説明

表示装置

【課題】有機EL素子の開口率が高く、有機EL素子から放射される光を高効率に取り出すことのできる表示装置を提供する。
【解決手段】光透過性を示す駆動回路が形成された、光透過性を示す駆動基板21と、該駆動基板上21に設けられ、前記駆動回路に駆動されて前記駆動基板21に向けて光を放射する複数の有機エレクトロルミネッセンス素子31と、該複数の有機エレクトロルミネッセンス素子31との間に前記駆動基板21を介在させて配置されるフィルム41と、を有する表示装置であり、前記有機エレクトロルミネッセンス素子31は、前記駆動基板21の厚み方向の一方から見て駆動回路に重なる位置に配置され、前記フィルム41は、ヘイズ値が70%以上かつ全光線透過率が50%以上であり、駆動基板側とは反対側の表面が凹凸形状であり、該凹凸形状の表面が雰囲気との界面を成すことを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「エレクトロルミネッセンス」を「EL」ということがある。)は、発光素子の一種であり、発光材料に有機物を用いた発光層と、該発光層を介在させて対向して配置される一対の電極(陽極および陰極)とを備える。この有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が注入されるとともに陰極から電子が注入され、これら正孔と電子が発光層において結合することによって発光する。
【0003】
有機EL素子は例えば表示装置の画素光源として用いられる。表示装置はその駆動方式によってアクティブマトリクス(AM)駆動方式のものと、パッシブマトリクス(PM)駆動方式のものに大別される。例えばAM駆動方式の表示装置では、有機EL素子を個別に駆動する駆動回路が形成された駆動基板上に、複数の有機EL素子が設けられている。有機EL素子は、この駆動回路によって個別に駆動されることにより、それぞれが画素光源として機能する。
【0004】
駆動基板に形成される駆動回路には、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が一般的に用いられている。現在この薄膜トランジスタの諸特性の向上を目的として、様々な研究開発がなされている。例えば半導体としてアモルファス酸化物半導体を用いた透明薄膜トランジスタが提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】神谷利夫ら、“アモルファス酸化物半導体の設計と高性能フレキシブル薄膜トランジスタの室温形成”、第19回先端技術大賞応募論文、[online]、[平成20年4月9日検索]、インターネット<URL:http://www.fbi-award.jp/sentan/jusyou/2005/toko_canon.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表示装置の構成としては、有機EL素子から出射する光が駆動基板を通過して視聴者に視認される形態と、駆動基板を通過さずに直接視聴者に視認される形態とが考えられる。すなわち視聴者と有機EL素子との間に駆動基板が介在する形態と、駆動基板よりも視聴者寄りに有機EL素子が配置される形態とがある。前者では駆動基板に向けて光を出射すように有機EL素子が駆動基板に搭載され、後者では駆動基板とは反対側に光を出射するように有機EL素子が駆動基板に搭載される。駆動基板とは反対側に光を出射する構成(「トップエミッション型」ということがある。)の有機EL素子は光が駆動回路によって遮られることがないため、駆動回路のために開口率が制限されることはない。しかしながら駆動基板側に光を出射する構成(「ボトムエミッション型」ということがある。)の有機EL素子は光が駆動回路によって遮られるため、駆動回路のために開口率が必然的に制限される。
【0007】
ボトムエミッション型の有機EL素子では開口率が駆動回路によって制限されるため、結果として有機EL素子の発光する面の面積(以下、発光面積という場合がある。)が制限されることになる。そのため輝度を所定の値としたときに、素子全体から放射される光の強度が低くなる。このように開口率が制限されるとしても、有機EL素子に印加する電圧を高くすることによって輝度を高くすることは可能なので、素子全体から放射される光の強度を高くすれば、TFT基板を通して出射する光を所期の強度に制御することは可能ではある。しかしながらこの場合、有機EL素子の負荷が大きくなるため素子寿命が短くなるという問題が生じる。そのため開口率はより高い方が好ましい。前述した薄膜トランジスタは透明なのでこれをTFT基板に用いることにより確かに開口率は向上するが、装置の特性向上のために、さらなる開口率の向上が求められている。
【0008】
また有機EL素子から放射される光は、駆動基板と外界の空気との界面において全反射等で反射されるので、外界に出射せずにその大部分が装置内部に閉じ込められる。そのため有機EL素子から放射される光の大部分が有効に利用されないのが現状である。前述と同様に、たとえ光の一部が反射されたとしても、有機EL素子に印加する電圧を高くすることによって、TFT基板を通して出射する光を所期の強度に制御することは可能ではあるが、この場合素子寿命が短くなるという問題が生じる。そこで有機EL素子から放射される光を、より高効率に外界に出射する構成の装置が求められている。
【0009】
従って本発明の目的は、有機EL素子の開口率が高く、有機EL素子から放射される光を高効率に取り出すことのできる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光透過性を示す駆動回路が形成された、光透過性を示す駆動基板と、
該駆動基板上に設けられ、前記駆動回路に駆動されて前記駆動基板に向けて光を放射する複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、
該複数の有機エレクトロルミネッセンス素子との間に前記駆動基板を介在させて配置されるフィルムと、を有する表示装置であり、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て駆動回路に重なる位置に配置され、
前記フィルムは、ヘイズ値が70%以上かつ全光線透過率が50%以上であり、駆動基板側とは反対側の表面が凹凸形状であり、該凹凸形状の表面が雰囲気との界面を成すことを特徴とする表示装置に関する。
【0011】
また本発明は、前記駆動回路は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重なる位置に配置される光透過性を示す配線を含み、該配線が無機酸化物導電体から成ることを特徴とする前記表示装置に関する。
【0012】
また本発明は、前記駆動回路は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重なる位置に配置される光透過性を示すトランジスタ素子を含み、該トランジスタ素子が無機酸化物半導体から成る半導体層を含むことを特徴とする前記表示装置に関する。
【0013】
また本発明は、前記無機酸化物半導体および無機酸化物導電体が、それぞれ亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物であり、
前記半導体層は前記配線よりもキャリア濃度が低いことを特徴とする前記表示装置に関する。
【0014】
また本発明は、前記フィルムは、駆動基板側とは反対側の表面に複数の凹面が設けられて該表面が凹凸状に形成されていることを特徴とする前記表示装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
有機EL素子の開口率が高く、有機EL素子から放射される光を高効率に取り出すことができる表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本実施形態の表示装置1の一部を示す平面図である。
【図2】図2は表示装置のうちの一画素分に相当する領域を拡大して示す断面図である。
【図3】図3は駆動回路の回路構成の一部を示す図である。
【図4】図4は作製例1において作製したフィルムAの断面を模式的に示す図である。
【図5】図5は作製例2で用いたフィルムBの断面を模式的に示す図である。
【図6】図6は比較例1において作製したフィルムCの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して本発明の実施の一形態について説明する。図1は本実施形態の表示装置1の一部を示す平面図である。図2は表示装置のうちの一画素分に相当する領域を拡大して示す断面図である。図3は駆動回路の回路構成の一部を示す図である。
【0018】
