータ用モニタ、ビデオ用モニタ、テレビジョンセットなどの表示画面を備える電子機器に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)本発明の第一の実施形態による表示装置の構成を説明する正面図である。(b)側面図である。
【図2】(a)一部を拡大した図である。(b)TN液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。(c)液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。
【図3】データ輝度と調光率との関係を説明する図である。
【図4】照明光の輝度と閾値との関係を説明する図である。
【図5】(a)変形例1を説明する拡大図である。(b)TN液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。(c)液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。
【図6】(a)本発明の第二の実施形態による液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。(b)TN液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。
【図7】変形例2によるTN液晶パネルにおいてマトリクス状に分割された所定領域を示す図である。
【図8】表示装置を搭載するフォトビューワを説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
11…白色LED
12…導光板
13…第1の表示モジュール
13a,13b,14b…偏光板
13c(13d)…液晶パネル
14…第2の表示モジュール
14a…カラーフィルタ
14b…液晶パネル
15…表示制御回路
100…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じて像を形成する透過型の光像形成素子と、
前記光像形成素子を照明する照明手段と、
前記照明手段および前記光像形成素子間に配設され、前記照明手段からの照明光量を所定領域ごとに減少させる調光手段とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記調光手段はモノクロ液晶パネルによって構成され、マトリクス状の領域ごとに前記照明手段からの照明光量を減少させることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、
前記照明手段は導光板を含み、
前記導光板、前記液晶パネルおよび前記光像形成素子が積層されていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記調光手段は、表示画面の中で暗く表現する領域の照明光量を減少させることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記調光手段は、表示データの輝度レベルが黒浮き抑制を必要とする所定の閾値以下の場合に前記照明光量を減少させることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置において、
前記調光手段は、前記照明手段の照明輝度の高低に応じて前記閾値を増減させることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
画像信号に応じて像を形成する透過型の光像形成素子と、
前記光像形成素子を照明する照明手段と、
前記照明手段および前記光像形成素子間に配設され、前記照明手段からの照明光量を所定領域ごとに減少させる調光手段と、
所定輝度より低輝度で表示する領域より狭い範囲において前記照明光量を減少するように、前記調光手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記照明光量を減少する領域の境界において前記照明光量の減少率を段階的に変化させるように前記調光手段を制御することを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記画像信号によって示される輝度情報であって、前記光像形成素子上の注目画素、および当該注目画素の周囲の画素のそれぞれに対応する輝度情報に基づいて、前記照明光量を減少させる領域を決定することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記画像信号によって示される輝度情報であって、前記光像形成素子上の注目画素、および当該注目画素の周囲の画素のそれぞれに対応する輝度情報に基づいて、前記注目画素を照明する照明光量の減少率を決定することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−243687(P2006−243687A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139433(P2005−139433)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】