説明

表示装置

【課題】色再現性を維持しつつ、高輝度を達成しうる表示装置、さらに、有機EL素子を用いた場合においても観察方向依存性の小さい表示装置を提供する。
【解決手段】R、G、Bに発光する発光素子からそれぞれなる3色の画素と、カラーフィルタと、をこの順に備え、該カラーフィルタが波長475〜525nmの範囲に光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長450nmにおける光学濃度の比率が15%以下であり、且つ、該光学濃度の極大値に対する、波長550nmにおける光学濃度の比率が10%以下である表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関するものであり、特にR、G、Bの画素をもち、それぞれの色に発光する素子と、カラーフィルタとを有する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の壁掛けテレビをはじめ種々の電子機器の表示パネルとしてCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、蛍光表示管ディスプレイ、電界放射型ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等の電子ディスプレイが使用され、その需要が増大し、その画質の向上に対する要求はますます高まってきている。
【0003】
フルカラー化の方式としては液晶表示装置に代表される、白色発光するバックライトにカラーフィルタを組み合わせる方式が知られているが、画素ごとに青、緑、赤の3原色に発光する発光素子を用いる方式で高画質を追及する開発も盛んに行われるように
なってきている。
画素に用いられる発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子:Organic Electro-Luminescence devices)が挙げられる。有機EL素子は、一層乃至複数層の薄い有機物層を負極と正極とで挟み込んだ構造を有し、前記有機物層に対し、前記正極から正孔を、前記負極から電子を、それぞれ注入し、正孔と電子とが有機物層で再結合する際の再結合エネルギーにより、有機物層中の発光材料の発光中心を励起させ、発光材料が励起状態から基底状態に失活する際に放出される光を利用した発光素子である。有機EL素子は、自発光性、高速応答性等の特徴を持ち、視認性が良好であり、超薄型、軽量であり、また高速応答性、動画表示性に優れることから、フルカラーのフラットパネルディスプレイへの適用が検討されている。特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)の有機EL素子が報告(非特許文献1参照)されて以来、該有機EL素子は、10V以下の低電圧で発光可能な大面積発光素子として注目されている。
【0004】
色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法は、画質、色再現に加え省エネルギーの観点でも好ましく、有機ELのフルカラー化の方式の中でも有力な一つである。
【0005】
3色発光法は、本来カラーフィルタを使わずとも有機EL素子自身が各色に発光できるが、外光反射によるディスプレイとしてのコントラストの低下を防止する目的で、さらに各発光色に合わせたカラーフィルタを組み合わせる方法、さらにマイクロキャビティ構造を採用する方法も提案されている(特許文献1参照)。マイクロキャビティ構造において強さを増す光の波長は、例えば、マイクロキャビティ構造の光路長を変更することにより変化させることができる。したがって、カラーフィルタの着色層毎にマイクロキャビティ構造の光路長を適宜設定すれば、最大強度の光の波長を、輝度・色再現の観点で好ましい波長と一致させることができる。
【0006】
フルカラーディスプレイにおいては、従来、表示装置の色再現性の向上と輝度の向上とは互いにトレードオフの関係にあり、これら表示装置における主要性能である2つの性能の両立について長らく改善が望まれていた。また、特にフラットパネルディスプレイでは広い視野角からの観察において、画質が変化しないことも要求されている。
【0007】
マイクロキャビティ構造を採用した有機EL素子を、カラーフィルタと組み合わせる技術を用いれば、上記の理由により高色再現性と高輝度を両立することが可能となる。しかしながら、マイクロキャビティ構造の光源を用いた有機EL表示装置には、斜め方向から観察した画像が、法線方向から観察した画像と比較して著しく暗いという問題がある。加えて、画像を法線方向から観察し、次いで、斜め方向から観察すると、色相が変化することも指摘されており、改善が望まれている。この観察方向依存性の改善については、デバイスの構造面からの改善提案がされており(特許文献2参照)、その効果が示されているが、これらの方法はいずれも装置の複雑化を招き、結果として高コスト化につながるため、さらに簡便な方法での改善が望まれていた。
【0008】
一方、カラーフィルタ方式の有機EL表示装置には、液晶ディスプレイ用に開発されたカラーフィルタ材料を使用できる。青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の3原色の画素の中で、緑色(G)の画素に用いる顔料としてはC.I.ピグメントグリーン36が多用されている。この顔料は微細化によって、透過率を向上させ、高輝度を得る点で有利と考えられていたが、有機EL表示装置における高色再現性と高輝度との両立に対しては、十分なレベルではないことがわかった。
【0009】
また、3原色のカラーフィルタの形成は、通常フォトリソグラフィーを用いて形成されるが、各色ごとにパターニングが必要であるため、工程を煩雑化させ、歩留まりを低下させる要因の一つとなっていた。
このため簡便な方法で有機EL表示装置の高色再現性と高輝度とを両立するカラーフィルタの出現が待ち望まれていた。
【0010】
また、不要波長領域の光を吸収するフィルタを表示装置前面に用いて、簡便にコントラスト、色純度を改善しようとする試みがプラズマディスプレイ等で検討されているが(特許文献3参照)、このフィルタは補助的なものであり、フォトリソグラフィー方式のカラーフィルタに代わり得るものでは無く、特に3原色の光源に対しての検討はこれまで行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−86358号公報
【特許文献2】特開2007−27042号公報
【特許文献3】特開2003−157017号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】C.W.Tang and S.A.VanSlyke,Applied Physics Letters vol.51,913(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記問題点を考慮してなされた本発明の課題は、簡易な構成であり、色再現性を維持しつつ、高輝度を達成しうる表示装置を提供することである。また、本発明のさらなる課題は、有機EL素子を用いた場合においても観察方向依存性の小さい表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため鋭意研究開発した結果、R,G,Bそれぞれに発光する発光素子と、特定の吸収スペクトルを有するカラーフィルタを組み合わせることで、色再現性を損なわずに、高輝度で、なお且つ観察方向依存性の小さい表示装置を実現ししうることを見出し、従来よりもむしろ簡便な方法で本発明を完成するに至った。
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0015】
<1> R、G、Bに発光する発光素子からそれぞれなる3色の画素と、カラーフィルタと、を備える表示装置であって、該カラーフィルタが波長475〜525nmの範囲に光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長450nmにおける光学濃度の比率が15%以下であり、且つ、該光学濃度の極大値に対する、波長550nmにおける光学濃度の比率が10%以下である表示装置。
<2> R、G、Bに発光する発光素子からそれぞれなる3色の画素と、カラーフィルタと、を備える表示装置であって、該カラーフィルタが、波長550〜620nmの範囲に光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長500nmおよび波長630nmにおける光学濃度の比率が、いずれも12%以下であることを特徴とする表示装置。
【0016】
<3> 前記カラーフィルタが、さらに、波長550〜620nmの波長範囲にも光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長500nmおよび波長630nmにおける光学濃度の比率が、いずれも12%以下である<1>記載の表示装置。
<4> 前記カラーフィルタが表示装置の前面に配置される前面設置型フィルタである<1>〜<3>のいずれかに記載の表示装置。
<5> 前記3色の画素を構成するR、G、Bに発光する発光素子が、いずれも有機エレクトロルミネッセンス素子である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の表示装置。
<6> マイクロキャビティ構造を有する<5>に記載の表示装置。
【0017】
<7> 前記カラーフィルタが、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物から選ばれる1種以上を含有する<1>〜<6>のいずれか1項に記載の表示装置。
【0018】
【化1】

【0019】
[前記一般式(I)中、ZおよびZは、それぞれ独立に、5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を示し、該含窒素複素環には他の複素環、芳香族環または脂肪族環が縮合していてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアラルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示す。Lは置換基を有してもよい、奇数個のメチンからなるメチン鎖を示す。a、bおよびcは、それぞれ独立に、0または1である。Xは、シアニン染料部がカチオン性である場合は対アニオンを示し、シアニン染料部がアニオン性置換基を有し、且つ、アニオン性である場合は対カチオンを示し、シアニン染料部が分子内で中和されている場合には存在しない。]
【0020】
【化2】

【0021】
[前記一般式(II)中、YおよびYは、それぞれ独立に、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表す。Lは、置換基を有しても良い、奇数個のメチンからなるメチン鎖を示す。Xは、水素原子またはカチオンを示す。]
【0022】
【化3】

【0023】
[前記一般式(III)中、Y3は、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表し、L3は、1個又は3個のメチンからなるメチン鎖を表し、Arは、芳香族環を表す。]
【0024】
<8> 前記一般式(I)において、前記含窒素複素環又はその縮合環が、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール(furopyrrole)環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環又はキノキサリン環であり;R又はRにより表されるアルキル基の炭素数が1〜20であり、R又はRにより表されるアルケニル基の炭素数が2〜10であり、R又はRにより表されるアラルキル基の炭素数が7〜12であり、R又はRにより表されるアリール基がフェニル基又はナフチル基であり;前記メチン鎖のメチンの数が1、3、5又は7個である<7>に記載の表示装置。
<9> 前記一般式(I)において、a及びbが0である<7>に記載の表示装置。
<10> 前記一般式(I)において、Xにより表される対アニオンが、ハライドイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF、BF、ClO又は下記一般式(1)で表される錯イオンである<7>に記載の表示装置。
【0025】
【化5】

【0026】
[前記一般式(1)において、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはシアノ基であるか、または、RとR10とが、もしくはR11とR12とが結合して形成された芳香族環を表す。YとYは、それぞれ独立に、O、SまたはNHを表し、複数存在するYは同じでも異なっていてもよく、複数存在するYは同じでも異なっていてもよい。Mは、金属原子を表す。]
<11> 前記一般式(I)において、Xが下記一般式(2)で表される化合物であるか、あるいは、前記一般式(II)において、Xが下記一般式(2)で表される化合物である<7>に記載の表示装置。
【0027】
【化6】