表示装置1は、光透過性を示す駆動回路11が形成された光透過性を示す駆動基板21と、該駆動基板上に設けられ、前記駆動回路11に駆動されて前記駆動基板に向けて光を放射する複数の有機EL素子31と、該複数の有機EL素子31との間に前記駆動基板21を介在させて配置されるフィルム41とを備える。本明細書において「光」とは有機EL素子が放射する波長範囲の光を意味し、通常は可視光を意味する。従って所定の部材が光透過性を示すとは、有機EL素子から放射されて、所定の部材に入射する光の少なくとも一部が透過することを意味する。
【0019】
(1)表示装置の構成
まず表示装置1の構成について説明する。
【0020】
(有機EL素子)
有機EL素子31は駆動基板21上に設けられ、駆動回路11に駆動されて駆動基板21に向けて光を放射する。換言するとボトムエミッション型の複数の有機EL素子31が駆動基板21上に設けられる。本実施形態では駆動基板21上に複数の有機EL素子31がマトリクス状に設けられる。具体的には、複数の有機EL素子31は駆動基板21上において行方向Xに等間隔をあけるとともに、列方向Yに等間隔をあけてそれぞれが離散的に配置される。
【0021】
また駆動基板21上には行方向Xおよび列方向Yに延伸する格子状の隔壁51が設けられる。この隔壁51は各有機EL素子31を区分けするために設けられる。各有機EL素子31はこの格子状の隔壁51に囲まれた領域に設けられる。換言すると行方向Xおよび列方向Yに隣り合う有機EL素子31間に介在するように隔壁51は配置される。
【0022】
有機EL素子31は、一対の電極32,33と、該電極間に配置される1または複数の所定の層34とを備える。駆動基板21の厚み方向の一方の表面には、一対の電極のうちの一方の電極(以下、「一方の電極」を「第1電極32」といい、「他方の電極」を「第2電極33」ということがある。)が設けられている。第1電極32および第2電極33のうちの一方は陽極として設けられ、他方は陰極として設けられる。なお以下本明細書では駆動基板21の厚み方向の一方を「上方」または「上」と記載し、厚み方向の他方を「下方」または「下」と記載することがある。
【0023】
第1電極32は1つの有機EL素子31に対して1つ設けられる。すなわち第1電極32は、有機EL素子31と同じ数だけ駆動基板21上に形成される。複数の第1電極32は駆動基板21上においてマトリクス状に設けられる。すなわち第1電極32は駆動基板21上において行方向Xに等間隔をあけるとともに列方向Yに等間隔をあけてそれぞれが離散的に配置される。第1電極32は、平板状であり、駆動基板21の厚み方向の一方から見て(以下「平面視で」ということがある。)略矩形状に形成される。第1電極32は平面視で隔壁51に囲まれる領域に設けられ、その周縁部が隔壁51の一部に重なっている。有機EL素子31は第1電極32を通して光を出射するので、第1電極32は光透過性を示す導電性薄膜から構成される。
【0024】
有機EL素子31は所定の層34として少なくとも1層の発光層を備える。所定の層34は平面視で第1電極32に重なる領域、すなわち隔壁51に囲まれる領域に配置される。
【0025】
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
【0026】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子輸送層は、陰極、電子注入層または陰極により近い電子輸送層からの電子注入を改善する機能を有する。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0027】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
【0028】
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する。正孔輸送層は、陽極、正孔注入層または陽極により近い正孔輸送層からの正孔注入を改善する機能を有する。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0029】
なお電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層と言う場合があり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層と言う場合がある。
【0030】
第2電極33は本実施形態では所定の層34上から駆動基板21全体にわたって一面に形成され、各有機EL素子31に共通する電極として設けられる。
【0031】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜p)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のq)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、以下のr)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は2以上の整数を表し、(構造単位B)xは「構造単位B」がx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0032】
ここで電荷発生層とは電界を印加することにより正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0033】
第1電極32を陽極とし、第2電極33を陰極とする形態の有機EL素子では、上記a)〜q)の構成において左側の層から順に各層が駆動基板21に積層される。また逆に第1電極32を陰極とし、第2電極33を陽極とする形態の有機EL素子では、上記a)〜q)の構成において右側の層から順に各層が駆動基板21に積層される。
【0034】
<陽極>
発光層からの光を陽極を通して取出す構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0035】
陽極の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0036】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0037】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0038】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0039】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0040】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0041】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
【0042】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0043】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0044】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。高分子化合物は溶解性が高いために塗布法に適しており、そのため塗布法で発光層を形成する場合には、発光層はポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0045】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0046】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0047】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0048】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0049】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0050】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
【0051】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0052】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0053】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層からの光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0054】
陰極の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設計され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0055】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0056】
(隔壁)
隔壁51は例えば電気絶縁膜によって構成される。隔壁51は例えばSOG(Spin ON Glass)、酸化シリコン(SiO)および窒化シリコン(SiN)等のシリコン系絶縁物、アルミナ(Al)等のアルミニウム酸化物、ハフニア(HfO)等のハフニウム酸化物、イットリア(Y)等のイットリウム酸化物、La等のランタン酸化物、または感光性樹脂などから成る薄膜によって構成され、これらのうちの1層から成る単層体、または2層以上が積層された積層体によって構成される。なお積層体としては、種類の異なる層が積層された構成でもよく、また同種の層が積層された構成でもよい。本実施形態では例えば感光性樹脂によって隔壁51を構成してもよい。隔壁51は光透過性のものでも、不透光性のものでもよい。光透過性を示す隔壁51を設ける場合には、上記材料から適宜光透過率の高い材料を用いて隔壁51を形成すればよい。
【0057】
(駆動基板)
有機EL素子31が搭載される駆動基板21は、基板本体22と、該基板本体22上に形成される駆動回路11とを備える。
【0058】
本実施形態の駆動回路11は、各有機EL素子31を個別に駆動する複数の回路要素と、各回路要素を接続する所定の配線とを含む。図2,3に示すように有機EL素子31ごとに設けられる回路要素は、2つのトランジスタ素子と1つのコンデンサ14と所定の配線とを備える。以下2つのトランジスタ素子の一方の素子を切替用Tr12と記載し、他方の素子を駆動用Tr13と記載する。
【0059】
切替用Tr12および駆動用Tr13は、それぞれゲート電極SG,DGと、ソース電極SS,DSと、ドレイン電極SD,DDとを含んで構成される。これら切替用Tr12および駆動用Tr13の電極は光透過性を示す部材によって構成される。ゲート電極SG,DGは基板本体22上に設けられる。基板本体22上にはゲート電極SG,DG以外にも所定の配線等がさらに設けられ、ゲート電極SG,DGと所定の配線とは一体的に形成されている。基板本体22上には、これらゲート電極SG,DGおよび所定の配線等を覆う絶縁層15がさらに設けられている。この絶縁層15は光透過性を示す。絶縁層15のうちでゲート電極SG,DG上に設けられる部位がゲート絶縁膜として機能する。ソース電極SS,DSとドレイン電極SD,DDとはこの絶縁層15を介在させてゲート電極SG,DG上にそれぞれ所定の間隔をあけて配置される。ソース電極SS,DSとドレイン電極SD,DDとの間には光透過性を示す半導体層19が設けられる。このように本実施形態ではボトムゲート型の切替用Tr12および駆動用Tr13が駆動基板21に形成されるが、他の実施の形態としてトップゲート型のトランジスタ素子を駆動基板に形成してもよい。
【0060】
コンデンサ14は対向する一対の平板14a,14bと、この一対の平板14a,14b間に介在する絶縁層15とから構成される。一方の平板14aは基板本体22上に設けられる。この一方の平板14aは基板本体22上に設けられる所定の配線と一体的に形成されている。他方の平板14bは絶縁層15上に設けられる。一方の平板14aと切替用Tr12のソース電極SSとは絶縁層15に形成されたスルーホール中の導体(以下スルーホール内配線部16ということがある。)によって接続される。さらにコンデンサ14を構成する一方の平板14aは駆動用Tr13のゲート電極DGと一体的に形成されている。従って切替用Tr12のソース電極SSと、駆動用Tr13のゲート電極DGとは、スルーホール内配線部16およびコンデンサ14を介して電気的に接続される。またコンデンサ14を構成する他方の平板14bは駆動用Tr13のドレイン電極DDと一体的に形成されている。
【0061】
駆動用Tr13、切替用Tr12およびコンデンサ14などからなる駆動回路11上には、これら素子を覆う平坦化膜17がさらに形成されている。複数の有機EL素子31は、この平坦化膜17上に設けられている。駆動用Tr13のソース電極DSと、基板本体22上に形成された所定の配線とは、絶縁層15に形成されたスルーホール内配線部18を介して接続される。さらに駆動用Tr13のソース電極DSに電気的に接続される基板本体22上の所定の配線は、絶縁層15および平坦化膜17を貫通して設けられるスルーホール内配線部20a,20bを介して有機EL素子31の第1電極32と電気的に接続される。従って有機EL素子31の第1電極32と駆動用Tr13のソース電極DSとは、基板本体22上の所定の配線およびスルーホール内配線部18,20a,20bを介して電気的に接続される。
【0062】
駆動回路11のうちの導電体によって構成される部位は、光透過性および導電性を示す薄膜(以下、導電性薄膜ということがある。)によって構成され、例えば有機物または無機酸化物導電体から構成されることが好ましい。切替用Tr12および駆動用Tr13のゲート電極SG,DG、ソース電極SS,DS、ドレイン電極SD,DD、コンデンサ14を構成する一対の平板14a,14b、スルーホール内配線部16,18,20a,20b、並びに所定の配線が、駆動回路11のうちの導電体によって構成される部位に相当する。駆動回路11のうちの導電体によって構成される部位は、無機酸化物導電体から成ることが好ましく、例えば亜鉛錫酸化物(Zinc Tin Oxide:ZTO)またはインジウム含有酸化物(Indium Tin Oxide:ITO、Indium Zinc Oxide:IZOなど)を主成分とした導電体材料によって構成することができる。
【0063】
ZTOは例えばモル比でZnよりもSnの割合を高くすることにより導電体の材料として用いることができ、ZnとSnとのモル比は1:2(Zn:Sn)が好ましい。また導電体の材料として使用する場合、ITOはInとSnとのモル比が通常9:1(In:Sn)程度であり、IZOはInとZnのモル比が通常9:1(In:Zn)程度である。
【0064】
駆動回路11のうちの導電体によって構成される部位は、これらの中でもZTOによって構成することが好ましい。ZTOはアモルファスな薄膜を形成することができるため、フレキシブルな導電性薄膜を構成することができる。そのためIZOから成る薄膜を導電性薄膜として用いることにより、全体としてフレキシブルな駆動基板21を構成することができる。さらにアモルファスなZTO薄膜は比較的低温で形成することができるため、プラスチック基板などの高温耐性が低い部材を基板本体22として使用することができる。
【0065】
絶縁層15は光透過性を示す電気絶縁膜によって構成される。絶縁層15は例えばSOG、酸化シリコンおよび窒化シリコンなどのシリコン系絶縁物、アルミナ等のアルミニウム酸化物、ハフニア等のハフニウム酸化物、イットリアなどのイットリウム酸化物、La等のランタン酸化物、または感光性樹脂などから成る薄膜によって構成され、これらのうちの1層から成る単層体、または2層以上が積層された積層体によって構成される。積層体としては、種類の異なる層が積層された構成でもよく、また同種の層が積層された構成でもよい。本実施形態では例えばアルミナから成る薄膜とハフニアから成る薄膜との積層体によって絶縁層15を構成してもよい。
【0066】
半導体層19は光透過性および半導電性を示す部材によって構成され、無機酸化物半導体から成ることが好ましい。無機酸化物半導体としては前述した所定の配線と同様の亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物を挙げることができ、またペンタセンやテトラベンゾポルフィリンの前躯体などを用いて半導体層19を形成してもよい。無機酸化物半導体から成る半導体層19は、そのキャリア濃度が前述した所定の配線のキャリア濃度よりも低いことが好ましい。
【0067】
半導体層19はこれらの中でもZTOによって構成することが好ましい。なおZTOは、例えばモル比でSnよりもZnの割合を高くすることにより半導体の材料として用いることができ、例えばZnとSnとのモル比は2:1(Zn:Sn)が好ましい。またこのZTOからなる半導体層のキャリア濃度は、成膜時の雰囲気を調整することによって制御することができる。例えば成膜時の酸素濃度を高くすることによって、半導体層のキャリア濃度を低くすることができる。また前述と同様にIZOはアモルファスな薄膜を形成することができるため、フレキシブルな半導電性薄膜を構成することができ、IZOから成る薄膜を半導体層として用いることにより全体としてフレキシブルな駆動基板21を構成することができる。
【0068】
またインジウム含有酸化物としてIZOを用いる場合、InとZnのモル比を4:6(In:Zn)程度とすることにより、IZOを半導体の材料として用いることができる。
【0069】
平坦化膜17は上記絶縁層15で例示したものと同様の薄膜によって構成することができる。本実施形態では例えば感光性樹脂を用いて形成される単層構造の絶縁膜によって平坦化膜17を構成してもよい。
【0070】