【0028】
[一般式(2)において、R13およびR14は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基またはカルボキシル基を表す。n1およびn2は、それぞれ独立に、1、2、3または4である。bは、0.25〜3.0である。]
【0029】
3色発光型の光源を用いる態様であっても、液晶表示装置用に広く普及している色素を用いた、3種の、パターニングで形成されたカラーフィルタを用いる方法が一般的である。しかし、本発明により、3色発光型の光源と、特定の吸収を持つ色素を用いた1種または2種のフィルタを組み合わせることで、従来のフィルタ以上の性能を出すことが見いだされ、従来よりもむしろ構成が簡易であり、製造工程も簡略化する方向によって、高輝度が得られることが分かった。
また、本発明の構成によれば、特に観察方向依存性の改良に顕著な効果を生むことが分かり、従来、問題となっていた観察方向依存性の改良を、より簡便な方法で実現することに成功した。
【0030】
本発明の構成によって上記効果を奏する理由は定かではないが、以下のように推定している。
即ち、3原色の光源を用いる方式において、色再現性を確保するためには、人間の目の分光感度の、隣接する色相の間の波長を分離することが重要と考えられる。観察方向依存性の原因となっているマイクロキャビティのような、多重干渉によって増幅した指向性の強いリップルの部分の波長と、前記色再現性確保に必要な波長が近接するため、色再現を悪化させずに輝度向上させるためのシャープな吸収を持つフィルタを導入したことで、色再現性を維持しつつ、輝度向上、観察方向依存性低減を同時に達成できたものと推定される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡易な構成により、高い色再現性を低下することなく、高輝度を達成する有機EL表示装置を提供することができる。また、本発明によれば、有機EL素子を用いた場合においても観察方向依存性の小さい表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態である有機EL発光素子を用いた表示装置の断面構造である。
【図2】図2は、有機EL発光素子10R,10Bにおける有機層13の構成の拡大図である。
【図3】図3は、有機EL発光素子10Gにおける有機層13の構成の拡大図である。
【図4】図4Aは、従来型の有機EL表示装置の製造方法をの工程において、駆動パネルの概略断面図を示し、図4Bは、封止パネルの概略断面図を示す。
【図5】図5Aは、有機EL表示装置の製造方法の工程において、駆動パネルに接着層を付与した状態の概略断面図であり、図5Bは、図5Aで示す駆動パネルと封止パネルとを貼り合わせた態様を示す概略断面図である。
【図6】図6は、実施例で用いた有機EL発光素子10R、10G、10Bの光源の分光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に用いられる、カラーフィルタについて説明する。
従来の液晶表示装置などにおけるカラーフィルタはR,G,Bいずれかに対応する光の波長のみを透過させるためのものであった。一方、3原色発光素子を用いる表示装置に用いられるカラーフィルタの場合は、R、G、Bのうちの2色、あるいは3色全ての光を透過し、且つ、不要な波長域をカットするだけで、従来の、3つの色相に適合した着色パターンを備えるカラーフィルタと同等の働きが可能となる。
しかしながら、人間の目の分光感度はR,G,Bにはっきり分離しているわけではないので、等色関数の隣接する2色を的確に、色再現域を広げられる形で吸収する必要があると同時に、本来取り出す必要がある光まで過剰に吸収してしまうと輝度を低下させ、画質を損なうことになってしまうため、上記3色の発光素子を有する表示装置に用いられるカラーフィルタは、特定の波長域にシャープな吸収を有することが必要となる。
【0034】
本発明の表示素子に用いるカラーフィルタは475〜525nmの範囲および/または、550〜620nmの範囲に光学濃度の極大値を有する。前者は青と緑、後者は緑と赤の分離に必要な波長であると同時に、表示装置の観察方向依存性を低減するのに好ましい波長である。
さらに、本発明に係るカラーフィルタは、前記特定の波長領域に極大吸収を有する特性に加え、以下のいずれかの特徴を有する。以下、このような特性を有するカラーフィルタを特定カラーフィルタと称することがある。
(1)475〜525nmの範囲に光学濃度の極大値を有する場合には、その光学濃度の極大値に対する、波長450nmにおける光学濃度の比率が15%以下で、且つ、光学濃度の極大値に対する、波長550nmにおける光学濃度の比率が10%以下である。
(2)550〜620nmの範囲に光学濃度の極大値を光学濃度の極大値を有する場合には、その光学濃度の極大値に対する、波長500nmおよび波長630nmにおける光学濃度の比率は、いずれも12%以下である。
【0035】
上記(1)及び(2)に規定する光学濃度の比率は、該所定値を超える、即ち、双方の光学濃度差がより小さくなる場合には、各色の透過率は従来のものよりむしろ悪くなってしまうため、上記の値以下に抑えることが必要となる。
上記(1)において、カラーフィルタが475〜525nmの範囲に光学濃度の極大値を有する場合、光学濃度の極大値を示す波長領域は、480〜520nmの範囲にあることが好ましく、490〜515nmの範囲にあることが特に好ましい。
このとき、該光学濃度の極大値に対する、波長450nmにおける光学濃度の比率は15%以下が好ましく、13%以下がより好ましい。波長550nmにおける光学濃度の該光学濃度の極大値に対する比率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0036】
上記(2)において、カラーフィルタが550〜620nmの範囲に光学濃度の極大値を有する場合、光学濃度の極大値を示す波長領域は、560〜610nmの範囲にあることが好ましく、570〜600nmの範囲にあることが特に好ましい。このとき500nmおよび630nmにおける光学濃度の該極大値に対する比率は、ともに12%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
このように、いずれの場合であっても特定波長領域にシャープな光学濃度のピークを有することが好ましく、(1)における特性と(2)における特性の双方を満たす、光学濃度の極大値を所定の領域に2つ有するカラーフィルタも好ましく用いることができる。
【0037】
本発明に係るカラーフィルタ(以下、適宜、フィルタ層と称する)では、特定の吸収波長に所望の光学濃度を持たせるために色材を使用する。色材は、染料であっても顔料であっても良いが、調整が容易という点で染料が好ましい。
上記目的に対していかなる染料を用いてもよいが、吸収スペクトルの制御に用いられる好ましい染料としては、スクアリリウム染料、アゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、アゾ染料、アリーリデン染料、キサンテン染料あるいはメロシアニン染料を挙げることができる。
フィルタ層には、以上のような染料を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、波長が475乃至525nmの範囲と550乃至620nmの範囲との両方に吸収極大を有する染料をフィルタ層に用いることもできる。このような染料を用いることで、前記(1)と(2)の特性の双方を有するカラーフィルタを調製することができる。
【0038】
上記のようなシャープな吸収を得る目的に対しては、会合状態にある染料を用いることが特に好ましい。
会合状態の染料は、いわゆるJバンドを形成するため、シャープな吸収スペクトルピークを示す。染料の会合とJバンドについては、文献(例えば、Photographic Science and Engineering Vol.18,No.323−335(1974))に記載がある。会合状態の染料では、さらに、会合状態の染料の吸収極大が、溶液状態の染料の吸収極大よりも長波長側に移動する。従って、フィルタ層に含まれる染料が会合状態であるか、非会合状態であるかは、吸収極大を測定することで容易に判断できる。
染料には、水に溶解するだけで会合体を形成する化合物もある。ただし、一般には、染料の水溶液にゼラチンまたは塩(例、塩化バリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム)を添加して会合体を形成する。染料の水溶液にゼラチンを添加する方法が特に好ましい。
染料の会合体は、染料の固体微粒子分散物として形成することもできる。固体微粒子の状態とするためには、公知の分散機を用いることができる。分散機の例には、ボールミル、振動ミル、遊星ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミルおよびローラミルが含まれる。なかでも、縦型または横型の媒体分散機、例えば、特開昭52−92716号公報および国際特許88/074794号明細書記載の媒体分散機が好ましく用いられる。
【0039】
染料の分散は、適当な媒体(水、アルコール、溶剤)の存在下で実施してもよい。分散に際しては、分散用界面活性剤を用いることが好ましい。分散用界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(例えば、特開昭52−92716号公報および国際特許88/074794号明細書に記載のもの)が好ましく用いられる。必要に応じて、アニオン性ポリマー、ノニオン性界面活性剤あるいはカチオン性界面活性剤を用いてもよい。
染料を適当な溶媒に溶解した後、その貧溶媒に添加して、微粒子状の粉末を得てもよい。この場合も、上記の界面活性剤を用いることができる。
また、溶液のpHを調整することにより、染料の微結晶を析出させてもよく、ここで析出により得られる微結晶も染料の会合体である。
会合状態の染料が微粒子(または微結晶)である場合、平均粒径は0.01μm乃至10μmであることが好ましい。染料の粒子又は微結晶の平均粒径は、走査型電子顕微鏡にて撮影した画像より、抽出した500個の測定値を平均した値を用いている。
【0040】
475乃至525nmの波長領域に吸収極大を有するカラーフィルタを調製するための染料としては、該極大値に対する450nmにおける光学濃度の比率が15%以下で、且つ、550nmにおける光学濃度の比率が5%以下となる染料であれば、どのような構造の染料も用いることができる。この条件を満たす染料であれば、複数の染料を併用してもよい。
【0041】
染料は、半値幅(吸収極大の吸光度の半分の吸光度を示す波長領域の幅)が50nm以下の吸収を持つ染料が好ましく、40nm以下であることがさらに好ましく、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが最も好ましい。
具体的な染料種としては、例えばシアニン染料、オキソノール染料、アリーリデン染料、メロシアニン染料、スクアリリウム染料、アゾメチン染料、アゾ染料、あるいはキサンテン染料を挙げることができる。特に、好ましい染料としては、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選択される染料が挙げられる。
【0042】
【化4】

【0043】
前記一般式(I)中、ZおよびZは、それぞれ独立に、5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を示す。
含窒素複素環には、他の複素環、芳香族環または脂肪族環が縮合していてもよい。ZおよびZを含む含窒素複素環およびその縮合環の例には、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール(furopyrrole)環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環およびキノキサリン環が含まれる。
含窒素複素環は、6員環よりも5員環のほうが好ましい。なかでも、5員の含窒素複素環に、ベンゼン環またはナフタレン環が縮合していることがさらに好ましく、ベンゾイミダゾール環が最も好ましい。
【0044】
およびZで表される含窒素複素環およびそれに縮合している環はそれぞれ、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、エトキシカルボニル)、ハロゲン化炭素基(例、トリフルオロメチル)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(フェニルチオ、o−カルボキシルフェニルチオ)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ)、アミド基(例、アセトアミド、プロピオンアミド)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
【0045】
一般式(I)において、RおよびRはそれぞれ独立に、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアラルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示す。
、Rがアルキル基を表すとき、アルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基に導入可能な置換基の例には、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
、Rがアルケニル基を表すとき、アルケニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルケニル基の例には、2−ペンテニル、ビニル、アリル、2−ブテニルおよび1−プロペニルが含まれる。アルケニル基は置換基を有していてもよい。アルケニル基に導入可能な置換基の例は、アルキル基における置換基の例と同様である。
【0046】
、Rがアラルキル基を表すとき、アラルキル基の炭素原子数は、7乃至12であることが好ましい。アラルキル基の例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。アラルキル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、エトキシカルボニル)、ハロゲン化炭素基(例、トリフルオロメチル)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(フェニルチオ、o−カルボキシルフェニルチオ)、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ)、アミド基(例、アセトアミド、プロピオンアミド)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
、Rがアリール基を表すとき、アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は、置換基を有していてもよい。アリール基の置換基の例は、アラルキル基の置換基の例と同様である。
【0047】
一般式(I)において、Lは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチンの数は、1、3、5または7個であることが好ましい。
メチン鎖は、置換基を有していてもよい。置換基を有するメチンは、メチン鎖の中央(メソ位)のメチンであることが好ましい。メチン鎖に導入可能な置換基の例には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。アルキル基およびアリール基の定義および例は、上記RおよびRで示したものと同様である。
一般式(I)において、a、bおよびcは、それぞれ独立に、0または1である。aおよびbは、0である方が好ましい。cは、シアニン染料がスルホやカルボキシルのようなアニオン性置換基を有して分子内塩を形成する場合は、0である。
一般式(I)において、Xはシアニン染料部がカチオン性である場合は対アニオンを示し、シアニン染料部がアニオン性置換基を有して、且つ、アニオン性である場合は対カチオンを示し、シアニン染料部が分子内で中和されている場合にはXは存在しない。Xが対アニオンを表す場合の、アニオンの例には、ハライドイオン(Cl、Br、I)、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF、BF、ClOおよび下記一般式(1)で表される錯イオンが含まれる。また、Xが対カチオンを表す場合の、カチオンの例には、アルカリ金属イオン類(Li,Na,K)、アンモニウムイオン類(NH、テトラブチルアンモニウムイオン等)、ピリジニウムイオン類(ピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン)、グアニジニウムイオン類(グアニジニウムイオン,テトラメチルグアニジニウムイオン)、アミジニウムイオン類(ジアザビシクロウンデセニウム)および後述の下記一般式(2)で表されるオニウムイオンが含まれる。
【0048】
【化5】