以下図3を参照して表示装置1の動作について説明する。駆動基板21には表示装置1に備えられる信号生成部から走査信号(図3では記号「Vscan」で示す。)とデータ信号(図3では記号「Vsig」で示す。)とが入力される。これら走査信号とデータ信号は個々の有機EL素子31を駆動する回路要素に入力される。本実施形態では前述の所定の配線は、走査信号およびデータ信号を伝送する主配線m1,m2と、この主配線m1,m2から分岐する副配線s1,s2とを含む。
【0071】
本実施形態では主配線m1,m2は基板本体22と隔壁51との間に配置される。例えば走査信号を伝送する主配線m1は、行方向Xに延伸する複数本の導電体によって構成され、平面視で行方向Xに延伸する複数本の隔壁51に重なる位置に配置される。また例えばデータ信号を伝送する主配線m2は、列方向Yに延伸する複数本の導電体によって構成され、平面視で列方向Yに延伸する複数本の隔壁51に重なる位置に配置される。なお走査信号を伝送する主配線m1とデータ信号を伝送する主配線m2とは駆動基板21の厚み方向に離間してそれぞれ延伸するため、互いに交差はしないが、隔壁51と同様に平面視では格子状に配置される。
【0072】
走査信号を伝送する主配線m1から分岐する副配線s1は、切替用Tr12のゲート電極SGに接続され、例えば基板本体22上において切替用Tr12のゲート電極SGに一体的に形成される。またデータ信号を伝送する主配線m2から分岐する副配線s2は、切替用Tr12のドレイン電極SDに接続され、例えば絶縁層15上において切替用Tr12のドレイン電極SDに一体的に形成される。
【0073】
切替用Tr12のソース電極SSと駆動用Tr13のゲート電極DGとは所定の配線によって接続される。駆動用Tr13のゲート電極DGとドレイン電極DDとの間にはコンデンサ14が挿入される。駆動用Tr13のソース電極DSと有機EL素子31の第1電極32とは配線によって接続される。また駆動用Tr13のドレイン電極DDには駆動電源からの駆動電圧(図3では記号「Vcc」で示す。)が印加されている。
【0074】
主配線m1および副配線s1を介して、切替用Tr12のゲート電極SGに走査信号として高電圧が印加されると、ドレイン電極SDとソース電極SSとが導通状態(以下、オン状態ということがある。)になる。切替用Tr12がオン状態のときに、主配線mおよび副配線sを介して切替用Tr12のドレイン電極SDにデータ信号として高電圧が印加されると、高電圧のデータ信号が駆動用Tr13のゲート電極DGに与えられ、ドレイン電極DDとソース電極DSとが導通状態(オン状態)になる。駆動用Tr13がオン状態になると、駆動電圧(Vcc)が有機EL素子31の第1電極32に印加されて有機EL素子31が発光する。すなわち走査信号とデータ信号との両方の信号が入力されている状態で駆動用Tr13がオン状態になり、有機EL素子31が発光する。
【0075】
走査信号が入力されていない状態、すなわち切替用Tr12のゲート電極SGに低電圧が印加されている状態では、切替用Tr12のドレイン電極SDとソース電極SSとは非導通状態(以下、オフ状態ということがある。)となる。切替用Tr12がオフ状態のときに、データ信号として高電圧が切替用Tr12のドレイン電極SDに印加されたとしても、駆動用Tr13のゲート電極DGに高電圧のデータ信号が与えられないので、駆動用Tr13のドレイン電極DDとソース電極DSとが非導通状態(オフ状態)になる。また走査信号として高電圧が入力された状態で、切替用Tr12がオン状態であったとしても、データ信号が入力されていない状態では、駆動用Tr13のゲート電極DGには切替用Tr12のドレイン電極SDと同様に低電圧が印加されるため、駆動用Tr13はオフ状態となる。従って走査信号またはデータ信号が入力されていない状態では、駆動用Tr13がオフ状態となるので有機EL素子31は発光しない。以上説明したように走査信号とデータ信号との両方の信号が入力されているときにのみ有機EL素子31が発光するので、走査信号とデータ信号とを選択的に入力することによって、有機EL素子31を選択的に発光させることができる。
【0076】
本実施形態の表示装置1は複数の有機EL素子31がマトリクス状に配置されており、各有機EL素子31ごとに図3に示す回路要素が設けられている。各行の有機EL素子31に設けられる回路要素の切替用Tr12のゲート電極SGは、各行毎に、互いに走査信号を伝送する主配線m1によって接続される。また各列の有機EL素子31に設けられる回路要素の切替用Tr12のドレイン電極SDは、各列毎に、互いにデータ信号を伝送する配線m2によって接続される。従って同じ行に配置される切替用Tr12のゲート電極SGには共通の走査信号が入力される。また同じ列に配置される切替用Tr12のドレイン電極SDには共通のデータ信号が入力される。このようなアクティブマトリクス型の表示装置1では、走査信号を入力することによって特定の行に配置された複数の有機EL素子31を選択することができる。このようにして選択された複数の有機EL素子31のなかから、さらにデータ信号を入力することによって、特定の列に配置された有機EL素子31を選択的に発光させることができる。
【0077】
以上説明したように光透過性を示す部材によって駆動回路11を構成することにより、光透過性を示す駆動回路11を構成することができる。なお駆動回路11は平面視で、有機EL素子31から光が放射される領域に重なる部分が少なくとも光透過性を示す部材によって構成されていればよく、例えば駆動回路11の全てが光透過性を示す部材によって構成されてもよく、また一部が光透過性を示す部材によって構成されてもよい。例えば駆動回路11のうちで、平面視で隔壁51に重なる位置に設けられる主配線m1,m2を不透明の部材によって構成し、光透過性を示す部材によってその他の部分を構成してもよい。本実施形態では有機EL素子31は隔壁51を除く領域に形成されるため、平面視で隔壁51に重なる位置に設けられる主配線m1,m2が不透明であったとしても、この主配線m1,m2によって有機EL素子31の開口率が制限されることはない。そのため例えば不透明ではあるが比較的電気抵抗の低い部材を用いて主配線m1,m2を構成することができる。これによって駆動回路11で浪費される電力を抑制することができる。例えば層厚を厚くすることによって電気抵抗の低い主配線m1,m2を形成することができる。なお主配線m1,m2は、光透過性を示す副配線s1,s2とは異なる材料によって形成してもよく、例えば抵抗率の低い金属を用いて形成してもよい。
【0078】
このように有機EL素子31から光が放射される領域に平面視で重なる部分が光透過性を示す部材によって構成される駆動回路11を用いることにより、有機EL素子31の開口率が駆動回路11によって制限されることを防ぐことができる。そのため不透明な駆動回路と平面視で重ならないように有機EL素子を配置する必要がなく、設計の自由度を下げることなく高い開口率を確保することができる。
【0079】
(フィルム)
フィルム41は、複数の有機EL素子31との間に前記駆動基板21を介在させて配置される。換言すると駆動基板21に対して複数の有機EL素子31が設けられる側とは反対側にフィルム41は配置される。本実施形態ではフィルム41は駆動基板21に接して配置される。なお駆動基板21とフィルム41との間には所定の層を設けてもよい。
【0080】
フィルム41は、駆動基板21側とは反対側の表面が凹凸形状であり、この凹凸形状の表面が雰囲気との界面を成す。すなわち表示装置1において空気に触れる最も外側の層としてフィルム41が設けられる。このフィルム41はヘイズ値が70%以上であり、全光線透過率が50%以上である。なお全光線透過率透過率およびヘイズ値の上限値は100%であるが、これらは有機EL素子31が組み込まれる装置の仕様に合わせて適宜設定される。
【0081】
本実施形態ではフィルム41は例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、接着剤および粘着材などの所定の貼合剤によって駆動基板21に貼り付けられる。なお駆動基板21上にフィルム41を直接形成する場合には貼合剤を用いなくてもよく、またフィルム41に貼合剤が予め設けられている場合には、フィルム41を貼り合せる際に、フィルム41と駆動基板21との間にさらに貼合剤を配置しなくてもよい。
【0082】
フィルム41を貼り合わせる際にフィルム41と駆動基板21との間に空気の層が形成されると、この空気の層の界面で光の反射が生じるので、この反射に起因して光取り出し効率が低下する。そのためフィルム41と駆動基板21との間に空気の層が形成されないように、駆動基板21に密着させてフィルム41を貼り合わることが好ましい。フィルム41が貼り合わされる層(本実施形態では駆動基板21)、貼合剤、およびフィルム41の各屈折率のうちで、最大となる屈折率と最小となる屈折率との差の絶対値は、小さい方が反射を抑制することができるので好ましく、具体的には0.2以下が好ましく、さらに好ましくは0.1以下である。
【0083】
本実施形態のフィルム41は、駆動基板21側とは反対側の表面が凹凸状に形成され、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が50%以上である。ヘイズ値が70%未満であれば、十分な光散乱効果が得られないことがあり、全光線透過率が50%未満であれば、十分に光を取出されないことがあるので、このようなフィルムを有機EL素子に用いた場合には十分な光取出し効率を得られないおそれもあるが、ヘイズ値が70%以上かつ全光線透過率が50%以上のフィルム41を用いることによって、高い取出し効率の有機EL素子を実現することができる。フィルム41の全光線透過率は80%以上であることがさらに好ましい。
【0084】
ヘイズ値は以下の式で表され、JIS K 7136「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に記載された方法で測定することができる。
【0085】
ヘイズ値(曇価)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100(%)
また全光線透過率はJIS K 7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に記載された方法で測定することができる。
【0086】
フィルム41の厚み方向に垂直な幅方向の凸面または凹面の大きさ(幅)の平均は、大きすぎるとフィルム41表面での輝度が不均一になり、小さすぎるとフィルム41の作製コストが高くなるので、光の波長と同程度若しくはそれよりも大きいことが好ましく、好ましくは0.1μm〜100μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜20μmであり、さらに好ましくは1μm〜2μmである。またフィルム41の厚み方向の凸面または凹面の高さの平均は、前記幅方向の凸面または凹面の大きさ(幅)や、凹凸形状が形成される周期により適宜設定され、通常は前記幅方向の凹面または凸面の大きさ(幅)以下、または凹凸形状が形成される周期以下が好ましく、0.25μm〜10μmであり、好ましくは0.5μm〜1.0μmである。
【0087】
凸面または凹面の形状は曲面を有する形状が好ましく、半球形状が好ましい。凹面または凸面は規則的に配置されることが好ましく、例えば碁盤の目状に配置されることが好ましい。またフィルム41の表面のうちで、凹面と凸面とが形成される領域の割合、換言すると平面形状の領域を除く領域の割合は、平面視でフィルム41表面の面積の60%以上が好ましい。
【0088】
フィルム41の材料は、光透過性を示すフィルム41を形成することが可能な材料であればよく、例えばガラスなどの無機材料や有機材料を用いてもよい。有機材料としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンスルホン酸、およびポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。フィルム41は、1層のみによって構成されてもよく、また複数の層が積層された積層体によって構成されてもよい。フィルム41は例えばガラスや前記有機材料を用いて形成された支持体と、この支持体の表面上に形成され、支持体に接する表面とは反対側の表面が凹凸状に形成される薄膜との積層体によって構成されてもよい。
【0089】
フィルム41の厚みは特に制限はないが、薄すぎると取り扱いが難しくなり、厚すぎると全光線透過率が低くなるので、20μm〜1000μmが好ましい。
【0090】
ガラスなどの無機材料から成るフィルム41は、無機材料から成る平板状の基台をエッチングすることにより得られる。例えば平板状の基台表面のうちで、凹凸形状を形成する部位を選択的にエッチングすることにより得られる。具体的には無機材料から成る基台表面に保護膜をパターン形成し、液相エッチングまたは気相エッチングなどを施すことによって凹凸面を形成することができる。保護膜は例えばフォトレジストを用いてパターン形成することができる。
【0091】
有機材料から成るフィルム41では例えば以下の(1)〜(6)の方法によって表面に凹凸形状を形成することができる。(1)表面が凹凸状の金属板を、加熱されたフィルムに押し付けることによって金属板の凹凸形状を転写する方法。(2)表面が凹凸状のロールを用いて、高分子シートまたはフィルムを圧延する方法。(3)凹凸形状を有するスリットから高分子シートを押出し成形する方法。(4)有機材料を含む溶液または分散液を、表面が凹凸形状の基台上に滴下(以下、キャストということがある。)して成膜する方法。(5)重合可能なモノマーから成る膜を形成した後に、該膜の一部を選択的に光重合し、未重合部分を除去する方法。(6)高湿度条件下で高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を表面に転写する方法。
【0092】
上記(6)の水滴構造を表面に転写する方法は、凹凸形状のフィルム41を比較的容易に作製することが可能なので、上述した方法の中では(6)の方法が好ましい。この(6)の方法は自己組織化の一種である散逸過程を応用した構造作製法である(例えばG.Widawski,M.Rawiso,B.Francois,Nature,p.369−p.387(1994)参照)。
【0093】
まず上述したフィルム41となる有機材料を溶媒に溶解して、フィルム41形成用の溶液を調製する。溶媒としては例えばジクロロメタンおよびクロロホルムなどを挙げることができる。フィルム41形成用の溶液の粘度は高い方が好ましい。またフィルム41形成用の溶液におけるフィルム41となる有機材料の濃度は高い方が好ましく、溶液における有機材料の濃度は10wt%以上が好ましい。また凹凸形状の大きさや形の均一性を向上させるために、前記フィルム41形成用の溶液にノニオン系界面活性剤などの界面活性剤を少量添加してもよい。
【0094】
次にフィルム41となる材料を含む溶液を所定の基台に塗布する。具体的には調製したフィルム41形成用の溶液を高湿度下で所定の基台にキャストし、フィルム41形成用の溶液から成る液膜を形成する。フィルム41形成用の溶液をキャストする基台として駆動基板21を用いた場合、すなわちフィルム41形成用の溶液を駆動基板21に直接キャストした場合には、駆動基板21にフィルム41が直接的に形成される。
【0095】
溶液をキャストした後、基台雰囲気の湿度を80%〜90%に所定の時間保つ。このように湿度が高い雰囲気中に基台を配置すると、雰囲気中の水蒸気が液化し、液化した複数の液滴が液膜上に形成される。この液滴は略球状であり、液膜の表面において離散的に形成される。液膜上に形成される液滴は、水蒸気がさらに液化することによって時間経過とともに成長して大きくなり、その重量が増す。そのため自重によって液滴の略半分が液膜中に沈み込む。また液滴の形成と並行して、液膜中の溶剤(溶媒)が時間経過とともに蒸発するため、液膜の粘度が時間経過とともに高くなる。このように液滴が液膜中に没入しつつ液膜の粘度が高くなることによって、乾燥時に液滴の形状がフィルム41に転写される。このようにして形成されるフィルム41は、表面に複数の凹面が設けられて、凹凸状に形成される。具体的には径の平均が1μm〜100μmの複数の半球状の窪みがフィルム41の表面に形成される。なお湿度が80%〜90%の範囲においてフィルム41を保持することによって、表面に半球状の窪みが形成された後に、さらにフィルム雰囲気の湿度を低い状態に保つことによってフィルムを乾燥してもよく、またフィルム雰囲気の湿度を80%〜90%に長時間保持することによってフィルムを乾燥してもよい。
【0096】
前述したフィルム41を作製する方法では、作製後のフィルム41膜厚が所定の値になるようにフィルム41形成用の溶液の塗布を制御するとともに、液膜を乾燥させるときの湿度を調整することによって、作製されるフィルム41のヘイズ値を制御することができる。
【0097】
具体的には作製後のフィルム41膜厚が、100μm〜200μmの範囲内において所定の膜厚となるように乾燥開始時の液膜の膜厚を制御するとともに、80%〜90%の範囲内において所定の湿度となるように湿度を制御することによって、ヘイズ値が70以上の所期のヘイズ値を示すフィルム41を形成することができる。
【0098】
湿度と膜厚とを制御することによってフィルム41のヘイズ値を制御することができるのは、有機材料の濃度などにもよるが、湿度と膜厚を変えると、液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わり、これにともなって凹凸形状の大きさや凹面の密度が変わるからであり、また湿度は、凹面の配置の規則性向上など、形成される凹面の構造構築に大きな影響を与えるからであると推測される。
【0099】
作製後のフィルム41の膜厚は、乾燥開始時の液膜の膜厚を調整することによって制御することができる。また溶剤(溶媒)の蒸発速度および溶剤(溶媒)の沸点などによって液膜の表面が乾燥するまでの時間が変わるので、用いる溶剤(溶媒)を変えることによって、フィルム41のヘイズ値を制御することもできる。