【0049】
前記一般式(1)において、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはシアノ基であるか、あるいは、RとR10、または、R11とR12とが結合して形成された芳香族環を表す。
、R10、R11およびR12がアルキル基を表す場合のアルキル基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
、R10、R11およびR12がアリール基を表す場合のアリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、エトキシカルボニル)、ハロゲン化炭素基(例、トリフルオロメチル)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(フェニルチオ、o−カルボキシルフェニルチオ)、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ)、アミド基(例、アセトアミド、プロピオンアミド)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
とR10、または、R11とR12とが結合して形成する芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。ベンゼン環およびナフタレン環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、上記のアリール基において挙げた置換基の例と同様である。
【0050】
一般式(1)において、YとYは、それぞれ独立に、O、SまたはNHを表すが、Sが最も好ましい。一般式(1)中に複数存在するYは同じでも異なっていてもよく、一般式(1)中に複数存在するYは同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)において、Mは、金属原子を表す。金属原子は、周期律表のII族からIV族までの金属原子が好ましく、より好ましくは、遷移金属原子である。遷移金属原子の例には、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、MdおよびCdが含まれる。なかでも、Fe、Co、CuおよびZnが特に好ましい。
【0051】
前記一般式(I)で表されるシアニン染料は、少なくとも一つの水溶性基(化合物を水溶性にする程度の強い親水性基)を有していてもよい。ここでシアニン染料が有することができる水溶性基の例には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基およびそれらの塩が含まれる。塩を形成するための対イオンの例には、アルカリ金属イオン類(Li,Na,K)、アンモニウムイオン類(NH、テトラブチルアンモニウムイオン等)、ピリジニウムイオン類(ピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン)、グアニジニウムイオン類(グアニジニウムイオン,テトラメチルグアニジニウムイオン)、アミジニウムイオン類(ジアザビシクロウンデセニウム)および下記一般式(2)で表されるオニウムイオンが含まれる。
【0052】
【化6】

【0053】
一般式(2)において、R13およびR14は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。アルキル基、アルケニル基、アラルキル基およびアリール基の定義および例は、前記一般式(I)におけるRおよびRと同様である。
13およびR14が複素環基を表す場合の複素環の例には、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、ピラゾール環、ピロール環およびクマリン環が含まれる。
複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、エトキシカルボニル)、ハロゲン化炭素基(例、トリフルオロメチル)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(フェニルチオ、o−カルボキシルフェニルチオ)、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ)、アミド基(例、アセトアミド、プロピオンアミド)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
【0054】
一般式(2)において、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基またはカルボキシル基を表す。
13、R14、R15およびR16のいずれか二つが結合して環を形成してもよい。
一般式(2)において、n1およびn2は、それぞれ独立に、1、2、3または4である。
一般式(2)において、複数存在する場合のR15は同じでも異なっていてもよく、複数存在する場合のR16は同じでも異なっていてもよい。
一般式(2)において、bは、0.25乃至3.0である。bは、染料に含まれる水溶性基の数に応じて決定する。例えば、染料がスルホ基を二つ有すると、bは0.5である。また、染料がスルホ基を三つ有すると、bは1.0である。
以下に、一般式(I)で表され、且つ、本発明において規定された吸収スペクトルを持つ、本発明におけるカラーフィルタの調製に好適に用いうるシアニン染料の具体例を示す。
【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
一般式(I)で表されるシアニン染料は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレイテッド」コンパウンズ(Heterocyclic Compounds Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク、ロンドン、1964年;デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、482〜515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク、ロンドン、1977年;「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」、第2版、第4巻B、第15章、369〜422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)、ニューヨーク、1977年;および特開平6−313939号、同5−88293号の各公報の記載を参照して合成できる。
【0058】
本発明におけるカラーフィルタに好適に用いうる特定の吸収スペクトルを有する染料の他の例として、一般式(II)で表されるオキソノール染料が挙げられる。
【0059】
【化9】

【0060】
前記一般式(II)中、YおよびYは、それぞれ独立に、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表す。Lは、置換基を有しても良い、奇数個のメチンからなるメチン鎖を示す。Xは、水素原子またはカチオンを示す。
【0061】
前記一般式(II)中、YおよびYは、それぞれ独立に、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表す。YおよびYとしては、脂肪族環よりも複素環の方が好ましい。
脂肪族環の例には、インダンジオン環が含まれる。複素環の例には、5−ピラゾロン環、オキサゾロン環、バルビツール酸環、ピリドン環、ローダニン環、ピラゾリジンジオン環、ピラゾロピリドン環およびメルドラム酸環が含まれる。
脂肪族環および複素環は、置換基を有していてもよい。導入可能な置換基の例には、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アリール基(例えば、フェニル基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ、p−クロロフェノキシ)、ハロゲン原子(Cl、Br、F)、アルコキシカルボニル基(例、エトキシカルボニル)、ハロゲン化炭素基(例、トリフルオロメチル)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(フェニルチオ、o−カルボキシルフェニルチオ)、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ)、アミド基(例、アセトアミド、プロピオンアミド)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ)、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。スルホ基とカルボキシル基は塩の状態であってもよい。
【0062】
前記一般式(II)において、Lは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。メチンの数は、3、5または7個であることが好ましい。
メチン鎖は、置換基を有していてもよい。置換基を有するメチンは、メチン鎖の中央(メソ位)のメチンであることが好ましい。置換基の例には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基およびカルボキシル基が含まれる。ただし、メチン鎖は無置換であることが好ましい。
一般式(II)において、Xは、水素原子またはカチオンを表す。Xがカチオンを表す場合の、カチオンの例には、アルカリ金属イオン類(Li,Na,K)、アンモニウムイオン類(NH、テトラブチルアンモニウムイオン等)、ピリジニウムイオン類(ピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン)、グアニジニウムイオン類(グアニジニウムイオン,テトラメチルグアニジニウムイオン)、アミジニウムイオン類(ジアザビシクロウンデセニウム)および既述の一般式(2)で表されるオニウムイオンが含まれる。
以下に、一般式(II)で表され、且つ、本発明で規定する上記スペクトルの条件を満たすオキソノール染料の例を示す。
なお、下記例示化合物中、解離性基については遊離の形で示すが、一般式(I)において述べたような対イオンを有する塩の形で用いてもよい。特に、一般式(2)で表される対イオンを有する塩の構造をとるものは特に好ましく用いられる。
【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
一般式(II)で表されるオキソノール染料は、特開平7−230671号公報、欧州特許0778493号および米国特許5459265号の各明細書の記載を参照して合成できる。
【0067】
本発明におけるカラーフィルタに好適に用いうる特定の吸収スペクトルを有する染料の他の例として、一般式(III)で表される染料が挙げられる。
【0068】
【化13】

【0069】
一般式(III)において、Y3は一般式(II)におけるY、Yと同義である。好ましいものも同じである。L3は、1もしくは3個のメチンからなるメチン鎖であり、好ましいメチンの数は1個である。メチン鎖は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル、スルホおよびカルボキシルが含まれる。ただし、メチン鎖は無置換であることが好ましい。
【0070】
Arは、芳香族環である。芳香族環は、炭化水素環であっても複素環であっても良いが、炭化水素環が好ましい。最も好ましい芳香族環は、ベンゼン環である。芳香族環は置換基を有していてもよく、好ましい置換基は、一般式(II)の脂肪族環および複素環の置換基の説明で挙げたものと同じである。
以下に、本発明に好ましく用いられる一般式(III)で表される染料の好ましい例を挙げる。
【0071】
【化14】