【0100】
以上説明したように溶液の塗布量および湿度を調整するという簡易な制御によって、所期の光学的特性を示す大面積のフィルム41を作製することができ、上記(6)の水滴構造を表面に転写する方法によって、簡易でかつ安価に大面積のフィルム41を作製することができる。
【0101】
なお前述したように駆動基板21の表面上にフィルム41形成用の溶液をキャストすることによって駆動基板21上に直接的にフィルム41を形成することもできるが、所定の基台上にフィルムを形成した後に、フィルム41を駆動基板21に貼り合わせてもよい。
【0102】
上述の構成によればフィルム41は、表示装置1において、有機EL素子31の光が出射する側の最表面部に配置される。そのため有機EL素子31から放射される光は、駆動基板21およびフィルム41を通り、凹凸状に形成されたフィルム表面(以下、出射面ということがある。)を通過して空気などの外界に出射する。
【0103】
仮にフィルム41の出射面が平坦であれば、有機EL素子31から放射される光の大部分が、この出射面で起こる全反射等によって外界に出射しないが、本実施形態ではフィルム41表面が凹凸状に形成されているので、出射面で起こる全反射等を抑制することができる。そのため光が効率的に出射することができる。特に本実施形態のフィルム41は、ヘイズ値が70%以上、かつ全光線透過率が50%以上なので、光の取出し効率を向上することができる。これによって高い光取出し効率および発光効率を有する有機EL素子を実現することができる。
【0104】
またフィルム41表面には複数の凹面が設けられ、この凹面が凹レンズと同様の機能を発揮する。このようなフィルム41を設けることによって、有機EL素子から放射される光の放射角を広げることができる。
【0105】
また前述したように光透過性を示す駆動回路11を形成することにより有機EL素子31の開口率を向上することができる。この駆動回路11は、薄膜トランジスタのみならず、所定の配線やコンデンサも光透過性を示す部材によって構成されている。そのため光を駆動基板21側に放射するボトムエミッション型の有機EL素子31を平面視で駆動回路11に重なるように配置したとしても、駆動回路11によって素子の開口率が制限されることはなく、高開口率の有機EL素子31を備える表示装置1を実現することができる。
【0106】
各有機EL素子31が設けられる領域として割当てられる面積は解像度などの仕様から自ずと決定される。各有機EL素子31の発光面積は、最大でも各素子に割当てられた面積に制限されるが、各素子の発光面積は、開口率によってさらに制限される。本実施形態では有機EL素子31の開口率を高くすることによって、各素子に割当てられた面積を限度として、発光面積を可能な限り広くすることができる。素子全体としての光強度を一定として比較すると、発光面積が広いほど輝度を抑制することができるため、本実施形態のように開口率を高くすることによって、駆動時に各有機EL素子31に流れる電流密度を低くすることができる。また光取り出し効率を向上することによって、有機EL素子31から駆動基板21に向けて放射すべき光の強度を抑制することができるため、駆動時に各有機EL素子31に流れる電流密度をさらに低くすることができる。このように開口率を高くするとともに光取り出し効率を向上することにより、駆動時の電流密度を抑制することができ、有機EL素子に加わる負荷を低減することができる。これによって素子寿命を向上することができる。
【0107】
(2)有機EL装置の作製方法
次に有機EL装置の作製方法について説明する。
【0108】
(駆動基板)
まず光透過性および絶縁性を示す板状の基板本体22を用意する。基板本体22には例えばガラス基板、石英基板、プラスチック基板およびこれらを積層した基板を用いることができる。また基板本体22として例えばフレキシブルな基板を用いることで全体としてフレキシブルな装置を実現することもできる。
【0109】
次に基板本体22の厚み方向の一方の表面に導電性薄膜を形成する。この導電性の薄膜は例えばスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法または真空蒸着法などによって形成される。本実施形態では光透過性を示すアモルファス状のZTO導電性薄膜を形成する。例えば前述したようにZnとSnとのモル比が1:2(Zn:Sn)のアモルファス状のZTO導電性薄膜を形成する。
【0110】
次にZTO導電性薄膜を例えばフォトリソグラフィによってパターニングする。これによりコンデンサ14を構成する一方の平板14a、切替用Tr12のゲート電極SG、駆動用Tr13のゲート電極DGおよび所定の配線が形成される。なおこれら導電性薄膜は例えばゾル・ゲル法を利用した印刷法やインクジェットプリンティング法などの塗布法などにより形成することもできる。
【0111】
次に例えばスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などによってアルミナとハフニアとを順次堆積し、光透過性を示す絶縁層15を成膜する。さらにフォトリソグラフィによって絶縁層15の所定の部位に貫通孔を形成する。この貫通孔は、スルーホール内配線部16,18,20aなどが設けられる部位に形成される。なお絶縁層15を成膜した後に貫通孔を形成するのではなく、例えば印刷法などによって、貫通孔を形成する部位を除く領域にのみ選択的に絶縁層15を形成してもよく、この場合にはフォトリソグラフィ工程を省略することができる。このようにして形成された絶縁層15は、切替用Tr12および駆動用Tr13のゲート絶縁膜、並びにコンデンサ14の絶縁膜として機能する。
【0112】
次に導電性薄膜を絶縁層15上に形成する。この導電性薄膜は例えばスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法または真空蒸着法などによって形成される。本実施形態では光透過性を示すアモルファス状のZTO導電性薄膜を形成する。例えば前述したようにZnとSnとのモル比が1:2(Zn:Sn)のアモルファス状のZTO導電性薄膜を形成する。なおZTO導電性薄膜を形成する際に、絶縁層15に形成された貫通孔にもZTOから成る導体が設けられるため、導電性薄膜と同時にスルーホール内配線部16,18,20aも本工程において形成される。
【0113】
次に例えばフォトリソグラフィによってZTO導電性薄膜をパターニングする。これにより切替用Tr12および駆動用Tr13のソース電極SS,DS、ドレイン電極SD,DD、コンデンサ14を構成する他方の平板14b、並びに所定の配線が形成される。なおこれら導電性薄膜は例えばゾル・ゲル法を利用した印刷法やインクジェットプリンティング法などの塗布法などにより形成することもできる。
【0114】
次に例えばスパッタリング法、CVD法または真空蒸着法などを用いて半導体を堆積することにより光透過性を示す半導体薄膜を形成する。本実施形態ではZTOを堆積することにより半導体薄膜を形成することができ、例えばZnとSnとのモル比を2:1(Zn:Sn)とし、ZTO導電性薄膜よりもキャリア濃度が低いZTO半導体薄膜を形成する。なおZTO薄膜のキャリア濃度は、上述したように成膜時の雰囲気の酸素濃度等の調整により制御することができる。
【0115】
次に例えばフォトリソグラフィによりZTO半導体薄膜をパターニングすることで、切替用Tr12および駆動用Tr13のソース電極SS,DSとドレイン電極SD,DDとの間に選択的に半導体層19が形成される。このようにして形成された半導体層19は切替用Tr12および駆動用Tr13のチャネル層として機能する。
【0116】
本実施形態における半導体層19は、絶縁層15上にパターン形成されたZTO導電性薄膜を覆って形成されることが好ましい。本実施形態では絶縁層15上にパターン形成されたZTO導電性薄膜とZTO半導体薄膜とは同じ種類の材料を用いて形成されるため、両薄膜はエッチャントに対する耐性も同様となる。そのためZTO半導体薄膜のみを選択的にエッチングすることは難しく、ZTO半導体薄膜をエッチングする際に、ZTO導電性薄膜も一部が除去されるおそれがある。しかしながら本実施形態のようにZTO導電性薄膜を覆うように半導体層19を形成することによって、エッチング工程においてこの半導体層19がZTO導電性薄膜の保護膜として機能するため、ZTO導電性薄膜がエッチングされることを防ぐことができる。なおZTO半導体薄膜を形成した後にパターニングして半導体層19を形成するのではなく、例えば半導体層19が形成される部位にのみ選択的に半導体層19を形成してもよく、この場合にはフォトリソグラフィ工程を省略することができる。
【0117】
またZTO導電性薄膜とZTO半導体薄膜とが同じ種類の材料を用いて形成されるため、切替用Tr12および駆動用Tr13のソース電極SS,DS並びにドレイン電極SD,DDと、半導体層19とを良好にオーミック接触させることができる。これによりコンタクト抵抗を低減することができ、結果として表示装置1の消費電力を低減することができる。