【0072】
540〜600nmの波長領域に吸収極大を有するカラーフィルタに使用される色材としては特に制限は無く、いかなる染料や顔料を用いることが出来る。該極大値に対する540nmおよび600nmにおける光学濃度の比率がいずれも15%以上100%以下となるように、複数の色材を併用しても良い。吸収波形の調整が容易であるという点で、染料を使用することがより好ましい。好ましい染料種を具体的に挙げると、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、スクアリリウム染料、アゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、アリーリデン染料、キサンテン染料、フタロシアニン染料、ピロメテン染料、あるいはメロシアニン染料を挙げることが出来る。
好ましい染料の具体例としては、国際特許番号WO00−23829号に記載の560乃至620nmに極大吸収を有する染料のほか、以下の染料〔例示化合物(IV−1)〜(IV−5)〕を挙げることが出来る。
【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
また、C.I.ピグメント バイオレット19、同23などの顔料も好ましく用いることが出来る。
このような吸収スペクトルを有する染料を、カラーフィルタに用いる際、1種のみを用いてもよく、2種以上を組みあわて用いてもよい。特定染料の含有量は、カラーフィルタを構成する全成分中、固形分換算で5〜70質量%の範囲が好ましく、8〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
【0076】
特定カラーフィルタには、外光反射抑止等の目的で、前述した分光吸収スペクトル(ピーク波長475〜525nmおよび550〜620nmで特定波長の光学濃度の比率を規定)に該当しないスペクトルをもつ染料を併用してもよい。そのような染料の中でも、特に近赤外吸収染料を用いることができる。このような染料を併用する場合でも、調製されたカラーフィルタの吸収スペクトルは上記規定を満たすことを要するため、添加量を調整することが必要である。
近赤外吸収染料としては、シアニン染料(特開平9−96891号公報記載)、金属キレート染料、アミニウム染料、ジイモニウム染料、キノン染料、スクアリリウム染料(特開平9−90547号、同10−204310号の各公報記載)や各種メチン染料であって、上記物性を有しない化合物を用いることができる。
近赤外吸収染料については、色材(J. Jpn. Soc. Coulor Mater.)、61[4]215−226(1988)および化学工業(Chemical Industry)43−53(1986年5月号、化学工業社)にも記載がある。また、他の可視光吸収染料としては、トリフェニルメタン染料(米国特許2150695号明細書および特開平5−117536号公報記載)およびフルオレセイン染料(例えば、フルオレセイン、ジブロモフルオレセイン、エオシン、ローダミン)を用いることができる。
【0077】
本発明に係る特定カラーフィルタは、前記特定の吸収スペクトルを有する染料を含む1層の構成で用いても本発明の効果を奏し得るが、目的に応じて、R、G、Bのうち任意の色相の着色パターンを有するカラーフィルタとして用いることもできる。その場合には、着色パターンに所望の色相を与える着色剤、好ましくは、顔料とともに、前記特定の吸収スペクトルを有する染料を含有させればよい。複数色の着色パターンを有するカラーフィルタの製造方法については、以下に詳述する。
【0078】
本発明に係る特定カラーフィルタは、発光素子などの光源からの光がカラーフィルタを介して表示される位置に配置されれば、その配置位置は任意であり、従来の表示装置のごとく、表示装置に内蔵されてもよく、表示装置の全面に別部材として配置されてもよい。以下、カラーフィルタが表示装置の全面に外地される態様について説明する。
<前面設置型カラーフィルタ>
本発明の表示装置における特定カラーフィルタは、従来の液晶表示装置におけるカラーフィルタと同様に、フォトリソグラフィーで作製してシステムに内蔵することもできるが、プラズマディスプレイ用の色補正フィルタと同様に、ディスプレイ表面に貼り付けるなどの方法により、ディスプレイの前面に設置する方法も好ましく用いることができる。この方式に関しては前出の特開2003−157017号公報などに記載されている。
前面設置型カラーフィルタにおけるフィルタ層の形成に用いられるポリマーバインダーとしては、天然ポリマー(例、ゼラチン、セルロース誘導体、アルギン酸)または合成ポリマー(例、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、水溶性ポリアミド)を用いることができる。親水性ポリマー(上記天然ポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアミド)が好ましく、ゼラチンが特に好ましい。ポリマーバインダーの数平均分子量は、5000乃至100000であることが好ましく、10000乃至100000であることが好ましい。
【0079】
フィルタ層には、前記染料及びバインダーポリマーに加えて、さらに、褪色防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。顔料の安定化剤として機能する褪色防止剤の例には、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号、同3982944号の各明細書記載)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書および特開昭55−21004号公報記載)、フェノール誘導体(特開昭54−145530号公報記載)、スピロインダンまたはメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許公開2077455号、同2062888号の各明細書および特開昭61−90155号公報記載)、クロマン、スピロクロマンまたはクマランの誘導体(米国特許3432300号、同3573050号、同3574627号、同3764337号の各明細書および特開昭52−152225号、同53−20327号、同53−17729号、同61−90156号の各公報記載)、ハイドロキノンモノエーテルまたはパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号、同2066975号の各明細書および特公昭54−12337号、特開昭55−6321号の各公報記載)およびビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書および特公昭48−31625号公報記載)が含まれる。
【0080】
また、光あるいは熱に対する顔料の安定性を向上させるため、金属錯体(米国特許4245018号明細書および特開昭60−97353号公報記載)を褪色防止剤として用いてもよい。
さらに、顔料の耐光性を改良するために、一重項酸素クエンチャーを褪色防止剤として用いてもよい。一重項酸素クエンチャーの例には、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報記載)、ジイモニウム化合物(米国特許4656121号明細書記載)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報記載)および酸化防止剤(欧州特許公開820057A1号明細書記載)が含まれる。
【0081】
(反射防止層)
本態様においては、前記フィルタ層に、さらに反射防止層を設けて、特定カラーフィルタに反射防止機能を付与してもよい。
反射防止層の反射防止機能としては、正反射率が3%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがさらに好ましい。
反射防止層を設ける場合は、低屈折率層を設けることが必須である。低屈折率層としては、その屈折率が透明支持体の屈折率よりも低いものを用いる。低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。
低屈折率層の厚さは、50nm〜400nmであることが好ましく、50nm〜200nmであることがさらに好ましい。
低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3乃至50体積%の空隙率を有することが好ましく、5乃至35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0082】
広い波長領域の反射を防止するためには、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。
高屈折率層の屈折率は、1.65乃至2.40であることが好ましく、1.70乃至2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50乃至1.9 0であることが好ましい。
中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。
中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
【0083】
中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80乃至2.80であることが好ましい。
【0084】
前記中・高屈折率層に用いられる無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物または硫化物の例には、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび硫化亜鉛が含まれる。酸化チタン、酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物または硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、PおよびSが含まれる。
被膜形成性で溶剤に分散し得るが、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
反射防止層は、表面をアンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成することにより、あるいは反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を得ることができる。
アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3乃至30%のヘイズを有する。
【0085】
(その他の層)
本態様における特定カラーフィルタには、ハードコート層、潤滑層、防汚層、帯電防止層、紫外線吸収層あるいは中間層を設けることもできる。
ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマーまたはモノマー(例、紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
特定カラーフィルタの最表面に潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、反射防止膜表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例、シリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤またはその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2乃至20nmであることが好ましい。
防汚層は、含フッ素ポリマーを用いて形成することができる。防汚層の厚さは、2乃至100nmであることが好ましく、5乃至30nmであることがさらに好ましい。
【0086】
反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)、フィルタ層、下塗り層、ハードコート層、潤滑層、及びその他の層はそれぞれ、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法の例には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法およびホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)が含まれる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0087】
(特定カラーフィルタの適性)
特定カラーフィルタは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用可能なものである。反射防止層を設ける場合は、低屈折率層が設けられていない側の面が画像表示装置の画像表示面と対向するように配置する。本発明に係る特定カラーフィルタは、有機EL発光素子を有する表示装置用のカラーフィルタとして使用すると、特に顕著な効果が得られる。
有機EL表示装置のような画像表示装置では、特定カラーフィルタをディスプレイの表面をカバーするように配置する。特定カラーフィルタをディスプレイの表面に直接貼り付けることができる。また、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(ディスプレイ側)に特定カラーフィルタを貼り付けることもできる。
【0088】
本発明における表示装置は、無機または有機EL等のR、G、B3色に発光する素子を有することを特徴とし、いかなる原理の発光素子、光源も利用できるが有機EL素子を用いた有機EL表示装置であることが好ましい。以下に本発明に好ましく用いられる有機EL表示装置について詳細に説明する。
<有機EL表示装置とマイクロキャビティ構造>
本発明に用いる、有機EL表示装置は特許第3944906号明細書を参照し、作製することが可能である。以下図を用いて説明する。
【0089】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子である有機EL発光素子を用いた有機EL表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、駆動パネル10と封止パネル20とが対向配置され、接着層30により全面が貼り合わされている。駆動パネル10は、ガラスなどの絶縁材料よりなる駆動用基板11の上に、赤色の光を発生する有機EL発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機EL発光素子10Gと、青色の光を発生する有機EL発光素子10Bとが、順に、全体としてマトリクス状に設けられている。
【0090】
この有機EL発光素子10R,10G,10Bはそれぞれ、例えば、駆動用基板11の側から、陽極としての第1電極12、有機層13、および陰極としての第2電極14がこの順に積層されている。また、第2電極14の上には、必要に応じて保護膜15が形成されてもよい。
【0091】
第1電極12は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、金属などの消衰係数の高い材料を用いる場合には、できるだけ実部屈折率の低い材料を用いて、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)を光が透過しない程度、具体的には概ね100nm以上とすれば、反射率を高くすることができるので好ましい。具体的には、厚みを例えば200nm程度とし、白金(Pt),金(Au)またはタングステン(W)などの仕事関数の高い金属元素の単体または合金により構成することが好ましい。なお、第1電極12には、光学定数に実質的な差を生じない程度に別の元素を添加してもよい。
【0092】
有機層13は、有機EL発光素子10R,10G,10Bの発光色によって構成が異なっている。図2は、有機EL発光素子10R,10Bにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。有機EL発光素子10R,10Bの有機層13はそれぞれ、正孔輸送層13A,発光層13Bおよび電子輸送層13Cが第1電極12の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層13Aは、発光層13Bへの正孔注入効率を高めるためのものである。本実施の形態では、正孔輸送層13Aが正孔注入層を兼ねている。発光層13Bは、電流の注入により光を発生するものである。電子輸送層13Cは、発光層13Bへの電子注入効率を高めるためのものである。
【0093】
有機EL発光素子10Rの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが45nm程度であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL発光素子10Rの発光層13Bは、例えば、厚みが50nm程度であり、2,5−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)―N−フェニルアミノ]]スチリルベンゼン―1,4−ジカーボニトリル(BSB)により構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層13Cは、例えば、厚みが30nm程度であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)により構成されている。
【0094】
有機EL発光素子10Bの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが30nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機EL発光素子10Bの発光層13Bは、例えば、厚みが30nm程度であり、4,4´−ビス(2,2´−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層13Cは、例えば、厚みが30nm程度であり、Alq3により構成されている。
【0095】
図3は、有機EL発光素子10Gにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。有機EL発光素子10Gの有機層13は、正孔輸送層13Aおよび発光層13Bが第1電極12の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層13Aは、正孔注入層を兼ねており、発光層13Bは、電子輸送層を兼ねている。
【0096】
有機EL発光素子10Gの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが50nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機EL発光素子10Gの発光層13Bは、例えば、厚みが60nm程度であり、Alq3にクマリン6(C6;Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。
【0097】
図1ないし図3に示した第2電極14は、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、この有機EL発光素子10R,10G,10Bは、第1電極12の発光層13B側の端面を第1端部P1、第2電極14の発光層13B側の端面を第2端部P2とし、有機層13を共振部として、発光層13Bで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このように共振器構造を有するようにすれば、発光層13Bで発生した光が多重干渉を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することにより、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、色純度を向上させることができるので好ましい。
また、封止パネル20から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタ22(図1参照)との組合せにより有機EL発光素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができるので好ましい。
【0098】
図1に示した保護膜15は、例えば、厚みが500nm以上10000nm以下であり、透明誘電体からなるパッシベーション膜である。保護膜15は、例えば、酸化シリコン(SiO),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。
【0099】
封止パネル20は、図1に示したように、駆動パネル10の第2電極14の側に位置しており、接着層30と共に有機EL発光素子10R,10G,10Bを封止する封止用基板21を有している。封止用基板21は、有機EL発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板21には、例えば、カラーフィルタ22が設けられており、有機EL発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機EL発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0100】
カラーフィルタ22は、封止用基板21のどちら側の面に設けられてもよいが、駆動パネル10の側に設けられることが好ましい。カラーフィルタ22が表面に露出せず、接着層30により保護することができるからである。カラーフィルタ22は、赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bを有しており、有機EL発光素子10R,10G,および10Bに対応して順に配置されている。
【0101】
赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0102】
図4(A)〜4(B)および図5(A)〜5(B)は、この表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図4(A)に示したように、上述した材料よりなる駆動用基板11の上に、例えば直流スパッタリングにより、上述した材料よりなる第1電極12を上述した厚みで成膜し、例えばリソグラフィ技術を用いて選択的にエッチングし、所定の形状にパターニングする。その後、同じく図4(A)に示したように、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる有機層13(正孔輸送層13A、発光層13B、及び/又は電子輸送層13Cを含む)および第2電極14を順次成膜し、図2および図3に示したような有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。その後、第2電極14の上に、必要に応じて保護膜15を形成する。これにより、駆動パネル10が形成される。
【0103】
また、図4(B)は、従来の方法により形成されたR、G、Bの着色パターンを有するカラーフィルタを示している。例えば、上述した材料よりなる封止用基板21の上に、赤色フィルタ22Rの材料(本態様では、後述する着色感光性組成物を用いる)をスピンコート法などにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした後に焼成することにより赤色フィルタ22Rを形成する。続いて、赤色フィルタ22Rと同様にして、青色フィルタ22B、および緑色フィルタ22Gを順次形成して、図4(B)に示すR、G、Bの着色パターンを有する封止パネル20が形成される。
赤色フィルタ、青色フィルタ、および緑色フィルタの形成順序は任意に設定される。
以上より、従来の工程では、パターニング、焼成の工程は色相の数だけ繰り返されることが分かる。本発明によれば、1つの色相のフィルタが従来の2色分を兼ねることが可能となるため、この部分の工程数を低減することが可能となる。
【0104】
封止パネル20および駆動パネル10を形成したのち、図5(A)に示したように、保護膜15の上に、接着層30を形成する。そののち、図5(B)に示したように、駆動パネル10と封止パネル20とを接着層30を介して貼り合わせる。その際、封止パネル20のうちカラーフィルタ22を形成した側の面を、駆動パネル10と対向させて配置することが好ましい。以上により、駆動パネル10と封止パネル20とが接着され、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
【0105】
この表示装置では、第1電極12と第2電極14との間に所定の電圧が印加されると、発光層13Bに電流が注入され、正孔と電子とが再結合することにより、主として発光層13Bの界面において発光が起こる。この光は、第1電極12と第2電極14との間で多重反射し、第2電極14,保護層15,カラーフィルタ22および封止用基板21を透過して取り出される。このとき、封止用基板21の側から外光が入射するが、共振波長以外の外光はカラーフィルタ22により吸収されると共に、有機EL発光素子10R,10G、10Bにおける多重干渉により減衰される。一方、共振波長の外光は、カラーフィルタ22を透過して有機EL発光素子10R,10G,10Bに入射し、第2電極14および第1電極12において主に反射する。ただし、本実施の形態では、第1端部P1の側すなわち第1電極12と第2端部P2の側すなわち第2電極14とにおける外光の反射光について、強度と位相とをそれぞれ調整することにより、有機EL発光素子10R,10G,10Bにおける反射率が20%以下となるように構成されているので、封止用基板21を透過して取り出される反射光はごくわずかとなる。したがって、外光反射または外景の映り込みが低減される。
【0106】
実施の形態を挙げて本発明の第一の実施形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。本実施の形態では、本発明に好適なマイクロキャビティ構造を採用しているが、当然これを用いない形態でも実施が可能である。
上記実施の形態では、R、G、B3色の画素を有しているが、本発明においてはこれ以外に、フィルタ層を介さず光を取り出す、白色の画素を有していても良い。
また、上記実施の形態では、有機EL発光素子の構成を具体的に挙げて説明したが、正孔注入用薄膜層13A、保護膜15などの全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば第1電極12を、誘電体多層膜またはAlなどの反射膜の上部に透明導電膜を積層した2層構造とすることもできる。この場合、この反射膜の発光層側の端面が共振部の端部を構成し、透明導電膜は共振部の一部を構成することになる。
【0107】
さらにまた、上記実施の形態では、第2電極14が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極14は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んだ位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設ける場合には、保護膜15を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜15を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0108】
さらに、本発明は、第2電極14を透明電極により構成すると共に、この透明電極の有機層13と反対側の端面の反射率が大きくなるように構成し、第1電極12の発光層13B側の端面を第1端部、透明電極の有機層と反対側の端面を第2端部とした共振器構造を構成した場合についても適用することができる。例えば、保護膜15または接着層30との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。また、保護膜15および接着層30を設けずに、透明電極を大気層に接触させ、透明電極と大気層との境界面の反射率を大きくして、この境界面を第2端部とするようにしてもよい。
【0109】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施形態として、TFT基板側から光を取り出す場合について述べる。
上記実施の形態においては、駆動用基板11の上に、第1電極12,有機層13および第2電極14を駆動用基板11の側から順に積層し、封止パネル20の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、駆動用基板11の上に、第2電極14,有機層13および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0110】
また、例えば、上記実施の形態では、第1電極12を陽極、第2電極14を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極12を陰極、第2電極14を陽極としてもよい。この場合、第2電極14の材料としては、仕事関数が高い金,銀,白金,銅などの単体または合金が好適であるが、正孔注入用薄膜層13Aを設けることによって他の材料を用いることもできる。また、第2電極14には、光学定数に実質的な差を生じない程度に別の元素を添加してもよい。さらに、第1電極12を陰極、第2電極14を陽極とすると共に、駆動用基板11の上に、第2電極14,有機層13および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0111】
本発明の表示装置に備えられるカラーフィルタは、公知のR、G、Bの着色パターンを有する態様、あるいは、そのうち1色〜3色の任意の着色パターンを有する態様に適用することも可能である。この場合、予め定められた1色〜3色の着色パターンに、前記特定ピークを有する染料を添加することで本発明に係る特定カラーフィルタとすることができる。以下、複数の色相の着色パターンを有するカラーフィルタをその製造方法とともに詳述する。
本発明の表示装置は、カラーフィルタを備える。必要によって、遮光、反射防止などのために、さらにブラックマトリクスを備えたカラーフィルタであってもよい。
各着色画素は、それぞれの色に着色された着色組成物を用いて、フォトリソ法、インクジェットによる印刷法、反転印刷法、あるいはナノインプリント法など各種のパターン成形方法が使用できる。以下本発明の形態の一つであるフォトリソ法による着色パターン成形について説明する。
【0112】
フォトリソ法では、着色感光性組成物を用いる。着色感光性組成物は、着色剤として顔料、染料等の着色剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、および光重合開始剤等から構成される。
【0113】
前記本発明の染料の他、種々の染料をフォトリソ法に用いることが可能である。それ以外にも公知の顔料の添加が可能であるが、顔料をあらかじめ種々の樹脂で処理しておくことが好ましい。すなわち、顔料は一般に合成後、種々の方法で乾燥が行なわれ、通常は水媒体から乾燥させて粉末体として供給されるが、水が乾燥するには大きな蒸発潜熱を必要とし、乾燥粉末とするには大きな熱エネルギーを与える。そのため、顔料は一次粒子が集合した凝集体(二次粒子)を形成しているのが普通であり、かかる凝集体を形成している顔料を微粒子に分散するのは容易ではないため、あらかじめ樹脂で処理しておくことが分散容易となり望ましい。ここでの樹脂としては、後述のアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
【0114】
前記分散処理の方法としては、フラッシング処理やニーダー、エクストルーダー、ボールミル、2本または3本ロールミル等による混練方法がある。このうち、フラッシング処理や2本または3本ロールミルによる混練法が微粒子化に好適である。
前記フラッシング処理は、通常顔料の水分散液と水と混和しない溶媒に溶解した樹脂溶液を混合し、水媒体中から有機媒体中に顔料を抽出し、顔料を樹脂で処理する方法である。この方法によれば、顔料の乾燥を経ることがないので、顔料の凝集を防ぐことができ、分散が容易となる。また、上記の2本または3本ロールミルによる混練では、顔料と樹脂または樹脂の溶液とを混合した後、高いシェア(せん断力)をかけながら、顔料と樹脂を混練することによって顔料表面に樹脂をコーティングすることにより顔料を処理する方法である。この過程で凝集していた顔料粒子はより低次の凝集体から一次粒子にまで分散される。
【0115】
また、あらかじめアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、マレイン酸樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂等で処理した加工顔料として用いることもできる。この加工顔料の形態としては、樹脂と顔料が均一に分散している粉末、ペースト状、ペレット状、ペースト状が好ましい。また、樹脂がゲル化した不均一な塊状のものは好ましくない。
【0116】
本発明のスペクトルを有するカラーフィルタ以外に用いられる、従来同様の緑色、赤色および青色画素に用いられる顔料を高透過率、高色再現性を考慮して任意に選択できる。
本発明においては、必要に応じて、微細で且つ、整粒化された顔料を用いることが好ましい。
【0117】
有機顔料の微細化には、有機顔料を、水溶性有機溶剤及び水溶性無機塩類と共に高粘度な液状組成物として、摩砕する工程を含む方法を用いることが好ましい。
本発明においては、有機顔料の微細化には、以下の方法を用いることがより好ましい。
【0118】
即ち、まず、有機顔料、水溶性有機溶剤、及び水溶性無機塩類の混合物(液状組成物)に対し、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等の混練機を用いて、強い剪断力を与えることで、混合物中の有機顔料を摩砕した後、この混合物を水中に投入し、攪拌機等でスラリー状とする。次いで、このスラリーをろ過、水洗し、水溶性有機溶剤及び水溶性無機塩を除去した後、乾燥することで、微細化された上記の顔料を得ることができる。
【0119】
前記の微細化方法に用いられる水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテール、ジエチレングリコールモノエチルエーテール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレンゴリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
また、少量用いることで顔料に吸着して、廃水中に流失しないならば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘササン、ハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を用いてもよい。また、必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して使用してもよい。
これら水溶性有機溶剤の使用量は、上記有機顔料に対して、50質量%〜300質量%の範囲が好ましく、より好ましくは100質量%〜200質量%の範囲である。
【0120】
また、本発明において水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム等が用いられる。
水溶性無機塩の使用量は、顔料の1倍質量〜50倍質量が好ましく、多い方が摩砕効果はあるが、生産性の点から、より好ましい量は1倍質量〜10倍質量である。
また、水溶性無機塩の溶解を防ぐため、摩砕される液状組成物中の水分が1質量%以下であることが好ましい。
【0121】
本発明において、顔料、水溶性有機溶剤、及び水溶性無機塩を含む液状組成物を摩砕する際には、前述の混練機などの湿式粉砕装置を用いればよい。この湿式粉砕装置の運転条件については特に制限はないが、粉砕メディア(水溶性無機塩)による磨砕を効果的に進行させるため、装置がニーダーの場合の運転条件は、装置内のブレードの回転数は、10rpm〜200rpmが好ましく、また2軸の回転比が相対的に大きいほうが、摩砕効果が大きく好ましい。また、運転時間は、乾式粉砕時間と併せて1時間〜8時間が好ましく、装置の内温は50℃〜150℃が好ましい。また、粉砕メディアである水溶性無機塩は粉砕粒度が5μm〜50μmで粒子径の分布がシャープで、且つ、球形が好ましい。
上記のような摩砕後の混合物を、80℃の温水と混合することで、水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類とを溶解させ、その後、ろ過、水洗し、オーブンで乾燥して、微細な有機顔料を得ることができる。
その他微細な有機顔料を得る方法としては、有機顔料を良溶媒に溶解させ有機顔料溶液を作製した後、該溶液を該溶液と相溶性である有機顔料の貧溶媒と混合して析出させる方法などがある。
【0122】
<顔料分散組成物>
このようにして得られた顔料は、着色感光性組成物を調整する前に、通常、顔料の分散性を向上させるために顔料分散組成物(顔料分散液ともいう)の形態をとる。
顔料の顔料分散組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分(質量)に対して、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。顔料の含有量が前記範囲内であると、色濃度が充分で優れた色特性を確保するのに有効である。
【0123】
顔料分散組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有する。この分散剤の含有により、顔料の分散性を向上させることができる。
分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
【0124】
具体的には、多くの種類の化合物を使用可能であり、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd.)製)、(メタ)アクリル酸(共)重合体であるポリフロー(POLYFLOW)No.75、No.90、No.95(共栄社化学工業(株)(Kyoeisha Chemical Co., Ltd.)製)、W001(裕商(株)(Yusho Co., Ltd.)社製)等のカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)社製)等のアニオン界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルテイケミカル社(Ciba Japan K.K.)製)、ディスパースエイド(DISPERSE AID)6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(いずれもサンノプコ社(San Nopco Ltd.)製)等の高分子分散剤;ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)社(The Lubizol Corporation)製);アデカプルロニック(ADEKA PLURONIC)L31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77、P84、F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)(ADEKA Corporation)製)及びイオネット(IONET)S−20(三洋化成(株)(Sanyo Chemical Industries Ltd.)製)、Disperbyk 101,103,106,108,109,111,112,116,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,2000,2001,2050,2150(ビックケミー(株)社(BYK Japan KK)製)が挙げられる。その他、アクリル共重合体など、分子末端もしくは側鎖に極性基を有するオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。
【0125】
分散剤の顔料分散組成物中における含有量としては、既述の顔料の質量に対して、1〜100質量%が好ましく、3〜70質量%がより好ましい。
【0126】
顔料分散組成物は、必要に応じて、顔料誘導体が添加される。分散剤と親和性のある部分、あるいは極性基を導入した顔料誘導体を顔料表面に吸着させ、これを分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として着色感光性組成物中に分散させ、その再凝集を防止することができ、色再現性が高く、輝度の高い優れたカラーフィルタを構成するのに有効である。
【0127】
顔料誘導体は、具体的には有機顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。有機顔料は、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料等が挙げられる。一般に、色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、トリアジン系、キノリン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開平11−49974号公報、特開平11−189732号公報、特開平10−245501号公報、特開2006−265528号公報、特開平8−295810号公報、特開平11−199796号公報、特開2005−234478号公報、特開2003−240938号公報、特開2001−356210号公報等に記載されているものを使用できる。
【0128】
顔料誘導体の顔料分散組成物中における含有量としては、顔料の質量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、粘度を低く抑えながら、分散を良好に行なえると共に分散後の分散安定性を向上させることができ、透過率が高く優れた色特性が得られ、カラーフィルタを作製するときには良好な色特性に構成することができる。
【0129】
分散の方法は、例えば、顔料と分散剤を予め混合してホモジナイザー等で予め分散しておいたものを、ジルコニアビーズ等を用いたビーズ分散機(例えばGETZMANN社製のディスパーマット)等を用いて微分散させることによって行なえる。分散時間としては、3〜6時間程度が好適である。