【0118】
次に絶縁層15上を覆う平坦化膜17を形成する。例えばスピンコートによりフォトレジストを塗布し、所定の部位を露光し、現像、硬化処理を行う。このようして所定の部位に貫通孔が形成された平坦化膜17が形成される。この貫通孔はスルーホール内配線部20bなどが設けられる部位に形成される。
【0119】
次に平坦化膜17に形成された貫通孔に導体を形成し、スルーホール内配線部20bを形成する。例えば上述と同様にして平坦化膜17上にZTO導電体薄膜を形成し、さらにフォトリソグラフィによって所定の部位を除去することにより、貫通孔にのみ導体を形成することができる。なお有機EL素子31の第1電極32を形成する工程と同一工程で貫通孔に導体を設けるようにしてもよい。
【0120】
以上説明した工程により駆動基板21が製造される。
【0121】
(有機EL素子)
次に有機EL素子31を作製する。
【0122】
まず第1電極32を形成する。第1電極32は各有機EL素子31ごとに独立して設けられ、平坦化膜17上に島状に形成される。例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって光透過性を示す導電性薄膜を形成し、その後フォトリソグラフィによって導電性薄膜を島状にパターニングすることによって第1電極32を形成することができる。なお前述したように第1電極32を形成する工程と同一の工程で前述したスルーホール内配線部20bを形成し、第1電極32とスルーホール内配線部20bとを一体的に形成してもよい。第1電極32はスルーホール内配線部20a,20bを介して駆動回路11に電気的に接続される。
【0123】
例えばZTOから成る層、Agから成る層、ZTOから成る層を順次積層することによって陽極として機能する第1電極32を形成することができる。
【0124】
次に第1電極32が形成された駆動基板21上に隔壁51を形成する。例えばスピンコートによりフォトレジストを塗布し、所定の部位を露光し、現像、硬化処理することで、各有機EL素子31を区画する格子状の隔壁51を形成することができる。
【0125】
次に1または複数の所定の層34を第1電極32上に形成する。1または複数の所定の層34は少なくとも発光層を含む。1または複数の所定の層は、前述した各層を構成する材料を第1電極32上に選択的に成膜することによって形成することができる。成膜方法としては塗布法、蒸着法、レーザによる転写や熱転写法などを挙げることができ、塗布法としては例えばインクジェットプリント法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、ノズルコート法などを挙げることができる。例えば所定の層となる材料を含むインキを上記所定の塗布法によって選択的に塗布し、さらに加熱処理などによって塗布膜を固化することによって1または複数の所定の層34を形成することができる。
【0126】
次に1または複数の層34上に第2電極33を形成する。本実施形態では各有機EL素子31に跨った第2電極33を形成する。すなわち各有機EL素子31の1または複数の層34上に一面に連なる第2電極33を一体的に形成する。例えば真空蒸着法などによって、MgとAgとの合金材料を堆積することにより、陰極として機能する第2電極33を形成することができる。
【0127】
次に有機EL素子31を保護する保護膜を必要に応じて形成する。例えばCVD法などによってSiOやSiNの多層膜を形成する。
【0128】
(フィルム)
前述した方法によりフィルム41を作製し、さらにこれを駆動基板21に貼り付ける。
【0129】
以上により表示装置1を作製することができる。
【0130】
駆動回路11は、基板本体22と有機EL素子31との間において、平面視で少なくとも一部が有機EL素子31に重なる位置に配置される。有機EL素子31は各層の膜厚の均一性などにその特性が依存するため、平坦な面上に形成されることが好ましい。駆動回路が設けられる部位はその厚みによって凹凸が生じるので、駆動回路上に有機EL素子を設けるためには、平坦化膜を形成するなどの所定の処理を行う必要がある。しかしながら駆動回路が不透明なものである場合、有機EL素子から放射される光がこの駆動回路によって遮られることになるので、駆動回路上に有機EL素子を敢えて形成せずに、平面視で、駆動回路が形成される領域を避けた領域に有機EL素子を設けていた。そうすると駆動回路が占める領域の分だけ有機EL素子の開口率が必然的に低下することになるが、本実施形態では光を透過する駆動回路11を用いるとともに、平面視で有機EL素子31を駆動回路11に重ねて配置することにより、有機EL素子31の開口率を向上させることができる。また駆動回路の一部を構成する主配線と、この主配線から分岐する副配線とはその厚みによって凹凸が生じるので、これらの配線が不透明な場合には、前述と同様の理由により、平面視で、配線に重ならないように有機EL素子を形成していたため、結果として有機EL素子の開口率が低下するとともに設計の自由度が低下していたが、光透過性を示す配線を用いることにより、平面視で、配線上に有機EL素子を形成することができ、開口率を向上させることができ、さらには設計の自由度を向上させることができる。
【実施例】
【0131】
以下の作製例1,2及び比較例1〜3では、所定の光学的特性を示すフィルムを最表面部に設けることにより、光取出し効率が制御できることを確認した。
【0132】
(作製例1)
透明な支持基板として30mm×30mmのガラス基板を用いた。スパッタリング法によって厚みが150nmのITO薄膜を支持基板の表面上に形成した。このITO薄膜上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを介して所定の領域を露光し、さらに洗浄することによって、所定のパターン形状の保護膜を形成した。さらにエッチングを施した後、水、NMP(n−methylpyrrolidone)でリンスを施し、所定のパターン形状のITO薄膜から成る陽極を形成した。次に陽極上のレジスト残渣を除去するために、酸素プラズマ処理を30Wのエネルギーで2分間行い、UV/O3洗浄を20分間行った。
【0133】
次にポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液に、2段階の濾過を行い、正孔注入層用の溶液を得た。第1段階目の濾過には0.45μm径のフィルターを用い、第2段階目の濾過には0.2μm径のフィルターを用いた。濾過して得られた溶液をスピンコートにより陽極上に塗布し、大気雰囲気下においてホットプレート上で200℃、15分間熱処理することによって、厚みが70nmの正孔注入層を形成した。
【0134】
次にLumation WP1330(SUMATION製)とキシレンとを混合してキシレン溶液を調整した。キシレン溶液におけるLumation WP1330の濃度を1.2質量%とした。調整した溶液をスピンコート法によって正孔注入層上に塗布し、窒素雰囲気下においてホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、厚みが80nmの発光層を形成した。
【0135】
発光層が形成された支持基板を真空蒸着機に導入し、Ba、Alをそれぞれ5nm、80nmの厚みで順次蒸着し、陰極を形成した。なお真空度が1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0136】
次にフィルムを作製した。まずフィルム形成用の溶液を調製した。ポリカーボネート6.32gをジクロロメタン20.7gに溶解し、23.4wt%の溶液を調製した。この溶液にフッ素系界面活性剤としてノベック(住友3M製)を混合し、フィルム形成用の溶液を得た。混合した溶液におけるノベックの濃度は0.8wt%とした。湿度85%の恒温恒湿槽中において、得られたフィルム形成用の溶液をガラスの基台上にキャストした。なおフィルム形成用の溶液のキャスト量は、成膜後のフィルムの膜厚が150μm程度となるように調整した。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムA)を得た。
【0137】
次に支持基板の上記発光層が形成されている側の表面とは反対側の表面に、粘着剤としてグリセリンを塗布し、フィルムAを貼り合せて有機EL素子を作製した。支持基板の屈折率は1.50であり、粘着剤の屈折率は1.45であり、フィルムAの屈折率は1.58である。またフィルムAの平均膜厚は150μmである。
【0138】
(作製例2)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。本作製例2では、高いヘイズ値(82)を示す市販品のフィルム(フィルムB)を用いた。フィルムBは粘着層を有しているので、粘着剤などを用いずにそのまま支持基板に貼付けて有機EL素子を作製した。
【0139】
(比較例1)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。フィルム形成用の溶液には、作製例1の溶液と同じものを用いた。湿度50%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム形成用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度50%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、20mm×20mmのフィルム(フィルムC)を得た。作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様にフィルムCを支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
【0140】
(比較例2)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。フィルム形成用の溶液には作製例1の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が220μm程度となるように、フィルム形成用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムD)を得た。作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様にフィルムDを支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
【0141】
(比較例3)
作製例1の有機EL素子とはフィルムのみが異なる有機EL素子を作製した。フィルム形成用の溶液には作製例1の溶液と同じものを用いた。湿度85%の恒温恒湿槽中において、成膜後のフィルムの膜厚が360μm程度となるように、フィルム形成用の溶液をガラスの基台上にキャストした。湿度85%の雰囲気中で5分間放置した後、窒素フローによりフィルムを乾燥し、表面に凹凸形状を有する20mm×20mmのフィルム(フィルムE)を得た。作製例1と同じ粘着剤を用いて作製例1と同様にフィルムEを支持基板に貼り付けて有機EL素子を作製した。
【0142】
(フィルムの表面の観察)
作製例1,2および比較例1、2、3で用いたフィルムの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。図4は作製例1において作製したフィルムAの断面を模式的に示す図であり、図5は作製例2で用いたフィルムBの断面を模式的に示す図であり、図6は比較例1において作製したフィルムCの断面を模式的に示す図である。
【0143】
作製例1において作製したフィルムAでは、フィルムの表面に平均直径が2μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。フィルムAの表面の全面に渡って凹面が形成されていることを確認した。
【0144】
作製例2に用いたフィルムBでは、フィルムの表面が凹凸状に形成されていることを確認した。フィルムBの表面の全面に渡って凹面が形成されていることを確認した。
【0145】
比較例1において作製したフィルムCでは、表面に凹面が形成されずに、表面が平面であることを確認した。
【0146】
比較例2において作製したフィルムDでは、フィルムの表面に、平均直径が3μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、フィルムDの表面の全面に渡って凹面が形成されていることを確認した。
【0147】
比較例3において作製したフィルムEでは、フィルムの表面に、平均直径が4μmの半球状の凹面が形成されていることを確認した。凹面の配置の規則性は比較的低かったが、フィルムEの表面の全面に渡って凹面が形成されていることを確認した。
【0148】
作製例1および比較例1、2、3においてフィルムを作製したときの湿度と、作製例1,2および比較例1、2、3で用いたフィルムの特性とを(表1)に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
(表1)に示すように、作製されるフィルムの膜厚と湿度とを制御することによって、高いヘイズ値のフィルムを作製できることが確認された。また作製されるフィルムの膜厚が厚くなると、凹面の径が大きくなることを確認した。
【0151】
(有機EL素子の光取出し効率)
作製例1,2および比較例1、2、3で作製したフィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度と、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の光強度とを比較した。フィルムが貼り合わされた有機EL素子の光強度を、フィルムが貼り合わされていない有機EL素子の光強度で割った光取出し効率の比を(表2)に示す。光強度は、有機EL素子に0.15mAの電流を流したときの光強度を測定した。
【0152】
【表2】

【0153】
作製例1の有機EL素子はフィルムAを貼り合せる前に比べて、光取出し効率が1.5倍上昇した。さらに作製例1のフィルムAと光学的特性の近いフィルムBが貼り合わされた作製例2の有機EL素子も、作製例1の有機EL素子と同様に、光取出し効率が大きく上昇した。しかしながら比較例1の有機EL素子に用いたフィルムCは、表面がほぼ平面なため、光取出し効率の向上は見られなかった。また比較例2、3も、大きな光取出し効率の向上は見られなかった。
【0154】
このことから、全光線透過率が高く、ヘイズ値の高いフィルムが光取出し効率の向上に寄与していることが明らかとなった。特にフィルムのヘイズ値が70以上になると、光取出し効率が大きく向上することがわかった。このように所定の光学特性を示すフィルムを設けることによって、光の取出し効率が向上することを確認した。
【符号の説明】
【0155】
1 表示装置
11 駆動回路
12 切替用Tr
13 駆動用Tr
14 コンデンサ
14a 一方の平板
14b 他方の平板
15 絶縁層
17 平坦化膜
19 半導体層
SG ゲート電極
SS ソース電極
SD ドレイン電極
DG ゲート電極
DS ソース電極
DD ドレイン電極
16,18,20a,20b スルーホール内配線部
21 駆動基板
22 基板本体
31 有機EL素子
32 第1電極
33 第2電極
34 1または複数の所定の層
41 フィルム
51 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を示す駆動回路が形成された、光透過性を示す駆動基板と、
該駆動基板上に設けられ、前記駆動回路に駆動されて前記駆動基板に向けて光を放射する複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、
該複数の有機エレクトロルミネッセンス素子との間に前記駆動基板を介在させて配置されるフィルムと、を有する表示装置であり、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て駆動回路に重なる位置に配置され、
前記フィルムは、ヘイズ値が70%以上かつ全光線透過率が50%以上であり、駆動基板側とは反対側の表面が凹凸形状であり、該凹凸形状の表面が雰囲気との界面を成すことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重なる位置に配置される光透過性を示す配線を含み、該配線が無機酸化物導電体から成ることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記駆動基板の厚み方向の一方から見て前記有機エレクトロルミネッセンス素子に重なる位置に配置される光透過性を示すトランジスタ素子を含み、該トランジスタ素子が無機酸化物半導体から成る半導体層を含むことを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記無機酸化物半導体および無機酸化物導電体が、それぞれ亜鉛錫酸化物またはインジウム含有酸化物であり、
前記半導体層は前記配線よりもキャリア濃度が低いことを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記フィルムは、駆動基板側とは反対側の表面に複数の凹面が設けられて該表面が凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−276829(P2010−276829A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128882(P2009−128882)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】