【0130】
着色感光性組成物は、既述の顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。なお、顔料分散組成物の詳細については既述の通りである。以下、各成分を詳述する。
【0131】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0132】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0133】
上記の線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0134】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
このほか、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0135】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0136】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。ここで(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0137】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0138】
また、前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR1112、CH=C(R11)(COOR13) 〔ここで、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R12は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R13は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0139】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR1112、CH=C(R11)(COOR13)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CR1112及び/又はCH=C(R11)(COOR13)である。
【0140】
アルカリ可溶性樹脂の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3〜10質量%である。
【0141】
<光重合性化合物>
本発明の着色感光性組成物は光重合性化合物を含有する。
光重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、中でも4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0142】
前記少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌(Journal of the Adhesion Society of Japan) Vol.20、No.7、300〜308頁に記載されている着色感光性モノマー及びオリゴマーも使用できる。
【0143】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0144】
中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
また、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(日本製紙ケミカル(株)(Nippon Paper Chemicals)製)、UA−7200」(新中村化学工業(Shin-Nakamura Chemical Co., Ltd.)製、DPHA−40H(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学工業(株)(Kyoeisha Chemical Co., Ltd.)製)などが挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
【0145】
光重合性化合物は、1種単独で用いる以外に、2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合性化合物の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分100部に対して、3〜55部が好ましく、より好ましくは10〜50部である。光重合性化合物の含有量が前記範囲内であると、硬化反応が充分に行なえる。
【0146】
<光重合開始剤>
本発明に用いる着色感光性組成物には、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、特開平57−6096号公報に記載のハロメチルオキサジアゾール、特公昭59−1281号公報、特開昭53−133428号公報等に記載のハロメチル−s−トリアジン等活性ハロゲン化合物、米国特許第4318791号、欧州特許出願公開第88050号の各明細書に記載のケタール、アセタール、又はベンゾインアルキルエーテル類等の芳香族カルボニル化合物、米国特許第4199420号明細書に記載のベンゾフェノン類等の芳香族ケトン化合物、仏国特許発明第2456741号明細書に記載の(チオ)キサントン類又はアクリジン類化合物、特開平10−62986号公報に記載のクマリン系又はビイミダゾール系の化合物、特開平8−015521号公報等のスルホニウム有機硼素錯体等、等を挙げることができる。
【0147】
前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(例えば、トリアジン化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物、クマリン化合物)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等が好ましい。
【0148】
前記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1などを好適に挙げることができる。
【0149】
前記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどを好適に挙げることができる。
【0150】
前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、等を好適に挙げることができる。
【0151】
前記ベンゾイン系又はベンゾイル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ゼンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチルo−ベンゾイルベゾエート等を好適に挙げることができる。
【0152】
前記キサントン系光重合開始剤としては、例えば、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、モノイソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、等を好適に挙げることができる。
【0153】
前記活性ハロゲン光重合開始剤(例えば、トリアジン化合物,オキサジアゾール化合物,クマリン化合物)としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メチルビフェニル)−s−トリアジン、p−ヒドロキシエトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル−s−トリアジン、3,4−ジメトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−ベンズオキソラン−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾール,3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を好適に挙げることができる。
【0154】
前記アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等を好適に挙げることができる。
【0155】
前記ビイミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等を好適に挙げることができる。
【0156】
上記以外に、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0157】
本発明では、以上の光重合開始剤に限定されるものではなく、その他の公知の光重合開始剤も使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、米国特許第2,367,660号明細書に記載のビシナールポリケトルアルドニル化合物、米国特許第2,367,661号及び第2,367,670号明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3,046,127号及び第2,951,758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に記載のトリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール−s−トリアジン系化合物、J.C.S.Perkin II(1979)1653−1660、J.C.S.PerkinII(1979)156−162、Journal of PhotopolymerScience and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
また、これらの光重合開始剤を併用することもできる。
【0158】
光重合開始剤の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。光重合開始剤の含有量が前記範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0159】
−増感色素−
着色感光性組成物において必要に応じて増感色素を添加することが好ましい。この増感色素が吸収しうる波長の露光により上記重合開始剤成分のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。
【0160】
(分光増感色素又は染料)
本発明に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類、(例えば、アントラキノン)、スクアリリウム類(例えば、スクアリウム)、等が挙げられる。
【0161】
より好ましい分光増感色素又は染料の例を以下に例示する。
特公平37−13034号公報に記載のスチリル系色素;特開昭62−143044号公報に記載の陽イオン染料;特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩;特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物;特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類;特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料;特開平2−226148号公報
及び特開平2−226149号公報記載のアクリジン類;特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類;特公昭46−42363号公報記載のシアニン類;特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素;特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素;特開昭57−10605号公報記載の色素;特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体;特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素;特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素;特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン;特開平2−179643号公報記載の色素;特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素;特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素;特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−129257号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−334897号公報記載のベンゾピラン系色素が挙げられる。
【0162】
(350〜450nmに極大吸収波長を有する色素)
増感色素の他の好ましい態様として、以下の化合物群に属しており、且つ、350〜450nmに極大吸収波長を有する色素が挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)が挙げられる。
【0163】
<溶剤>
顔料分散組成物及び着色感光性組成物は、一般に上記成分と共に溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0164】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0165】
<その他成分>
本発明においてフォトリソ法のカラーフィルタの製造に用いられる着色感光性組成物には、必要に応じて、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、着色剤、光重合開始剤、その他充填剤、上記のアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
−連鎖移動剤−
着色硬化性組成物に添加し得る連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの複素環を有するメルカプト化合物、および脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0166】
−フッ素系有機化合物−
フッ素系有機化合物を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。
【0167】
フッ素系有機化合物のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0168】
フッソ系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。具体的市販品としては、例えばメガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同780、同781、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(大日本インキ(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭ガラス(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(JEMCO(株)製)などである。
【0169】
フッ素系有機化合物は特に、塗布膜を薄くしたときの塗布ムラや厚みムラの防止に効果的である。また、更には液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
【0170】
フッ素系有機化合物の添加量は、着色感光性組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0171】
−熱重合開始剤−
着色感光性組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0172】
−熱重合成分−
着色感光性組成物には、熱重合成分を含有させることも有効である。必要によっては、塗膜の強度を上げるために、エポキシ化合物を添加することができる。エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型化合物、クレゾールノボラック型化合物、ビフェニル型化合物、脂環式エポキシ化合物などの、エポキシ環を分子中に2個以上有する化合物である。例えばビスフェノールA型化合物としては、エポトート(EPOTOHTO)YD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上、東都化成(Tohto Kasei Co., Ltd.)製)、デナコール(DENACOL)EX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上、ナガセケムテックス(株)(Nagase ChemteX Corporation)製)、プラクセル(PLACCEL)GL−61、GL−62、G101、G102(以上、ダイセル化学工業(DICEL Chemical Industries, Ltd.)製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型化合物、ビスフェノールS型化合物も挙げることができる。またEbecryl 3700、3701、600(以上、ダイセルサイテック(株)(DAICEL-CYTEC COMPANY Ltd.)製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。クレゾールノボラック型化合物としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成製)、デナコールEM−125など(以上、ナガセケムテックス(株)(Nagase ChemteX Corporation)製)が挙げられ、ビフェニル型化合物としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなどが挙げられ、脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド(CELLOXIDE)2021、2081、2083、2085、エポリード(EPOLEAD)GT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学工業製)、サントート(SANTOHTO)ST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成製)などを挙げることができる。また1,1,2,2−テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリグリシジルトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0173】
−界面活性剤−
着色感光性組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を含有させることが好ましく、前述のフッソ系界面活性剤の他にノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤の各種界面活性剤を使用できる。中でも、前記のフッ素系界面活性剤、又はノニオン界面活性剤が好ましい。
【0174】
ノニオン系界面活性剤の例として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤が特に好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-プロピレンポリスチリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、エチレンジアミンポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物などのノニオン系界面活性剤があり、これらは花王(株)、日本油脂(株)、竹本油脂(株)、(株)ADEKA、三洋化成(株)などから市販されているものが適宜使用できる。上記の他に前述の分散剤も使用可能である。
【0175】
上記以外に、着色感光性組成物には各種の添加物を添加できる。添加物の具体例としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、ガラス、アルミナ等の充填剤;イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの、アルコール可溶性ナイロン、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから形成されたフェノキシ樹脂などのアルカリ可溶の樹脂などがある。
【0176】
また、未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、着色感光性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸を添加してもよい。前記有機カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0177】
−熱重合防止剤−
着色感光性組成物には、以上のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0178】
<着色感光性組成物及びこれを用いたカラーフィルタの製造方法>
着色感光性組成物は、既述の顔料分散組成物にアルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を(好ましくは溶剤と共に)含有させ、これに必要に応じて界面活性剤等の添加剤を混合し、各種の混合機、分散機を使用して混合分散する混合分散工程を経ることによって調製することができる。
なお、混合分散工程は、混練分散とそれに続けて行なう微分散処理からなるのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0179】
着色感光性組成物の製造方法の一例を以下に示す。
顔料と水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類との混合物を、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは2軸の押出機等の混練機を用いて、強い剪断力を与えながら顔料を摩砕した後、この混合物を水中に投入し、攪拌機等でスラリー状とする。次いで、このスラリーをろ過、水洗し、水溶性有機溶剤と水溶性無機塩を除去した後、乾燥し、微細化された顔料が得られる。
【0180】
顔料と分散剤及び/又は顔料誘導体と溶剤とでビーズ分散を行なう。主として縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を使用し、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理し、顔料分散組成物を得る。また、顔料を微細化する処理を省くことも可能である。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flowand Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
そして、上記のようにして得られた顔料分散組成物に、光重合性化合物、光重合開始剤、およびアルカリ可溶性樹脂などを添加して、本発明の着色感光性組成物を得る。
【0181】
着色感光性組成物を、直接又は他の層を介して封止用基板等に回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、バー塗布等の塗布方法により塗布して、着色感光性の塗布膜を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、露光後に未硬化部を現像液で現像除去することによって、各色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタとすることができる。
この際、使用する放射線としては、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。有機EL表示装置用のカラーフィルタは、プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機で主としてh線、i線を使用した露光が好ましい。
【0182】
本発明におけるフォトリソ法のカラーフィルタは、既述の着色感光性組成物を用いてガラスなどの基板上に形成されるものであり、着色感光性組成物を直接若しくは他の層を介して基板上に例えばスリット塗布によって塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させ、パターン露光し、現像液を用いた現像処理を順次行なうことによって好適に作製することができる。これにより、本発明の表示装置に用いられるカラーフィルタをプロセス上の困難性が少なく、高品質で且つ、低コストに作製することができる。
【0183】
前記基板としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、プラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層を設けたりしている。
プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
また本発明においては、薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板上に着色層をフォトリソ法で形成することもできる。
【0184】
着色感光性組成物を基板に塗布する方法としては特に限定されるものではないが、スリット・アンド・スピン法、スピンレス塗布法等のスリットノズルを用いる方法(以下スリットノズル塗布法という)が好ましい。スリットノズル塗布法において、スリット・アンド・スピン塗布法とスピンレス塗布法は、塗布基板の大きさによって条件は異なるが、例えばスピンレス塗布法により第五世代のガラス基板(1100mm×1250mm)を塗布する場合、スリットノズルからの着色感光性組成物の吐出量は、通常、500〜2000マイクロリットル/秒、好ましくは800〜1500マイクロリットル/秒であり、また塗工速度は、通常、50〜300mm/秒、好ましくは100〜200mm/秒である。着色感光性組成物の固形分としては通常、10〜20%、好ましくは13〜18%である。基板上に本発明の着色感光性組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜の厚み(プリベーク処理後)としては、一般に0.3〜5.0μmであり、望ましくは0.5〜5.0μm、最も望ましくは0.8〜4.5μmである。
【0185】
通常は塗布後にプリベーク処理を施す。必要によってプリベーク前に真空処理を施すことができる。真空乾燥の条件は、真空度が、通常、0.1〜1.0torr、好ましくは0.2〜0.5torr程度である。
プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲で、好ましくは70〜110℃程度であり、10〜300秒の条件にて行なうことができる。高周波処理などを併用しても良い。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0186】
現像処理では、露光後の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化分のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における着色感光性の着色感光性組成物の塗膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0187】
前記有機溶剤としては、顔料分散組成物又は着色感光性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。
現像方式は、デイップ方式、シャワー方式、スプレー方式などいずれでもよく、これにスウィング方式、スピン方式、超音波方式などを組み合わせても良い。現像液に触れる前に、被現像面を予め水等で湿しておいて、現像むらを防ぐこともできる。また基板を傾斜させて現像することもできる。
【0188】
現像処理後は、余剰の現像液を洗浄除去するリンス工程を経て、乾燥を施した後、硬化を完全なものとするために、加熱処理(ポストベーク)が施される。
リンス工程は通常は純水で行うが、省液のために、最終洗浄で純水を用い、洗浄はじめは使用済の純水を使用したり、基板を傾斜させて洗浄したり、超音波照射を併用したりできる。
【0189】
リンスの後で水切り、乾燥をした後に、通常約200℃〜250℃の加熱処理を行なう。この加熱処理(ポストベーク)は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
以上の操作を所望の色相数に合わせて各色毎に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜が形成されてなるカラーフィルタを作製することができる。
従来の上記色相数はR,G,Bの3色が通常であったが、本発明においては色相数を2または1とすることが出来、上記一連の操作を低減、あるいは無くすことも可能であり、工程の簡便化に対しても寄与しうるものである。
有機EL表示装置に代表される本発明の表示装置は、有機EL発光素子と上記方法で形成されたカラーフィルタを備えることで、高色再現性と高輝度との両立という優れた効果を奏する。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0191】
(比較例1)
従来の液晶表示装置に広く用いられる顔料より作製したカラーフィルタを用いて有機EL表示装置A(比較例1の表示装置)を作製する。
<顔料分散液の作製>
−ピグメントグリーン36の分散液の調製−
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 75部
(共重合組成比70/30 重量平均分子量30000、酸価40)
・ピグメントグリーン36 125部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 450部
をサンドミルで10時間分散した。
【0192】
−ピグメントイエロー150の分散液の調整−
下記組成をサンドミルで15時間分散することにより、ピグメントイエロー150の分散液を調製した。
ピグメントイエロー150 125部
ポリビニルピロリドン 10部
(和光純薬(株)社製、K30、分子量40,000)
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 65部
(共重合組成比70/30 重量平均分子量30000、酸価40)
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 450部
【0193】
−レッドフィルタ、およびブルーフィルタ用顔料分散液の調製−
ピグメントグリーン36の分散液の調製において、ピグメントグリーン36を、ピグメントレッド254/ピグメントレッド177の6/4(質量比)の混合した顔料、またはピグメントブルー15:6/ピグメントバイオレット23の9:1(質量比)の混合した顔料にそれぞれ置き換え、その他はピグメントグリーン36の分散液の調製と同様にして、レッドフィルタ、およびブルーフィルタ用顔料分散液を調製した。
【0194】
<着色感光性組成物の調製>
−緑色感光性組成物−
以下の組成で緑色感光性組成物を調製した。
・グリーンフィルタ用顔料分散液: 100部
緑色顔料分散液として、ピグメントグリーン36の顔料分散液とピグメントイエロー150の顔料分散液とを、90対10の比率で混合したグリーンフィルタ用顔料分散液を100部使用した。
・アルカリ可溶性樹脂:
メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(=30/70[モル比])の
50質量%溶液、重量平均分子量:3万、
溶剤:1−メトキシ−2−プロピルアセテート) 15部
・重合性化合物:
DPHA(日本化薬社製)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
6部
・光重合開始剤:
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体
2部
・増感色素:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン 1部
・水素供与性化合物:2−メルカプトベンゾチアゾール 0.5部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.001部
・フッソ系界面活性剤(商品名:Megafac R08 大日本インキ製)
0.02部
・溶剤:1−メトキシ−2−プロピルアセテート 128部
【0195】
−赤色および青色感光性組成物−
緑色感光性組成物の調製におけるグリーンフィルタ用顔料分散液100部をレッドフィルタ用顔料分散液85部、ブルーフィルタ用顔料分散液45部にそれぞれ置き換える他は緑色感光性組成物の調製と全く同様に、赤色および青色感光性組成物を調製した。
【0196】
<有機EL表示装置の作製>
上記有機EL装置の第1の実施の形態と同様に、カラーフィルタ22を封止基板21の駆動パネル側に、R、G、Bにパターニングしたものを作製した。
3種の組成物をパターニングするための露光、現像は3段階で行った。
カラーフィルタの作製には上記着色感光性組成物を用い、各色の膜厚はR,G,Bともに3.1μmとした。
【0197】
上記第1の実施の形態と同様の構成を有する有機EL発光素子10R、10G、10Bをそれぞれ作製した。その際、第1電極12は、アルミニウムを98質量%含むアルミニウム系合金により構成し、厚みは200nmとした。正孔注入用薄膜層13Aは、酸化クロム(II)により構成し、厚みは4nmとした。有機層13は、上記実施の形態で例示した材料により構成し、その合計厚みは、有機EL発光素子10Rでは125nm、有機EL発光素子10Gでは110nm、有機EL発光素子10Bでは93nmとする(マイクロキャビティを形成)。第2電極14は、第1電極12と同様の材料により構成し、厚みは17nmとした。以上のようにして有機EL表示装置Aを作製した。
図6は、この有機EL発光素子10R、10G、10Bの光源の分光スペクトルを示すグラフである。グラフの縦軸は、発光強度(相対値)を、横軸は波長をあらわすものであり、実線のグラフ(系列3)は、緑色有機EL発光素子の光源スペクトル、破線のグラフ(系列2)は、赤色有機EL発光素子の光源スペクトルを、一点破線のグラフ(系列1)は青色有機EL発光素子の光源スペクトルをそれぞれ示す。
本比較例1及び以下に示す各実施例、比較例の表示装置は、この分光スペクトルを有する有機EL発光素子を備えるものである。
【0198】
(実施例1)
<色素分散液の作製>
・一般式(II)で表される化合物(II−7) 150部
・ポリビニルピロリドン 10部
(和光純薬(株)社製、K30、分子量40,000)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 65部
(共重合組成比70/30 重量平均分子量30000、酸価40)
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 450部
上記各成分を80℃、10気圧で混合し色素分散液Bを作製した。
【0199】
<着色感光性組成物の調製と有機EL装置の作製>
有機EL表示装置Aの作製における、緑色感光性樹脂組成物の調製において、ピグメントグリーン36、及びピグメントイエロー150が全て、一般式(II)で表される化合物(II−7)に等重量で置き換えられるように色素分散液Bを導入した他は、有機EL装置Aの作製における緑色感光性組成物と同様に、感光性組成物Bを作製した。
この感光性組成物Bを有機EL表示装置Aの作製における、青および緑色感光性組成物に変えて用いる他は、有機EL表示装置Aと同様に、有機EL表示装置B(実施例1の表示装置)を作製した。この際にはB(青)とG(緑)のフィルタが共通の組成を有することとなる。そのため、R,G,Bの3色のフィルタがRフィルタとBG共通フィルタとの2色のフィルタとなることにより、パターニングは2段階とすることができた。
有機EL表示装置Aの作製における、緑色感光性樹脂組成物の調製において
ピグメントグリーン36、ピグメントイエロー150を、全て一般式(II)で表される化合物(II−7)に等重量で置き換えられるように色素分散液Bを導入した他は、有機EL装置Aの作製における緑色感光性組成物と同様に、感光性組成物Bを作製した。
この感光性組成物Bを有機EL表示装置Aの作製における、青および緑色感光性組成物に変えて用いる他は、有機EL表示装置Aと同様に、有機EL表示装置B(実施例1の表示装置)を作製した。この際にBとGのフィルタが共通となるため、R,G,B3色のフィルタがRフィルタとBG共通フィルタの2色となることにより、パターニングは2段階とすることができた。
【0200】
(実施例2)
<色素分散液の作製>
色素分散液Bの調製において、一般式(II)で表される化合物(II−7)に換えて、前記例示化合物(IV−1)を等重量で用いる他は同様に色素分散液Cを作製した。
<着色感光性組成物の調製と有機EL装置の作製>
有機EL表示装置Aの作製における、緑色感光性樹脂組成物の調製において、ピグメントグリーン36、ピグメントイエロー150を全て化合物(IV−1)に、等重量の2分の1の量で置き換えられるように色素分散液Cを導入した他は、有機EL装置Aの作製における緑色感光性組成物と同様に、感光性組成物Cを作製した。
この感光性組成物Cを有機EL表示装置Aの作製における、赤および緑色感光性組成物に換えて用いる他は、有機EL表示装置Aと同様に、有機EL表示装置C(実施例2の表示装置)を作製した。
この際にRとGのフィルタが共通の組成を有することとなるため、R,G,Bの3色のフィルタがBフィルタとRG共通フィルタとの2色のフィルタとなることにより、パターニングは2段階とすることができた。
【0201】
(実施例3)
色素分散液Bの調製において、一般式(II)で表される化合物(II−7)の3分の1量を、前記例示化合物(IV−1)に等重量で置き換える他は同様に色素分散液Dを作製した。
<着色感光性組成物の調製と有機EL装置の作製>
有機EL表示装置Bの作製における、感光性樹脂組成物Bの調製において、色素分散液Bに換えて、色素含有量が同じになるように色素分散液Dを導入した他は感光性組成物Bと同様に感光性組成物Dを作製した。
更に、有機EL表示装置Aの作製におけるパターニングされたR,G,Bのフィルタに換えて、感光性樹脂組成物Dを全面に用いる他は、有機EL表示装置Aと同様に、有機EL装置D(実施例3の表示装置)を作製した。
この際、R、G、Bの各発光素子に積層されるフィルタは共通で1種類なので、パターニングはフィルタを必要な形状にするための1段階のみとすることができた。
【0202】
(比較例2)
<有機EL装置の作製>
有機EL表示装置Aの作製において有機層13の厚みを、有機EL発光素子10R、10G、10Bで全て等しく135nmとする(マイクロキャビティを形成しない)以外は有機EL表示装置Aと全く同様に有機EL表示装置Eを作製した。
【0203】
(実施例4)
<有機EL装置の作製>
有機EL装置Dの作製において有機層13の厚みを、有機EL発光素子10R、10G、10Bで全て等しく135nmとする(マイクロキャビティを形成しない)以外は有機EL表示装置Dと全く同様に有機EL表示装置Fを作製した。
(実施例5)
<表示装置前面設置型フィルタの作製>
−下塗り層の形成−
厚さ100μmの透明なポリエチレンテレフタレートフイルムの両面をコロナ放電処理した後、片面にスチレン−ブタジエンコポリマーからなるラテックスを厚さ130nmとなるよう塗布し、下塗り層を形成した。
−第2下塗り層の形成−
下塗り層の上に、酢酸とグルタルアルデヒドを含むゼラチン水溶液を、厚さ50nmとなるよう塗布し、第2下塗り層を形成した。
【0204】
−低屈折率層の形成−
反応性フッ素ポリマー(JN−7219、JSR(株)製)2.50gにt−ブタノール1.3gを加え、室温で10分間撹拌し、孔径1μmのポリプロピレンフィルタで濾過した。得られた低屈折率層用塗布液を、透明支持体の下塗り面とは反対側の面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が110nmとなるように塗布し、120℃で30分間乾燥して硬化させ低屈折率層を形成した。
−フィルタ層の形成−
ゼラチンの10重量%水溶液180gに、一般式(II)で表される化合物(II-7)を0.4g、前記例示化合物(IV−1)を0.2g溶解し、40℃で30分間攪拌した。溶液を孔径2μmのポリプロピレンフィルタで濾過し、フィルタ層塗布液を調製した。
フィルタ層用塗布液を、第2下塗り層の上に、乾燥膜厚が3.3μmとなるように塗布し、120℃で10分間乾燥してフィルタ層を形成し、特定カラーフィルタを作製した。
【0205】
<有機EL装置の作製>
有機EL装置Aの作製において、前記有機EL装置の第1の実施の形態における、カラーフィルタ22の作製を行わなかったものを作製した。
さらに、上記で作製した表示装置前面設置型フィルタ(低屈折率層が設けられていない側の面)を接着剤で貼りつけ、有機EL装置Gとした。
【0206】
(実施例6)
有機EL装置Gの作製において用いた例示化合物(II−7)に換えて、一般式(I)で表される化合物(I−7)を等重量で用いる他は、有機EL装置Gと同様に有機EL装置Hを作製した。
【0207】
以上の実施例で作製した表示装置の調整に使用した各成分について表1に示す。フィルタ層の分光吸収特性として、表示装置に組み込む前に分光光度計(日立製作所製 分光光度計 U−3500)で測定した値を、同じく表1に記載した。
【0208】
【表1】

【0209】
<有機EL表示装置の評価>
−色再現域、透過率−
各有機EL表示装置の色度および輝度を、表示装置に対して法線方向に色彩輝度計((株)トプコン社製 BM−5)を設置して色度(x値、y値)、および輝度(cd/m)を測定した。
(色再現域)
R,G,B各色を表示させたときのCIE色度値を測定し、CIE色度の図上における再現域をNTSC比で示した。
ここでNTSCとはNational Television System Committee の略であり、NTSC規格はカラーテレビ放送方式の規格の一つである。NTSC比とはCIE標準のxy色度図上における色再現範囲を、NTSC規格に対する面積比率で表したものである。
(透過率)
R、G、Bそれぞれについて、カラーフィルタ無しでの測定輝度に対する、カラーフィルタ設置後の輝度の比(%)を透過率とし、3色の平均値をとって表示装置の透過率の目安とした。
これら結果を表2に示した。
【0210】
−観察方向依存性−
グレーを表示させたときの色味の、法線方向と法線方向に対し45度の角度とから見た色味の違いを10人のパネラーにより評価し、5段階評価を行って、その平均点を出し、表2に示した。
(評価基準)
5:全く差は分からない。
4:僅かに差を認識できる。
3:差が認識できる。
2:差が大きい。
1:全く違った色になる。
【0211】
【表2】

【0212】
表2の表示装置A、Bの結果から従来の液晶表示装置に用いられてきた色素を用いて作製したカラーフィルタの分光特性では透過率が低く、観察方向依存性が非常に劣るものであった。これに対し、本発明の分光特性をもつカラーフィルタを用いた実施例の表示装置B,C,Dは、パターニング回数の少ない、簡略化された工程により得られた簡易な構成であっても、色再現域を悪化させることなく、高い透過率を実現でき、さらに観察方向依存性についても改良されていることがわかる。なかでも、2種類の染料を併用することで、本発明に規定する2種の特性を兼ね備える実施例3の表示装置Dは、特に高い性能が得られ、観察方向依存性は殆ど問題なく、パターニング回数を減らせることで工程もより簡略化が可能であることがわかる。
また、実施例4の結果より、表示装置Fのように、マイクロキャビティを用いていない光源であっても、本発明によれば、透過率、色再現性共に高い性能が得られることが分かる。
また、実施例5の結果より、表示装置Gのようにカラーフィルタを内蔵せず、前面設置型フィルタの態様で配置した場合でも、同様に本発明の優れた効果を奏することが分かる。
【0213】
(実施例7)
上記有機EL装置の第二の実施の形態で作製した表示装置、即ち、駆動用基板11の上に、第2電極14,有機層13および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出す形態で構成した表示装置に、実施例3の表示装置Dで用いたカラーフィルタを組み入れたところ、実施例3と同様な効果を発現することが確認できた。このことから、本発明に係る特定カラーフィルタは、第1の実施の形態と同様に、第2の実施の形態をとる表示装置においても、本発明の優れた効果を奏することがわかる。
【符号の説明】
【0214】
10:駆動パネル
10R:赤色の光を発生する有機EL発光素子
10G:緑色の光を発生する有機EL発光素子
10B:青色の光を発生する有機EL発光素子
11:駆動用基板
12:第1電極
13:有機層
13A:正孔輸送層
13B:発光層
13C:電子輸送層
14:第2電極
15:保護層
16:透明導電膜
20:封止パネル
21:封止用基板
22:カラーフィルタ
22R:赤色カラーフィルタ
22G:緑色カラーフィルタ
22B:青色カラーフィルタ
30:接着層
P1:第2端部
P2:第1端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R、G、Bに発光する発光素子からそれぞれなる3色の画素と、カラーフィルタと、を備える表示装置であって、該カラーフィルタが波長475〜525nmの範囲に光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長450nmにおける光学濃度の比率が15%以下であり、且つ、該光学濃度の極大値に対する、波長550nmにおける光学濃度の比率が10%以下である表示装置。
【請求項2】
R、G、Bに発光する発光素子からそれぞれなる3色の画素と、カラーフィルタと、を備える表示装置であって、該カラーフィルタが、波長550〜620nmの範囲に光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長500nmおよび波長630nmにおける光学濃度の比率が、いずれも12%以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記カラーフィルタが、さらに、波長550〜620nmの波長範囲にも光学濃度の極大値を有し、該光学濃度の極大値に対する、波長500nmおよび波長630nmにおける光学濃度の比率が、いずれも12%以下である請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記カラーフィルタが表示装置の前面に配置される前面設置型フィルタである請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記3色の画素を構成するR、G、Bに発光する発光素子が、いずれも有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
マイクロキャビティ構造を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記カラーフィルタが、下記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物から選ばれる1種以上を含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【化1】



[前記一般式(I)中、ZおよびZは、それぞれ独立に、5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子群を示し、該含窒素複素環には他の複素環、芳香族環または脂肪族環が縮合していてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアラルキル基または置換基を有しても良いアリール基を示す。Lは置換基を有してもよい、奇数個のメチンからなるメチン鎖を示す。a、bおよびcは、それぞれ独立に、0または1である。Xは、シアニン染料部がカチオン性である場合は対アニオンを示し、シアニン染料部がアニオン性置換基を有し、且つ、アニオン性である場合は対カチオンを示し、シアニン染料部が分子内で中和されている場合には存在しない。]
【化2】


[前記一般式(II)中、YおよびYは、それぞれ独立に、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表す。Lは、置換基を有しても良い、奇数個のメチンからなるメチン鎖を示す。Xは、水素原子またはカチオンを示す。]
【化3】


[前記一般式(III)中、Y3は、脂肪族環または複素環を形成する非金属原子群を表し、L3は、1個又は3個のメチンからなるメチン鎖を表し、Arは、芳香族環を表す。]
【請求項8】
前記一般式(I)において、前記含窒素複素環又はその縮合環が、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、インドレニン環、ベンゾインドレニン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ナフトイミダゾール環、キノリン環、ピリジン環、ピロロピリジン環、フロピロール環、インドリジン環、イミダゾキノキサリン環又はキノキサリン環であり;R又はRにより表されるアルキル基の炭素数が1〜20であり、R又はRにより表されるアルケニル基の炭素数が2〜10であり、R又はRにより表されるアラルキル基の炭素数が7〜12であり、R又はRにより表されるアリール基がフェニル基又はナフチル基であり;前記メチン鎖のメチンの数が1、3、5又は7個である請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記一般式(I)において、a及びbが0である請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記一般式(I)において、Xにより表される対アニオンが、ハライドイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF、BF、ClO又は下記一般式(1)で表される錯イオンである請求項7に記載の表示装置。
【化5】


[前記一般式(1)において、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはシアノ基であるか、または、RとR10とが、もしくはR11とR12とが結合して形成された芳香族環を表す。YとYは、それぞれ独立に、O、SまたはNHを表し、複数存在するYは同じでも異なっていてもよく、複数存在するYは同じでも異なっていてもよい。Mは、金属原子を表す。]
【請求項11】
前記一般式(I)において、Xが下記一般式(2)で表される化合物である、あるいは前記一般式(II)において、Xが下記一般式(2)で表される化合物である、請求項7に記載の表示装置:
【化6】



[一般式(2)において、R13およびR14は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、ハロゲン化炭素基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基、スルホ基またはカルボキシル基を表す。n1およびn2は、それぞれ独立に、1、2、3または4である。bは、0.25〜3.0である。]

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−171007(P2010−171007A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296249(P2009−296249)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】